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税金を滞納したまま死亡したときの相続
1滞納者が死亡しても支払免除にならない
①プラスの財産とマイナスの財産を相続する
相続が発生したら、被相続人の財産は相続人が相続します。
相続人が相続する財産が相続財産です。
被相続人の財産には、さまざまな種類の財産があるでしょう。
相続財産というと、プラスの財産だけをイメージしがちです。
例えば、不動産、預金、株式や投資信託などの有価証券、現金などです。
実際は、プラスの財産とマイナスの財産の両方が相続財産です。
マイナスの財産とは、借金やローンなどです。
相続人は、プラスの財産とマイナスの財産の両方を相続します。
②滞納している税金は相続人に支払義務
被相続人が税金を滞納したまま、死亡することがあります。
滞納している税金の支払義務は、相続財産です。
相続人は、被相続人が滞納した税金を相続します。
税金を滞納したまま滞納者が死亡しても、支払免除にはなりません。
滞納した税金は、マイナスの財産と言えます。
相続人は、プラスの財産とマイナスの財産の両方を相続します。
被相続人が滞納した税金は、相続人に支払義務があります。
③相続する税金の典型例
滞納する税金の典型例は、次のとおりです。
(1)住民税
(2)国民健康保険税
(3)固定資産税・都市計画税
(4)所得税
税金の滞納があるのか分からない場合、税務署や役所の税務課に確認することができます。
④納税義務承継通知書が届く
税金を滞納したまま死亡した場合、課税権者は相続人を調査することができます。
課税権者とは、税務署や市区町村など税金を徴収する権限がある公的機関のことです。
課税権者は、市区町村から滞納者の戸籍謄本を取り寄せて相続人を調査します。
相続人が判明したら、納税義務承継通知書を送付します。
納税義務承継通知書とは、納税義務が通知書の受取人に承継されたことのお知らせです。
納税通知書には、次の項目が書かれています。
(1)納税義務が継承された旨
(2)税金の滞納額
(3)納税義務の割合
(4)請求期限
さまざまな家族の事情から、被相続人と疎遠になっていることがあるでしょう。
納税義務承継通知書が届くことで、自分が相続人であることを知るかもしれません。
税金を滞納したまま死亡した場合、納税義務承継通知書が届きます。
2遺産分割協議は内部的取り決め
①滞納している税金を相続する人を決めることができる
相続が発生したら、被相続人の財産は相続人が相続します。
相続財産は、相続人全員の共有財産です。
相続財産の分け方は、相続人全員の合意で決定します。
相続財産の分け方を決めるため相続人全員でする話し合いを遺産分割協議と言います。
被相続人が税金を滞納していた場合、滞納していた税金は相続財産です。
滞納していた税金をだれが相続するのか、相続人全員で話し合いをすることができます。
相続人全員で合意ができたら、書面に取りまとめます。
相続人全員の合意内容を取りまとめた書面を遺産分割協議書と言います。
遺産分割協議書の内容に問題がないか相続人全員に確認してもらいます。
問題がなければ、相続人全員が記名し実印で押印します。
遺産分割協議書の押印が実印によることを証明するため、印鑑証明書を添付します。
遺産分割協議で滞納している税金を相続する人を決めることができます。
②相続する人を決めても税金の支払義務がある
相続財産の分け方は、相続人全員の合意で決定します。
相続人全員の合意で、滞納していた税金を相続する人を決めることができます。
滞納していた税金を相続する人を決めても、相続人全員に税金の支払義務があります。
相続人全員の合意は、相続人同士の内部的合意事項だからです。
遺産分割協議書に記名し実印で押印しても、相続人以外の人には何の効力もありません。
相続人間のトラブルを防止するために、遺産分割協議書を作成することに意味があります。
遺産分割協議で相続する人を決めても、相続人全員に税金の支払義務があります。
③相続人全員に税金の支払義務がある理由
仮に、相続人に税金の支払義務がないとすると不都合な結果になります。
相続人には、さまざまな経済状況の人がいるでしょう。
資力がある人も資力がない人もいます。
中には債務超過に陥っている相続人がいることがあります。
相続財産の分け方は、相続人全員の合意で決定します。
債務超過の相続人が滞納している税金を相続する合意をするかもしれません。
自分の債務だけで債務超過になっているのに、滞納している税金を負担することになります。
自分の債務と滞納している税金の両方は、払えないでしょう。
債務超過の人は、自己破産することになります。
自己破産したら、滞納している税金は払うことはできません。
他の相続人はプラスの財産を受け取っておきながら、滞納していた税金は払われません。
税金をきちんと払っている納税者から見ると、理不尽な結果となります。
このような理不尽を許さないため、相続人全員に税金の支払義務があります。
④相続人全員が法定相続分で納税
相続人になる人は、法律で決まっています。
相続人が相続する相続分も、法律で決まっています。
各相続人が引き継ぐのは、滞納していた税金の法定相続分のみです。
相続人全員が法定相続分で滞納していた税金を納めます。
3税金の滞納を放置したら
①滞納処分が開始される
税金を納めないまま放置すると、滞納処分が開始されます。
滞納処分とは、納税者の意思に関わらず強制的に税金を取り立てるための手続です。
通常、財産を差押え、差押えた財産を換価し、税金に充当する一連の手続です。
被相続人が税金を滞納していた場合、滞納処分が開始していることがあります。
税金滞納者であった被相続人に滞納処分が開始していた場合、相続人が滞納処分を引き継ぎます。
滞納者が死亡しても、滞納処分の効果が失われるものではないからです。
税金を滞納したまま放置すると、滞納処分が開始されます。
②滞納処分の流れ
滞納処分は、納税者の意思に関わらず強制的に税金を取り立てるための手続です。
滞納処分の基本的な流れは、次のとおりです。
(1)督促状の送付
納期限を過ぎても納付がされない場合、督促状が送付されます。
督促状の送付は、滞納処分の前提の処分です。
納期限が過ぎると、延滞税が課されます。
延滞税だけの滞納も、滞納処分の対象です。
(2)文書や電話で催告
督促状が送付されても納付されない場合、文書や電話で納税催告がされます。
納税担当者と納付交渉で、分割納付や納付猶予が認められることがあります。
多くの場合、納付猶予が認められるのは、災害などの一定の理由が必要です。
(3)財産調査
文書や電話で催告しても納付されない場合、財産調査が行われます。
調査対象は、金融機関や勤務先、取引先などです。
財産調査をするにあたって、滞納者の承諾は不要です。
滞納処分は、納税者の意思に関わらず強制的に税金を取り立てるための手続だからです。
金融機関や勤務先、取引先は、財産調査に協力しなければなりません。
個人情報であることを理由に、協力を拒むことはできません。
(4)財産の差押
財産調査で滞納者の財産が判明したら、差押がされます。
差押えられた財産は、滞納者の意思に関わらず財産処分ができなくなります。
金銭的価値がある財産はすべて、差押の対象になります。
(5)換価処分し配当
差押えた財産は、強制的に換価されます。
例えば、不動産であれば競売し売却代金は滞納している税金に充当されます。
滞納してる税金に充当しても残余があれば、滞納者に配当されます。
③相続人の財産に差押がされる
被相続人が税金を滞納したまま死亡した場合、税金の支払義務は相続人が相続します。
滞納している税金の支払義務は、相続人に引き継がれます。
相続人が滞納した税金を放置していた場合、滞納処分が開始されます。
被相続人が滞納していた税金のために、相続人の財産が差し押さえられるかもしれません。
税金の支払義務は、相続人に引き継がれたからです。
自分の税金はきちんと納めているのに、という言い訳は通用しません。
被相続人から引き継いだ税金についても、支払義務があるからです。
被相続人が滞納した税金を放置したら、相続人の財産が差押えられます。
4相続放棄で滞納している税金を免れる
①3か月以内に家庭裁判所で手続
相続が発生したら、相続人は相続を単純承認するか相続放棄をするか選択することができます。
相続放棄を選択した場合、はじめから相続人でなくなります。
相続放棄を希望する場合、家庭裁判所に対して相続放棄を希望する申立てをします。
相続放棄には、期限があります。
相続があったことを知ってから、3か月以内です。
相続があってから長期間経過した後、納税義務承継通知書が届くことがあります。
納税義務承継通知書が届いたことで、相続があったことを知るかもしれません。
納税義務承継通知書が届いたことで相続があったことを知った場合、納税義務承継通知書は重要です。
相続があったことを知ってから3か月以内であることを証明する証拠だからです。
相続放棄を希望する場合、3か月以内に家庭裁判所に手続をします。
②相続放棄をしたら他の財産は相続できない
相続放棄をしたら、はじめから相続人でなくなります。
マイナスの財産を相続しないし、プラスの財産を相続しません。
被相続人の滞納した借金を相続しないし、他の財産も相続しません。
相続放棄をしたら、他の財産は相続できなくなります。
③相続放棄は撤回できない
相続人は、相続を単純承認するか相続放棄をするか選択することができます。
相続を単純承認するか相続放棄をするか選択した後は、撤回することはできません。
仮に撤回を認めると、相続が混乱するからです。
家庭裁判所で相続放棄が認められた後、撤回することはできません。
④単純承認をすると相続放棄は無効
家庭裁判所で相続放棄が認められても、実際は無効であることがあります。
単純承認をしたのに、相続放棄の申立てをすることがあるからです。
被相続人の財産を処分したり利用したりした場合、単純承認と見なされます。
相続放棄を希望しているのに、相続人が被相続人の財産を処分したり利用したりすることがあります。
相続人が自覚せずに、被相続人の財産を処分したり利用したりすることがあるでしょう。
相続人が自覚していなくても被相続人の財産を処分したり利用したりした場合、単純承認と見なされます。
単純承認をした後に家庭裁判所が相続放棄を認める決定をしても、無効の決定です。
単純承認をすると、相続放棄は無効になります。
⑤相続放棄で次順位相続人に支払義務
相続人になる人は、法律で決められています。
相続人が相続放棄をした場合、はじめから相続人でなくなります。
被相続人に子どもがいる場合、子どもは相続人になります。
子どもが相続放棄をした場合、子どもは相続人でなくなります。
子ども全員が相続放棄をした場合、子どもはいない場合になります。
子どもがいない場合、相続人になるのは親などの直系尊属です。
相続放棄で次順位の人が相続人になります。
滞納していた税金は、次順位の人が相続します。
滞納していた税金の支払義務があると聞いたら、びっくりするでしょう。
相続放棄をしても、次順位の人に知らせる義務はありません。
知らせる義務がなくても、知らせてあげると親切でしょう。
相続放棄で、次順位相続人が支払義務を負うからです。
⑥相続放棄をしても死亡保険金は受け取れる
被相続人が死亡した場合に、生命保険の死亡保険金が支払われることがあります。
原則として生命保険の保険金を受け取る権利は、相続人の固有の財産です。
受取人が「相続人」と指定してあっても、相続で受け取るものではありません。
被相続人の死亡をきっかけにして、保険契約によって受取人が保険金を受け取るものです。
多くの場合、被相続人は生前に生命保険の死亡保険金を受け取る権利を持っていなかったでしょう。
相続によって、被相続人から受け継いだものではありません。
相続人の固有の財産だから、相続放棄をした人は生命保険の保険金を受け取ることができます。
生命保険の保険金を受け取ったことで、相続放棄が無効になることはありません。
5相続放棄を司法書士に依頼するメリット
相続放棄は、チャンスは1回限りです。
家庭裁判所に認められない場合、即時抗告という手続を取ることはできます。
高等裁判所の手続で、2週間以内に申立てが必要になります。
家庭裁判所で認めてもらえなかった場合、即時抗告で相続放棄を認めてもらえるのは、ごく例外的な場合に限られます。
一挙にハードルが上がると言ってよいでしょう。
相続が発生してから3か月以内に手続ができなかったのは止むを得なかったと家庭裁判所に納得してもらうことが重要です。
家庭裁判所に対して、上申書や事情説明書という書類を添えて、説得します。
家庭裁判所が知りたいことを無視した作文やダラダラとした作文では認めてもらうことは難しいでしょう。
司法書士であれば、家庭裁判所に認めてもらえるポイントを承知しています。
認めてもらえやすい書類を作成することができます。
相続放棄を考えている方は、すみやかに司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。
相続人が名寄帳を取得する方法
1名寄帳は所有する不動産の一覧表
①被相続人の不動産をまとめて確認できる
相続が発生すると、被相続人の財産を調査します。
家族であっても、被相続人の財産状況を詳細に知っていることは少ないでしょう。
被相続人と離れて暮らしていると、被相続人の財産状況が何も分からないかもしれません。
名寄帳とは、その人が所有する不動産の一覧表です。
名寄帳は、「なよせちょう」と読みます。
不動産を持っていると、固定資産税を納める必要があります。
市区町村は固定資産税を課税するために、固定資産税課税台帳を作成しています。
名寄帳は、固定資産税課税台帳を所有者ごとにまとめた書類です。
名寄帳は、市区町村によってはさまざまな呼び方をしています。
例えば「土地家屋固定資産課税台帳」「土地家屋名寄帳」などです。
名寄帳と言えば分かってもらえるので、心配は不要です。
名寄帳を見ると、その人が所有する不動産をまとめて確認することができます。
②納税通知書に記載がない不動産を確認できる
固定資産税が課されている場合、市区町村役場から納税通知書が届きます。
納税通知書に添付されている課税明細書を見ると、課税対象となった不動産が記載されています。
課税明細書に記載されている不動産は、その人が所有する不動産の一覧表と言えます。
