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認知症の人の相続放棄で特別代理人選任の申立て

2025-10-08

1相続放棄には判断能力が必要

①相続を単純承認するか相続放棄するか選択する

相続が発生したら、相続人は相続を単純承認するか相続放棄をするか選択することができます。

相続放棄を希望する場合、家庭裁判所に対して相続放棄の申立てをします。

②認知症になると判断能力が低下する

認知症になると、物事のメリットデメリットを適切に判断することができなくなります。

人によっては、記憶があいまいになることがあるでしょう。

相続放棄をするためには、本人の判断能力が必要です。

判断能力が低下した状態では、有効に相続放棄の申立てをすることはできません。

認知症になると、自分で相続放棄ができなくなります。

③家族が勝手に相続放棄はできない

認知症の相続人が自分で相続放棄ができないなら、子どもなどの家族が代わりに判断すればいいと考えるかもしれません。

親などの親権者が幼い子どもの代理ができるのは、未成年者だからです。

認知症の人は未成年ではないから、家族が代わりに相続放棄をすることはできません。

④認知症の人は成年後見人がサポートする

認知症の人は、自分で物事のメリットデメリットを適切に判断することができません。

判断能力が低下しているから、成年後見人がサポートします。

成年後見人とは、認知症の人などをサポートするため家庭裁判所に選任された人です。

認知症の人の代わりに、メリットデメリットを判断します。

成年後見人が本人の代わりに手続をします。

成年後見人は、本人の利益のために代理します。

成年後見人は、認知症の人をサポートする人だからです。

2認知症の人の相続放棄で特別代理人選任の申立て

①成年後見人と認知症の人が相続人になる

成年後見人は、家庭裁判所が選任します。

認知症の人の家族が選ばれることも、見知らぬ専門家が選ばれることもあります。

認知症の人の家族が選ばれる場合、本人の子どもなど近い関係の親族でしょう。

認知症の人が相続人になる相続が発生した場合、認知症の人と成年後見人が同時に相続人になることがあります。

②利益相反になると代理ができない

成年後見人は、認知症の人をサポートする人です。

原則として、相続を単純承認するか相続放棄するか成年後見人が選択します。

認知症の人が相続放棄をする場合、成年後見人が手続をします。

認知症の人と成年後見人が同時に相続人になる相続が発生した場合、成年後見人は認知症の人を代理できません。

利益相反になるからです。

利益相反とは、一方がトクすると他方がソンする関係です。

利益相反になる場合、成年後見人は認知症の人を代理することができません。

認知症の人の利益を犠牲にして、成年後見人が利益を得ようとすることを防ぐためです。

利益相反になるか、客観的に判断されます。

成年後見人が利益を得ようとしていないと主張しても、意味はありません。

成年後見人の主観的な判断で利益相反になるか、決められるものではないからです。

③利益相反回避のため特別代理人

利益相反になると、成年後見人は認知症の人を代理できません。

成年後見人に、成年後見監督人がついていることがあります。

成年後見監督人とは、成年後見人を監督する人です。

利益相反を回避するため、成年後見監督人が認知症の人の代理をします。

任意後見では、任意後見人監督人が必ず選任されています。

法定後見では、家庭裁判所の判断で成年後見監督人が選任されていることがあります。

法定後見では、成年後見監督人が選任されていないことがあります。

成年後見監督人が選任されていない場合、特別代理人が認知症の人の代理をします。

特別代理人は、家庭裁判所に選任してもらいます。

④家庭裁判所に特別代理人選任の申立て

(1)申立先

認知症の相続人の住所地を管轄する家庭裁判所に、申立てをします。

家庭裁判所の管轄は、裁判所のホームページで確認することができます。

(2)申立てができる人

成年後見人が申立てをします。

(3)特別代理人の候補者を立てることができる

特別代理人選任の申立てで、特別代理人の候補者を立てることができます。

特別代理人候補者は、次の人がおすすめです。

・利害関係がない親族

・司法書士などの専門家

特別代理人候補者は、次の人はおすすめできません。

・利害関係人

・過去にトラブルがあった人

特別代理人の候補者を立てても、家庭裁判所は自由に選任します。

特別代理人になる人は、相続人に利害関係がない人が選任されます。

(4)必要書類

特別代理人選任の申立書に添付する必要書類は、次のとおりです。

・認知症の人の戸籍謄本

・成年後見登記事項証明書

・相続関係説明図

・特別代理人の候補者の住民票または戸籍の附票

・利益相反の具体的説明書

(5)申立て費用

認知症の人1人につき、800円です。

申立て費用は、収入印紙を申立書に貼り付けて納入します。

申立て費用とは別に、予納郵券を納入します。

予納郵券とは、裁判所が手続に使う郵便切手です。

裁判所ごとに、予納する郵便切手の額面と枚数が決められています。

(6)審理期間

特別代理人選任の申立てから選任がされるまで、およそ1~2か月程度かかります。

3認知症の人が相続放棄をする方法

①認知症の人が相続放棄をする流れ

手順(1)相続発生を確認

被相続人の死亡を確認し、相続人調査を開始します。

戸籍謄本を取得して、認知症の人が相続人であることを確認します。

手順(2)成年後見人の有無を確認

認知症の相続人に成年後見人が選任されているか、確認します。

成年後見人が選任されていない場合、家庭裁判所に対して成年後見開始の申立てをします。

成年後見開始の申立てをしてから成年後見人が選任されるまで、1~2か月程度かかります。

手順(3)利益相反の有無を確認

成年後見人が認知症の人の家族である場合、利益相反の可能性があります。

成年後見人と認知症の人が同時に相続人である場合、利益相反になります。

利益相反である場合、成年後見監督人の有無を確認します。

成年後見監督人が選任されている場合、成年後見監督人が認知症の相続人の代理をします。

手順(4)特別代理人選任の申立て

必要に応じて、特別代理人選任の申立てをします。

特別代理人選任の申立ての方法は、先に説明したとおりです。

手順(5)家庭裁判所による特別代理人選任

家庭裁判所が特別代理人の適格性を審理し、特別代理人を選任します。

手順(6)特別代理人が相続放棄の申立て

必要に応じて、特別代理人または成年後見人が相続放棄の申立てをします。

相続放棄の申立てには、次の書類が必要です。

・被相続人の戸籍謄本

・被相続人の除票

・相続放棄する人の戸籍謄本

・収入印紙800円分

・裁判所が手続で使う郵便切手

手順(7)相続放棄申述受理通知書が届く

相続放棄の申立てを受付けたら、家庭裁判所で審査があります。

必要に応じて相続放棄の照会書が届きます。

相続放棄の照会書は、家庭裁判所からのお尋ねです。

問題がなければ、相続放棄申述受理通知書が届きます。

相続放棄が認められたら、はじめから相続人でなくなります。

手順(8)特別代理人の任務終了

特別代理人は、特定の法律行為の代理人です。

法律行為の目的が達成した時点で、自動で任務終了になります。

特別代理人の任務終了で、報告義務は通常ありません。

家庭裁判所によっては、任務終了報告を求めることがあります。

②相続放棄に3か月の期限がある

(1)認知症の相続人が知っても3か月はスタートしない

相続放棄には、3か月以内の期限が決められています。

相続があったことを知ってから3か月以内の期間のことを熟慮期間と言います。

相続放棄の期限3か月のスタートは、相続があったことを知ってからです。

「相続があったことを知ってから」とは、被相続人が死亡して相続が発生し、その人が相続人であることを知って、かつ、相続財産を相続することを知ってから、と考えられています。

