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遺留分の放棄
1遺留分の放棄とは
被相続人は、原則として、自分の財産をだれに受け継がせるかは自由に決めることができます。
とはいえ、財産は被相続人が1人で築いたものではなく、家族の協力があって築くことができたもののはずです。
被相続人の名義になっているからといって、まったく無制約の自由にすると今まで協力してきた家族に酷な結果となることもあります。
このため、被相続人に近い関係の相続人には相続財産に対して最低限の権利が認められています。
遺留分とは、相続財産に対して、認められる最低限の権利のことです。
遺言書などで遺留分を侵害された相続人は、遺留分侵害額請求をすることができます。
遺留分を侵害した相続人に対して遺留分に相当する金銭を請求します。
遺留分の放棄は、相続財産に対して認められる最低限の権利を相続人自身の意思で放棄することです。
相続人自身の意思で、遺留分侵害額請求をしないという制度のことです。
被相続人からすでに充分な贈与を受けている場合や相続争いに巻き込まれたくない場合に遺留分放棄がされます。
遺留分の放棄は最低限の権利を放棄するだけです。
相続放棄とちがい、遺留分を放棄しても相続財産を相続する権利は失われません。
2生前の遺留分放棄の口約束や同意書・念書は無効
一部の相続人に全財産を相続させるような極端な遺言書があった場合、他の相続人の遺留分が侵害されることになります。
何も対策しないまま相続が発生した場合、遺留分を侵害された相続人とトラブルになるでしょう。
トラブルにならないようにするために、遺留分を放棄をさせたいと考えるかもしれません。
被相続人が相続人に対して「遺留分侵害額請求をするな」と命じるケースがあります。
「遺留分侵害額請求をするな」という被相続人の命令は、法律上無効です。
被相続人が相続人に対して「遺留分侵害額請求をしません」と約束させるケースがあります。
「遺留分侵害額請求をしません」という被相続人と相続人の口約束は、法律上無意味です。
被相続人が「遺留分侵害額請求をしません」と念書を書かせるケースがあります。
「遺留分侵害額請求をしません」という念書を書かせた場合、法律上意味はありません。
生前に「遺留分侵害額請求をしません」と他の相続人と合意書を作るケースがあります。
生前に「遺留分侵害額請求をしません」という合意書を作った場合、法律上何の価値もありません。
「遺留分侵害額請求をしません」と被相続人や他の相続人に覚書を書くケースがあります。
「遺留分侵害額請求をしません」という覚書を書いた場合、効力はありません。
遺留分の放棄は、相続人の意思で遺留分侵害額請求をしないという制度です。
被相続人の生前に遺留分を放棄するためには、家庭裁判所の許可が必要です。
家庭裁判所の許可がないのに遺留分の放棄はできません。
被相続人の生前は遺留分は自由に放棄できません。
家庭裁判所の許可なく遺留分を放棄できるとすると、被相続人や他の相続人の干渉を招くことになります。
相続が発生する前から、相続トラブルが発生することになるからです。
相続トラブルの激化を防ぐため、被相続人の生前は家庭裁判所の許可なく遺留分の放棄はできません。
だから、「遺留分侵害額請求をするな」という被相続人の命令は、法律上無効です。
「遺留分侵害額請求をしません」という被相続人と相続人の口約束は、法律上無意味です。
「遺留分侵害額請求をしません」という念書を書かせた場合、法律上意味はありません。
「遺留分侵害額請求をしません」という契約書を作った場合、法律上何の価値もありません。
「遺留分侵害額請求をしません」という申入書を差し入れた場合、効力はありません。
実印を押しても、印鑑証明書があっても無効です。
何の効果もないから、相続発生後に遺留分侵害額請求をされた場合、何の文句も言えません。
念書があるから、契約書があるから、申入書があるから、遺留分侵害額請求を拒むことはできません。
遺留分侵害額請求をしないのが、相続人の意思であるのかを公平に確認するために家庭裁判所の許可が必要になります。
3相続発生前の遺留分の放棄は家庭裁判所の許可が必要
相続が発生する前に遺留分を放棄するためには、家庭裁判所の許可が必要になります。
遺留分は一定の相続人に認められる最低限の権利だからです。
最低限の権利を失うのが遺留分の放棄です。
遺留分を放棄させられるものではなく、相続人の意思で放棄するものです。
法律の専門家でない自称専門家は、遺留分を放棄させれば相続トラブルのない円満な相続ができますなどと安易に説明しています。
