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相続放棄申述受理通知書
1相続放棄申述受理通知書とは
①相続放棄申述受理通知書は相続放棄を認めた通知
相続放棄は、プラスの財産もマイナスの財産も引き継ぎませんという家庭裁判所に対する申立てです。
家庭裁判所は、提出された書類を審査して相続放棄を認めるか認めないか判断します。
相続放棄を認める場合、本人に対して、相続放棄申述受理通知書を送ります。
相続放棄申述受理通知書は、相続放棄を認めましたよという本人あてのお知らせです。
家庭裁判所は、相続放棄を認めた場合、本人にだけ通知をします。
家庭裁判所から、他の相続人や債権者などに自主的に相続放棄を認めましたと通知することはありません。
②相続放棄申述受理通知書は再発行はされない
相続放棄申述受理通知書は、相続放棄を認めましたよという本人あてのお知らせです。
いったんお知らせをしたらお知らせは完了するので、再発行はされません。
たとえ相続放棄をした本人から依頼があっても、再発行はされません。
相続放棄申述受理通知書を紛失してしまっても、相続放棄は無効になりません。
相続放棄申述受理通知書は、家庭裁判所から相続放棄の申立てをした人に対するお知らせに過ぎないからです。
③相続放棄申述受理通知書はA4の紙1枚
相続放棄申述受理通知書は、家庭裁判所から相続放棄の申立てをした人に対するお知らせです。
裁判所が身近でないことから、何か大げさな仕様があると予想しているかもしれません。
戸籍謄本や住民票のような地模様の入った紙ではなく、見慣れたコピー紙に印刷されています。
家庭裁判所にとっては、単なるお知らせに過ぎません。
簡素な通知書であるから、拍子抜けするかもしれません。
相続放棄が認められたことをお知らせする重要な書類です。
④相続放棄申述受理通知書は普通郵便で届く
相続放棄申述受理通知書は、相続放棄が認められたことをお知らせする重要な書類です。
家庭裁判所にとっては、単なるお知らせに過ぎません。
相続放棄申述受理通知書は、書留や本人限定郵便などではなく普通郵便で届きます。
気を付けていないとDMなどに紛れてしまうかもしれません。
相続放棄申述受理通知書は、相続放棄の申立ての書類を作成した司法書士などの専門家に代わりに受け取ってもらうことができます。
⑤相続放棄照会書に回答してから1~2週間で届く
家庭裁判所に相続放棄をする申立てをした場合、申立てをした人に対して相続放棄照会書が届きます。
相続放棄照会書は、相続放棄の意思確認のための裁判所からのお尋ねです。
相続放棄をした場合、相続ができなくなるから慎重に判断します。
相続放棄の申立てと照会書に対する回答を見て、相続放棄を認めるか判断します。
相続放棄照会書に対する回答書を提出してから、1~2週間ほどで相続放棄申述受理通知書が届きます。
家庭裁判所によっては、相続放棄照会書を送らずに判断している場合があります。
相続放棄をする申立てをした後1~2週間経過しても相続放棄照会書が届かない場合、家庭裁判所に問い合わせをするといいでしょう。
2相続放棄申述受理通知書と相続放棄申述受理証明書のちがい
相続放棄申述受理通知書は、相続放棄を認めましたよという本人あてのお知らせです。
家庭裁判所は、相続放棄を認めた場合、本人にだけ通知をします。
債権者や他の相続人などに、自発的に連絡することはありません。
債権者などから見るとは、通常、知らないうちに相続放棄の手続がされていて、知らないうちに相続放棄が認められていることになります。
相続放棄をしたことを知らないから、被相続人にお金を貸していた人は相続人に返してもらおうと考えます。
被相続人にお金を貸していた人から返済を請求されたとしても、相続放棄をしたのだから通常支払う必要はないはずです。
債権者などに見せるため、家庭裁判所で相続放棄を認めてもらったことを証明してもらうことができます。
相続放棄申述受理証明書は、家庭裁判所で相続放棄を認めてもらったことの証明書です。
相続人でないことを証明するために使います。
多くの場合、相続放棄申述受理通知書を渡せば足りるでしょう。
銀行などの金融機関は、相続放棄申述受理通知書では足りず、相続放棄申述受理証明書の提出を求めてきます。
請求があってから、取り寄せることで差し支えないでしょう。
金融機関などの利害関係人は、自分で相続放棄申述受理証明書を取り寄せることができます。
3相続放棄申述受理通知書が必要になる場合
①相続放棄をしたことを証明する
相続放棄が認められても、家庭裁判所から債権者に連絡されません。
被相続人の債権者は何も知らないから、相続人に借金を払ってもらおうとします。
相続放棄をした人は相続人ではないから、被相続人の借金を返済する必要はありません。
債権者に相続放棄申述受理通知書を提示することで、相続放棄をしたことを分かってもらうことができます。
②相続登記など相続手続で使用する
相続放棄が認められても、家庭裁判所から他の相続人や相続手続先に連絡されません。
他の相続人が相続手続をする場合、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本や相続人の現在戸籍を提出します。
相続放棄が認められても、戸籍には記載されません。
相続手続先は、相続放棄をしたことは連絡されません。
相続手続先に相続放棄申述受理通知書を提示することで、相続放棄をしたことを分かってもらうことができます。
他の相続人が相続登記をする場合、戸籍謄本から相続放棄をしたことが分かりません。
法務局に対して相続放棄申述受理通知書を提示することで、相続放棄をしたことを分かってもらうことができます。
相続放棄申述受理通知書は、家庭裁判所によって書いてある内容が違います。
法務局から見て相続登記を認めることができるだけの情報が記載されている場合も不足している場合もあります。
相続放棄申述受理通知書は、相続放棄を認めましたよという本人あてのお知らせだからです。
相続登記を提出する場合、法務局から見て相続登記を認めることができるだけの情報が記載されているのであれば相続放棄申述受理通知書を提出することができます。
内容に不足がある場合、相続放棄申述受理通知書では足りず相続放棄申述受理証明書を取り寄せる必要があります。
③事件番号を確認する
相続放棄の申立てを受け付けしたら、家庭裁判所は事件番号を付けます。
家庭裁判所は、事件番号で事件を管理しています。
債権者や他の相続人が相続放棄申述受理証明書の発行を申請する場合、申請書に事件番号を記載する必要があります。
相続放棄申述受理通知書には、必ず事件番号が記載されています。
債権者や他の相続人が相続放棄申述受理証明書を取り寄せる場合、事件番号を知らせてあげると親切でしょう。
事件番号を知らせてあげなかった場合でも、相続放棄申述受理証明書の発行を申請することができなくなるわけではありません。
事件番号が分からない場合、債権者や他の相続人は相続放棄の有無の照会をすることができます。
相続放棄の有無の照会とは、相続放棄をしたか調べてもらう手続のことです。
相続放棄の有無の照会で、事件番号を知ることができます。
債権者や他の相続人は、事件番号を調べてもらってから相続放棄申述受理証明書の発行を申請することができます。
4相続放棄申述受理通知書を受け取っても相続放棄が無効になる場合がある
法律で定められた一定の条件にあてはまるときは、単純承認したとみなされます。
単純承認とは、被相続人のプラスの財産もマイナスの財産も受け継ぐものです。
単純承認とみなされたら、相続放棄はできません。
相続放棄はできないのに、家庭裁判所に相続放棄の手続をして、相続放棄が認められても無効です。
家庭裁判所が事情を分からずに相続放棄を認めてしまっても、後から無効になります。
単純承認したとみなされる行為は、法律で定められています。
相続財産を処分した場合、単純承認したとみなされます。
相続財産の名義変更をした、相続財産である銀行の預貯金を引き出して使ってしまった場合が典型的です。
単に、引き出しただけであれば、処分とは言えないことが多いでしょう。
引き出したうえ、自分の口座に送金して保管すると、「処分した」と評価される可能性が高くなります。
相続財産の分け方について、相続人全員で合意をした場合も、相続財産を「処分した」場合に当たります。
5相続放棄を司法書士に依頼するメリット
実は、相続放棄はその相続でチャンスは1回限りです。
家庭裁判所に認められない場合、即時抗告という手続を取ることはできますが、高等裁判所の手続で、2週間以内に申立てが必要になります。
家庭裁判所で認めてもらえなかった場合、即時抗告で相続放棄を認めてもらえるのは、ごく例外的な場合に限られます。
一挙にハードルが上がると言ってよいでしょう。
相続放棄は撤回ができないので、慎重に判断する必要があります。
せっかく、相続放棄が認められても、相続財産を処分した判断されたら無効になりかねません。
このような行為をしてしまわないように、予め知識を付けておく必要があります。
相続放棄を自分で手続きしたい人の中には、相続放棄が無効になることまで考えていない場合が多いです。
司法書士は、相続放棄が無効にならないようにサポートしています。
せっかく手続しても、相続放棄が無効になったら意味がありません。
相続放棄を考えている方は、司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。
相続放棄申述書の書き方
1相続放棄は家庭裁判所への申立て
①相続放棄と遺産分割は別のもの
相続が発生したら、原則として、被相続人のプラスの財産もマイナスの財産も相続人が受け継ぎます。
被相続人のプラスの財産もマイナスの財産も受け継がないことを相続の放棄といいます。
相続放棄をすると、プラスの財産を引き継がなくなりますが、マイナスの財産も引き継ぐことがなくなります。
相続放棄は、本来、家庭裁判所に対する手続です。
家庭裁判所に対する申立書に、必要書類を添えて提出します。
家庭裁判所に対する申立書のことを相続放棄申述書と言います。
プラスの財産を受け取らないことを相続放棄の手続と、表現しているケースがあります。
他の相続人に対してプラスの財産を相続しないと宣言することを相続放棄と誤解しているからです。
自称専門家の場合、遺産分割協議と相続放棄を混同しているケースは度々あります。
他の相続人に対してプラスの財産を相続しないと約束しても、相続放棄はできません。
相続放棄は、家庭裁判所に対する手続だからです。
②相続放棄申述書はダウンロードできる
相続放棄は、家庭裁判所に対する手続です。
相続放棄申述書の様式は、家庭裁判所でもらうことができます。
インターネットを使う環境があれば、裁判所のホームページからダウンロードすることができます。
裁判所のホームページには、成年者用と未成年者用が掲載されています。
あてはまる方をダウンロードして使いましょう。
印刷する場合、両面印刷せずに片面印刷にします。
2相続放棄申述書1枚目の書き方と注意点
①相続放棄申述書の書き方は難しくない
裁判所のホームページには、相続放棄申述書の様式と一緒に記載例が掲載されています。
相続放棄申述書の書き方は、それほど難しいものではありません。
②相続放棄の申述先の家庭裁判所欄
相続放棄申述書の提出先になる家庭裁判所の名称を記入します。
