Archive for the ‘相続放棄’ Category
相続放棄の撤回・取消・無効
1.相続放棄は撤回できない
相続放棄の撤回はできません。
撤回とは、相続放棄が受理されたときには何も問題がなかったのに、後から問題が発生したので、なかったことにすることです。
例えば、「相続財産は借金ばかりだと思っていたから相続放棄をしたのに、プラスの財産は見つかったから相続放棄はなかったことにしたい」は撤回です。
相続放棄の撤回は、認められません。
相続放棄は、相続発生を知った時から、3か月以内に手続をする必要があります。
相続放棄が認められた後、3か月以内であっても撤回することはできません。
いったん相続放棄が認められた後に、撤回することを認めると相続手続が混乱するからです。
相続放棄は一度認められると撤回できません。
相続放棄をするとどのようになるか充分に検討して慎重に判断しましょう。
2相続放棄の取下げはできる
相続放棄は、家庭裁判所に対してする手続です。
他の相続人に対して、相続財産を一切相続しないと申し入れることではありません。
相続放棄が認められるとは、家庭裁判所で手続が完了したという意味です。
通常、家庭裁判所に対して相続放棄の申述の申立書を提出してから、1~2週間ほどで照会文書が届きます。
照会文書に回答を提出した後、さらに1~2週間ほどで手続が完了します。
手続が完了する前であれば、取下げができます。
取下げを希望する場合、すぐに提出先の家庭裁判所に連絡しましょう。
手続が完了してしまうと、取下げができなくなります。
取り下げるためには書類が必要になりますが、手続を止めてもらうためにまずは電話で連絡するのがおすすめです。
3相続放棄の取消はできる
①取消とは
法律行為は、一定の事情がある場合、取消をすることができます。
取消とは、相続放棄が受理されたときに既に何か問題が起きていて、問題に気付かずに受理されてしまったので、後からなかったことにすることです。
相続放棄は法律行為なので、一定の事情があれば、取り消しができます。
取り消しができる期間は、追認できるときから6か月、相続放棄が認められてから10年です。
取り消しができるときは、相続放棄の申立てをした家庭裁判所に、取消の申立てをします。
②詐欺や強迫があった場合
詐欺とは、周囲の人から事実でない情報を聞かされてその情報を信じてしまったために相続放棄をした場合です。
本来であれば相続放棄をするつもりはなかったが、事実でない情報を信じてしまったことにより相続放棄をしたのであれば、詐欺による取消を主張することができます。
強迫とは、相続放棄をしないと危害を加えるぞと迫られていた場合です。
本当は相続を承認したいのに、危害を加えられることをおそれて相続放棄をしたのであれば、強迫による取消を主張することができます。
③錯誤があった場合
錯誤とは、相続放棄をしようという意思決定をする際に、重要なことが事実と違っていた場合です。
通常、相続放棄をしようと思って相続放棄をしていますから、重要なことが事実と違っていたには当たりません。
そのうえ錯誤があったと主張する人に重大な過失があった場合、錯誤の主張はできません。
錯誤で取消をすることは、想像以上にハードルが高いものです。
④未成年者がひとりで相続放棄をした場合
未成年者は物事のメリットデメリットを充分判断することができません。
通常、親などの親権者が未成年者の代わりに法律行為をします。
未成年者が親などの親権者の同意を得ないで相続放棄をした場合、取り消すことができます。
家庭裁判所に相続放棄の申立書を提出する場合、申立をする人の戸籍謄本を提出します。
家庭裁判所の担当者は必ず年齢を点検しますから、よほどのことがない限り、相続放棄が受理されません。
⑤成年被後見人などがひとりで相続放棄をした場合
成年被後見人とは、認知症や知的障害などで、物事のメリットデメリットを充分判断することができない人として認められた人です。
成年後見人などの保護者が成年被後見人の代わりに手続をします。
代わりにやってもらうまでもないと家庭裁判所に判断されている場合、保護者の同意を得て手続します。
成年後見人に成年後見監督人が付いている場合があります。
成年後見監督人がいる場合、成年後見監督人の同意が必要になります。
成年後見人などの保護者であっても、成年後見監督人の同意を得ずに相続放棄の手続した場合、取消を主張することができます。
4相続放棄が無効になる場合
①無効とは
無効とは、相続放棄が家庭裁判所に認められたが、実は相続放棄の要件を満たしていなかったから、なかったことになるものです。
家庭裁判所は事情が分からず書類に問題がないから、相続放棄を認めてしまったから、なかったことになるものです。
相続放棄が無効になる場合、無効にするための手続はありません。
無効の法律行為は、何もしなくても無効だからです。
例えば、債権者は相続放棄は無効だから、相続人に借金を払って欲しいと交渉することができます。
交渉で話し合いがつかなければ、相続放棄は無効だから、相続人に借金を払って欲しいと訴えを起こすことができます。
裁判の中で相続放棄は無効だと主張します。
借金を払えというか、払わなくてもいいというか裁判所が判断する過程で、相続放棄は無効がどうか裁判所が判断します。
②本人が知らないうちに相続放棄がされていた
本人に無断で、相続放棄の書類が作られて相続放棄の手続がされた場合です。
本人の意思がないので、相続放棄は無効になります。
家庭裁判所は意思確認を厳格にしていますから、相続放棄が認められるのは、めったにありません。
③相続財産を処分・利用していた場合
相続放棄をする前に単純承認をしていた場合、相続放棄はできません。
相続放棄が撤回できないように、単純承認も撤回できないからです。
相続財産を処分したり、利用した場合、単純承認をしたとみなされます。
相続財産を処分したり、利用した場合は相続放棄ができなくなります。
家庭裁判所は事情が分からず書類に問題がなければ、相続放棄を受理してしまいます。
家庭裁判所が相続放棄を受理した後でも、相続財産を処分したり、利用した場合は、無効です。
5相続放棄は詐害行為で取り消すことができない
お金を借りた人は、借りたお金を返さなければなりません。
借りたお金を返さなければならないのに、自分の財産を不当に減少させて、結果、お金を返せなくなることがあります。
自分の財産を不当に減少させたら、お金を貸した人はお金を返してもらえなくなる結果になります。
お金を貸した人が困ることを知っているのに、自分の財産を不当に減少させることを詐害行為と言います。
お金を返してもらうため、お金を貸した人は詐害行為を取り消すことができます。
相続放棄は、詐害行為にはなりません。
被相続人に莫大な借金がある場合、相続人が相続放棄をするでしょう。
相続人が相続放棄をした場合、債権者は相続放棄を詐害行為として取り消すことはできません。
被相続人が莫大なプラスの財産を残して死亡することがあります。
相続人に莫大な借金があるのに、被相続人と相続人の今までの経緯から相続放棄をすることがあります。
相続人が相続放棄をした場合、債権者は相続放棄を詐害行為として取り消すことはできません。
6相続放棄と相続放棄の取消を司法書士に依頼するメリット
実は、相続放棄はその相続でチャンスは1回限りです。
家庭裁判所に認められない場合、即時抗告という手続を取ることはできます。
高等裁判所の手続で、2週間以内に申立てが必要になります。
家庭裁判所で認めてもらえなかった場合、即時抗告で相続放棄を認めてもらえるのは、ごく例外的な場合に限られます。
一挙にハードルが上がると言ってよいでしょう。
相続放棄は撤回ができないので、慎重に判断する必要があります。
相続放棄の取消も家庭裁判所に手続が必要になります。
取消を主張するためには根拠となる証拠が必要です。
適切な主張と立証が重要になります。
相続放棄よりはるかに難易度が高い手続です。
司法書士は裁判所に提出する書類作成の専門家です。
相続放棄と相続放棄の取消を考えている方は、すみやかに司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。
兄弟姉妹の一人だけ相続放棄
1相続人になる人は法律で決まっている
相続が発生したら、親族のうち一定の範囲の人が相続人になります。
だれが相続人になるかについては、民法で決められています。
相続人になる人は次のとおりです。
①配偶者は必ず相続人になる
②被相続人に子どもがいる場合、子ども
③被相続人に子どもがいない場合、親などの直系尊属
④被相続人に子どもがいない場合で、かつ、親などの直系尊属が被相続人より先に死亡している場合、兄弟姉妹
相続人になるはずだった人が被相続人より先に死亡したため、相続人になるはずだった人の子どもや子どもの子どもが相続することがあります。
これを代襲相続と言います。
相続人になるはずだった人の子どもの子どもが相続することを再代襲相続と言います。
代襲相続ができるのは、相続人になるはずだった人の子どもなど被代襲者の直系卑属だけです。
相続人になるはずだった人を被代襲者と言います。
被代襲者の子どもなど被代襲者の直系卑属以外は代襲相続ができません。
被代襲者の配偶者も、被代襲者の親などの直系尊属も、被代襲者の兄弟姉妹も、代襲相続ができません。
2先順位の相続人全員が相続放棄をしたら
①配偶者は常に相続人になる
配偶者は必ず相続人になります。
配偶者がいてもいなくても、他の相続人の相続権には関係ありません。
配偶者が相続放棄をしても相続放棄をしなくても、他の相続人が相続人になるかならないかと関係ありません。
②子ども全員が相続放棄をした場合子どもはいないものと扱われる
被相続人に子どもがいる場合、子どもは相続人になります。
被相続人の子ども全員が相続放棄をした場合、子どもはいないものと扱われます。
子どもが相続放棄をした場合、子どもは相続しません。
子どもが相続放棄をした場合、子どもの子どもが代わりに相続することはありません。
相続放棄は、代襲相続の原因にならないからです。
代襲相続が起きるのは、子どもが被相続人より先に死亡している場合や廃除された場合、欠格の場合です。
③被相続人に子どもがいない場合親などの直系尊属が相続する
被相続人に子どもがいない場合、親などの直系尊属が相続人になります。
親などの直系尊属が被相続人より先に死亡している場合、親などの直系尊属がいない場合になります。
親などの直系尊属が被相続人より先に死亡した場合であっても、代襲相続は起きません。
被代襲者になれるのは、被相続人の子どもと兄弟姉妹だけだからです。
被相続人の親の他に祖父母がいる場合、親が相続放棄をしたら祖父母が相続人になります。
祖父母が相続人になるのは、代襲相続と関係がありません。
祖父母も直系尊属だから、相続人になります。
直系尊属が複数いる場合、親等が近い人が相続人になります。
親は1親等、祖父母は2親等です。
親が相続人になる場合、祖父母は相続人になりません。
親の方が親等が近いからです。
親が相続放棄をした場合、親は相続人でなくなります。
1親等の人がいない場合になれば、祖父母は相続人になります。
