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相続放棄ができない場合
1相続放棄とは
相続が発生したら、原則として、被相続人のプラスの遺産もマイナスの遺産も相続人が受け継ぎます。
被相続人のプラスの遺産もマイナスの遺産も受け継がないことを相続の放棄といいます。
相続放棄をすると、プラスの遺産を引き継がなくなりますが、マイナスの遺産も引き継ぐことがなくなります。
相続の放棄は被相続人ごとに判断できますから、例えば、父について相続放棄をするが、母について単純承認するでも差し支えありません。
相続の放棄は相続人ごとに判断しますから、例えば、父の相続人ついて長男は相続放棄するが、長女は単純承認するでも差し支えありません。
2熟慮期間が経過したから相続放棄ができない
相続放棄は、家庭裁判所に対して、必要な書類をを添えて相続放棄をしたい旨の届出をします。
この届出は相続があったことを知ってから、原則として、3か月以内にする必要があります。
3か月間は、相続人が相続放棄をするか検討するための期間です。
検討するための期間のことを熟慮期間と言います。
「相続があったことを知ってから」とは、被相続人が死亡して相続が発生し、その人が相続人であることを知って、かつ、相続財産を相続することを知ってから、と考えられています。
3か月以内に相続放棄をするか判断が難しい場合、熟慮期間の延長をお願いすることができます。
熟慮期間の延長が認められれば、さらに3か月、期間が延びます。
相続放棄をするか検討するための期間が過ぎてしまったら、相続放棄はできなくなります。
3単純承認しているから相続放棄ができない
すでに相続を単純承認してしまっている場合、撤回することはできません。
すでに相続を単純承認してしまっているのに、相続放棄をすることはできないのです。
例えば、次のような行為をした場合、相続を単純承認してしまっていると判断されます。
①財産をすでに使っている
相続財産を処分した場合、相続放棄はできません。
②相続財産の分け方について合意をしている
相続財産の分け方について合意は、相続することを前提とした行為です。
遺産分割協議をすることは、相続人であると認めることです。
遺産分割協議で、プラスの遺産もマイナスの遺産も受け取らないと合意しても、相続放棄ではありません。
プラスの遺産もマイナスの遺産も受け取らないと合意した後、相続放棄はできません。
③経済的価値の高い形見分けを受け取っている
財産的価値の低い日用品は形見分けしても問題になることはありません。
宝飾品やブランド品を形見分けした場合、問題になりやすいです。
財産的価値の高い形見分けは、相続財産の処分と判断されます。
相続財産の処分と判断された場合、相続放棄はできません。
④被相続人あての請求を相続財産で支払っている
被相続人あての請求書がある場合、相続人の固有の財産から支払う場合は問題がありません。
相続財産から支払っている場合、相続財産を処分したと判断されます。
相続財産の処分と判断された場合、相続放棄はできません。
⑤被相続人の債権を取り立てて支払を受けた
債権を取り立てると被相続人の債権が減ります。
相続財産の処分にあたると判断されます。
相続財産の処分と判断された場合、相続放棄はできません。
⑥相続財産を隠したり、財産がないと偽った
相続財産を隠したり、ないと偽って独り占めすることは許されることではありません。
相続財産を勝手に処分したことと同じように見られます。
相続財産の処分と判断された場合、相続放棄はできません。
4家庭裁判所に手続していないから相続放棄ができない
相続放棄は、家庭裁判所に対して、必要な書類をを添えて相続放棄をしたい旨の届出をします。
家庭裁判所に対して、相続放棄をしたい旨の届出をしない場合、相続放棄はできません。
被相続人が生前、相続人になる予定の人と相続放棄をすると約束している場合があります。
相続放棄をすると約束しても、意味はありません。
家庭裁判所に届出をしていないからです。
相続人間で相続放棄をすると念書を書いている場合があります。
相続放棄をすると念書を書いても、無効です。
家庭裁判所が関与していないからです。
父母が離婚する際に、子どもが相続放棄をすると誓約書を渡している場合があります。
子どもが相続放棄をすると誓約書を書いても、子どもには関係ない話です。
家庭裁判所に手続をしていないからです。
被相続人の債権者に相続放棄をすると申し入れをしている場合があります。
債権者に申し入れをするだけでは、何の価値もありません。
家庭裁判所が相続放棄を認めていないからです。
5書類不足だから相続放棄ができない
相続放棄は、家庭裁判所に対して、必要な書類をを添えて相続放棄をしたい旨の届出をします。
書類が足りないと、家庭裁判所は相続放棄を認めてくれません。
足りない書類がある場合、家庭裁判所から連絡があります。
連絡があったら、すみやかに対応しましょう。
家庭裁判所は平日の昼間しか業務を行っていません。
せっかく連絡してくれたのに、対応せずに放置すると相続放棄が認められなくなります。
早めに対応しましょう。
6熟慮期間が過ぎても相続放棄が認められることがある
相続人であることは承知していたが、債務があるとは知らなかった。
債務があると知ったのは、相続人であることを知ってから3か月以上経過した後だった、という場合があります。
例えば、被相続人が保証人になっていた場合が典型的です。
被相続人が死亡してから何年も後になって、保証債務の履行を請求されるケースです。
被相続人と別居していた相続人は、被相続人の経済状況を詳しく知っていることは少ないでしょう。
被相続人と疎遠な相続人なら、まったく知らないでしょう。
このような場合、被相続人の財産を処分していないのなら、相続放棄が認められる可能性が高いと言えます。
ただし、家庭裁判所にはこのような詳細な事情が分かりません。
債務があると知った時期や債務があることを知った経緯などを事情説明書に詳細に取りまとめて、申し立てる必要があります。
7相続放棄を司法書士に依頼するメリット
実は、相続放棄はその相続でチャンスは1回限りです。
家庭裁判所に認められない場合、即時抗告という手続を取ることはできますが、高等裁判所の手続です。
しかも2週間以内に申立てが必要になります。
家庭裁判所で認めてもらえなかった場合、即時抗告で相続放棄を認めてもらえるのは、ごく例外的な場合に限られます。
一挙にハードルが上がると言ってよいでしょう。
相続が発生してから3か月以内に届出ができなかったのは止むを得なかったと家庭裁判所に納得してもらって、はじめて、家庭裁判所は相続放棄を認めてくれます。
通常は家庭裁判所に対して、上申書や事情説明書という書類を添えて、説得することになります。家庭裁判所が知りたいことを無視した作文やダラダラとした作文では認めてもらうことは難しいでしょう。
司法書士であれば、家庭裁判所に認めてもらえるポイントを承知していますから、認めてもらいやすい書類を作成することができます。
さらに、通常の相続放棄と同様に戸籍や住民票が必要になります。
お仕事や家事、通院などでお忙しい人には平日の昼間に役所にお出かけになって準備するのは負担が大きいものです。
戸籍や住民票は郵便による取り寄せもできますが、書類の不備などによる問い合わせはやはり役所の業務時間中の対応が必要になりますから、やはり負担は軽いとは言えません。
このような戸籍や住民票の取り寄せも司法書士は代行します。
3か月の期限が差し迫っている方や期限が過ぎてしまっている方は、すみやかに司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。
相続放棄と代襲相続
1代襲相続とは
相続が発生したら、親族のうち一定の範囲の人が相続人になります。
誰が相続人になるかについては、民法で決められています。
相続人になる人は次のとおりです。
①配偶者は必ず相続人になる
②被相続人に子どもがいる場合、子ども
③被相続人に子どもがいない場合、親などの直系尊属
④被相続人に子どももいない場合で、かつ、親などの直系尊属が被相続人より先に死亡している場合、兄弟姉妹
相続人になるはずだった人が被相続人より先に死亡したため、相続人になるはずだった人の子どもや子どもの子どもが相続することがあります。
これを代襲相続と言います。
相続人になるはずだった人の子どもの子どもが相続することを再代襲相続と言います。
代襲相続ができるのは、相続人になるはずだった人の子どもなど被相続人の直系卑属だけです。
相続人になるはずだった人の子どもなど被相続人の直系卑属以外は代襲相続ができません。
相続人になるはずだった人の配偶者も、相続人になるはずだった人の親などの直系尊属も、相続人になるはずだった人の兄弟姉妹も、代襲相続ができません。
2代襲相続になる原因
①相続人の死亡
相続人になるはずだった人が被相続人より先に死亡した場合です。
実際に死亡した場合の他に、失踪宣告を受けて死亡したものと扱われる場合も、代襲相続が発生します。
被相続人の死亡後、相続手続の途中で相続人が死亡した場合には、数次相続になります。
相続が発生したときに相続人が健在であれば、その後死亡しても代襲相続にはなりません。
②相続人が欠格
欠格とは、相続人としてふさわしくない人の相続資格を奪う制度のことです。
欠格になる理由は法律で定められています。
主な理由は、被相続人を殺害したり、殺害しようとしたり、遺言書を偽造したり、遺言書を隠したりしたなどです。
法律で決められた理由があれば、家庭裁判所などの手続はなく、当然に、相続資格を失います。
相続人が相続欠格になる場合、代襲相続ができます。
③相続人が廃除
相続人廃除とは、被相続人の意思で、相続人の資格を奪う制度のことです。
例えば、被相続人に虐待をした人に、相続をさせたくないと考えるのは自然なことでしょう。
相続人廃除は家庭裁判所に申立をして、家庭裁判所が判断します。
被相続人が相続人廃除したいと言い、相続人が廃除されていいと納得していても、家庭裁判所が相続人廃除を認めないことがあります。
相続人が相続人廃除になる場合、代襲相続ができます。
3子どもが相続放棄をしたら孫は代襲相続しない
被相続人の子どもが相続放棄をした場合、子どもの子どもは代襲相続しません。
子どもが相続放棄をした場合、代襲相続が発生しないからです。
被相続人の子どもが相続放棄をした場合、はじめから相続人でなかったとみなされます。
相続人でなくなるから、代襲相続もあり得ません。
被相続人の借金から逃れるために相続放棄をした場合、代襲相続がされないので安心です。
