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相続放棄申述受理通知書
1相続放棄申述受理通知書とは
①相続放棄申述受理通知書は相続放棄を認めた通知
相続放棄は、プラスの財産もマイナスの財産も引き継ぎませんという家庭裁判所に対する申立てです。
家庭裁判所は、提出された書類を審査して相続放棄を認めるか認めないか判断します。
相続放棄を認める場合、本人に対して、相続放棄申述受理通知書を送ります。
相続放棄申述受理通知書は、相続放棄を認めましたよという本人あてのお知らせです。
家庭裁判所は、相続放棄を認めた場合、本人にだけ通知をします。
家庭裁判所から、他の相続人や債権者などに自主的に相続放棄を認めましたと通知することはありません。
②相続放棄申述受理通知書は再発行はされない
相続放棄申述受理通知書は、相続放棄を認めましたよという本人あてのお知らせです。
いったんお知らせをしたらお知らせは完了するので、再発行はされません。
たとえ相続放棄をした本人から依頼があっても、再発行はされません。
相続放棄申述受理通知書を紛失してしまっても、相続放棄は無効になりません。
相続放棄申述受理通知書は、家庭裁判所から相続放棄の申立てをした人に対するお知らせに過ぎないからです。
③相続放棄申述受理通知書はA4の紙1枚
相続放棄申述受理通知書は、家庭裁判所から相続放棄の申立てをした人に対するお知らせです。
裁判所が身近でないことから、何か大げさな仕様があると予想しているかもしれません。
戸籍謄本や住民票のような地模様の入った紙ではなく、見慣れたコピー紙に印刷されています。
家庭裁判所にとっては、単なるお知らせに過ぎません。
簡素な通知書であるから、拍子抜けするかもしれません。
相続放棄が認められたことをお知らせする重要な書類です。
④相続放棄申述受理通知書は普通郵便で届く
相続放棄申述受理通知書は、相続放棄が認められたことをお知らせする重要な書類です。
家庭裁判所にとっては、単なるお知らせに過ぎません。
相続放棄申述受理通知書は、書留や本人限定郵便などではなく普通郵便で届きます。
気を付けていないとDMなどに紛れてしまうかもしれません。
相続放棄申述受理通知書は、相続放棄の申立ての書類を作成した司法書士などの専門家に代わりに受け取ってもらうことができます。
⑤相続放棄照会書に回答してから1~2週間で届く
家庭裁判所に相続放棄をする申立てをした場合、申立てをした人に対して相続放棄照会書が届きます。
相続放棄照会書は、相続放棄の意思確認のための裁判所からのお尋ねです。
相続放棄をした場合、相続ができなくなるから慎重に判断します。
相続放棄の申立てと照会書に対する回答を見て、相続放棄を認めるか判断します。
相続放棄照会書に対する回答書を提出してから、1~2週間ほどで相続放棄申述受理通知書が届きます。
家庭裁判所によっては、相続放棄照会書を送らずに判断している場合があります。
相続放棄をする申立てをした後1~2週間経過しても相続放棄照会書が届かない場合、家庭裁判所に問い合わせをするといいでしょう。
2相続放棄申述受理通知書と相続放棄申述受理証明書のちがい
相続放棄申述受理通知書は、相続放棄を認めましたよという本人あてのお知らせです。
家庭裁判所は、相続放棄を認めた場合、本人にだけ通知をします。
債権者や他の相続人などに、自発的に連絡することはありません。
債権者などから見るとは、通常、知らないうちに相続放棄の手続がされていて、知らないうちに相続放棄が認められていることになります。
相続放棄をしたことを知らないから、被相続人にお金を貸していた人は相続人に返してもらおうと考えます。
被相続人にお金を貸していた人から返済を請求されたとしても、相続放棄をしたのだから通常支払う必要はないはずです。
債権者などに見せるため、家庭裁判所で相続放棄を認めてもらったことを証明してもらうことができます。
相続放棄申述受理証明書は、家庭裁判所で相続放棄を認めてもらったことの証明書です。
相続人でないことを証明するために使います。
多くの場合、相続放棄申述受理通知書を渡せば足りるでしょう。
銀行などの金融機関は、相続放棄申述受理通知書では足りず、相続放棄申述受理証明書の提出を求めてきます。
請求があってから、取り寄せることで差し支えないでしょう。
金融機関などの利害関係人は、自分で相続放棄申述受理証明書を取り寄せることができます。
3相続放棄申述受理通知書が必要になる場合
①相続放棄をしたことを証明する
相続放棄が認められても、家庭裁判所から債権者に連絡されません。
被相続人の債権者は何も知らないから、相続人に借金を払ってもらおうとします。
相続放棄をした人は相続人ではないから、被相続人の借金を返済する必要はありません。
債権者に相続放棄申述受理通知書を提示することで、相続放棄をしたことを分かってもらうことができます。
②相続登記など相続手続で使用する
相続放棄が認められても、家庭裁判所から他の相続人や相続手続先に連絡されません。
他の相続人が相続手続をする場合、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本や相続人の現在戸籍を提出します。
相続放棄が認められても、戸籍には記載されません。
相続手続先は、相続放棄をしたことは連絡されません。
相続手続先に相続放棄申述受理通知書を提示することで、相続放棄をしたことを分かってもらうことができます。
他の相続人が相続登記をする場合、戸籍謄本から相続放棄をしたことが分かりません。
法務局に対して相続放棄申述受理通知書を提示することで、相続放棄をしたことを分かってもらうことができます。
相続放棄申述受理通知書は、家庭裁判所によって書いてある内容が違います。
法務局から見て相続登記を認めることができるだけの情報が記載されている場合も不足している場合もあります。
相続放棄申述受理通知書は、相続放棄を認めましたよという本人あてのお知らせだからです。
相続登記を提出する場合、法務局から見て相続登記を認めることができるだけの情報が記載されているのであれば相続放棄申述受理通知書を提出することができます。
内容に不足がある場合、相続放棄申述受理通知書では足りず相続放棄申述受理証明書を取り寄せる必要があります。
③事件番号を確認する
相続放棄の申立てを受け付けしたら、家庭裁判所は事件番号を付けます。
家庭裁判所は、事件番号で事件を管理しています。
債権者や他の相続人が相続放棄申述受理証明書の発行を申請する場合、申請書に事件番号を記載する必要があります。
相続放棄申述受理通知書には、必ず事件番号が記載されています。
債権者や他の相続人が相続放棄申述受理証明書を取り寄せる場合、事件番号を知らせてあげると親切でしょう。
事件番号を知らせてあげなかった場合でも、相続放棄申述受理証明書の発行を申請することができなくなるわけではありません。
事件番号が分からない場合、債権者や他の相続人は相続放棄の有無の照会をすることができます。
相続放棄の有無の照会とは、相続放棄をしたか調べてもらう手続のことです。
相続放棄の有無の照会で、事件番号を知ることができます。
債権者や他の相続人は、事件番号を調べてもらってから相続放棄申述受理証明書の発行を申請することができます。
4相続放棄申述受理通知書を受け取っても相続放棄が無効になる場合がある
法律で定められた一定の条件にあてはまるときは、単純承認したとみなされます。
単純承認とは、被相続人のプラスの財産もマイナスの財産も受け継ぐものです。
単純承認とみなされたら、相続放棄はできません。
相続放棄はできないのに、家庭裁判所に相続放棄の手続をして、相続放棄が認められても無効です。
家庭裁判所が事情を分からずに相続放棄を認めてしまっても、後から無効になります。
単純承認したとみなされる行為は、法律で定められています。
相続財産を処分した場合、単純承認したとみなされます。
相続財産の名義変更をした、相続財産である銀行の預貯金を引き出して使ってしまった場合が典型的です。
単に、引き出しただけであれば、処分とは言えないことが多いでしょう。
引き出したうえ、自分の口座に送金して保管すると、「処分した」と評価される可能性が高くなります。
相続財産の分け方について、相続人全員で合意をした場合も、相続財産を「処分した」場合に当たります。
5相続放棄を司法書士に依頼するメリット
実は、相続放棄はその相続でチャンスは1回限りです。
家庭裁判所に認められない場合、即時抗告という手続を取ることはできますが、高等裁判所の手続で、2週間以内に申立てが必要になります。
家庭裁判所で認めてもらえなかった場合、即時抗告で相続放棄を認めてもらえるのは、ごく例外的な場合に限られます。
一挙にハードルが上がると言ってよいでしょう。
相続放棄は撤回ができないので、慎重に判断する必要があります。
せっかく、相続放棄が認められても、相続財産を処分した判断されたら無効になりかねません。
このような行為をしてしまわないように、予め知識を付けておく必要があります。
相続放棄を自分で手続きしたい人の中には、相続放棄が無効になることまで考えていない場合が多いです。
司法書士は、相続放棄が無効にならないようにサポートしています。
せっかく手続しても、相続放棄が無効になったら意味がありません。
相続放棄を考えている方は、司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。
相続放棄申述書の書き方
1相続放棄は家庭裁判所への申立て
①相続放棄と遺産分割は別のもの
相続が発生したら、原則として、被相続人のプラスの財産もマイナスの財産も相続人が受け継ぎます。
被相続人のプラスの財産もマイナスの財産も受け継がないことを相続の放棄といいます。
相続放棄をすると、プラスの財産を引き継がなくなりますが、マイナスの財産も引き継ぐことがなくなります。
相続放棄は、本来、家庭裁判所に対する手続です。
家庭裁判所に対する申立書に、必要書類を添えて提出します。
家庭裁判所に対する申立書のことを相続放棄申述書と言います。
プラスの財産を受け取らないことを相続放棄の手続と、表現しているケースがあります。
他の相続人に対してプラスの財産を相続しないと宣言することを相続放棄と誤解しているからです。
自称専門家の場合、遺産分割協議と相続放棄を混同しているケースは度々あります。
他の相続人に対してプラスの財産を相続しないと約束しても、相続放棄はできません。
相続放棄は、家庭裁判所に対する手続だからです。
②相続放棄申述書はダウンロードできる
相続放棄は、家庭裁判所に対する手続です。
相続放棄申述書の様式は、家庭裁判所でもらうことができます。
インターネットを使う環境があれば、裁判所のホームページからダウンロードすることができます。
裁判所のホームページには、成年者用と未成年者用が掲載されています。
あてはまる方をダウンロードして使いましょう。