相続放棄申述書の提出先は、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です。
相続放棄をしたい人の住所地を管轄する家庭裁判所ではありません。
家庭裁判所の管轄は、裁判所のホームページで調べることができます。
③申述人の氏名押印欄
(1)申述人が成年の場合は自分の氏名を記載
成年者は、自分の氏名を記載します。
押印は、認印で構いません。
朱肉を使う印章で押印します。
押印は実印でなくても差し支えありませんから、印鑑証明書は不要です。
相続放棄申述書の押印で使った印章は目印を付けておきましょう。
家庭裁判所は相続放棄申述書を受け付けた後、相続放棄照会書を送ってきます。
相続放棄照会書に対する回答書に同一印で押印する必要があるからです。
(2)申述人が未成年の場合は法定代理人の氏名を記載
未成年者は、物事のメリットデメリットを充分に判断することができません。
未成年者が契約などの法律行為をする場合、親などの親権者が代わりに手続をします。
親などの親権者が未成年者を代理できる場合、申述人の氏名押印欄は親権者の氏名を記載して親権者の認印を押印します。
親などの親権者と未成年者が利益相反になる場合、親権者は未成年者を代理することができません。
未成年者の代わりに法律行為をする人を家庭裁判所に選んでもらいます。
未成年者の代わりに法律行為をする人を特別代理人と言います。
特別代理人が未成年者の代わりに相続放棄の手続をする場合、申述人の氏名押印欄は特別代理人の氏名を記載して特別代理人の認印を押印します。
④申述人欄
実際に相続放棄をする人について記載します。
未成年者であれば、未成年者本人の実際に住んでいる住所や氏名を記載します。
家庭裁判所は相続放棄申述書を受け付けた後、相続放棄照会書を送ってきます。
相続放棄照会書が届く住所を記載します。
住民票の住所と異なっていても差し支えありません。
⑤法定代理人欄
(1)申述人が成年者の場合は原則として記載不要
相続放棄をする人が成年者である場合、通常は記載不要です。
相続放棄をする人が認知症などで成年後見制度を利用している場合、成年後見人が法定代理人になります。
成年後見制度を利用している場合、法定代理人欄は成年後見人について記載します。
(2)申述人が未成年の場合は申述人を代理できる人について記載
親などの親権者が未成年者を代理できる場合、法定代理人欄は親権者について記載します。
親などの親権者と未成年者が利益相反になる場合、親権者は未成年者を代理することができません。
未成年者の代わりに法律行為をする人を家庭裁判所に選んでもらいます。
未成年者の代わりに法律行為をする人を特別代理人と言います。
特別代理人が未成年者の代わりに相続放棄の手続をする場合、法定代理人欄は特別代理人について記載します。
⑥被相続人欄
被相続人の本籍、最後の住所、氏名を記載します。
相続放棄申述書は、被相続人の戸籍謄本や住民票の除票などと一緒に提出します。
提出する戸籍謄本や住民票の除票の記載を間違いなく書き写しましょう。
3相続放棄申述書2枚目の書き方と注意点
①申述の理由欄
相続放棄をしたい理由を書く欄ではありません。
相続人になったことを知った日を書きます。
多くの場合、死亡の当日でしょう。
1被相続人死亡の当日に○を付けます。
被相続人や被相続人の家族と疎遠になっている場合、相続が発生してから長期間経過してから死亡の事実を知ったかもしれません。
2死亡の通知をうけた日に○を付けます。
先順位の相続人が相続放棄をしたために相続人になることがあります。
3先順位者の相続放棄を知った日に○を付けます。
被相続人が死亡したことは知っていたが、長期間経過した後に債権者から返済を迫られて莫大な借金の存在を知った場合があります。
4その他に○を付けます。
相続があったことを知ってから3か月以内であれば、相続放棄をすることができます。
「相続があったことを知ってから」とは、被相続人が死亡して相続が発生し、その人が相続人であることを知って、かつ、相続財産を相続することを知ってから、と考えられています。
被相続人が死亡してから長期間経過して莫大な借金の存在を知った場合、詳しい事情を説明して家庭裁判所を説得する必要があります。
相続放棄申述書の申述の理由欄には書き切れません。
別途、上申書を用意して詳しい事情を説明しましょう。
家庭裁判所が納得するような事情が説明できていない場合、相続放棄が認められないおそれがあります。
②放棄の理由欄
相続放棄を希望する理由で多いのは、5債務超過のためです。
放棄の理由は、あまり重要ではありません。
相続放棄をする人が本当に自分の意思で相続放棄をするのかが重要です。
被相続人や被相続人の家族と疎遠で関わりたくない場合、6その他に○を付けます。
カッコの中に相続手続に関わりたくないと書けばいいでしょう。
③相続財産の概略欄
相続財産について、分かる範囲で記載すれば問題になりません。
被相続人にめぼしいプラスの財産がなく、圧倒的にマイナスの財産が多いのであれば、財産調査をするまでもないでしょう。
資産欄にほとんどない、負債欄に莫大にあるなどの記載で充分です。
被相続人や被相続人の家族と疎遠で関わりたくない場合などで、財産状況がどのようであっても相続放棄を希望するなら財産調査に意味はありません。
余白に不明と記載するだけでいいでしょう。
4相続放棄申述書提出の注意点
①相続放棄の撤回はできない
相続放棄をすると、プラスの財産を引き継がなくなりますが、マイナスの財産も引き継ぐことがなくなります。
相続放棄をした後にプラスの財産が見つかっても相続することはできません。
相続放棄をすると、相続人でなくなります。
他の相続人に対して遺留分を請求することもできません。
②相続放棄申述書の提出先は被相続人の最後の住所地の家庭裁判所
相続放棄申述書の提出先は、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です。
相続放棄をしたい人の住所地を管轄する家庭裁判所ではありません。
③相続放棄申述書は郵送で提出することができる
相続放棄申述書の提出先は、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です。
相続放棄をしたい人の住所地を管轄する家庭裁判所ではないから、ときには遠方の家庭裁判所かもしれません。
相続放棄申述書は郵送で提出することができます。
近くの家庭裁判所であれば、出向いて受付で目を通してもらって提出すると安心でしょう。
郵送で提出した場合、何か不備があれば家庭裁判所から電話連絡があります。
連絡があったら、すぐに対応しましょう。
④相続放棄申述書に貼る収入印紙は消印をしない
相続放棄申述書1枚目に収入印紙を貼る必要があります。
収入印紙は家庭裁判所で消印がされます。
収入印紙を貼るだけで、消印をせず提出します。
⑤相続放棄申述書は割印や袋綴じは不要
相続放棄申述書は、両面印刷せずに片面印刷にします。
複数枚になりますが、袋綴じにする必要はありません。
相続放棄申述書に割印をする必要もありません。
5相続放棄を司法書士に依頼するメリット
実は、相続放棄はその相続でチャンスは1回限りです。
家庭裁判所に認められない場合、即時抗告という手続きを取ることはできますが、高等裁判所の手続で、2週間以内に申立てが必要になります。
家庭裁判所で認めてもらえなかった場合、即時抗告で相続放棄を認めてもらえるのは、ごく例外的な場合に限られます。
一挙にハードルが上がると言ってよいでしょう。
相続が発生してから3か月以内に届出ができなかったのは止むを得なかったと家庭裁判所に納得してもらって、はじめて、家庭裁判所は相続放棄を認めてくれます。
通常は家庭裁判所に対して、上申書や事情説明書という書類を添えて、説得することになります。家庭裁判所が知りたいことを無視した作文やダラダラとした作文では認めてもらうことは難しいでしょう。
司法書士であれば、家庭裁判所に認めてもらえるポイントを承知していますから、認めてもらえやすい書類を作成することができます。
さらに、通常の相続放棄と同様に戸籍や住民票が必要になります。
お仕事や家事、通院などでお忙しい人には平日の昼間に役所にお出かけになって準備するのは負担が大きいものです。
戸籍や住民票は郵便による取り寄せもできますが、書類の不備などによる問い合わせはやはり役所の業務時間中の対応が必要になりますから、やはり負担は軽いとは言えません。
このような戸籍や住民票の取り寄せも司法書士は代行します。
3か月の期限が差し迫っている方や期限が過ぎてしまっている方は、すみやかに司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。
父母が相続放棄すると祖父母が相続
1相続人になる人とは
相続が発生したら、親族のうち一定の範囲の人が相続人になります。
だれが相続人になるかについては、民法で決められています。
相続人になる人は次のとおりです。
①配偶者は必ず相続人になる
②被相続人に子どもがいる場合、子ども
③被相続人に子どもがいない場合、親などの直系尊属
④被相続人に子どもがいない場合で、かつ、親などの直系尊属が被相続人より先に死亡している場合、兄弟姉妹
相続人になるはずだった人が被相続人より先に死亡したため、相続人になるはずだった人の子どもや子どもの子どもが相続することがあります。
これを代襲相続と言います。
相続人になるはずだった人の子どもの子どもが相続することを再代襲相続と言います。
代襲相続ができるのは、相続人になるはずだった人の子どもなど被代襲者の直系卑属だけです。
相続人になるはずだった人を被代襲者と言います。
被代襲者の子どもなど被代襲者の直系卑属以外は代襲相続ができません。
被代襲者の配偶者も、被代襲者の親などの直系尊属も、被代襲者の兄弟姉妹も、代襲相続ができません。
2代襲相続になる原因
①相続人が死亡したら代襲相続する
相続人になるはずだった人が被相続人より先に死亡した場合です。
実際に死亡した場合の他に、失踪宣告を受けて死亡したものと扱われる場合も、代襲相続が発生します。
被相続人の死亡後、相続手続の途中で相続人が死亡した場合には、数次相続になります。
相続が発生したときに相続人が健在であれば、その後死亡しても代襲相続にはなりません。
②相続人が欠格になったら代襲相続する
欠格とは、相続人としてふさわしくない人の相続資格を奪う制度のことです。
欠格になる理由は法律で定められています。
主な理由は、被相続人を殺害したり、殺害しようとしたり、遺言書を偽造したり、遺言書を隠したりしたなどです。
法律で決められた理由があれば、家庭裁判所などの手続はなく、当然に、相続資格を失います。
相続人が相続欠格になる場合、代襲相続ができます。
③相続人が廃除されたら代襲相続する
相続人廃除とは、被相続人の意思で、相続人の資格を奪う制度のことです。
例えば、被相続人に虐待をした人に、相続をさせたくないと考えるのは自然なことでしょう。
相続人廃除は家庭裁判所に申立をして、家庭裁判所が判断します。
被相続人が相続人廃除したいと言い、相続人が廃除されていいと納得していても、家庭裁判所が相続人廃除を認めないことがあります。
相続人が相続人廃除になる場合、代襲相続ができます。
3子どもが相続放棄をしても子どもの子どもは代襲相続しない
