遺贈の放棄

1遺贈には特定遺贈と包括遺贈がの2種類がある

①特定遺贈は財産を具体的に指定

特定遺贈とは、遺言書に、「財産〇〇〇〇を遺贈する」と財産を具体的に書いてある場合です。

②包括遺贈は割合だけ指定

包括遺贈とは、遺言書に、「財産すべてを遺贈する」「財産の2分の1を遺贈する」と割合だけ書いて財産を具体的に書いてない場合です。

相続財産の内容は、不動産、預貯金、株式、借金などいろいろな種類があるのが通常です。

財産の2分の1とは、どの財産か分かりません。

包括遺贈を受けた場合、財産の分け方について、相続人全員と合意する必要があります。

2特定遺贈と包括遺贈はどちらでも放棄ができる

遺贈とは、被相続人が遺言によって、法定相続人や法定相続人以外の人に、財産を譲ってあげることです。

遺言書は、相続人などの関与なしで作ることができます。

遺言で遺贈や相続のことを定める場合、遺言者が受け取る人の意見を聞かずに、一方的に決めることができます。

遺言に書いてあるからとは言っても、受け取ると相続人に気兼ねすることがあります。

相続人とトラブルになりたくないから、ご辞退したい場合もあるでしょう。

遺贈は、放棄することができます。

特定遺贈と包括遺贈のどちらでも、放棄することができます。

死因贈与は、契約なので財産を譲ってあげる人と譲ってもらう人が合意しています。

死因贈与はお断りはできません。

3特定遺贈は一部だけ放棄ができる

①一部の財産だけ放棄ができる

特定遺贈は、特定遺贈全部を放棄することもできるし、一部だけ放棄することもできます。

具体的に分けることができるのであれば、一部だけ受け取ることができます。

相続放棄や包括遺贈では、一部だけ放棄することはできません。

例えば「株式と金100万円を遺贈する」と遺言にあった場合

株式は受け取るが、金100万円は放棄することができます。

②財産の一部だけ放棄ができる

例えば「株式と金100万円を遺贈する」と遺言にあった場合

金50万円は受け取るが、その他は放棄することができます。

4遺贈の放棄の方法は特定遺贈と包括遺贈で違う

①特定遺贈の放棄は遺贈義務者に通知

特定遺贈の放棄の方法に決まりはありません。

遺贈義務者に対して、特定遺贈を放棄することを通知します。

通知の名宛人になるのは、遺贈義務者です。

遺贈義務者は、次のとおりです。

(1)遺言執行者がいる場合、遺言執行者です。

(2)遺言執行者がいない場合、相続人です。

(3)遺言執行者も相続人もいない場合、相続財産清算人です。

トラブルにならないように、配達証明付内容証明郵便で通知するといいでしょう。

②包括遺贈の放棄は相続放棄と同じ手続

包括遺贈を受ける人は、相続人と同一の権利義務があります。

相続財産にマイナスの財産がある場合は、マイナスの財産も受け継ぎます。

包括遺贈を放棄する場合、相続を放棄する場合と同じ手続をします。

家庭裁判所に対して、包括遺贈放棄の申立てをします。

5遺贈の放棄の期限は特定遺贈と包括遺贈で違う

①特定遺贈の放棄に期限はない

特定遺贈を放棄することの通知は、相続発生後であればいつでも構いません。

相続が発生してから何年も経過した後、特定遺贈を放棄することもできます。

遺贈義務者や利害関係人は、相当の期間を決めて、特定遺贈を承認するのか特定遺贈を放棄するのか、質問することができます。

遺贈義務者や利害関係人からの質問に、返事をしないと特定遺贈を承認したものとみなされます。

特定遺贈を放棄したい場合は、期間内に放棄することを通知しましょう。

②包括遺贈の放棄の期限は知ってから3か月以内

自己のために包括遺贈があることを知ってから、3か月以内に手続しなければなりません。

包括遺贈放棄の申立先は被相続人の最後の住所地の家庭裁判所です。

家庭裁判所の管轄は、裁判所のホームページで調べることができます。

6遺贈を放棄された財産は遺産分割協議

遺言書と遺産分割協議は、原則として、遺言書が優先します。

遺言書の内容が優先するから、相続人全員の話し合いによる合意は必要ありません。

遺言書に特定遺贈をすると記載してあっても、受け取る人はご辞退することができます。

特定遺贈が放棄された場合、放棄された財産は相続人全員の共有財産になります。

相続人全員の共有財産になるから、相続人全員で分け方の合意をしなければなりません。

特定遺贈を放棄した人が相続人である場合があります。

特定遺贈を放棄した人が相続人である場合、相続人として相続財産の分け方の合意をします。

特定遺贈を放棄した場合でも相続人だからです。

相続財産の分け方の合意の結果、特定遺贈を放棄した人が相続することができます。

特定遺贈を放棄した場合でも、相続人として相続することができます。

7相続放棄した人でも遺贈を受けることができる

遺贈とは、被相続人が遺言によって、法定相続人や法定相続人以外の人に、財産を譲ってあげることです。

遺贈では、法定相続人にも財産を譲ってあげることができます。

法定相続人なので、相続することもできます。

