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自己破産した人が相続放棄
1自己破産した人は相続人になる
①相続人になる人は法律で決まっている
相続が発生したら、親族のうち一定の範囲の人が相続人になります。
だれが相続人になるかについては、民法で決められています。
相続人になる人は次のとおりです。
(2)~(4)の場合、先順位の人がいる場合、後順位の人は相続人になれません。
(1)配偶者は必ず相続人になる
(2)被相続人に子どもがいる場合、子ども
(3)被相続人に子どもがいない場合、親などの直系尊属
(4)被相続人に子どももいない場合で、かつ、親などの直系尊属が被相続人より先に死亡している場合、兄弟姉妹
②自己破産しても相続欠格にならない
相続欠格とは、相続人としてふさわしくない人の相続資格を奪う制度です。
相続人になれない人は、民法で決められています。
欠格になるのは、次のような理由がある人です。
(1) 故意に被相続人、同順位以上の相続人を死亡させた人、死亡させようとした人
(2) 被相続人が殺害されたのを知って、告訴や告発をしなかった人
(3) 詐欺・脅迫で遺言の取消・変更をさせたり、妨害した人
(4) 遺言書を偽造・変造・廃棄・隠匿した人
相続人が自己破産をしただけであれば、欠格になることはありません。
③自己破産しても相続人廃除できない
相続人廃除とは、被相続人の意思で、相続人の資格を奪う制度です。
相続人の資格を奪うというのは、実質的には、遺留分を奪うことです。
相続人の廃除は遺留分を奪う重大な決定だから、家庭裁判所は慎重に判断します。
相続人の廃除は、次のような理由があるときに認められます。
(1)被相続人に虐待をした
(2)度重なる重大な親不孝をした
(3)被相続に重大な侮辱をした
(4)重大犯罪をして有罪判決を受けた
(5)多額の借金を被相続人に払わせた
(6)愛人と暮らすなどの不貞行為をする配偶者
単に、相続人が自己破産をしただけであれば相続人廃除が認められることはないでしょう。
自己破産の理由によっては、廃除されるかもしれません。
2相続放棄とは
相続が発生したら、原則として、被相続人のプラスの財産もマイナスの財産も相続人が受け継ぎます。
被相続人のプラスの財産もマイナスの財産も受け継がないことを相続の放棄といいます。
被相続人に多額の借金がある場合、相続放棄を考えるといいでしょう。
自己破産をした人だから相続放棄をしなければならないといったことはありません。
相続放棄は、家庭裁判所に対して必要な書類をを添えて相続放棄をしたい旨の申立てをします。
相続放棄の申立ては相続があったことを知ってから、原則として、3か月以内にする必要があります。
3自己破産をすると破産者の財産は債権者に配当される
自己破産とは、借金の支払を免除してもらう手続のことです。
破産者のプラスの財産を債権者に公平に分配して、マイナスの財産をなしにします。
マイナスの財産の財産が無くなるから、人生のやり直しの機会を得ることができます。
自己破産では、自己破産の申立ての後に破産手続開始決定がされます。
破産手続開始決定がされた後、相続が発生しても破産手続が取り消されたり止まったりすることはありません。
4相続が発生した後に破産手続開始決定がされた場合
相続人が自己破産する場合、相続人は多額の借金があります。
被相続人に莫大なプラスの財産がある場合、相続人の債権者はプラスの財産から借金を返してもらいたいと期待するでしょう。
被相続人に莫大なプラスの財産があるのに、自己破産する相続人が相続放棄をすることがあります。
相続放棄をした場合、通常であれば、被相続人のプラスの財産もマイナスの財産も受け継ぐことがありません。
プラスの財産もマイナスの財産も受け継がないとすると、債権者の利益が損なわれることになります。
そこで債権者の利益を確保するため、破産手続開始決定後の相続放棄は限定承認として効力が認められます。
限定承認とは、被相続人のプラスの財産の範囲内でマイナスの財産を相続するものです。
破産手続開始決定がされた時点で、破産者のプラスの財産は債権者に公平に分配されます。
プラスの財産の範囲内でマイナスの財産を相続した後、債権者に公平に分配されます。
自己破産した人の相続分が債権者に回収されて分配されてしまいます。
相続財産には、自宅不動産など分けにくいものもあるでしょう。
自己破産した人の相続分を回収するため、自宅を売却することになることがあります。
売却手続などを必要とする管財手続になった場合、手続に費用と時間がかかります。
被相続人に莫大なプラスの財産があるだけでなく圧倒的なマイナスの財産がある場合があります。
圧倒的なマイナスの財産がある場合まで、限定承認として手続するのは面倒です。
破産管財人は、相続放棄があったことを知ってから3か月以内に相続放棄のままでいいと家庭裁判所に申立てをすることができます。
破産手続開始決定前の相続放棄は、通常どおり、被相続人のプラスの財産もマイナスの財産も受け継ぐことがありません。
5破産手続開始決定がされた後に相続が発生した場合
破産手続開始決定がされた後に取得した財産は、破産手続と関係がありません。
債権者に公平に分配される財産は、破産手続開始決定がされた時点の財産だからです。
破産手続開始決定以降に取得した財産は、破産者が自由に処分することができます。
自己破産の制度は、マイナスの財産の財産を無くして、人生のやり直しの機会を得るための制度だからです。
被相続人に莫大なプラスの財産がある場合、相続人は相続することができます。
もちろん、相続放棄をすることもできます。
6相続放棄を司法書士に依頼するメリット
自己破産をするといろいろなことが制限されるというイメージがある方は少なくありません。
そのイメージとあいまって、相続することもできないという誤解があります。
自己破産をしても相続権は失われません。
自己破産をしたから相続放棄をしなければならないといったことはありません。
自己破産を検討しているのであれば、早めに準備を進めるのがいいでしょう。
相続の発生が予想されるのであれば、なおさら早めに破産手続き始決定を受けておくことを目指しましょう。
破産手続開始決定を受けた後であれば、取得した財産は破産手続とは無関係になるからです。
大切な家族を失ったら家族は大きな悲しみに包まれます。
大きな悲しみで何もする気になれないことも多いでしょう。
相続手続は一生に何度も経験するものではありません。
だれにとっても不慣れでだれにとっても聞き慣れない言葉でいっぱいです。
相続放棄をはじめとして相続手続全般をサポートしています。
相続放棄を検討している方は、すみやかに司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。
損害賠償債務があっても相続放棄
1損害賠償債務とは
社会生活を送っていると、わざとでなくても他の人のものを壊してしまったりケガをさせてしまったりすることがあります。
法律や契約に違反して、損害を与えてしまうこともあるでしょう。
他の人の財産や身体に損害を与えてしまった場合、損害を償う必要があります。
損害を償う義務が損害賠償債務です。
物を壊してしまったときの修理代やケガをさせてしまったときの治療費は、損害賠償債務です。
2損害賠償債務は相続放棄ができる
①マイナスの財産もプラスの財産も相続財産
相続が発生した後、相続財産は相続人全員の共有財産になります。
相続財産というとプラスの財産だけをイメージしがちですが、マイナスの財産も相続財産です。
被相続人が他の人の財産や身体に損害を与えてしまった場合、相続人が損害を賠償しなければなりません。
例えば、交通事故で被害者にケガをさせてしまった場合、被害者の治療費や慰謝料などを負担することになります。
例えば、ビルの高層階から転落して地上の施設を破壊した場合、施設の原状回復費用を賠償することになります。
この後に被相続人が死亡した場合、相続人が損害賠償債務を相続することになります。
②相続放棄とは
相続が発生したら、原則として、被相続人のプラスの財産もマイナスの財産も相続人が受け継ぎます。
被相続人のプラスの財産もマイナスの財産も受け継がないことを相続の放棄といいます。
相続放棄をすると、プラスの財産を引き継がなくなりますが、マイナスの財産も引き継ぐことがなくなります。
③損害賠償債務は相続放棄ができる
被害者に大きなケガをさせてしまった場合、被害額が高額になることがあります。
相続人は家庭裁判所で相続放棄の申立てをすることができます。
家庭裁判所で相続放棄が認められた場合、損害賠償債務を免れることができます。
相続放棄をした場合、プラスの財産も相続することができなくなります。
相続によって巨額の債務を相続することになると、相続人の人生が破綻してしまいます。
相続放棄の制度は、相続人の人生が破綻しないように相続人を守るためにあります。
相続人が損害賠償債務を免れると、被害者に酷だという意見があるでしょう。
家族が責任を取るべきだと考えるかもしれません。
相続放棄は、相続人の人生を守るためにあるから、やむを得ないと言えます。
3損害賠償額が分からなくても相続放棄をすることができる
相続放棄の申立ては、家庭裁判所に対して手続をします。
家庭裁判所に提出する相続放棄申述書を見ると、相続財産の概略を記載する欄があります。
相続財産の概略で資産と負債の書く様式になっています。
資産と負債を記載しなければならないように感じるかもしれません。
相続財産の概略は、相続人の分かる範囲で記載すれば充分です。
分からなければ、分かりませんと書いて問題はありません。
例えば、鉄道におけるホームからの転落事故など賠償額が甚大になる場合、鉄道会社であっても賠償額はすぐには判明しません。
調査を終えないと、被害額を計算することができないからです。
鉄道会社が損害額を計算するためには、長期間かかるのが通常です。
相続放棄の期限は、原則として、相続があったことを知ってから3か月以内です。
「相続があったことを知ってから」とは、被相続人が死亡して相続が発生し、その人が相続人であることを知って、かつ、相続財産を相続することを知ってから、と考えられています。
被相続人にめぼしいプラスの財産がなく、かつ、明らかに甚大な損害賠償債務がある場合、相続放棄の手続をするといいでしょう。
4自己破産の場合は免責されない債務がある
損害賠償額が甚大である場合、まず相続放棄をすることが最初の選択肢です。
相続放棄ができなかった場合、相続してしまった相続人が自己破産をする方法が考えられます。
自己破産をする場合、債務のすべてが免責されるとは限りません。
他の人の生命や身体に対して損害を与えた場合で、かつ、故意や重大な過失がある場合、その損害賠償債務は免責されません。
被相続人が故意や重大な過失で他の人の生命や身体に対して損害を与えた場合であっても、相続人は相続放棄をすることで、損害賠償債務を免れることができます。
相続放棄は、自己破産と較べると強い効力があります。
5相続放棄をした後に自己の財産から支払をすることができる
①相続放棄が認められたら支払いは不要
相続放棄が認められた場合、プラスの財産もマイナスの財産も引き継ぐことはありません。