祖父母が相続放棄をする場合、親が相続放棄をしてから手続をします。
親の相続放棄が認められないうちは、祖父母は相続人でないからです。
④子どもも親などの直系尊属もいない場合兄弟姉妹が相続する
子どもも親などの直系尊属もいない場合には、最初から存在しない場合の他に相続放棄をして相続人でなくなった場合を含みます。
⑤兄弟姉妹が被相続人より先に死亡していたら兄弟姉妹の子どもが相続
子どもも親などの直系尊属もいない場合、兄弟姉妹が相続人になります。
相続人になるはずだった兄弟姉妹が被相続人より先に死亡していた場合、兄弟姉妹の子どもが相続人になります。
兄弟姉妹は被代襲者になるからです。
兄弟姉妹の子どもは、死亡した兄弟姉妹の代襲相続人として相続人になります。
3兄弟姉妹の一人だけ相続放棄ができる
①相続放棄は相続人各自が判断できる
相続放棄は、相続人ひとりひとりが自分の意思で自由に判断できるものです。
相続人は、一人だけ相続放棄をすることができます。
相続放棄をする場合、他の相続人の同意は不要です。
他の相続人が反対していても、一人だけ相続放棄をすることができます。
ときには他の兄弟姉妹が何も知らないところで相続放棄をすることがあります。
相続放棄をすることで一人だけ借金から逃れたとしても、後ろめたく思うことはありません。
②疎遠だからを理由に相続放棄をすることができる
相続放棄をすると、プラスの財産を引き継がなくなりますが、マイナスの財産も引き継ぐことがなくなります。
相続放棄の理由で多いのは、「被相続人の借金を引き継ぎたくない」です。
その他でも構いません。
「被相続人や他の相続人と疎遠で、関わりたくない」でも差し支えありません。
被相続人や他の相続人と疎遠な場合、財産状況が分からないことが多いものです。
被相続人に多額の借金があるかもしれません。
被相続人に借金がなくても、第三者の連帯保証人になっているかもしれません。
連帯保証人の地位は、相続の対象になります。
借金や連帯保証人の地位を相続する心配がある場合、安全のため相続放棄をすることができます。
③相続放棄3か月のスタートは知ってから
相続放棄は、原則として、相続があったことを知ってから3か月以内に届出をする必要があります。
相続があったことを知ってからとは、必ずしも、被相続人の死亡してからではありません。
被相続人が死亡した後3か月以上経過してから、相続放棄の届出をして、認められることもあります。
相続放棄ができる3か月以内のスタートは、相続があったことを知ってからだからです。
相続があったことを知らなかった場合、相続放棄ができる3か月がスタートしていません。
相続放棄の届出をしてから、家庭裁判所が相続放棄を認める通知が届くまでおよそ1か月程度かかります。
親などの直系尊属は先順位の子ども全員が相続放棄するまで、相続放棄の届出はできません。
相続放棄の期限3か月が過ぎてしまうのではないかと気が気でないかもしれません。
先順位の子ども全員が相続放棄をしたことを知って自分が相続人であることを知ります。
相続放棄の期限3か月のスタートは知ってからだから、知ってから3か月以内であれば手続をすることができます。
第三順位の兄弟姉妹も同じことです。
第三順位の兄弟姉妹は自分が相続人であることを知るのは、子ども全員が相続放棄をして、次順位の親などの直系尊属全員が相続放棄をした後です。
第三順位の兄弟姉妹は、被相続人が死亡してから3か月以上経過してから自分が相続人であることを知ることになるかもしれません。
相続放棄の期限3か月のスタートは知ってからだから、知ってから3か月以内であれば手続をすることができます。
このポイントは、相続が発生してから3か月以内に届出ができなかったのは止むを得なかったと家庭裁判所に納得してもらうことです。
3か月届出ができなかったのは仕方なかったと家庭裁判所が納得できる理由があるときだけは、家庭裁判所も相続放棄を認めてくれるのです。
債権者や市役所などから手紙が来て相続があったことを知った場合、この通知は大切です。
この手紙を見て相続があったことを知ったという証拠になるからです。
4兄弟姉妹が相続放棄をする場合は提出書類がたくさんになる
相続放棄を希望する場合、必要書類を準備して家庭裁判所に申立てをします。
家庭裁判所に提出する申立書のことを相続放棄申述書と言います。
相続放棄申述書に添付する必要書類のうち、次の書類は相続放棄をする人全員共通で必要です。
(1)被相続人の除票
(2)相続放棄する人の戸籍謄本(3か月以内のもの)
(3)収入印紙
(4)裁判所が手続で使う郵便切手
(1)~(4)の書類の他に戸籍謄本が必要です。
必要な戸籍謄本は、被相続人から見てどのような関係の相続人であるかによって異なります。
兄弟姉妹が相続放棄をする場合、必要な戸籍謄本がたくさんになります。
相続放棄ができるのは先順位の相続人がいない場合だけだからです。
兄弟姉妹が相続人になるのは、被相続人に子どもがいない場合で、かつ、親などの直系尊属がいない場合です。
相続人でなければ、相続放棄はできません。
相続放棄をするためには、相続人であることを証明する必要があります。
被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本が必要です。
被相続人に子どもがいないことを証明するためです。
子どもがいても死亡している場合、死亡した子どもの戸籍も必要です。
死亡した子どもの出生から死亡までの連続した戸籍謄本を準備します。
相続人になるはずだった人の子どもは、代襲相続人になるからです。
子ども全員が相続放棄をした場合、事件番号を伝えれば家庭裁判所で調べてもらえます。
親などの直系尊属がいないことを証明するため、親などの直系尊属の戸籍も必要になります。
兄弟姉妹が相続放棄をする場合、これらの戸籍をすべて提出しなければなりません。
5相続放棄を司法書士に依頼するメリット
相続放棄は、プラスの財産もマイナスの財産も引き継ぎませんという裁判所に対する申立てです。
相続人らとのお話合いで、プラスの財産を相続しませんと申し入れをすることではありません。
つまり、家庭裁判所で認められないとマイナスの財産を引き継がなくて済むというメリットは受けられないのです。
実は、相続放棄はその相続でチャンスは実質的には1回限りです。
家庭裁判所に認められない場合、即時抗告という手続を取ることはできますが、高等裁判所の手続で、2週間以内に申立てが必要になります。
家庭裁判所で認めてもらえなかった場合、即時抗告で相続放棄を認めてもらえるのは、ごく例外的な場合に限られます
一挙にハードルが上がると言ってよいでしょう。
相続放棄は慎重に判断する必要がありますが、いろいろな誤解から利用をためらう人が多いのも事実です。
利用をためらっていると3か月はあっという間です。
相続が発生すると、家族は親戚や知人へ連絡などで悲しみに浸る暇もないくらい忙しくなります。
3か月以内に必要書類を揃えて手続をするのは想像以上にハードルが高いものです。
相続放棄を考えている方はすみやかに司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。
相続放棄の確認方法
1相続放棄を認めたら家庭裁判所は相続放棄申述受理通知書を送る
①家庭裁判所は本人にだけ通知する
被相続人が多額の借金を残して死亡したとき、相続人は相続放棄をするでしょう。
家庭裁判所が相続放棄を認めた場合、本人に相続放棄申述受理通知書を送ります。
家庭裁判所は自主的に他の人に通知しません。
②相続放棄をしても次順位の相続人に通知されない
家庭裁判所が相続放棄を認めた場合、本人に相続放棄申述受理通知書を送ります。
家庭裁判所は自主的に次順位の相続人に通知しません。
例えば、被相続人の子どもが相続放棄をする場合、次の書類を提出します。
(1)被相続人の除票
(2)相続放棄する人の戸籍謄本(3か月以内のもの)
(3)収入印紙
(4)裁判所が手続で使う郵便切手
(5)被相続人の死亡の記載がある戸籍謄本
被相続人の戸籍謄本は、死亡の記載があるもののみ提出します。
家庭裁判所は、被相続人に子どもが何人いるのか分かりません。
次順位の相続人がだれなのか分かりません。
他に子どもがいるのかいないのか分からないから、家庭裁判所は通知できません。
次順位の相続人がだれなのか家庭裁判所が自発的に調査することもありません。
③相続放棄をしても次順位の相続人に通知する義務はない
相続放棄をすると相続人でなくなります。
相続放棄をして相続人でなくなったことを他の相続人に知らせる義務はありません。
相続人同士が疎遠な場合、他の相続人の連絡先を知らないことがあります。
相続財産の分け方を決める話し合いにも参加する必要はありません。
相続財産の分け方は、相続人全員の合意が不可欠です。
相続放棄をしたのか相続を承認したのかはっきりしないと、他の相続人はとても困ります。
相続人全員の合意がないと、相続財産の分け方を決めることができないからです。
④相続放棄をしても債権者に通知されない
家庭裁判所が相続放棄を認めた場合、本人に相続放棄申述受理通知書を送ります。
家庭裁判所は自主的に債権者に通知しません。
相続放棄で提出する書類は、先に説明したとおりです。
提出書類には、債権者名簿など債権者がだれなのか分かるような書類はありません。
家庭裁判所は、債権者がだれなのか分かりません。
債権者がだれなのか分からないから、家庭裁判所は通知できません。
債権者がだれなのか家庭裁判所が自発的に調査することもありません。
⑤相続放棄をしても債権者に通知する義務はない
相続放棄をすると相続人でなくなります。
相続放棄をして相続人でなくなったことを債権者に知らせる義務はありません。
被相続人があちこちから借金をしていた場合、相続人が借入先を把握しきれないことがあります。
借入先をすべて調査するまでもなく明らかに莫大な借金がある場合、相続放棄を決断します。
相続放棄をしたのか相続を承認したのかはっきりしないと、債権者はとても困ります。
だれに被相続人の借金の返済を求めればいいか分からないからです。
⑥相続放棄をしても戸籍に記載されない
家庭裁判所が相続放棄を認めた場合、本人に相続放棄申述受理通知書を送ります。
家庭裁判所は自主的に市区町村役場に通知しません。
相続放棄をしたら市区町村役場に届出をするルールはありません。
市区町村役場には、だれが相続放棄をしたのか単純承認をしたのか情報がありません。
相続放棄をした場合、戸籍に記載されることはありません。
2相続放棄申述受理証明書を発行してもらうことができる
①相続放棄申述受理証明書を発行してもらうには申請が必要
家庭裁判所は相続放棄を認めた場合、本人にだけ通知をします。
債権者や他の相続人などに、自発的に連絡することはありません。
債権者などに見せるため、家庭裁判所で相続放棄を認めてもらったことを証明してもらうことができます。
相続放棄申述受理証明書は、自動的に送られることはありません。
家庭裁判所に対して、手数料を払って証明書を作ってくださいと申請する必要があります。
相続放棄申述受理証明申請書は、家庭裁判所のホームページからダウンロードすることができます。
