Archive for the ‘不動産登記’ Category
遺言執行者が相続登記
1遺言執行者が遺言書の内容を実現してくれる
遺言書は遺言者の意思を示したものです。
遺言書を書いただけでは、意味がありません。
遺言書を書いただけで、自動的に遺言内容が実現するわけではないからです。
遺言書の内容を実現する人が遺言執行者です。
遺言執行者の職務は、遺言書の内容を実現することです。
相続が開始したら、膨大な手続があります。
手続きする先は、銀行などの金融機関や役所、法務局、家庭裁判所などです。
いずれも、平日の昼間しか手続できません。
相続人は遺言の内容を見たら、被相続人の意思を尊重し、実現してあげたいと思うでしょう。
相続人にとって不利な内容になっている場合、遺言の実現に協力してくれないこともあります。
協力してくれない場合に備えて、遺言執行者を選任しておくことが有効です。
遺言執行者は遺言の内容を実現するために、必要な行為をする権限があります。
協力しない相続人が遺言執行を妨害した場合、原則として、妨害行為は無効になります。
遺言執行者はいてもいなくても、遺言書の効力に違いはありません。
遺言執行者がいると、確実に遺言者の意思を実現してもらえますから、安心です。
2遺言執行者は相続登記ができる
「不動産〇〇を相続人〇〇に相続させる。」
被相続人が上記のような遺言書を作成している場合があります。
特定の財産を特定の相続人に相続させる遺言です。
特定の財産を特定の相続人に相続させる遺言のことを、特定財産承継遺言と言います。
特定財産承継遺言がある場合、遺産分割協議は必要ありません。
相続が発生した時に、その財産はその相続人に帰属するからです。
財産がその相続人に帰属する場合でも、自動で相続登記がされることはありません。
相続登記は法務局に対して申請が必要だからです。
特定財産承継遺言がある場合、遺言執行者は相続手続をすることができます。
遺言執行者は相続手続のひとつとして、相続登記をすることができます。
遺言執行者が相続登記をすることができるのは、令和元年7月1日以降作成の遺言書に限られます。
遺言執行者がいる場合でも、相続人は自分で相続登記をすることができます。
遺言執行者が相続登記を申請することができるから、遺言執行者から司法書士などの専門家に相続登記を依頼することができます。
司法書士などの専門家に相続登記を依頼する場合、遺言執行者が委任状に記名押印をします。
3遺言執行者は遺贈の登記ができる
「不動産□□を□□に遺贈する。」
被相続人が上記のような遺言書を作成している場合があります。
遺贈とは、被相続人が遺言によって、法定相続人や法定相続人以外の人に、財産を譲ってあげることです。
相続では、法定相続人だけに譲ってあげることができます。
遺贈では、法定相続人に譲ってあげることもできるし、相続人以外の人に譲ってあげることができます。
譲ってもらう人は自然人でもいいし、法人などの団体でも差し支えありません。
遺言書に「遺贈する」とあれば、譲ってもらう人が相続人であっても相続人以外の人でも、遺贈で手続します。
遺贈には、2種類あります。
特定遺贈と包括遺贈です。
特定遺贈とは、遺言書に「財産〇〇〇〇を遺贈する」と財産を具体的に書いてある場合です。
包括遺贈とは、遺言書に「財産すべてを包括遺贈する」「財産の2分の1を包括遺贈する」と割合だけ書いて財産を具体的に書いてない場合です。
特定遺贈では、受け継ぐ財産が具体的に特定されています。
具体的に特定されているから、特定遺贈では遺産分割協議は必要ありません。
相続が発生した時に、その財産は遺贈を受け取る人に帰属するからです。
財産が遺贈を受け取る人に帰属する場合でも、自動で遺贈の登記がされることはありません。
遺贈の登記は法務局に対して申請が必要だからです。
遺贈する遺言がある場合、遺言執行者は相続手続をすることができます。
遺言執行者は、遺贈を受け取る人と協力して遺贈の登記をすることができます。
遺言執行者がいる場合、相続人全員は遺贈を受け取る人と協力して遺贈の登記をすることができません。
遺言執行者がいる場合、遺贈の登記は必ず遺言執行者が遺贈を受け取る人と協力して登記申請をする必要があります。
遺言執行者が遺贈登記を申請することができるから、遺言執行者から司法書士などの専門家に遺贈の登記を依頼することができます。
司法書士などの専門家に遺贈の登記を依頼する場合、遺言執行者が委任状に記名押印をします。
遺贈の登記申請書に添付する印鑑証明書は、遺言執行者の印鑑証明書です。
4遺言執行者は遺贈の登記の前提として住所変更登記ができる
①遺贈の登記の前提として住所変更登記が必要