名寄帳も課税明細書も、その人が所有する不動産の一覧表です。
課税明細書は、固定資産税が課税された内容の一覧表です。
不動産によっては、固定資産税がかからないことがあります。
固定資産税がかからない不動産は、課税明細書に記載されません。
名寄帳は、固定資産税課税台帳を所有者ごとにまとめた書類です。
固定資産税課税台帳には、固定資産税がかからない不動産であっても記載されています。
今は条件を満たしているから固定資産税が非課税になっているけど、条件を満たさなくなったら固定資産税がかかる不動産だからです。
名寄帳を見ると、課税明細書に記載されていない不動産が見つかることがあります。
課税明細書に記載されていなくても、被相続人の不動産です。
被相続人の不動産は、相続財産です。
名寄帳を見ると、納税通知書に記載がない不動産を確認することができます。
2相続人が名寄帳を取得する方法
①名寄帳は相続人が請求できる
名寄帳は、その人が所有する不動産の一覧表です。
その人の財産状況は、他の人に知られたくないものでしょう。
名寄帳を請求することができるのは、原則として、納税義務者本人のみです。
名寄帳は、納税義務者と無関係な人が請求することはできません。
納税義務者が死亡した場合、納税義務者の相続人が名寄帳を請求することができます。
名寄帳は、一部の相続人から請求することができます。
②名寄帳を請求するときの必要書類
名寄帳は、納税義務者と無関係な人が請求することはできません。
納税義務者本人以外の人が請求する場合、関係が分かる書類が必要です。
納税義務者の相続人は、名寄帳を請求することができます。
納税義務者の相続人が名寄帳を請求する場合、次の書類が必要です。
(1)所有者本人の除籍謄本
(2)交付請求をする人が相続人であることが分かる戸籍謄本
(3)交付請求をする人の本人確認書類
③名寄帳の請求先
名寄帳は、固定資産税を課税するための台帳から一覧表にした書類です。
固定資産税課税台帳は、市町村が作成します。
名寄帳は、市町村ごとに請求する必要があります。
名寄帳の請求先は、不動産が所在する市区町村役場の固定資産税担当です。
政令指定都市では、市税事務所に請求します。
④郵送で名寄帳を請求できる
名寄帳を請求する場合、市区町村役場の窓口に出向く方法が一般的です。
窓口まで出向くことが難しい場合、郵送で請求することができます。
郵送で請求する場合、日中連絡が取れる電話番号を書いておくといいでしょう。
郵送した書類に不備がある場合、連絡をしてもらえることがあるからです。
請求書を郵送するときに返信用の封筒と切手を同封しておくと、送り返してもらえます。
⑤名寄帳請求に手数料がかかる
名寄帳を発行してもらう場合、手数料を納める必要があります。
名寄帳の発行手数料は、市区町村ごとに異なります。
おおむね300円程度であることが多いでしょう。
市区町村役場の窓口に出向いて請求する場合、窓口で支払いをすることができます。
名寄帳を郵送請求する場合、手数料は郵便小為替で納入します。
郵便小為替は、郵便局の貯金窓口で購入することができます。
市区町村によっては、土地と家屋は別々に発行されることがあります。
単独所有の不動産と共有の不動産は別々に発行されることがあります。
別々に発行される場合、それぞれに発行手数料がかかるでしょう。
被相続人がたくさんの不動産を保有していた場合、名寄帳が1枚に書き切れないことがあります。
複数の名寄帳が発行された場合と考えて、手数料が計算されることがあります。
郵送請求をする場合、郵便小為替は多めに入れておくといいでしょう。
余った分は、郵便小為替で返してもらえます。
3代理人が名寄帳を請求するときは委任状
①名寄帳の交付請求を依頼した証明として委任状が必要
名寄帳は、その人の重要な財産に関する書類です。
名寄帳の交付請求を代理人に依頼する場合、委任状が必要です。
所有者本人が依頼することもできるし、所有者本人が死亡した場合は相続人が依頼することもできます。
司法書士などの専門家に遺産整理の一環として依頼する場合、委任状は司法書士が用意します。
自分で委任状を用意する必要はありません。
内容を確認して、署名押印をするだけで済みます。
代理人を立てて名寄帳の請求を依頼する場合、委任状が必要です。
②名寄帳の交付請求の委任状は認印で良い
名寄帳や課税明細書、評価証明書の取得を代理人に依頼するだけであれば、委任状の押印は認印で構いません。
遺産整理の一環として依頼する場合、預金の解約なども一緒に依頼することがあるでしょう。
金融機関などの手続がある場合、実印で押印をする必要があります。
③一部の相続人から代理人に依頼できる
相続が発生した場合、相続財産は相続人全員の共有財産になります。
相続財産の分け方を決めるためには、相続人全員の合意が不可欠です。
名寄帳の交付請求は、相続人全員でする必要はありません。
一部の相続人が交付請求をすることができます。
名寄帳の交付請求を代理人に依頼する場合、一部の相続人から委任状を出してもらえば問題がありません。
4名寄帳を確認するときの注意点
注意①名寄帳は1月1日現在の情報
名寄帳を見ると、その人の不動産を確認できるのでとても便利です。
名寄帳は、その年の1月1日現在の状況で作成されています。
固定資産税は、その年の1月1日の所有者に対して課されるからです。
固定資産税のための書類だから、1月1日以降の変更について反映しません。
例えば、2月に取得した不動産は、名寄帳に記載されません。
3月に手放したはずの不動産は、名寄帳に記載されています。
名寄帳の内容は、1月1日現在であることに注意する必要があります。
注意②発行した自治体以外の不動産は記載されない
名寄帳は、固定資産税課税台帳を所有者ごとにまとめた書類です。
固定資産税課税台帳は、市区町村ごとに作成しています。
固定資産税課税台帳は、本来固定資産税を課税するための書類だからです。
他の市区町村に所在する不動産のことは、その自治体では把握されていません。
他の市区町村に所在する不動産について、その自治体の名寄帳に記載されません。
被相続人がたくさんの不動産を保有していることがあります。
不動産が各地に散らばっている場合、所在地の市区町村役場に請求します。
名寄帳は、発行した自治体以外の不動産は記載されないことに注意する必要があります。
注意③会社名義の不動産は別で請求
名寄帳は、固定資産税課税台帳を所有者ごとにまとめた書類です。
被相続人が会社を経営していることがあります。
不動産を会社の名義にしていることがあるでしょう。
社長個人と会社は、別人扱いされます。
社長個人の名寄帳を請求した場合、社長個人が所有者になっている不動産だけが記載されます。
社長個人の名寄帳に、会社名義の不動産は記載されません。
会社名義の不動産を確認するためには、会社の名寄帳を別で請求する必要があることに注意する必要があります。
注意④名古屋市など発行していない自治体がある
名寄帳は、その人の重要な財産に関する書類です。
機密性の高い個人情報であることを考慮して、名寄帳を発行していない役所があります。
名古屋市などでは、名寄帳を発行していません。
名古屋市では、課税明細書と資産明細書で代用します。
課税明細書には、固定資産税が課税される物件のみが記載されます。
資産明細書には、免税点未満で課税されない物件が記載されます。
課税明細書を請求するとき「課税されていない物件がある場合は、資産明細書も出してください」と記載すると取得することができます。
名古屋市では、私道など非課税地は課税明細書と資産明細書のいずれにも記載されません。
5後から相続財産が見つかったら
①原則として見つかった財産だけ遺産分割協議
名寄帳を見ると、その人が所有する不動産をまとめて確認することができます。
名寄帳かあると、とても便利です。
それでも相続財産を見落としてしまうことはあるでしょう。
相続財産は、相続人全員の共有財産です。
相続財産の分け方は、相続人全員の合意で決定します。
遺産分割協議をした後で、新たに相続財産が見つかることがあります。
新たな財産が見つかった場合、原則として、先の遺産分割協議は有効です。
新たな財産の分け方だけ、あらためて相続人全員で決定します。
後から相続財産が見つかったら、原則として見つかった財産だけ遺産分割協議をします。
②遺産分割協議のやり直しは例外
遺産分割協議が終わった後で新たに財産が見つかっても、原則としてやり直しはしません。
一部の相続財産についてだけ、遺産分割協議をすることができるからです。
新たに財産が見つかった場合、あらためて遺産分割協議をすることができないわけではありません。
新たに財産が見つかった場合に、遺産分割協議をやり直すのは例外です。
相続人全員がやり直しに納得している場合、遺産分割協議をやり直すことができます。
相続財産に含まれるはずの重要財産が隠されていた場合、遺産分割協議をやり直すことができます。
遺産分割協議のやり直しは、例外です。
③相続登記は義務になった
相続財産が不動産である場合、不動産の名義変更をします。
不動産の名義変更を相続登記と言います。
2024年4月1日に相続登記の義務化が開始されました。
相続によって所有権を取得したことを知ってから、3年以内に相続登記をしなければなりません。
3年以内に相続登記がされない場合、10万円以下のペナルティーになります。
6財産調査を司法書士に依頼するメリット
相続が発生したら、遺族は大きな悲しみに包まれます。
大きい悲しみのなかで、もれなく迅速に相続財産を調査するのは身体的にも精神的にも大きな負担になります。
このような負担の大きい財産調査を司法書士などの専門家に依頼することができます。
遺族のお疲れも、軽減されるでしょう。
その後の相続手続もスムーズになります。
被相続人の財産について、相続人もあまり詳しく知らないという例は意外と多いものです。
悲しみの中で被相続人の築いてきた財産をたどるのは切なく、苦しい作業になります。
調査のためには銀行などの金融機関から、相続が発生したことの証明として戸籍謄本等の提出が求められます。
このような戸籍謄本等の取り寄せも含め、手続をおまかせいただけます。
お仕事や家事でお忙しい方や高齢、療養中などで手続が難しい方は、手続を丸ごとおまかせできます。
ご家族にお世話が必要な方がいて、頻繁に家を空けられない方からのご相談もお受けしております。
財産調査でお疲れが出る前に、司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。
名寄帳で相続した不動産を調査
1名寄帳は所有者ごとの不動産一覧表
名寄帳は「なよせちょう」と読みます。
名寄帳とは、土地や家屋を所有者ごとにまとめた一覧表です。
市町村が税金をかけるために備えている帳簿から一覧表にまとめてくれた書類です。
市町村によっては「土地家屋固定資産課税台帳」「土地家屋名寄帳」などのさまざまな呼び方をしています。
「名寄帳」と言えば、役所の人は分かってくれますから心配は不要です。
固定資産課税台帳には、次のような項目が記載されています。
①所有者の氏名や住所
②不動産の所在や状況
③固定資産評価額
④固定資産税額
名寄帳は、不動産の所有者ごとに抽出して一覧表に取りまとめた書類です。
その市町村が把握している不動産の状況が一目で分かるので、とても便利です。
2名寄帳の取得方法
①名寄帳を取得できる人
名寄帳は、土地や家屋を所有者ごとにまとめた一覧表です。
その人の財産に関する重要な書類です。
基本的には、所有者本人だけが交付請求をすることができます。
所有者本人が死亡した場合、相続人から交付請求をすることができます。
②名寄帳を取得するときに必要な書類
相続人が交付請求をする場合、次の書類が必要です。
(1)所有者本人の除籍謄本
(2)交付請求をする人が相続人であることが分かる戸籍謄本
(3)交付請求をする人の本人確認書類
③名寄帳の申請先
名寄帳は、各市町村ごとに作られます。
土地や家屋が所在する市町村ごとに手続をします。
市町村役場の固定資産税を担当する係へ交付請求をする必要があります。
政令指定都市では、各市税事務所で手続をします。
窓口まで出向いて交付請求をすることもできるし、郵送請求をすることもできます。
郵送請求する場合、日中連絡ができる電話番号を明記しておきましょう。
返信用の封筒と切手を同封しておくと、送り返してもらえます。
手続をするときに、単独所有の物件と共有の物件のいずれも交付してくださいとお願いするといいでしょう。
④名寄帳の交付手数料
名寄帳を発行してもらうためには、手数料を納めなければなりません。
市町村ごとに違いますが、300円前後であることが多いです。
名寄帳を郵送で交付請求する場合、手数料は郵便小為替で納入します。
郵便小為替は、郵便局で購入します。
名寄帳は、単独所有の物件と共有の物件は別々に発行されます。
手数料が別々に計算されます。
3代理人が名寄帳の交付請求するときは委任状が必要
①名寄帳の交付請求を依頼した証明として委任状が必要
名寄帳は、その人の重要な財産に関する書類です。
名寄帳の交付請求を代理人に依頼する場合、委任状が必要です。
所有者本人が依頼することもできるし、所有者本人が死亡した場合は相続人が依頼することもできます。
司法書士などの専門家に遺産整理の一環として依頼する場合、委任状は司法書士が用意します。
自分で委任状を用意する必要はありません。
内容を確認して、署名押印をするだけで済みます。
②名寄帳の交付請求の委任状は認印で良い
名寄帳や課税明細書、評価証明書の取得を代理人に依頼するだけであれば、委任状の押印は認印で構いません。
遺産整理の一環として依頼する場合、預金の解約なども一緒に依頼することがあるでしょう。
金融機関などの手続がある場合、実印で押印をする必要があります。
③一部の相続人から代理人に依頼できる
相続が発生した場合、相続財産は相続人全員の共有財産になります。
相続財産の分け方を決めるためには、相続人全員の合意が不可欠です。
名寄帳の交付請求は、相続人全員でする必要はありません。
一部の相続人が交付請求をすることができます。
名寄帳の交付請求を代理人に依頼する場合、一部の相続人から委任状を出してもらえば問題がありません。
4名寄帳の見方のポイント
名寄帳は、固定資産課税台帳の内容を一覧表にまとめたものです。
固定資産税を課税するための情報がたくさん書いてあります。
相続財産を調査する場合、次の項目に注目するといいでしょう。
