Archive for the ‘遺産分割協議’ Category
相続手続で実印と印鑑証明書が必要になる
1印鑑証明書とは
①市区町村役場に印鑑を登録することができる
15歳以上の人は、自分の印鑑を住民票のある市区町村役場に登録することができます。
印鑑証明書は、本人の登録した印鑑による印影であることを証明する書類です。
市区町村役場に登録した印鑑を実印と言います。
②印鑑証明書が必要になる理由
相続手続を進めようとすると、印鑑証明書を用意するように言われます。
重要な契約や大切な場面では、本人の意思確認のために押印をしてもらうことが多くあります。
特に重要な場面では、実印で押印してもらいます。
実印は本人が大切に保管しているから実印で押印されている場合、本人の意思で押印されたと言えるでしょう。
実印で押印したことを証明するために、印鑑証明書が必要になります。
実印で押印し印鑑証明書を添付することで本人の意思であることが間違いないと第三者にも信用してもらえます。
2遺産分割協議書を作成すると実印と印鑑証明書が必要になる
①相続人全員の合意を証明するため
相続が発生した後、相続財産は相続人全員の共有財産になります。
相続人のひとりが勝手に処分することはできません。
相続財産の分け方について相続人全員で合意をする必要があります。
相続財産の分け方にについて、相続人全員でする話し合いのことを遺産分割協議と言います。
相続財産の分け方について、相続人全員で合意したら、確定して話し合いは終了になります。
全ての財産をまとめて合意しなければならないといったこともありません。
一部の財産についてだけ合意をすることもできます。
相続人全員の合意ができたら、合意内容を文書に取りまとめます。
相続財産の分け方にについて相続人全員の合意内容を取りまとめた文書を遺産分割協議書と言います。
遺産分割協議書は、相続人全員が記名して実印で押印します。
遺産分割協議書の押印が実印であることを証明するために、印鑑証明書を添付します。
相続人全員が実印で押印し印鑑証明書を添付することで、相続手続先に対して相続人全員の合意があることを証明することができます。
②相続登記で遺産分割協議書が必要なとき実印と印鑑証明書が必要になる
相続人が複数である場合や遺言書がない場合、遺産分割協議が必要になります。
相続登記で遺産分割協議書を提出する場合、実印で押印し印鑑証明書を添付します。
相続人が一人の場合、話し合いをするべき他の相続人はいません。
遺言書がある場合、相続人全員の話し合いは必要ありません。
遺産分割協議が必要ない場合、遺産分割協議書は必要ありません。
遺産分割協議書を作成しない場合、印鑑証明書を提出する必要もありません。
印鑑証明書は、遺産分割協議書の押印が実印によるものであることを証明するために添付するからです。
相続登記で遺産分割協議書と印鑑証明書を提出する場合、印鑑証明書に期限はありません。
古い印鑑証明書を提出しても差し支えありません。
相続登記で提出した遺産分割協議書と印鑑証明書は、希望すれば原本還付をしてもらうことができます。
③相続税申告で遺産分割協議書が必要なとき実印と印鑑証明書が必要になる
相続税の申告書等の書類には実印を押印する必要はありません。
認印で差し支えありません。
実印で押印が必要になるのは、遺産分割協議書です。
遺産分割協議書に相続人全員が実印で押印する必要があります。
遺産分割協議書に実印で押印したことを証明するために印鑑証明書を添付します。
相続人が一人の場合や遺言書がある場合、印鑑証明書は不要です。
相続税申告で遺産分割協議書と印鑑証明書を提出する場合、印鑑証明書に期限はありません。
古い印鑑証明書を提出しても差し支えありません。
相続税申告で提出した印鑑証明書は、原本還付をしてもらうことができません。
④相続放棄は実印と印鑑証明書は不要
家庭裁判所に対して、必要な書類をを添えて相続放棄をしたい旨の届出をします。
届出をする先の家庭裁判所は、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です。
家庭裁判所の管轄は裁判所のホームページで調べることができます。
相続放棄をしたい旨の届出の書類のことを、相続放棄申述書と言います。
相続放棄申述書は、相続放棄の届出をする人が押印をします。
実印で押印してももちろんいいのですが、押印は認印で充分です。
実印を押さないから、印鑑証明書を提出することもありません。
にもかかわらず、相続放棄の手続のため実印と印鑑証明書を用意して欲しいと他の相続人に言われたというケースがあります。
相続放棄のためと称していますが、相続放棄の手続のはずがありません。
相続放棄の手続は、相続放棄をする相続人が自分でするものだからです。
相続放棄の手続には、実印も印鑑証明書も不要です。
実印と印鑑証明書を渡して欲しいと言ってきた場合、別の手続をしようとしています。
具体的には、遺産分割協議と相続放棄を混同していると言えます。
自称専門家の場合、遺産分割協議と相続放棄を混同しているケースは度々あります。
3預金の解約や生命保険の請求で印鑑証明書が必要になる
①銀行預金を解約する場合
口座の持ち主が死亡したことを金融機関が知った場合、口座を凍結します。
口座が凍結されると、口座から引き出しや振り込みができなくなります。
口座の凍結解除に印鑑証明書が必要になります。
金融機関によって相続手続が異なりますが、多くの場合、次の人の印鑑証明書が必要です。
(1)相続人が一人だけの場合
預貯金を相続する人の印鑑証明書
(2)遺産分割協議書がある場合
相続人全員の印鑑証明書
銀行預金の解約などで遺産分割協議書と印鑑証明書を提出する場合、独自ルールで印鑑証明書に期限をもうけています。
期限は3か月や6か月以内のことが多いです。
古い印鑑証明書を提出した場合、印鑑証明書を取得し直すことになります。
銀行預金の解約などで遺産分割協議書と印鑑証明書を提出する場合、多くは原本還付をしてもらえます。
(3)遺言書がある場合
預貯金を相続する人の印鑑証明書
(4)裁判所の手続で相続する人が決まった場合
預貯金を相続する人の印鑑証明書
②生命保険の死亡保険金を請求をする場合
生命保険の死亡保険金を請求する場合、受取人の確認のため、印鑑証明書が必要になります。
4実印を押してもらえない場合
①実印がない場合は印鑑登録をしてもらう
実印は、本人の意思が特に重視される重要な場面でのみ使います。
相続人の中には、印鑑登録をしたことがない人がいるかもしれません。
印鑑登録をしていない場合、印鑑証明書は発行されません。
実印は、重要な場面でのみ使うものだから、普段は人目にさらすことはないでしょう。
大切に保管して、そのままどこに保管したか分からなくなることがあります。
過去に印鑑登録をしたものの実印を紛失した場合、印鑑の廃止をすることができます。
あらためて印鑑登録をすることで登録した印鑑を実印として使うことができます。
②相続人が海外在住者の場合は署名証明書
15歳以上の人は、自分の印鑑を住民票のある市区町村役場に登録することができます。
住民票のない人は、自分の印鑑を登録する市区町村役場がありません。
印鑑を登録できないから、印鑑証明書を発行してもらうことができません。
海外在住者は、印鑑証明書の代わりに署名証明書を添付します。
署名証明書は、在外公館で発行してもらうことができます。
署名すべき遺産分割協議書を在外公館に持参して、領事の面前で署名します。
領事の面前で署名したことを証明してくれます。
署名した遺産分割協議書と署名証明書を綴り合せます。
③相続人が収監中の場合は施設長の証明書
相続人が刑事施設などに収監されている場合があります。
刑事施設などでは実印を保管していないし、印鑑証明書を取り寄せることができません。
遺産分割協議書を差入し、署名し指印を押してもらいます。
指印の横に、本人の指印に相違ありませんと書いて、施設長に証明をしてもらいます。
④相続人が相続財産の分け方に合意していない場合は裁判手続
相続財産は、相続人全員の共有財産です。
相続財産の分け方は、相続人全員の合意によって決定します。
遺産分割協議書は、相続人全員の合意内容を取りまとめたもののはずです。
遺産分割協議書に実印を押印しない場合や印鑑証明書を渡してくれない場合、相続財産の分け方に合意していない可能性があります。
遺産分割協議は、相続人全員の合意でなければなりません。
多数決で決めることはできませんから、一人でも反対の人がいると相続手続を進めることはできなくなります。
まずは粘り強く話し合いをするのが大切です。
どうしても話し合いができない場合、家庭裁判所の助力を借りて遺産分割をすることになります。
5印鑑証明書を渡したくない場合
①司法書士などの専門家に相続手続を依頼する
遺産分割協議書は、相続人全員が記名して実印で押印します。
遺産分割協議書の押印が実印であることを証明するために、印鑑証明書を添付します。
相続人全員の印鑑証明書がない場合、原則として、相続手続を進めることはできません。
一部の相続人から一方的に印鑑証明書を渡すように迫られた場合、不安な気持ちになるでしょう。
日ごろから金遣いが荒い相続人や多額の借金を負っている相続人から言われた場合、印鑑証明書を悪用されるのではないかと疑心暗鬼になるかもしれません。
遺産分割協議の内容に納得しているが、印鑑証明書などの悪用が心配な場合です。
相続手続は、司法書士などの専門家に依頼することができます。
司法書士などの専門家に依頼して、直接、司法書士に渡すといいでしょう。
相続手続が終わった後も、直接返して欲しい旨を伝えると直接やり取りができます。
②自分が代表相続人として相続手続をする
司法書士などの専門家に依頼しない場合で、自分が代表相続人として相続手続をする方法があります。
相続手続は、一般的に手間と時間がかかります。
自分が面倒な手続をすると申し出ると、喜んで印鑑証明書などの相続書類を渡してくれるかもしれません。
6相続手続を司法書士に依頼するメリット
相続が発生すると、相続人は悲しむ暇もなく相続手続に追われます。
ほとんどの人は相続手続は不慣れで、聞き慣れない法律用語で疲れ果ててしまいます。
インターネットの普及で多くの人は簡単に多くの情報を手にすることができるようになりました。
多くの情報の中には正しいものも、適切でないものも同じように混じっています。
相続登記も簡単にできる、ひとりでできたという記事も散見されます。
不動産は重要な財産であることも多いので、登記手続きは一般の方から見ると些細なことと思えるようなことでやり直しになることも多いものです。
法務局の登記相談を利用すれば、シンプルな事例の申請書類などは教えてもらえますが、通常と異なる事例に関しては、相談する側から話さないとわざわざ説明してくれません。
知識のない方にとっては、通常と異なっているかどうか判断がつかないでしょう。
