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相続放棄の期間3か月の起算点
1相続放棄ができる期間は3か月
①相続放棄の期間3か月のスタートは知ってから
相続放棄は家庭裁判所に申立てをする必要があります。
この申立ての期限は、原則として、相続があったことを知ってから3か月以内です。
相続があったことを知ってから3か月以内の期間のことを熟慮期間と言います。
「相続があったことを知ってから」とは、被相続人が死亡して相続が発生し、その人が相続人であることを知って、かつ、相続財産を相続することを知ってから、と考えられています。
被相続人が死亡してから3か月以内ではなく、相続財産を相続することを知ってから3か月以内です。
3か月以内に戸籍や住民票などの必要書類を揃えて管轄の家庭裁判所に提出しなければなりません。
②相続放棄ができる期間は3か月を知らなかったからは認められない
相続放棄の申立ては、相続があったことを知ってから3か月以内にしなければなりません。
相続放棄ができる期間は3か月を知らないまま3か月経過した場合、相続放棄は認められません。
法律の定めを知らなくても、3か月過ぎてしまえば、単純承認になります。
単純承認になったら、相続放棄は認められません。
法律を勉強したことがないからなども、勉強していないから3か月以内という定めを知らなかったといえます。
3か月過ぎてしまえば、単純承認になります。
単純承認になったら、相続放棄は認められません。
2「相続があったことを知ってから」の具体例
①被相続人が死亡したことを知ってから3か月
いろいろな家族関係の中で、家族と音信不通になっているケースはたくさんあります。
被相続人の家族が知らない相続人がいることもあります。
被相続人が死亡した後、家族が知らない相続人に対してすぐに連絡がされることはないでしょう。
被相続人と絶縁していても、相続人になるかどうかとは関係ありません。
絶縁していたとか、絶交していたとかいう事情は、法律の定めとは無関係です。
たとえ何十年も音信不通でも親子は親子です。
何十年も会っていなくても兄弟姉妹は兄弟姉妹です。
被相続人が死亡してから長期間経過した後に、相続人になったことを知ることになります。
絶縁していた相続人が相続放棄をする場合、「知ってから」とは被相続人が死亡したことを知ってからです。
被相続人が死亡したことを知らない場合、相続放棄をするか単純承認をするか判断できないからです。
②相続人になったことを知ってから3か月
だれが相続人になるかについては、法律で決められています。
相続が発生した場合、被相続人の配偶者や子どもは自分が相続人になることが分かります。
被相続人の子どもが相続人になる場合、親などの直系尊属は相続人になりません。
被相続人の子ども全員が相続放棄をした場合、次順位の人が相続人になります。
家庭裁判所は相続放棄を認めた場合、相続放棄の申立てをした人にだけ通知します。
家庭裁判所は自主的に次順位相続人に先順位の相続人が相続放棄をしたことを通知しません。
相続放棄を認めてもらった人が次順位相続人に相続放棄が認められたことを通知する義務はありません。
相続放棄を認めてもらった人と親しい相続人であれば、自主的に相続放棄が認められたことを連絡してくれるかもしれません。
被相続人の子ども全員の相続放棄が認められてから長期間経過した後に、相続人になったことを知ることがあります。
自分が相続人であることを知らなかった人が相続放棄をする場合、「知ってから」とは自分が相続人になったことを知ってからです。
③未成年者が相続放棄をするときは親権者が知ってから3か月
幼い子どもや赤ちゃんが相続人になる場合があります。
幼い子どもや赤ちゃんは、財産の価値や相続放棄の意味が分からないでしょう。
物事のメリットデメリットを充分に判断できないから、未成年者はひとりで契約などの法律行為ができません。
通常、幼い子どもや赤ちゃんが契約をするなどの法律行為をする場合は、親権者などの法定代理人が代わりに契約します。
原則として、未成年者が相続放棄をする場合、親権者などの法定代理人が代わりに手続します。
未成年者はひとりで相続放棄をするか単純承認をするか判断できません。
未成年者が相続があったことを知っても、意味はありません。
未成年者が相続放棄をする場合、「知ってから」とは親権者などの法定代理人が知ってからです。
親権者などの法定代理人が相続放棄をするか単純承認をするか判断するからです。
④認知症の人が相続放棄をするときは成年後見人が知ってから3か月
相続人に認知症を発症している人がいる場合があります。
認知症になると、記憶があいまいになったり物事のメリットデメリットを充分に判断できなくなります。
物事のメリットデメリットを充分に判断できない状態では、財産の価値や相続放棄の意味が分からないでしょう。
物事のメリットデメリットを充分に判断できないから、認知症の人は契約などの法律行為ができません。
認知症の人が契約をするなどの法律行為をする場合は、成年後見人が代わりに契約します。
認知症の人が相続があったことを知っても、意味はありません。
認知症の人が相続放棄をする場合、「知ってから」とは成年後見人が知ってからです。
認知症の人に成年後見人がついていない場合、家庭裁判所に申立てが必要になります。
事案の複雑さなどで期間は変わりますが、成年後見開始の申立てをしてから成年後見人が選任されるまでは、おおむね3~4か月ほどです。
認知症の人が相続人になることを成年後見人が知ってから3か月以内に手続すれば問題になりません。
成年後見人に就任した人が、認知症の人のために相続があったことを知っていて、すでに3か月以上経過していることがあります。
相続放棄ができる期間は3か月の起算点は、成年後見人として就任してからです。
成年後見人として就任してから3か月以内であれば、相続放棄ができます。
成年後見人に就任するまでは、認知症の人を代理して相続放棄の手続ができないからです。
⑤莫大な借金があることを知ってから3か月
相続人であることを知ってから、3か月以上経過した後になって借金の存在を知ったという場合があります。
典型的には、被相続人が連帯保証人になっていた場合です。
連帯保証人は、お金を借りた人が借りたお金を返せなくなったときに肩代わりをする人のことです。
お金を借りた人が順調にお金を返している間は、何も連絡がありません。
お金を借りた人がお金を返せなくなったら、肩代わりを請求してきます。
お金を借りた人がいつお金を返せなくなるかは分かりません。
被相続人が死亡してから何年も後になって、肩代わりを請求されることがあります。
被相続人と別居していた相続人は、被相続人の経済状況を詳しく知っていることは少ないでしょう。
被相続人と疎遠な相続人なら、まったく知らないでしょう。
相続財産というとプラスの財産だけ注目しがちですが、マイナスの財産も相続財産になります。
マイナスの財産だけでなく、連帯保証人の地位も相続されます。
「相続があったことを知ってから」とは、被相続人が死亡して相続が発生し、その人が相続人であることを知って、かつ、相続財産を相続することを知ってから、です。
莫大な借金がある場合、「知ってから」とは莫大な借金があることを知ってからです。
3単純承認をすると知ってから3か月以内の相続放棄でも無効になる
相続放棄をする前に単純承認をしていた場合、相続放棄はできません。
相続放棄が撤回できないように、単純承認も撤回できないからです。
相続財産を処分したり、利用した場合、単純承認をしたとみなされます。
相続財産を処分したり、利用した場合は相続放棄ができなくなります。
家庭裁判所は事情が分からないから相続放棄を認めてしまうケースがありますが、後から無効になります。
4相続放棄の期間3か月は延長してもらうことができる
①相続の承認または放棄の期間の伸長の申立て
相続放棄は家庭裁判所に申立てをする必要があります。
この申立ての期限は、原則として、相続があったことを知ってから3か月以内です。
被相続人の財産状況を詳しく知らない場合、3か月はあっという間です。
相続放棄をするべきか単純承認をするべきか判断するために時間がかかる場合があります。
相続放棄をするべきか単純承認をするべきか判断するための資料を集めるため、相続放棄の期間3か月を延長してもらうことができます。
相続放棄の期間3か月を延長してもらうことを相続の承認または放棄の期間の伸長の申立てと言います。
相続の承認または放棄の期間の伸長の申立てを受け付けた場合、家庭裁判所が期間延長を認めるか判断します。
相続の承認または放棄の期間の伸長の申立てには、期間内に相続放棄をすべきか単純承認すべきが判断ができない具体的理由や延長が必要な期間を記載します。
判断ができない具体的理由を根拠づける資料を添付して、説得力を持たせるといいでしょう。
期間延長の必要性や理由が妥当なものであると家庭裁判所に納得してもらうことが重要です。
家庭裁判所で期間延長が認められた場合、原則として3か月延長されます。
②申立人
相続の承認または放棄の期間の伸長の申立ての申立人は、次のとおりです。
(1)利害関係人
(2)検察官
利害関係人には、相続人も含まれます。
③申立先
相続の承認または放棄の期間の伸長の申立書は、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です。
家庭裁判所の管轄は、裁判所のホームページで調べることができます。
④申立費用
相続の承認または放棄の期間の伸長の申立てには手数料がかかります。
手数料は、申立書に収入印紙を貼り付けて納入します。
収入印紙は貼り付けるだけで、消印は裁判所の人がします。
収入印紙は、郵便局やコンビニエンスストアで購入することができます。
手数料の他に、家庭裁判所で使う連絡用の郵便切手を納入します。
必要な郵便切手の金額や枚数は、家庭裁判所によって異なります。
⑤必要書類
相続の承認または放棄の期間の伸長の申立書の必要書類は、次のとおりです。
(1)被相続人の住民票除票又は戸籍附票
(2)利害関係人からの申立ての場合,利害関係を証する資料
(3)伸長を求める相続人の戸籍謄本
(4)被相続人の死亡の記載のある戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
(5)相続人であることを証明する戸籍謄本
5相続放棄を司法書士に依頼するメリット
実は、相続放棄はその相続でチャンスは1回限りです。
家庭裁判所に認められない場合、即時抗告という手続を取ることはできます。
高等裁判所の手続で、2週間以内に申立てが必要になります。
家庭裁判所で認めてもらえなかった場合、即時抗告で相続放棄を認めてもらえるのは、ごく例外的な場合に限られます。
一挙にハードルが上がると言ってよいでしょう。
相続が発生してから3か月以内に申立てができなかったのは止むを得なかったと家庭裁判所に納得してもらって、はじめて、家庭裁判所は相続放棄を認めてくれます。
通常は家庭裁判所に対して、上申書や事情説明書という書類を添えて、説得することになります。
家庭裁判所が知りたいことを無視した作文やダラダラとした作文では認めてもらうことは難しいでしょう。
司法書士であれば、家庭裁判所に認めてもらえるポイントを承知しています。
認めてもらえやすい書類を作成することができます。
通常の相続放棄と同様に、戸籍謄本や住民票が必要になります。
仕事や家事、通院などで忙しい人には平日の昼間に役所にお出かけになって準備するのは負担が大きいものです。
戸籍謄本や住民票は郵便による取り寄せもできます。
書類の不備などによる問い合わせは、市区町村役場の業務時間中の対応が必要になります。
やはり負担は軽いとは言えません。
このような戸籍謄本や住民票の取り寄せも、司法書士は代行します。
3か月の期限が差し迫っている方や期限が過ぎてしまっている方は、すみやかに司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。
遺言書の検認手続をしても相続放棄
1遺言書は家庭裁判所で開封
①遺言書を見つけたら家庭裁判所へ届出
相続が発生した後、相続人はたくさんの相続手続をすることになります。
被相続人の遺品や重要書類を整理をしているときに、遺言書を見つけることがあります。
遺言書を書かれた封筒を見つけた場合、戸惑うかもしれません。
被相続人が生前に遺言書を作成したことを話していたとしても、遺言書の内容が気になるでしょう。
遺言書は、多くの場合、財産の分け方など大切で重要なことが書いてあります。
驚きと不安から、後先考えずに遺言書を開封してしまいたくなります。
自宅などで遺言書を見つけた場合、勝手に開封してはいけません。
遺言書を見つけた人や遺言書を預かっていた人は、家庭裁判所に届出ることになっています。
遺言書を家庭裁判所にする届出を遺言書検認の申立てと言います。
