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自動車があるときの遺産分割協議成立申立書

2023-06-30

1遺産分割協議成立申立書とは

遺産分割協議成立申立書とは、自動車の名義変更で遺産分割協議書の代わりに提出する書類です。

遺産分割協議成立申立書を利用できる場合、遺産分割協議書の提出を省略することができます。

遺産分割協議申立書は、自動車を相続する人がひとりで作ることができます。

手続きがカンタンに済ませることができるメリットがあります。

2遺産分割協議成立申立書を利用できる場合

遺産分割協議成立申立書を利用できるのは、自動車の名義変更の場合で、かつ、自動車の査定額が100万円以下の場合です。

自動車以外の財産の名義変更の場合や自動車の名義変更であっても100万円を超える自動車の場合は、遺産分割協議成立申立書を利用できません。

預貯金や不動産の名義変更には、正式な遺産分割協議書が必要です。

遺産分割協議成立申立書は遺産分割協議書と比べると略式の書類です。

100万円以下の自動車の名義変更に正式な遺産分割協議書を必要とすると手間がかかりすぎます。

だから、価格の低い自動車の名義変更については略式な書類で済ませることができるのです。

略式な書類で済ませることができるといっても、相続人全員の合意は不可欠です。

相続人全員の合意がないまま独断で手続をすると、相続人間に大きな不信感を生むことになります。

不信感が生じると、自動車以外の相続手続が進まなくなったり、家族の絆が壊れることになりかねません。

トラブルに発展させないためにも、相続人全員の合意を必ず確認しましょう。

3遺産分割協議成立申立書の作り方

遺産分割協議成立申立書の様式は、運輸局の窓口まで出向いて受け取ることができます。

国土交通省のホームページからダウンロードすることもできます。

①自動車の表示

対象の自動車の登録番号と車台番号は車検証に記載されています。

車検証を見ながら、間違えないように記入しましょう。

②被相続人

亡くなった方の氏名と死亡年月日は戸籍謄本に記載されています。

戸籍の記載を見て、記入しましょう。

③遺産分割協議成立年月日

相続財産は相続人全員の共有財産です。

相続財産の分け方は、相続人全員の話し合いによる合意が不可欠です。

相続人全員の話し合いによる合意で、自動車を相続する人が決定した日を書きます。

④申立書による申請の同意年月日

相続人全員の話し合いによる合意で相続財産の分け方を決めた後、通常はトラブルにならないように遺産分割協議書に取りまとめます。

自動車の名義変更で、価格が100万円以下の自動車の場合、正式な遺産分割協議書を省略しているでしょう。

相続人全員が、遺産分割協議成立申立書による申請に同意した日を記入します。

遺産分割協議をした日と同じであることが多いでしょう。

⑤住所と署名

自動車の相続人の住所を記入し、署名します。

住所と氏名は、印鑑証明書の記載と同じように書きます。

署名したら、実印で押印します。

4自動車の名義変更で必要な書類

自動車の名義変更で必要な書類は、次のとおりです。

①被相続人の戸籍謄本

②相続人の戸籍謄本

③印鑑証明書(発行後3か月以内のもの)

④車検証

⑤車庫証明書(発行後40日以内のもの)