家庭裁判所によっては、相続放棄申述受理通知書と一緒に、送られてくることもあります。
手数料を払って手続をすれば何枚でも発行してくれるし、再発行もしてくれます。
②相続放棄をした本人が申請する場合
相続放棄申述受理証明申請書に添付する書類は、次のとおりです。
(1)本人確認書類 (運転免許証やマイナンバーカード) のコピー
相続放棄申述受理証明申請の手数料は1通につき、150円です。
手数料は、申請書に収入印紙を貼り付けて納付します。
収入印紙は家庭裁判所で消印を押します。
申請する人は、貼り付けるだけで消印は押しません。
相続放棄申述受理証明申請書は、家庭裁判所まで出向いて提出することもできるし、郵送で提出することもできます。
返信用の封筒に住所と宛名を記載して、郵便切手を一緒に提出すると、郵便で送り返してくれます。
③他の相続人が申請する場合
相続放棄申述受理証明申請書に添付する書類は、次のとおりです。
(1)本人確認書類 (運転免許証やマイナンバーカード) のコピー
(2)被相続人死亡の記載のある戸籍謄本
(3)申請する人の戸籍謄本
手数料は本人が申請する場合と一緒です。
(2)と(3)の戸籍謄本は多くの場合、希望すれば原本還付してくれます。
家庭裁判所によっては、最初からコピーを提出するだけでよい場合もあります。
すでに相続放棄をした人が、同じ被相続人について、相続放棄した他の人の相続放棄申述受理証明申請をすることはできません。
すでに相続放棄をした人は、相続人でなくなります。
相続人でないから、他の相続人が相続放棄をしていても相続放棄をしていなくても関係ありません。
利害関係がない人は、相続放棄申述受理証明申請をすることができないからです。
各自、相続放棄申述受理証明申請をしましょう。
④債権者が申請する場合
相続放棄申述受理証明申請書に添付する書類は、次のとおりです。
(1)本人確認書類 (運転免許証やマイナンバーカード) のコピー
(2)被相続人死亡の記載のある戸籍謄本
(3)金銭消費貸借契約などの債権者であることが分かる書類
(4)法人の場合、資格証明書
相続放棄申述受理証明申請をしてから、証明書が送られるまでに半月から1か月ほどかかります。
3相続放棄申述の有無の照会ができる
相続放棄申述受理証明申請書には、事件番号や受理年月日の記載が必要です。
事件番号や受理年月日は、相続放棄申述受理通知書に記載されています。
相続放棄をした相続人の協力が得られるのであれば、相続放棄申述受理通知書を見せてもらうといいでしょう。
今までの関係性から話しにくいことがあります。
相続放棄をしたかどうかを家庭裁判所に質問することができます。
相続放棄をしたかどうかを家庭裁判所に質問する制度のことを、相続放棄申述の有無の照会と言います。
事件番号や受理年月日が分からない場合、相続放棄申述の有無の照会をすると回答してもらえます。
相続放棄申述の有無の照会をする先の家庭裁判所は、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です。
家庭裁判所の管轄は裁判所のホームページで調べることができます。
相続放棄申述の有無の照会ができるのは、次の人です。
①同順位や次順位の相続人
②被相続人の債権者などの利害関係人
相続放棄申述の有無の照会申請書に添付する書類は、次のとおりです。
①被相続人死亡の戸籍謄本
②被相続人死亡の住民票か戸籍の附票
③照会者の身分証明書
④照会者が相続人の場合、相続人の戸籍謄本
⑤照会者が債権者などの場合、借用書や契約書
相続放棄申述の有無の照会申請書は、直接、出向いて提出してもいいし、郵便で送っても差し支えありません。
届出の書き方や提出書類が心配な方は、出向いて裁判所の受付で目を通してもらうと安心です。
返信用の封筒と切手を同封しておくと、郵送で回答してもらえます。
相続放棄申述の有無の照会に手数料はかかりません。
相続放棄申述の有無の照会申請書を提出してから、回答がされるまでにはおおむね半月ほどかかります。
照会の対象となる期間は、家庭裁判所によって異なります。
多くの家庭裁判所では、被相続人の死亡後3か月、先順位の相続人が相続放棄を認められてから3か月です。
ときには被相続人の死亡後長期間経過してから、相続があったことを知る場合があります。
相続があったことを知ってから3か月以内であれば相続放棄の申立てをすることができるはずです。
家庭裁判所によっては、熟慮期間経過後に相続放棄の申立てをしていた人が見落とされる可能性があります。
4自分が相続人であることが判明したら
①知ってから3か月以内は相続放棄ができる
相続放棄申述の有無の照会で、先順位の相続人が相続放棄をしたことが判明する場合があります。
相続放棄を希望する場合、家庭裁判所に対して相続放棄の申立てをしなければなりません。
この届出の期限は、原則として、相続があったことを知ってから3か月以内です。
「相続があったことを知ってから」とは、被相続人が死亡して相続が発生し、その人が相続人であることを知って、かつ、相続財産を相続することを知ってから、と考えられています。
3か月以内に戸籍や住民票などの必要書類を揃えて管轄の家庭裁判所に提出しなければなりません。
②単純承認をするなら相続手続をする
単純承認をする場合、相続手続をすることになります。
遺言書がない場合、相続財産の分け方は相続人全員の合意が必要です。
他の相続人と協力して相続手続を進める必要があります。
5相続放棄申述受理証明申請を司法書士に依頼するメリット
相続放棄が家庭裁判所で認められると、家庭裁判所から相続放棄申述受理通知書が届きます。
家庭裁判所は相続放棄を認めた場合、本人に通知をします。
自主的に他の相続人や債権者などに連絡することはありません。
役所や法務局なども例外ではありません。
相続放棄をした人がいる場合、相続放棄をしたので相続人ではありませんと証明する必要があります。
相続放棄申述受理通知書で足りる場合がほとんどですが、時々、相続放棄申述受理証明書が必要になります。
司法書士は、このような家庭裁判所に対する書類作成もサポートしております。
相続放棄や相続放棄申述受理証明書でお困りの方は、司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。
失踪宣告がされてから相続放棄
1失踪宣告とは
①失踪宣告がされると行方不明の人は死亡と見なされる
相当長期間、行方不明になっている場合、死亡している可能性が高い場合があります。
条件を満たした場合、死亡の取り扱いをすることができます。
失踪宣告とは、行方不明の人が死亡した取り扱いとするための手続です。
失踪宣告がされたら、たとえ死亡していなくても死亡した取り扱いをします。
死亡した取り扱いをしますから、失踪宣告がされた人に相続が発生します。
失踪宣告には、普通失踪と特別失踪の2種類があります。
②普通失踪とは
普通失踪とは、行方不明の人について7年間生死不明の場合、申立てができるものです。
普通失踪の申立てをした場合、失踪宣告がされるまでおよそ3か月以上かかります。
家庭裁判所の状況や事件の内容によっては、1年ほどかかる場合もあります。
生死不明になってから7年間経過したときに、死亡したものと見なされます。
③特別失踪(危難失踪)とは
特別失踪とは、「戦地に行った者」「沈没した船舶に乗っていた者」「その他死亡の原因となる災難に遭遇した者」を対象にする失踪宣告です。
危難が去ってから1年間生死不明の場合、申立てができます。
特別失踪の申立てをした場合、失踪宣告がされるまでおよそ1か月以上かかります。
危難が去ったときに、死亡したものと見なされます。
④失踪宣告後生きていることが分かったら失踪宣告の取消
失踪宣告とは、行方不明の人が死亡した取り扱いとするための手続です。
失踪宣告がされたら、たとえ生きていても死亡した取り扱いがされます。
行方不明の人に失踪宣告がされた後、本人が帰ってくることがあります。
失踪宣告がされた後、生きていることが分かった場合、失踪宣告を取り消してもらいます。
失踪宣告した日と違う日に死亡していたことが判明する場合があります。
失踪宣告がされた後、失踪宣告した日と違う日に死亡していたことが分かった場合、失踪宣告を取り消してもらいます。
失踪宣告をするときも失踪宣告を取り消すときも、家庭裁判所の関与が必要です。
失踪宣告は、死亡したと扱う重大な手続だからです。
2失踪宣告がされると相続が開始する
失踪宣告されたら、行方不明の人は死亡した取り扱いをします。
失踪宣告された人は、死亡した取り扱いなので相続が開始します。
失踪宣告された人を被相続人として相続手続をします。
相続が発生した日は、失踪宣告の申立てをした日ではありません。
失踪宣告で死亡と見なされた日です。
普通失踪では、生死不明になってから7年間経過したときに、死亡したものと見なされます。
特別失踪では、危難が去ったときに、死亡したものと見なされます。
生死不明になってから相当長期間経過した後に失踪宣告の申立てをすることがあります。
失踪宣告の申立てをしてから失踪宣告の審判が確定するまでに、およそ1年程度かかります。
だれが相続人になるのかよく確認することが重要です。
3行方不明のままでは相続放棄ができない
家族が莫大な借金を抱えたまま音信不通になることがあります。
莫大な借金を抱えて行方不明になった場合、いつか自分が借金を引き継いでしまうのではないか不安になるかもしれません。
行方不明の人に莫大な借金があったとしても、家族が相続放棄をすることはできません。
行方不明の人は、生きていると判断されるからです。
相続放棄をすることができるのは、相続人だけです。
行方不明であるだけで生きているから、相続が発生していません。
家庭裁判所に相続放棄の申立てを提出しても、受け付けてもらえません。
被相続人の生前に相続放棄をすることはできないからです。
4失踪宣告がされたら相続放棄ができる
①失踪宣告の審判の確定証明書を取得する
失踪宣告の審判がされたら、家庭裁判所から審判書謄本が届きます。
審判書が届いても、審判が確定するわけではありません。
失踪宣告の審判がされた後、2週間は不服を言う人が現れるかもしれないからです。
なにごともなく2週間経過すると失踪宣告の審判は確定します。
確定しても何も連絡はありません。
2週間経過後に家庭裁判所に申請をすれば、確定証明書を取得することができます。
②失踪宣告の審判が確定したら市区町村役場に失踪届
失踪宣告の審判が確定した後、家庭裁判所から市区町村役場にも連絡がされることはありません。
審判が確定した後、審判書謄本と確定証明書を添えて10日以内に市区町村役場に届出が必要です。
市区町村役場に届出をして、はじめて戸籍に記載がされます。
相続放棄の手続では、失踪宣告の記載のある戸籍が必要になりますから、届出をしないと手続が進まなくなります。
③相続放棄の期限3か月のスタートは知ってから
相続放棄の申立ての期限は、原則として、相続があったことを知ってから3か月以内です。
「相続があったことを知ってから」とは、被相続人が死亡して相続が発生し、その人が相続人であることを知って、かつ、相続財産を相続することを知ってから、と考えられています。