印刷する場合、両面印刷せずに片面印刷にします。
2相続放棄申述書1枚目の書き方と注意点
①相続放棄申述書の書き方は難しくない
裁判所のホームページには、相続放棄申述書の様式と一緒に記載例が掲載されています。
相続放棄申述書の書き方は、それほど難しいものではありません。
②相続放棄の申述先の家庭裁判所欄
相続放棄申述書の提出先になる家庭裁判所の名称を記入します。
相続放棄申述書の提出先は、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です。
相続放棄をしたい人の住所地を管轄する家庭裁判所ではありません。
家庭裁判所の管轄は、裁判所のホームページで調べることができます。
③申述人の氏名押印欄
(1)申述人が成年の場合は自分の氏名を記載
成年者は、自分の氏名を記載します。
押印は、認印で構いません。
朱肉を使う印章で押印します。
押印は実印でなくても差し支えありませんから、印鑑証明書は不要です。
相続放棄申述書の押印で使った印章は目印を付けておきましょう。
家庭裁判所は相続放棄申述書を受け付けた後、相続放棄照会書を送ってきます。
相続放棄照会書に対する回答書に同一印で押印する必要があるからです。
(2)申述人が未成年の場合は法定代理人の氏名を記載
未成年者は、物事のメリットデメリットを充分に判断することができません。
未成年者が契約などの法律行為をする場合、親などの親権者が代わりに手続をします。
親などの親権者が未成年者を代理できる場合、申述人の氏名押印欄は親権者の氏名を記載して親権者の認印を押印します。
親などの親権者と未成年者が利益相反になる場合、親権者は未成年者を代理することができません。
未成年者の代わりに法律行為をする人を家庭裁判所に選んでもらいます。
未成年者の代わりに法律行為をする人を特別代理人と言います。
特別代理人が未成年者の代わりに相続放棄の手続をする場合、申述人の氏名押印欄は特別代理人の氏名を記載して特別代理人の認印を押印します。
④申述人欄
実際に相続放棄をする人について記載します。
未成年者であれば、未成年者本人の実際に住んでいる住所や氏名を記載します。
家庭裁判所は相続放棄申述書を受け付けた後、相続放棄照会書を送ってきます。
相続放棄照会書が届く住所を記載します。
住民票の住所と異なっていても差し支えありません。
⑤法定代理人欄
(1)申述人が成年者の場合は原則として記載不要
相続放棄をする人が成年者である場合、通常は記載不要です。
相続放棄をする人が認知症などで成年後見制度を利用している場合、成年後見人が法定代理人になります。
成年後見制度を利用している場合、法定代理人欄は成年後見人について記載します。
(2)申述人が未成年の場合は申述人を代理できる人について記載
親などの親権者が未成年者を代理できる場合、法定代理人欄は親権者について記載します。
親などの親権者と未成年者が利益相反になる場合、親権者は未成年者を代理することができません。
未成年者の代わりに法律行為をする人を家庭裁判所に選んでもらいます。
未成年者の代わりに法律行為をする人を特別代理人と言います。
特別代理人が未成年者の代わりに相続放棄の手続をする場合、法定代理人欄は特別代理人について記載します。
⑥被相続人欄
被相続人の本籍、最後の住所、氏名を記載します。
相続放棄申述書は、被相続人の戸籍謄本や住民票の除票などと一緒に提出します。
提出する戸籍謄本や住民票の除票の記載を間違いなく書き写しましょう。
3相続放棄申述書2枚目の書き方と注意点
①申述の理由欄
相続放棄をしたい理由を書く欄ではありません。
相続人になったことを知った日を書きます。
多くの場合、死亡の当日でしょう。
1被相続人死亡の当日に○を付けます。
被相続人や被相続人の家族と疎遠になっている場合、相続が発生してから長期間経過してから死亡の事実を知ったかもしれません。
2死亡の通知をうけた日に○を付けます。
先順位の相続人が相続放棄をしたために相続人になることがあります。
3先順位者の相続放棄を知った日に○を付けます。
被相続人が死亡したことは知っていたが、長期間経過した後に債権者から返済を迫られて莫大な借金の存在を知った場合があります。
4その他に○を付けます。
相続があったことを知ってから3か月以内であれば、相続放棄をすることができます。
「相続があったことを知ってから」とは、被相続人が死亡して相続が発生し、その人が相続人であることを知って、かつ、相続財産を相続することを知ってから、と考えられています。
被相続人が死亡してから長期間経過して莫大な借金の存在を知った場合、詳しい事情を説明して家庭裁判所を説得する必要があります。
相続放棄申述書の申述の理由欄には書き切れません。
別途、上申書を用意して詳しい事情を説明しましょう。
家庭裁判所が納得するような事情が説明できていない場合、相続放棄が認められないおそれがあります。
②放棄の理由欄
相続放棄を希望する理由で多いのは、5債務超過のためです。
放棄の理由は、あまり重要ではありません。
相続放棄をする人が本当に自分の意思で相続放棄をするのかが重要です。
被相続人や被相続人の家族と疎遠で関わりたくない場合、6その他に○を付けます。
カッコの中に相続手続に関わりたくないと書けばいいでしょう。
③相続財産の概略欄
相続財産について、分かる範囲で記載すれば問題になりません。
被相続人にめぼしいプラスの財産がなく、圧倒的にマイナスの財産が多いのであれば、財産調査をするまでもないでしょう。
資産欄にほとんどない、負債欄に莫大にあるなどの記載で充分です。
被相続人や被相続人の家族と疎遠で関わりたくない場合などで、財産状況がどのようであっても相続放棄を希望するなら財産調査に意味はありません。
余白に不明と記載するだけでいいでしょう。
4相続放棄申述書提出の注意点
①相続放棄の撤回はできない
相続放棄をすると、プラスの財産を引き継がなくなりますが、マイナスの財産も引き継ぐことがなくなります。
相続放棄をした後にプラスの財産が見つかっても相続することはできません。
相続放棄をすると、相続人でなくなります。
他の相続人に対して遺留分を請求することもできません。
②相続放棄申述書の提出先は被相続人の最後の住所地の家庭裁判所
相続放棄申述書の提出先は、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です。
相続放棄をしたい人の住所地を管轄する家庭裁判所ではありません。
③相続放棄申述書は郵送で提出することができる
相続放棄申述書の提出先は、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です。
相続放棄をしたい人の住所地を管轄する家庭裁判所ではないから、ときには遠方の家庭裁判所かもしれません。
相続放棄申述書は郵送で提出することができます。
近くの家庭裁判所であれば、出向いて受付で目を通してもらって提出すると安心でしょう。
郵送で提出した場合、何か不備があれば家庭裁判所から電話連絡があります。
連絡があったら、すぐに対応しましょう。
④相続放棄申述書に貼る収入印紙は消印をしない
相続放棄申述書1枚目に収入印紙を貼る必要があります。
収入印紙は家庭裁判所で消印がされます。
収入印紙を貼るだけで、消印をせず提出します。
⑤相続放棄申述書は割印や袋綴じは不要
相続放棄申述書は、両面印刷せずに片面印刷にします。
複数枚になりますが、袋綴じにする必要はありません。
相続放棄申述書に割印をする必要もありません。
5相続放棄を司法書士に依頼するメリット
実は、相続放棄はその相続でチャンスは1回限りです。
家庭裁判所に認められない場合、即時抗告という手続きを取ることはできますが、高等裁判所の手続で、2週間以内に申立てが必要になります。
家庭裁判所で認めてもらえなかった場合、即時抗告で相続放棄を認めてもらえるのは、ごく例外的な場合に限られます。
一挙にハードルが上がると言ってよいでしょう。
相続が発生してから3か月以内に届出ができなかったのは止むを得なかったと家庭裁判所に納得してもらって、はじめて、家庭裁判所は相続放棄を認めてくれます。
通常は家庭裁判所に対して、上申書や事情説明書という書類を添えて、説得することになります。家庭裁判所が知りたいことを無視した作文やダラダラとした作文では認めてもらうことは難しいでしょう。
司法書士であれば、家庭裁判所に認めてもらえるポイントを承知していますから、認めてもらえやすい書類を作成することができます。
さらに、通常の相続放棄と同様に戸籍や住民票が必要になります。
お仕事や家事、通院などでお忙しい人には平日の昼間に役所にお出かけになって準備するのは負担が大きいものです。
戸籍や住民票は郵便による取り寄せもできますが、書類の不備などによる問い合わせはやはり役所の業務時間中の対応が必要になりますから、やはり負担は軽いとは言えません。
このような戸籍や住民票の取り寄せも司法書士は代行します。
3か月の期限が差し迫っている方や期限が過ぎてしまっている方は、すみやかに司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。
相続放棄申述受理証明書の取得方法
1相続放棄申述受理通知書と相続放棄申述受理証明書のちがい
相続放棄は、プラスの財産もマイナスの財産も引き継ぎませんという家庭裁判所に対する申立てです。
家庭裁判所は、提出された書類を審査して相続放棄を認めるか認めないか判断します。
相続放棄を認める場合、本人に対して、相続放棄申述受理通知書を送ります。
相続放棄申述受理通知書は、相続放棄を認めましたよという本人あてのお知らせです。
家庭裁判所は、相続放棄を認めた場合、本人にだけ通知をします。
債権者や他の相続人などに、自発的に連絡することはありません。
債権者などから見るとは、通常、知らないうちに相続放棄の手続がされていて、知らないうちに相続放棄が認められていることになります。
相続放棄をしたことを知らないから、被相続人にお金を貸していた人は相続人に返してもらおうと考えます。
被相続人にお金を貸していた人から返済を請求されたとしても、相続放棄をしたのだから通常支払う必要はないはずです。
債権者などに見せるため、家庭裁判所で相続放棄を認めてもらったことを証明してもらうことができます。
相続放棄申述受理証明書は、家庭裁判所で相続放棄を認めてもらったことの証明書です。
相続人でないことを証明するために使います。
多くの場合、相続放棄申述受理通知書のコピーを渡せば足りるでしょう。
銀行などの金融機関は、相続放棄申述受理通知書では足りず、相続放棄申述受理証明書の提出を求めてきます。
請求があってから、取り寄せることで差し支えないでしょう。
2相続放棄申述受理証明書の申請方法
①相続放棄申述受理証明書は申請が必要
相続放棄申述受理通知書は、相続放棄を認めましたよという本人宛のお知らせです。
相続放棄の申立てが認められたら、自動的に届きます。