損害を賠償して欲しいと要求されても、応じる必要はありません。
②相続放棄申述受理通知書の提示が有効
相続放棄が認められたと口頭で伝えるだけでは、信用してもらえないかもしれません。
家庭裁判所が相続放棄を認めた場合、相続放棄申述受理通知書を送ってきます。
相続放棄申述受理通知書のコピーを提示すると納得してもらうことができるでしょう。
③相続放棄をした後に自己の財産から支払をすることができる
相続放棄が認められた場合、本人の債務を引き継ぐことはありません。
債務の支払義務はなくても、家族が迷惑をかけたのだから、いくらか支払いたい場合があります。
相続財産を処分した場合、単純承認したとみなされます。
本人の預貯金で支払をした場合、相続財産を処分したと判断されるおそれがあります。
相続財産を処分した場合であっても、保存行為にあたる場合は、単純承認したとみなされません。
あえてトラブルに巻き込まれる危険を冒す必要はありません。
相続人の固有の財産から支払をした場合、相続財産を処分したと言われることはありません。
家族が迷惑をかけたのだから、被害者に支払いたい場合、相続人の固有の財産から支払をすることをおすすめします。
6相続放棄を司法書士に依頼するメリット
実は、相続放棄はその相続でチャンスは1回限りです。
家庭裁判所に認められない場合、即時抗告という手続を取ることはできますが、高等裁判所の手続で、2週間以内に申立てが必要になります。
家庭裁判所で認めてもらえなかった場合、即時抗告で相続放棄を認めてもらえるのは、ごく例外的な場合に限られます。
一挙にハードルが上がると言ってよいでしょう。
相続放棄では、戸籍や住民票が必要になります。
お仕事や家事、通院などでお忙しい人には平日の昼間に役所にお出かけになって準備するのは負担が大きいものです。
戸籍や住民票は郵便による取り寄せもできますが、書類の不備などによる問い合わせはやはり役所の業務時間中の対応が必要になりますから、やはり負担は軽いとは言えません。
このような戸籍や住民票の取り寄せも司法書士は代行します。
3か月の期限が差し迫っている方や期限が過ぎてしまっている方は、すみやかに司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。
相続放棄の熟慮期間3か月を延長
1相続放棄は家庭裁判所へ手続
相続が発生したら、原則として、被相続人のプラスの財産もマイナスの財産も相続人が受け継ぎます。
被相続人のプラスの財産もマイナスの財産も受け継がないことを相続の放棄といいます。
相続放棄は、家庭裁判所に対して相続放棄を希望する旨の申立てをします。
相続放棄をすると、プラスの財産を引き継がなくなりますが、マイナスの財産も引き継ぐことがなくなります。
相続が発生した場合、被相続人の財産は相続人全員の共有財産になります。
相続財産の分け方は、相続人全員の合意で決めます。
相続人の中には、プラスの財産をまったく受け取らないことがあります。
相続人全員が合意できれば、財産をまったく受け取らない合意をすることができます。
プラスの財産をまったく受け取らないことを相続放棄をしたと表現することがあります。
相続財産の分け方を決める相続人全員の話し合いは、遺産分割協議を言います。
プラスの財産をまったく受け取らない合意をする場合でも、遺産分割協議です。
プラスの財産をまったく受け取らない合意は、相続放棄と表現しても相続放棄ではありません。
相続放棄は、家庭裁判所に対して申立てが必要な手続だからです。
2熟慮期間は原則3か月
①相続放棄の期間3か月のスタートは知ってから
相続放棄は、家庭裁判所に申立てをする必要があります。
相続放棄の申立ての期限は、原則として、相続があったことを知ってから3か月以内です。
相続があったことを知ってから3か月以内の期間のことを熟慮期間と言います。
「相続があったことを知ってから」とは、被相続人が死亡して相続が発生し、その人が相続人であることを知って、かつ、相続財産を相続することを知ってから、と考えられています。
被相続人が死亡してから3か月以内ではなく、相続財産を相続することを知ってから3か月以内です。
3か月以内に戸籍や住民票などの必要書類を揃えて管轄の家庭裁判所に提出しなければなりません。
②熟慮期間3か月経過すると単純承認
相続放棄の申立てができるのは、3か月以内です。
3か月が経過すると、相続放棄の申立てができなくなります。
熟慮期間3か月経過すると、単純承認するしか選択肢がなくなります。
単純承認をする場合、手続はありません。
熟慮期間中に何もしなかった場合、自動的に単純承認になります。
3熟慮期間3か月は延長してもらえる
①相続の承認または放棄の期間の伸長の申立て
相続放棄は家庭裁判所に申立てをする必要があります。
この申立ての期限は、原則として、相続があったことを知ってから3か月以内です。
被相続人の財産状況を詳しく知らない場合、3か月はあっという間です。
相続放棄をするべきか単純承認をするべきか判断するために時間がかかる場合があります。
相続放棄をするべきか単純承認をするべきか判断するための資料を集めるため、相続放棄の期間3か月を延長してもらうことができます。
相続放棄の期間3か月を延長してもらうことを相続の承認または放棄の期間の伸長の申立てと言います。
相続の承認または放棄の期間の伸長の申立てを受け付けた場合、家庭裁判所が期間延長を認めるか判断します。
相続の承認または放棄の期間の伸長の申立てには、期間内に相続放棄をすべきか単純承認すべきが判断ができない具体的理由や延長が必要な期間を記載します。
判断ができない具体的理由を根拠づける資料を添付して、説得力を持たせるといいでしょう。
期間延長の必要性や理由が妥当なものであると家庭裁判所に納得してもらうことが重要です。
家庭裁判所で期間延長が認められた場合、原則として3か月延長されます。
②相続の承認または放棄の期間の伸長の申立てができる人
相続の承認または放棄の期間の伸長の申立ての申立人は、次のとおりです。
(1)利害関係人
(2)検察官
利害関係人には、相続人も含まれます。
③相続の承認または放棄の期間の伸長の申立ての申立先
相続の承認または放棄の期間の伸長の申立書は、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です。
家庭裁判所の管轄は、裁判所のホームページで調べることができます。
④相続の承認または放棄の期間の伸長の申立ての申立費用
相続の承認または放棄の期間の伸長の申立てには手数料がかかります。
手数料は、申立書に収入印紙を貼り付けて納入します。
収入印紙は貼り付けるだけで、消印は裁判所の人がします。
収入印紙は、郵便局やコンビニエンスストアで購入することができます。
手数料の他に、家庭裁判所で使う連絡用の郵便切手を納入します。
必要な郵便切手の金額や枚数は、家庭裁判所によって異なります。
⑤相続の承認または放棄の期間の伸長の申立ての必要書類
相続の承認または放棄の期間の伸長の申立書の必要書類は、次のとおりです。
(1)被相続人の住民票除票又は戸籍附票
(2)利害関係人からの申立ての場合,利害関係を証する資料
(3)伸長を求める相続人の戸籍謄本
(4)被相続人の死亡の記載のある戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
(5)相続人であることを証明する戸籍謄本
4ルールを知らなかったときは延長されない
①熟慮期間3か月を知らなかった
相続放棄の申立てができるのは、3か月以内です。
3か月が経過すると、相続放棄の申立てができなくなります。
相続手続は、何度も経験するものではありません。
だれにとってもはじめてで、不慣れなことばかりです。
相続放棄ができる熟慮期間は3か月というルールを知らないことがあります。
相続の承認または放棄の期間の伸長の申立てを受け付けた場合、熟慮期間の延長を認めるか認めないか家庭裁判所が判断します。
熟慮期間の延長を認めるか判断するときに、ルールを知らなかったという点は考慮されません。
②家庭裁判所に手続が必要であることを知らなかった
相続放棄は、家庭裁判所に対して相続放棄を希望する旨の申立てをします。
家庭裁判所が相続放棄を認める決定をしたときだけ、相続放棄になります。
相続が発生した場合、被相続人のものは相続人全員の共有財産になります。
相続財産を分けるには、相続人全員の合意が必要です。
相続財産の分け方を決めるための相続人全員による話し合いを遺産分割協議と言います。
遺産分割協議で、プラスの財産を受け取らないと申し入れをすることがあります。
プラスの財産を何も受け取らないという合意も有効な合意です。
プラスの財産を受け取らない合意をした場合、相続放棄をしたと表現することがあります。
相続放棄をしたと表現しても、相続放棄ではありません。
家庭裁判所に手続をしていないからです。
家庭裁判所で相続放棄が認められていないから、相続放棄の効果はありません。
相続放棄は家庭裁判所で手続が必要であるというルールを知らないケースと言えます。
熟慮期間の延長を認めるか判断するときに、ルールを知らなかったという点は考慮されません。
5熟慮期間3か月の延長が認められるケース
①書類が揃わないケース
相続放棄は、必要な書類を添えて相続放棄を希望する旨の申立てをします。
相続放棄ができるのは、相続人だけです。
相続人でない人は、相続放棄の手続をすることができません。
後順位の相続人は、先順位の相続人がいないことが分かる戸籍を提出する必要があります。
先順位の相続人がいる場合、後順位の人は相続人ではないからです。
先順位の相続人がいないことを証明するために、たくさんの戸籍が必要になります。
例えば、被相続人に子どもがいないことを証明するためには被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本を準備しなければなりません。
被相続人が本籍地を転々としていた場合、順番にたどる必要があります。
本籍地が遠方である場合、本籍地の市区町村役場に出向いて請求するのは難しいでしょう。
戸籍謄本は、郵送で取り寄せることができます。
郵送で取り寄せる場合、往復の郵便の時間がかかります。
熟慮期間3か月では、戸籍謄本が準備できないことが考えられます。
このような事情の場合、延長が認められやすいと言えます。
②財産調査に時間がかかるケース
相続放棄をすると、プラスの財産を引き継がなくなりますが、マイナスの財産も引き継ぐことがなくなります。
相続人の気持ちとしては、プラスの財産が多ければ相続を承認したいでしょう。
マイナスの財産が多ければ相続放棄をしたいでしょう。
相続放棄をするか相続を単純承認するか判断するため、被相続人のプラスの財産とマイナスの財産を調査する必要があります。
被相続人と離れて住んでいた場合、被相続人の経済状況を詳細に知っていることはあまりありません。
マイナスの財産がたくさんある場合、時効が完成していることがあります。
借金の消滅時効が完成している場合、相続を単純承認して時効を援用することができます。
被相続人に複数の借金がある場合、一部の借金は消滅時効が完成していても他の借金は消滅時効が完成していないかもしれません。
不用意に消滅時効を援用した場合、相続放棄ができなくなります。
