相続放棄しても遺族年金

1相続放棄をしても相続財産以外は受け取りができる

相続が発生したら、原則として、被相続人のプラスの財産もマイナスの財産も相続人が受け継ぎます。

相続財産というとプラスの財産だけイメージしがちですが、マイナスの財産も含まれます。

マイナスの財産が多い場合、相続放棄をすることができます。

法律で定められた一定の条件にあてはまるときは、単純承認したとみなされます。

単純承認とは、被相続人のプラスの財産もマイナスの財産も受け継ぐものです。

単純承認とみなされたら、相続放棄はできません。

被相続人が払うべきお金を相続財産から支払う場合、単純承認とみなされます。

相続財産を処分したと判断されるからです。

被相続人が払うべきお金であっても、相続人が自分の財産から払う場合、単純承認とみなされません。

被相続人が死亡したことをきっかけに受け取るお金には、被相続人の財産を引き継ぐものと相続人自身の固有の権利として受け取るものがあります。

被相続人の財産を引き継ぐ場合、単純承認とみなされます。

相続人自身の固有の権利として受け取る場合、単純承認とみなされません。

相続放棄をした場合、相続財産を受け取ることはできませんが、相続財産以外であれば受け取ることができます。

2相続放棄をしても遺族年金を受け取ることができる

遺族年金は、年金に加入していた人が死亡したときに遺族に対して支給される年金です。

遺族年金を受け取る権利は、相続財産ではありません。

被相続人の死亡をきっかけにして、遺族に対して支給されます。

被相続人が生前に遺族年金の受給権を得てはいませんから、被相続人から受け継ぐものではありません。

遺族年金の受給権は、遺族の固有の権利です。

被相続人から相続するものではないから、相続放棄とは無関係です。

相続放棄をしても相続放棄をしなくても、遺族年金を受け取ることができます。

遺族年金を請求しても、相続財産を消費したと判断されることはありません。

相続財産を消費した場合、相続の単純承認をしたと判断されます。

遺族年金を受け取っても、相続の単純承認をしたと言われることはありません。

遺族年金を受け取る権利は、相続財産ではなく遺族の固有の財産だからです。

相続放棄をした後に遺族年金を請求した場合、相続放棄が無効になることはないし、遺族年金が取り消されることはありません。

遺族年金を受け取った後に相続放棄をした場合、相続放棄が無効になることはないし、遺族年金が取り消されることはありません。

遺族年金の受給権は、遺族の固有の権利だから、相続放棄とは無関係です。

すでに相続放棄をした場合でも、これから相続放棄をするつもりでも、遺族年金を受け取ることができます。

3遺族年金等を受け取る方法

遺族年金を受け取るための条件をすべて満たしている場合、遺族年金を受け取ることができます。

①遺族基礎年金

次の要件のいずれかを満たしている人が死亡した場合、遺族基礎年金が支給されます。

(1)国民年金加入中の人

(2)国民年金の被保険者であった60歳以上65歳未満の方で、日本国内に住所を有していた人

(3)老齢基礎年金の受給権がある人

(4)老齢基礎年金の受給資格を満たした人

(1) (2)においては、保険料納付済期間等が国民年金加入期間の3分の2以上あることが必要です。

死亡日が令和8年3月31日までのときは、死亡日が含まれる月の前々月までの直近1年間に保険料の未納がなければよいとされます。

直近1年間に保険料の未納がなければよいのは、死亡した人が65歳未満の場合です。

(3) (4) においては、保険料納付済期間等が25年以上あることが必要です。

遺族基礎年金を受け取ることができるのは、次の人です。

(1)子のある配偶者

(2)子

子は、18歳になった年度の3月31日までになる人、または、20歳未満で障害年金の障害等級1級または2級の状態にある人を指します。

子は、婚姻していない場合に限ります。

子のある配偶者が遺族年金を受け取っている場合、子は支給停止になります。

厚生年金加入者は、国民年金2号被保険者として国民年金加入者です。

厚生年金加入者が死亡した場合、条件を満たせば、遺族厚生年金を一緒に受け取ることができます。

②寡婦年金

遺族基礎年金を受け取る条件を満たせない場合であっても、寡婦年金を受け取ることができる場合があります。

寡婦年金を受け取る条件は次のとおりです。

(1)死亡した人が夫であること

(2)死亡した夫に国民年金1号被保険者期間があること