司法書士などの専門家から見れば、トラブルのないスムーズな相続手続であっても、知識のない一般の方はへとへとになってしまいます。
住所がつながらない場合など、シンプルな事例とは言えない事情がある場合は申請を取下げて、やり直しになることが多いでしょう。
司法書士は登記の専門家です。
スムーズに相続手続を完了させたい方は司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。
遺産分割協議書に預金の分け方を書く方法
1遺産分割協議が必要な場合
①遺言書に書いていない財産が見つかった場合
遺言書がある場合、その遺言書のとおり相続します。
原則として、相続人全員による話し合いは必要ありません。
遺言書があっても、遺言書に書いていない財産が見つかることがあります。
この場合は、見つかった財産の分け方を決めるため、相続人全員による合意が必要になります。
②遺言書が無効な場合
遺言書の書き方ルールは厳格に決まっています。
この書き方ルールに添わない遺言書が見つかることがあります。
せっかくの遺言書ですが、書き方ルールに添わない遺言書は無効です。
遺言書はないものとして扱われます。
遺言書がない場合と同じように、見つかった財産の分け方を決めるため、相続人全員による合意が必要になります。
③遺言書の内容と異なる相続をする場合
法的に有効な遺言書がある場合、原則として、遺言書のとおり相続することになります。
遺言書によって相続する人と相続人全員が合意をすれば遺言書の内容と異なる合意した内容の相続をすることができます。
2遺産分割協議書に預金の分け方を書く方法
①銀行の記載例
相続財産中、次の被相続人名義の財産については、相続人○○○○が相続する。
金融機関名 ○○銀行 ○○支店
預金種別 普通預金
口座番号 ○○○○○○○
金融機関名 ○○銀行 ○○支店
預金種別 定期預金
口座番号 ○○○○○○○
②ゆうちょ銀行の記載例
相続財産中、次の被相続人名義の財産については、相続人○○○○が相続する。
金融機関名 ゆうちょ銀行
通常貯金
記号 ○○○○○
番号 ○○○○○○○○
金融機関名 ゆうちょ銀行
定額貯金
記号 ○○○○○
番号 ○○○○○○○○
③信用金庫や農業協同組合の出資金の記載例
相続財産中、次の被相続人名義の財産については、相続人○○○○が相続する。
金融機関名 ○○信用金庫○○支店
預金種別 普通預金
口座番号 ○○○○○○○
出資金 会員番号○○○○○○○
信用金庫や農業協同組合に口座がある場合、出資金の合意を忘れがちです。
口座の解約だけでなく出資金の払戻を受けるために、もれなく記載しましょう。
④代表相続人の相続して代償金を支払う場合の記載例
第1条
相続財産中、次の被相続人名義の財産については、相続人○○○○が相続する。
金融機関名 ○○銀行 ○○支店
預金種別 普通預金
口座番号 ○○○○○○○
金融機関名 ○○銀行 ○○支店
預金種別 定期預金
口座番号 ○○○○○○○
第2条
相続人○○○○は前条の預金を取得する代償として、次のとおり令和○年○月○日限り指定口座に振込みの方法により支払う。
振込手数料は相続人○○○○の負担とする
相続人□□□□ □□□万円
相続人◇◇◇◇ ◇◇◇万円
預貯金を分ける場合、金融機関ごとに分ける合意ができないことがあります。
預貯金の残高に違いがあるからです。
公平な分割のため、代表相続人が相続して代償金を払う方法をとることができます。
遺産分割協議書に代表相続人が相続することだけを記載した場合、代償金の支払いに対して贈与税が課されるリスクがあります。
遺産分割の代償金であることを明記して、贈与税課税のリスクを回避します。
3遺産分割協議書に預金の分け方を書くときの注意点
①預貯金を分けるためには相続人全員の合意が必要
金融機関は、口座の持ち主が死亡した事実を知った時点で口座を凍結します。
相続人であっても一人が勝手に口座を解約することはできません。
相続人の一人が勝手に口座を解約できるとすると、相続人間で大きなトラブルになるでしょう。
銀行は、他の相続人から強い抗議を受けることになります。
被相続人の預金を守れなかった場合、銀行の信頼は失墜すると言えます。
このようなことを防ぐため、銀行は口座を凍結します。
凍結した口座は、預金の引き出しや引き落としができません。
口座の凍結解除をしてもらうためには、相続人全員で預金の分け方の合意をする必要があります。
相続人全員の合意ができなければ、口座は凍結されたままです。
②遺産分割協議書に金額は記載不要
遺産分割協議書は、相続財産の分け方を取りまとめた文書です。
相続財産の分け方が分かるように記載すればいいと言えます。
財産の分け方は、財産を特定できるように記載します。
預貯金であれば、○○銀行○○支店普通預金口座番号○○○○○○○のように口座で特定すれば充分でしょう。
口座の残高を記載した場合、利息や配当金などを含めて正確に記載しなければなりません。
不備があると銀行は解約に応じてくれません。
わざわざ金額を記載する必要はないでしょう。
③銀行ごとに遺産分割協議書を作ることができる
金融機関は、口座の持ち主が死亡した事実を知った時点で口座を凍結します。
生活資金の口座は、早く凍結解除してもらいたいものです。
遺産分割協議書は、相続財産すべてを1通に取りまとめる必要はありません。
生活資金の口座だけ先に分け方の合意をすることができます。
合意ができた財産についてだけ遺産分割協議書を作ることができます。
銀行ごとに別々の遺産分割協議書を作ることも差し支えありません。
4遺産分割前の預金払い戻し
口座がいったん凍結されると、遺産の分け方について相続人全員で合意するまで、預金の引き出しはできません。
なのに、被相続人の未払い入院費や葬儀の費用を被相続人の口座から払おうとすることが多いのです。
すぐに現金が必要な場合、分割前の預金払い戻し制度があります。
分割前の預金払い戻し制度は手続方法が2種類あります。
銀行などの金融機関に直接手続する方法と家庭裁判所に手続する方法です。
①銀行に直接手続する方法
カンタンで費用が掛かりません。
払い戻し額は最高で150万円です。
預金額や法定相続分によってはもっと低いこともあります。
②家庭裁判所に手続する方法
調停や審判の申立をしていることが前提条件です。
家庭裁判所の手続なので、煩雑で時間と手間の負担が大きいです。
払戻の必要があることを裁判所に説明する必要があります。
必要が認められれば預金全額の払戻も認められることもあります。
家庭裁判所の判断で、預金全額の払戻が認められない場合もあります。
分割前の預金払い戻しをすると、単純承認したと判断されるおそれがあります。
単純承認したと判断された場合、相続放棄ができなくなります。
相続財産の内容がはっきりしないうちに利用するのは慎重に判断しましょう。
5預貯金口座の相続手続を司法書士に依頼するメリット
口座を凍結されてしまったら、書類を揃えて手続すれば解除してもらえます。
このとき必要な書類は銀行などの金融機関によってまちまちで、手続にかかる方法や手続にかかる期間もまちまちです。
銀行内部で取扱が統一されていないことも少なくありません。
窓口や電話で確認したことであっても、上席の方に通してもらえないケースも多々あります。
このため何度確認しても違う説明をされたり、やり直しになることがあります。
口座の解約は、スムーズに手続できないことが多いのが現状です。
日常生活に不可欠な銀行口座だからこそ、スムーズに手続したいと思う方が多いでしょう。
お仕事や家事でお忙しい方や高齢、療養中などで手続きが難しい方は、手続を丸ごとおまかせできます。
ご家族にお世話が必要な方がいて、お側を離れられない方からのご相談もお受けしております。
凍結口座をスムーズに解除したい方は、司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。
一人が全財産を相続するときの遺産分割協議書
1一人が全財産を相続することができる
①相続人が一人だけ
相続人になる人は、法律で決まっています。
配偶者、子ども、親などの直系尊属、兄弟姉妹です。
家族の状況によっては、相続人が一人だけの場合があります。
相続人が一人だけの場合、その相続人が全財産を相続します。
②他の相続人全員が相続放棄
相続人は、家庭裁判所に手続をして相続放棄をすることができます。
相続人は、各自の判断で相続放棄をすることができます。
家庭裁判所で相続放棄が認められた場合、はじめから相続人でなくなります。
他の相続人全員が相続放棄をした場合、相続人は一人になります。
相続人が一人だけの場合、その相続人が全財産を相続します。
③遺言書で一人が相続すると指定
被相続人が遺言書を作成していた場合、原則として遺言書のとおり相続します。
相続人が兄弟姉妹の場合は遺言書のとおりで問題がないでしょう。
兄弟姉妹以外の相続人には、遺留分があります。
遺留分とは、相続財産に対する最低限の取得分のことです。
兄弟姉妹以外の相続人は、遺留分侵害額請求をすることができます。
④相続人全員で一人が相続すると合意
相続が発生した場合、被相続人のものは相続人全員の共有財産になります。
相続財産の分け方は、相続人全員で合意しなければなりません。
相続人全員で合意ができれば、一人が全財産を相続するという合意をすることができます。
2一人が全財産を相続するために相続放棄をしたら
例えば、配偶者と子どもが相続人になる場合、配偶者に全財産を相続させたいと合意することがあります。
配偶者一人に全財産を相続させるため、子ども全員が相続放棄をすることがあります。
子ども全員が相続放棄をした場合、配偶者が全財産を相続するように思うかもしれません。
子ども全員が相続放棄をした場合、子どもはいないものとされます。
被相続人に子どもがいない場合、親などの直系尊属が相続人になります。
親などの直系尊属が被相続人より先に死亡している場合、親などの直系尊属はいない場合になります。
子どもと親などの直系尊属がいない場合、兄弟姉妹が相続人になります。
兄弟姉妹が被相続人より先に死亡している場合、兄弟姉妹の子どもが代襲相続をします。
兄弟姉妹や兄弟姉妹の子どもと相続財産の分け方について、合意をしなければならなくなります。
兄弟姉妹や兄弟姉妹の子どももいない場合に、相続人が一人の場合と言えます。
単に配偶者に全財産を相続させたい意思であれば、配偶者と子ども全員で遺産分割協議をするだけでいいでしょう。
3一人が全財産を相続するときの注意点
①相続財産の分け方は相続人全員で合意が不可欠
相続財産の分け方は、相続人全員で合意しなければなりません。
相続人の多数決で決めることはできません。
認知症や未成年で物事のメリットデメリットを充分に判断できない人がいる場合、代わりの人が判断します。
行方不明の人や疎遠な相続人を無視することはできません。
必ず相続人全員の合意が必要です。
②相続人全員の合意ができたら遺産分割協議書にとりまとめる
相続人全員の合意内容を文書に取りまとめます。