無理矢理、気に入らない相続人の遺留分を放棄させることはできません。
家庭裁判所は遺留分の放棄が強要されたものでないか確認します。
遺留分の放棄の申立てができるのは、遺留分がある相続人です。
遺留分の放棄の申立てができるのは、被相続人の生存中です。
遺留分の放棄の申立ては、被相続人の住所地の家庭裁判所です。
家庭裁判所の管轄は、裁判所のホームページで調べることができます。
遺留分の放棄の申立書に添付する書類は、次のとおりです。
①被相続人の戸籍謄本
②申立人の戸籍謄本
③被相続人の財産目録
遺留分の放棄は、相続人の意思が重視されます。
気に入らない相続人の遺留分を放棄させる危険が大きいことから、相続人の意思だけでなく、合理的理由があるかも判断の対象になっています。
合理的理由とは、遺留分の放棄の申立てをする必要性や充分な理由があることです。
遺留分の放棄の申立てをする充分な理由とは、遺留分の放棄をするに見合う充分な代償を得ていることです。
多くの場合、充分な生前贈与を受けている場合や事業などに充分な出資をしてもらっている場合が該当します。
親の言いなりにならないからとか気に入った相続人に財産を受け継がせたいからなどは、認められないでしょう。
遺留分放棄の申立てが家庭裁判所で認められた場合、遺留分放棄が許可されたことが通知されます。
遺留分放棄の申立てが許可されたか却下になったかを、被相続人が確認したい場合もあるでしょう。
被相続人は、遺留分放棄許可証明書を発行してもらうことができます。
家庭裁判所で遺留分放棄が認められた後は、原則として、撤回はできません。
例外は、遺留分の放棄の原因になった事情に大きな変化があった場合や遺留分権利者の意思で遺留分放棄の申立てをした場合でなかった場合などです。
例外にあたる場合、家庭裁判所に遺留分の放棄の許可の取り消しの申立てをします。
家庭裁判所に許可を取り消してもらう必要があります。
4相続発生後の遺留分の放棄は自由にできる
相続が発生した後であれば、遺留分は自由に放棄することができます。
相続が発生した後は、相続権も遺留分も自分に帰属した具体的権利だからです。
具体的な自分の権利だから、家庭裁判所の許可は必要ありません。
遺留分侵害額請求権は、遺留分がある権利者からの請求が必要です。
遺留分を侵害されたとしても、遺留分侵害額請求をしないことができます。
遺留分侵害額請求をしない場合、遺留分を放棄したことと同じ効果になります。
遺留分侵害額請求権は、遺留分が侵害されたことを知ってから1年で時効になります。
それでも遺留分侵害額請求をされるかもしれないと不安になる相続人はいるでしょう。
「遺留分侵害額請求をしません」という念書を書いてあげた場合、安心するでしょう。
5遺言書の付言事項は単なるお願いに過ぎない
一部の相続人に全財産を相続させるような極端な遺言書があった場合、他の相続人の遺留分が侵害されることになります。
何も対策しないまま相続が発生した場合、遺留分を侵害された相続人とトラブルになるでしょう。
遺言書には、付言事項を書くことができます。
付言事項に「遺留分侵害額請求をしないように」と書けばトラブルにならないとすすめる自称専門家がいます。
確かに、何も書かないよりは書いた方が心情に訴えることができるでしょう。
付言事項には、法律上の効果はありません。
法律上は何の効果もないけれど、書かないよりは多少ましになる程度のものです。
付言事項に「遺留分侵害額請求をしないように」と書いてある場合、単なるお願いに過ぎません。
付言事項に「遺留分侵害額請求をしないように」と書いてあっても、遺留分権利者は遺留分侵害額請求ができます。
付言事項に「遺留分侵害額請求をしないように」と書いてあるから、遺留分侵害額請求を拒むことはできません。
付言事項には、財産の分け方を決めた理由と家族の円満を希望している気持ちを書くといいでしょう。
6遺言書作成を司法書士に依頼するメリット
被相続人は、原則として、自分の財産を誰に受け継がせるかは自由に決めることができます。
自由に決めることができるものの、完全に自由に決めることができるわけではありません。
兄弟姉妹以外の相続人には、遺留分があるからです。
遺留分を侵害するような遺言書である場合、相続発生後に大きなトラブルになりかねません。
侵害された相続人は遺留分侵害額請求をすることができます。
自分の思い通りの遺産分割を実現させるために、遺留分を放棄させようと考えるかもしれません。
相続発生前の遺留分の放棄には家庭裁判所の許可が必要です。
遺留分の放棄をさせれば、自分の思い通りの遺産分割を実現できると思えます。
