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遺産分割協議は債務不履行で解除ができない
1相続財産の分け方は5種類ある
分け方①現物分割
相続財産には、いろいろな財産が含まれています。
不動産のように分けにくい財産もあるし、金銭のように分けやすい財産もあります。
相続財産の大部分が、不動産のような分けにくい財産で場合、相続財産の分け方についての合意が難しくなるでしょう。
現物分割とは、広大な土地などを相続人の人数で分割して、相続する方法です。
広大な土地でないと、実現しにくい方法です。
もともと広大な土地であれば、現物分割をしても問題がないでしょう。
極端に小さい土地になると使い勝手が悪くなります。
不動産の価値が下がってしまいます。
あまり現実的ではないかもしれません。
分け方②代償分割
代償分割とは、一部の相続人が不動産を相続し、残りの相続人は不動産を相続した人からその分のお金をもらう方法です。
土地を分割するわけではないので、極端に小さな土地になって価値が下がる心配はありません。
代償分割では、不動産を相続する相続人が他の相続人に払うお金を用意する必要があります。
不動産は、一般的に重要な財産であることが多いでしょう。
相続財産の大部分が不動産で、かつ、値段の高い不動産だった場合、代償金が用意できないかもしれません。
不動産の値段をいくらと考えてお金を払うことにするのか、話し合いが求まらないおそれがあります。
相続人のうちだれが現実に不動産を相続することにするのか、話し合いがまとまらないおそれがあります。
分け方③換価分割
換価分割とは、不動産を売却してお金に換えた後、お金を分ける方法です。
実際に売れてから、お金で分ける方法です。
不動産の値段をいくらと考えるか、だれが実際に不動産を相続するのかで話し合いがまとまらないという心配はありません。
せっかく家族が守ってきた不動産を手放すことへの罪悪感にかられるかもしれません。
売却することに対して、相続人全員の話し合いがまとまらないおそれがあります。
売却しようとしたのに買い手がつかないと、相続手続が長引くおそれがあります。
分け方④共有
共有とは、相続人全員で共有する方法です。
共有は、最も公平に見えやすいでしょう。
相続人全員で相続財産の分け方について話し合いによる合意ができない場合、共有が選ばれることがあります。
共有は弊害が多く、安易に共有にする方法はもっとも避けるべきです。
共有にした場合、共有者全員の同意がなければ売却することはできません。
共有者が死亡したら、相続が発生して関係者が増えることが予想されます。
関係者が多くなればなるほど、権利関係が複雑になります。
共有はデメリットが大きいから、後々、共有物分割をしようという話になるでしょう。
結局のところ、問題の先送りになるだけです。
相続トラブルが長期化しますから、家族の絆が壊されてしまいます。
分け方⑤用益権の設定による分割
用益権とは、不動産を自分で使ったり、人に貸して賃料を得たりする権利です。
用益権の設定による分割とは、一部の相続人に使う権利を設定して、他の相続人が使う権利のない所有権を相続する方法です。
家族が守ってきた不動産を手放すことなく相続ができます。
相続人のうち、だれが使う権利を得るのか、話し合いがまとまらないおそれがあります。
使う権利のない所有権をだれが相続するのか、、話し合いがまとまらないおそれがあります。
2債務不履行があっても一方的解除はできない
①代償分割の代償金を払ってくれない
相続財産の分け方について相続人全員の話し合いがまとまった場合、合意内容どおりに相続財産を受け取ります。
不動産のように高額で分けにくい財産を受け取った人は、自己の固有の財産から金銭を支払うことで調整することがあります。
一般的な売買契約において、代金を支払わない場合、契約を解除することができます。
相続財産においては、このような解除制度はありません。
いったん相続財産の分け方を相続人全員で合意した場合、遺産分割協議は終了します。
遺産分割協議が終了した後は、代償金を支払う人と受け取る人の問題になります。
金銭を支払う人と受け取る人の話し合いで解決を図ります。
代償金を支払うと約束した人が支払ってくれなくても、相続財産の分け方の合意をなかったことにはできません。
相続財産の分け方の合意において、代償金の支払が重要な要素であっても債務不履行を理由として解除することはできません。
代償分割の代償金を払ってくれない場合でも、一方的解除はできません。
②遺産分割で決めた負担を履行しない
相続財産の分け方を決める際に、一部の相続人が負担をつけて、他の相続人より多くの財産を受け取る合意をする場合があります。
例えば、親の介護をすることを条件に財産を多く受け取るケースです。
他の相続人より多くの財産を受け取った相続人が負担を履行しない場合があります。
財産を多く受け取った相続人が充分に親の介護をしていないと、不満に思うこともあるでしょう。
親の介護を充分にしていなくても、相続財産の分け方の合意をなかったことにはできません。
いったん相続財産の分け方を相続人全員で合意した場合、遺産分割協議は終了するからです。
遺産分割で決めた負担を履行しない場合でも、一方的解除はできません。
③相続債務の履行をしない
被相続人がマイナスの財産を残していることがあります。
例えば、相続財産に自宅と自宅の住宅ローンがある場合です。
相続財産というと、プラスの財産だけをイメージしがちです。
プラスの財産だけでなく、マイナスの財産も相続財産です。
自宅と自宅の住宅ローンがある場合、一部の相続人が住宅ローンの支払をすることを約束して自宅を受け継ぐ合意をするでしょう。
自宅を受け継ぐ相続人が住宅ローンの支払いをする約束は、相続人間の内部的合意事項です。
相続人の内輪の合意事項だから、銀行には関係ない話です。
相続人間の合意事項に関係なく、銀行は相続人全員に対して法定相続分で住宅ローンの支払いを請求することができます。
自宅を受け継いだ相続人が住宅ローンを支払う約束をしたからと言って、住宅ローンの支払いを拒むことはできません。
遺産分割協議書に「自宅を引き継ぐ人が住宅ローンを引き継ぐ」と記載して相続人全員が署名して実印押印しても銀行には関係ありません。
自宅を受け継いだのに住宅ローンを支払わない場合であっても、相続財産の分け方の合意をなかったことにはできません。
相続債務の履行をしない場合でも、一方的解除はできません。
3相続人全員で遺産分割協議の合意解除ができる
相続財産の分け方について、相続人全員で合意したら、確定して話し合いは終了になります。
相続人全員で合意して、相続財産の分け方が確定します。
その後に相続人が死亡しても、遺産分割協議のやり直しはできません。
例外は、相続人全員がやり直しに合意している場合です。
相続人全員が別の分け方の方が良かったと納得している場合です。
一部の相続人が遺産分割協議を法定解除をすることはできません。
法定解除とは、契約などで義務を負担する約束をしたのに履行されない場合に相手方が契約を一方的に解除することです。
遺産分割協議で約束したことを履行しない場合、他の相続人は遺産分割協議を一方的に解除することはできません。
遺産分割協議を相続人全員で合意解除をすることができます。
4遺産分割協議のやり直しの注意点
①第三者に渡った財産は取り返せない
当初の遺産分割協議で、財産を受け取った人が第三者に財産を譲渡している場合があります。
相続財産の分け方の合意をやり直すことはできても、第三者に渡ってしまった財産そのものは取り返せません。
当初の遺産分割から長時間経過した後に遺産分割のやり直しをする場合、財産状況が大きく変わっているおそれがあります。
遺産分割のやり直しまでに、財産を受け取った相続人が相続財産を使ってしまうからです。
遺産分割協議は、相続が開始したときの相続財産を前提に話し合います。
財産状況が大きく変わると混乱して、話し合いがつかなくなるおそれがあります。
②やり直しで不動産の名義が変わると名義変更が必要になる
当初の遺産分割協議で不動産に相続登記がされているでしょう。
やり直しをしたことによって別の人が相続することになった場合、あらためて名義変更が必要です。
当初の相続登記を取り消して、新たな遺産分割に基づく相続登記をします。
③税金の負担がある
相続財産の分け方の合意をやり直す場合、当初の課税が撤回されるわけではありません。
それどころか、新たな相続人間の合意は新たな財産の譲渡や贈与があったとされます。
高額な税金が追加で、課税されることになります。
相続財産の分け方について、相続人全員で話し合いによる合意をする必要があります。
新たに高額な課税があることを承知したうえで、相続人全員が合意しておくことが重要です。
5遺産分割協議書作成を司法書士に依頼するメリット
遺産分割協議書は遺産の分け方について、相続人全員による合意を取りまとめた文書です。
前提として、話し合いによる合意ができていなければ、文書にできません。
内容よりもとにかく文書さえあればいいという意識の低い人がいるのも事実です。
遺言書がなければ、遺産分割協議書は不可欠になると言って差し支えありません。
悪いようにしないからとにかく印鑑を押せとか、相続税の申告期限をちらつかせて押印を迫るとか、他に財産はないからと言われてトラブルになることも多いものです。
有効な話し合いによる合意があって、有効な合意を文書に取りまとめるから、トラブルを防ぐことができるのです。
相続財産を分け方について相続人全員で合意すると、原則としてやり直しができません。
やり直しができる例外を紹介しましたが、他の相続人にとっては、合意を取り消すなど納得できないことも多いでしょう。
このような場合、証拠を用意して裁判所に持ち込むことになるでしょう。
裁判所で争うとなると、一般の人にとっては荷が重いので、弁護士に依頼することになります。
一方に弁護士がついたら、一般の人は対応しきれませんから弁護士に依頼することになるでしょう。
弁護士は依頼人の利益最大化のために働きますから、家族の絆が壊されてしまいます。
悪いようにしないからとにかく印鑑を押せとか、相続税の申告期限をちらつかせて押印を迫るとか、納得できないときには、合意していないことをきちんと伝えましょう。
司法書士は合意を確認して書類を作成しています。
申告期限のために、とにかく書類だけ作るなど絶対にやめましょう。
適切な遺産分割協議書を作り、家族のトラブルを避けたい方は、司法書士などの専門家にサポートを依頼することをおすすめします。
葬儀費用を遺産分割協議
1葬儀費用は相続財産ではない
①葬儀費用は相続発生後の債務
相続が発生すると、原則として、被相続人の財産は相続人が相続します。
相続人が相続する財産が、相続財産です。
相続財産には、プラスの財産とマイナスの財産があります。
どちらも、相続財産です。
葬儀費用は、相続財産ではありません。
被相続人が生前に葬儀費用を負担することはないからです。
葬儀費用は、被相続人から引き継ぐ費用ではありません。
葬儀費用は相続発生後に、負担する債務です。
②香典は相続発生後の贈与
葬式の弔問客の意識としては、香典は被相続人に手向ける気持ちかもしれません。
被相続人は死亡しているので、香典を受け取ることはできません。
香典は、相続財産ではありません。
被相続人が生前に香典を受け取ることはないからです。
香典は、被相続人から引き継ぐ財産ではありません。
香典は、喪主に対する贈与です。
同様に、香典返しも喪主から弔問客への贈与です。
葬儀費用、香典、香典返しは、相続財産ではありません。
香典は、相続発生後の贈与です。
③葬儀費用の負担者は明確には決まっていない
葬儀費用は、葬式の契約をした人が支払います。
だれが葬式の契約をするかについて、法律の定めはありません。
だれが葬儀費用を支払うかについて、明確な定めはありません。
裁判所や学者は、次のような意見があります。
(1)相続人全員の負担にする説
(2)喪主が負担する説
(3)相続財産から負担する説
(4)地域の慣習で決める説
被相続人や相続人のそれぞれの事情があるから、一概に決められません。
葬儀費用の負担者は、明確には決まっていません。
④被相続人の口座は凍結される
被相続人の預貯金を払い戻して支払いをすればいいと考えるかもしれません。
金融機関は口座の持ち主の死亡を確認した場合、口座を凍結します。
口座が凍結された場合、原則として、引出しや解約はできなくなります。
被相続人の口座は、凍結されます。
2葬儀費用は遺産分割協議で合意できる
①葬儀費用を負担する人を合意する
葬儀費用、香典、香典返しは、相続財産ではありません。
相続財産でない財産であっても、遺産分割協議の話し合いの対象にすることができます。
相続財産ではないから、法定相続分とは別の話です。
相続人全員でよく話し合ってみんなが合意できる結論を出すのが大切です。