被相続人に失踪宣告がされたため相続が開始した場合、相続が開始した日は死亡と見なされた日です。
死亡と見なされた日に相続があったことを知ることはないでしょう。
普通失踪では、生死不明になってから7年間経過したときに、死亡したものと見なされます。
失踪宣告の申立ては、生死不明になってから相当長期間経過した後に出されることが多いです。
生死不明になってから10年以上経過してから失踪宣告の申立てが出された場合、生死不明になってから7年間経過したときに死亡したものと見なされます。
失踪宣告の申立をした人には、失踪宣告の審判書謄本が届きます。
失踪宣告の審判書謄本が届いても、相続があったことを知ったとは言えません。
失踪宣告の審判がされた後、2週間は不服を言う人が現れるかもしれないからです。
なにごともなく2週間経過すると失踪宣告の審判は確定します。
失踪宣告の審判が確定して、はじめて、相続があったことを知ったとは言えます。
相続があったことを知った時から、相続放棄の期限3か月がスタートします。
他の相続人は、失踪宣告の申立てをした人から失踪宣告があったことを聞くことになるでしょう。
時には戸籍謄本の記載を見て失踪宣告があったことを知るかもしれません。
失踪宣告があったことを知った時から、相続放棄の期限3か月がスタートします。
5認定死亡がされたときも相続放棄ができる
①認定死亡とは
人が死亡した場合、通常、医師が死亡の確認をします。
海難事故や震災などで死亡は確実であっても遺体を確認できない場合があります。
遺体が見つからない場合、医師が死亡の確認をすることができません。
海難事故や震災などで死亡が確実の場合、行政機関が市町村長に対して死亡の報告をします。
死亡の報告によって死亡が認定され、戸籍に記載がされます。
行政機関が市町村長に対して死亡の報告をしたら、戸籍上も死亡と扱う制度が認定死亡です。
事実上、死亡の推定が認められます。
認定死亡により、相続が開始します。
②認定死亡がされたときは相続が開始する
認定死亡の場合、死亡が確実であっても死亡日が分からないことがほとんどです。
推定令和○年○月○日死亡
推定令和○年○月○日頃死亡
令和○年○月○日から同月○日の間死亡
年月日不詳
戸籍を確認した場合に、上記のような記載がされている場合があります。
このような記載であっても、相続が開始しますから相続手続をすることができます。
相続放棄の申立てをする場合も、戸籍のとおり記載すれば構いません。
6生死不明の相続人がいる相続を司法書士に依頼するメリット
相続が発生した後、相続手続を進めたいのに行方不明の相続人や長期間行方不明で生死不明の相続人がいて困っている人はたくさんいます。
自分たちで手続しようとして挫折する方も少なくありません。
失踪宣告の申立など家庭裁判所に手続きが必要になる場合など通常ではあまり聞かない手続になると専門家のサポートが必要になることが多いでしょう。
信託銀行などは、高額な手数料で相続手続を代行しています。
被相続人が生前、相続人のためを思って、高額な費用を払っておいても、信託銀行はこのような手間のかかる手続を投げ出して知識のない遺族を困らせます。
知識のない相続人が困らないように高額でも費用を払ってくれたはずなのに、これでは意味がありません。
税金の専門家なども対応できず、困っている遺族はどうしていいか分からないまま途方に暮れてしまいます。
裁判所に提出する書類作成は司法書士の専門分野です。
途方に暮れた相続人をサポートして相続手続を進めることができます。
自分たちでやってみて挫折した方も、信託銀行などから丸投げされた方も、相続手続で不安がある方は司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。
相続放棄しても債権者に通知義務はない
1家庭裁判所は本人にだけ通知する
被相続人が多額の借金を残して死亡したとき、相続人は相続放棄をするでしょう。
分かっている借入先だけでも相続人が返せる額ではない、あちこちから借りていたので、他からも借りているだろう、借入先を把握し切れないという場合があります。
相続放棄の申立をすると、借入先から何か言われるのではないかと心配する人がたくさんいます。
相続放棄の申立をすると、何かしら不利益を受けるのではないかと心配する人がたくさんいます。
被相続人の借金だけでも大変なのに、自分や家族が将来に渡って困ることがあるのではないかと不安になっている場合です。
家庭裁判所に相続放棄の手続をしても、だれかに通知する義務はありません。
相続放棄の申立を提出しても、家庭裁判所からだれかに通知されることはありません。
相続放棄が認められた後、家庭裁判所は申立てをした人に結果を通知する義務があります。
家庭裁判所がわざわざ他の人に通知する義務は、ありません。
裁判所の掲示板に貼りだすことはありません。
家庭裁判所に相続放棄の申立をしても、通常は、だれにも知られることはないのです。
債権者などの利害関係人は、家庭裁判所に対して相続放棄をしているか照会することができます。
家庭裁判所が通知するのは、わざわざ照会があったときのみです。
2相続放棄をしても債権者に通知する義務はない
相続放棄の手続は、家庭裁判所に対して必要書類を添えて相続放棄の申立てを提出します。
相続放棄の申立てに必要な書類は、次のとおりです。
①被相続人の戸籍謄本
②被相続人の除票
③相続放棄する人の戸籍謄本
この他に、裁判所が使う郵便切手や収入印紙が必要です。
債権者の同意書や債権者に通知したことの証明書などはありません。
家庭裁判所は、提出された書類を見て審査をします。
相続放棄の審査をするにあたって、被相続人の債権者が相続放棄を知っているのか知らないのかは関係ありません。
提出された書類を見て、必要な書類が揃っているか提出された戸籍や住民票に矛盾したことはないか点検をします。
家庭裁判所は、債権者がだれであるのか債権者が相続放棄の申立てについて知っているのかについて、関心がありません。
債権者について、家庭裁判所が独自で調査することはありません。
家庭裁判所も相続放棄をした人も、債権者に相続放棄をしたことを通知する義務はありません。
債権者に相続放棄をしたことを通知しなかった場合、ペナルティーはありません。
ほとんどの場合、気付かないうちに相続放棄の手続をしていて、知らないうちに相続放棄が認められていた、となります。
債権者は、借主の戸籍や住民票を取り寄せることができます。
債権者は借金を返して欲しいので、相続人を調べて連絡してきます。
相続放棄について何も知らないから、債権者は被相続人の借金を相続人に払ってもらいたいと考えて催促をしてきます。
催促されたら相続放棄が認められたことを知らせてあげるといいでしょう。
ほとんどの場合、相続放棄申述受理通知書のコピーを渡せば催促をやめてくれます。
わざわざ債権者を調査して、相続放棄が認められたことを知らせる義務はありません。
借金の返済を催促されてから、対応すればいいでしょう。
相続放棄申述受理通知書を紛失してしまった場合、相続放棄申述受理証明書を家庭裁判所に作ってもらうことができます。
相続放棄申述受理証明書は、債権者が家庭裁判所に請求することもできます。
3債権者は相続放棄をしたか確認することができる
相続放棄の申立てをしても相続放棄が認められても、家庭裁判所は申立てをした人にだけ通知します。
相続放棄をした人は、相続放棄をしたことを債権者に通知する義務はありません。
相続放棄をした人が通知してくれなくても、債権者は困ることがありません。
債権者は、家庭裁判所に対して相続放棄をしたか確認することができます。
相続放棄をしたかどうかを家庭裁判所に質問する制度のことを、相続放棄申述の有無の照会と言います。
債権者は、借用書や契約書を提出して照会します。
返信用の封筒と切手を同封しておくと、郵送で回答してもらえます。
相続放棄申述の有無の照会に手数料はかかりません。
相続放棄申述の有無の照会申請書を提出してから、回答がされるまでにはおおむね半月ほどかかります。
4債権者は相続放棄の無効を主張することができる
相続放棄申述受理通知書を見せても、被相続人の借金の取立が続く場合があります。
債権者が相続放棄は無効だと主張している場合です。
相続放棄が無効になる場合、無効にするための手続はありません。
無効の法律行為は、何もしなくても無効だからです。
例えば、債権者は相続放棄は無効だから、相続人に借金を払って欲しいと交渉することができます。
相続放棄は、家庭裁判所の書類審査だけで認められます。
相続放棄の要件をきちんと満たしているか、家庭裁判所が独自で調査することはありません。
相続放棄の要件を満たしていないのに、相続放棄の書類がきちんと揃っている場合、家庭裁判所は事情が分からず、相続放棄を認めてしまいます。
債権者は裁判所の決定に不服があれば、相続放棄は無効だから、相続人に借金を払って欲しいと訴えを起こすことができます。
債権者が相続放棄は無効だと主張して、裁判所に訴えを起こしたら、裁判所から訴状が届きます。
裁判所から訴状が届いたら、すぐに専門家に相談することをおすすめします。
たとえ債権者が不適切なことを主張している場合でも、適切に主張と立証をしないと裁判で負けてしまうからです。
裁判に欠席すると、相手方の言い分を全面的に認めたことになってしまいます。
裁判に負けると、払う必要のない借金を払うことになります。
債権者が不適切なことを言っているからと思っても絶対に放置してはいけません。
適切に相続放棄をしたことを、裁判所の法廷で、裁判官に分かってもらう必要があるのです。
5相続放棄が無効になる場合
①本人が知らないうちに相続放棄がされていた
本人に無断で、相続放棄の書類が作られて相続放棄の手続きがされた場合です。
本人の意思がないので、相続放棄は無効になります。
家庭裁判所は意思確認を厳格にしていますから、相続放棄が認められるのは、めったにありません。
②相続財産を処分・利用していた場合
相続放棄をする前に単純承認をしていた場合、相続放棄はできません。
相続放棄が撤回できないように、単純承認も撤回できないからです。
相続財産を処分したり、利用した場合、単純承認をしたとみなされます。
相続財産を処分したり、利用した場合は相続放棄ができなくなります。
家庭裁判所は事情が分からず書類に問題がなければ、相続放棄を受理してしまいます。
家庭裁判所が相続放棄を受理した後でも、相続財産を処分したり利用した場合は、無効です。
6相続放棄を司法書士に依頼するメリット
実は、相続放棄はその相続でチャンスは1回限りです。
家庭裁判所に認められない場合、即時抗告という手続を取ることはできますが、高等裁判所の手続で、2週間以内に申立てが必要になります。
家庭裁判所で認めてもらえなかった場合、即時抗告で相続放棄を認めてもらえるのは、ごく例外的な場合に限られます。
一挙にハードルが上がると言ってよいでしょう。
相続人の関係性が良くない場合や疎遠な場合、相続放棄をしたことを知らせてあげた方がいいと思っていても先延ばししがちです。
ほとんどの場合、次順位の相続人が相続人になったのを知るのは相続発生から3か月以上経過しています。