被相続人の借金の消滅時効を援用することは、相続財産の処分にあたるからです。
相続財産の処分は、相続の単純承認と見なされます。
相続を単純承認して時効を援用しようと考える場合、取引履歴を詳細に確認する必要があります。
取引履歴の調査には、時間がかかることが通常です。
熟慮期間3か月では、財産調査が間に合わないでしょう。
このような事情の場合、延長が認められやすいと言えます。
6相続放棄を司法書士に依頼するメリット
実は、相続放棄はその相続でチャンスは1回限りです。
家庭裁判所に認められない場合、即時抗告という手続を取ることはできますが、高等裁判所の手続で、2週間以内に申立てが必要になります。
家庭裁判所で認めてもらえなかった場合、即時抗告で相続放棄を認めてもらえるのは、ごく例外的な場合に限られます。
一挙にハードルが上がると言ってよいでしょう。
相続が発生してから3か月以内に申立てができなかったのは止むを得なかったと家庭裁判所に納得してもらって、はじめて、家庭裁判所は相続放棄を認めてくれます。
通常は家庭裁判所に対して、上申書や事情説明書という書類を添えて、説得することになります。家庭裁判所が知りたいことを無視した作文やダラダラとした作文では認めてもらうことは難しいでしょう。
司法書士であれば、家庭裁判所に認めてもらえるポイントを承知していますから、認めてもらえやすい書類を作成することができます。
さらに、通常の相続放棄と同様に戸籍や住民票が必要になります。
お仕事や家事、通院などでお忙しい人には平日の昼間に役所にお出かけになって準備するのは負担が大きいものです。
戸籍や住民票は郵便による取り寄せもできますが、書類の不備などによる問い合わせはやはり役所の業務時間中の対応が必要になりますから、やはり負担は軽いとは言えません。
このような戸籍や住民票の取り寄せも司法書士は代行します。
3か月の期限が差し迫っている方や期限が過ぎてしまっている方は、すみやかに司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。
相続時精算課税制度を選択しても相続放棄
1相続放棄をするととプラスの財産もマイナスの財産も相続しない
相続が発生したら、原則として、被相続人のプラスの財産もマイナスの財産も相続人が受け継ぎます。
被相続人のプラスの財産もマイナスの財産も受け継がないことを相続の放棄といいます。
相続放棄をすると、プラスの財産を引き継がなくなりますが、マイナスの財産も引き継ぐことがなくなります。
相続放棄を希望する場合、家庭裁判所に手続をする必要があります。
一般的に、相続人同士の話し合いにおいて相続財産を受け取らない申出をしたことを相続放棄と表現することがあります。
家庭裁判所で手続をしない場合、相続放棄の効果はありません。
相続人同士で話し合いをしただけでは、相続放棄と認められません。
2相続財産を処分したら相続放棄が無効になる
相続放棄はできないのに、家庭裁判所に相続放棄の手続をして、相続放棄が認められても無効です。
単純承認したとみなされる行為は、法律で定められています。
相続財産の名義変更をした、相続財産である銀行の預貯金を引き出して使ってしまった場合が典型的です。
単に、引き出しただけであれば、処分とは言えないことが多いでしょう。
引き出したうえ、自分の口座に送金して保管すると、「処分した」と評価される可能性が高くなります。
銀行の預貯金を引き出してお葬式の支払にあてた場合、状況によっては、処分したと判断されることもあります。
被相続人が払い過ぎた税金などの還付金の支払を受けた場合、「処分した」と判断されます。
相続財産の分け方について、相続人全員で合意をした場合も、相続財産を「処分した」場合に当たります。
相続財産に株式がある場合、株式に基づく株主権の行使が「処分した」になることがあります。
被相続人が会社役員かつ株主の場合、安易に株主総会を開催して、役員変更すると相続放棄が無効になるおそれがあります。
3相続時精算課税制度を選択しても相続放棄ができる
①相続時精算課税制度とは
相続時精算課税制度とは、贈与税の計算方法のひとつです。
贈与をする人と贈与を受ける人が一定の条件にあてはまる場合に、相続時精算課税制度を選択することができます。
相続時精算課税制度を選択した場合、贈与した財産の累計2500万円までは贈与税がかかりません。
与した財産の累計2500万円を超えた部分に対して一律20%の贈与税がかかります。
贈与者に相続が発生した場合、贈与財産と相続財産を合計して相続税を計算します。
支払い済みの贈与税がある場合、相続税から差し引いて残額の相続税を納めます。
②相続時精算課税制度を選択できる人
相続時精算課税制度は、贈与をする人と贈与を受ける人が一定の条件にあてはまる場合に選択することができます。
贈与をする人の条件は、60歳以上であることです。
贈与を受ける人の条件は、18歳以上であることです。
贈与をする人と贈与を受ける人は、直系の血族でなければなりません。
相続時精算課税制度は、高齢者が持つ資産を現役世代に移転しやすくするための制度だからです。
③相続時精算課税制度を選択しても単純承認にならない
相続時精算課税制度は、高齢者が持つ資産を現役世代に移転しやすくするための制度です。
相続時精算課税制度を選択できる人は、直系血族です。
贈与をする人に相続が発生した場合、贈与を受ける人が相続人なるでしょう。
相続時精算課税制度を選択して財産の贈与を受けた場合、相続財産の前渡しに見えます。
財産の贈与を受けても一定額までは贈与税がかからず、贈与財産は相続財産と合計して課税するからです。
財産の贈与を受けた場合、受け取った財産を使ってしまいます。
相続財産を処分した場合、単純承認したとみなされます。
単純承認をしたとみなされた場合、撤回することはできません。
単純承認をした後で、相続放棄をすることはできません。
単純承認をした事情を知らずに、家庭裁判所が相続放棄を認める決定をすることがあります。
事情を知らずに相続放棄が認められても、後から無効になります。
相続時精算課税制度を選択して財産の贈与を受けた後に財産を使ってしまっても、単純承認になりません。
相続時精算課税制度を選択して財産の贈与を受けることは、単なる生前贈与だからです。
受け取った財産を使ってしまっても、相続放棄は無効になりません。
生前贈与を受けた場合、贈与された財産は贈与を受けた人の固有の財産です。
相続財産ではありません。
相続時精算課税制度を選択して財産の贈与を受けた後に財産を使ってしまっても、相続放棄をすることができます。
④相続放棄をしても相続税申告
相続放棄をした相続人は、相続財産を受け取ることはできません。
相続税は相続財産を受け取った場合に課されます。
相続放棄をした相続人は、原則として、相続税が課されることはありません。
相続時精算課税制度を選択して財産の贈与を受け取った場合、贈与財産は相続財産と合計して相続税を計算します。
贈与財産と相続財産の合計が基礎控除を超える場合、相続税の対象になります。
財産の贈与を受け取った人が相続放棄をした場合でも、相続税の対象になります。
相続時精算課税制度を選択した場合、税務署に対して相続時精算課税選択届出書を提出します。
税務署は、相続税の申告義務があることを把握しています。
相続時精算課税制度の適用を受けて生前贈与を受けた場合、忘れずに相続税の申告の有無を確認しましょう。
4債権者は詐害行為を取り消すことができる
①詐害行為とは
お金を借りた人は、借りたお金を返さなければなりません。
借りたお金を返さなければならないのに、自分の財産を不当に減少させて、結果、お金を返せなくなることがあります。
自分の財産を不当に減少させたら、お金を貸した人はお金を返してもらえなくなる結果になります。
お金を貸した人が困ることを知っているのに、自分の財産を不当に減少させることを詐害行為と言います。
お金を返してもらうため、お金を貸した人は詐害行為を取り消すことができます。
詐害行為として取り消すことができるのは、財産行為のみです。
お金を返さなければならないのに、自分の財産の大部分を贈与した場合、お金を返せなくなるでしょう。
自分の財産の大部分を贈与した場合、お金を返せなくなって、お金を貸した人が困るのは知っていると言えます。
このような贈与は、合法であっても、詐害行為にあたります。
お金を貸した人は、詐害行為を取り消すことができます。
②債権者は生前贈与を取り消すことができる
被相続人の財産がわずかなプラスの財産と莫大なマイナスの財産ということがあります。
この状況で、わずかなプラスの財産を相続人に生前贈与することがあります。
わずかなプラスの財産と莫大なマイナスの財産の場合、贈与契約はできないというルールはありません。
財産を譲り渡す人と譲り受ける人の契約で贈与をすることができます。
被相続人と相続人が相談してこのような契約をしたのでしょう。
贈与契約をした後、被相続人が死亡した場合、相続人は相続放棄をすることができます。
原則どおりでは、相続放棄をしているから、相続人は莫大なマイナスの財産を受け継ぐことはありません。
原則どおりでは、遺贈は相続放棄と別物だから、わずかなプラスの財産を受け取ることができるとなってしまいます。
このようなことが許されると、債権者にとってあまりに理不尽です。
債権者は、裁判所に訴えて、理不尽な生前贈与の取り消しを請求することができます。
借りたお金を返さなければならないのに、自分の財産を不当に減少させて、結果、お金を返せなくしているからです。
自分の財産を不当に減少させたら、お金を貸した人はお金を返してもらえなくなる結果になります。
お金を貸した人が困ることを知っているのに、自分の財産を不当に減少させることを詐害行為と言います。
理不尽な遺贈として裁判所に認められれば、詐害行為は取り消すことができます。
③債権者は相続放棄を取り消すことができない
相続が発生したら、相続財産は相続人全員の共有財産になります。
被相続人の財産は、プラスの財産もマイナスの財産も相続財産です。
被相続人が多額の借金を抱えたまま死亡した場合、お金を貸した人は相続人にお金を返してもらおうとするでしょう。
相続人は被相続人の借金を引き継がないために、相続放棄をすることが考えられます。
お金を貸した人は相続人にお金を返してもらおうと思っていたのに、相続放棄をされたら、請求できなくなって困ります。
お金を貸した人が困るのは知っていると言えるから、相続放棄を詐害行為として取り消したいと思うでしょう。
このような場合、相続放棄を詐害行為として取り消すことはできません。
相続放棄をしても、自己の財産を不当に減らしたわけではありません。
お金を貸す人は、お金を借りた人が生前に自己破産するリスクを検討してお金を貸すか貸さないか決めているはずです。
お金を借りた人が死亡した後、相続人が相続放棄するリスクも検討してお金を貸すか貸さないか決めべきと言えます。
5相続放棄を司法書士に依頼するメリット
相続放棄はプラスの財産もマイナスの財産も引き継ぎませんという裁判所に対する申立てです。
相続人らとのお話合いで、プラスの財産を相続しませんと申し入れをすることではありません。
家庭裁判所で認められないとマイナスの財産を引き継がなくて済むというメリットは受けられないのです。