被相続人の子どもが相続放棄をした場合、子どもの子どもは代襲相続しません。
子どもが相続放棄をした場合、代襲相続が発生しないからです。
被相続人の子どもが相続放棄をした場合、はじめから相続人でなかったとみなされます。
相続人でなくなるから、代襲相続もあり得ません。
被相続人の借金から逃れるために相続放棄をした場合、代襲相続がされないので安心です。
被相続人の子ども全員が相続放棄をした場合、子どもがいない場合になります。
子どもがいない場合、親などの直系尊属が相続します。
4父母が相続放棄をすると祖父母が相続する
①父母が相続放棄をしても代襲相続はしない
被相続人の父母が相続放棄をした場合、健在であれば祖父母が相続します。
父母が相続放棄をした場合であっても、代襲相続は発生しません。
だれが相続放棄をしても、代襲相続は発生しません。
代襲相続によって、祖父母が相続するのではありません。
祖父母が相続するのは、直系尊属だからです。
子どもの次順位の相続人は、親ではなく、親などの直系尊属です。
親などの直系尊属のうち、親等が近い人が相続人になります。
例えば、直系尊属に父母と祖父母がいる場合、父母は1親等、祖父母は2親等です。
父母の方が親等が近いから、父母が相続人になります。
父母が相続放棄をした場合、父母は相続人でなくなります。
親等の近い父母がいない場合なので、2親等の祖父母が相続人になります。
直系尊属は代襲相続と無関係です。
②父母と祖父母は同時に相続放棄ができない
相続放棄をする場合、多額の借金から逃れたいという動機が多いものです。
父母が借金から逃れたいと思う場合、祖父母も借金から逃れたいと思うでしょう。
父母と祖父母が相続放棄を希望する場合、同時に相続放棄の申立てをすることはできません。
父母の相続放棄が認められていないうちは、祖父母は相続人ではないからです。
まだ、相続人でないから家庭裁判所は相続放棄の申立てを受け付けてくれません。
③祖父母の相続放棄3か月のスタートは知ってから
被相続人の莫大な借金から逃れる場合、相続人は順次相続放棄をすることになります。
多くの場合、子ども全員が相続放棄をし、父母が相続放棄をした後、祖父母が相続放棄をすることになるでしょう。
家庭裁判所に対して相続放棄の申立てをしてから、相続放棄申述受理通知書が届くまでに1か月ほどかかります。
相続放棄ができる期間は、3か月と聞くとヤキモキするかもしれません。
相続放棄ができる期間のスタートは、被相続人の死亡からではありません。
相続があったことを知ってからです。
「相続があったことを知ってから」とは、被相続人が死亡して相続が発生し、その人が相続人であることを知って、かつ、相続財産を相続することを知ってから、と考えられています。
つまり、被相続人が死亡してから3か月以内ではなく、自分が相続することを知ってから3か月以内です。
被相続人の父母が相続放棄をして相続放棄が認められるまで相続人ではありません。
被相続人の父母が相続放棄を認められたと知ったときから、3か月がスタートします。
父母が相続放棄を認められたと知ったときから、3か月以内に家庭裁判所に相続放棄の申立てをすれば問題ありません。
5相続放棄を司法書士に依頼するメリット
相続放棄は、プラスの財産もマイナスの財産も引き継ぎませんという裁判所に対する申立てです。
相続人らとのお話合いで、プラスの財産を相続しませんと申し入れをすることではありません。
つまり、家庭裁判所で認められないとマイナスの財産を引き継がなくて済むというメリットは受けられないのです。
実は、相続放棄はその相続でチャンスは実質的には1回限りです。
家庭裁判所に認められない場合、即時抗告という手続を取ることはできますが、高等裁判所の手続で、2週間以内に申立てが必要になります。
家庭裁判所で認めてもらえなかった場合、即時抗告で相続放棄を認めてもらえるのは、ごく例外的な場合に限られます
一挙にハードルが上がると言ってよいでしょう。
相続放棄は慎重に判断する必要がありますが、いろいろな誤解から利用をためらう人が多いのも事実です。
利用をためらっていると3か月はあっという間です。
相続が発生すると、家族は親戚や知人へ連絡などで悲しみに浸る暇もないくらい忙しくなります。
3か月以内に必要書類を揃えて手続をするのは想像以上にハードルが高いものです。
相続放棄を考えている方はすみやかに司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。
数次相続があった後に相続放棄
1数次相続とは
①数次相続とは
相続が発生したら、相続財産は相続人全員の共有財産になります。
共有財産になった相続財産は、相続人全員で話し合いによる分け方の合意が不可欠です。
相続財産の分け方について、話し合いがまとまる前に、相続人が死亡して新たな相続が発生することがあります。
最初の相続の手続中に相続人が死亡して、さらに相続が発生した状態を数次相続と言います。
数次相続は、どこまででも続きます。
どこまで続くかについて、法律上の制限はありません。
最初の相続を一次相続、相続人が死亡した相続を二次相続と言います。
二次相続の相続人が死亡すると、三次相続、さらに、四次相続、五次相続という場合もあります。
相続人が死亡して新たな相続が発生することを、まとめて、数次相続と言います。
②数次相続と代襲相続のちがい
数次相続も代襲相続も相続が複雑になる代表例です。
相続人になるはずだった人が被相続人より先に死亡したため、相続人になるはずだった人の子どもや子どもの子どもが相続することがあります。
これを代襲相続と言います。
数次相続は、相続が発生した「後」に、相続人が死亡した場合です。
代襲相続は、相続が発生する「前」に、相続人が死亡した場合です。
数次相続では、死亡した相続人の相続人が最初の相続の遺産分割協議に参加します。
代襲相続では、死亡した相続人の直系卑属が最初の相続の遺産分割協議に参加します。
数次相続と代襲相続では、遺産分割協議に参加する人が異なります。
2相続放棄は被相続人ごとに手続が必要
相続が発生したら、原則として、被相続人のプラスの財産もマイナスの財産も相続人が受け継ぎます。
被相続人のプラスの財産もマイナスの財産も受け継がないことを相続の放棄といいます。
相続放棄をすると、プラスの財産を引き継がなくなりますが、マイナスの財産も引き継ぐことがなくなります。
相続の放棄は被相続人ごとに判断できますから、例えば、父について相続放棄をするが、母について単純承認するでも差し支えありません。
相続の放棄は相続人ごとに判断しますから、例えば、父の相続人ついて長男は相続放棄するが、長女は単純承認するでも差し支えありません。
3最初の相続で相続放棄ができないが次の相続で相続放棄できるケース
相続放棄ができるのは、相続人だけです。
相続人でない人は、相続放棄はできません。
例えば、被相続人に子どもがいない場合、親などの直系尊属が相続人になります。
被相続人に兄弟姉妹がいる場合であっても、被相続人の兄弟姉妹は相続人になりません。
被相続人の兄弟姉妹は、相続放棄はできません。
相続人でないから、相続放棄をする必要がないからです。
最初の相続で親などの直系尊属が相続人になる場合、最初の相続の被相続人の兄弟姉妹は相続人になりません。
この後、相続人になった親などの直系尊属に相続が発生する場合があります。
最初の相続の被相続人の兄弟姉妹は、相続人になった親などの直系尊属から見ると子どもにあたります。
親などの直系尊属に相続が発生した場合、最初の相続の被相続人の兄弟姉妹は相続人になります。
最初の相続の被相続人に大きなマイナスの財産があったことが判明することがあります。
大きなマイナスの財産から逃れたい場合、相続放棄をしたいと考えます。
最初の相続の被相続人の借金だから、最初の相続の被相続人について相続放棄をしたいと考えるかもしれません。
最初の相続の被相続人について、相続放棄をすることはできません。
最初の相続で相続人になったのは、親などの直系尊属だからです。
最初の相続で相続人でなかったのだから、相続放棄をすることはできないのです。
大きなマイナスの財産から逃れたい場合、次の相続で相続放棄をします。
最初の相続の被相続人の兄弟姉妹は、次の相続で相続人になります。
親などの直系尊属に相続が発生した場合、最初の相続の被相続人の兄弟姉妹は相続放棄をすることができます。
親などの直系尊属が相続した大きなマイナスの財産から逃れることができます。
4最初の相続で相続放棄も承認もしないまま相続人が死亡したケース
相続放棄は、家庭裁判所に対して手続が必要です。
この届出は相続があったことを知ってから、原則として、3か月以内にする必要があります。
最初の相続があったことを知ってから3か月以内に、相続人が死亡することがあります。
死亡した相続人は、本来、相続放棄をすることも相続を承認することもできたはずです。
最初の相続について、相続放棄をするか相続を承認するか決める権利は、死亡した相続人の相続人に相続されます。
死亡した相続人の相続人は、最初の相続について相続放棄をするか相続を承認するか決めることができます。
死亡した相続人の相続人は、死亡した相続人の相続について相続放棄をするか相続を承認するか決めることができます。
最初の相続で相続放棄も承認もしないまま相続人が死亡したケースでは、死亡した相続人の相続人は次の選択ができます。
①最初の相続を承認し、次の相続を承認する
②最初の相続を放棄し、次の相続を承認する
③最初の相続を放棄し、次の相続を放棄する
最初の相続を承認し、次の相続を放棄することは、できません。
最初の相続を承認した後で、次の相続を放棄するのであれば、承認したことが無意味になります。
次の相続を放棄した後は、最初の相続について相続放棄をするか相続を承認するか決める権利を放棄しているはずです。
最初の相続を放棄し、次の相続を承認することは、できます。
最初の相続の相続財産にマイナスの財産があるが、次の相続の相続財産にプラスの財産がある場合、有効だからです。
最初の相続のマイナスの財産を受け継がずに、次の相続のプラスの財産を受け継ぐことができます。
5スタートは相続があったことを知ってから
相続が発生した場合、家族や親戚には真っ先に知らせるでしょう。
家族の状況によっては、長期間音信不通であることがあります。
ときには家族が知らない相続人が現れることがあります。
家族が相続人の存在を知らない場合、すぐに知らせることはできません。
相続が発生してから、長期間経過した後、相続人であることを知ることがあります。
相続放棄は、相続があったことを知ってから3か月以内に手続をする必要があります。
「相続があったことを知ってから」とは、被相続人が死亡して相続が発生し、その人が相続人であることを知って、かつ、相続財産を相続することを知ってから、と考えられています。
つまり、被相続人が死亡してから3か月以内ではなく、相続財産を相続することを知ってから3か月以内です。
最初の相続における相続人が相続放棄をするか相続を承認するか決めないまま死亡した場合、あらためて3か月がスタートします。
死亡した相続人の相続人は、死亡した相続人について相続の発生を知ってから、3か月以内に相続放棄の手続をすることができます。
死亡した相続人が最初の相続の発生について知ってから3か月ぎりぎりで死亡した場合、死亡した相続人の相続人に酷になるからです。