被相続人の子ども全員が相続放棄をした場合、子どもがいない場合になります。
子どもがいない場合、親などの直系尊属が相続します。
4父母が相続放棄すると祖父母が相続できる
子どもがいない人に相続が発生した場合、相続人になるのは親などの直系尊属です。
直系尊属が複数いる場合、親等が近い人が相続人になります。
例えば、父母と祖父母がいる場合、父母は1親等、祖父母は2親等です。
親等が近い人が相続人になるから、祖父母は相続人になりません。
父母が相続放棄をした場合、父母は相続人でなくなります。
父母がいない場合になりますから、祖父母が相続人になります。
祖父母が相続人になりますが、代襲相続ではありません。
子どもの次の順位の相続人は、親などの直系尊属だからです。
祖父母は直系尊属だから、相続人になります。
5親を相続放棄しても祖父母を代襲相続できる
被相続人に借金がある場合、子どもは相続放棄をするでしょう。
子ども全員が相続放棄をした場合、親などの直系尊属が相続人になります。
相続人になった親などの直系尊属が死亡した場合、最初の被相続人の子どもは代襲相続人になります。
最初の相続の被相続人は、次の相続の被相続人の子どもにあたるからです。
最初の相続で相続放棄をしても単純承認をしても、最初の相続の被相続人の子どもは、あらためて、次の相続について相続放棄をするか単純承認をするか判断することができます。
相続放棄をするか単純承認をするかは、被相続人ごとにすることができるからです。
最初の被相続人に借金があった場合でも、次の被相続人に莫大なプラスの財産がある場合があります。
最初の被相続人の借金を含めて相続しても有り余るプラスの財産がある場合、最初の被相続人の子どもは単純承認することができます。
最初の相続で相続放棄したことで、次の相続を単純承認できなくなることはありません。
6数次相続があった後に相続放棄
相続財産の分け方について、話し合いがまとまる前に、相続人が死亡して新たな相続が発生することがあります。
最初の相続の手続中に相続人が死亡して、さらに相続が発生した状態を数次相続と言います。
数次相続は、相続が発生した「後」に、相続人が死亡した場合です。
代襲相続は、相続が発生する「前」に、相続人が死亡した場合です。
相続が発生したときに健在だった相続人が、相続放棄をするか単純承認をするか決めないまま死亡する場合があります。
死亡した相続人は、本来、相続放棄をすることも相続を承認することもできたはずです。
最初の相続について、相続放棄をするか相続を承認するか決める権利は、死亡した相続人の相続人に相続されます。
最初の相続で相続放棄も承認もしないまま相続人が死亡したケースでは、死亡した相続人の相続人は次の選択ができます。
①最初の相続を承認し、次の相続を承認する
②最初の相続を放棄し、次の相続を承認する
③最初の相続を放棄し、次の相続を放棄する
死亡した相続人の相続人は、死亡した相続人が相続放棄をするか相続を承認するか決める権利を行使して、最初の相続について相続放棄をすることができます。
死亡した相続人の相続人は、死亡した相続人の相続について単純承認をすることができます。
例えば、最初の被相続人に借金がある場合、最初の相続について相続放棄をすることが有効です。
死亡した相続人にプラスの財産がある場合、死亡した相続人の相続について単純承認をすることができます。
7複雑な相続と相続放棄を司法書士に依頼するメリット
相続が発生すると、被相続人のものは相続財産になります。
相続財産は相続人全員の共有財産ですから、分け方を決めるためには相続人全員の合意が必要です。
相続人の一部を含めない合意や相続人でない人を含めた合意は無効になります。
相続財産の分け方の話し合いの前提として、相続人の確定はとても重要です。
代襲相続や数次相続が発生している場合、一挙に難易度が上がります。
インターネットが普及したことで、多くの情報を手軽に得ることができるようになりました。
簡単に情報発信ができるようになったこともあって、適切でない情報も有益な情報もたくさん出回っています。
相続の専門家と名乗っていながら、適切でないアドバイスを見かけることも度々あります。
代襲相続や相続放棄が発生している場合、信頼できる専門家のサポートが欠かせません。
相続放棄をした場合代襲相続はできないとだけカンタンに説明している自称専門家はたくさんいます。
相続人確定を間違えると以降の相続手続は、すべて無効になります。
相続放棄は3か月の期間制限があります。
相続放棄は不要だと誤解してしまった3か月を経過してしまったら、相続放棄は認めてもらえなくなります。
制度をよく理解して、自分がどうしたらいいのか適切に判断する必要があります。
スムーズに相続手続を行いたい方は、司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。
相続放棄しても生命保険の死亡保険金
1相続財産を処分したら相続放棄が無効になる
相続放棄はできないのに、家庭裁判所に相続放棄の手続をして、相続放棄が認められても無効です。
単純承認したとみなされる行為は、法律で定められています。
相続財産の名義変更をした、相続財産である銀行の預貯金を引き出して使ってしまった場合が典型的です。
単に、引き出しただけであれば、処分とは言えないことが多いでしょう。
引き出したうえ、自分の口座に送金して保管すると、「処分した」と評価される可能性が高くなります。
銀行の預貯金を引き出してお葬式の支払にあてた場合、状況によっては、処分したと判断されることもあります。
被相続人が払い過ぎた税金などの還付金の支払を受けた場合、「処分した」と判断されます。
相続財産の分け方について、相続人全員で合意をした場合も、相続財産を「処分した」場合に当たります。
相続財産に株式がある場合、株式に基づく株主権の行使が「処分した」になることがあります。
被相続人が会社役員かつ株主の場合、安易に株主総会を開催して、役員変更すると相続放棄が無効になるおそれがあります。
2生命保険の死亡保険金は受け取ることができる
生命保険の死亡保険金は金額が大きいことが多いので、気になる人も多いでしょう。
原則として生命保険の保険金を受け取る権利は、相続人の固有の財産です。
受取人が「相続人」と指定してあっても、相続で受け取るものではありません。
被相続人の死亡をきっかけにして、保険契約によって受取人が保険金を受け取るものです。
多くの場合、被相続人は生前に生命保険の死亡保険金を受け取る権利を持っていなかったでしょう。
相続によって、被相続人から受け継いだものではありません。
相続人の固有の財産だから、相続放棄をした人は生命保険の保険金を受け取ることができます。
生命保険の保険金を受け取ったことで、相続放棄が無効になることはありません。
生命保険の死亡保険金を受け取った後、被相続人の借金を支払うことができます。
生命保険を受け取る権利は、相続人の固有の財産だからです。
相続人の固有の財産を処分しただけで、相続財産を処分した訳ではないからです。
生命保険の保険金は相続財産でないのに、相続税の課税対象になります。
相続税の課税対象になるから、相続財産と誤解されやすいです。
誤解している他の相続人から「相続放棄をしたのだから、生命保険金を引き渡すように」と干渉されることがあります。
3受取人が被相続人の入院給付金等は受け取ることができない
受取人が被相続人の生命保険は、相続放棄をした相続人が受け取ることはできません。
自分で受け取らずに他の人に譲ってあげることもできません。
他の人に譲ってあげることは、相続を単純承認したことを前提としているからです。
相続を単純承認した場合、相続放棄をすることはできません。
家庭裁判所が事情を知らずに相続放棄を認めてしまっても、後から無効になります。
①入院給付金は受け取れない
生命保険には、入院給付が手厚い契約などいろいろな種類の契約があります。
入院給付が手厚い契約などでは、保険金の受取人は被相続人になっているでしょう。
保険金の受取人は被相続人の場合、入院給付金を受け取る権利は相続財産になります。
②解約返戻金は受け取れない
被相続人が保険料を負担して、相続人に生命保険をかけている場合があります。
生命保険がかかっている相続人は健在ですから、生命保険金は支給されません。
生命保険の保険料を払っていた人に相続が発生しただけですから、生命保険契約も継続します。
生命保険契約を相続した場合、生命保険契約を解約して解約返戻金を受け取ることができます。
相続放棄をした人は、生命保険契約を相続することができません。
生命保険契約を解約することは、相続財産を処分したと判断されます。
相続財産を処分した場合、相続放棄は無効になります。
③満期保険金は受け取れない
生命保険の中には、養老保険のように保険期間が決まっており期間満了時に満期保険金が支払われる契約のものがあります。
満期保険金の受取人が被相続人の場合、相続放棄をした相続人は受け取ることができません。
満期保険金の受取人が相続人の場合、相続放棄をした相続人は受け取ることができます。
満期保険金の受取人が被相続人の場合、満期保険金を受け取る権利を相続する必要があるからです。
相続放棄をした相続人は、満期保険金を受け取る権利を相続することができません。
4被相続人の債権者は解約返戻金を差し押さえることができる
相続人が相続放棄をする理由の多くは、被相続人のマイナスの財産が多いためでしょう。
借金をしている人に財産がある場合、一定の条件で財産を差し押さえることができます。
借金をしている人が死亡した場合、死亡保険金を受け取る権利は相続人の財産になります。
借金をしている人が死亡する前は、相続人の財産ではありません。
借金をしている人が死亡する前は、生命保険は借金をしている人の財産です。
債権者から見ると、生命保険という財産があるのに借金を返していないと言えます。
財産があるのに借金を返さない場合、一定の条件の下で、財産から強制的に借金を取り立てることができます。
生命保険は、解約したら解約返戻金が支払われます。
債権者は、取立権を行使して、相続発生前に生命保険を解約することができます。
解約返戻金を差し押さえて、解約返戻金から借金を払ってもらうことができます。
相続発生前に生命保険を解約した場合、死亡保険金は支払われません。
5相続放棄をした人が生命保険を受け取る場合、税金面で不利になる可能性
被相続人に生命保険が掛けられている場合、被相続人の死亡すれば生命保険の保険金が支払われます。
生命保険の保険金は相続財産ではなく、保険契約による受取人の固有の財産です。