被相続人の財産調査のため登記簿を確認すると、登記簿上の住所が古い住所のままになっていることがあります。
遺贈の登記を申請するためには、前提として、住所変更登記をする必要があります。
遺言執行者は遺贈の登記を申請するために、前提として、住所変更登記をすることができます。
遺言執行者が住所変更登記を申請することができるから、遺言執行者から司法書士などの専門家に住所変更登記を依頼することができます。
司法書士などの専門家に住所変更登記を依頼する場合、遺言執行者が委任状に記名押印をします。
②相続登記の前提として住所変更登記が不要だが証明書類が必要
相続登記をする場合、前提として、住所変更登記をする必要はありません。
住所変更登記をする必要がないだけで、被相続人の住所の移り変わりを確認する必要はあります。
被相続人の住所の移り変わりを確認できない場合、法務局は同じ名前の別の人と判断するからです。
同じ名前の別の人に相続があったと判断された場合、相続登記は認めてもらえません。
被相続人の住所の移り変わりを公的書類で証明すれば、相続登記をすることができます。
5遺言執行を専門家に委任することができる
遺言者は、遺言執行者を自由に指名することができます。
親族のうちから選んでも構いませんし、司法書士などの専門家に依頼することもできます。
家族から選んだ場合、相続人同士の関係性や財産状況が分かっているので、手続がスムーズに進むかもしれません。
一方で、難易度の高い相続手続や財産状況が複雑な場合、対応しきれなくなることがあります。
司法書士などの専門家に遺言執行者になってもらう場合、専門性や中立性の面から安心です。
遺言執行者がするべき職務は、多岐に渡ります。
専門知識を必要とすることも多いものです。
令和元年7月1日以前作成の遺言書で遺言執行者に指名された場合、止むを得ない理由があれば司法書士などの専門家にその任務を任せることができます。
遺言執行者に指名されたのが令和元年7月1日以降作成の遺言書であれば、遺言執行者は自己の責任で司法書士などの専門家にその任務を任せることができます。
止むを得ない理由がなくても、司法書士などの専門家に任せることができるように変更になりました。
遺言執行は法律知識が必要な手続が多いので、専門家に任せる方がスムーズでしょう。
法律改正で、専門家に任せやすくなったといえます。
6遺言書作成と遺言執行を司法書士に依頼するメリット
遺言執行者は遺言書の内容を実現する人です。
相続人が遺言書の内容に納得していて、手続に協力的であれば、必ずしも、遺言執行者を選任する必要はありません。
子どもの認知など遺言執行者しかできない手続がある場合、遺言執行者を選任しておかないと、相続人に余計な手間をかけさせることになります。
遺言執行者は、相続開始後すみやかに手続を進めることができる時間と知識がある人を選ぶことが重要です。
その意味でも、家族より司法書士などの専門家に遺言執行を依頼する人が増えています。
以前は、遺言執行者は止むを得ない場合だけ、他の人に職務を任せることができるとされていましたが、現在は、止むを得ないなどの理由は不要になりました。
遺言執行者に指名され、職務をしてみたところ、思ったよりタイヘンだという場合、自己の責任で司法書士などの専門家におまかせすることもできます。
今後も、専門家に依頼する人は増えていくでしょう。
遺言執行を司法書士などの専門家に依頼した場合、相続人は基本待っているだけなので、トラブルになることが少なくなるからです。
家族を笑顔にするためにも、遺言書作成と遺言執行者選任しましょう。
家族の幸せのためにも、遺言書作成と遺言執行者選任を司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。
抵当権抹消登記と所有者の相続
1抵当権をはずすには申請が必要
マイホームを購入したときに、銀行などから融資を受けることがあるでしょう。
ローンの返済が滞ったときに備えて、銀行は不動産を担保にします。
返済が滞ったときに備えて、担保にする権利を抵当権と言います。
ローンが完済したら、ローンと一緒に抵当権はなくなります。
抵当権はなくなりますが、抵当権の登記は自動でなくなりません。
法務局はローンを完済したかどうか分からないからです。
抵当権をはずす登記のことを、抵当権抹消登記と言います。
ローンを完済すると、金融機関は、借用書などの書類を返します。
多くの場合、その中に、抵当権抹消登記の書類が入っています。
完済した後、書類を揃えて、法務局に抵当権抹消登記を申請する必要があります。
銀行が自動でやってくれることは、ほとんどありません。
