賃貸マンションを相続

1賃貸マンションを借りる権利は相続財産

被相続人が賃貸マンションやアパートに住んでいることがあります。

お部屋を借りる権利のことを、賃借権と言います。

原則として、お部屋を借りている人が死亡しても、賃貸借契約は終了しません。

相続が発生すると、原則として、被相続人の財産は相続人が相続します。

相続人が相続する財産が、相続財産です。

相続財産はプラスの財産とマイナスの財産があります。

どちらも、相続財産です。

一般的に不動産、預金、株式や投資信託などの有価証券、現金などがイメージしやすいでしょう。

これ以外にも、賃借権などの権利もプラスの財産になります。

賃貸借契約よっては、お部屋を借りている人が死亡したら契約終了になるものがあります。

60歳以上の高齢者のための契約で、終身建物賃貸借である場合です。

賃貸借契約書を確認するか、業者に問い合わせをしましょう。

2まずは遺産分割協議

相続が発生すると、相続財産は相続人全員の共有財産になります。

賃借権も相続財産なので、相続人全員の共有財産になります。

賃借権は権利なので、準共有という言い方をします。

2人以上相続人がいる場合や遺言書がない場合は、遺産の分け方について相続人全員で話し合いをする必要があります。

この相続人全員で話し合いのことを遺産分割協議といいます。

相続財産の分け方について、相続人全員で、合意が不可欠です。

お部屋を借りる権利は相続財産ですから、相続人全員で、合意が必要になります。

まず、銀行の預貯金や不動産のように、賃借権についてもだれが受け継ぐのか決めましょう。

相続人全員で合意がまとまったら、遺産分割協議書に取りまとめておきます。

賃借権をだれが受け継ぐのかについて、家主や管理会社に相談する必要はありません。

家主や管理会社の同意や承諾も必要ありません。

賃借権の相続人が決まったら、家主や管理会社に連絡します。

これ以降、賃借権を相続した相続人がそのお部屋に住むことができ、家賃も負担します。

相続で賃借権が相続された場合、被相続人の契約内容がそのまま引き継がれます。

相続で自動的に受け継がれるものなので、相続が発生したことによって賃貸借契約を新規締結したり、契約変更したりする手続は必要ありません。

相続があったことで、契約内容がうやむやになったり、賃料や敷金関係があいまいになりがちです。

家主や管理会社と相続人の間で、賃借権の内容を合意事項として文書にしておくと、以降のトラブル防止に役立つでしょう。

3遺産分割までの家賃

①家主から相続発生後の家賃を請求された場合

相続人は家賃全額を支払わなければなりません。

家主はどの相続人にも家賃全額を請求することができるという意味です。

相続人は法定相続分は2分の1だから、2分の1しか払わないとは言えません。

相続が発生すると、賃借権は相続財産として、相続人全員の共有財産になります。

相続人全員はお部屋を使うという権利を共有していると言えます。

お部屋を使う権利は明確に分けることはできませんから、家賃も分けることができず全額支払う必要があります。

遺産分割協議で賃借権を相続する相続人を決めたから、相続する相続人以外は家賃を払わないと言うこともできません。

遺産分割で決めるのは、相続が発生したときの財産だからです。

相続が発生した後の家賃は、相続財産とは別物で、相続人の固有の債務だからです。

もちろん、家賃全額を支払った相続人は他の相続人に対して、法定相続分に応じて負担分の請求ができます。

②家主から相続発生前の未払い家賃を請求された場合

相続人は、法定相続分に応じて、家賃を支払わなければなりません。

相続発生前の未払い家賃は、相続財産になります。

相続財産だから、相続人全員の合意で分け方を決めることができます。

例えば、賃借権を相続する相続人が未払い家賃を負担するという合意をすることができます。

この合意は、相続人間の内輪の合意です。

家主が法定相続分の未払い家賃を請求してきたら、未払い家賃の法定相続分を支払わなければなりません。

賃借権を相続する相続人が未払い家賃を負担するという合意があるから、未払い家賃を支払わないと文句をいうことはできません。

賃借権を相続する相続人が未払い家賃を負担するという合意は、家主には関係ない話だからです。

家主に支払った後で、未払い家賃を負担すると合意した相続人に請求します。