⑥査定額証明書

遺産分割協議成立申立書を利用できるのは、自動車の価格が100万円以下の場合に限られます。

査定額証明書は、一般のカーディーラーや中古車ショップなどで書いてもらえます。

多くの場合、費用を負担することもないでしょう。

時には、査定証明書を書いてもらえない場合もあります。

査定証明書を書いてもらえる業者が見つからなかった場合、日本自動車査定協会に依頼することができます。

日本自動車査定協会に依頼する場合、有料で発行してくれます。

インターネットなどで、相場価格を調べてプリントしても認めてもらえません。

自動車を扱う業者の証明書を入手しましょう。

購入時の領収書を保管している場合もあるでしょう。

購入時の領収書を提出しても、査定額証明書に変えることはできません。

自動車を購入してから価値が上がることも、価値が下がることもあるからです。

5ローンが残っていないか確認

被相続人が自動車ローンを組んでいることがあります。

自動車ローンはマイナスの財産として相続財産になります。

多くの場合、自動車を相続する人がローンも引き継ぐことを相続人全員の話し合いで決めているでしょう。

マイナスの財産も相続財産ですから、相続人全員の話し合いで分け方を決めることができます。

マイナスの財産の分け方について相続人全員で決めた内容は、相続人同士の内輪の決めごとに過ぎません。

債権者は、相続人全員に対して法定相続分で請求することができます。

自動車を相続しなかった人は、債権者に対して、自動車を相続した人がローンも支払うから請求をしないで欲しいなどと文句を言うことはできません。

ローンの返済が滞ると、家族でトラブルになることが予想されます。

自動車にローンが残っている場合、ローンを引き続き返済していくのか、自動車を売却してローンを返済するのか慎重に判断しましょう。

6損害保険の引継ぎ

自動車を相続した後、乗り続けるためには任意保険の名義変更が必要です。

手続を忘れていると事故があったときに保証が受けられなくなるおそれがあります。

保険の名義変更は各保険会社に確認しましょう。

保険会社によっては、遺産分割協議書の提出が求められる場合があります。

7遺産承継サポート(遺産整理業務)を司法書士に依頼するメリット

相続が発生すると、家族は大きな悲しみに包まれます。

大きな悲しみで力を落としていても、日常の仕事や家事をする必要があります。

そのうえ、たくさんの用事と相続手続に忙殺されます。

気力を失った状態で、不慣れな相続手続をするのはタイヘンです。

しかも、聞き慣れない法律用語でいっぱいなので、スムーズに行きません。

役所に何回も出向いて書類を集め、手続に出向いてはやり直しをすることになります。

このような複雑な相続手続は、司法書士などの専門家にまるっと依頼できます。

司法書士ができない分野の手続は、司法書士が窓口になって提携する専門家に依頼します。

手続に困ってだれかに相談したい、だれかに話を聞いてもらいたいのであれば司法書士にお聞かせください。

だれに相談していいのか分からない、司法書士に相談することなのか分からない、何となく不安だけどどうしていいのか分からないといったもので構いません。

多くの人は、相続は何回も経験していません。

だれもが不慣れなものです。

お話をするだけでラクになったということも多いです。

相続手続で気がかりがある方は、司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。

相続放棄してもクレジットカード

2023-06-26

1クレジットカードは相続財産ではない

相続が発生すると、原則として、被相続人の財産は相続人が相続します。

被相続人の財産は、プラスの財産もマイナスの財産も相続財産になります。

相続人が相続する財産が、相続財産です。

被相続人の財産であっても、相続人に相続されない財産があります。

一身専属権や祭祀用財産は相続の対象になりません。

一身専属権とは、その人個人しか持つことができない権利や資格のことです。

例えば、有名な画家に絵をかいてもらう契約で、絵を完成させないまま有名な画家が死亡することがあります。

有名な画家は絵を完成させる義務を果たさないまま死亡したと言えます。

絵を完成させる義務は、有名な画家の相続人に相続されることはありません。

有名な画家に絵をかいてもらう契約をした人は、有名な画家だから契約をしたと言えます。

有名な画家の相続人に絵をかいてもらっても意味はありません。

このようなものが、一身専属です。

クレジットカードは、クレジットカード会社の会員の資格を表したものです。

クレジットカード会社の会員の資格は、その人の個人の信用情報に基づいて認められるものです。

被相続人の信用情報と相続人の信用情報は、別のものです。

クレジットカード会社の会員の資格は、相続財産ではありません。

クレジットカード会社の会員の資格は、一身専属と言えるからです。

2クレジットカード債務は相続財産

被相続人の財産は、プラスの財産もマイナスの財産も相続財産になります。

被相続人がクレジットカードを利用していた場合、未払いの利用残高があるでしょう。

未払いの利用残高は、単なる金銭債務です。

被相続人のマイナスの財産のひとつとして、相続財産になります。

3クレジットカード債務が多いときは相続放棄

①クレジットカード債務だけ相続放棄をすることはできない

相続放棄をするとマイナスの財産を受け継ぐことがなくなります。

だから、被相続人が莫大な借金を負っていた場合でも、一切借金の返済をする必要がなくなります。

被相続人が返済を滞らせていて遅延損害金が発生していた場合があります。

相続人が相続放棄をした場合、未払金も遅延損害金も払う必要はありません。

相続放棄をするとマイナスの財産すべて受け継ぐことがなくなります。

相続放棄をするとマイナスの財産だけでなく、プラスの財産も受け継ぐことがなくなります。

クレジットカード債務だけ相続放棄をすることはできません。

②相続放棄は家庭裁判所に対して3か月以内に手続

家庭裁判所に対して、必要な書類をを添えて相続放棄をしたい旨の申立てをします。

届出をする先の家庭裁判所は、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です。

家庭裁判所の管轄は裁判所のホームページで調べることができます。

相続放棄をすると、プラスの財産もマイナスの財産もすべて受け継ぐことがなくなります。

この届出は相続があったことを知ってから、原則として、3か月以内にする必要があります。

相続放棄をしたい旨の届出に添える書類は裁判所のホームページに詳しく書いてあります。

(1)被相続人の戸籍謄本

(2)被相続人の除票

(3)相続放棄する人の戸籍謄本

(4)収入印紙

(5)裁判所が手続で使う郵便切手

届出は直接、出向いて提出してもいいし、郵便で送っても差し支えありません。

届出の書き方や提出書類が心配な方は、出向いて裁判所の受付で目を通してもらうと安心です。

4クレジットカードの解約手続

①クレジットカードの解約は単純承認にならない

相続放棄をする前に単純承認をしていた場合、相続放棄はできません。

相続放棄が撤回できないように、単純承認も撤回できないからです。

相続財産を処分したり、利用した場合、単純承認をしたとみなされます。

相続財産を処分したり、利用した場合は相続放棄ができなくなります。

家庭裁判所は事情が分からず書類に問題がなければ、相続放棄を受理してしまいます。

家庭裁判所が相続放棄を受理した後でも、相続財産を処分したり、利用した場合は、無効です。

クレジットカードを解約することは、単純承認にはなりません。

クレジットカード会社の会員の資格は、相続財産ではないからです。

一般的にクレジットカードの会員規約や利用規約には、会員が死亡した場合会員資格を喪失すると明記されています。

②附帯サービスを請求すると単純承認になる

クレジットカードによっては、会員になると自動的に保険が附帯されるものがあります。

旅行中の病気やけがの保険や盗難や紛失に関する保険です。

これらの保険は、被相続人が受取人である保険金でしょう。

被相続人が受取人である保険金を請求する権利は、相続財産です。

相続財産を処分したり、利用した場合、単純承認をしたとみなされます。

家庭裁判所が相続放棄を受理した後でも、相続財産を処分したり、利用した場合は、無効です。

③チャージタイプの電子マネーを使うと単純承認になる

交通型ICカードなどの電子マネーは、事前にチャージして使うことができます。

被相続人がチャージした電子マネーは、相続財産です。

相続財産を処分したり、利用した場合、単純承認をしたとみなされます。

家庭裁判所が相続放棄を受理した後でも、相続財産を処分したり、利用した場合は、無効です。

④引落口座が凍結しても解約手続は必要

銀行などの金融機関は預金者が死亡したことを確認すると、口座の取引をできなくします。

この口座の取引をできなくすることを口座の凍結といいます。

口座取引をできなくしますから、ATMや窓口での引き出しもできないし、年金などの振込もできないし、公共料金などのお引落もできなくなってしまいます。

役所に死亡届を出すと凍結するなど誤った情報を信じている方もおられますが、役所や病院から個人情報が漏れることはありません。

もし、そのようなことがあったら、個人情報の漏洩として責任を問われることになるからです。

クレジットカードと紐づいている口座が凍結された場合、クレジットカードの引き落としができなくなります。

クレジットカード会社から見ると、クレジットカード債務が未払いになっただけと言えます。

クレジットカード債務が未払いになった場合でも、クレジットカードの解約手続は必要です。

相続人が口座を解約した場合でも、クレジットカードの解約手続は必要です。

⑤家族カードは使えなくなる

クレジットカードを利用している場合、家族カードが発行されていることがあります。

クレジットカードの会員本人が死亡した場合、家族カードは使用できなくなります。

家族カードは、会員本人の信用情報に基づいて発行されているからです。

会員本人が死亡により資格を喪失するから、自動的に家族カードも無効になります。

⑥解約するまで年会費がかかり続ける

クレジットカードの中には、年会費がかかることがあります。

クレジットカード会社は、会員が死亡したことを知ることができません。

クレジットカードの解約をしないと、年会費がかかり続けます。

クレジットカードの解約は、会員本人の死亡を伝えて資格喪失することを伝える意味があります。

⑦クレジットカードのポイントは失効する

クレジットカードには、ポイントがたまるものがあります。

被相続人が貯めていたポイントは、原則として相続の対象ではありません。

クレジットカードのポイントは、クレジットカードの会員資格に対して付与される特典だからです。

クレジットカードのポイントは、一身専属の権利と考えられています。

クレジットカード会社によっては、利用規約や会員規約に相続できないことを明記しています。

利用規約や会員規約に相続できないことを明記していなくても、同様と考えられています。

例外的に、利用規約や会員規約で相続できることを定めているケースがあります。

クレジットカード会社に確認するといいでしょう。

相続できる場合であっても、利用規約や会員規約で相続手続ができるのは死亡後〇か月以内など特別なルールをを定めている場合があります。

5相続放棄をしても信用情報に通知されない

相続放棄は、信用情報とは関係がありません。

一般に、信用情報に事故記録が記載されると、ローンが組めなくなります。

被相続人に莫大な借金がある場合、相続放棄をすることを考えるでしょう。

相続放棄をしても、ブラックリストに載ることはありません。

相続放棄をした場合、将来、クレジットカードを作れなくなるのではないかと心配する必要はありません。

相続放棄をする人の中には、裕福で生活に困っていないから相続放棄をしたいという人もいます。

6相続放棄を司法書士に依頼するメリット

相続放棄はプラスの財産もマイナスの財産も引き継ぎませんという裁判所に対する届出です。

相続人らとのお話合いで、プラスの財産を相続しませんと申し入れをすることではありません。

つまり、家庭裁判所で認められないとマイナスの財産を引き継がなくて済むというメリットは受けられないのです。

実は、相続放棄はその相続でチャンスは実質的には1回限りです。

家庭裁判所に認められない場合、即時抗告という手続を取ることはできますが、高等裁判所の手続で、2週間以内に申立てが必要になります。

家庭裁判所で認めてもらえなかった場合、即時抗告で相続放棄を認めてもらえるのは、ごく例外的な場合に限られます

一挙にハードルが上がると言ってよいでしょう。

相続放棄は慎重に判断する必要がありますが、いろいろな誤解から利用をためらう人が多いのも事実です。

利用をためらっていると3か月はあっという間です。

相続が発生すると、家族は親戚や知人へ連絡などで悲しみに浸る暇もないくらい忙しくなります。

3か月以内に必要書類を揃えて手続をするのは想像以上にハードルが高いものです。

相続放棄を考えている方はすみやかに司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。

生命保険があるときの遺産分割協議書

2023-06-23

1遺産分割協議とは

相続が発生した後、相続財産は相続人全員の共有財産になります。

相続人のひとりが勝手に処分することはできません。

相続人全員で相続財産の分け方について話し合いによる合意をして、分け方を決める必要があります。

相続財産の分け方にについて、相続人全員でする話し合いのことを遺産分割協議と言います。

遺産分割協議は、必ず、全員で合意する必要がありますが、全員が一つの場所に集まる必要はありません。

電話でもメールでも差し支えありません。

一度に全員合意する必要もありません。

一部の相続人と合意をして、次に、残りの相続人と合意をすることでも問題ありません。

最終的に相続人全員が合意できれば良いのです。

全ての財産をまとめて合意しなければならないといったこともありません。

一部の財産についてだけ合意をすることもできます。

2遺産分割の対象になる生命保険と対象にならない生命保険がある

①生命保険の死亡保険金は遺産分割の対象にならない

相続が発生したときは、被相続人が死亡したときです。

被相続人に生命保険がかけてあれば、保険金が支払われます。

生命保険の保険金は日常的に目にする金額より大きいこと多いでしょう。

他の相続人が生命保険の保険金を受け取っていると知ったら、穏やかな気持ちになれないものです。

原則として、生命保険の死亡保険金は、受取人の固有の財産です。

生命保険の死亡保険金は相続財産ではないから、遺産分割の対象になりません。

生命保険の死亡保険金は、被相続人の死亡をきっかけにして、直接、受取人が死亡保険金を請求する権利を取得します。

被相続人の死亡する前に、死亡保険金を請求する権利が発生することはありません。

死亡保険金を請求する権利は被相続人の財産ではないから、相続財産にはなりません。

生命保険の死亡保険金は、遺産分割の対象になりません。

②生命保険の入院給付金は遺産分割の対象になる

死亡保険金の受取人が被相続人であることは通常は考えられません。

生命保険には、死亡保険金以外の給付金を重視した商品があります。

入院給付金や手術一時金が代表例です。

生命保険の入院給付金や手術一時金は、入院や手術をきっかけにして、被相続人が入院給付金や手術一時金を請求する権利を取得します。

入院給付金や手術一時金を請求する権利は、被相続人の財産です。

入院給付金や手術一時金を請求する権利は被相続人の財産だから、相続財産にはなります。

生命保険の入院給付金や手術一時金は、遺産分割の対象になります。

③受取人の指定がないときは保険商品によって異なる

受取人として指定されていた人が先に死亡してしまうケースがあります。

受取人を変更する手続をする必要があるケースです。

受取人を変更しないまま、本人が死亡した場合、受取人の指定がないケースになります。

この場合の取り扱いは保険会社によって異なります。

保険会社によっては、相続財産として遺産分割協議によって受取人を決めることになります。

④著しく過大な生命保険は特別受益になる

原則として、生命保険の死亡保険金は遺産分割の対象になりません。

客観的に見て、相続財産全体から考えて不相当なほど死亡保険金が高い場合で、相続が著しく不公平で著しく不平等となってしまう場合があります。

相続が著しく不公平で著しく不平等となってしまう場合、生命保険は特別受益であると言えます。

特別受益とは、特定の相続人が特別に利益を受けたということです。

被相続人が生前に、特定の相続人に住宅購入資金を援助したなどがよくあるパターンです。

不公平な財産分与があった場合に、そのまま相続をするというのは財産分与を受けていない相続人にとって納得がいかないでしょう。

特別受益があった場合、特別受益分を相続財産に戻して、相続分を計算し直します。

相続財産に戻して相続分の計算し直しのことを、持ち戻しといいます。

多少の不公平や些細な不平等は、仕方がないこととして持ち戻しは認められません。

金額でいうと、おおむね資産全体の6割以上が生命保険の保険金の場合、著しい不公平や著しい不公平と判断されやすいでしょう。

著しく不公平で著しく不平等と考えられる場合にあたるかどうかは、金額だけで一律的に決まるものではありません。

生命保険の受取人が被相続人と同居していたかどうか、介護などのお世話をしていた状況、裕福な相続人であるか、生活に困っている相続人であるか、生命保険の受取人とその他の相続人の関係などを総合的に判断されます。