2返済中に所有者が死亡したら先に抵当権付き不動産の相続登記が必要
ローンの返済中に不動産の所有者に相続が発生する場合があります。
抵当権付き不動産の所有者が死亡したら、抵当権付き不動産の相続登記が必要です。
ローンが完済されたら、抵当権が消滅します。
ローン完済によって抵当権消滅登記が必要になります。
不動産の所有者が死亡した後にローンが完済されたら、先に抵当権付き不動産の相続登記をしなければなりません。
実務では、抵当権付き不動産の相続登記と抵当権消滅登記を一緒に申請することがほとんどです。
抵当権付き不動産の所有者の多くは、ローンの債務者でしょう。
多くの場合、住宅ローンを組むときに、団体信用生命保険に加入しています。
団体信用生命保険に加入している場合、ローンの債務者が死亡したら保険金でローンが完済になります。
ローンが完済されれば、抵当権が消滅します。
このような場合も、抵当権付き不動産の相続登記を省略することはできません。
団体信用生命保険の保険金でローンが完済になった場合でも、抵当権抹消登記を自動でやってくれることはありません。
3完済したのに放置していたら抵当権抹消登記だけ申請できる
ローンが完済したら、ローンと一緒に抵当権はなくなります。
抵当権はなくなりますが、抵当権の登記は自動でなくなりません。
ローンが完済すると、ほっとします。
ほっとして銀行から抵当権抹消登記のための書類を見落としがちです。
書類を受け取っても、先延ばししてしまうかもしれません。
先延ばしをしているうちに、抵当権付き不動産の所有者が死亡する場合があります。
ローンが完済したら、ローンと一緒に抵当権はなくなります。
抵当権付き不動産の所有者は、抵当権抹消登記をしてもらう権利があります。
抵当権付き不動産の所有者が死亡した場合、相続人は抵当権抹消登記をしてもらう権利を相続します。
抵当権付き不動産の相続登記を後回しにして、抵当権抹消登記をすることができます。
抵当権抹消登記をする場合、不動産の所有者の相続人全員の協力は必要ありません。
一部の相続人が抵当権者と協力して、抵当権抹消登記をすることができます。
抵当権抹消登記をすることは、相続人全員の利益になる行為だからです。
相続人全員の権利を保全するために、一部の相続人が登記申請をすることができます。
4抹消書類は古くても使える
抵当権抹消登記は、特段期限もないので先延ばししがちです。
先延ばしして古くなった書類でも、ほとんどは使えます。
銀行が送ってくる抵当権抹消登記の書類はおおむね次のとおりです。
①抵当権解除証書・放棄証書
ローン完済したことの証明書です。
完済した当時の金融機関の代表者の記名押印がされています。
証明した代表者が退任して、新しい代表者になっていても証明は有効です。
当時の書類はそのまま使えます。
②抵当権の権利証
不動産を担保に取ったときの権利証です。
古い権利証も、原則として、有効です。
ローン完済後、金融機関が合併をしている場合、合併後の権利証が必要になります。
③登記委任状
ローン完済当時の代表者からの委任状です。
委任した代表者が退任して新しい代表者になっていても、委任状は有効です。
合併などで金融機関がなくなっていたとしても、引き継いでいる金融機関からの委任状として有効です。
5抵当権と所有権が同一人物に帰属したら混同により消滅する
①存続させる必要がない抵当権は混同で消滅する
子どもが第三者にお金を貸す場合に、親が自分の不動産を担保に差し出すことがあります。
子どもが債権者で、抵当権者です。
第三者が債務者です。
親が抵当権設定者で、不動産の所有者です。
親である抵当権設定者に相続が発生することがあります。
他に相続人がいなければ、抵当権者である子どもが抵当権設定者の地位と不動産を相続します。
抵当権者の地位と抵当権設定者の地位が同一人物に帰属した場合、抵当権は消滅します。
抵当権は、返済が滞ったときに備えて担保にする権利です。
返済が滞ったときに担保に取った不動産を売り払って借金の返済にあてることができます。
自分の不動産を売り払って借金を返してもらっても、意味はありません。
抵当権者の地位と抵当権設定者の地位が同一人物に帰属した場合、原則として、抵当権は存在する意味を失います。
抵当権者の地位と抵当権設定者の地位が同一人物に帰属した場合などで権利が存続する意味を失うことを混同と言います。
抵当権は物に対する権利だから、物権と言います。
物権が混同によって消滅しているから、物権混同と言います。
抵当権設定者に相続があって、物権混同になる場合、相続による所有権移転登記とは別に、混同による抵当権抹消登記が必要です。
