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郵送で相続放棄

2023-08-04

1相続放棄の必要書類は郵送で取り寄せができる

①相続放棄の必要書類

相続放棄は、家庭裁判所に対する手続です。

相続放棄申述書に必要書類を添えて家庭裁判所に提出します。

家庭裁判所に提出する書類は、次のとおりです。

(1)相続放棄申述書

(2)被相続人の除票

(3)相続放棄する人の戸籍謄本(3か月以内のもの)

(4)収入印紙

(5)裁判所が手続で使う郵便切手

(6)被相続人の戸籍謄本

②相続放棄申述書は裁判所のホームページからダウンロードができる

相続放棄は、家庭裁判所に対して申立てが必要です。

家庭裁判所に提出する相続放棄の申立ての書類のことを相続放棄申述書と言います。

相続放棄申述書は、裁判所のホームページからダウンロードすることができます。

全国の家庭裁判所で様式を受け取ることもできます。

③被相続人の除票は郵送で取り寄せることができる

相続放棄は、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に手続をします。

家庭裁判所の管轄は、裁判所のホームページで確認することができます。

被相続人の除票は、被相続人の最後の住所地を確認するために提出します。

被相続人の除票は、被相続人の住民票があった市区町村役場に請求します。

書類さえ揃っていれば、郵送で請求することができます。

市区町村役場によっては、郵便請求を受け付ける専門部署があります。

郵便請求受付の専門部署がある市区町村役場の場合、直接専門部署に送付するといいでしょう。

専門部署あてでなくても市区町村役場内で回送してもらえますが、手続に時間がかかることがあります。

④被相続人と相続放棄する人の戸籍謄本は郵送で取り寄せることができる

相続が発生する前は、相続放棄ができません。

相続放棄は、家庭裁判所に対して、必要な書類をを添えて相続放棄をしたい旨の届出をします。

家庭裁判所は、生前に相続放棄の受付はしません。

相続発生後に取得した戸籍謄本を提出する必要があります。

⑤裁判所が手続で使う郵便切手は家庭裁判所に問い合わせる

相続放棄申述書を提出するとき、裁判所が手続で使う郵便切手を一緒に提出します。

提出する郵便切手の種類や枚数は、家庭裁判所によって異なります。

家庭裁判所に問い合わせて、準備するといいでしょう。

家庭裁判所によっては、ホームページに記載されている場合があります。

2 相続放棄申述書は郵送で提出できる

①相続放棄申述書の提出先は被相続人の住所地を管轄する家庭裁判所

相続放棄申述書の提出先は被相続人の住所地を管轄する家庭裁判所です。

相続放棄する人の住所地の家庭裁判所ではありません。

ときには相続放棄をしたい人の住所地からはるか遠方の家庭裁判所である場合があります。

相続放棄申述書は、家庭裁判所に出向いて提出することができるし郵送で提出することができます。

郵送する場合は期限に間に合うように余裕を持って提出しましょう。

②記録の残る郵便が安心

相続放棄申述書を提出するのは、書留やレターパックなど記録の残る郵便で提出することをおすすめします。

相続放棄は、相続があったことを知ってから3か月以内に相続放棄申述書を提出する必要があります。

普通郵便は記録が残らないから、家庭裁判所に届いたか確認することができません。

家庭裁判所が相続放棄申述書を受け付けた場合、本人に受け付けたことを通知しません。

3か月以内に相続放棄申述書を提出する必要があるから、家庭裁判所に届いたか心配になることがあるでしょう。

普通郵便は、迷子になると探せなくなります。

書留やレターパックは、追跡番号があります。

郵便局のホームページで、郵便物の配達状況を調べることができます。

提出した相続放棄申述書について家庭裁判所に問い合わせをする場合、到着した日付を伝えると探してもらいやすくなります。

③家庭裁判所に出向く場合は受付時間に注意

相続放棄申述書は家庭裁判所に出向いて提出することができます。

家庭裁判所は平日の日中だけ業務を行っています。

業務時間中であれば、いつでも相続放棄申述書を受け付けてくれるとは限りません。

家庭裁判所によっては、書類の受付時間を限定している場合があるからです。

家庭裁判所に出向いて提出する場合は、受付時間に注意しましょう。

相続放棄申述書の提出は、家族が家庭裁判所に出向くこともできます。

④提出書類はコピーを取っておく

家庭裁判所に対して相続放棄の申立てをすると、相続放棄照会書が届きます。

相続放棄照会書とは、家庭裁判所から届く相続放棄についての意思確認です。

相続放棄は、影響の大きい手続なので間違いがないように慎重に確認します。

万が一、相続放棄申述書の内容と矛盾した回答をすると相続放棄を認めてもらえなくなるかもしれません。

提出した相続放棄申述書のコピーを取っておくと安心です。

相続放棄照会書は家庭裁判所によって名前が違うことがあります。

⑤相続放棄の提出書類は原本還付してもらうことができる

相続放棄申述書は、必要書類を添えて家庭裁判所に提出します。

家庭裁判所に提出した書類は、請求すれば原本還付してもらうことができます。

添付書類を返してもらえれば、財産を相続する相続人が使うことができます。

相続放棄申述書に原本還付申請書と返してもらいたい書類のコピーを添付します。

コピーに原本に相違ありませんなどの記載は不要です。

⑥原本還付を希望する場合は返信用封筒を添付する

戸籍謄本や住民票の原本還付を希望する場合、返信用封筒を添付します。

返信用封筒に返送先の宛名を記載します。

返信用のレターパックを用意すれば、切手の心配はしなくていいでしょう。

3相続放棄申述受理証明書も郵送申請ができる

家庭裁判所が相続放棄を認めた場合、相続放棄申述受理通知書が届きます。

相続放棄が認められた場合、家庭裁判所は本人にのみ通知します。

債権者や他の相続人に自主的に通知をすることはありません。

債権者や他の相続人に見せるため、相続放棄をしたことを証明してもらうことができます。

相続放棄申述受理証明書は、家庭裁判所で相続放棄を認めてもらったことの証明書です。

相続放棄申述受理証明申請書を家庭裁判所に提出します。

相続放棄申述受理証明申請書は、郵送で提出することができます。

相続放棄申述受理証明書の申請先は、被相続人の最後の住所地の家庭裁判所です。

郵送で相続放棄申述受理証明書を提出する場合、返信用封筒を添付します。

返信用封筒に返送先の宛名を記載します。

返信用のレターパックを用意すれば、切手の心配はしなくていいでしょう。

4相続放棄を司法書士に依頼するメリット

実は、相続放棄はその相続でチャンスは1回限りです。

家庭裁判所に認められない場合、即時抗告という手続を取ることはできますが、高等裁判所の手続で、2週間以内に申立てが必要になります。

家庭裁判所で認めてもらえなかった場合、即時抗告で相続放棄を認めてもらえるのは、ごく例外的な場合に限られます。

一挙にハードルが上がると言ってよいでしょう。

相続放棄は撤回ができないので、慎重に判断する必要があります。

せっかく、相続放棄が認められても、相続財産を処分した判断されたら無効になりかねません。

このような行為をしてしまわないように、あらかじめ知識を付けておく必要があります。

相続放棄を自分で手続きしたい人の中には、相続放棄が無効になることまで考えていない場合が多いです。

司法書士は、相続放棄が無効にならないようにサポートしています。

せっかく手続しても、相続放棄が無効になったら意味がありません。

相続放棄を考えている方は、司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。

相続放棄しても配偶者短期居住権

2023-07-26

1配偶者短期居住権とは