相続放棄申述受理証明書は、自動的に送られることはありません。
家庭裁判所に対して、手数料を払って証明書を作ってくださいと申請する必要があります。
相続放棄申述受理証明申請書は、家庭裁判所のホームページからダウンロードすることができます。
家庭裁判所によっては、相続放棄申述受理通知書と一緒に、送られてくることもあります。
手数料を払って手続をすれば何枚でも発行してくれるし、再発行もしてくれます。
相続放棄申述受理証明書の申請先は、被相続人の最後の住所地の家庭裁判所です。
家庭裁判所の管轄は、裁判所のホームページで調べることができます。
②相続放棄をした本人が申請する場合
相続放棄申述受理証明申請書に添付する書類は、次のとおりです。
(1)本人確認書類 (運転免許証やマイナンバーカード) のコピー
相続放棄申述受理証明申請の手数料は1通につき、150円です。
手数料は、申請書に収入印紙を貼り付けて納付します。
収入印紙は家庭裁判所で消印を押します。
申請する人は、貼り付けるだけで消印は押しません。
相続放棄申述受理証明申請書は、家庭裁判所まで出向いて提出することもできるし、郵送で提出することもできます。
返信用の封筒に住所と宛名を記載して、郵便切手を一緒に提出すると、郵便で送り返してくれます。
③他の相続人が申請する場合
相続放棄申述受理証明申請書に添付する書類は、次のとおりです。
(1)本人確認書類 (運転免許証やマイナンバーカード) のコピー
(2)被相続人死亡の記載のある戸籍謄本
(3)申請する人の戸籍謄本
手数料は本人が申請する場合と一緒です。
(2)と(3)の戸籍謄本は多くの場合、希望すれば原本還付してくれます。
家庭裁判所によっては、最初からコピーを提出するだけでよい場合もあります。
すでに相続放棄をした人が、同じ被相続人について、相続放棄した他の人の相続放棄申述受理証明申請をすることはできません。
すでに相続放棄をした人は、相続人でなくなります。
相続人でないから、他の相続人が相続放棄をしていても相続放棄をしていなくても関係ありません。
利害関係がない人は、相続放棄申述受理証明申請をすることができないからです。
各自、相続放棄申述受理証明申請をしましょう。
相続放棄申述受理証明申請書には、事件番号や受理年月日の記載が必要です。
事件番号や受理年月日が分からない場合、あらかじめ相続放棄申述受理の有無についての照会をする必要があります。
相続放棄申述受理の有無についての照会は無手数料です。
④債権者が申請する場合
相続放棄申述受理証明申請書に添付する書類は、次のとおりです。
(1)本人確認書類 (運転免許証やマイナンバーカード) のコピー
(2)被相続人死亡の記載のある戸籍謄本
(3)金銭消費貸借契約などの債権者であることが分かる書類
(4)法人の場合、資格証明書
相続放棄申述受理証明申請をしてから、証明書が送られるまでに半月から1か月ほどかかります。
⑤相続放棄申述受理証明書の申請期限は30年間
家庭裁判所は相続放棄に関する書類を30年間保管しています。
相続放棄が認められてから30年以上経過している場合、書類を廃棄しているから家庭裁判所は分からなくなります。
相続放棄申述受理証明申請をしても、証明してもらえません。
相続放棄が認められてから30年以上経過した後、被相続人の債権者から借金の返済を求められた場合、時効が完成しているでしょう。
時効を援用すれば、借金を返済する必要はありません。
3相続放棄をした相続人がいる相続登記
被相続人の財産に不動産が含まれている場合があります。
不動産を相続する相続人は、不動産の名義を書き換えます。
相続財産の分け方は、多くの場合、相続人全員の話し合いによる合意で決めます。
相続人全員の合意が必要ですから、一部の相続人が含まれていない場合、話し合いによる合意は無効になります。
相続放棄をした場合、はじめから相続人でなくなります。
一部の相続人が相続放棄をした場合、相続放棄をした相続人は相続財産の分け方についての話し合いに参加しません。
話し合いに参加していない人は、相続放棄をしたことを証明する必要があります。
このような場合、相続放棄申述受理証明書が必要になります。
家庭裁判所は相続放棄を認めた場合、本人だけに通知します。
法務局などに家庭裁判所から自主的に通知することはありません。
法務局の登記官に、相続放棄をしたので相続人ではないことを証明する必要があるからです。
以前は、相続放棄をした相続人がいる相続登記の申請をする場合、相続放棄申述受理証明書を提出しなければなりませんでした。
かつては相続放棄申述受理通知書では認められませんでした。
現在は、相続放棄申述受理証明書の記載内容と同等の内容が網羅されていれば、相続放棄申述受理通知書でも認めらます。
相続放棄申述受理通知書の記載内容は、家庭裁判所ごとに違います。
相続放棄申述受理証明書の記載内容と同等の内容が網羅されていなければ、現在でも、相続放棄申述受理証明書を提出する必要があります。
相続登記で相続放棄申述受理証明書や相続放棄申述受理通知書を提出した場合、希望すれば、原本還付してもらうことができます。
相続放棄が認められてから30年以上経過している場合、相続放棄申述受理証明書を発行してもらえません。
相続登記ができなくなるおそれがありますから、相続登記はすみやかに済ませましょう。
4相続登記を司法書士に依頼するメリット
大切な家族を失ったら、大きな悲しみに包まれます。
やらなければいけないと分かっていても、気力がわかない方も多いです。
不動産は重要な財産であることも多いので、登記手続は一般の方から見ると些細なことと思えるようなことでやり直しになることも多いです。
相続手続は一生のうち何度も経験するものではないため、だれにとっても不慣れで手際よくできるものではありません。
相続手続きで使われる言葉は、法律用語なので一般の方にとって、日常で聞き慣れないものでしょう。
一般的な内容であれば、インターネットや書籍などを調べて手続きできることがあるかもしれません。
相続放棄した人がいる相続登記になると、簡単な書籍では書いてないことも多いです。
相続登記をスムーズに済ませたい方は、司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。
5相続放棄申述受理証明申請を司法書士に依頼するメリット
相続放棄が家庭裁判所で認められると、家庭裁判所から相続放棄申述受理通知書が届きます。
家庭裁判所は相続放棄を認めた場合、本人に通知をします。
自主的に他の相続人や債権者などに連絡することはありません。
役所や法務局なども例外ではありません。
相続放棄をした人がいる場合、相続放棄をしたので相続人ではありませんと証明する必要があります。
相続放棄申述受理通知書で足りる場合がほとんどですが、時々、相続放棄申述受理証明書が必要になります。
司法書士は、このような家庭裁判所に対する書類作成もサポートしております。
相続放棄や相続放棄申述受理証明書でお困りの方は、司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。
親を相続放棄しても祖父母を代襲相続できる
1代襲相続とは
相続が発生したら、親族のうち一定の範囲の人が相続人になります。
誰が相続人になるかについては、民法で決められています。
相続人になる人は次のとおりです。
①配偶者は必ず相続人になる
②被相続人に子どもがいる場合、子ども
③被相続人に子どもがいない場合、親などの直系尊属
④被相続人に子どももいない場合で、かつ、親などの直系尊属が被相続人より先に死亡している場合、兄弟姉妹
相続人になるはずだった人が被相続人より先に死亡したため、相続人になるはずだった人の子どもや子どもの子どもが相続することがあります。
これを代襲相続と言います。
相続人になるはずだった人の子どもの子どもが相続することを再代襲相続と言います。
代襲相続ができるのは、相続人になるはずだった人の子どもなど被代襲者の直系卑属だけです。
相続人になるはずだった人を被代襲者と言います。
被代襲者の子どもなど被代襲者の直系卑属以外は代襲相続ができません。
被代襲者の配偶者も、被代襲者の親などの直系尊属も、被代襲者の兄弟姉妹も、代襲相続ができません。
2代襲相続になる原因
①相続人の死亡
相続人になるはずだった人が被相続人より先に死亡した場合です。
実際に死亡した場合の他に、失踪宣告を受けて死亡したものと扱われる場合も、代襲相続が発生します。
被相続人の死亡後、相続手続の途中で相続人が死亡した場合には、数次相続になります。
相続が発生したときに相続人が健在であれば、その後死亡しても代襲相続にはなりません。
②相続人が欠格
欠格とは、相続人としてふさわしくない人の相続資格を奪う制度のことです。
欠格になる理由は法律で定められています。
主な理由は、被相続人を殺害したり、殺害しようとしたり、遺言書を偽造したり、遺言書を隠したりしたなどです。
法律で決められた理由があれば、家庭裁判所などの手続はなく、当然に、相続資格を失います。
相続人が相続欠格になる場合、代襲相続ができます。
③相続人が廃除
相続人廃除とは、被相続人の意思で、相続人の資格を奪う制度のことです。
例えば、被相続人に虐待をした人に、相続をさせたくないと考えるのは自然なことでしょう。
相続人廃除は家庭裁判所に申立をして、家庭裁判所が判断します。
被相続人が相続人廃除したいと言い、相続人が廃除されていいと納得していても、家庭裁判所が相続人廃除を認めないことがあります。
相続人が相続人廃除になる場合、代襲相続ができます。
3相続放棄をしたら子どもが代襲相続することはない
相続が発生したら、原則として、被相続人のプラスの財産もマイナスの財産も相続人が受け継ぎます。
被相続人のプラスの財産もマイナスの財産も受け継がないことを相続の放棄といいます。
相続放棄をすると、プラスの財産を引き継がなくなりますが、マイナスの財産も引き継ぐことがなくなります。
相続放棄をした場合、はじめから相続人でなかったとみなされます。
相続人でなくなるから、代襲相続もあり得ません。
相続放棄をした人の子どもや子どもの子どもが代わりに相続することはありません。
同一順位の相続人全員が相続放棄をした場合、次順位の相続人に相続権が移ります。
被相続人の子ども全員が相続放棄をした場合、被相続人の親などの直系尊属が相続します。
4相続放棄は被相続人ごとに手続が必要
被相続人の子ども全員が相続放棄をした場合、次順位の相続人に相続権が移ります。
被相続人の親などの直系尊属が次順位の相続人です。
被相続人の親などの直系尊属が相続を単純承認する場合があります。
相続を単純承認した親が死亡した場合、最初の被相続人は単純承認をした親から見ると子どもにあたります。
子どもだから相続人になるはずの人です。
相続人になるはずの人ですが、単純承認をした親より先に死亡しています。
代襲相続は、相続人になるはずだった人が被相続人より先に死亡したため、相続人になるはずだった人の子どもや子どもの子どもが相続することです。