持ち戻しが認められる場合、生命保険の保険金は遺留分の計算の基礎に含まれます。

3遺産分割協議書に生命保険を書くときのの記載例

①生命保険の契約者たる地位の記載例

相続人○○○○は、次の保険契約上の契約者たる地位を取得する。

保険者 ○○生命保険株式会社

被保険者 ○○○○

保険証券番号 ○○○○○○○○

生命保険の死亡保険金は、原則として、受取人の固有の財産であるため遺産分割協議書に記載不要です。

被相続人の死亡が保険金の支払事由でない場合、保険契約は継続されます。

保険契約が継続される場合、契約上の地位が相続されます。

②生命保険の入院給付金の記載例

相続人○○○○は、次の保険契約の保険金を取得する。

保険者 ○○生命保険株式会社

被保険者 ○○○○

保険証券番号 ○○○○○○○○

生命保険の入院給付金や手術一時金は、受取人が被相続人になっています。

被相続人が受け取らないまま死亡した場合、給付金を受け取る権利は相続財産です。

保険金を請求する際に生命保険会社の人が分かるように特定して記載します。

③死亡保険金は記載しない

生命保険が遺産分割の対象となる場合、遺産分割協議書に記載します。

生命保険が遺産分割の対象とならない場合、遺産分割協議書に記載する必要はありません。

生命保険の死亡保険金を受け取る権利は、受取人の固有の財産です。

遺産分割の対象となる相続財産ではないから、遺産分割協議書に記載する必要はありません。

4生命保険金を他の相続人に分配するときの注意点

①生命保険金を代償金にするのは有効

相続財産にはいろいろな財産が含まれています。

不動産のように分けにくい財産もあるし、金銭のように分けやすい財産もあります。

相続財産の大部分が、不動産のような分けにくい財産の場合、相続財産の分け方についての合意が難しくなりがちです。

不動産のような分けにくい財産を相続する人が、他の相続人に代償金を払うと合意がまとまりやすくなります。

生命保険の死亡保険金を代償金の支払いに充てることは、問題がありません。

生命保険の死亡保険金は、相続人の固有の財産だからです。

②遺産分割の対象とならない生命保険を分割の対象にすると贈与になる

生命保険の死亡保険金は、相続人の固有の財産です。

相続財産でないから、本来、遺産分割の対象になりません。

死亡保険金の受取人が他の相続人に分割することができないわけではありません。

相続人の固有の財産だから、持ち主は自由に処分ができるからです。

固有の財産を処分しただけだから、贈与になります。

分割する金額によっては、思いもよらぬ高額の贈与税を払うことになります。

生命保険の死亡保険金を考慮にして相続財産の分け方を決める場合、遺産分割です。

贈与税の課税を避けるためにも、生命保険の死亡保険金を考慮にして相続財産の分け方を決める方がいいでしょう。

③代償金名目の贈与と判断されるおそれ

遺産分割協議書に代償分割をすることをはっきり書くことで、原則として、単なる贈与ではないと示すことができます。

代償分割をすると書いて金銭を支払う場合でも、実質的に代償金でないことがあります。

代償分割は、分けにくい財産を相続した相続人が他の相続人に代償金を払う分割方法です。

分けにくい財産の評価額を大幅に超える代償金を払う合意をした場合、実質的に代償金とは認められないでしょう。

代償金名目の贈与と判断されるおそれがあります。

例えば、相続財産が自宅1000万円のみで、相続人が長男と次男の2人の場合があります。

自宅を長男が相続した場合、長男が固有の財産から500万円程度の代償金を支払うのであれば問題はありません。

長男が固有の財産から2000万円の代償金を支払う場合、代償金名目の贈与と判断されるおそれがあります。

例えば、自宅1000万円を長男が相続した場合で、かつ、次男が生命保険の死亡保険金3000万円を受け取っている場合があります。

次男から長男へ1000万円支払うのが平等に見えるかもしれません。

次男が生命保険の死亡保険金を受け取った後、長男に1000万円支払った場合、代償金とは認められないでしょう。

生命保険の死亡保険金は受取人の固有の財産であって相続財産ではないからです。

相続による遺産分割とは無関係に贈与があったと言えます。

遺産分割協議書に代償金と明記しても、実質的に代償金とは認められません。

次男が生命保険の死亡保険金を受け取った後、長男に1000万円支払うこと自体はできないことではありません。

自分の固有の財産は、自由に贈与をすることができるからです。

自分の固有の財産を贈与した場合、金額によっては贈与税が課されます。

5生命保険の死亡保険金は相続税の対象になる

生命保険の死亡保険金は相続税の対象になります。

本来、生命保険の死亡保険金の支払請求権は、相続人の固有の財産です。

固有の財産なのに相続税の対象になるから、相続財産と誤解されます。

税金だけに過度に注目していると、生命保険は相続財産との誤解が強まります。

他の相続人から生命保険金を分配するように干渉されることになります。

生命保険の死亡保険金は相続税の対象になるだけで、相続人の固有の財産です。

相続放棄をした相続人であっても、生命保険の死亡保険金は受け取ることができます。

生命保険の死亡保険金は相続財産でないからです。

相続財産でないから、相続放棄をしても関係ないのです。

6遺産分割協議書作成を司法書士に依頼するメリット

遺産分割協議書は遺産の分け方について、相続人全員による合意を取りまとめた文書です。

前提として、話し合いによる合意ができていなければ、文書にできません。

銀行などの金融機関から遺産分割協議書を提出するように言われて、とにかく書きたいという方もいます。

遺産分割協議書があるとトラブル防止になりますが、相続人全員の合意があり、合意を取りまとめているからです。

有効な合意を文書にしているから、後々のトラブルを防止できるのです。

相続人全員が有効な合意をしていない場合、かえってトラブルになってしまいます。

複雑な相続においても対応しています。

適切な遺産分割協議書を作り、家族のトラブルを避けたい方は、司法書士などの専門家にサポートを依頼することをおすすめします。

相続放棄の撤回・取消・無効

2023-06-21

1.相続放棄は撤回できない

相続放棄の撤回はできません。

撤回とは、相続放棄が受理されたときには何も問題がなかったのに、後から問題が発生したので、なかったことにすることです。

例えば、「相続財産は借金ばかりだと思っていたから相続放棄をしたのに、プラスの財産は見つかったから相続放棄はなかったことにしたい」は撤回です。

相続放棄の撤回は、認められません。

相続放棄は、相続発生を知った時から、3か月以内に手続をする必要があります。

相続放棄が認められた後、3か月以内であっても撤回することはできません。

いったん相続放棄が認められた後に、撤回することを認めると相続手続が混乱するからです。

相続放棄は一度認められると撤回できません。

相続放棄をするとどのようになるか充分に検討して慎重に判断しましょう。

2相続放棄の取下げはできる

相続放棄は、家庭裁判所に対してする手続です。

他の相続人に対して、相続財産を一切相続しないと申し入れることではありません。

相続放棄が認められるとは、家庭裁判所で手続が完了したという意味です。

通常、家庭裁判所に対して相続放棄の申述の申立書を提出してから、1~2週間ほどで照会文書が届きます。

照会文書に回答を提出した後、さらに1~2週間ほどで手続が完了します。

手続が完了する前であれば、取下げができます。

取下げを希望する場合、すぐに提出先の家庭裁判所に連絡しましょう。

手続が完了してしまうと、取下げができなくなります。

取り下げるためには書類が必要になりますが、手続を止めてもらうためにまずは電話で連絡するのがおすすめです。

3相続放棄の取消はできる

①取消とは

法律行為は、一定の事情がある場合、取消をすることができます。

取消とは、相続放棄が受理されたときに既に何か問題が起きていて、問題に気付かずに受理されてしまったので、後からなかったことにすることです。

相続放棄は法律行為なので、一定の事情があれば、取り消しができます。

取り消しができる期間は、追認できるときから6か月、相続放棄が認められてから10年です。

取り消しができるときは、相続放棄の申立てをした家庭裁判所に、取消の申立てをします。

②詐欺や強迫があった場合

詐欺とは、周囲の人から事実でない情報を聞かされてその情報を信じてしまったために相続放棄をした場合です。

本来であれば相続放棄をするつもりはなかったが、事実でない情報を信じてしまったことにより相続放棄をしたのであれば、詐欺による取消を主張することができます。

強迫とは、相続放棄をしないと危害を加えるぞと迫られていた場合です。

本当は相続を承認したいのに、危害を加えられることをおそれて相続放棄をしたのであれば、強迫による取消を主張することができます。

③錯誤があった場合

錯誤とは、相続放棄をしようという意思決定をする際に、重要なことが事実と違っていた場合です。

通常、相続放棄をしようと思って相続放棄をしていますから、重要なことが事実と違っていたには当たりません。

そのうえ錯誤があったと主張する人に重大な過失があった場合、錯誤の主張はできません。

錯誤で取消をすることは、想像以上にハードルが高いものです。

④未成年者がひとりで相続放棄をした場合

未成年者は物事のメリットデメリットを充分判断することができません。

通常、親などの親権者が未成年者の代わりに法律行為をします。

未成年者が親などの親権者の同意を得ないで相続放棄をした場合、取り消すことができます。

家庭裁判所に相続放棄の申立書を提出する場合、申立をする人の戸籍謄本を提出します。

家庭裁判所の担当者は必ず年齢を点検しますから、よほどのことがない限り、相続放棄が受理されません。

⑤成年被後見人などがひとりで相続放棄をした場合

成年被後見人とは、認知症や知的障害などで、物事のメリットデメリットを充分判断することができない人として認められた人です。

成年後見人などの保護者が成年被後見人の代わりに手続をします。

代わりにやってもらうまでもないと家庭裁判所に判断されている場合、保護者の同意を得て手続します。

成年後見人に成年後見監督人が付いている場合があります。

成年後見監督人がいる場合、成年後見監督人の同意が必要になります。

成年後見人などの保護者であっても、成年後見監督人の同意を得ずに相続放棄の手続した場合、取消を主張することができます。

4相続放棄が無効になる場合

①無効とは

無効とは、相続放棄が家庭裁判所に認められたが、実は相続放棄の要件を満たしていなかったから、なかったことになるものです。

家庭裁判所は事情が分からず書類に問題がないから、相続放棄を認めてしまったから、なかったことになるものです。

相続放棄が無効になる場合、無効にするための手続はありません。

無効の法律行為は、何もしなくても無効だからです。

例えば、債権者は相続放棄は無効だから、相続人に借金を払って欲しいと交渉することができます。

交渉で話し合いがつかなければ、相続放棄は無効だから、相続人に借金を払って欲しいと訴えを起こすことができます。

裁判の中で相続放棄は無効だと主張します。

借金を払えというか、払わなくてもいいというか裁判所が判断する過程で、相続放棄は無効がどうか裁判所が判断します。

②本人が知らないうちに相続放棄がされていた

本人に無断で、相続放棄の書類が作られて相続放棄の手続がされた場合です。

本人の意思がないので、相続放棄は無効になります。

家庭裁判所は意思確認を厳格にしていますから、相続放棄が認められるのは、めったにありません。

③相続財産を処分・利用していた場合

相続放棄をする前に単純承認をしていた場合、相続放棄はできません。

相続放棄が撤回できないように、単純承認も撤回できないからです。

相続財産を処分したり、利用した場合、単純承認をしたとみなされます。

相続財産を処分したり、利用した場合は相続放棄ができなくなります。

家庭裁判所は事情が分からず書類に問題がなければ、相続放棄を受理してしまいます。

家庭裁判所が相続放棄を受理した後でも、相続財産を処分したり、利用した場合は、無効です。

5相続放棄は詐害行為で取り消すことができない

お金を借りた人は、借りたお金を返さなければなりません。

借りたお金を返さなければならないのに、自分の財産を不当に減少させて、結果、お金を返せなくなることがあります。

自分の財産を不当に減少させたら、お金を貸した人はお金を返してもらえなくなる結果になります。

お金を貸した人が困ることを知っているのに、自分の財産を不当に減少させることを詐害行為と言います。

お金を返してもらうため、お金を貸した人は詐害行為を取り消すことができます。

相続放棄は、詐害行為にはなりません。

被相続人に莫大な借金がある場合、相続人が相続放棄をするでしょう。

相続人が相続放棄をした場合、債権者は相続放棄を詐害行為として取り消すことはできません。

被相続人が莫大なプラスの財産を残して死亡することがあります。

相続人に莫大な借金があるのに、被相続人と相続人の今までの経緯から相続放棄をすることがあります。

相続人が相続放棄をした場合、債権者は相続放棄を詐害行為として取り消すことはできません。

6相続放棄と相続放棄の取消を司法書士に依頼するメリット

実は、相続放棄はその相続でチャンスは1回限りです。

家庭裁判所に認められない場合、即時抗告という手続を取ることはできます。

高等裁判所の手続で、2週間以内に申立てが必要になります。

家庭裁判所で認めてもらえなかった場合、即時抗告で相続放棄を認めてもらえるのは、ごく例外的な場合に限られます。

一挙にハードルが上がると言ってよいでしょう。

相続放棄は撤回ができないので、慎重に判断する必要があります。

相続放棄の取消も家庭裁判所に手続が必要になります。

取消を主張するためには根拠となる証拠が必要です。

適切な主張と立証が重要になります。

相続放棄よりはるかに難易度が高い手続です。

司法書士は裁判所に提出する書類作成の専門家です。

相続放棄と相続放棄の取消を考えている方は、すみやかに司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。