相続発生から3か月以上経っている場合、相続放棄の申立は、原則として認められません。
相続が発生してから3か月以内に届出ができなかったのは止むを得なかったと家庭裁判所に納得してもらって、はじめて、家庭裁判所は相続放棄を認めてくれます。
通常は家庭裁判所に対して、上申書や事情説明書という書類を添えて、説得することになります。
司法書士であれば、家庭裁判所に認めてもらえるポイントを承知していますから、認めてもらいやすい書類を作成することができます。
3か月の期限が差し迫っている方や期限が過ぎてしまっている方は、すみやかに司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。
相続放棄しても次順位相続人に通知義務はない
1相続放棄とは
相続が発生したら、原則として、被相続人のプラスの財産もマイナスの財産も相続人が受け継ぎます。
被相続人のプラスの財産もマイナスの財産も受け継がないことを相続の放棄といいます。
相続放棄をすると、プラスの財産を引き継がなくなりますが、マイナスの財産も引き継ぐことがなくなります。
だから、被相続人が莫大な借金を負っていた場合でも、一切借金の返済をする必要がなくなります。
被相続人が返済を滞らせていて遅延損害金が発生していた場合であっても、遅延損害金も払う必要はありません。
相続放棄をするとマイナスの財産すべて受け継ぐことがなくなります。
仮に自己破産した場合、借金は免除されますが、滞納していた税金は免除されません。
相続放棄では、被相続人が滞納していた税金すら受け継ぐことがなくなります。
自己破産と比べても、相続放棄は強力な効果があります。
2相続放棄をしても次順位相続人に通知する義務はない

相続放棄をすると相続人でなくなります。
例えば、相続人が配偶者と子どもである場合、子ども全員が相続放棄をしたら子どもはいないものとして扱われます。
子どもがいない場合、次順位の相続人は親などの直系尊属になります。
子どもがいる場合、親などの直系尊属は相続人になりません。
子ども全員が相続放棄をした場合、子どもがいないものとして扱われるから、親などの直系尊属が相続人になります。
相続放棄の手続は、家庭裁判所に対して、必要な書類をを添えて相続放棄をしたい旨の届出をします。
家庭裁判所が相続放棄を認めた場合、相続放棄申述受理通知書が届きます。
家庭裁判所は、相続放棄をしたい旨の届出をした人にだけ、相続放棄申述受理通知書を送ります。
家庭裁判所から、他の人に連絡してくれることはありません。
被相続人に莫大な借金がある場合、相続人になったら相続放棄をしたいと考えるでしょう。
先順位の相続人がいる場合、次順位の人は相続人ではありません。
次順位の人は、先順位の相続人全員が相続放棄をするまで、相続放棄の手続ができません。
被相続人の莫大な借金を相続してしまうのではないか、不安な日々を送ることになります。
先順位の相続人が自主的に相続放棄したことを知らせてくれるといいのですが、次順位の相続人に知らせる義務はありません。
疎遠な相続人は、知らせてくれないことが多いものです。
疎遠な相続人は、次順位の相続人に対して連絡する手段がないかもしれません。
親戚と関わりたくないと思って相続放棄をした場合、相続放棄をしたことを通知することもしたくないと思うでしょう。
3家庭裁判所から次順位相続人に通知されない
①家庭裁判所は次順位相続人を知らない
家庭裁判所が相続放棄を認めた場合、相続放棄申述受理通知書が届きます。
相続放棄申述受理通知書が届くのは、相続放棄をしたい旨の届出をした人にだけです。
相続放棄の手続は、家庭裁判所に対して必要書類を添えて相続放棄の申立てを提出します。
相続放棄の申立てに必要な書類は、次のとおりです。
(1)被相続人の戸籍謄本
(2)被相続人の除票
(3)相続放棄する人の戸籍謄本
この他に、裁判所が使う郵便切手や収入印紙が必要です。
家庭裁判所は、提出された書類を見て審査をします。
家庭裁判所は、だれが次順位相続人であるのか知りません。
家庭裁判所は、だれが次順位相続人であるのか自主的に調査をすることはありません。
家庭裁判所は、次順位相続人について関心はありません。
②家庭裁判所は次順位相続人に通知しない
家庭裁判所は、相続放棄をしたい旨の届出をした人に対してだけ相続放棄申述受理通知書を送ります。
家庭裁判所から、次順位相続人に連絡してくれることはありません。
家庭裁判所は、だれが次順位相続人であるのか知らないから通知することができません。
家庭裁判所は、次順位相続人に自主的に通知することはありません。
③次順位相続人は相続放棄申述の有無の照会ができる
先順位の相続人がいる場合、次順位の人は相続人ではありません。
次順位の人は、先順位の相続人全員が相続放棄をするまで、相続放棄の手続ができません。
被相続人の莫大な借金を相続してしまうのではないか、不安な日々を送ることになります。
相続放棄をしたかどうかを家庭裁判所に質問することができます。
相続放棄をしたかどうかを家庭裁判所に質問する制度のことを、相続放棄申述の有無の照会と言います。
次順位相続人は、相続放棄申述の有無の照会をすることができます。
相続放棄申述の有無の照会をする先の家庭裁判所は、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です。
家庭裁判所の管轄は裁判所のホームページで調べることができます。
相続放棄申述の有無の照会に手数料はかかりません。
家庭裁判所に対して、相続放棄申述の有無の照会をすることで先順位相続人が相続放棄をしたか相続放棄をしていないのか確認することができます。
先順位の相続人全員が相続放棄をしている場合で、かつ、自分も相続放棄をしたいのであれば、すぐに手続きをしましょう。
4次順位相続人の相続放棄3か月のスタートは知ってから
相続放棄は、原則として、相続があったことを知ってから3か月以内に届出をする必要があります。
相続があったことを知ってからとは、必ずしも、被相続人の死亡してからではありません。
被相続人が死亡した後3か月以上経過してから、相続放棄の届出をして、認められることもあります。
相続放棄ができる3か月以内のスタートは、相続があったことを知ってからだからです。
相続があったことを知らなかった場合、相続放棄ができる3か月がスタートしていません。
先順位相続人が相続放棄をしたことによって相続人になる場合、相続放棄が認められるまで相続人ではありません。
先順位相続人が相続放棄をしたことを知らなかった場合、相続があったことを知らなかったと言えます。
先順位相続人や他の相続人と疎遠な場合、長期間相続放棄をしたことを知らないことがあるでしょう。
先順位相続人が相続放棄をして長期間経過した後、相続があったことを知った場合、知ってから3か月以内であれば相続放棄は認められます。
このポイントは、相続が発生してから3か月以内に届出ができなかったのは止むを得なかったと家庭裁判所に納得してもらうことです。
3か月届出ができなかったのは仕方なかったと家庭裁判所が納得できる理由があるときだけは、家庭裁判所も相続放棄を認めてくれるのです。
債権者や市役所などから手紙が来て相続があったことを知った場合、この通知は大切です。
この手紙を見て相続があったことを知ったという証拠になるからです。
5期限を過ぎた相続放棄を司法書士に依頼するメリット
実は、相続放棄はその相続でチャンスは1回限りです。
家庭裁判所に認められない場合、即時抗告という手続を取ることはできますが、高等裁判所の手続で、2週間以内に申立てが必要になります。
家庭裁判所で認めてもらえなかった場合、即時抗告で相続放棄を認めてもらえるのは、ごく例外的な場合に限られます。
一挙にハードルが上がると言ってよいでしょう。
相続が発生してから3か月以内に届出ができなかったのは止むを得なかったと家庭裁判所に納得してもらって、はじめて、家庭裁判所は相続放棄を認めてくれます。
通常は家庭裁判所に対して、上申書や事情説明書という書類を添えて、説得することになります。家庭裁判所が知りたいことを無視した作文やダラダラとした作文では認めてもらうことは難しいでしょう。
司法書士であれば、家庭裁判所に認めてもらえるポイントを承知していますから、認めてもらいやすい書類を作成することができます。
さらに、通常の相続放棄と同様に戸籍や住民票が必要になります。
お仕事や家事、通院などでお忙しい人には平日の昼間に役所にお出かけになって準備するのは負担が大きいものです。
戸籍や住民票は郵便による取り寄せもできますが、書類の不備などによる問い合わせはやはり役所の業務時間中の対応が必要になりますから、やはり負担は軽いとは言えません。
このような戸籍や住民票の取り寄せも司法書士は代行します。
3か月の期限が差し迫っている方や期限が過ぎてしまっている方は、すみやかに司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。
相続放棄したのに借金の請求
1相続放棄をしても債権者には通知されない
被相続人が多額の借金を残して死亡したとき、相続人は相続放棄をするでしょう。
分かっている借入先だけでも相続人が返せる額ではない、あちこちから借りていたので、他からも借りているだろう、借入先を把握し切れないという場合があります。
相続放棄の申立をすると、借入先から何か言われるのではないかと心配する人が多くいます。
分かっている借入先から、返済を求められているだけでも大変なのに、把握していない借入先からも返済を求められるのではないかと不安になっている場合です。
家庭裁判所に相続放棄の手続をしても、債権者に知らせる必要はありません。
相続放棄の申立を提出しても、家庭裁判所から債権者に通知されることはありません。
相続放棄が認められた後でも、家庭裁判所がわざわざ債権者に通知することはありません。
家庭裁判所に相続放棄の申立をしても、通常は、債権者に知られることはないのです。
債権者から家庭裁判所に相続放棄をしているか照会することができます。
家庭裁判所から債権者に通知されるのは、わざわざ照会があったときのみです。
2相続放棄の手続の方法
家庭裁判所に対して、必要な書類をを添えて相続放棄をしたい旨の申立てをします。
相続放棄の申立書につける書類は次のとおりです。
①被相続人の戸籍謄本
②被相続人の除票
③相続放棄する人の戸籍謄本
この他に、裁判所が使う郵便切手や収入印紙が必要です。
必要書類を見ても、債権者名簿はありません。
被相続人と相続人の戸籍謄本や住民票を提出するだけですから、通常、家庭裁判所は債権者がだれなのか分かりません。
確かに、家庭裁判所は、相続放棄を認めるか認めないか審査をします。
家庭裁判所は、必要な書類がきちんと揃っているかという点や提出された戸籍や住民票から矛盾したことはないかという点で審査します。
債権者がだれなのか家庭裁判所が独自で調査することはありません。
債権者がだれなのか分からないから、当然、債権者の意見を聞くこともありません。
債権者から見ると、ほとんどの場合、気付かないうちに相続人が相続放棄の手続をしていて、知らないうちに相続放棄が認められていた、となります。