相続人全員の合意内容を取りまとめた文書を遺産分割協議書と言います。
遺産分割協議書に相続人全員が記名し実印で押印します。
押印が実印によるものであることを証明するため、印鑑証明書を添付します。
③相続放棄をした人は遺産分割協議に参加しない
家庭裁判所で相続放棄が認められた人は、相続人ではなくなります。
相続人でないから、相続手続に参加する必要はありません。
相続財産の分け方についての話し合いに参加することはありません。
相続放棄をした人が相続財産の分け方に合意することはありません。
遺産分割協議書に記名することも押印することもありません。
一人が全財産を相続する場合、相続財産を受け取らない人が相続放棄をしたと表現する場合があります。
家庭裁判所で手続をしていない場合、相続放棄ではありません。
遺産分割協議でプラスの財産を受け取らない合意をした場合、相続人のままです。
相続人だから、相続財産の分け方に合意をして遺産分割協議書に記名し押印する必要があります。
④債務の相続を合意しても相続人の内部的合意に過ぎない
一人が全財産を相続するとき、プラスの財産もマイナスの財産も相続する合意でしょう。
相続人全員で一人が債務を相続する合意をした場合、相続人の内部的な合意に過ぎません。
債権者は相続人全員に対して法定相続分で借金の返済を請求することができます。
4一人が全財産を相続するときの遺産分割協議書の書き方
①被相続人の書き方
記載例
共同相続人である私たちは、以下の相続について、下記のとおり遺産分割の協議をした。
被相続人の最後の本籍 〇〇県〇〇市〇〇町〇丁目〇番地
被相続人の最後の住所 〇〇県〇〇市〇〇町〇丁目〇番〇号
被相続人のの氏名 〇〇 〇〇
被相続人の生年月日 〇〇 〇〇年〇〇月〇〇日
被相続人の死亡日 〇〇 〇〇年〇〇月〇〇日
被相続人の最後の本籍、被相続人の最後の住所、被相続人のの氏名、被相続人の生年月日、被相続人の死亡日を記載します。
相続が発生した後、相続手続のために戸籍謄本や住民票を集めているでしょう。
戸籍謄本や住民票の記載どおりに、一字一句間違いなく記載しましょう。
②相続財産の書き方
相続財産中、次の不動産については、相続人○○○○が相続する。
所在 ○○市○○町○丁目
地番 ○番○
地目 宅地
地積 200㎡
相続財産中、次の不動産については、相続人○○○○が相続する。
所在 ○○市○○町○丁目
家屋番号 ○番○
種類 居宅
構造 木造瓦葺2階建
床面積 1階 50.00㎡ 2階 50.00㎡
相続財産中、次の被相続人名義の財産については、相続人○○○○が相続する。
金融機関名 ○○銀行 ○○支店
預金種別 普通預金
口座番号 ○○○○○○○
金融機関名 ○○銀行 ○○支店
預金種別 定期預金
口座番号 ○○○○○○○
合意の対象となった不動産や預貯金を特定できるように列挙して記載します。
相続人○○○○がすべての財産を相続する。
一人が全財産を相続するのだから、上記のような書き方でも不適切なわけではありません。
もしかしたら主要な財産の存在を知らない相続人がいるかもしれません。
主要な財産の存在を知っていたら合意をしなかった。合意は無効だと主張するリスクがあります。
相続手続先によっては、重要財産が列挙されていない遺産分割協議書は無効になるリスクがあると判断するかもしれません。
相続トラブルに巻き込まれることをおそれて、遺産分割協議書を作り直すように言われるでしょう。
せっかく相続人全員の合意ができたのだから、トラブルになりにくい遺産分割協議書を作ることをおすすめします。
③遺産分割協議書に記載のない財産が見つかったときの書き方
記載例
本協議書に記載のない財産は、相続人○○○○が相続する。
相続財産の分け方は、相続人全員で合意しなければなりません。
些細な財産が見つかった場合、あらためて相続人全員で合意をするのは煩わしいでしょう。
遺産分割協議書に記載がない財産が見つかった場合について、合意しておくと相続手続がスムーズになります。
④債務の書き方
記載例
相続財産中、被相続人名義の債務については、相続人○○○○が相続する。
なお、相続人○○○○は他の相続人に上記債務の弁済について、求償しない。
一人が全財産を相続するとき、プラスの財産もマイナスの財産も相続する合意でしょう。
相続人全員で一人が債務を相続する合意をした場合、相続人の内部的な合意に過ぎません。
債権者は相続人全員に対して法定相続分で借金の返済を請求することができます。
相続人間の内部的合意に過ぎませんが、合意内容を明記しておくといいでしょう。
5相続人が一人だけなら遺産分割協議は不要
相続が発生した場合、被相続人の財産は相続人全員の共有財産になります。
相続財産の分け方は、相続人全員の合意が不可欠です。
相続人が一人だけの場合、相続財産の分ける必要はありません。
一人だけの相続人が当然に全財産を相続します。
他に相続人がいないから、相続人全員の合意も意味がありません。
相続財産の分け方についての相続人全員の話し合いを遺産分割協議といいます。
相続財産の分ける必要はないし、相続人全員の合意も意味がありません。
相続人が一人だけの場合、遺産分割協議は不要です。
遺産分割協議書は、相続財産の分け方についての相続人全員の合意を取りまとめた文書です。
遺産分割協議が不要だから、遺産分割協議書も不要です。
相続人が一人だけの場合とは、はじめから相続人がいない場合だけでなく、他の相続人全員が相続放棄をした場合を含みます。
相続放棄が認められた場合、相続放棄をした人ははじめから相続人でなくなるからです。
6遺産分割協議書作成を司法書士に依頼するメリット
遺産分割協議書は遺産の分け方について、相続人全員による合意を取りまとめた文書です。
合意がきちんと文書になっているからこそトラブルが防止できるといえます。
つまり、書き方に不備があるとトラブルを起こしてしまう危険があります。
せっかくお話合いによる合意ができたのに、取りまとめた文書の不備でトラブルになるのは残念なことです。
トラブルを防止するため、遺産分割協議書を作成したい方は、司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。
数次相続があったときの遺産分割協議書
1数次相続とは
①数次相続とは相続手続中に相続人が死亡して新たな相続が発生した状態
相続が発生したら、相続財産は相続人全員の共有財産になります。
共有財産になった相続財産は、相続人全員で話し合いによる分け方の合意が不可欠です。
相続財産の分け方について、話し合いがまとまる前に、相続人が死亡して新たな相続が発生することがあります。
最初の相続の手続中に相続人が死亡して、さらに相続が発生した状態を数次相続と言います。
数次相続は、どこまででも続きます。
どこまで続くかについて、法律上の制限はありません。
最初の相続を一次相続、相続人が死亡した相続を二次相続と言います。
二次相続の相続人が死亡すると、三次相続、さらに、四次相続、五次相続という場合もあります。
相続人が死亡して新たな相続が発生することを、まとめて、数次相続と言います。
②数次相続と代襲相続のちがい
数次相続も代襲相続も相続が複雑になる代表例です。
相続人になるはずだった人が被相続人より先に死亡したため、相続人になるはずだった人の子どもや子どもの子どもが相続することがあります。
これを代襲相続と言います。
数次相続は、相続が発生した「後」に、相続人が死亡した場合です。
代襲相続は、相続が発生する「前」に、相続人になるはずだった人が死亡した場合です。
数次相続では、死亡した相続人の相続人が最初の相続の遺産分割協議に参加します。
代襲相続では、死亡した相続人の直系卑属が最初の相続の遺産分割協議に参加します。
数次相続と代襲相続では、遺産分割協議に参加する人が異なります。
遺産分割協議に参加すべき人が参加していない場合、相続財産の分け方の合意は無効になります。
遺産分割協議に参加すべきでない人が参加している場合、相続財産の分け方の合意は無効になります。
だれが話し合いに参加すべきか間違えると、せっかく合意をしても合意が無効になります。
慎重に判断しましょう。
2数次相続では被相続人ごとに遺産分割協議書を作成するのが原則
数次相続とは、最初の相続の話し合いがまとまる前に、相続人が死亡して新たな相続が発生することです。
最初の相続と新たな相続は、別の相続です。
最初の相続と次の相続で相続人が異なる場合があります。
例えば、最初の相続で被相続人の配偶者と長男と長女が相続人になる場合です。
最初の相続の話し合いがまとまる前に、被相続人の長男が死亡して新たな相続が発生することがあります。
新たな相続の相続人は、長男の配偶者と長男の子どもです。
最初の相続の話し合いがまとまる前だから、相続人の地位が相続されます。
相続人であった長男の相続人が相続人の相続人として最初の相続の話し合いに参加します。
話し合いがまとまったら遺産分割協議書は、被相続人ごとに別々に作成します。
遺産分割協議に参加すべきでない人が参加している場合、相続財産の分け方の合意は無効になります。
2つの相続をまとめると、遺産分割協議に参加すべきでない人が参加しているように誤解されるおそれがあるからです。
あえて誤解を招く必要はありません。
誤解のない分かりやすい遺産分割協議書を作ることを優先しましょう。
3数次相続の遺産分割協議書の具体的記載例と注意点
被相続人〇〇〇〇が平成〇〇年〇〇月〇〇日に死亡し、その相続人である□□□□が令和□□年□□月□□日に死亡した。
よって、被相続人〇〇〇〇の相続人●●●●、●●●●、□□□□の相続人■■■■、■■■■の相続人全員が下記のとおり遺産分割の協議をした。
被相続人の最後の本籍 〇〇県〇〇市〇〇町〇丁目〇番地
被相続人の最後の住所 〇〇県〇〇市〇〇町〇丁目〇番〇号
被相続人のの氏名 〇〇 〇〇
被相続人の生年月日 〇〇 〇〇年〇〇月〇〇日
被相続人の死亡日 平成〇〇年〇〇月〇〇日
相続人兼被相続人の最後の本籍 □□県□□市□□町□丁目□番地
相続人兼被相続人の最後の住所 □□県□□市□□町□丁目□番□号
相続人兼被相続人のの氏名 □□ □□
相続人兼被相続人の生年月日 □□ □□年□□月□□日
相続人兼被相続人の死亡日 令和□□年□□月□□日
1. 相続財産中、次の不動産については、相続人●●●●が相続する。
(省略)
令和〇〇年〇〇月〇〇日
住所 〇〇県〇〇市〇〇町〇丁目〇番地
相続人 ●●●● 実印
住所 〇〇県〇〇市〇〇町〇丁目〇番地
相続人 ●●●● 実印
住所 □□県□□市□□町□丁目□番地
□□□□の相続人■■■■ 実印
住所 □□県□□市□□町□丁目□番地
□□□□の相続人■■■■ 実印
最初の相続と新たな相続では、遺産分割協議をする人が違います。
遺産分割協議書を分けて作ります。
最初の相続の話し合いがまとまる前に、相続人が死亡しているから、相続人の相続人であることが分かるように肩書をつけるといいでしょう。