最初の被相続人は単純承認をした親より先に死亡しているから、その子どもが代襲相続をします。
最初の被相続人に相続が発生したときに、相続放棄をしたとしても関係ありません。
相続放棄をした場合であっても相続放棄をしていない場合でも、代襲相続をします。
相続放棄は被相続人ごとに手続が必要です。
最初の被相続人の相続と被相続人の親の相続は別の相続だからです。
別の相続だから、あらためて相続を単純承認するか相続放棄をするか判断することができます。
単純承認した親の相続について、相続放棄を希望する場合はあらためて相続放棄の手続をしなければなりません。
相続放棄はその被相続人の相続についてのみ有効です。
最初の被相続人の相続で相続放棄をした場合であっても、単純承認した親の相続について、代襲相続をする権利を放棄するものではありません。
例えば、被相続人に大きなマイナスの財産がある場合、被相続人の子どもは相続放棄をするでしょう。
被相続人の子ども全員が相続放棄をした場合、被相続人の親が相続人になります。
被相続人の親が単純承認した場合、大きなマイナスの財産は被相続人の親が相続します。
被相続人の親が大きなマイナスの財産の相続しても有り余る莫大なプラスの財産がある場合があります。
被相続人の親が死亡した場合、最初の被相続人の子どもは代襲相続人になります。
代襲相続人として、大きなマイナスの財産を含めて有り余る莫大なプラスの財産を相続することができます。
最初の相続で、相続放棄をしたことは関係ありません。
5代襲相続がある相続と相続放棄を司法書士に依頼するメリット
相続が発生すると、被相続人のものは相続財産になります。
相続財産は相続人全員の共有財産ですから、分け方を決めるためには相続人全員の合意が必要です。
相続人の一部を含めない合意や相続人でない人を含めた合意は無効になります。
相続財産の分け方の話し合いの前提として、相続人の確定はとても重要です。
代襲相続や数次相続が発生している場合、一挙に難易度が上がります。
インターネットが普及したことで、多くの情報を手軽に得ることができるようになりました。
簡単に情報発信ができるようになったこともあって、適切でない情報も有益な情報もたくさん出回っています。
相続の専門家と名乗っていながら、適切でないアドバイスを見かけることも度々あります。
代襲相続や相続放棄が発生している場合、信頼できる専門家のサポートが欠かせません。
相続放棄をした場合代襲相続はできないとだけカンタンに説明している自称専門家はたくさんいます。
相続人確定を間違えると以降の相続手続は、すべて無効になります。
相続放棄は3か月の期間制限があります。
相続放棄は不要だと誤解してしまった3か月を経過してしまったら、相続放棄は認めてもらえなくなります。
制度をよく理解して、自分がどうしたらいいのか適切に判断する必要があります。
スムーズに相続手続を行いたい方は、司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。
父母が相続放棄すると祖父母が相続
1相続人になる人とは
相続が発生したら、親族のうち一定の範囲の人が相続人になります。
だれが相続人になるかについては、民法で決められています。
相続人になる人は次のとおりです。
①配偶者は必ず相続人になる
②被相続人に子どもがいる場合、子ども
③被相続人に子どもがいない場合、親などの直系尊属
④被相続人に子どもがいない場合で、かつ、親などの直系尊属が被相続人より先に死亡している場合、兄弟姉妹
相続人になるはずだった人が被相続人より先に死亡したため、相続人になるはずだった人の子どもや子どもの子どもが相続することがあります。
これを代襲相続と言います。
相続人になるはずだった人の子どもの子どもが相続することを再代襲相続と言います。
代襲相続ができるのは、相続人になるはずだった人の子どもなど被代襲者の直系卑属だけです。
相続人になるはずだった人を被代襲者と言います。
被代襲者の子どもなど被代襲者の直系卑属以外は代襲相続ができません。
被代襲者の配偶者も、被代襲者の親などの直系尊属も、被代襲者の兄弟姉妹も、代襲相続ができません。
2代襲相続になる原因
①相続人が死亡したら代襲相続する
相続人になるはずだった人が被相続人より先に死亡した場合です。
実際に死亡した場合の他に、失踪宣告を受けて死亡したものと扱われる場合も、代襲相続が発生します。
被相続人の死亡後、相続手続の途中で相続人が死亡した場合には、数次相続になります。
相続が発生したときに相続人が健在であれば、その後死亡しても代襲相続にはなりません。
②相続人が欠格になったら代襲相続する
欠格とは、相続人としてふさわしくない人の相続資格を奪う制度のことです。
欠格になる理由は法律で定められています。
主な理由は、被相続人を殺害したり、殺害しようとしたり、遺言書を偽造したり、遺言書を隠したりしたなどです。
法律で決められた理由があれば、家庭裁判所などの手続はなく、当然に、相続資格を失います。
相続人が相続欠格になる場合、代襲相続ができます。
③相続人が廃除されたら代襲相続する
相続人廃除とは、被相続人の意思で、相続人の資格を奪う制度のことです。
例えば、被相続人に虐待をした人に、相続をさせたくないと考えるのは自然なことでしょう。
相続人廃除は家庭裁判所に申立をして、家庭裁判所が判断します。
被相続人が相続人廃除したいと言い、相続人が廃除されていいと納得していても、家庭裁判所が相続人廃除を認めないことがあります。
相続人が相続人廃除になる場合、代襲相続ができます。
3子どもが相続放棄をしても子どもの子どもは代襲相続しない
被相続人の子どもが相続放棄をした場合、子どもの子どもは代襲相続しません。
子どもが相続放棄をした場合、代襲相続が発生しないからです。
被相続人の子どもが相続放棄をした場合、はじめから相続人でなかったとみなされます。
相続人でなくなるから、代襲相続もあり得ません。
被相続人の借金から逃れるために相続放棄をした場合、代襲相続がされないので安心です。
被相続人の子ども全員が相続放棄をした場合、子どもがいない場合になります。
子どもがいない場合、親などの直系尊属が相続します。
4父母が相続放棄をすると祖父母が相続する
①父母が相続放棄をしても代襲相続はしない
被相続人の父母が相続放棄をした場合、健在であれば祖父母が相続します。
父母が相続放棄をした場合であっても、代襲相続は発生しません。
だれが相続放棄をしても、代襲相続は発生しません。
代襲相続によって、祖父母が相続するのではありません。
祖父母が相続するのは、直系尊属だからです。
子どもの次順位の相続人は、親ではなく、親などの直系尊属です。
親などの直系尊属のうち、親等が近い人が相続人になります。
例えば、直系尊属に父母と祖父母がいる場合、父母は1親等、祖父母は2親等です。
父母の方が親等が近いから、父母が相続人になります。
父母が相続放棄をした場合、父母は相続人でなくなります。
親等の近い父母がいない場合なので、2親等の祖父母が相続人になります。
直系尊属は代襲相続と無関係です。
②父母と祖父母は同時に相続放棄ができない
相続放棄をする場合、多額の借金から逃れたいという動機が多いものです。
父母が借金から逃れたいと思う場合、祖父母も借金から逃れたいと思うでしょう。
父母と祖父母が相続放棄を希望する場合、同時に相続放棄の申立てをすることはできません。
父母の相続放棄が認められていないうちは、祖父母は相続人ではないからです。
まだ、相続人でないから家庭裁判所は相続放棄の申立てを受け付けてくれません。
③祖父母の相続放棄3か月のスタートは知ってから
被相続人の莫大な借金から逃れる場合、相続人は順次相続放棄をすることになります。
多くの場合、子ども全員が相続放棄をし、父母が相続放棄をした後、祖父母が相続放棄をすることになるでしょう。
家庭裁判所に対して相続放棄の申立てをしてから、相続放棄申述受理通知書が届くまでに1か月ほどかかります。
相続放棄ができる期間は、3か月と聞くとヤキモキするかもしれません。
相続放棄ができる期間のスタートは、被相続人の死亡からではありません。
相続があったことを知ってからです。
「相続があったことを知ってから」とは、被相続人が死亡して相続が発生し、その人が相続人であることを知って、かつ、相続財産を相続することを知ってから、と考えられています。
つまり、被相続人が死亡してから3か月以内ではなく、自分が相続することを知ってから3か月以内です。
被相続人の父母が相続放棄をして相続放棄が認められるまで相続人ではありません。
被相続人の父母が相続放棄を認められたと知ったときから、3か月がスタートします。
父母が相続放棄を認められたと知ったときから、3か月以内に家庭裁判所に相続放棄の申立てをすれば問題ありません。
5相続放棄を司法書士に依頼するメリット
相続放棄は、プラスの財産もマイナスの財産も引き継ぎませんという裁判所に対する申立てです。
相続人らとのお話合いで、プラスの財産を相続しませんと申し入れをすることではありません。
つまり、家庭裁判所で認められないとマイナスの財産を引き継がなくて済むというメリットは受けられないのです。
実は、相続放棄はその相続でチャンスは実質的には1回限りです。
家庭裁判所に認められない場合、即時抗告という手続を取ることはできますが、高等裁判所の手続で、2週間以内に申立てが必要になります。
家庭裁判所で認めてもらえなかった場合、即時抗告で相続放棄を認めてもらえるのは、ごく例外的な場合に限られます
一挙にハードルが上がると言ってよいでしょう。
相続放棄は慎重に判断する必要がありますが、いろいろな誤解から利用をためらう人が多いのも事実です。
利用をためらっていると3か月はあっという間です。
相続が発生すると、家族は親戚や知人へ連絡などで悲しみに浸る暇もないくらい忙しくなります。
3か月以内に必要書類を揃えて手続をするのは想像以上にハードルが高いものです。
相続放棄を考えている方はすみやかに司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。
数次相続があった後に相続放棄
1数次相続とは
①数次相続とは
相続が発生したら、相続財産は相続人全員の共有財産になります。
共有財産になった相続財産は、相続人全員で話し合いによる分け方の合意が不可欠です。
相続財産の分け方について、話し合いがまとまる前に、相続人が死亡して新たな相続が発生することがあります。
最初の相続の手続中に相続人が死亡して、さらに相続が発生した状態を数次相続と言います。
数次相続は、どこまででも続きます。
どこまで続くかについて、法律上の制限はありません。
最初の相続を一次相続、相続人が死亡した相続を二次相続と言います。
二次相続の相続人が死亡すると、三次相続、さらに、四次相続、五次相続という場合もあります。