3債権者が取立をしてきたら
相続放棄を申し立てても、相続放棄が認められても、債権者には通知されません。
相続人が相続放棄をしていても、債権者は知らないのが通常です。
相続放棄しても知らないから、被相続人が借金をしたまま死亡したら、相続人に払ってもらおうと考えます。
だから、相続放棄しても請求がされるのです。
借金の請求がされても、心配することはありません。
家庭裁判所で相続放棄が認められているのなら、相続放棄が認められていると伝えれば済みます。
口頭で伝えるだけでは信用されないでしょうから、家庭裁判所の通知を見せると分かってもらえるでしょう。
家庭裁判所から届いた通知とは、相続放棄申述受理通知書のことです。
多くの場合、相続放棄申述受理通知書のコピーを渡すと分かってもらえます。
この通知書は1通しかないので、同じ内容の書類を作ってもらうと安心です。
同じ内容の書類とは、相続放棄申述受理証明書のことです。
手数料がかかりますが、申請すれば必要な数だけ作ってくれます。
相続放棄した人は相続人ではないと扱われます。
被相続人に莫大な借金があっても、払う必要はありません。
債権者は債権回収が順調にいかないと、相続人でないと分かっていても、請求してくることがあります。
債務者でない人に請求することは、違法です。
毅然とした態度で対応しましょう。
あまり何度も請求してくるようであれば、警察に相談しましょう。
4他の相続人に相続しないと申し入れをした場合は相続放棄ではない
時々、相続放棄をしたが家庭裁判所の書類はないという方がいます。
相続放棄申述受理通知書は1通だけなので、相続放棄申述受理通知書を紛失することもあるでしょう。
単に紛失したのなら、相続放棄申述受理証明書を申請すれば、必要なだけ作ってもらえます。
家庭裁判所で相続放棄が認められたのであれば、書類がないということはあり得ません。
話をよく聞くと、他の相続人に相続財産は一切もらわないと申し入れたという場合があります。
プラスの財産を一切もらわないと申し入れたから、マイナスの財産も相続しないと考えている場合です。
他の相続人に相続しないと申し入れた場合は、相続放棄とは言えません。
他の相続人に相続しないと申し入れて、相続人全員で合意した場合、遺産分割になります。
法定相続分と異なる内容で、債務を相続することを相続人全員で合意することもできます。
相続人同士では、そのような合意も有効です。
マイナスの財産の分け方について、相続人全員で合意しても、債権者には主張できません。
相続人全員で合意しても、相続人同士の内部的な合意に過ぎないからです。
プラスの財産を一切もらわない場合でも、マイナスの財産を相続してしまいます。
債権者は、それぞれの相続人に法定相続分で、請求することができます。
相続人同士で合意したから、借金の返済はしないと文句を言うことはできません。
4債権者は相続放棄の無効を主張することができる
相続放棄申述受理通知書を見せても、被相続人の借金の取立が続く場合があります。
債権者が相続放棄は無効だと主張している場合です。
相続放棄が無効になる場合、無効にするための手続はありません。
無効の法律行為は、何もしなくても無効だからです。
例えば、債権者は相続放棄は無効だから、相続人に借金を払って欲しいと交渉することができます。
相続放棄は、家庭裁判所の書類審査だけで認められます。
相続放棄の要件をきちんと満たしているか、家庭裁判所が独自で調査することはありません。
相続放棄の要件を満たしていないのに、相続放棄の書類がきちんと揃っている場合、家庭裁判所は事情が分からず、相続放棄を認めてしまいます。
債権者は裁判所の決定に不服があれば、相続放棄は無効だから、相続人に借金を払って欲しいと訴えを起こすことができます。
債権者が相続放棄は無効だと主張して、裁判所に訴えを起こしたら、裁判所から訴状が届きます。
裁判所から訴状が届いたら、すぐに専門家に相談することをおすすめします。
たとえ債権者が不適切なことを主張している場合でも、適切に主張と立証をしないと裁判で負けてしまうからです。
裁判に欠席すると、相手方の言い分を全面的に認めたことになってしまいます。
裁判に負けると、払う必要のない借金を払うことになります。
債権者が不適切なことを言っているからと思っても絶対に放置してはいけません。
適切に相続放棄をしたことを、裁判所の法廷で、裁判官に分かってもらう必要があるのです。
5相続放棄が無効になる場合
①本人が知らないうちに相続放棄がされていた
本人に無断で、相続放棄の書類が作られて相続放棄の手続きがされた場合です。
本人の意思がないので、相続放棄は無効になります。
家庭裁判所は意思確認を厳格にしていますから、相続放棄が認められるのは、めったにありません。
②相続財産を処分・利用していた場合
相続放棄をする前に単純承認をしていた場合、相続放棄はできません。
相続放棄が撤回できないように、単純承認も撤回できないからです。
相続財産を処分したり、利用した場合、単純承認をしたとみなされます。
相続財産を処分したり、利用した場合は相続放棄ができなくなります。
家庭裁判所は事情が分からず書類に問題がなければ、相続放棄を受理してしまいます。
家庭裁判所が相続放棄を受理した後でも、相続財産を処分したり利用した場合は、無効です。
6相続放棄を司法書士に依頼するメリット
相続放棄はプラスの財産もマイナスの財産も引き継ぎませんという裁判所に対する申立てです。
相続人らとのお話合いで、プラスの財産を相続しませんと申し入れをすることではありません。
つまり、家庭裁判所で認められないとマイナスの財産を引き継がなくて済むというメリットは受けられないのです。
同時に、家庭裁判所で相続放棄が認められたとしても、絶対的なものではありません。
相続放棄の要件を満たしていない場合、その後の裁判で相続放棄が否定されることもあり得ます。
相続の単純承認にあたる行為は、建物の取壊しや高価な宝石などの形見分けなども含まれます。
相続が発生すると、家族はお葬式の手配から始まって膨大な手続きと身辺整理に追われます。
相続するのか、相続を放棄するのか充分に判断することなく、安易に相続財産に手を付けて、相続放棄ができなくなることがあります。
相続に関する手続の多くは、司法書士などの専門家に任せることができます。
手続を任せることで、大切な家族を追悼する余裕もできます。
相続人の調査や相続財産調査など適切に行って、充分に納得して手続を進めましょう。
相続放棄は3か月以内の制限があります。
3か月の期間内に手続きするのは思ったよりハードルが高いものです。
相続放棄を考えている方はすみやかに司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。
相続放棄の順位と範囲
1相続人になる人は法律で決まっている
相続が発生したら、親族のうち一定の範囲の人が相続人になります。
だれが相続人になるかについては、民法で決められています。
相続人になる人は次のとおりです。
①配偶者は必ず相続人になる
②被相続人に子どもがいる場合、子ども
③被相続人に子どもがいない場合、親などの直系尊属
④被相続人に子どももいない場合で、かつ、親などの直系尊属が被相続人より先に死亡している場合、兄弟姉妹
2相続放棄とは
相続が発生したら、原則として、被相続人のプラスの遺産もマイナスの遺産も相続人が受け継ぎます。
被相続人のプラスの遺産もマイナスの遺産も受け継がないことを相続の放棄といいます。
相続放棄は、家庭裁判所に対して申立てが必要です。
家庭裁判所で相続放棄が認められたら、プラスの遺産を引き継がなくなりますが、マイナスの遺産も引き継ぐことがなくなります。
だから、親の借金を引き継がないために相続放棄をするなどのケースが一般的です。
3相続放棄ができるのは相続人だけ
①先順位の人がいる場合は相続人ではない
被相続人に子どもがいる場合、子どもが相続人になります。
子どもがいるのに、親などの直系尊属が相続人になることはありません。
子どもは、親などの直系尊属より先順位の相続人だからです。
②先順位の相続人が相続放棄をしたら相続人になる
子どもがいるのに、親などの直系尊属が相続人になることはありません。
相続放棄をした場合、はじめから相続人でなくなります。
子ども全員が相続放棄をした場合、子どもがいないものと扱われます。
被相続人に子どもがいない場合、親などの直系尊属が相続人になります。
③相続放棄をする順番は相続人になる順番と同じ
被相続人が莫大な借金がある場合、家族全員が相続放棄を希望するでしょう。
家族全員が相続放棄を希望する場合であっても、家族全員が一度に相続放棄の手続をすることはできません。
相続放棄ができるのは、相続人だけだからです。
被相続人に子どもがいる場合、子どもが相続人になります。
子どもがいるのに、親などの直系尊属が相続人になることはありません。
子どもと親などの直系尊属が一度に相続放棄の手続をしても、親などの直系尊属は受け付けてもらえません。
子ども全員の相続放棄が認められていないうちは、親などの直系尊属は相続人ではないからです。
子どもは何人でも一緒に相続放棄の手続をすることができます。
相続放棄は、相続人各自が判断することができるからです。
子ども全員の相続放棄が認められた場合、親などの直系尊属が相続放棄の手続をすることができます。
親などの直系尊属のうち親等が違う人がいる場合、親等が近い人が相続人になります。
父母と祖父母がいる場合、父母は1親等、祖父母は2親等です。
父母と祖父母がいる場合、父母が相続人になります。
父母が相続放棄をした場合、はじめから相続人でなくなります。
父母が相続人でなくなった場合、祖父母が相続人になります。
父母の相続放棄が認められた場合、祖父母が相続放棄の手続をすることができます。
相続放棄をする順番は相続人になる順番と同じです。
相続人だけが相続放棄をすることができるからです。
④相続放棄をする範囲は相続人になる範囲と同じ
家庭裁判所で相続放棄が認められたら、被相続人のマイナスの遺産を引き継ぐことがなくなります。
相続放棄をしても、被相続人のマイナスの財産は消えてなくなりません。
相続放棄をした場合、次順位の相続人が相続することになります。
被相続人のマイナスの財産は、家族みんなを追いかけてきます。
被相続人のマイナスの財産を引き継ぎたくないのであれば、相続放棄をしなければなりません。
相続放棄をする人の範囲は、相続人の範囲と同じです。
相続人でない人に相続財産が相続されることはないからです。
子ども全員の相続放棄が認められた場合、親などの直系尊属が相続放棄の手続をすることができます。
親などの直系尊属全員の相続放棄が認められた場合、兄弟姉妹が相続放棄の手続をすることができます。
兄弟姉妹員の相続放棄が認められた場合、相続する人はいません。
相続人になることができるのは、兄弟姉妹までです。
4相続放棄をしても代襲相続はできない
相続人になるはずだった人が被相続人より先に死亡したため、相続人になるはずだった人の子どもや子どもの子どもが相続することがあります。
これを代襲相続と言います。
相続放棄をした場合、代襲相続はできません。