葬儀費用の負担で話し合いがまとまらない場合、他の財産の分け方の合意も難しくなりがちです。
相続人全員の合意で、葬儀費用を負担する人を決めることができます。
②立替払いをした人は費用の記録と領収書を保管
実際のところ、特定の相続人が葬儀費用を立て替えているでしょう。
葬儀費用を立て替えた人は、費用の記録と領収書を保管しておきましょう。
僧侶へのお布施や遠方の弔問客等へのお車代など、領収書が出ないときは相手先と金額を記録しておきます。
同様に、受け取った香典についても、記録を付けておくといいでしょう。
疑心暗鬼になると、トラブルになりやすいからです。
葬儀費用を立替払いした人は、費用の記録と領収書を保管することが重要です。
③葬儀費用の範囲を合意する
葬儀費用といった場合、どの範囲の費用が葬儀費用なのかは人によって異なります。
例えば、次のような費用があります。
(1)死亡診断書の発行手数料
(2)葬儀会社へ支払う費用
(3)通夜や葬式の後の飲食代
(4)初七日や四十九日法要の費用
(5)香典返しの費用
(6)僧侶へのお布施
(7)遠方の弔問客等へのお車代
(8)お墓の購入費用
(9)納骨の費用
葬儀費用負担で話し合う場合、どのような費用をだれが負担するか合意するとトラブル防止に役立ちます。
④遺産分割協議は債務不履行で解除できない
相続財産の分け方について、相続人全員で合意したら、確定して話し合いは終了になります。
相続人全員で合意して、相続財産の分け方が確定します。
その後に葬儀費用を支払わなくても、遺産分割協議のやり直しはできません。
一部の相続人が遺産分割協議を法定解除をすることはできません。
法定解除とは、契約などで義務を負担する約束をしたのに履行されない場合に相手方が契約を一方的に解除することです。
遺産分割協議で約束したことを履行しない場合、他の相続人は遺産分割協議を解除をすることはできません。
遺産分割協議のやり直しは、相続人全員の合意が必要です。
相続人全員の合意がある場合、遺産分割協議の合意解除ができます。
遺産分割協議は、債務不履行で解除ができません。
3葬儀費用を遺産分割協議書に書く方法
①特定の相続人が負担する記載例
記載例
第○条
相続人全員は、被相続人にかかる葬儀費用合計金300万円について、相続人○○○○が負担することを合意する。
遺産分割協議書には、葬儀費用の具体的な金額を記載することをおすすめします。
葬儀費用の金額について相続人の合意がある場合、トラブル防止に役立つからです。
葬儀費用、香典、香典返しは、相続財産ではありません。
遺産分割協議で、葬儀費用などの負担について合意をすることができます。
相続人全員の合意内容を取りまとめた書面が遺産分割協議書です。
相続財産の分け方以外の項目について相続人全員で合意した場合、遺産分割協議書に盛り込むことができます。
相続財産の分け方以外の項目について記載してある場合であっても、遺産分割協議が無効になることはありません。
②複数の相続人が分担する記載例
記載例
第○条
相続人全員は、被相続人にかかる葬儀費用合計金300万円について、相続人○○○○が金200万円、相続人□□□□が金100万円負担することを合意する。
相続人□□□□は相続人○○○○に対して、令和○年○月○日までに、葬儀費用負担金100万円を振り込みの方法により支払う。
振込手数料は、相続人□□□□の負担とする。
喪主は、葬式を主宰します。
多くの弔問客の対応など、気苦労が多い役目でしょう。
葬式で大変な思いをしたうえに葬儀費用をすべて負担するとなると、不満に思うかもしれません。
複数の相続人で分担するように合意することができます。
③預金等で調整する記載例
記載例
第○条
相続財産中、次の被相続人名義の財産については、相続人○○○○が相続する。
金融機関名 ○○銀行 ○○支店
預金種別 普通預金
口座番号 ○○○○○○○
第○条
相続人全員は、被相続人にかかる葬儀費用合計金300万円について、相続人○○○○が負担することを合意する。
遺産分割協議とは、相続財産の分け方についての相続人全員による話し合いです。
相続人全員が合意できるのであれば、どのような分け方をすることもできます。
相続発生後に被相続人名義の口座は、凍結されます。
葬儀費用は、一部の相続人が立替ているでしょう。
葬儀費用を立て替えている相続人に、預貯金を多く相続してもらう合意をすることができます。
実質的に、相続財産から支出することができます。
4遺産分割協議がまとまらないときは家庭裁判所
①遺産分割調停で合意
相続人で合意ができない場合、家庭裁判所の助力を得て合意を目指します。
遺産分割調停は、家庭裁判所の調停委員を交えた相続人の話し合いです。
調停委員の助言があるとはいえ相続人同士の話し合いだから、相続財産以外のことについて話し合いができます。
遺産分割調停では、相続財産以外の葬儀費用についても話し合いことができます。
相続人だけで話し合いをした場合、感情的になって収拾がつかなくなるかもしれません。
家庭裁判所の調停委員を交えると、ある程度冷静になることができます。
第三者を交えることで、相続人全員が折り合いをつけることができるかもしれません。
②遺産分割審判は葬儀費用が対象外
遺産分割調停で合意ができない場合、遺産分割審判に移ります。
遺産分割審判は、相続人の話し合いではありません。
裁判官が遺産分割の内容を決定します。
遺産分割審判は、相続財産の分け方についての決定です。
遺産分割の内容を決定するだけだから、葬儀費用については決定されません。
葬儀費用は、相続財産ではないからです。
③民事訴訟
遺産分割審判では、相続財産の分け方が決定されます。
葬儀費用負担については決定されないから、遺産分割審判では解決しません。
葬儀費用負担について合意できない場合、あらためて民事訴訟をすることになります。
5遺産分割協議書作成を司法書士に依頼するメリット
遺産分割協議書は遺産の分け方について、相続人全員による合意を取りまとめた文書です。
前提として、話し合いによる合意ができていなければ、文書にできません。
内容よりもとにかく文書さえあればいいという意識の低い人がいるのも事実です。
遺言書がなければ、遺産分割協議書は必要になると言って差し支えありません。
悪いようにしないからとにかく印鑑を押せとか、相続税の申告期限をちらつかせて押印を迫るとか、他に財産はないからと言われてトラブルになることも多いです。
有効な話し合いによる合意があって、有効な合意を文書に取りまとめるから、トラブルを防ぐことができるのです。
相続財産を分け方について相続人全員で合意することは原則としてやり直しができません。
司法書士は合意を確認して、書類を作成しています。
申告期限のためにとにかく書類だけ作るなど絶対にやめましょう。
適切な遺産分割協議書を作り、家族のトラブルを避けたい方は、司法書士などの専門家にサポートを依頼することをおすすめします。
遺産分割協議書を公正証書に
1遺産分割協議書は相続人全員の合意の証明書
相続が発生した後、相続財産は相続人全員の共有財産になります。
相続人のひとりが勝手に処分することはできません。
相続人全員で相続財産の分け方について話し合いによる合意をして、分け方を決める必要があります。
相続財産の分け方にについて、相続人全員でする話し合いのことを遺産分割協議と言います。
遺産分割協議がまとまったら、相続人全員の合意内容を文書に取りまとめます。
相続人全員の合意内容を取りまとめた文書のことを遺産分割協議書と言います。
遺産分割協議は、必ず、全員で合意する必要がありますが、全員が一つの場所に集まる必要はありません。
電話でもメールでも差し支えありません。
一度に全員合意する必要もありません。
一部の相続人と合意をして、次に、残りの相続人と合意をすることでも問題ありません。
最終的に相続人全員が合意できれば良いのです。
全ての財産をまとめて合意しなければならないといったこともありません。
一部の財産についてだけ合意をすることもできます。
遺産分割協議書は、司法書士などの専門家に作ってもらうこともできるし相続人のひとりが作ることもできます。
より確実にするのであれば、公証役場で公正証書にしてもらうといいでしょう。
2遺産分割協議書を公正証書にするメリット
①公正証書は信用力が高い
遺産分割協議書を公正証書にする場合、公証人という法律の専門家が関与します。
公正証書を作成したい当事者の本人確認と本人の意思確認をします。
法律の専門家が公正証書にしますから、書き方の不備のために相続手続ができないという事態はあり得ません。
公証人が確認をしたうえで公正証書にしますから、一般の書面と較べると後から無効を主張されにくくなります。
裁判などに提出した場合でも高い証拠力があります。
公証人が関与するから、公正証書には高い信頼性があります。
②公正証書は公証役場で20年間保管される
遺産分割協議書を公正証書にした場合、原本が公証役場で20年間保管されます。
公証役場で厳重に保管されるから、紛失や改ざんの心配がありません。
③強制執行することができる
遺産分割協議の合意において、金銭の支払いを約束する場合があります。
遺産分割協議書を公正証書にする場合、金銭の支払いをする点だけでなく支払いをしなかったときのことを書いてもらうことができます。
相続人○○が上記金銭の支払いをしなかったときは、直ちに強制執行に服する旨を認諾した。
上記のような文言がある場合、公正証書で強制執行をすることができます。
お金を払ってもらう人にとっては、心強いものと言えます。
公正証書でない遺産分割協議書では、強制執行ができません。
強制執行をするためには、裁判所で訴訟をして勝訴判決などの債務名義を得る必要があります。
約束したお金を払ってもらうために裁判をしなければならないとなるとハードルが高いものです。
遺産分割協議書を公正証書にすると、裁判をすることなく直ちに強制執行することができます。
3遺産分割協議書を公正証書にした方がいいケース
①相続人間のトラブルを防止したい場合
(1)相続人同士の仲が良くない、疎遠である
(2)相続人間に関係性が薄い相続人がいる
(3)包括受遺者など親族でない人がいる
(4)財産が多種類で複雑である
相続財産の分け方は、相続人全員の合意が不可欠です。
上記のような事情がある場合、相続人全員の合意がまとまりにくい傾向があります。
相続人全員で合意ができたはずなのに、無理矢理印鑑を押させられたから白紙に戻すべきだなどと話を蒸し返すことが考えられます。
遺産分割協議書を公正証書にする場合、公証人が本人確認と本人の意思確認をします。
後になって、だまされたから白紙にしたいと言っても、認められることはほとんどありません。
公正証書にすることでトラブル防止に役立ちます。
②代償分割をした場合
相続財産の大部分が自宅不動産の場合、相続財産の分け方の合意は難しくなります。
一部の相続人が不動産を相続し、残りの相続人は不動産を相続した人から、その分のお金をもらう方法で合意がされる場合があります。
一部の相続人が不動産を相続し、残りの相続人は不動産を相続した人から、その分のお金をもらう方法のことを、代償分割と言います。
相続財産の大部分が不動産で、かつ、値段の高い不動産だった場合、残りの相続人に払うお金を用意することが難しい場合があります。
相続人同士の関係性が良くない場合、代償金を払うのが惜しくなるかもしれません。
売買契約などで買主が売買代金を支払わない場合、売主は売買契約を解除することができます。
遺産分割協議では、代償金を支払わない場合でも遺産分割協議を解除することはできません。
代償分割をする場合、代償金をきちんと支払ってもらうことが重要になります。
遺産分割協議書を公正証書にした場合、強制執行をすることができます。
代償金の支払いがない場合、裁判で勝訴判決などの債務名義を得なくても強制執行をすることができます。
代償金を支払ってもらう人にとっては、公正証書にすることは心強いものと言えるでしょう。
4遺産分割協議書を公正証書にする方法
①相続人を調査する
相続が発生したら、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本を取得します。
相続人は、戸籍謄本を読み解けば判明します。
相続人が判明したら、相続人の戸籍謄本を取得します。
②財産調査をする
相続人調査と並行して、財産調査をします。
不動産があれば、名寄帳を取得して登記簿謄本を確認するといいでしょう。
銀行などの預貯金がある場合、残高証明書を取得するといいでしょう。
③相続人全員で相続財産の分け方を合意する
相続人全員で相続財産の分け方の合意をします。
相続人全員が一堂に会して話し合いをしてもいいし、電話やメールで話し合いをしても構いません。
相続人全員が一度に合意してもいいし、一部の相続人で合意した後に残りの相続人で合意しても差し支えありません。