6相続放棄を司法書士に依頼するメリット
実は、相続放棄はその相続でチャンスは1回限りです。
家庭裁判所に認められない場合、即時抗告という手続を取ることはできますが、高等裁判所の手続で、2週間以内に申立てが必要になります。
家庭裁判所で認めてもらえなかった場合、即時抗告で相続放棄を認めてもらえるのは、ごく例外的な場合に限られます。
一挙にハードルが上がると言ってよいでしょう。
相続が発生してから3か月以内に届出ができなかったのは止むを得なかったと家庭裁判所に納得してもらって、はじめて、家庭裁判所は相続放棄を認めてくれます。
通常は家庭裁判所に対して、上申書や事情説明書という書類を添えて、説得することになります。
家庭裁判所が知りたいことを無視した作文やダラダラとした作文では認めてもらうことは難しいでしょう。
司法書士であれば、家庭裁判所に認めてもらえるポイントを承知していますから、認めてもらいやすい書類を作成することができます。
さらに、通常の相続放棄と同様に戸籍や住民票が必要になります。
お仕事や家事、通院などでお忙しい人には平日の昼間に役所にお出かけになって準備するのは負担が大きいものです。
戸籍や住民票は郵便による取り寄せもできますが、書類の不備などによる問い合わせはやはり役所の業務時間中の対応が必要になりますから、やはり負担は軽いとは言えません。
このような戸籍や住民票の取り寄せも司法書士は代行します。
相続放棄を考えている方は、すみやかに司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。
相続放棄照会書と回答書の書き方
1相続放棄とは
相続が発生したら、原則として、被相続人のプラスの遺産もマイナスの遺産も相続人が受け継ぎます。
被相続人のプラスの遺産もマイナスの遺産も受け継がないことを相続の放棄といいます。
相続放棄をすると、プラスの遺産を引き継がなくなりますが、マイナスの遺産も引き継ぐことがなくなります。
家庭裁判所に対して、必要な書類をを添えて相続放棄をしたい旨の届出をします。
相続人間で、一部の相続人がプラスの遺産もマイナスの遺産も受け継ぐから、他の相続人は何も引き継がないことを合意することがあります。
このような合意のことも、一般的には、相続放棄ということがあります。
このような合意は相続放棄ではありません。
このような合意をしても、相続放棄の効果は得られません。
相続放棄は、家庭裁判所に対して手続をして認めてもらうことです。
一部の自称専門家は、家庭裁判所に手続するのは煩雑だから、相続人間の合意で済ませばよいと言っています。
「相続人〇〇がプラスの遺産もマイナスの遺産も受け継ぐ。他の相続人は、一切の遺産を引き継がない。」
遺産分割協議書にこのように書いてあって、相続人全員の実印を押せば、相続放棄の効果が得られると勘違いしそうです。
知識がない人は自称専門家から自信満々に言われたら、そのまま信じてしまうでしょう。
相続放棄は家庭裁判所に対してする手続です。
相続人間の合意は、相続放棄ではありません。
2相続放棄の申立てをすると相続放棄照会書が届く
①相続放棄照会書は家庭裁判所からの意思確認
家庭裁判所に対して相続放棄の申立てをすると、相続放棄照会書が届きます。
相続放棄照会書とは、家庭裁判所から届く相続放棄についての意思確認です。
相続放棄は、影響の大きい手続なので間違いがないように慎重に確認します。
万が一、不適切な回答をすると相続放棄を認めてもらえなくなるかもしれません。
相続放棄照会書は家庭裁判所によって名前が違うことがあります。
②相続放棄照会書が届くのは2週間後くらい後
相続放棄照会書が届いた場合は、期限までに回答をしましょう。
相続放棄照会書が届かないこともあります。
届かない場合は、気にすることはありません。
相続放棄の申立てを出してから2週間程度経過しても何も届かなければ、家庭裁判所に確認するといいでしょう。
③相続放棄照会書の内容とは
家庭裁判所によって表現が違うことがありますが、相続放棄照会書の内容はおおむね、次のとおりです。
被相続人の死亡をいつ知りましたか。
被相続人の死亡をどのような経緯で知りましたか。
遺産の全部または一部を使ったり、処分したり、隠したりしましたか。
相続放棄をした理由は何ですか。
家庭裁判所に相続放棄の申立書が来ていますが、あなたの意思ですか。
だれかに脅されて相続放棄を届け出たものですか。
相続放棄の申立書に署名押印をしたのはだれですか。
相続放棄の意思は変わりませんか。
相続放棄をするとプラスの遺産もマイナスの遺産も相続できないですが、いいですか。
3相続放棄回答書を書くときの注意点
相続放棄の届出の内容と食い違いが出ないように、書類を提出する前に控えをとっておくといいでしょう。
質問内容は、難しいものではありません。
事実をありのままに書けばいいでしょう。
①死亡後3か月以上経過している場合の注意点
被相続人が死亡してから3か月以上経過してから申立てをした場合、いつ死亡の事実を知ったかが重要なポイントになります。
相続放棄の申立ての期限は、原則として、相続があったことを知ってから3か月以内だからです。
「相続があったことを知ってから」とは、被相続人が死亡して相続が発生し、その人が相続人であることを知って、かつ、相続財産を相続することを知ってから、と考えられています。
相続があったことを知ってからですから、知らなかったのであれば3か月がスタートしません。
相続があったことを知ってから3か月以内であれば、相続放棄ができます。
家庭裁判所は、相続があったことを知ったのがいつなのか分かりません。
何らかの書類が届いたことによって、自己のために相続があったことを知ったのであれば、この書類は重要な証拠になります。
回答書に添付して提出するといいでしょう。
電話連絡であれば電話連絡で知ったと書けば差し支えありません。
②相続財産を使った場合の注意点
相続財産に手を付けてしまっている場合、単純承認になります。
単純承認になると、相続放棄は認められません。
家庭裁判所が気付かずに、相続放棄を認めてしまっても、裁判で相続放棄が無効にされてしまいます。
相続財産を使った場合でも、単純承認にあたることも、単純処分にあたらないこともあります。
相続財産である銀行の預貯金を引き出した場合が典型的です。
単に、引き出しただけであれば単純承認にならないことがほとんどでしょう。
自分のものにして使ってしまうと、単純処分にあたると判断されるでしょう。
引き出して、お葬式の費用に使った場合、状況によっては単純承認になると判断されることも、単純承認にあたらないと判断されることもあります。
重要なポイントは、正直に書くことです。
相続財産を使ってしまった場合、後から相続放棄の有効無効を争って裁判になるかもしれません。
家庭裁判所に提出する書類は、すべて記録として残ります。
正直に書いてない場合、裁判で不利になるでしょう。
お葬式の費用を払ったのであれば、回答書に領収書を添えて提出します。
③相続放棄をする理由は何でもよい
相続放棄をする理由の大部分は、被相続人の債務が多いからでしょう。
相続放棄をする理由は、何でも構いません。
「裕福で生活に困っていないから、他の人に相続させたい。」でも「他の相続人と絶縁しているから相続で関わりになりたくない」でも差し支えありません。
相続放棄をする理由は、相続放棄が認められるかとは関係がないからです。
④回答書の押印は相続放棄の申立ての印章と同一印で
相続放棄回答書は署名押印をする必要があります。
相続放棄回答書の押印で使う印章は、相続放棄の申立てに使った印章と同一印で押印します。
同一印で押印をすることで、相続放棄の届出をした人と同一人物が回答をしたと確認ができます。
相続放棄の届出のとき、どの印章を使ったのか分かるように目印を付けておきましょう。
どの印章を使ったのか分からなくなった場合、家庭裁判所に連絡して相談しましょう。
裁判所によっては、印影の大きさや形を教えてくれることがあります。
心当たりのある印章で並べて押してくださいと指示されることもあります。
4相続放棄が認められたら相続放棄申述受理通知書が届く
家庭裁判所で相続放棄が認められたら、相続放棄申述受理通知書が届きます。
家庭裁判所は、相続放棄をした人に相続放棄申述受理通知書を送るだけです。
家庭裁判所から債権者などに自主的に連絡しません。
通常、債権者は相続放棄をしたことも相続放棄が認められたことも知りません。
債権者から見ると、知らないうちに相続放棄をして、知らないうちに相続放棄が認められたとなります。
何も知らないから、借金を返してもらおうと考えて、相続人に催促してきます。
催促されたら家庭裁判所から届いた相続放棄申述受理通知書を見せれば、分かってもらえます。
多くの場合、相続放棄申述受理通知書のコピーを渡すだけで充分でしょう。
相続放棄申述受理証明書は、必要と言われてから取り寄せればいいでしょう。
相続放棄申述受理通知書は相続放棄をした人に送るだけで、家庭裁判所は他の相続人に対しても自発的に連絡しません。
被相続人の子ども全員が相続放棄をした場合、子どもはいないものと扱われます。
子どもがいない場合、親などの直系尊属が相続人になります。
通常、子どもがいる場合、子どもが相続人になりますから、親などの直系尊属は自分が相続人にならないと思っているでしょう。
被相続人が莫大な借金を残している場合、子ども全員が相続放棄をしたのなら、親などの直系尊属が借金を相続することになります。
親などの直系尊属に借金の催促が来たら、びっくりして親族間のトラブルになりかねません。
子どもが相続放棄をした場合、他の相続人に連絡する義務はありません。
莫大な借金があることや相続放棄をしたことを連絡してあげると親切でしょう。
次順位の相続人も相続放棄をする場合、準備をしておいてもらいましょう。
5相続放棄を司法書士に依頼するメリット
実は、相続放棄はその相続でチャンスは1回限りです。
家庭裁判所に認められない場合、即時抗告という手続を取ることはできますが、高等裁判所の手続で、2週間以内に申立てが必要になります。
家庭裁判所で認めてもらえなかった場合、即時抗告で相続放棄を認めてもらえるのは、ごく例外的な場合に限られます。
一挙にハードルが上がると言ってよいでしょう。
相続放棄は、家庭裁判所に申立てをすることです。
届出をすれば終わりでなく、家庭裁判所から来る相続放棄照会書にも適切に回答しなければなりません。
特に、相続が発生してから3か月以内に届出ができなかった場合などは、止むを得ない事情があったことを家庭裁判所に納得してもらう必要があります。
相続放棄の届出をするときに、上申書や事情説明書という書類を添えて、家庭裁判所を説得します。
同時に、相続放棄回答書でも止むを得ない事情があったことを説明し、納得してもらいます。
納得できる事情を適切に示すことで、家庭裁判所は相続放棄を認めてくれます。
家庭裁判所が知りたいことを無視した作文やダラダラとした作文では認めてもらうことは難しいでしょう。
司法書士であれば、家庭裁判所に認めてもらえるポイントを承知していますから、認めてもらいやすい書類を作成することができます。
さらに、通常の相続放棄と同様に戸籍や住民票が必要になります。
お仕事や家事、通院などでお忙しい人には平日の昼間に役所にお出かけになって準備するのは負担が大きいものです。
