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相続人は配偶者のみ

2023-03-08

1相続人になる人は法律で決まっている

相続が発生すると、配偶者や子どもが相続することは多くの方がご存知でしょう。

相続人になる人は民法で決められています。

相続人になる人は次のとおりです。

①配偶者は必ず相続人になる

②被相続人に子どもがいる場合、子ども

③被相続人に子どもがいない場合、親などの直系尊属

④被相続人に子どももいない場合で、かつ、親などの尊属が被相続人より先に死亡している場合、兄弟姉妹

2子どもがいない夫婦の相続人と法定相続分は

子どもがいない夫婦の場合、配偶者が全財産を相続すると誤解している場合があります。

配偶者や子どもが相続するのだから、子どもがいなければ配偶者がすべて相続すると考えてしまうかもしれません。

①親などの直系尊属

子どもがいない場合、親などの直系尊属が相続人になります。

子どもがいない夫婦で、かつ、親などの直系尊属が健在の場合、配偶者と親などの直系尊属が相続人です。

配偶者と親などの直系尊属が相続人になる場合の法定相続分は、配偶者3分の2、親などの直系尊属3分の1です。

父母と祖父母が健在の場合、世代が近い人が相続人になります。

世代が近い父母が相続人になって、世代が遠い祖父母は相続人になりません。

父母は相続放棄をした場合、父母はいないものと扱われます。

父母がいない場合、祖父母が相続人になります。

父母の2人が相続人になる場合、法定相続分はそれぞれ等分です。

法定相続分は、父6分の1、母6分の1です。

②兄弟姉妹

子どもがいない場合で、かつ、親などの直系尊属が被相続人より先に死亡している場合、兄弟姉妹が相続人になります。

兄弟姉妹とは、実父実母同じ兄弟姉妹だけイメージしがちです。

実父の子ども、実母の子どもすべてが、兄弟姉妹に含まれます。

被相続人が養子縁組をした養子の場合、養親の子どもも兄弟姉妹に含まれます。

実父の子どもには、母が違う異母兄弟姉妹、父が認知した子ども、父と養子縁組をした養子、父の実子で普通養子に出した子どももすべて含まれます。

養親の子どもには、養親の実子、養親が認知した子ども、養親と養子縁組をした養子、養親の実子で普通養子に出した子どももすべて含まれます。

実父の子ども、実母の子ども、養親の子どもすべてが、相続人になります。

兄弟姉妹が被相続人より先に死亡している場合、兄弟姉妹の子どもが代襲相続をします。

3遺産分割協議は相続人全員の合意が不可欠

子どもがいない夫婦の場合、配偶者が全財産を相続すると誤解しているかもしれません。

実際のところ、親などの直系尊属も兄弟姉妹もいない場合はあまりありません。

相続手続のために戸籍を集めると、見知らぬ相続人が見つかることは珍しくありません。

長期間疎遠になっていても相続人は、相続人です。

疎遠な相続人も連絡の取れない相続人も行方不明の相続人もいるかもしれません。

相続財産は相続人全員の共有財産です。

相続財産の分け方は、相続人全員の合意が不可欠です。

関係性の薄い相続人がいる場合、相続財産の分け方の合意はまとまりにくくなりがちです。

4配偶者に全財産を相続させるためには遺言書作成がおすすめ

長年かけて配偶者と力を合わせて築いてきた財産だから、配偶者にすべて相続させたいと考えるでしょう。

何も対策しなければ、遺産分割協議が必要です。

相続人全員の話し合いによる合意がなければ、相続財産を分けることはできません。

遺言書を作成して、財産の行き先を指定するといいでしょう。

遺言書は夫婦の一方だけが書くのではなく、お互いに書くのがおすすめです。

遺言書の形式を満たしていなかったなどの理由で無効になることのないように、遺言書は公正証書遺言をおすすめします。

自筆証書遺言で、かつ、法務局が保管したものでない場合、相続発生後に家庭裁判所で検認が必要になります。

検認手続きで、家庭裁判所は遺言書の存在を相続人全員に通知します。

自筆証書遺言で、かつ、法務局が保管したものである場合、相続発生後に家庭裁判所で検認が不要です。

しかし、遺言書情報証明書の交付請求をしたら、法務局は相続人全員に通知します。

自筆証書遺言を銀行の貸金庫に保管した場合、貸金庫を開けるために銀行が相続人全員の立会を求める場合があります。

せっかく他の相続人の関与なく相続できるように遺言書を書いたのに、無用な干渉を招くことになります。

公正証書遺言はそのまま執行できますから、他の相続人の余計な関心を呼び起こすことも少なく済み、残された配偶者の精神的負担も少なくできるでしょう。

5子どものいない人が遺言書を作成するときの注意点

①親などの直系尊属には遺留分がある

遺留分とは、相続財産に対する最低限の権利のことです。

兄弟姉妹以外の相続人には、遺留分があります。

遺言書を書く場合、遺留分に配慮しておくとトラブルになりにくいでしょう。

兄弟姉妹は、相続財産に対する最低限の権利がありません。

全財産を配偶者に相続させるという遺言書を書いて、死亡した場合、相続人である兄弟姉妹は、配偶者に対して、何も請求することができないのです。

②遺言書は夫婦2人とも作成するのがおすすめ

遺言書は夫婦の一方だけが書くのではなく、お互いに書くのがおすすめです。

夫の遺言書:全財産を妻〇〇〇〇に相続させる。

妻の遺言書:全財産を夫〇〇〇〇に相続させる。

お互いが遺言書を書いてあるので、どちらか一方が死亡した場合でも、残された配偶者が全財産を相続することができます。

他の相続人らと相続財産の分け方について、話し合いによる合意をする必要がないから精神的負担をかけることがありません。

③共同遺言は無効になる

夫婦2人とも遺言書を作成するとしても、共同遺言をすることはできません。

共同遺言とは、2人以上の人が共同で1つの遺言をすることです。

無効な遺言例

夫婦のうち一方が死亡した場合、残された一方が死亡した配偶者の全財産を相続する。

共同遺言は無効になります。

遺言は自由に書き直しや撤回ができるものです。

共同遺言をすると、共同遺言者のうち一人が、遺言を撤回したいときに困るからです。