配偶者短期居住権とは、被相続人の家に住んでいた配偶者が一定期間無条件かつ無償で住み続けることができる権利です。

相続が発生してから、配偶者が住む場所を失うことがないように保護するために作られた権利です。

次の要件を満たせば、何もしなくても自動的に発生します。

①配偶者であること

配偶者短期居住権を取得する配偶者は、法律上の配偶者のみです。

内縁の配偶者や事実婚の配偶者は、配偶者短期居住権を取得することはできません。

法律上の配偶者でも、相続廃除された人や相続欠格になった人は配偶者短期居住権を取得することができません。

相続廃除された人や相続欠格になった人は、保護する必要がないからです。

②被相続人の所有していた建物であること

被相続人と配偶者以外の人と共有建物であっても、配偶者短期居住権は成立します。

③相続開始時に無償で居住していたこと

2相続放棄しても配偶者短期居住権は使える

建物の所有者が配偶者短期居住権の消滅請求をしてから6か月経過するまで、配偶者短期居住権は認められます。

相続放棄をした配偶者であっても、最低6か月は自宅に住む続けることができます。

建物の所有者が配偶者短期居住権の消滅請求をしてから6か月なので、建物の所有者が消滅請求をしなければ、ずっと住み続けることができます。

相続廃除された人や相続欠格になった人は、相続放棄と同様に相続権を失います。

相続廃除された人や相続欠格になった人は、配偶者短期居住権を取得することができません。

相続廃除された人や相続欠格になった人は、保護する必要がないからです。

3配偶者短期居住権と配偶者居住権のちがい

配偶者短期居住権と配偶者居住権は、どちらも相続が発生してから、配偶者が住む場所を失うことがないように保護するために作られた権利です。

①配偶者短期居住権は自動的に発生する

配偶者短期居住権は要件を満たしていれば、何もしなくても自動的に発生します。

配偶者居住権は、自動的に発生することはありません。

遺言書や遺産分割協議などによって、権利が設定されるものです。

②建物が第三者と共有の場合でも配偶者短期居住権は成立

建物を被相続人と配偶者以外の人と共有しているケースがあります。

被相続人と配偶者以外の人と共有建物であっても、配偶者短期居住権は成立します。

配偶者居住権は、被相続人と配偶者以外の人と共有建物の場合は成立しません。

③配偶者短期居住権は期間制限がある

遺産分割をするべき場合、(1)遺産分割が成立した日(2)相続が発生してから6か月経過した日のうち、どちらか遅い日まで配偶者短期居住権は認められます。

遺産分割が成立しなければ、何年も配偶者短期居住権は存続します。

配偶者が死亡するまで遺産分割が成立しなければ、結果として、終身配偶者短期居住権は存続します。

配偶者が相続放棄をしたなど遺産分割をする必要がない場合、建物の所有者が配偶者短期居住権の消滅請求をしてから6か月経過するまで、配偶者短期居住権は認められます。

配偶者居住権は原則として終身です。

遺言書や遺産分割協議などによって、存続期間を決めることもできます。

④配偶者短期居住権は居住部分のみ対象

配偶者短期居住権で認められるのは、従前の居住部分のみです。

配偶者居住権では、居住部分だけでなく建物全体が対象になります。

店舗付き住宅などでは、店舗も含めて対象になります。

配偶者居住権では、店舗などから得た収入は配偶者のものにできます。

⑤配偶者短期居住権は登記できない

配偶者居住権は登記できますが、配偶者短期居住権は登記できません。

要件を満たせば、配偶者短期居住権と配偶者居住権は、いずれも、登記をしなくても成立します。

配偶者居住権はせっかく登記できるのに、登記しないと大きな不利益があります。

例えば、建物所有者が建物を売却してしまうことがあります。

建物の買主は、建物を使うため立ち退きを求めるでしょう。

配偶者短期居住権は登記できませんから、建物の買主に配偶者短期居住権があるから立ち退きたくないなどと文句を言うことはできません。

登記があれば、建物の買主に立ち退きたくないなどと文句を言うことができます。

配偶者居住権は登記できますから、登記がしてあれば建物の買主に配偶者居住権を盾に文句を言ってそのまま住み続けることができます。

登記がしてなければ、建物の買主に配偶者居住権があるから立ち退きたくないなどと文句を言うことはできません。

建物の買主に立ち退きたくないなどと文句を言うことができるのは、登記の重要な効力です。

配偶者短期居住権が成立する場合、建物所有者は配偶者を追い出すことはできません。

建物所有者は、配偶者短期居住権の行使の邪魔をすることができないからです。

配偶者が建物から立ち退かなければならなくなったのは、もとはと言えば、建物所有者が建物を売却したせいです。

建物所有者が建物を売却したことで、配偶者は追い出されたと言えます。

配偶者が追い出されたのは、配偶者短期居住権の行使の邪魔をしたことと言えます。

配偶者短期居住権の行使の邪魔をしたことに対して、配偶者は損害賠償請求をすることができます。

配偶者は損害賠償請求をすることができますが、住み慣れた自宅を立ち退くこと負担は大きいと言えます。

⑥配偶者短期居住権は相続税の対象にならない

配偶者短期居住権は財産的価値はないとされていますから、相続税の対象とされません。

一方、配偶者居住権は財産的価値があり、相続税の対象とされます。

配偶者居住権は配偶者のみに認められる権利です。

配偶者居住権がある配偶者が死亡したら、配偶者居住権は消滅します。

配偶者居住権が消滅しますから、相続財産にならず、当然相続税の対象になりません。

4配偶者短期居住権と配偶者居住権の共通点

配偶者短期居住権と配偶者居住権は、いずれも、相続が発生してから、配偶者が住む場所を失うことがないように保護するために作られた権利です。

だから建物に対する権利で、土地に対して権利は及びません。

配偶者短期居住権と配偶者居住権は、いずれも、第三者に贈与や譲渡することはできません。

配偶者短期居住権と配偶者居住権は、いずれも、次の場合に消滅します。

①建物の用法を守って大切に使っていないとき

②無断で第三者に貸し出すなど第三者が使用する場合

③配偶者が死亡した場合

④建物が災害や火事などで滅失した場合

建物を維持するための費用は、配偶者短期居住権と配偶者居住権のいずれも、配偶者が負担しなければなりません。

配偶者短期居住権と配偶者居住権は、いずれも、建物の管理費用も負担する必要があります。

毎年の固定資産税も配偶者の負担になります。

配偶者短期居住権と配偶者居住権は、いずれも、配偶者が建物の修繕をすることができます。

5相続放棄を司法書士に依頼するメリット

相続放棄をすると、プラスの財産もマイナスの財産も受け継ぐ必要がなくなります。

被相続人が莫大な借金を抱えていた場合、借金を受け継がなくても済む一方で、全財産を受け継ぐことができなくなります。

被相続人が所有していた自宅に住み続けることはできなくなります。

新しい住まいを探し、引っ越しをするのは、簡単ではありません。

配偶者短期居住権は相続が発生してから、配偶者が住む場所を失うことがないように保護するために作られた権利です。

配偶者短期居住権は、遺言や遺産分割などで設定される権利ではないため、相続放棄をしていても使うことができます。

一方で、配偶者居住権は、遺言や遺産分割などで設定される権利です。

配偶者短期居住権より強力な権利ですが、相続放棄をしたら使うことができません。

配偶者居住権は登記ができます。

登記をしていないと、せっかくの権利が守られません。

配偶者短期居住権と配偶者居住権は、配偶者が住む場所を失うことがないように保護するために作られた権利ですが、メリットデメリットがあります。

制度の内容をよく理解して、適切な制度を選択しましょう。

相続放棄や配偶者居住権などの制度を利用しようと考えている方は、すみやかに司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。