②不動産に第三者の抵当権がついているときは消滅しない
抵当権者の地位と抵当権設定者の地位が同一人物に帰属した場合、原則として、抵当権は消滅します。
1つの不動産に抵当権が複数設定している場合があります。
登記した順番に応じて、1番抵当権者、2番抵当権者と言います。
抵当権は、返済が滞ったときに備えて担保にする権利です。
不動産を売り払って借金を返してもらうことができます。
借金を返してもらう場合、1番抵当権者が優先です。
1番抵当権者が先に登記をしたからです。
1番抵当権者に借金を払った後の残りから、2番抵当権者に借金を返してもらうことができます。
1番抵当権者の地位と所有権者の地位が同一人物に帰属した場合、1番抵当権は消滅しません。
1番抵当権者は、2番抵当権者より優先して借金を返してもらうことができます。
1番抵当権が消滅すると、2番抵当権者に優先して借金を返してもらうことができなくなるからです。
1番抵当権者の地位と所有権者の地位が同一人物に帰属したことによって、1番抵当権者は不利益を受けることになります。
1番抵当権者は不利益を受けるいわれはありません。
1番抵当権者の地位と所有権者の地位が同一人物に帰属した場合、1番抵当権は消滅しません。
2番抵当権者の地位と所有権者の地位が同一人物に帰属した場合、2番抵当権は消滅します。
2番抵当権が消滅しても、1番抵当権者が優先であることに変わりはありません。
2番抵当権が消滅した場合、不当に不利益を受ける人はいません。
2番抵当権者の地位と所有権者の地位が同一人物に帰属した場合、原則どおり2番抵当権は消滅します。
③抵当権に転抵当権がついているときは消滅しない
抵当権者の地位と抵当権設定者の地位が同一人物に帰属した場合、原則として、抵当権は消滅します。
抵当権は、不動産を担保に取る権利です。
転抵当権は、抵当権を担保に取る権利です。
転抵当権がついているときは抵当権者の地位と所有権者の地位が同一人物に帰属した場合、抵当権は消滅しません。
転抵当権者は、原抵当権の範囲において他の債権者に優先して借金を返してもらうことができます。
抵当権が消滅すると、他の債権者に優先して借金を返してもらうことができなくなるからです。
抵当権者の地位と所有権者の地位が同一人物に帰属したことによって、転抵当権者は不利益を受けることになります。
転抵当権者は不利益を受けるいわれはありません。
抵当権者の地位と所有権者の地位が同一人物に帰属した場合、抵当権は消滅しません。
6混同による抵当権消滅登記をする前に相続が発生したら
抵当権者の地位と抵当権設定者の地位が同一人物に帰属した場合、抵当権は消滅します。
所有権が移転したことによって同一人物に帰属した場合、所有権移転登記をします。
抵当権が移転したことによって同一人物に帰属した場合、抵当権移転登記をします。
物権混同になる場合、所有権移転登記や抵当権移転登記とは別に、混同による抵当権抹消登記が必要です。
物権混同になる場合、他に権利者がいなければ抵当権を存続させる意味はありません。
混同による抵当権抹消登記の申請を見落としたまま、相続が発生する場合があります。
物権混同になる場合は、抵当権者の地位と抵当権設定者の地位が同一人物に帰属した場合です。
抵当権抹消登記は、権利者と義務者の共同申請です。
混同による抵当権抹消登記の登記申請は、権利者兼義務者として申請します。
権利者兼義務者に相続が発生した場合、相続人全員が共同で登記申請をする必要があります。
一部の相続人だけで登記申請をすることはできません。
7抵当権抹消登記はすみやかに
わざわざ抵当権付き不動産を買う人はいません。
不動産を売却するときになって抵当権がついたままになっていることに気がつきます。
おそらく借金の返済が終わったことで安心したのでしょう。
安心して抵当権の登記がついたままであることを忘れてしまったのでしょう。
借金がすべて返済されれば、抵当権は消滅します。
抵当権が消滅しても、抵当権の登記は自動で消滅することはありません。
法務局が自動で消してくれることもありません。
担保に取った人と担保に差し出した人が一緒に、法務局に抵当権抹消登記を申請します。
抹消登記をしなければ、抵当権の登記は登記簿に残り続けます。
抵当権は、返済が滞ったときに備えて、担保にする権利です。
返済が滞ったら、抵当権者は不動産を売り払って、借金の返済に充てることができます。
このような権利が付いた不動産は、いつ抵当権者が現れて売り払われるか分からないので、怖くて売買できません。
借金の返済が終わった後、すみやかに抵当権抹消登記をしておきましょう。
長期間経過すると手間と時間と費用が余計にかかります。