だから、生命保険の受取人が相続放棄をした場合でも、生命保険の保険金を受け取ることができます。
生命保険の保険金は相続財産でないにもかかわらず、原則として、相続税の課税対象です。
生命保険の保険金について、相続人全体の非課税枠は 500万円×法定相続人の人数 です。
相続人全員の非課税枠を計算するときは、相続放棄した人も含めて計算します。
相続放棄した人は、相続人全員の非課税枠を計算するときは含めるのに、その人の相続税を計算するときには、500万円の非課税枠を使うことはできません。
500万円分非課税にできないので、その分だけ税金を余計に負担しなければなりません。
税金の専門家からは、相続放棄をすると税金がソンになるとアドバイスされることがあります。
相続放棄をするためには家庭裁判所に対して手続をしなければなりません。
手間がかかる家庭裁判所で相続放棄の手続をするより、他の相続人に財産を受け取りませんと申し入れをするように説得をします。
他の相続人に財産を受け取りませんと申し入れをするだけでは、相続放棄のメリットを受けることはできません。
税金について検討するのは重要ですが、税金のメリットだけで判断すると失敗します。
税金以外のメリット、デメリットも充分検討して、相続放棄をした方がいいか相続放棄をしない方がいいのか、総合的に判断しましょう。
6相続放棄を司法書士に依頼するメリット
相続放棄はプラスの財産もマイナスの財産も引き継ぎませんという裁判所に対する届出です。
相続人らとのお話合いで、プラスの財産を相続しませんと申し入れをすることではありません。
つまり、家庭裁判所で認められないとマイナスの財産を引き継がなくて済むというメリットは受けられないのです。
実は、相続放棄はその相続でチャンスは実質的には1回限りです。
家庭裁判所に認められない場合、即時抗告という手続きを取ることはできますが、高等裁判所の手続で、2週間以内に申立てが必要になります。
家庭裁判所で認めてもらえなかった場合、即時抗告で相続放棄を認めてもらえるのは、ごく例外的な場合に限られます。
一挙にハードルが上がると言ってよいでしょう。
司法書士であれば、家庭裁判所に認めてもらえるポイントを承知していますから、認めてもらえやすい書類を作成することができます。
相続放棄をしたい旨の届出には戸籍や住民票が必要になります。
お仕事や家事、通院などでお忙しい人には平日の昼間に役所にお出かけになって準備するのは負担が大きいものです。
戸籍や住民票は郵便による取り寄せもできますが、書類の不備などによる問い合わせはやはり役所の業務時間中の対応が必要になりますから、やはり負担は軽いとは言えません。
このような戸籍や住民票の取り寄せも司法書士は代行します。
3か月の期間内に手続きするのは思ったよりハードルが高いものです。
相続放棄を考えている方はすみやかに司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。
相続放棄は詐害行為にならない
1過大な贈与は詐害行為になる
お金を借りた人は、借りたお金を返さなければなりません。
借りたお金を返さなければならないのに、自分の財産を不当に減少させて、結果、お金を返せなくなることがあります。
自分の財産を不当に減少させたら、お金を貸した人はお金を返してもらえなくなる結果になります。
お金を貸した人が困ることを知っているのに、自分の財産を不当に減少させることを詐害行為と言います。
お金を返してもらうため、お金を貸した人は詐害行為を取り消すことができます。
詐害行為として取り消すことができるのは、財産行為のみです。
お金を返さなければならないのに、自分の財産の大部分を贈与した場合、お金を返せなくなるでしょう。
自分の財産の大部分を贈与した場合、お金を返せなくなって、お金を貸した人が困るのは知っていると言えます。
このような贈与は、合法であっても、詐害行為にあたります。
お金を貸した人は、詐害行為を取り消すことができます。
2相続放棄は詐害行為で取消ができない
相続が発生したら、相続財産は相続人全員の共有財産になります。
被相続人の財産は、プラスの財産もマイナスの財産も相続財産です。
①被相続人が借金をしていた場合、相続放棄は詐害行為で取消ができない
被相続人が多額の借金を抱えたまま死亡した場合、お金を貸した人は相続人にお金を返してもらおうとするでしょう。
相続人は被相続人の借金を引き継がないために、相続放棄をすることが考えられます。
お金を貸した人は相続人にお金を返してもらおうと思っていたのに、相続放棄をされたら、請求できなくなって困ります。
お金を貸した人が困るのは知っていると言えるから、相続放棄を詐害行為として取り消したいと思うでしょう。
このような場合、相続放棄を詐害行為として取り消すことはできません。
相続放棄をしても、自己の財産を不当に減らしたわけではありません。
お金を貸す人は、お金を借りた人が生前に自己破産するリスクを検討してお金を貸すか貸さないか決めているはずです。
お金を借りた人が死亡した後、相続人が相続放棄するリスクも検討してお金を貸すか貸さないか決めべきと言えます。
相続放棄は、被相続人の借金から免れるためにある制度です。
お金を貸す人が負うべきリスクを相続人に押し付けると、相続人の人生が破綻します。
相続放棄の制度は、相続人の人生を守るために存在します。
被相続人の借金から免れるために相続放棄をしたのに、相続放棄を取り消せるとなったら、制度の存在意義がなくなります。
そもそも、相続放棄は身分行為であって、財産行為ではありません。
身分行為とは、結婚、離婚、子の認知、養子縁組、養子の離縁といった行為のことです。
身分行為は他人から強制されるものではありません。
被相続人の借金から免れるために相続放棄をしたのに、相続放棄を取り消せるとなったら、事実上、相続放棄はできなくなります。
相続放棄ができないことが、強制されてしまいます。
身分行為は、強制されるものではありません。
相続放棄は詐害行為ではないから、お金を貸した人がとやかく言うことはできないのです。
②相続人が借金をしている場合、相続放棄は詐害行為で取消ができない
被相続人が多額のプラスの財産を残して死亡することがあります。
相続人が多額の借金を抱えている場合、お金を貸した人は相続した財産からお金を返してもらいたいと期待するでしょう。
プラスの財産が多いことを知っていても、他の相続人のために相続放棄をすることがあります。
例えば、被相続人のお世話をしていた人に相続させたい場合、被相続人と相続人の今までの経緯から相続したくない場合などです。
相続すれば多額の財産がたやすく手に入るのに、相続放棄をしたら相続財産は受け継ぐことはできません。
お金を貸した人は相続財産からお金を返してもらおうと思っていたのに、相続放棄をされたら、返してもらえなくなって困ります。
お金を貸した人が困るのは知っていると言えるから、相続放棄を詐害行為として取り消したいと思うでしょう。
このような場合、相続放棄を詐害行為として取り消すことはできません。
相続放棄をしても、自己の財産を積極的に減らしたわけではありません。
自己の財産が増えるのを消極的に妨げたにすぎないからです。
被相続人が借金をしていた場合と同様に、相続放棄は身分行為だからです。
身分行為は他人から強制されるものではありません。
自分が借金をしている場合、相続放棄を取り消せるとなったら、事実上、相続放棄はできなくなります。
相続放棄ができないことが、強制されます。
身分行為は、強制されるものではありません。
相続人が借金をしている場合でも、相続放棄は詐害行為ではありませんから、お金を貸した人がとやかく言うことはできません。
3 遺産分割は詐害行為で取消ができる
相続放棄は、家庭裁判所に対して必要な書類をを添えて相続放棄をしたい旨の届出をすることです。
他の相続人に、プラスの財産を受け取らないことを申し入れをすることは、相続放棄ではありません。
相続人全員の話し合いで、プラスの財産を受け取らない人について合意をすることは、相続放棄ではありません。
相続財産は、相続人全員の話し合いによる合意で分け方を決める必要があります。
プラスの財産を受け取らないことを申し入れをすることは、相続人全員の話し合いによる合意の一部と言えます。
遺産分割協議とは、相続が発生したことにより、相続人全員の共有になった相続財産の分け方を決めることです。
遺産分割協議は、財産を目的とする財産行為です。
お金を借りている人が、法定相続分よりはるかに少ない財産で相続する合意をした場合、自己の財産を減少させる合意と言えます。
お金を借りている人が、プラスの財産を一切受け取らない合意をした場合、自己の財産を減少させる合意と言えます。
自己の財産を減少させる遺産分割協議は、詐害行為にあたります。
お金を貸した人は、詐害行為を取り消すことができます。
4相続放棄の取消は理由が限られている
法律行為は、一定の事情がある場合、取消をすることができます。
取消とは、相続放棄が受理されたときに既に何か問題が起きていて、問題に気付かずに受理されてしまったので、後からなかったことにすることです。
相続放棄は法律行為なので、一定の事情があれば、取り消しができます。
取り消しができるときは、相続放棄の申立をした家庭裁判所に、取消の申立をします。
①詐欺や強迫があった場合
詐欺とは、周囲の人から事実でない情報を聞かされてその情報を信じてしまったために相続放棄をした場合です。
強迫とは、相続放棄をしないと危害を加えるぞと迫られていた場合です。
②錯誤があった場合
錯誤とは、相続放棄をしようという意思決定をする際に、重要なことが事実と違っていた場合です。
③未成年者がひとりで相続放棄をした場合
未成年者は物事のメリットデメリットを充分判断することができません。
通常、親などの親権者が未成年者の代わりに法律行為をします。
家庭裁判所の担当者は必ず年齢を点検しますから、よほどのことがない限り、相続放棄が受理されません。
④成年被後見人などがひとりで相続放棄をした場合
成年被後見人とは、認知症や知的障害などで、物事のメリットデメリットを充分判断することができない人として認められた人です。
成年後見人などの保護者が成年被後見人の代わりに手続をします。
5相続放棄を司法書士に依頼するメリット
相続放棄はプラスの財産もマイナスの財産も引き継ぎませんという裁判所に対する届出です。
相続人らとのお話合いで、プラスの財産を相続しませんと申し入れをすることではありません。
つまり、家庭裁判所で認められないとマイナスの財産を引き継がなくて済むというメリットは受けられないのです。