自由に書き直しをする権利を守るためにも、共同で遺言することはできません。

④予備的遺言をする

夫の遺言書

全財産を妻〇〇〇〇に相続させる。

妻の遺言書

全財産を夫〇〇〇〇に相続させる。

例えば、上記の遺言を作った後、夫が死亡した場合、夫の全財産は妻が相続できます。

このとき、妻の遺言は無効になってしまいます。

妻の遺言書にある夫は死亡しているからです。

どちらが先に死亡するかは分からないから、予備的遺言をしておくことをおすすめします。

遺言者の死亡以前に妻○○○○が死亡している場合、遺言者の全財産は□□□□に遺贈する。

お互いの遺言でこのような条項を定めておくと、安心でしょう。

遺贈は慈善団体のような法人に対してもすることができます。

遺言書は、判断能力がしっかりしていれば何度でも自由に書き換えることができます

配偶者が死亡した後に作り直すこともできます。

5配偶者が自宅に住み続けられるように配偶者居住権

親などの直系尊属には遺留分があります。

相続財産のほとんどが自宅不動産の場合、遺留分を渡すことができなくなるかもしれません。

遺留分侵害額請求をやめてくれればいいのですが、安易に期待することはできないでしょう。

解決する一つの方法が配偶者居住権の設定です。

配偶者居住権とは、夫婦の一方が死亡したときに配偶者が自宅に住むことができる権利です。

法律上の配偶者に対して、遺言書で配偶者居住権を遺贈することができます。

配偶者居住権をいくらと考えるかについては、配偶者の年齢や建物の築年数などを考慮して複雑な計算をします。

自宅の所有権を得ることができなくても、安心して自宅に住む続けることができます。

生前対策をしておくことで、お互いが安心して暮らすことができます。

6遺言書作成を司法書士に依頼するメリット

遺言書は遺言者の意思を示すものです。

自分が死んだことを考えたくないという気持ちがあると、抵抗したくなるかもしれません。

実は、民法に遺言書を作ることができるのは15歳以上と定められています。

死期が迫ってから書くものではありません。

遺言書はいつか書くものではなく、すぐに書くものです。

遺言書は遺言者の意思を示すことで、家族をトラブルから守るものです。

子どものいない夫婦の場合、遺言書の威力は大きいものです。

遺言書があることで配偶者が守られます。

お互いを思いやり幸せを願う方は、遺言書作成を司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。

認知された子どもは戸籍で判明

2023-01-16

1認知とは

芸能人や政治家などの有名人に隠し子がいたとか、認知したとか言う話題を聞いたことがある人もいるでしょう。

婚姻関係にないカップルの間に生まれた子どもについて、自分の子どもと認めることを認知と言います。

認知をして、自分の子どもだと認めるのは一般的には父親です。

婚姻関係にないカップルの間に生まれた子どもについて出生届が提出された場合、母の戸籍に入ります。

母が戸籍の筆頭者でない場合、新たに母が筆頭者の戸籍が作られます。

新しい戸籍に母と子どもが入ります。

同じ戸籍に入ることができるのは、2世代までだからです。

子どもの戸籍には、母は記載されますが父は空欄です。

出産の事実によって、母と子どもに親子関係が発生します。

出生届が出されただけでは、父と子どもに親子関係が発生しないからです。

母親が出産後に、捨て子をしたようなレアケースでは、母親も認知をすることがあり得ます。

認知をするには、役所に認知届を提出する必要があります。

単に、母親に自分の子どもだと認めるだけでは、法律上の認知の効果はありません。

子どもは父に対して扶養を請求することも父を相続することもできません。

役所に認知届を提出した場合、戸籍に記載されます。

認知をしたことを家族に内緒にしておいても、戸籍を見れば分かります。

認知された子どもは、相続人になります。

2誕生後に認知届を提出すると戸籍に記載される

①父の戸籍に認知事項が記載される

役所に認知届を提出した場合、父と子どもに親子関係が発生します。

父が未成年である場合でも、単独で認知をすることができます。

親などの親権者の同意は不要です。

父と子どもに親子関係が発生しますから、父の戸籍に認知事項が記載がされます。

記載されるのは次の事項です。

身分事項 認知

認知日 令和〇年〇月〇日

認知した子の氏名 〇〇〇〇

認知した子の戸籍 〇〇県〇〇市〇〇町〇丁目〇番〇号  〇〇〇〇

認知をしたことを家族に内緒にしておいても、戸籍を見れば分かります。

認知届を出すだけでは、認知された子どもが父の戸籍に入ることはありません。

認知された子どもは父の戸籍に入りませんが、父自身の戸籍の認知事項が記載されます。

他の家族が戸籍を見た場合、認知した事実が判明します。

②子どもの戸籍に認知事項が記載される

役所に認知届を提出した場合、父と子どもに親子関係が発生します。

子どもの戸籍の父の欄に、父の氏名が記載されます。

父と子どもに親子関係が発生しますから、子どもの戸籍に認知事項が記載がされます。

記載されるのは次の事項です。

身分事項 認知

認知日 令和〇年〇月〇日

認知者の氏名 〇〇〇〇

認知者の戸籍 〇〇県〇〇市〇〇町〇丁目〇番〇号  〇〇〇〇

送付を受けた日 令和〇年〇月〇日

受理者 〇〇県〇〇市長

3胎児認知をしたら戸籍の附票に記載される

①胎児認知には母の承諾が必要

父親は子どもが誕生する前に認知届を出すことができます。

子どもが誕生する前に認知届を出すことを胎児認知と言います。

胎児認知をする場合、母の承諾が必要です。

母が未成年である場合でも、単独で承諾をすることができます。

親などの親権者の同意は不要です。

②胎児認知をしたら母の戸籍の附票に記載される

胎児認知届を提出した場合、子どもが誕生するまでは父の戸籍には何も記載されません。

母の戸籍の附票に記載がされるのみです。

③子どもの戸籍に認知事項が記載される

子どもの出生届が提出された時点で、子どもの戸籍が作られ認知事項が記載されます。

記載されるのは次の事項です。

身分事項 認知

胎児認知日 令和〇年〇月〇日