書類さえ提出すれば、家庭裁判所がカンタンに許可をしてくれるわけではありません。
念書を書かかせても法律上意味はなく、かえってトラブルの火種になります。
遺留分を侵害するような遺言書である場合、遺言書自体が無効だと主張されるおそれがあります。
遺言書自体が無効だと主張される場合、多くは修復困難な家族のもめごとになるでしょう。
あえてトラブルになる遺言書に固執するより遺留分を侵害しない遺言書を作成した方が現実的です。
家族のトラブルを減らすためには、遺留分を侵害しない遺言書を作成する方が有効です。
自分の思い通りの遺産分割と家族の幸せを比べたときに、どちらがより重要か考えましょう。
家族を幸せにしたいと思って生涯をかけて築いた財産のはずです。
生涯をかけて築いた財産で、家族がトラブルになるのであれば本末転倒です。
家族の幸せを思って遺言書を作成したいと考えるのであれば司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。
相続放棄-家族信託
1家族信託とは
所有者はものを自由に売ったり、自由に管理したりして、ものから利益を受け取ることができます。
だから、所有権は、自由にものを売る権利であるし、自由に管理する権利であるし、ものから利益を受け取る権利であるといえます。
所有権はよく見ると、たくさんの権利の集合体といえます。
たくさんの権利の集合体である所有権から、自由に売る権利や自由に管理する権利を信頼できる家族に渡して、自分はものから利益を受け取る権利だけ持っていることができます。
自由に売る権利や自由に管理する権利を信頼できる家族に渡して、自分はものから利益を受け取る権利だけ持つ仕組みを家族のための信託といいます。
この仕組みを利用すると、信頼できる家族は自由にものを売ることができるし、自由に管理することができます。
自由に売る権利や自由に管理する権利を渡す相手は信頼できる家族であればよく、親子でなくても差し支えありません。
2信託財産は独立した財産になる
家族信託をすると、信託財産は信頼できる家族の名義になります。
名義は信頼する家族のものになりますが、その人の財産ではありません。
自由に売る権利や自由に管理する権利を預ける人を、委託者と言います。
自由に売る権利や自由に管理する権利を預かる信頼できる家族のことを受託者と言います。
信託財産は管理や処分をお願いしているだけだから、受託者の固有の財産とは別に扱われます。
信託財産は、受託者の名義になっているだけで、独立した財産です。
信託財産は、委託者の固有の財産でもありません。
信託財産は委託者の財産でもないし、受託者の財産でもなくなります。
信託財産は、だれの財産でもない独立した財産です。
委託者の固有の財産ではないから、委託者に相続が発生した場合、信託財産は相続財産になりません。
相続財産になるのは、委託者の固有の財産だけです。
信託契約では、いつ信託が終了するのか、信託が終了したら信託財産はだれが受け継ぐのか決められます。
信託財産は、信託契約で決められたときに終了し、信託契約で決められた人に受け継がれます。
3家族信託があっても相続放棄はできる
家族信託の委託者に相続が発生した場合、相続財産になるのは委託者の固有の財産だけです。
相続人は、相続放棄をすることができます。
相続放棄をしたら、被相続人のプラスの財産もマイナスの財産も受け取ることはできません。
受け取ることができないのは、相続財産についての話です。
相続放棄をしたら、相続財産のうちプラスの財産も、相続財産のうちマイナスの財産も受け取ることはできません。
委託者が信託した財産は独立した財産だから、相続放棄の影響を受けません。
信託契約で決められたときに終了し、信託契約で決められた人が受け継ぎます。
委託者が死亡したとき信託が終了すると決められているケースもあるでしょう。
信託が終了したら信託財産を受け継ぐと指定された人が、相続人であることもあるでしょう。
信託が終了したら信託財産を受け継ぐと指定された人がだれであっても、相続人は、相続放棄をすることができます。
相続人として相続放棄をした場合であっても、信託契約は影響を受けません。
信託財産は、信託契約の定めに従って受け継がれます。
相続人が相続放棄をした場合であっても単純承認をした場合であっても、信託契約に従って信託財産を受け継ぐことができます。
4借金逃れで家族信託を悪用することはできない
信託財産は、委託者の固有の財産でもありません。
信託財産は委託者の財産でもないし、受託者の財産でもなくなります。
信託財産は、だれの財産でもない独立した財産です。