相続放棄は取消できないと言われますが、これは撤回できないの意味で使われています。
日常使う言葉が法律上異なる意味で使われると分かりにくくなります。
相続放棄は撤回できませんが、条件を満たせば取消できるし、無効になることもあります。
家庭裁判所から相続放棄を認められた後でも、お金を貸した人から取立が続くこともあります。
相続放棄は無効だと主張されることもあります。
詐害行為にあたるから取り消すなどと主張されることがあります。
お金を貸した人に詐害行為取消権がありますが、相続放棄は詐害行為ではありません。
さらに、詐害行為取消権は、裁判で主張する必要があります。
このようなことは、法律知識がないと対応できないでしょう。
詐害行為でなくても、相続放棄することは権利濫用だなどと主張されることもあります。
相続放棄することは権利濫用だという主張も意味がない主張です。
相続放棄は、相続人が多大な借金を引き継いでしまうことで人生が破綻することから守るための制度です。
お金を貸す人が負うべきリスクを押し付けられるいわれはありません。
相続放棄を考えている方はすみやかに司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。
相続放棄をした人に遺留分侵害額請求
1遺留分侵害額請求とは
被相続人は、原則として、自分の財産をだれに受け継がせるかは自由に決めることができます。
とはいえ、財産は被相続人が1人で築いたものではなく、家族の協力があって築くことができたもののはずです。
被相続人の名義になっているからといって、まったく無制約の自由にすると今まで協力してきた家族に酷な結果となることもあります。
このため、被相続人に近い関係の相続人には相続財産に対して最低限の権利が認められています。
相続財産に対して、認められる最低限の権利のことを遺留分と言います。
生前贈与や遺言書などで遺留分を侵害された相続人は、遺留分侵害額請求をすることができます。
遺留分を侵害した相続人に対して遺留分に相当する金銭を請求します。
2相続放棄とは
相続が発生したら、原則として、被相続人のプラスの財産もマイナスの財産も相続人が受け継ぎます。
被相続人のプラスの財産もマイナスの財産も受け継がないことを相続の放棄といいます。
相続放棄をすると、プラスの財産を引き継がなくなりますが、マイナスの財産も引き継ぐことがなくなります。
相続放棄をした場合、はじめから相続人でなくなります。
3遺留分は遺贈→死因贈与→生前贈与の順で請求する
遺留分は、相続財産に対して最低限の権利です。
遺留分を請求できる対象は次のとおりです。
①遺贈
遺言によって、財産を譲ることです。
相続人や相続人以外の人に対して財産を受け取ってもらうことができます。
②死因贈与
死亡を原因とした、財産を譲ってあげる人と譲ってもらう人の契約です。
譲ってもらう人は、相続人であることも相続人以外の人であることもあります。
③生前贈与
被相続人が生きているうちにした贈与契約です。
贈与する相手は、相続人であることも相続人以外の人であることもあります。
遺留分が侵害されたら、①遺贈→②死因贈与→③生前贈与の順に請求することができます。
①遺贈だけでは遺留分に足りない場合、②死因贈与にも請求できます。
③生前贈与がたくさんあるときは、日付の新しいものから順番に請求します。
遺贈や死因贈与、生前贈与をする場合、極端な分与をすると、遺留分を侵害することになります。
遺留分を侵害するような分与にならないように、配慮する必要があるでしょう。
相続が発生してから、遺留分侵害額請求をする場合、トラブルに発展していることが多いです。
家族がトラブルに巻き込まれるのを望む人はいないでしょう。
財産を分与する場合、トラブルのもとにならないように充分配慮しましょう。
4相続人と相続人でない人では遺留分侵害額請求の条件が違う
①相続人に対して遺留分侵害額請求をする
相続人に対して、生前贈与をした場合、特別受益になる可能性があります。
原則として、相続が発生する前10年以内の贈与に対して、遺留分侵害額請求をすることができます。
贈与の当事者双方が遺留分権利者に損害を与えることを知ってした贈与は、たとえ、相続が発生する前10年以上の贈与であっても、遺留分侵害額請求をすることができます。
②相続人でない人に対して遺留分侵害額請求をする
原則として、相続が発生する前1年以内の贈与に対して、遺留分侵害額請求をすることができます。
贈与の当事者双方が遺留分権利者に損害を与えることを知ってした贈与は、たとえ、相続が発生する前1年以上の贈与であっても、遺留分侵害額請求をすることができます。
相続放棄をした場合、はじめから相続人でなくなります。
相続放棄をした相続人に対して遺留分侵害額請求する場合、相続人でない人に対する遺留分侵害額請求になります。
相続が発生する前1年以上の贈与であって、かつ、被相続人と相続放棄をした相続人のいずれかが遺留分権利者に損害を与えることを知らない場合、遺留分侵害額請求をすることができません。
5遺留分侵害額請求は金銭で請求する
遺留分が侵害されたら、遺留分を請求することができます。
請求するときは、遺留分に相当するお金を請求します。
不動産などの現物を請求することはできません。
遺留分侵害額請求は、侵害している人と話し合いから始めます。
侵害している人が相続人であれば、財産の分け方について、相続人全員で話し合いをしているのが通常ですから、穏やかな話し合いは難しいかもしれません。
侵害している人が遺贈を受けた人など相続人以外の人であれば、そもそも話し合いに応じてくれないかもしれません。
遺留分侵害額請求は時効があります。
相続の発生と遺留分侵害の事実を知ってから、1年です。
1年以内に請求しないと、遺留分侵害額請求はできなくなります。
穏やかな話し合いで解決できそうにない場合、弁護士に相談し内容証明郵便で遺留分侵害額請求書を送りましょう。
6生前対策を司法書士に依頼するメリット
生前対策というと相続税対策と考えがちです。
税金について検討することは大切ですが、税金だけに注目すると失敗します。
生前対策は、本人や家族が困らないように本人が物事のメリットデメリットを充分に判断できるうちに準備をすることです。
具体的には、①認知症対策②争族対策③相続税対策です。
税金だけに着目した場合、財産の大部分を生前贈与することに合理性があるかもしれません。
一部の相続人に偏った財産配分をした場合、相続発生後にトラブルになります。
財産の大部分を贈与した後、贈与を受けた相続人は相続放棄をすることがあります。
相続が発生する前1年以上の贈与であって、かつ、被相続人と相続放棄をした相続人のいずれかが遺留分権利者に損害を与えることを知らない場合、遺留分侵害額請求をすることができません。
遺留分侵害額請求をすることができなければ、いいだろうとは言えないでしょう。
このようなことがあった場合、家族の絆は決定的に壊されてしまうからです。
財産の大部分を贈与した後、相続財産はマイナスの財産ばかりの場合、債権者を巻き込んでトラブルになります。
そもそも相続税申告が必要な人は、全体の10%にも満たないわずかな人です。
相続税申告が必要な人には、相続税申告が必要なだけで相続税の納付が必要ない人をたくさん含んでいます。
それでも10%にも満たないわずかな人です。
生前対策で重要なのは、①認知症対策②争族対策です。
自分のためにも、家族のためにも、①認知症対策②争族対策をする必要があります。
自分と家族のために、生前対策を考えている人は司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。
相続放棄してもお墓
1相続財産とは
相続が発生すると、原則として、被相続人の財産は相続人が相続します。
相続人が相続する財産が、相続財産です。
相続財産はプラスの財産とマイナスの財産があります。
どちらも、相続財産です。
①プラスの財産
一般的に不動産、預金、株式や投資信託などの有価証券、現金などです。
さらに、宝飾品や美術品など価値があるものはプラスの財産といえるでしょう。
多くの方が財産と言われてたときにイメージしやすいものです。
これ以外にも、賃借権や借地権などの権利もプラスの財産になります。
②マイナスの財産
一般的に借金やローンなどです。
未払の税金や未払の入院費用などもマイナスの財産になります。
被相続人が連帯保証人であった場合は、連帯保証人の地位は相続人が引き継ぎます。
イメージしにくいですが、この連帯保証人の地位もマイナスの財産と言えます。
2お墓は相続財産ではない
被相続人の財産は、原則として、相続財産になります。
被相続人の財産であっても、次のような財産は、相続財産になりません。
①一身専属権
一身専属権とは、その人個人しか持つことができない権利や資格のことです。
権利行使をするかしないか、本来の権利者個人の意思次第とするのが適当とされる権利です。
例えば、生活保護受給権や扶養請求権などです。
一身専属権は、原則として、相続財産になりません。
遺留分侵害額請求権は、本人の意思が重視されます。
被相続人が遺留分侵害額請求をしないまま死亡した場合、相続人は遺留分侵害額請求権を相続して行使することはできません。
精神的苦痛に対する慰謝料請求権も、本人の意思が重視されます。
被相続人が精神的苦痛に対する慰謝料請求をしないまま死亡した場合、相続人は精神的苦痛に対する慰謝料請求権を相続して行使することはできません。
生命侵害に対する慰謝料請求権は、本人の意思が重視されません。
本人は、生命侵害によって死亡して意思を示すことができないからです。
たとえ、即死であっても被害者に生命侵害に対する慰謝料請求権が発生し、生命侵害に対する慰謝料請求権は相続人に相続されます。
②祭祀用財産
墓地、墓石、仏壇、家系図などの先祖祭祀のための財産は、相続財産とは別に扱います。
祭祀用財産は、祭祀を主宰すべき人が受け継ぎます。
③相続人の固有の財産
被相続人の死亡によって受け取るものであっても、相続人の固有の財産であることがあります。
相続人の固有の財産ですから、当然、相続財産ではありません。
相続人が受取人になっている生命保険の死亡保険金や死亡退職金は、相続人の固有の財産です。
相続人の固有の財産だから、相続財産には含まれません。
相続財産に含まれないのに、相続税の課税対象になります。
相続税の課税対象になるから、相続財産だという誤解が発生します。
3相続放棄をしてもお墓を承継できる
相続が発生したら、原則として、被相続人のプラスの財産もマイナスの財産も相続人が受け継ぎます。
被相続人のプラスの財産もマイナスの財産も受け継がないことを相続放棄といいます。