兄弟姉妹まとめて相続放棄

2023-07-10

1相続人になる人は法律で決まっている

相続が発生したら、親族のうち一定の範囲の人が相続人になります。

だれが相続人になるかについては、民法で決められています。

相続人になる人は次のとおりです。

①配偶者は必ず相続人になる

②被相続人に子どもがいる場合、子ども

③被相続人に子どもがいない場合、親などの直系尊属

④被相続人に子どもがいない場合で、かつ、親などの直系尊属が被相続人より先に死亡している場合、兄弟姉妹

2相続放棄とは

相続が発生したら、原則として、被相続人のプラスの遺産もマイナスの遺産も相続人が受け継ぎます。

被相続人のプラスの遺産もマイナスの遺産も受け継がないことを相続の放棄といいます。

相続放棄をすると、プラスの遺産を引き継がなくなりますが、マイナスの遺産も引き継ぐことがなくなります。

借金を引き継がないために相続放棄をするなどのケースが一般的です。

3兄弟姉妹まとめて相続放棄ができる

①同順位の相続人はまとめて相続放棄ができる

被相続人に莫大な借金があった場合、相続人全員が相続放棄をしたいと考えるでしょう。

同じ順位の相続人は、まとめて相続放棄をすることができます。

他の相続人が相続を単純承認するか相続放棄するかに関わらず、自分で判断することができます。

単純承認する場合でも相続放棄する場合でも、他の兄弟姉妹の同意は必要ありません。

②次順位の相続人は相続放棄も次順位

相続人には、相続順位があります。

先順位の相続人がいる場合、後順位の人は相続人になりません。

例えば、被相続人に子どもがいる場合、子どもが相続人になります。

被相続人に親などの直系尊属がいても、親などの直系尊属は相続人になりません。

子どもが先順位だからです。

家庭裁判所で相続放棄が認められた場合、はじめから相続人でなくなります。

被相続人の子ども全員が相続放棄をした場合、子どもはいないものと扱われます。

子どもがいない場合、次順位の親などの直系尊属が相続人になります。

子ども全員が相続放棄した後に、親などの直系尊属が相続放棄をすることができます。

子ども全員が相続放棄をしてからでないと、相続人ではないからです。

相続人になった後、相続放棄をすることができます。

被相続人に兄弟姉妹がいる場合も同じです。

子どもがいる場合や親などの直系尊属がいる場合、兄弟姉妹は相続人ではありません。

子ども全員と親などの直系尊属全員が相続放棄をした場合、子どもや親などの直系尊属がいないものと扱われます。

子どもも親などの直系尊属もいない場合、次順位の兄弟姉妹が相続人になります。

子ども全員と親などの直系尊属全員が相続放棄をした後に、兄弟姉妹は相続放棄をすることができます。

相続順位が違う相続人全員が相続放棄をする場合、相続順位の順番で相続放棄をすることになります。

4兄弟姉妹が相続放棄ができる時期

相続放棄は、原則として、相続があったことを知ってから3か月以内に申立てをする必要があります。

相続があったことを知ってからとは、必ずしも、被相続人の死亡してからではありません。

被相続人が死亡した後3か月以上経過してから、相続放棄の申立てをして認められることがあります。

相続放棄ができる3か月以内のスタートは、相続があったことを知ってからだからです。

相続があったことを知らなかった場合、相続放棄ができる3か月がスタートしていません。

相続放棄の申立てをしてから、家庭裁判所が相続放棄を認める通知が届くまでおよそ1か月程度かかります。

親などの直系尊属は先順位の子ども全員が相続放棄するまで、相続放棄の申立てはできません。

相続放棄の期限3か月が過ぎてしまうのではないかと気が気でないかもしれません。

先順位の子ども全員が相続放棄をしたことを知って自分が相続人であることを知ります。

相続放棄の期限3か月のスタートは知ってからだから、知ってから3か月以内であれば手続をすることができます。

第三順位の兄弟姉妹も同じことです。

第三順位の兄弟姉妹は自分が相続人であることを知るのは、子ども全員が相続放棄をして、次順位の親などの直系尊属全員が相続放棄をした後です。

第三順位の兄弟姉妹は、被相続人が死亡してから3か月以上経過してから自分が相続人であることを知ることになるかもしれません。

相続放棄の期限3か月のスタートは知ってからだから、知ってから3か月以内であれば手続をすることができます。

このポイントは、相続が発生してから3か月以内に届出ができなかったのは止むを得なかったと家庭裁判所に納得してもらうことです。

3か月届出ができなかったのは仕方なかったと家庭裁判所が納得できる理由があるときだけは、家庭裁判所も相続放棄を認めてくれるのです。

家庭裁判所は相続放棄を認めた場合、相続放棄の申立てをした人にだけ通知します。

家庭裁判所から次順位相続人に相続放棄を認めたから相続人になりましたよという通知はありません。

相続放棄が認められた人は、次順位相続人に相続放棄が認められましたと通知する義務はありません。

普段から連絡を取り合っている場合、相続放棄をしたことを知らせてくれるようにお願いしておくといいでしょう。

疎遠な相続人の場合、何も連絡がないことも少なくありません。

債権者や市役所などから手紙が来て相続があったことを知った場合、この通知は大切です。

この手紙を見て相続があったことを知ったという証拠になるからです。

5まとめて相続放棄をするメリット

①共通する書類は1通で済む

相続放棄をしたい旨の申立てに添える書類は次のとおりです。

(1)被相続人の戸籍謄本

(2)被相続人の除票

(3)相続放棄する人の戸籍謄本

(4)収入印紙

(5)裁判所が手続で使う郵便切手

基本的には(1)~(5)の書類を添えて届出をすれば充分ですが、場合に応じてこの他のものが必要になることもあります。

被相続人の子ども全員が相続放棄をする場合、(1)被相続人の戸籍謄本(2)被相続人の除票は共通して必要になります。

まとめて相続放棄をする場合、共通して必要になる書類は1通で済みます。

②司法書士などの専門家に依頼する場合は割引になることが多い

相続放棄はその相続でチャンスは実質的には1回限りです。

失敗したらやり直せばいいというわけにはいきません。

相続放棄の手続を司法書士などの専門家に依頼したい人もいるでしょう。

司法書士などの専門家に依頼する場合、費用負担があります。

相続人がバラバラで依頼するより複数の相続人がまとめて相続放棄をするほうが割引をしてもらえることが多いです。

6まとめて相続放棄をするときの注意点

①次順位の相続人に相続権が移る

相続放棄をすると相続人でなくなりますから、相続人はいないものと扱われます。

相続順位が同じ人がすべていないものと扱われた場合、次順位の人が相続人になります。

最初は相続人でなかった人が相続人になることがあります。

家庭裁判所は、相続放棄を認めた場合でも、他の相続人に何も連絡しません。

相続放棄をするのは、被相続人の借金を引き継がないためであることが多いでしょう。

相続放棄をしたら自分は借金から逃れることができます。

自分は借金から逃れて安心だけど、家族がどこまで追いかけられるか心配な人もいるでしょう。

家庭裁判所で相続放棄が認められても、借金は消えてなくなるわけではありません。

借金は、次順位の相続人に引き継がれます。

相続人になると、借金を引き継ぐ可能性があります。

配偶者の他は、②被相続人に子ども②親などの直系尊属③兄弟姉妹です。

相続放棄をする人の範囲は、相続する人の範囲と同じです。

相続する人は、被相続人の借金から逃れるために相続放棄をすることができます。

相続をすることができない人は、被相続人の借金を引き継ぐ心配はありません。

相続をすることができないから、相続放棄をする必要はありません。

相続放棄をした場合、相続放棄をした人の子どもが代襲相続をすることはありません。

相続放棄をすると相続人でなくなりますから、相続人はいないものと扱われるからです。

相続放棄をした人の子どもは、相続することはないから相続放棄をする必要はありません。

次順位の相続人に連絡する義務はありませんが、連絡してあげた方が親切でしょう。

相続人でないと思っていたのに、急に借金の返済を迫られたらびっくりするからです。

多くの場合、次順位の相続人も相続放棄を希望するでしょう。

相続放棄の手続をする準備をしておいてもらった方が、スムーズに手続できるでしょう。

②申立書は兄弟姉妹連名ではなく1人1通必要

相続放棄を希望する場合、家庭裁判所に対して申立書を提出します。

兄弟姉妹がまとめて相続放棄をする場合、申立書は1人1通準備します。

兄弟姉妹が一緒に相続放棄をする場合であっても、兄弟姉妹連名で1通の申立書を作成することはできません。

申立書に添付する書類は、共通する書類は1通で差し支えありません。

③相続放棄をしても管理をする義務がある

相続放棄をした人は、相続財産を管理すべき人が管理を始めるまで管理を続けなければなりません。

他に相続人がいない場合や相続人全員が相続放棄をした場合、相続人不存在であることが考えられます。

法定相続人がいない場合、相続財産は最終的には国のものになります。

国のものになる前にたくさんの手続があります。

相続財産の管理を続ける義務は、相続財産を管理すべき人が管理を始めるまで続きます。

7相続放棄を司法書士に依頼するメリット

相続放棄するためには、家庭裁判所に手続をする必要があります。

家庭裁判所で相続放棄が認められた場合、プラスの財産もマイナスの財産も引き継ぐことがなくなります。

相続放棄をすると、初めから相続人でなかったと扱われます。

家庭裁判所で相続放棄が認められた場合、相続に関する手続には関与しなくて済むと安心してしまいがちです。

家庭裁判所で相続放棄が認められた場合であっても、相続財産を処分した場合、相続放棄が無効になります。

相続放棄は簡単そうに見えて、実はいろいろなことを考慮しなければならない手続です。

相続放棄を考えている方は、司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。

相続放棄した後の遺留分

2023-07-03

1相続放棄した人は遺留分がない

①相続放棄とは

相続が発生したら、原則として、被相続人のプラスの財産もマイナスの財産も相続人が受け継ぎます。

被相続人のプラスの財産もマイナスの財産も受け継がないことを相続の放棄といいます。

相続放棄をすると、プラスの財産を引き継がなくなりますが、マイナスの財産も引き継ぐことがなくなります。

家庭裁判所に対して、必要な書類をを添えて相続放棄をしたい旨の申立てをします。

相続放棄はプラスの財産もマイナスの財産も引き継ぎませんという裁判所に対する申立てです。

相続人らとのお話合いで、プラスの財産を相続しませんと申し入れをすることではありません。

②遺留分とは

被相続人は、原則として、自分の財産を誰に受け継がせるかは自由に決めることができます。

とはいえ、財産は被相続人が1人で築いたものではなく、家族の協力があって築くことができたもののはずです。

被相続人の名義になっているからといって、まったく無制約の自由にすると今まで協力してきた家族に酷な結果となることもあります。

このため、被相続人に近い関係の相続人には相続財産に対して最低限の権利が認められています。

相続財産に対して、認められる最低限の権利のことを遺留分と言います。

遺言書などで遺留分を侵害された相続人は、遺留分侵害額請求をすることができます。

③相続放棄をすると相続できない

相続放棄をした場合、被相続人のプラスの財産もマイナスの財産も受け継ぎません。

相続放棄をしたら、はじめから相続人でなかったものと扱われるからです。

相続放棄をするとは、相続人としての権利と義務を放棄するという意味です。

相続放棄をした人は、相続分を失います。

④相続放棄をすると遺留分を請求できない

遺留分は、相続人に認められた相続財産に対する最低限の権利です。

遺留分は相続財産に対する最低限の権利だから、相続放棄をしても財産を受け取れると思うかもしれません。