最終的に相続人全員が合意できればいいのです。
④遺産分割協議書を公正証書にする
公証役場に遺産分割協議書を公正証書にする予約をします。
公証人の指示に従って書類を用意します。
5遺産分割協議書を公正証書にするときの必要書類
公証役場に遺産分割協議書を公正証書にする予約をするときに、必要書類が指示されます。
一般的な必要書類は、次のとおりです。
①遺産分割協議書案
②被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本
③相続人の戸籍謄本
④相続人の印鑑証明書
⑤財産についての証明書
(1)不動産 固定資産評価証明書、登記簿謄本
(2)預貯金 預金通帳の写し、残高証明書
(3)負債 借入残高証明書
遺産分割協議書を公正証書にする場合、公証人に手数料を支払う必要があります。
公証人に支払う手数料は財産の規模によって違います。
公正証書にするまでに打合せが必要ですから、手数料の額について確認しておくといいでしょう。
6遺産分割協議書作成を司法書士に依頼するメリット
遺産分割協議書は遺産の分け方について、相続人全員による合意を取りまとめた文書です。
合意がきちんと文書になっているからこそトラブルが防止できるといえます。
つまり、書き方に不備があるとトラブルを起こしてしまう危険があります。
もともとトラブルの火種があるのなら、いっそう慎重になる必要があります。
遺産分割協議書は公正証書にしなくても済むことが多いものですが、慎重を期して公正証書にした方がいい場合があります。
せっかくお話合いによる合意ができたのに、その後にトラブルになるのは残念なことだからです。
公正証書にするためには、手間と費用がかかります。
公正証書にする手間と費用を惜しむと、裁判をするなど大きな手間と高額な費用を負担することになります。
トラブルを防止するため、遺産分割協議書を公正証書にしたい方は、司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。
遺産分割協議書に押す実印と印鑑証明書
1実印と印鑑証明書で相続人全員の合意を証明する
①遺産分割協議書は相続人全員の実印押印と印鑑証明書が必要
相続が発生したら、相続財産は相続人全員の共有財産になります。
相続人のひとりが勝手に処分することはできません。
相続財産の分け方について、相続人全員で合意をする必要があります。
相続財産の分け方にについて、相続人全員でする話し合いのことを遺産分割協議と言います。
相続財産の分け方について、相続人全員で合意したら、確定して話し合いは終了になります。
全ての財産をまとめて合意しなければならないといったこともありません。
一部の財産についてだけ、合意をすることもできます。
相続人全員の合意ができたら、合意内容を文書に取りまとめます。
相続財産の分け方について相続人全員の合意内容を取りまとめた文書を遺産分割協議書と言います。
遺産分割協議書は、相続人全員が記名して実印で押印します。
遺産分割協議書の押印が実印であることを証明するために、印鑑証明書を添付します。
遺産分割協議書には、相続人全員の実印押印と印鑑証明書が必要です。
②自分で話し合いができない人は代わりの人の実印押印と印鑑証明書が必要
相続財産の分け方は、原則として、相続人全員の合意で決定します。
遺産分割協議には、法定相続人でない人が参加する場合があります。
遺産分割協議に参加しなければならない人が参加していない場合、遺産分割協議は無効になります。
法定相続人でなくても遺産分割協議に参加しなければならない人全員が「相続人全員」です。
相続財産の分け方を決める話し合いに参加するのは、原則として、相続人本人です。
相続人本人が物事メリットデメリットを充分に判断できない場合、自分で話し合いによる合意はできません。
例えば、赤ちゃんなどの未成年者は自分で物事のメリットデメリットを充分に判断できません。
未成年者の代わりに、親などの親権者が相続財産の分け方の合意をします。
重度の認知症の人は、自分で物事のメリットデメリットを充分に判断できません。
認知症の人の代わりに、成年後見人が話し合いに参加します。
成年後見人とは、認知症の人をサポートする人です。
成年後見人は、家庭裁判所が選任します。
赤ちゃんや重度の認知症の人は、遺産分割協議に参加しても意味がありません。
自分で判断できない人は、遺産分割協議書に記名することも押印することもありません。
赤ちゃんの分は、親などの親権者の名前で記名し、親権者の実印を押印します。
親権者の押印であることを証明するために、親権者の印鑑証明書を添付します。
認知症の人の分は、成年後見人の名前で記名し、成年後見人の実印を押印します。
成年後見人の押印であることを証明するために、成年後見人の印鑑証明書を添付します。
成年後見人は、家庭裁判所に印鑑を登録することができます。
成年後見人の印鑑証明書は、市区町村役場が発行する印鑑証明書でも家庭裁判所が発行する印鑑証明書でも差し支えありません。
自分で話し合いができない人は、代わりの人の実印押印と印鑑証明書が必要です。
③遺産分割協議書に添付する印鑑証明書の有効期限
印鑑証明書自体に、有効期限はありません。
印鑑証明書に「有効期間令和〇年〇月〇日まで」などと記載されることはありません。
印鑑証明書に有効期限はないけど、相続手続をする機関は独自で有効期限を決めています。
相続登記をする場合、法務局では印鑑証明書の期限はありません。
古い印鑑証明書であっても、問題なく受け付けてもらえます。
銀行や保険会社などは、独自で書類の有効期限を決めています。
取得してから長期間経過した場合、取得し直してくださいと言われます。
銀行や保険会社などの独自ルールなので、一概には言えませんが、多くは3か月や6か月で取得し直しと言われてしまいます。
相続税の申告が必要な場合、原則として、書類の有効期限はありません。
2実印を押してもらえない印鑑証明書を渡してもらえないときの対処法
①印鑑登録をしてもらう
相続財産の分け方を決めるためには、相続人全員の合意が必要です。
遺産分割協議書には、相続人全員が記名押印をして相続人全員の印鑑証明書を添付しなければなりません。
遺産分割協議書に押印をしてくれない場合、印鑑登録をしていないことがあります。
印鑑登録をしたはずだけど、実印を紛失してしまっていることもあります。
市町村役場に出向いて、印鑑登録をしてもらうといいでしょう。
本人が市区町村役場に出向いた場合、即日、印鑑証明書の発行をしてくれます。
②遺産分割協議書真否確認の訴え
相続人全員の合意内容を遺産分割協議書に取りまとめて記名押印をしたのに、印鑑証明書を渡してくれない場合があります。
遺産分割協議は、口頭でも成立します。
口頭で成立した遺産分割協議では、相続手続ができません。
口頭で成立した遺産分割協議は、第三者に信用してもらえないからです。
口頭で遺産分割協議が成立したのに印鑑証明書を渡してくれない場合、相続手続ができなくなって困ります。
印鑑証明書を渡してくれない場合、遺産分割協議書真否確認の訴えを提起することができます。
裁判所で遺産分割協議書が真正であると確認してもらいます。
遺産分割協議書真否確認の訴えの勝訴判決を得ることで、印鑑証明書に代えることができます。
③所有権確認の訴え
相続財産の分け方について相続人全員で合意したのに、遺産分割協議書に押印をしてくれない場合があります。
押印をしてくれない場合は、印鑑証明書を渡してくれないでしょう。
遺産分割協議書に押印をしてくれない場合、所有権確認の訴えを提起することができます。
相続財産の分け方について相続人全員で合意した時点で、合意した人の財産になるからです。
裁判所で所有権者であると確認してもらいます。
所有権確認の訴えの勝訴判決を得ることで、協力しない相続人の記名押印と印鑑証明書に代えることができます。
④遺産分割調停
相続財産の分け方について合意していないと主張して、遺産分割協議書に押印をしてくれない場合があります。
相続財産の分け方について相続人間で話し合いがつかない場合、遺産分割調停を申し立てることができます。
裁判所の助力を借りて、相続人全員の合意を目指します。
3印鑑証明書を渡したくない場合
①司法書士などの専門家に相続手続を依頼する
遺産分割協議書は、相続人全員が記名して実印で押印します。
遺産分割協議書の押印が実印であることを証明するために、印鑑証明書を添付します。
相続人全員の印鑑証明書がない場合、原則として、相続手続を進めることはできません。
一部の相続人から一方的に印鑑証明書を渡すように迫られた場合、不安な気持ちになるでしょう。
日ごろから金遣いが荒い相続人や多額の借金を負っている相続人から言われた場合、印鑑証明書を悪用されるのではないかと疑心暗鬼になるかもしれません。
遺産分割協議の内容に納得しているが、印鑑証明書などの悪用が心配な場合です。
相続手続は、司法書士などの専門家に依頼することができます。
司法書士などの専門家に依頼して、直接、司法書士に渡すといいでしょう。
相続手続が終わった後も、直接返して欲しい旨を伝えると直接やり取りができます。
②自分が代表相続人として相続手続をする
司法書士などの専門家に依頼しない場合で、自分が代表相続人として相続手続をする方法があります。
相続手続は、一般的に手間と時間がかかります。
自分が面倒な手続をすると申し出ると、喜んで印鑑証明書などの相続書類を渡してくれるかもしれません。
4遺産分割協議書と印鑑証明書は原本還付ができる
相続登記を申請する場合、たくさんの添付書類が必要になります。
法務局に提出した書類のうち、登記のためだけに作成された書類と委任状は返してもらえません。
遺産分割協議書と印鑑証明書は、手続をすれば原本還付を受けることができます。
銀行などの金融機関も、申し出れば原本還付をしてくれます。
5相続手続を司法書士に依頼するメリット
相続が発生すると、相続人は悲しむ暇もなく相続手続に追われます。
ほとんどの人は相続手続は不慣れで、聞き慣れない法律用語で疲れ果ててしまいます。
インターネットの普及で多くの人は簡単に多くの情報を手にすることができるようになりました。
多くの情報の中には正しいものも、適切でないものも同じように混じっています。
相続登記も簡単にできる、ひとりでできたという記事も散見されます。
不動産は、重要な財産であることも多いでしょう。
相続手続は、一般の方から見ると些細なことと思えるようなことでやり直しになることも多いものです。
法務局の登記手続案内を利用すれば、シンプルな事例の申請書類などは教えてもらえます。
通常と異なる事例に関しては、相談する側から話さないとわざわざ説明してくれません。
知識のない方にとっては、通常と異なっているかどうか判断がつかないでしょう。
司法書士などの専門家から見れば、トラブルのないスムーズな相続手続であっても、知識のない一般の方はへとへとになってしまいます。
住所がつながらない場合など、シンプルな事例とは言えない事情がある場合は申請を取下げて、やり直しになることが多いでしょう。
司法書士は、登記の専門家です。
スムーズに相続登記を完了させたい方は司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。
遺産分割協議中に固定資産税
1不動産の所有者に固定資産税がかかる
①1月1日現在の所有者に固定資産税納税義務
固定資産税とは、固定資産に対してかかる税金です。
固定資産税ががかかる固定資産には、土地、家屋、製造設備や事業用資産などの償却資産があります。
固定資産が所在する市区町村に対して、税金を納めます。
固定資産税を納める人を納税義務者と言います。
納税義務者は、1月1日現在、土地、家屋、及び償却資産の所有者として、固定資産税課税台帳に登録されている人です。
1月1日現在の所有者は、固定資産税を納める義務があります。
②未払い固定資産税は相続財産
固定資産税は、まとめて一括する方法と年4回の分割払いする方法があります。
例えば、名古屋市では4月、7月、12月、翌年2月に分割払いをすることができます。
年4回の分割払いをしていた人が途中で死亡することがあります。
4月分と7月分を納付した後8月に死亡した場合、12月分と翌年2月分は未納になります。
相続が発生したら、被相続人のものは相続人が相続します。
被相続人のプラスの財産とマイナスの財産が相続財産です。
被相続人が税金を納める義務を果たさないまま死亡した場合、税金を納める義務は相続財産です。
未払い固定資産税は、相続財産です。
③相続発生で口座凍結
固定資産税は、納付書で納付する方法と口座引き落としで納付する方法があります。
被相続人が固定資産税を口座引き落としで納付していることがあります。
口座の持ち主が死亡したことを金融機関が知った場合、口座を凍結します。
口座の凍結とは、口座取引をできなくすることです。
