遺産分割協議書に記載のない財産が後日判明

1新たな財産が見つかっても遺産分割協議はやり直さなくていい

相続が発生した後、相続財産は相続人全員の共有財産になります。

一部の相続人が勝手に処分することはできません。

相続人全員で相続財産の分け方について話し合いによる合意をして、分け方を決める必要があります。

相続財産の分け方にについて、相続人全員でする話し合いのことを遺産分割協議と言います。

相続人が被相続人と同居していない場合など、被相続人の財産の全容を知っていることは少ないでしょう。

相続人が知っている財産について分け方の合意をした後、新たな財産が見つかることがあります。

銀行や証券会社などから手紙が届き財産が判明するケースや自宅内に多額の現金が保管されていたケースなどです。

相続財産の分け方について相続人全員で合意した後に新たな財産が見つかった場合、原則として、当初の合意は有効です。

あらためて、相続財産の分け方についての合意をやり直す必要はありません。

すべての財産について、まとめて合意しなければならないといったルールはありません。

合意できる財産から順次合意しても、問題がありません。

不動産について合意し遺産分割協議書を作成した後、銀行預貯金について合意し遺産分割協議書を作っても差し支えありません。

相続財産全部についてまとめて合意しても一部の財産だけ合意しても、相続人全員の合意であれば有効な合意です。

新たな財産が見つかった場合、見つかった新たな財産について相続人全員で合意ができれば何も問題はありません。

先の遺産分割協議が無効になることはないから、やり直しをする必要はありません。

2遺産分割協議がやり直しになる例外

①新たな財産があったら遺産分割協議で合意をしなかった場合

相続財産の分け方について相続人全員で合意した後に新たな財産が見つかった場合、原則として、当初の合意は有効です。

あらためて相続財産の分け方についての合意をやり直す必要はありません。

やり直しをしなければならないのは、例外です。

新たに見つかった財産が非常に価値の高い財産であることがあります。

その財産の存在を知っていたら、遺産分割協議で合意をしなかったと言える場合です。

非常に価値の高い財産である場合、遺産分割協議の前提が大きく変わると言えます。

過去の遺産分割協議を無効にしないと不公平になる場合、やり直しをした方がいいでしょう。

もちろん新たに見つかった財産が非常に価値が高い財産である場合であっても、相続人全員の合意で新たに見つかった財産だけ合意することもできます。

②財産を隠していた場合

一部の相続人が財産を独り占めしようと考えて、財産を隠していることがあります。

遺産分割協議後に隠していた財産が見つかった場合、他の相続人は納得がいかないでしょう。

遺産分割協議を無効にしてやり直しをするように主張することができます。

③遺産分割協議のやり直しはハードルが高い

相続人全員で合意した遺産分割協議は、原則として、やり直しはできません。

相続人の1人が気が変わったからと言って、やり直しをしなければならなくなると、いつまでたっても遺産分割協議は終わりません。

相続財産の分け方について、相続人全員で合意したら、確定して話し合いは終了になります。

相続人全員で合意して、相続財産の分け方が確定したら、その後、相続人が死亡しても協議のやり直しはできません。

④相続人全員がやり直しの合意がある

当事者全員が別の分け方の方が良かったと納得できることがあります。

相続人全員が納得している場合、遺産分割協議のやり直しができます。

単に新たな財産が見つかっただけの場合、やり直しをすることはできないでしょう。

新たな財産が見つかったことで相続人全員が別の分け方の方が良かったと納得している場合、遺産分割協議のやり直しができます。

遺産分割協議のやり直しは、多数決ではありません。

相続人全員の合意が必要です。

相続人のうち1人でもやり直しに反対の人がいた場合、遺産分割協議のやり直しはできません。

遺産分割協議は、相続人全員で合意解除をすることができます。

3遺産分割協議をやり直しても財産は取り返せない可能性がある

遺産分割協議ができた場合、財産を相続する人は相続手続をします。

相続手続をしたら、相続財産を処分することがあるでしょう。

不動産を相続した相続人は、すぐに売却することがあります。

不動産を売買したら、所有権移転登記をします。

売却した後になって、新たな財産が見つかることがあります。

非常に価値の高い財産の場合、遺産分割協議のやり直しを請求するかもしれません。

遺産分割協議をやり直しても、不動産の売買は無効になりません。

不動産の買主に不動産を返して欲しいということはできません。

遺産分割協議のことを何も知らない買主は、急に返してくれと言われても困るからです。

遺産分割協議の内容に問題があることをあらかじめ知っていたなどの事情があるときは、不動産を返して欲しいと言えます。

第三者に財産が渡ってしまった場合は、基本的に取り返すことはできません。

4遺産分割協議後に借金が見つかったら

①原則として相続放棄はできない

相続が発生した後、相続財産は相続人全員の共有財産になります。