相続放棄をする場合、相続問題だけでなく、被相続人や相続人の借金の問題が隠れている場合が多いです。
このような複雑な事情がある場合、相続人だけでなく債権者を巻き込んでトラブルになりがちです。
あいまいな知識では、余計トラブルが大きくなります。
相続放棄を考えている人は、司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。
兄弟姉妹が相続放棄
1相続人になる人は法律で決まっている
相続が発生したら、親族のうち一定の範囲の人が相続人になります。
だれが相続人になるかについては、民法で決められています。
相続人になる人は次のとおりです。
①配偶者は必ず相続人になる
②被相続人に子どもがいる場合、子ども
③被相続人に子どもがいない場合、親などの直系尊属
④被相続人に子どもがいない場合で、かつ、親などの直系尊属が被相続人より先に死亡している場合、兄弟姉妹
2相続人になる兄弟姉妹とは
①父母が同じ兄弟姉妹
先順位の相続人がいない場合、兄弟姉妹が相続人になります。
兄弟姉妹というと、父母が同じ兄弟姉妹だけをイメージしがちです。
②父母の一方が同じ兄弟姉妹
父や母の一方だけ同じ兄弟姉妹がいることがあります。
異父兄弟姉妹や異母兄弟姉妹は、兄弟姉妹として相続人になります。
父や母の一方だけ同じ兄弟姉妹を、半血兄弟姉妹と表現することがあります。
③養子に行っても兄弟姉妹
養子縁組とは、血縁関係による親子関係の他に、法律上の親子関係を作る制度です。
養子には2種類あります。
普通養子と特別養子です。
子どものいない夫婦が養子縁組をする、配偶者の連れ子と養子縁組するといったことは日常的に聞くことあります。
一般的に、単に「養子」と言ったら、普通養子を指していることがほとんどです。
普通養子では、養子縁組をした後、血縁関係のある実親との親子関係は続きます。
特別養子では、養子縁組をした後、血縁関係のある実親との親子関係がなくなります。
被相続人が第三者と普通養子による養子縁組をして養子になっていることがあります。
普通養子による養子縁組をした場合、実親との親子関係は続きます。
被相続人の実親の他の子どもは、被相続人の兄弟姉妹です。
被相続人の実親の他の子どもは、被相続人の兄弟姉妹として相続人になります。
④実親の養子が兄弟姉妹
被相続人の血縁関係のある実親が養親になる養子縁組をしていることがあります。
養子縁組は、法律上の親子関係を作る制度です。
実親と養子縁組をした養子は、実親の子どもになります。
養子と血縁関係がある実子と区別はありません。
被相続人に血縁関係がある兄弟姉妹がいる場合でもいない場合でも、実親の養子は兄弟姉妹になります。
被相続人の実親の養子は、被相続人の兄弟姉妹として相続人になります。
⑤養親の実子が兄弟姉妹
被相続人が第三者と普通養子による養子縁組をして養子になっていることがあります。
被相続人の養親に血縁関係がある実子がいることがあります。
養子縁組をした場合、養子は養親の子どもになります。
養子と血縁関係がある実子と区別はありません。
被相続人に血縁関係がある兄弟姉妹がいる場合でもいない場合でも養親の実子は兄弟姉妹になります。
被相続人の養親の実子は、被相続人の兄弟姉妹として相続人になります。
⑥養子同士で兄弟姉妹
被相続人が第三者と普通養子による養子縁組をして養子になっていることがあります。
養子縁組をするのに、法律上人数制限はありません。
養親に複数の養子がいる場合があります。
養親に何人も養子がいたとしても、養親と養子縁組をした養子は、養親の子どもになります。
何人目の養子であっても区別はされません。
養親の他の養子は、被相続人の兄弟姉妹になります。
養子同士であっても、被相続人の兄弟姉妹として相続人になります。
⑦複数の養親と養子縁組ができる
養子縁組をするのに、法律上人数制限はありません。
養親が複数の養子と養子縁組をすることができます。
同様に、養子が複数の養親と養子縁組をすることができます。
普通養子による養子縁組の場合、実親との親子関係は続きます。
養子が複数の養親と養子縁組をする場合、普通養子による養子縁組であれば最初の養親との親子関係は続きます。
養子には、実親と最初の養親と次の養親がいることになります。
養子縁組を解消する手続は、離縁と言います。
離縁をした場合、戸籍の身分事項で確認することができます。
戸籍の身分事項に離縁が記載されていなければ、親子関係は続いていると判断できます。
複数の養子縁組をしても親子関係は続くからです。
戸籍に記載されている者欄で氏名の下に、父の氏名、母の氏名、養父の氏名、養母の氏名が記載されます。
複数の養子縁組をしている場合、最終の養父の氏名、最終の養母の氏名のみ記載される取り扱いです。
戸籍に記載されている者欄に記載されていない養父や養母がいる場合があり得ます。
被相続人が複数の養親と養子縁組をしている場合、すべての養親のすべての子どもはすべて兄弟姉妹になります。
最初の養親と次の養親に区別はないからです。
すべての養親の子どもは、被相続人の兄弟姉妹として相続人になります。
⑧親が認知した子どもが兄弟姉妹
婚姻関係にないカップルの間に生まれた子どもについて、自分の子どもと認めることを認知と言います。
実親であっても養親であっても、認知した子どもは兄弟姉妹になります。 親が認知した子どもは、被相続人の兄弟姉妹として相続人になります。
3相続放棄とは
①相続放棄は家庭裁判所の手続
相続が発生したら、原則として、被相続人のプラスの遺産もマイナスの遺産も相続人が受け継ぎます。
被相続人のプラスの遺産もマイナスの遺産も受け継がないことを相続の放棄といいます。
相続放棄をすると、プラスの遺産を引き継がなくなりますが、マイナスの遺産も引き継ぐことがなくなります。
借金を引き継がないために相続放棄をするなどのケースが一般的です。
一般的に、相続人全員の話し合いで相続財産をご辞退することを相続放棄と表現することがあります。
本来、相続放棄は家庭裁判所に対する手続です。
相続人に相続財産をご辞退することではありません。
家庭裁判所に対して手続をしていない場合、相続放棄の効果はありません。
②相続放棄ができるのは相続人だけ
相続の放棄は、被相続人のプラスの遺産もマイナスの遺産も受け継がないことの申立てです。
相続放棄ができるのは、相続人だけです。
被相続人の生前は、相続放棄はできません。
相続人になる予定の人であって、まだ相続人でないからです。
先順位の相続人がいる場合、相続放棄はできません。
先順位の人が相続人になるからです。
先順位の相続人全員が相続放棄をした場合、相続放棄の手続をすることができます。
先順位の相続人全員が相続放棄をした場合、相続人になるからです。
順位の異なる相続人は、同時に相続放棄をすることはできません。
先順位の相続人の相続放棄が認められない場合、後順位の人はまだ相続人でないからです。
③相続放棄の期限3か月のスタートは「知ってから」
相続放棄は、原則として、相続があったことを知ってから3か月以内に申立てをする必要があります。
相続があったことを知ってからとは、必ずしも、被相続人の死亡してからではありません。
被相続人が死亡した後3か月以上経過してから、相続放棄の申立てをして認められることがあります。
相続放棄ができる3か月以内のスタートは、相続があったことを知ってからだからです。
相続があったことを知らなかった場合、相続放棄ができる3か月がスタートしていません。
相続放棄の申立てをしてから、家庭裁判所が相続放棄を認める通知が届くまでおよそ1か月程度かかります。
親などの直系尊属は先順位の子ども全員が相続放棄するまで、相続放棄の申立てはできません。
相続放棄の期限3か月が過ぎてしまうのではないかと気が気でないかもしれません。
先順位の子ども全員が相続放棄をしたことを知って自分が相続人であることを知ります。
相続放棄の期限3か月のスタートは知ってからだから、知ってから3か月以内であれば手続をすることができます。
第三順位の兄弟姉妹も同じことです。
第三順位の兄弟姉妹は自分が相続人であることを知るのは、子ども全員が相続放棄をして、次順位の親などの直系尊属全員が相続放棄をした後です。
第三順位の兄弟姉妹は、被相続人が死亡してから3か月以上経過してから自分が相続人であることを知ることになるかもしれません。
相続放棄の期限3か月のスタートは知ってからだから、知ってから3か月以内であれば手続をすることができます。
このポイントは、相続が発生してから3か月以内に届出ができなかったのは止むを得なかったと家庭裁判所に納得してもらうことです。
3か月届出ができなかったのは仕方なかったと家庭裁判所が納得できる理由があるときだけは、家庭裁判所も相続放棄を認めてくれるのです。
家庭裁判所は相続放棄を認めた場合、相続放棄の申立てをした人にだけ通知します。
家庭裁判所から次順位相続人に相続放棄を認めたから相続人になりましたよという通知はありません。
相続放棄が認められた人は、次順位相続人に相続放棄が認められましたと通知する義務はありません。
普段から連絡を取り合っている場合、相続放棄をしたことを知らせてくれるようにお願いしておくといいでしょう。
疎遠な相続人の場合、何も連絡がないことも少なくありません。
債権者や市役所などから手紙が来て相続があったことを知った場合、この通知は大切です。
この手紙を見て相続があったことを知ったという証拠になるからです。
④相続放棄の管轄
相続放棄は、家庭裁判所に対する手続です。
相続放棄の申立ての提出先は、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です。
家庭裁判所の管轄は、裁判所のホームページで調べることができます。
被相続人と疎遠である場合、被相続人の最後の住所地が分からなくなっていることがあります。
被相続人の最後の住所地は、被相続人の除票を取得すれは判明します。
被相続人の除票は、住民票を置いていた市区町村役場に請求します。
被相続人の家族と連絡を取り合っていた場合、住民票を置いていた市区町村は容易に判明するでしょう。
生前に連絡をとりあっていなかった場合、相続が発生した後、長期間経過してから相続人であることを知ることがあります。
音信不通であった場合、被相続人に関する情報が全く分からないかもしれません。
被相続人に関する情報が全く分からない場合、被相続人の最後の住所地を探さなければなりません。
被相続人がどこに住民票を置いていたか分からない場合、戸籍の附票で調べることができます。
被相続人の戸籍の附票は、被相続人の本籍地の市区町村役場に請求します。
被相続人に関する情報が全く分からない場合、まず自分の本籍地の市区町村役場に自分の戸籍謄本を請求します。
自分の本籍地が分からない場合、自分の住民票のある市区町村役場に自分の住民票を請求します。
自分の住民票を請求するときに、本籍地の記載のある住民票と指定します。
自分の住民票に自分の本籍が記載されているから、自分の本籍地は判明します。
自分の戸籍謄本を取得したら、順番に被相続人の戸籍までたどっていきます。
死亡時の戸籍までたどり着いた場合、戸籍の附票を請求すると死亡時の住所が判明します。
4相続放棄を司法書士に依頼するメリット