認知者の氏名 〇〇〇〇

認知者の戸籍 〇〇県〇〇市〇〇町〇丁目〇番〇号  〇〇〇〇

④父の戸籍に認知事項が記載される

子どもが誕生したことで父と子どもに親子関係が発生します。

出生届が提出されてから、父の戸籍に認知事項が記載がされます。

記載されるのは次の事項です。

身分事項 認知

胎児認知日 令和〇年〇月〇日

認知した子の氏名 〇〇〇〇

認知した子の戸籍 〇〇県〇〇市〇〇町〇丁目〇番〇号  〇〇〇〇

送付を受けた日 令和〇年〇月〇日

受理者 〇〇県〇〇市長

⑤子どもが誕生しなかった場合は戸籍には何も記載されない

仮に子どもが流産や死産であった場合、母の戸籍の附票から認知の記載が削除されます。

父の戸籍は何も記載されていないから、何も影響はありません。

4父の戸籍から認知事項が消える

戸籍の作り直し(改製)がされる場合や戸籍のお引越し(転籍)をする場合があります。

戸籍が新しく作り直しがされる場合、新しい戸籍に書き写される項目と書き写されない項目があります。

父の戸籍の認知事項は、新しい戸籍に書き写されない項目です。

父が認知したときの戸籍に認知事項が記載されても、作り直し(改製)やお引越し(転籍)があった場合、書き写されません。

新しい戸籍だけを見ると、認知事項がないから認知した子どもの存在に気付かないでしょう。

相続人調査をする場合、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本が必要になります。

認知した子どもの存在の有無は、出生から死亡までの連続した戸籍謄本で証明できるからです。

5父の氏を名乗り父の戸籍に入るためには家庭裁判所の手続

認知届を出すだけでは、認知された子どもが父の戸籍に入ることはありません。

認知届を出すだけでは、認知された子どもが父の氏を名乗ることはありません。

子どもが父の氏を名乗り父の戸籍に入るためには家庭裁判所で手続が必要です。

子どもが父の氏を名乗り父の戸籍に入る手続を、子の氏の変更許可申立てと言います。

子の氏の変更許可申立ての提出先は、子どもの住所地を管轄する家庭裁判所です。

家庭裁判所の管轄は裁判所のホームページで調べることができます。

子の氏の変更許可申立てができるのは、子どもです。

子どもが15歳未満の場合は、親などの法定代理人が代理します。

子の氏の変更許可申立てに添付する書類は以下のとおりです。

①子どもの戸籍謄本

②父母のの戸籍謄本

家庭裁判所で子の氏の変更許可がされた場合、市区町村役場へ届出が必要です。

市区町村役場へ届出をする場合、家庭裁判所が出す審判書謄本の他に戸籍謄本が必要になることがあります。

6相続人調査を司法書士に依頼するメリット

本籍地の変更や国による戸籍の作り直し(改製)で多くの方は、何通もの戸籍を渡り歩いています。

古い戸籍は現在と形式が違っていて読みにくかったり、手書きの達筆な崩し字で書いてあって分かりにくかったりしますから、慣れないと戸籍集めはタイヘンです。

本籍地を何度も変更している方や結婚、離婚、養子縁組、離縁を何度もしている方は、戸籍をたくさん渡り歩いているので、膨大な手間と時間がかかることが多くなります。

戸籍には被相続人の結婚や離婚、子どもや養子の存在といった身分関係がすべて記録されています。

ですから、時には家族の方が知らない相続人が明らかになることもあります。

相続が発生した後に、認知を求めて裁判になることもあります。

相続人を確定させるために戸籍を集めるだけでも、知識のない一般の人にはタイヘンな作業です。

家族の方が知らない相続人が明らかになると、精神的な負担はさらに大きいものになります。

相続手続のうち、専門家に任せられるものは任せてしまえば、事務負担を軽減することができます。

戸籍や住民票の取り寄せも司法書士は代行します。

相続人調査でお困りの方は、司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。

事実婚・内縁の配偶者は相続人になれない

2022-09-16

1事実婚・内縁の配偶者は相続人でない

①相続人になれるのは法律上の配偶者のみ

配偶者は必ず相続人になります。

配偶者は法律上の配偶者を指します。

事実婚・内縁の配偶者は、相続人になれません。

事実婚・内縁関係の場合は、何年一緒にいても相続人になれません。

事実婚・内縁の配偶者に相続する権利はないから、被相続人に莫大な借金があっても借金を引き継いでしまうことはありません。

莫大な借金を心配して、相続放棄をする必要はありません。

事実婚・内縁の配偶者は相続人でないから、土地などの不動産を相続することもできません。

離婚して法律上の配偶者でなくなった元配偶者も相続人になれません。

法律上の配偶者でなくなった元配偶者が、離婚後、内縁の配偶者であっても、相続人になれません。

②事実婚・内縁関係の場合は遺留分がない

遺留分とは、相続財産に対する最低限の権利のことです。

兄弟姉妹以外の相続人に認められます。

事実婚・内縁の配偶者は相続人でありませんから、遺留分が認められません。

③事実婚・内縁関係の場合は寄与分がない

寄与分の制度は、特別な貢献をした相続人に対して相続分以上の財産を受け取ってもらう制度です。

事実婚・内縁の配偶者は相続人でないから、寄与分を請求することはできません。

④事実婚・内縁関係の場合は特別寄与者になれない

特別な貢献をした人が相続人でなくても親族である場合、特別寄与者になることができます。

親族にあたるのは次の人です。

(1)6親等内の血族

(2)配偶者

(3)3親等内の姻族

具体的には、配偶者の連れ子や甥姪、甥姪の子や孫、いとこ、はとこなどです。

事実婚・内縁の配偶者は、親族ではありません。

事実婚・内縁の配偶者は親族でないから、特別寄与者になることはできません。

⑤事実婚・内縁関係の場合は配偶者居住権と配偶者短期居住権がない

配偶者居住権と配偶者短期居住権は、いずれも、被相続人の家に住んでいた配偶者が無償で住み続けることができる権利です。

配偶者居住権も配偶者短期居住権も取得することができる配偶者は、法律上の配偶者のみです。