②家庭裁判所の検認は遺言書の改ざん・変造防止のため
遺言書は、勝手に開封してはいけません。
家庭裁判所に届出て、相続人立会いのもと開封してもらいます。
遺言書の検認は、遺言書の内容を確認する手続です。
家庭裁判所は遺言書の内容や状態を確認して、検認調書に取りまとめます。
遺言書の検認をすると、遺言書の改ざんや変造を防ぐことができます。
検認調書と遺言書を照らし合わせると、改ざんや変造が明らかになるからです。
遺言書の検認は、遺言書の改ざんや変造を防ぐための手続です。
③検認で遺言書の有効無効は判断しない
遺言書の検認は、遺言書の改ざんや変造を防ぐための手続です。
家庭裁判所の検認で、遺言書の有効無効の判断をしません。
遺言書の検認は、遺言書の有効無効の判断をする手続ではないからです。
遺言書の検認が済んでも、無効の遺言書は無効です。
遺言書の検認がされても、有効な遺言書になるわけではありません。
自宅などで遺言書を見つけた場合、まず家庭裁判所に遺言書検認の申立てをします。
遺言書が有効であるか無効であるか判断するのは、後の話です。
④検認期日は欠席していい
家庭裁判所に遺言書検認の申立てがあった場合、家庭裁判所は相続人全員を家庭裁判所に呼び出します。
遺言書検認の申立先は、遺言者の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です。
相続人の中には、遺言者の住所地から遠方に住んでいることがあるでしょう。
遺言者の最後の住所地を管轄する家庭裁判所から呼出を受けても、仕事などで忙しいことがあるでしょう。
遺言書検認の申立人は、必ず出席しなければなりません。
遺言書検認の申立人は、遺言書を家庭裁判所に持って行く必要があるからです。
確認をする遺言書がないと、検認をすることはできません。
遺言書検認の申立人以外の人は、欠席しても差し支えありません。
遺言書の検認は、遺言書の内容を確認する手続です。
検認期日に相続人全員を呼び出すのは、検認に立会いをしてもらうためです。
検認期日に立会いをしなくても、不利益はありません。
⑤公正証書遺言と法務局保管の自筆証書遺言は検認不要
公正証書遺言とは、遺言内容を公証人に取りまとめてもらって作る遺言書です。
遺言者が公証人に遺言内容を伝えて、証人2人に確認してもらって作ります。
公正証書遺言は作成した後、遺言書原本は公証役場で厳重保管されます。
公正証書遺言は、改ざんや変造があり得ません。
遺言書の検認は、遺言書の改ざんや変造を防ぐための手続です。
相続が発生した後に家庭裁判所で手続をして、改ざんや変造を防止する必要がありません。
公正証書遺言は、家庭裁判所の検認手続は不要です。
自筆証書遺言は、遺言者が自分で書いて作った遺言書です。
専門家の手を借りることなく手軽に作ることができます。
世の中の大半の遺言書は、自筆証書遺言です。
自筆証書遺言を作成した後、法務局に提出して保管してもらうことができます。
法務局保管の自筆証書遺言は、法務局で厳重保管されます。
法務局保管の自筆証書遺言は、改ざんや変造があり得ません。
遺言書の検認は、遺言書の改ざんや変造を防ぐための手続です。
相続が発生した後に家庭裁判所で手続をして、改ざんや変造を防止する必要がありません。
法務局保管の自筆証書遺言は、家庭裁判所の検認手続は不要です。
2相続財産を処分利用すると相続放棄が無効になる
①相続放棄は家庭裁判所の手続
相続が発生したら、原則として、被相続人の財産は相続人が受け継ぎます。
相続財産というとプラスの財産だけイメージしがちですが、マイナスの財産も含まれます。
相続が発生したら、相続人は相続を単純承認するか相続放棄をするか選択することができます。
相続放棄を希望する場合、家庭裁判所に対して相続放棄を希望する申立てをします。
相続放棄は、家庭裁判所の手続だからです。
家庭裁判所で相続放棄が認められた場合、相続人でなくなります。
相続が発生したら、被相続人の財産は相続人全員の共有財産になります。
相続財産は、相続人全員の合意で分け方を決定します。
相続人全員の合意ができれば、どのような分け方でも構いません。
一部の相続人が財産を一切受け取らない合意をすることがあります。
財産を受け取らない相続人も含めて相続人全員が合意できれば、有効な合意です。
財産を一切受け取らない合意をした場合、相続放棄をしたと表現することがあります。
相続放棄を表現しても、相続放棄ではありません。
相続放棄の効果はありません。
家庭裁判所で相続放棄が認められたわけではないからです。
②相続財産を処分利用すると単純承認と見なされる
相続が発生したら、相続人は相続を単純承認するか相続放棄をするか選択することができます。
相続放棄を希望する場合、家庭裁判所に対して相続放棄を希望する申立てをします。
家庭裁判所に相続放棄の手続をする前に単純承認をした場合、相続放棄をすることはできません。
相続放棄を撤回することができないように、単純承認も撤回することができないからです。
法律で定められた一定の条件にあてはまるときは、単純承認したとみなされます。
単純承認とみなされたら、相続放棄はできません。
被相続人の財産を処分したり利用したりした場合、単純承認と見なされます。
被相続人が払うべきお金を相続財産から支払う場合、単純承認とみなされます。
単純承認を見なされた場合、相続放棄はできません。
相続放棄は、家庭裁判所の書類審査だけで認められます。
相続放棄の要件をきちんと満たしているか、家庭裁判所が独自で調査することはありません。
相続放棄の要件を満たしていないのに、相続放棄の書類がきちんと揃っている場合、家庭裁判所は事情が分かりません。
家庭裁判所は、相続放棄を認めてしまいます。
本当は要件を満たしていないから相続放棄は無効のはずです。
家庭裁判所は事情が分からないから、相続放棄を認めてしまうケースがあります。
相続財産を処分利用すると、単純承認と見なされます。
3遺言書の検認手続をしても相続放棄
①遺言書があっても相続放棄ができる
家庭裁判所で相続放棄をした場合、被相続人の財産は一切受け取りません。
遺言書は、財産の分け方が書いてあるでしょう。
遺言書の内容は、遺言者が死亡したときに効力が発生します。
遺言書に「財産○○は相続人○○に相続させる」とあった場合、相続が発生したときに財産○○は相続人○○のものになります。
遺言書があるのに相続放棄をすることができるのか不安になるかもしれません。
公正証書遺言であっても自筆証書遺言であっても、相続放棄をすることができます。
遺言書があっても遺言書がなくても、相続放棄をすることができます。
遺言書に何と書いてあっても何も書いてなくても、相続放棄をすることができます。
相続放棄をする権利は、相続人の固有の権利です。
遺言書で相続放棄をする権利が奪われることはありません。
遺言書があっても、相続放棄をすることができます。
②遺言書検認の申立てをしても相続放棄ができる
遺言書を見つけた人や遺言書を預かっていた人は、家庭裁判所に届出ることになっています。
自宅などで遺言書を見つけた場合、まず家庭裁判所に遺言書検認の申立てをします。
遺言書を見つけた人や遺言書を預かっていた人は、相続人であることも相続人以外の人であることもあるでしょう。
遺言書の検認は、遺言書の改ざんや変造を防ぐための手続です。
相続財産の処分や利用とは、無関係です。
遺言書検認の申立てをしても、単純承認と見なされることはありません。
遺言書検認の申立てをしても、相続放棄をすることができます。
③検認期日に出席しても相続放棄ができる
遺言書検認の申立てを受け付けた場合、家庭裁判所は相続人全員を家庭裁判所に呼び出します。
遺言書検認の申立人は、検認期日に出席しなければなりません。
遺言書を持って行く必要があるからです。
遺言書検認の申立人以外の人は、家庭裁判所の呼出に応じても応じなくても構いません。
検認期日に相続人全員を呼び出すのは、検認に立会いをしてもらうためです。
遺言書の検認は遺言書の改ざんや変造を防ぐための手続だから、立会いをしてもらって確認をしてもらいます。
検認期日に出席しても、相続財産の処分や利用とは無関係です。
検認期日に出席しても、単純承認と見なされることはありません。
検認期日に出席しても、相続放棄をすることができます。
④検認期日に欠席しても相続できる
遺言書検認の申立人以外の人は、家庭裁判所の呼出に応じても応じなくても構いません。
遺言書検認の申立人以外の人は、単なる立会人です。
検認期日に欠席しても出席しても、相続放棄をすることができます。
検認期日に欠席しても出席しても、財産を相続することができます。
遺言書検認の申立先は、遺言者の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です。
相続人が被相続人の住所地から遠方に住んでいることがあります。
近くに住んでいても、仕事などで家庭裁判所に出向くことが難しいことがあるでしょう。
検認期日に欠席しても、相続人に不利益はありません。
4相続放棄を司法書士に依頼するメリット
実は、相続放棄はその相続でチャンスは1回限りです。
家庭裁判所に認められない場合、即時抗告という手続を取ることができます。
即時抗告は高等裁判所の手続で、2週間以内に申立てが必要になります。
家庭裁判所で認めてもらえなかった場合、即時抗告で相続放棄を認めてもらえるのは、ごく例外的な場合に限られます。
一挙にハードルが上がると言ってよいでしょう。
相続放棄は、撤回ができません。
相続放棄をする前に、慎重に判断する必要があります。
せっかく相続放棄が認められても、相続財産を処分したら無効になりかねません。
このような行為をしてしまわないように、あらかじめ知識を付けておく必要があります。
相続放棄を自分で手続したい人の中には、相続放棄が無効になることまで考えていない場合が多いです。
司法書士は、相続放棄が無効にならないようにサポートしています。
せっかく手続しても、相続放棄が無効になったら意味がありません。
相続放棄を考えている方は、司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。
相続放棄したのに準確定申告の通知
1準確定申告は4か月以内
準確定申告とは、所得税の申告のひとつです。
所得税は毎年1月1日から12月31日までの所得を計算して、翌年3月15日までに申告と納税をします。
この申告を、確定申告と言います。
1年の途中で死亡した場合、1月1日から死亡した日までの所得を計算して、申告と納税をします。
通常の確定申告と死亡した人の申告を区別するため、準確定申告と言います。
準確定申告は、死亡した被相続人本人に代わって、相続人と包括受遺者が申告と納税をします。
申告と納税をするのは、相続が発生したことを知ってから4か月以内です。
2相続放棄したら相続人でなくなる
相続が発生したら、原則として、被相続人のプラスの財産もマイナスの財産も相続人が受け継ぎます。
被相続人のプラスの財産もマイナスの財産も受け継がないことを相続の放棄といいます。
相続放棄をすると、プラスの財産を引き継がなくなりますが、マイナスの財産も引き継ぐことがなくなります。
家庭裁判所に対して、必要な書類をを添えて相続放棄をしたい旨の申立てをします。
家庭裁判所で相続放棄をしたい旨の申立てが認められた場合、はじめから相続人ではなくなります。
相続放棄はプラスの財産もマイナスの財産も引き継ぎませんという裁判所に対する申立てです。
相続人間の話合いで、一部の相続人がプラスの財産を相続しませんと申し入れをすることがあります。
プラスの財産を相続しませんと申し入れをしても、相続放棄ではありません。
家庭裁判所で認められていない場合、マイナスの財産を引き継がなくて済むというメリットは受けられません。
家庭裁判所で相続放棄が認められた場合、相続人でなくなります。
3相続放棄したら準確定申告をする義務はない
準確定申告は、死亡した被相続人本人に代わって、相続人と包括受遺者が申告と納税をします。
相続人でない人や包括受遺者でない人は、準確定申告をする義務はありません。
家庭裁判所に対して相続放棄をしたい旨の申立てをして認められた場合、はじめから相続人ではなくなります。
相続人ではないから、準確定申告をする義務はありません。
それでも税務署から準確定申告をするように通知が来る場合があります。
家庭裁判所が相続放棄を認めた場合、役所や税務署などへ連絡をしません。
税務署は、相続放棄をして相続人でなくなったことを知りません。
相続人でなくなったことを知らないから、相続人と誤解して準確定申告をしてもらおうと考えています。
税務署から通知が来た場合、あわてて準確定申告をする必要はありません。
相続放棄をしたから相続人でなくなったことを連絡するだけでいいでしょう。
4単純承認をしたら相続放棄が無効になる
法律で定められた一定の条件にあてはまるときは、単純承認したとみなされます。