原則として、相続放棄をしても、信託が終了したら信託財産を受け継ぐと指定された人は信託財産を受け取ることができます。
例えば、委託者の財産がわずかなプラスの財産と莫大なマイナスの財産であるようなケースで問題になります。
この状況で、委託者がわずかなプラスの財産すべてを信託契約で信託財産にすることが考えられます。
莫大なマイナスの財産は委託者の固有の財産のままです。
この後、相続が発生した場合、相続人は相続放棄をするでしょう。
原則どおりでは、相続財産と信託財産は別物だから、マイナスの財産を受け継がずに、わずかなプラスの財産を受け取ることができるとなってしまいます。
このようなことができると、債権者にあまりに気の毒です。
債権者は、裁判所に訴えて、理不尽な信託の取り消しを請求することができます。
借りたお金を返さなければならないのに、不当に家族信託にして結果、お金を返せなくしているからです。
自分の財産を不当に減少させたら、お金を貸した人はお金を返してもらえなくなる結果になります。
お金を貸した人が困ることを分かっていて、契約した信託を詐害信託と言います。
お金を貸した人が困ることについて、委託者と受益者が知っていた場合、信託は詐害信託と言えます。
裁判所に詐害信託と認められたら、信託は取り消されます。
お金を貸した人が困ることについて、受託者は知っていても知らなくても関係がありません。
受託者は信託財産を預かって管理しているだけだから、保護の必要性がないからです。
お金を貸した人が困ることについて、知っていても知らなくても、受託者は裁判の被告になります。
お金を貸した人が困ることについて、受益者が知っていた場合、第三者に受益権を譲渡することがあります。
詐害信託に認定されると、裁判所から信託財産からの給付が取り消されてしまうからです。
信託財産からの給付を取り消されないようにするために、お金を貸した人が困ることについて、何も知らない第三者に信託受益権を無償で譲渡しようとするのです。
このような行為は、不当な行為です。
このような不当な行為をした場合、お金を貸した人が困ることについて、受益者は知っていても知らなくても、受益者は知っていたと扱われます。
つまり、受益者はお金を貸した人が困ることについて知らなかったから、保護して欲しいとは言えなくなるという意味です。
無償で譲渡するとは、無償のときだけでなく、通常とは不釣り合いな有償の場合を含みます。
わずかな有償は、無償と同視されるという意味です。
わずかな額で、保護されることは不当だからです。
5家族信託を悪用すると取消される
債権者は、裁判所に訴えて、理不尽な信託の取り消しを請求することができます。
さらに、次のような効果があります。
①信託財産からの給付が取消される
信託財産からの給付がされる前の場合で、かつ、受益者全員が債権者が困るのを知っていた場合、信託財産からの給付が取消されます。
信託財産からの給付がされた後の場合で、かつ、債権者が困るのを知っていた受益者について、信託財産からの給付が取消されます。
②信託受益権の譲渡請求ができる
債権者が困るのを知っていた受益者について、信託受益権を委託者に譲渡するように請求することができます。
③自己信託の特例
家族信託は、委託者と受託者が同じ人で設定することができます。
委託者と受託者が同じ人になる信託を、自己信託と言います
自己信託であっても、信託財産と固有の財産は別物と扱うのが原則です。
借金逃れなど債権者を困らせる目的で、自己信託を設定することはやはり許されることではありません。
自己信託が詐害信託である場合、債権者を保護するため、信託財産と固有の財産は別物と扱いません。
債権者は、信託財産であっても差押などの執行をすることができます。
借金逃れなど家族信託を悪用することはできないのです。
6家族信託を司法書士に依頼するメリット
家族信託は、信託契約によって柔軟に設計することができます。
今までの遺言書や後見などでできないことも実現することができます。
柔軟で自由に設計できるからこそ、契約内容や手続きは難しく専門家のサポートが欠かせません。
委託者の固有の財産から切り離して、だれの財産でもない独立した財産にできることも大きな魅力でしょう。
一方で、このような魅力を悪用することを考える人がいるかもしれません。
借金から逃れるために信託を利用するなどは、典型例でしょう。
このようなことをすると大きなトラブルになってしまいます。
これ以外にも、委託者の固有の財産から切り離して、だれの財産でもない独立した財産にできることから、遺留分を侵害する恐れもあります。
遺留分侵害額請求から逃れるために信託を悪用する事例もあります。