認知症の相続人が相続があったことを知っても、熟慮期間はスタートしません。

認知症の相続人は、自分で判断できないからです。

判断できないまま3か月経過して相続放棄ができなくなると、認知症の相続人に酷な結果になります。

(2)利益相反になる成年後見人が知っても3か月はスタートしない

認知症の相続人に、成年後見人が選任されていることがあります。

原則として成年後見人は、認知症の相続人の代わりに判断することができます。

成年後見人が認知症の相続人を代理できる場合、成年後見人が知った時点で3か月がスタートします。

成年後見人と認知症の相続人が利益相反になる場合、成年後見人は認知症の相続人を代理できません。

成年後見人が認知症の相続人を代理できない場合、成年後見人が知った時点で3か月がスタートしません。

成年後見人が代理できないまま3か月経過して相続放棄ができなくなると、認知症の相続人に酷な結果になるからです。

(3)特別代理人が知ってから3か月がスタートする

特別代理人が相続があったことを知った時点で、相続放棄の期限3か月がスタートします。

特別代理人は家庭裁判所に選任されてから、認知症の相続人を代理することができます。

特別代理人として、利害関係がない親族が選任されることがあります。

親族であれば、相続があったことを知っていることが多いでしょう。

親族として相続があったことを知っていても、相続放棄の期限3か月がスタートしません。

特別代理人に選任されていないと、認知症の相続人を代理できないからです。

特別代理人が代理できないまま3か月経過して相続放棄ができなくなると、認知症の相続人に酷な結果になります。

(4)相続の期間の伸長の申立てができる

相続財産が複雑である場合、3か月の熟慮期間内に調査が難しいことがあります。

3か月の熟慮期間を経過してしまいそうな場合、家庭裁判所に相続の期間の伸長の申立てができます。

家庭裁判所の審査によって、さらに3か月伸長されます。

4認知症の相続人がいる相続を司法書士に依頼するメリット

相続手続を進めたいのに、認知症の相続人がいて困っている人はたくさんいます。

認知症の人がいると、お世話をしている家族は家を空けられません。

家庭裁判所に成年後見開始の申立てをするなど、法律の知識のない相続人にとって高いハードルとなります。

裁判所に提出する書類作成は、司法書士の専門分野です。

途方に暮れた相続人をサポートして相続手続を進めることができます。

自分たちでやってみて挫折した方や相続手続で不安がある方は、司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。

相続放棄の事件番号の調べ方

2025-09-29

1家庭裁判所は事件番号で管理する

①相続放棄の事件番号とは事件管理用の番号

相続人は、相続を単純承認するか相続放棄をするか選択することができます。

相続放棄を希望する場合、家庭裁判所に相続放棄の申立てをします。

相続放棄の事件番号とは、事件管理用の番号です。

相続放棄の申立てを受付けたら、「令和〇年(〇)第〇号」の形式で個別に付番します。

家庭裁判所は、事件番号で管理しています。

事件番号は、事件を記録管理するための識別番号です。

②相続放棄申述受理通知書に事件番号が記載されている

家庭裁判所の審査で相続放棄が認められたら、相続放棄申述受理通知書が届きます。

相続放棄申述受理通知書とは、正式に相続放棄が認められたことの通知書です。

相続放棄申述受理通知書には、事件番号が記載されています。

事件番号が分かれば、どの事件に対する通知であるのか明確になるからです。

事件番号を記載すると、相続放棄申述受理通知書の真実性と正確性を担保することができます。

相続放棄申述受理通知書の内容について照会したいときは、事件番号を伝えると迅速に対応してもらうことができます。

③相続放棄申述受理証明書の請求で事件番号が必要になる

相続放棄申述受理通知書は、再発行はされません。

相続放棄申述受理通知書は、1回限りの連絡文書だからです。

相続放棄申述受理証明書は、相続放棄したことの証明書です。

相続放棄申述受理証明書の請求で、事件番号が必要になります。

相続放棄の事件番号が分からないと、相続放棄の記録を特定できないからです。

2相続放棄の事件番号の調べ方

①相続放棄の有無の照会で事件番号が判明する

相続放棄が認められたら、家庭裁判所は相続放棄申述受理通知書を送ります。

送り先は、相続放棄の申立てをした人のみです。

家庭裁判所は、自主的に次順位相続人に通知しません。

家庭裁判所は、積極的に債権者に通知しません。

相続放棄が認められても、次順位相続人や債権者に通知する義務はありません。

次順位相続人や債権者は、家庭裁判所に対して相続放棄をしたか確認することができます。

相続放棄の有無の照会とは、相続放棄をしたか確認する方法です。

相続放棄の有無の照会をすると、その相続でその相続人が相続放棄をしたか確認することができます。

相続放棄が認められていれば、事件番号が判明します。

事件番号を記載すると、真実性と正確性を担保することができるからです。

②照会できる人は限られている

相続放棄の有無の照会ができる人は、次の人です。

(1)相続人

(2)被相続人の利害関係人

相続放棄が認められると、はじめから相続人でなくなります。

相続放棄した人は相続人でなくなるから、相続人として相続放棄の有無の照会をすることはできません。

被相続人の利害関係人であれば、相続放棄の有無の照会をすることができます。

③照会先

相続放棄の申述の有無の照会先は、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です。

被相続人の最後の住所地は、被相続人の住民票や戸籍の附票で確認することができます。

家庭裁判所の管轄は、裁判所のホームページで確認することができます。

④必要書類

(1)相続人が照会する場合

・被相続人の本籍地入り住民票または戸籍の附票

・照会者と被相続人の関係が分かる戸籍謄本(発行から3か月以内のもの)