長期間経過すると、借金の返済が終わったのか終わっていないのか事実関係が分からなくなるからです。
借金の返済が終わったはずであっても、証拠を用意できないこともあります。
事情を知らない相続人がいる場合、抵当権抹消登記に協力してくれない可能性もあります。
相続人が行方不明になって連絡が取れないこともあります。
抵当権抹消登記に協力しない相続人がいた場合、裁判を起こして判決をとる必要があります。
長期間経過するほど、難易度は上がります。
抵当権抹消登記はすみやかに済ませましょう。
8抵当権抹消登記を司法書士に依頼するメリット
ローンを完済したら、銀行から借用書などの書類が送られてきます。
多くはその中に抵当権抹消登記のための書類は入っています。
抵当権抹消登記は特段の期限もないことから、多忙にまぎれがちです。
不動産を売却したり、相続が発生したりするときに気がつくことが多いです。
銀行などの金融機関は、合併や名称変更をします。
長期間経過すると抵当権抹消登記はカンタンにはできなくなります。
書類があればいいですが、書類を紛失していると改めて金融機関に依頼する必要があります。
それでも、銀行などの金融機関であれば、手間と費用がかかるだけで済みます。
金融機関以外の場合、事実関係が確認できなくなったり、関係者と連絡が取れなくなったり、連絡を無視されたりします。
ローンをを完済したら、抵当権抹消登記をすみやかに済ませましょう。
司法書士は登記の専門家です。 スムーズに登記を完了させたい方は、司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。
相続放棄した人がいるときの相続登記
1相続放棄とは
相続が発生したら、原則として、被相続人のプラスの遺産もマイナスの遺産も相続人が受け継ぎます。
被相続人のプラスの遺産もマイナスの遺産も受け継がないことを相続の放棄といいます。
相続放棄をすると、プラスの遺産を引き継がなくなりますが、マイナスの遺産も引き継ぐことがなくなります。
相続放棄は、家庭裁判所に対して、必要な書類をを添えて相続放棄をしたい旨の届出をします。
家庭裁判所に対して、相続放棄をしたい旨の届出をしない場合、相続放棄はできません。
被相続人が生前、相続人になる予定の人と相続放棄をすると約束している場合があります。
相続放棄をすると約束しても、意味はありません。
家庭裁判所に届出をしていないからです。
相続人間で相続放棄をすると念書を書いている場合があります。
相続放棄をすると念書を書いても、無効です。
家庭裁判所が関与していないからです。
父母が離婚する際に、子どもが相続放棄をすると誓約書を渡している場合があります。
子どもが相続放棄をすると誓約書を書いても、子どもには関係ない話です。
家庭裁判所に手続をしていないからです。
被相続人の債権者に相続放棄をすると申し入れをしている場合があります。
債権者に申し入れをするだけでは、何の価値もありません。
家庭裁判所が相続放棄を認めていないからです。
2相続放棄をしたら相続手続に参加しなくてよい
相続放棄をするとはじめから相続人でなくなります。
相続人でなくなりますから、相続人全員でしなければならない手続にも参加する必要がありません。
具体的には、遺産分割協議は相続人全員でする必要があります。
この遺産分割協議にも参加不要です。
遺産分割協議は相続人間の争いが起きやすい手続です。
相続人らと疎遠であったり、相続人間にトラブルがあったり、もともと不仲であったりする場合、相続財産の話し合いに参加するのは大きな負担になります。
遺産分割協議などの手続に参加しなくてよくなるのは大きなメリットといえるでしょう。
相続人全員の合意ができたら、合意内容を文書にとりまとめます。
合意内容を取りまとめた文書を遺産分割協議書と言います。
遺産分割協議にも参加不要だから、遺産分割協議書に署名押印をすることもありません。
3相続登記に相続放棄申述受理通知書が必要
相続放棄は、家庭裁判所に対して、必要な書類をを添えて相続放棄をしたい旨の届出をします。
家庭裁判所は相続放棄を認めた場合、相続放棄を認められたことを通知します。
相続放棄が認められた通知のことを相続放棄申述受理通知書と言います。
家庭裁判所は相続放棄の申出をした人にだけ通知をします。
自主的に、家庭裁判所から役所や法務局に連絡することはありません。
相続登記を申請する場合、相続人が相続放棄をしていることを証明する必要があります。
相続人が相続放棄をしていることを証明する資料として、家庭裁判所が発行した相続放棄申述受理通知書を提出します。