委託者、受託者、受益者の関係者がすべて家族で完結するから安心と言えますが、全員に知識がないことが多くトラブルに発展しやすいと言えます。
家族全員が家族信託について話し合い、充分知識をつけて、何でも相談できるのであれば、円滑に運用することができるでしょう。
充分な知識がないのに、信託を設定するとトラブルが起きると言えます。
受託者監督人など家族以外の専門家のサポートを受ける方が安心できる場合もあります。
家族信託は、公正証書で契約しなくても有効になります。
公正証書は公証人という専門家の目も通るし、契約内容についてのトラブルを防ぐこともできます。
やはり専門家のサポートが欠かせないというべきでしょう。
家族信託を考えている方は司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。
相続放棄-アパート経営
1貸主の地位は相続財産
被相続人が賃貸マンションや賃貸アパートを保有していることがあります。
お部屋を貸している人が死亡しても、賃貸借契約は終了しません。
相続が発生すると、原則として、被相続人の財産は相続人が相続します。
相続人が相続する財産が、相続財産です。
賃貸マンションやアパートのような収益不動産は、人に貸して収益をあげています。
賃貸マンションやアパートのような物は相続財産としてイメージしやすいでしょう。
これ以外にも、大家の地位も相続の対象になります。
2債務超過なら相続放棄ができる
被相続人が賃貸マンションや賃貸アパートを保有していた大家と聞くと、一般的に資産家のイメージが浮かびます。
被相続人が収益不動産を上手に活用して、大きな収益をあげていたかもしれません。
家族が全く関与していない場合、不動産経営に不安を感じることでしょう。
不動産の収益状況が良く資産価値が高いのであれば、相続して不動産を売却するのがいいでしょう。
賃貸マンションや賃貸アパートの立地によっては、空室が多く収益がよくないことがあります。
賃貸マンションや賃貸アパートが老朽化して、多額の修繕費が必要な場合もあるでしょう。
賃貸マンションや賃貸アパートを建築するとき多額のローンが残っているかもしれません。
収益が悪化しているなど相続すると相続人の人生が破綻する場合、相続放棄をすることができます。
相続放棄は、相続人間の話し合いで賃貸マンションや賃貸アパートを受け継がないと申し入れをすることではありません。
相続人全員の遺産分割協議書に賃貸マンションや賃貸アパートを受け継がないと記載して全員で署名実印押印をすることでもありません。
家庭裁判所に書類を揃えて、相続放棄の申出をすることです。
家庭裁判所に相続放棄を認めてもらうことが重要です。
家庭裁判所が相続放棄を認めても、相続財産を処分した場合、相続放棄は無効になります。
相続財産を処分するとは、典型的には、被相続人の預貯金を使った、被相続人あての請求を相続財産で支払ったというものでです。
賃貸マンションや賃貸アパートの経営に関わるものとしては、家賃を入居者に請求した、家賃の受取口座を自分名義の口座にしたなどがあります。
相続財産を処分したと判断されると、相続放棄は無効になります。
3相続放棄をしても連帯保証人の義務はそのまま
被相続人が賃貸マンションや賃貸アパートを建築するとき、不動産ローンを組むことがあります。
多額の融資を受けることになるので、金融機関は連帯保証人を立てることを求めてきます。
被相続人がローンを組む場合、相続人が連帯保証人になっていることがあります。
連帯保証人は、ローンを組んだ人がお金を返せなくなった場合に肩代わりをしますと銀行に約束した人です。
銀行は、ローンを組んだ人がお金を返せなくなっても、肩代わりの人に請求できるので安心してお金を貸せます。
被相続人が多額のローンを残したまま死亡した場合、相続人は相続放棄をすることができます。
相続人が相続放棄をした場合、被相続人の借金を相続することはありません。
相続人として被相続人のアパートローンを返す義務はなくなりますが、肩代わりの義務は残ります。
借金を肩代わりする義務は、銀行と相続人がした契約だからです。
相続とは関係ない相続人の固有の義務だからです。
被相続人が不動産ローンを残したまま死亡した後、相続人が相続放棄をしたら借金を返してもらえなくなります。
ローンを組んだ人がお金を返せなくなった場合に肩代わりをしますと約束してもらったのだから、銀行は約束どおり肩代わりをしてくださいと言ってきます。
相続放棄したから、肩代わりはしませんということはできません。
肩代わりの義務は、相続とは関係ない相続人固有の義務だからです。