相続放棄をしたら、相続人でなくなります。

遺留分は、相続人に認められた権利です。

請求することができるのは相続人だけだから、相続放棄をした人は遺留分もなくなります。

2相続放棄をした人は相続人でなくなる

①相続人になる人は法律で決まっている

相続が発生すると、配偶者や子どもが相続することは多くの方がご存知でしょう。

相続人になる人は民法で決められています。

相続人になる人は次のとおりです。

(1)配偶者は必ず相続人になる

(2)被相続人に子どもがいる場合、子ども

(3)被相続人に子どもがいない場合、親などの直系尊属

(4)被相続人に子どももいない場合で、かつ、親などの尊属が被相続人より先に死亡している場合、兄弟姉妹

②同順位の相続人がいる場合

相続放棄をした人ははじめから相続人でなかったと扱われます。

例えば、被相続人の子どもが相続人になる場合で、一部の子どもが相続放棄をする場合があります。

被相続人に配偶者がいれば、配偶者と残りの子どもが相続人になります。

③次順位の人が相続人になる場合

例えば、被相続人の子どもが相続人になる場合で、子ども全員が相続放棄をする場合があります。

相続放棄をした人ははじめから相続人でなかったと扱われます。

子ども全員が相続放棄をした場合、子どもはいないものと扱われます。

被相続人に子どもがいない場合、親などの直系尊属が相続人になります。

同順位の相続人全員が相続放棄をした場合、次順位の人が相続人になります。

3法定相続分が変わると遺留分も変わる

①法定相続分は法律で決まっている

配偶者がいる場合、法定相続分は次のとおりです

(1)相続人が配偶者と子ども 配偶者2分の1 子ども2分の1

(2)相続人が配偶者と直系尊属 配偶者3分の2 直系尊属3分の1

(3)相続人が配偶者と兄弟姉妹 配偶者4分の3 兄弟姉妹4分の1

(1)で子どもが数人いる場合、(2)で直系尊属が数人いる場合、(3)で兄弟姉妹が数人いる場合は、人数で均等に分割します。

②法定相続分が変わる人と変わらない人がいる

遺留分は、法定相続分の2分の1です。

相続人が親などの直系尊属のみの場合、遺留分は法定相続分の3分の1です。

相続放棄をした人がいる場合、法定相続分が変わる人と変わらない人がいます。

法定相続分が変わる人は、遺留分も変わります。

例えば、被相続人の長男と長女が相続人になる場合で、長男が相続放棄をする場合があります。

被相続人に配偶者がいれば、配偶者と長女が相続人になります。

仮に、長男が相続放棄をしない場合、法定相続分は次のとおりです。

配偶者 2分の1

長男 4分の1

長女 4分の1

長男が相続放棄をした後、法定相続分は次のとおり変更になります。

配偶者 2分の1

長男 4分の1→相続放棄

長女 4分の1→2分の1に変更

長男が相続放棄をした場合、長男は相続しません。

配偶者の法定相続分は、2分の1で変わりません。

長女の法定相続分は、2分の1から4分の1に変更になります。

法定相続分が変わる場合、遺留分も変更になります。

仮に、長男が相続放棄をしない場合、遺留分は次のとおりです。

配偶者 4分の1

長男 8分の1

長女 8分の1

長男が相続放棄をした後、遺留分は次のとおり変更になります。

配偶者 4分の1

長男 8分の1→相続放棄

長女 8分の1→4分の1に変更

法定相続分が変わらない場合、遺留分も変更になりません。

4兄弟姉妹に遺留分はない

遺留分は、兄弟姉妹以外の相続人に認められます。

兄弟姉妹が相続する場合、法定相続分はあるけど遺留分はありません。

一部の兄弟姉妹が相続放棄をした場合、他の兄弟姉妹の相続分が変わります。

相続分が変わるけど、遺留分はないから変わりません。

5遺留分放棄をした後の遺留分

遺留分が認められている人は、遺留分を放棄することができます。

遺留分の放棄は、相続放棄とは別の制度です。

遺留分を放棄した人は、相続することができます。

遺留分を放棄した人であっても、相続人だからです。

相続放棄は、相続が発生した後だけ手続をすることができます。

被相続人の生前に相続放棄をすることはできません。

遺留分は、相続が発生する前でも相続が発生した後でも放棄することができます。

遺留分を放棄した場合、遺留分を請求することはできません。

遺留分を放棄した人は遺留分を請求できないだけで、相続人のままです。

遺留分を放棄した人は相続人だから、他の相続人の相続分に変更はありません。

遺留分を放棄した人が相続人のままだから、次順位の人が相続人になることはありません。

他の相続人の相続分に変更がないから、他の相続人の遺留分にも変更はありません。

相続放棄をした後で、他の相続人の遺留分は増える人と変わらない人がいます。

遺留分放棄をした後で、他の相続人の遺留分はだれも変わりません。

相続放棄と遺留分放棄では、他の相続人に与える影響が違います。

6相続放棄を司法書士に依頼するメリット

相続放棄はプラスの遺産もマイナスの遺産も引き継ぎませんという裁判所に対する届出です。

相続人らとのお話合いで、プラスの財産を相続しませんと申し入れをすることではありません。

つまり、家庭裁判所で認められないとマイナスの財産を引き継がなくて済むというメリットは受けられないのです。

実は、相続放棄はその相続でチャンスは実質的には1回限りです。

家庭裁判所に認められない場合、即時抗告という手続を取ることはできますが、高等裁判所の手続で、2週間以内に申立てが必要になります。

家庭裁判所で認めてもらえなかった場合、即時抗告で相続放棄を認めてもらえるのは、ごく例外的な場合に限られます。一挙にハードルが上がると言ってよいでしょう。

相続放棄は慎重に判断する必要があります。

相続放棄の知識が不足しているために、思いもよらないトラブルになってしまうケースがあります。

司法書士などの専門家のアドバイスがあれば良かったのにと思えることもあります。

知識がない状態で、3か月の期間内に手続きするのは思ったよりハードルが高いものです。

相続放棄を考えている方はすみやかに司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。

相続放棄してもクレジットカード

2023-06-26

1クレジットカードは相続財産ではない

相続が発生すると、原則として、被相続人の財産は相続人が相続します。

被相続人の財産は、プラスの財産もマイナスの財産も相続財産になります。

相続人が相続する財産が、相続財産です。

被相続人の財産であっても、相続人に相続されない財産があります。

一身専属権や祭祀用財産は相続の対象になりません。

一身専属権とは、その人個人しか持つことができない権利や資格のことです。

例えば、有名な画家に絵をかいてもらう契約で、絵を完成させないまま有名な画家が死亡することがあります。

有名な画家は絵を完成させる義務を果たさないまま死亡したと言えます。

絵を完成させる義務は、有名な画家の相続人に相続されることはありません。

有名な画家に絵をかいてもらう契約をした人は、有名な画家だから契約をしたと言えます。

有名な画家の相続人に絵をかいてもらっても意味はありません。

このようなものが、一身専属です。

クレジットカードは、クレジットカード会社の会員の資格を表したものです。

クレジットカード会社の会員の資格は、その人の個人の信用情報に基づいて認められるものです。

被相続人の信用情報と相続人の信用情報は、別のものです。

クレジットカード会社の会員の資格は、相続財産ではありません。

クレジットカード会社の会員の資格は、一身専属と言えるからです。

2クレジットカード債務は相続財産

被相続人の財産は、プラスの財産もマイナスの財産も相続財産になります。

被相続人がクレジットカードを利用していた場合、未払いの利用残高があるでしょう。

未払いの利用残高は、単なる金銭債務です。

被相続人のマイナスの財産のひとつとして、相続財産になります。

3クレジットカード債務が多いときは相続放棄

①クレジットカード債務だけ相続放棄をすることはできない

相続放棄をするとマイナスの財産を受け継ぐことがなくなります。

だから、被相続人が莫大な借金を負っていた場合でも、一切借金の返済をする必要がなくなります。

被相続人が返済を滞らせていて遅延損害金が発生していた場合があります。

相続人が相続放棄をした場合、未払金も遅延損害金も払う必要はありません。

相続放棄をするとマイナスの財産すべて受け継ぐことがなくなります。

相続放棄をするとマイナスの財産だけでなく、プラスの財産も受け継ぐことがなくなります。

クレジットカード債務だけ相続放棄をすることはできません。

②相続放棄は家庭裁判所に対して3か月以内に手続

家庭裁判所に対して、必要な書類をを添えて相続放棄をしたい旨の申立てをします。

届出をする先の家庭裁判所は、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です。

家庭裁判所の管轄は裁判所のホームページで調べることができます。

相続放棄をすると、プラスの財産もマイナスの財産もすべて受け継ぐことがなくなります。

この届出は相続があったことを知ってから、原則として、3か月以内にする必要があります。

相続放棄をしたい旨の届出に添える書類は裁判所のホームページに詳しく書いてあります。

(1)被相続人の戸籍謄本

(2)被相続人の除票

(3)相続放棄する人の戸籍謄本

(4)収入印紙

(5)裁判所が手続で使う郵便切手

届出は直接、出向いて提出してもいいし、郵便で送っても差し支えありません。

届出の書き方や提出書類が心配な方は、出向いて裁判所の受付で目を通してもらうと安心です。

4クレジットカードの解約手続

①クレジットカードの解約は単純承認にならない

相続放棄をする前に単純承認をしていた場合、相続放棄はできません。

相続放棄が撤回できないように、単純承認も撤回できないからです。

相続財産を処分したり、利用した場合、単純承認をしたとみなされます。

相続財産を処分したり、利用した場合は相続放棄ができなくなります。

家庭裁判所は事情が分からず書類に問題がなければ、相続放棄を受理してしまいます。

家庭裁判所が相続放棄を受理した後でも、相続財産を処分したり、利用した場合は、無効です。

クレジットカードを解約することは、単純承認にはなりません。

クレジットカード会社の会員の資格は、相続財産ではないからです。

一般的にクレジットカードの会員規約や利用規約には、会員が死亡した場合会員資格を喪失すると明記されています。

②附帯サービスを請求すると単純承認になる

クレジットカードによっては、会員になると自動的に保険が附帯されるものがあります。

旅行中の病気やけがの保険や盗難や紛失に関する保険です。

これらの保険は、被相続人が受取人である保険金でしょう。

被相続人が受取人である保険金を請求する権利は、相続財産です。

相続財産を処分したり、利用した場合、単純承認をしたとみなされます。

家庭裁判所が相続放棄を受理した後でも、相続財産を処分したり、利用した場合は、無効です。

③チャージタイプの電子マネーを使うと単純承認になる

交通型ICカードなどの電子マネーは、事前にチャージして使うことができます。

被相続人がチャージした電子マネーは、相続財産です。

相続財産を処分したり、利用した場合、単純承認をしたとみなされます。

家庭裁判所が相続放棄を受理した後でも、相続財産を処分したり、利用した場合は、無効です。

④引落口座が凍結しても解約手続は必要

銀行などの金融機関は預金者が死亡したことを確認すると、口座の取引をできなくします。

この口座の取引をできなくすることを口座の凍結といいます。

口座取引をできなくしますから、ATMや窓口での引き出しもできないし、年金などの振込もできないし、公共料金などのお引落もできなくなってしまいます。

役所に死亡届を出すと凍結するなど誤った情報を信じている方もおられますが、役所や病院から個人情報が漏れることはありません。

もし、そのようなことがあったら、個人情報の漏洩として責任を問われることになるからです。