相続人が死亡して新たな相続が発生することを、まとめて、数次相続と言います。
②数次相続と代襲相続のちがい
数次相続も代襲相続も相続が複雑になる代表例です。
相続人になるはずだった人が被相続人より先に死亡したため、相続人になるはずだった人の子どもや子どもの子どもが相続することがあります。
これを代襲相続と言います。
数次相続は、相続が発生した「後」に、相続人が死亡した場合です。
代襲相続は、相続が発生する「前」に、相続人が死亡した場合です。
数次相続では、死亡した相続人の相続人が最初の相続の遺産分割協議に参加します。
代襲相続では、死亡した相続人の直系卑属が最初の相続の遺産分割協議に参加します。
数次相続と代襲相続では、遺産分割協議に参加する人が異なります。
2相続放棄は被相続人ごとに手続が必要
相続が発生したら、原則として、被相続人のプラスの財産もマイナスの財産も相続人が受け継ぎます。
被相続人のプラスの財産もマイナスの財産も受け継がないことを相続の放棄といいます。
相続放棄をすると、プラスの財産を引き継がなくなりますが、マイナスの財産も引き継ぐことがなくなります。
相続の放棄は被相続人ごとに判断できますから、例えば、父について相続放棄をするが、母について単純承認するでも差し支えありません。
相続の放棄は相続人ごとに判断しますから、例えば、父の相続人ついて長男は相続放棄するが、長女は単純承認するでも差し支えありません。
3最初の相続で相続放棄ができないが次の相続で相続放棄できるケース
相続放棄ができるのは、相続人だけです。
相続人でない人は、相続放棄はできません。
例えば、被相続人に子どもがいない場合、親などの直系尊属が相続人になります。
被相続人に兄弟姉妹がいる場合であっても、被相続人の兄弟姉妹は相続人になりません。
被相続人の兄弟姉妹は、相続放棄はできません。
相続人でないから、相続放棄をする必要がないからです。
最初の相続で親などの直系尊属が相続人になる場合、最初の相続の被相続人の兄弟姉妹は相続人になりません。
この後、相続人になった親などの直系尊属に相続が発生する場合があります。
最初の相続の被相続人の兄弟姉妹は、相続人になった親などの直系尊属から見ると子どもにあたります。
親などの直系尊属に相続が発生した場合、最初の相続の被相続人の兄弟姉妹は相続人になります。
最初の相続の被相続人に大きなマイナスの財産があったことが判明することがあります。
大きなマイナスの財産から逃れたい場合、相続放棄をしたいと考えます。
最初の相続の被相続人の借金だから、最初の相続の被相続人について相続放棄をしたいと考えるかもしれません。
最初の相続の被相続人について、相続放棄をすることはできません。
最初の相続で相続人になったのは、親などの直系尊属だからです。
最初の相続で相続人でなかったのだから、相続放棄をすることはできないのです。
大きなマイナスの財産から逃れたい場合、次の相続で相続放棄をします。
最初の相続の被相続人の兄弟姉妹は、次の相続で相続人になります。
親などの直系尊属に相続が発生した場合、最初の相続の被相続人の兄弟姉妹は相続放棄をすることができます。
親などの直系尊属が相続した大きなマイナスの財産から逃れることができます。
4最初の相続で相続放棄も承認もしないまま相続人が死亡したケース
相続放棄は、家庭裁判所に対して手続が必要です。
この届出は相続があったことを知ってから、原則として、3か月以内にする必要があります。
最初の相続があったことを知ってから3か月以内に、相続人が死亡することがあります。
死亡した相続人は、本来、相続放棄をすることも相続を承認することもできたはずです。
最初の相続について、相続放棄をするか相続を承認するか決める権利は、死亡した相続人の相続人に相続されます。
死亡した相続人の相続人は、最初の相続について相続放棄をするか相続を承認するか決めることができます。
死亡した相続人の相続人は、死亡した相続人の相続について相続放棄をするか相続を承認するか決めることができます。
最初の相続で相続放棄も承認もしないまま相続人が死亡したケースでは、死亡した相続人の相続人は次の選択ができます。
①最初の相続を承認し、次の相続を承認する
②最初の相続を放棄し、次の相続を承認する
③最初の相続を放棄し、次の相続を放棄する
最初の相続を承認し、次の相続を放棄することは、できません。
最初の相続を承認した後で、次の相続を放棄するのであれば、承認したことが無意味になります。
次の相続を放棄した後は、最初の相続について相続放棄をするか相続を承認するか決める権利を放棄しているはずです。
最初の相続を放棄し、次の相続を承認することは、できます。
最初の相続の相続財産にマイナスの財産があるが、次の相続の相続財産にプラスの財産がある場合、有効だからです。
最初の相続のマイナスの財産を受け継がずに、次の相続のプラスの財産を受け継ぐことができます。
5スタートは相続があったことを知ってから
相続が発生した場合、家族や親戚には真っ先に知らせるでしょう。
家族の状況によっては、長期間音信不通であることがあります。
ときには家族が知らない相続人が現れることがあります。
家族が相続人の存在を知らない場合、すぐに知らせることはできません。
相続が発生してから、長期間経過した後、相続人であることを知ることがあります。
相続放棄は、相続があったことを知ってから3か月以内に手続をする必要があります。
「相続があったことを知ってから」とは、被相続人が死亡して相続が発生し、その人が相続人であることを知って、かつ、相続財産を相続することを知ってから、と考えられています。
つまり、被相続人が死亡してから3か月以内ではなく、相続財産を相続することを知ってから3か月以内です。
最初の相続における相続人が相続放棄をするか相続を承認するか決めないまま死亡した場合、あらためて3か月がスタートします。
死亡した相続人の相続人は、死亡した相続人について相続の発生を知ってから、3か月以内に相続放棄の手続をすることができます。
死亡した相続人が最初の相続の発生について知ってから3か月ぎりぎりで死亡した場合、死亡した相続人の相続人に酷になるからです。
6相続放棄を司法書士に依頼するメリット
実は、相続放棄はその相続でチャンスは1回限りです。
家庭裁判所に認められない場合、即時抗告という手続を取ることはできますが、高等裁判所の手続で、2週間以内に申立てが必要になります。
家庭裁判所で認めてもらえなかった場合、即時抗告で相続放棄を認めてもらえるのは、ごく例外的な場合に限られます。
一挙にハードルが上がると言ってよいでしょう。
相続が発生してから3か月以内に届出ができなかったのは止むを得なかったと家庭裁判所に納得してもらって、はじめて、家庭裁判所は相続放棄を認めてくれます。
通常は家庭裁判所に対して、上申書や事情説明書という書類を添えて、説得することになります。
家庭裁判所が知りたいことを無視した作文やダラダラとした作文では認めてもらうことは難しいでしょう。
司法書士であれば、家庭裁判所に認めてもらえるポイントを承知していますから、認めてもらいやすい書類を作成することができます。
さらに、通常の相続放棄と同様に戸籍や住民票が必要になります。
お仕事や家事、通院などでお忙しい人には平日の昼間に役所にお出かけになって準備するのは負担が大きいものです。
戸籍や住民票は郵便による取り寄せもできますが、書類の不備などによる問い合わせはやはり役所の業務時間中の対応が必要になりますから、やはり負担は軽いとは言えません。
このような戸籍や住民票の取り寄せも司法書士は代行します。
相続放棄を考えている方は、すみやかに司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。
被相続人の住所本籍不明でも相続放棄
1相続放棄とは
相続が発生したら、原則として、被相続人のプラスの財産もマイナスの財産も相続人が受け継ぎます。
被相続人のプラスの財産もマイナスの財産も受け継がないことを相続の放棄といいます。
相続放棄をすると、プラスの財産を引き継がなくなりますが、マイナスの財産も引き継ぐことがなくなります。
相続の放棄は被相続人ごとに判断できますから、例えば、父について相続放棄をするが、母について単純承認するでも差し支えありません。
相続の放棄は相続人ごとに判断しますから、例えば、父の相続人ついて長男は相続放棄するが、長女は単純承認するでも差し支えありません。
2相続放棄は被相続人の最後の住所地の家庭裁判所で手続
家庭裁判所に対して、必要な書類をを添えて相続放棄をしたい旨の届出をします。
届出をする先の家庭裁判所は、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です。
家庭裁判所の管轄は裁判所のホームページで調べることができます。
相続放棄をしたい旨の届出に添える書類は裁判所のホームページに詳しく書いてあります。
①被相続人の戸籍謄本
②被相続人の除票
③相続放棄する人の戸籍謄本
④収入印紙
⑤裁判所が手続で使う郵便切手
基本的には①~⑤の書類を添えて届出をすれば充分ですが、場合に応じてこの他のものが必要になることもあります。
3被相続人の最後の住所は除票を見れば確認できる
被相続人と連絡を取り合っていた場合、相続が発生した後の早い時期に相続手続をすることができます。
生前に連絡をとりあっていなかった場合、相続が発生した後、長期間経過してから相続人であることを知ることがあります。
具体的には、父母が離婚した後に一度も会っていない親や行方不明になっていた叔父や伯母などです。
相続放棄をしたい場合、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に対して手続をします。
通常は、被相続人の除票を取得すれば最後の住所地が確認できます。
被相続人の戸籍の附票でも確認することができます。
音信不通であった場合、被相続人に関する情報が全く分からないかもしれません。
被相続人に関する情報が全く分からない場合、被相続人の最後の住所地を探さなければなりません。
被相続人に関する情報が全く分からない場合、まず、自分の戸籍謄本を取得します。
戸籍謄本は本籍地のある役所に請求します。
自分の本籍地が分からない場合、本籍地の記載のある住民票を取得すれば判明します。
自分の戸籍謄本を見て、被相続人の戸籍までたどっていきます。
死亡時の戸籍までたどり着いた場合、戸籍の附票を請求すると死亡時の住所が判明します。
4相続放棄3か月のスタートは「知ってから」
相続放棄は、原則として、相続があったことを知ってから3か月以内に届出をする必要があります。
相続があったことを知ってからとは、必ずしも、被相続人の死亡してからではありません。
被相続人が死亡した後3か月以上経過してから、相続放棄の届出をして、認められることもあります。
相続放棄ができる3か月以内のスタートは、相続があったことを知ってからだからです。