相続放棄をした人が自分で証明書を書いても、法務局は認めてくれません。
相続放棄申述受理通知書は、家庭裁判所によって記載内容が異なります。
家庭裁判所の記載内容によっては、相続放棄申述受理通知書だけでは受け付けてもらえない場合があります。
相続放棄申述受理通知書だけでは受け付けてもらえない場合、相続放棄申述受理証明書を提出します。
相続放棄申述受理証明書は、相続放棄の手続をした家庭裁判所に請求します。
相続放棄申述受理証明書は、相続放棄をした人も請求できるし、相続を承認した他の相続人も利害関係人として請求することができます。
4法定相続分で相続登記後に相続放棄すると手続が複雑
相続登記は相続人が申請します。
相続人がたくさんいる場合、相続人全員で申請するのが原則です。
法定相続分で相続登記をする場合、相続人のうちの1人が相続人全員のために相続登記を申請することができます。
自分の持分だけ、相続登記をすることができないからです。
一部の相続人が法定相続分で相続登記をした後に、相続放棄が認められることがあります。
相続放棄をするとはじめから相続人でなくなります。
結果として、相続登記の内容が間違ったものになります。
登記の内容を実態に合わせて、正しくする必要があります。
実態に合う正しい登記にするためには、手続がとても複雑です。
①第1順位の相続人全員が相続放棄をした後、第2順位の相続人が相続
→抹消登記と相続登記
相続放棄をするとはじめから相続人でなくなります。
第1順位の相続人全員が相続放棄をした場合、相続登記の内容と全く別の第2順位の相続人が相続します。
まったく別の相続だから、更正登記をすることはできません。
いったん法定相続分による登記を抹消します。
そのうえで、第2順位の相続人による相続登記を申請します。
②第1順位の相続人の一部が相続放棄をした後、第1順位の他の相続人が相続
→持分全部移転登記
相続放棄をするとはじめから相続人でなくなります。
各相続人の共有持分に変更が発生します。
相続放棄をした人は持分を失います。
他の相続人が持分を取得します。
相続の放棄を登記原因として、持分全部移転登記を申請します。
持分全部移転登記は、持分が増える人が単独で申請することはできません。
持分が増える他の相続人を権利者、相続放棄をした人を義務者とする共同申請です。
③被相続人の債権者が第1順位の相続人に相続登記をし、
差押の登記した後、第1順位の相続人全員が相続放棄し、
第2順位の相続人が相続
→所有権移転
①の事例と比べると、債権者が差押をしている点が異なります。
第1順位の相続人全員が相続放棄をした後、第2順位の相続人が相続した場合、いったん法定相続分による相続登記を抹消して、あらためて、第2順位の相続人に相続登記を申請します。
いったん法定相続分による相続登記を抹消した場合、差押の登記は効力を失います。
登記が効力を失った場合、債権を回収できなくなって困ります。
差押をした債権者はこのような不利益は受け入れられないでしょう。
このため、所有権移転登記で対応します。
所有権移転登記は、第1順位の相続人全員を義務者、第2順位の相続人を義務者で申請します。
債権者が第1順位の相続人に相続登記をした場合であっても、債権者が手続をすることはできません。
④相続人の債権者が第1順位の相続人に相続登記をし、
差押の登記した後、第1順位の相続人全員が相続放棄し、
第2順位の相続人が相続
→抹消登記と相続登記
③の事例では被相続人の債権者でしたが、④の事例では相続人の債権者である点が異なります。
いったん法定相続分による相続登記を抹消した場合、差押の登記は効力を失います。
相続放棄をするとはじめから相続人でなくなります。
相続放棄をしたから相続財産を処分することはできません。
相続人の債権者も、相続財産を処分することはできません。
相続財産に差押をする権利はないと言えます。
法定相続分による相続登記を抹消した場合、差押をする権利がなくなったのだから、差押の登記に効力がなくなっても困ることがありません。
法定相続分の登記を抹消する申請をする場合、債権者の同意書が必要になります。
差押の登記を抹消することを形式的に不利益と考えるからです。
相続人の債権者は差押をする権利がなくなったのだから、同意する義務があります。
5相続放棄者がいる不動産登記を司法書士に依頼するメリット
大切な家族を失ったら、大きな悲しみに包まれます。
やらなければいけないと分かっていても、気力がわかない方も多いです。
相続手続は一生のうち何度も経験するものではないため、だれにとっても不慣れで手際よくできるものではありません。