代襲相続になる原因は、次のとおりです。
①相続人が死亡したら代襲相続する
相続人になるはずだった人が被相続人より先に死亡した場合です。
実際に死亡した場合の他に、失踪宣告を受けて死亡したものと扱われる場合も、代襲相続が発生します。
②相続人が欠格になったら代襲相続する
欠格とは、相続人としてふさわしくない人の相続資格を奪う制度のことです。
③相続人が廃除されたら代襲相続する
相続人廃除とは、被相続人の意思で、相続人の資格を奪う制度のことです。
例えば、被相続人に虐待をした人に、相続をさせたくないと考えるのは自然なことでしょう。
代襲相続になる原因には、相続人が相続放棄をしたときは含まれていません。
相続放棄をしても、代襲相続することはありません。
子どもが相続放棄をしても、孫が代襲相続することはありません。
孫は代襲相続することはないから、被相続人の借金に追われることはありません。
兄弟姉妹が相続放棄をしても、甥姪が代襲相続することはありません。
甥姪は代襲相続することはないから、被相続人の借金に追われることはありません。
被相続人が子どもの子どもと養子縁組をしている場合があります。
養子縁組をした孫は、子どもの子どもの身分と養子の身分があります。
養子の実親は、被相続人の子どもです。
被相続人の子どもである養子の実親が相続放棄をした場合、代襲相続をしません。
養子は、被相続人の子どもだから子どもとして相続人になります。
被相続人の養子になった孫は、子どもとして相続放棄をする必要があります。
5相続放棄の期限3か月のスタートは知ってから
相続放棄の申立てをしてから、家庭裁判所で認められるまで1か月程度かかります。
相続放棄の期限は3か月以内と聞いて、気が気でないかもしれません。
相続放棄の期限3か月は被相続人の死亡からではありません。
相続があったことを知ってから3か月以内に届出をすれば充分認められます。
相続があったことを知ってからとは、必ずしも、被相続人の死亡してからではないからです。
相続人が疎遠である場合、相続放棄が認められたことを他の相続人に知らせないことがあります。
相続放棄が認められた相続人は、他の相続人に知らせる義務はないからです。
家庭裁判所は、相続放棄の申立てをした人にだけ相続放棄を認めた通知を送ります。
家庭裁判所は、他の相続人について情報がないからです。
相続があったことを知らなかった場合、相続放棄ができる3か月がスタートしていません。
このポイントは、相続が発生してから3か月以内に届出ができなかったのは止むを得なかったと家庭裁判所に納得してもらうことです。
3か月届出ができなかったのは仕方なかったと家庭裁判所が納得できる理由があるときだけは、家庭裁判所も相続放棄を認めてくれるのです。
債権者や市役所などから手紙が来て相続があったことを知った場合、この通知は大切です。
この手紙を見て相続があったことを知ったという証拠になるからです。
6相続人全員が相続放棄をしても管理義務がある
相続放棄をするとはじめから、相続人でなかったと扱われます。
プラスの財産もマイナスの財産も引き継ぐことがなくなるから、被相続人の遺産などに関与しなくていいと考えてしまうかもしれません。
相続放棄をした人は、相続財産を管理すべき人が管理を始めるまで管理を続けなければなりません。
自分が相続放棄をしたことによって次順位の人が相続人になる場合、その人が相続財産を管理してくれます。
固定資産税などの費用や実家の管理なども、次順位の相続人が引き受けてくれます。
自分の他に相続人がいない場合や相続人全員が相続放棄をした場合、相続放棄をした人は相続財産の管理を続けなければなりません。
相続財産の管理を続ける義務は、相続財産を管理すべき人が管理を始めるまでです。
相続財産を管理すべき人が管理を始めた場合、管理を終了することができます。
7相続放棄を司法書士に依頼するメリット
相続放棄するためには、家庭裁判所に手続をする必要があります。
家庭裁判所で相続放棄が認められた場合、プラスの財産もマイナスの財産も引き継ぐことがなくなります。
相続放棄をすると、初めから相続人でなかったと扱われます。
このことから、相続放棄が認められたら相続に関する手続には関与しなくて済むと安心してしまいがちです。
相続財産は引き継ぐことはなくなりますが、管理責任があります。
管理責任があることは、あまり知られていません。
家庭裁判所で相続放棄が認められた場合であっても、相続財産を処分した場合、相続放棄が無効になります。
相続放棄は簡単そうに見えて、実はいろいろなことを考慮しなければならない手続です。
相続放棄を考えている方は、司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。
相続人全員が相続放棄
1相続人になる人は法律で決まっている
相続が発生したら、親族のうち一定の範囲の人が相続人になります。
だれが相続人になるかについては、民法で決められています。
相続人になる人は次のとおりです。
①配偶者は必ず相続人になる
②被相続人に子どもがいる場合、子ども
③被相続人に子どもがいない場合、親などの直系尊属
④被相続人に子どもがいない場合で、かつ、親などの直系尊属が被相続人より先に死亡している場合、兄弟姉妹
2相続放棄とは
相続が発生したら、原則として、被相続人のプラスの遺産もマイナスの遺産も相続人が受け継ぎます。
被相続人のプラスの遺産もマイナスの遺産も受け継がないことを相続の放棄といいます。
相続放棄をすると、プラスの遺産を引き継がなくなりますが、マイナスの遺産も引き継ぐことがなくなります。
だから、親の借金を引き継がないために相続放棄をするなどのケースが一般的です。
3相続放棄をする人の範囲は相続人になる人の範囲と同じ
相続放棄をすると、はじめから相続人でなくなります。
例えば、相続人が配偶者と子である場合、子ども全員が相続放棄をしたら子どもはいないものとして扱われます。
子どもがいない場合、次順位の相続人は親などの直系尊属になります。
配偶者は常に相続人になりますから、配偶者と親などの直系尊属が相続人になります。
配偶者が相続放棄をすると、配偶者はいないものと扱われます。
親などの直系尊属が被相続人より先に死亡していた場合や親などの直系尊属が相続放棄をしたら、親などの直系尊属はいないものと扱われます。
子どもも親などの直系尊属もいない場合、被相続人の兄弟姉妹が相続人になります。
相続放棄をすると相続人でなくなりますから、相続人はいないものと扱われます。
相続順位が同じ人がすべていないものと扱われた場合、次順位の人が相続人になります。
最初は相続人でなかった人が相続人になることがあります。
家庭裁判所は、相続放棄を認めた場合でも、他の相続人に何も連絡しません。
相続放棄をするのは、被相続人の借金を引き継がないためであることが多いでしょう。
相続放棄をしたら自分は借金から逃れることができます。
自分は借金から逃れて安心だけど、家族がどこまで追いかけられるか心配な人もいるでしょう。
借金は消えてなくなるわけではありませんから、次順位の相続人に引き継がれます。
相続人になると、借金を引き継ぐ可能性があります。
配偶者の他は、被相続人の①子ども②親などの直系尊属③兄弟姉妹です。
相続放棄をする人の範囲は、相続人になる人の範囲と同じです。
相続人になれない人は、被相続人の借金を引き継ぐことはありません。
相続人になれない人は、相続放棄をする必要はありません。
相続人になる人は、借金を引き継がないため相続放棄をする必要があります。
相続放棄をした場合、相続放棄をした人の子どもが代襲相続をすることはありません。
相続放棄をすると相続人でなくなりますから、相続人はいないものと扱われるからです。
次順位の相続人に連絡する義務はありませんが、連絡してあげた方が親切でしょう。
相続人でないと思っていたのに、急に借金の返済を迫られたらびっくりするからです。
多くの場合、次順位の相続人も相続放棄を希望するでしょう。
相続放棄の手続をする準備をしておいてもらった方が、スムーズに手続できるでしょう。
4相続人全員が相続放棄してもいい
相続放棄は、多くの場合、被相続人のマイナスの遺産を引き継がないために行われます。
相続人が全員相続放棄をしたら、被相続人の借金なのに、だれも責任をとらないことになります。
だれも責任をとらないことに後ろめたく思う人もいるかもしれません。
相続放棄は、相続人ひとりひとりが自分の意思で自由に判断できるものです。
結果として、相続人全員が相続放棄を選択することになっても、法律上、やむを得ないことです。
配偶者と子ども全員が相続放棄をした場合、次順位の親などの直系尊属が相続人になります。
親などの直系尊属全員が相続放棄をした場合、次順位の兄弟姉妹が相続人になります。
兄弟姉妹全員が相続放棄をした場合、次順位の相続人はいません。
借金がどこまでも無限に追いかけてくることはありません。
だれが相続人になるかについては、民法で決められているからです。
相続人にならない人は、相続できません。
借金が追いかけてくることはありません。
相続人にならないから、相続することはないし、相続放棄をすることもできません。
相続人全員が相続放棄をした場合、相続人不存在になります。
5相続財産の行方
①行方が決まるまで相続財産清算人が管理する
相続人全員が相続放棄をした場合であっても、借金は消えてなくなりません。
借金だけでなく、プラスの遺産もマイナスの遺産もすべて、残っています。
プラスの遺産があれば、債権者はプラスの遺産から借金を返してもらいたいと思うでしょう。
相続財産を相続する人がいないので、中立的立場の人に財産を清算をしてもらう必要があります。
相続財産を清算する人を相続財産清算人と言います。
相続財産を清算するため、家庭裁判所に相続財産清算人を選んでもらいます。
家庭裁判所に相続財産清算人を選んでもらうことを、相続財産清算人選任の申立てと言います。
相続財産清算人選任の申立てには、家庭裁判所に予納金を払う必要があります。
予納金は、事件の規模にもよりますが数十万円~100万円ほどです。
②借金は相続財産から弁済する
相続財産管理人は被相続人にお金を貸した人や遺言で財産をもらい受ける人に対して、期間内に申し出るようにお知らせを出します。
プラスの財産からお金を貸した人に弁済します。
お金を貸した人に弁済した後、遺言で財産をもらい受ける人へ支払いをします。
プラスの財産がわずかで、返すべきお金が多い場合、全額返済できなくなります。
お金を貸した金額に応じて、減額した額のみ支払われます。
③特別縁故者へ分与される
お金を貸した人や遺言で財産をもらい受ける人に弁済しても、余りが出る場合があります。
相続人全員が相続放棄する場合では、レアケースです。
プラスの財産に余りが出る場合、特別縁故者に分与される場合があります。
特別縁故者とは、内縁の配偶者や事実上の養子、長期間療養看護に努めた人など、特別な縁故がある人のことです。
家庭裁判所が特別縁故者と認め、相続財産の一部または全部が引き継がれます。
④最終的な残りは国庫へ
特別縁故者に引き継がれた後の残りは国のものになります。
6借金はだれが返済するのか
