遺言執行者が相続登記

1遺言執行者が遺言書の内容を実現してくれる

遺言書は遺言者の意思を示したものです。

遺言書を書いただけでは、意味がありません。

遺言書を書いただけで、自動的に遺言内容が実現するわけではないからです。

遺言書の内容を実現する人が遺言執行者です。

遺言執行者の職務は、遺言書の内容を実現することです。

相続が開始したら、膨大な手続があります。

手続きする先は、銀行などの金融機関や役所、法務局、家庭裁判所などです。

いずれも、平日の昼間しか手続できません。

相続人は遺言の内容を見たら、被相続人の意思を尊重し、実現してあげたいと思うでしょう。

相続人にとって不利な内容になっている場合、遺言の実現に協力してくれないこともあります。

協力してくれない場合に備えて、遺言執行者を選任しておくことが有効です。

遺言執行者は遺言の内容を実現するために、必要な行為をする権限があります。

協力しない相続人が遺言執行を妨害した場合、原則として、妨害行為は無効になります。

遺言執行者はいてもいなくても、遺言書の効力に違いはありません。

遺言執行者がいると、確実に遺言者の意思を実現してもらえますから、安心です。

2遺言執行者は相続登記ができる

「不動産〇〇を相続人〇〇に相続させる。」

被相続人が上記のような遺言書を作成している場合があります。

特定の財産を特定の相続人に相続させる遺言です。

特定の財産を特定の相続人に相続させる遺言のことを、特定財産承継遺言と言います。

特定財産承継遺言がある場合、遺産分割協議は必要ありません。

相続が発生した時に、その財産はその相続人に帰属するからです。

財産がその相続人に帰属する場合でも、自動で相続登記がされることはありません。

相続登記は法務局に対して申請が必要だからです。

特定財産承継遺言がある場合、遺言執行者は相続手続をすることができます。

遺言執行者は相続手続のひとつとして、相続登記をすることができます。

遺言執行者が相続登記をすることができるのは、令和元年7月1日以降作成の遺言書に限られます。

遺言執行者がいる場合でも、相続人は自分で相続登記をすることができます。

遺言執行者が相続登記を申請することができるから、遺言執行者から司法書士などの専門家に相続登記を依頼することができます。

司法書士などの専門家に相続登記を依頼する場合、遺言執行者が委任状に記名押印をします。

3遺言執行者は遺贈の登記ができる

「不動産□□を□□に遺贈する。」

被相続人が上記のような遺言書を作成している場合があります。

遺贈とは、被相続人が遺言によって、法定相続人や法定相続人以外の人に、財産を譲ってあげることです。

相続では、法定相続人だけに譲ってあげることができます。

遺贈では、法定相続人に譲ってあげることもできるし、相続人以外の人に譲ってあげることができます。

譲ってもらう人は自然人でもいいし、法人などの団体でも差し支えありません。

遺言書に「遺贈する」とあれば、譲ってもらう人が相続人であっても相続人以外の人でも、遺贈で手続します。

遺贈には、2種類あります。

特定遺贈と包括遺贈です。

特定遺贈とは、遺言書に「財産〇〇〇〇を遺贈する」と財産を具体的に書いてある場合です。

包括遺贈とは、遺言書に「財産すべてを包括遺贈する」「財産の2分の1を包括遺贈する」と割合だけ書いて財産を具体的に書いてない場合です。

特定遺贈では、受け継ぐ財産が具体的に特定されています。

具体的に特定されているから、特定遺贈では遺産分割協議は必要ありません。

相続が発生した時に、その財産は遺贈を受け取る人に帰属するからです。

財産が遺贈を受け取る人に帰属する場合でも、自動で遺贈の登記がされることはありません。

遺贈の登記は法務局に対して申請が必要だからです。

遺贈する遺言がある場合、遺言執行者は相続手続をすることができます。

遺言執行者は、遺贈を受け取る人と協力して遺贈の登記をすることができます。

遺言執行者がいる場合、相続人全員は遺贈を受け取る人と協力して遺贈の登記をすることができません。

遺言執行者がいる場合、遺贈の登記は必ず遺言執行者が遺贈を受け取る人と協力して登記申請をする必要があります。

遺言執行者が遺贈登記を申請することができるから、遺言執行者から司法書士などの専門家に遺贈の登記を依頼することができます。

