特定財産承継遺言

1特定財産承継遺言とは

遺言書に書く内容は、財産の分け方に関することがまず思い浮かぶでしょう。

遺言書に「財産〇〇〇〇を相続人〇〇に相続させる」と財産を具体的に書いてある場合、この遺言書のことを特定財産承継遺言と言います。

特定の相続人に特定の財産を受け継いで欲しい場合、特定財産承継遺言が適切でしょう。

遺言書の書き方は、これ以外にも「財産の3分の1を相続人〇〇に相続させる」のように、財産を具体的に書かない場合があります。

遺言書に「財産〇〇〇〇を相続人〇〇に相続させる」と書いてある場合、相続が発生した後に相続財産の分け方の話し合いは不要です。

相続が発生した時に、財産〇〇〇〇が相続人〇〇のものになるからです。

2特定財産承継遺言の効力

遺言書に「財産〇〇〇〇を相続人〇〇に相続させる」と書いてある場合、相続が発生した時に、財産〇〇〇〇が相続人〇〇のものになります。

相続が発生した後、遺言書があることや遺言書の内容について、家族の中で情報共有をするでしょう。

家族の中では、遺言書に「財産〇〇〇〇を相続人〇〇に相続させる」と書いてあるから、「財産〇〇〇〇は相続人〇〇のものだ」と主張することができます。

家族の中で主張するために特段の手続は必要ありません。

家族の中では周知の事実になっていても、家族以外の人には分かりません。

一部の相続人から遺言書は無かったと聞かされた場合、家族以外の人は疑いようがないでしょう。

遺言書は無いと信じた第三者が土地などの相続財産を買うケースがあります。

遺言書は無いと信じた第三者の人に対して、「財産〇〇〇〇は相続人〇〇のものだ」と主張する場合、対抗要件を備えなければなりません。

土地などの不動産の対抗要件は、相続登記をすることです。

相続登記をしなければ、法定相続分以上について家族以外の人に主張できません。

遺言書は無いと信じた第三者に対して、遺言書に「財産〇〇〇〇を相続人〇〇に相続させる」と書いてあるから、「財産〇〇〇〇は相続人〇〇のものだ」と主張することができません。