相続放棄をすると、プラスの財産を引き継がなくなりますが、マイナスの財産も引き継ぐことがなくなります。
相続放棄によって受け継ぐことがなくなるのは、相続財産についての話です。
お墓は相続財産ではありませんから、相続放棄とは無関係です。
相続放棄をしても相続放棄をしなくても、お墓を受け継ぐことができます。
お墓は祭祀用財産だからです。
祭祀用財産は、祭祀を主宰すべき人が受け継ぎます。
祭祀を主宰すべき人のことを祭祀承継者といいます。
お墓は、相続の対象ではありません。
相続人のうちのひとりが祭祀承継者になるのが一般的です。
お墓が複数ある場合、それぞれに祭祀承継者がいる場合もあります。
祭祀を主宰すべき人になる資格は、特にありません。
相続人であっても相続人以外の人でも、親族であっても親族でなくても、祭祀を主宰すべき人になることができます。
苗字が同じでない人であっても祭祀承継者になることができます。
ときには霊園管理者が祭祀承継者になる場合もあります。
相続のルールが適用されるものではありません。
先祖を祀ることは、親族の伝統や慣習、考え、気持ちと切り離せないからです。
祭祀用財産は親族の伝統や慣習、考え、気持ちと切り離せないから、相続財産一般と同様に分配することはできません。
祭祀承継者は、次のように決められます。
①被相続人の指定に従う
②慣習に従って決める
③家庭裁判所で決定する
被相続人が祭祀を主宰すべき人として指定する場合、一方的に指定することができます。
トラブル防止のために、本人の同意をもらっておく方がいいでしょう。
被相続人が指定しておらず慣習も明らかでない場合、家庭裁判所が指名します。
被相続人の意思、相続人の身分関係、過去の生活感情、祭祀を主宰する意欲や能力、他の相続人や周りの人の意見を聞いて総合的に判断します。
家庭裁判所は、総合的に考えて最もふさわしい人を祭祀承継者に指名します。
4お墓の承継する祭祀承継者は放棄できない
被相続人の指定、慣習、家庭裁判所の選択などで祭祀承継者に選ばれると、祭祀承継者になることを拒否することはできません。
相続が発生した後、相続放棄をした場合、相続人でなくなります。
祭祀承継者には放棄する制度がありません。
お墓は相続財産ではありませんから、相続放棄とは無関係です。
相続放棄をしても相続放棄をしなくても、お墓を受け継ぐことができます。
祭祀承継者に選ばれた場合、お墓を含む祭祀用財産を受け継ぐことになります。
祭祀用財産には、お墓以外にもいろいろな財産があります。
例えば、家系図や家系譜、仏壇、位牌、神棚、十字架、墓碑、霊屋などがあります。
これらの財産を受け継ぐことから、墓地の管理料や永代供養料の支払、法要の主宰、檀家としての支払などを負担します。
祭祀承継者がこれらの負担をした場合、他の親族に当然に分担を求めることができるものではありません。
将来、祭祀承継者がこれらの負担をすることになるといっても、相続分を多く受け取ることができるわけではありません。
祭祀継承者は、先祖供養などの祭祀を主宰しますが、どのような方針にするか決められていません。
受け継いだ祭祀用財産をどのように処分するか祭祀承継者に委ねられています。
祭祀用財産を処分するにあたって、他の親族の同意が必要になることはありません。
祭祀承継者は拒否することができない代わりに、幅広い裁量が認められています。
慣習に基づく親族などの話し合いで祭祀承継者を決める場合、祭祀をするにふさわしい人を祭祀承継者に決める必要があります。
5墓じまいと墓開きは多額の費用がかかる
祭祀承継者に選ばれた場合、お墓を含む祭祀用財産を受け継ぐことになります。
祭祀承継者には放棄する制度がありません。
自宅から遠方のお墓を受け継ぐことになったら、自分でお墓を管理することができなくなります。
祭祀承継者がお墓を移転したい場合、他の親族の同意が必要になることはありません。
お墓の移転をするには、墓じまいと墓開きをすることになります。
墓じまいをするには、改葬許可申請が必要になる他、墓地の使用契約を解約する必要があります。
お墓開きをするには、改葬許可申請が必要になる他、墓地の使用契約をする必要があります。
寺院や霊園の手続や墓石の撤去と設置に思わぬ高額の費用がかかる場合があります。
祭祀承継者がこれらの負担をした場合、他の親族に当然に分担を求めることができるものではありません。
相続財産の分け方を話し合うときにお墓の移転の費用負担を含めて決めておくといいでしょう。
6相続放棄を司法書士に依頼するメリット
お墓の継承は、相続とは別で扱われます。
お墓は、一般の財産とは同じように扱うことはできないから相続財産ではありません。
お墓は相続財産ではないから、相続放棄とも無関係です。
相続放棄をしても相続放棄をしなくても、お墓は受け継ぐことができます。
お墓は祭祀承継者に受け継がれます。
現代では家意識が薄れていますから、先祖祭祀は家の継承ではなくなっています。
死者に対する慕情、愛情、感謝の気持ちといった心情により行われるものと言えます。
被相続人と緊密な生活関係・親和関係にあって、被相続人に対しこのような心情を最も強く持っている人が受け継ぐといいでしょう。
一方で、祭祀継承者がお墓の近くに住んでいるとは限りません。
親族がお墓の移転にいい顔をしないかもしれません。
お墓の移転には想像以上の費用がかかる場合があります。
このようなことも含めて、相続財産の分け方の話し合いをする必要があります。
相続や祭祀承継者を決める場合、親族のいろいろな考えが表面化します。
相続放棄を考える方は、すみやかに司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。
相続放棄-借地権付き建物
1借地権は相続財産
被相続人がマイホームを持っている場合、土地は被相続人が所有しているケースと土地は借りているケースがあります。
被相続人が土地を借りてマイホームを持っている場合、土地を借りる権利、土地を使う権利があると言えます。
土地の上に建物を所有する目的で、土地を使う権利や土地を借りる権利のことを借地権と言います。
建物を所有する目的があるときだけ、借地権です。
更地で、資材置き場として使う目的や青空駐車場として使う目的の場合、土地を使う権利があったとしても、借地権とは言いません。
借地権は、法律的に言うと、賃借権の場合と地上権の場合があります。
賃借権は土地を借りて使う権利、地上権は土地を使う権利です。
地上権は、賃借権と比べると使う人の権利が強く保護されている権利です。
一般的には、借地権のほとんどは賃借権です。
借地権は、普通借地権と定期借地権があります。
被相続人がマイホームと借地権を持っていた場合、マイホームと借地権は相続財産になります。
2債務超過なら相続放棄ができる
相続が発生したら、原則として、被相続人のプラスの財産もマイナスの財産も相続人が受け継ぎます。
被相続人のプラスの財産もマイナスの財産も受け継がないことを相続の放棄といいます。
相続財産というとプラスの財産だけイメージしがちですが、マイナスの財産も含まれます。
マイナスの財産が多い場合、相続放棄をすることができます。
相続放棄は、相続人の判断ですることができます。
相続財産に借地権がある場合であっても、地主の許可は不要です。
借地権を相続する場合も相続放棄をする場合も、地主の同意は必要ありません。
法律で定められた一定の条件にあてはまるときは、単純承認したとみなされます。
単純承認とは、被相続人のプラスの財産もマイナスの財産も受け継ぐものです。
単純承認とみなされたら、相続放棄はできません。
3相続放棄をしても無効になる場合がある
相続放棄はできないのに、家庭裁判所に相続放棄の手続をして、相続放棄が認められても無効です。
家庭裁判所が事情を知らずに相続放棄を認めても、後から無効になります。
単純承認したとみなされる行為は、法律で定められています。
①相続財産を処分したとき
相続財産の名義変更をした、相続財産である銀行の預貯金を引き出して使ってしまった場合が典型的です。
単に、引き出しただけであれば、処分とは言えないことが多いでしょう。
引き出したうえ、自分の口座に送金して保管すると、「処分した」と評価される可能性が高くなります。
被相続人が払い過ぎた税金などの還付金の支払を受けた場合、「処分した」と判断されます。
相続財産の分け方について、相続人全員で合意をした場合も、相続財産を「処分した」場合に当たります。
②3か月以内に相続放棄の手続をしなかったとき
相続放棄の手続きは、相続があったことを知ってから3か月以内にする必要があります。
3か月以内に手続が間に合わない場合、期間伸長の申立ができます。
4建物取壊しをしたら相続放棄は無効
相続放棄をした場合、はじめから相続人でなかったと取り扱われます。
被相続人に莫大な借金があった場合、次順位の相続人も相続放棄をするでしょう。
相続人になる人全員が相続放棄をした場合、相続人不存在になります。
相続人不存在になるとだれも地代を払ってくれません。
地主が地代を請求してくる場合があります。
地代の支払に応じる必要はありません。
建物に住まないのなら土地を明け渡して欲しいと請求してくる場合があります。
このような請求に応じる必要もありません。
被相続人の所有していた建物がある場合、建物の取壊しを請求してくることもあります。
このような請求に応じる必要もありません。
被相続人が死亡した場合、借地権に影響はありません。
借地権は存続していますから、地主は土地を使うことはできません。
地主は土地を使えないうえに地代が入ってこないために、このような請求をしてきます。
地主に迷惑をかけている気持ちになって、建物を取壊して土地を明け渡す必要があると考えるかもしれません。
相続放棄をしたら、建物も借地権も相続していません。
相続人ではないから、建物も借地権も処分することはできません。
建物の解体をすることができないから、通常は、解体費用を負担することもありません。
建物の名義変更も、することはできません。
相続財産を処分した場合、相続放棄は無効になります。
建物の取壊しは、建物を処分したと判断されます。
建物は相続財産ですから、相続財産を処分したと判断されます。
建物の取壊しをした場合、相続放棄は無効になります。
同じ理由で、地代の支払をした場合、相続放棄が無効になります。
地主から地代の請求を受けた場合や建物の取壊し、土地の明け渡しの請求を受けた場合、相続放棄をしたことを伝えるといいでしょう。
相続放棄が認められた場合、家庭裁判所から相続放棄申述受理通知書が送られてきます。
地主には相続放棄申述受理通知書のコピーを渡すと分かってもらえることが多いです。