単純承認とは、被相続人のプラスの財産もマイナスの財産も受け継ぐものです。
単純承認とみなされたら、相続放棄はできません。
家庭裁判所に対して相続放棄の申立てをした場合、提出された書類を見て審査をします。
家庭裁判所は、単純承認をした事情が分からずに相続放棄を認める決定をしてしまうかもしれません。
相続放棄はできないのに、相続放棄が認められても無効です。
単純承認したとみなされる行為は、法律で定められています。
相続財産の名義変更をした、相続財産である銀行の預貯金を引き出して使ってしまった場合が典型的です。
単に、引き出しただけであれば、処分とは言えないことが多いでしょう。
引き出したうえ、自分の口座に送金して保管すると、「処分した」と評価される可能性が高くなります。
銀行の預貯金を引き出してお葬式の支払にあてた場合、状況によっては、処分したと判断されることもあります。
被相続人が払い過ぎた税金などの還付金の支払を受けた場合、「処分した」と判断されます。
5準確定申告をしたら単純承認になる
準確定申告は、死亡した被相続人本人に代わって、相続人と包括受遺者が申告と納税をします。
相続人でない人や包括受遺者でない人は、準確定申告をする義務はありません。
準確定申告をした場合、単純承認したとみなされます。
準確定申告は、相続人がするものだからです。
自分は相続人であると認めたから、準確定申告をしたと判断されることになります。
家庭裁判所に相続放棄の手続をして相続放棄が認められたのに、準確定申告をした場合、相続放棄は無効になります。
相続を単純承認した場合、撤回することはできません。
相続を単純承認した後、事情を知らない家庭裁判所が相続放棄を認めた場合、相続放棄は無効です。
相続人ではない場合、準確定申告をする義務はありません。
税務署から準確定申告をするように通知が来た場合であっても、あわてて準確定申告をする必要はありません。
家庭裁判所が相続放棄を認めたことを税務署は知らないことが通常です。
家庭裁判所が相続放棄を認めた場合、役所や税務署などへ連絡をしません。
税務署は何も知らないから、相続人であると誤解しているだけです。
準確定申告をした結果、被相続人が納め過ぎた税金が還付されることがあります。
被相続人が納め過ぎた税金を還付してもらう権利は、被相続人の財産です。
相続が発生した後は、相続財産になります。
相続放棄をした人は相続しないのだから、相続財産を処分することはできません。
被相続人が納め過ぎた税金を還付してもらった場合、相続財産を処分したと言えます。
相続財産を処分した場合、相続の単純承認になります。
6相続放棄をしたら相続人と包括受遺者が準確定申告をする
家庭裁判所で相続放棄をしたい旨の申立てが認められた場合、はじめから相続人ではなくなります。
相続する他の相続人と包括受遺者が準確定申告をします。
同順位の相続人全員が相続放棄をした場合、次順位の相続人に相続権が移ります。
例えば、被相続人の子ども全員が相続放棄をした場合、親などの直系尊属が相続人になります。
親などの直系尊属が相続人になる場合、親などの直系尊属が相続人として準確定申告をします。
被相続人に莫大な借金があった場合、相続人全員が相続放棄をすることがあります。
相続人全員が相続放棄をした場合、相続財産は相続財産法人になります。
相続人全員が相続放棄をした場合、相続財産清算人が準確定申告をします。
相続人全員が相続放棄をしたからといっても、あわてて準確定申告をする必要はありません。
7相続放棄を司法書士に依頼するメリット
相続が発生すると、家族はたくさんの手続や用事で忙しくなります。
葬儀や親戚知人ヘの連絡から始まり、相続手続に追われてゆっくり悲しむ暇もありません。
通常の仕事や家事に加え、たくさんの用事に追われます。
3か月や4か月はあっという間に過ぎてしまいます。
実は、相続放棄はその相続でチャンスは1回限りです。
家庭裁判所に認められない場合、即時抗告という手続を取ることはできます。
高等裁判所の手続で、2週間以内に申立てが必要になります。
家庭裁判所で認めてもらえなかった場合、即時抗告で相続放棄を認めてもらえるのは、ごく例外的な場合に限られます。
一挙に、ハードルが上がると言ってよいでしょう。
相続が発生してから3か月以内に届出ができなかったのは止むを得なかったと家庭裁判所に納得してもらって、はじめて、家庭裁判所は相続放棄を認めてくれます。
通常は家庭裁判所に対して、上申書や事情説明書という書類を添えて、説得することになります。家庭裁判所が知りたいことを無視した作文やダラダラとした作文では認めてもらうことは難しいでしょう。
3か月以内の期間制限を知らなかったからなどの理由を言う方は多いです。
このような理由を書いても、家庭裁判所は相続放棄を認めてくれません。
丁寧に事情を聞いていると、被相続人の死亡を知ったのはごく最近であるなどの理由が出てきます。
3か月を経過した相続放棄は、詳細に事情を聞き取って家庭裁判所が認めてくれる理由がないか検討することが重要です。
相続放棄を考えている方は、司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。
相続放棄をしたら遺留分侵害額請求ができない
1遺留分は相続人の最低限の権利
被相続人は、原則として、自分の財産をだれに受け継がせるか自由に決めることができます。
とはいえ、財産は被相続人が1人で築いたものではありません。
家族の協力があって築くことができた財産のはずです。
被相続人の名義になっているからといって、まったく無制約の自由にすることはできません。
今まで協力してきた家族に酷な結果となることがあるからです。
被相続人に近い関係の相続人には、相続財産に対して最低限の権利が認められています。
相続財産に対して、認められる最低限の権利のことを遺留分と言います。
遺言書などで遺留分を侵害された相続人は、遺留分侵害額請求をすることができます。
2相続放棄と遺留分の放棄
相続が発生したら、原則として、被相続人のプラスの財産もマイナスの財産も相続人が受け継ぎます。
被相続人のプラスの財産もマイナスの財産も受け継がないことを相続の放棄といいます。
遺留分の放棄は、相続財産に対して認められる最低限の権利を相続人自身の意思で放棄することです。
遺留分の放棄は、最低限の権利を放棄するだけです。
遺留分の放棄をしても、相続人です。
遺留分の放棄をしても、被相続人の財産を相続することができます。
遺留分の放棄は、相続放棄ではないからです。
被相続人のプラスの財産もマイナスの財産も、相続人が相続します。
3相続放棄をしたら遺留分侵害額請求ができない
相続放棄をした場合、被相続人のプラスの財産もマイナスの財産も受け継ぎません。
相続放棄をしたら、はじめから相続人でなかったものと扱われるからです。
相続放棄をするとは、相続人としての権利と義務を放棄するという意味です。
遺留分は、相続人に認められた相続財産に対する最低限の権利です。
遺留分は相続財産に対する最低限の権利だから、相続放棄をしても財産を受け取れると思うかもしれません。
相続放棄をしたら、相続人でなくなります。
遺留分は、相続人に認められた権利です。
相続人でなくなるから、相続人の権利も当然になくなります。
相続放棄をしたら、遺留分もなくなります。
相続放棄をした場合、遺留分侵害額請求をすることはできません。
4家庭裁判所で手続をしていないと相続放棄の効果はない
相続放棄は、家庭裁判所に対してする手続です。
相続発生を知ってから3か月以内に、相続放棄を希望する旨の申立てをします。
家庭裁判所で手続をしていない場合、相続放棄ではありません。
相続人同士の話し合いで、プラスの財産を受け取りませんと申し入れをしていることがあります。
プラスの財産を受け取りませんと申し入れをすることを、相続放棄と表現している場合があります。
ときには「相続放棄をします」と念書を書いて相続人になる予定の人に渡しているかもしれません。
「相続放棄をします」と念書を書いても、相続放棄の効力はありません。
家庭裁判所に手続をしていない場合、相続放棄ではないからです。
相続放棄の効力はないから、相続人のままです。
相続財産の分け方は、相続人全員の話し合いによる合意で決定します。
「相続放棄をします」と念書を書いた相続人を含まない遺産分割協議に意味はありません。
「相続放棄をします」と念書を書いても、家庭裁判所の関与はないでしょう。
家庭裁判所の関与なく、相続放棄をすることはできません。
「相続放棄をします」と念書を書いただけなら、相続人のままだからです。
被相続人が「相続放棄をしろ」と相続人に命令していることがあります。
このような場合、遺言書を見ると他の相続人に財産が配分されていることが多いです。
「相続放棄をします」と約束しても、相続放棄の効力はありません。
被相続人が「相続放棄をしろ」と相続人に命令しても、相続放棄の効力はありません。
家庭裁判所に手続をしていない場合、相続放棄ではないからです。
「相続放棄をします」と約束した相続人は、相続人であることに変わりはありません。
兄弟姉妹以外の相続人は、遺留分権利者です。
「相続放棄をします」と約束しても兄弟姉妹以外の相続人は、遺留分権利者です。
遺言書があれば遺言書のとおり、財産を配分するのが原則です。
遺言書があっても、遺留分侵害額請求をすることができます。
遺言書で遺留分が侵害される場合、相続人は遺留分侵害額請求ができます。
5遺留分の放棄をしたら遺留分侵害額請求はできない
①生前の遺留分の放棄は家庭裁判所の許可
被相続人の生前に、遺留分の放棄をすることができます。
被相続人の生前に遺留分の放棄をする場合、家庭裁判所の許可を得る必要があります。
「遺留分侵害額請求をするな」「相続を放棄するな」という被相続人の命令は、法律上無効です。
「遺留分侵害額請求をしません」「相続を放棄します」という被相続人と相続人の口約束は、法律上無意味です。
生前に他の相続人と「遺留分侵害額請求をしません」という契約書を作った場合、法律上何の価値もありません。
被相続人の生前に遺留分を放棄する場合、家庭裁判所の許可が必要だからです。
被相続人や他の相続人と話し合いで、生前に遺留分の放棄はできません。
相続が発生した後、遺留分を侵害された相続人は、遺留分侵害額請求をすることができます。
遺留分は、相続人に認められた最低限の権利です。
家庭裁判所に遺留分の放棄の申立てをした場合であっても、認められないことも多いものです。
被相続人や他の相続人からの不当な干渉による申立てではないか家庭裁判所は審査をするからです。
無理矢理、遺留分の放棄をさせられているのではないか重点的に審査します。
遺留分の放棄は、相続人の意思が重視されます。
気に入らない相続人の遺留分を放棄させる危険があります。
相続人の意思だけでなく、合理的理由があるかも判断の対象になっています。
合理的理由とは、遺留分の放棄の申立てをする必要性や充分な理由があることです。
遺留分の放棄の申立てをする充分な理由とは、遺留分の放棄をするに見合う充分な代償を得ていることです。
遺留分の放棄をするに見合う充分な生前贈与を受けている場合、遺留分の放棄をする合理的な理由があると言えます。
事業などに充分な出資をしてもらっている場合、遺留分の放棄をするに見合う充分な代償を得ていると判断されるでしょう。
②相続発生後なら遺留分放棄は自由にできる
相続が発生した後であれば、遺留分は自由に放棄することができます。
相続が発生した後は、相続権も遺留分も自分に帰属した具体的権利だからです。
具体的な自分の権利だから、自由に処分することができます。
家庭裁判所の許可は、必要ありません。
遺留分侵害額請求権は、遺留分がある権利者からの請求が必要です。
遺留分侵害額請求をすることは、権利であって義務ではありません。
遺留分が侵害された場合でも、遺留分侵害額請求をしなくても構いません。
遺留分侵害額請求をしない場合、遺留分を放棄したことと同じ効果になります。
6相続放棄を司法書士に依頼するメリット
相続放棄は、その相続でチャンスは1回限りです。
家庭裁判所に認められない場合、即時抗告という手続を取ることはできますが、高等裁判所の手続きです。
2週間以内に申立てが必要になります。
家庭裁判所で認めてもらえなかった場合、即時抗告で相続放棄を認めてもらえるのは、ごく例外的な場合に限られます。
一挙にハードルが上がると言ってよいでしょう。
相続が発生してから3か月以内に届出ができなかったのは止むを得なかったと家庭裁判所に納得してもらって、はじめて、家庭裁判所は相続放棄を認めてくれます。
通常は家庭裁判所に対して、上申書や事情説明書という書類を添えて、説得することになります。
家庭裁判所が知りたいことを無視した作文やダラダラとした作文では、認めてもらうことは難しいでしょう。
司法書士であれば、家庭裁判所に認めてもらえるポイントを承知しています.