①不動産に関する情報
(1)不動産が土地であるか家屋であるか
(2)不動産の所在地
(3)土地であれば、地積、地目
(4)家屋であれば、家屋の種類、面積
(5)単独所有であるか共有であるか
②所有者に関する情報
(1)所有者の住所
(2)所有者の氏名
③固定資産税評価額
5名寄帳にはあるのに課税明細書に書いてない不動産がある
不動産を持っていると、固定資産税がかかります。
毎年5月ごろになると固定資産税の納税をするべき人に対して、納付書が送られます。
不動産を共有している場合、代表者にだけ送られます。
納付書の封筒に、納税通知と課税明細書が同封されています。
課税明細書は、相続した不動産を調査をするときの有力な資料です。
課税明細書には、固定資産税が非課税の不動産については記載がされていません。
所有している不動産が免税点未満の場合、課税するべき固定資産税がありません。
納めてもらう固定資産税がない場合、納税通知書と課税明細書は発行されません。
納税通知書と課税明細書は、市町村から固定資産税を納めてくださいというお知らせだからです。
自宅に隣接する公衆用道路を、個人で所有している場合や近隣の人と共有している場合があります。
一定の条件を満たしている場合、公衆用道路は固定資産税が課されません。
固定資産税が課税されていないため、私道を所有していることを見落としがちです。
自宅に隣接する公衆用道路を、個人で所有している場合や近隣の人と共有している場合、相続財産になります。
相続財産だから、相続財産の分け方を決めるため相続人全員の合意が不可欠です。
自宅の分け方について合意をした場合でも私道について合意を漏らしてしまうことがあります。
課税明細書を発見したら、念のため、市町村から名寄帳を取り寄せると安心です。
6名寄帳を見るときの注意点
①名寄帳は1月1日現在の情報
名寄帳は、固定資産課税台帳の内容を一覧表にまとめたものです。
固定資産税は、その年の1月1日の所有者が納税する義務があります。
固定資産税を課税するための書類だから、1月1日以降の変更については反映しません。
例えば、2月に取得した不動産は名寄帳に記載されていません。
2月に手放した不動産は記載されています。
②発行した市町村以外の不動産は記載されていない
名寄帳は、市町村が土地や家屋をまとめた一覧表です。
他の市町村のことは分からないから、名寄帳に記載されていません。
不動産がたくさんある場合、各地に散らばっていることがあります。
市町村ごとに名寄帳の交付請求をしなければなりません。
③法人名義の不動産は記載されていない
被相続人が会社を経営していた場合があります。
不動産を経営していた会社名義にしていることがあるでしょう。
社長と会社は、別人で扱われます。
社長個人の名寄帳に会社名義の不動産は記載されません。
④名寄帳を発行していない市町村がある
名寄帳は、その人の重要な財産に関する書類です。
機密性の高い個人情報であることを考慮して、名寄帳を発行していない役所があります。
名古屋市などでは、名寄帳を発行していません。
名古屋市では、課税明細書と資産明細書で代用します。
課税明細書には、固定資産税が課税される物件のみが記載されます。
資産明細書には、免税点未満で課税されない物件が記載されます。
課税明細書を請求するとき「課税されていない物件がある場合は、資産明細書も出してください」と記載すると取得することができます。
名古屋市では、私道など非課税地は課税明細書と資産明細書のいずれにも記載されません。
7財産調査を司法書士に依頼するメリット
相続が発生したら、遺族は大きな悲しみに包まれます。
大きい悲しみのなかで、もれなく迅速に相続財産を調査するのは身体的にも精神的にも大きな負担になります。
負担の大きい財産調査を司法書士などの専門家に依頼することができます。
遺族のお疲れも、軽減されるでしょう。
その後の相続手続もスムーズになります。
被相続人の財産について、相続人もあまり詳しく知らないという例は意外と多いものです。
悲しみの中で被相続人の築いてきた財産をたどるのは切なく、苦しい作業になります。
調査のためには銀行などの金融機関から、相続が発生したことの証明として戸籍謄本等の提出が求められます。
このような戸籍謄本等の取り寄せも含め、手続をおまかせいただけます。
仕事や家事でお忙しい方や高齢、療養中などで手続きが難しい方は、手続を丸ごとおまかせできます。
家族にお世話が必要な方がいて、頻繁に家を空けられない方からのご相談もお受けしております。
財産調査でお疲れが出る前に、司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。
被相続人の通帳を見せてもらえない
1金融機関に開示請求ができる
①相続人は通帳を見せる義務はない
銀行口座は、日常生活に欠かすことができません。
多くの人は、銀行に口座を持っているでしょう。
口座の持ち主が死亡した場合、口座の預貯金は相続人に相続されます。
口座の預貯金は、相続人全員の共有財産です。
相続財産の分け方は、相続人全員の合意で決める必要があります。
被相続人の財産は、被相続人の同居の家族などが管理していることが多いでしょう。
被相続人の同居の家族などが被相続人の財産を管理することは問題ではありません。
被相続人が預貯金口座を持っている可能性が高いのに、通帳を見せてもらえないことがあります。
相続財産の状況が分からないと、分け方の話し合いができません。
通帳を見せてもらえないことで、話し合いができなくなります。
自分の相続分に照らして、適切な分け方であるのか判断できないからです。
通帳を見せてもらえないことも、違法ではありません。
一部の相続人が他の相続人に、通帳を見せる義務はないからです。
通帳を見せないと、他の相続人は疑心暗鬼になります。
通帳を見せる義務はないけど、開示した方がいいでしょう。
通帳を見せてもらえれば、安心して話し合いができるからです。
②金融機関に残高証明書を発行してもらえる
被相続人の家族が通帳を管理している場合、管理している家族も相続人でしょう。
通帳を見せてくれない場合、自力で財産調査をする必要があります。
被相続人の預貯金口座がある金融機関に対して、口座の残高証明書を発行してもらうことができます。
被相続人の死亡時の残高証明書を取得した場合、相続が発生したときの預貯金の残高が分かります。
被相続人の通帳を見せてもらえない場合、金融機関に残高証明書を発行してもらうことができます。
③金融機関に取引履歴を発行してもらえる
被相続人の死亡時の残高証明書を確認すると、想像以上に金額が少ないことがあります。
生前の経済状況から大きく乖離する場合、一部の相続人に贈与がされているかもしれません。
一部の相続人が受け取った贈与を考慮しないで、相続財産を分けるのは不公平です。
生前贈与は特別受益として、相続財産に持ち戻すと公平な遺産分割ができます。
生前の経済状況から大きく乖離する場合、一部の相続人が引き出して自分の口座などに財産を隠しているかもしれません。
残高証明書は、残高しか確認することができません。
被相続人の預貯金口座がある金融機関に対して、口座の取引履歴を発行してもらうことができます。
被相続人の死亡時の取引履歴を取得した場合、口座の入出金状況が分かります。
通帳を見せてもらえない場合、後ろめたい事情があるかもしれません。
口座の入出金状況を確認すると、通常とは異なる出金が見つかることがあります。
被相続人の通帳を見せてもらえない場合、金融機関に取引履歴を発行してもらうことができます。
④銀行口座を網羅的に調べることはできない
被相続人の通帳を見せてもらえないときの対処法は、金融機関に残高証明書と取引履歴を発行してもらうことです。
残高証明書と取引履歴を発行してもらうためには、銀行などに発行請求をする必要があります。
被相続人がどこの金融機関に口座を持っているのか分からない場合、網羅的に調べる方法はありません。
被相続人の住所の近隣などの金融機関と取引をしていることが多いでしょう。
心当たりのある金融機関に対して、ひとつひとつ確認する必要があります。
被相続人と同居していた家族に協力してもらって、遺品などを調べるといいでしょう。
高齢者は、ゆうちょ銀行の口座を持っていること多いので確認してみるといいでしょう。
銀行などの預貯金口座は、網羅的に調べる方法はありません。
⑤証券口座は一括検索ができる
銀行などの預貯金口座は、ひとつひとつ確認する必要があります。
一括して網羅的に調べる方法がないからです。
被相続人が株式の取引をしていた場合、証券会社の口座を持っていたでしょう。
どこの証券会社に口座を持っていたか分からない場合、一括して検索することができます。
証券会社の口座は、証券保管振替機構に対して口座の開示請求をすることができるからです。
口座の開示請求では、被相続人が取引していた証券会社が判明します。
判明した証券会社に対して、残高証明書を発行してもらうことができます。
銀行口座は、一括検索ができません。
証券口座は、一括検索ができます。
2残高証明書と取引履歴を発行してもらう方法
①各相続人が単独で発行請求ができる
残高証明書と取引履歴は、金融機関に発行してもらうことができます。
相続人は、金融機関に発行請求をすることができます。
残高証明書と取引履歴の発行は、各相続人が単独で請求することができます。
残高証明書と取引履歴の発行は、保存行為と考えられるからです。
相続人全員で請求しなければならないと言ったルールはありません。
他の相続人の同意が必要になることもありません。
通帳を持っていなくても持っていても、残高証明書と取引履歴の発行請求をすることができます。
②必要書類
残高証明書と取引履歴の発行請求をする場合、次の書類が必要になります。
(1)被相続人の死亡が記載されている戸籍謄本
(2)発行請求をする相続人の現在戸籍
(3) 発行請求をする相続人の印鑑証明書
(4) 発行請求をする相続人の本人確認書類
事情によっては、追加で書類が必要になることがあります。
相続手続をする場合、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本が必要になります。
相続手続では、相続人全員を確認する必要があるからです。
残高証明書と取引履歴の発行請求をする場合、被相続人の死亡が記載されている戸籍謄本のみで差し支えありません。
相続人全員を確認する必要は、ないからです。
残高証明書と取引履歴の発行は、一部の相続人が請求することができます。
他の相続人の承諾は、不要です。
残高証明書と取引履歴の発行請求をする場合、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本は不要です。
残高証明書と取引履歴の発行請求をする場合、所定の手数料を払う必要があります。
③取引履歴は10年分
取引履歴の発行は、いつからいつまでと期間を定めて請求します。
一般的な金融機関は、取引履歴の保管期間を10年と定めています。
金融機関の保管期間内であれば、発行してもらうことができます。
金融機関によっては、10年間以上の取引履歴を発行してもらうことができます。
取引履歴を発行してもらうときの手数料は、金融機関によってまちまちです。
金融機関によっては、1日当たりで手数料を定めていることがあります。
10年分の取引履歴を請求すると、思わぬ高額な費用になることがあります。
取引履歴は、10年分発行してもらうことができます。
④生前に解約されていたら
被相続人の口座の残高証明書と取引履歴は、相続人が発行請求をすることができます。
残高証明書と取引履歴の発行請求は、相続財産の保存行為だからです。
被相続人の口座が生前に解約されている場合、相続財産はありません。
相続財産の保存行為ではないから、相続人は残高証明書と取引履歴をすることができないのが原則です。
ときには、金融機関の好意で発行してくれることがあります。
預貯金口座の取引履歴は、遺産分割協議の重要な資料になります。
金融機関に重要な資料であることを説明して、開示に協力してもらうことが大切です。
被相続人の口座が生前に解約されている場合、原則として、残高証明書と取引履歴の発行請求はできません。
3残高証明書と取引履歴を請求するときの注意点
①窓口請求するなら事前予約
近隣の金融機関の場合、直接窓口に行って手続をするのが便利です。
残高証明書と取引履歴の発行請求は、一般的な手続ではありません。
残高証明書と取引履歴の発行請求に、慣れている人はほとんどいないでしょう。
窓口は行けば係の人の説明を聞きながら、手続をすることができます。
金融機関によっては事前予約なしに窓口に行っても、対応できる係員がいないことがあります。
対応できる係員がいない場合、再度窓口に行くことになるでしょう。
まず窓口に行く前に、電話やホームページから予約をするのがおすすめです。
予約せずに窓口に行った場合、予約優先で長時間待たされることになります。
直接窓口に行って手続をする場合、事前予約が必要です。
②郵送請求するなら半月から1か月かかる
取引していた金融機関が遠方である場合、郵便で手続をするのが便利です。
残高証明書と取引履歴の発行請求は、一般的な手続ではありません。
金融機関のホームページなどに請求用紙が掲載されていないことが多いでしょう。
金融機関に電話をして、残高証明書や取引履歴の発行請求書を取り寄せます。
金融機関によっては、あらかじめ必要書類を提出してから請求用紙が送られてくることがあります。
請求用紙を提出して、問題がなければ発行手数料のお知らせと振込先が通知されます。
窓口に行った場合、手数料はその場で支払うことができます。
郵送で手続をする場合、手数料は指定の口座に振込みをする必要があります。
スムーズに手続をした場合でも、何度も郵便のやり取りをすることになります。
書き間違いや金融機関の案内間違いがあると、やり取りが増えます。
郵送で残高証明書と取引履歴を発行請求する場合、半月から1か月程度かかることが多いです。
やり取りが増えると、1か月以上かかります。
郵送請求するなら、半月から1か月かかります。
4使い込みの疑いがあるときは
①遺産分割協議で話し合い
通帳を見せてもらえない場合、後ろめたい事情があるかもしれません。
口座の入出金状況を確認すると、通常とは異なる出金が見つかることがあります。
相続財産の状況は、話し合いの前提です。