口座取引ができなくなるから、固定資産税の引落ができません。
固定資産税の口座引き落としができなかった場合、市区町村役場に連絡して納付書で納付します。
2遺産分割協議中に固定資産税がかかる
①相続発生後の固定資産税は相続財産ではない
固定資産税とは、固定資産に対してかかる税金です。
1月1日現在の所有者は、固定資産税を納める義務があります。
所有者が死亡しても、固定資産税はかかります。
所有者が死亡したら、被相続人のものは相続人が相続するからです。
相続財産は、相続人全員の共有財産です。
遺産分割協議が成立するまで、相続財産は相続人全員の共有財産です。
遺産分割が成立しないまま1月1日を迎えた場合、1月1日現在の所有者は相続人全員です。
相続人全員に対して、新年の固定資産税が課されます。
新年に課された固定資産税は、相続財産ではありません。
被相続人は、死亡後の固定資産税を払う義務を負っていません。
被相続人から引き継いだ義務ではないからです。
相続人全員が新たに負担した相続人全員の固有の義務です。
②遺産分割協議中は相続人全員の連帯責任
固定資産税は、相続人全員の連帯責任です。
相続人全員が法定相続分で固定資産税を負担します。
遺産分割協議が長期化すると、固定資産税も高額になります。
③被相続人名義で納税通知書
固定資産税は、1月1日現在の所有者に課されます。
遺産分割協議中であっても新たに固定資産税がかかります。
遺産分割協議中の場合、事実上、不動産の名義変更をすることができません。
相続登記がされない場合、被相続人の住所に被相続人名義で納税通知が送られます。
納税通知が被相続人名義になっていても、固定資産税の納税義務は相続人全員の義務です。
④期限が過ぎると延滞税
被相続人名義で納税通知書が送られても、固定資産税の納税義務は相続人全員の義務です。
被相続人の住所地にだれも住んでいないことがあります。
納税通知に気づかないまま、期限が過ぎてしまうおそれがあります。
納税通知が届けられず、市区町村役場に返送されてしまうことがあります。
固定資産税を納めないまま期限を過ぎてしまったら、延滞税がかかります。
⑤滞納を放置すると代位登記のおそれ
固定資産税等を滞納した場合、滞納処分が開始します。
滞納処分が開始した場合、納税義務者の財産を差押えることができます。
差押の前提として、債権者代位で相続登記をすることができます。
被相続人名義の不動産に対して、相続人の税金で差押をすることができないからです。
相続人の名義にするため、法定相続分で相続登記をします。
債権者が代位登記をする場合、相続人に連絡することはありません。
相続人がどのような遺産分割協議をしているのかお構いなしで代位登記をします。
相続人が知らないところで、勝手に登記を入れてきます。
遺産分割協議が成立したから消して欲しいと文句を言うことはできません。
税金を取り立てるために差押をしたものだからです。
税金の滞納を放置した場合、代位登記がされるおそれがあります。
3固定資産税を含めて遺産分割協議
①相続代表者指定届を提出しても連帯責任
被相続人の住所地が空き家になっている場合、納税通知に気づかないおそれがあります。
相続代表者指定届とは、固定資産税の納税通知書を受け取る代表者を指定する届出です。
相続代表者指定届を提出した場合、納税通知書は代表相続人のところに送られます。
代表相続人のところに送られるから、納税通知に気づかないといったことを減らすことができます。
相続代表者指定届は、納税通知書を受け取る人を届け出ただけです。
納税通知書には、納付書が同封されます。
納付書が同封されても、代表相続人だけが納税義務者になるわけではありません。
相続財産は、相続人全員の共有財産だからです。
相続代表者指定届は、納税通知書を受け取る代表者を指定したに過ぎません。
納税義務は、相続人全員の連帯責任です。
相続代表者指定届を提出しても、納税義務は相続人全員の連帯責任のままです。
②固定資産税を納めても相続人全員の共有財産
1月1日現在の所有者は、固定資産税を納める義務があります。
相続代表者指定届を提出した場合、代表相続人のもとに納税通知書が届きます。
納税通知書には、納付書が同封されます。
代表相続人が納付書で固定資産税を納付しても、所有者になるわけではありません。
固定資産税は、相続人全員に納付義務があります。
代表相続人が納付した場合、他の相続人のため立替払いをしたと言えます。
他の相続人に対して法定相続分で固定資産税を清算してもらうことができます。
固定資産税を納めても、不動産は相続人全員の共有財産です。
③遺産分割協議は相続人全員の合意で成立
相続が発生したら、被相続人のものは相続人が相続します。
相続財産は、相続人全員の共有財産です。
相続財産の分け方は、相続人全員の合意で決めなければなりません。
相続財産の分け方は、相続人全員が合意できるのであればどのように分けても差し支えありません。
遺産分割協議中に新たに発生した固定資産税は、相続財産ではありません。
相続人全員の固有の義務だけど、固有の義務を含めて合意をすることができます。
固定資産税は、1月1日現在の所有者に課されます。
例えば、2024年8月に相続が発生した場合、2024年1月1日の所有者は被相続人です。
2024年12月と2025年2月に納める固定資産税は、被相続人が納めるべき固定資産税です。
2024年12月と2025年2月に納める固定資産税は、未払い固定資産税です。
遺産分割協議が成立しないまま2025年1月1日を迎えたら、所有者は相続人全員です。
固定資産税の納税義務者は、相続人全員です。
2025年4月、7月、12月、2026年2月の固定資産税納付義務は、相続人全員にあります。
2025年1月10日に遺産分割協議が成立した場合、その財産を取得する人が固定資産税を負担します。
2025年1月10日に遺産分割協議が成立しても、2025年4月、7月、12月、2026年2月の固定資産税納付義務は、相続人全員のままです。
固定資産税は、1月1日現在の所有者に課されるからです。
2025年1月10日に遺産分割協議が成立した場合、2026年4月以降は不動産を取得する人が固定資産税を負担します。
何となく納得できない気持ちになる人も多いでしょう。
納税義務は納税義務として、相続人全員で実際の負担者を合意することができます。
キチンと納税されれば、実際の負担者についてあれこれ言われることはありません。
不動産を取得する人だけでなく固定資産税の負担についても、まとめて合意するのが合理的です。
4相続放棄をしても固定資産税の納税義務
①未払い固定資産税は払わなくてもいい
相続が発生したら、相続人は相続を単純承認するか相続放棄をするか選択することができます。
相続放棄を希望する場合、家庭裁判所に対して相続放棄を希望する申立てをします。
家庭裁判所で相続放棄が認められた場合、はじめから相続人でなくなります。
家庭裁判所が相続放棄を認めた場合、申立てをした人だけに通知します。
家庭裁判所は自主的に市区町村役場などに相続放棄を認めたことを連絡しません。
被相続人に未払い固定資産税がある場合、税金を払ってくださいと通知してきます。
相続放棄が認められた場合、被相続人の未払い固定資産税は引き継ぎません。
市区町村役場は相続放棄をしたことを知らないから、通知してきただけです。
通知があっても、あわてて納付する必要はありません。
被相続人の未払金を払った場合、単純承認と見なされます。
単純承認をしたら、相続放棄が無効になるからです。
②相続発生後の固定資産税の納税義務を負う可能性がある
納税義務者は、1月1日現在、土地、家屋、及び償却資産の所有者として、固定資産税課税台帳に登録されている人です。
相続発生後の固定資産税は、納税義務者の固有の義務です。
被相続人から相続した義務ではありません。
相続放棄のタイミングによっては、所有者として固定資産税課税台帳に登録されることがあります。
所有者として固定資産税課税台帳に登録された場合、固定資産税の納税義務を負う可能性があります。
5遺産分割協議書作成を司法書士に依頼するメリット
遺産分割協議書は遺産の分け方について、相続人全員による合意を取りまとめた文書です。
合意がきちんと文書になっているからこそ、トラブルが防止できるといえます。
遺産分割協議書の書き方に不備があると、トラブルを起こしてしまう危険があります。
せっかくお話合いによる合意ができたのに、取りまとめた文書の不備でトラブルになるのは残念なことです。
トラブルを防止するため、遺産分割協議書を作成したい方は、司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。
遺留分を現金で払えない
1遺留分を渡したくないと拒否できない
①遺留分は最低限の権利
被相続人は、原則として、自分の財産をだれに受け継がせるかは自由に決めることができます。
財産は被相続人が1人で築いたものではないでしょう。
家族の協力があってこそ、築くことができた財産のはずです。
被相続人の名義になっているからといって、まったく無制約の自由にすることはできません。
今まで協力してきた家族に、酷な結果となることがあるからです。
被相続人に近い関係の相続人には、相続財産に対して最低限の権利が認められています。
相続財産に対して、認められる最低限の権利のことを遺留分と言います。
②遺留分は現金で支払う
遺留分は、相続財産に対して認められる最低限の権利です。
遺留分を侵害された場合、遺留分侵害額請求をすることができます。
遺留分侵害額請求を受けた場合、遺留分に相当する金額を現金で支払います。
相続で受け取った財産を渡す必要はありません。
遺留分に相当する金額を請求できるだけだからです。
現金で支払うルールは、令和元年7月1日以降に発生した相続に適用されます。
2遺留分侵害額請求がされたら
①遺留分は最短1年で時効消滅
遺留分を請求しないまま長期間経過した場合、遺留分侵害額請求をすることができなくなります。
遺留分侵害額請求権には、時効があるからです。
遺留分侵害額請求権の時効は、次のとおりです。
(1)侵害の事実を知ってから1年
(2)侵害がされたときから10年
権利が消滅した後に、遺留分侵害額請求があっても拒否することができます。
遺留分侵害額請求権は、最短1年で時効消滅します。
②兄弟姉妹に遺留分はない
遺留分は、相続財産に対して認められる最低限の権利です。
すべての相続人に遺留分が認められているわけではありません。
遺留分が認められるのは、配偶者、子ども、親などの直系尊属です。
被相続人に子どもと親などの直系尊属がいない場合、兄弟姉妹が相続人になります。
兄弟姉妹には、遺留分が認められていません。
兄弟姉妹は、相続人であっても遺留分はありません。
遺留分が認められていないのに、遺留分を請求して来ることがあります。
遺留分が認められていない相続人からの請求は、拒否することができます。
相続人になるはずだった兄弟姉妹が被相続人より先に死亡することがあります。
兄弟姉妹の子どもが相続します。
相続人になるはずだった人の子どもが相続することを代襲相続と言います。
代襲相続があった場合、被代襲者の相続分と遺留分を引き継ぎます。
相続人になるはずだった人が兄弟姉妹である場合、遺留分はありません。
兄弟姉妹の子どもが代襲相続人になる場合、引き継ぐべき遺留分はありません。
兄弟姉妹には、遺留分がありません。
兄弟姉妹の子どもにも、遺留分はありません。
③遺留分侵害額の確認が重要
遺留分を侵害された場合、遺留分侵害額請求をすることができます。
遺留分は、現金で請求します。
相続で受け取った財産を請求することはできません。
遺留分を侵害された相続人は、遺留分侵害額を計算して請求します。
遺留分権利者が計算した遺留分侵害額が適切な金額でないことがあります。
相続財産が金銭だけであれば、金額を争う余地はないでしょう。
相続財産には、いろいろな種類の財産があるのが通常です。
いろいろな種類の財産をいくらと考えるのか評価方法は複数あります。
被相続人が不動産を所有していることがあります。
不動産をいくらと考えるのか評価方法はいくつかあります。
どの評価方法で不動産を評価するかで、不動産の金額は大きく変わります。
遺留分侵害額請求をする人は、不動産の金額が高く評価されると有利です。
支払われる遺留分侵害額が高くなるからです。
遺留分侵害額請求を受ける人は、不動産の金額が低く評価されると有利です。
支払う遺留分侵害額が少なくなるからです。
評価方法がちがうと、相続財産全体の金額が大きく変わります。
当事者による話し合いで合意ができない場合、家庭裁判所の助力を受けることができます。
当事者は、遺留分侵害額請求の調停を申し立てることができます。
不動産は、重要な財産であることが多いものです。
評価方法で金額が大きく変わるから、適切に評価されているのか確認することが重要です。