家庭裁判所に認めてもらえやすい書類を作成することができます。
相続放棄は、本来、家庭裁判所に対してする手続です。
日常的に相続放棄をするといった場合、家庭裁判所の手続でないことが多いものです。
家庭裁判所で手続していない場合、相続放棄の法律上の効果がありません。
法律上の効果がないのに、法律上の効果があると誤解するから、家族が混乱します。
不十分な知識で話し合いをすると、家族のトラブルになります。
相続放棄は一回限りのうえに、撤回はできません。
相続放棄を考えている方は、すみやかに司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。
生活保護受給者の死亡で相続放棄
1生活保護受給者の権利義務は相続人が引き継ぐ
①生活保護受給権は相続しない
相続が発生した場合、被相続人のものは相続人全員の共有財産になります。
相続人が相続する財産が、相続財産です。
被相続人の財産であっても、相続人に相続されない財産があります。
一身専属権や祭祀用財産は、相続の対象になりません。
一身専属権とは、その人個人しか持つことができない権利や資格のことです。
生活保護受給権は、一身専属権です。
生活保護とは、健康で文化的な最低限度の生活を送れるように国が支援する制度です。
生活に困窮する人は国の支援を受けることができるから、健康で文化的な査定限度の生活が保障されます。
被相続人が生活保護を受けていた場合、被相続人の生活を保障するため国が支援していたと言えます。
生活保護受給者が死亡した場合、その人の生活を保障する必要はなくなります。
生活保護受給者が死亡した場合、生活保護は終了します。
生活保護受給権は、相続されません。
相続人に生活保障の必要がある場合、あらためて相続人が申請をして審査がされます。
②生活保護費返還義務は相続する
利用できる資産を活用してもなお最低限度の生活が維持できない場合、生活保護を受けることができます。
生活保護受給者が収入を得た場合、福祉事務所へ届出をしなければなりません。
福祉事務所は、得た収入を考慮して生活保護の給付を判断するからです。
ときには手続の不手際で、過大な保護費を受け取ってしまうことがあります。
過大に受け取ってしまった保護費は、返還しなければなりません。
生活保護費返還義務を残したまま、生活保護受給者が死亡することがあります。
生活保護費返還義務は、相続人に相続されます。
生活保護受給者が死亡した後に、保護費を過大に受け取った事実が判明することがあります。
相続人は、過大に受け取ってしまった保護費を返還しなければなりません。
福祉事務所からの通知で死亡を知った場合、この通知は死亡の事実を知った証拠になります。
相続放棄をする場合、家庭裁判所へ提出します。
③預貯金を相続する
生活保護を受けるには、利用できる資産を活用してもなお最低限度の生活が維持できないことが条件です。
利用できる資産がある場合、生活保護を受けることができません。
生活保護を受けている場合、預貯金がすべて否定されるわけではありません。
生活必需品が壊れてしまった場合、買い替える資金がないと生活に支障が出てしまいます。
子どもの進学資金などを準備したいことがあるでしょう。
生活保護受給者に預貯金があった場合、預貯金は相続財産です。
相続人が相続することができます。
生活保護は利用できる資産を利用することが条件だから、高額な貯金があることは考えられません。
福祉事務所の考えにもよりますが、おおむね100万円を超えることはできません。
④借金を相続する
生活保護は、健康で文化的な最低限度の生活を送れるように国が支援する制度です。
最低限度の生活を送れるように国が支援しているから、借金をしていることはないだろうと思うかもしれません。
生活保護受給を受ける要件に、借金の有無は関係ありません。
借金があっても借金がなくても、生活保護の要件を満たしていれば生活保護を受給することができます。
生活保護受給中であっても、借金がなくなることはありません。
借金と生活保護は、無関係です。
現実的には、生活保護受給者があらたな借金をすることは難しいでしょう。
実際にお金を貸す人は、あまりいません。
生活保護受給者が借金をした場合、借金が収入であると判断されるおそれがあります。
収入と判断された場合、生活保護は停止されるでしょう。
生活保護受給を始める前に、借金をしている可能性があります。
生活保護費は最低限度の生活を送るための金額だから、借金を返す余裕はないでしょう。
生活保護受給者が借金を残して死亡することを、想定しておく必要があります。
⑤税金の滞納分を相続する
生活保護は、健康で文化的な最低限度の生活を送れるように国が支援する制度です。
国が生活を支援している人から税金を徴収するのは、無意味です。
生活保護受給者は、税金がかかりません。
生活保護受給者に税金がかからないから、税金の滞納があると考えていないことがあります。
生活保護を受給する前に、納めるべき税金を滞納していることがあります。
生活保護受給中は、税金の徴収が停止します。
生活保護受給者が死亡した場合、滞納していた税金は相続人に相続されます。
相続人が生活保護受給者でない場合、税金の徴収の停止が解除されます。
相続人に滞納していた税金を払ってくださいと言ってくることがあります。
⑥病院代を相続する
生活保護受給者は、健康で文化的な最低限度の生活を送れるように国から支援を受けています。
健康で文化的な最低限度の生活のため、原則として、病院の自己負担がありません。
生活保護の医療扶助が適用されない治療を受けていることがあります。
医療扶助が受けられない治療の自己負担は、10割です。
治療内容にもよりますが、高額になることが多いでしょう。
医療扶助が受けられない治療の自己負担は、相続人が負担することになります。
2生活保護受給者の死亡で相続放棄
相続が発生した場合、被相続人のものは相続人全員の共有財産になります。
生活保護受給者が死亡した場合、プラスの財産が多いことはまず考えられません。
そのうえで税金の滞納や借金がある可能性があります。
相続を単純承認した場合、相続人は滞納していた税金を支払い借金を返済しなければならなくなります。
余計なトラブルを避けるため、相続放棄をすることができます。
3相続放棄をするときの注意点
①相続放棄は3か月以内に
相続が発生した場合、単純承認するか相続放棄をするか選択することができます。
相続放棄を希望する場合、家庭裁判所に対して相続放棄の申立てをします。
相続放棄の申立てには、期限があります。
相続の申立ての期限は、原則として、相続があったことを知ってから3か月以内です。
「相続があったことを知ってから」とは、被相続人が死亡して相続が発生し、その人が相続人であることを知って、かつ、相続財産を相続することを知ってから、と考えられています。
3か月以内に必要書類を添えて、管轄の家庭裁判所へ手続しなければなりません。
②相続財産を処分すると相続放棄は無効になる
相続放棄をする前に単純承認をしていた場合、相続放棄はできません。
相続放棄が撤回できないように、単純承認も撤回できないからです。
相続財産を処分したり、利用した場合、単純承認をしたとみなされます。
相続財産を処分したり、利用した場合は相続放棄ができなくなります。
家庭裁判所は事情が分からず書類に問題がなければ、相続放棄を受理してしまいます。
家庭裁判所が相続放棄を受理した後でも、相続財産を処分したり利用した場合は、無効です。
③連帯保証人の義務は相続放棄と無関係
家庭裁判所で相続放棄が認められた場合、被相続人の借金は引き継ぐことはありません。
被相続人が賃貸住宅を借りる際に、家族が連帯保証人になっていることがあります。
連帯保証人は、賃借人が家賃などを払えなくなったときに肩代わりをする人です。
賃借人が家賃を払えなかった場合、肩代わりの人が払ってくれるので賃貸人は安心することができます。
賃貸人と賃借人は、家賃を払う契約をします。
賃貸人と連帯保証人は、賃借人が家賃を払えなかったとき肩代わりをしますと契約します。
家賃を払う契約と連帯保証契約は、当事者と内容が違うまったく別の契約です。
賃借人が家賃を滞納したまま死亡した場合、相続人は相続放棄をすることで滞納家賃を引き継がなくても済みます。
賃借人の相続人に払ってもらえないから、賃貸人は連帯保証人に請求します。
連帯保証人は、肩代わりをしますと約束した人です。
肩代わりの義務は、連帯保証人の固有の義務です。
連帯保証人が賃借人の相続人であったとしても、相続とは関係がありません。
相続放棄をしても、肩代わりの義務はなくなりません。
連帯保証の義務は、相続放棄と無関係だからです。
4生活保護受給者の死亡で葬祭扶助
生活保護とは、健康で文化的な最低限度の生活を送れるように国が支援する制度です。
扶養義務者の扶養があってもなお最低限度の生活が維持できないことが条件のひとつです。
生活保護を受給するために、扶養義務者から扶養を受ける必要があります。
生活保護受給者でないにしても、扶養義務者も経済的に困窮していることがあります。
生活保護受給者が死亡した場合、家族が葬儀を執り行うでしょう。
葬儀を執り行う家族が経済的に困窮している場合、葬儀費用の支払いできないことがあります。
生活保護受給者が死亡した場合、最低限度の葬儀ができるように国が支援します。
最低限の葬儀費用を支給する制度を葬祭扶助と言います。
葬儀を執り行う家族に充分な資産がある場合、国の支援はありません。
葬祭扶助は、葬儀を行う前に申請します。
葬儀を執り行う家族が経済的に困窮して、葬儀費用の支払いできないからです。
葬儀の後に申請した場合は、葬祭扶助が認められません。
葬儀を執り行う家族が葬儀費用を負担できる資産があったはずだからです。
葬祭扶助の対象にできるのは、最低限の費用のみです。
具体的には、死亡の確認、遺体の移送、火葬費用、納骨費用のみです。
通夜や告別式をせず、火葬のみ行います。
戒名やお布施は、親族が負担します。
葬祭扶助が適用される場合、葬儀費用は福祉事務所から葬儀業者に直接支払われます。
5生活保護受給者が死亡したときの相続放棄を司法書士に依頼するメリット
生活保護とは、健康で文化的な最低限度の生活を送れるように国が支援する制度です。
生活保護を受けることで親族からあれこれ言われて、疎遠になっていることがあります。
被相続人の生活状況など分からないことが多いでしょう。
生活保護受給者の生活状況は、ケースワーカーが見守っています。
生活保護受給者は、健康で文化的な最低限度の生活ができる保護費を受け取っています。
最低限度の生活ができる程度の保護費だから、大きなプラスの財産があることは考えられません。
一方で、生活保護受給者はマイナスの財産が見つかることがあります。
相続が発生してから数年経過してから、発見されることも少なくありません。
余計なトラブルに巻き込まれないため、相続放棄をしておくと安心でしょう。
司法書士は、相続放棄をはじめとして相続手続全般をサポートしています。
相続放棄を検討している方は、すみやかに司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。
相続放棄でトラブル
1相続放棄とは
相続が発生した場合、原則として、被相続人のプラスの遺産もマイナスの遺産も相続人が受け継ぎます。
被相続人のプラスの遺産もマイナスの遺産も受け継がないことを相続の放棄といいます。
相続放棄をすると、プラスの遺産を引き継がなくなりますが、マイナスの遺産も引き継ぐことがなくなります。
相続放棄という言葉自体は、日常的に聞く言葉かもしれません。
法律上の相続放棄と日常使う相続放棄は、少し意味が違うかもしれません。
意味が違うことに気づかず、無用に不安になっている場合があります。
意味が違うことに気づかず、重要なリスクが見えていない場合もあります。
2相続放棄でトラブル事例
事例①生前に相続放棄はできない
相続放棄は、家庭裁判所に対して、必要な書類をを添えて相続放棄をしたい旨の申立てをします。
被相続人が相続人に対して「相続放棄をしろ」と命じるケースがあります。
被相続人が「相続放棄をします」と念書を書かせるケースがあります。
「相続放棄をします」と他の相続人と契約書を作るケースがあります。
「相続放棄をします」と被相続人や他の相続人に申入書を差し入れるケースがあります。
いずれも、無効です。
相続放棄するためには、家庭裁判所に対して申立てが必要です。