被相続人の財産は、プラスの財産もマイナスの財産も相続財産です。

相続人が知っている財産について分け方の合意をした後、新たな財産が見つかることがあります。

ときには消費者金融などからの多額の借金であることがあります。

被相続人が多額の借金を残していた場合、相続放棄をすることが考えられます。

相続財産を処分していた場合、単純承認になります

遺産分割協議は、相続財産について相続分があることを認識していることを前提とした行為です。

遺産分割協議は、相続財産に対する相続分を処分する行為です。

相続財産を処分する行為だから、単純承認をしたと言えます。

単純承認をした場合、撤回することはできません。

単純承認をした後、撤回して相続放棄をしたいと言っても原則として認められません。

②遺産分割協議が無効であれば相続放棄が認められる余地がある

相続債務が存在しないか相続放棄をするに足りないほどの少額に過ぎないものと誤信した場合があります。

被相続人と相続人の生活状況や他の相続人の協議内容によっては遺産分割協議が無効とすることが妥当な場合があります。

遺産分割協議が無効であれば、遺産分割協議をしたことで単純承認があったと見ることはできません。

債務の全容を認識したときから3か月以内であれば相続放棄をすることができます。

上記は大阪高裁の決定ですが、事例によっては相続放棄が認められることも認められないこともあります。

遺産分割協議が無効になる場合は、相続放棄が認められる余地があると考えられます。

③債権者は法定相続分で相続人全員に借金を請求することができる

被相続人の財産は、プラスの財産もマイナスの財産も相続財産です。

相続財産だから相続人全員で分け方を決めることができます。

相続人全員で借金をだれが負担するのか決めても、合意内容は相続人内部の合意事項に過ぎません。

相続人内部の合意事項だから、債権者には関係ない話です。

相続人内部の合意事項に関係なく、債権者は相続人全員に対して法定相続分で借金を請求することができます。

遺産分割協議書に「相続人○○が借金を引き継ぐ」と記載して相続人全員が署名して実印押印しても債権者には関係ありません。

5新たな財産が見つかった後のトラブル防止のためにできること

①財産調査をしっかりやる

まずは遺産分割協議をする前にしっかりとした財産調査をすることが大切です。

②記載のない財産の分け方について合意しておく

(1)記載のない財産が見つかった場合に取得者をあらかじめ決めておくことができる

相続財産の分け方は相続人全員で話し合いによる合意をして決める必要があります。

遺産分割協議書に記載がない財産が見つかった場合、あらためて合意するのが原則です。

相続発生後に長期間経過してから、あらたに記載がない財産が見つかることがあります。

あらためて合意することが煩わしいかもしれません。

相続人全員の合意がないと、相続手続を進めることができません。

遺産分割協議書に記載がない財産が見つかった場合に備えて、財産の取得者を決めておくことができます。

遺産分割協議書には次のように記載するといいでしょう。

記載例

本遺産分割協議書に記載のない財産が後日判明した場合、相続人○○○○が取得する。

(2)記載のない財産が見つかった場合に取得割合を決めておくことができる

遺産分割協議書に記載がない財産が見つかった場合に備えて、財産の取得者を決めておくことができます。

遺産分割協議書に記載がない財産が莫大なプラスの財産であった場合、他の相続人は穏やかな気持ちでいられないでしょう。

財産の取得者は、複数にすることができます。

複数の相続人が取得する場合、取得割合を決めておくことができます。

遺産分割協議書には、次のように記載するといいでしょう。

記載例

本遺産分割協議書に記載のない財産が後日判明した場合、相続人○○○○と相続人□□□□が各2分の1の割合で取得する。

(3)記載のない財産が見つかった場合あらためて協議をすると決めておくことができる

遺産分割協議書に記載がない財産が見つかった場合、あらためて合意するのが原則です。

原則どおり、相続人全員で合意することができます。

遺産分割協議書には、次のように記載するといいでしょう。

記載例

本遺産分割協議書に記載のない財産が後日判明した場合、相続人全員であらためて協議する。

遺産分割協議の際に、新たな財産が見つかったときに備えて話し合いをしておくことは重要です。

6遺産分割協議書作成を司法書士に依頼するメリット

遺産分割協議書は、遺産の分け方について相続人全員による合意内容を取りまとめた文書です。

合意がきちんと文書になっているからこそ、トラブルが防止できるといえます。

書き方に不備があると、トラブルを起こしてしまう危険があります。

せっかく話合いによる合意ができたのに、取りまとめた文書の不備でトラブルになるのは残念なことです。

トラブルを防止するため、遺産分割協議書を作成したい方は、司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。

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