④支払方法の合意
遺留分侵害額請求を受けた場合、遺留分に相当する金額を現金で支払います。
一括で支払うのが原則です。
当事者の合意があれば、どのような支払方法にするのか決めることができます。
相続で受け取った財産の大部分が不動産であることは少なくありません。
遺留分侵害額請求を受けた人が現金を準備できないでしょう。
遺留分侵害額請求を受けた場合、不動産を売却しなければならなくなります。
不動産を売却するためには、ある程度長期間かかります。
すぐに払ってもらいたいけど、売却期間を譲歩できるのであれば話し合いがまとまりやすくなります。
いつまでに支払うのか話し合いによる合意が大切です。
相続財産の大部分が事業用財産であることがあります。
事業用財産を売却してしまったら、事業を続けることができなくなります。
当事者が譲歩できるのであれば、分割払いの合意をするといいでしょう。
当事者の話し合いによる合意なので、話し合いがまとまらないおそれがあります。
⑤期限の許与を求める裁判
遺留分侵害額請求を受けた場合、遺留分に相当する金額を直ちに支払わなければなりません。
現金で一括払いが原則です。
財産の状況から現金で一括払いが難しいことがあります。
当事者で話し合いができれば、支払方法の合意をすることができます。
支払方法の合意ができるかどうかは、相手方次第です。
かたくなに直ちに現金一括払いを主張することが考えられます。
支払方法の合意ができない場合、裁判所に期限の許与を求める方法があります。
裁判所に期限の許与を求める場合、訴訟を提起します。
遺留分侵害額を請求する裁判中で、反訴を提起することもできます。
裁判所は遺留分侵害額の全部に期限を許与することができるし遺留分侵害額の一部だけ期限を許与することができます。
3遺留分侵害額請求を無視すると裁判手続
①調停や訴訟を提起される
遺留分は、相続財産に対して認められる最低限の権利です。
遺留分を侵害された場合、遺留分侵害額請求をすることができます。
相続した財産を渡したくないという気持ちがあるかもしれません。
遺留分侵害額請求を受けた場合、無視することはおすすめできません。
遺留分侵害額請求は、遺留分権利者の正当な権利だからです。
気に入らない相続人だから渡したくないと言えるものではありません。
遺留分侵害額請求を受けたのに放置した場合、裁判所に持ち込まれることになるでしょう。
調停とは、家庭裁判所のアドバイスを受けてする当事者の話し合いです。
当事者だけで話し合いをすると、感情的になって話し合いができないことがあります。
家庭裁判所の調停委員が間に入ると、冷静になって話し合いができるかもしれません。
調停では、当事者の話し合いによる合意を目指します。
家庭裁判所が合意を強制することはできません。
当事者が一方的な主張をした場合、調停では解決できません。
調停は、当事者の話し合いで解決を目指す手続だからです。
調停では、強制的に解決方法を決めてしまうことはありません。
家庭裁判所のアドバイスを受けても話し合いがつかない場合、調停は成立しません。
調停が成立しなかった場合、遺留分を請求する訴訟を提起することができます。
話し合いに応じてもらえない場合、調停を申し立てずに直ちに訴訟を提起することができます。
訴訟が提起された場合、裁判所から訴状が届きます。
訴状が届いたら、絶対に放置してはなりません。
訴訟が提起されたのに放置した場合、欠席裁判になります。
欠席裁判では、相手方の言い分を認めた扱いがされます。
たとえ不当に過大な請求であっても、適切に主張立証をする必要があります。
適切に主張立証をしない場合、裁判所は相手方の主張どおりの決定をします。
遺留分侵害額請求を無視すると、裁判手続になります。
②財産差押など強制執行ができる
調停は、家庭裁判所のアドバイスを受けてする当事者の話し合いです。
調停で当事者の話し合いによる合意ができた場合、合意内容を文書に取りまとめます。
調停における合意内容を取りまとめた文書を調停調書と言います。
当事者の話し合いによる合意ができたのだから、当事者が合意内容を実現するでしょう。
当事者が任意で合意内容を実現しない場合、調停調書の内容は強制執行ができます。
銀行預金などの財産に差押をして、支払を受けることができます。
調停で合意ができなかった場合、訴訟を提起することができます。
訴訟を提起したものの、和解することがあります。
和解で当事者の話し合いによる合意ができた場合、合意内容を文書に取りまとめます。
和解における合意内容を取りまとめた文書を和解調書と言います。
当事者が任意で合意内容を実現しない場合、和解調書の内容は強制執行ができます。
和解による合意ができなかった場合、裁判所が判決を出します。
当事者が任意で判決内容を実現しない場合、判決の内容は強制執行ができます。
4公正証書遺言を作成しても遺留分が優先
①遺言書で遺留分は奪えない
さまざまな家族の事情から特定の相続人に相続させたくないことがあります。
相続人が配偶者、子ども、親などの直系尊属である場合、遺留分が認められます。
遺言書で自分の財産をだれに受け継がせるかは自由に決めることができます。
遺留分を侵害するような遺言書であっても、有効な遺言書です。
有効な遺言書であっても、遺留分侵害額請求をすることができます。
遺留分は、相続財産に対して認められる最低限の権利だからです。
遺留分を侵害された場合、遺留分侵害額請求をすることができます。
遺言書を作成するだけで、遺留分を奪うことはできません。
②相続人廃除はハードルが高い
相続人廃除は、被相続人の意思で相続人の資格を奪う制度です。
相続人の資格を奪うというのは、実質的には、遺留分を奪うことです。
相続人廃除は家庭裁判所に申立てをして、家庭裁判所が判断します。
被相続人が相続人廃除したいと言い、相続人が廃除されていいと納得していても、家庭裁判所が相続人廃除を認めないことがあります。
相続人廃除は、相続人の最低限の権利を奪う重大な決定だからです。
相続人廃除が認められるのは、次の理由です。
(1)相続人が重大な侮辱をした
(2)暴力を振るうなどの虐待をした
(3)重大な非行があった
親の言いなりにならなかったなどの軽い理由では認められません。
家庭裁判所に廃除を認めてもらうためには、廃除の根拠になる客観的証拠が不可欠です。
遺言書で廃除する場合、被相続人は死亡しています。
家庭裁判所で証言することはできません。
廃除の客観的証拠を準備しておく必要があります。
相続人が相続人廃除された場合、代襲相続ができます。
相続人廃除は、非常にハードルが高い手続です。
③付言事項は法的効力がない
さまざまな家族の事情から特定の相続人に相続させたくないことがあります。
相続人が配偶者、子ども、親などの直系尊属である場合、遺留分が認められます。
自称専門家は、遺言書の付言事項を書けばいいと言っています。
付言事項に遺留分侵害額請求をしないようにと書けばトラブルにならないといったアドバイスです。
遺言書の付言事項は、単なるお願いです。
法的法力はありません。
付言事項に書いてあっても、遺留分侵害額請求をすることができます。
5遺言書作成を司法書士に依頼するメリット
自筆証書遺言の多くは、専門家のサポートなしで一人で作ります。
遺言書の厳格な書き方ルールが守られていないと、無効になってしまいます。
形式的な書き方ルールは守られていても、内容があいまいで遺言書を実現できないことも多々あります。
相続人の遺留分に配慮されておらず、トラブルに発展することあります。
せっかく遺言書を作るのなら確実な公正証書遺言をおすすめします。
司法書士などの専門家は、遺言書文案作成から公正証書遺言作成、遺言執行までトータルでサポートします。
司法書士からトータルでサポートを受けると、確実な遺言を作成できるから安心できます。
相続人は、相続発生後の面倒な相続手続から解放されます。
遺言者も家族も安心できる公正証書遺言作成を司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。
代償分割で代償金の決め方
1代償分割で公平な相続が期待できる
①代償分割とは
相続財産には、いろいろな財産が含まれています。
不動産のように分けにくい財産もあるし、金銭のように分けやすい財産もあります。
相続財産の大部分が不動産のような分けにくい財産の場合、相続財産の分け方についての合意が難しくなるでしょう。
相続財産の大部分が不動産のような分けにくい財産の場合、代償分割をすることで合意ができる場合があります。
代償分割とは、一部の相続人が不動産を相続し、残りの相続人は不動産を相続した人から、その分のお金をもらう方法です。
②代償分割のメリット
(1)共有のトラブルを防ぐことができる
不動産のような分けにくい財産を平等に分けたい場合、共有にする方法が思い浮かぶかもしれません。
不動産を共有にした場合、活用方法や処分方法について共有者間で合意ができなくなるおそれがあります。
代償分割をする場合、不動産を単独所有にすることができます。
共有のトラブルを防ぐことができます。
(2)不動産を処分しなくてよい
換価分割の場合、不動産を手放してお金に換えた後、お金で分けます。
不動産に相続人の思い入れのある場合、手放すことに罪悪感を感じてしまうかもしれません。
代償分割では、不動産自体を処分することはありません。
(3)不動産の利活用がしやすい
現物分割の場合、現物の不動産を分割します。
極端に小さな土地になると、利活用が難しくなるでしょう。
利活用できない不動産は、価値が下がる心配があります。
③代償分割のデメリット
(1)不動産の評価額を決めるのが難しい
代償分割をする場合、換価分割と違って実際に不動産を処分するわけではありません。
不動産の評価に対する考え方は、いくつもあります。
不動産をいくらと考えて代償分割をするのか、相続人間の合意がまとまらないおそれがあります。
代償金を払う人から見れば、不動産の価値は低い方が有利です。
代償金を受け取る人から見れば、不動産の価値は高い方が有利です。
(2)代償金を準備する必要がある
代償分割をする場合、不動産を相続する人が代償金を払わなければなりません。
もともと住んでいた自宅の名義書き換えのために、代償金を払うことに納得できなくなるかもしれません。
2代償分割で代償金の決め方
①代償金は相続人全員の合意で決定
相続が発生したら、被相続人のものは相続人が相続します。
相続人が相続する財産が相続財産です。
相続財産の分け方は、相続人全員の合意で決定します。
相続財産の分け方を決めるための相続人全員による話し合いを遺産分割協議と言います。
相続財産を分ける方法は、複数あります。
代償分割は、相続財産を分ける方法のひとつです。
どのような方法で相続財産を分けるのか、相続人全員の合意で決定します。
代償分割をすると決めた後も、代償金をいくらにするのか相続人全員の合意で決定します。
代償金をいくらにするのかは、遺産分割協議の一部だからです。
②代償は金銭以外でもよい
代償金とは、代償分割をするときに支払われる対価です。
対価は、金銭で支払われることが大部分です。
金銭で支払われることが多いので、代償金と言っているだけです。
相続人全員の合意ができるのであれば、金銭に限られません。
有価証券、株式、不動産などでも、差し支えありません。
例えば、代償分割で相続財産から高価な不動産を相続することがあります。
不動産を相続する人が対価として固有の財産から株式を譲渡するケースです。
③不動産の評価方法は複数ある
不動産は、分けにくい財産の代表例です。
相続財産の大部分が不動産である場合、代償分割は有効です。
公平な遺産分割を実現しやすいからです。
不動産の評価方法は、複数あります。
代償分割の対象が不動産である場合、不動産の評価額をいくらと考えるかで話し合いがまとまらないおそれがあります。
不動産には、次の評価方法があります。
(1)公示地価
(2)相続税評価額(路線価方式)
(3)固定資産税評価額
(4)時価
(5)鑑定評価額
どの評価方法を採用するのか、相続人全員の合意で決定します。
どの評価方法を採用するのか決められないと、不動産の評価額をいくらと考えるか決められなくなります。
不動産の評価額をいくらと考えるか決められないと、代償金を決めることが難しくなります。
④高額過ぎる代償金に贈与税
代償金をいくらにするのか、相続人全員の合意で決定します。
相続人全員の合意で代償金を支払う場合でも、実質的に代償金でないことがあります。
代償分割は、分けにくい財産を相続した相続人が他の相続人に代償金を払う分割方法です。
分けにくい財産の評価額を大幅に超える代償金を払う合意をした場合、実質的に代償金とは認められないでしょう。
代償金名目の贈与と判断されるおそれがあります。
例えば、相続財産が自宅1000万円のみで、相続人が長男と次男の2人の場合があります。