事実婚・内縁の配偶者は、配偶者居住権も配偶者短期居住権も取得することはできません。

2事実婚・内縁関係の一方が死亡した場合でも財産分与を請求することはできない

事実婚・内縁関係の夫婦が事実婚・内縁関係を解消する場合、法律婚における離婚に準じて扱われます。

法律婚の夫婦が離婚する場合、婚姻期間中に形成した共同財産は、それぞれの寄与の度合いに応じて分け合います。

共同財産を分け合うことを、財産分与と言います。

事実婚・内縁関係の夫婦が事実婚・内縁関係を解消する場合も、財産分与をします。

事実婚・内縁関係の期間中に形成した共同財産について、それぞれの寄与の度合いに応じて分けることを請求することができます。

事実婚・内縁関係の夫婦が財産分与を請求することをできるのは、両当事者が生きている場合に限ります。

事実婚・内縁関係の夫婦の一方が死亡した場合、財産分与を請求することをできません。

共同財産であっても死亡した人の財産として、相続財産になります。

事実婚・内縁の配偶者は、人ではありません。

何もしていなければ、相続財産を取得することはできません。

3事実婚・内縁の配偶者に財産を残す方法

①事実婚・内縁の配偶者に遺贈する

遺贈とは、被相続人が遺言によって、法定相続人や法定相続人以外の人に、財産を譲ってあげることです。

相続では、法定相続人だけに譲ってあげることができます。

遺贈では、法定相続人に譲ってあげることもできるし、相続人以外の人に譲ってあげることができます。

譲ってあげる相手は、相続人以外の人でも構いませんから、事実婚・内縁の配偶者にも譲ってあげることができます。

相続では、遺言がなくても相続人が受け取ることができます。

遺贈は、遺言があるときだけ譲ってあげることができます。

事実婚・内縁の配偶者は相続人になれませんから、相続はできません。

遺贈であれば、事実婚や内縁の配偶者に財産を譲ってあげることができます。

遺贈とは、遺言によって、財産を譲ってあげることですから、必ず、遺言書が必要です。

事実婚や内縁の配偶者が特別な寄与をしている場合でも、事実婚や内縁の配偶者は寄与分を請求することはできません。

被相続人は、遺贈をすることで寄与に報いてあげることができます。

②事実婚・内縁の配偶者に生前贈与をする

遺贈は死亡時に財産を受け継いでもらう方法ですが、生前に財産を受け取ってもらうこともできます。

生前贈与をする場合、割高な贈与税がかかることがあります。

贈与税の負担を考慮して、計画的に財産を受け取ってもらう必要があります。

生前贈与も遺贈も相続人の遺留分を侵害してしまった場合、トラブルになるおそれがあります。

③事実婚・内縁の配偶者を生命保険の受取人にする

生命保険の受取人に事実婚・内縁の配偶者を指定することができる場合、死亡保険金を受け取ってもらうことができます。

死亡保険金は、原則として、法律上の配偶者や血縁関係の近い血族のみが受取人になることができます。

保険商品によっては、一定の条件のもとで事実婚・内縁の配偶者を受取人にすることができます。

生命保険の死亡保険金を受け取る権利は、受取人の固有の財産です。

被相続人の相続人と話し合いなしで受け取ることができます。

④遺族年金を受け取れる

遺族年金は、生計を維持していた人が死亡したときに残された遺族が受けることができる年金です。

年金を受け取ることができる配偶者は、法律婚だけでなく事実婚・内縁の配偶者を含みます。

4事実婚・内縁の子どもは相続人

事実婚・内縁配偶者との間に子どもがいる場合があります。

事実婚・内縁配偶者との間に子どもは認知を受けている場合、相続人になります。

認知を受けた子どもは、被相続人の子どもだからです。

法律婚の子どもと事実婚の子どもに違いはありません。

同じ被相続人の子どもとして、相続人になります。

被相続人に莫大な借金がある場合、事実婚・内縁配偶者は何もしなくても借金を受け継ぐことがありません。

事実婚・内縁配偶者との間に子どもは認知を受けている場合、何もしないと借金を受け継ぐことになります。

5相続人不存在の手続

相続人がいないから、財産は事実婚・内縁の配偶者が好きにするだろうと楽観的な意見も聞きます。

相続人がいないとは、単に、家族と疎遠であるとか、行方不明であることが多いものです。

法定相続人と何十年も会っていなくても、音信不通でも、相続人であることは変わりません。

行方不明でも相続人がいれば、事実婚・内縁の配偶者は何も受け取れないのです。

法定相続人がだれもいない場合、財産は最終的には国庫に帰属します。

国庫に帰属する前に手続があります。

①相続財産管理人選任の申立

相続財産を管理する人を家庭裁判所に選んでもらいます。

②公告をする

家庭裁判所が相続財産管理人を選びましたとお知らせをします。

相続財産管理人が、官報に債権者はいませんかとお知らせを出します。

債権者をさがすお知らせの期間は2か月です。

債権者をさがすお知らせの2か月経過後、官報に相続人はいませんかとお知らせを出します。

相続人をさがすお知らせの期間は6か月です。

ここで誰も名のり出なければ、相続人不存在が確定します。

③特別縁故者に対する相続財産分与の申立

相続人をさがすお知らせの6か月経過後、被相続人と特に親しい関係があった人は、家庭裁判所に認めてもらえれば、財産を分けてもらうことができます。

相続人をさがすお知らせの6か月経過後、3か月以内に申立をする必要があります。

事実婚・内縁関係の配偶者は、特に親しい関係があった人と言えることが多いです。

④債権者に弁済する

⑤国庫に帰属する

被相続人が死亡してから、国庫に帰属するまで1年以上の時間がかかります。

相続人がいないから、財産は事実婚・内縁の配偶者が好きにするだろうという人は、事実婚・内縁関係だから特別縁故者になるだろうと言ってるのかもしれません。

事実婚・内縁関係の人は、特に親しい関係があった人と言えることが多いものの、家庭裁判所が認めてくれない場合もあります。

特に親しい関係があった人と認めてくれても、財産すべてを分けてもらえないことも多いものです。

財産が多額にあっても、わずかな額だけ認めてもらえたという例もあります。

何よりも、①~⑤の手続きをするのは、だれにとっても時間と労力がかかります。