相続放棄するためには、家庭裁判所に手続をする必要があります。
家庭裁判所で相続放棄が認められた場合、プラスの財産もマイナスの財産も引き継ぐことがなくなります。
相続放棄をすると、初めから相続人でなかったと扱われます。
家庭裁判所で相続放棄が認められた場合、相続に関する手続には関与しなくて済むと安心してしまいがちです。
家庭裁判所で相続放棄が認められた場合であっても、相続財産を処分した場合、相続放棄が無効になります。
相続放棄は簡単そうに見えて、実はいろいろなことを考慮しなければならない手続です。
相続放棄を考えている方は、司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。
相続放棄しても公共料金
1未払い公共料金は相続財産
相続が発生すると、原則として、被相続人の財産は相続人が相続します。
相続人が相続する財産が、相続財産です。
相続財産はプラスの財産とマイナスの財産があります。
どちらも、相続財産です。
プラスの財産は、財産と言われたときにイメージしやすいでしょう。
マイナスの財産は、一般的に借金やローンなどです。
被相続人に未払いの公共料金がある場合、未払いの公共料金は相続財産です。
未払いの公共料金は、相続で相続人に受け継がれます。
2相続放棄をしたら相続財産は受け継がない
①相続放棄が認められたら未払い公共料金の支払いは不要
相続放棄をするためには、家庭裁判所に対して必要書類を添えて申立てをします。
家庭裁判所で相続放棄が認められた場合、プラスの財産もマイナスの財産も引き継ぐことがなくなります。
マイナスの財産を引き継ぐことがなくなるから、未払い公共料金を支払う必要はありません。
②相続財産を処分したら相続放棄は無効になる
法律で定められた一定の条件にあてはまるときは、単純承認したとみなされます。
単純承認とは、被相続人のプラスの財産もマイナスの財産も受け継ぐものです。
単純承認とみなされた場合、相続放棄はできません。
相続放棄はできないのに家庭裁判所に相続放棄の手続をして、相続放棄が認められても無効です。
家庭裁判所が事情を分からずに相続放棄を認めてしまっても、後から無効になります。
単純承認したとみなされる行為は、法律で定められています。
相続財産を処分した場合、単純承認したとみなされます。
相続財産である銀行の預貯金を引き出して使ってしまった場合が典型的です。
相続財産を使って未払い公共料金を支払った場合、単純承認になります。
③相続放棄が認められても債権者に連絡されない
家庭裁判所は相続放棄を認めた場合、申立てをした人に通知します。
相続放棄の申立てをする場合、家庭裁判所にたくさんの必要書類を提出します。
相続放棄の申立てで提出する書類は、次のとおりです。
(1)被相続人の戸籍謄本
(2)被相続人の除票
(3)相続放棄する人の戸籍謄本
この他に、裁判所が使う郵便切手や収入印紙が必要です。
必要書類には、債権者の名簿などはありません。
家庭裁判所は、提出された書類を見て審査をします。
被相続人がだれから借金していたのか家庭裁判所は知りません。
家庭裁判所は、被相続人が何を滞納していたのか自主的に調査をすることはありません。
家庭裁判所は債権者がだれなのか知らないから、債権者に連絡することはありません。
債権者から見ると、知らないうちに相続放棄の申立てがされて知らないうちに相続放棄が認められたとなります。
何も知らないから、債権者は被相続人の未払い金を相続人に払ってもらいたいと考えて催促をしてきます。
債権者は何も知らないから、催促されたら相続放棄が認められたことを知らせてあげるといいでしょう。
ほとんどの場合、相続放棄申述受理通知書のコピーを渡せば分かってくれます。
④未払い公共料金は相続人の固有の財産で支払いができる
相続財産を使って未払い公共料金を支払った場合、単純承認になります。
相続人の固有の財産を使って未払い公共料金を支払った場合、単純承認になりません。
相続人の固有の財産を使ったのだから、相続財産の処分ではないからです。
相続放棄が認められた場合、被相続人の債務を引き継ぎません。
被相続人に公共料金の未払いがあっても、支払う義務はありません。
支払い義務はなくても、事業者に申し訳がないから相続人が支払いたいケースがあります。
未払いの公共料金は、相続人の固有の財産から支払うことができます。
電気や水道などの公共料金の未払いが続いた場合、供給が止められてしまいます。
被相続人と相続人が同居していた場合、ライフラインの供給が止められると困ってしまいます。
ライフラインの供給を維持するため、公共料金の未払いを解消する必要があります。
未払いの公共料金は、相続人の固有の財産から支払うことが重要です。
⑤解約や名義変更は単純承認にならない
電気、ガスや水道などのライフラインの契約は、名義変更や解約をしても財産処分にはあたりません。
相続放棄をした場合、相続放棄の連絡だけすれば解約手続が不要になることがあります。
被相続人の契約に手を付けずに、新たに契約をする方法で対応してもらうケースがあります。
新たに契約をする方法であれば、より安心できるでしょう。
3日常家事債務は支払義務がある
①夫婦の日常家事債務は連帯債務
被相続人の配偶者は、日常家事債務について連帯責任があります。
日常家事債務とは、夫婦の共同生活で必要となる債務のことです。
日常家事債務は、夫婦2人の連帯債務です。
日常家事債務は、夫婦2人のそれぞれの固有の義務です。
連帯債務は、債務者がそれぞれ独立して全額の債務を負担します。
債務者のひとりが債務を弁済した場合、他の債務者も債務の弁済を免れます。
公共料金の支払いは、日常家事債務にあたります。
被相続人が電気、ガスや水道などのライフラインの契約をした場合、夫婦の共同生活で必要になるから契約しているはずです。
被相続人の配偶者は契約の当事者でない場合であっても、支払義務があります。
日常家事債務は、夫婦2人の連帯債務だからです。
②相続放棄をしても連帯債務は消えない
相続放棄が認められた場合、被相続人の債務を引き継ぎません。
被相続人のマイナスの財産を引き継ぐことがなくなるから、未払いがあっても支払う必要はありません。
日常家事債務は、夫婦2人の連帯債務です。
被相続人の配偶者は、独立して全額の債務を負担しています。
被相続人のマイナスの財産を引き継がない場合、連帯債務に影響はありません。
日常家事債務は、被相続人の配偶者の固有の義務だからです。
被相続人の配偶者は、独立して全額の債務を負担しています。
債務の2分の1だけ払えば済むといったものではありません。
被相続人の配偶者は、相続放棄をしても公共料金の支払義務があります。
③日常家事債務を相続財産から支出すると単純承認になる
日常家事債務は、夫婦2人の連帯債務です。
被相続人の配偶者は相続放棄をしても、公共料金の支払い義務があります。
被相続人の配偶者に支払い義務があるのは、被相続人の配偶者の固有の義務だからです。
被相続人の配偶者は、固有の財産から公共料金の支払いをする必要があります。
相続財産から支払いをした場合、相続財産の処分になります。
相続財産を処分した場合、単純承認になります。
④夫婦関係が破綻していたら日常家事債務ではない
日常家事債務とは、夫婦の共同生活で必要となる債務のことです。
法律上の夫婦ではあっても夫婦関係が破綻している場合、夫婦の共同生活の実態がなく日常の家事が観念できません。
単なる別居中や離婚のための話し合い中では、夫婦関係が破綻しているとは認められません。
ある程度長期間別居していて生計が別になっている場合、日常の家事が観念できなくなると言えます。
夫婦関係が破綻しており当然に支払い義務がないことは、請求された配偶者が客観的に証明する必要があります。
どのような債務が夫婦の日常家事債務になるのかは、夫婦の関係性によって異なります。
収入や資産規模、地域性によっても一概に言えないから、個別事情を踏まえて判断されます。
4相続放棄を司法書士に依頼するメリット
相続放棄はプラスの財産もマイナスの財産も引き継ぎませんという裁判所に対する届出です。
相続人らとのお話合いで、プラスの財産を相続しませんと申し入れをすることではありません。
つまり、家庭裁判所で認められないとマイナスの財産を引き継がなくて済むというメリットは受けられないのです。
実は、相続放棄はその相続でチャンスは実質的には1回限りです。
家庭裁判所に認められない場合、即時抗告という手続を取ることはできますが、高等裁判所の手続で、2週間以内に申立てが必要になります。
家庭裁判所で認めてもらえなかった場合、即時抗告で相続放棄を認めてもらえるのは、ごく例外的な場合に限られます
一挙にハードルが上がると言ってよいでしょう。
相続放棄は慎重に判断する必要がありますが、いろいろな誤解から利用をためらう人が多いのも事実です。
利用をためらっていると3か月はあっという間です。
相続が発生すると、家族は親戚や知人へ連絡などで悲しみに浸る暇もないくらい忙しくなります。
3か月以内に必要書類を揃えて手続をするのは想像以上にハードルが高いものです。
相続放棄を考えている方はすみやかに司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。
配偶者が相続放棄
1配偶者は常に相続人
相続が発生したら、親族のうち一定の範囲の人が相続人になります。
だれが相続人になるかについては、民法で決められています。
相続人になる人は次のとおりです。
①配偶者は必ず相続人になる
②被相続人に子どもがいる場合、子ども
③被相続人に子どもがいない場合、親などの直系尊属
④被相続人に子どももいない場合で、かつ、親などの直系尊属が被相続人より先に死亡している場合、兄弟姉妹
2配偶者は相続放棄ができる
①相続人は相続放棄ができる
相続が発生した場合、被相続人のものは原則として相続財産になります。
相続財産というとプラスの財産だけをイメージするかもしれません。
プラスの財産だけでなくマイナスの財産も相続財産です。
莫大なマイナスの財産がある場合、財産を引き継ぎたくないと考えるでしょう。
相続人は、家庭裁判所に対して相続を放棄する申立てをすることができます。
相続人でない人は、相続放棄をすることができません。
配偶者は相続人だから、相続放棄をすることができます。
相続放棄は、相続人ひとりひとりが自分の意思で自由に判断できるものです。
相続人は、一人だけ相続放棄をすることができます。
相続放棄をする場合、他の相続人の同意は不要です。
他の相続人が反対していても、一人だけ相続放棄をすることができます。
ときには他の相続人が何も知らないところで相続放棄をすることがあります。
相続放棄をすることで一人だけ借金から逃れたとしても、後ろめたく思うことはありません。
②配偶者が相続放棄をしても相続権は移らない
配偶者は必ず相続人になります。
相続順位とは無関係に、必ず相続人になります。
配偶者が相続放棄をした場合、相続人でなくなります。
先順位の相続人が相続人でなくなった場合、次順位の人が相続人になります。
配偶者が相続人でなくなっても、他の人が相続人になることはありません。
配偶者は相続順位とは無関係の存在だからです。
③配偶者が相続放棄をしたら相続分と遺留分が変更