自宅を長男が相続した場合、長男が固有の財産から500万円程度の代償金を支払うのであれば問題はありません。
長男が固有の財産から2000万円の代償金を支払う場合、代償金名目の贈与と判断されるでしょう。
例えば、自宅1000万円を長男が相続した場合で、かつ、次男が生命保険の死亡保険金3000万円を受け取っている場合があります。
次男から長男へ1000万円支払うのが平等に見えるかもしれません。
次男が生命保険の死亡保険金を受け取った後、長男に1000万円支払った場合、代償金とは認められないでしょう。
生命保険の死亡保険金は受取人の固有の財産であって、相続財産ではないからです。
相続による遺産分割とは無関係に、贈与があったと言えます。
遺産分割協議書に代償金と明記しても、実質的に代償金とは認められません。
次男が生命保険の死亡保険金を受け取った後、長男に1000万円支払うこと自体はできないことではありません。
自分の固有の財産は、自由に贈与をすることができるからです。
自分の固有の財産を贈与した場合、金額によっては贈与税が課されます。
3代償分割をするときの遺産分割協議書の書き方
①金銭で代償を支払うときの記載例
第1条
相続財産中、次の不動産については、相続人○○○○が相続する。
所在 ○○市○○町○丁目
地番 ○番○
地目 宅地
地積 200㎡
第2条
相続人○○○○は前条に記載された財産を取得する代償として、相続人□□□□に対して金○○万円を令和□年□月□日限り、以下の口座に振込みの方法により支払う。
振込手数料は、相続人○○○○が負担する。
□□銀行□□支店
普通預金
口座番号□□□□□□□
口座名義人 □□□□
②固有の不動産で代償を支払うときの記載例
第1条
相続財産中、次の不動産については、相続人○○○○が相続する。
所在 ○○市○○町○丁目
地番 ○番○
地目 宅地
地積 200㎡
第2条
相続人○○○○は前条に記載された財産を取得する代償として、相続人□□□□に対して相続人○○○○所有の下記不動産を譲渡する。
所有権移転登記手続は、令和□年□月□日までにする。
登録免許税、司法書士報酬等所有権移転のための費用は、相続人○○○○の負担とする。
所在 ○○市○○町○丁目
地番 ○○番
地目 宅地
地積 ○○平方メートル
③遺産分割協議書に記載がないと贈与税
代償金とは、代償分割をするときに支払われる対価です。
代償金の支払いは、遺産分割の一環です。
代償金の支払いによって、贈与税が課されることはありません。
遺産分割協議書に代償金の支払いである点が明示されていない場合、単なる贈与と判断されるでしょう。
単なる贈与と見なされた場合、贈与税の対象になります。
一般的に、贈与税は想像以上に高額になります。
4遺産分割協議書を公正証書にできる
①遺産分割協議は一方的解除ができない
代償分割は、分けにくい財産を相続した相続人が他の相続人に代償金を払う分割方法です。
代償金を支払ってもらえるから、分け方の合意をしたでしょう。
代償金が高額になる場合、代償金を払うと約束しても実現できなくなることがあります。
代償金を払ってもらえないのなら、合意をしなかったでしょう。
遺産分割協議をやり直したいと考えるかもしれません。
一般的に、売買契約などでは買主が売買代金を支払わない場合、一方的に契約解除をすることができます。
遺産分割協議では、一方的に解除する制度はありません。
代償金を支払ってもらえない場合、当事者間の話し合いになります。
遺産分割協議は、一方的解除ができません。
②公正証書にすると強制執行ができる
相続財産の分け方について相続人全員の合意がまとまった場合、合意内容を書面に取りまとめます。
相続人全員の合意内容を取りまとめた書面を遺産分割協議書と言います。
遺産分割協議書は、当事者が作成することが多いでしょう。
遺産分割協議書は、公証役場で公正証書にしてもらうことができます。
代償分割をする場合、代償金の支払いの合意をしています。
公正証書を作成するときは、公証人が関与します。
遺産分割協議書を公正証書にする場合、公証人が本人確認と本人の意思確認をします。
後になって、だまされたから白紙にしたいと言っても、認められることはほとんどありません。
遺産分割協議書を公正証書にする場合、金銭の支払いをする点だけでなく支払いをしなかったときのことを書いてもらうことができます。
相続人○○が上記金銭の支払いをしなかったときは、直ちに強制執行に服する旨を認諾した。
上記のような文言がある場合、公正証書で強制執行をすることができます。
お金を払ってもらう人にとっては、心強いものと言えます。
公正証書でない遺産分割協議書では、強制執行ができません。
強制執行をするためには、裁判所で訴訟をして勝訴判決などの債務名義を得る必要があります。
約束したお金を払ってもらうために裁判をしなければならないとなるとハードルが高いものです。
遺産分割協議書を公正証書にすると、裁判をすることなく直ちに強制執行することができます。
5金銭以外で代償を支払うときに譲渡所得税
代償分割をするとき、金銭以外で代償を支払うことができます。
不動産や有価証券で代償を支払う場合、譲渡所得税の対象になります。
代償分割で不動産や有価証券を譲渡する場合、相続開始時の時価で売却したとみなされるからです。
不動産や有価証券を取得したときから値上がり益がある場合、譲渡所得の対象になります。
譲渡所得税は、代償として譲渡する人に課されます。
6遺産分割協議書作成を司法書士に依頼するメリット
遺産分割協議書は遺産の分け方について、相続人全員による合意を取りまとめた文書です。
合意がきちんと文書になっているからこそ、トラブルが防止できるといえます。
書き方に不備があると、トラブルを起こしてしまう危険があります。
もともとトラブルの火種があるのなら、いっそう慎重になる必要があります。
遺産分割協議書は公正証書にしなくても済むことが多いものですが、慎重を期して公正証書にした方がいい場合があります。
せっかくお話合いによる合意ができたのに、その後にトラブルになるのは残念なことだからです。
公正証書にするためには、手間と費用がかかります。
公正証書にする手間と費用を惜しむと、裁判をするなど大きな手間と高額な費用を負担することになります。
トラブルを防止するため、遺産分割協議書を公正証書にしたい方は、司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。
相続した不動産を共有名義にするデメリット
1相続した不動産を分割する方法
方法①現物分割
相続財産には、いろいろな財産が含まれていることが一般的です。
不動産は、分けにくい財産の代表例です。
現物分割とは、現物の不動産を相続人の人数で分割する方法です。
現物の不動産を分割することは、広大な土地でないと実現できません
極端に小さな土地は、使い勝手が悪くなります。
価値も下がってしまうでしょう。
あまり現実的ではないかもしれません。
方法②代償分割
代償分割とは、一部の相続人が不動産を相続し、残りの相続人は不動産を相続した人から代償金を受け取る方法です。
現物の不動産を分割しないので、価値が下がることはありません。
不動産を相続する人は、他の相続人に代償金を支払う必要があります。
相続財産の大部分が不動産であることがあります。
価値の高い不動産である場合、他の相続人に支払う代償金が高額になります。
不動産を相続する人が代償金を準備できないかもしれません。
不動産をいくらと考えるのかについて、基準はいくつかあります。
代償金を支払う人は、不動産の値段が低い基準を採用した方が有利です。
支払う代償金が少なくなるからです。
代償金を受け取る人は、不動産の値段が高い基準を採用した方が有利です。
受け取る代償金が多くなるからです。
代償金を決めるとき、どの基準を採用するのか話し合いがまとまらないことがあります。
方法③換価分割
換価分割とは、不動産を売却してお金に換えた後にお金を分ける方法です。
不動産を実際に売却してお金に換えてから分けるので、不動産の値段をいくらと考えるのかで話し合いをする必要はありません。
被相続人が守ってきた財産を手放すことに、罪悪感があるかもしれません。
合理的な方法であっても相続人の感情面から話し合いがつかなくなるおそれがあります。
不動産を売却するつもりであっても、買い手がつかないかもしれません。
売却できるまで相続手続が長引くおそれがあります。
方法④共有
相続人全員で相続財産の分け方について話し合いによる合意ができない場合、共有が選ばれることもあります。
最も公平に見えるからです。
共有は弊害が多く、安易に共有にする方法はもっとも避けるべきです。
共有にした場合、全員の同意がなければ売却することはできません。
共有の不便を解消するため、後々、共有物分割をしようという話になります。
結局のところ、問題の先送りになるだけです。
相続トラブルが長期化しますから、家族の絆が壊されてしまいます。
方法⑤用益権の設定による分割
用益権とは、不動産を自分で使ったり、人に貸して賃料を得たりする権利のことです。
配偶者居住権は、用益権のひとつです。
一部の相続人に使う権利を設定して、他の相続人が使う権利のない所有権を相続する方法です。
家族が守ってきた不動産を手放すことなく相続ができます。
相続人のうち、だれが使う権利を得るのかで、使う権利のない所有権をだれが相続するのかで話し合いがまとまらないおそれがあります。
2相続した不動産を共有名義にするデメリット
デメリット①共有物を処分するには共有者全員の合意が必要
相続が発生した後、相続財産は相続人全員の共有財産になります。
相続人のひとりが勝手に処分することはできません。
共有財産は、共有している人全員が合意しないと、処分ができないからです。
相続財産の分け方を「共有する」と決めた後も、同じです。
共有財産は、共有している人全員が合意しないと、処分はできません。
処分するとは、共有物を売却する、第三者に賃貸することなどです。
たくさんの人で共有していると合意がまとまりにくくなります。
売却したい人も賃貸したい人もいるでしょう。
売却するのはいいが時期が良くないと思う人もいるでしょう。
もっと高値で売れるはずだという人もいるでしょう。
賃貸するのはいいが賃貸条件が合意できない人もいるでしょう。
合意できる場合でも、合意するために時間がかかりがちになります。
売却したいという場合でも、合意に時間がかかるとチャンスを逃すことになります。
親族同士であっても共有物の管理方針が違うと、共有者の意見対立が起きやすくなります。
売却する場合も、売却時の重要事項説明や売買契約の締結など共有者全員が手続に参加する必要があります。
遠方に住んでいる共有者には時間と手間がかかります。
共有者がたくさんいると、だれか一人が認知症などになるかもしれません。
認知症などで判断能力が低下する人が現れる確率も上がります。
物事のメリットデメリットを充分に判断できない人は、売却などの合意はできません。
後見人を選んでもらって代わりに判断してもらうことになります。
デメリット②共有者に相続が発生する
共有物を売却するためには、共有者全員の合意が必要になります。
共有者全員の合意がしにくくなると、売却などの判断は先延ばししがちです。
先延ばしにより長期間経過すると、共有者に相続が発生することがあります。
共有者に相続が発生すると、共有者の持分は相続財産になります。
共有者の相続人全員の相続財産になります。
共有者の管理方針が違うことで適切な管理ができない共有物を相続したがらないかもしれません。
このとき、死亡した共有者の共有持分を、複数の相続人が法定相続分で細分化して共有することがあります。
このような相続が何人もの共有者の間で発生すると、共有者がたくさんになり、持分が細分化されます。
適切に相続登記がされないと、だれにどれだけの持分があるのか分からなくなります。
共有者が増えると、共有者同士が顔も見たことない見知らぬ人であることが多くなります。
単純に、たくさんの人で管理や処分の合意をすることは難しいものです。
それが顔も見たことない見知らぬ人である場合、一挙に難易度は上がります。
見知らぬ人何十人もの合意は、現実的には無理でしょう。
共有物の処分は、共有者全員の合意が必要です。
1人でも反対の人がいると、処分はできません。
共有物を売却するには、1人でも反対の人がいると、できないのです。
見知らぬ人何十人で共有すると、共有物の賃貸や売却は、事実上、できなくなります。
デメリット③共有持分を売却するおそれ
共有物全体を売却するためには共有者全員の合意が必要です。
それぞれの共有者が持っている共有持分を売却するためには、他の共有者の合意は不要です。
あまり知られていませんが、共有者が持っている共有持分を買い取る業者がいます。
ひょっとすると、経済的に困っている共有者がいる場合、共有持分を売却してしまうかもしれません。