・相続関係説明図

・照会者の本人確認書類

具体的には、運転免許証やマイナンバーカードなどのコピーです。

・返信用の封筒と切手

(2)利害関係人が照会する場合

・被相続人の本籍地入り住民票または戸籍の附票

・照会者の資格を確認する書類

個人の場合は、照会者の本人確認書類

具体的には、運転免許証やマイナンバーカードなどのコピーです。

法人の場合は、法人の登記簿謄本

・利害関係を証明する書類

具体的には、金銭消費貸借契約書、訴状、競売申立書、競売開始決定、債務名義等の各写し、担保権が記載された不動産登記簿謄本、その他債権の存在を証する書面などです。

・返信用の封筒と切手

必要書類は、家庭裁判所によって運用が異なります。

管轄の家庭裁判所に確認したうえで、照会するといいでしょう。

必要な戸籍謄本などを取得できない場合、司法書士などの専門家に依頼することができます。

⑤手数料は無料

相続放棄の申述の有無の照会は、手数料は無料です。

⑥郵送で照会できる

相続放棄の申述の有無の照会は、郵送で家庭裁判所に提出することができます。

⑦回答までにかかる期間

相続放棄の申述の有無の照会は、郵送で結果が通知されます。

回答までにかかる期間は、家庭裁判所によって異なります。

多くの場合、1週間~1か月程度で、通知されます。

⑧相続放棄の申述の有無の照会をする流れ

手順(1)照会文書の作成

相続放棄の申述の有無の照会は、文書で照会する必要があります。

電話や口頭で照会することはできません。

相続放棄の申述の有無の照会書の様式は、家庭裁判所のホームページからダウンロードすることができます。

手順(2)必要書類の準備

相続人が照会するときと利害関係人が照会するときで、必要な書類が異なります。

手順(3)家庭裁判所へ提出

相続放棄の申述の有無の照会書と必要書類を取りまとめて、家庭裁判所へ提出します。

裁判所の窓口に出向いて提出することもできるし、郵送で提出することもできます。

手順(4)家庭裁判所から回答

回答は、文書で届きます。

照会に応じるか、家庭裁判所が判断します。

利害関係が不明確である場合、利害関係がないと判断されるでしょう。

適切に利害関係を説明する書類を提出しないと、回答してもらえません。

3相続放棄の事件番号の調べるときの注意点

注意①事件番号は相続放棄した人ごとにちがう

相続を単純承認するか相続放棄をするか、各相続人が自分の判断で選択することができます。

相続放棄を希望する場合、各相続人が自分で相続放棄の申立てをします。

同時に相続放棄をする場合であっても、連名で相続放棄をすることはできません。

相続人ごとに、別の事件だからです。

事件番号は、事件ごとに付番されます。

相続人ごとに別の事件だから、相続人ごとに別の事件番号が付番されます。

注意②利害関係人以外は照会できない

相続放棄の申述の有無の照会ができる人は、限られています。

相続を単純承認するか相続放棄をするか、相続人の重大な意思決定です。

無関係な第三者が自由に照会できるとすると、プライバシーが侵害されます。

プライバシーを保護するため、法律上の利害関係が必要になります。

法律上の利害関係があっても、適切に書類を提出しないと家庭裁判所は無関係な第三者と誤解するでしょう。

例えば、債権者が照会する場合、債権者であることが分かる書類を提出します。

通常は金銭消費貸借契約書があれば、債権者と分かるでしょう。

債権者や債務者が住所変更をした場合、金銭消費貸借契約書だけでは別人と判断されます。

追加で、住所の移り変わりが分かる書類が必要になります。

書類に不足がある場合、家庭裁判所から追完の指示があります。

補正しないまま放置すると、回答してもらえません。

利害関係人以外は、相続放棄の申述の有無の照会ができません。

注意③調査対象期間は家庭裁判所によって異なる

相続放棄の有無の照会で確認できる期間は、家庭裁判所によって異なります。

詳細は、各家庭裁判所に直接訪ねるのが最善です。

10年以上過去の相続放棄である場合、家庭裁判所によっては確認できないかもしれません。

10年以上過去の相続では、調査対象期間が次のとおり限定されています。

・第1順位の相続人 死亡日から3か月以内

・後順位の相続人 先順位の相続人の相続放棄から3か月以内

相続放棄から30年以上経過すると、どこの家庭裁判所であっても確認できません。

相続放棄の書類は、永年保管ではないからです。

注意④相続放棄の期間3か月のスタートは知ってから

相続放棄には、3か月の期限があります。

相続人は相続を単純承認するか相続放棄をするか判断するため、3か月の猶予があります。

相続が発生してから3か月経過していない場合、相続人が熟慮中であると考えられます。

少なくとも相続発生後3か月経過後以降に、照会します。

相続放棄の期間3か月のスタートは、知ってからです。

ひょっとすると相続人は、熟慮中であるかもしれません。

注意⑤複数人まとめて照会できる

相続放棄の申述の有無の照会書の相続人目録には、照会対象者の氏名を記載する欄があります。

相続人目録に、記載した相続人が照会対象者です。

相続人目録に記載する相続人氏名は、戸籍謄本の記載に合わせます。

相続人目録に複数の相続人を記載することができます。

複数の相続人をまとめて、照会することができます。

4相続放棄申述受理証明書を取得する方法

①相続放棄申述受理証明書取得には申請が必要

相続放棄申述受理証明書は、第三者に対し相続放棄の事実を証明する公的な証明書です。

相続放棄申述受理証明書は、家庭裁判所に申請した後に発行されます。

相続放棄申述受理通知書は、相続放棄をした本人に自動で通知されます。

②申請先

相続放棄申述受理証明書の申請先は、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です。

被相続人の最後の住所地は、被相続人の住民票や戸籍の附票で確認することができます。

家庭裁判所の管轄は、裁判所のホームページで確認することができます。

③申請できる人

相続放棄をした本人は、相続放棄申述受理証明書の交付を申請することができます。

相続放棄が認められた後、他の相続人の相続放棄申述受理証明書の交付を申請することはできません。

相続放棄が認められると、はじめから相続人でなくなるからです。

相続放棄申述受理証明書の交付を申請ができる第三者は、法律上の利害関係がある人です。

具体的には、次の人です。

・共同相続人

・後順位相続人

・被相続人の債権者

・相続財産清算人

④必要書類

(1)相続放棄をした本人が申請する場合

・申請者の本人確認書類

具体的には、運転免許証やマイナンバーカードなどのコピーです。

(2)共同相続人・後順位相続人が申請する場合

・申請者の本人確認書類

具体的には、運転免許証やマイナンバーカードなどのコピーです。

・被相続人の住民票または戸籍の附票

・被相続人と申請人の相続関係が分かる戸籍謄本

必要書類は、家庭裁判所によって運用が異なります。

管轄の家庭裁判所に確認したうえで、照会するといいでしょう。

(3)利害関係人が申請する場合

・申請人の資格を確認する書類

個人の場合は、照会者の本人確認書類

具体的には、運転免許証やマイナンバーカードなどのコピーです。

法人の場合は、法人の登記簿謄本

・利害関係を証明する書類

⑤郵送で手続できる

相続放棄申述受理証明書の交付申請書は、郵送で家庭裁判所に提出することができます。

相続放棄申述受理証明書の交付申請は、即日交付されません。

相続放棄申述受理証明書の交付を申請ができるのは、法律上の利害関係がある人だけです。

法律上の利害関係があるか、家庭裁判所で審査されます。

相続放棄申述受理証明書の発行には、裁判官の許可が必要です。

家庭裁判所の事務手続に、1週間以上かかるのが通例だからです。

必要書類と一緒に返信用の封筒と切手を提出すると、郵送してくれます。

相続放棄申述受理証明書は、郵送で受取ができます。

⑥手数料

相続放棄申述受理証明書の発行手数料は、1通あたり150円です。

相続放棄申述受理証明書の交付申請書に、収入印紙を貼り付けて納入します。

5相続放棄を司法書士に依頼するメリット

相続放棄は、その相続でチャンスは1回限りです。

家庭裁判所に認められない場合、即時抗告という手続を取ることはできます。

高等裁判所の手続で、2週間以内に申立てが必要になります。

家庭裁判所で認めてもらえなかった場合、即時抗告で相続放棄を認めてもらえるのは、ごく例外的な場合に限られます。

一挙にハードルが上がると言ってよいでしょう。

相続が発生してから3か月以内に申立てができなかったのは止むを得なかったと家庭裁判所に納得してもらって、はじめて、家庭裁判所は相続放棄を認めてくれます。

通常は家庭裁判所に対して上申書や事情説明書という書類を添えて、説得することになります。

家庭裁判所が知りたいことを無視した作文では、認めてもらうことは難しいでしょう。

司法書士であれば、家庭裁判所に認めてもらえるポイントを承知しています。

認めてもらえやすい書類を作成することができます。

3か月の期限が差し迫っている方や期限が過ぎてしまっている方は、すみやかに司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。