被相続人と離れて暮らしていた場合、どのような費用が必要であったか把握していないことが多いでしょう。
通常とは異なる出金が見つかった場合、どのような使い途であったか確認しましょう。
被相続人と同居していた家族にとっては、当然に必要な費用であったかもしれません。
使い込みと決めつけると、相続人間で鋭い対決になります。
領収書などを見せてもらえば、納得できるでしょう。
使い途の分からない出金は、遺産分割協議で話し合いをします。
②話し合いができないなら遺産分割調停
遺産分割協議は、相続財産の分け方について相続人全員でする話し合いです。
相続人で話し合いができない場合、遺産分割調停の申立てをすることができます。
遺産分割調停では、家庭裁判所の助力を得て相続人全員の合意を目指します。
相続人だけで話し合いをした場合、それぞれの主張をして話し合いがまとまらないことがあります。
家庭裁判所の調停委員に話す場合、少し落ち付いて話ができるでしょう。
家庭裁判所の調停委員から公平な意見を根拠にしてアドバイスがされると、納得できるかもしれません。
調停委員から客観的なアドバイスを受けて、相続人全員の合意を目指します。
5被相続人の通帳を見せてもらえないとき司法書士に依頼するメリット
被相続人の通帳を見せてもらえないことは、少なくありません。
被相続人の通帳を見せたくないことも、少なくありません。
通帳を見せなくても、相続人は自力で調べることができます。
通帳を見せてもらえなくても、相続人は自力で調べることができます。
被相続人の通帳は、被相続人の同居の家族が管理していることが多いでしょう。
被相続人の通帳を見せてもらえないと、同居の家族への不信感が募ります。
被相続人の通帳を見せないことに、メリットはありません。
被相続人の通帳を見せないことは、相続人間で大きなトラブルに発展しがちです。
デメリットが非常に大きく、メリットはありません。
必要な費用であれば、支出するのは当然のことです。
丁寧に説明して、領収書などを見せると納得してもらえるでしょう。
被相続人の通帳を見せてもらえないとき、金融機関に残高証明書と取引履歴を請求することができます。
司法書士に、このような手続をおまかせすることができます。
客観的に見て、紛争に発展している場合は弁護士を紹介します。
被相続人の通帳を見せてもらえない場合、司法書士に相談することをおすすめします。
未支給年金は相続財産ではない
1口座凍結で未支給年金が発生する
①口座の持ち主が死亡すると口座凍結
銀行などの口座は、日常生活に欠かせません。
多くの人は、銀行などに口座を持っているでしょう。
口座の持ち主が死亡したら、口座は凍結されます。
口座凍結とは、口座取引をできなくすることです。
口座が凍結されると、預入れや引出しなどの口座取引はすべてできなくなります。
口座の持ち主が死亡すると、口座は凍結されます。
②年金は死亡月まで支給される
口座が凍結されると、口座取引はすべてできなくなります。
振込みもできないし、公共料金などの引落しもできなくなってしまいます。
年金を受け取っている人は、口座振り込みで受け取っているでしょう。
年金は、後払いで支給されます。
例えば、4月分と5月分の年金は、6月に支給されます。
年金は、死亡月まで支給されます。
年金を受け取っている人が4月に死亡した場合、4月分の年金まで支給されます。
4月分の年金は、6月に振込みがされます。
多くの場合、6月には口座が凍結しているでしょう。
4月分の年金は、受け取ることができません。
未支給年金とは、受け取ることができなかった年金です。
年金は後払いだから、必ず未支給年金が発生します。
口座凍結で、未支給年金が発生します。
2公的年金の未支給年金は相続財産ではない
①未支給年金は遺産分割協議の対象ではない
相続が発生したら、被相続人の財産は相続人が相続します。
相続財産は、相続人全員の共有財産です。
相続財産の分け方は、相続人全員の合意で決める必要があります。
被相続人が年金を受け取っていたから、受け取るはずの年金は相続財産に見えるかもしれません。
公的年金の未支給年金は、相続財産ではありません。
相続財産は、民法に基づいて相続人が相続します。
未支給年金は、別の法律に基づいて一定の遺族に支給されます。
公的年金の未支給年金は、相続人全員で分け方を決めることはできません。
公的年金の未支給年金は、遺産分割協議の対象ではないからです。
②相続放棄をしても未支給年金
相続が発生したら、相続人は相続を単純承認するか相続放棄をするか選択することができます。
相続放棄を希望する場合、家庭裁判所に対して相続放棄の申立てをします。
家庭裁判所で相続放棄が認められたら、はじめから相続人でなくなります。
相続財産は、相続人が相続します。
はじめから相続人でなくなるから、相続財産を相続することはできません。
プラスの財産もマイナスの財産も、相続することはありません。
公的年金の未支給年金は、相続財産ではありません。
一定の遺族は、未支給年金を受け取ることができます。
一定の遺族の中には、相続人である人もいるし相続人でない人もいるでしょう。
相続人である人も相続人でない人も、一定の遺族であれば未支給年金を請求することができます。
公的年金の未支給年金を受け取る権利は、一定の遺族の固有の権利です。
相続財産を処分した場合、単純承認をしたとみなされます。
単純承認をした場合、相続放棄をすることはできません。
未支給年金を受け取る権利は、相続財産ではありません。
未支給年金は、法律で一定の遺族に認められた権利です。
死亡した被相続人が受け取るはずの年金を受け継いだものではありません。
法律で認められた遺族の固有の権利です。
被相続人から相続した相続財産ではないから、相続放棄とは無関係です。
相続人が相続放棄をした場合でも相続放棄をしない場合でも、法律の定めに基づいて未支給年金を受け取ることができます。
未支給年金を受け取っても、相続の単純承認をしたと言われることはありません。
未支給年金を受け取る権利は、相続財産ではなく遺族の固有の財産だからです。
相続放棄をした後に未支給年金を請求した場合、相続放棄が無効になることはないし、未支給年金を返還するように言われることはありません。
未支給年金を受け取った後に相続放棄をした場合、相続放棄が無効になることはないし、未支給年金を返還するように言われることはありません。
未支給年金を受け取る権利は、遺族の固有の権利だから、相続放棄とは無関係です。
すでに相続放棄をした場合でも、これから相続放棄をするつもりでも、未支給年金を受け取ることができます。
③事実婚・内縁の配偶者が未支給年金
公的年金の未支給年金は、一定の遺族に支給されます。
一定の遺族の条件に、死亡した年金受給者に生計を維持されていた人という条件があります。
相続人になる人は、民法で決まっています。
相続人になる人には、生計を維持されていた人という条件はありません。
配偶者は、死亡した年金受給者に生計を維持されていた人でしょう。
死亡した年金受給者に生計を維持されていた配偶者は、法律上の配偶者でないことがあります。
相続人になる配偶者は、法律上の配偶者に限られます。
事実婚・内縁の配偶者は、相続人になりません。
事実婚・内縁の配偶者は、公的年金の未支給年金を請求することができます。
公的年金の未支給年金を請求する権利は、一定の遺族の固有の権利だからです。
公的年金の未支給年金は相続財産ではないから、事実婚・内縁の配偶者が受け取ることができます。
3未支給年金の受取方法
①未支給年金を請求できる人
未支給年金を受け取ることができるのは、次の人のうち優先順位の高い人です。
(1)配偶者
(2)子
(3)父母
(4)孫
(5)祖父母
(6)兄弟姉妹
(7)その他これら以外の3親等内の親族
未支給年金は、年金を受け取っていた人と生計を同じくしていた人が受け取ることができます。
遺族年金と未支給年金は、別の制度です。
遺族年金を受け取ることができる場合で、かつ、未支給年金を受け取ることができる場合、それぞれの手続が必要です。
②未支給年金を請求に必要な書類
未支給年金を受け取るためには、受給権者死亡届と未支給年金・未払い給付金請求書の提出が必要です。
受給権者死亡届に添付する書類は、次のとおりです。
(1)年金証書
(2)死亡の事実を明らかにできる書類
(2)死亡の事実を明らかにできる書類は、戸籍謄本、市区町村長に提出した死亡診断書のコピー、死亡届の記載事項証明書などです。
未支給年金・未払い給付金請求書に添付する書類は、次のとおりです。
(1)年金証書
(2)被相続人と請求者の続柄が分かる戸籍謄本
(3)被相続人と請求者が生計を同じくしていたことが分かる住民票と除票
(4)受け取りを希望する金融機関の通帳
(5)生計同一についての申立書(被相続人と請求者が別世帯の場合)
(2)戸籍謄本(3)住民票は、死亡日より後に発行されたものが必要です。
(2)戸籍謄本(3)住民票は、原本を返してもらうことができます。
③未支給年金は5年以内に請求
未支給年金を受け取るためには、請求をしなければなりません。
未支給年金を受け取る権利は、何もしないで放置すると時効で消滅します。
年金支払い日の翌月の初日から起算して5年で時効消滅します。
5年経過で時効消滅すると、未支給年金を受け取ることができなくなります。
未支給年金を受け取る権利が亡くなる前に、請求しましょう。
④繰り下げ受給の待機中の死亡は未支給年金で請求できる
被相続人が年金の繰り下げ受給の待機中に死亡する場合があります。
年金の繰り下げ受給の待機中に死亡した場合、本人が受け取るはずだった年金を遺族が請求することができます。
65歳から死亡した月の分までの年金が、未支給年金として支給されます。
未支給年金には、待機した分の増額は反映されません。
この場合、時効の起算は65歳からです。
⑤未支給年金が振り込まれるまでに3か月
未支給年金を請求した後、問題がなければ3か月程度で振り込まれます。
未支給年金の請求書を提出した後、未支給年金支給決定通知書が発送されます。
支給されないときは、不該当通知書が発送されます。
⑥未支給年金に相続税はかからない
公的年金の未支給年金は、相続財産ではありません。
相続税法は、相続財産でないのに相続税がかかる財産を定めています。
相続財産でないのに相続税がかかる財産をみなし相続財産と言います。
公的年金の未支給年金は、見なし相続財産でもありません。
公的年金の未支給年金は、相続税の対象ではありません。
⑦未支給年金は受取人の所得になる
未支給年金は、法律で一定の遺族に認められた権利です。
受取人の固有の財産だから、受取人の所得になります。
受け取る年金や金額によっては、所得税がかかります。
受け取った年の翌年3月15日までに確定申告が必要になる場合があります。
4企業年金の未支給は相続税の対象になる
①現職死亡の企業年金は死亡退職金扱い
社員が現職で死亡し企業年金が遺族に支払われた場合、死亡退職金と見なされます。
死亡退職金は、相続財産でないのに相続税がかかる財産です。
死亡退職金には、非課税限度額があります。
非課税限度額=500万円×法定相続人の数
死亡退職金が非課税限度額以下である場合、相続税は課税されません。
相続人以外の人が死亡退職金を受け取った場合、非課税の適用はありません。
②企業年金受給中の死亡は定期金扱い
企業年金受給中に死亡し遺族に未支給年金が支払われた場合、定期金と見なされます。
定期金に関する権利は、相続財産です。
定期金にかかる権利は、非課税枠はありません。
5私的年金の未支給は相続税の対象になる
被相続人が個人年金の契約を締結していることがあります。
年金受給中に死亡し遺族に未支給年金が支払われた場合、年金受給権を相続したと言えます。
私的年金の年金受給権は、相続財産です。
私的年金の年金受給権は、非課税枠はありません。
6財産調査を司法書士に依頼するメリット
相続が発生したら、ご遺族は大きな悲しみに包まれます。
大きい悲しみのなかで、もれなく迅速に相続財産を調査するのは身体的にも精神的にも大きな負担になります。
負担の大きい財産調査を司法書士などの専門家に依頼すれば、遺族のお疲れも軽減されるでしょう。
その後の相続手続もスムーズになります。
被相続人の財産は、相続人もあまり詳しく知らないという例が意外と多いものです。
悲しみの中で被相続人の築いてきた財産をたどるのは切なく、苦しい作業になります。
調査のためには銀行などの金融機関から、相続が発生したことの証明として戸籍謄本等の提出が求められます。
戸籍謄本の取り寄せも含め、手続をおまかせいただけます。
仕事や家事でお忙しい方や高齢、療養中などで手続きが難しい方は、手続きを丸ごとおまかせできます。
家族にお世話が必要な方がいて、頻繁に家を空けられない方からのご相談もお受けしております。
財産調査でお疲れが出る前に、司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。
失踪宣告で借金を相続
1失踪宣告で相続が開始する
①失踪宣告で死亡と見なされる
相当長期間、行方不明になっている場合、死亡している可能性が高い場合があります。
条件を満たした場合、死亡の取り扱いをすることができます。
失踪宣告とは、行方不明の人が死亡した取り扱いとするための手続です。
失踪宣告がされたら、たとえ死亡していなくても死亡した取り扱いをします。
行方不明が長期化した場合、家族が困ります。
家族であっても、行方不明の人の財産を処分することができません。
行方不明者の配偶者は、再婚することができません。
残された家族のために、行方不明者を死亡したものと扱う制度が失踪宣告の制度です。
失踪宣告がされると、死亡した取り扱いをします。
失踪宣告がされた人に、相続が発生します。
相続財産は、相続人全員の共有財産になります。
相続人全員の合意があれば、相続財産を自由に分けることができます。
遺産分割協議によって相続した後は、相続人が自由に処分をすることができます。
②普通失踪は生死不明7年
一般的に失踪宣告といった場合、普通失踪を指しています。
生死不明の期間を失踪期間と言います。
普通失踪では、失踪期間が7年必要です。
生死不明のまま7年経過した場合に、自動的に死亡と見なされるわけではありません。
家庭裁判所が失踪宣告したときに、死亡と見なされます。
生死不明の人の家族や利害関係人は、家庭裁判所に失踪宣告の申立てをすることができます。