配偶者が相続放棄をした場合、配偶者以外の相続人で相続財産を分け合います。
配偶者以外の相続人の法定相続分が変わります。
例えば、配偶者と長男、長女の場合の法定相続分
配偶者 2分の1
長男 4分の1
長女 4分の1
配偶者が相続放棄をした場合
配偶者 2分の1 →相続しない
長男 4分の1 →2分の1
長女 4分の1 →2分の1
配偶者以外の相続人に遺留分がある相続人の場合、遺留分が変わります。
遺留分とは、相続財産に対して認められる最低限の権利のことです。
遺留分は、兄弟姉妹以外の相続人に認められます。
被相続人の子どもが相続人になる場合、遺留分が認められます。
例えば、配偶者と長男、長女の場合の遺留分
配偶者 4分の1
長男 8分の1
長女 8分の1
配偶者が相続放棄をした場合
配偶者 2分の1 →相続しない
長男 8分の1 →4分の1
長女 8分の1 →4分の1
3相続放棄をしても年金を受け取ることができる
①未支給年金を受け取ることができる
銀行などの金融機関は預金者が死亡したことを確認すると、口座の取引をできなくします。
口座の取引を止めることを口座の凍結といいます。
被相続人が年金受給者である場合、年金の振り込みを受けることができなくなります。
年金は死亡した月の分まで支給されます。
年金は、後払いで支給されます。
例えば、4月分と5月分の年金は、6月に支給されます。
年金を受け取っている人が4月に死亡した場合、4月分の年金まで支給されます。
4月分の年金は、6月に振込みがされます。
多くの場合、6月の年金支払い日には、口座が凍結されているでしょう。
6月に支給される年金の振込みを受けることができません。
口座が凍結などでまだ受け取っていない年金のことを、未支給年金と言います。
未支給年金を受け取る権利は、相続財産ではありません。
未支給年金を請求することができる人は、相続とは別に決められています。
未支給年金を受け取る権利は、未支給年金を請求することができる人の固有の財産です。
配偶者は、未支給年金を請求することができます。
配偶者がすでに相続放棄をした場合でも、これから相続放棄をするつもりでも、未支給年金を受け取ることができます。
②遺族年金を受け取ることができる
遺族年金は、年金に加入していた人が死亡したときに遺族に対して支給される年金です。
遺族年金を受け取る権利は、相続財産ではありません。
被相続人の死亡をきっかけにして、遺族に対して支給されます。
被相続人が生前に遺族年金の受給権を得てはいませんから、被相続人から受け継ぐものではありません。
遺族年金の受給権は、遺族の固有の権利です。
被相続人から相続するものではないから、相続放棄とは無関係です。
配偶者が遺族年金を受け取るための条件をすべて満たしている場合、遺族年金を受け取ることができます。
配偶者が相続放棄をしても相続放棄をしなくても、遺族年金を受け取ることができます。
4相続放棄をしても生命保険の死亡保険金
①生命保険の死亡保険金を受け取ることができる
生命保険の死亡保険金は金額が大きいことが多いので、気になる人も多いでしょう。
原則として生命保険の保険金を受け取る権利は、相続人の固有の財産です。
受取人が「相続人」と指定してあっても、相続で受け取るものではありません。
被相続人の死亡をきっかけにして、保険契約によって受取人が保険金を受け取るものです。
多くの場合、被相続人は生前に生命保険の死亡保険金を受け取る権利を持っていなかったでしょう。
相続によって、被相続人から受け継いだものではありません。
生命保険の死亡保険金の受取人に配偶者が指定されている場合、配偶者は死亡保険金を受け取ることができます。
配偶者が相続放棄をしても相続放棄をしなくても、生命保険の死亡保険金を受け取ることができます。
生命保険の保険金を受け取ったことで、相続放棄が無効になることはありません。
②相続税の生命保険金の非課税枠は使えない
原則として生命保険の保険金を受け取る権利は、相続財産ではありません。
相続財産ではないけど相続税の対象になります。
生命保険の保険金について、相続人全体の非課税枠は 500万円×法定相続人の人数 です。
相続人全員の非課税枠を計算するときは、相続放棄した人も含めて計算します。
相続放棄した人は、相続人全員の非課税枠を計算するときは含めるのに、その人の相続税を計算するときには、500万円の非課税枠を使うことはできません。
500万円分非課税にできないので、その分だけ税金を余計に負担しなければなりません。
5相続放棄をしても配偶者短期居住権
配偶者短期居住権とは、被相続人の家に住んでいた配偶者が一定期間無条件かつ無償で住み続けることができる権利です。
相続が発生してから、配偶者が住む場所を失うことがないように保護するために作られた権利です。
次の要件を満たせば、何もしなくても自動的に発生します。
①配偶者であること
配偶者短期居住権を取得する配偶者は、法律上の配偶者のみです。
内縁の配偶者や事実婚の配偶者は、配偶者短期居住権を取得することはできません。
法律上の配偶者でも、相続廃除された人や相続欠格になった人は配偶者短期居住権を取得することができません。
法律上の配偶者が相続放棄をした場合、配偶者であることという条件を満たしていると言えます。
②被相続人の所有していた建物であること
被相続人と配偶者以外の人と共有建物であっても、配偶者短期居住権は成立します。
③相続開始時に無償で居住していたこと
6相続放棄をしても日常家事債務
被相続人の配偶者は、日常家事債務について連帯責任があります。
日常家事債務とは、夫婦の共同生活で必要となる債務のことです。
日常家事債務は、夫婦2人の連帯債務です。
日常家事債務は、夫婦2人のそれぞれの固有の義務です。
連帯債務は、債務者がそれぞれ独立して全額の債務を負担します。
債務者のひとりが債務を弁済した場合、他の債務者も債務の弁済を免れます。
被相続人が電気、ガスや水道などのライフラインの契約をした場合、夫婦の共同生活で必要になるから契約しているはずです。
被相続人の配偶者は、契約の当事者でない場合であっても支払義務があります。
日常家事債務は、夫婦2人の連帯債務だからです。
被相続人の配偶者が相続放棄をした場合、日常家事債務に影響はありません。
相続放棄が認められた場合、被相続人の債務を引き継ぎません。
日常家事債務は、被相続人の配偶者の固有の義務です。
相続放棄をしても相続を単純承認しても、固有の義務に影響はありません。
被相続人の配偶者は、独立して全額の債務を負担しています。
被相続人の配偶者は、相続放棄をしても日常家事債務の支払義務があります。
自称専門家はこの点を強調して配偶者は相続放棄ができないと称して、他の債務の返済を求めます。
日常家事債務の範囲は、夫婦の関係性や収入、資産状況から一概に言えるものではありません。
自称専門家の言うことを鵜のみにする前に、信頼できる専門家に相談しましょう。
7相続放棄を司法書士に依頼するメリット
実は、相続放棄はその相続でチャンスは1回限りです。
家庭裁判所に認められない場合、即時抗告という手続を取ることはできますが、高等裁判所の手続で、2週間以内に申立てが必要になります。
家庭裁判所で認めてもらえなかった場合、即時抗告で相続放棄を認めてもらえるのは、ごく例外的な場合に限られます。
一挙にハードルが上がると言ってよいでしょう。
相続放棄は撤回ができないので、慎重に判断する必要があります。
せっかく、相続放棄が認められても、相続財産を処分した判断されたら無効になりかねません。
このような行為をしてしまわないように、あらかじめ知識を付けておく必要があります。
相続放棄を自分で手続したい人の中には、相続放棄が無効になることまで考えていない場合が多いです。
司法書士は、相続放棄が無効にならないようにサポートしています。
せっかく手続きしても、相続放棄が無効になったら意味がありません。
相続放棄を考えている方は、司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。
郵送で相続放棄
1相続放棄の必要書類は郵送で取り寄せができる
①相続放棄の必要書類
相続放棄は、家庭裁判所に対する手続です。
相続放棄申述書に必要書類を添えて家庭裁判所に提出します。
家庭裁判所に提出する書類は、次のとおりです。
(1)相続放棄申述書
(2)被相続人の除票
(3)相続放棄する人の戸籍謄本(3か月以内のもの)
(4)収入印紙
(5)裁判所が手続で使う郵便切手
(6)被相続人の戸籍謄本
②相続放棄申述書は裁判所のホームページからダウンロードができる
相続放棄は、家庭裁判所に対して申立てが必要です。
家庭裁判所に提出する相続放棄の申立ての書類のことを相続放棄申述書と言います。
相続放棄申述書は、裁判所のホームページからダウンロードすることができます。
全国の家庭裁判所で様式を受け取ることもできます。
③被相続人の除票は郵送で取り寄せることができる
相続放棄は、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に手続をします。
家庭裁判所の管轄は、裁判所のホームページで確認することができます。
被相続人の除票は、被相続人の最後の住所地を確認するために提出します。
被相続人の除票は、被相続人の住民票があった市区町村役場に請求します。
書類さえ揃っていれば、郵送で請求することができます。
市区町村役場によっては、郵便請求を受け付ける専門部署があります。
郵便請求受付の専門部署がある市区町村役場の場合、直接専門部署に送付するといいでしょう。
専門部署あてでなくても市区町村役場内で回送してもらえますが、手続に時間がかかることがあります。
④被相続人と相続放棄する人の戸籍謄本は郵送で取り寄せることができる
相続が発生する前は、相続放棄ができません。
相続放棄は、家庭裁判所に対して、必要な書類をを添えて相続放棄をしたい旨の届出をします。
家庭裁判所は、生前に相続放棄の受付はしません。
相続発生後に取得した戸籍謄本を提出する必要があります。
⑤裁判所が手続で使う郵便切手は家庭裁判所に問い合わせる
相続放棄申述書を提出するとき、裁判所が手続で使う郵便切手を一緒に提出します。
提出する郵便切手の種類や枚数は、家庭裁判所によって異なります。
家庭裁判所に問い合わせて、準備するといいでしょう。
家庭裁判所によっては、ホームページに記載されている場合があります。
2 相続放棄申述書は郵送で提出できる
①相続放棄申述書の提出先は被相続人の住所地を管轄する家庭裁判所
相続放棄申述書の提出先は被相続人の住所地を管轄する家庭裁判所です。
相続放棄する人の住所地の家庭裁判所ではありません。
ときには相続放棄をしたい人の住所地からはるか遠方の家庭裁判所である場合があります。
相続放棄申述書は、家庭裁判所に出向いて提出することができるし郵送で提出することができます。
郵送する場合は期限に間に合うように余裕を持って提出しましょう。
②記録の残る郵便が安心
相続放棄申述書を提出するのは、書留やレターパックなど記録の残る郵便で提出することをおすすめします。
相続放棄は、相続があったことを知ってから3か月以内に相続放棄申述書を提出する必要があります。