5相続人不存在の場合は相続財産管理人選任の申立て
借地権も建物の相続財産です。
相続放棄をしたら、相続人ではなくなりますから、処分はできなくなります。
地主が土地を使えないうえに地代が入ってこないから困っているとしても、何もすることはできません。
このような場合、地主から家庭裁判所に相続財産管理人選任の申立てをしてもらうといいでしょう。
相続が発生したのに相続人が不存在である場合、相続財産は最終的には国庫に帰属します。
相続財産管理人は、相続財産を整理して国庫に帰属させる人です。
相続財産に借地権や建物がある場合、売却して国庫に帰属させます。
被相続人が地代を滞納していた場合、地主は賃料不払いを理由に契約を解除することができます。
相続財産管理人に対して、建物収去土地明け渡しを請求します。
被相続人が地代を滞納していない場合、地主は賃料不払いを理由に契約を解除することができません。
地主が土地を使いたいと思うなら、相続財産管理人に対して借地権や建物を買い取りの交渉をすることができます。
地主が建物を買い取った場合、建物は地主のものになります。
地主は建物を取り壊したいと思うなら、自分の費用で取り壊すことができます。
6共有者である被相続人に相続人がいない場合
被相続人が天涯孤独で親族がいないこともあります。
相続人がいても相続放棄をして相続人でなくなっている場合があります。
①相続債権者がいる場合
相続財産は売却されて、相続債権者への支払にあてられます。
通常、共有持分は売却しようとしても、買い手が見つかりません。
買い手が見つかったとしても、著しく価格が低くなってしまいます。
共有持分を買い取る業者がいますが、買い取り額はおおむね時価の1~3割程度です。
多くの場合、被相続人と共有していた人に買取をお願いすることになります。
被相続人と不動産を共有していた人が対価を支払って、被相続人の共有持分を買い取ることになります。
②相続債権者がいない場合
被相続人と不動産を共有していた人が共有持分を取得します。
7相続放棄を司法書士に依頼するメリット
相続放棄はプラスの財産もマイナスの財産も引き継ぎませんという裁判所に対する届出です。
相続人らとのお話合いで、プラスの財産を相続しませんと申し入れをすることではありません。
つまり、家庭裁判所で認められないとマイナスの財産を引き継がなくて済むというメリットは受けられないのです。
同時に、家庭裁判所で相続放棄が認められたとしても、絶対的なものではありません。
相続放棄の要件を満たしていない場合、その後の裁判で相続放棄が否定されることもあり得ます。
相続の単純承認にあたる行為は、建物の取壊しや高価な宝石などの形見分けなども含まれます。
相続が発生すると、家族はお葬式の手配から始まって膨大な手続きと身辺整理に追われます。
相続するのか、相続を放棄するのか充分に判断することなく、安易に相続財産に手を付けて、相続放棄ができなくなることがあります。
相続に関する手続は、司法書士などの専門家に任せることができます。
手続を任せることで、大切な家族を追悼する余裕もできます。
相続人の調査や相続財産調査など適切に行って、充分に納得して手続を進めましょう。
相続放棄は3か月以内の制限があります。
3か月の期間内に手続するのは思ったよりハードルが高いものです。
相続放棄を考えている方はすみやかに司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。
相続放棄してもペットの引き取り
1ペットは相続できない
高齢化社会が到来して、多くの方は長生きになりました。
核家族化が進み、高齢者世帯や単身世帯が増えています。
人生100年時代のさびしさや孤独の辛さから、ペットに癒しを求めている人が増えています。
ペットは「家族」として一緒に暮らすパートナーになったと言えるでしょう。
飼い主にとって、大切な家族であるペットですが、飼い主が死亡しても、相続人にはなれません。
相続が発生したら、親族のうち一定の範囲の人が相続人になります。
だれが相続人になるかについては、民法で決められています。
相続人になる人は次のとおりです。
①配偶者は必ず相続人になる
②被相続人に子どもがいる場合、子ども
③被相続人に子どもがいない場合、親などの直系尊属
④被相続人に子どももいない場合で、かつ、親などの直系尊属が被相続人より先に死亡している場合、兄弟姉妹
飼い主にとって、ペットは大切な家族ですが、法律上はモノと同じです。
法律上、物に財産を残すことはできません。
ペットは相続人になれません。
2相続の承認と相続放棄
相続が発生したら、原則として、被相続人のプラスの財産もマイナスの財産も相続人が受け継ぎます。
相続財産というとプラスの財産だけイメージしがちですが、マイナスの財産も含まれます。
マイナスの財産が多い場合、相続放棄をすることができます。
法律で定められた一定の条件にあてはまるときは、単純承認したとみなされます。
単純承認とは、被相続人のプラスの財産もマイナスの財産も受け継ぐものです。
単純承認とみなされたら、相続放棄はできません。
相続放棄はできないのに、家庭裁判所に相続放棄の手続をして、相続放棄が認められても無効です。
家庭裁判所が事情を分からずに相続放棄を認めてしまっても、後から無効になります。
単純承認したとみなされる行為は、法律で定められています。
相続財産を処分した場合、単純承認したとみなされます。
相続財産の名義変更をした、相続財産である銀行の預貯金を引き出して使ってしまった場合が典型的です。
単に、引き出しただけであれば、処分とは言えないことが多いでしょう。
引き出したうえ、自分の口座に送金して保管すると、「処分した」と評価される可能性が高くなります。
相続財産の分け方について、相続人全員で合意をした場合も、相続財産を「処分した」場合に当たります。
3ペットを引き取ってもほとんど問題ない
飼い主にとって、ペットは大切な家族ですが、法律上はモノと同じです。
被相続人のものは、原則として、相続財産です。
被相続人が飼っていたペットも相続財産のひとつです。
①餌やりなどの世話をしても問題ない
ペットは命のある生き物ですから、餌やりなどの世話が欠かせません。
ペットに餌やりなどの世話をすることは、相続財産を維持する行為と言えます。
相続財産を維持するだけであって、処分したとは言えません。
ペットに餌やりなどの世話をすることで相続放棄が無効になることはありません。
②経済的価値のないペットを引き取っても問題ない
ペットを引き取ったことが単純承認であると判断されてしまうことで、相続放棄が無効にならないか心配になるかもしれません。
被相続人のものだからと言って、何ひとつ処分できないというわけではありません。
あきらかにゴミであるものを処分した場合にまで、相続放棄が無効になることは不当です。
経済的価値のないものと形見として持ち帰った場合、相続放棄が無効になることはありません。
通常、一般的に飼われているペットに金銭的価値があることは少ないでしょう。
お金を払ってペットを買い取る人は考えられません。
経済的価値は無いと言えるでしょう。
よほど希少種であるとか珍しい種類のペットであるなどの事情があって、売却すれば高値で取引される場合、ペットを引き取ると単純承認とみなされる可能性があります。
4飼主がペットの行き先を決めてあげるべき
自分の死亡した後、大切な家族であるペットをどうするかが問題になります。
飼い主にとって大切な家族であるペットは、飼主を失うと人間以上に困ります。
ペットは自分では何もできないからです。
ペットの飼育が心配で、ペットを残して逝けないと言う方もいます。
①負担付遺贈
遺贈とは、被相続人が遺言によって、法定相続人や法定相続人以外の人に、財産を譲ってあげることです。
相続では、法定相続人だけに譲ってあげることができます。
遺贈では、法定相続人に譲ってあげることもできるし、相続人以外の人に譲ってあげることができます。
譲ってあげる相手は、相続人以外の人でも構いませんから、ペットの飼育を引き受けてくれる人にも譲ってあげることができます。
ペットを飼育してもらうことを条件にして、遺言によって、財産を譲ってあげることができます。
遺贈は、遺言によって行います。
遺言書は相続人などの関与なしで作ることができます。
遺言で遺贈や相続のことを定める場合、遺言者が受け取る人の意見を聞かずに、一方的に決めることができます。
遺言に書いてあるからとは言っても、受け取る人が困ることがあります。
受け取る人がペットにアレルギーがあるかもしれません。
ペット飼育禁止のマンションに住んでいるかもしれません。
遺贈は、放棄することができます。
飼主にとって大切な家族だから、飼育をお願いしたいのに放棄されてしまうのは困るでしょう。
財産を受け取る人が遺贈を放棄しない場合でも、適切に飼育しないかもしれません。
財産を受け取った人が適切に飼育をしていない場合、相続人や遺言執行者は家庭裁判所に負担付遺贈に関する遺言の取消を求めることができます。
家庭裁判所に対して遺言の取消を求めるのは、手続が煩雑です。
②負担付死因贈与
死因贈与とは、財産を譲ってあげる人が死亡したら、財産を譲る契約です。
契約なので、財産を譲ってあげる人と譲ってもらう人が合意する必要があります。
遺贈のように、受け取る人の意見を聞かずに、一方的に決めることができません。
財産を譲ってあげる人と譲ってもらう人が合意して決めたことだから、後になって、お断りをすることはできません。
飼主にとって大切な家族を、お断りされることなく飼育してもらえることは、安心できるでしょう。
負担付遺贈も、負担付死因贈与も、財産を受け取った後、受け取った財産は受け取った人のものです。
ペットを適切に飼育しているか、第三者がチェックする仕組みがありません。
受け取った財産で、ペットの飼育以外に浪費をすることもできます。
ペットの飼育が終了した後も、譲ってあげた財産は、受け取った人のものです。
③ペット信託
信託とは、信頼できる人に財産を預かってもらって、自分の決めた人のために利用管理してもらう契約のことです。
信託の仕組みをペットに応用したのが、ペット信託です。
信託財産を管理するための、管理会社を設立しなければならないと称して、高額な報酬を要求する自称専門家がいます。
ペット信託であれば、ほとんどの場合そのようなことは不要でしょう。
あらかじめ、ペット信託をしておくことで、飼主がペットの世話をすることができなくなっても、ペットの飼育をしてもらうことができます。
飼主が死亡したときだけでなく、飼主が入院したり、施設に入所したりして飼育できなくなるときから、飼育をしてもらうことができます。