相続発生から10年後でも相続放棄ができる

2025-09-03

1相続放棄の期限は3か月

①相続放棄は家庭裁判所の手続

相続が発生したら、相続人は相続を単純承認するか相続放棄をするか選択することができます。

相続放棄を希望する場合、家庭裁判所に対して相続放棄を希望する申立てをします。

家庭裁判所が相続放棄を認める決定をしたら、相続放棄申述受理通知書が届きます。

相続放棄が認められたら、はじめから相続人でなくなります。

②期限3か月のスタートは知ってから

相続放棄には、期限があります。

相続があったことを知ってから、3か月です。

相続があったことを知ってからとは、被相続人が死亡して相続が発生し、その人が相続人であることを知って、かつ、相続財産を相続することを知ってから、と考えられています。

3か月以内に何もしないと、単純承認したと見なされます。

相続放棄の期限3か月に区切ることで、相続関係を早期に安定させることができます。

遺産分割や債務処理を円滑に進めるためにも、相続放棄の期限3か月は重要です。

③熟慮期間伸長の申立て

相続を単純承認するか相続放棄をするか、相続人の自己責任と考えられています。

相続人は財産を調査して、判断しなければなりません。

相続財産が海外に多数存在するなどの事情があると、3か月の期限内に調査しきれないことがあるでしょう。

家庭裁判所に対して、熟慮期間伸長の申立てをすることができます。

家庭裁判所の判断で、熟慮期間を伸長してもらうことができます。

2相続発生から10年後でも相続放棄ができる

ケース①相続発生を知らなかったから相続放棄

(1)被相続人や被相続人の家族と疎遠

大切な家族が死亡したら、他の家族や知人には真っ先に連絡するでしょう。

さまざまな家族の事情から、被相続人や被相続人の家族と疎遠になっていることがあります。

(2)相続人が行方不明

長期間疎遠になったまま行方不明になって、連絡が取れなくなることがあります。

(3)被相続人の死亡を連絡しない

相続人調査をすると、思いもよらない相続人が見つかることがあります。

見知らぬ相続人と交流がないから、連絡をためらってしまうことがあります。

(4)上申書に書くべきポイント

被相続人の死亡を知らなかった場合、相続があったことを知らないと言えます。

熟慮期間3か月がスタートするのは、相続があったことを知ったときです。

被相続人の死亡を知らなかったから、熟慮期間3か月がスタートしません。

相続発生から10年後でも、熟慮期間3か月以内に相続放棄をすることができます。

上申書を作成して、次の点を詳細に説明するといいでしょう。

・被相続人や被相続人の家族と疎遠になっていること

・被相続人の死亡を知ったきっかけ

手紙などを受け取ったことで死亡を知った場合、手紙や封筒は重要です。

被相続人の死亡を知ったきっかけを裏付ける証拠になるからです。

ケース②相続人であることを知らなかったから相続放棄

(1)先順位相続人が相続放棄をしたことを知らなかった

家庭裁判所で相続放棄が認められたら、はじめから相続人でなくなります。

被相続人に子どもがいる場合、子どもが相続人になると考えるのが自然です。

家庭裁判所で相続放棄が認められても、次順位相続人に連絡されません。

相続放棄をした人に、次順位相続人に連絡する義務はありません。

(2)先順位相続人が先に死亡したことを知らなかった

被相続人の子どもが相続人になると信じていたのに、先に死亡することがあります。

被相続人や被相続人の交流が少ないと、家族関係は良く分からないでしょう。

(3)被代襲者が生きていると信じていた

代襲相続とは、被相続人の子どもが被相続人より先に死亡した場合に先に死亡した子どもの子どもが相続することです。

先に死亡した子どもが被代襲者で、先に死亡した子どもの子どもが代襲相続人です。

被代襲者が死亡したことを知らないと、相続人であること知ることができません。

(4)上申書に書くべきポイント

自分が相続人であることを知らなかった場合、相続があったことを知らないと言えます。

熟慮期間3か月がスタートするのは、相続があったことを知ったときです。

自分が相続人であることを知らなかったから、熟慮期間3か月がスタートしません。

相続発生から10年後でも、熟慮期間3か月以内に相続放棄をすることができます。

上申書を作成して、次の点を詳細に説明するといいでしょう。

・被相続人や被相続人の家族と疎遠になっていること

・相続人であることを知ったきっかけ

手紙などを受け取ったことで死亡を知った場合、手紙や封筒は重要です。

被相続人の死亡を知ったきっかけを裏付ける証拠になるからです。

ケース③相続財産があることを知らなかったから相続放棄

(1)債務を知らなかった

被相続人と別居している場合、被相続人の経済状況を詳しく知らないことが多いでしょう。

被相続人の死亡を知っても、債務の存在を知らないことがあります。

(2)被相続人の保証債務を知らなかった

被相続人が第三者の債務について、連帯保証人になっていることがあります。

連帯保証人とは、債務者が借金を返せなくなったときに肩代わりをする人です。

連帯保証人が死亡した場合、保証債務は相続人が相続します。

保証債務とは、連帯保証人が負う肩代わりの義務です。

債務者が順調に借金を返済している間は、連帯保証人に連絡することはありません。

被相続人が死亡し長期間経過してから、肩代わりをして欲しいと言ってくることがあります。

(3)財産調査しても財産が見つからなかった

被相続人に目立った財産がない場合、相続手続は不要と考えるでしょう。

相続手続をしないまま長期間経過した後、借金を催促されることがあります。

(4)被相続人が債務を隠していた

借金や保証債務の存在を家族に対して、秘密にしていることがあります。

借用書や保証契約書など債務に関する書類を隠して、自分だけで管理するかもしれません。

被相続人が書類を隠していると、家族は債務の存在に気づくことができないでしょう。

(5)財産価値に重大な誤認があった

被相続人が財産を所有していても、財産価値に重大な誤認をすることがあるでしょう。

専門家の意見を信じ、不動産価値1億円を100万円程度に誤認していました。

被相続人と相続人の交際状況から、負債がないと信じるに相当の理由があると考えられました。

登記簿謄本から根抵当権が設定されており、被相続人に1000万円超の債務が判明しました。

(6)上申書に書くべきポイント

相続財産があることを知らなかった場合、相続があったことを知らないと言えます。

熟慮期間3か月がスタートするのは、相続があったことを知ったときです。

相続財産があることを知らなかったから、熟慮期間3か月がスタートしません。

相続発生から10年後でも、熟慮期間3か月以内に相続放棄をすることができます。

上申書を作成して、次の点を詳細に説明するといいでしょう。

・相続財産状況を調べても、分からなかったこと

・被相続人の債務や保証債務を知ったきっかけ

ケース④期限が3か月であることを知らなかったは認められない

相続放棄には、3か月の期限があります。

法律を勉強したことがないと、3か月の期限があることを知らないかもしれません。

熟慮期間3か月を知らなかったから、教えてもらえなかったからは、通用しません。

熟慮期間3か月の期限を知らなくても、相続放棄は認められません。

