公正証書遺言で不動産の相続登記

1遺言書の大部分は自筆証書遺言と公正証書遺言

遺言書の種類は、民法という法律で決められています。

大きく分けて普通方式の遺言と特別方式の遺言とあります。

普通方式の遺言は、次の3つです。

①自筆証書遺言

②公正証書遺言

③秘密証書遺言

特別方式の遺言は、次の4つです。

①死亡の危急に迫った者の遺言

②伝染病隔離者の遺言

③在船者の遺言

④船舶遭難者の遺言

特別方式の遺言は、生命の危機に迫っている人や航海中など交通できない人が作る特別の遺言です。

特別方式の遺言は、ごく稀な遺言と言えるでしょう。

多くの方にとって、遺言というと普通方式の遺言です。

なかでも、①自筆証書遺言②公正証書遺言のいずれかを作成される方がほとんどです。

2公正証書遺言は安心確実

①公正証書遺言は公証人が文書に取りまとめてくれる

公正証書遺言とは、遺言内容を公証人に取りまとめてもらって作る遺言書です。

遺言者が公証人に遺言内容を伝えて、証人2人に確認してもらって作ります。

公正証書遺言を作成する場合、原則として、公証役場に出向く必要があります。

遺言者が病気や障害などで公証役場に出向くことが困難なこともあるでしょう。

公証役場に出向くことが困難な場合、病院や自宅などへ公証人に出張してもらうことができます。

②公正証書遺言は無効になりにくい

公証人は、法律の専門家です。

公正証書遺言は、公証人が文書に取りまとめます。

遺言書には、厳格な書き方ルールがあります。

書き方ルールに違反すると、遺言書は無効になります。

公正証書遺言は、公証人が関与します。

公証人は法律の専門家だから、書き方ルールの違反で無効になることは考えられません。

③遺言書原本は公証役場で厳重に保管される

公正証書遺言を作成した後、正本と謄本が渡されます。

公正証書遺言を使って相続手続をする場合、遺言公正証書の正本か謄本を使用します。

正本と謄本は同じ内容ですから、どちらでも相続手続に使うことができます。

正本や謄本は、紛失してしまっても差し支えありません。

遺言書原本は、公証役場で厳重に保管されています。

遺言書を作成した公証役場で手続をすれば、再発行してもらうことができます。

遺言書を作成した公証役場が分からない場合、平成元年以降に作成しているのであれば、公証役場で探してもらうことができます。

遺言書を作成した公証役場が見つかったら、遺言書を作成した公証役場で再発行してもらうことができます。

④公正証書遺言は家庭裁判所の検認手続は不要

遺言書の検認とは、家庭裁判所で遺言書の状態を確認してもらうことです。

公正証書遺言は、家庭裁判所で検認手続をする必要はありません。

公正証書遺言は遺言書作成後、公証役場で厳重に保管されています。

相続人などが改ざんすることはできません。

わざわざ家庭裁判所で遺言書の状態を確認してもらう必要はないからです。

3公正証書遺言で不動産の相続登記

①公正証書遺言があるときの相続登記の必要書類

登記申請書には、通常、相続関係説明図を添えます。

事例によっては追加書類が必要になる場合がありますが、おおむね、次の書類が必要です。

(1)被相続人の除籍謄本

(2)相続人の現在戸籍

(3)被相続人の住民票の除票か戸籍の除附票

(4)不動産を相続する人の住民票

(5)遺言書

(6)不動産の固定資産税評価証明書

遺言書がない場合、相続財産は相続人全員の共有財産になります。

相続財産の分け方は、相続人全員の合意で決めなければなりません。

相続人全員の合意があることを確認するため、被相続人の出生から死亡まで連続した戸籍謄本が必要です。

遺言書がある場合、遺言書で財産の分け方が記載されているでしょう。

遺言書のとおりに分ければいいので、相続人全員の合意は不要です。

被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本を準備する必要はありません。

遺言書は、遺言者が死亡したときに効力を生じます。

遺言者が死亡したことの確認のため、被相続人の除籍謄本を提出します。

相続人になる人は、法律で決まっています。

相続できるのは、相続人だけです。

相続登記をする場合、相続人であることの確認が必要になります。

相続登記を申請する人が相続人であることの確認のため、相続人の現在戸籍を提出します。

②遺言執行者が相続登記

遺言書を書いただけでは、意味がありません。

遺言書の内容は自動的に実現するわけではないからです。

遺言執行者は、遺言書の内容を実現する人です。

遺言書を作成する場合、遺言執行者を指名しておくと安心です。

遺言執行者がいない場合、相続人全員の協力が必要になるからです。

遺言書の内容に不満を持つ相続人がいた場合、遺言書の内容の実現に協力してくれないでしょう。

遺言執行者がいる場合、相続人の協力は不要です。

令和元年7月1日以降に作成された遺言書で遺言執行者が指名されている場合、遺言執行者が相続登記を申請することができます。

遺言執行者は、相続登記以外の相続手続をすることができます。