新たな相続は、通常の相続と同じです。
通常の相続と同様に、遺産分割協議書を作成します。
4数次相続の相続人が共通する場合はまとめて遺産分割協議書を作るとラク
数次相続とは、最初の相続の話し合いがまとまる前に、相続人が死亡して新たな相続が発生することです。
最初の相続と次の相続で相続人が全く一緒になる場合があります。
例えば、最初の相続で被相続人の配偶者と長男と長女が相続人になる場合です。
最初の相続の話し合いがまとまる前に、被相続人の配偶者が死亡して新たな相続が発生することがあります。
新たな相続の相続人は、長男と長女です。
最初の相続と新たな相続で、相続人は一緒になります。
原則どおり、遺産分割協議書は別々に作っても差し支えありません。
最初の相続と新たな相続で相続人は一緒だから、まとめて話し合いをしてまとめて文書に取りまとめるとラクです。
5死亡した相続人が財産を相続する合意をすることができる
数次相続とは、相続手続中に相続人が死亡して新たな相続が発生した状態です。
最初の相続の他の相続人全員と死亡した相続人の相続人全員で遺産分割協議をします。
最初の相続の他の相続人全員と死亡した相続人の相続人全員で、最初の相続の相続財産を死亡した相続人が相続することを合意することができます。
この後、死亡した相続人の相続人全員で、死亡した相続人が相続した財産の分け方を合意することができます。
登記は、それぞれの原因ごとに分けて申請するのが原則です。
権利が移っていった過程もきちんと記録されなければならないからです。
売買などで、A→Bの後、B→Cと所有権が移転した場合、2つの登記申請が必要です。
途中を飛ばして、A→Cとすることはできません。
Bに所有権が移転したことが分からなくなってしまうからです。
相続登記をする場合、途中の人が1人の場合に限り、途中の人を飛ばして登記することができます。
途中の人が1人になる場合とは、最初から1人の場合だけに限りません。
もともとの相続人はたくさんいたけど、他の相続人全員が相続放棄をした場合や、遺産分割協議で1人が相続すると合意した場合も含みます。
遺産分割協議をしないまま、相続人が死亡して、最終の相続人が1人になった場合、途中を省略することはできません。
最終の相続人が複数であれば遺産分割協議ができますが、最終の相続人が1人になった場合は遺産分割協議はできないからです。
6遺産分割協議書作成を司法書士に依頼するメリット
遺産分割協議書は遺産の分け方について、相続人全員による合意を取りまとめた文書です。
合意がきちんと文書になっているからこそトラブルが防止できるといえます。
つまり、書き方に不備があるとトラブルを起こしてしまう危険があります。
せっかくお話合いによる合意ができたのに、取りまとめた文書の不備でトラブルになるのは残念なことです。
トラブルを防止するため、遺産分割協議書を作成したい方は、司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。
遺産分割協議書が複数
1遺産分割協議書とは
相続が発生した後、相続財産は相続人全員の共有財産になります。
相続人のひとりが勝手に処分することはできません。
相続人全員で相続財産の分け方について話し合いによる合意をして、分け方を決める必要があります。
相続財産の分け方にについて、相続人全員でする話し合いのことを遺産分割協議と言います。
遺産分割協議がまとまったら、相続人全員の合意内容を文書に取りまとめます。
相続人全員の合意内容を取りまとめた文書のことを遺産分割協議書と言います。
遺産分割協議は、必ず、全員で合意する必要がありますが、全員が一つの場所に集まる必要はありません。
電話でもメールでも差し支えありません。
一度に全員合意する必要もありません。
一部の相続人と合意をして、次に、残りの相続人と合意をすることでも問題ありません。
最終的に相続人全員が合意できれば良いのです。
全ての財産をまとめて合意しなければならないといったこともありません。
一部の財産についてだけ合意をすることもできます。
遺産分割協議書は、司法書士などの専門家に作ってもらうこともできるし相続人のひとりが作ることもできます。
2遺産分割協議書は相続人の人数分作成する
①相続人が各自保管する
相続人全員の合意内容を文書に取りまとめた文書が遺産分割協議書です。
単に銀行などの相続手続をするだけであれば、1通あれば足ります。
後々、合意したはずの内容について争いになるかもしれません。
争いになったときに遺産分割協議書を確認する必要があります。
遺産分割協議書には、相続人全員の合意内容が書いてあるから、相続人間のトラブルを防止することができます。
各自遺産分割協議書を確認することができるように、遺産分割協議書は各自保管しておく必要があります。
②遺産分割証明書は取りまとめがラク
遺産分割協議書は、相続人全員の合意内容を取りまとめた文書です。
合意内容を文書に取りまとめた後、間違いないことを確認して相続人全員が記名し実印で押印します。
多くの場合、1通の文書に相続人全員が連続して記名し押印します。
相続人が多人数の場合や遠隔地に住んでいる人がいる場合、1通の文書に相続人全員が連署することは難しいものです。
相続人が集まりにくい場合、相続人のひとりが記名押印した後、持ち回りで各相続人の記名押印をしてもらうことになります。
遠隔地に住んでいる人がいる場合、相続人のひとりが記名押印した後、郵便で次の人に送ることになります。
大きなな労力と時間がかかります。
遺産分割協議書は、相続人全員の合意内容を取りまとめた文書です。
合意していることを確認できれば、相続人の連署にこだわる必要はありません。
遺産分割の内容を各相続人が証明することができます。
遺産分割の内容を各相続人が証明する場合、遺産分割証明書と言います。
相続人全員の合意内容を取りまとめた文書を相続人の人数分用意して、各相続人が記名押印をする方法です。
相続人全員が合意内容に記名押印をして、相続人全員の印鑑証明書が揃った場合、相続人全員の合意があったことが確認できます。
遺産分割協議書と遺産分割証明書は、どちらも同じ効力です。
遺産分割証明書の場合、郵送の手間と時間を節約することができます。
途中で紛失したり、汚してしまう心配も減ります。
3遺産分割協議書が複数ページに渡るとき
①ページの抜き取りや差し替えができる状態では相続手続を進められない
遺産分割協議書は、相続人全員の合意内容を取りまとめた文書です。
合意内容を文書に取りまとめた後、間違いないことを確認して相続人全員が記名し実印で押印します。
記名押印がされた後に一部のページが抜き取られたり差し替えがあった場合、文書の内容は真正な合意内容ではなくなってしまいます。
遺産分割協議書が抜き取りや差し替えができる状態である場合、文書の内容は真正な内容でないおそれがあります。
遺産分割協議書の内容が真正でないおそれがある場合、相続手続は進めることができなくなります。
遺産分割協議書をクリップなどで簡単に綴じただけの場合、相続手続を進めることは難しいでしょう。
②遺産分割協議書を両面印刷する
遺産分割協議書の内容が2ページ以内の場合、紙の両面に印刷することができます。
2ページ以内の制約はあるものの、両面印刷は手軽にすることができるのでおすすめです。
③A3に見開きで印刷する
一般的な家庭用プリンターではA4の紙しか印刷ができない場合が多いです。
A4の紙を2枚並べて、A3の紙にコピーすることができます。
コピーした紙に相続人全員が記名し実印で押印をすることができます。
A3の紙にコピーするのであれば、コンビニエンスストアのコピー機で作ることができます。
④相続人全員で契印を施す
遺産分割協議書の内容が多い場合、複数ページに渡ることがあります。
複数ページに渡る場合、一般的なのが契印を施すことです。
契印とは、文書が複数ページに渡るときに1通の文書であることを証明するためページの見開きにまたがって押印することです。
契印は、最初のページから最後のページまで施します。
最初のページから最後のページまで契印がある場合、書類の改ざんがないことを証明できます。
遺産分割協議書では、相続人全員が実印で契印を施します。
記名押印がされた後に一部のページが抜き取られたり差し替えがあった場合、契印がつながらなくなります。
契印がつながっている場合、改ざんがないと言えます。
⑤袋とじにして相続人全員で契印を施す
財産内容が複雑であったり、相続財産の分け方の合意内容が複雑である場合、遺産分割協議書は長文になります。
ときには何十ページにも及ぶ場合があります。
最初のページから最後のページまで契印を施すのは、手間がかかります。
遺産分割協議書を袋とじにするといいでしょう。
袋とじにするとき、製本テープを使うと便利です。
袋とじにしてあれば、最初のページから最後のページまで契印を施す必要はありません。
製本テープと文書にまたがるように相続人全員の契印が必要になります。
4遺産分割協議書は財産ごとに複数作ることができる
遺産分割協議書は、すべての財産についてまとめて作成してもいいし、一部の財産について作成しても構いません。
まとめて作成した遺産分割協議書も、一部の財産についてだけ作成した遺産分割協議書も有効です。
不動産についてだけ合意した遺産分割協議書の他に、銀行の預貯金についてだけ合意した遺産分割協議書があることがあります。
相続登記用の遺産分割協議書の場合、不動産だけについて合意した遺産分割協議書を作るのが通例です。
一部の不動産を売却する場合、売却する不動産についてだけ先に遺産分割協議書を作ることはよくあります。
相続財産すべてについて合意したと相続人全員が考えて遺産分割協議書を作成した後で、新たに財産が見つかることがあります。
新たな財産について、あらためて相続人全員で合意し、新たな財産についてだけの遺産分割協議書を作成します。
新たな財産が重要財産であって、かつ、新たな財産の存在を知っていたら当初の遺産分割の合意をしなかったと言えるような特別の場合、当初の遺産分割協議は無効になります。
5遺産分割協議書作成を司法書士に依頼するメリット
遺産分割協議書は遺産の分け方について、相続人全員による合意を取りまとめた文書です。
合意がきちんと文書になっているからこそトラブルが防止できるといえます。
つまり、書き方に不備があるとトラブルを起こしてしまう危険があります。
せっかくお話合いによる合意ができたのに、取りまとめた文書の不備でトラブルになるのは残念なことです。
トラブルを防止するため、遺産分割協議書を作成したい方は、司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。
遺産分割協議書に押す実印と印鑑証明書
1実印と印鑑証明書は相続人全員の合意を証明するため
①遺産分割協議書は相続人全員の実印押印と印鑑証明書が必要
相続が発生した後、相続財産は相続人全員の共有財産になります。