家庭裁判所に失踪宣告の申立てをした後、家庭裁判所が死亡と認めていいか調査します。
家庭裁判所の状況や事件の内容によっては、調査のために1年ほどかかる場合もあります。
生死不明のまま7年以上経過したと認められる場合、家庭裁判所は失踪宣告をすることができます。
③特別失踪(危難失踪) は生死不明1年
行方不明の人が大災害や大事故にあっていることがあります。
大災害や大事故に遭った場合、死亡している可能性が非常に高いものです。
特別失踪(危難失踪)とは「戦地に行った者」「沈没した船舶に乗っていた者」「その他死亡の原因となる災難に遭遇した者」などを対象にする失踪宣告です。
死亡している可能性が非常に高いので、失踪期間は短い期間です。
特別失踪(危難失踪)では、失踪期間が1年で済みます。
生死不明のまま1年以上経過したと認められる場合、家庭裁判所は失踪宣告をすることができます。
④死亡と見なされる日に相続開始
失踪宣告がされると、たとえ死亡していなくても死亡した取り扱いをします。
普通失踪では生死不明になってから7年間経過したときに、死亡したものと見なされます。
特別失踪(危難失踪)では危難が去ったときに、死亡したものと見なされます。
たとえ死亡していなくても死亡した取り扱いをするから、相続が開始します。
死亡と見なされる日が、相続が開始する日です。
失踪宣告の手続は、長期間かかります。
相続が開始する日は、失踪宣告の申立てをした日ではありません。
裁判所が失踪宣告をした日でもありません。
相続手続の基準になるのが、死亡と見なされる日です。
2行方不明なら家族に取立てができない
①家族に返済義務はない
お金を借りたら、借りたお金を返さなければなりません。
お金を返す義務は、お金を借りた人だけの義務です。
お金を借りた後、借金を返せなくなることがあります。
借金を返せなくなった場合、お金を借りた人が責任を取ります。
お金を返す義務は、お金を借りた人だけの義務だからです。
借金がきっかけになって、行方不明になることがあります。
借金の返済を滞らせて行方不明になっても、家族に返済義務はありません。
お金を借りた人の責任であって、家族はお金を借りた人ではないからです。
借金を滞らせても、家族が自動で借金を返済する義務を負うことはありません。
②連帯保証人は肩代わりの義務がある
お金を借りるときに、連帯保証人を立てることがあります。
連帯保証人は、借金を返せなくなったときに肩代わりをする人です。
借金を返せなくなった場合でも肩代わりをしてくれるから、安心してお金を貸すことができます。
お金を借りるときに、家族が連帯保証人になることがあります。
お金を借りた人が返済を滞らせた場合、連帯保証人は肩代わりをしなければなりません。
お金を借りた人が返済を滞らせたまま行方不明になった場合、代わりに返済をしなければなりません。
連帯保証人は、借金を返せなくなったときに肩代わりをしますと約束した人だからです。
連帯保証人は、肩代わりの義務があります。
③第三者への取立ては違法行為
お金を返す義務は、お金を借りた人だけの義務です。
連帯保証人には、肩代わりに義務があります。
家族であっても、お金を返す義務はありません。
連帯保証人になっていないのに、自動で借金を返済する義務を負うことはありません。
債権者は借金を返してもらいたいから、家族に連絡を取ってくるでしょう。
お金を返す義務がない人に対して、みだりに催促する行為は違法です。
貸金業者は、行政から監督を受けています。
執拗な催促をする場合、行政に苦情を申し入れることができます。
違法な取り立てと認められた場合、業務停止などの行政処分が行われます。
第三者への取立ては、違法行為です。
3失踪宣告後は借金は相続財産
①失踪宣告で相続人に返済義務
失踪宣告がされると、たとえ死亡していなくても死亡した取り扱いをします。
失踪宣告で、相続が発生します。
相続が発生すると、被相続人のものは相続人が相続します。
被相続人のプラスの財産とマイナスの財産が相続財産です。
被相続人が借金を抱えたまま死亡した場合、借金は相続人全員に相続されます。
借金は相続されるから、相続人は借金の返済義務を相続します。
失踪宣告がされると、相続人全員に借金の返済義務が引き継がれます。
②失踪宣告後は借金の調査ができる
お金を返す義務は、お金を借りた人だけの義務です。
借金がいくらあるかなどの信用情報は、重要な個人情報です。
お金を借りた人が生きている間、家族が勝手に借金を調査することはできません。
お金を借りた人に失踪宣告がされた場合、相続人は借金の調査をすることができます。
消費者金融やクレジット会社は、指定信用情報機関に加入しています。
信用情報を確認すると、ローンやクレジットなどの取引内容、返済状況が詳しく分かります。
(1)日本信用情報機構(JICC)
(2)株式会社シー・アイ・シー(CIC)
(3)全国銀行協会全国銀行個人信用情報センター(KSC)
相続人は、信用情報機関に対して情報開示を請求することができます。
信用情報機関に開示請求をすることで、被相続人の借金を調べることができます。
③失踪宣告後は相続放棄ができる
失踪宣告がされるまでは、行方不明の人は生きている扱いです。
相続が発生した後、相続人は相続を単純承認するか相続放棄をするか選択することができます。
相続放棄を希望する場合、家庭裁判所に対して相続放棄を希望する申立てをします。
被相続人が生きている間は、相続放棄をすることできません。
相当長期間行方不明であっても、失踪宣告されずに行方不明のままなら生きている扱いです。
行方不明のままなのに相続放棄の申立てを提出しても、受け付けてもらえません。
④相続放棄をしても生命保険の死亡保険金
相続が発生した後、相続人は相続を単純承認するか相続放棄をするか選択することができます。
単純承認と見なされる行為は、法律で定められています。
相続財産の名義変更をした、相続財産である銀行の預貯金を引き出して使ってしまった場合が典型的です。
単純承認をしたのに、家庭裁判所で相続放棄が認められても無効です。
単純承認をしたら、撤回することはできないからです。
失踪宣告がされると、たとえ死亡していなくても死亡した取り扱いをします。
行方不明になった人に生命保険がかけてあった場合、生命保険の死亡保険金が支払われます。
原則として生命保険の保険金を受け取る権利は、相続人の固有の財産です。
受取人が「相続人」と指定してあっても、相続で受け取るものではありません。
被相続人の死亡をきっかけにして、保険契約によって受取人が保険金を受け取るものです。
相続によって、被相続人から受け継いだものではありません。
相続人の固有の財産だから、相続放棄をした人は生命保険の保険金を受け取ることができます。
生命保険の保険金を受け取ったことで、相続放棄が無効になることはありません。
相続放棄をした場合、消費者金融の借金を引き継ぐことはありません。
相続放棄をしても、生命保険の死亡保険金を受け取ることができます。
債務者の家族であっても、生命保険の死亡保険金で債務者の借金を返済する義務はありません。
4失踪宣告を受けた人が生きていたら
①失踪宣告の取消は家庭裁判所で手続
失踪宣告がされたけど、実は本人は新天地で元気に生きていたということがあります。
失踪宣告をされた人が生きていると分かっても、自動的に失踪宣告が取り消されるわけではありません。
家庭裁判所は失踪宣告された人が、その後、生きているかどうか分からないからです。
失踪宣告された人が生きていることが分かった場合や失踪宣告されたときと異なる時期に死亡したことが判明した場合、家庭裁判所に失踪宣告の取消の審判の申立てをします。
家庭裁判所が失踪宣告を取消した場合、失踪宣告による死亡の効果がなかったことになります。
失踪宣告の取消をしたときも、官報にお知らせを出します。
②財産は返還しなければならない
失踪宣告とは、行方不明の人が死亡した取り扱いとする手続です。
失踪宣告がされると、相続が開始します。
失踪宣告が取り消されると、行方不明者が死亡したことはなかったことになります。
死亡がなかったことになりますから、相続もなかったことになります。
相続によって財産を得た人は、行方不明者に財産を返さなければなりません。
たとえ、行方不明者が生きているとは思わなかったとしても、財産は返す必要があります。
返す財産は、現に利益を受けている限度とされています。
相続人が遊興費などで使ってしまっている場合は、返す必要がありません。
生活費や自分の借金の返済に充てている場合などは、現に利益を受けていると言えます。
その分は、返還が必要です。
現に利益を受けている限度とは、同じ形で残っている意味ではありません。
形を変えて残っている場合も含みます。
生活費として使ったのであれば、自分のお金をその分使わずに済んでいます。
生活費分の利益を得ていると言えます。
③生命保険も返還しなければならない
死亡により支払われるものとして、生命保険の保険金は高額なものでしょう。
失踪宣告が取り消されると、返還しなければなりません。
住宅ローンを組むときに団体信用生命保険に加入している場合、生命保険金で住宅ローンの残額を支払っているでしょう。
住宅ローンの残額を支払わなくてもよくなったという形で利益が残っていると考えられます。
現に利益を受けていると言えますから、この利益を返還しなければなりません。
5生死不明の相続人がいる相続を司法書士に依頼するメリット
相続人が行方不明であることは、割とよくあることです。
行方不明の相続人がいると、相続手続を進めることができません。
相続が発生した後、困っている人はたくさんいます。
自分たちで手続しようとして、挫折する方も少なくありません。
失踪宣告の申立ては、家庭裁判所に手続が必要になります。
通常ではあまり聞かない手続になると、専門家のサポートが必要になることが多いでしょう。
信託銀行などは、高額な手数料で相続手続を代行しています。
被相続人が生前、相続人のためを思って、高額な費用を払っておいても、信託銀行はこのような手間のかかる手続を投げ出して知識のない遺族を困らせます。
知識のない相続人が困らないように高額でも費用を払ってくれたはずなのに、これでは意味がありません。
税金の専門家なども対応できないでしょう。
困っている遺族はどうしていいか分からないまま、途方に暮れてしまいます。
裁判所に提出する書類作成は、司法書士の専門分野です。
途方に暮れた相続人をサポートして、相続手続を進めることができます。
自分たちでやってみて挫折した方も、信託銀行などから丸投げされた方も、相続手続で不安がある方は司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。
相続した借金の時効援用
1借金と連帯保証人の地位は相続される
①相続人になる人は法律で決まっている
相続が発生したら、親族のうち一定の範囲の人が相続人になります。
だれが相続人になるかについては、民法で決められています。
相続人になる人は、次のとおりです。
(2)~(4)の場合、先順位の人がいる場合、後順位の人は相続人になれません。
(1)配偶者は必ず相続人になる
(2)被相続人に子どもがいる場合、子ども
(3)被相続人に子どもがいない場合、親などの直系尊属
(4)被相続人に子どもがいない場合で、かつ、親などの直系尊属が被相続人より先に死亡している場合、兄弟姉妹
②債務者が死亡したら借金は相続される
相続が発生したら、被相続人のものは相続人が引き継ぎます。
被相続人のものには、さまざまなものがあるでしょう。
相続財産というと、プラスの財産だけ想像しがちです。
相続財産には、マイナスの財産が含まれます。
被相続人が借金をしたまま、死亡することがあります。
被相続人の借金は、相続人全員が相続します。
債務者が死亡しても、借金はなくならないからです。
債務者が死亡したら、債務者の相続人全員が借金を相続します。
③連帯保証人が死亡したら保証債務は相続される
被相続人が第三者の借金について、連帯保証人になっていることがあります。
連帯保証人とは、債務者が借金を返せないときに肩代わりをする人です。
連帯保証人には、肩代わりの義務があります。
保証債務とは、連帯保証人が負う肩代わりの義務です。
保証債務は、連帯保証人の相続人全員が相続します。
連帯保証人が死亡しても、肩代わりの義務はなくならないからです。
連帯保証人が死亡したら、連帯保証人の相続人全員が借金を相続します。
2相続した借金の時効援用
①消滅時効で権利行使ができなくなる
消滅時効とは、長期間権利行使をしない場合に権利が行使できなくなる制度です。
債権者は、借金を払って欲しいと請求する権利があります。
債務者の事情を察して、借金を請求せずに長期間経過することがあります。
借金を請求せずに長期間経過した場合、条件にあてはまれば権利行使が許されなくなります。
②消滅時効の利益を受けるため時効援用通知
長期間経過しても、自動的に借金がなくなるわけではありません。
消滅時効が完成すると、借金を払う必要がなくなります。
借金を払わなくてよくなることを、債務者が不道徳と思うことがあります。
お金を借りたのだからきちんとお金を返すべきだと考えている債務者に対して、消滅時効を押し付けるべきではありません。
消滅時効によって利益を受けるか受けないか、債務者は判断することができます。
時効の利益を受ける意思表示を時効の援用と言います。
時効を援用する場合、配達証明付き内容証明郵便で通知するのがおすすめです。
③消滅時効援用は各相続人が判断
被相続人の借金は、相続人全員が相続します。
債権者は、各相続人に対して法定相続分で借金を請求することができます。
消滅時効によって利益を受けるか受けないか、各相続人が判断することができます。
借金を払わなくてよくなることを不道徳と思う相続人に対して、消滅時効を押し付けるべきではないからです。
時効を援用する場合、時効援用を通知します。
一部の相続人だけが時効援用通知をした場合、通知した相続人だけ効果があります。
相続人全員が時効援用を希望する場合、相続人全員が連名で時効援用を通知します。
家族のさまざまな事情から、相続人が疎遠になっていることがあります。
相続人全員に連絡が取れないことがあるでしょう。
相続人全員で時効援用通知をする義務はありません。
消滅時効によって利益を受けるか受けないか、各相続人が判断することができるからです。
3連帯保証人が借金の時効援用