普通郵便は記録が残らないから、家庭裁判所に届いたか確認することができません。
家庭裁判所が相続放棄申述書を受け付けた場合、本人に受け付けたことを通知しません。
3か月以内に相続放棄申述書を提出する必要があるから、家庭裁判所に届いたか心配になることがあるでしょう。
普通郵便は、迷子になると探せなくなります。
書留やレターパックは、追跡番号があります。
郵便局のホームページで、郵便物の配達状況を調べることができます。
提出した相続放棄申述書について家庭裁判所に問い合わせをする場合、到着した日付を伝えると探してもらいやすくなります。
③家庭裁判所に出向く場合は受付時間に注意
相続放棄申述書は家庭裁判所に出向いて提出することができます。
家庭裁判所は平日の日中だけ業務を行っています。
業務時間中であれば、いつでも相続放棄申述書を受け付けてくれるとは限りません。
家庭裁判所によっては、書類の受付時間を限定している場合があるからです。
家庭裁判所に出向いて提出する場合は、受付時間に注意しましょう。
相続放棄申述書の提出は、家族が家庭裁判所に出向くこともできます。
④提出書類はコピーを取っておく
家庭裁判所に対して相続放棄の申立てをすると、相続放棄照会書が届きます。
相続放棄照会書とは、家庭裁判所から届く相続放棄についての意思確認です。
相続放棄は、影響の大きい手続なので間違いがないように慎重に確認します。
万が一、相続放棄申述書の内容と矛盾した回答をすると相続放棄を認めてもらえなくなるかもしれません。
提出した相続放棄申述書のコピーを取っておくと安心です。
相続放棄照会書は家庭裁判所によって名前が違うことがあります。
⑤相続放棄の提出書類は原本還付してもらうことができる
相続放棄申述書は、必要書類を添えて家庭裁判所に提出します。
家庭裁判所に提出した書類は、請求すれば原本還付してもらうことができます。
添付書類を返してもらえれば、財産を相続する相続人が使うことができます。
相続放棄申述書に原本還付申請書と返してもらいたい書類のコピーを添付します。
コピーに原本に相違ありませんなどの記載は不要です。
⑥原本還付を希望する場合は返信用封筒を添付する
戸籍謄本や住民票の原本還付を希望する場合、返信用封筒を添付します。
返信用封筒に返送先の宛名を記載します。
返信用のレターパックを用意すれば、切手の心配はしなくていいでしょう。
3相続放棄申述受理証明書も郵送申請ができる
家庭裁判所が相続放棄を認めた場合、相続放棄申述受理通知書が届きます。
相続放棄が認められた場合、家庭裁判所は本人にのみ通知します。
債権者や他の相続人に自主的に通知をすることはありません。
債権者や他の相続人に見せるため、相続放棄をしたことを証明してもらうことができます。
相続放棄申述受理証明書は、家庭裁判所で相続放棄を認めてもらったことの証明書です。
相続放棄申述受理証明申請書を家庭裁判所に提出します。
相続放棄申述受理証明申請書は、郵送で提出することができます。
相続放棄申述受理証明書の申請先は、被相続人の最後の住所地の家庭裁判所です。
郵送で相続放棄申述受理証明書を提出する場合、返信用封筒を添付します。
返信用封筒に返送先の宛名を記載します。
返信用のレターパックを用意すれば、切手の心配はしなくていいでしょう。
4相続放棄を司法書士に依頼するメリット
実は、相続放棄はその相続でチャンスは1回限りです。
家庭裁判所に認められない場合、即時抗告という手続を取ることはできますが、高等裁判所の手続で、2週間以内に申立てが必要になります。
家庭裁判所で認めてもらえなかった場合、即時抗告で相続放棄を認めてもらえるのは、ごく例外的な場合に限られます。
一挙にハードルが上がると言ってよいでしょう。
相続放棄は撤回ができないので、慎重に判断する必要があります。
せっかく、相続放棄が認められても、相続財産を処分した判断されたら無効になりかねません。
このような行為をしてしまわないように、あらかじめ知識を付けておく必要があります。
相続放棄を自分で手続きしたい人の中には、相続放棄が無効になることまで考えていない場合が多いです。
司法書士は、相続放棄が無効にならないようにサポートしています。
せっかく手続しても、相続放棄が無効になったら意味がありません。
相続放棄を考えている方は、司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。
相続放棄しても配偶者短期居住権
1配偶者短期居住権とは
配偶者短期居住権とは、被相続人の家に住んでいた配偶者が一定期間無条件かつ無償で住み続けることができる権利です。
相続が発生してから、配偶者が住む場所を失うことがないように保護するために作られた権利です。
次の要件を満たせば、何もしなくても自動的に発生します。
①配偶者であること
配偶者短期居住権を取得する配偶者は、法律上の配偶者のみです。
内縁の配偶者や事実婚の配偶者は、配偶者短期居住権を取得することはできません。
法律上の配偶者でも、相続廃除された人や相続欠格になった人は配偶者短期居住権を取得することができません。
相続廃除された人や相続欠格になった人は、保護する必要がないからです。
②被相続人の所有していた建物であること
被相続人と配偶者以外の人と共有建物であっても、配偶者短期居住権は成立します。
③相続開始時に無償で居住していたこと
2相続放棄しても配偶者短期居住権は使える
建物の所有者が配偶者短期居住権の消滅請求をしてから6か月経過するまで、配偶者短期居住権は認められます。
相続放棄をした配偶者であっても、最低6か月は自宅に住む続けることができます。
建物の所有者が配偶者短期居住権の消滅請求をしてから6か月なので、建物の所有者が消滅請求をしなければ、ずっと住み続けることができます。
相続廃除された人や相続欠格になった人は、相続放棄と同様に相続権を失います。
相続廃除された人や相続欠格になった人は、配偶者短期居住権を取得することができません。
相続廃除された人や相続欠格になった人は、保護する必要がないからです。
3配偶者短期居住権と配偶者居住権のちがい
配偶者短期居住権と配偶者居住権は、どちらも相続が発生してから、配偶者が住む場所を失うことがないように保護するために作られた権利です。
①配偶者短期居住権は自動的に発生する
配偶者短期居住権は要件を満たしていれば、何もしなくても自動的に発生します。
配偶者居住権は、自動的に発生することはありません。
遺言書や遺産分割協議などによって、権利が設定されるものです。
②建物が第三者と共有の場合でも配偶者短期居住権は成立
建物を被相続人と配偶者以外の人と共有しているケースがあります。
被相続人と配偶者以外の人と共有建物であっても、配偶者短期居住権は成立します。
配偶者居住権は、被相続人と配偶者以外の人と共有建物の場合は成立しません。
③配偶者短期居住権は期間制限がある
遺産分割をするべき場合、(1)遺産分割が成立した日(2)相続が発生してから6か月経過した日のうち、どちらか遅い日まで配偶者短期居住権は認められます。
遺産分割が成立しなければ、何年も配偶者短期居住権は存続します。
配偶者が死亡するまで遺産分割が成立しなければ、結果として、終身配偶者短期居住権は存続します。
配偶者が相続放棄をしたなど遺産分割をする必要がない場合、建物の所有者が配偶者短期居住権の消滅請求をしてから6か月経過するまで、配偶者短期居住権は認められます。
配偶者居住権は原則として終身です。
遺言書や遺産分割協議などによって、存続期間を決めることもできます。
④配偶者短期居住権は居住部分のみ対象
配偶者短期居住権で認められるのは、従前の居住部分のみです。
配偶者居住権では、居住部分だけでなく建物全体が対象になります。
店舗付き住宅などでは、店舗も含めて対象になります。
配偶者居住権では、店舗などから得た収入は配偶者のものにできます。
⑤配偶者短期居住権は登記できない
配偶者居住権は登記できますが、配偶者短期居住権は登記できません。
要件を満たせば、配偶者短期居住権と配偶者居住権は、いずれも、登記をしなくても成立します。
配偶者居住権はせっかく登記できるのに、登記しないと大きな不利益があります。
例えば、建物所有者が建物を売却してしまうことがあります。
建物の買主は、建物を使うため立ち退きを求めるでしょう。
配偶者短期居住権は登記できませんから、建物の買主に配偶者短期居住権があるから立ち退きたくないなどと文句を言うことはできません。
登記があれば、建物の買主に立ち退きたくないなどと文句を言うことができます。
配偶者居住権は登記できますから、登記がしてあれば建物の買主に配偶者居住権を盾に文句を言ってそのまま住み続けることができます。
登記がしてなければ、建物の買主に配偶者居住権があるから立ち退きたくないなどと文句を言うことはできません。
建物の買主に立ち退きたくないなどと文句を言うことができるのは、登記の重要な効力です。
配偶者短期居住権が成立する場合、建物所有者は配偶者を追い出すことはできません。
建物所有者は、配偶者短期居住権の行使の邪魔をすることができないからです。
配偶者が建物から立ち退かなければならなくなったのは、もとはと言えば、建物所有者が建物を売却したせいです。
建物所有者が建物を売却したことで、配偶者は追い出されたと言えます。
配偶者が追い出されたのは、配偶者短期居住権の行使の邪魔をしたことと言えます。
配偶者短期居住権の行使の邪魔をしたことに対して、配偶者は損害賠償請求をすることができます。
配偶者は損害賠償請求をすることができますが、住み慣れた自宅を立ち退くこと負担は大きいと言えます。
⑥配偶者短期居住権は相続税の対象にならない
配偶者短期居住権は財産的価値はないとされていますから、相続税の対象とされません。
一方、配偶者居住権は財産的価値があり、相続税の対象とされます。
配偶者居住権は配偶者のみに認められる権利です。
配偶者居住権がある配偶者が死亡したら、配偶者居住権は消滅します。
配偶者居住権が消滅しますから、相続財産にならず、当然相続税の対象になりません。
4配偶者短期居住権と配偶者居住権の共通点
配偶者短期居住権と配偶者居住権は、いずれも、相続が発生してから、配偶者が住む場所を失うことがないように保護するために作られた権利です。
だから建物に対する権利で、土地に対して権利は及びません。
配偶者短期居住権と配偶者居住権は、いずれも、第三者に贈与や譲渡することはできません。
配偶者短期居住権と配偶者居住権は、いずれも、次の場合に消滅します。
①建物の用法を守って大切に使っていないとき
②無断で第三者に貸し出すなど第三者が使用する場合
③配偶者が死亡した場合
④建物が災害や火事などで滅失した場合
建物を維持するための費用は、配偶者短期居住権と配偶者居住権のいずれも、配偶者が負担しなければなりません。
配偶者短期居住権と配偶者居住権は、いずれも、建物の管理費用も負担する必要があります。
毎年の固定資産税も配偶者の負担になります。
配偶者短期居住権と配偶者居住権は、いずれも、配偶者が建物の修繕をすることができます。
5相続放棄を司法書士に依頼するメリット
相続放棄をすると、プラスの財産もマイナスの財産も受け継ぐ必要がなくなります。
被相続人が莫大な借金を抱えていた場合、借金を受け継がなくても済む一方で、全財産を受け継ぐことができなくなります。