戸籍や住民票は郵便による取り寄せもできますが、書類の不備などによる問い合わせはやはり役所の業務時間中の対応が必要になりますから、やはり負担は軽いとは言えません。
このような戸籍や住民票の取り寄せも司法書士は代行します。
相続放棄を考えている方は、すみやかに司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。
子どもが相続放棄すると孫は代襲相続をしない
1相続人になる人とは
相続が発生したら、親族のうち一定の範囲の人が相続人になります。
だれが相続人になるかについては、民法で決められています。
相続人になる人は次のとおりです。
①配偶者は必ず相続人になる
②被相続人に子どもがいる場合、子ども
③被相続人に子どもがいない場合、親などの直系尊属
④被相続人に子どももいない場合で、かつ、親などの直系尊属が被相続人より先に死亡している場合、兄弟姉妹
相続人になるはずだった人が被相続人より先に死亡したため、相続人になるはずだった人の子どもや子どもの子どもが相続することがあります。
これを代襲相続と言います。
相続人になるはずだった人の子どもの子どもが相続することを再代襲相続と言います。
代襲相続ができるのは、相続人になるはずだった人の子どもなど被代襲者の直系卑属だけです。
相続人になるはずだった人を被代襲者と言います。
被代襲者の子どもなど被代襲者の直系卑属以外は代襲相続ができません。
被代襲者の配偶者も、被代襲者の親などの直系尊属も、被代襲者の兄弟姉妹も、代襲相続ができません。
2代襲相続になる原因
①相続人が死亡したら代襲相続する
相続人になるはずだった人が被相続人より先に死亡した場合です。
実際に死亡した場合の他に、失踪宣告を受けて死亡したものと扱われる場合も、代襲相続が発生します。
被相続人の死亡後、相続手続の途中で相続人が死亡した場合には、数次相続になります。
相続が発生したときに相続人が健在であれば、その後死亡しても代襲相続にはなりません。
②相続人が欠格になったら代襲相続する
欠格とは、相続人としてふさわしくない人の相続資格を奪う制度のことです。
欠格になる理由は法律で定められています。
主な理由は、被相続人を殺害したり、殺害しようとしたり、遺言書を偽造したり、遺言書を隠したりしたなどです。
法律で決められた理由があれば、家庭裁判所などの手続はなく、当然に、相続資格を失います。
相続人が相続欠格になる場合、代襲相続ができます。
③相続人が廃除されたら代襲相続する
相続人廃除とは、被相続人の意思で、相続人の資格を奪う制度のことです。
例えば、被相続人に虐待をした人に、相続をさせたくないと考えるのは自然なことでしょう。
相続人廃除は家庭裁判所に申立をして、家庭裁判所が判断します。
被相続人が相続人廃除したいと言い、相続人が廃除されていいと納得していても、家庭裁判所が相続人廃除を認めないことがあります。
相続人が相続人廃除になる場合、代襲相続ができます。
3子どもが相続放棄をしても子どもの子どもは相続しない
被相続人の子どもが相続放棄をした場合、子どもの子どもは相続しません。
子どもが相続放棄をした場合、代襲相続が発生しないからです。
被相続人の子どもが相続放棄をした場合、はじめから相続人でなかったとみなされます。
相続人でなくなるから、代襲相続もあり得ません。
被相続人の借金から逃れるために相続放棄をした場合、代襲相続がされないので安心です。
被相続人の子ども全員が相続放棄をした場合、子どもがいない場合になります。
子どもがいない場合、親などの直系尊属が相続します。
4被相続人の親が死亡した場合、代襲相続ができる
被相続人が死亡したときに、被相続人の親が健在の場合があります。
被相続人に子どもがいる場合、子どもが相続人になります。
子どもが被相続人を相続したくない場合、相続放棄の手続をします。
相続放棄の手続は、相続ごとにしなければなりません。
相続放棄の効力は、他の相続には及びません。
今回の相続で子ども全員が相続放棄をした場合、子どもはいないものと見なされます。
子どもがいない場合、親などの直系尊属が相続人になります。
今回相続人になった親などの直系尊属が死亡した場合、最初の被相続人の子どもは代襲相続人になります。
最初の被相続人は、親などの直系尊属の子どもになるからです。
子どもが先に死亡している場合、子どもの子どもが代襲相続人になります。
最初の相続で相続放棄をしたことは、親などの直系尊属の相続では関係ありません。
親などの直系尊属の相続で、単純承認をすることも相続放棄をすることもできます。
親などの直系尊属の相続で相続放棄を希望する場合、あらためて、相続放棄の申立てをしなければなりません。
5被相続人が孫と養子縁組をしていたら
①養子は相続人になる
被相続人に子どもがいる場合、子どもは相続人になります。
相続人になる子どもとは、血縁関係がある子どもだけではありません。
被相続人と養子縁組をした養子も、被相続人と血縁関係がある子どもで第三者と養子縁組をした子どもも相続人になります。
養子縁組をした養子と第三者と養子縁組をした子どもと血縁関係がある子どもは、同じ被相続人の子どもです。
被相続人が孫と養子縁組をした場合、養子は被相続人の子どもであり、子どもの子どもでもあります。
養子の親は、被相続人の血縁関係のある子どもだから相続人になります。
被相続人の子どもが相続放棄をした場合、子どもの子どもは相続しません。
被相続人の子どもが相続放棄をした場合でも、被相続人が孫と養子縁組をしていたら孫は相続人になります。
孫は、子どもの子どもの身分と養子の身分があるからです。
子どもの子どもとして相続人にはならないけど、養子として相続人になります。
②養子の親が死亡していた場合、養子は代襲相続人になる
被相続人が孫と養子縁組をした場合、養子は被相続人の子どもであり、子どもの子どもでもあります。
被相続人の子どもが被相続人の死亡する前に死亡した場合、子どもの子どもが代襲相続をします。
養子の親が被相続人の死亡する前に死亡した場合、養子が代襲相続をします。
被相続人の養子は、子どもの子どもでもあるからです。
被相続人の養子は、被相続人の子どもの地位と代襲相続人の地位があります。
③相続したくないのであれば養子は相続放棄が必要
被相続人と養子縁組をした養子は、被相続人の子どもです。
被相続人の子どもだから、相続人になります。
被相続人を相続したくないのであれば、相続放棄の申立てが必要です。
被相続人の子どもである養子の親が相続放棄をしている場合でも相続放棄をしていない場合でも必要です。
被相続人の養子は、相続人の地位があるからです。
④養子と代襲相続人である場合はまとめて相続放棄ができる
被相続人の子どもが被相続人の死亡する前に死亡した場合、子どもの子どもが代襲相続をします。
養子の親が被相続人の死亡する前に死亡した場合、養子が代襲相続をします。
被相続人の養子は、被相続人の子どもの地位と代襲相続人の地位があります。
被相続人を相続したくない場合、子どもの地位と代襲相続人の地位両方をまとめて相続放棄をすることができます。
⑤養子が未成年の場合は自分で相続手続ができない
未成年者は、物事のメリットデメリットを充分に判断することができません。
通常、契約などの法律行為をする場合、親などの親権者が代わりに手続をします。
被相続人が単独親権者である場合、家庭裁判所に未成年後見人を選んでもらう必要があります。
未成年後見人と未成年の養子が2人とも相続人になる場合、未成年後見人は未成年者を代理することができません。
一方がソンすると他方がトクする関係になるからです。
一方がソンすると他方がトクする関係のことを利益相反と言います。
利益相反になる場合、未成年後見人は未成年者を代理できません。
未成年後見人が未成年者を代理できない場合、家庭裁判所に特別代理人を選任してもらう必要があります。
特別代理人は、相続に利害関係がない親戚などが選ばれることが多いです。
特別代理人が未成年者の代わりに相続手続をします。
6相続放棄を司法書士に依頼するメリット
相続放棄はプラスの財産もマイナスの財産も引き継ぎませんという裁判所に対する申立てです。
相続人らとのお話合いで、プラスの財産を相続しませんと申し入れをすることではありません。
つまり、家庭裁判所で認められないとマイナスの財産を引き継がなくて済むというメリットは受けられないのです。
実は、相続放棄はその相続でチャンスは実質的には1回限りです。
家庭裁判所に認められない場合、即時抗告という手続を取ることはできますが、高等裁判所の手続で、2週間以内に申立てが必要になります。
家庭裁判所で認めてもらえなかった場合、即時抗告で相続放棄を認めてもらえるのは、ごく例外的な場合に限られます
一挙にハードルが上がると言ってよいでしょう。
相続放棄は慎重に判断する必要がありますが、いろいろな誤解から利用をためらう人が多いのも事実です。
利用をためらっていると3か月はあっという間です。
相続が発生すると、家族は親戚や知人へ連絡などで悲しみに浸る暇もないくらい忙しくなります。
3か月以内に必要書類を揃えて手続をするのは想像以上にハードルが高いものです。
相続放棄を考えている方はすみやかに司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。
相続放棄なのに実印と印鑑証明書
1相続放棄とは
相続が発生したら、原則として、被相続人のプラスの財産もマイナスの財産も相続人が受け継ぎます。
被相続人のプラスの財産もマイナスの財産も受け継がないことを相続の放棄といいます。
相続放棄をすると、プラスの財産を引き継がなくなりますが、マイナスの財産も引き継ぐことがなくなります。
相続の放棄は被相続人ごとに判断できますから、例えば、父について相続放棄をするが、母について単純承認するでも差し支えありません。
相続の放棄は相続人ごとに判断しますから、例えば、父の相続について長男は相続放棄するが、長女は単純承認するでも差し支えありません。
2相続放棄申述書の押印は認印でいい
家庭裁判所に対して、必要な書類をを添えて相続放棄をしたい旨の届出をします。
届出をする先の家庭裁判所は、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です。
家庭裁判所の管轄は裁判所のホームページで調べることができます。
相続放棄をしたい旨の届出の書類のことを、相続放棄申述書と言います。
相続放棄申述書は、相続放棄の届出をする人が押印をします。
実印で押印してももちろんいいのですが、押印は認印で充分です。
わざわざ実印である必要はありません。
認印でいいのだから、印鑑証明書が必要になることはありません。
朱肉を使う印章であれば、構いません。
相続放棄申述書に押印した印章がどれであったのか、覚えておきましょう。
家庭裁判所は、相続放棄の届出を受け付けた後、相続放棄照会書を送ってきます。
家庭裁判所から届く相続放棄照会書とは、相続放棄についての意思確認です。
相続放棄は、影響の大きい手続なので間違いがないように慎重に確認します。
相続放棄回答書の押印で使う印章は、相続放棄の届出に使った印象と同一印で押印します。
同一印で押印をすることで、相続放棄の届出をした人と同一人物が回答をしたと確認ができます。
3遺産分割協議で相続放棄はできない