家族信託をした後に相続発生

2023-06-16

1家族信託の終了事由は信託契約で決めておく

①委託者兼受益者死亡で信託終了が一般的

家族信託は、本人と信頼できる家族との間でする契約です。

信託契約をした後、家族信託を永久に続けることはできません。

どのようなときに信託を終了させるのか、信託契約の中で決めておきます。

家族信託の終了事由は、家族信託の目的に応じて考えます。

本人が認知症になった場合、資産が凍結されるリスクがあります。

認知症になると、物事のメリットデメリットを充分に判断できなくなるからです。

物事のメリットデメリットを充分に判断できない状態では、契約などの法律行為ができなくなります。

資産が凍結されるとは、不動産の売却などができなくなるという意味です。

本人が認知症になったことを銀行などの金融機関が知った場合、銀行口座を凍結します。

口座が凍結すると、入出金や引き落としができなくなります。

本人が認知症になった場合でも、資産が凍結されないようにするためには家族信託が有効です。

本人の死亡後には、家族信託を続ける意味はないからです。

本人が生きているうちに家族信託を終了させると、認知症リスクに対して対策がないことになります。

認知症リスクに備えるために家族信託をするのであれば、本人の死亡で家族信託を終了させるといいでしょう。

本人の認知症リスクに備える目的で家族信託を利用することが一般的です。

委託者兼受益者死亡で信託終了が大多数です。

②委託者兼受益者死亡後も信託を継続することができる

家族信託は、本人の認知症対策のため以外にも活用されます。

本人の生存中から死亡後の財産管理のために家族信託をする場合です。

例えば、障害がある子どものために家族信託を利用することあります。

本人が健在のうちは本人の認知症対策のため、本人が死亡した後は障害がある子どものために家族信託を存続させる必要があります。

本人が死亡しても家族信託を続けるのがいいでしょう。

家族信託の目的に応じて、どのようなときに信託を終了させるのか決めておきます。

2委託者兼受益者死亡で信託が終了したら清算手続

①信託財産は相続財産ではない

家族信託では、自由に売る権利や自由に管理する権利を信頼できる家族に渡して、自分はものから利益を受け取る権利だけ持つ仕組みです。

信託契約で自由に売る権利や自由に管理する権利を渡した財産が信託財産です。

信託財産は、委託者兼受益者の財産でなくなって信託財産になります。

受託者は、自由に売る権利や自由に管理する権利を渡されます。

受託者は、自由に売却する権利や自由に管理する権利を行使するだけで、受託者の財産ではありません。

信託財産は、委託者兼受益者の財産ではなくなり受託者の財産にもなりません。

信託財産は、独立した財産です。

委託者兼受益者が死亡した場合、委託者兼受益者の相続財産になりません。

信託財産は、信託契約の定めにしばられる独立した財産だからです。

②委託者兼受益者の固有の財産は相続財産

信託契約で自由に売る権利や自由に管理する権利を渡した財産が信託財産です。

自由に売る権利や自由に管理する権利を渡していない財産は、信託財産になりません。

信託財産になっていない財産は、委託者兼受益者の固有の財産です。

委託者兼受益者が死亡した場合、委託者兼受益者の固有の財産は相続財産になります。

相続財産は、委託者兼受益者の相続人が相続します。

委託者兼受益者が遺言書を作成している場合、遺言書の内容に分割します。

委託者兼受益者が遺言書を作成していない場合、相続人全員の話し合いによる合意で分け方を決めます。

③信託財産を引き継ぐ人は信託契約で決めておく

委託者兼受益者が死亡した場合、信託財産は相続財産になりません。

信託が終了した場合、残った信託財産をだれが引き継ぐのか決めておくことができます。

信託財産は、信託契約で決められた人が引き継ぎます。

家族信託の受益者と同じ人でも異なる人でも構いません。

本人の認知症リスクに備えるために家族信託を利用した場合、委託者兼受益者の死亡によって家族信託を終了させることが一般的です。

信託契約で信託財産の行き先を決めてあると、財産の引き継ぎでトラブルになることが減ります。

委託者兼受益者の死亡によって家族信託を終了させる場合、家族信託は実質的に相続トラブルへの対策になります。

家族信託は本人の認知症リスクに備えるために利用することができるから、遺言書より話がしやすくなります。

④信託財産に不動産がある場合は名義変更

信託財産に不動産が含まれる場合があります。

家族信託を利用する場合、自由に売る権利や自由に管理する権利を信頼できる家族に渡します。

信頼できる家族に自由に売る権利や自由に管理する権利があることを公示するため、登記をしたはずです。

家族信託が終了した場合、信託財産は信託契約で決められた人が引き継ぎます。

信託契約で決められた人が引き継いだことと信託財産でなくなったことを公示する必要があります。

不動産の名義変更をします。

信託財産が終了した場合、信託財産は受託者が引き継ぐことがあります。

受託者が信託財産を引き継ぐ場合、登記手続の方法は明確になっていません。

名義変更は法務局と協議のうえ登記手続をすることになります。

⑤信託終了で翌月末日までに税務署に手続

信託が終了した場合、信託財産は信託契約で決められた人が引き継ぎます。

信託が終了した日の翌月末日までに管轄の税務署に手続が必要になります。

信託に関する受益者別調書と信託に関する受益者別調書合計表の2つを提出します。

この2つの書類の提出期限は、信託が終了した日の翌月末日です。

相続税申告は、10か月以内です。

期限が短いので忘れず提出しましょう。

3委託者兼受益者死亡後も信託を継続できる

①信託は永久にすることはできない

信託法上、信託の存続期間についての制限はありません。

最初の受益者が死亡したときに信託を終了させないで次の受益者が利益を受け取る場合、信託の効力について特別なルールがあります。

信託がされてから30年経過した後に受益権を引き継いで受益者になった人が死亡するまで、とするルールです。

信託がされてから30年経過した後、次の受益者に引き継ぐことができるのは1回限りです。

引き継いだ受益者が死亡した場合、信託は終了します。

②受益権を引き継ぐ人は信託契約で決めておく

家族信託では、自由に売る権利や自由に管理する権利を信頼できる家族に渡します。

家族信託を利用するときは、多くの場合、本人は委託者兼受益者として信頼できる家族は受託者として信託契約を締結します。

受託者は、信託目的達成のために自由に売る権利や自由に管理する権利を行使します。

自分が最初の受益者になり、自分が死亡した後は第2受益者が引き継ぎ、第2受益者が死亡した後は第3受益者が引き継ぐと決めることができます。

自分の血縁関係者に引き継ぎたいという希望がある場合、第2受益者や第3受益者に血縁関係者を指名すれば実現することができます。

第3受益者、第4受益者…と先の先まで決めておくことができます。

家族信託では、さまざまなことを信託契約で決めておくことができます。

最初の委託者兼受益者が死亡した場合、信託契約において信託を継続させると決めておくことができます。

最初の受益者が死亡した場合、信託契約において次の受益者を指名しておくことができます。

信託契約において、現在の受益者が死亡した場合に受益権が引き継がれる定めのある信託を後継遺贈型受益者連続型信託と言います。

③信託財産に不動産がある場合は受益者変更

信託財産に不動産が含まれる場合があります。

家族信託を利用する場合、自分はものから利益を受け取る権利だけ持っていることができます。

自分はものから利益を受け取る権利だけ持っていることを公示するため、登記をしたはずです。

委託者兼受益者が死亡した後も信託が継続する場合、ものから利益を受け取る権利は第2受益者が引き継ぎます。

ものから利益を受け取る権利を第2受益者が引き継いだことを公示する必要があります。

信託財産である不動産の受益者変更の登記をします。

④受益者変更で翌月末日までに税務署に手続

委託者兼受益者死亡後も信託を継続する場合、ものから利益を受け取る権利は第2受益者が引き継ぎます。

委託者兼受益者死亡の翌月末日までに管轄の税務署に手続が必要になります。

信託に関する受益者別調書と信託に関する受益者別調書合計表の2つを提出します。

この2つの書類の提出期限は、信託が終了した日の翌月末日です。

相続税申告は、10か月以内です。

期限が短いので忘れず提出しましょう。

4家族信託で節税はできない

①家族信託にする前と後で財産的価値は同じ

家族信託を利用した場合、信託財産は委託者兼受益者の財産ではなくなり受託者の財産にもなりません。

信託財産は、独立した財産です。

委託者兼受益者が死亡した場合、委託者兼受益者の相続財産になりません。

委託者兼受益者の相続財産にならないから、相続税を節税できると期待するかもしれません。

家族信託を利用した場合、委託者兼受益者はものから利益を受け取る権利を持っています。

ものから利益を受け取る権利は、財産的価値があると言えます。

信託財産から利益を受け取る権利の財産的価値は、信託財産と同じ方法で計算されます。

財産を所有している場合と財産を信託して信託受益権を持っている場合の財産的価値は同じです。

②財産的価値が移転すると課税される

家族信託を利用した場合、委託者兼受益者はものから利益を受け取る権利を持っています。

財産を所有している場合から財産を信託して信託受益権を持っている場合になります。

家族信託を利用する前も後も、委託者兼受益者が財産的価値を持っています。

相続税や贈与税は、財産的価値が対価なく移るタイミングで課税されます。

財産的価値が移転しないタイミングに課税はされません。

③家族信託終了で帰属権利者に課税

委託者兼受益者が死亡によって信託が終了した場合、信託財産は信託契約で決められた人が引き継ぎます。

委託者兼受益者が持っていた財産的価値が帰属権利者に引き継がれたと言えます。

信託契約で決められた人に対して相続税が課されます。

④家族信託継続で第2受益者に課税

委託者兼受益者が死亡によって信託が継続する場合、ものから利益を受け取る権利は第2受益者が引き継ぎます。

委託者兼受益者が持っていた財産的価値が第2受益者に引き継がれたと言えます。

第2受益者に対して相続税が課されます。

5家族信託を司法書士に依頼するメリット

高齢化社会が到来したといわれて、多くの方は長生きになりました。

平均寿命は男性も女性も80歳を超して、認知症になる方が多くなりました。

認知症になると、物事のメリットデメリットが充分に判断できなくなります

本人の財産は本人しか処分できないため、本人が判断できなくなると資産が凍結されてしまいます。

たとえ、本人が介護施設入所のためであっても、本人の不動産を勝手に売却することはできません。

たとえ、本人の実の子どもであっても、本人の定期預金を解約することはできません。

一部の金融機関では、本人以外の家族がキャッシュカードを使っていることを確認したら、キャッシュカードを回収しています。

本人の意思確認を重視する流れは、他の金融機関にも広がっていくでしょう。

認知症対策は、本人の判断能力がしっかりしているうちしかできません。

いつか認知症対策をしようではなく、今なら元気だから対策しようが正解です。

認知症になると、本人はもとより家族も困ります。

家族信託は認知症対策として有効です。

自分のためにも家族のためにも認知症対策を考えている方は、司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。