通常、市場価格よりはるかに低廉な価格でしか売れません。
共有持分を買い取る業者はビジネスですから、遠慮なく共有者としての権利を主張してきます。
共有持分買取請求や共有物分割請求などです。
話し合いで解決できなければ、当然、裁判所に持ち込まれることになるでしょう。
知識のない一般の人では対応できません。
弁護士に依頼することになるでしょう。
3共有を避ける方法
相続が発生すると、相続人はたくさんの相続手続をすることになります。
相続は、何度も経験するものではありません。
どの手続も不慣れで、スムーズに行かないものばかりです。
相続財産の分け方について、相続人全員による話し合いで合意をしなければなりません。
不慣れな手続で疲れが出ていると、丁寧な話し合いは面倒になります。
共有名義にする方法は、とりあえず平等に見えます。
安易に法定相続分で共有するという選択をしてしまうケースが目立ちます。
いったん名義変更をしてしまうと、さらに変更するのは手間も時間も余計にかかります。
共有は、デメリットが大きいのものです。
被相続人が健在なら、家族で今後不動産をどうしていきたいか全員で明確にしましょう。
どの不動産をだれに相続させるか遺言を書くといいでしょう。
共有名義にしてしまってから対策するより、共有名義にしないように対策する方がはるかに簡単ではるかに有効です。
税金の専門家からは、売却する場合に売却益にかかる3000万円の特別控除を共有者の数だけ受けられるから非常に有利などと安易な共有をすすめられます。
相続税の申告までに遺産分割協議を終わらせられる点を大きなメリットとして強調して、共有を強くすすめられるでしょう。
解決を先延ばしすること以外にメリットはわずかしかありません。
デメリットは、家族が引き受けることになります。
デメリットの大きさを十分理解して相続人全員が今後どうしていきたいか明確にしておくことが重要です。
何も決まっていない状態で、とりあえず法定相続で共有は避けるべきです。
小さなメリットに惑わされて、面倒を先延ばしする必要はありません。
相続財産の分け方について相続人全員が合意をする場合、名義変更をした後さらに変更するのは難しいこと、共有にはデメリットが多いことを相続人全員が理解しておく必要があります。
4遺産分割協議書作成を司法書士に依頼するメリット
遺産分割協議書は遺産の分け方について、相続人全員による合意を取りまとめた文書です。
前提として、話し合いによる合意ができていなければ、文書にできません。
遺産分割協議書があるとトラブル防止になりますが、後々のトラブルが見えていないと、単なる問題の先送りになります。
不動産の共有はその最たるものでしょう。
安易に共有を選ぶと後々トラブルに巻き込まれます。
共有にすることで今後どのような問題が発生するのか、自分達だけではそのリスクは見えにくいかもしれません。
司法書士はこのようなリスクの説明もします。
適切な遺産分割協議書を作り、家族のトラブルを避けたい方は、司法書士などの専門家にサポートを依頼することをおすすめします。
5遺言書作成を司法書士に依頼するメリット
遺言書は被相続人の意思を示すものです。
自分が死んだことを考えたくないという気持ちがあると、抵抗したくなるかもしれません。
法律で決まっているから法定相続の共有にすればよい。
家族が仲がいいから、好きなように分ければいい。
言い訳をして、遺言書作成を先延ばししている方も多いものです。
遺言書があることでトラブルになるのは、ごく稀なケースです。
遺言書がないからトラブルになるのはたくさんあります。
遺言書1枚あれば、相続手続は格段にラクになります。
家族を幸せにするために遺言書を作ると考えましょう。
実際、家族の絆のためには遺言書が必要だと納得した方は遺言書を作成します。
家族の喜ぶ顔のためにやるべきことはやったと安心される方はどなたも晴れやかなお顔です。
家族の幸せを願う方は、遺言書作成を司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。
相続手続で印鑑証明書を渡したくない
1遺産分割協議書に印鑑証明書を添付する
①遺産分割協議書は相続人全員による合意内容の証明書
相続が発生したら、被相続人のものは相続人が相続します。
相続人が相続する財産が相続財産です。
相続財産は、相続人全員の共有財産です。
一部の相続人が勝手に処分することはできません。
相続財産の分け方は、相続人全員の合意で決める必要があります。
相続財産の分け方を決めるため相続人全員でする話し合いを遺産分割協議と言います。
相続財産の分け方について相続人全員で合意がまとまったら、確定して話し合いは終了になります。
相続人全員の合意内容は、文書に取りまとめます。
相続人全員の合意内容を取りまとめた文書を遺産分割協議書と言います。
遺産分割協議書は、相続人全員による合意内容の証明書です。
②遺産分割協議書に実印で押印し印鑑証明書を添付する理由
相続財産の分け方は、相続人全員の合意で決める必要があります。
相続財産の分け方について相続人全員で合意がまとまったら、遺産分割協議は成立します。
相続人全員が合意できれば、口頭の合意であっても有効に成立します。
口頭で合意した場合、相続手続先の人は信用できないでしょう。
遺産分割協議書は、相続人全員による合意内容の証明書です。
相続人全員に合意内容を確認してもらって、記名し実印で押印してもらいます。
実印とは、市区町村役場に印影を登録した印章です。
重要な契約や大切な場面では、実印で押印します。
実印は、本人が大切に保管しています。
実印が押印されている場合、本人の意思で押印されたと言えるでしょう。
印鑑証明書は、市区町村役場に登録した印影の証明書です。
印鑑証明書の印影と照らし合わせることで、実印に間違いないことを証明することができます。
遺産分割協議書に実印で押印し印鑑証明書を添付する理由は、第三者に本人の意思であることを信用してもらうためです。
③相続登記で遺産分割協議書が必要なとき実印と印鑑証明書が必要になる
相続人が複数である場合や遺言書がない場合、遺産分割協議が必要になります。
相続登記で遺産分割協議書を提出する場合、実印で押印し印鑑証明書を添付します。
相続人が一人の場合、話し合いをするべき他の相続人はいません。
遺言書がある場合、相続人全員の話し合いは必要ありません。
遺産分割協議が必要ない場合、遺産分割協議書は必要ありません。
遺産分割協議書を作成しない場合、印鑑証明書を提出する必要もありません。
印鑑証明書は、遺産分割協議書の押印が実印によるものであることを証明するために添付するからです。
相続登記で遺産分割協議書と印鑑証明書を提出する場合、印鑑証明書に期限はありません。
古い印鑑証明書を提出しても、差し支えありません。
相続登記で提出した遺産分割協議書と印鑑証明書は、希望すれば原本還付をしてもらうことができます。
④相続税申告で遺産分割協議書が必要なとき実印と印鑑証明書が必要になる
相続税の申告書等の書類には実印を押印する必要はありません。
認印で差し支えありません。
実印で押印が必要になるのは、遺産分割協議書です。
遺産分割協議書に相続人全員が実印で押印する必要があります。
遺産分割協議書に実印で押印したことを証明するために印鑑証明書を添付します。
相続人が一人の場合や遺言書がある場合、印鑑証明書は不要です。
相続税申告で遺産分割協議書と印鑑証明書を提出する場合、印鑑証明書に期限はありません。
古い印鑑証明書を提出しても差し支えありません。
相続税申告で提出した印鑑証明書は、原本還付をしてもらうことができません。
⑤相続放棄に実印と印鑑証明書は不要
家庭裁判所に対して、必要な書類をを添えて相続放棄をしたい旨の申立てをします。
申立先の家庭裁判所は、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です。
家庭裁判所の管轄は、裁判所のホームページで調べることができます。
相続放棄をしたい旨の申立ての書類のことを、相続放棄申述書と言います。
相続放棄申述書は、相続放棄の申立てをする人が押印をします。
実印で押印してももちろんいいのですが、押印は認印で充分です。
実印を押さないから、印鑑証明書を提出することもありません。
にもかかわらず、相続放棄の手続のため実印と印鑑証明書を用意して欲しいと他の相続人に言われたというケースがあります。
相続放棄のためと称していますが、相続放棄の手続のはずがありません。
相続放棄の手続は、相続放棄をする相続人が自分でするものだからです。
相続放棄の手続には、実印も印鑑証明書も不要です。
実印と印鑑証明書を渡して欲しいと言ってきた場合、別の手続をしようとしています。
具体的には、遺産分割協議と相続放棄を混同していると言えます。
自称専門家の場合、遺産分割協議と相続放棄を混同しているケースは度々あります。
2相続手続で印鑑証明書を渡したくないときの対処法
①司法書士などの専門家に相続手続を依頼する
遺産分割協議書は、相続人全員が記名して実印で押印します。
遺産分割協議書の押印が実印であることを証明するために、印鑑証明書を添付します。
相続人全員の印鑑証明書がない場合、原則として、相続手続を進めることはできません。
一部の相続人から一方的に印鑑証明書を渡すように迫られた場合、不安な気持ちになるでしょう。
遺産分割協議の内容に納得しているが、印鑑証明書などの悪用が心配になります。
相続手続は、司法書士などの専門家に依頼することができます。
司法書士などの専門家に依頼して、直接、司法書士に渡すといいでしょう。
相続手続が終わった後も、直接返して欲しい旨を伝えると直接やり取りができます。
②自分が代表相続人として相続手続をする
司法書士などの専門家に依頼しない場合で、自分が代表相続人として相続手続をする方法があります。
相続手続は、一般的に手間と時間がかかります。
自分が面倒な手続をすると申し出ると、喜んで印鑑証明書などの相続書類を渡してくれるかもしれません。
3相続手続で印鑑証明書を渡してもらえないときの対処法
①印鑑登録をしてもらう
遺産分割協議書に押印をしてくれない場合、印鑑登録をしていないことがあります。
印鑑登録をしたはずだけど、実印を紛失してしまっていることもあります。
市町村役場に出向いて印鑑登録をしてもらうといいでしょう。
本人が市区町村役場に出向いた場合、即日、印鑑証明書の発行をしてくれます。
②代償金の支払いと同時履行
被相続人の財産には、さまざまな財産があるでしょう。
現金や預貯金は、分けやすい財産です。
不動産は、分けにくい財産です。
相続財産の大部分が不動産のような分けにくい財産の場合、相続人全員の合意が難しくなるでしょう。
相続財産の大部分が不動産のような分けにくい財産の場合、代償分割をすることで合意ができることがあります。
代償分割とは、一部の相続人が不動産を相続し、残りの相続人は不動産を相続した人から、その分の代償をもらう方法です。
代償金を払うと合意したのに、代償金の支払いが惜しくなることがあります。
代償金を払うと合意したけど、資力に不安があることがあります。
代償の支払いがない場合、遺産分割協議をやり直ししたいと考えるかもしれません。
一般的な売買契約において、代金を支払わない場合、契約を一方的に解除することができます。
遺産分割協議においては、このような一方的な解除制度はありません。
代償金を払ってくれないのではないかと疑心暗鬼になることがあります。
代償の支払いと印鑑証明書の引渡しを同時履行とするといいでしょう。
代償が高額である場合、銀行振出の小切手による支払をしてもらうことができます。
振込で代償を支払う場合、口座残高はスマートフォンやパソコンで確認することができます。
代償金の支払いと印鑑証明書の引渡しを同時履行にしたら、安心してもらえるでしょう。
③遺産分割協議書真否確認の訴え
相続人全員の合意内容を遺産分割協議書に取りまとめて記名押印をしたのに、印鑑証明書を渡してくれない場合があります。
遺産分割協議は、口頭でも成立します。
口頭で成立した遺産分割協議では相続手続ができません。
口頭で遺産分割協議が成立した後、印鑑証明書を渡してくれない場合、相続手続ができなくなって困ります。
印鑑証明書を渡してくれない場合、遺産分割協議書真否確認の訴えを提起することができます。
裁判所で遺産分割協議書が真正であると確認してもらいます。
遺産分割協議書真否確認の訴えの勝訴判決を得ることで、印鑑証明書に代えることができます。
④所有権確認の訴え
相続財産の分け方について相続人全員で合意したのに、遺産分割協議書に押印をしてくれない場合があります。
このような場合は印鑑証明書を渡してくれないでしょう。
遺産分割協議書に押印をしてくれない場合、所有権確認の訴えを提起することができます。
相続財産の分け方について相続人全員で合意した時点で、合意した人の財産になるからです。