相続放棄は、本来、家庭裁判所に対する手続です。
家庭裁判所に提出する書類には実印を押す必要はありません。
実印を押さないから、印鑑証明書を提出することもありません。
にもかかわらず、相続放棄の手続のため実印と印鑑証明書を用意して欲しいと他の相続人に言われたというケースがあります。
相続放棄のためと称していますが、相続放棄の手続のはずがありません。
相続放棄の手続は、相続放棄をする相続人が自分でするものだからです。
他の相続人が相続放棄の手続をするものではありません。
相続放棄の手続には、実印も印鑑証明書も不要です。
実印と印鑑証明書を渡して欲しいと言ってきた場合、別の手続をしようとしています。
具体的には、遺産分割協議と相続放棄を混同していると言えます。
自称専門家の場合、遺産分割協議と相続放棄を混同しているケースは度々あります。
他の相続人に対してプラスの財産を相続しないと宣言することを相続放棄と誤解しているケースでしょう。
プラスの財産を受け取らないことを相続放棄の手続と、表現しているのです。
相続財産の分け方は、相続人全員の話し合いによる合意が不可欠です。
話し合いがまとまったら、合意内容を文書に取りまとめます。
合意内容を取りまとめた文書を遺産分割協議書と言います。
相続人は遺産分割協議書の内容に間違いがないことを確認して、記名し実印で押印をします。
実印であることの証明として印鑑証明書を添付します。
他の相続人に対してプラスの財産を相続しないと宣言したのだから、遺産分割協議書に取りまとめたのでしょう。
遺産分割協議書に取りまとめた場合、記名し実印で押印をします。
遺産分割協議書だから印鑑証明書が必要になります。
相続放棄と遺産分割は、まったく別の効果の別の手続です。
4マイナスの財産は遺産分割協議は引き継ぐが、相続放棄は引き継がない
家庭裁判所で相続放棄を認めてもらった場合、被相続人のマイナスの財産は引き継ぎません。
相続放棄が認められた場合、はじめから相続人でなかったとみなされるためです。
相続放棄をしたら相続人でなくなるから、プラスの財産もマイナスの財産も受け継ぐことがありません。
遺産分割をした場合、債権者は相続人全員に対して法定相続分で債務の支払を請求することができます。
マイナスの財産も相続財産ですから、財産の分け方を相続人全員で決めることができます。
債務は特定の相続人が引き継ぐことを相続人全員で合意することができます。
特定の相続人が引き継ぐ合意をした場合、合意は相続人間でのみ有効です。
相続人間でのみ有効な内輪の合意だから、債権者には関係ありません。
相続人間の合意があっても合意がなくても、債権者は相続人全員に対して法定相続分で債務の支払を請求することができます。
家庭裁判所で相続放棄を認めてもらった場合、相続放棄申述受理通知書が交付されます。
債権者に相続放棄申述受理通知書を提示すれば、それ以上の請求はされないでしょう。
5遺産分割協議は詐害行為になるおそれがあるが、相続放棄は詐害行為にならない
借りたお金を返さなければならないのに、自分の財産を不当に減少させて、結果、お金を返せなくなることがあります。
自分の財産を不当に減少させたら、お金を貸した人はお金を返してもらえなくなる結果になります。
お金を貸した人が困ることを知っているのに、自分の財産を不当に減少させることを詐害行為と言います。
①被相続人が借金をしていた場合相続放棄は詐害行為で取消ができない
被相続人が多額の借金を抱えたまま死亡した場合、お金を貸した人は相続人にお金を返してもらおうとするでしょう。
相続人は被相続人の借金を引き継がないために、相続放棄をすることが考えられます。
お金を貸した人は相続人にお金を返してもらおうと思っていたのに、相続放棄をされたら、請求できなくなって困ります。
お金を貸した人が困るのは知っていると言えるから、相続放棄を詐害行為として取り消したいと思うでしょう。
このような場合、相続放棄を詐害行為として取り消すことはできません。
②相続人が借金をしている場合、相続放棄は詐害行為で取消ができない
被相続人が多額のプラスの財産を残して死亡することがあります。
相続人が多額の借金を抱えている場合、お金を貸した人は相続した財産からお金を返してもらいたいと期待するでしょう。
プラスの財産が多いことを知っていても、他の相続人のために相続放棄をすることがあります。
例えば、被相続人のお世話をしていた人に相続させたい場合、被相続人と相続人の今までの経緯から相続したくない場合などです。
相続すれば多額の財産がたやすく手に入るのに、相続放棄をしたら相続財産は受け継ぐことはできません。
お金を貸した人は相続財産からお金を返してもらおうと思っていたのに、相続放棄をされたら、返してもらえなくなって困ります。
お金を貸した人が困るのは知っていると言えるから、相続放棄を詐害行為として取り消したいと思うでしょう。
このような場合、相続放棄を詐害行為として取り消すことはできません。
③遺産分割は詐害行為で取消ができる
プラスの財産を受け取らないことを申し入れをすることは、相続人全員の話し合いによる合意の一部と言えます。
遺産分割協議とは、相続が発生したことにより、相続人全員の共有になった相続財産の分け方を決めることです。
遺産分割協議は、財産を目的とする財産行為です。
お金を借りている人が、法定相続分よりはるかに少ない財産で相続する合意をした場合、自己の財産を減少させる合意と言えます。
お金を借りている人が、プラスの財産を一切受け取らない合意をした場合、自己の財産を減少させる合意と言えます。
自己の財産を減少させる遺産分割協議は、詐害行為にあたります。
お金を貸した人は、詐害行為を取り消すことができます。
6相続放棄を司法書士に依頼するメリット
相続放棄はプラスの財産もマイナスの財産も引き継ぎませんという裁判所に対する届出です。
相続人らとのお話合いで、プラスの財産を相続しませんと申し入れをすることではありません。
つまり、家庭裁判所で認められないとマイナスの財産を引き継がなくて済むというメリットは受けられないのです。
相続放棄は取消できないと言われますが、これは撤回できないの意味で使われています。
日常使う言葉が法律上異なる意味で使われると分かりにくくなります。
相続放棄は撤回できませんが、条件を満たせば取消できるし、無効になることもあります。
家庭裁判所から相続放棄を認められた後でも、お金を貸した人から取立が続くこともあります。
相続放棄は無効だと主張されることもあります。
詐害行為にあたるから取り消すなどと主張されることがあります。
お金を貸した人に詐害行為取消権がありますが、相続放棄は詐害行為ではありません。
さらに、詐害行為取消権は、裁判で主張する必要があります。
このようなことは、法律知識がないと対応できないでしょう。
詐害行為でなくても、相続放棄することは権利濫用だなどと主張されることもあります。
相続放棄することは権利濫用だという主張も意味がない主張です。
相続放棄は、相続人が多大な借金を引き継いでしまうことで人生が破綻することから守るための制度です。
お金を貸す人が負うべきリスクを押し付けられるいわれはありません。
相続放棄を考えている方はすみやかに司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。
相続放棄でやってはいけないこと
1相続放棄とは
相続が発生したら、原則として、被相続人のプラスの財産もマイナスの財産も相続人が受け継ぎます。
被相続人のプラスの財産もマイナスの財産も受け継がないことを相続の放棄といいます。
相続放棄をすると、プラスの財産を引き継がなくなりますが、マイナスの財産も引き継ぐことがなくなります。
相続放棄は、家庭裁判所の書類審査だけで認められます。
相続放棄の要件をきちんと満たしているか、家庭裁判所が独自で調査することはありません。
相続放棄の要件を満たしていないのに、相続放棄の書類がきちんと揃っている場合、家庭裁判所は事情が分からず、相続放棄を認めてしまいます。
本当は要件を満たしていないから相続放棄は無効のはずです。
家庭裁判所は事情が分からないから、相続放棄を認めてしまうケースがあります。
2単純承認をすると相続放棄が無効になる
相続放棄をする前に単純承認をしていた場合、相続放棄はできません。
相続放棄が撤回できないように、単純承認も撤回できないからです。
相続財産を処分したり、利用した場合、単純承認をしたとみなされます。
相続財産を処分したり、利用した場合は相続放棄ができなくなります。
家庭裁判所は事情が分からないから相続放棄を認めてしまうケースがありますが、後から無効になります。
3相続放棄で心配になる具体例
①葬儀費用の支払いとお香典の受け取り
葬儀費用はお香典で賄われるのが一般的でしょう。
葬儀の参列者から受け取るお香典は、葬儀の主宰者への贈与です。
相続とは関係ない財産です。
お香典を受け取っても、相続放棄に影響はありません。
受け取ったお香典を葬儀費用に使っても、相続放棄に影響はありません。
お香典で足りない分については、原則として、相続財産から支払をしても差し支えありません。
葬儀は人生最後の儀式として執り行われるものであり、社会的儀式として必要性が高いものだからです。
葬儀を執り行うためには、相当額の支出を伴います。
相続財産を被相続人の葬儀費用に充当しても社会的見地から不当なものとは言えません。
相続財産があるにもかかわらず、これを使用することが許されず、相続人らに資力がないため被相続人の葬儀を執り行うことができないとすれば、むしろ非常識な結果になるからです。
もちろん、相続財産からでなく自分の固有の財産から支払をした方が安心です。
葬儀費用は、相続人が払うというより喪主が支払をしているでしょう。
相続放棄をすることと喪主として葬儀を主宰することはまったく別物です。
喪主として葬儀を主宰して自分の固有の財産で葬儀費用を支払っても、相続放棄に影響はありません。
②入院費用や介護費用の支払い
入院費用を相続財産から支払った場合、相続財産の処分にあたると判断されるおそれがあります。
すでに期限が到来した債務の弁済であれば、相続財産から支払っても差し支えありません。
入院費用の支払はすでに期限が到来した債務の弁済に、あたることもあたらないこともあります。
まだ期限が到来していない債務の支払の場合、相続財産の処分にあたると判断されることになります。
支払をしないままにしておくのが心苦しいのであれば、相続人の固有の財産から支払をしておくのがいいでしょう。
領収書の宛名は、相続人にしてもらいましょう。
相続人が入院時の身元保証人になっている場合があります。
身元保証人とはいうものの、入院費用の連帯保証人になっていることが多いです。
相続放棄をした場合、被相続人の入院費用などの債務は支払う必要がありません。
相続人として被相続人の債務を受け継がなくなったとしても、連帯保証人として入院費用は支払わなければなりません。
連帯保証人の義務は、相続人の義務と別の義務だからです。
③賃貸マンションの解約と家財道具の片付け
お部屋を借りる権利のことを、賃借権と言います。
原則として、お部屋を借りている人が死亡しても、賃貸借契約は終了しません。
相続が発生すると、原則として、被相続人の財産は相続人が相続します。
相続財産はプラスの財産とマイナスの財産があります。
どちらも、相続財産です。