被相続人が所有していた自宅に住み続けることはできなくなります。
新しい住まいを探し、引っ越しをするのは、簡単ではありません。
配偶者短期居住権は相続が発生してから、配偶者が住む場所を失うことがないように保護するために作られた権利です。
配偶者短期居住権は、遺言や遺産分割などで設定される権利ではないため、相続放棄をしていても使うことができます。
一方で、配偶者居住権は、遺言や遺産分割などで設定される権利です。
配偶者短期居住権より強力な権利ですが、相続放棄をしたら使うことができません。
配偶者居住権は登記ができます。
登記をしていないと、せっかくの権利が守られません。
配偶者短期居住権と配偶者居住権は、配偶者が住む場所を失うことがないように保護するために作られた権利ですが、メリットデメリットがあります。
制度の内容をよく理解して、適切な制度を選択しましょう。
相続放棄や配偶者居住権などの制度を利用しようと考えている方は、すみやかに司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。
兄弟姉妹まとめて相続放棄
1相続人になる人は法律で決まっている
相続が発生したら、親族のうち一定の範囲の人が相続人になります。
だれが相続人になるかについては、民法で決められています。
相続人になる人は次のとおりです。
①配偶者は必ず相続人になる
②被相続人に子どもがいる場合、子ども
③被相続人に子どもがいない場合、親などの直系尊属
④被相続人に子どもがいない場合で、かつ、親などの直系尊属が被相続人より先に死亡している場合、兄弟姉妹
2相続放棄とは
相続が発生したら、原則として、被相続人のプラスの遺産もマイナスの遺産も相続人が受け継ぎます。
被相続人のプラスの遺産もマイナスの遺産も受け継がないことを相続の放棄といいます。
相続放棄をすると、プラスの遺産を引き継がなくなりますが、マイナスの遺産も引き継ぐことがなくなります。
借金を引き継がないために相続放棄をするなどのケースが一般的です。
3兄弟姉妹まとめて相続放棄ができる
①同順位の相続人はまとめて相続放棄ができる
被相続人に莫大な借金があった場合、相続人全員が相続放棄をしたいと考えるでしょう。
同じ順位の相続人は、まとめて相続放棄をすることができます。
他の相続人が相続を単純承認するか相続放棄するかに関わらず、自分で判断することができます。
単純承認する場合でも相続放棄する場合でも、他の兄弟姉妹の同意は必要ありません。
②次順位の相続人は相続放棄も次順位
相続人には、相続順位があります。
先順位の相続人がいる場合、後順位の人は相続人になりません。
例えば、被相続人に子どもがいる場合、子どもが相続人になります。
被相続人に親などの直系尊属がいても、親などの直系尊属は相続人になりません。
子どもが先順位だからです。
家庭裁判所で相続放棄が認められた場合、はじめから相続人でなくなります。
被相続人の子ども全員が相続放棄をした場合、子どもはいないものと扱われます。
子どもがいない場合、次順位の親などの直系尊属が相続人になります。
子ども全員が相続放棄した後に、親などの直系尊属が相続放棄をすることができます。
子ども全員が相続放棄をしてからでないと、相続人ではないからです。
相続人になった後、相続放棄をすることができます。
被相続人に兄弟姉妹がいる場合も同じです。
子どもがいる場合や親などの直系尊属がいる場合、兄弟姉妹は相続人ではありません。
子ども全員と親などの直系尊属全員が相続放棄をした場合、子どもや親などの直系尊属がいないものと扱われます。
子どもも親などの直系尊属もいない場合、次順位の兄弟姉妹が相続人になります。
子ども全員と親などの直系尊属全員が相続放棄をした後に、兄弟姉妹は相続放棄をすることができます。
相続順位が違う相続人全員が相続放棄をする場合、相続順位の順番で相続放棄をすることになります。
4兄弟姉妹が相続放棄ができる時期
相続放棄は、原則として、相続があったことを知ってから3か月以内に申立てをする必要があります。
相続があったことを知ってからとは、必ずしも、被相続人の死亡してからではありません。
被相続人が死亡した後3か月以上経過してから、相続放棄の申立てをして認められることがあります。
相続放棄ができる3か月以内のスタートは、相続があったことを知ってからだからです。
相続があったことを知らなかった場合、相続放棄ができる3か月がスタートしていません。
相続放棄の申立てをしてから、家庭裁判所が相続放棄を認める通知が届くまでおよそ1か月程度かかります。
親などの直系尊属は先順位の子ども全員が相続放棄するまで、相続放棄の申立てはできません。
相続放棄の期限3か月が過ぎてしまうのではないかと気が気でないかもしれません。
先順位の子ども全員が相続放棄をしたことを知って自分が相続人であることを知ります。
相続放棄の期限3か月のスタートは知ってからだから、知ってから3か月以内であれば手続をすることができます。
第三順位の兄弟姉妹も同じことです。
第三順位の兄弟姉妹は自分が相続人であることを知るのは、子ども全員が相続放棄をして、次順位の親などの直系尊属全員が相続放棄をした後です。
第三順位の兄弟姉妹は、被相続人が死亡してから3か月以上経過してから自分が相続人であることを知ることになるかもしれません。
相続放棄の期限3か月のスタートは知ってからだから、知ってから3か月以内であれば手続をすることができます。
このポイントは、相続が発生してから3か月以内に届出ができなかったのは止むを得なかったと家庭裁判所に納得してもらうことです。
3か月届出ができなかったのは仕方なかったと家庭裁判所が納得できる理由があるときだけは、家庭裁判所も相続放棄を認めてくれるのです。
家庭裁判所は相続放棄を認めた場合、相続放棄の申立てをした人にだけ通知します。
家庭裁判所から次順位相続人に相続放棄を認めたから相続人になりましたよという通知はありません。
相続放棄が認められた人は、次順位相続人に相続放棄が認められましたと通知する義務はありません。
普段から連絡を取り合っている場合、相続放棄をしたことを知らせてくれるようにお願いしておくといいでしょう。
疎遠な相続人の場合、何も連絡がないことも少なくありません。
債権者や市役所などから手紙が来て相続があったことを知った場合、この通知は大切です。
この手紙を見て相続があったことを知ったという証拠になるからです。
5まとめて相続放棄をするメリット
①共通する書類は1通で済む
相続放棄をしたい旨の申立てに添える書類は次のとおりです。
(1)被相続人の戸籍謄本
(2)被相続人の除票
(3)相続放棄する人の戸籍謄本
(4)収入印紙
(5)裁判所が手続で使う郵便切手
基本的には(1)~(5)の書類を添えて届出をすれば充分ですが、場合に応じてこの他のものが必要になることもあります。
被相続人の子ども全員が相続放棄をする場合、(1)被相続人の戸籍謄本(2)被相続人の除票は共通して必要になります。
まとめて相続放棄をする場合、共通して必要になる書類は1通で済みます。
②司法書士などの専門家に依頼する場合は割引になることが多い
相続放棄はその相続でチャンスは実質的には1回限りです。
失敗したらやり直せばいいというわけにはいきません。
相続放棄の手続を司法書士などの専門家に依頼したい人もいるでしょう。
司法書士などの専門家に依頼する場合、費用負担があります。
相続人がバラバラで依頼するより複数の相続人がまとめて相続放棄をするほうが割引をしてもらえることが多いです。
6まとめて相続放棄をするときの注意点
①次順位の相続人に相続権が移る
相続放棄をすると相続人でなくなりますから、相続人はいないものと扱われます。
相続順位が同じ人がすべていないものと扱われた場合、次順位の人が相続人になります。
最初は相続人でなかった人が相続人になることがあります。
家庭裁判所は、相続放棄を認めた場合でも、他の相続人に何も連絡しません。
相続放棄をするのは、被相続人の借金を引き継がないためであることが多いでしょう。
相続放棄をしたら自分は借金から逃れることができます。
自分は借金から逃れて安心だけど、家族がどこまで追いかけられるか心配な人もいるでしょう。
家庭裁判所で相続放棄が認められても、借金は消えてなくなるわけではありません。
借金は、次順位の相続人に引き継がれます。
相続人になると、借金を引き継ぐ可能性があります。
配偶者の他は、②被相続人に子ども②親などの直系尊属③兄弟姉妹です。
相続放棄をする人の範囲は、相続する人の範囲と同じです。
相続する人は、被相続人の借金から逃れるために相続放棄をすることができます。
相続をすることができない人は、被相続人の借金を引き継ぐ心配はありません。
相続をすることができないから、相続放棄をする必要はありません。
相続放棄をした場合、相続放棄をした人の子どもが代襲相続をすることはありません。
相続放棄をすると相続人でなくなりますから、相続人はいないものと扱われるからです。
相続放棄をした人の子どもは、相続することはないから相続放棄をする必要はありません。
次順位の相続人に連絡する義務はありませんが、連絡してあげた方が親切でしょう。
相続人でないと思っていたのに、急に借金の返済を迫られたらびっくりするからです。
多くの場合、次順位の相続人も相続放棄を希望するでしょう。
相続放棄の手続をする準備をしておいてもらった方が、スムーズに手続できるでしょう。
②申立書は兄弟姉妹連名ではなく1人1通必要
相続放棄を希望する場合、家庭裁判所に対して申立書を提出します。
兄弟姉妹がまとめて相続放棄をする場合、申立書は1人1通準備します。
兄弟姉妹が一緒に相続放棄をする場合であっても、兄弟姉妹連名で1通の申立書を作成することはできません。
申立書に添付する書類は、共通する書類は1通で差し支えありません。
③相続放棄をしても管理をする義務がある
相続放棄をした人は、相続財産を管理すべき人が管理を始めるまで管理を続けなければなりません。
他に相続人がいない場合や相続人全員が相続放棄をした場合、相続人不存在であることが考えられます。
法定相続人がいない場合、相続財産は最終的には国のものになります。
国のものになる前にたくさんの手続があります。
相続財産の管理を続ける義務は、相続財産を管理すべき人が管理を始めるまで続きます。
7相続放棄を司法書士に依頼するメリット
相続放棄するためには、家庭裁判所に手続をする必要があります。
家庭裁判所で相続放棄が認められた場合、プラスの財産もマイナスの財産も引き継ぐことがなくなります。
相続放棄をすると、初めから相続人でなかったと扱われます。
家庭裁判所で相続放棄が認められた場合、相続に関する手続には関与しなくて済むと安心してしまいがちです。
家庭裁判所で相続放棄が認められた場合であっても、相続財産を処分した場合、相続放棄が無効になります。
相続放棄は簡単そうに見えて、実はいろいろなことを考慮しなければならない手続です。
相続放棄を考えている方は、司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。
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