(3)死亡した夫の国民年金1号被保険者期間の保険料納付済期間等が10年(平成29年7月31日以前の死亡の場合25年)以上あること

(4)死亡した夫と10年以上継続して、婚姻関係にあること

(5)死亡した夫に生計を維持されていた妻であること

(6)妻の年齢が60歳から65歳までの間であること

(7)死亡した夫が老齢基礎年金や障害基礎年金を受けていないこと

(8)妻が老齢年金を繰り上げ支給されていないこと

③死亡一時金

死亡一時金は、文字どおり一度だけ支給されます。

年金ではありません。

死亡一時金を受け取る条件は次のとおりです。

(1)死亡した人に国民年金1号被保険者があること

(2)死亡した人の国民年金1号被保険者期間の保険料納付済期間等が36か月以上あること

(3)死亡した人が老齢基礎年金や障害基礎年金を受けていないこと

(4)遺族が遺族基礎年金を受けることができないこと

寡婦年金を受け取る権利がある場合、どちらかを選択することができます。

死亡一時金を受け取る権利は、死亡日の翌日から2年で時効で消滅します。

死亡一時金を受け取ることができる人は次のとおりです。

(1)配偶者

(2)子

(3)父母

(4)孫

(5)祖父母

(6)兄弟姉妹

優先順位の高い人が一度だけ請求することができます。

④遺族厚生年金

次の要件のいずれかを満たしている人が死亡した場合、遺族厚生年金が支給されます。

(1) 厚生年金加入中の人

(2)厚生年金加入中に初診日のある病気やけがで初診日から5年以内に死亡した人

(3)1級2級の障害厚生年金を受給中の人

(4)老齢厚生年金の受給権がある人

(5)老齢厚生年金の受給資格を満たした人

(1) (2)においては、保険料納付済期間等が国民年金加入期間の3分の2以上あることが必要です。

死亡日が令和8年3月31日までのときは、死亡日が含まれる月の前々月までの直近1年間に保険料の未納がなければよいとされます。

直近1年間に保険料の未納がなければよいのは、死亡した人が65歳未満の場合です。

(4) (5)においては、保険料納付済期間等が25年以上あることが必要です。

遺族厚生年金を受け取ることができるのは、次の人です。

(1)子のある妻、子のある55歳以上の夫、子

(2)子のない妻、子のない55歳以上の夫、

(3)55歳以上の父母

(4)孫

(5)55歳以上の祖父母

(2)子のない30歳未満の妻は5年のみ受給ができます。

(1)子(4)孫は、18歳になった年度の3月31日までになる人、または、20歳未満で障害年金の障害等級1級または2級の状態にある人を指します。

夫、父母、祖父母の受給開始は、60歳からです。

夫が遺族基礎年金と併給できる場合、55~60歳の間は遺族厚生年金を受け取ることができます。

4確定拠出年金の死亡一時金は5年以内なら受け取りができる

被相続人が確定拠出年金を積み立てている場合があります。

確定拠出年金を積み立てていた場合、死亡一時金が支給されます。

確定拠出年金の死亡一時金を受け取る権利は、相続発生後5年以内は受取人の固有の財産です。

確定拠出年金に加入した後、死亡一時金の受取人を指定することができます。

相続発生後5年以内であれば、相続放棄をしても確定拠出年金の死亡一時金を受け取ることができます。

5相続放棄を司法書士に依頼するメリット

実は、相続放棄はその相続でチャンスは1回限りです。

家庭裁判所に認められない場合、即時抗告という手続を取ることはできますが、高等裁判所の手続きで、2週間以内に申立てが必要になります。

家庭裁判所で認めてもらえなかった場合、即時抗告で相続放棄を認めてもらえるのは、ごく例外的な場合に限られます。

一挙にハードルが上がると言ってよいでしょう。

相続放棄は撤回ができないので、慎重に判断する必要があります。

せっかく、相続放棄が認められても、相続財産を処分した判断されたら無効になりかねません。

このような行為をしてしまわないように、予め知識を付けておく必要があります。

相続放棄を自分で手続きしたい人の中には、相続放棄が無効になることまで考えていない場合が多いです。

司法書士は、相続放棄が無効にならないようにサポートしています。

せっかく手続きしても、相続放棄が無効になったら意味がありません。

相続放棄を考えている方は、司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。

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