相続手続先がたくさんある場合、法定相続情報一覧図があると便利です。

遺言執行者は、法定相続情報一覧図の保管及び交付の申出をすることができます。

わずらわしい相続手続を遺言執行者におまかせできるので、家族はラクになります。

4公正証書遺言で不動産の遺贈の登記

①遺言書に遺贈とあったら遺贈で手続

遺贈とは、被相続人が遺言によって、法定相続人や法定相続人以外の人に、財産を譲ってあげることです。

遺贈で財産を譲ってあげる人のことを遺贈者、譲ってもらう人を受遺者と言います。

相続では、法定相続人だけに譲ってあげることができます。

遺贈では、法定相続人に譲ってあげることもできるし、相続人以外の人に譲ってあげることができます。

遺言書に「遺贈する」とあれば、譲ってもらう人が相続人であっても相続人以外の人でも、遺贈で手続します。

遺言書に「相続させる」とあっても、譲ってもらう人が相続人以外の場合、遺贈で手続します。

相続できるのは、相続人だけだからです。

遺贈登記は、権利者と義務者が共同で登記申請をします。

受遺者が相続人である場合、登記申請書に権利者と義務者を記載するだけで義務者の関与が不要です。

形式的には共同申請ですが、事実上、受遺者が単独申請をすることができます。

②公正証書遺言があるときの相続登記の必要書類

登記申請書に添付する書類は、次のとおりです。

(1)被相続人の除籍謄本

(2)被相続人の除票か戸籍の除附票

(3)受遺者の住民票か戸籍の附票

(4)不動産の権利証

(5)印鑑証明書

(6)遺言書

(7)不動産の固定資産税評価証明書

印鑑証明書は、発行後3か月以内のものが必要です。

印鑑証明書は、遺贈義務者のものが必要です。

遺言執行者がいる場合、遺贈義務者は遺言執行者です。

遺言執行者がいない場合、遺贈義務者は相続人全員です。

所有権移転登記をする場合、登記原因を証明する書類を提出する必要があります。

(1)遺言書(2)検認証明書(3)被相続人が死亡した記載のある戸籍謄本(4) 被相続人の除票か戸籍の除附票は、登記原因証明情報として提出します。

売買などで所有権移転登記をする場合、法務局報告形式の登記原因証明情報を提出する場合があります。

法務局報告形式の登記原因証明情報に登記義務者が押印することで、内容の真実性が確保できるとされているからです。

遺贈は登記義務者が内容を認めただけでは、真実性が確保されません。

遺贈の真実性の担保のため、遺言書や戸籍謄本の提出が欠かせません。

遺贈の登記では、法務局報告形式の登記原因証明情報を利用することはできません。

③遺言執行者が遺贈登記

遺贈登記は、権利者と義務者が共同で登記申請をします。

権利者は受遺者、義務者は遺贈義務者です。

遺言執行者がいる場合、遺贈義務者は遺言執行者です。

遺言執行者がいない場合、遺贈義務者は相続人全員です。

遺言執行者は、遺言書の内容を実現する人です。

遺言執行者は、受遺者であっても構いません。

遺言執行者は、遺言の内容を実現するために必要な行為をする権限があります。

協力しない相続人が遺言執行を妨害した場合、原則として、妨害行為は無効になります。

遺贈登記は、受遺者と遺言執行者が共同で登記申請をします。

④被相続人の住所氏名が登記簿上の住所氏名と違っていたら

不動産を持っている場合、住所や氏名が変わったら、その都度手続するのが原則です。

不動産を売却する予定がない場合、先延ばししていることは割とよくあります。

相続登記では、登記簿上の住所氏名と被相続人死亡時の住所氏名が異なっている場合、住所変更登記や氏名変更登記はする必要がありません。

遺贈の登記では、登記簿上の住所氏名と被相続人死亡時の住所氏名が異なっている場合、住所変更登記や氏名変更登記が必要です。

登記簿上の住所氏名と被相続人死亡時の住所氏名が異なっているのに、住所変更登記や氏名変更登記を申請せずに、遺贈登記を申請した場合、遺贈登記を取下げすることになります。

後から住所変更登記や氏名変更登記を出しても、認められません。

住所変更登記や氏名変更登記は、遺言執行者が申請することができます。

5相続登記を司法書士に依頼するメリット

大切な家族を失ったら、大きな悲しみに包まれます。

やらなければいけないと分かっていても、気力がわかない方も多いです。

不動産は重要な財産であることも多いので、登記手続は一般の方から見ると些細なことと思えるようなことでやり直しになることも多いです。

住所変更登記が必要になるか必要にならないかなどもそのひとつでしょう。

相続手続は、一生のうち何度も経験するものではありません。

だれにとっても不慣れで、手際よくできるものではないでしょう。

相続手続で使われる言葉は法律用語なので、一般の方にとって日常で聞き慣れないものでしょう。

司法書士は、登記の専門家です。

相続手続も、登記手続も、丸ごとお任せいただけます。

相続手続でへとへとになる前に、司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。

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