クレジットカードと紐づいている口座が凍結された場合、クレジットカードの引き落としができなくなります。

クレジットカード会社から見ると、クレジットカード債務が未払いになっただけと言えます。

クレジットカード債務が未払いになった場合でも、クレジットカードの解約手続は必要です。

相続人が口座を解約した場合でも、クレジットカードの解約手続は必要です。

⑤家族カードは使えなくなる

クレジットカードを利用している場合、家族カードが発行されていることがあります。

クレジットカードの会員本人が死亡した場合、家族カードは使用できなくなります。

家族カードは、会員本人の信用情報に基づいて発行されているからです。

会員本人が死亡により資格を喪失するから、自動的に家族カードも無効になります。

⑥解約するまで年会費がかかり続ける

クレジットカードの中には、年会費がかかることがあります。

クレジットカード会社は、会員が死亡したことを知ることができません。

クレジットカードの解約をしないと、年会費がかかり続けます。

クレジットカードの解約は、会員本人の死亡を伝えて資格喪失することを伝える意味があります。

⑦クレジットカードのポイントは失効する

クレジットカードには、ポイントがたまるものがあります。

被相続人が貯めていたポイントは、原則として相続の対象ではありません。

クレジットカードのポイントは、クレジットカードの会員資格に対して付与される特典だからです。

クレジットカードのポイントは、一身専属の権利と考えられています。

クレジットカード会社によっては、利用規約や会員規約に相続できないことを明記しています。

利用規約や会員規約に相続できないことを明記していなくても、同様と考えられています。

例外的に、利用規約や会員規約で相続できることを定めているケースがあります。

クレジットカード会社に確認するといいでしょう。

相続できる場合であっても、利用規約や会員規約で相続手続ができるのは死亡後〇か月以内など特別なルールをを定めている場合があります。

5相続放棄をしても信用情報に通知されない

相続放棄は、信用情報とは関係がありません。

一般に、信用情報に事故記録が記載されると、ローンが組めなくなります。

被相続人に莫大な借金がある場合、相続放棄をすることを考えるでしょう。

相続放棄をしても、ブラックリストに載ることはありません。

相続放棄をした場合、将来、クレジットカードを作れなくなるのではないかと心配する必要はありません。

相続放棄をする人の中には、裕福で生活に困っていないから相続放棄をしたいという人もいます。

6相続放棄を司法書士に依頼するメリット

相続放棄はプラスの財産もマイナスの財産も引き継ぎませんという裁判所に対する届出です。

相続人らとのお話合いで、プラスの財産を相続しませんと申し入れをすることではありません。

つまり、家庭裁判所で認められないとマイナスの財産を引き継がなくて済むというメリットは受けられないのです。

実は、相続放棄はその相続でチャンスは実質的には1回限りです。

家庭裁判所に認められない場合、即時抗告という手続を取ることはできますが、高等裁判所の手続で、2週間以内に申立てが必要になります。

家庭裁判所で認めてもらえなかった場合、即時抗告で相続放棄を認めてもらえるのは、ごく例外的な場合に限られます

一挙にハードルが上がると言ってよいでしょう。

相続放棄は慎重に判断する必要がありますが、いろいろな誤解から利用をためらう人が多いのも事実です。

利用をためらっていると3か月はあっという間です。

相続が発生すると、家族は親戚や知人へ連絡などで悲しみに浸る暇もないくらい忙しくなります。

3か月以内に必要書類を揃えて手続をするのは想像以上にハードルが高いものです。

相続放棄を考えている方はすみやかに司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。

相続放棄の撤回・取消・無効

2023-06-21

1.相続放棄は撤回できない

相続放棄の撤回はできません。

撤回とは、相続放棄が受理されたときには何も問題がなかったのに、後から問題が発生したので、なかったことにすることです。

例えば、「相続財産は借金ばかりだと思っていたから相続放棄をしたのに、プラスの財産は見つかったから相続放棄はなかったことにしたい」は撤回です。

相続放棄の撤回は、認められません。

相続放棄は、相続発生を知った時から、3か月以内に手続をする必要があります。

相続放棄が認められた後、3か月以内であっても撤回することはできません。

いったん相続放棄が認められた後に、撤回することを認めると相続手続が混乱するからです。

相続放棄は一度認められると撤回できません。

相続放棄をするとどのようになるか充分に検討して慎重に判断しましょう。

2相続放棄の取下げはできる

相続放棄は、家庭裁判所に対してする手続です。

他の相続人に対して、相続財産を一切相続しないと申し入れることではありません。

相続放棄が認められるとは、家庭裁判所で手続が完了したという意味です。

通常、家庭裁判所に対して相続放棄の申述の申立書を提出してから、1~2週間ほどで照会文書が届きます。

照会文書に回答を提出した後、さらに1~2週間ほどで手続が完了します。

手続が完了する前であれば、取下げができます。

取下げを希望する場合、すぐに提出先の家庭裁判所に連絡しましょう。

手続が完了してしまうと、取下げができなくなります。

取り下げるためには書類が必要になりますが、手続を止めてもらうためにまずは電話で連絡するのがおすすめです。

3相続放棄の取消はできる

①取消とは

法律行為は、一定の事情がある場合、取消をすることができます。

取消とは、相続放棄が受理されたときに既に何か問題が起きていて、問題に気付かずに受理されてしまったので、後からなかったことにすることです。

相続放棄は法律行為なので、一定の事情があれば、取り消しができます。

取り消しができる期間は、追認できるときから6か月、相続放棄が認められてから10年です。

取り消しができるときは、相続放棄の申立てをした家庭裁判所に、取消の申立てをします。

②詐欺や強迫があった場合

詐欺とは、周囲の人から事実でない情報を聞かされてその情報を信じてしまったために相続放棄をした場合です。

本来であれば相続放棄をするつもりはなかったが、事実でない情報を信じてしまったことにより相続放棄をしたのであれば、詐欺による取消を主張することができます。

強迫とは、相続放棄をしないと危害を加えるぞと迫られていた場合です。

本当は相続を承認したいのに、危害を加えられることをおそれて相続放棄をしたのであれば、強迫による取消を主張することができます。

③錯誤があった場合

錯誤とは、相続放棄をしようという意思決定をする際に、重要なことが事実と違っていた場合です。

通常、相続放棄をしようと思って相続放棄をしていますから、重要なことが事実と違っていたには当たりません。

そのうえ錯誤があったと主張する人に重大な過失があった場合、錯誤の主張はできません。

錯誤で取消をすることは、想像以上にハードルが高いものです。

④未成年者がひとりで相続放棄をした場合

未成年者は物事のメリットデメリットを充分判断することができません。

通常、親などの親権者が未成年者の代わりに法律行為をします。

未成年者が親などの親権者の同意を得ないで相続放棄をした場合、取り消すことができます。

家庭裁判所に相続放棄の申立書を提出する場合、申立をする人の戸籍謄本を提出します。

家庭裁判所の担当者は必ず年齢を点検しますから、よほどのことがない限り、相続放棄が受理されません。

⑤成年被後見人などがひとりで相続放棄をした場合

成年被後見人とは、認知症や知的障害などで、物事のメリットデメリットを充分判断することができない人として認められた人です。

成年後見人などの保護者が成年被後見人の代わりに手続をします。

代わりにやってもらうまでもないと家庭裁判所に判断されている場合、保護者の同意を得て手続します。

成年後見人に成年後見監督人が付いている場合があります。

成年後見監督人がいる場合、成年後見監督人の同意が必要になります。

成年後見人などの保護者であっても、成年後見監督人の同意を得ずに相続放棄の手続した場合、取消を主張することができます。

4相続放棄が無効になる場合

①無効とは

無効とは、相続放棄が家庭裁判所に認められたが、実は相続放棄の要件を満たしていなかったから、なかったことになるものです。

家庭裁判所は事情が分からず書類に問題がないから、相続放棄を認めてしまったから、なかったことになるものです。

相続放棄が無効になる場合、無効にするための手続はありません。

無効の法律行為は、何もしなくても無効だからです。

例えば、債権者は相続放棄は無効だから、相続人に借金を払って欲しいと交渉することができます。

交渉で話し合いがつかなければ、相続放棄は無効だから、相続人に借金を払って欲しいと訴えを起こすことができます。

裁判の中で相続放棄は無効だと主張します。

借金を払えというか、払わなくてもいいというか裁判所が判断する過程で、相続放棄は無効がどうか裁判所が判断します。

②本人が知らないうちに相続放棄がされていた

本人に無断で、相続放棄の書類が作られて相続放棄の手続がされた場合です。

本人の意思がないので、相続放棄は無効になります。

家庭裁判所は意思確認を厳格にしていますから、相続放棄が認められるのは、めったにありません。

③相続財産を処分・利用していた場合

相続放棄をする前に単純承認をしていた場合、相続放棄はできません。

相続放棄が撤回できないように、単純承認も撤回できないからです。

相続財産を処分したり、利用した場合、単純承認をしたとみなされます。

相続財産を処分したり、利用した場合は相続放棄ができなくなります。

家庭裁判所は事情が分からず書類に問題がなければ、相続放棄を受理してしまいます。

家庭裁判所が相続放棄を受理した後でも、相続財産を処分したり、利用した場合は、無効です。

5相続放棄は詐害行為で取り消すことができない

お金を借りた人は、借りたお金を返さなければなりません。

借りたお金を返さなければならないのに、自分の財産を不当に減少させて、結果、お金を返せなくなることがあります。

自分の財産を不当に減少させたら、お金を貸した人はお金を返してもらえなくなる結果になります。

お金を貸した人が困ることを知っているのに、自分の財産を不当に減少させることを詐害行為と言います。

お金を返してもらうため、お金を貸した人は詐害行為を取り消すことができます。

相続放棄は、詐害行為にはなりません。

被相続人に莫大な借金がある場合、相続人が相続放棄をするでしょう。

相続人が相続放棄をした場合、債権者は相続放棄を詐害行為として取り消すことはできません。

被相続人が莫大なプラスの財産を残して死亡することがあります。

相続人に莫大な借金があるのに、被相続人と相続人の今までの経緯から相続放棄をすることがあります。

相続人が相続放棄をした場合、債権者は相続放棄を詐害行為として取り消すことはできません。

6相続放棄と相続放棄の取消を司法書士に依頼するメリット

実は、相続放棄はその相続でチャンスは1回限りです。

家庭裁判所に認められない場合、即時抗告という手続を取ることはできます。

高等裁判所の手続で、2週間以内に申立てが必要になります。

家庭裁判所で認めてもらえなかった場合、即時抗告で相続放棄を認めてもらえるのは、ごく例外的な場合に限られます。

一挙にハードルが上がると言ってよいでしょう。

相続放棄は撤回ができないので、慎重に判断する必要があります。

相続放棄の取消も家庭裁判所に手続が必要になります。

取消を主張するためには根拠となる証拠が必要です。

適切な主張と立証が重要になります。

相続放棄よりはるかに難易度が高い手続です。

司法書士は裁判所に提出する書類作成の専門家です。

相続放棄と相続放棄の取消を考えている方は、すみやかに司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。