信託契約をしておくと、信頼できる人に財産を預かってもらうことになります。
相続が発生した場合、相続財産とは別の財産として分離して管理することになります。
相続争いに巻き込まれて、ペットの飼育費が出せなくなるといったトラブルを防ぐことができます。
信託契約では、信託管理人を置くことができます。
信託財産が契約どおりに適切に管理されているか監視や監督をしてもらうことができます。
預けた財産はペットの飼育のためだけに使うと決めておけば、他の用途に浪費することはできません。
信託管理人は、他の用途に浪費されていることを見つけたら、契約に合うように適切に管理するように改善させることができます。
ペット信託が終了したときに、残った財産は誰が受け継ぐか、飼主が決めておくことができます。
ペット信託に限らず、信託契約は信頼できる人と契約することが重要です。
5ペットの生前対策を司法書士に依頼するメリット
ペットは「家族」として一緒に暮らすパートナーになりました。
自分が大切にしている家族の将来が気にならない人はいないでしょう。
自分が死亡した後も、幸せを願うのは当たり前のことです。
残念ながら、飼主がペットはいかに大切にしていようとも、法律上はモノでしかありません。
ペットは自分では何もできないから買主が何もしないと人間以上に困ります。
自分の死後を考えて、大切なペットを飼育してくださいとお願いしていない場合、ペットには厳しい現実が待っています。
ペットを飼っている人は愛情を持って飼育しています。
だから、何も言わなくてもだれかがペットの面倒を見てくれる、新しい飼い主を探してくれると楽観的な希望を持っていることが多いです。
現実には、容赦なく保健所へ連絡する人もいるでしょう。
自分と同じように愛情を持って飼育してくれることは稀です。
制度を知って、上手に生かすことは飼い主だけができることです。
大切な「家族」の幸せのために、司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。
相続放棄と連帯保証人
1相続財産とは
相続が発生すると、原則として、被相続人の財産は相続人が相続します。
相続人が相続する財産が、相続財産です。
相続財産はプラスの遺産とマイナスの遺産があります。どちらも、相続財産です。
①プラスの遺産
一般的に不動産、預金、株式や投資信託などの有価証券、現金などです。
さらに、宝飾品や美術品など価値があるものはプラスの遺産といえるでしょう。
多くの方が財産と言われてたときにイメージしやすいものです。
これ以外にも、賃借権などの権利もプラスの財産になります。
②マイナスの遺産
一般的に借金やローンなどです。
未払の税金や未払の入院費用などもマイナスの遺産になります。
イメージしにくいですが、被相続人が連帯保証人であった場合は、相続人が引き継ぎます。
この連帯保証人の地位もマイナスの遺産と言えます。
2相続放棄とは
相続が発生したら、原則として、被相続人のプラスの遺産もマイナスの遺産も相続人が受け継ぎます。
被相続人のプラスの遺産もマイナスの遺産も受け継がないことを相続の放棄といいます。
相続放棄をすると、プラスの遺産を引き継がなくなりますが、マイナスの遺産も引き継ぐことがなくなります。
連帯保証人の地位もマイナスの遺産の一部ですから、相続放棄をしたら、引き継ぐことがなくなります。
連帯保証人の地位というのは、被相続人が第三者の借金について、連帯保証人になっていた場合という意味です。
3連帯保証契約は別物の契約
お金の貸し借りをする場合、貸主と借主の間で、お金の貸し借りの約束をします。
お金の貸し借りの約束を、金銭消費貸借契約と言います。
お金をきちんと返してもらえるか心配なので、返せないとき肩代わりする連帯保証人を立ててもらうでしょう。
貸主と連帯保証人との間で、お金の貸し借りの肩代わりをする約束をします。
お金の貸し借りの肩代わりをする約束を、連帯保証契約と言います。
金銭消費貸借契約は、貸主と借主の間の契約です。
連帯保証契約は、貸主と連帯保証人との間の契約です。
金銭消費貸借契約と連帯保証契約は、当事者が異なるまったく別の契約です。
4連帯保証人が死亡した場合
被相続人が第三者の連帯保証人になっていた場合、相続人に引き継がれるのは、連帯保証人としての義務です。
相続が発生したときに、すでに発生していた連帯保証債務だけでなく、これから発生するかもしれない連帯保証債務も、相続人に引き継がれます。
相続人が相続放棄をした場合、被相続人の義務を引き継ぐことがなくなります。
相続人は、連帯保証人として被相続人が負っていた義務を引き継ぐことがありません。
被相続人が第三者の連帯保証人になっていても、家族に知らせていないことがあります。
貸主としては、借主から順調に返済されている間は連帯保証人に何も言うことがありません。
返済が滞ってから、連帯保証人に連絡してきます。
ときには相続が発生してから長い間経過してから、連絡してくることがあります。
何も知らなかった相続人は貸主に文句を言いたくなりますが、被相続人と相続人の連絡不足です。
貸主を責めることはできません。
相続放棄の申立ができるのは、3か月以内です。
3か月の起点は、被相続人が死亡してからではなく、相続があったことを知ってからです。
「相続があったことを知ってから」とは、被相続人が死亡して相続が発生し、その人が相続人であることを知って、かつ、相続財産を相続することを知ってから、と考えられています。
保証債務の存在を知ってから3か月以内であれば、相続放棄が認められることも多いでしょう。
相続が発生してから長い間経過している場合、相続財産を処分していることもあるでしょう。
相続財産を処分したり、利用した場合、単純承認をしたとみなされます。
相続財産を処分したり、利用した場合は相続放棄ができなくなります。
5相続人が連帯保証人の場合
①連帯保証人の地位に影響はない
相続が発生したら、原則として、被相続人のプラスの遺産もマイナスの遺産も相続人が受け継ぎます。
被相続人が多額の借金を負っていた場合、相続人は相続放棄をすれば、被相続人の借金を受け継ぐことはありません。
被相続人が借金をする場合、家族が連帯保証人になっているケースがあります。
連帯保証人の義務は、連帯保証契約に基づく相続人の固有の義務です。
金銭消費貸借契約に基づく、借金を返す義務とは別の義務です。
相続放棄をしても、連帯保証人の義務には影響がありません。
被相続人の借金を受け継ぐことがなくなっても、連帯保証人の義務は消えません。
相続人がもともと負担していた義務なので、相続があってもなくても、相続放棄をしてもしなくても、変わりはないのです。
②借金は消えない
相続人が相続放棄をしても、借金自体はなくなりません。
相続人全員が相続放棄をした場合でも、借金は存続します。
相続人が不存在の場合、相続財産は相続財産法人になります。
相続財産には、プラスの遺産もマイナスの遺産も含まれます。
相続財産法人は、プラスの遺産だけでなく、マイナスの遺産も含まれます。
③貸主は連帯保証人に請求できる
もともと、お金をきちんと返してもらえるか心配なので、肩代わりをする人を立ててもらっています。
お金を返してもらえなかったら、肩代わりをしてもらうのは当然です。
連帯保証人も、借主がお金を返済できなかったら肩代わりをすると納得しているはずです。
だから、貸主はお金を返してもらえない以上、連帯保証人に請求します。
連帯保証人が保証義務を履行できない場合、相続人自身が自己破産をするなどの債務整理手続をすることになります。
後から自己破産をするのであれば、相続放棄の申立は不要にも見えます。
相続放棄の申立をすることをおすすめします。
相続放棄をしておかないと、連帯保証人になっているもの以外についても対応する必要があるからです。
相続放棄をしておけば、連帯保証人になっている貸主だけ対応すればよくなり、債務整理がラクになるからです。
④求償権
連帯保証人が借主に代わってお金を支払ったら、借主に払ったお金を請求することができます。
借主に払ったお金を請求する権利が、求償権です。
例えば、住宅ローンの連帯保証人になっていた場合、借主に代わって連帯保証人がお金を払うケースもあるでしょう。
連帯保証人が借主に代わってお金を払ったら、連帯保証人は求償権を取得します。
住宅ローンのお金を払っても、住宅は借主の財産です。
住宅が連帯保証人のものになるのではありません。
連帯保証人は借主に払ったお金を請求することができるだけです。
借主が死亡していたら、借主の相続人に請求できます。
借主の相続人全員が相続放棄をしていたら、相続財産法人に請求することになります。
6身元保証人の地位は相続されない
被相続人が就職などの身元保証人になっていることがあります。
身元保証人の地位は、被相続人の一身に専属した義務と考えられています。
身元保証人の地位は、相続されません。
被相続人の死亡によって、義務は消滅します。
相続が発生する前に損害賠償債務が発生している場合、損害賠償債務は相続の対象になります。
すでに発生した債務は、通常の金銭債務だからです。
7上限額のない根保証債務は相続発生後のものは相続されない
根保証とは、一定の範囲内の債務を保証する契約です。
今の民法では、個人が保証人になる場合、保証の限度額を決めていないと無効になります。
古い契約では、保証の上限額を決めていないものもあります。
古い契約であれば、保証の上限を決めていなくても有効です。
だからといって、無制限に肩代わりをするのは、あまりに酷です。
上限額の定めがない根保証人の地位は相続されません。
相続発生の時点ですでに発生している債務は、相続の対象になります。
8相続放棄を司法書士に依頼するメリット
実は、相続放棄はその相続でチャンスは1回限りです。
家庭裁判所に認められない場合、即時抗告という手続きを取ることはできますが、高等裁判所の手続きで、2週間以内に申立てが必要になります。
家庭裁判所で認めてもらえなかった場合、即時抗告で相続放棄を認めてもらえるのは、ごく例外的な場合に限られます。
一挙にハードルが上がると言ってよいでしょう。
被相続人が連帯保証人になっている場合、家族に知らせていないことは珍しいことではありません。
近くに暮らしていない場合など、被相続人の財産状況すらあまり知らないこともよくあります。
借主の経済状況が悪化して、保証債務の履行を求められてはじめて、相続人は連帯保証債務の存在を知ることになります。
ほとんどの場合、相続発生から3か月以上経過しています。
相続発生から3か月以上経っている場合、相続放棄の申立は、原則として認められません。