「相続があったことを知ってから」とは、被相続人が死亡して相続が発生し、その人が相続人であることを知って、かつ、相続財産を相続することを知ってから、と考えられています。
相続があったことを知らなかった場合、相続放棄ができる3か月がスタートしていません。
このポイントは、相続が発生してから3か月以内に届出ができなかったのは止むを得なかったと家庭裁判所に納得してもらうことです。
3か月届出ができなかったのは仕方なかったと家庭裁判所が納得できる理由があるときだけは、家庭裁判所も相続放棄を認めてくれるのです。
債権者や市役所などから手紙が来て相続があったことを知った場合、この通知は大切です。
この手紙を見て相続があったことを知ったという証拠になるからです。
5附票や住民票は保存期間経過で廃棄される
附票や住民票は該当の役所に請求すれば取得することができます。
附票や住民票は永年保管ではありません。
今でこそ保存期間は150年ですが、令和元年までは5年でした。
役所は保存期間を過ぎた書類を順に廃棄します。
必要な書類が廃棄されていると取得できなくなってしまうおそれがあります。
6死亡届の記載事項証明書で確認することができる
人が亡くなった場合、役所に死亡届を提出します。
死亡届の写しが、死亡届の記載事項証明書です。
死亡届には、死亡者の氏名、本籍地の他に住所を記載します。
死亡届を確認したら、被相続人の最後の住所地を確認することができます。
死亡届の提出先になる役所は、次のとおりです。
①死亡者の死亡地
②死亡者の本籍地
③届出人の住所地
提出された死亡届は、一定期間役所で保管された後、法務局に送られます。
保管する法務局は、死亡者の本籍地を管轄する法務局です。
死亡届は、原則として、非公開です。
利害関係がある人で、かつ、特別な事由がある場合のみ、死亡届記載事項証明書を請求することができます。
死亡届記載事項証明書を請求することができる人は、次の人です。
①配偶者
②6親等内の血族
③3親等内の姻族
上記①~③の人であって、かつ、特別な事由がある人が死亡届記載事項証明書を請求することができます。
法務局は、市区町村役場から送付を受けた年度の翌年から27年間保管しています。
死亡届が保管されている市区町村役場か本籍地を管轄する法務局へ請求する必要があります。
附票や住民票が廃棄されてしまった後でも、死亡届が法務局に保管されている可能性があります。
7附票に最後の住所地が記載していないケースがある
死亡時に住民票がない人がいます。
住民票がない人について戸籍の附票を取得した場合、死亡時の住所は記載されていません。
長期間に渡って行方不明の場合、役所が職権で住民票を消除するからです。
役所が住民票を消除した後、帰来した旨の届出をしないまま死亡した場合、死亡時の住所がないケースになります。
不動産を保有していた場合、登記簿謄本を取得すると住所の記載があります。
これらの情報を入手して、家庭裁判所に説明して管轄を確認しましょう。
最期の住所地について手がかりになる資料が全くない場合、東京千代田区として扱われます。
東京家庭裁判所が管轄します。
8相続放棄を司法書士に依頼するメリット
実は、相続放棄はその相続でチャンスは1回限りです。
家庭裁判所に認められない場合、即時抗告という手続を取ることはできますが、高等裁判所の手続で、2週間以内に申立てが必要になります。
家庭裁判所で認めてもらえなかった場合、即時抗告で相続放棄を認めてもらえるのは、ごく例外的な場合に限られます。
一挙にハードルが上がると言ってよいでしょう。
相続が発生してから3か月以内に届出ができなかったのは止むを得なかったと家庭裁判所に納得してもらって、はじめて、家庭裁判所は相続放棄を認めてくれます。
通常は家庭裁判所に対して、上申書や事情説明書という書類を添えて、説得することになります。家庭裁判所が知りたいことを無視した作文やダラダラとした作文では認めてもらうことは難しいでしょう。
司法書士であれば、家庭裁判所に認めてもらえるポイントを承知していますから、認めてもらえやすい書類を作成することができます。
さらに、通常の相続放棄と同様に戸籍や住民票が必要になります。
お仕事や家事、通院などでお忙しい人には平日の昼間に役所にお出かけになって準備するのは負担が大きいものです。
戸籍や住民票は郵便による取り寄せもできますが、書類の不備などによる問い合わせはやはり役所の業務時間中の対応が必要になりますから、やはり負担は軽いとは言えません。
このような戸籍や住民票の取り寄せも司法書士は代行します。
3か月の期限が差し迫っている方や期限が過ぎてしまっている方は、すみやかに司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。
相続放棄照会書と回答書の書き方
1相続放棄とは
相続が発生したら、原則として、被相続人のプラスの遺産もマイナスの遺産も相続人が受け継ぎます。
被相続人のプラスの遺産もマイナスの遺産も受け継がないことを相続の放棄といいます。
相続放棄をすると、プラスの遺産を引き継がなくなりますが、マイナスの遺産も引き継ぐことがなくなります。
家庭裁判所に対して、必要な書類をを添えて相続放棄をしたい旨の届出をします。
相続人間で、一部の相続人がプラスの遺産もマイナスの遺産も受け継ぐから、他の相続人は何も引き継がないことを合意することがあります。
このような合意のことも、一般的には、相続放棄ということがあります。
このような合意は相続放棄ではありません。
このような合意をしても、相続放棄の効果は得られません。
相続放棄は、家庭裁判所に対して手続をして認めてもらうことです。
一部の自称専門家は、家庭裁判所に手続するのは煩雑だから、相続人間の合意で済ませばよいと言っています。
「相続人〇〇がプラスの遺産もマイナスの遺産も受け継ぐ。他の相続人は、一切の遺産を引き継がない。」
遺産分割協議書にこのように書いてあって、相続人全員の実印を押せば、相続放棄の効果が得られると勘違いしそうです。
知識がない人は自称専門家から自信満々に言われたら、そのまま信じてしまうでしょう。
相続放棄は家庭裁判所に対してする手続です。
相続人間の合意は、相続放棄ではありません。
2相続放棄の申立てをすると相続放棄照会書が届く
①相続放棄照会書は家庭裁判所からの意思確認
家庭裁判所に対して相続放棄の申立てをすると、相続放棄照会書が届きます。
相続放棄照会書とは、家庭裁判所から届く相続放棄についての意思確認です。
相続放棄は、影響の大きい手続なので間違いがないように慎重に確認します。
万が一、不適切な回答をすると相続放棄を認めてもらえなくなるかもしれません。
相続放棄照会書は家庭裁判所によって名前が違うことがあります。
②相続放棄照会書が届くのは2週間後くらい後
相続放棄照会書が届いた場合は、期限までに回答をしましょう。
相続放棄照会書が届かないこともあります。
届かない場合は、気にすることはありません。
相続放棄の申立てを出してから2週間程度経過しても何も届かなければ、家庭裁判所に確認するといいでしょう。
③相続放棄照会書の内容とは
家庭裁判所によって表現が違うことがありますが、相続放棄照会書の内容はおおむね、次のとおりです。
被相続人の死亡をいつ知りましたか。
被相続人の死亡をどのような経緯で知りましたか。
遺産の全部または一部を使ったり、処分したり、隠したりしましたか。
相続放棄をした理由は何ですか。
家庭裁判所に相続放棄の申立書が来ていますが、あなたの意思ですか。
だれかに脅されて相続放棄を届け出たものですか。
相続放棄の申立書に署名押印をしたのはだれですか。
相続放棄の意思は変わりませんか。
相続放棄をするとプラスの遺産もマイナスの遺産も相続できないですが、いいですか。
3相続放棄回答書を書くときの注意点
相続放棄の届出の内容と食い違いが出ないように、書類を提出する前に控えをとっておくといいでしょう。
質問内容は、難しいものではありません。
事実をありのままに書けばいいでしょう。
①死亡後3か月以上経過している場合の注意点
被相続人が死亡してから3か月以上経過してから申立てをした場合、いつ死亡の事実を知ったかが重要なポイントになります。
相続放棄の申立ての期限は、原則として、相続があったことを知ってから3か月以内だからです。
「相続があったことを知ってから」とは、被相続人が死亡して相続が発生し、その人が相続人であることを知って、かつ、相続財産を相続することを知ってから、と考えられています。
相続があったことを知ってからですから、知らなかったのであれば3か月がスタートしません。
相続があったことを知ってから3か月以内であれば、相続放棄ができます。
家庭裁判所は、相続があったことを知ったのがいつなのか分かりません。
何らかの書類が届いたことによって、自己のために相続があったことを知ったのであれば、この書類は重要な証拠になります。
回答書に添付して提出するといいでしょう。
電話連絡であれば電話連絡で知ったと書けば差し支えありません。
②相続財産を使った場合の注意点
相続財産に手を付けてしまっている場合、単純承認になります。
単純承認になると、相続放棄は認められません。
家庭裁判所が気付かずに、相続放棄を認めてしまっても、裁判で相続放棄が無効にされてしまいます。
相続財産を使った場合でも、単純承認にあたることも、単純処分にあたらないこともあります。
相続財産である銀行の預貯金を引き出した場合が典型的です。
単に、引き出しただけであれば単純承認にならないことがほとんどでしょう。
自分のものにして使ってしまうと、単純処分にあたると判断されるでしょう。
引き出して、お葬式の費用に使った場合、状況によっては単純承認になると判断されることも、単純承認にあたらないと判断されることもあります。
重要なポイントは、正直に書くことです。
相続財産を使ってしまった場合、後から相続放棄の有効無効を争って裁判になるかもしれません。
家庭裁判所に提出する書類は、すべて記録として残ります。
正直に書いてない場合、裁判で不利になるでしょう。
お葬式の費用を払ったのであれば、回答書に領収書を添えて提出します。
③相続放棄をする理由は何でもよい
相続放棄をする理由の大部分は、被相続人の債務が多いからでしょう。
相続放棄をする理由は、何でも構いません。
「裕福で生活に困っていないから、他の人に相続させたい。」でも「他の相続人と絶縁しているから相続で関わりになりたくない」でも差し支えありません。
相続放棄をする理由は、相続放棄が認められるかとは関係がないからです。
④回答書の押印は相続放棄の申立ての印章と同一印で
相続放棄回答書は署名押印をする必要があります。
相続放棄回答書の押印で使う印章は、相続放棄の申立てに使った印章と同一印で押印します。
同一印で押印をすることで、相続放棄の届出をした人と同一人物が回答をしたと確認ができます。
相続放棄の届出のとき、どの印章を使ったのか分かるように目印を付けておきましょう。