ケース⑤相続人でないと誤認したからは認められない

相続人になる人は、法律で決められています。

相続人でないと誤認しても、3か月の期限経過で相続放棄は認められなくなります。

例えば、被相続人と別戸籍だから相続人でなくなるなどの誤認です。

現実は被相続人と別戸籍になっても、相続人になります。

3期限が過ぎてから相続放棄をする注意点

注意①相続放棄が認められるか家庭裁判所が判断

相続放棄の申立てを受付けたら、家庭裁判所は内容を審査します。

家庭裁判所が重視するポイントは、次のとおりです。

・相続があったことを認識した時点

・知らなかった理由に合理性があるか

・相続人が財産調査を行うのに著しい困難があったか

・相続があったことを認識してから3か月以内に手続をしたか

・特別な事情を詳細に説明しているか

・事情を裏付ける証拠資料を提出しているか

相続放棄を希望する場合、家庭裁判所に相続放棄の申立てをします。

通常、上申書を提出して家庭裁判所を説得します。

相続放棄の申立てや必要書類を見ても、特別な事情は分からないからです。

家庭裁判所が重視するポイントを押さえて、簡潔に書くことが重要です。

上申書に、特別な様式はありません。

家庭裁判所の知りたい事柄を無視した感情論や攻撃的表現は、控えるといいでしょう。

注意②単純承認と見なされるリスクと回避策

相続が発生したら、相続を単純承認するか相続放棄するか選択することができます。

単純承認も相続放棄も、後から撤回することはできません。

撤回を認めると、相続が混乱するからです。

相続財産を利用処分すると、単純承認をしたと見なされます。

次の行為は、単純承認と見なされます。

・相続財産の売却

・遺産分割協議

・債権の取立て

単純承認をした後に、相続放棄をすることはできません。

事情を知らずに家庭裁判所が相続放棄を認める決定をしても、後から裁判などで無効になります。

注意③被相続人の最後の住所地不明でも相続放棄ができる

相続放棄の申立先は、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です。

通常、被相続人の最後の住所地は被相続人の住民票を取得して確認することができます。

被相続人が死亡してから長期間経過している場合、住民票が廃棄されていることがあります。

住民票は、永年保管でないからです。

今でこそ保存期間は150年ですが、令和元年までは5年でした。

市町村役場は、保存期間を過ぎた書類を順に廃棄します。

必要な書類が廃棄されていると、取得できなくなってしまうおそれがあります。

住民票が廃棄されている場合、死亡届の記載事項証明書を取得します。

死亡届の記載事項証明書で、最後の住所地を確認することができます。

死亡届の記載事項証明書は、市区町村役場から送付を受けた年度の翌年から27年間保管されています。

4相続放棄を司法書士に依頼するメリット

相続放棄は、その相続でチャンスは1回限りです。

家庭裁判所に認められない場合、即時抗告という手続を取ることはできます。

高等裁判所の手続で、2週間以内に申立てが必要になります。

家庭裁判所で認めてもらえなかった場合、即時抗告で相続放棄を認めてもらえるのは、ごく例外的な場合に限られます。

一挙にハードルが上がると言ってよいでしょう。

司法書士は、相続放棄が無効にならないようにサポートしています。

相続放棄を考えている方は、司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。

認知症の人が相続放棄

2025-09-02

1認知症の人が相続放棄

①相続放棄を理解できる判断能力が必要

相続が発生したら、相続人は相続を単純承認するか相続放棄をするか選択することができます。

相続放棄を希望する場合、家庭裁判所に対して相続放棄の申立てをします。

相続放棄をするためには、相続放棄を理解する判断能力が必要です。

具体的には、次の内容を理解できるかが判断基準になります。

・相続の意味 自分が相続人であること、被相続人の死亡によって相続が発生したこと

・相続放棄の意味 相続放棄をすると、プラスの財産もマイナスの財産も相続しないこと

・放棄の不可逆性 相続放棄をすると、撤回できないこと

・相続放棄の主体性 自分の意思で相続放棄をすること

上記の内容が理解できないと、自分で相続放棄はできません。

ごく初期の認知症であれば、上記内容が理解できるでしょう。

判断能力に関して安易な判断をすると、深刻なトラブルに発展します。

②家族が勝手に相続放棄はできない

自分で判断できないのなら、子どもなどの家族が代わりに判断すればいいと考えるかもしれません。

相続人が認知症であっても、家族が勝手に相続放棄をすることはできません。

親などの親権者が幼い子どもの代理ができるのは、未成年者だからです。

認知症の人は未成年ではないから、家族が代わりに相続放棄をすることはできません。

③成年後見人がサポートする

認知症の人は、自分で物事のメリットデメリットを適切に判断することができません。

判断能力が低下しているから、成年後見人がサポートします。

成年後見人とは、認知症の人などをサポートするため家庭裁判所に選任された人です。

認知症の人の代わりに、メリットデメリットを判断します。

成年後見人が本人の代わりに手続をします。

成年後見人は、本人の利益のために代理します。

成年後見人は、認知症の人をサポートする人だからです。

④家庭裁判所に成年後見開始の申立て

(1)申立先

申立先は、本人の住所地を管轄する家庭裁判所です。

家庭裁判所の管轄は、裁判所のホームページで調べることができます。

(2) 申立人

申立人になれるのは、主に次の人です。

・本人

・配偶者

・4親等内の親族

(3) 申立てに必要な書類

成年後見開始の申立書に添付する書類は、次のとおりです。

・本人の戸籍謄本

・本人の住民票または戸籍の附票

・成年後見人候補者の住民票または戸籍の附票

・本人の診断書

・本人情報シート

・本人の健康状態に関する資料

・本人の登記がされていないことの証明書

・本人の財産に関する資料

・本人の収支に関する資料

(4)成年後見人になれる人なれない人

成年後見人になれる人に、特別な条件はありません。

原則として、だれでも成年後見人になることができます。

成年後見開始の申立てをする際に、成年後見人の候補者を立てることができます。

成年後見人の候補者を立てても、家庭裁判所は自由に選任します。

家庭裁判所の人選に対して、異議を述べることはできません。

次の人は、成年後見人になれません。

・未成年者

・後見人を解任されたことのある人

・破産者で復権していない人

・本人に訴訟をした人と訴訟をした人の配偶者、直系血族

・行方不明の人

上記にあてはまらなくても、家庭裁判所は総合的に判断して選任しないことがあります。

(5)申立てに必要な費用

・手数料800円

申立書に収入印紙を貼り付けて、納入します。

・登記手数料2600円

収入印紙で納入します。

申立書に貼り付けずに、小袋に入れて納入します。

・連絡用郵便切手

裁判所が事務のために使う郵便切手です。

裁判所によって、提出する郵便切手の額面と数量がちがいます。

・鑑定費用5~10万円

成年後見開始の審判をするにあたって、本人の状況を鑑定することがあります。