兄弟姉妹の一人だけ相続放棄

2023-06-14

1相続人になる人は法律で決まっている

相続が発生したら、親族のうち一定の範囲の人が相続人になります。

だれが相続人になるかについては、民法で決められています。

相続人になる人は次のとおりです。

①配偶者は必ず相続人になる

②被相続人に子どもがいる場合、子ども

③被相続人に子どもがいない場合、親などの直系尊属

④被相続人に子どもがいない場合で、かつ、親などの直系尊属が被相続人より先に死亡している場合、兄弟姉妹

相続人になるはずだった人が被相続人より先に死亡したため、相続人になるはずだった人の子どもや子どもの子どもが相続することがあります。

これを代襲相続と言います。

相続人になるはずだった人の子どもの子どもが相続することを再代襲相続と言います。

代襲相続ができるのは、相続人になるはずだった人の子どもなど被代襲者の直系卑属だけです。

相続人になるはずだった人を被代襲者と言います。

被代襲者の子どもなど被代襲者の直系卑属以外は代襲相続ができません。

被代襲者の配偶者も、被代襲者の親などの直系尊属も、被代襲者の兄弟姉妹も、代襲相続ができません。

2先順位の相続人全員が相続放棄をしたら

①配偶者は常に相続人になる

配偶者は必ず相続人になります。

配偶者がいてもいなくても、他の相続人の相続権には関係ありません。

配偶者が相続放棄をしても相続放棄をしなくても、他の相続人が相続人になるかならないかと関係ありません。

②子ども全員が相続放棄をした場合子どもはいないものと扱われる

被相続人に子どもがいる場合、子どもは相続人になります。

被相続人の子ども全員が相続放棄をした場合、子どもはいないものと扱われます。

子どもが相続放棄をした場合、子どもは相続しません。

子どもが相続放棄をした場合、子どもの子どもが代わりに相続することはありません。

相続放棄は、代襲相続の原因にならないからです。

代襲相続が起きるのは、子どもが被相続人より先に死亡している場合や廃除された場合、欠格の場合です。

③被相続人に子どもがいない場合親などの直系尊属が相続する

被相続人に子どもがいない場合、親などの直系尊属が相続人になります。

親などの直系尊属が被相続人より先に死亡している場合、親などの直系尊属がいない場合になります。

親などの直系尊属が被相続人より先に死亡した場合であっても、代襲相続は起きません。

被代襲者になれるのは、被相続人の子どもと兄弟姉妹だけだからです。

被相続人の親の他に祖父母がいる場合、親が相続放棄をしたら祖父母が相続人になります。

祖父母が相続人になるのは、代襲相続と関係がありません。

祖父母も直系尊属だから、相続人になります。

直系尊属が複数いる場合、親等が近い人が相続人になります。

親は1親等、祖父母は2親等です。

親が相続人になる場合、祖父母は相続人になりません。

親の方が親等が近いからです。

親が相続放棄をした場合、親は相続人でなくなります。

1親等の人がいない場合になれば、祖父母は相続人になります。

祖父母が相続放棄をする場合、親が相続放棄をしてから手続をします。

親の相続放棄が認められないうちは、祖父母は相続人でないからです。

④子どもも親などの直系尊属もいない場合兄弟姉妹が相続する

子どもも親などの直系尊属もいない場合には、最初から存在しない場合の他に相続放棄をして相続人でなくなった場合を含みます。

⑤兄弟姉妹が被相続人より先に死亡していたら兄弟姉妹の子どもが相続

子どもも親などの直系尊属もいない場合、兄弟姉妹が相続人になります。

相続人になるはずだった兄弟姉妹が被相続人より先に死亡していた場合、兄弟姉妹の子どもが相続人になります。

兄弟姉妹は被代襲者になるからです。

兄弟姉妹の子どもは、死亡した兄弟姉妹の代襲相続人として相続人になります。

3兄弟姉妹の一人だけ相続放棄ができる

①相続放棄は相続人各自が判断できる

相続放棄は、相続人ひとりひとりが自分の意思で自由に判断できるものです。

相続人は、一人だけ相続放棄をすることができます。

相続放棄をする場合、他の相続人の同意は不要です。

他の相続人が反対していても、一人だけ相続放棄をすることができます。

ときには他の兄弟姉妹が何も知らないところで相続放棄をすることがあります。

相続放棄をすることで一人だけ借金から逃れたとしても、後ろめたく思うことはありません。

②疎遠だからを理由に相続放棄をすることができる

相続放棄をすると、プラスの財産を引き継がなくなりますが、マイナスの財産も引き継ぐことがなくなります。

相続放棄の理由で多いのは、「被相続人の借金を引き継ぎたくない」です。

その他でも構いません。

「被相続人や他の相続人と疎遠で、関わりたくない」でも差し支えありません。

被相続人や他の相続人と疎遠な場合、財産状況が分からないことが多いものです。

被相続人に多額の借金があるかもしれません。

被相続人に借金がなくても、第三者の連帯保証人になっているかもしれません。

連帯保証人の地位は、相続の対象になります。

借金や連帯保証人の地位を相続する心配がある場合、安全のため相続放棄をすることができます。

③相続放棄3か月のスタートは知ってから

相続放棄は、原則として、相続があったことを知ってから3か月以内に届出をする必要があります。

相続があったことを知ってからとは、必ずしも、被相続人の死亡してからではありません。

被相続人が死亡した後3か月以上経過してから、相続放棄の届出をして、認められることもあります。

相続放棄ができる3か月以内のスタートは、相続があったことを知ってからだからです。

相続があったことを知らなかった場合、相続放棄ができる3か月がスタートしていません。

相続放棄の届出をしてから、家庭裁判所が相続放棄を認める通知が届くまでおよそ1か月程度かかります。

親などの直系尊属は先順位の子ども全員が相続放棄するまで、相続放棄の届出はできません。

相続放棄の期限3か月が過ぎてしまうのではないかと気が気でないかもしれません。

先順位の子ども全員が相続放棄をしたことを知って自分が相続人であることを知ります。

相続放棄の期限3か月のスタートは知ってからだから、知ってから3か月以内であれば手続をすることができます。

第三順位の兄弟姉妹も同じことです。

第三順位の兄弟姉妹は自分が相続人であることを知るのは、子ども全員が相続放棄をして、次順位の親などの直系尊属全員が相続放棄をした後です。

第三順位の兄弟姉妹は、被相続人が死亡してから3か月以上経過してから自分が相続人であることを知ることになるかもしれません。

相続放棄の期限3か月のスタートは知ってからだから、知ってから3か月以内であれば手続をすることができます。

このポイントは、相続が発生してから3か月以内に届出ができなかったのは止むを得なかったと家庭裁判所に納得してもらうことです。

3か月届出ができなかったのは仕方なかったと家庭裁判所が納得できる理由があるときだけは、家庭裁判所も相続放棄を認めてくれるのです。

債権者や市役所などから手紙が来て相続があったことを知った場合、この通知は大切です。

この手紙を見て相続があったことを知ったという証拠になるからです。

4兄弟姉妹が相続放棄をする場合は提出書類がたくさんになる

相続放棄を希望する場合、必要書類を準備して家庭裁判所に申立てをします。

家庭裁判所に提出する申立書のことを相続放棄申述書と言います。

相続放棄申述書に添付する必要書類のうち、次の書類は相続放棄をする人全員共通で必要です。

(1)被相続人の除票

(2)相続放棄する人の戸籍謄本(3か月以内のもの)

(3)収入印紙

(4)裁判所が手続で使う郵便切手

(1)~(4)の書類の他に戸籍謄本が必要です。

必要な戸籍謄本は、被相続人から見てどのような関係の相続人であるかによって異なります。

兄弟姉妹が相続放棄をする場合、必要な戸籍謄本がたくさんになります。

相続放棄ができるのは先順位の相続人がいない場合だけだからです。

兄弟姉妹が相続人になるのは、被相続人に子どもがいない場合で、かつ、親などの直系尊属がいない場合です。

相続人でなければ、相続放棄はできません。

相続放棄をするためには、相続人であることを証明する必要があります。

被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本が必要です。

被相続人に子どもがいないことを証明するためです。

子どもがいても死亡している場合、死亡した子どもの戸籍も必要です。

死亡した子どもの出生から死亡までの連続した戸籍謄本を準備します。

相続人になるはずだった人の子どもは、代襲相続人になるからです。

子ども全員が相続放棄をした場合、事件番号を伝えれば家庭裁判所で調べてもらえます。

親などの直系尊属がいないことを証明するため、親などの直系尊属の戸籍も必要になります。

兄弟姉妹が相続放棄をする場合、これらの戸籍をすべて提出しなければなりません。

5相続放棄を司法書士に依頼するメリット

相続放棄は、プラスの財産もマイナスの財産も引き継ぎませんという裁判所に対する申立てです。

相続人らとのお話合いで、プラスの財産を相続しませんと申し入れをすることではありません。

つまり、家庭裁判所で認められないとマイナスの財産を引き継がなくて済むというメリットは受けられないのです。

実は、相続放棄はその相続でチャンスは実質的には1回限りです。

家庭裁判所に認められない場合、即時抗告という手続を取ることはできますが、高等裁判所の手続で、2週間以内に申立てが必要になります。

家庭裁判所で認めてもらえなかった場合、即時抗告で相続放棄を認めてもらえるのは、ごく例外的な場合に限られます

一挙にハードルが上がると言ってよいでしょう。

相続放棄は慎重に判断する必要がありますが、いろいろな誤解から利用をためらう人が多いのも事実です。

利用をためらっていると3か月はあっという間です。

相続が発生すると、家族は親戚や知人へ連絡などで悲しみに浸る暇もないくらい忙しくなります。

3か月以内に必要書類を揃えて手続をするのは想像以上にハードルが高いものです。

相続放棄を考えている方はすみやかに司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。

相続放棄の確認方法

2023-06-07

1相続放棄を認めたら家庭裁判所は相続放棄申述受理通知書を送る

①家庭裁判所は本人にだけ通知する

被相続人が多額の借金を残して死亡したとき、相続人は相続放棄をするでしょう。

家庭裁判所が相続放棄を認めた場合、本人に相続放棄申述受理通知書を送ります。

家庭裁判所は自主的に他の人に通知しません。

②相続放棄をしても次順位の相続人に通知されない

家庭裁判所が相続放棄を認めた場合、本人に相続放棄申述受理通知書を送ります。

家庭裁判所は自主的に次順位の相続人に通知しません。

例えば、被相続人の子どもが相続放棄をする場合、次の書類を提出します。

(1)被相続人の除票

(2)相続放棄する人の戸籍謄本(3か月以内のもの)