裁判所で所有権者であると確認してもらいます。
所有権確認の訴えの勝訴判決を得ることで、協力しない相続人の記名押印と印鑑証明書に代えることができます。
⑤遺産分割調停
一部の相続人が相続財産の分け方について合意していないと主張していることがあります。
合意していないと主張する場合、遺産分割協議書に押印をしてくれないのは当然です。
相続人全員による話し合いで相続財産の分け方について合意をする必要があります。
相続人間で話し合いがつかない場合、遺産分割調停を申し立てることができます。
遺産分割調停とは、家庭裁判所のアドバイスを受けてする相続人全員の話し合いです。
裁判所の助力を借りて、相続人全員の合意を目指します。
遺産分割調停で相続人全員の合意がまとまったら、合意内容は調停調書に取りまとめられます。
調停成立の調停調書があれば、印鑑証明書は不要です。
4遺産分割協議書作成を司法書士に依頼するメリット
遺産分割協議書は遺産の分け方について、相続人全員による合意を取りまとめた文書です。
合意がきちんと文書になっているからこそトラブルが防止できるといえます。
書き方に不備があるとトラブルを起こしてしまう危険があります。
せっかくお話合いによる合意ができたのに、取りまとめた文書の不備でトラブルになるのは残念なことです。
トラブルを防止するため、遺産分割協議書を作成したい方は、司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。
遺産分割協議書を強制執行
1遺産分割協議は相続人全員による合意の証明書
相続が発生した場合、被相続人のものは相続人が相続します。
被相続人の財産は、相続人全員の共有財産です。
相続人のひとりが勝手に処分することはできません。
相続財産の分け方は、相続人全員による合意で決めなければなりません。
相続財産の分け方について、相続人全員でする話し合いを遺産分割協議と言います。
相続財産の分け方について相続人全員の合意ができた場合、合意内容を文書に取りまとめます。
相続人全員の合意内容を取りまとめた文書を遺産分割協議書と言います。
遺産分割協議書は、相続財産の分け方について相続人全員による合意内容の証明書です。
2遺産分割協議は一方的解除ができない
①代償金を払わなくても一方的解除はできない
一般的な売買契約において代金を支払ってもらえない場合、契約を一方的に解除することができます。
被相続人の財産には、さまざまな財産があるでしょう。
現金や預貯金は、分けやすい財産です。
不動産は、分けにくい財産です。
相続財産の大部分が不動産のような分けにくい財産の場合、相続人全員の合意が難しくなるでしょう。
相続財産の大部分が不動産のような分けにくい財産の場合、代償分割をすることで合意ができることがあります。
代償分割とは、一部の相続人が不動産を相続し、残りの相続人は不動産を相続した人から、その分の代償をもらう方法です。
遺産分割協議で代償金を払う合意をしたのに、代償金が惜しくなることがあります。
代償金の支払いがない場合、遺産分割協議をやり直したいと考えるかもしれません。
遺産分割協議では、一方的に解除することができません。
一般的な売買契約において代金を支払ってもらえない場合、契約を一方的に解除することができます。
遺産分割協議において代償金を支払ってもらえない場合、遺産分割協議を一方的に解除することができません。
②不動産を引き渡さなくても一方的解除はできない
代償分割とは、一部の相続人が不動産を相続し、残りの相続人は不動産を相続した人から、その分の代償をもらう方法です。
代償は、金銭で支払われるのが一般的です。
不動産を相続した相続人に代償を支払う現金が用意できないことがあります。
相続人が合意できるのであれば、代償は金銭以外の財産でも差し支えありません。
不動産を相続した相続人が代償として、固有の財産である不動産を譲渡する合意をすることができます。
遺産分割協議で不動産を譲渡する合意をしたのに、不動産が惜しくなることがあります。
不動産を引き渡してもらえない場合、遺産分割協議をやり直したいと考えるかもしれません。
遺産分割協議では、一方的に解除することができません。
遺産分割協議において不動産を譲渡してもらえない場合、遺産分割協議を一方的に解除することができません。
③遺産分割協議のやり直しは相続人全員による合意が必要
一般的な売買契約において、契約を一方的に解除することができます。
遺産分割協議において、遺産分割協議を一方的に解除することができません。
遺産分割協議において、相続人全員が合意できれば遺産分割協議のやり直しをすることができます。
相続人の多数決では、不足です。
遺産分割協議のやり直しは、相続人全員による合意が必要です。
一般的に代償を払ってもらえない場合、代償を払う人と払ってもらう人の話し合い解決を図ります。
他の相続人を含めて全員がやり直しに賛成することは、あまりありません。
遺産分割協議のやり直しは、高いハードルがあります。
3遺産分割協議書を公正証書にして強制執行
①強制執行認諾文言で金銭債権を強制執行
遺産分割協議書は、相続財産の分け方について相続人全員の合意内容を取りまとめた文書です。
一般的に遺産分割協議書は、私文書で作成します。
私文書とは、一般の民間人が個人的に作成した文書です。
遺産分割協議書は、公証役場で公正証書にしてもらうことができます。
遺産分割協議書を公正証書にした場合、代償金の支払いを確実にすることができます。
公正証書で遺産分割協議書を作成する場合、強制執行認諾文言を入れることができるからです。
強制執行認諾文言とは「代償金が支払われない場合、直ちに強制執行に服する」といった文言です。
強制執行認諾文言がある場合、公正証書は裁判による判決と同様の効力が与えられます。
公正証書で遺産分割協議書を作成する場合、公証役場に手数料を支払う必要があります。
代償金が支払われない場合、直ちに強制執行をすることができます。
「代償金が支払われない場合、直ちに強制執行に服する」と約束しているからです。
②不動産の引渡しで公正証書は債務名義にならない
代書分割をする場合、代償は金銭以外の財産でも差し支えありません。
遺産分割協議書は、公証役場で公正証書で作成してもらうことができます。
公正証書で強制執行できるのは、金銭債権だけです。
代償金の支払いは、金銭債権です。
代償金の支払いがされなかった場合、公正証書で強制執行をすることができます。
金銭以外の財産の引渡しは、金銭債権ではありません。
金銭以外の財産の引渡しは、公正証書で強制執行をすることができません。
金銭以外の財産の引渡しを強制執行するためには、別の方法で債務名義を得る必要があります。
債務名義とは、裁判所が強制執行を許可する前提となる文書です。
金銭以外の財産の引渡しでは、公正証書は債務名義にはなりません。
4裁判手続で債務名義を得る
①遺産分割後の紛争調整調停で調停調書
相続財産の分け方について相続人全員合意ができた場合、遺産分割協議は成立します。
遺産分割協議で代償金を払うと約束したのに払ってもらえない場合でも、一方的に解除することはできません。
遺産分割協議の合意内容を守ってもらえない場合、遺産分割後の紛争調整調停を申し立てることができます。
遺産分割協議が成立してから長期間経過した後に、紛争調整調停を申し立てることができます。
調停とは、裁判所のアドバイスを受けてする当事者の話し合いです。
当事者同士で話し合いをした場合、感情的になってしまうかもしれません。
家庭裁判所の調停委員と話をすると、冷静に話ができるでしょう。
家庭裁判所の調停委員から公平な意見を根拠にしてアドバイスがされると、納得しやすくなるでしょう。
代償金の支払いについて合意ができた場合、合意内容は調停調書に取りまとめます。
代償金が支払われない場合、強制執行をすることができます。
調停調書は、債務名義になります。
②代償金支払い請求訴訟を提起して勝訴判決
遺産分割後の紛争調整調停は、当事者の話し合いです。
話し合いで合意を目指します。
遺産分割後の紛争調整調停で話し合っても合意ができない場合、代償金支払い請求訴訟を提起することができます。
代償金支払い請求訴訟は、通常の裁判です。
家庭裁判所でなく、地方裁判所や簡易裁判所の管轄です。
当事者の話し合いで合意できる見込みがない場合、調停をせずに代償金支払い請求訴訟を提起することができます。
代償金支払い請求訴訟を提起した後、判決を得るには相当の時間と費用がかかります。
代償金支払い請求訴訟で勝訴した場合、強制執行をすることができます。
代償金支払い請求訴訟の勝訴判決は、債務名義になります。
5遺産分割協議の内容を守ってもらうために
①同時履行で押印と印鑑証明書
相続財産の分け方について相続人全員が合意した場合、遺産分割協議は終了します。
代償分割で代償の支払いがなくても、一方的な解除をすることはできません。
代償分割をする場合、代償を確実に支払ってもらうことが大切です。
代償の支払いと遺産分割協議書の押印を同時履行とするといいでしょう。
代償が高額である場合、銀行振出の小切手による支払をしてもらうことができます。
振込で代償を支払う場合、口座残高はスマートフォンやパソコンで確認することができます。
遺産分割協議書に押印しない場合、相続手続を進めることはできません。
遺産分割協議書に押印と代償の支払いを同時履行とした場合、確実に支払ってもらうことができます。
②抵当権の設定
抵当権とは、支払いを確実にするため担保に取る権利です。
代償が支払われなかった場合、抵当権を実行することができます。
抵当権を実行するとは、不動産を取り上げて競売して売却代金から代償を払ってもらうことです。
抵当権を設定した場合、抵当権設定登記をします。
抵当権設定登記には、登録免許税を納めなければなりません。
抵当権設定登記を司法書士などの専門家に依頼した場合、報酬がかかります。
抵当権設定をした場合の費用負担について、合意しておく必要があります。
③連帯保証人を立ててもらう
連帯保証人とは、代償の支払いを確実にするため主債務者と同様の返済の義務を負う人です。
代償が支払われなかった場合、連帯保証人に返済を請求することができます。
連帯保証契約は、書面で締結する必要があります。
連帯保証人が相続人以外の第三者である場合、遺産分割協議書とは別に連帯保証契約書を作成します。
連帯保証人は、主債務者に請求して欲しいと文句を言うことはできません。
連帯保証人を立ててもらうことで、代償の支払いを確実にすることができます。
④分割払いの合意には滞納リスクがある
代償金の支払いは、一括払いが一般的です。
相続人が合意できるのであれば、分割払いにすることができます。
代償金の支払いを分割払いにした場合、将来、支払われなくなるリスクがあります。
将来、代償金が支払われなくても、法定解除はできません。
確実に支払ってもらうために、代償金を分割払いにすることができます。
分割払いにすると、滞納リスクがあります。
⑤遅延損害金の合意で心理的プレッシャー
お金の貸し借りをした場合、返済期日までに返済できないときに備えて遅延損害金を払う約束をします。
遅延損害金は、通常の利息より高い利率で約束するでしょう。
高い利率の遅延損害金を払うことになるから、何とかして返済期日までに返済します。
代償金が支払期日までに支払われない場合に備えて、遅延損害金を払う約束をすることができます。
高い利率の遅延損害金を払うことになるから、心理的プレッシャーを与えることができます。
⑥代償分割より換価分割
代償分割は、任意に代償を払ってもらう方法です。
代償金が払われない場合、そもそも代償分割が適切でないかもしれません。
相続財産の分け方には、換価分割の方法があります。
換価分割とは、不動産を売却してお金に換えた後、お金を分ける方法です。
売却代金を分けるから、代償金を払ってもらえないと心配する必要はありません。
換価分割では、不動産を売却してお金に換えます。
せっかく家族が守ってきた不動産を手放すことへの罪悪感にかられて、話し合いがまとまらないおそれがあります。
そもそも代償分割より換価分割が適切かもしれません。
6遺産分割協議書作成を司法書士に依頼するメリット
遺産分割協議書は遺産の分け方について、相続人全員による合意を取りまとめた文書です。
合意がきちんと文書になっているからこそトラブルが防止できるといえます。
書き方に不備があるとトラブルを起こしてしまう危険があります。
せっかくお話合いによる合意ができたのに、取りまとめた文書の不備でトラブルになるのは残念なことです。
トラブルを防止するため、遺産分割協議書を作成したい方は、司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。
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