家庭裁判所に申立てがない場合、相続放棄はできません。
相続放棄をする約束をしていたのに、相続発生後、財産を分けて欲しいと言われても文句を言えません。
相続放棄をする約束を信じていた他の相続人とトラブルになります。
被相続人の死亡する前に相続放棄ができるとすると、相続人になる予定の人が干渉して相続が発生する前からトラブルになることが考えられます。
被相続人の生前に相続放棄の約束をすると、相続トラブルが大きくなります。
事例②他の相続人から相続放棄を迫られる
相続が発生した後であっても、他の相続人から相続放棄を要求されるケースがあります。
相続放棄は、相続人が自由な判断でするものです。
生前にどのような約束をしていたとしても無効の約束です。
他の相続人が相続放棄について干渉すると、トラブルになります。
事例③相続放棄をすると相続権が次順位の相続人に移る
相続放棄が認められると、ばじめから相続人でなくなります。
被相続人の子ども全員が相続放棄をした場合、子どもはいないものと扱われます。
被相続人に子どもがいない場合、次順位の相続人は親などの直系尊属です。
被相続人に莫大な借金がある場合、借金から逃れるために相続放棄をすることができます。
子ども全員に相続放棄が認められた場合、借金は次順位の相続人が引き継ぎます。
債権者は、次順位の相続人から借金を返済してもらおうと考えます。
親などの直系尊属は、急に莫大な借金の返済を求められることになります。
子ども全員が相続放棄をしたことを何も知らない場合、親などの直系尊属はびっくりするでしょう。
相続放棄を認めた場合、家庭裁判所は他の相続人に自主的に連絡はしません。
相続放棄が認められても、次順位の相続人に相続放棄をしたことを通知する義務はありません。
何も知らない相続人は、だれかが知らせてくれてもいいのにと恨みに思うかもしれません。
次順位の相続人に通知する義務はなくても、親族間でトラブルに発展します。
事例④相続放棄をしたのに借金返済を迫られる
家庭裁判所は、相続放棄の申立てをした人だけに結果を通知します。
相続放棄を認めた場合、家庭裁判所は債権者に自発的に連絡はしません。
相続放棄が認められても、債権者に相続放棄をしたことを通知する義務はありません。
債権者から見ると、何も知らないうちに相続放棄の申立てがされて、何も知らないうちに相続放棄が認められたとなります。
債権者は何も知らないから、相続人に借金を返してもらおうと思って催促をします。
相続放棄をした人は、被相続人の借金を引き継ぎません。
借金の催促をされた場合、断ることができます。
債権者は相続放棄をしたことを知らないのが通常だから、相続放棄をしたことを知らせるといいでしょう。
家庭裁判所は相続放棄を認めた場合、相続放棄申述受理通知書を送ってきます。
相続放棄申述受理通知書のコピーを渡すと、分かってもらえるでしょう。
事例⑤財産処分をすると相続放棄は無効になる
相続が発生した場合、相続を承認するか相続放棄をするか判断することができます。
相続を承認するか相続放棄をするか判断した後に、撤回することはできません。
相続放棄をする場合、相続財産を処分することはできません。
相続財産を処分した場合、相続を承認したものと見なされます。
相続を承認した場合、承認を撤回することはできません。
家庭裁判所が事情を知らずに相続放棄を認めてしまった場合、後から無効になります。
家庭裁判所から相続放棄申述受理通知書を受け取っても、相続放棄は絶対ではありません。
相続財産を処分した場合、相続を承認したと言えるからです。
被相続人の債権者は、相続放棄は無効であると主張して借金を払って欲しいと裁判を起こすことができます。
相続放棄申述受理通知書を見せても、借金の催促が止まらない場合、債権者は相続放棄の無効を主張しているかもしれません。
債権者が裁判を起こした場合、裁判所から訴状が届きます。
訴状が届いたら、直ちに弁護士などの専門家に相談しましょう。
債権者が根拠のない主張をしている場合であっても、適切に主張立証をする必要があるからです。適切に対応しないと、裁判で相続放棄の無効が認められてしまうからです。
事例⑥相続放棄をした後の管理不適切で近所迷惑
相続放棄をすると、はじめから相続人でなくなります。
相続手続から解放されるから、相続に関する責任もなくなると考えがちです。
相続放棄をするとはじめから、相続人でなかったと扱われます。
プラスの財産もマイナスの財産も引き継ぐことがなくなるから、被相続人の遺産などに関与しなくていいと考えてしまうかもしれません。
相続放棄をした人は、相続財産を管理すべき人が管理を始めるまで管理を続けなければなりません。
自分が相続放棄をしたことによって次順位の人が相続人になる場合、その人が相続財産を管理してくれます。
固定資産税などの費用や実家の管理なども、次順位の相続人が引き受けてくれます。
自分の他に相続人がいない場合や相続人全員が相続放棄をした場合、相続放棄をした人は相続財産の管理を続けなければなりません。
不動産の管理不適切の場合、近隣住民に迷惑をかけることがあります。
人が住んでいない建物に、野生動物や病害虫が住み着くことがあります。
管理が不適切なため近隣住民が損害を受けたと認められた場合、損害賠償をしなければならなくなります。
近隣住民との間で、大きなトラブルになるおそれがあります。
事例⑦遺産分割で相続放棄ができると誤解
相続放棄するためには、家庭裁判所に対して申立てが必要です。
家庭裁判所に申立てがない場合、相続放棄はできません。
相続財産の分け方は、相続人全員の合意で決める必要があります。
相続人全員の話し合いにおいて、プラスの財産を受け取らないと宣言することを相続放棄を称する場合があります。
自称専門家は、家庭裁判所に対して手続するのは煩雑だから相続人全員の話し合いで宣言することを勧めています。
相続人全員の話し合いにおいて、プラスの財産を受け取らないと宣言することは相続放棄ではありません。
プラスの財産を受け取らないと宣言しても、相続放棄ではありません。
債権者は、被相続人の借金を相続人全員に対して法定相続分で請求することができます。
家庭裁判所で相続放棄を認められた場合、相続人でなくなります。
債権者は、相続放棄が認められた人に対して借金を催促することはできません。
プラスの財産を受け取らないと宣言しても相続放棄ではないから、債権者は法定相続分で請求することができます。
プラスの財産を受け取らないと宣言した相続人は、依然として相続人です。
プラスの財産を受け取らないと宣言したから、借金は払いたくないと文句を言うことはできません。
自称専門家は、そこまで説明はしないでしょう。
手続がカンタンとだけ言って、アピールします。
遺産分割協議と相続放棄を混同すると、トラブルに巻き込まれることになります。
3相続放棄を司法書士に依頼するメリット
相続放棄はプラスの遺産もマイナスの遺産も引き継ぎませんという裁判所に対する申立てです。
相続人らとのお話合いで、プラスの財産を相続しませんと申し入れをすることではありません。
家庭裁判所で認められないとマイナスの財産を引き継がなくて済むというメリットは受けられないのです。
実は、相続放棄はその相続でチャンスは実質的には1回限りです。
家庭裁判所に認められない場合、即時抗告という手続を取ることはできますが、高等裁判所の手続で、2週間以内に申立てが必要になります。
家庭裁判所で認めてもらえなかった場合、即時抗告で相続放棄を認めてもらえるのは、ごく例外的な場合に限られます。
一挙にハードルが上がると言ってよいでしょう。
相続放棄は慎重に判断する必要があります。
相続放棄の知識が不足しているために、思いもよらないトラブルになってしまうケースがあります。
司法書士などの専門家のアドバイスがあれば良かったのにと思えることもあります。
知識がない状態で、3か月の期間内に手続するのは思ったよりハードルが高いものです。
相続放棄を考えている方はすみやかに司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。
異父兄弟・異母兄弟の死亡で相続放棄
1相続人になる人は法律で決まっている
相続が発生すると、配偶者や子どもが相続することは多くの方がご存知でしょう。
相続人になる人は、民法で決められています。
相続人になる人は、次のとおりです。
①配偶者は必ず相続人になる
②被相続人に子どもがいる場合、子ども
③被相続人に子どもがいない場合、親などの直系尊属
④被相続人に子どももいない場合で、かつ、親などの尊属が被相続人より先に死亡している場合、兄弟姉妹
2異父兄弟・異母兄弟の死亡で相続人になる
①父母の一方だけ同じ兄弟姉妹は兄弟姉妹
被相続人に子どもも親などの直系尊属もいない場合、兄弟姉妹が相続人になります。
兄弟姉妹が相続人になるというと、両親が同じ兄弟姉妹を真っ先イメージするでしょう。
被相続人の親に再婚歴があることがあります。
相続人調査をしたところ、父母の一方だけ同じ兄弟姉妹が判明することがあります。
兄弟姉妹が相続人になるときの兄弟姉妹とは、父母が同じ兄弟姉妹に限られません。
父母の一方だけ同じ兄弟姉妹は、兄弟姉妹です。
被相続人に子どもも親などの直系尊属もいない場合、相続人になります。
②異父兄弟・異母兄弟が死亡したときの法定相続分
被相続人に子どもも親などの直系尊属もいない場合、兄弟姉妹が相続人になります。
相続が発生した場合、配偶者は必ず相続人になります。
配偶者と兄弟姉妹が相続人になる場合、法定相続分は次のとおりです。
配偶者 4分の3
兄弟姉妹 4分の1
被相続人と父母が同じ兄弟姉妹も父母の一方だけ同じ兄弟姉妹も、相続人になります。
兄弟姉妹が相続人になる場合、父母が同じ兄弟姉妹と父母の一方だけ同じ兄弟姉妹の法定相続分は同じではありません。
父母の一方だけ同じ兄弟姉妹の法定相続分は、父母が同じ兄弟姉妹の法定相続分の半分です。
配偶者と父母が同じ兄弟姉妹1人と父母の一方だけ同じ兄弟姉妹1人が相続人になる場合、法定相続分は次のとおりです。
配偶者 4分の3
父母が同じ兄弟姉妹 6分の1(12分の2)
父母の一方だけ同じ兄弟姉妹 12分の1
父母が同じ兄弟姉妹が複数いる場合、父母が同じ兄弟姉妹で平等に分けます。
父母の一方だけ同じ兄弟姉妹が複数いる場合、父母の一方だけ同じ兄弟姉妹で平等に分けます。
配偶者と父母が同じ兄弟姉妹3人と父母の一方だけ同じ兄弟姉妹2人が相続人になる場合、法定相続分は次のとおりです。
配偶者 4分の3
父母が同じ兄弟姉妹 16分の1(32分の2)
父母の一方だけ同じ兄弟姉妹 32分の1
異父兄弟・異母兄弟の死亡で相続人になる場合、法定相続分はわずかになることが多いです。
③遺産分割協議は相続人全員で
相続が発生した場合、被相続人のものは相続人全員の共有財産になります。
相続人全員の共有財産だから、一部の相続人が勝手に処分することはできません。
相続財産の分け方は、相続人全員の合意で決めなければなりません。
異父兄弟や異母兄弟がいる場合、被相続人や被相続人の家族と疎遠であることが多いでしょう。
長期間疎遠になっていても、合意が不可欠です。
一部の相続人の合意がない場合、相続手続を進めることができません。
3異父兄弟・異母兄弟の死亡で相続放棄
①相続放棄は知ってから3か月以内に
相続が発生した場合、相続人は単純承認するか相続放棄をするか選択することができます。
単純承認するを希望する場合、特別な手続は不要です。
相続放棄を希望する場合、家庭裁判所に相続放棄を希望する申立てをします。
相続放棄を希望する申立ては、3か月以内の期限があります。
期限のスタートは、相続があったことを知ってからです。
相続があったことを知ってからとは、必ずしも、被相続人の死亡してからではありません。
被相続人が死亡した後3か月以上経過してから、相続放棄の届出をして、認められることもあります。
相続放棄ができる3か月以内のスタートは、相続があったことを知ってからだからです。
相続があったことを知らなかった場合、相続放棄ができる3か月がスタートしていません。
このポイントは、相続が発生してから3か月以内に届出ができなかったのはやむを得なかったと家庭裁判所に納得してもらうことです。
被相続人や他の相続人と疎遠になっている場合、相続発生直後に連絡されないことが多いです。
3か月届出ができなかったのは仕方なかったと家庭裁判所が納得できる理由があるときだけは、家庭裁判所も相続放棄を認めてくれるのです。