兄弟姉妹の一人だけ相続放棄

2023-06-14

1相続人になる人は法律で決まっている

相続が発生したら、親族のうち一定の範囲の人が相続人になります。

だれが相続人になるかについては、民法で決められています。

相続人になる人は次のとおりです。

①配偶者は必ず相続人になる

②被相続人に子どもがいる場合、子ども

③被相続人に子どもがいない場合、親などの直系尊属

④被相続人に子どもがいない場合で、かつ、親などの直系尊属が被相続人より先に死亡している場合、兄弟姉妹

相続人になるはずだった人が被相続人より先に死亡したため、相続人になるはずだった人の子どもや子どもの子どもが相続することがあります。

これを代襲相続と言います。

相続人になるはずだった人の子どもの子どもが相続することを再代襲相続と言います。

代襲相続ができるのは、相続人になるはずだった人の子どもなど被代襲者の直系卑属だけです。

相続人になるはずだった人を被代襲者と言います。

被代襲者の子どもなど被代襲者の直系卑属以外は代襲相続ができません。

被代襲者の配偶者も、被代襲者の親などの直系尊属も、被代襲者の兄弟姉妹も、代襲相続ができません。

2先順位の相続人全員が相続放棄をしたら

①配偶者は常に相続人になる

配偶者は必ず相続人になります。

配偶者がいてもいなくても、他の相続人の相続権には関係ありません。

配偶者が相続放棄をしても相続放棄をしなくても、他の相続人が相続人になるかならないかと関係ありません。

②子ども全員が相続放棄をした場合子どもはいないものと扱われる

被相続人に子どもがいる場合、子どもは相続人になります。

被相続人の子ども全員が相続放棄をした場合、子どもはいないものと扱われます。

子どもが相続放棄をした場合、子どもは相続しません。

子どもが相続放棄をした場合、子どもの子どもが代わりに相続することはありません。

相続放棄は、代襲相続の原因にならないからです。

代襲相続が起きるのは、子どもが被相続人より先に死亡している場合や廃除された場合、欠格の場合です。

③被相続人に子どもがいない場合親などの直系尊属が相続する

被相続人に子どもがいない場合、親などの直系尊属が相続人になります。

親などの直系尊属が被相続人より先に死亡している場合、親などの直系尊属がいない場合になります。

親などの直系尊属が被相続人より先に死亡した場合であっても、代襲相続は起きません。

被代襲者になれるのは、被相続人の子どもと兄弟姉妹だけだからです。

被相続人の親の他に祖父母がいる場合、親が相続放棄をしたら祖父母が相続人になります。

祖父母が相続人になるのは、代襲相続と関係がありません。

祖父母も直系尊属だから、相続人になります。

直系尊属が複数いる場合、親等が近い人が相続人になります。

親は1親等、祖父母は2親等です。

親が相続人になる場合、祖父母は相続人になりません。

親の方が親等が近いからです。

親が相続放棄をした場合、親は相続人でなくなります。

1親等の人がいない場合になれば、祖父母は相続人になります。

祖父母が相続放棄をする場合、親が相続放棄をしてから手続をします。

親の相続放棄が認められないうちは、祖父母は相続人でないからです。

④子どもも親などの直系尊属もいない場合兄弟姉妹が相続する

子どもも親などの直系尊属もいない場合には、最初から存在しない場合の他に相続放棄をして相続人でなくなった場合を含みます。

⑤兄弟姉妹が被相続人より先に死亡していたら兄弟姉妹の子どもが相続

子どもも親などの直系尊属もいない場合、兄弟姉妹が相続人になります。

相続人になるはずだった兄弟姉妹が被相続人より先に死亡していた場合、兄弟姉妹の子どもが相続人になります。

兄弟姉妹は被代襲者になるからです。

兄弟姉妹の子どもは、死亡した兄弟姉妹の代襲相続人として相続人になります。

3兄弟姉妹の一人だけ相続放棄ができる

①相続放棄は相続人各自が判断できる

相続放棄は、相続人ひとりひとりが自分の意思で自由に判断できるものです。

相続人は、一人だけ相続放棄をすることができます。

相続放棄をする場合、他の相続人の同意は不要です。

他の相続人が反対していても、一人だけ相続放棄をすることができます。

ときには他の兄弟姉妹が何も知らないところで相続放棄をすることがあります。

相続放棄をすることで一人だけ借金から逃れたとしても、後ろめたく思うことはありません。

②疎遠だからを理由に相続放棄をすることができる

相続放棄をすると、プラスの財産を引き継がなくなりますが、マイナスの財産も引き継ぐことがなくなります。

相続放棄の理由で多いのは、「被相続人の借金を引き継ぎたくない」です。

その他でも構いません。

「被相続人や他の相続人と疎遠で、関わりたくない」でも差し支えありません。

被相続人や他の相続人と疎遠な場合、財産状況が分からないことが多いものです。

被相続人に多額の借金があるかもしれません。

被相続人に借金がなくても、第三者の連帯保証人になっているかもしれません。

連帯保証人の地位は、相続の対象になります。

借金や連帯保証人の地位を相続する心配がある場合、安全のため相続放棄をすることができます。

③相続放棄3か月のスタートは知ってから

相続放棄は、原則として、相続があったことを知ってから3か月以内に届出をする必要があります。

相続があったことを知ってからとは、必ずしも、被相続人の死亡してからではありません。

被相続人が死亡した後3か月以上経過してから、相続放棄の届出をして、認められることもあります。

相続放棄ができる3か月以内のスタートは、相続があったことを知ってからだからです。

相続があったことを知らなかった場合、相続放棄ができる3か月がスタートしていません。

相続放棄の届出をしてから、家庭裁判所が相続放棄を認める通知が届くまでおよそ1か月程度かかります。

親などの直系尊属は先順位の子ども全員が相続放棄するまで、相続放棄の届出はできません。

相続放棄の期限3か月が過ぎてしまうのではないかと気が気でないかもしれません。

先順位の子ども全員が相続放棄をしたことを知って自分が相続人であることを知ります。

相続放棄の期限3か月のスタートは知ってからだから、知ってから3か月以内であれば手続をすることができます。

第三順位の兄弟姉妹も同じことです。

第三順位の兄弟姉妹は自分が相続人であることを知るのは、子ども全員が相続放棄をして、次順位の親などの直系尊属全員が相続放棄をした後です。

第三順位の兄弟姉妹は、被相続人が死亡してから3か月以上経過してから自分が相続人であることを知ることになるかもしれません。

相続放棄の期限3か月のスタートは知ってからだから、知ってから3か月以内であれば手続をすることができます。

このポイントは、相続が発生してから3か月以内に届出ができなかったのは止むを得なかったと家庭裁判所に納得してもらうことです。

3か月届出ができなかったのは仕方なかったと家庭裁判所が納得できる理由があるときだけは、家庭裁判所も相続放棄を認めてくれるのです。

債権者や市役所などから手紙が来て相続があったことを知った場合、この通知は大切です。

この手紙を見て相続があったことを知ったという証拠になるからです。

4兄弟姉妹が相続放棄をする場合は提出書類がたくさんになる

相続放棄を希望する場合、必要書類を準備して家庭裁判所に申立てをします。

家庭裁判所に提出する申立書のことを相続放棄申述書と言います。

相続放棄申述書に添付する必要書類のうち、次の書類は相続放棄をする人全員共通で必要です。

(1)被相続人の除票

(2)相続放棄する人の戸籍謄本(3か月以内のもの)