相続人のひとりが勝手に処分することはできません。
相続財産の分け方について相続人全員で合意をする必要があります。
相続財産の分け方にについて、相続人全員でする話し合いのことを遺産分割協議と言います。
相続財産の分け方について、相続人全員で合意したら、確定して話し合いは終了になります。
全ての財産をまとめて合意しなければならないといったこともありません。
一部の財産についてだけ合意をすることもできます。
相続人全員の合意ができたら、合意内容を文書に取りまとめます。
相続財産の分け方にについて相続人全員の合意内容を取りまとめた文書を遺産分割協議書と言います。
遺産分割協議書は、相続人全員が記名して実印で押印します。
遺産分割協議書の押印が実印であることを証明するために、印鑑証明書を添付します。
②自分で話し合いができない人は代わりの人の実印押印と印鑑証明書が必要
相続財産の分け方は、原則として、相続人全員の合意で決定します。
遺産分割協議には、法定相続人でない人が参加する場合があります。
遺産分割協議に参加しなければならない人が参加していない場合、遺産分割協議は無効になります。
法定相続人でなくても遺産分割協議に参加しなければならない人全員が「相続人全員」です。
相続財産の分け方を決める話し合いに参加するのは、原則として、相続人本人です。
相続人が物事メリットデメリットを充分に判断できない場合、自分で話し合いによる合意はできません。
例えば、赤ちゃんなどの未成年者の代わりに、親などの親権者が相続財産の分け方の合意をします。
認知症の人の代わりに、家庭裁判所が選任する成年後見人が話し合いに参加します。
遺産分割協議に参加できない赤ちゃんや認知症の人は、遺産分割協議書に記名することも押印することもありません。
赤ちゃんの分は、親などの親権者の名前で記名し、親権者の実印を押印します。
親権者の押印であることを証明するために、親権者の印鑑証明書を添付します。
認知症の人の分は、成年後見人の名前で記名し、成年後見人の実印を押印します。
成年後見人の押印であることを証明するために、成年後見人の印鑑証明書を添付します。
③遺産分割協議書に添付する印鑑証明書の有効期限
印鑑証明書自体に有効期限はありません。
印鑑証明書に「有効期間令和○年○月○日まで」などと記載されることはありません。
印鑑証明書に有効期限はないけど、相続手続をする機関は独自で有効期限を決めています。
相続登記をする場合、法務局では印鑑証明書の期限はありません。
古い印鑑証明書であっても問題なく受け付けてもらえます。
銀行や保険会社などは、独自で書類の有効期限を決めています。
取得してから長期間経過した場合、取得し直してくださいと言われます。
銀行や保険会社などの独自ルールなので、一概には言えませんが、多くは3か月や6か月で取得し直しと言われてしまいます。
相続税の申告が必要な場合、原則として、書類の有効期限はありません。
2実印を押してもらえない印鑑証明書を渡してもらえないときの対処法
相続財産の分け方は、相続人全員の合意が必要です。
遺産分割協議書は、相続人全員が記名押印をして相続人全員の印鑑証明書を添付しなければなりません。
①印鑑登録をしてもらう
遺産分割協議書に押印をしてくれない場合、印鑑登録をしていないことがあります。
印鑑登録をしたはずだけど、実印を紛失してしまっていることもあります。
市町村役場に出向いて印鑑登録をしてもらうといいでしょう。
本人が市区町村役場に出向いた場合、即日、印鑑証明書の発行をしてくれます。
②遺産分割協議書真否確認の訴え
相続人全員の合意内容を遺産分割協議書に取りまとめて記名押印をしたのに、印鑑証明書を渡してくれない場合があります。
遺産分割協議は、口頭でも成立します。
口頭で成立した遺産分割協議では相続手続ができません。
口頭で遺産分割協議が成立した後、印鑑証明書を渡してくれない場合、相続手続ができなくなって困ります。
印鑑証明書を渡してくれない場合、遺産分割協議書真否確認の訴えを提起することができます。
裁判所で遺産分割協議書が真正であると確認してもらいます。
遺産分割協議書真否確認の訴えの勝訴判決を得ることで、印鑑証明書に代えることができます。
③所有権確認の訴え
相続財産の分け方について相続人全員で合意したのに、遺産分割協議書に押印をしてくれない場合があります。
このような場合は印鑑証明書を渡してくれないでしょう。
遺産分割協議書に押印をしてくれない場合、所有権確認の訴えを提起することができます。
相続財産の分け方について相続人全員で合意した時点で、合意した人の財産になるからです。
裁判所で所有権者であると確認してもらいます。
所有権確認の訴えの勝訴判決を得ることで、協力しない相続人の記名押印と印鑑証明書に代えることができます。
④遺産分割調停
相続財産の分け方について合意していないと主張して、遺産分割協議書に押印をしてくれない場合があります。
相続財産の分け方について相続人間で話し合いがつかない場合、遺産分割調停を申し立てることができます。
裁判所の助力を借りて、相続人全員の合意を目指します。
3印鑑証明書を渡したくない場合
①司法書士などの専門家に相続手続を依頼する
遺産分割協議書は、相続人全員が記名して実印で押印します。
遺産分割協議書の押印が実印であることを証明するために、印鑑証明書を添付します。
相続人全員の印鑑証明書がない場合、原則として、相続手続を進めることはできません。
一部の相続人から一方的に印鑑証明書を渡すように迫られた場合、不安な気持ちになるでしょう。
日ごろから金遣いが荒い相続人や多額の借金を負っている相続人から言われた場合、印鑑証明書を悪用されるのではないかと疑心暗鬼になるかもしれません。
遺産分割協議の内容に納得しているが、印鑑証明書などの悪用が心配な場合です。
相続手続は、司法書士などの専門家に依頼することができます。
司法書士などの専門家に依頼して、直接、司法書士に渡すといいでしょう。
相続手続が終わった後も、直接返して欲しい旨を伝えると直接やり取りができます。
②自分が代表相続人として相続手続をする
司法書士などの専門家に依頼しない場合で、自分が代表相続人として相続手続をする方法があります。
相続手続は、一般的に手間と時間がかかります。
自分が面倒な手続をすると申し出ると、喜んで印鑑証明書などの相続書類を渡してくれるかもしれません。
4遺産分割協議書と印鑑証明書は原本還付ができる
相続登記を申請する場合、たくさんの添付書類が必要になります。
法務局に提出した書類のうち、登記のためだけに作成された書類と委任状は返してもらえません。
遺産分割協議書と印鑑証明書は、手続をすれば原本還付を受けることができます。
銀行などの金融機関も申し出れば原本還付をしてくれます。
5相続手続を司法書士に依頼するメリット
相続が発生すると、相続人は悲しむ暇もなく相続手続に追われます。
ほとんどの人は相続手続は不慣れで、聞き慣れない法律用語で疲れ果ててしまいます。
インターネットの普及で多くの人は簡単に多くの情報を手にすることができるようになりました。
多くの情報の中には正しいものも、適切でないものも同じように混じっています。
相続登記も簡単にできる、ひとりでできたという記事も散見されます。
不動産は重要な財産であることも多いので、登記手続きは一般の方から見ると些細なことと思えるようなことでやり直しになることも多いものです。
法務局の登記相談を利用すれば、シンプルな事例の申請書類などは教えてもらえますが、通常と異なる事例に関しては、相談する側から話さないとわざわざ説明してくれません。
知識のない方にとっては、通常と異なっているかどうか判断がつかないでしょう。
司法書士などの専門家から見れば、トラブルのないスムーズな相続手続であっても、知識のない一般の方はへとへとになってしまいます。
住所がつながらない場合など、シンプルな事例とは言えない事情がある場合は申請を取下げて、やり直しになることが多いでしょう。
司法書士は登記の専門家です。
スムーズに相続登記を完了させたい方は司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。
遺産分割協議書を公正証書に
1遺産分割協議書とは
相続が発生した後、相続財産は相続人全員の共有財産になります。
相続人のひとりが勝手に処分することはできません。
相続人全員で相続財産の分け方について話し合いによる合意をして、分け方を決める必要があります。
相続財産の分け方にについて、相続人全員でする話し合いのことを遺産分割協議と言います。
遺産分割協議がまとまったら、相続人全員の合意内容を文書に取りまとめます。
相続人全員の合意内容を取りまとめた文書のことを遺産分割協議書と言います。
遺産分割協議は、必ず、全員で合意する必要がありますが、全員が一つの場所に集まる必要はありません。
電話でもメールでも差し支えありません。
一度に全員合意する必要もありません。
一部の相続人と合意をして、次に、残りの相続人と合意をすることでも問題ありません。
最終的に相続人全員が合意できれば良いのです。
全ての財産をまとめて合意しなければならないといったこともありません。
一部の財産についてだけ合意をすることもできます。
遺産分割協議書は、司法書士などの専門家に作ってもらうこともできるし相続人のひとりが作ることもできます。
より確実にするのであれば、公証役場で公正証書にしてもらうといいでしょう。
2遺産分割協議書を公正証書にするメリット
①公正証書は信用力が高い
遺産分割協議書を公正証書にする場合、公証人という法律の専門家が関与します。
公正証書を作成したい当事者の本人確認と本人の意思確認をします。
法律の専門家が公正証書にしますから、書き方の不備のために相続手続ができないという事態はあり得ません。
公証人が確認をしたうえで公正証書にしますから、一般の書面と較べると後から無効を主張されにくくなります。
裁判などに提出した場合でも高い証拠力があります。
公証人が関与するから、公正証書には高い信頼性があります。
②公正証書は公証役場で20年間保管される
遺産分割協議書を公正証書にした場合、原本が公証役場で20年間保管されます。
公証役場で厳重に保管されるから、紛失や改ざんの心配がありません。
③強制執行することができる
遺産分割協議の合意において、金銭の支払いを約束する場合があります。
遺産分割協議書を公正証書にする場合、金銭の支払いをする点だけでなく支払いをしなかったときのことを書いてもらうことができます。
相続人○○が上記金銭の支払いをしなかったときは、直ちに強制執行に服する旨を認諾した。
上記のような文言がある場合、公正証書で強制執行をすることができます。
お金を払ってもらう人にとっては、心強いものと言えます。
公正証書でない遺産分割協議書では、強制執行ができません。
強制執行をするためには、裁判所で訴訟をして勝訴判決などの債務名義を得る必要があります。