①消滅時効で保証債務を免れる
連帯保証人は、債務者が借金を返せないときに肩代わりをする人です。
債権者は、借金を肩代わりして欲しいと請求する権利があります。
債務者の事情を察して、借金の肩代わりを請求せずに長期間経過することがあります。
借金の肩代わりを請求せずに長期間経過した場合、条件にあてはまれば権利行使が許されなくなります。
②消滅時効の利益を受けるため時効援用通知
消滅時効が完成すると、借金を払う必要がなくなります。
借金がなくなれば、自動で肩代わりの義務はなくなります。
消滅時効によって利益を受けるか受けないか、債務者は判断することができます。
債務者の判断とは別に、連帯保証人は独自で判断することができます。
連帯保証人は、主債務と連帯保証債務の消滅時効を援用することができます。
主債務の消滅時効を援用しても連帯保証債務の消滅時効を援用しても、肩代わりの義務はなくなります。
借金がなくなれば、自動で肩代わりの義務はなくなるからです。
時効を援用する場合、配達証明付き内容証明郵便で通知するのがおすすめです。
③消滅時効援用は各相続人が判断
被相続人の肩代わりの義務は、相続人全員が相続します。
債権者は、各相続人に対して法定相続分で肩代わりを請求することができます。
消滅時効によって利益を受けるか受けないか、各相続人が判断することができます。
肩代わりをしなくてよくなることを不道徳と思う相続人に対して、消滅時効を押し付けるべきではないからです。
時効を援用する場合、時効援用を通知します。
一部の相続人だけが時効援用通知をした場合、通知した相続人だけ効果があります。
消滅時効援用は、各相続人が判断することができます。
4時効期間が経過しても請求してくる
①時効援用するまで請求してくる
債権者は、借金を払って欲しいと請求する権利があります。
時効期間が経過しても、債権者には借金を払って欲しいと請求する権利があります。
借金を払わなくてよくなることを、債務者が不道徳と思うことがあるからです。
債権者から借金を払って欲しいと請求されたら、借金を払ってくれるかもしれません。
借金を払ってくれるかもしれないと考えるから、消滅時効が完成していることを知っていても請求してきます。
被相続人の借金は、相続人全員が相続します。
被相続人の取引状況について、相続人はよく分からないことが多いでしょう。
債権者から借金を払って欲しいと請求されたら、相続人が払ってくれることが多いでしょう。
消滅時効によって利益を受けるか受けないか、債務者は判断することができます。
時効援用するまで、債権者は借金を請求してきます。
②債務承認で時効が更新される
債権者から被相続人の借金を返して欲しいと言われたら、びっくりするでしょう。
被相続人の借金が多額である場合、返済は待って欲しいと言ってしまうかもしれません。
債権者から一括返済が難しいなら分割返済でもいいと言われたら、承諾するかもしれません。
返済は待って欲しいと言った場合、債務を承認したと言えます。
借金の存在を前提にして、返済の猶予を申し出ているからです。
分割返済を承諾した場合、債務を承認したと言えます。
借金の存在を前提にして、分割返済を承諾しているからです。
債務を承認した場合、時効は更新されます。
時効が更新された場合、借金は消滅しません。
③時効期間経過後に主債務者が債務承認
債務を承認した場合、時効は更新されます。
時効期間経過後に、主債務者が債務承認をすることがあります。
消滅時効によって利益を受けるか受けないか、主債務者は判断することができるからです。
債務承認をした主債務者は、借金を払わなければなりません。
債務者の判断とは別に、連帯保証人は独自で判断することができます。
主債務者が債務承認をしても、連帯保証人は消滅時効を援用することができます。
消滅時効を援用した連帯保証人は、借金を肩代わりする義務がなくなります。
④時効期間経過後に連帯保証人が債務承認
時効期間経過後に、連帯保証人が債務承認をすることがあります。
連帯保証人が債務承認をした場合、承認したのは肩代わりの義務です。
連帯保証人には、もともと肩代わりに義務しかないからです。
連帯保証人が債務承認をしても、主債務者は消滅時効を援用することができます。
主債務者には、借金を返す義務があります。
連帯保証人が債務承認をしても、借金を返す義務には影響がないからです。
主債務者は消滅時効を援用した場合、借金がなくなります。
借金がなくなれば、自動で肩代わりの義務はなくなります。
肩代わりの義務を承認しても、借金がなくなれば自動で肩代わりの義務はなくなります。
借金がなくなったのに、肩代わりの義務だけ残ることはありません。
5時効援用で相続放棄が無効になる
①相続放棄をすると一切相続できない
被相続人が借金をしたまま死亡した場合、相続人は相続放棄を検討するでしょう。
家庭裁判所で相続放棄が認められた場合、はじめから相続人でなくなります。
相続放棄をした場合、被相続人の借金を相続することはありません。
借金だけでなく、プラスの財産も相続することはできなくなります。
相続放棄をすると、一切相続できません。
②相続放棄や単純承認の撤回はできない
相続が発生したら、相続人は相続を単純承認するか相続放棄をするか選択することができます。
相続放棄を希望する場合、家庭裁判所に相続放棄を希望する申立てをします。
相続放棄をしたら、相続放棄を撤回することはできません。
相続放棄が撤回できないように、単純承認を撤回することはできません。
相続放棄や単純承認の撤回を認めると、相続手続が混乱するからです。
③相続財産を処分すると単純承認
単純承認をしたら、相続放棄をすることはできません。
相続放棄はできないのに、家庭裁判所に相続放棄の手続がされることがあります。
家庭裁判所は事情を知らないから、相続放棄が認めてしまうでしょう。
事情を知らない家庭裁判所が相続放棄を認めても、無効です。
単純承認したとみなされる行為は、法律で定められています。
相続財産の名義変更をした、相続財産である銀行の預貯金を引き出して使ってしまった場合が典型的です。
単に、引き出しただけであれば、処分とは言えないことが多いでしょう。
引き出したうえ、自分の口座に送金して保管すると、「処分した」と評価される可能性が高くなります。
銀行の預貯金を引き出してお葬式の支払にあてた場合、状況によっては、処分したと判断されることもあります。
相続財産を処分する場合、単純承認になります。
④時効援用は単純承認になる
被相続人の借金すべてが時効完成していた場合、消滅時効を援用するといいでしょう。
消滅時効を援用した場合、借金を引き継ぐことなくプラスの財産を引き継ぐことができます。
被相続人の借金について消滅時効を援用することは、財産を処分することです。
相続財産を処分した場合、相続を単純承認したと判断されます。
単純承認をしたのに、相続放棄が認められても無効です。
消滅時効は、更新されることがあります。
消滅時効が更新された場合、あらためて時効が進行します。
被相続人が複数の借金をしていることがあります。
一部の借金が消滅時効を援用できたとしても、他の借金の消滅時効は完成していないことがあります。
被相続人のマイナスの財産の全容が明らかでない状態で、消滅時効を援用するのは危険です。
消滅時効を援用すると、相続を単純承認したと判断されるからです。
6相続放棄を司法書士に依頼するメリット
相続放棄は、その相続でチャンスは1回限りです。
家庭裁判所に認められない場合、即時抗告という手続を取ることはできます。
高等裁判所の手続で、2週間以内に申立てが必要になります。
家庭裁判所で認めてもらえなかった場合、即時抗告で相続放棄を認めてもらえるのは、ごく例外的な場合に限られます。
一挙にハードルが上がると言ってよいでしょう。
相続が発生してから3か月以内に届出ができなかったのは止むを得なかったと家庭裁判所に納得してもらって、はじめて、家庭裁判所は相続放棄を認めてくれます。
通常は家庭裁判所に対して、上申書や事情説明書という書類を添えて、説得することになります。
家庭裁判所が知りたいことを無視した作文やダラダラとした作文では認めてもらうことは難しいでしょう。
司法書士であれば、家庭裁判所に認めてもらえるポイントを承知しています。
認めてもらえやすい書類を作成することができます。
通常の相続放棄と同様に戸籍謄本や住民票が必要になります。
仕事や家事、通院などでお忙しい人には平日の昼間に役所にお出かけになって準備するのは負担が大きいものです。
戸籍や住民票は郵便による取り寄せもできます。
書類の不備などによる問い合わせは、市区町村役場の業務時間中の対応が必要になります。
やはり負担は軽いとは言えません。
このような戸籍謄本や住民票の取り寄せも司法書士は代行します。
3か月の期限が差し迫っている方や期限が過ぎてしまっている方は、すみやかに司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。
親子共有名義で片方死亡したときの相続
1共有者でも優先されない
①相続人になる人は法律で決まっている
相続が発生したら、親族のうち一定の範囲の人が相続人になります。
だれが相続人になるかについて、民法で決められています。
相続人になる人は、次のとおりです。
(2)~(4)の場合、先順位の人がいる場合、後順位の人は相続人になれません。
(1)配偶者は必ず相続人になる
(2)被相続人に子どもがいる場合、子ども
(3)被相続人に子どもがいない場合、親などの直系尊属
(4)被相続人に子どもがいない場合で、かつ、親などの直系尊属が被相続人より先に死亡している場合、兄弟姉妹
相続人になるはずだった人が被相続人より先に死亡した場合、相続人になるはずだった人の子どもや子どもの子どもが相続します。
相続人になるはずだった人の子どもや子どもの子どもが相続することを代襲相続と言います。
②共有者が自動的に相続するわけではない
被相続人が不動産を共有している場合、被相続人の共有持分は相続人に相続されます。
被相続人が相続人のひとりと不動産を共有していた場合、何となく共有者が相続すると思うかもしれません。
共有者のひとりが相続人である場合、自動的に被相続人の共有持分を相続できるといったことはありません。
共有者であっても、優先権はないからです。
共有者が相続人だから、自動的に相続するといったルールはありません。
③共有者が取得するのは相続人不存在のとき
相続が発生したら、被相続人のものは相続人が相続します。
被相続人が不動産を共有していた場合、被相続人は不動産の共有持分を持っています。
被相続人の共有持分は、相続人が相続します。
共有者の片方が死亡した場合、他の共有者が共有持分を取得することを聞いたことがあるかもしれません。
共有者の片方が死亡した場合に他の共有者が共有持分を取得するのは、相続人が不存在の場合です。
被相続人が天涯孤独の場合、法律で決められた相続人は存在しないでしょう。
法律で決められた相続人はいても、相続人全員が相続放棄をすることがあります。
家庭裁判所で相続放棄が認められた場合、はじめから相続人でなくなります。
法律で決められた相続人全員が相続放棄をした場合、相続人不存在と言えます。
被相続人が払うべきお金を払わないまま、死亡することがあります。
相続人不存在であれば、相続人に払ってもらうことはできません。
被相続人の財産があれば、被相続人の財産から払ってもらいたいと望むでしょう。
被相続人が不動産を共有していた場合、共有持分は財産と言えます。
被相続人に特別縁故者がいることがあります。
特別縁故者とは、被相続人に特別な縁故があった人です。
家庭裁判所に特別縁故者と認められた場合、財産が分与を受けることができます。
受け取る人がいない財産は、国庫に帰属します。
国庫に帰属すべき財産が共有持分である場合、他の共有者が取得します。
被相続人に相続人がいる場合、相続人不存在ではありません。
共有者のひとりが死亡しても、自動で他の共有者が被相続人の共有持分を取得することはできません。
2親子共有名義の建物で配偶者居住権
①配偶者短期居住権は親子共有名義の建物で認められる
配偶者短期居住権と配偶者居住権は、相続発生後に配偶者が住み場所を失わないようにするために作られた権利です。
配偶者短期居住権が認められる要件は、次のとおりです。
(1)法律上の配偶者であること
(2)被相続人の所有していた建物であること
(3)相続開始時に居住していたこと
配偶者短期居住権は、要件が満たされれば自動で認められます。
配偶者短期居住権が認められるためには、被相続人単独所有の建物に限られません。
被相続人が第三者と共有している建物であっても、配偶者短期居住権は認められます。
被相続人が配偶者以外の人と共有している建物であっても、差し支えありません。
配偶者短期居住権は、親子共有名義の建物で認められます。
②配偶者居住権は親子共有名義の建物で認められない
配偶者居住権が認められる要件は、次のとおりです。
(1)法律上の配偶者であること
(2)被相続人の所有していた建物であること
(3)相続開始時に居住していたこと
(4)配偶者居住権を設定
配偶者居住権は、自動で発生しません。
配偶者居住権を設定する必要があります。
配偶者居住権が認められるためには、被相続人単独所有の建物に限られません。
被相続人と配偶者の共有建物について、配偶者居住権が認められます。
配偶者以外の第三者と共有する建物について、配偶者居住権が認められません。
配偶者居住権は、原則として配偶者が終身居住する権利です。
配偶者以外の第三者と共有する建物である場合、配偶者居住権は大きな負担になります。
他の共有者にとって過大な負担になるから、配偶者以外の第三者と共有する建物である場合配偶者居住権は認められません。
配偶者居住権は、親子共有名義の建物で認められません。
3相続で共有を解消する
①共有持分を取得して他の財産を取得しない
相続が発生したら、被相続人のものは相続人が相続します。
親子で不動産を共有していた場合、他の共有者は相続人のひとりでしょう。
相続財産の分け方は、相続人全員の合意で決めなければなりません。
被相続人と不動産を共有していても、自動で共有持分を相続することはできません。
他の共有者である相続人が共有持分を取得して、他の財産を取得しない合意をするといいでしょう。
相続人全員で合意できれば、相続をきっかけにして共有を解消することができます。