賃借権などの権利もプラスの財産になります。
賃貸マンションを解約すると、賃借権を処分したと言われます。
お部屋の中の家財道具のうち、明かなゴミや腐りやすいものは処分しても差し支えありません。
家具や家電品などは、処分したり売却したりすることはおすすめできません。
貸主から片づけて欲しい、明け渡して欲しいと言われますが、相続放棄をしていることを伝えましょう。
貸主の責任で貸主が何かすることについては、相続人の相続放棄と関係ないのは当然です。
貸主が費用を出して、お部屋の中のものを処分しても、相続放棄をした相続人には請求できません。
通常は、このようなときのために敷金を受け取っていますから、敷金から差引します。
被相続人が借りていたお部屋に相続人が住み続けたい場合があるかもしれません。
このような場合、退去するのが建前です。
賃借権は相続財産だからです。
相続しないのなら、賃借権がありません。
同じお部屋に住み続けたい場合、あらためて貸主と賃貸借契約をし直します。
相続人と貸主が、賃貸マンションの契約をするだけですから、相続財産は関係ありません。
賃貸マンションの契約をしても、相続放棄に影響はありません。
未払家賃があると、貸主としてもいい印象は持ちません。
相続人が固有の財産で被相続人の未払家賃を払うのであれば、相続財産の処分と言われることはありません。
④賃貸マンションの家賃の支払い
すでに期限が到来した債務の弁済であれば、相続財産から支払っても差し支えありません。
わざわざ相続放棄が無効だと言われるリスクを取るメリットはないでしょう。
相続人の固有の財産から被相続人の未払い家賃を支払った方が安心です。
相続人が固有の財産から未払い家賃を支払った場合、領収書の宛名は相続人にしてもらいましょう。
通常は、未払家賃も敷金から差引します。
⑤借金や未払金の支払い
相続放棄をすると、プラスの財産を引き継がなくなりますが、マイナスの財産も引き継ぐことがなくなります。
借金や未払金は支払う必要がありません。
催促が来たら、相続放棄申述受理通知書を提示しましょう。
⑥電気、ガス、水道などの公共料金の支払い
電気、ガス、水道などの公共料金の未払金は支払う必要がありません。
しかし、公共料金は支払わないと電気、ガス、水道などが止められてしまいます。
同じ場所で住み続けるとしたら、困ってしまいます。
相続人が、固有の財産から支払えば安心です。
固有の財産から支払ったうえで、あらためて、相続人名義で契約をし直せばいいでしょう。
⑦預貯金の引き出しと解約
預貯金の引き出しや解約をする場合、相続人全員で相続財産の分け方の合意をする必要があります。
通常、分け方の合意がまとまったら文書に取りまとめて、銀行などの金融機関に提出します。
このような遺産分割協議は、単純承認にあたります。
預貯金の引き出し、解約、名義変更をすると、相続放棄は無効になります。
銀行には、口座の名義人が死亡したことを伝えれば十分です。
⑧クレジットカードの支払い
相続放棄をすると、プラスの財産を引き継がなくなりますが、マイナスの財産も引き継ぐことがなくなります。
クレジットカードの支払もする必要がありません。
カード会社に契約者が死亡したこと、相続放棄をしたことを伝えるだけで十分です。
⑨お墓や仏壇の購入
お墓や仏壇は、原則として、相続財産から支払をしても差し支えありません。
葬儀は人生最後の儀式として執り行われるものであり、社会的儀式として必要性が高いものです。
過分な葬儀の費用を相続財産から支出した場合、相続放棄が無効になる可能性があります。
一般的に、お墓や仏壇は、葬儀より必要性が低いと考えられています。
お墓や仏壇の費用を相続財産から支出した場合、相続放棄が無効になる可能性があります。
葬儀の費用とお墓や仏壇の費用を比べた場合、お墓や仏壇の費用を支出した場合の方が相続放棄が無効になるリスクが高いです。
お墓や仏壇は、葬儀より必要性が低いと考えられているからです。
あえてリスクを取るより、相続人の固有の財産から支払する方が安心でしょう。
⑩生命保険の受け取り
生命保険の受取人が相続人である場合、保険金を受け取る権利は相続人の固有の権利です。
相続財産ではありませんから、受け取っても相続放棄に影響はありません。
生命保険の受取人が被相続人である場合、保険金を受け取る権利は相続財産です。
相続財産を受け取ると、相続放棄が無効になります。
⑪年金の受け取り
遺族年金は遺族に支払われるものです。
遺族の固有の権利であって、相続とは関係ありません。
遺族年金を受け取っても、相続放棄に差し支えることはありません。
口座の持ち主が死亡した場合、銀行など金融機関は口座を凍結します。
口座凍結などで支払われるべき年金を受け取ることができなくなることがあります。
被相続人が受け取ることができなかった年金のことを、未支給年金と言います。
未支給年金を受け取る権利は、一定の遺族の固有の権利です。
遺族の固有の権利であって、相続とは関係ありません。
未支給年金を受け取っても、相続放棄に差し支えることはありません。
4相続放棄を司法書士に依頼するメリット
実は、相続放棄はその相続でチャンスは1回限りです。
家庭裁判所に認められない場合、即時抗告という手続を取ることができます。
即時抗告は高等裁判所の手続で、2週間以内に申立てが必要になります。
家庭裁判所で認めてもらえなかった場合、即時抗告で相続放棄を認めてもらえるのは、ごく例外的な場合に限られます。
一挙にハードルが上がると言ってよいでしょう。
相続放棄は、撤回ができません。
相続放棄をする前に、慎重に判断する必要があります。
せっかく相続放棄が認められても、相続財産を処分したら無効になりかねません。
このような行為をしてしまわないように、あらかじめ知識を付けておく必要があります。
相続放棄を自分で手続したい人の中には、相続放棄が無効になることまで考えていない場合が多いです。
司法書士は、相続放棄が無効にならないようにサポートしています。
せっかく手続しても、相続放棄が無効になったら意味がありません。
相続放棄を考えている方は、司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。
相続放棄しても入院費介護費の支払
1相続の承認と相続放棄
相続が発生したら、原則として、被相続人のプラスの財産もマイナスの財産も相続人が受け継ぎます。
相続財産というとプラスの財産だけイメージしがちですが、マイナスの財産も含まれます。
マイナスの財産が多い場合、相続放棄をすることができます。
法律で定められた一定の条件にあてはまるときは、単純承認したとみなされます。
単純承認とは、被相続人のプラスの財産もマイナスの財産も受け継ぐものです。
単純承認とみなされたら、相続放棄はできません。
相続放棄はできないのに、家庭裁判所に相続放棄の手続をして、相続放棄が認められても無効です。
家庭裁判所が事情を分からずに相続放棄を認めてしまっても、後から無効になります。
単純承認したとみなされる行為は、法律で定められています。
相続財産を処分した場合、単純承認したとみなされます。
相続財産の名義変更をした、相続財産である銀行の預貯金を引き出して使ってしまった場合が典型的です。
単に、引き出しただけであれば、処分とは言えないことが多いでしょう。
引き出したうえ、自分の口座に送金して保管すると、「処分した」と評価される可能性が高くなります。
相続財産の分け方について、相続人全員で合意をした場合も、相続財産を「処分した」場合に当たります。
2相続放棄をした後の入院費や介護費の支払
①相続放棄をした場合、被相続人の債務は支払不要
相続が発生したら、原則として、被相続人のプラスの遺産もマイナスの遺産も相続人が受け継ぎます。
被相続人のプラスの遺産もマイナスの遺産も受け継がないことを相続の放棄といいます。
相続放棄をすると、プラスの遺産を引き継がなくなりますが、マイナスの遺産も引き継ぐことがなくなります。
病院や介護施設から本人の相続人として入院費や介護費の支払を請求してきた場合、支払いを拒むことができます。
②相続人が連帯保証人の場合、連帯保証人として支払が必要
病院に入院する場合や介護施設に入所する場合、入院契約や入所契約をします。
契約を締結した場合、入院費や介護費が発生します。
これらの費用をきちんと払ってもらえるか心配なので、払ってもらえないとき肩代わりをする連帯保証人を立ててもらいます。
肩代わりの人は、多くの場合、被相続人の家族でしょう。
病院や介護施設と本人の家族は、入院費や介護費の肩代わりの約束をします。
入院費や介護費の肩代わりの約束のことを、連帯保証契約と言います。
入院契約や入所契約は、病院や介護施設と本人の契約です。
連帯保証契約は、病院や介護施設と本人の家族の契約です。
入院契約や入所契約と連帯保証契約は、当事者が異なるまったく別の契約です。
病院や介護施設は本人の入院費や介護費を、通常、本人の相続人に請求します。
相続人は相続放棄をしたことを理由として、支払いをしてくれません。
支払いをしてもらえないときに備えて、肩代わりの人を立ててもらっています。
相続人に支払いをしてもらえないから、肩代わりの人に請求をします。
連帯保証契約に基づく肩代わりの義務は、本人の家族の固有の義務です。
相続が発生しても、連帯保証契約は影響を受けません。
相続とは無関係だから、相続放棄をしても相続放棄をしなくても、肩代わりの義務はなくなりません。
病院や介護施設から連帯保証人として入院費や介護費の支払を請求してきた場合、支払いを拒むことができません。
③入院費や介護費を支払いたい場合、固有の財産から支払うのが安全
相続放棄が認められた場合、本人の債務を引き継ぐことはありません。
入院や入所のときに、連帯保証人になっていなければ本人の債務を支払う必要はありません。
債務の支払義務はなくても、お世話になった病院や施設だから、本人の入院費や介護費を支払いたい場合があります。
相続財産を処分した場合、単純承認したとみなされます。
本人の預貯金で入院費や介護費の支払をした場合、相続財産を処分したと判断されるおそれがあります。
相続財産を処分した場合であっても、保存行為にあたる場合は、単純承認したとみなされません。
期限到来後の入院費や介護費であれば、本人の預貯金から支払をしても単純承認にあたらないという意見があります。
本人に莫大な借金がある場合、債権者は単純承認をしたと言って取立をしてくるおそれがあります。
あえてトラブルに巻き込まれる危険を冒す必要はありません。
相続人の固有の財産から支払をした場合、相続財産を処分したと言われることはありません。
お世話になった病院や施設だから、本人の入院費や介護費を支払いたい場合、相続人の固有の財産から支払をすることをおすすめします。
3生命保険は受け取れるものと受け取れないものがある
入院費や介護費の支払は高額になりがちです。
将来の備えとして、被相続人が生命保険に加入している場合があります。
①生命保険の死亡保険金は受け取れる
相続が発生したときは、被相続人が死亡したときですから、被相続人に生命保険がかけてあれば、保険金が支払われます。
原則として、生命保険の死亡保険金は、受取人の固有の財産です。
受取人として「相続人」と指定してある場合であっても、相続放棄した人が受け取ることができます。
生命保険の死亡保険金は、相続財産ではありません。