4不動産ローンの連帯保証人になるのは慎重に
アパート経営は、事業リスクがある不動産事業です。
被相続人の名義でアパートローンを組んだ場合であっても、実態としては不動産事業は家族で経営していることが多いものです。
だから、銀行は家族を連帯保証人に立てるように求めてきます。
連帯保証人でない相続人は相続放棄をした場合、被相続人の借金を相続することはありません。
連帯保証人である相続人は相続放棄をした場合、連帯保証人として被相続人の借金から逃れられません。
連帯保証人は、アパート経営を引き継がなければならなくなるのです。
連帯保証人が死亡した場合、連帯保証人の地位は相続人に相続されます。
連帯保証人の配偶者や子どもなどは何も知らないところで連帯保証人の地位を相続してしまうおそれがあります。
アパートローンを組んだ人が順調にローン返済ができている間は、銀行は困ることがないからです。
順調に不動産ローンが返済されている間は、連帯保証人に何も言って来ないのが通常です。
アパートに空室や家賃の滞納が多くなった場合、貯金を切り崩してローンを返済することなります。
アパートの家賃以外の収入や貯金を使って返済しきれなった場合、ローン返済が滞ることになります。
連帯保証人の地位を相続して長期間経過してローンの返済が滞ってから、銀行は肩代わりを求めてきます。
今まで何も教えてもらえなかったのにと文句を言いたい気持ちは分かりますが、銀行に非はありません。
連帯保証人の家族間の連絡不足です。
相続放棄は、相続の発生を知ってから3か月以内に家庭裁判所に手続をしなければなりません。
相続の発生を知ってから3か月以上経過している場合でも、大きな借金があることを知ってから3か月以内であれば、相続放棄は認められる場合があります。
相続が発生してから長期間経過している場合、銀行預金などの解約や自宅などの名義変更をしているでしょう。
銀行預金などの解約や自宅などの名義変更をした場合、単純承認をしたとみなされます。
単純承認をした場合、相続放棄をすることはできません。
家庭裁判所が事情を知らずに相続放棄を認めてしまった場合であっても、単純承認した場合は相続放棄が無効になります。
5家族を不動産ローンの連帯保証人にしない方法
不動産投資は株式投資と比べると、一般的に言ってリスクが低いとされています。
不動産投資でまとまった金額が必要になるため、家族を連帯保証人にしたくない人もいるでしょう。
①団体信用生命保険に加入する
連帯保証人は、ローンを組んだ人がお金を返せなくなった場合に肩代わりをしますと銀行に約束した人です。
団体信用生命保険は、債務者が死亡した場合や高度障害を負った場合、ローン残債を返済してくれる保険です。
不動産ローン商品によっては団体信用生命保険に加入することで連帯保証人を立てなくても済みます。
ローンの返済義務がなくなった場合、家賃収入があれば相続人は安心できるでしょう。
一方で、団体信用生命保険に加入する場合、ローンの金利が上乗せされます。
ローンの借り入れ額が通常より制限されることがあります。
年齢によっては、団体信用生命保険に加入することができない場合があります。
②法人化する
個人事業を法人にしたうえで、法人がアパート経営をする方法があります。
法人がアパートローンを組み、法人の代表者が連帯保証人になる方法です。
法人化すると、家族を連帯保証人にすることなく済みます。
一方で、法人設立の手間と費用がかかります。
税務申告や税金の負担、社会保険の強制加入になるなどの負担があります。
6アパート経営の相続放棄を司法書士に依頼するメリット
大切な家族を失ったら、大きな悲しみに包まれます。
やらなければいけないと分かっていても、気力がわかない方も多いです。
収益物件を保有している人は、資産家であることが多いので収益物件の評価額も気になることが多いでしょう。
賃貸マンションや賃貸アパートの収支状況がいい場合ばかりではありません。
賃貸マンションや賃貸アパートを相続すると、相続人の人生が破綻しかねない場合もあります。
相続人が遠方に住んでいる、アパート経営に関心や自信がない場合もあるでしょう。
ローン残債が多額で多額の修繕が必要であるなどメリットがない場合は相続放棄をすることができます。
相続放棄の手続も司法書士はサポートします。
賃貸マンションや賃貸アパートの相続について、司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。
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