(3)収入印紙

(4)裁判所が手続で使う郵便切手

(5)被相続人の死亡の記載がある戸籍謄本

被相続人の戸籍謄本は、死亡の記載があるもののみ提出します。

家庭裁判所は、被相続人に子どもが何人いるのか分かりません。

次順位の相続人がだれなのか分かりません。

他に子どもがいるのかいないのか分からないから、家庭裁判所は通知できません。

次順位の相続人がだれなのか家庭裁判所が自発的に調査することもありません。

③相続放棄をしても次順位の相続人に通知する義務はない

相続放棄をすると相続人でなくなります。

相続放棄をして相続人でなくなったことを他の相続人に知らせる義務はありません。

相続人同士が疎遠な場合、他の相続人の連絡先を知らないことがあります。

相続財産の分け方を決める話し合いにも参加する必要はありません。

相続財産の分け方は、相続人全員の合意が不可欠です。

相続放棄をしたのか相続を承認したのかはっきりしないと、他の相続人はとても困ります。

相続人全員の合意がないと、相続財産の分け方を決めることができないからです。

④相続放棄をしても債権者に通知されない

家庭裁判所が相続放棄を認めた場合、本人に相続放棄申述受理通知書を送ります。

家庭裁判所は自主的に債権者に通知しません。

相続放棄で提出する書類は、先に説明したとおりです。

提出書類には、債権者名簿など債権者がだれなのか分かるような書類はありません。

家庭裁判所は、債権者がだれなのか分かりません。

債権者がだれなのか分からないから、家庭裁判所は通知できません。

債権者がだれなのか家庭裁判所が自発的に調査することもありません。

⑤相続放棄をしても債権者に通知する義務はない

相続放棄をすると相続人でなくなります。

相続放棄をして相続人でなくなったことを債権者に知らせる義務はありません。

被相続人があちこちから借金をしていた場合、相続人が借入先を把握しきれないことがあります。

借入先をすべて調査するまでもなく明らかに莫大な借金がある場合、相続放棄を決断します。

相続放棄をしたのか相続を承認したのかはっきりしないと、債権者はとても困ります。

だれに被相続人の借金の返済を求めればいいか分からないからです。

⑥相続放棄をしても戸籍に記載されない

家庭裁判所が相続放棄を認めた場合、本人に相続放棄申述受理通知書を送ります。

家庭裁判所は自主的に市区町村役場に通知しません。

相続放棄をしたら市区町村役場に届出をするルールはありません。

市区町村役場には、だれが相続放棄をしたのか単純承認をしたのか情報がありません。

相続放棄をした場合、戸籍に記載されることはありません。

2相続放棄申述受理証明書を発行してもらうことができる

①相続放棄申述受理証明書を発行してもらうには申請が必要

家庭裁判所は相続放棄を認めた場合、本人にだけ通知をします。

債権者や他の相続人などに、自発的に連絡することはありません。

債権者などに見せるため、家庭裁判所で相続放棄を認めてもらったことを証明してもらうことができます。

相続放棄申述受理証明書は、自動的に送られることはありません。

家庭裁判所に対して、手数料を払って証明書を作ってくださいと申請する必要があります。

相続放棄申述受理証明申請書は、家庭裁判所のホームページからダウンロードすることができます。

家庭裁判所によっては、相続放棄申述受理通知書と一緒に、送られてくることもあります。

手数料を払って手続をすれば何枚でも発行してくれるし、再発行もしてくれます。

②相続放棄をした本人が申請する場合

相続放棄申述受理証明申請書に添付する書類は、次のとおりです。

(1)本人確認書類 (運転免許証やマイナンバーカード) のコピー

相続放棄申述受理証明申請の手数料は1通につき、150円です。

手数料は、申請書に収入印紙を貼り付けて納付します。

収入印紙は家庭裁判所で消印を押します。

申請する人は、貼り付けるだけで消印は押しません。

相続放棄申述受理証明申請書は、家庭裁判所まで出向いて提出することもできるし、郵送で提出することもできます。

返信用の封筒に住所と宛名を記載して、郵便切手を一緒に提出すると、郵便で送り返してくれます。

③他の相続人が申請する場合

相続放棄申述受理証明申請書に添付する書類は、次のとおりです。

(1)本人確認書類 (運転免許証やマイナンバーカード) のコピー

(2)被相続人死亡の記載のある戸籍謄本

(3)申請する人の戸籍謄本

手数料は本人が申請する場合と一緒です。

(2)と(3)の戸籍謄本は多くの場合、希望すれば原本還付してくれます。

家庭裁判所によっては、最初からコピーを提出するだけでよい場合もあります。

すでに相続放棄をした人が、同じ被相続人について、相続放棄した他の人の相続放棄申述受理証明申請をすることはできません。

すでに相続放棄をした人は、相続人でなくなります。

相続人でないから、他の相続人が相続放棄をしていても相続放棄をしていなくても関係ありません。

利害関係がない人は、相続放棄申述受理証明申請をすることができないからです。

各自、相続放棄申述受理証明申請をしましょう。

④債権者が申請する場合

相続放棄申述受理証明申請書に添付する書類は、次のとおりです。

(1)本人確認書類 (運転免許証やマイナンバーカード) のコピー

(2)被相続人死亡の記載のある戸籍謄本

(3)金銭消費貸借契約などの債権者であることが分かる書類

(4)法人の場合、資格証明書

相続放棄申述受理証明申請をしてから、証明書が送られるまでに半月から1か月ほどかかります。

3相続放棄申述の有無の照会ができる

相続放棄申述受理証明申請書には、事件番号や受理年月日の記載が必要です。

事件番号や受理年月日は、相続放棄申述受理通知書に記載されています。

相続放棄をした相続人の協力が得られるのであれば、相続放棄申述受理通知書を見せてもらうといいでしょう。

今までの関係性から話しにくいことがあります。

相続放棄をしたかどうかを家庭裁判所に質問することができます。

相続放棄をしたかどうかを家庭裁判所に質問する制度のことを、相続放棄申述の有無の照会と言います。

事件番号や受理年月日が分からない場合、相続放棄申述の有無の照会をすると回答してもらえます。

相続放棄申述の有無の照会をする先の家庭裁判所は、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です。

家庭裁判所の管轄は裁判所のホームページで調べることができます。

相続放棄申述の有無の照会ができるのは、次の人です。

①同順位や次順位の相続人

②被相続人の債権者などの利害関係人

相続放棄申述の有無の照会申請書に添付する書類は、次のとおりです。

①被相続人死亡の戸籍謄本

②被相続人死亡の住民票か戸籍の附票

③照会者の身分証明書

④照会者が相続人の場合、相続人の戸籍謄本

⑤照会者が債権者などの場合、借用書や契約書

相続放棄申述の有無の照会申請書は、直接、出向いて提出してもいいし、郵便で送っても差し支えありません。

届出の書き方や提出書類が心配な方は、出向いて裁判所の受付で目を通してもらうと安心です。

返信用の封筒と切手を同封しておくと、郵送で回答してもらえます。

相続放棄申述の有無の照会に手数料はかかりません。

相続放棄申述の有無の照会申請書を提出してから、回答がされるまでにはおおむね半月ほどかかります。

照会の対象となる期間は、家庭裁判所によって異なります。

多くの家庭裁判所では、被相続人の死亡後3か月、先順位の相続人が相続放棄を認められてから3か月です。

ときには被相続人の死亡後長期間経過してから、相続があったことを知る場合があります。

相続があったことを知ってから3か月以内であれば相続放棄の申立てをすることができるはずです。

家庭裁判所によっては、熟慮期間経過後に相続放棄の申立てをしていた人が見落とされる可能性があります。

4自分が相続人であることが判明したら

①知ってから3か月以内は相続放棄ができる

相続放棄申述の有無の照会で、先順位の相続人が相続放棄をしたことが判明する場合があります。

相続放棄を希望する場合、家庭裁判所に対して相続放棄の申立てをしなければなりません。

この届出の期限は、原則として、相続があったことを知ってから3か月以内です。

「相続があったことを知ってから」とは、被相続人が死亡して相続が発生し、その人が相続人であることを知って、かつ、相続財産を相続することを知ってから、と考えられています。

3か月以内に戸籍や住民票などの必要書類を揃えて管轄の家庭裁判所に提出しなければなりません。

②単純承認をするなら相続手続をする

単純承認をする場合、相続手続をすることになります。

遺言書がない場合、相続財産の分け方は相続人全員の合意が必要です。

他の相続人と協力して相続手続を進める必要があります。

5相続放棄申述受理証明申請を司法書士に依頼するメリット

相続放棄が家庭裁判所で認められると、家庭裁判所から相続放棄申述受理通知書が届きます。

家庭裁判所は相続放棄を認めた場合、本人に通知をします。

自主的に他の相続人や債権者などに連絡することはありません。

役所や法務局なども例外ではありません。

相続放棄をした人がいる場合、相続放棄をしたので相続人ではありませんと証明する必要があります。

相続放棄申述受理通知書で足りる場合がほとんどですが、時々、相続放棄申述受理証明書が必要になります。

司法書士は、このような家庭裁判所に対する書類作成もサポートしております。

相続放棄や相続放棄申述受理証明書でお困りの方は、司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。

失踪宣告がされてから相続放棄

2023-06-02

1失踪宣告とは

①失踪宣告がされると行方不明の人は死亡と見なされる

相当長期間、行方不明になっている場合、死亡している可能性が高い場合があります。

条件を満たした場合、死亡の取り扱いをすることができます。

失踪宣告とは、行方不明の人が死亡した取り扱いとするための手続です。

失踪宣告がされたら、たとえ死亡していなくても死亡した取り扱いをします。

死亡した取り扱いをしますから、失踪宣告がされた人に相続が発生します。

失踪宣告には、普通失踪と特別失踪の2種類があります。

②普通失踪とは

普通失踪とは、行方不明の人について7年間生死不明の場合、申立てができるものです。

普通失踪の申立てをした場合、失踪宣告がされるまでおよそ3か月以上かかります。

家庭裁判所の状況や事件の内容によっては、1年ほどかかる場合もあります。

生死不明になってから7年間経過したときに、死亡したものと見なされます。

③特別失踪(危難失踪)とは

特別失踪とは、「戦地に行った者」「沈没した船舶に乗っていた者」「その他死亡の原因となる災難に遭遇した者」を対象にする失踪宣告です。

危難が去ってから1年間生死不明の場合、申立てができます。

特別失踪の申立てをした場合、失踪宣告がされるまでおよそ1か月以上かかります。

危難が去ったときに、死亡したものと見なされます。

④失踪宣告後生きていることが分かったら失踪宣告の取消

失踪宣告とは、行方不明の人が死亡した取り扱いとするための手続です。

失踪宣告がされたら、たとえ生きていても死亡した取り扱いがされます。

行方不明の人に失踪宣告がされた後、本人が帰ってくることがあります。

失踪宣告がされた後、生きていることが分かった場合、失踪宣告を取り消してもらいます。

失踪宣告した日と違う日に死亡していたことが判明する場合があります。

失踪宣告がされた後、失踪宣告した日と違う日に死亡していたことが分かった場合、失踪宣告を取り消してもらいます。

失踪宣告をするときも失踪宣告を取り消すときも、家庭裁判所の関与が必要です。

失踪宣告は、死亡したと扱う重大な手続だからです。

2失踪宣告がされると相続が開始する

失踪宣告されたら、行方不明の人は死亡した取り扱いをします。

失踪宣告された人は、死亡した取り扱いなので相続が開始します。

失踪宣告された人を被相続人として相続手続をします。

相続が発生した日は、失踪宣告の申立てをした日ではありません。

失踪宣告で死亡と見なされた日です。

普通失踪では、生死不明になってから7年間経過したときに、死亡したものと見なされます。

特別失踪では、危難が去ったときに、死亡したものと見なされます。

生死不明になってから相当長期間経過した後に失踪宣告の申立てをすることがあります。

失踪宣告の申立てをしてから失踪宣告の審判が確定するまでに、およそ1年程度かかります。

だれが相続人になるのかよく確認することが重要です。

3行方不明のままでは相続放棄ができない

家族が莫大な借金を抱えたまま音信不通になることがあります。

莫大な借金を抱えて行方不明になった場合、いつか自分が借金を引き継いでしまうのではないか不安になるかもしれません。

行方不明の人に莫大な借金があったとしても、家族が相続放棄をすることはできません。

行方不明の人は、生きていると判断されるからです。

相続放棄をすることができるのは、相続人だけです。

行方不明であるだけで生きているから、相続が発生していません。

家庭裁判所に相続放棄の申立てを提出しても、受け付けてもらえません。

被相続人の生前に相続放棄をすることはできないからです。

4失踪宣告がされたら相続放棄ができる

①失踪宣告の審判の確定証明書を取得する

失踪宣告の審判がされたら、家庭裁判所から審判書謄本が届きます。

審判書が届いても、審判が確定するわけではありません。

失踪宣告の審判がされた後、2週間は不服を言う人が現れるかもしれないからです。

なにごともなく2週間経過すると失踪宣告の審判は確定します。

確定しても何も連絡はありません。

2週間経過後に家庭裁判所に申請をすれば、確定証明書を取得することができます。

②失踪宣告の審判が確定したら市区町村役場に失踪届

失踪宣告の審判が確定した後、家庭裁判所から市区町村役場にも連絡がされることはありません。

審判が確定した後、審判書謄本と確定証明書を添えて10日以内に市区町村役場に届出が必要です。

市区町村役場に届出をして、はじめて戸籍に記載がされます。

相続放棄の手続では、失踪宣告の記載のある戸籍が必要になりますから、届出をしないと手続が進まなくなります。

③相続放棄の期限3か月のスタートは知ってから

相続放棄の申立ての期限は、原則として、相続があったことを知ってから3か月以内です。

「相続があったことを知ってから」とは、被相続人が死亡して相続が発生し、その人が相続人であることを知って、かつ、相続財産を相続することを知ってから、と考えられています。