(3)収入印紙

(4)裁判所が手続で使う郵便切手

(1)~(4)の書類の他に戸籍謄本が必要です。

必要な戸籍謄本は、被相続人から見てどのような関係の相続人であるかによって異なります。

兄弟姉妹が相続放棄をする場合、必要な戸籍謄本がたくさんになります。

相続放棄ができるのは先順位の相続人がいない場合だけだからです。

兄弟姉妹が相続人になるのは、被相続人に子どもがいない場合で、かつ、親などの直系尊属がいない場合です。

相続人でなければ、相続放棄はできません。

相続放棄をするためには、相続人であることを証明する必要があります。

被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本が必要です。

被相続人に子どもがいないことを証明するためです。

子どもがいても死亡している場合、死亡した子どもの戸籍も必要です。

死亡した子どもの出生から死亡までの連続した戸籍謄本を準備します。

相続人になるはずだった人の子どもは、代襲相続人になるからです。

子ども全員が相続放棄をした場合、事件番号を伝えれば家庭裁判所で調べてもらえます。

親などの直系尊属がいないことを証明するため、親などの直系尊属の戸籍も必要になります。

兄弟姉妹が相続放棄をする場合、これらの戸籍をすべて提出しなければなりません。

5相続放棄を司法書士に依頼するメリット

相続放棄は、プラスの財産もマイナスの財産も引き継ぎませんという裁判所に対する申立てです。

相続人らとのお話合いで、プラスの財産を相続しませんと申し入れをすることではありません。

つまり、家庭裁判所で認められないとマイナスの財産を引き継がなくて済むというメリットは受けられないのです。

実は、相続放棄はその相続でチャンスは実質的には1回限りです。

家庭裁判所に認められない場合、即時抗告という手続を取ることはできますが、高等裁判所の手続で、2週間以内に申立てが必要になります。

家庭裁判所で認めてもらえなかった場合、即時抗告で相続放棄を認めてもらえるのは、ごく例外的な場合に限られます

一挙にハードルが上がると言ってよいでしょう。

相続放棄は慎重に判断する必要がありますが、いろいろな誤解から利用をためらう人が多いのも事実です。

利用をためらっていると3か月はあっという間です。

相続が発生すると、家族は親戚や知人へ連絡などで悲しみに浸る暇もないくらい忙しくなります。

3か月以内に必要書類を揃えて手続をするのは想像以上にハードルが高いものです。

相続放棄を考えている方はすみやかに司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。

相続人が一人だけなのに遺産分割協議書

2023-06-09

1遺産分割協議とは

相続が発生した後、相続財産は相続人全員の共有財産になります。

相続人のひとりが勝手に処分することはできません。

相続人全員で相続財産の分け方について話し合いによる合意をして、分け方を決める必要があります。

相続財産の分け方にについて、相続人全員でする話し合いのことを遺産分割協議と言います。

相続財産の分け方にについて、相続人全員で合意ができたら、合意内容を文書に取りまとめます。

相続人全員の合意内容を取りまとめた文書のことを遺産分割協議書と言います。

2相続人一人だけのときは遺産分割協議書不要

①相続人になる人は法律で決まっている

相続が発生したら、親族のうち一定の範囲の人が相続人になります。

だれが相続人になるかについては、民法で決められています。

相続人になる人は次のとおりです。

(1)配偶者は必ず相続人になる

(2)被相続人に子どもがいる場合、子ども

(3)被相続人に子どもがいない場合、親などの直系尊属

(4)被相続人に子どももいない場合で、かつ、親などの直系尊属が被相続人より先に死亡している場合、兄弟姉妹

②相続放棄をした人は相続人でなくなる

相続が発生したら、原則として、被相続人のプラスの財産もマイナスの財産も相続人が受け継ぎます。

被相続人のプラスの財産もマイナスの財産も受け継がないことを相続の放棄といいます。

相続放棄をすると、プラスの財産を引き継がなくなりますが、マイナスの財産も引き継ぐことがなくなります。

相続の放棄は被相続人ごとに判断できますから、例えば、父について相続放棄をするが、母について単純承認するでも差し支えありません。

相続の放棄は相続人ごとに判断しますから、例えば、父の相続人ついて長男は相続放棄するが、長女は単純承認するでも差し支えありません。

③相続人が一人だけの場合とは

相続放棄が認められた場合、はじめから相続人でなくなります。

子ども全員が相続放棄をした場合、子ども全員が相続人でなくなります。

子ども全員が相続人でなくなるから、子どもがいない場合になります。

被相続人に子どもがいない場合、親などの直系尊属が相続人になります。

親などの直系尊属全員が被相続人より先に死亡している場合や相続放棄をした場合、兄弟姉妹が相続人になります。

兄弟姉妹が被相続人より先に死亡している場合、兄弟姉妹の子どもが相続人になります。

相続人が一人だけの場合とは、他の相続人がいない場合のことです。

相続人と音信不通であっても、相続人が行方不明でも、相続人は相続人です。

他に相続人がいる場合、相続人が一人だけの場合とは言えません。

④相続人が一人だけの場合は当然に全財産を相続する

相続人が複数いる場合、相続財産は相続人全員の共有財産です。

相続財産は、相続人全員の合意で分け方を決める必要があります。

相続人全員で相続財産の分け方の合意ができた場合、合意内容を文書に取りまとめます。

遺産分割協議書は、相続人全員の合意内容を取りまとめた文書です。

相続人が一人だけの場合、相続人は他にいないはずです。

相続財産を共有する他の相続人はいません。

他の相続人と相続財産を共有していないから、財産の分け方の合意は必要ありません。

相続人が一人だけの場合、相続財産を分ける必要がないからです。

財産の分け方の合意が必要ないから、文書に取りまとめる必要もありません。

相続人が一人だけの場合、相続手続にあたって、遺産分割協議書は不要です。

3数次相続で相続人が一人だけになったら

①数次相続とは

相続が発生したら、相続財産は相続人全員の共有財産になります。

共有財産になった相続財産は、相続人全員で話し合いによる分け方の合意が不可欠です。

相続財産の分け方について話し合いがまとまる前に、相続人が死亡して新たな相続が発生することがあります。

最初の相続の手続中に相続人が死亡して、さらに相続が発生した状態を数次相続と言います。

数次相続は、どこまででも続きます。

どこまで続くかについて、法律上の制限はありません。

最初の相続を一次相続、相続人が死亡した相続を二次相続と言います。

二次相続の相続人が死亡すると、三次相続、さらに、四次相続、五次相続という場合もあります。

相続人が死亡して新たな相続が発生することを、まとめて、数次相続と言います。

②相続人が一人だけになったら遺産分割協議ができない

例えば、最初の相続で相続人が配偶者と子どもの場合があります。

最初の相続で相続財産の分け方について話し合いがまとまる前に、相続人が死亡して新たな相続が発生することがあります。

最初の相続の被相続人の配偶者が死亡した場合、配偶者の相続人は子ども一人です。

最初の相続において、配偶者と子どもが相続人です。

相続財産の分け方について話し合いがまとまる前に配偶者が死亡したから、子どもは配偶者の地位を相続しています。

残された子どもには直接の相続人の地位と配偶者の相続人の地位があるから、遺産分割協議ができるように見えます。

最初の相続で、配偶者と子どもは相続財産を共有しています。

次の相続で、配偶者の持分が子どもに帰属したというべきです。

子どもは直接の相続人の地位と配偶者の相続人の地位があることを理由に遺産分割協議をすることはできません。

最初の相続における被相続人名義の不動産は、2回に分けて相続登記を申請します。

配偶者と子どもが共有する登記、配偶者の持分全部移転する登記の2回です。

遺産分割協議をすることができないから、最初の被相続人から子どもへ直接権利移転していないからです。

③遺産分割協議後に相続人が一人だけになったら

相続財産は、相続人全員の合意で分け方を決める必要があります。

相続人全員の合意は、口頭であっても有効です。

相続人全員で相続財産の分け方の合意ができた場合、通常は、合意内容を文書に取りまとめます。

第三者に対して、相続人全員の合意で分け方を決めたことを信用してもらうためです。

相続人全員で相続財産の分け方の合意ができた後、文書に取りまとめる前に、相続人が死亡することがあります。

文書に取りまとめる前に相続人が死亡した場合、相続財産の分け方の合意に影響はありません。

相続人全員の合意事項は、有効です。

例えば、最初の相続において、配偶者と子どもが相続人です。

配偶者と子どもで相続財産の分け方の合意ができた後、文書に取りまとめる前に、配偶者が死亡することがあります。

配偶者と子どもでした合意事項は、配偶者の死亡後も有効です。

子どもは配偶者の死亡後に、口頭の合意内容を文書に取りまとめることができます。

配偶者と子どもで、一人が相続する合意をすることができます。

中間者が一人の場合、直接最終の相続人に相続登記をすることができます。

4数次相続で相続人が一人だけのときの遺産分割協議証明書の書き方

被相続人の最後の本籍 〇〇県〇〇市〇〇町〇丁目〇番地

被相続人の最後の住所 〇〇県〇〇市〇〇町〇丁目〇番〇号

被相続人のの氏名   〇〇 〇〇

被相続人の生年月日 昭和 〇〇年〇〇月〇〇日

被相続人の死亡日 平成〇〇年〇〇月〇〇日

相続人兼被相続人の最後の本籍 □□県□□市□□町□丁目□番地

相続人兼被相続人の最後の住所 □□県□□市□□町□丁目□番□号

相続人兼被相続人のの氏名   □□ □□

相続人兼被相続人の生年月日 昭和 □□年□□月□□日

相続人兼被相続人の死亡日 令和□□年□□月□□日

上記被相続人〇〇〇〇の死亡により開始した相続において、相続人は□□□□及び●●●●である。

平成〇〇年〇〇月〇〇日、相続人□□□□及び●●●●が行った遺産分割協議の内容は下記のとおりであることを証明する。

1. 相続財産中、次の不動産については、相続人●●●●が相続する。

(省略)

令和〇〇年〇〇月〇〇日

住所 〇〇県〇〇市〇〇町〇丁目〇番地

〇〇〇〇の相続人兼〇〇〇〇の相続人□□□□の相続人

●●●● 実印

5遺産分割協議書作成を司法書士に依頼するメリット

遺産分割協議書は遺産の分け方について、相続人全員による合意を取りまとめた文書です。

相続手続先に必要書類を尋ねると、遺産分割協議書が必要ですと一方的に言われることも少なくありません。

相続人が一人だけであれば、合意は必要ありません。

相続人が一人だけのことは、あまり多くないからです。

相続人が一人だけと思い込んでいるだけで、戸籍謄本で相続人調査をすると見知らぬ相続人が見つかることがあります。

相続人が一人だけと思い込んでいるだけで、単に疎遠な相続人であるだけのケースがあります。

相続人が一人だけと思い込んでいるだけで、音信不通であるだけのケースがあります。

行方不明であっても疎遠であっても、相続人は相続人です。

複数の相続人がいる場合、遺産分割協議書が必要になります。

数次相続が発生したために相続人が一人になった場合、よく事情を確認しないと適切な相続手続はできなくなります。

遺産分割協議書を作成したい方は、司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。

相続放棄の確認方法

2023-06-07

1相続放棄を認めたら家庭裁判所は相続放棄申述受理通知書を送る

①家庭裁判所は本人にだけ通知する

被相続人が多額の借金を残して死亡したとき、相続人は相続放棄をするでしょう。

家庭裁判所が相続放棄を認めた場合、本人に相続放棄申述受理通知書を送ります。

家庭裁判所は自主的に他の人に通知しません。

②相続放棄をしても次順位の相続人に通知されない

家庭裁判所が相続放棄を認めた場合、本人に相続放棄申述受理通知書を送ります。

家庭裁判所は自主的に次順位の相続人に通知しません。

例えば、被相続人の子どもが相続放棄をする場合、次の書類を提出します。

(1)被相続人の除票

(2)相続放棄する人の戸籍謄本(3か月以内のもの)