相続が発生してから3か月以内に届出ができなかったのは止むを得なかったと家庭裁判所に納得してもらって、はじめて、家庭裁判所は相続放棄を認めてくれます。
通常は家庭裁判所に対して、上申書や事情説明書という書類を添えて、説得することになります。
司法書士であれば、家庭裁判所に認めてもらえるポイントを承知していますから、認めてもらいやすい書類を作成することができます。
3か月の期限が差し迫っている方や期限が過ぎてしまっている方は、すみやかに司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。
遺贈の放棄
1遺贈には特定遺贈と包括遺贈がの2種類がある
①特定遺贈は財産を具体的に指定
特定遺贈とは、遺言書に、「財産〇〇〇〇を遺贈する」と財産を具体的に書いてある場合です。
②包括遺贈は割合だけ指定
包括遺贈とは、遺言書に、「財産すべてを遺贈する」「財産の2分の1を遺贈する」と割合だけ書いて財産を具体的に書いてない場合です。
相続財産の内容は、不動産、預貯金、株式、借金などいろいろな種類があるのが通常です。
財産の2分の1とは、どの財産か分かりません。
包括遺贈を受けた場合、財産の分け方について、相続人全員と合意する必要があります。
2特定遺贈と包括遺贈はどちらでも放棄ができる
遺贈とは、被相続人が遺言によって、法定相続人や法定相続人以外の人に、財産を譲ってあげることです。
遺言書は、相続人などの関与なしで作ることができます。
遺言で遺贈や相続のことを定める場合、遺言者が受け取る人の意見を聞かずに、一方的に決めることができます。
遺言に書いてあるからとは言っても、受け取ると相続人に気兼ねすることがあります。
相続人とトラブルになりたくないから、ご辞退したい場合もあるでしょう。
遺贈は、放棄することができます。
特定遺贈と包括遺贈のどちらでも、放棄することができます。
死因贈与は、契約なので財産を譲ってあげる人と譲ってもらう人が合意しています。
死因贈与はお断りはできません。
3特定遺贈は一部だけ放棄ができる
①一部の財産だけ放棄ができる
特定遺贈は、特定遺贈全部を放棄することもできるし、一部だけ放棄することもできます。
具体的に分けることができるのであれば、一部だけ受け取ることができます。
相続放棄や包括遺贈では、一部だけ放棄することはできません。
例えば「株式と金100万円を遺贈する」と遺言にあった場合
株式は受け取るが、金100万円は放棄することができます。
②財産の一部だけ放棄ができる
例えば「株式と金100万円を遺贈する」と遺言にあった場合
金50万円は受け取るが、その他は放棄することができます。
4遺贈の放棄の方法は特定遺贈と包括遺贈で違う
①特定遺贈の放棄は遺贈義務者に通知
特定遺贈の放棄の方法に決まりはありません。
遺贈義務者に対して、特定遺贈を放棄することを通知します。
通知の名宛人になるのは、遺贈義務者です。
遺贈義務者は、次のとおりです。
(1)遺言執行者がいる場合、遺言執行者です。
(2)遺言執行者がいない場合、相続人です。
(3)遺言執行者も相続人もいない場合、相続財産清算人です。
トラブルにならないように、配達証明付内容証明郵便で通知するといいでしょう。
②包括遺贈の放棄は相続放棄と同じ手続
包括遺贈を受ける人は、相続人と同一の権利義務があります。
相続財産にマイナスの財産がある場合は、マイナスの財産も受け継ぎます。
包括遺贈を放棄する場合、相続を放棄する場合と同じ手続をします。
家庭裁判所に対して、包括遺贈放棄の申立てをします。
5遺贈の放棄の期限は特定遺贈と包括遺贈で違う
①特定遺贈の放棄に期限はない
特定遺贈を放棄することの通知は、相続発生後であればいつでも構いません。
相続が発生してから何年も経過した後、特定遺贈を放棄することもできます。
遺贈義務者や利害関係人は、相当の期間を決めて、特定遺贈を承認するのか特定遺贈を放棄するのか、質問することができます。
遺贈義務者や利害関係人からの質問に、返事をしないと特定遺贈を承認したものとみなされます。
特定遺贈を放棄したい場合は、期間内に放棄することを通知しましょう。
②包括遺贈の放棄の期限は知ってから3か月以内
自己のために包括遺贈があることを知ってから、3か月以内に手続しなければなりません。
包括遺贈放棄の申立先は被相続人の最後の住所地の家庭裁判所です。
家庭裁判所の管轄は、裁判所のホームページで調べることができます。
6遺贈を放棄された財産は遺産分割協議
遺言書と遺産分割協議は、原則として、遺言書が優先します。
遺言書の内容が優先するから、相続人全員の話し合いによる合意は必要ありません。
遺言書に特定遺贈をすると記載してあっても、受け取る人はご辞退することができます。
特定遺贈が放棄された場合、放棄された財産は相続人全員の共有財産になります。
相続人全員の共有財産になるから、相続人全員で分け方の合意をしなければなりません。
特定遺贈を放棄した人が相続人である場合があります。
特定遺贈を放棄した人が相続人である場合、相続人として相続財産の分け方の合意をします。
特定遺贈を放棄した場合でも相続人だからです。
相続財産の分け方の合意の結果、特定遺贈を放棄した人が相続することができます。
特定遺贈を放棄した場合でも、相続人として相続することができます。
7相続放棄した人でも遺贈を受けることができる
遺贈とは、被相続人が遺言によって、法定相続人や法定相続人以外の人に、財産を譲ってあげることです。
遺贈では、法定相続人にも財産を譲ってあげることができます。
法定相続人なので、相続することもできます。
法律上、遺贈と相続は別々に考えます。
受遺者という立場と相続人という立場も別物です。
両方を放棄する場合、相続放棄と遺贈の放棄とそれぞれに手続が必要です。
原則として、相続は放棄するけど、遺贈は承認することもできます。
遺贈で譲ってもらった財産が不動産の場合、名義変更が必要になります。
法務局に相続登記を申請する場合、登録免許税は不動産の評価額の1000分の4です。
遺贈による所有権移転登記の登録免許税は、遺贈を受け取る人によって異なります。
相続人に対する遺贈であれば、不動産の評価額の1000分の4です。
相続人以外の人に対する遺贈は、不動産の評価額の1000分の20です。
相続放棄をした人は、相続人でなくなります。
相続放棄をした人は、相続人以外の人に対する遺贈になります。
登録免許税は、不動産の評価額の1000分の20です。
さらに、相続人でないので不動産取得税もかかります。
だから、税金の専門家から相続放棄をするとソンをするとアドバイスされるかもしれません。
税金について検討するのは大切ですが、税金だけ注目すると失敗します。
税金以外についても充分に確認して判断しましょう。
8相続放棄した人が遺贈を受けることができない例外
①詐害行為になる場合、遺贈が取り消される
原則として、相続放棄をしても遺贈は受け取れます。
被相続人にわずかなプラスの財産と莫大なマイナスの財産があることがあります。
この状況で、わずかなプラスの財産を相続人に遺贈するという遺言書が見つかることがあります。
おそらく、被相続人に頼んで、このような遺言書を書いてもらった場合でしょう。
原則どおりでは、相続放棄をしているから、相続人は莫大なマイナスの財産を受け継ぐことはありません。
原則どおりでは、遺贈は相続放棄と別物だから、わずかなプラスの財産を受け取ることができるとなってしまいます。
このようなことが許されると、債権者にとってあまりに理不尽です。
債権者は、裁判所に訴えて、理不尽な遺贈を取り消すことができます。
借りたお金を返さなければならないのに、自分の財産を不当に減少させて、結果、お金を返せなくしているからです。
自分の財産を不当に減少させたら、お金を貸した人はお金を返してもらえなくなる結果になります。
お金を貸した人が困ることを知っているのに、自分の財産を不当に減少させることを詐害行為と言います。
理不尽な遺贈として裁判所に認められれば、詐害行為は取り消すことができます。
適切な遺言書によってされた遺贈であっても、理不尽な遺贈は詐害行為にあたります。
②相続財産管理人が選任されたら債権者が優先
例えば、相続財産の内容が、少しのプラスの財産と莫大なマイナスの財産の場合があります。
被相続人に「プラスの財産を遺贈する」遺言を書いもらって相続が発生した場合、「相続は放棄するけど遺贈は承認する」が問題になります。
被相続人の債権者はまったくお金を払ってもらえないのに、相続人はプラスの財産を受け取れることになるのは、不公平だからです。
少しのプラスの財産と莫大なマイナスの財産の場合、相続人はいても相続放棄するでしょう。
相続人全員が相続放棄したら、相続人不存在になります。
相続人不存在になったら、利害関係人は家庭裁判所に相続財産清算人を選んでもらうことができます。
相続財産清算人が選任されている場合で、かつ、受遺者と被相続人の債権者両方がいる場合、債権者への弁済が優先されます。
債権者に弁済が済んだ後でないと、遺贈を執行できません。
事実上、遺贈は執行できなくなります。
9相続放棄と遺贈の放棄を司法書士に依頼するメリット
相続放棄も包括遺贈の放棄もプラスの財産もマイナスの財産も引き継ぎませんという裁判所に対する申立てです。
相続人らとのお話合いで、プラスの財産を相続しませんと申し入れをすることではありません。
つまり、家庭裁判所で認められないとマイナスの財産を引き継がなくて済むというメリットは受けられないのです。
実は、放棄ができるのはその相続でチャンスは実質的には1回限りです。
家庭裁判所に認められない場合、即時抗告という手続を取ることはできますが、高等裁判所の手続で、2週間以内に申立てが必要になります。
家庭裁判所で認めてもらえなかった場合、即時抗告で相続放棄を認めてもらえるのは、ごく例外的な場合に限られます。
一挙にハードルが上がると言ってよいでしょう。
司法書士であれば、家庭裁判所に認めてもらえるポイントを承知しています。
認めてもらえやすい書類を作成することができます。
しかも相続放棄も遺贈の放棄も、原則として、撤回ができません。
3か月の期間内に手続するのは思ったよりハードルが高いものです。
特定遺贈は、承認する場合も放棄する場合も、法律の知識が欠かせません。
相続放棄を考えている方は、すみやかに司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。
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