どの印章を使ったのか分からなくなった場合、家庭裁判所に連絡して相談しましょう。
裁判所によっては、印影の大きさや形を教えてくれることがあります。
心当たりのある印章で並べて押してくださいと指示されることもあります。
4相続放棄が認められたら相続放棄申述受理通知書が届く
家庭裁判所で相続放棄が認められたら、相続放棄申述受理通知書が届きます。
家庭裁判所は、相続放棄をした人に相続放棄申述受理通知書を送るだけです。
家庭裁判所から債権者などに自主的に連絡しません。
通常、債権者は相続放棄をしたことも相続放棄が認められたことも知りません。
債権者から見ると、知らないうちに相続放棄をして、知らないうちに相続放棄が認められたとなります。
何も知らないから、借金を返してもらおうと考えて、相続人に催促してきます。
催促されたら家庭裁判所から届いた相続放棄申述受理通知書を見せれば、分かってもらえます。
多くの場合、相続放棄申述受理通知書のコピーを渡すだけで充分でしょう。
相続放棄申述受理証明書は、必要と言われてから取り寄せればいいでしょう。
相続放棄申述受理通知書は相続放棄をした人に送るだけで、家庭裁判所は他の相続人に対しても自発的に連絡しません。
被相続人の子ども全員が相続放棄をした場合、子どもはいないものと扱われます。
子どもがいない場合、親などの直系尊属が相続人になります。
通常、子どもがいる場合、子どもが相続人になりますから、親などの直系尊属は自分が相続人にならないと思っているでしょう。
被相続人が莫大な借金を残している場合、子ども全員が相続放棄をしたのなら、親などの直系尊属が借金を相続することになります。
親などの直系尊属に借金の催促が来たら、びっくりして親族間のトラブルになりかねません。
子どもが相続放棄をした場合、他の相続人に連絡する義務はありません。
莫大な借金があることや相続放棄をしたことを連絡してあげると親切でしょう。
次順位の相続人も相続放棄をする場合、準備をしておいてもらいましょう。
5相続放棄を司法書士に依頼するメリット
実は、相続放棄はその相続でチャンスは1回限りです。
家庭裁判所に認められない場合、即時抗告という手続を取ることはできますが、高等裁判所の手続で、2週間以内に申立てが必要になります。
家庭裁判所で認めてもらえなかった場合、即時抗告で相続放棄を認めてもらえるのは、ごく例外的な場合に限られます。
一挙にハードルが上がると言ってよいでしょう。
相続放棄は、家庭裁判所に申立てをすることです。
届出をすれば終わりでなく、家庭裁判所から来る相続放棄照会書にも適切に回答しなければなりません。
特に、相続が発生してから3か月以内に届出ができなかった場合などは、止むを得ない事情があったことを家庭裁判所に納得してもらう必要があります。
相続放棄の届出をするときに、上申書や事情説明書という書類を添えて、家庭裁判所を説得します。
同時に、相続放棄回答書でも止むを得ない事情があったことを説明し、納得してもらいます。
納得できる事情を適切に示すことで、家庭裁判所は相続放棄を認めてくれます。
家庭裁判所が知りたいことを無視した作文やダラダラとした作文では認めてもらうことは難しいでしょう。
司法書士であれば、家庭裁判所に認めてもらえるポイントを承知していますから、認めてもらいやすい書類を作成することができます。
さらに、通常の相続放棄と同様に戸籍や住民票が必要になります。
お仕事や家事、通院などでお忙しい人には平日の昼間に役所にお出かけになって準備するのは負担が大きいものです。
戸籍や住民票は郵便による取り寄せもできますが、書類の不備などによる問い合わせはやはり役所の業務時間中の対応が必要になりますから、やはり負担は軽いとは言えません。
このような戸籍や住民票の取り寄せも司法書士は代行します。
相続放棄を考えている方は、すみやかに司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。
生前贈与を受けても相続放棄
1生前贈与を受けていても相続放棄ができる
相続が発生したら、原則として、被相続人のプラスの財産もマイナスの財産も相続人が受け継ぎます。
被相続人のプラスの財産もマイナスの財産も受け継がないことを相続の放棄といいます。
被相続人に多額の借金がある場合、相続放棄を考えるといいでしょう。
相続放棄は、家庭裁判所に対して、必要な書類をを添えて相続放棄をしたい旨の届出をします。
この届出は相続があったことを知ってから、原則として、3か月以内にする必要があります。
相続があったことを知ってから、なので、被相続人の生前に相続放棄をすることはできません。
被相続人は生前に贈与することができます。
贈与は財産を譲ってあげる人と譲ってもらう人の契約です。
贈与契約は書面を作成しても口頭でも有効です。
家庭裁判所に届出が必要になることもありません。
相続放棄と生前贈与はまったく関係ない制度です。
原則として、相続放棄をしたからと言って生前贈与に影響を与えることはありません。
生前贈与で財産を受け取って後で、相続放棄をすることができます。
2詐害行為とは
お金を借りた人は、借りたお金を返さなければなりません。
借りたお金を返さなければならないのに、自分の財産を不当に減少させて、結果、お金を返せなくなることがあります。
自分の財産を不当に減少させたら、お金を貸した人はお金を返してもらえなくなる結果になります。
お金を貸した人が困ることを知っているのに、自分の財産を不当に減少させることを詐害行為と言います。
お金を返してもらうため、お金を貸した人は詐害行為を取り消すことができます。
詐害行為として取り消すことができるのは、財産行為のみです。
お金を返さなければならないのに、自分の財産の大部分を贈与した場合、お金を返せなくなるでしょう。
自分の財産の大部分を贈与した場合、お金を返せなくなって、お金を貸した人が困るのは知っていると言えます。
このような贈与は、合法であっても、詐害行為にあたります。
お金を貸した人は、詐害行為を取り消すことができます。
3生前贈与は詐害行為で取り消すことができる
原則として、生前贈与を受けた場合であっても、相続放棄をすることができます。
被相続人の財産がわずかなプラスの財産と莫大なマイナスの財産ということがあります。
この状況で、わずかなプラスの財産を相続人に生前贈与することがあります。
わずかなプラスの財産と莫大なマイナスの財産の場合、贈与契約はできないというルールはありません。
財産を譲ってあげる人と譲ってもらう人の契約で贈与をすることができます。
おそらく、被相続人と相続人が相談してこのような契約をしたのでしょう。
この後、被相続人が死亡した場合、相続人は相続放棄をすることができます。
原則どおりでは、相続放棄をしているから、相続人は莫大なマイナスの財産を受け継ぐことはありません。
原則どおりでは、遺贈は相続放棄と別物だから、わずかなプラスの財産を受け取ることができるとなってしまいます。
このようなことが許されると、債権者にとってあまりに理不尽です。
債権者は、裁判所に訴えて、理不尽な生前贈与の取り消しを請求することができます。
借りたお金を返さなければならないのに、自分の財産を不当に減少させて、結果、お金を返せなくしているからです。
自分の財産を不当に減少させたら、お金を貸した人はお金を返してもらえなくなる結果になります。
お金を貸した人が困ることを知っているのに、自分の財産を不当に減少させることを詐害行為と言います。
理不尽な遺贈として裁判所に認められれば、詐害行為は取り消すことができます。
適切な遺言書によってされた遺贈であっても、理不尽な遺贈は詐害行為にあたります。
4相続放棄は詐害行為で取消ができない
相続が発生したら、相続財産は相続人全員の共有財産になります。
被相続人の財産は、プラスの財産もマイナスの財産も相続財産です。
被相続人が多額の借金を抱えたまま死亡した場合、お金を貸した人は相続人にお金を返してもらおうとするでしょう。
相続人は被相続人の借金を引き継がないために、相続放棄をすることが考えられます。
お金を貸した人は相続人にお金を返してもらおうと思っていたのに、相続放棄をされたら、請求できなくなって困ります。
お金を貸した人が困るのは知っていると言えるから、相続放棄を詐害行為として取り消したいと思うでしょう。
このような場合、相続放棄を詐害行為として取り消すことはできません。
相続放棄をしても、自己の財産を不当に減らしたわけではありません。
お金を貸す人は、お金を借りた人が生前に自己破産するリスクを検討してお金を貸すか貸さないか決めているはずです。
お金を借りた人が死亡した後、相続人が相続放棄するリスクも検討してお金を貸すか貸さないか決めべきと言えます。
相続放棄は、被相続人の借金から免れるためにある制度です。
お金を貸す人が負うべきリスクを相続人に押し付けると、相続人の人生が破綻します。
相続放棄の制度は、相続人の人生を守るために存在します。
被相続人の借金から免れるために相続放棄をしたのに、相続放棄を取り消せるとなったら、制度の存在意義がなくなります。
そもそも、相続放棄は身分行為であって、財産行為ではありません。
身分行為とは、結婚、離婚、子の認知、養子縁組、養子の離縁といった行為のことです。
身分行為は他人から強制されるものではありません。
被相続人の借金から免れるために相続放棄をしたのに、相続放棄を取り消せるとなったら、事実上、相続放棄はできなくなります。
相続放棄ができないことが、強制されてしまいます。
身分行為は、強制されるものではありません。
相続放棄は詐害行為ではないから、お金を貸した人がとやかく言うことはできないのです。
5生前贈与は遺留分を侵害するおそれがある
被相続人は、原則として、自分の財産をどのように使うかは自由に決めることができます。
とはいえ、財産は被相続人が1人で築いたものではなく、家族の協力があって築くことができたもののはずです。
被相続人の名義になっているからといって、まったく無制約の自由にすると今まで協力してきた家族に酷な結果となることもあります。
このため、被相続人に近い関係の相続人には相続財産に対して最低限の権利が認められています。
相続財産に対して、認められる最低限の権利のことを遺留分と言います。
財産の状況によっては、生前贈与によって他の相続人の遺留分を侵害してしまうことがあります。
遺留分を侵害された相続人は、遺留分額侵害額請求をすることができます。
6生前贈与後に相続放棄をした場合、税金に注意
相続放棄をした相続人は、相続財産を受け取ることはできません。
相続税は相続財産を受け取った場合に課されるものだから、原則として、相続税が課されることはありません。
①相続開始前3年以内の生前贈与は相続税の対象
被相続人の死亡前3年以内に多額の財産を受け取っていた場合、相続税が課されます。
相続開始前3年以内の生前贈与と他の相続人が受け取った相続財産の合計額が、基礎控除を超した場合、相続税の対象になります。