裁判所が鑑定を必要とすると判断された場合、鑑定の費用を納入します。

(6)選任までにかかる期間

成年後見開始の申立てから選任されるまで、およそ2~3か月程度かかります。

⑤成年後見開始の申立ての流れ

手順(1)申立人の決定

成年後見開始の申立てができる人は、法律で決められています。

だれが申立人になるのか、意見調整をします。

手順(2)必要書類の準備

成年後見開始の申立てには、たくさんの書類が必要になります。

医師の診断書など、作成に時間がかかる書類は早めに依頼します。

手順(3)受理面接の予約

必要書類の準備に目処がついたら、受理面接の予約を取ります。

家庭裁判所の混雑状況によっては、相当先まで予約が埋まっています。

手順(4)申立書を提出

申立書と必要書類を取りまとめて、管轄の裁判所に提出します。

窓口まで出向いて提出することもできるし、郵送で提出することもできます。

窓口に出向く場合は、受付時間に注意しましょう。

手順(5)受理面接

成年後見開始の申立てを受付けたら、家庭裁判所は書類を審査します。

同時に裁判所調査官による面談があります。

手順(6)医師による鑑定

本人の判断能力の有無や程度を判断するため、必要に応じて鑑定を命じることがあります。

鑑定費用は、申立人が負担します。

手順(7)成年後見人選任の審判

家庭裁判所が成年後見人選任の審判をします。

申立人へ審判書が送達されます。

成年後見人選任の審判が確定したら、家庭裁判所から後見登記が嘱託されます。

手順(8)成年後見人によるサポート開始

成年後見人に、代理権が発生します。

成年後見人は、定期的に家庭裁判所に報告する義務が発生します。

⑥相続放棄後も成年後見は継続

成年後見人が選任されたら、認知症の相続人を代理して相続放棄をすることができます。

相続放棄が認められた後になっても、成年後見は終了しません。

成年後見人は、認知症の人をサポートする人だからです。

認知症の人は判断能力が低下しているから、サポートなしにすることはできません。

相続放棄のために成年後見人を選任してもらったとしても、成年後見は継続します。

原則として、認知症の人が死亡するまで、成年後見は終了しません。

成年後見をやめたいと家族が望んでも、成年後見は継続します。

サポートを必要とする状態なのに、成年後見をやめさせることはできないからです。

2利益相反になると特別代理人が必要

①利益相反で成年行後見人は代理できない

成年後見人になれる人に、特別な条件はありません。

家庭裁判所に適任であると認められれば、家族が成年後見人に選任されることがあります。

家族が成年後見人に選任される場合、本人の子どもなど近い関係の家族でしょう。

認知症の人と成年後見人が同時に相続人になる相続が発生することがあります。

認知症の人と成年後見人が同時に相続人になる場合、成年後見人は認知症の人を代理することができません。

認知症の人と成年後見人が利益相反になるからです。

利益相反とは、一方がトクすると他方がソンする関係です。

例えば、認知症の人が相続放棄をすると、相続財産は一切引き継ぐことができません。

相続人である相続人は、相続財産を独り占めすることができます。

認知症の人の利益を犠牲にして成年後見人が利益を得ることは、許されません。

利益相反になるか、客観的に判断されます。

成年後見人が利益を得ようとしていないと主張しても、意味はありません。

成年後見人の主観的な判断で利益相反になるか、決められるものではないからです。

利益相反にあたる行為は、成年後見人が代理することができません。

②成年後見監督人が代理

成年後見監督人とは、成年後見人を監督する人です。

認知症の人の利益を保護するため、家庭裁判所の判断で選任されます。

認知症の人と成年後見人が利益相反になる場合、成年後見人は認知症の人を代理することができません。

成年後見人に代わって、成年後見監督人が代理します。

③成年後見監督人がいないと特別代理人が代理

任意後見では、任意後見人監督人が必ず選任されています。

法定後見では、家庭裁判所の判断で成年後見監督人が選任されていることがあります。

法定後見では、成年後見監督人が選任されていないことがあります。

成年後見監督人が選任されていない場合、特別代理人が認知症の人の代理をします。

特別代理人は、家庭裁判所に選任してもらいます。

④家庭裁判所に特別代理人選任の申立て

(1)申立先

認知症の相続人の住所地を管轄する家庭裁判所に、申立てをします。

家庭裁判所の管轄は、裁判所のホームページで確認することができます。

(2)申立てができる人

成年後見人が申立てをします。

(3)特別代理人の候補者を立てることができる

特別代理人選任の申立てで、特別代理人の候補者を立てることができます。

特別代理人候補者は、次の人がおすすめです。

・利害関係がない親族

・司法書士などの専門家

特別代理人候補者は、次の人はおすすめできません。

・利害関係人

・過去にトラブルがあった人

特別代理人の候補者を立てても、家庭裁判所は自由に選任します。

特別代理人になる人は、相続人に利害関係がない人が選任されます。

(4)必要書類

特別代理人選任の申立書に添付する必要書類は、次のとおりです。

・認知症の人の戸籍謄本

・成年後見登記事項証明書

・相続関係説明図

・特別代理人の候補者の住民票または戸籍の附票

・利益相反の具体的説明書

(5)申立て費用

認知症の人1人につき、800円です。

申立て費用は、収入印紙を申立書に貼り付けて納入します。

申立て費用とは別に、予納郵券を納入します。

予納郵券とは、裁判所が手続に使う郵便切手です。

裁判所ごとに、予納する郵便切手の額面と枚数が決められています。

(6)審理期間

特別代理人選任の申立てから選任がされるまで、およそ1~2か月程度かかります。

⑤特別代理人選任の申立ての流れ

手順(1)必要書類の準備

特別代理人選任の申立てには 、たくさんの書類が必要になります。

手順(2)申立書を提出

申立書と必要書類を取りまとめて、管轄の裁判所に提出します。

窓口まで出向いて提出することもできるし、郵送で提出することもできます。

窓口に出向く場合は、受付時間に注意しましょう。

手順(3)特別代理人選任の審判

家庭裁判所が特別代理人選任の審判をします。

申立人へ審判書が送達されます。

⑥相続放棄後に特別代理人の任務終了

特別代理人が選任されたら、認知症の相続人を代理して相続放棄をすることができます。

相続放棄が認められた後、特別代理人の任務は終了します。

特別代理人は、特定の法律行為の代理人だからです。

特別代理人の任務終了で、報告義務は通常ありません。

家庭裁判所によっては、任務終了報告を求めることがあります。

3認知症の人が相続放棄をするときの注意点

注意①相続放棄の期限3か月のスタートは知ってから

(1)認知症の相続人が知っても3か月はスタートしない

相続放棄には、3か月以内の期限が決められています。

相続があったことを知ってから3か月以内の期間のことを熟慮期間と言います。

相続放棄の期限3か月のスタートは、相続があったことを知ってからです。

「相続があったことを知ってから」とは、被相続人が死亡して相続が発生し、その人が相続人であることを知って、かつ、相続財産を相続することを知ってから、と考えられています。