法律上、遺贈と相続は別々に考えます。

受遺者という立場と相続人という立場も別物です。

両方を放棄する場合、相続放棄と遺贈の放棄とそれぞれに手続が必要です。

原則として、相続は放棄するけど、遺贈は承認することもできます。

遺贈で譲ってもらった財産が不動産の場合、名義変更が必要になります。

法務局に相続登記を申請する場合、登録免許税は不動産の評価額の1000分の4です。

遺贈による所有権移転登記の登録免許税は、遺贈を受け取る人によって異なります。

相続人に対する遺贈であれば、不動産の評価額の1000分の4です。

相続人以外の人に対する遺贈は、不動産の評価額の1000分の20です。

相続放棄をした人は、相続人でなくなります。

相続放棄をした人は、相続人以外の人に対する遺贈になります。

登録免許税は、不動産の評価額の1000分の20です。

さらに、相続人でないので不動産取得税もかかります。

だから、税金の専門家から相続放棄をするとソンをするとアドバイスされるかもしれません。

税金について検討するのは大切ですが、税金だけ注目すると失敗します。

税金以外についても充分に確認して判断しましょう。

8相続放棄した人が遺贈を受けることができない例外

①詐害行為になる場合、遺贈が取り消される

原則として、相続放棄をしても遺贈は受け取れます。

被相続人にわずかなプラスの財産と莫大なマイナスの財産があることがあります。

この状況で、わずかなプラスの財産を相続人に遺贈するという遺言書が見つかることがあります。

おそらく、被相続人に頼んで、このような遺言書を書いてもらった場合でしょう。

原則どおりでは、相続放棄をしているから、相続人は莫大なマイナスの財産を受け継ぐことはありません。

原則どおりでは、遺贈は相続放棄と別物だから、わずかなプラスの財産を受け取ることができるとなってしまいます。

このようなことが許されると、債権者にとってあまりに理不尽です。

債権者は、裁判所に訴えて、理不尽な遺贈を取り消すことができます。

借りたお金を返さなければならないのに、自分の財産を不当に減少させて、結果、お金を返せなくしているからです。

自分の財産を不当に減少させたら、お金を貸した人はお金を返してもらえなくなる結果になります。

お金を貸した人が困ることを知っているのに、自分の財産を不当に減少させることを詐害行為と言います。

理不尽な遺贈として裁判所に認められれば、詐害行為は取り消すことができます。

適切な遺言書によってされた遺贈であっても、理不尽な遺贈は詐害行為にあたります。

②相続財産管理人が選任されたら債権者が優先

例えば、相続財産の内容が、少しのプラスの財産と莫大なマイナスの財産の場合があります。

被相続人に「プラスの財産を遺贈する」遺言を書いもらって相続が発生した場合、「相続は放棄するけど遺贈は承認する」が問題になります。

被相続人の債権者はまったくお金を払ってもらえないのに、相続人はプラスの財産を受け取れることになるのは、不公平だからです。

少しのプラスの財産と莫大なマイナスの財産の場合、相続人はいても相続放棄するでしょう。

相続人全員が相続放棄したら、相続人不存在になります。

相続人不存在になったら、利害関係人は家庭裁判所に相続財産清算人を選んでもらうことができます。

相続財産清算人が選任されている場合で、かつ、受遺者と被相続人の債権者両方がいる場合、債権者への弁済が優先されます。

債権者に弁済が済んだ後でないと、遺贈を執行できません。

事実上、遺贈は執行できなくなります。

9相続放棄と遺贈の放棄を司法書士に依頼するメリット

相続放棄も包括遺贈の放棄もプラスの財産もマイナスの財産も引き継ぎませんという裁判所に対する申立てです。

相続人らとのお話合いで、プラスの財産を相続しませんと申し入れをすることではありません。

つまり、家庭裁判所で認められないとマイナスの財産を引き継がなくて済むというメリットは受けられないのです。

実は、放棄ができるのはその相続でチャンスは実質的には1回限りです。

家庭裁判所に認められない場合、即時抗告という手続を取ることはできますが、高等裁判所の手続で、2週間以内に申立てが必要になります。

家庭裁判所で認めてもらえなかった場合、即時抗告で相続放棄を認めてもらえるのは、ごく例外的な場合に限られます。

一挙にハードルが上がると言ってよいでしょう。

司法書士であれば、家庭裁判所に認めてもらえるポイントを承知しています。

認めてもらえやすい書類を作成することができます。

しかも相続放棄も遺贈の放棄も、原則として、撤回ができません。

3か月の期間内に手続するのは思ったよりハードルが高いものです。

特定遺贈は、承認する場合も放棄する場合も、法律の知識が欠かせません。

相続放棄を考えている方は、すみやかに司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。

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