他の相続人などから手紙が来て相続があったことを知った場合、この手紙と封筒は大切です。
この手紙を見て相続があったことを知ったという証拠になるからです。
封筒には、消印が押してあります。
消印の日付が、証拠になります。
②相続手続に関わりたくないから相続放棄
異父兄弟や異母兄弟がいる場合、被相続人や被相続人の家族と疎遠であることが多いでしょう。
相続財産の話し合いは、気心の知れた家族であってもトラブルになりがちです。
見知らぬ親戚と話し合いをするのは、気が進まないかもしれません。
気が進まない相続手続に協力しても、法定相続分はわずかです。
受け取る相続財産も、わずかになることが多いでしょう。
わずかな財産のために気が進まない親戚と顔を合わせるより、何も受け取らない方が気が楽かもしれません。
わずらわしい相続手続に関わりたくない場合、相続放棄をすることができます。
相続放棄を希望する場合、家庭裁判所に申立てをします。
相続放棄を希望する理由は、被相続人の債務を引き継ぎたくないからが多いです。
相続放棄では、相続放棄の理由は重視されていません。
被相続人に債務があるのか分からないときにも、相続放棄をすることができます。
目立ったプラスの財産がないから万が一にもマイナスの財産があったときのために相続放棄をするケースです。
相続人が裕福で生活に困っていないから相続放棄をするケースもあります。
相続手続に関わりたくないから相続放棄をすることでも、差し支えありません。
相続手続に関わりたくないからが理由であっても、家庭裁判所は相続放棄を認めてくれます。
③生前に相続放棄はできない
相続放棄を希望する場合、家庭裁判所に相続放棄を希望する申立てをします。
相続放棄の申立てをすることができるのは、相続人だけです。
相続人以外の人は、相続放棄ができません。
相続が発生する前は、まだ相続人ではありません。
被相続人の生前に、相続放棄をすることはできません。
被相続人の生前なのに、相続放棄の申立てを家庭裁判所に送っても受け付けてもらえません。
相続放棄の申立てを提出する場合、被相続人の死亡の記載がある戸籍謄本を提出します。
戸籍謄本を見れば、すぐに分かってしまいます。
④生前の相続放棄の念書や誓約書は無効
相続放棄を希望する場合、家庭裁判所に申立てをします。
相続人同士の約束で、相続放棄はできません。
将来発生する相続について、相続人になる予定の人が話し合いをすることはあります。
話し合いの中で、相続財産を受け取らないと申し入れるかもしれません。
相続人に「相続放棄をします」と念書を書かせることがあります。
法律上、相続放棄の念書に何の価値もありません。
生前に念書を差し入れていても、相続放棄の効果はありません。
生前の念書を見せても、相続手続を進めることはできません。
相続発生後、あらためて相続財産の分け方について相続人全員で合意しなければなりません。
家庭裁判所の関与なしに相続放棄はできないからです。
⑤父母による相続放棄の約束は無効
父母が離婚するときに、子どもが相続放棄をすることを約束していることがあります。
ときには誓約書を書いて渡しているかもしれません。
父母が離婚するときに、勝手にした約束は無効です。
相続放棄は、相続人の意思で相続放棄をするという制度です。
父母が勝手にした約束とは無関係に、単純承認するか相続放棄をするか選択することができます。
相続放棄は家庭裁判所に申し立てて、認めてもらう必要があります。
家庭裁判所の関与なくして、相続放棄はできません。
相続発生後に財産を分けて欲しいと言われた場合、他の相続人は文句を言えません。
父母が勝手にした相続放棄の約束は無効だから、勝手に書いた誓約書も無効だからです。
4相続放棄を司法書士に依頼するメリット
実は、相続放棄はその相続でチャンスは1回限りです。
家庭裁判所に認められない場合、即時抗告という手続を取ることはできますが、高等裁判所の手続です。
しかも2週間以内に申立てが必要になります。
家庭裁判所で認めてもらえなかった場合、即時抗告で相続放棄を認めてもらえるのは、ごく例外的な場合に限られます。
一挙にハードルが上がると言ってよいでしょう。
相続が発生してから3か月以上経過した後の相続放棄は、難易度が上がります。
3か月以内に申立てができなかったのは止むを得なかったと家庭裁判所に納得してもらう必要があるからです。
やむを得なかったと認められる場合、家庭裁判所は相続放棄を認めてくれます。
通常は家庭裁判所に対して、上申書や事情説明書という書類を添えて、説得することになります。
家庭裁判所が知りたいことを無視した作文やダラダラとした作文では認めてもらうことは難しいでしょう。
司法書士であれば、家庭裁判所に認めてもらえるポイントを承知しています。
認めてもらえやすい書類を作成することができます。
通常の相続放棄と同様に、戸籍や住民票が必要になります。
市区町村役場は、平日の昼間だけ業務を行っています。
仕事や家事、通院などで忙しい人にとっては、書類を準備するだけでも負担が大きいものです。
戸籍や住民票の請求先になる市区町村役場が遠方の場合、郵便による取り寄せもできます。
書類の不備などによる問い合わせは、市区町村役場の業務時間中の対応が必要になります。
やはり負担は軽いとは言えません。
このような戸籍や住民票の取り寄せも司法書士は代行します。
相続放棄を考えている方は、すみやかに司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。
相続放棄で相続登記の義務から逃れる
1相続登記は義務になる
①所有権移転登記は原則として権利
不動産に対する権利が変動した場合、登記をします。
権利が変動した場合で最もイメージしやすいものは、不動産を購入して所有権を取得した場合でしょう。
不動産を購入して所有権を取得した場合、購入したタイミングですぐに所有権移転登記をします。
登記をしていないと、不動産に対して権利主張をする人が現れた場合に負けてしまうからです。
不動産を購入して所有権を取得したはずなのに、見知らぬ人が不動産は自分のものだから明け渡して欲しいと言ってくるようなケースです。
登記がある場合、不動産は自分のものだから明け渡す必要はないと言い返すことができます。
登記がない場合、不動産を明け渡さなければならなくなるかもしれません。
せっかく不動産を購入したのに、不動産を明け渡さなければならなくなることは何としても避けたいはずです。
不動産は自分のものだと主張するために、購入したタイミングですぐに所有権移転登記をします。
所有権移転登記をしない場合、所有者は権利主張ができません。
所有権移転登記をしない場合、所有者が不利益を受けます。
所有権移転登記をすることは、所有者の権利であって義務ではありません。
②相続登記は義務
所有権移転登記をしない場合、所有者はソンをします。
不動産に対して権利主張をする人が現れた場合、所有者のはずなのに権利主張ができないからです。
不動産には、不便な場所にあるなどの理由で価値が低い土地が存在します。
所有者にとって利用価値が低い土地に対して権利主張をする人が現れた場合、所有者として権利主張する必要を感じないかもしれません。
相続登記は、手間のかかる手続です。
自分で相続登記をしようとするものの、多くの人は挫折します。
相続登記をする場合、登録免許税を納付しなければなりません。
相続登記を専門家に依頼する場合、専門家に報酬を支払う必要があります。
不動産の価値が低い場合、相続登記で手間と費用がもったいないと考える人が少なくありませんでした。
相続登記がされない場合、登記簿を見ても土地の所有者が分からなくなります。
所有者不明の土地の発生を防止するため、相続登記をすることは義務になりました。
③相続登記は3年以内に申請
相続が発生した場合、相続登記の申請義務が課せられました。
「自己のために相続の開始があったことを知り、かつ当該所有権を取得したことを知った日」から3年以内に申請しなければなりません。
④令和6年4月1日以降に発生した相続が対象になる
相続登記の申請義務が課せられるのは、令和6年4月1日です。
令和6年4月1日以降に発生した相続は、当然に対象になります。
⑤令和6年4月1日以前に発生した相続が対象になる
ずっと以前に相続が発生したのに、相続登記を放置している例は少なくありません。
令和6年4月1日以前に発生した相続であっても、相続登記は義務になります。
⑥相続登記未了であればペナルティーが課せられる
相続登記は、3年以内に申請しなければなりません。
相続登記の申請義務を果たしていない場合、ペナルティーが課されます。
令和6年4月1日以前に発生した相続であっても、ペナルティーが課される予定です。
2相続放棄は家庭裁判所へ手続
相続が発生したら、原則として、被相続人のプラスの財産もマイナスの財産も相続人が受け継ぎます。
被相続人のプラスの財産もマイナスの財産も受け継がないことを相続の放棄といいます。
相続放棄は、家庭裁判所に対して相続放棄を希望する旨の申立てをします。
相続放棄をすると、プラスの財産を引き継がなくなりますが、マイナスの財産も引き継ぐことがなくなります。
相続が発生した場合、被相続人の財産は相続人全員の共有財産になります。
相続財産の分け方は、相続人全員の合意で決めます。
相続人の中には、プラスの財産をまったく受け取らないことがあります。
相続人全員が合意できれば、財産をまったく受け取らない合意をすることができます。
プラスの財産をまったく受け取らないことを相続放棄をしたと表現することがあります。
相続財産の分け方を決める相続人全員の話し合いは、遺産分割協議を言います。
プラスの財産をまったく受け取らない合意をする場合でも、遺産分割協議です。
プラスの財産をまったく受け取らない合意は、相続放棄と表現しても相続放棄ではありません。
相続放棄は、家庭裁判所に対して申立てが必要な手続だからです。
3相続放棄が認められたら相続人でなくなる
相続が発生した場合、相続登記の申請義務が課せられました。
相続登記が義務になったのは、所有者が不明の土地がたくさん発生したからです。
公共事業などで土地を利用する必要がある場合、所有者に土地を売ってもらいます。
所有者が分からない場合、だれにお願いすればいいか分かりません。
公共事業などを進めることができなくなります。
相続登記を義務にして、所有者不明の土地がこれ以上増えないようにしようという制度です。
相続放棄が認められた場合、はじめから相続人でなくなります。
相続人でないから、被相続人のものは何も相続できません。
被相続人が不動産を所有していても、相続放棄した人が相続することはありません。
相続放棄が認められた人は、相続登記をする義務が課されません。
4相続が発生してから3か月以上経過しても相続放棄
①相続放棄の期間3か月のスタートは知ってから
相続放棄は家庭裁判所に申立てをする必要があります。
この申立ての期限は、原則として、相続があったことを知ってから3か月以内です。
相続があったことを知ってから3か月以内の期間のことを熟慮期間と言います。
「相続があったことを知ってから」とは、被相続人が死亡して相続が発生し、その人が相続人であることを知って、かつ、相続財産を相続することを知ってから、と考えられています。
被相続人が死亡してから3か月以内ではなく、相続財産を相続することを知ってから3か月以内です。
3か月以内に戸籍や住民票などの必要書類を揃えて管轄の家庭裁判所に提出しなければなりません。
②相続放棄ができる期間は3か月を知らなかったからは認められない
相続放棄の申立ては、相続があったことを知ってから3か月以内にしなければなりません。
相続放棄ができる期間は3か月を知らないまま3か月経過した場合、相続放棄は認められません。
法律の定めを知らなくても、3か月過ぎてしまえば、単純承認になります。
単純承認になったら、相続放棄は認められません。
法律を勉強したことがないからなども、勉強していないから3か月以内という定めを知らなかったといえます。
3か月過ぎてしまえば、単純承認になります。
単純承認になったら、相続放棄は認められません。
③市役所などからの通知が届いたから相続放棄
空き家等の登記名義人が死亡した場合、現在の管理者が適切に管理していないことがあります。
適切な管理を促すため、市区町村役場は相続人に通知を送ります。