遺言書1枚あれば、膨大な手間と時間をかけずにラクに財産を譲ることができるのです。

6賃借権を受け継ぐことができる場合

被相続人が賃貸マンションを借りていて、内縁の配偶者と一緒に住んでいることがあります。

賃貸マンションを借りる権利を賃借権と言います。

賃借権も相続財産の一つです。

賃借権も相続財産として、相続人全員で、分け方の合意をします。

賃借権を相続した相続人の賃借権を援用して、内縁の配偶者が賃貸マンションに住み続けることができます。

賃借権を相続した相続人が事実婚・内縁の配偶者をよく思わない場合、明渡を求めてくるかもしれません。

賃借権を相続した相続人であっても、賃貸マンションに居住するなどの事情がないのに事実婚・内縁の配偶者を追い出すことは難しいでしょう。

賃貸マンションは事実婚・内縁の配偶者の生活の本拠だから、権利の濫用にあたると判断されることが多いでしょう。

相続人が不存在の場合、借地借家法という特別の法律で、賃借人の内縁の配偶者は、賃借権を引き継ぐことができます。

賃料を負担することになったとしても、住み慣れた家に住み続けられる可能性があります。

一緒に住んでいた家に住み続けられる可能性はあるものの、法律の明文の規定はありません。

遺言書などで決めておくことが重要になるでしょう。

7遺言書作成と遺言執行を司法書士に依頼するメリット

遺言執行者は遺言書の内容を実現する人です。

相続人が遺言書の内容に納得していて、手続きに協力的であれば、必ずしも、遺言執行者を選任する必要はありません。

相続人がいる場合、内縁の配偶者に遺贈すると自分の取り分が減ると考えて、良い気持がしないのが通常です。

内縁の配偶者の存在を知らない相続人もいるかもしれません。

相続人が遺言執行に協力的とは考えられないのが一般的です。

遺言書の内容に不満を持つ相続人がいた場合、遺言書が無効であると主張することが考えられます。

遺言書は、公証人が関与する公正証書遺言がおすすめです。

公証人が関与するから無効になりにくく、作成後は公証役場で厳重に保管されるからです。

遺言執行者は、相続開始後すみやかに手続を進めることができる時間と知識がある人を選ぶことが重要です。

その意味でも、家族より司法書士などの専門家に遺言執行を依頼する人が増えています。

以前は、遺言執行者は止むを得ない場合だけ、他の人に職務を任せることができるとされていましたが、現在は、止むを得ないなどの理由は不要になりました。

遺言執行者に指名され、職務をしてみたところ、思ったよりタイヘンだという場合、自己の責任で司法書士などの専門家におまかせすることもできます。

今後も、専門家に依頼する人は増えていくでしょう。

遺言執行を司法書士などの専門家に依頼した場合、相続人は基本待っているだけなので、トラブルになることが少なくなるからです。

家族を笑顔にするためにも、遺言書作成し遺言執行者選任しましょう。

家族の幸せのためにも、遺言書作成と遺言執行者選任を司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。

再婚の人の相続

2022-08-17

1相続人になる人

相続が発生したら、親族のうち一定の範囲の人が相続人になります。

誰が相続人になるかについては、民法で決められています。

相続人になる人は次のとおりです。

②~④の場合、先順位の人がいる場合、後順位の人は相続人になれません。

だから、子どもがいるのに、親などの直系尊属が相続人になることはないのです。

①配偶者は必ず相続人になる

②被相続人に子どもがいる場合、子ども

子どもがいたが被相続人より先に死亡していた場合、子どもの子ども

③被相続人に子どもがいない場合、親などの直系尊属

④被相続人に子どももいない場合で、かつ、親などの直系尊属が被相続人より先に死亡している場合、兄弟姉妹

兄弟姉妹が被相続人より先に死亡している場合、兄弟姉妹の子ども

2離婚した元配偶者は相続人ではない

配偶者は必ず相続人になります。

配偶者とは、相続が発生した時点の配偶者です。

相続が発生する直前に配偶者になった場合、配偶者として相続人になります。

相続財産の分け方の話し合いが長引いた場合、配偶者が再婚することがあります。

被相続人の配偶者が後に再婚しても、相続人であることに変わりはありません。

相続が発生する直前に配偶者でなくなった場合、配偶者でありませんから相続人になりません。

離婚した元配偶者は相続人ではありません。

配偶者とは、法律上の配偶者です。

内縁の配偶者や事実上の配偶者は、相続人になりません。

3 子どもは相続人になる

①父母が離婚しても子どもは相続人になる

被相続人に子どもがいる場合、子どもが相続人になります。

子どもは実の子どもはもちろんのこと、養子縁組した養子、認知した子ども、出生前の胎児も含まれます。

離婚した後、元配偶者が引き取った子どもも、子どもとして相続人になります。

被相続人が離婚しても、親権をどちらが持っていたとしても、長年音信不通であったとしても、子どもであることには変わらないからです。

被相続人の子どもが養子に出されたとしても、普通養子であれば、相続人になります。

特別養子である場合は相続人になれません。

特別養子は実の親との親子関係を切るものだからです。

子どもには遺留分があります。

家庭裁判所で廃除が認められた場合を除いて、相続させない場合、トラブルになるでしょう。

長年、養育費を払ってきたから、もう充分だ。

長い間、顔も見ていないから、相続人にしたくない。

離婚した当時に慰謝料を払ってから、相続財産を渡したくない。

離婚後に築いた財産だから、再婚配偶者と再婚配偶者の子どもに相続させたい。

これらは、どれも理由になりません。

②再婚後に生まれた子どもは相続人になる

再婚後に誕生した子どもは被相続人の子どもです。

父母が離婚しても、結婚していても、子どもは子どもです。

前婚の子どもも後婚の子どもも、権利は全く一緒です。

③再婚した配偶者の連れ子は相続人ではない

子どもとは、被相続人と血縁関係がある子どもの他に、被相続人と養子縁組をした子どもを指します。