(3)収入印紙

(4)裁判所が手続で使う郵便切手

(5)被相続人の死亡の記載がある戸籍謄本

被相続人の戸籍謄本は、死亡の記載があるもののみ提出します。

家庭裁判所は、被相続人に子どもが何人いるのか分かりません。

次順位の相続人がだれなのか分かりません。

他に子どもがいるのかいないのか分からないから、家庭裁判所は通知できません。

次順位の相続人がだれなのか家庭裁判所が自発的に調査することもありません。

③相続放棄をしても次順位の相続人に通知する義務はない

相続放棄をすると相続人でなくなります。

相続放棄をして相続人でなくなったことを他の相続人に知らせる義務はありません。

相続人同士が疎遠な場合、他の相続人の連絡先を知らないことがあります。

相続財産の分け方を決める話し合いにも参加する必要はありません。

相続財産の分け方は、相続人全員の合意が不可欠です。

相続放棄をしたのか相続を承認したのかはっきりしないと、他の相続人はとても困ります。

相続人全員の合意がないと、相続財産の分け方を決めることができないからです。

④相続放棄をしても債権者に通知されない

家庭裁判所が相続放棄を認めた場合、本人に相続放棄申述受理通知書を送ります。

家庭裁判所は自主的に債権者に通知しません。

相続放棄で提出する書類は、先に説明したとおりです。

提出書類には、債権者名簿など債権者がだれなのか分かるような書類はありません。

家庭裁判所は、債権者がだれなのか分かりません。

債権者がだれなのか分からないから、家庭裁判所は通知できません。

債権者がだれなのか家庭裁判所が自発的に調査することもありません。

⑤相続放棄をしても債権者に通知する義務はない

相続放棄をすると相続人でなくなります。

相続放棄をして相続人でなくなったことを債権者に知らせる義務はありません。

被相続人があちこちから借金をしていた場合、相続人が借入先を把握しきれないことがあります。

借入先をすべて調査するまでもなく明らかに莫大な借金がある場合、相続放棄を決断します。

相続放棄をしたのか相続を承認したのかはっきりしないと、債権者はとても困ります。

だれに被相続人の借金の返済を求めればいいか分からないからです。

⑥相続放棄をしても戸籍に記載されない

家庭裁判所が相続放棄を認めた場合、本人に相続放棄申述受理通知書を送ります。

家庭裁判所は自主的に市区町村役場に通知しません。

相続放棄をしたら市区町村役場に届出をするルールはありません。

市区町村役場には、だれが相続放棄をしたのか単純承認をしたのか情報がありません。

相続放棄をした場合、戸籍に記載されることはありません。

2相続放棄申述受理証明書を発行してもらうことができる

①相続放棄申述受理証明書を発行してもらうには申請が必要

家庭裁判所は相続放棄を認めた場合、本人にだけ通知をします。

債権者や他の相続人などに、自発的に連絡することはありません。

債権者などに見せるため、家庭裁判所で相続放棄を認めてもらったことを証明してもらうことができます。

相続放棄申述受理証明書は、自動的に送られることはありません。

家庭裁判所に対して、手数料を払って証明書を作ってくださいと申請する必要があります。

相続放棄申述受理証明申請書は、家庭裁判所のホームページからダウンロードすることができます。

家庭裁判所によっては、相続放棄申述受理通知書と一緒に、送られてくることもあります。

手数料を払って手続をすれば何枚でも発行してくれるし、再発行もしてくれます。

②相続放棄をした本人が申請する場合

相続放棄申述受理証明申請書に添付する書類は、次のとおりです。

(1)本人確認書類 (運転免許証やマイナンバーカード) のコピー

相続放棄申述受理証明申請の手数料は1通につき、150円です。

手数料は、申請書に収入印紙を貼り付けて納付します。

収入印紙は家庭裁判所で消印を押します。

申請する人は、貼り付けるだけで消印は押しません。

相続放棄申述受理証明申請書は、家庭裁判所まで出向いて提出することもできるし、郵送で提出することもできます。

返信用の封筒に住所と宛名を記載して、郵便切手を一緒に提出すると、郵便で送り返してくれます。

③他の相続人が申請する場合

相続放棄申述受理証明申請書に添付する書類は、次のとおりです。

(1)本人確認書類 (運転免許証やマイナンバーカード) のコピー

(2)被相続人死亡の記載のある戸籍謄本

(3)申請する人の戸籍謄本

手数料は本人が申請する場合と一緒です。

(2)と(3)の戸籍謄本は多くの場合、希望すれば原本還付してくれます。

家庭裁判所によっては、最初からコピーを提出するだけでよい場合もあります。

すでに相続放棄をした人が、同じ被相続人について、相続放棄した他の人の相続放棄申述受理証明申請をすることはできません。

すでに相続放棄をした人は、相続人でなくなります。

相続人でないから、他の相続人が相続放棄をしていても相続放棄をしていなくても関係ありません。

利害関係がない人は、相続放棄申述受理証明申請をすることができないからです。

各自、相続放棄申述受理証明申請をしましょう。

④債権者が申請する場合

相続放棄申述受理証明申請書に添付する書類は、次のとおりです。

(1)本人確認書類 (運転免許証やマイナンバーカード) のコピー

(2)被相続人死亡の記載のある戸籍謄本

(3)金銭消費貸借契約などの債権者であることが分かる書類

(4)法人の場合、資格証明書

相続放棄申述受理証明申請をしてから、証明書が送られるまでに半月から1か月ほどかかります。

3相続放棄申述の有無の照会ができる

相続放棄申述受理証明申請書には、事件番号や受理年月日の記載が必要です。

事件番号や受理年月日は、相続放棄申述受理通知書に記載されています。

相続放棄をした相続人の協力が得られるのであれば、相続放棄申述受理通知書を見せてもらうといいでしょう。

今までの関係性から話しにくいことがあります。

相続放棄をしたかどうかを家庭裁判所に質問することができます。

相続放棄をしたかどうかを家庭裁判所に質問する制度のことを、相続放棄申述の有無の照会と言います。

事件番号や受理年月日が分からない場合、相続放棄申述の有無の照会をすると回答してもらえます。

相続放棄申述の有無の照会をする先の家庭裁判所は、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です。

家庭裁判所の管轄は裁判所のホームページで調べることができます。

相続放棄申述の有無の照会ができるのは、次の人です。

①同順位や次順位の相続人

②被相続人の債権者などの利害関係人

相続放棄申述の有無の照会申請書に添付する書類は、次のとおりです。

①被相続人死亡の戸籍謄本

②被相続人死亡の住民票か戸籍の附票

③照会者の身分証明書

④照会者が相続人の場合、相続人の戸籍謄本

⑤照会者が債権者などの場合、借用書や契約書

相続放棄申述の有無の照会申請書は、直接、出向いて提出してもいいし、郵便で送っても差し支えありません。

届出の書き方や提出書類が心配な方は、出向いて裁判所の受付で目を通してもらうと安心です。

返信用の封筒と切手を同封しておくと、郵送で回答してもらえます。

相続放棄申述の有無の照会に手数料はかかりません。

相続放棄申述の有無の照会申請書を提出してから、回答がされるまでにはおおむね半月ほどかかります。

照会の対象となる期間は、家庭裁判所によって異なります。

多くの家庭裁判所では、被相続人の死亡後3か月、先順位の相続人が相続放棄を認められてから3か月です。

ときには被相続人の死亡後長期間経過してから、相続があったことを知る場合があります。

相続があったことを知ってから3か月以内であれば相続放棄の申立てをすることができるはずです。

家庭裁判所によっては、熟慮期間経過後に相続放棄の申立てをしていた人が見落とされる可能性があります。

4自分が相続人であることが判明したら

①知ってから3か月以内は相続放棄ができる

相続放棄申述の有無の照会で、先順位の相続人が相続放棄をしたことが判明する場合があります。

相続放棄を希望する場合、家庭裁判所に対して相続放棄の申立てをしなければなりません。

この届出の期限は、原則として、相続があったことを知ってから3か月以内です。

「相続があったことを知ってから」とは、被相続人が死亡して相続が発生し、その人が相続人であることを知って、かつ、相続財産を相続することを知ってから、と考えられています。

3か月以内に戸籍や住民票などの必要書類を揃えて管轄の家庭裁判所に提出しなければなりません。

②単純承認をするなら相続手続をする

単純承認をする場合、相続手続をすることになります。

遺言書がない場合、相続財産の分け方は相続人全員の合意が必要です。

他の相続人と協力して相続手続を進める必要があります。

5相続放棄申述受理証明申請を司法書士に依頼するメリット

相続放棄が家庭裁判所で認められると、家庭裁判所から相続放棄申述受理通知書が届きます。

家庭裁判所は相続放棄を認めた場合、本人に通知をします。

自主的に他の相続人や債権者などに連絡することはありません。

役所や法務局なども例外ではありません。

相続放棄をした人がいる場合、相続放棄をしたので相続人ではありませんと証明する必要があります。

相続放棄申述受理通知書で足りる場合がほとんどですが、時々、相続放棄申述受理証明書が必要になります。

司法書士は、このような家庭裁判所に対する書類作成もサポートしております。

相続放棄や相続放棄申述受理証明書でお困りの方は、司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。

家族信託の受益者が死亡

2023-06-05

1家族信託とは

所有者はものを自由に売ったり、自由に管理したりして、ものから利益を受け取ることができます。

だから、所有権は、自由にものを売る権利であるし、自由に管理する権利であるし、ものから利益を受け取る権利であるといえます。

所有権はよく見ると、たくさんの権利の集合体といえます。

たくさんの権利の集合体である所有権から、自由に売る権利や自由に管理する権利を信頼できる家族に渡して、自分はものから利益を受け取る権利だけ持っていることができます。