空き家等の登記名義人が死亡してから長期間経過している場合、登記名義人の直接の相続人も死亡しているかもしれません。
ほとんど面識のない遠縁の親族の相続人であると聞いて、びっくりするかもしれません。
相続を単純承認した場合、空き家等の管理をすることになります。
相続が発生してから10年以上経過してから、相続人であることを知ることがあります。
絶縁していた相続人が相続放棄をする場合、「知ってから」とは被相続人が死亡したことを知ってからです。
被相続人が死亡したことを知らない場合、相続放棄をするか単純承認をするか判断できないからです。
市役所などから通知が届いたことで相続人であることを知った場合、この通知は重要です。
被相続人の死亡を知った証拠となるからです。
家庭裁判所に対して相続放棄の申立てをする場合、市役所からの通知を添えて提出すると説得力が増します。
被相続人が死亡してから長期間経過した後であっても死亡の事実を知ってから3か月以内である場合、相続放棄が認められます。
5相続放棄を司法書士に依頼するメリット
実は、相続放棄はその相続でチャンスは1回限りです。
家庭裁判所に認められない場合、即時抗告という手続を取ることはできますが、高等裁判所の手続で、2週間以内に申立てが必要になります。
家庭裁判所で認めてもらえなかった場合、即時抗告で相続放棄を認めてもらえるのは、ごく例外的な場合に限られます。
一挙にハードルが上がると言ってよいでしょう。
相続が発生してから3か月以内に申立てができなかったのは止むを得なかったと家庭裁判所に納得してもらって、はじめて、家庭裁判所は相続放棄を認めてくれます。
通常は家庭裁判所に対して、上申書や事情説明書という書類を添えて、説得することになります。
家庭裁判所が知りたいことを無視した作文やダラダラとした作文では認めてもらうことは難しいでしょう。
司法書士であれば、家庭裁判所に認めてもらえるポイントを承知していますから、認めてもらえやすい書類を作成することができます。
さらに、通常の相続放棄と同様に戸籍や住民票が必要になります。
お仕事や家事、通院などでお忙しい人には平日の昼間に役所にお出かけになって準備するのは負担が大きいものです。
戸籍や住民票は郵便による取り寄せもできますが、書類の不備などによる問い合わせはやはり役所の業務時間中の対応が必要になりますから、やはり負担は軽いとは言えません。
このような戸籍や住民票の取り寄せも司法書士は代行します。
3か月の期限が差し迫っている方や期限が過ぎてしまっている方は、すみやかに司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。
相続放棄は家庭裁判所で手続
1相続放棄とは
相続が発生したら、原則として、被相続人のプラスの財産もマイナスの財産も相続人が受け継ぎます。
被相続人のプラスの財産もマイナスの財産も受け継がないことを相続の放棄といいます。
相続放棄をすると、プラスの財産を引き継がなくなりますが、マイナスの財産も引き継ぐことがなくなります。
相続の放棄は被相続人ごとに判断できますから、例えば、父について相続放棄をするが、母について単純承認するでも差し支えありません。
相続の放棄は相続人ごとに判断しますから、例えば、父の相続ついて長男は相続放棄するが、長女は単純承認するでも差し支えありません。
2相続放棄は家庭裁判所で手続
①相続放棄の管轄は被相続人の最後の住所地
相続放棄は、本来、家庭裁判所に対する手続です。
家庭裁判所に対して、必要な書類をを添えて相続放棄をしたい旨の申立てをします。
申立てをする先の家庭裁判所は、相続が開始した地を管轄する家庭裁判所です。
相続が開始した地とは、被相続人の最後の住所地です。
裁判所のホームページで管轄する家庭裁判所を調べることができます。
被相続人の最後の住所地が分からない場合、被相続人の除票や戸籍の附票を取得すると判明します。
被相続人の除票は、被相続人が住民票を置いていた市区町村役場に請求します。
被相続人の戸籍の附票は、被相続人の本籍地の市区町村役場に請求します。
被相続人に関する情報が全く分からない場合、自分の戸籍謄本を取得して順にたどっていきます。
被相続人の戸籍までたどり着いたら、被相続人の本籍地が判明します。
除票や戸籍の附票は、永年保管ではありません。
今でこそ保存期間は150年ですが、令和元年までは5年でした。
保存期間が経過した書類は、順次廃棄されます。
被相続人の除票や戸籍の附票を取得できない場合、死亡届の記載事項証明書で住所を調べることができます。
古い死亡届は、法務局が保管しています。
法務局は、市区町村役場から送付を受けた年度の翌年から27年間保管しています。
戸籍の附票や住民票が廃棄された後でも、死亡届の記載事項証明書を取得できることがあります。
相続放棄をしたい旨の申立ては、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に提出します。
②相続放棄の期限は知ってから3か月
相続放棄は、家庭裁判所に申立てをする必要があります。
申立ての期限は、原則として、相続があったことを知ってから3か月以内です。
「相続があったことを知ってから」とは、被相続人が死亡して相続が発生し、その人が相続人であることを知って、かつ、相続財産を相続することを知ってから、と考えられています。
被相続人が死亡してから3か月以内ではなく、相続財産を相続することを知ってから3か月以内です。
相続放棄ができる期間は3か月を知らないまま3か月経過した場合、相続放棄は認められません。
法律の定めを知らなくても、3か月過ぎてしまえば、単純承認になります。
単純承認になったら、相続放棄は認められません。
③相続放棄の期限は延長してもらえる
相続放棄の申立ての期限は、原則として、相続があったことを知ってから3か月以内です。
被相続人の財産状況を詳しく知らない場合、3か月はあっという間です。
相続放棄をするべきか単純承認をするべきか判断するために時間がかかる場合があります。
相続放棄をするべきか単純承認をするべきか判断するための資料を集めるため、相続放棄の期間3か月を延長してもらうことができます。
相続放棄の期間3か月を延長してもらうことを相続の承認または放棄の期間の伸長の申立てと言います。
相続の承認または放棄の期間の伸長の申立てを受け付けた場合、家庭裁判所が期間延長を認めるか判断します。
相続の承認または放棄の期間の伸長の申立てには、期間内に相続放棄をすべきか単純承認すべきが判断ができない具体的理由や延長が必要な期間を記載します。
判断ができない具体的理由を根拠づける資料を添付して、説得力を持たせるといいでしょう。
期間延長の必要性や理由が妥当なものであると家庭裁判所に納得してもらうことが重要です。
家庭裁判所で期間延長が認められた場合、原則として3か月延長されます。
④相続放棄は郵送で手続できる
相続放棄の申立てをする先の家庭裁判所は、相続が開始した地を管轄する家庭裁判所です。
相続が開始した地とは、被相続人の最後の住所地です。
相続人の住所地を管轄する家庭裁判所ではありません。
被相続人の最後の住所地が相続人の住所地からはるか遠方であることがあります。
相続放棄申述書は、家庭裁判所に出向いて提出することができるし郵送で提出することができます。
郵送する場合は、期限に間に合うように余裕を持って提出しましょう。
相続放棄の申立ての期限は、原則として、相続があったことを知ってから3か月以内です。
普通郵便で送った場合、家庭裁判所に届いたか分かりません。
郵便が迷子になると、探せなくなります。
書留やレターパックなど記録の残る郵便は、追跡番号で探してもらうことができます。
郵送するときは、記録の残る郵便で提出することをおすすめします。
⑤家庭裁判所から照会文書が届く
家庭裁判所に対して相続放棄の申立てをすると、相続放棄照会書が届きます。
相続放棄照会書とは、家庭裁判所から届く相続放棄についての意思確認です。
相続放棄照会書は、家庭裁判所によって名前が違うことがあります。
相続放棄は、影響の大きい手続なので間違いがないように慎重に確認します。
万が一、不適切な回答をすると相続放棄を認めてもらえなくなるかもしれません。
相続放棄の申立ての内容と食い違いが出ないように、書類を提出する前に控えをとっておくといいでしょう。
質問内容は、難しいものではありません。
事実をありのままに書けばいいでしょう。
被相続人が死亡してから3か月以上経過してから申立てをした場合、いつ死亡の事実を知ったかが重要なポイントになります。
相続放棄の申立ての期限は、原則として、相続があったことを知ってから3か月以内だからです。
相続があったことを知ってからですから、知らなかったのであれば3か月がスタートしません。
相続があったことを知ってから3か月以内であれば、相続放棄ができます。
家庭裁判所は、相続があったことを知ったのがいつなのか分かりません。
相続放棄照会書に対して回答する場合、いつ知ったのかを具体的に記載します。
何らかの書類が届いたことによって、自己のために相続があったことを知ったのであれば、この書類は重要な証拠になります。
回答書に添付して提出するといいでしょう。
電話連絡であれば電話連絡で知ったと書けば差し支えありません。
⑥相続放棄申述受理通知書で完了
相続放棄の申立てを受け付けた後、家庭裁判所は認めるか認めないか審査します。
相続放棄を認める判断をした場合、本人に対して、相続放棄申述受理通知書を送ります。
相続放棄申述受理通知書は、相続放棄を認めましたよという本人あてのお知らせです。
相続放棄申述受理通知書が届けば、相続手続は完了です。
相続放棄を認めた場合、家庭裁判所は本人にだけ通知をします。
家庭裁判所から、他の相続人や債権者などに自主的に相続放棄を認めましたと通知することはありません。
債権者などは、相続放棄が認められたことを知りません。
何も知らないから相続人に借金を返してもらおうと考えて、催促をしてきます。
相続放棄が認められたから、被相続人の借金を相続しません。
債権者に相続放棄受理通知書を見せると、分かってくれるでしょう。
相続放棄受理通知書は、本人あてのお知らせです。
いったん本人にお知らせをしたらお知らせは完了するから、再発行はされません。
相続放棄申述受理通知書の原本は保管しておいて、コピーを渡すといいでしょう。
多くの場合、相続放棄申述受理通知書のコピーを渡せば充分です。
相続放棄申述受理通知書を紛失してしまっても、相続放棄は無効になりません。
相続放棄申述受理通知書を紛失してしまった場合、家庭裁判所で相続放棄の証明をしてもらうことができます。
相続放棄の証明を相続放棄申述受理証明書と言います。
相続放棄申述受理証明書は、相続放棄をした人だけでなく債権者や他の相続人など法律上の利害関係がある人は取得することができます。
債権者などの利害関係人は、自分で相続放棄申述受理証明書を取り寄せることができます。
3家庭裁判所で手続しないと相続放棄はできない
①家庭裁判所で相続放棄をしたら相続人でなくなる
相続放棄は、本来、家庭裁判所に対する手続です。
家庭裁判所に対して、必要な書類をを添えて相続放棄をしたい旨の申立てをします。
相続放棄をした場合、はじめから相続人でなくなります。
被相続人の債権者は、被相続人の借金を払って欲しいと請求することはできません。
②遺産分割協議で相続放棄はできない
相続が発生すると、原則として、被相続人の財産は相続人が相続します。
被相続人の財産は、プラスの財産もマイナスの財産も相続財産になります。
相続人が相続する財産が、相続財産です。
相続財産は、相続人全員の共有財産です。
相続財産の分け方は、相続人全員の合意で決定します。
相続財産の分け方を決める相続人全員の話し合いを遺産分割協議と言います。
遺産分割協議において、一部の相続人が相続財産の受け取りをご辞退することがあります。
相続財産の受け取りをご辞退した人は、相続放棄をしたと表現するかもしれません。
相続財産の分け方を決める相続人全員の話し合いでご辞退しても、相続放棄ではありません。
相続放棄は、家庭裁判所で手続が必要だからです。
家庭裁判所で認めてもらわないと、相続放棄の効果は得られません。
③相続財産をご辞退しても借金を相続
相続放棄をした場合、はじめから相続人でなくなります。
被相続人の債権者は、被相続人の借金を払って欲しいと請求することはできません。