認知症の相続人が相続があったことを知っても、熟慮期間はスタートしません。

認知症の相続人は、自分で判断できないからです。

(2)利益相反になる成年後見人が知っても3か月はスタートしない

成年後見人が認知症の相続人を代理できる場合、成年後見人が知った時点で3か月がスタートします。

成年後見人と認知症の相続人が利益相反になる場合、成年後見人は認知症の相続人を代理できません。

成年後見人が認知症の相続人を代理できない場合、成年後見人が知った時点で3か月がスタートしません。

(3)特別代理人が知ってから3か月がスタートする

特別代理人が相続があったことを知った時点で、相続放棄の期限3か月がスタートします。

特別代理人は家庭裁判所に選任されてから、認知症の相続人を代理することができます。

特別代理人として、利害関係がない親族が選任されることがあります。

親族であれば、相続があったことを知っていることが多いでしょう。

親族として相続があったことを知っていても、相続放棄の期限3か月がスタートしません。

特別代理人に選任されていないと、認知症の相続人を代理できないからです。

注意②相続放棄の期限は伸長してもらえる

相続財産が複雑である場合、3か月の熟慮期間内に調査が難しいことがあります。

3か月の熟慮期間を経過してしまいそうな場合、家庭裁判所に相続の期間の伸長の申立てができます。

家庭裁判所の審査によって、さらに3か月伸長されます。

注意③本人に不利益な相続放棄はできない

成年後見人も得意別代理人も、認知症の人の利益を保護するために選任されます。

たとえ家族が望んでも本人の不利益になる場合、相続放棄をすることは許されません。

認知症の相続人の利益を犠牲にして家族が利益を得ることは、許されないからです。

4認知症の相続人がいる相続を司法書士に依頼するメリット

相続手続を進めたいのに、認知症の相続人がいて困っている人はたくさんいます。

認知症の人がいると、お世話をしている家族は家を空けられません。

家庭裁判所に成年後見開始の申立てをするなど、法律の知識のない相続人にとって高いハードルとなります。

裁判所に提出する書類作成は、司法書士の専門分野です。

途方に暮れた相続人をサポートして相続手続を進めることができます。

自分たちでやってみて挫折した方や相続手続で不安がある方は、司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。

相続放棄の必要書類に有効期限がある

2025-08-31

1相続放棄は家庭裁判所に申立てが必要

相続が発生したら、原則として、被相続人のプラスの財産もマイナスの財産も相続人が受け継ぎます。

被相続人のプラスの財産もマイナスの財産も受け継がないことを相続の放棄といいます。

相続放棄は、家庭裁判所に申立てが必要です。

相続放棄の申立てに必要な書類は、次のとおりです。

①被相続人の戸籍謄本

②被相続人の除票

③相続放棄する人の戸籍謄本

④収入印紙800円分

⑤裁判所が手続で使う郵便切手

家庭裁判所で相続放棄が認められた場合、プラスの財産を引き継がなくなりますが、マイナスの財産も引き継ぐことがなくなります。

2戸籍謄本も除票もそれ自体に有効期限はない

戸籍謄本は、本籍地のある市区町村役場が発行します。

除票は、住民票をおいている市区町村役場が発行します。

戸籍謄本を見ると、発行年月日が記載されています。

除票を見ると、発行年月日が記載されています。

発行年月日が記載されているだけで、有効期限は記載されていません。

戸籍謄本や住民票に、有効期限はありません。

戸籍謄本や住民票は、交付の時点の内容の証明書だからです。

発行年月日が極端に古い書類は、受付をしてもらえないことがあります。

受付をする機関が独自でルールを決めているからです。

3被相続人の戸籍謄本と除票は相続が発生した後のもの

①戸籍謄本は被相続人死亡の記載があるもの

相続が発生する前は、相続放棄ができません。

被相続人の戸籍謄本は、被相続人の死亡が記載されていなければなりません。

死亡届を提出した直後に戸籍謄本を請求する場合、市区町村役場の事務処理中かもしれません。

被相続人の死亡が記載されていることを確認して発行してもらいましょう。

②除票は被相続人死亡の記載があるもの

相続放棄の申立てをする先は、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です。

被相続人の除票は、被相続人の死亡が記載されていなければなりません。

死亡届を提出した直後に除票を請求する場合、市区町村役場の事務処理中かもしれません。

被相続人の死亡が記載されていることを確認して発行してもらいましょう。

4相続放棄をする人の戸籍謄本は3か月以内

①相続放棄する人は相続発生後取得の戸籍謄本

相続が発生する前は、相続放棄ができません。

相続放棄は、家庭裁判所に対して、必要な書類をを添えて相続放棄をしたい旨の届出をします。

家庭裁判所は、生前に相続放棄の受付はしません。

被相続人の死亡する前に相続放棄ができるとすると、相続人になる予定の人が干渉して相続が発生する前からトラブルになることが考えられるからです。

相続発生後に取得した戸籍謄本を提出する必要があります。

②相続放棄する人は発行後3か月以内の戸籍謄本

家庭裁判所は、相続放棄をする人の戸籍謄本について、発行後3か月以内のルールを設けています。

古い戸籍謄本を提出しても、受け付けてもらえません。

相続放棄は、3か月以内に家庭裁判所に申立てをする必要があります。

相続発生後取得した戸籍謄本であれば、必ず3か月以内になると思うかもしれません。

相続後記の期限3か月のスタートは、原則として、相続があったことを知ってからです。

「相続があったことを知ってから」とは、被相続人が死亡して相続が発生し、その人が相続人であることを知って、かつ、相続財産を相続することを知ってから、と考えられています。