相続が発生した時に、財産〇〇〇〇が相続人〇〇のものになりますから、相続登記をしておく必要があります。

相続登記をしないまま放置した場合、家族以外の人に対して「財産〇〇〇〇は相続人〇〇のものだ」と主張することができなくなります。

土地などの財産を買った人は、通常、すぐに所有権移転登記をします。

所有権移転登記をしないまま放置している間に、売主は別の人にその土地を売るかもしれないからです。

所有権移転登記をしない場合、登記簿は売主の名義のままだから、事情を知らない人は売主の土地だと信じてしまうでしょう。

後から買った別の人が所有権移転登記をした場合、「私が買った土地だから私のものだ」と主張することができます。

私が先に買った土地だから私のものだと文句を言うことはできません。

土地は、先に登記をした人のものになります。

このようなトラブルになるのは困るから、土地などの財産を買った人はすぐに所有権移転登記をします。

このようなトラブルになった場合、先に登記をした人のものになるのが登記の効果です。

土地などの財産を買った人が先に登記をした場合、土地は買った人のものになります。

遺言書に「財産〇〇〇〇を相続人〇〇に相続させる」と書いてあっても、私が買った土地だから私のものだと主張することができます。

遺言書に「財産〇〇〇〇を相続人〇〇に相続させる」と書いてあるから私のものだと主張するためには、相続登記をしておかなければなりません。

相続登記をしないまま放置した場合、財産〇〇〇〇が相続人〇〇のものにならなくなります。

「財産〇〇〇〇は相続人〇〇のものだ」と主張することができなくなるとは、私が買った土地だから私のものだと主張することができるという意味です。

私が買った土地だから私のものだと主張することができるから、土地は買った人のものになります。

相続登記をしておくことは、とても重要です。

3特定財産承継遺言は遺言執行者におまかせできる

遺言書に「財産〇〇〇〇を相続人〇〇に相続させる」と書いてある場合、相続が発生した時に、財産〇〇〇〇が相続人〇〇のものになります。

財産〇〇〇〇が相続人〇〇のものであることを第三者に主張するためには、登記などの対抗要件が必要です。

遺言執行者がいる場合、遺言執行者に対抗要件を備えるところまでおまかせすることができます。

通常、マイホームを購入したときなど不動産が自分のものになった場合、すぐに登記をします。

所有権移転登記をしないまま放置している間に、他の人がその不動産を購入して自分のものだと主張するかもしれないからです。

相続で不動産が自分のものになった場合、家族以外の人が自分のものだと主張するかもしれないと心配することはあまりないかもしれません。

相続登記は相続手続の中でも手間がかかる難易度が高い手続です。

不動産が自分のものになったと安心して、相続登記を先延ばししたくなるかもしれません。

遺言執行者がいれば、相続登記をするところまで依頼することができます。

2019年7月1日以前作成の遺言書で遺言執行者に指名された場合、止むを得ない理由があれば司法書士などの専門家にその任務を任せることができます。

遺言執行者に指名されたのが2019年7月1日以降作成の遺言書であれば、遺言執行者は自己の責任で司法書士などの専門家にその任務を任せることができます。

止むを得ない理由がなくても、専門家に任せることができるように変更になりました。

4特定遺贈とのちがい

①特定財産承継遺言は相続人に対してだけ

遺贈とは、被相続人が遺言によって、法定相続人や法定相続人以外の人に、財産を譲ってあげることです。

遺贈では、法定相続人に譲ってあげることもできるし、相続人以外の人に譲ってあげることができます。

特定遺贈とは、遺言書に、「財産〇〇〇〇を遺贈する」と財産を具体的に書いてある場合です。

遺贈は、相続人に対して財産を譲ってあげることができるし、相続人以外の人に対して財産を譲ってあげることができます。

相続させることができるのは、相続人に対してだけです。

相続人以外の人に対して財産を受け継いでもらう場合、遺贈することになります。

遺言書に相続人以外の人に対して相続させると書いてあった場合、遺贈の意思と考えられます。

②特定財産承継遺言は単独で相続手続ができる

遺言書に「遺贈する」とあれば、譲ってもらう人が相続人であっても相続人以外の人でも、遺贈で手続します。

遺贈で相続手続をする場合、遺言執行者がいなければ相続人全員の協力が必要です。

一部の相続人が相続手続に協力しない場合、手続が進まなくなってしまいます。

③特定遺贈の放棄は手続がカンタン

特定財産承継遺言の内容をご辞退したい場合があるでしょう。

特定財産承継遺言の内容をご辞退したい場合、3か月以内に家庭裁判所で相続放棄の手続が必要です。

家庭裁判所で相続放棄をする場合、はじめから相続人でない取り扱いがされます。

相続人でなくなりますから、他の財産も受け継ぐことができなくなります。

特定遺贈をご辞退したい場合、家庭裁判所の手続は不要です。

遺贈された財産のうち、全部の財産をご辞退することもできるし一部の財産だけご辞退することもできます。

3か月以内という制限もありません。

④特定財産承継遺言は農地でも許可が不要

相続財産に農地が含まれている場合があります。

農地を相続する場合、農業委員会の許可は必要ありません。

特定遺贈の場合、農業委員会の許可を受けなければなりません。

⑤特定財産承継遺言は賃借権の相続でも同意が不要

被相続人が賃貸マンションに住んでいる場合があります。

賃貸マンションを借りる権利が賃借権の代表例です。

賃貸マンションを借りる権利は相続財産になります。

賃借権を相続する場合、大家の同意は必要ありません。

賃借権は包括遺贈の場合も特定遺贈の場合も、大家の同意を受ける必要があります。

⑥配偶者居住権設定は遺贈で

相続が発生した時、一定の条件を満たしていれば配偶者居住権を得ることができます。

配偶者居住権は、(1)遺産分割協議(2)遺言による遺贈(3)死因贈与契約のどれかで得ることができます。

配偶者居住権を相続させることはできません。

遺言書に「配偶者居住権を相続させる」と記載された場合、配偶者居住権を遺贈すると解釈されることになるでしょう。

配偶者居住権を第三者に主張するためには、登記が必要です。

「配偶者居住権を相続させる」と書かれた遺言書を提出して登記申請があった場合、配偶者居住権を遺贈すると解釈して登記が認められます。

5遺言書作成を司法書士に依頼するメリット

遺言書は遺言者の意思を示すものです。

自分が死んだことを考えたくないという気持ちがあると、抵抗したくなるかもしれません。

いろいろ言い訳を考えて先延ばしします。

先延ばしした結果、認知症などで遺言書を作れなくなって、その先には家族のもめごとが待っています。

家族がトラブルに巻き込まれることを望む人はいないでしょう。

死んだ後のことを考えるのは不愉快などと言えるのは、判断力がしっかりしている証拠ですから、まず遺言書を書くことをおすすめします。

遺言書があることでトラブルになるのは、ごく稀なケースです。

遺言書がないからトラブルになるのはたくさんあります。

そのうえ、遺言書1枚あれば、相続手続きは格段にラクになります。

状況が変われば、遺言書は何度でも書き直すことができます。

家族を幸せにするために遺言書を作ると考えましょう。

遺言書の書き直しのご相談もお受けしています。

家族の喜ぶ顔のためにやるべきことはやったと安心される方はどなたも晴れやかなお顔です。

家族の幸せを願う方は、遺言書作成を司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。

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