自由に売る権利や自由に管理する権利を信頼できる家族に渡して、自分はものから利益を受け取る権利だけ持つ仕組みを家族のための信託といいます。

この仕組みを利用すると、信頼できる家族は自由にものを売ることができるし、自由に管理することができます。

自由に売る権利や自由に管理する権利を渡す相手は信頼できる家族であればよく、親子でなくても差し支えありません。

2家族信託の受益者が死亡したら

①受益者の死亡時に信託を終了させることができる

家族信託は、本人と信頼できる家族との間でする契約です。

信託契約をした後、家族信託を永久に続けることはできません。

どのようなときに信託を終了させるのか、信託契約の中で決めておきます。

家族信託の終了事由は、家族信託の目的に応じて考えます。

例えば、本人の認知症リスクに備えるために家族信託を利用する場合があります。

本人が認知症になった場合、資産が凍結されるリスクがあります。

認知症になると、物事のメリットデメリットを充分に判断できなくなるからです。

物事のメリットデメリットを充分に判断できない状態では、契約などの法律行為ができなくなります。

資産が凍結されるとは、不動産の売却などができなくなるという意味です。

本人が認知症になったことを銀行などの金融機関が知った場合、銀行口座を凍結します。

口座が凍結すると、入出金や引き落としができなくなります。

本人が認知症になった場合でも、資産が凍結されないようにするためには家族信託が有効です。

認知症リスクに備えるために家族信託をするのであれば、本人の死亡で家族信託を終了させるといいでしょう。

本人の死亡後には、家族信託を続ける意味はないからです。

本人が生きているうちに家族信託を終了させると、認知症リスクに対して対策がないことになります。

②受益者が死亡しても信託を継続させることができる

どのようなときに信託を終了させるのか、信託契約の中で決めておくことができます。

家族信託の終了事由は、家族信託の目的に応じて考えます。

家族信託を利用するのは、本人の認知症リスクに備えるためだけではありません。

例えば、先祖伝来の土地を自分の血縁関係がある人に引き継いでもらいたい場合に、家族信託は有効です。

遺言書では、自分の次に引き継ぐ人を指定することができます。

自分の後に引き継いだ人が次にだれに引き継ぐかを指定することはできません。

自分の後に引き継いだ人が決めることだからです。

家族信託では、信託契約で次の人だけでなく次の次に引き継ぐ人を決めておくことができます。

最初の受益者が死亡した後も、信託は終了しません。

信託を継続させて、次の人、次の次の人に引き継ぎます。

先祖伝来の土地を血縁関係がある人に引き継いでもらいたいのが、信託目的だからです。

期間の制限がありますが、長期間に渡って信託を続けることができます。

信託契約でどのような信託にするのか決めておくことが重要です。

家族信託は柔軟な設計ができるからこそ、いろいろなことを考えて設計することが大切です。

3家族信託が終了したときの信託財産の行方

①信託契約で決められた人が引き継ぐ

信託が終了した場合、残った信託財産をだれが引き継ぐのか決めておくことができます。

家族信託の受益者と同じ人でも異なる人でも構いません。

本人の認知症リスクに備えるために家族信託を利用した場合、本人の死亡によって家族信託を終了させることが一般的です。

信託契約で信託財産の行き先を決めてあると、財産の引き継ぎでトラブルになることが減ります。

本人の死亡によって家族信託を終了させる場合、家族信託は実質的に相続トラブルへの対策になります。

家族信託は本人の認知症リスクに備えるために利用することができるから、遺言書より話がしやすくなります。

②委託者またはその相続人が引き継ぐ

信託が終了した場合、残った信託財産をだれが引き継ぐのか決めておくことができます。

信託契約で決められた人がご辞退することがあります。

信託契約で残った信託財産を引き継ぐ人を決めていない場合やご辞退された場合、委託者またはその相続人が引き継ぎます。

信託法の定めによって引き継ぐ人が決まるものです。

③清算受託者が引き継ぐ

信託契約で残った信託財産を引き継ぐ人を決めていない場合やご辞退された場合で、かつ、委託者もその相続人も不在の場合、清算受託者が引き継ぎます。

清算受託者は、信託法の定めによって引き継ぎます。

相続放棄のように、放棄することはできません。

4家族信託が継続するときの信託財産の行方

①受益者死亡で受益権が消滅し次の受益者が受益権を取得する

信託契約において、受益者が死亡しても信託は継続するように設計することができます。

受益者が死亡しても信託は継続する場合、信託契約で次の受益者を決めておくといいでしょう。

信託契約で受益者死亡により受益権が消滅すると決められている場合、受益権は相続財産になりません。

受益権は、信託契約の定めに従って引き継ぐものです。

受益権は相続財産ではないし、受益権の引き継ぎも相続ではありません。

相続ではないけど、財産の額によっては相続税の対象になります。

次の受益者は、相続人であることも相続人以外であることもあります。

信託契約で受益者が決められた場合、当然に受益者になります。

②受益者死亡で相続人が受益権を相続する

信託契約において、受益者が死亡しても信託は継続するように設計することができます。

受益者が死亡しても、信託は終了しません。

信託契約で受益者死亡により受益権が消滅すると決められていない場合、受益権は相続財産になります。

受益者が遺言書を作っていた場合、遺言書で受益権をだれが相続するのか指定することができます。

遺言書の書き方によっては、受益権をだれが相続するのか指定されたと解釈されるかもしれません。

遺言書の書き直しを考える必要があるかもしれません。

遺言書による指定がない場合、受益者の相続人全員の共有財産になります。

相続人全員の話し合いによる合意によって、受益権の分け方を決めなければなりません。

5受託者=受益者で1年経過すると信託は終了する

家族信託は、委託者の意思の実現のために利用されます。

受託者は、委託者の意思を実現させる人です。

委託者の意思を実現させ、受益者が利益を受け取ります。

受託者が受託者の利益のために、財産管理をするはずです。

受託者が受益権の全部を固有の財産で有する場合、受託者は自分の利益のために財産管理をすることになります。

受託者は自分の利益のために財産管理をするのであれば、所有権を移したのと同じです。

わざわざ信託を存続させる意味がなくなります。

信託を存続させる意味がないまま1年間継続した場合、家族信託は当然に終了になります。

信託を継続させたい場合、信託を終了させないための対策が必要です。

受託者が受益権の全部を固有の財産で有する場合に備えて、あらかじめ次の受託者を決めておくことができます。

6家族信託を司法書士に依頼するメリット

高齢化社会が到来したといわれて、多くの方は長生きになりました。

平均寿命は男性も女性も80歳を超して、認知症になる方が多くなりました。

認知症になると、物事のメリットデメリットが充分に判断できなくなります

本人の財産は本人しか処分できないため、本人が判断できなくなると資産が凍結されてしまいます。

たとえ、本人が介護施設入所のためであっても、本人の不動産を勝手に売却することはできません。

たとえ、本人の実の子どもであっても、本人の定期預金を解約することはできません。

一部の金融機関では、本人以外の家族がキャッシュカードを使っていることを確認したら、キャッシュカードを回収しています。

本人の意思確認を重視する流れは、他の金融機関にも広がっていくでしょう。

認知症対策は、本人の判断能力がしっかりしているうちしかできません。

いつか認知症対策をしようではなく、今なら元気だから対策しようが正解です。

認知症になると、本人はもとより家族も困ります。

家族信託は認知症対策として有効です。

自分のためにも家族のためにも認知症対策を考えている方は、司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。

失踪宣告がされてから相続放棄

2023-06-02

1失踪宣告とは

①失踪宣告がされると行方不明の人は死亡と見なされる

相当長期間、行方不明になっている場合、死亡している可能性が高い場合があります。

条件を満たした場合、死亡の取り扱いをすることができます。

失踪宣告とは、行方不明の人が死亡した取り扱いとするための手続です。

失踪宣告がされたら、たとえ死亡していなくても死亡した取り扱いをします。

死亡した取り扱いをしますから、失踪宣告がされた人に相続が発生します。

失踪宣告には、普通失踪と特別失踪の2種類があります。

②普通失踪とは

普通失踪とは、行方不明の人について7年間生死不明の場合、申立てができるものです。

普通失踪の申立てをした場合、失踪宣告がされるまでおよそ3か月以上かかります。

家庭裁判所の状況や事件の内容によっては、1年ほどかかる場合もあります。

生死不明になってから7年間経過したときに、死亡したものと見なされます。

③特別失踪(危難失踪)とは

特別失踪とは、「戦地に行った者」「沈没した船舶に乗っていた者」「その他死亡の原因となる災難に遭遇した者」を対象にする失踪宣告です。

危難が去ってから1年間生死不明の場合、申立てができます。

特別失踪の申立てをした場合、失踪宣告がされるまでおよそ1か月以上かかります。

危難が去ったときに、死亡したものと見なされます。

④失踪宣告後生きていることが分かったら失踪宣告の取消

失踪宣告とは、行方不明の人が死亡した取り扱いとするための手続です。

失踪宣告がされたら、たとえ生きていても死亡した取り扱いがされます。

行方不明の人に失踪宣告がされた後、本人が帰ってくることがあります。

失踪宣告がされた後、生きていることが分かった場合、失踪宣告を取り消してもらいます。

失踪宣告した日と違う日に死亡していたことが判明する場合があります。

失踪宣告がされた後、失踪宣告した日と違う日に死亡していたことが分かった場合、失踪宣告を取り消してもらいます。

失踪宣告をするときも失踪宣告を取り消すときも、家庭裁判所の関与が必要です。

失踪宣告は、死亡したと扱う重大な手続だからです。

2失踪宣告がされると相続が開始する

失踪宣告されたら、行方不明の人は死亡した取り扱いをします。

失踪宣告された人は、死亡した取り扱いなので相続が開始します。

失踪宣告された人を被相続人として相続手続をします。

相続が発生した日は、失踪宣告の申立てをした日ではありません。

失踪宣告で死亡と見なされた日です。

普通失踪では、生死不明になってから7年間経過したときに、死亡したものと見なされます。

特別失踪では、危難が去ったときに、死亡したものと見なされます。

生死不明になってから相当長期間経過した後に失踪宣告の申立てをすることがあります。

失踪宣告の申立てをしてから失踪宣告の審判が確定するまでに、およそ1年程度かかります。

だれが相続人になるのかよく確認することが重要です。

3行方不明のままでは相続放棄ができない

家族が莫大な借金を抱えたまま音信不通になることがあります。

莫大な借金を抱えて行方不明になった場合、いつか自分が借金を引き継いでしまうのではないか不安になるかもしれません。

行方不明の人に莫大な借金があったとしても、家族が相続放棄をすることはできません。

行方不明の人は、生きていると判断されるからです。

相続放棄をすることができるのは、相続人だけです。

行方不明であるだけで生きているから、相続が発生していません。

家庭裁判所に相続放棄の申立てを提出しても、受け付けてもらえません。

被相続人の生前に相続放棄をすることはできないからです。

4失踪宣告がされたら相続放棄ができる

①失踪宣告の審判の確定証明書を取得する

失踪宣告の審判がされたら、家庭裁判所から審判書謄本が届きます。

審判書が届いても、審判が確定するわけではありません。

失踪宣告の審判がされた後、2週間は不服を言う人が現れるかもしれないからです。

なにごともなく2週間経過すると失踪宣告の審判は確定します。

確定しても何も連絡はありません。

2週間経過後に家庭裁判所に申請をすれば、確定証明書を取得することができます。

②失踪宣告の審判が確定したら市区町村役場に失踪届

失踪宣告の審判が確定した後、家庭裁判所から市区町村役場にも連絡がされることはありません。

審判が確定した後、審判書謄本と確定証明書を添えて10日以内に市区町村役場に届出が必要です。

市区町村役場に届出をして、はじめて戸籍に記載がされます。

相続放棄の手続では、失踪宣告の記載のある戸籍が必要になりますから、届出をしないと手続が進まなくなります。

③相続放棄の期限3か月のスタートは知ってから

相続放棄の申立ての期限は、原則として、相続があったことを知ってから3か月以内です。

「相続があったことを知ってから」とは、被相続人が死亡して相続が発生し、その人が相続人であることを知って、かつ、相続財産を相続することを知ってから、と考えられています。

被相続人に失踪宣告がされたため相続が開始した場合、相続が開始した日は死亡と見なされた日です。

死亡と見なされた日に相続があったことを知ることはないでしょう。

普通失踪では、生死不明になってから7年間経過したときに、死亡したものと見なされます。

失踪宣告の申立ては、生死不明になってから相当長期間経過した後に出されることが多いです。

生死不明になってから10年以上経過してから失踪宣告の申立てが出された場合、生死不明になってから7年間経過したときに死亡したものと見なされます。

失踪宣告の申立をした人には、失踪宣告の審判書謄本が届きます。

失踪宣告の審判書謄本が届いても、相続があったことを知ったとは言えません。

失踪宣告の審判がされた後、2週間は不服を言う人が現れるかもしれないからです。

なにごともなく2週間経過すると失踪宣告の審判は確定します。

失踪宣告の審判が確定して、はじめて、相続があったことを知ったとは言えます。

相続があったことを知った時から、相続放棄の期限3か月がスタートします。

他の相続人は、失踪宣告の申立てをした人から失踪宣告があったことを聞くことになるでしょう。

時には戸籍謄本の記載を見て失踪宣告があったことを知るかもしれません。

失踪宣告があったことを知った時から、相続放棄の期限3か月がスタートします。

5認定死亡がされたときも相続放棄ができる

①認定死亡とは

人が死亡した場合、通常、医師が死亡の確認をします。

海難事故や震災などで死亡は確実であっても遺体を確認できない場合があります。

遺体が見つからない場合、医師が死亡の確認をすることができません。

海難事故や震災などで死亡が確実の場合、行政機関が市町村長に対して死亡の報告をします。

死亡の報告によって死亡が認定され、戸籍に記載がされます。

行政機関が市町村長に対して死亡の報告をしたら、戸籍上も死亡と扱う制度が認定死亡です。

事実上、死亡の推定が認められます。

認定死亡により、相続が開始します。

②認定死亡がされたときは相続が開始する

認定死亡の場合、死亡が確実であっても死亡日が分からないことがほとんどです。

推定令和○年○月○日死亡

推定令和○年○月○日頃死亡

令和○年○月○日から同月○日の間死亡

年月日不詳

戸籍を確認した場合に、上記のような記載がされている場合があります。

このような記載であっても、相続が開始しますから相続手続をすることができます。

相続放棄の申立てをする場合も、戸籍のとおり記載すれば構いません。

6生死不明の相続人がいる相続を司法書士に依頼するメリット

相続が発生した後、相続手続を進めたいのに行方不明の相続人や長期間行方不明で生死不明の相続人がいて困っている人はたくさんいます。

自分たちで手続しようとして挫折する方も少なくありません。

失踪宣告の申立など家庭裁判所に手続きが必要になる場合など通常ではあまり聞かない手続になると専門家のサポートが必要になることが多いでしょう。

信託銀行などは、高額な手数料で相続手続を代行しています。

被相続人が生前、相続人のためを思って、高額な費用を払っておいても、信託銀行はこのような手間のかかる手続を投げ出して知識のない遺族を困らせます。

知識のない相続人が困らないように高額でも費用を払ってくれたはずなのに、これでは意味がありません。

税金の専門家なども対応できず、困っている遺族はどうしていいか分からないまま途方に暮れてしまいます。

裁判所に提出する書類作成は司法書士の専門分野です。

途方に暮れた相続人をサポートして相続手続を進めることができます。

自分たちでやってみて挫折した方も、信託銀行などから丸投げされた方も、相続手続で不安がある方は司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。

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