相続財産は相続人全員で話し合いによる合意をして、分け方を決めることになります。
相続人全員で話し合いによる合意をせずに、安易に、法定相続分で共有する登記がされるケースがあります。
法定相続分で共有するのはデメリットが大きく、決しておすすめできるものではありませんが、相続手続で疲れていると目先のラクを選んでしまいがちです。
安易な手段を選ぶと、更正登記が必要になり余計な手間と費用がかかります。
更正登記で済めばまだしも、持分移転登記をしなければならない場合、不動産の価額によっては登録免許税だけでも無視できない額になります。
更正登記ができるか、いったん、抹消登記をしてあらためて相続登記をするかは専門的な判断が必要になります。
知識がない相続人が書籍やインターネットなどで調べるのはハードルが高いでしょう。
相続登記がされているが、内容が正しくないことに気づいたら、司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。
寄与分がある不動産登記
1寄与分とは
寄与分とは、被相続人の財産の維持や増加について特別な貢献をした人がいる場合、特別な貢献をした人に対して、相続分以上の財産を受け継いでもらう制度です。
寄与分の制度は、特別な貢献をした人に対して相続分以上の財産を受け取ってもらうことで、相続人間の実質的な公平を図ろうとするものです。
具体的には、被相続人の事業に従事して財産増加に貢献した人、被相続人が重度の介護が必要になった場合にお世話をして財産減少を防いだ人が挙げられます。
これらの人の特別な貢献によって、財産が増加した場合や財産が維持されたと認められる場合、寄与分が認められます。
2寄与分が認められる条件はとても厳しい
①特別の寄与があること
寄与分が認められるのは特別の寄与がある場合のみです。
特別の寄与とは、被相続人との身分関係から考えて、通常期待される程度を超える貢献のことです。
具体的には、被相続人が家事を全く行わず、配偶者が家事労働をしていた場合、通常の貢献と評価されます。
夫婦間の協力扶助義務があるからです。
子どもが高齢の被相続人と同居して家事援助を行っている場合、通常の貢献と評価されます。
親族間の扶養義務や互助義務があるからです。
次のような条件を満たした場合、通常期待される程度を超える貢献と評価されることが多いです。
(1)対価を得ていないこと
完全に無償である場合や無償に近い不釣り合いな低い報酬であった場合です。
(2)一定程度の長期間であること
数か月程度のものではなく、少なくとも1年以上程度継続されていた場合です。
(3)片手間ではなく、つきっきりであること
日常生活の合間に看護介護していたのではなく、つきっきりで看護介護に専念していた場合です。
②財産が実質的に増加したこと
寄与分が認められるのは、実質的に財産の増加した場合のみです。
財産の減少や負債の増加が免れたこと、財産の増加や負債の減少が必要です。
財産の経済的価値の実質的増加が必要ですから、精神的援助は寄与分の対象にはなりません。
具体的には、頻繁にお見舞いに行ったことや話し相手になったことは寄与分の対象になりません。
お見舞いや話し相手で財産が実質的に増加することはないからです。
精神的援助は金銭的評価が困難です。
③特別の寄与と財産増加に因果関係があること
寄与分が認められるのは、特別の寄与が財産の実質的増加につながった行為のみです。
3寄与分の決め方は原則として相続人全員の話し合い
相続が発生した場合、相続財産は相続人全員の共有財産になります。
相続財産の分け方は、相続人全員の話し合いによる合意が不可欠です。
相続財産の分け方を決める話し合いの前提として、相続人全員で寄与分を決めます。
寄与分を決めること自体は、目的ではありません。
最終的に相続人全員が相続財産の分け方について、合意をすればよいのです。
合意をしたら、合意内容を文書に取りまとめます。
遺産分割協議書に、寄与分を明示することもできます。
多くの場合、寄与分を明示せず、寄与分を考慮した後の具体的な分け方だけを記載します。
4法定相続分で登記をしていない場合の相続登記
法定相続分で登記としていない場合、寄与分があっても寄与分がなくても相続登記の手続に違いはありません。
寄与分によって財産を得たのでなく、寄与分を考慮した相続財産の分け方の合意によって財産を得たからです。
相続財産の分け方の合意によって財産を得たから、通常の相続登記と変わりはありません。
遺産分割協議書で記載された相続分で、相続登記を申請します。
多くの場合、遺産分割協議書に寄与分を明示しません。
話し合いの中で寄与分を話し合い、寄与分を考慮した後の具体的な分け方のみ記載します。