一部の相続人が未払い家賃の法定相続分を支払わない場合、他の相続人に請求することはできません。

一部の相続人が支払わない場合、家主は他の相続人に請求してくることがあります。

未払い家賃の法定相続分以上を支払う必要はありません。

家主の不当な請求ですから、断ることができます。

4相続人がだれも住まない場合

賃貸マンションやアパートを借りている場合、賃貸借契約を解除するまで、家賃がかかり続けます。

賃貸マンションやアパートを借りている人が死亡しても、賃貸借契約は解除されません。

賃貸借契約が効力を持ち続けるので、家賃を支払い続けなければなりません。

相続人がだれも住まないのであれば、すみやかに、賃貸借契約を解除する必要があります。

多くの賃貸借契約書には、契約期間や中途解約は〇か月前に申し出ることと言った中途解約条項があります。

契約書の内容に従って、解約手続をしましょう。

返還された敷金は、それぞれの相続人の相続分に応じた額で分配します。

5相続放棄をする場合

被相続人に多額の借金がある場合、相続放棄を検討しましょう。

家庭裁判所で相続放棄を認めてもらったら、相続人でなくなります。

相続人でなくなれば、多額の借金も賃借権も相続することはなくなります。

相続していないので、借金も家賃も支払う必要がありません。

賃借権を相続していないから、賃貸借契約を解除する必要がありません。

大家が賃貸借契約の合意解除をするように請求してくることがあります。

相続放棄をする場合、合意解除に応じてはなりません。

賃貸借契約を合意解除した場合、相続放棄が無効になるからです。

相続財産を処分した場合、相続を単純承認したとみなされます。

賃借権は相続財産ですから、賃貸借契約を合意解除した場合、賃借権を処分したとみなされます。

相続放棄をした人も、他の人が管理するまで適切に管理する必要があります。

物件を放置して周りの人に迷惑をかけてしまったら、損害賠償請求される可能性があります。

必要であれば、家庭裁判所に相続財産管理人を選んでもらうように申立をすることも考えましょう。

6事実婚・内縁の配偶者が賃貸マンションに住み続けることができる特例

相続が発生したら、親族のうち一定の範囲の人が相続人になります。

相続人になる人は次のとおりです。

①配偶者は必ず相続人になる

②被相続人に子どもがいる場合、子ども

③被相続人に子どもがいない場合、親などの直系尊属

④被相続人に子どももいない場合で、かつ、親などの直系尊属が被相続人より先に死亡している場合、兄弟姉妹

配偶者は法律上の配偶者を指しますから、事実婚や内縁関係の場合は相続人になれません。

被相続人が賃貸マンションを借りていて、事実婚や内縁の配偶者と一緒に住んでいることがあります。

事実婚や内縁の配偶者は相続人になれませんから、原則として、相続財産を受け継ぐことができません。

賃借権は相続財産ですから、相続人全員の合意で、相続する人を決めます。

賃借権を相続した相続人の賃借権を援用して、事実婚や内縁の配偶者が賃貸マンションに住み続けることができます。

相続人が家賃を支払わずにいれば、家主から家賃不払いを理由に一方的に賃貸借契約を解除される可能性があります。

事実婚や内縁の配偶者は利害関係人になりますから、相続人に代わって家賃を払うことで賃貸借契約を解除されないようにするといいでしょう。

相続人が不存在の場合、借地借家法という特別の法律で、賃借人の事実婚や内縁の配偶者は、賃借権を引き継ぐことができます。

7賃借マンションの相続を司法書士に依頼するメリット

遺産分割協議書は遺産の分け方について、相続人全員による合意を取りまとめた文書です。

合意がきちんと文書になっているからこそトラブルが防止できるといえます。

賃貸マンションを借りている場合、賃借権は相続財産になります。

相続人らはお部屋を借りているだけで相続財産とは考えていないことが多いです。

相続人間でトラブルが発生しなくても、家主や管理会社とトラブルになる可能性もあります。

司法書士は賃借権の相続についても適切にサポートします。

トラブルにならない相続手続を考えている方は、司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。

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