約束したお金を払ってもらうために裁判をしなければならないとなるとハードルが高いものです。
遺産分割協議書を公正証書にすると、裁判をすることなく直ちに強制執行することができます。
3遺産分割協議書を公正証書にした方がいいケース
①相続人間のトラブルを防止したい場合
(1)相続人同士の仲が良くない、疎遠である
(2)相続人間に関係性が薄い相続人がいる
(3)包括受遺者など親族でない人がいる
(4)財産が多種類で複雑である
相続財産の分け方は、相続人全員の合意が不可欠です。
上記のような事情がある場合、相続人全員の合意がまとまりにくい傾向があります。
相続人全員で合意ができたはずなのに、無理矢理印鑑を押させられたから白紙に戻すべきだなどと話を蒸し返すことが考えられます。
遺産分割協議書を公正証書にする場合、公証人が本人確認と本人の意思確認をします。
後になって、だまされたから白紙にしたいと言っても、認められることはほとんどありません。
公正証書にすることでトラブル防止に役立ちます。
②代償分割をした場合
相続財産の大部分が自宅不動産の場合、相続財産の分け方の合意は難しくなります。
一部の相続人が不動産を相続し、残りの相続人は不動産を相続した人から、その分のお金をもらう方法で合意がされる場合があります。
一部の相続人が不動産を相続し、残りの相続人は不動産を相続した人から、その分のお金をもらう方法のことを、代償分割と言います。
相続財産の大部分が不動産で、かつ、値段の高い不動産だった場合、残りの相続人に払うお金を用意することが難しい場合があります。
相続人同士の関係性が良くない場合、代償金を払うのが惜しくなるかもしれません。
売買契約などで買主が売買代金を支払わない場合、売主は売買契約を解除することができます。
遺産分割協議では、代償金を支払わない場合でも遺産分割協議を解除することはできません。
代償分割をする場合、代償金をきちんと支払ってもらうことが重要になります。
遺産分割協議書を公正証書にした場合、強制執行をすることができます。
代償金の支払いがない場合、裁判で勝訴判決などの債務名義を得なくても強制執行をすることができます。
代償金を支払ってもらう人にとっては、公正証書にすることは心強いものと言えるでしょう。
4遺産分割協議書を公正証書にする方法
①相続人を調査する
相続が発生したら、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本を取得します。
相続人は、戸籍謄本を読み解けば判明します。
相続人が判明したら、相続人の戸籍謄本を取得します。
②財産調査をする
相続人調査と並行して、財産調査をします。
不動産があれば、名寄帳を取得して登記簿謄本を確認するといいでしょう。
銀行などの預貯金がある場合、残高証明書を取得するといいでしょう。
③相続人全員で相続財産の分け方を合意する
相続人全員で相続財産の分け方の合意をします。
相続人全員が一堂に会して話し合いをしてもいいし、電話やメールで話し合いをしても構いません。
相続人全員が一度に合意してもいいし、一部の相続人で合意した後に残りの相続人で合意しても差し支えありません。
最終的に相続人全員が合意できればいいのです。
④遺産分割協議書を公正証書にする
公証役場に遺産分割協議書を公正証書にする予約をします。
公証人の指示に従って書類を用意します。
5遺産分割協議書を公正証書にするときの必要書類
公証役場に遺産分割協議書を公正証書にする予約をするときに、必要書類が指示されます。
一般的な必要書類は、次のとおりです。
①遺産分割協議書案
②被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本
③相続人の戸籍謄本
④相続人の印鑑証明書
⑤財産についての証明書
(1)不動産 固定資産評価証明書、登記簿謄本
(2)預貯金 預金通帳の写し、残高証明書
(3)負債 借入残高証明書
遺産分割協議書を公正証書にする場合、公証人に手数料を支払う必要があります。
公証人に支払う手数料は財産の規模によって違います。
公正証書にするまでに打合せが必要ですから、手数料の額について確認しておくといいでしょう。
6遺産分割協議書作成を司法書士に依頼するメリット
遺産分割協議書は遺産の分け方について、相続人全員による合意を取りまとめた文書です。
合意がきちんと文書になっているからこそトラブルが防止できるといえます。
つまり、書き方に不備があるとトラブルを起こしてしまう危険があります。
もともとトラブルの火種があるのなら、いっそう慎重になる必要があります。
遺産分割協議書は公正証書にしなくても済むことが多いものですが、慎重を期して公正証書にした方がいい場合があります。
せっかくお話合いによる合意ができたのに、その後にトラブルになるのは残念なことだからです。
公正証書にするためには、手間と費用がかかります。
公正証書にする手間と費用を惜しむと、裁判をするなど大きな手間と高額な費用を負担することになります。
トラブルを防止するため、遺産分割協議書を公正証書にしたい方は、司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。
相続登記用の遺産分割協議書を自分で作成
1遺産分割協議書とは
2人以上相続人がいる場合や遺言書がない場合は、遺産の分け方について相続人全員で話し合いをする必要があります。
相続人全員で話し合いのことを遺産分割協議といいます。
話し合いの合意内容を取りまとめた文書を遺産分割協議書といいます。
遺産分割協議は、相続人全員の合意が不可欠です。
相続人全員の合意の証明として、遺産分割協議書は相続人全員が実印で押印し、印鑑証明書を添付します。
相続登記では遺産分割協議書が必要な場合と必要ない場合があります。
次の場合は、遺産分割協議書が必要ありません。
①相続人がひとりだけの場合
他の相続人が相続放棄をした結果、相続人がひとりになった場合を含みます。
②遺言書があるため相続人全員による合意が必要ない場合
遺言書があれば遺言書のとおり分ければ済みます。
③法定相続をする場合
相続人全員で法定相続分で共有する相続です。
不動産を共有することになりますから、デメリットが大きくあまりおすすめできません。
④遺産分割調停の場合
相続人全員の話し合いで合意ができない場合、家庭裁判所の助力を借ります。
家庭裁判所が作成する調停調書で相続登記をします。
相続登記用の遺産分割協議書は、客観的に適切に作成されていないと相続登記ができなくなります。
遺産分割協議書は相続人のひとりが作成しても差し支えありませんが、相続登記と一緒に専門家に依頼する方が安心です。
2相続登記用の遺産分割協議書の書き方と注意点
①被相続人を特定する書き方
被相続人の最後の本籍、被相続人の最後の住所、被相続人のの氏名、被相続人の生年月日、被相続人の死亡日を記載します。
相続が発生した後、相続手続のために戸籍謄本や住民票を集めているでしょう。
戸籍謄本や住民票の記載どおりに、一字一句間違いなく記載しましょう。
記載例
被相続人の最後の本籍 〇〇県〇〇市〇〇町〇丁目〇番地
被相続人の最後の住所 〇〇県〇〇市〇〇町〇丁目〇番〇号
被相続人のの氏名 〇〇 〇〇
被相続人の生年月日 昭和〇〇年〇〇月〇〇日
被相続人の死亡日 令和〇〇年〇〇月〇〇日
共同相続人である私たちは、上記の相続について、下記のとおり遺産分割の協議をした。
②相続登記用の遺産分割協議書は不動産のみ記載でよい
合意の対象となった不動産を特定できるように記載します。
「自宅」などの記載は客観的に特定できるとは言えません。
家族にとっては自宅は当然のことですが、法務局など第三者にとっては自宅はどこにあるどの不動産なのか分からないからです。
不動産の所在は自宅住所と異なることが多いので、登記簿謄本を書き写しましょう。
固定資産税の課税明細書は、登記簿謄本と異なる表記がされていることや内容が省略されている場合があります。
登記簿謄本と異なる表記の場合、相続登記が認められない可能性があります。
登記簿謄本の記載を見て、書き写します。
財産すべてを1通の遺産分割協議書で作成することが多いですが、財産ごとに分けて作っても差し支えありません。
相続登記用の遺産分割協議書は、不動産だけ書いて預貯金などは別に作ることも多いものです。
たくさんの不動産がある場合、法務局の管轄ごとに別に作成することもあります。
それぞれの遺産分割協議書に添付書類を用意すれば、同時に相続登記を進めることができるからです。
(1)土地の記載例
所在 ○○市○○町○丁目
地番 ○番○
地目 宅地
地積 200㎡
(2)建物の記載例
所在 ○○市○○町○丁目
家屋番号 ○番○
種類 居宅
構造 木造瓦葺2階建
床面積 1階 50.00㎡ 2階 50.00㎡
(3)敷地権のあるマンションの記載例
(土地の表示)
所在 ○○市○○町○丁目
地番 ○番○
地目 宅地
地積 ○○○.○○㎡
持分 ○○○○○○分の○○○○○○(敷地権の割合)
(一棟の建物の表示)
所在 ○○市○○町○丁目○番地○
構造 鉄筋コンクリート造陸屋根3階建
床面積 1階 ○○○.○○㎡
2階 ○○○.○○㎡
3階 ○○○.○○㎡
(専有部分の建物の表示)
家屋番号 ○○町○丁目○番○の○
建物の名称 ○○○○マンション
種類 居宅
構造 鉄筋コンクリート造1階建
床面積 ○階部分 ○○.○○㎡
(4)被相続人が共有持分を持っていたときの記載例
所在 ○○市○○町○丁目
地番 ○番○
地目 宅地
地積 200㎡
持分 ○分の ○
③日付を記載する
相続が発生した日以降であれば、いつでも差し支えありません。
遺産分割協議はいつまでにやらなければならないといった期限はないからです。
④相続人全員の記名と実印で押印する
遺産分割協議は、相続人全員の合意が不可欠です。
話し合いの合意内容を取りまとめた文書が、遺産分割協議書です。
相続人全員が合意したことの証明として、遺産分割協議書に記名し、実印で押印をします。
本人が合意したことの証として、署名した方がよりいいでしょう。
記名でも署名でも、どちらでも問題ありません。
住所と氏名は印鑑証明書の記載どおり、一字一句間違いなく記入します。
遺産分割協議書は実印で押印します。
実印がない人は、あらかじめ印鑑登録をしなければなりません。
印鑑証明書を添付しない場合や印鑑証明書の印影と異なる印影の押印の場合、相続登記は認められません。
未成年者が相続人である場合、自分で相続財産の分け方の合意ができません。
未成年者は物事のメリットデメリットを充分に判断することができないからです。
合意ができないから、遺産分割協議書に記名押印をしても無効です。
未成年者は契約などの法律行為をする場合、親などの親権者が代理をします。
遺産分割協議は法律行為だから、親などの親権者が代理をするのが原則です。
親などの親権者が代理できる場合、遺産分割協議書には未成年者に代わって親などの親権者が記名押印をします。
