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1 数次相続とは
相続が発生したら、相続財産は相続人全員の共有財産になります。
共有財産になった相続財産は、相続人全員で話し合いによる分け方の合意が不可欠です。
相続財産の分け方について、話し合いがまとまる前に、相続人が死亡して新たな相続が発生することがあります。
最初の相続を一次相続、相続人が死亡した相続を二次相続と言います。
二次相続の相続人が死亡すると、三次相続、さらに、四次相続、五次相続という場合もあります。
どこまで続くかについて、制限はありません。
相続人が死亡して新たな相続が発生することを、まとめて、数次相続と言います。
2 数次相続の法定相続分
遺産分割協議中に、相続人が死亡して新たな相続が発生した場合、死亡した相続人の相続分が、相続人の相続人に受け継がれます。
最初の相続における相続人の法定相続分に影響はありません。
死亡した相続人の相続分が、相続人の相続人に受け継がれるだけだからです。
例えば、最初の相続で相続人が妻、長男、長女の場合
法定相続分は妻2分の1、長男4分の1、長女4分の1です。
最初の相続の遺産分割協議中に長女が死亡して、長女の相続人が、長女の長男、長女の次男の場合
法定相続分は妻2分の1、長男4分の1、長女の長男8分の1、長女の次男8分の1です。
3 数次相続の相続放棄
相続人は被相続人の権利義務を受け継ぎます。
被相続人の死亡を知ってから、3か月以内なら家庭裁判所に相続放棄の申立ができます。
最初の相続の相続人が相続を単純承認した後に死亡した場合、死亡した相続人の相続人は最初の相続で単純承認した地位を受け継ぎます。
最初の相続の相続人が相続を単純承認した後に死亡した場合でも、死亡した相続人の相続人は、二次相続について相続放棄をすることができます。
最初の相続の相続人が相続を単純承認するか、限定承認するか、相続放棄するか手続しないまま、死亡した場合が問題になります。
選択肢は次の3つです。
- 死亡した相続人の相続人は、最初の相続について単純承認して、二次相続について単純承認をすることができます。
- 死亡した相続人の相続人は、最初の相続について相続放棄して、二次相続について単純承認をすることができます。
- 死亡した相続人の相続人は、二次相続について相続放棄をすることができます。
4 数次相続の遺産分割協議書の書き方
数次相続では最初の相続と次の相続が発生しています。
最初の相続と次の相続で、相続人が全く一緒の場合、1通の協議書に取りまとめるのが楽です。
最初の相続と次の相続で、相続人が異なる場合、別々の協議書に取りまとめる方が分かりやすいでしょう。
1通に取りまとめる場合、死亡した相続人は「相続人兼被相続人」と分かりやすく明記します。
相続人の肩書も、最初の相続の相続人は「相続人」、死亡した相続人の相続人は「相続人兼被相続人〇〇〇の相続人」と分かりやすく明記します。
5 数次相続の相続登記
登記はそれぞれの原因ごとに分けて申請するのが原則です。
権利が移っていった過程もきちんと記録されなければならないからです。
売買などで、A→Bの後、B→Cと所有権が移転した場合、2つの登記申請が必要です。
途中と飛ばして、A→Cとすることはできません。
Bに所有権が移転したことが分からなくなってしまうからです。
相続登記においては、途中の人が1人の場合に限り、途中の人を飛ばして登記することができます。
相続人がだれであるかは戸籍を調べれば分かるから、途中を省略しても差し支えないとされています。
途中の人が1人になる場合とは、最初から1人の場合だけでなく、もともとの相続人はたくさんいたけど、他の相続人全員が相続放棄をしたや、遺産分割で1人になった場合も含みます。
最初の相続の遺産分割協議中に相続人が死亡した場合でも、最初の相続の他の相続人全員と死亡した相続人の相続人全員で遺産分割協議ができます。
最初の相続の他の相続人全員と死亡した相続人の相続人全員で、最初の相続の相続財産を死亡した相続人が相続することを合意することができます。
このような死亡した相続人が相続する合意をした場合も、遺産分割で1人になった場合に含みます。
遺産分割協議をしないまま、相続人が死亡して、最終の相続人が1人になった場合、途中を省略することはできません。
最終の相続人が複数であれば遺産分割協議ができますが、最終の相続人が1人になった場合は遺産分割協議はできないからです。
相続財産の分け方について合意をしたが、遺産分割協議書に取りまとめる前に、相続人が死亡した場合は別の結論になります。
合意をしたが、文書に取りまとめる前に死亡したのであれば、最終の相続人が1人になった場合でも、途中を省略することができます。
遺産分割は文書に取りまとめてなくても有効だからです。
この場合、1人になった相続人が、死亡した相続人と遺産分割協議をした内容を遺産分割協議証明書という書類に取りまとめます。
遺産分割協議証明書は相続登記において登記原因証明情報として法務局に提出します。
6 相続登記を司法書士に依頼するメリット
相続が発生すると、相続人は悲しむ暇もなく相続手続に追われます。
ほとんどの人は相続手続は不慣れで、聞き慣れない法律用語で疲れ果ててしまいます。
インターネットの普及で多くの人は簡単に多くの情報を手にすることができるようになりました。
多くの情報の中には正しいものも、適切でないものも同じように混じっています。
遺産分割協議中に相続人が死亡すると手続は複雑になります。
遺産分割協議後に相続人が死亡する場合もあります。
被相続人より先に、相続人になるはずだった人が死亡する場合もあります。
知識がない方から見ると、あまり違いが感じられないかもしれません。
些細な違いで法務局に何度も足を運び、何度も書籍やインターネットで調べることになります。
今回ご紹介した遺産分割協議中に相続人が死亡した場合、最初の相続の話し合いが長期間に渡っていることが多いです。
長期間に渡っていると、その他の論点もたくさん出てきて手に負えなくなるでしょう。
書籍やインターネットの情報を頼りに相続登記を申請しても、取下げをすることになることが多いです。
司法書士は登記の専門家です。
スムーズに相続登記を完了させたい方は司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。