再婚した配偶者の連れ子は被相続人と血縁関係がありませんから、相続人にはなりません。

相続人として相続させたい場合は、連れ子と養子縁組をする必要があります。

4連れ子に財産を受け継いでもらいたい場合は対策が必要

①養子縁組をする

連れ子には被相続人と血縁関係がありませんから、通常、相続人にはなりません。

被相続人と配偶者の連れ子が養子縁組をした場合、被相続人の子どもになります。

被相続人の血縁関係がある子どもと同じ子どもとして、相続人になります。

②遺言書を書いて遺贈をする

遺贈とは、被相続人が遺言によって、法定相続人や法定相続人以外の人に、財産を譲ってあげることです。

遺言書を書くことで、相続人以外の人に財産を受け継いでもらうことができます。

兄弟姉妹以外の相続人には、遺留分があります。

遺留分とは、最低限受け取ることができる財産の割合のことです。

連れ子に受け継いでもらう財産があまりに過大であった場合、他の相続人の遺留分を侵害してしまうおそれがあります。

遺留分のある相続人が、遺留分に満たないわずかな財産しか相続できなかった場合、侵害された分を取り返すことができます。

遺言書を書くときは、このような相続人間のトラブルにならないように充分に配慮しましょう。

③生前贈与をする

被相続人が元気なうちに、財産を贈与することができます。

生前に贈与する場合、財産の価格によっては贈与税がかかります。

贈与税は想像以上に高額になります。

5再婚した配偶者が相続した財産の行方

相続が発生したら、配偶者は必ず相続人になります。

自分が死亡した後も配偶者が自宅で安心して住み続けられるように、遺言書を書いておこうと考えるケースがあります。

遺言書を書くことで、トラブルを防止しようとするものです。

再婚の場合、もう少し先を考える必要があります。

被相続人が再婚である場合、前婚配偶者との間の子どもと後婚配偶者の間に血縁関係がありません。

被相続人の財産が後婚配偶者に相続された後、後婚配偶者が相続した財産は後婚配偶者の血縁関係者に相続されます。

前婚配偶者との間の子どもは、被相続人の後婚配偶者と血縁関係がないので後婚配偶者の相続人にはなりません。

被相続人の子どもにとって思い入れのある実家や先祖伝来の土地を、血縁関係がない後婚配偶者が相続した場合に問題になります。

後婚配偶者が相続したら、その後は、後婚配偶者の連れ子などが先祖伝来の土地を相続することになるからです。

先祖代々守ってきた土地を血縁関係のない人に相続されることに心理的抵抗を感じ、トラブルに発展します。

由緒がある家柄であると、被相続人自身も血縁関係のある人に受け継いでもらいたいと考えていることがあります。

自分が死亡した後、配偶者が自宅で住み続けられるようにしてあげたいが、配偶者死亡後は自分の血縁関係者が受け継いでもらいたいといった希望です。

遺言書では、次の次の人を指定できません。

6家族信託なら次の次の人も指定できる

遺言書で指定できるのは、次の人だけです。

家族信託では、信託契約書の中で柔軟に定めることができます。

「自分が死亡したら〇〇に相続させたい。〇〇が死亡したら◇◇に相続させたい。」

信託契約書の中で上記のような条項を定めておくことができます。

家族信託は遺言書によって設定することができます。

遺言書によって家族信託を設定する場合、信託契約をする場合と同じように信託財産の管理・運用・処分についてルールを明確に決めておくことが大切です。

例えば、子どもを受託者として、財産を信託します。

配偶者が健在の間は、配偶者の生活費等の財産給付を担います。

配偶者が死亡した場合、信託が終了するように定めます。

信託が終了したら、信託した残余財産は子どもが受け継ぐように指定します。

このようにすると、再婚配偶者の連れ子に先祖伝来の地や実家が渡ることはありません。

被相続人の子どもの血縁関係者が相続していきます。

先祖伝来の地や実家を守りたいと考える方は、自分の血縁関係者以外の人が受け継ぐことを望んでいないでしょう。

家族信託を活用することで、先祖伝来の地や実家を守りたいという希望はかなえることができます。

7遺言書は次の次に受け継ぐ人を指定できない

「自分が死亡したら〇〇に相続させたい。〇〇が死亡したら◇◇に相続させたい。」

このような希望を後継ぎ遺贈と言います。

由緒ある家系の方には、先祖伝来の地や実家を守りたいと考える方がいます。

後継ぎ遺贈は、遺言書ではかなえられません。

遺言書に書いても無効になります。

遺言書で指定できるのは、次の人だけだからです。

「被相続人の子どもに遺贈する」と再婚配偶者に遺言書を書いてもらえばいいと思うかもしれません。

再婚配偶者がだれに相続させたいというかは、再婚配偶者次第です。

いったん遺言書を書いても、再婚配偶者の気が変われば遺言書の書き直しができます。

遺言書の書き直しはしないという約束は無効です。

遺言書は何度でも書き直しができます。

「自分が死亡したら配偶者に相続させたい。配偶者が死亡したら子どもに相続させたい。」はかなえられません

遺言書で次の次に誰に受け継いでもらうかを決めることはできません。

8家族信託を司法書士に依頼するメリット

家族信託は近年になって注目が集まっています。

何といっても遺言書より柔軟な資産承継ができる点、家族間の契約である点など大きなメリットがあります。

資産承継だけでなく、資産凍結を防ぐことができる面から認知症対策としても活用できます。

先祖伝来の土地を血縁関係者に受け継いでもらいたいと希望する方は少なくありませんが、遺言書では実現できません。

家族信託を活用することで遺言書では実現できない希望を叶えることができます。

家族信託は、自分自身の認知症対策としても機能します。

聞き慣れない話で、かつ、法律用語いっぱいなので分からなくなってくる方も多いでしょう。

被相続人に再婚歴がある場合、相続がトラブルに発展しやすい典型です。

被相続人が率先してトラブルにならない道筋を付けておくことが重要になります。

自分らしい生き方のため、家族がトラブルに巻き込まれたくないを実現したい方は、司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。