未成年者と親などの親権者が2人とも相続人である場合、親などの親権者は未成年者を代理することはできません。
一方がソンすると他方がソンする関係になるからです。
一方がソンすると他方がソンする関係のことを、利益相反と言います。
利益相反になる場合、親などの親権者は未成年者を代理できません。
親などの親権者に代わって遺産分割協議をしてもらう人を選任してもらう必要があります。
親などの親権者に代わって遺産分割協議をしてもらう人を特別代理人と言います。
親などの親権者が代理できない場合、遺産分割協議書には未成年者に代わって特別代理人が記名押印をします。
⑤複数ページになるときは相続人全員の契印が必要
遺産分割協議書が複数ページにわたる場合には、相続人全員が実印で契印を施します。
袋とじにして、相続人全員が実印で契印を施しても構いません。
⑥印鑑証明書に有効期限はない
遺産分割協議書には、印鑑証明書を添付します。
印鑑証明書に有効期限はありません。
以前に取得したものがある場合、古い印鑑証明書を使うことができます。
古い印鑑証明書を添付する場合、印鑑証明書の住所や氏名と遺産分割協議書の氏名や住所が異なる場合があります。
氏名や住所が異なる場合、氏名や住所の移り変わりを証明する必要があります。
3遺産分割協議書は原本還付をしてもらうことができる
相続登記のために提出した遺産分割協議書や印鑑証明書などの添付書類は、手続をすれば原本を返してもらうことができます。
登記申請をする際に、返してもらいたい書類をコピーし、コピーに「原本に相違ありません」と記載して申請人が記名押印をします。
「原本に相違ありません」と記載して申請人が記名押印する場合は、認印で構いません。
「原本に相違ありません」と記載する余白がない場合は、コピーの裏に記載することができます。
4遺産分割協議証明書でも相続登記ができる
遺産分割協議書も遺産分割証明書も、相続人全員の話し合いの合意内容を取りまとめた文書です。
遺産分割協議書は、相続人全員が連名で記名押印する形式の文書です。
遺産分割協議証明書は、相続人全員の人数分の同じ書類を作り各自が記名押印する形式の文書です。
相続人の人数が少なく集まりやすい場合、遺産分割協議書で記名押印するといいでしょう。
相続人の人数が多く全国各地に住んでいて集まりにくい場合、相続人全員が連名で記名押印する形式では不便です。
各相続人が遺産分割証明書に記名押印して相続人全員の分が集まったら、相続人全員の合意を証明できます。
遺産分割協議書と遺産分割協議証明書は、同じ効力を持つものとして相続登記で提出することができます。
5遺産分割協議書作成を司法書士に依頼するメリット
遺産分割協議書は遺産の分け方について、相続人全員による合意を取りまとめた文書です。
合意がきちんと文書になっているからこそトラブルが防止できるといえます。
書き方に不備があるとトラブルを起こしてしまう危険があります。
せっかくお話合いによる合意ができたのに、取りまとめた文書の不備でトラブルになるのは残念なことです。
トラブルを防止するため、遺産分割協議書を作成したい方は、司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。
相続放棄した人がいる遺産分割協議
1相続放棄と相続分の放棄はまったく別物
①相続放棄とは
相続が発生したら、原則として、被相続人のプラスの財産もマイナスの財産も相続人が受け継ぎます。
被相続人のプラスの財産もマイナスの財産も受け継がないことを相続の放棄といいます。
相続放棄をすると、プラスの財産を引き継がなくなりますが、マイナスの財産も引き継ぐことがなくなります。
相続の放棄は被相続人ごとに判断できますから、例えば、父について相続放棄をするが、母について単純承認するでも差し支えありません。
相続の放棄は相続人ごとに判断しますから、例えば、父の相続人ついて長男は相続放棄するが、長女は単純承認するでも差し支えありません。
②相続分の放棄とは
プラスの財産は受け取りませんと申し入れをすることを、相続放棄すると表現する場合があります。
家庭裁判所で手続をしないで、相続放棄をすることはできません。
相続放棄をすると表現していますが、内容は相続分の放棄のことです。
相続分の放棄と相続放棄はまったく別物です。
相続分の放棄は、家庭裁判所で手続をする必要はありません。
他の相続人にプラスの財産は受け取りませんと申し入れをして、文書に取りまとめれば済みます。
手続がカンタンである点を過度に強調して、相続分の放棄をすすめる自称専門家が散見されます。
相続分の放棄と相続放棄のメリットデメリットを充分に理解して、適切に対処しましょう。
2相続放棄をした人は相続人でなくなる
家庭裁判所で相続放棄が認められた場合、はじめから相続人でなかったと扱われます。
相続人でなくなるから、相続財産の分け方の話し合いに参加する必要はありません。
相続財産の分け方の話し合いに参加しないから、相続人全員の合意をすることもありません。
相続人全員の合意をしていないから、遺産分割協議書に押印することはありません。
相続手続に関与することがなくなります。
相続放棄をした人がいる場合、相続手続に相続放棄をしたことの証明書が必要になります。
相続放棄をした場合、戸籍謄本などには記載されないからです。
遺産分割協議書に押印してもらうことがないから、ハンコ代が支払われることもほとんどありません。
ハンコ代とは、遺産分割協議書に押印をしてもらうための贈与のことです。
3相続分の放棄をした人は遺産分割協議
他の相続人にプラスの財産は受け取りませんと申し入れをした人は、依然として相続人です。
相続人だから、相続財産の分け方の話し合いに参加する必要はあります。
相続財産の分け方の話し合いに参加するから、相続人全員の合意をする必要があります。
相続人全員の合意をしているから、遺産分割協議書に実印で押印しなければなりません。
遺産分割協議書の押印が実印であることを証明するために、印鑑証明書を用意しなければなりません。
相続分の放棄をした人は、相続人です。
相続人として、相続手続に関与しなければなりません。
相続人として、マイナスの財産を受け継がなければなりません。
プラスの財産は受け取りませんと申し入れをする人の気持ちとしては、納得がいかないかもしれません。
プラスの財産を受け継がないのにマイナスの財産も受け継ぐことになるからです。
実際、マイナスの財産はプラスの財産を受け継ぐ相続人が引き受ける約束をしている場合があります。
遺産分割協議書に「マイナスの財産は相続人〇〇が相続する」と記載して相続人全員が実印を押しているかもしれません。
このような合意であっても、無効になるわけではありません。
「マイナスの財産は相続人〇〇が相続する」合意は、相続人内部の合意事項です。
債権者には関係のない話です。
債権者には無関係の合意事項だから、債権者は相続人全員に対して法定相続分で借金の返済を請求することができます。
債権者が借金の請求をしたときに「マイナスの財産は相続人〇〇が相続する」合意があるからということはできません。
債権者の請求を拒むことはできません。
4相続分の放棄をした人がいるときの遺産分割協議書の書き方
遺産分割協議書は、相続財産の分け方について相続人全員の合意内容を取りまとめた文書です。
相続財産の分け方について相続人全員の合意があったことが明らかになっていなければなりません。
次の方法をとるのが一般的です。
①具体的に「財産〇〇は相続人〇〇が相続する」などと1枚の紙に取りまとめ、相続人全員が記名のうえ実印で押印します。
実印であることの証明として印鑑証明書を添付します。
②同じ内容の遺産分割協議書を相続人の人数分用意して、各相続人が記名のうえ実印で押印する方法をとることができます。
各相続人が記名押印するので、日付は別々で差し支えありません。
相続分の放棄をした人が「私は何も相続しません」と書いた文書を差し入れても意味はありません。
相続分の放棄をした人は相続人なので、相続財産の分け方について相続人全員の合意が必要だからです。
「私は何も相続しません」では、相続財産の分け方について合意があったとは言えません。
家庭裁判所で遺産分割調停をする場合、相続放棄書(相続分放棄届出書兼相続分放棄書)という書類が使われる場合があります。
相続人が遺産分割調停に関与したくない場合、家庭裁判所に対して提出する書類です。
相続放棄書を家庭裁判所に提出した場合、遺産分割調停から外れることができます。
相続放棄書を提出した相続人の相続分は、他の相続人の相続分を考慮して遺産分割調停が行われます。
5遺産分割協議をしたら相続放棄はできない
家庭裁判所で相続放棄を認めてもらった場合、被相続人のマイナスの財産は引き継ぎません。
相続放棄が認められた場合、はじめから相続人でなかったとみなされるためです。
相続放棄をしたら相続人でなくなるから、プラスの財産もマイナスの財産も受け継ぐことがありません。
遺産分割協議をした場合、債権者は相続人全員に対して法定相続分で債務の支払を請求することができます。
債権者が借金の請求をしたときに「マイナスの財産は相続人〇〇が相続する」合意があるからということはできません。
プラスの財産を引き継がないのだからマイナスの財産も引き継ぎたくないと思うと、相続放棄をしたいと考えるかもしれません。
遺産分割協議をした場合、相続放棄をすることはできません。
遺産分割協議は、相続を単純承認することを前提とした行為だからです。
遺産分割協議は、相続分があることを認識し相続分を処分する行為です。
単純承認した後は、相続放棄をすることはできません。
相続放棄が撤回できないように、単純承認も撤回できません。
遺産分割協議をした後であっても相続放棄が認める大阪高裁の判例がないわけではありません。
遺産分割協議が無効と言えるようなケースで、ごく例外的な事例です。
6相続放棄を司法書士に依頼するメリット
相続放棄はプラスの財産もマイナスの財産も引き継ぎませんという裁判所に対する届出です。
相続人らとのお話合いで、プラスの財産を相続しませんと申し入れをすることではありません。
つまり、家庭裁判所で認められないとマイナスの財産を引き継がなくて済むというメリットは受けられないのです。
相続放棄は取消できないと言われますが、これは撤回できないの意味で使われています。
日常使う言葉が法律上異なる意味で使われると分かりにくくなります。
相続放棄は撤回できませんが、条件を満たせば取消できるし、無効になることもあります。
相続手続は、何度も経験するものではありません。
だれもが不慣れでだれもがスムーズに手続することはできません。
相続手続は法律の知識が不可欠なので、司法書士などの専門家にサポートを受けるといいでしょう。
相続放棄を考えている方はすみやかに司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。
法定相続人以外の人が遺産分割協議
1相続財産の分け方は相続人全員の合意で決める