相続財産の分け方を決める相続人全員の話し合いでご辞退しても、相続放棄ではありません。
被相続人の債権者は、相続財産をご辞退した人に被相続人の借金を払って欲しいと請求することはできます。
相続財産の分け方についての相続人全員の合意事項は、相続人内部の合意に過ぎないからです。
相続人内部の合意事項だから、債権者などには関係ない話です。
債権者は、相続人全員に対して法定相続分で借金の返済を請求することができます。
相続財産の受け取りをご辞退すると相続人全員の合意で決めても、相続人のままです。
相続財産の受け取りをご辞退するする場合、プラスの財産を受け取っていないでしょう。
プラスの財産を受け取っていなくても、被相続人の借金は負担しなければなりません。
自称専門家は家庭裁判所で相続放棄の手続をするのは面倒だから、相続人間で決める方がいいとアドバイスしています。
自称専門家から自信満々に言われたら、信じてしまうかもしれません。
相続放棄と遺産分割協議は、別の手続です。
充分注意しましょう。
4相続放棄を司法書士に依頼するメリット
相続放棄はプラスの財産もマイナスの財産も引き継ぎませんという裁判所に対する申立てです。
相続人らとのお話合いで、プラスの財産を相続しませんと申し入れをすることではありません。
家庭裁判所で認められないとマイナスの財産を引き継がなくて済むというメリットは受けられません。
家庭裁判所で相続放棄が認められたとしても、絶対的なものではありません。
相続放棄の要件を満たしていない場合、その後の裁判で相続放棄が否定されることもあり得ます。
相続が発生すると、家族はお葬式の手配から始まって膨大な手続きと身辺整理に追われます。
相続するのか、相続を放棄するのか充分に判断することなく、安易に相続財産に手を付けて、相続放棄ができなくなることがあります。
相続に関する手続の多くは、司法書士などの専門家に任せることができます。
手続を任せることで、大切な家族を追悼する余裕もできます。
相続人の調査や相続財産調査など適切に行って、充分に納得して手続を進めましょう。
相続放棄は3か月以内の制限があります。
3か月の期間内に手続をするのは思うよりハードルが高いものです。
相続放棄を考えている方はすみやかに司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。
借金を知らなかったから相続放棄
1相続放棄は3か月以内に手続
相続が発生したら、原則として、被相続人のプラスの財産もマイナスの財産も相続人が受け継ぎます。
被相続人のプラスの財産もマイナスの財産も受け継がないことを相続の放棄といいます。
相続放棄をすると、プラスの財産を引き継がなくなりますが、マイナスの財産も引き継ぐことがなくなります。
家庭裁判所に対して、必要な書類をを添えて相続放棄をしたい旨の申立てをします。
相続放棄は、いつでもできるわけではありません。
相続人は、相続を単純承認するか相続放棄するか選択することができます。
相続を単純承認するか相続放棄するか決める期間を熟慮期間と言います。
熟慮期間は、3か月以内です。
相続放棄を希望する場合、熟慮期間内に家庭裁判所に必要書類を添えて手続をします。
2借金を知らなかったから相続放棄
①被相続人の死亡後3か月以内に相続放棄
相続放棄ができるのは3か月以内の制限があることは、比較的知られています。
熟慮期間は3か月だから、被相続人の死亡後3か月以内であれば熟慮期間中です。
被相続人の死亡後3か月以内に莫大な借金が見つかった場合、相続放棄の手続をすることができます。
②被相続人の死亡を知ってから3か月以内に相続放棄
被相続人や被相続人の家族と常時連絡を取っていた場合、被相続人の死亡はすぐに連絡されます。
さまざまな家庭の事情から、被相続人や被相続人の家族と疎遠になっている相続人がいるかもしれません。
被相続人や被相続人の家族と音信不通の場合、死亡直後に連絡はされないでしょう。
相続発生から長期間経過してから、相続発生を知ることがあります。
熟慮期間の起算点は、被相続人の死亡時ではありません。
知ってから、3か月以内です。
被相続人の死亡を知ってから3か月以内に莫大な借金が見つかった場合、相続放棄の手続をすることができます。
③自分が相続人と知ってから3か月以内に相続放棄
相続が発生した場合、相続人になる人は法律で決まっています。
相続人になる人は、次のとおりです。
(2)~(4)の場合、先順位の人がいる場合、後順位の人は相続人になれません。
(1)配偶者は必ず相続人になる
(2)被相続人に子どもがいる場合、子ども
(3)被相続人に子どもがいない場合、親などの直系尊属
(4)被相続人に子どももいない場合で、かつ、親などの直系尊属が被相続人より先に死亡している場合、兄弟姉妹
相続放棄をすることができるのは、相続人のみです。
先順位の相続人がいる場合、後順位の人は相続放棄の手続をすることはできません。
先順位の相続人が相続放棄をした場合、はじめから相続人でなかったと扱われます。
先順位の相続人全員が相続放棄をして相続人でなくなった場合、相続放棄の手続をすることはできます。
被相続人の死亡を知った後、長期間経過してから相続人になることがあります。
先順位の相続人について家庭裁判所で相続放棄が認められた場合、家庭裁判所は本人にだけ通知します。
家庭裁判所から自主的に次順位相続人に連絡することはありません。
先順位の相続人が積極的に相続放棄をしたことを連絡する義務はありません。
相続人になった後、長期間経過してから相続人になったことを知ることがあります。
熟慮期間の起算点は、被相続人の死亡時ではありません。
知ってから、3か月以内です。
相続人になったことを知ってから3か月以内の場合、相続放棄の手続をすることができます。
④借金を相続すると知ってから3か月以内に相続放棄
相続が発生した場合、被相続人のものは相続財産になります。
相続財産には、プラスの財産もマイナスの財産も含まれます。
被相続人と別居していた場合、被相続人の経済状況を詳しく知らないことがほとんどでしょう。
被相続人の自宅などで重要な書類を探しても何も見つからなかった場合、めぼしい財産はないと判断するのも止むを得ません。
めぼしい財産はないと思っていたのに長期間経過してから、借金の支払いの催促を受けることがあります。
熟慮期間の起算点は、被相続人の死亡時ではありません。
知ってから、3か月以内です。
借金を相続すると知ってから3か月以内の場合、相続放棄の手続をすることができます。
⑤上申書を提出して3か月以内を説明
相続放棄を希望する場合、熟慮期間内に家庭裁判所に必要書類を添えて手続をします。
必要書類は、戸籍謄本や除票などです。
家庭裁判所は、提出された書類を見て審査をします。
被相続人の死亡後3か月以上経過しているのに、熟慮期間内であることがあります。
熟慮期間の起算点は、知ってからだからです。
提出された戸籍謄本や除票を見ても、いつ相続人になったことを知ったのか分かりません。
いつ借金の存在を知ったのか家庭裁判所には伝わりません。
被相続人の死亡後3か月以上経過している場合、詳しい事情を分かってもらう必要があります。
詳しい事情を記載した上申書を添えて、家庭裁判所を説得します。
何らかの手紙を受け取ったことで相続人であることや借金の存在を知ったのであれば、この手紙は重要です。
相続人であることや借金の存在を知った証拠になるからです。
この手紙を一緒に家庭裁判所に提出すると説得力が増します。
家庭裁判所が納得してくれた場合、相続放棄が認められます。
3遺産がないと信じることに相当な理由がある
①単に知らなかっただけは認められない
相続放棄ができるのは、3か月以内の制限があります。
被相続人が死亡したことと自分が相続人になったことの両方を知ってから、3か月以内に手続をしなければなりません。
悪質な貸金業者などは、被相続人が死亡してから3か月以上経過してから取立を開始することがあります。
相続人には、相続を単純承認するか相続放棄するか選択する権利があります。
被相続人が死亡してから3か月以上経過してから取立を開始した場合、相続人は借金の存在を知ることができません。
借金の存在を知らない場合、相続人は相続放棄をすることはないでしょう。
実質的に、相続放棄をする権利を奪っていると言えます。
相続人が相続放棄をする権利を不当に奪うことは、許されません。
特別な事情があると認められれば、相続放棄が認められます。
特別な事情とは、相続人が借金は存在しないと信じており、かつ、信じたことに正当な理由がある場合です。
単に、知らなかっただけでは、特別な事情とは認められません。
うっかりしていたなどの理由も、相続放棄が認められるのは難しいでしょう。
相続人が充分に調査をしても借金が判明しなかった場合や被相続人と音信不通であったなどの事情がある場合、信じたことに正当な理由があると認められるでしょう。
②被相続人の借金を調査する方法
相続人が借金は存在しないと信じており、かつ、信じたことに正当な理由がある場合、相続放棄をすることができます。
相続人は、充分な調査をしていたことを分かってもらう必要があります。
被相続人が借金をしていた場合、次の信用情報機関に調査をすることができます。
(1)消費者金融からの借入 日本信用情報機構(JICC)
(2)クレジット会社からの借入 株式会社シー・アイ・シー(CIC)
(3)銀行からの借入 全国銀行協会全国銀行個人信用情報センター
信用情報機関に連帯保証人が登録されている場合があります。
信用情報機関に照会することで、被相続人が連帯保証人になっていたことが判明するかもしれません。
不動産がある場合、抵当権や根抵当権が登記されている場合があります。
不動産を担保として借入がある可能性が高いので必ず確認しましょう。
③個人間の貸し借りは分からない
個人間の貸し借りや金融業者以外の会社からの借り入れは、信用情報機関に登録されていません。
被相続人の保管していた書類を丹念に調べることになります。
④上申書を提出して相当な理由を説明
被相続人の死亡後3か月以上経過している場合で、かつ、借金の存在を知ってから3か月以内に相続放棄をする場合、上申書の提出が有効です。
熟慮期間の起算点は、知ってからだからです。
提出された戸籍謄本や除票を見ても、いつ借金の存在を知ったのか分かりません。
いつ借金の存在を知ったのか家庭裁判所には伝わりません。
被相続人の死亡後3か月以上経過している場合、詳しい事情を分かってもらう必要があります。
詳しい事情を記載した上申書を添えて、家庭裁判所を説得します。
4単純承認をしていると相続放棄はできない
相続人には、相続を単純承認するか相続放棄するか選択する権利があります。
法律で定められた一定の条件にあてはまるときは、単純承認したとみなされます。
単純承認とは、被相続人のプラスの財産もマイナスの財産も受け継ぐものです。
単純承認とみなされたら、相続放棄はできません。
被相続人が払うべきお金を相続財産から支払う場合、単純承認とみなされます。
相続財産を処分したと判断されるからです。
5相続放棄を司法書士に依頼するメリット
実は、相続放棄はその相続でチャンスは1回限りです。
家庭裁判所に認められない場合、即時抗告という手続を取ることはできますが、高等裁判所の手続で、2週間以内に申立てが必要になります。
家庭裁判所で認めてもらえなかった場合、即時抗告で相続放棄を認めてもらえるのは、ごく例外的な場合に限られます。
一挙にハードルが上がると言ってよいでしょう。
相続放棄は撤回ができないので、慎重に判断する必要があります。
被相続人の死亡後3か月以内の相続放棄と較べると、3か月以上経過した相続放棄は難易度が高くなります。
認められる条件を満たしていても、書面で適切に表現しなければ伝わらないからです。
家庭裁判所が知りたいことを無視した作文では何の意味もありません。
相続放棄が認められる条件を満たしていることを家庭裁判所に納得してもらう必要があります。
相続放棄を自分で手続したい人の中には、戸籍や住民票だけで認められるとカンタンに考えている人がいます。
司法書士は、このような難易度が高い相続放棄にも対応しています。
相続放棄を考えている方は、司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。
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