プラスの遺産から予納金を払う余裕があれば、相続財産清算人選任の申立てをする価値があるでしょう。
プラスの遺産がごくわずかであれば、相続財産清算人選任の申立ての予納金が払えなくなります。
相続財産清算人選任の申立ての予納金が払えないのであれば、相続財産清算人の選任の申立ては諦めることになります。
相続財産清算人の選任の申立てを諦めることは、借金の回収も諦めることになります。
お金を貸す金融機関などは、このような事態になることも想定の範囲内です。
相続が発生しなくても、お金を借りた人が返せなくなって自己破産することはあるからです。
金融機関などはビジネスですから、このようなリスクも考慮に入れてお金を貸すか貸さないかを決めています。
通常は、借金の回収を確実にするために、不動産などを担保に取ります。
相続人全員が相続放棄をした場合で、不動産を担保に取っている場合、担保権を実行します。
担保権を実行するとは、担保に取った不動産を競売して、売却金から借金を回収することです。
連帯保証人を立てるように求めることもあります。
相続人全員が相続放棄をした場合で、連帯保証人がいる場合、連帯保証人に肩代わりを請求します。
被相続人が借金をしたときに、相続人が連帯保証人になっている場合があります。
相続人は相続放棄によって、被相続人の借金を引き継がなくてもよくなります。
相続放棄をしても、借金は消えません。
連帯保証人として、被相続人の借金の肩代わりの義務も消えません。
連帯保証は、お金を貸す人と連帯保証人の契約だからです。
連帯保証人は、債権者に対して借金を返せなくなったときには肩代わりをしますと約束しています。
肩代わりの義務は、連帯保証人の固有の義務です。
相続には関係のない相続人の固有の義務だから、お金を貸した人は連帯保証人に肩代わりを求めることができるのです。
相続放棄をしたから肩代わりはしないということはできません。
肩代わりの義務は相続とは無関係だから、肩代わりを拒むことはできないのです。
7相続放棄を司法書士に依頼するメリット
相続放棄はプラスの財産もマイナスの財産も引き継ぎませんという裁判所に対する届出です。
相続放棄という言葉自体は日常的に聞く言葉かもしれません。
法律上の相続放棄と日常使う相続放棄は、少し意味が違うかもしれません。
意味が違うことに気づかず、無用に不安になっている場合があります。
意味が違うことに気づかず、重要なリスクが見えていない場合もあります。
実は、相続放棄はその相続でチャンスは実質的には1回限りです。
家庭裁判所に認められない場合、即時抗告という手続を取ることはできますが、高等裁判所の手続で、2週間以内に申立てが必要になります。
家庭裁判所で認めてもらえなかった場合、即時抗告で相続放棄を認めてもらえるのは、ごく例外的な場合に限られます。
一挙にハードルが上がると言ってよいでしょう。
相続放棄は慎重に判断する必要がありますが、いろいろな誤解から利用をためらう人が多いのも事実です。
利用をためらっていると3か月はあっという間です。
相続が発生すると、家族は親戚や知人へ連絡などで悲しみに浸る暇もないくらい忙しくなります。
3か月以内に必要書類を揃えて手続をするのは想像以上にハードルが高いものです。
相続放棄を考えている方はすみやかに司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。
相続放棄の有無の照会
1相続人になる人
相続が発生したら、親族のうち一定の範囲の人が相続人になります。
誰が相続人になるかについては、民法で決められています。
相続人になる人は次のとおりです。
②~④の場合、先順位の人がいる場合、後順位の人は相続人になれません。
①配偶者は必ず相続人になる
②被相続人に子どもがいる場合、子ども
③被相続人に子どもがいない場合、親などの直系尊属
④被相続人に子どももいない場合で、かつ、親などの直系尊属が被相続人より先に死亡している場合、兄弟姉妹
相続人になるはずだった人が被相続人より先に死亡した場合、相続人になるはずだった人の子どもや子どもの子どもが相続します。
相続人になるはずだった人の子どもや子どもの子どもが相続することを代襲相続と言います。
2相続放棄とは
相続が発生したら、原則として、被相続人のプラスの財産もマイナスの財産も相続人が受け継ぎます。
被相続人のプラスの財産もマイナスの財産も受け継がないことを相続の放棄といいます。
相続放棄をすると、プラスの財産を引き継がなくなりますが、マイナスの財産も引き継ぐことがなくなります。
だから、被相続人が莫大な借金を負っていた場合でも、一切借金の返済をする必要がなくなります。
被相続人が返済を滞らせていて遅延損害金が発生していた場合であっても、遅延損害金も払う必要はありません。
相続放棄をするとマイナスの財産すべて受け継ぐことがなくなります。
仮に自己破産した場合、借金は免除されますが、滞納していた税金は免除されません。
相続放棄では、被相続人が滞納していた税金すら受け継ぐことがなくなります。
自己破産と比べても、相続放棄は強力な効果があります。
3相続放棄をすると次順位の人が相続人になる
相続放棄をすると相続人でなくなります。
例えば、相続人が配偶者と子どもである場合、子ども全員が相続放棄をしたら子どもはいないものとして扱われます。
子どもがいない場合、次順位の相続人は親などの直系尊属になります。
子どもがいる場合、親などの直系尊属は相続人になりません。
子ども全員が相続放棄をした場合、子どもがいないものとして扱われるから、親などの直系尊属が相続人になります。
相続放棄の手続は、家庭裁判所に対して、必要な書類をを添えて相続放棄をしたい旨の届出をします。
家庭裁判所が相続放棄を認めた場合、相続放棄申述受理通知書が届きます。
家庭裁判所は、相続放棄をしたい旨の届出をした人にだけ、相続放棄申述受理通知書を送ります。
家庭裁判所から、他の人に連絡してくれることはありません。
被相続人に莫大な借金がある場合、相続人になったら相続放棄をしたいと考えるでしょう。
先順位の相続人がいる場合、次順位の人は相続人ではありません。
次順位の人は、先順位の相続人全員が相続放棄をするまで、相続放棄の手続ができません。
被相続人の莫大な借金を相続してしまうのではないか、不安な日々を送ることになります。
先順位の相続人が自主的に相続放棄したことを知らせてくれるといいのですが、次順位の相続人に知らせる義務はありません。
疎遠な相続人は知らせてくれないことが多いものです。
先順位の相続人が何人もいる場合、自分が相続人なのかどうか分かりません。
先順位の相続人に、確認しにくいこともあるでしょう。
被相続人にお金を貸した人にとっても、だれにお金を返してもらえばいいか分かりません。
相続放棄は、本来、家庭裁判所に対して、必要な書類をを添えて相続放棄をしたい旨の届出をすることです。
相続人らの話し合いで、プラスの財産を受け取らないと申し入れをしたことを相続放棄と言う人がたくさんいます。
プラスの財産を受け取らないと申し入れをしたことは相続放棄ではありません。
被相続人にお金を貸した人は、このような相続人にお金を返して欲しいと請求することができます。
4相続放棄申述の有無の照会制度で相続放棄を確認できる
相続放棄をしたかどうかを家庭裁判所に質問することができます。
相続放棄をしたかどうかを家庭裁判所に質問する制度のことを、相続放棄申述の有無の照会と言います。
相続放棄申述の有無の照会をする先の家庭裁判所は、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です。
家庭裁判所の管轄は裁判所のホームページで調べることができます。
相続放棄申述の有無の照会ができるのは、次の人です。
①同順位や次順位の相続人
②被相続人の債権者などの利害関係人
相続放棄申述の有無の照会申請書に添付する書類は、次のとおりです。
①被相続人死亡の戸籍謄本
②被相続人死亡の住民票か戸籍の附票
③照会者の身分証明書
④照会者が相続人の場合、相続人の戸籍謄本
⑤照会者が債権者などの場合、借用書や契約書
相続放棄申述の有無の照会申請書は、直接、出向いて提出してもいいし、郵便で送っても差し支えありません。
届出の書き方や提出書類が心配な方は、出向いて裁判所の受付で目を通してもらうと安心です。
返信用の封筒と切手を同封しておくと、郵送で回答してもらえます。
相続放棄申述の有無の照会に手数料はかかりません。
相続放棄申述の有無の照会申請書を提出してから、回答がされるまでにはおおむね半月ほどかかります。
照会の対象となる期間は、家庭裁判所によって異なります。
多くの家庭裁判所では、被相続人の死亡後3か月、先順位の相続人が相続放棄を認められてから3か月です。
ときには被相続人の死亡後長期間経過してから、相続があったことを知る場合があります。
相続があったことを知ってから3か月以内であれば相続放棄の申立てをすることができるはずです。
家庭裁判所によっては、熟慮期間経過後に相続放棄の申立てをしていた人が見落とされる可能性があります。
先順位の相続人全員が相続放棄をしている場合で、かつ、自分も相続放棄をしたいのであれば、すぐに手続きをしましょう。
5相続放棄申述受理証明書の取得方法
先順位の相続人全員が相続放棄をしている場合で、かつ、自分は相続放棄をしない場合、相続手続において相続放棄を証明する必要があるでしょう。
先順位の相続人全員が相続放棄をしたことが証明されないと、客観的に相続人と認められないからです。
このような場合、相続放棄申述受理証明書の交付申請をします。
6相続放棄を司法書士に依頼するメリット
相続放棄はプラスの財産もマイナスの財産も引き継ぎませんという裁判所に対する届出です。
相続人らとのお話合いで、プラスの財産を相続しませんと申し入れをすることではありません。
つまり、家庭裁判所で認められないとマイナスの財産を引き継がなくて済むというメリットは受けられないのです。
実は、相続放棄はその相続でチャンスは実質的には1回限りです。
家庭裁判所に認められない場合、即時抗告という手続きを取ることはできますが、高等裁判所の手続きで、2週間以内に申立てが必要になります。
家庭裁判所で認めてもらえなかった場合、即時抗告で相続放棄を認めてもらえるのは、ごく例外的な場合に限られます。一挙にハードルが上がると言ってよいでしょう。
司法書士であれば、家庭裁判所に認めてもらえるポイントを承知していますから、認めてもらえやすい書類を作成することができます。
先順位の相続人がいる場合、相続放棄をしたのかしていないのか分からないと、不安な日々を送ることになります。
相続放棄をしたかどうかを家庭裁判所に文書で質問することができます。
このような照会についても、司法書士はサポートすることができます。
3か月の期間内に手続きするのは思ったよりハードルが高いものです。
相続放棄を考えている方はすみやかに司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。
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