相続財産ではないのに、相続税の課税対象になります。
相続税の課税対象になるから相続財産であると誤解している人は多いです。
家庭裁判所で相続放棄の手続をした人も、生命保険の死亡保険金は受け取ることができます。
生命保険の死亡保険金を病院に支払った場合、単純承認になりません。
生命保険の死亡保険金は被相続人の相続財産でないから、相続放棄とは関係がないからです。
②生命保険の入院給付金は受け取れない
生命保険の中には死亡保険金以外の給付金を重視した設計の商品があります。
入院給付金や手術一時金がその代表例です。
入院給付金の受取人は、被相続人が指定されているでしょう。
入院給付金は相続財産になります。
相続放棄をしたのに入院給付金を受け取ったら、単純承認したとみなされます。
生命保険の入院給付金を病院に支払った場合、単純承認になります。
給付金を受け取ったから、支払いができたからです。
4健康保険の高額療養費を受け取れる場合と受け取れない場合がある
①協会けんぽ、健康保険組合、共済の場合
健康保険の高額療養費は、被保険者に支給されます。
被相続人が被扶養家族の場合、高額療養費を請求し給付金を受け取ることができるのは、健康保険の本人である被保険者です。
健康保険の本人である被保険者の資格で受け取りますから、相続放棄は有効です。
被相続人が扶養家族でなく被保険者本人の場合、高額療養費の給付金は相続財産になります。
被相続人が被保険者本人の場合で、かつ、高額療養費を請求し給付金を受け取った場合、相続放棄は無効です。
②国民健康保険の場合
健康保険の高額療養費は、世帯主に支給されます。
被相続人が世帯主でない場合で、かつ、高額療養費を請求し給付金を受け取った場合、相続放棄は有効です。
被相続人が世帯主の場合、高額療養費の給付金は相続財産になります。
被相続人が世帯主の場合で、かつ、高額療養費を請求し給付金を受け取った場合、相続放棄は無効です。
③限度額認定証がおすすめ
健康保険の高額療養費は、高額な医療費を払ったときに後から現金で払い戻しを受ける制度です。
限度額認定証は、病院から高額療養費分を差し引いて請求してもらう制度です。
病院への支払いが少なく済むうえ、後から高額療養費の請求する必要がなくなります。
入院など医療費が高額になる見込みの場合、限度額認定証を発行してもらうといいでしょう。
高額療養費を受け取ることがないから、相続放棄が無効になる心配がなくなります。
5相続放棄を司法書士に依頼するメリット
実は、相続放棄はその相続でチャンスは1回限りです。
家庭裁判所に認められない場合、即時抗告という手続を取ることはできますが、高等裁判所の手続で、2週間以内に申立てが必要になります。
家庭裁判所で認めてもらえなかった場合、即時抗告で相続放棄を認めてもらえるのは、ごく例外的な場合に限られます。
一挙にハードルが上がると言ってよいでしょう。
相続放棄は撤回ができないので、慎重に判断する必要があります。
せっかく、相続放棄が認められても、相続財産を処分した判断されたら無効になりかねません。
このような行為をしてしまわないように、予め知識を付けておく必要があります。
相続放棄を自分で手続きしたい人の中には、相続放棄が無効になることまで考えていない場合が多いです。
司法書士は、相続放棄が無効にならないようにサポートしています。
せっかく手続しても、相続放棄が無効になったら意味がありません。
相続放棄を考えている方は、司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。
相続放棄しても未支給年金
1相続放棄をしても相続財産以外は受け取りができる
相続が発生したら、原則として、被相続人のプラスの財産もマイナスの財産も相続人が受け継ぎます。
相続財産というとプラスの財産だけイメージしがちですが、マイナスの財産も含まれます。
マイナスの財産が多い場合、相続放棄をすることができます。
法律で定められた一定の条件にあてはまるときは、単純承認したとみなされます。
単純承認とは、被相続人のプラスの財産もマイナスの財産も受け継ぐものです。
単純承認とみなされたら、相続放棄はできません。
被相続人が払うべきお金を相続財産から支払う場合、単純承認とみなされます。
相続財産を処分したと判断されるからです。
被相続人が払うべきお金であっても、相続人が自分の財産から払う場合、単純承認とみなされません。
被相続人が死亡したことをきっかけに受け取るお金には、被相続人の財産を引き継ぐものと相続人自身の固有の権利として受け取るものがあります。
被相続人の財産を引き継ぐ場合、単純承認とみなされます。
相続人自身の固有の権利として受け取る場合、単純承認とみなされません。
相続放棄をした場合、相続財産を受け取ることはできませんが、相続財産以外であれば受け取ることができます。
2預金者が死亡すると口座凍結で年金を受け取ることができない
銀行などの金融機関は預金者が死亡したことを確認すると、口座の取引をできなくします。
この口座の取引をできなくすることを口座の凍結といいます。
口座取引をできなくしますから、ATMや窓口での引き出しはできません。
振込みもできないし、公共料金などのお引落もできなくなってしまいます。
口座が凍結された場合、年金の振込みを受けることができなくなります。
年金は死亡した月の分まで支給されます。
年金は、後払いで支給されます。
例えば、4月分と5月分の年金は、6月に支給されます。
年金を受け取っている人が4月に死亡した場合、4月分の年金まで支給されます。
4月分の年金は、6月に振込みがされます。
多くの場合、6月の年金支払い日には、口座が凍結されているでしょう。
6月に支給される年金の振込みを受けることができません。
年金を受け取っている人が死亡した場合、口座が凍結されていれば年金を受け取ることができなくなります。
年金は後払いだから、必ず、まだ受け取っていない年金が発生します。
口座が凍結されたことなどで、まだ受け取っていない年金のことを、未支給年金と言います。
3未支給年金は相続財産ではない
死亡した被相続人が受け取るはずの年金だから、相続財産の一部に見えるかもしれません。
相続財産を処分した場合、単純承認をしたとみなされます。
単純承認をした場合、相続放棄をすることはできません。
未支給年金を受け取る権利は、相続財産ではありません。
未支給年金は、法律で一定の遺族に認められた権利です。
死亡した被相続人が受け取るはずの年金を受け継いだものではありません。
法律で認められた遺族の固有の権利です。
被相続人から相続した相続財産ではないから、相続放棄とは無関係です。
相続人が相続放棄をした場合でも相続放棄をしない場合でも、法律の定めに基づいて未支給年金を受け取ることができます。
未支給年金を受け取っても、相続の単純承認をしたと言われることはありません。
未支給年金を受け取る権利は、相続財産ではなく遺族の固有の財産だからです。
相続放棄をした後に未支給年金を請求した場合、相続放棄が無効になることはないし、未支給年金を返還するように言われることはありません。
未支給年金を受け取った後に相続放棄をした場合、相続放棄が無効になることはないし、未支給年金を返還するように言われることはありません。
未支給年金を受け取る権利は、遺族の固有の権利だから、相続放棄とは無関係です。
すでに相続放棄をした場合でも、これから相続放棄をするつもりでも、未支給年金を受け取ることができます。
4未支給年金を受け取る方法
①未支給年金を請求できる人
未支給年金は、年金を受け取っていた人と生計を同じくしていた人が受け取ることができます。
遺族年金と未支給年金は、別の制度です。
遺族年金を受け取ることができる場合で、かつ、未支給年金を受け取ることができる場合、それぞれの手続が必要です。
未支給年金を受け取ることができるのは、次の人のうち優先順位の高い人です。
(1)配偶者
(2)子
(3)父母
(4)孫
(5)祖父母
(6)兄弟姉妹
(7)その他これら以外の3親等内の親族
②未支給年金を請求に必要な書類
未支給年金を受け取るためには、受給権者死亡届と未支給年金・未払い給付金請求書の提出が必要です。
受給権者死亡届に添付する書類は、次のとおりです。
(1)年金証書
(2)死亡の事実を明らかにできる書類
(2)死亡の事実を明らかにできる書類は、戸籍謄本、市区町村長に提出した死亡診断書のコピー、死亡届の記載事項証明書などです。
未支給年金・未払い給付金請求書に添付する書類は、次のとおりです。
(1)年金証書
(2)被相続人と請求者の続柄が分かる戸籍謄本
(3)被相続人と請求者が生計を同じくしていたことが分かる住民票と除票
(4)受け取りを希望する金融機関の通帳
(5)生計同一についての申立書(被相続人と請求者が別世帯の場合)
(2)戸籍謄本(3)住民票は、死亡日より後に発行されたものが必要です。
(2)戸籍謄本(3)住民票は、原本を返してもらうことができます。
③未支給年金は5年で時効消滅する
未支給年金を受け取るためには、請求をしなければなりません。
未支給年金を受け取る権利は、何もしないで放置すると時効で消滅します。
年金支払い日の翌月の初日から起算して5年で時効になります。
これを過ぎると、未支給年金を受け取ることができなくなります。
未支給年金を受け取る権利が亡くなる前に、請求しましょう。
④繰り下げ受給の待機中の死亡は未支給年金で請求できる
被相続人が年金の繰り下げ受給の待機中に死亡する場合があります。
年金の繰り下げ受給の待機中に死亡した場合、本人が受け取るはずだった年金を遺族が請求することができます。
65歳から死亡した月の分までの年金が、未支給年金として支給されます。
未支給年金には、待機した分の増額は反映されません。
この場合、時効の起算は65歳からです。
⑤未支給年金は受取人の所得になる
未支給年金は、法律で一定の遺族に認められた権利です。
受取人の固有の財産だから、受取人の所得になります。
受け取る金額によっては、所得税がかかります。
受け取った年の翌年3月15日までに確定申告が必要になる場合があります。
5相続放棄を司法書士に依頼するメリット
実は、相続放棄はその相続でチャンスは1回限りです。
家庭裁判所に認められない場合、即時抗告という手続を取ることはできますが、高等裁判所の手続で、2週間以内に申立てが必要になります。
家庭裁判所で認めてもらえなかった場合、即時抗告で相続放棄を認めてもらえるのは、ごく例外的な場合に限られます。
一挙にハードルが上がると言ってよいでしょう。
相続放棄は撤回ができないので、慎重に判断する必要があります。
せっかく、相続放棄が認められても、相続財産を処分した判断されたら無効になりかねません。
このような行為をしてしまわないように、予め知識を付けておく必要があります。
相続放棄を自分で手続きしたい人の中には、相続放棄が無効になることまで考えていない場合が多いです。
司法書士は、相続放棄が無効にならないようにサポートしています。
せっかく手続しても、相続放棄が無効になったら意味がありません。
相続放棄を考えている方は、司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。
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