基礎控除を計算する場合は、相続放棄をした人も計算に含めることができます。
②相続時精算課税制度の適用を受けていた場合
相続時精算課税制度とは、子どもや孫に生前贈与する場合、最大2500万円まで贈与税がかからないとする制度です。
贈与税がかからなかった財産は、相続時に相続税評価をして相続税がかかります。
生前贈与を受けた人が相続放棄をしても、相続税がかかります。
相続時精算課税制度を使って生前贈与を受けた財産との相続人が受け取った相続財産の合計額が、基礎控除を超した場合、相続税の対象になります。
相続時精算課税制度の適用を受けるためには、税務署に特別の申請書を提出する必要があります。
税務署は相続税の申告義務があることを当然に把握しています。
相続時精算課税制度の適用を受けて生前贈与を受けた場合、忘れずに相続税の申告の有無を確認しましょう。
そもそも相続税申告が必要な人は、全体の10%未満のわずかな人です。
申告が必要なだけで相続税がかからないケースもたくさんあります。
7相続放棄を司法書士に依頼するメリット
相続放棄はプラスの財産もマイナスの財産も引き継ぎませんという裁判所に対する届出です。
相続人らとのお話合いで、プラスの財産を相続しませんと申し入れをすることではありません。
つまり、家庭裁判所で認められないとマイナスの財産を引き継がなくて済むというメリットは受けられないのです。
相続放棄をする場合、相続問題だけでなく、被相続人や相続人の借金の問題が隠れている場合が多いです。
このような複雑な事情がある場合、相続人だけでなく債権者を巻き込んでトラブルになりがちです。
あいまいな知識では、余計トラブルが大きくなります。
相続放棄を考えている人は、司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。
相続放棄しても通知されない
1相続放棄をしても家庭裁判所は通知しない
被相続人が多額の借金を残して死亡したとき、相続人は相続放棄をするでしょう。
分かっている借入先だけでも相続人が返せる額ではない、あちこちから借りていたので、他からも借りているだろう、借入先を把握し切れないという場合があります。
相続放棄の申立をすると、借入先から何か言われるのではないかと心配する人がたくさんいます。
相続放棄の申立をすると、何かしら不利益を受けるのではないかと心配する人がたくさんいます。
被相続人の借金だけでも大変なのに、自分や家族が将来に渡って困ることがあるのではないかと不安になっている場合です。
家庭裁判所に相続放棄の手続をしても、だれかに知らせる義務はありません。
相続放棄の申立を提出しても、家庭裁判所からだれかに通知されることはありません。
相続放棄が認められた後、家庭裁判所がわざわざ他の人に通知することはありません。
裁判所の掲示板に貼りだすことはありません。
家庭裁判所に相続放棄の申立をしても、通常は、だれにも知られることはないのです。
債権者などの利害関係人は、家庭裁判所に対して相続放棄をしているか照会することができます。
家庭裁判所が通知するのは、わざわざ照会があったときのみです。
2相続放棄をしても債権者に通知されない
相続放棄の手続は、家庭裁判所に対して必要書類を添えて相続放棄の申立てを提出します。
相続放棄の申立てに必要な書類は、次のとおりです。
①被相続人の戸籍謄本
②被相続人の除票
③相続放棄する人の戸籍謄本
この他に、裁判所が使う郵便切手や収入印紙が必要です。
必要書類には、債権者の名簿などはありません。
家庭裁判所は、提出された書類を見て審査をします。
被相続人がだれから借金をしていたか家庭裁判所は分かりません。
提出された書類を見て、必要な書類が揃っているか提出された戸籍や住民票に矛盾したことはないか点検をします。
家庭裁判所が自主的に債権者を調査することはありません。
家庭裁判所は、債権者がだれであるのかについて関心はありません。
ほとんどの場合、気付かないうちに相続放棄の手続をしていて、知らないうちに相続放棄が認められていた、となります。
何も知らないから、債権者は被相続人の借金を相続人に払ってもらいたいと考えて催促をしてきます。
債権者は何も知らないから、催促されたら相続放棄が認められたことを知らせてあげるといいでしょう。
ほとんどの場合、相続放棄申述受理通知書のコピーを渡せば分かってくれます。
3相続放棄をしても次順位の相続人に通知されない
相続が発生したら、親族のうち一定の範囲の人が相続人になります。
だれが相続人になるかについては、民法で決められています。
相続人になる人は次のとおりです。
①配偶者は必ず相続人になる
②被相続人に子どもがいる場合、子ども
③被相続人に子どもがいない場合、親などの直系尊属
④被相続人に子どももいない場合で、かつ、親などの直系尊属が被相続人より先に死亡している場合、兄弟姉妹
子ども全員が相続放棄をした場合、子どもはいないものと扱われます。
子どもがいない場合、次順位の親などの直系尊属が相続人になります。
次順位の親などの直系尊属全員が相続放棄をした場合、親などの直系尊属はいないものと扱われます。
親などの直系尊属がいない場合、兄弟姉妹が相続人になります。
相続放棄の申立てに必要な書類は、説明したとおりです。
提出する戸籍謄本は、被相続人の死亡の事実が分かる戸籍謄本と相続人の戸籍謄本です。
次順位の相続人がだれであるのか分かる戸籍謄本を提出する必要はありません。
だれが次順位の相続人なのか家庭裁判所は分かりません。
提出された書類を見て、必要な書類が揃っているか提出された戸籍や住民票に矛盾したことはないか点検をします。
家庭裁判所が自主的に次順位の相続人を調査することはありません。
家庭裁判所は、次順位の相続人に関心はありません。
ほとんどの場合、気付かないうちに相続放棄の手続をしていて、知らないうちに相続放棄が認められていた、となります。
次順位の相続人に対して、自分が相続放棄をしたことを知らせる義務はありませんが、知らせてあげると親切でしょう。
次順位の相続人に対して、自分が相続放棄をしたことを知らせなくても罰金などのペナルティーはありません。
相続放棄をした人は、被相続人のマイナスの財産を引き継ぎません。
相続放棄をした人に対して、被相続人の借金を返して欲しいと催促することはできません。
債権者は、次順位の相続人が相続したと考えて、借金の催促をします。
債権者から相続人であると知らされると、びっくりするでしょう。
債権者から借金の催促をされて自分が相続人であることを知った場合、相続放棄ができる3か月のスタートは借金の催促がされたときからです。
4相続放棄をしても市区町村役場に通知されない
家庭裁判所に相続放棄を認めてもらったら、家庭裁判所から相続放棄申述受理通知書という書類が届きます。
家庭裁判所は相続放棄を認めた場合でも、自主的に市区町村役場に通知することはありません。
だれが相続放棄をしたか、市区町村役場は知るきっかけがありません。
相続放棄をした場合でも、市区町村役場に届出をするルールもありません。
戸籍や住民票に記載されることはありません。
就職や国家試験などの資格にも影響はありません。
市区町村役場は、相続放棄をしたかどうか全く知ることはないのです。
相続放棄が認められた後になって、被相続人が滞納していた税金などを払ってくださいと督促してくることがあります。
相続放棄しているので、払う必要のない税金です。
市区町村役場は相続放棄をしたことを知らないので、相続人に払ってもらおうと考えて催促します。
相続放棄申述受理通知書を提示して事情を説明すれば督促をやめてくれます。
5相続放棄をしても税務署に通知されない
家庭裁判所に相続放棄を認めてもらったら、家庭裁判所から相続放棄申述受理通知書という書類が送られてきます。
家庭裁判所は相続放棄を認めた場合でも、自主的に税務署に連絡することはありません。
だれが相続放棄をしたか、税務署は知るきっかけがありません。
相続放棄をしたことを税務署に申告するルールもありません。
所得税は、毎年1月1日から12月31日までの所得を計算して、翌年3月15日までに申告と納税をします。
この申告を、確定申告と言います。
1年の途中で死亡した場合、1月1日から死亡した日までの所得を計算して、申告と納税をします。
通常の確定申告と死亡した人の申告を区別するため、準確定申告と言います。
準確定申告は、死亡した被相続人本人に代わって、相続人と包括受遺者が申告と納税をします。
相続放棄をした場合、相続人ではないものと扱われます。
相続人ではないから、準確定申告をする義務はありません。
相続放棄をしたのに準確定申告をした場合、相続放棄が無効になります。
準確定申告をしていない場合、税務署から準確定申告をするように通知が来る場合があります。
家庭裁判所が相続放棄を認めた場合、役所や税務署などへ連絡をしません。
税務署は、相続放棄をして相続人でなくなったことを知りません。
相続人でなくなったことを知らないから、相続人と誤解して準確定申告をしてもらおうと考えています。
税務署から通知が来た場合、あわてて準確定申告をする必要はありません。
相続放棄をしたから相続人でなくなったことを連絡するだけでいいでしょう。
6相続放棄をしてもブラックリストに通知されない
相続放棄は、信用情報とは関係がありません。
一般に、信用情報に事故記録が記載されると、ローンが組めなくなります。
相続放棄をしても、ブラックリストに載ることはありません。
相続放棄をする人の中には、裕福で生活に困っていないから相続放棄をしたいという人もいます。
7相続放棄を司法書士に依頼するメリット
相続放棄はプラスの財産もマイナスの財産も引き継ぎませんという裁判所に対する届出です。
相続人らとのお話合いで、プラスの財産を相続しませんと申し入れをすることではありません。
つまり、家庭裁判所で認められないとマイナスの財産を引き継がなくて済むというメリットは受けられないのです。
実は、相続放棄はその相続でチャンスは実質的には1回限りです。
家庭裁判所に認められない場合、即時抗告という手続を取ることはできますが、高等裁判所の手続で、2週間以内に申立てが必要になります。
家庭裁判所で認めてもらえなかった場合、即時抗告で相続放棄を認めてもらえるのは、ごく例外的な場合に限られます
一挙にハードルが上がると言ってよいでしょう。
相続放棄は慎重に判断する必要がありますが、いろいろな誤解から利用をためらう人が多いのも事実です。
利用をためらっていると3か月はあっという間です。
相続が発生すると、家族は親戚や知人へ連絡などで悲しみに浸る暇もないくらい忙しくなります。
3か月以内に必要書類を揃えて手続をするのは想像以上にハードルが高いものです。
相続放棄を考えている方はすみやかに司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。
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