相続が発生した後、相続財産は相続人全員の共有財産になります。
相続人のひとりが勝手に処分することはできません。
相続人全員で相続財産の分け方について話し合いによる合意をして、分け方を決める必要があります。
相続財産の分け方にについて、相続人全員でする話し合いのことを遺産分割協議と言います。
遺産分割協議は、必ず、全員で合意する必要がありますが、全員が一つの場所に集まる必要はありません。
2合意が必要になる「相続人全員」とは
相続財産の分け方は、原則として、相続人全員の合意で決定します。
遺産分割協議には、法定相続人でない人が参加する場合があります。
遺産分割協議に参加しなければならない人が参加していない場合、遺産分割協議は無効になります。
法定相続人でなくても遺産分割協議に参加しなければならない人全員が「相続人全員」です。
3法定相続人の代理人が遺産分割協議に参加する
相続財産の分け方を決める話し合いに参加するのは、原則として、相続人本人です。
相続人本人が遺産分割協議に参加できない場合があります。
相続人本人が参加できない場合、相続人の代わりの人が参加します。
①親権者
相続人の中に赤ちゃんなどの未成年が含まれている場合があります。
未成年は、物事のメリットデメリットを充分に判断することができません。
未成年者が契約などの法律行為をする場合、親などの親権者が代わりに行います。
例えば、被相続人の子どもが被相続人より先に死亡している場合があります。
死亡した子どもに子どもがいた場合、子どもの子どもは代襲相続人になります。
子どもの子どもが赤ちゃんなどの未成年であることがあります。
死亡した子どもの配偶者は、代襲相続人の親権者です。
被相続人の財産の分け方の話し合いは、親権者が参加します。
②成年後見人
相続人の中に認知症の人が含まれている場合があります。
認知症の人は、物事のメリットデメリットを充分に判断することができません。
認知症の人が契約などの法律行為をする場合、成年後見人が代わりに行います。
被相続人の財産の分け方の話し合いは、成年後見人が参加します。
③後見監督人
認知症の人が相続人になった場合、通常は、成年後見人が代わりに遺産分割協議に参加します。
成年後見人が本人に代わって法律行為をすると、不適切な場合があります。
一方がトクをすると、他方がソンをする関係になる場合です。
本人と成年後見人が相続人になる場合、一方がトクをすると、他方がソンをする関係になります。
このような一方がトクをすると、他方がソンをする関係のことを利益相反と言います。
利益相反する場合、法定代理人なのに成年後見人は本人を代理できません。
利益相反の場合で、かつ、成年後見監督人がいる場合、成年後見監督人が遺産分割協議に参加します。
④特別代理人
成年後見では、成年後見監督人が選任されている場合と選任されていない場合があります。
一方がトクをすると、他方がソンをする関係になる場合、成年後見人は本人を代理できません。
成年後見人が本人を代理できない場合に、本人を代理するのが特別代理人です。
利益相反の場合で、かつ、成年後見監督人がいない場合、特別代理人が遺産分割協議に参加します。
一方がトクをすると、他方がソンをする関係になる場合は、本人と成年後見人だけに限りません。
未成年者と親権者が相続人になる場合、一方がトクをすると、他方がソンをする関係になります。
一方がトクをすると、他方がソンをする関係になる場合、親権者は未成年者を代理できません。
親権者が未成年者を代理できない場合に、特別代理人が未成年者を代理します。
利益相反の場合、特別代理人が遺産分割協議に参加します。
⑤保佐人と補助人
相続人の中に判断力が多少充分でない人が含まれている場合があります。
判断力が多少充分でない人に対して、サポートする人を付けています。
判断力の度合いに応じて、保佐人や補助人を付けてサポートします。
サポートをしてもらう人は、保佐人や補助人の同意を得れば自分で遺産分割協議をすることができます。
保佐人や補助人に遺産分割協議に関する代理権が付与されている場合、保佐人や補助人が遺産分割協議に参加します。
⑥保佐監督人と補助監督人、臨時保佐人と臨時補助人
サポートをしてもらう人と保佐人が相続人になる場合、一方がトクをすると、他方がソンをする関係になります。
サポートをしてもらう人と補助人が相続人になる場合、一方がトクをすると、他方がソンをする関係になります。
利益相反の場合、保佐人と補助人は遺産分割協議に関する同意をすることができません。
利益相反の場合で、かつ、保佐人や補助人に遺産分割協議に関する代理権が付与されている場合、本人を代理することはできません。
利益相反の場合で、かつ、保佐監督人や補助監督人が選任されている場合、保佐監督人や補助監督人が本人を代理します。
利益相反の場合で、かつ、保佐監督人や補助監督人が選任されていない場合、臨時保佐人や臨時補助人を選任してもらいます。
臨時保佐人や臨時補助人が本人を代理します。
被相続人の財産の分け方の話し合いは、保佐監督人や補助監督人、臨時保佐人や臨時補助人が参加します。
⑦不在者財産管理人
相続人の中に行方不明の人が含まれている場合があります。
行方不明の人は居場所が分からないから、遺産分割協議に参加することができません。
行方不明の人が契約などの法律行為をする場合、不在者財産管理人が代わりに行います。
不在者財産管理人は、本来、行方不明の人の財産管理をする人です。
相続財産の話し合いをするのは、財産管理の範囲を越す行為です。
不在者財産管理人が行方不明の人に代わって遺産分割協議をする場合、家庭裁判所から特別に許可をもらう必要があります。
被相続人の財産の分け方の話し合いは、不在者財産管理人が参加します。
⑧破産管財人
相続人の中に自己破産の申立てをした人が含まれている場合があります。
自己破産とは、破産者のプラスの財産を債権者に公平に分配して、借金の支払を免除してもらう手続のことです。
破産手続き開始決定がされた時点で、破産者のプラスの財産は債権者に公平に分配されます。
自己破産では、自己破産の申立ての後に破産手続き開始決定がされます。
相続が発生した後、破産手続き開始決定がされる場合があります。
相続が発生した場合、被相続人の財産は相続人全員の共有財産になります。
債権者に公平に分配される財産は、破産手続き開始決定がされた時点の破産者の固有の財産と相続人全員で共有している相続財産です。
相続人全員で共有している相続財産の共有持分は、債権者に公平に分配される財産です。
自己破産した相続人が相続人同士で話し合いをして、処分することは許されません。
相続財産の共有持分は、債権者に公平に分配される財産だからです。
破産管財人は、本来、破産財団の財産管理をする人です。
相続財産の話し合いをするのは、破産財団の財産管理の範囲を越す行為です。
破産管財人が遺産分割協議をするためには、裁判所から特別に許可をもらう必要があります。
被相続人の財産の分け方の話し合いは、破産管財人が参加します。
⑨任意代理人
相続財産の分け方を決める話し合いに参加するのは、原則として、相続人本人です。
他の相続人と話し合いができない場合、弁護士などの専門家に委任することができます。
弁護士は依頼人の利益最大化のために働く人なので、他の相続人は強硬な態度になることが多いです。
相続手続が終わった後には、絶縁することも少なくありません。
もともと絶縁しているのであれば、弁護士などの専門家に委任することが有効な場合もあるでしょう。
被相続人の財産の分け方の話し合いは、弁護士などの専門家が参加します。
4包括受遺者が遺産分割協議に参加する
遺贈とは、被相続人が遺言によって、法定相続人や法定相続人以外の人に、財産を譲ってあげることです。
遺贈で財産を譲ってあげる人のことを遺贈者、譲ってもらう人を受遺者と言います。
相続では、法定相続人だけに譲ってあげることができます。
遺贈では、法定相続人に譲ってあげることもできるし、相続人以外の人に譲ってあげることができます。
遺贈には、2種類あります。
特定遺贈と包括遺贈です。
特定遺贈とは、遺言書に、「財産〇〇〇〇を遺贈する」と財産を具体的に書いてある場合です。
包括遺贈とは、遺言書に、「財産すべてを包括遺贈する」「財産の2分の1を包括遺贈する」と割合だけ書いて財産を具体的に書いてない場合です。
包括遺贈を受けた場合、財産の分け方について話し合いによる合意が必要です。
包括遺贈では、財産を譲ってもらう人は相続人と同一の権利義務が与えられます。
被相続人の財産の分け方の話し合いは、包括受遺者が参加します。
5相続分の譲受人が遺産分割協議に参加する
相続人全員による話し合いによる合意がされる前であれば、相続人が自分の法定相続分を譲渡することができます。
相続分を譲渡するのは、他の相続人のうちだれかでも構いませんし、それ以外の第三者でも構いません。
譲渡するのは、有償でも無償でも構いません。
自分の法定相続分の全部を譲渡することができるし、自分の法定相続分の一部を譲渡することができます。
相続分を譲渡すると、相続分を譲渡した相続人は相続権を失います。
相続分の譲渡を受けた人は、他の相続人以外の第三者であっても、相続分を譲った人に代わって相続人全員の話し合いに参加する必要があります。
被相続人の財産の分け方の話し合いは、相続分の譲受人が参加します。
6特別寄与者が遺産分割協議に参加する
寄与分とは、被相続人の財産の維持や増加について特別な貢献をした人がいる場合、特別な貢献をした人に対して、相続分以上の財産を受け継いでもらう制度です。
特別な貢献をした人が相続人の場合、寄与分を主張することができます。
特別な貢献をした人が相続人でないけど親族である場合、特別の寄与分を請求することができます。
特別の寄与分を請求する人は、遺産分割協議で特別の寄与に応じた金銭を請求します。
被相続人の財産の分け方の話し合いに、特別寄与者が参加します。
7遺産分割協議書作成を司法書士に依頼するメリット
遺産分割協議書は遺産の分け方について、参加すべき人全員による合意を取りまとめた文書です。
前提として、話し合いによる合意ができていなければ、文書にできません。
銀行などの金融機関から遺産分割協議書を提出するように言われて、とにかく書きたいという方もいます。
遺産分割協議書があるとトラブル防止になりますが、参加すべき人全員の合意があり、合意を取りまとめているからです。
有効な合意を文書にしているから、後々のトラブルを防止できるのです。
参加すべき人全員が有効な合意をしていない場合、かえってトラブルになってしまいます。
参加すべき人は簡単そうに見えて、間違いやすいものです。
参加すべき人を間違えると、せっかくの合意が無効になりかねません。
司法書士はこのような複雑な相続においても対応しています。
適切な遺産分割協議書を作り、家族のトラブルを避けたい方は、司法書士などの専門家にサポートを依頼することをおすすめします。
« Older Entries