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1 高齢になった家族の介護費用の心配がある方
平均寿命は男性も女性も80歳を超しました。
長生きになると、認知症になる可能性も高くなります。
認知症になると、記憶があいまいになったり、物事のメリットデメリットを適切に判断することができなくなりますから、自分の財産を管理したり処分したりすることができなくなります。
自分の不動産を売却したり、定期預金を解約したり、預貯金を引き出したりできなくなります。
認知症になったら「老人ホームに入るから自宅を売る」ことはできなくなるのです。
認知症になったら「老人ホームの費用を払うため預貯金を引き出す」ことはできなくなるのです。
家族信託を活用すれば、自由に売る権利や自由に管理する権利を信頼できる家族に渡してありますから、本人が認知症で判断能力が低下しても、財産を活用することができます。
「認知症になったら老人ホームに入るから自宅を売ってね」を実現できます。
2 知的障害がある子どもの生活費が心配な方
知的障害を持つ子どもがいる場合、自分で充分な収入を得ることが難しい場合があります。
親が元気なうちは親が生活の面倒をみているでしょう。
親が収益不動産などを保有している場合、賃料収入を子どもの生活費にできるようにしてあげたいと考えるでしょう。
親が高齢になったら、やはり認知症のリスクは避けられません。
何も対策せず、親が認知症になってしまっただけでも、周りの家族は右往左往することになます。
そのうえ、重い障害を持つ子どもの生活のことまで考えなければなりません。
知的障害がある子どもは収益不動産を適切に経営するのは難しいでしょう。
このような場合、家族信託を活用して、自由に売る権利や自由に管理する権利を兄弟など信頼できる家族に渡しておくことができます。
家族信託の仕組みの中で、利用している施設の費用の支払や生活費を具体的に指定することができます。
3 不動産を共有している方
収益不動産などを相続した場合、兄弟で共有しているケースが多いです。
兄弟が若く、元気なうちは問題がないのですが、長い期間がたつうちに高齢者になると、認知症になるリスクは避けられません。
例えば、3人兄弟で共有していれば、誰か1人が認知症になる確率は3倍になるでしょう。
判断能力が低下すると、賃貸借契約の締結や解除ができなくなります。
特に、収益不動産は自宅と違い、時機を見て、建て替えや大規模な修繕をするなどの判断が必要です。
このような場合、共有者全員が自由に売る権利や自由に管理する権利を信頼できる家族に渡してあれば、修繕や賃貸借契約に困ることを回避できます。
4 先祖伝来の実家を守りたい方
由緒ある家系の方には、先祖伝来の地や実家を守りたいと考える方がいます。
自分が死亡した後、誰に受け継いでもらいたいかを考えるとき、真っ先に思い浮かぶのは遺言でしょう。
遺言書で指定できるのは、次の人までです。
受け継いだ人が、次の次に誰に受け継いでもらうかは、受け継いだ次の人が決めます。
遺言書で次の次に誰に受け継いでもらうかを決めることはできません。
子どものいない夫婦で問題になります。
子どものいない夫婦で、自分が死亡した後は妻に自宅に住み続けられるようにしてあげたいと思うでしょう。
自宅は妻に相続させると遺言した場合、妻は自宅を相続できます。
次に、妻が死亡した場合、子どもがいないので、妻の兄弟や妻の兄弟の子が相続することになります。
先祖伝来の地は自分の家系の人に受け継いでもらいたいと思っているのに、かなえられなくなります。
この場合、自分の弟に遺贈する旨の遺言を書いてもらうという方法も考えられます。
妻が遺言書を書くかどうかは妻の気持ち次第です。
たとえ妻が遺言書を書いたとしても、自分が死亡した後、書き換えるかもしれません。
遺言書は何度でも書き直しができるし、何度でも撤回ができます。
書き直しや撤回はしませんという約束は無効です。
それが遺言書のメリットでもあるのですが、ここではデメリットになってしまいます。
家族信託の仕組みを使うと、次の人は妻だけでなく、次の次の人は弟なども指定できます。
遺言よりも踏み込んだ受け継ぎ方を指定できますから、このような思いをかなえることができます。