被相続人に失踪宣告がされたため相続が開始した場合、相続が開始した日は死亡と見なされた日です。

死亡と見なされた日に相続があったことを知ることはないでしょう。

普通失踪では、生死不明になってから7年間経過したときに、死亡したものと見なされます。

失踪宣告の申立ては、生死不明になってから相当長期間経過した後に出されることが多いです。

生死不明になってから10年以上経過してから失踪宣告の申立てが出された場合、生死不明になってから7年間経過したときに死亡したものと見なされます。

失踪宣告の申立をした人には、失踪宣告の審判書謄本が届きます。

失踪宣告の審判書謄本が届いても、相続があったことを知ったとは言えません。

失踪宣告の審判がされた後、2週間は不服を言う人が現れるかもしれないからです。

なにごともなく2週間経過すると失踪宣告の審判は確定します。

失踪宣告の審判が確定して、はじめて、相続があったことを知ったとは言えます。

相続があったことを知った時から、相続放棄の期限3か月がスタートします。

他の相続人は、失踪宣告の申立てをした人から失踪宣告があったことを聞くことになるでしょう。

時には戸籍謄本の記載を見て失踪宣告があったことを知るかもしれません。

失踪宣告があったことを知った時から、相続放棄の期限3か月がスタートします。

5認定死亡がされたときも相続放棄ができる

①認定死亡とは

人が死亡した場合、通常、医師が死亡の確認をします。

海難事故や震災などで死亡は確実であっても遺体を確認できない場合があります。

遺体が見つからない場合、医師が死亡の確認をすることができません。

海難事故や震災などで死亡が確実の場合、行政機関が市町村長に対して死亡の報告をします。

死亡の報告によって死亡が認定され、戸籍に記載がされます。

行政機関が市町村長に対して死亡の報告をしたら、戸籍上も死亡と扱う制度が認定死亡です。

事実上、死亡の推定が認められます。

認定死亡により、相続が開始します。

②認定死亡がされたときは相続が開始する

認定死亡の場合、死亡が確実であっても死亡日が分からないことがほとんどです。

推定令和○年○月○日死亡

推定令和○年○月○日頃死亡

令和○年○月○日から同月○日の間死亡

年月日不詳

戸籍を確認した場合に、上記のような記載がされている場合があります。

このような記載であっても、相続が開始しますから相続手続をすることができます。

相続放棄の申立てをする場合も、戸籍のとおり記載すれば構いません。

6生死不明の相続人がいる相続を司法書士に依頼するメリット

相続が発生した後、相続手続を進めたいのに行方不明の相続人や長期間行方不明で生死不明の相続人がいて困っている人はたくさんいます。

自分たちで手続しようとして挫折する方も少なくありません。

失踪宣告の申立など家庭裁判所に手続きが必要になる場合など通常ではあまり聞かない手続になると専門家のサポートが必要になることが多いでしょう。

信託銀行などは、高額な手数料で相続手続を代行しています。

被相続人が生前、相続人のためを思って、高額な費用を払っておいても、信託銀行はこのような手間のかかる手続を投げ出して知識のない遺族を困らせます。

知識のない相続人が困らないように高額でも費用を払ってくれたはずなのに、これでは意味がありません。

税金の専門家なども対応できず、困っている遺族はどうしていいか分からないまま途方に暮れてしまいます。

裁判所に提出する書類作成は司法書士の専門分野です。

途方に暮れた相続人をサポートして相続手続を進めることができます。

自分たちでやってみて挫折した方も、信託銀行などから丸投げされた方も、相続手続で不安がある方は司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。

孫が相続放棄

2023-05-15

1相続人になる人は法律で決まっている

相続が発生したら、親族のうち一定の範囲の人が相続人になります。

だれが相続人になるかについては、民法で決められています。

相続人になる人は、次のとおりです。

①配偶者は必ず相続人になる

②被相続人に子どもがいる場合、子ども

③被相続人に子どもがいない場合、親などの直系尊属

④被相続人に子どももいない場合で、かつ、親などの直系尊属が被相続人より先に死亡している場合、兄弟姉妹

相続人になるはずだった人が被相続人より先に死亡したため、相続人になるはずだった人の子どもや子どもの子どもが相続することがあります。

これを代襲相続と言います。

相続人になるはずだった人の子どもの子どもが相続することを再代襲相続と言います。

代襲相続ができるのは、相続人になるはずだった人の子どもなど被相続人の直系卑属だけです。

相続人になるはずだった人の子どもなど被相続人の直系卑属以外は代襲相続ができません。

相続人になるはずだった人の配偶者も、相続人になるはずだった人の親などの直系尊属も、相続人になるはずだった人の兄弟姉妹も、代襲相続ができません。

2相続放棄をするのは相続人だけ

だれが相続人になるかについては、民法で決められています。

先順位の人がいる場合、後順位の人は相続人になりません。

被相続人に子どもがいる場合、子どもは相続人になります。

子どもより後順位である親など直系尊属は、相続人になりません。

子どもが相続人だから、親などの直系尊属が相続放棄をしたいと思っても相続放棄ができません。

相続する権利がないのだから、相続放棄をする必要がありません。

被相続人の子ども全員が相続放棄をした場合、子どもは相続人でなくなります。

子ども全員が相続放棄をした場合、先順位の相続人がいない場合になるから親などの直系尊属が相続人になります。

子ども全員が相続放棄をした後なら、親などの直系尊属は相続放棄をすることができます。

3子どもが相続放棄をしたら孫は代襲相続しない

相続人になるはずだった人が被相続人より先に死亡した場合、相続人になるはずだった人の子どもや子どもの子どもが相続することがあります。

これを代襲相続と言います。

被相続人の子どもが被相続人より先に死亡した場合、代襲相続が発生します。

被相続人の子どもが相続放棄をした場合、代襲相続が発生しません。

被相続人の子どもが相続放棄をした場合、はじめから相続人でなかったと扱われます。

相続人でなくなるから、子どもの子どもが代わり相続することはあり得ません。

被相続人の子どもが相続放棄をした場合、子どもの子どもは代襲相続はできません。

4孫が代襲相続人になる場合は相続放棄ができる

被相続人の子どもが被相続人より先に死亡した場合、代襲相続が発生します。

被相続人の子どもの子どもが、相続人になります。

被相続人の孫が相続人になるから、単純承認をするか相続放棄をするか決めることができます。

単純承認をするか相続放棄をするか、孫ひとりひとりが各自決めることができます。

相続放棄をする場合、孫ひとりひとりが各自で家庭裁判所に相続放棄の手続をします。

一部の孫が相続放棄をした場合、他の孫が影響されることはありません。

一部の孫が単純承認をした後、他の孫が相続放棄をすることができます。

一部の孫が他の孫の相続放棄を勝手に手続をすることはできません。

各自相続放棄をするか単純承認をするか判断をして、各自手続をします。

5孫が被相続人の養子の場合

①養子は相続人になる

被相続人が子どもの子どもと養子縁組をしている場合があります。

被相続人に子どもがいる場合、子どもは相続人になります。

相続人になる子どもとは、血縁関係がある子どもだけではありません。

被相続人と養子縁組をした養子も、被相続人と血縁関係がある子どもで第三者と養子縁組をした子どもも相続人になります。

被相続人と養子縁組をした養子と第三者と養子縁組をした子どもと血縁関係がある子どもは、被相続人の子どもです。

被相続人が孫と養子縁組をした場合、養子は被相続人の子どもであり、子どもの子どもでもあります。

養子の親は、被相続人の血縁関係のある子どもだから相続人になります。

被相続人の子どもが相続放棄をした場合、子どもの子どもは相続しません。

被相続人の子どもが相続放棄をした場合でも、被相続人が孫と養子縁組をしていたら孫は相続人になります。

孫は、子どもの子どもの身分と養子の身分があるからです。

子どもの子どもとして相続人にはならないけど、養子として相続人になります。

②養子の親が死亡していた場合、養子は代襲相続人になる

被相続人が孫と養子縁組をした場合、養子は被相続人の子どもであり、子どもの子どもでもあります。

被相続人の子どもが被相続人の死亡する前に死亡した場合、子どもの子どもが代襲相続をします。

養子の親が被相続人の死亡する前に死亡した場合、養子が代襲相続をします。

被相続人の養子は、子どもの子どもでもあるからです。

被相続人の養子は、被相続人の子どもの地位と代襲相続人の地位があります。

③相続したくないのであれば養子は相続放棄が必要

被相続人と養子縁組をした養子は、被相続人の子どもです。

被相続人の子どもだから、相続人になります。

被相続人を相続したくないのであれば、相続放棄の申立てが必要です。

被相続人の子どもである養子の親が相続放棄をしている場合でも相続放棄をしていない場合でも必要です。

被相続人の養子は、相続人の地位があるからです。

④養子が代襲相続人である場合はまとめて相続放棄ができる

被相続人の子どもが被相続人の死亡する前に死亡した場合、子どもの子どもが代襲相続をします。

養子の親が被相続人の死亡する前に死亡した場合、養子が代襲相続をします。

被相続人の養子は、被相続人の子どもの地位と代襲相続人の地位があります。

被相続人を相続したくない場合、子どもの地位と代襲相続人の地位両方をまとめて相続放棄をすることができます。

⑤養子が未成年の場合は自分で相続手続ができない

未成年者は、物事のメリットデメリットを充分に判断することができません。

通常、契約などの法律行為をする場合、親などの親権者が代わりに手続をします。

被相続人が単独親権者である場合、家庭裁判所に未成年後見人を選んでもらう必要があります。

未成年後見人と未成年の養子が2人とも相続人になる場合、未成年後見人は未成年者を代理することができません。

一方がソンすると他方がトクする関係になるからです。

一方がソンすると他方がトクする関係のことを利益相反と言います。

利益相反になる場合、未成年後見人は未成年者を代理できません。

未成年後見人が未成年者を代理できない場合、家庭裁判所に特別代理人を選任してもらう必要があります。

特別代理人は、相続に利害関係がない親戚などが選ばれることが多いです。

特別代理人が未成年者の代わりに相続手続をします。

6孫は遺贈を放棄することができる

遺贈とは、被相続人が遺言によって、法定相続人や法定相続人以外の人に、財産を譲ってあげることです。

子どもが相続人になる場合、孫は相続人になりません。

孫は相続できないけど孫に財産を受け継いでもらいたい場合があります。

被相続人は遺言によって、孫に遺贈をすることができます。

子どもが相続人であっても、孫に遺贈をすることができます。

遺贈では、被相続人が法定相続人以外の人に財産を譲ってあげることができるからです。

遺言書は相続人などの関与なしで作ることができます。

遺言で遺贈や相続のことを定める場合、遺言者が受け取る人の意見を聞かずに、一方的に決めることができます。

遺言に書いてあるからとは言っても、受け取ると相続人に気兼ねすることがあります。

相続人とトラブルになりたくないから、ご辞退したい場合もあるでしょう。

遺贈は、放棄することができます。

遺贈には特定遺贈と包括遺贈がの2種類があります。

包括遺贈の場合は、相続放棄と同じ手続で放棄することができます。

特定遺贈の場合は、 遺贈義務者に通知することで放棄をすることができます。

7相続放棄と遺贈の放棄を司法書士に依頼するメリット

相続放棄も包括遺贈の放棄もプラスの財産もマイナスの財産も引き継ぎませんという裁判所に対する申立てです。

相続人らとのお話合いで、プラスの財産を相続しませんと申し入れをすることではありません。

つまり、家庭裁判所で認められないとマイナスの財産を引き継がなくて済むというメリットは受けられないのです。

実は、放棄ができるのはその相続でチャンスは実質的には1回限りです。

家庭裁判所に認められない場合、即時抗告という手続を取ることはできますが、高等裁判所の手続で、2週間以内に申立てが必要になります。

家庭裁判所で認めてもらえなかった場合、即時抗告で相続放棄を認めてもらえるのは、ごく例外的な場合に限られます。

一挙にハードルが上がると言ってよいでしょう。

司法書士であれば、家庭裁判所に認めてもらえるポイントを承知していますから、認めてもらえやすい書類を作成することができます。

しかも相続放棄も遺贈の放棄も、原則として、撤回ができません。

3か月の期間内に手続するのは思ったよりハードルが高いものです。

特定遺贈は、承認する場合も放棄する場合も、法律の知識が欠かせません。

相続放棄を考えている方はすみやかに司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。

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