他の相続人にとって公平と思えるだけの財産がない場合、分け方の合意はできないでしょう。
②共有持分を取得して代償金の支払い
相続財産は、分けやすい財産と分けにくい財産があるでしょう。
不動産は、分けにくい財産の代表例です。
相続財産の大部分が不動産である場合、そのまま分けるのは難しいでしょう。
一部の相続人が不動産を取得した場合、他の相続人は不公平を感じるからです。
法定相続分と較べて高価な財産を取得する場合、代償分割をすることで合意できることがあります。
代償分割とは、一部の相続人が高価な財産を相続し、他の相続人は高価な財産を相続した人から、その分のお金をもらう方法です。
他の共有者である相続人が共有持分を取得して、他の相続人に代償を払う合意をするといいでしょう。
相続人全員で合意できれば、相続をきっかけにして共有を解消することができます。
共有持分を取得する相続人は、代償金を支払わなければなりません。
共有持分を取得する相続人が代償金を準備できない場合、分け方の合意はできないでしょう。
代償金を支払うと約束したのに、支払ってもらえないと相続人間でトラブルになります。
③不動産全体を売却してお金で分ける
代償分割では、不動産を相続する人が代償金を準備する必要があります。
不動産が高価である場合、代償金を準備することが難しいでしょう。
相続財産の大部分が高価な不動産である場合、換価分割をすることで合意ができることがあります。
換価分割とは、不動産を売却してお金に換えた後、お金を分ける方法です。
換価分割は、実際に売れてからお金で分ける方法です。
相続人全員で不動産全体を売却して、お金で分ける合意をするといいでしょう。
相続人全員で合意できれば、相続をきっかけにして共有を解消することができます。
不動産の価値をいくらと考えるか、だれが実際に不動産を相続するのかで話し合いがまとまらないという心配はありません。
せっかく家族が守ってきた不動産を手放すことへの罪悪感にかられるかもしれません。
売却しようとしたのに買い手がつかないと相続手続きが長引くおそれがあります。
④共有持分の細分化はデメリットが大きい
相続財産の分け方は、相続人全員の合意で決めなければなりません。
相続財産は、複数の分け方があります。
相続人にもさまざまな考えがあるでしょう。
相続人全員の話し合いがまとまらないことは、少なくありません。
被相続人の共有持分を相続人全員で共有する方法は、話し合いが不要です。
相続人全員で法定相続分で共有するから、一見して公平に見えます。
話し合いがまとまらないと、先延ばしをしたくなります。
被相続人の共有持分をさらに細分化することはおすすめできません。
先延ばししても、メリットはないからです。
先延ばしすると、共有者にさらに相続が発生するでしょう。
共有者の共有持分は、共有者の相続人が相続します。
さらに共有者が増えることになります。
適切に相続登記をしていないと、だれにどれだけの持分があるのか分からなくなります。
共有物を処分する場合、共有者全員の合意が必要になります。
共有者が増えると、単純に話し合いが難しくなります。
気心が知れた兄弟で共有している場合、話し合いは比較的容易です。
相続で疎遠な親族と共有している場合、話し合いは難しくなるでしょう。
見知らぬ親族と共有している場合、話し合いはできなくなって先延ばしになるでしょう。
事実上、不動産の利活用ができなくなります。
共有持分の細分化はデメリットが大きいので、おすすめできません。
4相続前にできること
①遺言書作成
被相続人は生前に、自分の財産を自由に処分することができます。
被相続人は死亡後に、自分の財産をだれに引き継いでもらうか遺言書で自由に決めることができます。
遺言書で財産の行き先が決めてある場合、遺言書のとおりに分けることができます。
相続人全員で分け方の話し合いをする必要はありません。
遺言書は、作成するだけでは意味がありません。
遺言書の内容は、自動で実現するわけではないからです。
遺言書を作成する場合、遺言執行者を選任することができます。
遺言執行者は、遺言書の内容を実現する人です。
遺言執行者は、遺言書の内容を実現するために必要な権限があります。
遺言執行者がいると、わずらわしい相続手続をおまかせすることができます。
遺言書を作成すると、家族がラクになります。
②共有持分を生前贈与
被相続人は生前に、自分の財産を自由に処分することができます。
自分の持っている共有持分を生前贈与することができます。
共有持分全部を一度に贈与することもできるし、共有持分を分割して複数回に分けて贈与することもできます。
贈与する財産によっては、贈与税が課せられるかもしれません。
一般的に言って、贈与税は想像以上に高額になりがちです。
高額な贈与をする場合、税務署や税理士に相談するといいでしょう。
③子どもには遺留分がある
被相続人は生前に、自分の財産を自由に処分することができます。
被相続人は死亡後に、自分の財産をだれに引き継いでもらうか遺言書で自由に決めることができます。
財産は被相続人が1人で築いたものではないでしょう。
家族の協力があってこそ築くことができた財産のはずです。
被相続人の名義になっているからといって、まったく無制約の自由にすることはできません。
今まで協力してきた家族に、酷な結果となることがあるからです。
被相続人に近い関係の相続人には、相続財産に対して最低限の権利が認められています。
相続財産に対して、認められる最低限の権利のことを遺留分と言います。
配偶者は、必ず相続人になります。
被相続人に子どもがいる場合、子どもは相続人になります。
配偶者と子どもは、遺留分が認められています。
遺留分が認められる人のことを遺留分権利者と言います。
遺留分を侵害するような遺言書であっても、作成することはできます。
公正証書遺言であっても、遺言書作成だけで遺留分を奪うことはできません。
遺留分を侵害するような生前贈与であっても、することはできます。
遺留分を侵害した場合、遺留分権利者は遺留分侵害額請求をするでしょう。
相続人間の大きなトラブルに発展します。
遺言書作成や生前贈与をする場合、遺留分に注意しましょう。
5遺言書作成と遺言執行を司法書士に依頼するメリット
不動産を共有している場合、共有者は親子や兄弟などの近い関係の人が多いでしょう。
共有者の片方に相続が発生した場合、他の共有者が相続人であることが多いでしょう。
遺産分割協議が必要なのに、共有者だから当然に相続できると誤解しているかもしれません。
相続人でもないのに、一方的に相続すると言われても困惑するでしょう。
相続人間のトラブルに発展しがちです。
相続手続は、タイヘンです。
単なる相続人の誤解や無理解で、トラブルに発展するからです。
不動産の共有は、デメリットが大きいのでおすすめできません。
事前の対策で、防げるトラブルと言えます。
司法書士は、相続対策をサポートすることができます。
相続対策をするために、司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。
夫婦共有名義で片方死亡したときの相続
1共有者でも優先されない
①相続人になる人は法律で決まっている
相続が発生したら、親族のうち一定の範囲の人が相続人になります。
だれが相続人になるかについて、民法で決められています。
相続人になる人は、次のとおりです。
(2)~(4)の場合、先順位の人がいる場合、後順位の人は相続人になれません。
(1)配偶者は必ず相続人になる
(2)被相続人に子どもがいる場合、子ども
(3)被相続人に子どもがいない場合、親などの直系尊属
(4)被相続人に子どもがいない場合で、かつ、親などの直系尊属が被相続人より先に死亡している場合、兄弟姉妹
相続人になるはずだった人が被相続人より先に死亡した場合、相続人になるはずだった人の子どもや子どもの子どもが相続します。
相続人になるはずだった人の子どもや子どもの子どもが相続することを代襲相続と言います。
②共有者が自動的に相続するわけではない
被相続人が不動産を共有している場合、被相続人の共有持分は相続人に相続されます。
被相続人が相続人のひとりと不動産を共有していた場合、何となく共有者が相続すると思うかもしれません。
共有者のひとりが相続人である場合、自動的に被相続人の共有持分を相続できるといったことはありません。
共有者であっても、優先権はないからです。
共有者が相続人だから、自動的に相続するといったルールはありません。
③共有者が取得するのは相続人不存在のとき
相続が発生したら、被相続人のものは相続人が相続します。
被相続人が不動産を共有していた場合、被相続人は不動産の共有持分を持っています。
被相続人の共有持分は、相続人が相続します。
共有者の片方が死亡した場合、他の共有者が共有持分を取得することを聞いたことがあるかもしれません。
共有者の片方が死亡した場合に他の共有者が共有持分を取得するのは、相続人が不存在の場合です。
被相続人が天涯孤独の場合、法律で決められた相続人は存在しないでしょう。
法律で決められた相続人はいても、相続人全員が相続放棄をすることがあります。
家庭裁判所で相続放棄が認められた場合、はじめから相続人でなくなります。
法律で決められた相続人全員が相続放棄をした場合、相続人不存在と言えます。
被相続人が払うべきお金を払わないまま、死亡することがあります。
相続人不存在であれば、相続人に払ってもらうことはできません。
被相続人の財産があれば、被相続人の財産から払ってもらいたいと望むでしょう。
被相続人が不動産を共有していた場合、共有持分は財産と言えます。
被相続人に特別縁故者がいることがあります。
特別縁故者とは、被相続人に特別な縁故があった人です。
家庭裁判所に特別縁故者と認められた場合、財産が分与を受けることができます。
受け取る人がいない財産は、国庫に帰属します。
国庫に帰属すべき財産が共有持分である場合、他の共有者が取得します。
被相続人に相続人がいる場合、相続人不存在ではありません。
共有者のひとりが死亡しても、自動で他の共有者が被相続人の共有持分を取得することはできません。
④ローンの有無を確認
夫婦で不動産を共有している場合、夫婦でお金を出し合って不動産を購入したケースでしょう。
不動産を購入するときに、夫婦それぞれがローンを組んでいることがあります。
被相続人にローンがある場合、ローンは相続財産です。
被相続人のローンは、原則として相続人が相続します。
多くの場合、被相続人がローンを組む際に団体信用生命保険に加入します。
ローン返済中に死亡した場合、保険金でローンは完済になります。
ローンを組む際に団体信用生命保険に加入することは義務ではありません。
ローン契約者の健康状態によっては、団体信用生命保険に加入できないことがあります。
団体信用生命保険に加入していない場合、そのままローンの返済義務が残ります。
ローンの返済義務は、相続人に相続されます。
2夫婦共有名義の建物で配偶者居住権
①配偶者短期居住権は夫婦共有名義の建物で認められる
配偶者短期居住権と配偶者居住権は、相続発生後に配偶者が住み場所を失わないようにするために作られた権利です。
配偶者短期居住権が認められる要件は、次のとおりです。
(1)法律上の配偶者であること
(2)被相続人の所有していた建物であること
(3)相続開始時に居住していたこと
配偶者短期居住権は、要件が満たされれば自動で認められます。
配偶者短期居住権が認められるためには、被相続人単独所有の建物に限られません。
被相続人が第三者と共有している建物であっても、配偶者短期居住権は認められます。
被相続人が配偶者以外の人と共有している建物であっても、差し支えありません。
配偶者短期居住権は、夫婦共有名義の建物で認められます。
②配偶者居住権は夫婦共有名義の建物で認められる
配偶者居住権が認められる要件は、次のとおりです。
(1)法律上の配偶者であること
(2)被相続人の所有していた建物であること
(3)相続開始時に居住していたこと
(4)配偶者居住権を設定
配偶者居住権は、自動で発生しません。
配偶者居住権を設定する必要があります。
配偶者居住権が認められるためには、被相続人単独所有の建物に限られません。
被相続人と配偶者の共有建物について、配偶者居住権が認められます。
配偶者以外の第三者と共有する建物について、配偶者居住権が認められません。
配偶者居住権は、原則として配偶者が終身居住する権利です。
配偶者以外の第三者と共有する建物である場合、配偶者居住権は大きな負担になります。
他の共有者にとって過大な負担になるから、配偶者以外の第三者と共有する建物である場合配偶者居住権は認められません。
配偶者居住権は、夫婦共有名義の建物で認められます。
3夫婦共有名義の片方死亡したときの相続で注意すること
①前婚の子どもは相続人
被相続人に子どもがいる場合、子どもは相続人になります。
子どもは、夫婦の子どもだけではありません。
被相続人に再婚歴がある場合、前婚配偶者との間に子どもがいることがあります。
前婚配偶者は、離婚した元配偶者は相続人になりません。
被相続人が離婚しても、子どもは被相続人の子どものままです。
離婚した元配偶者が引き取っても、被相続人の子どもです。
離婚した元配偶者の氏を名乗っていても、被相続人の子どもです。
相続が発生したら、被相続人の財産は相続財産になります。
相続財産の分け方は、相続人全員の合意で決める必要があります。
相続財産の分け方を決める話し合いを遺産分割協議と言います。
被相続人に前婚の子どもがいる場合、子どもは相続人です。
前婚の子どもを含めて、分け方の合意をしなければなりません。
一部の相続人を含めないで合意をしても、有効な合意ではありません。
前婚の子どもは、相続人になります。
②未成年の子どもに特別代理人
被相続人の子どもが赤ちゃんなどの未成年であることがあります。
未成年者は、物事のメリットデメリットを適切に判断することができません。
未成年者が契約などの法律行為をする場合、原則として親などの親権者が代わりに行います。
未成年者が相続人になる場合、親などの親権者は被相続人の配偶者でしょう。
被相続人の配偶者は、常に相続人になります。
未成年者と親などの親権者が同時に相続人である場合、親などの親権者は未成年者を代理することはできません。
親などの親権者の行為は、利益相反になるからです。
利益相反とは、一方がソンすると他方がトクをする関係です。