司法書士などの専門家に遺贈の登記を依頼する場合、遺言執行者が委任状に記名押印をします。

遺贈の登記申請書に添付する印鑑証明書は、遺言執行者の印鑑証明書です。

4遺言執行者は遺贈の登記の前提として住所変更登記ができる

①遺贈の登記の前提として住所変更登記が必要

被相続人の財産調査のため登記簿を確認すると、登記簿上の住所が古い住所のままになっていることがあります。

遺贈の登記を申請するためには、前提として、住所変更登記をする必要があります。

遺言執行者は遺贈の登記を申請するために、前提として、住所変更登記をすることができます。

遺言執行者が住所変更登記を申請することができるから、遺言執行者から司法書士などの専門家に住所変更登記を依頼することができます。

司法書士などの専門家に住所変更登記を依頼する場合、遺言執行者が委任状に記名押印をします。

②相続登記の前提として住所変更登記が不要だが証明書類が必要

相続登記をする場合、前提として、住所変更登記をする必要はありません。

住所変更登記をする必要がないだけで、被相続人の住所の移り変わりを確認する必要はあります。

被相続人の住所の移り変わりを確認できない場合、法務局は同じ名前の別の人と判断するからです。

同じ名前の別の人に相続があったと判断された場合、相続登記は認めてもらえません。

被相続人の住所の移り変わりを公的書類で証明すれば、相続登記をすることができます。

5遺言執行を専門家に委任することができる

遺言者は、遺言執行者を自由に指名することができます。

親族のうちから選んでも構いませんし、司法書士などの専門家に依頼することもできます。

家族から選んだ場合、相続人同士の関係性や財産状況が分かっているので、手続がスムーズに進むかもしれません。

一方で、難易度の高い相続手続や財産状況が複雑な場合、対応しきれなくなることがあります。

司法書士などの専門家に遺言執行者になってもらう場合、専門性や中立性の面から安心です。

遺言執行者がするべき職務は、多岐に渡ります。

専門知識を必要とすることも多いものです。

令和元年7月1日以前作成の遺言書で遺言執行者に指名された場合、止むを得ない理由があれば司法書士などの専門家にその任務を任せることができます。

遺言執行者に指名されたのが令和元年7月1日以降作成の遺言書であれば、遺言執行者は自己の責任で司法書士などの専門家にその任務を任せることができます。

止むを得ない理由がなくても、司法書士などの専門家に任せることができるように変更になりました。

遺言執行は法律知識が必要な手続が多いので、専門家に任せる方がスムーズでしょう。

法律改正で、専門家に任せやすくなったといえます。

6遺言書作成と遺言執行を司法書士に依頼するメリット

遺言執行者は遺言書の内容を実現する人です。

相続人が遺言書の内容に納得していて、手続に協力的であれば、必ずしも、遺言執行者を選任する必要はありません。

子どもの認知など遺言執行者しかできない手続がある場合、遺言執行者を選任しておかないと、相続人に余計な手間をかけさせることになります。

遺言執行者は、相続開始後すみやかに手続を進めることができる時間と知識がある人を選ぶことが重要です。

その意味でも、家族より司法書士などの専門家に遺言執行を依頼する人が増えています。

以前は、遺言執行者は止むを得ない場合だけ、他の人に職務を任せることができるとされていましたが、現在は、止むを得ないなどの理由は不要になりました。

遺言執行者に指名され、職務をしてみたところ、思ったよりタイヘンだという場合、自己の責任で司法書士などの専門家におまかせすることもできます。

今後も、専門家に依頼する人は増えていくでしょう。

遺言執行を司法書士などの専門家に依頼した場合、相続人は基本待っているだけなので、トラブルになることが少なくなるからです。

家族を笑顔にするためにも、遺言書作成と遺言執行者選任しましょう。

家族の幸せのためにも、遺言書作成と遺言執行者選任を司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。

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