事情を知らない人は見ても、寄与分のことには気がつきません。
遺産分割協議書とは別に寄与分を定める協議書を作った場合、寄与分を定める協議書は、相続登記をするときに法務局に提出します。
5法定相続分で登記をした後、寄与分が認められた場合
法定相続分で共有する場合、相続財産の分け方について相続人全員の合意は必要ありません。
長期間に渡って相続財産の分け方について合意ができない場合、法定相続分による相続登記をすることがあります。
寄与分が話し合いの対象になる場合、相続人全員の話し合いがまとまりにくくなります。
ひとまず法定相続分で相続登記を済ませておくことがあります。
①原則として更正登記ができる
相続登記を済ませた後、寄与分の話し合いがまとまった場合、登記の内容を変更する必要があります。
寄与分の話し合いがまとまったことによる変更をする場合、更正登記をすることができます。
登記原因は「錯誤」です。
「寄与分」「寄与分の合意」などは登記原因として認められていないからです。
権利が増える相続人が単独で申請することはできません。
寄与分によって権利が増える相続人を権利者、寄与分によって権利が減る相続人を義務者とする共同申請です。
法定相続分で相続登記をした場合、権利証が発行されていない場合があります。
相続人全員でなく相続人のひとりからであっても、法定相続分で相続登記を申請することができるからです。
権利証は登記申請をした相続人にのみ発行されます。
法定相続分で相続登記を申請をした相続人以外の相続人には、権利証が発行されません。
寄与分の話し合いがまとまったことによる更正登記は、権利者と義務者による共同申請をしなければなりません。
共同申請をする場合、義務者は権利証の提供が必要になります。
更正登記をする場合、第三者の承諾書が必要になるケースがあります。
更正登記を実行することによって権利が否定されることになる第三者がいる場合です。
例えば、寄与分によって権利が減る相続人の持分に抵当権が設定されている場合があります。
更正登記が実行された場合、この抵当権は無効になります。
抵当権がが無効になることについて、承諾書が必要になります。
更正登記をする場合、登録免許税は不動産1個につき1000円です。
②遺産分割による持分移転登記ができる
寄与分を定める協議における合意は、本来、相続人〇〇の寄与分が〇〇万円であると合意するか、相続財産全体に対して〇分の〇に相当すると合意します。
このような合意は、相続財産の分け方の合意とは言えません。
相続財産の分け方がどのようなものなのか分からないからです。
あらためて、寄与分の合意を前提として相続財産の分け方を合意しなければなりません。
ときには、相続人〇〇の寄与分として財産〇〇を相続することに合意する場合があります。
寄与分を定める合意だけでなく相続財産の分け方についての合意があるケースと考えることができます。
寄与分を定める合意と相続財産の分け方についての合意が一体化している場合、遺産分割による持分移転登記をすることができます。
法定相続分による相続登記後に遺産分割を行った場合ですから、法定相続分による相続登記後に遺産分割を行った場合と同じ手続をします。
持分移転登記をする場合、第三者の権利が否定されることはありません。
第三者の承諾書が必要になることはありません。
持分移転登記をする場合、登録免許税は移転する持分の固定資産評価額の1000分の4です。
6寄与分のある相続登記を司法書士に依頼するメリット
寄与分を主張する相続人がいる場合、相続財産の分け方についての話し合いが長引きます。
寄与分は、一部の相続人の苦労に報いるための制度ですが、認められるためのハードルは非常に高いものです。
高いハードルを越えて寄与分が認められた場合であっても、本人が思うような金額になることはほとんどありません。
法律で実質的公平が図られるのは、残念なことですが事実上困難です。
だから、相続財産の分け方の話し合いが長引くのです。
長引くだけでなく家族のトラブルに発展しがちです。
さらに、登記申請も場合に応じて、複雑になります。
このようなことは法務局の登記相談などでも聞かなければ解説してくれません。
財産の分け方を決めるだけでも大変なのに、その後の手続も複雑で困難になります。
司法書士はこのような困難で複雑な登記をサポートします。
寄与分のある相続登記がある方は、司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。
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