未成年者がソンをすると親などの親権者がトクする関係になるから、代理することはできません。
未成年にソンさせる意思はないなどの主張は、意味がありません。
親などの親権者の主観は、関係ありません。
客観的に利益相反と判断される場合、代理をすることができません。
親などの親権者が利益相反で代理ができない場合、家庭裁判所で代わりに人を選任してもらう必要があります。
代わりの人は、特別代理人と言います。
特別代理人は、未成年者の代わりに遺産分割協議に参加します。
未成年の子どもが相続人になる場合、特別代理人の選任が必要になります。
③自分のローンは残る
不動産を購入するときに、夫婦それぞれがローンを組んでいることがあります。
債務者がローン返済中に死亡した場合、団体信用生命保険の保険金でローンは完済になります。
ローンが完済になるのは、被相続人の債務だけです。
生存配偶者のローンは、今までどおり返済が必要です。
④抵当権抹消登記は申請が必要
ローンの返済が滞ったときに備えて、銀行は不動産を担保にします。
返済が滞ったときに備えて、担保にする権利を抵当権と言います。
ローンを組んだときに、不動産には抵当権設定登記がされています。
債務者がローン返済中に死亡した場合、団体信用生命保険の保険金でローンは完済になります。
ローンが完済になると、抵当権はなくなります。
抵当権がなくなっても、抵当権の登記は自動でなくなりません。
金融機関が自動で消してくれることはありません。
抵当権抹消登記は、当事者からの申請が必要です。
4相続前にできること
①遺言書作成
被相続人は生前に、自分の財産を自由に処分することができます。
被相続人は死亡後に、自分の財産をだれに引き継いでもらうか遺言書で自由に決めることができます。
遺言書で財産の行き先が決めてある場合、遺言書のとおりに分けることができます。
相続人全員で分け方の話し合いをする必要はありません。
遺言書は、作成するだけでは意味がありません。
遺言書の内容は、自動で実現するわけではないからです。
遺言書を作成する場合、遺言執行者を選任することができます。
遺言執行者は、遺言書の内容を実現する人です。
遺言執行者は、遺言書の内容を実現するために必要な権限があります。
遺言執行者がいると、わずらわしい相続手続をおまかせすることができます。
遺言書を作成すると、家族がラクになります。
②おしどり贈与を活用して共有持分を生前贈与
被相続人は生前に、自分の財産を自由に処分することができます。
自分の持っている共有持分を生前贈与することができます。
共有持分全部を一度に贈与することもできるし、共有持分を分割して複数回に分けて贈与することもできます。
贈与する財産によっては、贈与税が課せられるかもしれません。
おしどり贈与とは、贈与税の配偶者控除の特例です。
婚姻期間が20年以上の夫婦で居住用不動産を贈与したときに適用されます。
おしどり贈与の適用を受ければ、基礎控除とは別に2,000万円の控除が受けられます。
一般的に言って、贈与税は想像以上に高額になりがちです。
高額な贈与をする場合、税務署や税理士に相談するといいでしょう。
③子どもには遺留分がある
被相続人は生前に、自分の財産を自由に処分することができます。
被相続人は死亡後に、自分の財産をだれに引き継いでもらうか遺言書で自由に決めることができます。
財産は被相続人がひとりで築いたものではないでしょう。
家族の協力があってこそ築くことができた財産のはずです。
被相続人の名義になっているからといって、まったく無制約の自由にすることはできません。
今まで協力してきた家族に、酷な結果となることがあるからです。
被相続人に近い関係の相続人には、相続財産に対して最低限の権利が認められています。
相続財産に対して、認められる最低限の権利のことを遺留分と言います。
配偶者は、必ず相続人になります。
被相続人に子どもがいる場合、子どもは相続人になります。
配偶者と子どもは、遺留分が認められています。
遺留分が認められる人のことを遺留分権利者と言います。
遺留分を侵害するような遺言書であっても、作成することはできます。
公正証書遺言であっても、遺言書作成だけで遺留分を奪うことはできません。
遺留分を侵害するような生前贈与であっても、することはできます。
遺留分を侵害した場合、遺留分権利者は遺留分侵害額請求をするでしょう。
相続人間の大きなトラブルに発展します。
遺言書作成や生前贈与をする場合、遺留分に注意しましょう。
5遺言書作成と遺言執行を司法書士に依頼するメリット
不動産を共有している場合、共有者は親子や兄弟などの近い関係の人が多いでしょう。
共有者の片方に相続が発生した場合、共有者が相続人であることが多いでしょう。
共有者だから当然に相続できると誤解していることがあります。
他の相続人から見ると一方的に相続すると言われているのだからいい気持ちはしません。
相続人間のトラブルに発展しがちです。
相続手続は、タイヘンです。
単なる相続人の誤解や無理解で、トラブルに発展するからです。
不動産の共有は、デメリットが大きいのでおすすめできません。
相続人全員が合意できるのであれば、共有者が被相続人の共有持分を相続するのがおすすめです。
相続人全員の合意ができれば、です。
相続人全員が正しい知識があれば、防げるトラブルと言えます。
司法書士は、相続人をサポートすることができます。
適切な遺産分割協議をするために、司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。
現金を相続するときの注意点
1現金は相続財産
①現金は遺産分割の対象
相続が発生したら、被相続人のものは相続人全員の共有財産になります。
被相続人が手元に現金を残したまま死亡した場合、現金は相続財産です。
相続人全員の共有財産になるから、一部の相続人が勝手に取得することはできません。
現金は、遺産分割の対象です。
②相続財産の分け方は相続人全員の合意で決定
相続財産は、相続人全員の共有財産です。
現金は、相続人全員の共有財産です。
相続財産の分け方は、相続人全員の合意で決定します。
不動産や預貯金などと同様に、現金の分け方を決めるためには、相続人全員の合意が必要です。
③遺産分割協議書は相続人全員の合意の証明
相続財産の分け方を決めるための相続人全員の話し合いを遺産分割協議と言います。
遺産分割協議で相続財産の分け方について合意ができた場合、相続人全員の合意内容を文書に取りまとめます。
遺産分割協議書は、相続人全員の合意内容を取りまとめた文書です。
相続人全員に内容を確認してもらって記名し実印で押印してもらいます。
遺産分割協議書の押印が実印による押印であることを証明するため、印鑑証明書を添付します。
相続人全員の記名押印は、遺産分割協議書に間違いがないことの証明です。
遺産分割協議書は、相続人全員の合意内容の証明書です。
遺産分割協議書と相続人全員の印鑑証明書で、相続人全員の合意内容を客観的に証明することができます。
④現金を黙っていると使い込みトラブル
相続財産は、相続人全員の共有財産です。
一部の相続人が勝手に取得することはできません。
相続財産の分け方は、相続人全員の合意で決める必要があるからです。
自宅などに現金が保管されていた場合、相続人で情報共有することが大切です。
他の相続人に何も言わないと、使い込みトラブルになるおそれがあります。
現金は、存在や金額が客観的に分かりにくいと言えます。
預貯金は、入出金履歴を金融機関に照会することができます。
現金の存在を他の相続人が知らなかったら、遺産分割の対象から外すことができてしまいます。
もちろん、相続財産は相続人全員の共有財産です。
現金を隠したり勝手に取得する行為は、刑法上の横領や窃盗になるおそれがあります。
使い込みをしていなくても、相続人が疑心暗鬼になるとトラブルになります。
被相続人の現金を見つけた場合、相続人間で情報共有することが重要です。
2現金を相続するメリット
①現金の相続は名義変更が不要
現金の相続では、名義変更手続は不要です。
銀行などの預貯金は、現金ではありません。
預貯金の相続では、相続手続が必要です。
銀行などの預貯金は、銀行から預貯金を引き出す権利だからです。
銀行から預貯金を引き出す権利をだれが相続するのか、相続人全員で合意する必要があります。
現金を相続する場合も、現金をだれが相続するのか相続人全員で合意する必要があります。
現金であっても銀行の預貯金であっても、相続人全員の合意で分け方を決める必要があります。
相続人全員の合意ができれば、すぐに現金を取得することができます。
相続人全員の合意ができるまで、一部の相続人が勝手に使うことはできません。
現金は名義変更手続が不要である点がメリットです。
②現金はすぐに使うことができる
現金の相続では、名義変更手続は不要です。
遺産分割協議ができれば、すぐに取得することができます。
例えば、不動産を相続した場合、相続登記をする必要があります。
売却してお金で分けたいと合意しても、思うようにいかないことが多いでしょう。
相続人全員が納得するような値が付かないことがあります。
売却することに納得できても、時期がよくないと考えるかもしれません。
現金はすぐに使うことができる点がメリットです。
③公平に分けやすい
相続財産には、いろいろな種類の財産があることが通常です。
現金や預貯金は、分けやすい財産です。
不動産は、分けにくい財産の代表です。
相続財産の大部分が不動産であることがあります。
相続財産の分け方について、相続人全員の合意は難航しがちです。
不動産は、分けにくい財産だからです。
相続財産の分け方は、次の方法があります。
(1)現物分割
(2)換価分割
(3)代償分割
(4)共有
(5)用益権設定による分割
どの方法にも、メリットデメリットがあります。
不動産は、公平に分けることが難しいものです。
現金や預貯金は、1円単位まで簡単に分けることができます。
現金は公平に分けることができる点がメリットです。
④遺留分侵害額請求などに対応しやすい
被相続人は、原則として、自分の財産をだれに受け継がせるかは自由に決めることができます。
財産は被相続人が1人で築いたものではないでしょう。
家族の協力があってこそ、築くことができた財産のはずです。
被相続人の名義になっているからといって、まったく無制約の自由にすることはできません。
今まで協力してきた家族に、酷な結果となることがあるからです。
被相続人に近い関係の相続人には、相続財産に対して最低限の権利が認められています。
相続財産に対して、認められる最低限の権利のことを遺留分と言います。
分配を受けた財産が遺留分に満たない場合、遺留分侵害額請求をすることができます。
遺留分を侵害した人は、遺留分侵害額請求を拒否することはできません。
遺留分侵害額請求は、遺留分に相当する金銭を請求します。
原則として、すぐに現金で支払いをしなければなりません。
現金を相続した場合、遺留分侵害額請求に対応しやすいでしょう。
現金は遺留分侵害額請求などに対応しやすい点がメリットです。
3現金を相続したときの相続税
①相続税がかかるのは基礎控除額を超えたとき
資産家や有名人が死亡した後に、多額の相続税を納付した話を聞くことがあります。
高額な相続税を想像して、不安になるかもしれません。
相続税がかかるのは、相続財産が基礎控除額を超えたときのみです。
基礎控除額は、次の計算式で求められます。
基礎控除額=3000万円+600万円×相続人の人数
相続財産が基礎控除額に収まっていれば、相続税はかかりません。
相続税の申告をしなければならない人は、実際のところ10%にも満たないわずかな人です。
相続税の申告が必要なだけで、納税は必要ない人もたくさんいます。
相続税がかかるのは、基礎控除額を超えたときのみです。
②配偶者には相続税がほとんどかからない
相続税には、配偶者控除があります。
相続税の配偶者控除は、次のうちいずれか大きい方です。
・1億6000万円
・法定相続分
相続人が配偶者のみである場合、配偶者はすべての財産を相続します。
すべての財産が配偶者控除の対象です。
配偶者は、手厚く保護されています。
配偶者控除を適用すると、配偶者が相続税を納めることは稀です。
配偶者には、相続税がほとんどかかりません。
③現金は相続税対策がしにくい
相続税の対象額は、対象となる相続財産を評価して計算します。
現金を相続する場合、額面そのままの評価額です。
不動産を相続する場合、購入額より低い評価額になることが多いでしょう。
土地の相続税評価額は、時価の80%程度が多いです。
建物の相続税評価額は、時価の70%程度が多いです。
不動産には、相続税を少なくする特例や控除が複数設けられています。
不動産を相続する場合、相続税対策がしやすいと言えます。
現金には、相続税を少なくする特例や控除がありません。
現金を相続する場合、相続税対策がしにくいと言えます。
④自宅で現金が見つかったら
遺品整理をしていると、金庫や家具などから手許現金が見つかることがあります。
被相続人の現金であれば、相続財産です。
相続税の申告が必要な財産規模である場合、手許現金は申告する必要があります。
手許現金は、有無が分かりにくい財産です。
相続税申告をした後に、多額の現金が見つかることがあります。
申告すべき財産を見つけた場合、すぐに修正申告をする必要があります。
自主的に修正申告をした場合、加算税が免除されます。
税務調査などで指摘された後に修正申告をする場合、延滞税や過少申告加算税が課されます。
意図的な財産隠しと認められる場合、さらに重加算税が課されます。
自宅で現金が見つかったら、ただちに修正申告が必要です。
4遺産分割協議証明書作成を司法書士に依頼するメリット
遺産分割協議書と遺産分割協議証明書は遺産の分け方について、相続人全員による合意を取りまとめた文書です。
前提として、話し合いによる合意ができていなければ、文書にできません。
話し合いによる合意を適切に文書にする必要があります。
書き方に不備があるとトラブルを起こしてしまう危険があります。
せっかくお話合いによる合意ができたのに、取りまとめた文書の不備でトラブルになるのは残念なことです。
トラブルを防止するため、遺産分割協議書を作成したい方は、司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。
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