相続人調査-廃除と欠格

2022-08-08

1相続人になる人

相続が発生したら、親族のうち一定の範囲の人が相続人になります。

だれが相続人になるかについては、民法で決められています。

相続人になる人は次のとおりです。

①配偶者は必ず相続人になる

②被相続人に子どもがいる場合、子ども

③被相続人に子どもがいない場合、親などの直系尊属

④被相続人に子どももいない場合で、かつ、親などの尊属が被相続人より先に死亡している場合、兄弟姉妹

相続人になるはずだった人が被相続人より先に死亡したため、相続人になるはずだった人の子どもや子どもの子どもが相続することがあります。

これを代襲相続と言います。

2相続人廃除で相続人になれない

例えば、被相続人に虐待をした人に、相続をさせたくないと考えるのは自然なことでしょう。

被相続人が相続させたくないと思って、他の相続人にすべての財産を相続させると遺言書を書いたとしても、遺留分を奪うことはできません。

遺留分侵害額請求をしたら、相続財産のいくらかは虐待した相続人が受け継いでしまいます。

被相続人の意思で、相続人の資格を奪うのが、相続人廃除です。

相続人の資格を奪うというのは、実質的には、遺留分を奪うことです。

遺留分のない兄弟姉妹は廃除する必要がありません。

相続財産を受け継がせたくないのなら、他の相続人に相続させる旨の遺言書を書けばいいからです。

相続人廃除の申立は被相続人が生前に申し立てることもできるし、遺言書で行うこともできます。

遺言書で廃除をする場合、「遺言者の長男○○を廃除する。理由は○○である。」とはっきり書きます。

「遺言者の長男○○には一切相続させない。」は不適切です。

廃除するの意思なのか、廃除はしないが財産を受け継がせないの意思なのか不明確だからです。

廃除はしないが財産を受け継がせない場合、遺留分があります。

廃除する場合、遺留分侵害額請求ができなくなります。

「遺言者の長男○○には一切相続させない。」の場合、遺留分侵害額請求ができるかできないかをめぐって相続人間でトラブルになるおそれがあります。

遺言書に「遺言者の長男○○を廃除する。理由は○○である。」の記載の他に遺言執行者を指名しましょう。

遺言による廃除の申立ては、遺言執行者がする必要があるからです。

遺言書で遺言執行者を選任しておかない場合、相続発生後、家庭裁判所に遺言執行者を選んでもらう必要があります。

家庭裁判所は、被相続人の家族の事情を知らない専門家を遺言執行者に選ぶでしょう。

相続人廃除は家庭裁判所に申立をして、家庭裁判所が判断します。

被相続人が相続人廃除したいと言い、相続人が廃除されていいと納得していても、家庭裁判所が相続人廃除を認めないことがあります。

家庭裁判所に廃除を認めてもらうためには、廃除の根拠になる客観的証拠が不可欠です。

家族の事情を知らない専門家は、客観的証拠を集められないでしょう。

遺言書で廃除する場合、被相続人は死亡しているから、家庭裁判所で証言することはできません。

廃除の客観的証拠を準備しておく必要があります。

相続人廃除になると、遺留分も奪われます。

相続人が相続人廃除になる場合、代襲相続ができます。

相続人廃除の相続人に相続させることはできませんが、遺贈はできると考えられています。

被相続人の意思で、相続人の資格を奪うものだから、被相続人の意思で許してあげることもできるからです。

被相続人の意思で許してあげることもできるから、相続人廃除は取消の申立もできます。

相続人廃除の申立先は被相続人の住所地の家庭裁判所です。

廃除が認められた場合、廃除の審判書と確定証明書を添えて市区町村役場へ廃除届を提出します。

家庭裁判所から役所へ連絡はされません。

相続人廃除が認められるのは次の場合です。

①相続人が重大な侮辱をした

②暴力を振るうなどの虐待をした

③重大な非行があった

単なる親子げんかで家に寄り付かなかったとか、親の言いなりにならなかったなどの軽い理由では認められません。

暴力をふるうなども一時の激情から出たものであるとして認められない事例もあります。

相続人廃除は非常にハードルが高い手続です。

3相続欠格で相続人になれない

だれが相続人になるかについては、民法で決められています。

同時に、民法では相続人になれない人も決められています。

例えば、被相続人を殺した人が相続することは、社会感情からみても許せない、相続する人としてふさわしくないということは納得できるでしょう。

このような相続人として許せない、ふさわしくない場合、相続人の資格が奪われることになります。

相続人としてふさわしくない人の相続資格を奪う制度を相続欠格と言います。

相続欠格は、被相続人の意思とは無関係に相続人の資格を奪う制度です。

裁判所で手続きがあるわけでなく、当然に相続資格を失います。

相続欠格になると、遺留分も奪われます。

相続人が相続欠格になる場合、代襲相続ができます。

相続欠格の相続人に相続させることはできませんし、遺贈もできないと考えられています。

相続欠格者に対して、生前贈与はできますし、生命保険金を受け取らせることはできます。

次の人が欠格になります

①故意に被相続人、同順位以上の相続人を死亡させた人、死亡させようとした人

故意がポイントです。

殺人や殺人未遂の場合、刑事事件で有罪判決を受けると欠格になります。

実刑判決だけでなく、執行猶予判決でも、欠格になります。

事故などの過失で死亡させてしまった場合は、欠格になりません。

正当防衛などで、止むを得ず、死亡させてしまった場合も、欠格になりません。

同順位以上の相続人を死亡させた場合、欠格になります。

例えば、父を死亡させた相続人は父の相続で欠格になりますが、母の相続でも欠格になります。

母の相続において、父は同順位以上の相続人になるからです。

②被相続人が殺害されたのを知って、告訴や告発をしなかった人

被相続人が殺害されたことを知っていて、犯人をかばおうとする人です。

物事のメリットデメリットを充分判断できない子どもは欠格になりません。

殺人犯が配偶者や直系血族の場合は、欠格になりません。

傍系は欠格になりますから、兄弟姉妹が殺人犯の場合は、告訴告発をしなければなりません。

③詐欺・脅迫で遺言の取消・変更をさせたり、妨害した人

遺言は遺言者の意思を示すものです。

詐欺や脅迫で意思をねじ曲げさせようとすることは、許されることではありません。

④遺言書を偽造・変造・廃棄・隠匿した人

遺言書を見つけて、自分が不利になるから偽造したり、変造したり、捨てたり、隠したりすると、欠格になります。

不当な目的がある場合だけ欠格になりますから、遺言書の内容を実現してあげたいと考えて変造した場合は、欠格になりません。

相続欠格は戸籍謄本に記載されません。

金融機関などの相続手続では、欠格者である旨の証明をしない場合、相続人と扱ってしまいます。

欠格者であることの証明としては、相続欠格者が自分で作成した相続欠格者であることを認める証明書に印鑑証明書を添付したものがあります。

実際には、欠格の相続人が自分が相続欠格であることは認めないでしょう。

相続人が欠格であることを争う場合、相続権不存在確認の訴えをすることになります。

例えば、相続人ABCDの4人である場合で、相続人Dが欠格であることの確認を求める場合、原告は自分以外の相続人全員を被告にします。

原告が相続人Aである場合、相続人BCDを被告として、相続人Dが欠格であることの確認を求める訴えを起こします。

相続資格の有り無しは合一確定の必要があるからです。

4相続人調査を司法書士に依頼するメリット

本籍地の変更や国による戸籍の作り直し(改製)で多くの方は、何通もの戸籍を渡り歩いています。

古い戸籍は現在と形式が違っていて読みにくかったり、手書きの達筆な崩し字で書いてあって分かりにくかったりしますから、慣れないと戸籍集めはタイヘンです。

本籍地を何度も変更している方や結婚、離婚、養子縁組、離縁を何度もしている方は、戸籍をたくさん渡り歩いているので、膨大な手間と時間がかかることが多くなります。

お仕事や家事でお忙しい方や高齢、療養中などで手続が難しい方は、手続を丸投げできます。

ご家族にお世話が必要な方がいて、お側を離れられない方からのご相談もお受けしております。

集めてみたけど途中で挫折した方や全部集めたと思ったのに金融機関や役所からダメ出しされた方もいらっしゃいます。このような場合、司法書士が目を通して、不足分を取り寄せします。

相続人調査でお困りのことがあれば、すみやかに司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。

平日の昼間に役所にお出かけになって準備するのは負担が大きいものです。

戸籍や住民票は郵便による取り寄せもできますが、書類の不備などによる問い合わせはやはり役所の業務時間中の対応が必要になりますから、やはり負担は軽いとは言えません。

このような戸籍や住民票の取り寄せも司法書士は代行します。

相続人調査でお困りの方は、司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。

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