被相続人が死亡してから3か月以内ではなく、相続財産を相続することを知ってから3か月以内です。

被相続人が死亡してから何年も経過してから相続があったことを知る場合があります。

被相続人が死亡後、何年も経過してから相続があったことを知った場合、相続放棄をすることができます。

相続放棄の申立てをする場合、発行後3か月以内の戸籍謄本を提出する必要があります。

③相続放棄をするのに印鑑証明書は不要

相続放棄は、本来、家庭裁判所に対する手続です。

家庭裁判所に提出する書類には実印を押す必要はありません。

実印を押さないから、印鑑証明書を提出することもありません。

にもかかわらず、相続放棄の手続のため実印と印鑑証明書を用意して欲しいと他の相続人に言われたというケースがあります。

相続放棄のためと称していますが、相続放棄の手続のはずがありません。

相続放棄の手続は、相続放棄をする相続人が自分でするものだからです。

他の相続人が相続放棄の手続をするものではありません。

相続放棄の手続には、実印も印鑑証明書も不要です。

実印と印鑑証明書を渡して欲しいと言ってきた場合、別の手続をしようとしています。

自称専門家の場合、遺産分割協議と相続放棄を混同しているケースは度々あります。

他の相続人に対してプラスの財産を相続しないと宣言することを相続放棄と誤解しているケースでしょう。

遺産分割では、遺産分割協議書と印鑑証明書が必要になります。

相続放棄と遺産分割は、まったく別の効果の別の手続です。

5相続登記の必要書類は有効期限がない

法務局は、被相続人や相続人の戸籍謄本について、有効期限を設けていません。

住民票や印鑑証明書についても、有効期限を設けていません。

相続登記をする場合、登録免許税を納めなければなりません。

登録免許税は、登記申請年度の固定資産税評価額をもとにして計算します。

固定資産税の評価証明書は、4月1日に新年度になります。

登記申請が4月1日を越して新年度になった場合、新年度の固定資産税の評価証明書が必要です。

相続登記で期限を気にしなければならないのは、固定資産税評価証明書だけです。

他の添付書類については、古いものだけであれば問題はありません。

6銀行などの金融機関は独自ルールで有効期限を決めている

①多くの銀行は有効期限3か月か6か月

相続の手続先は、銀行や保険会社などがイメージしやすいでしょう。

銀行や保険会社などは、独自で書類の有効期限を決めています。

取得してから長期間経過した場合、取得し直してくださいと言われます。

銀行や保険会社などの独自ルールなので、一概には言えませんが、多くは3か月や6か月で取得し直しと言われてしまいます。

②期限切れの戸籍等で法定相続情報一覧図を取得することができる

相続手続のたびに、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍と相続人の現在戸籍の束を提出しなければなりません。

大量の戸籍を持ち歩くと汚してしまったり、紛失する心配があるでしょう。

被相続人を中心にして、どういう続柄の人が相続人であるのか一目で分かるように家系図のように取りまとめてあると便利です。

この家系図と戸籍謄本等を法務局に提出して、登記官に点検してもらうことができます。

登記官は内容に問題がなかったら、地模様の入った専用紙に認証文を付けて印刷して、交付してくれます。

登記官が地模様の入った専用紙に印刷してくれた家系図のことを法定相続情報一覧図と言います。

法務局に戸籍謄本等の点検をお願いすることを法定相続情報一覧図の保管及び交付の申出と言います。

法定相続情報一覧図の保管及び交付の申出をする場合、取得してから長期間経過した戸籍謄本や住民票を提出しても差し支えありません。

取得してから長期間経過した戸籍謄本や住民票を提出しても、内容が適切であれば、地模様の入った専用紙に認証文を付けて印刷して交付してくれます。

法定相続情報一覧図には、交付した日付が記載されています。

銀行や保険会社などの独自ルールによりますが、法定相続情報一覧図の交付日から3か月や6か月以内であれば期限内の書類として受け付けてもらえます。

法定相続情報一覧図の保管及び交付の申出をしてから5年間は、再交付の申出ができます。

法定相続情報一覧図の交付日から3か月や6か月の期限が切れてしまった場合、法務局に対して法定相続情報一覧図の再交付をしてもらうことができます。

法定相続情報一覧図の再交付をしてもらえば、新しい交付日の法定相続情報一覧図を取得することができます。

被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍と相続人の現在戸籍は大量にある場合、取り直しをする負担は大きいものです。

銀行や保険会社など手続先がたくさんある場合、3か月や6か月はあっという間に過ぎてしまいます。

法定相続情報一覧図を上手に活用すると、スムーズに相続手続ができます。

7相続税申告のの必要書類は有効期限がない

税務署は、被相続人や相続人の戸籍謄本について、有効期限を設けていません。

相続税は、10か月以内に申告する必要があります。

8相続放棄の提出書類は原本還付してもらうことができる

家庭裁判所に提出した書類は、請求しなければ原本還付してもらうことはできません。

添付書類を返してもらえれば、財産を相続する相続人が使うことができます。

被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本をすべて取得するのは、想像以上に時間と手間がかかります。

相続手続をする手続先がたくさんある場合、添付書類の原本還付を請求すると便利です。

添付書類を返してもらえないと、あらためて手間と時間をかけてたくさんの書類を取り寄せなければならなくなるからです。

家庭裁判所は相続放棄申述書以外すべての書類を返してくれます。

相続放棄申述書に原本還付申請書と返してもらいたい書類のコピーを添付します。

コピーに原本に相違ありませんなどの記載は不要です。

9相続放棄を司法書士に依頼するメリット

相続放棄はプラスの財産もマイナスの財産も引き継ぎませんという裁判所に対する申立てです。

相続人らとのお話合いで、プラスの財産を相続しませんと申し入れをすることではありません。

家庭裁判所で認められないとマイナスの財産を引き継がなくて済むというメリットは受けられないのです。

実は、相続放棄はその相続でチャンスは実質的には1回限りです。

家庭裁判所に認められない場合、即時抗告という手続を取ることはできますが、高等裁判所の手続で、2週間以内に申立てが必要になります。

家庭裁判所で認めてもらえなかった場合、即時抗告で相続放棄を認めてもらえるのは、ごく例外的な場合に限られます。

一挙にハードルが上がると言ってよいでしょう。

司法書士であれば、家庭裁判所に認めてもらえるポイントを承知していますから、認めてもらえやすい書類を作成することができます。

相続放棄をしたい旨の届出には戸籍や住民票が必要になります。

お仕事や家事、通院などでお忙しい人には平日の昼間に役所にお出かけになって準備するのは負担が大きいものです。

戸籍や住民票は郵便による取り寄せもできますが、書類の不備などによる問い合わせはやはり役所の業務時間中の対応が必要になりますから、やはり負担は軽いとは言えません。

このような戸籍や住民票の取り寄せも司法書士は代行します。

3か月の期間内に手続きするのは思ったよりハードルが高いものです。

相続放棄を考えている方はすみやかに司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。

被相続人の死亡を知らなかったときの相続放棄

2025-08-08

1被相続人の死亡を知らなかったケース

ケース①被相続人と疎遠

相続が発生したら、親族のうち一定の範囲の人が相続人になります。

だれが相続人になるかについては、民法で決められています。                                   

さまざまな家族の事情から、被相続人や被相続人の家族と疎遠になっていることがあります。

被相続人や被相続人の家族と疎遠になっても、相続人は相続人です。

長期間疎遠になっていると、連絡先が分からないことがあります。

被相続人の死亡を知らせることができなくなります。

被相続人の死亡を知らないまま、長期間経過することがあります。

ケース②認知された子どもや前婚の子ども

被相続人に子どもがいる場合、子どもは相続人になります。

認知とは、婚姻関係にないカップルの間に生まれた子どもについて自分の子どもと認めることです。

認知したことや認知した子どもについて、家族に秘密にしていることがあります。

被相続人の家族が相続人の存在や連絡先を知らないと、連絡できないでしょう。

被相続人の死亡を知らないまま、長期間経過することがあります。

2被相続人の死亡を知らなかったときの相続放棄

①相続放棄は家庭裁判所の手続

相続が発生したら、相続人は相続を単純承認するか相続放棄をするか選択することができます。

相続放棄を希望する場合、家庭裁判所に対して相続放棄の申立てをします。

相続放棄は、家庭裁判所の手続です。

家庭裁判所で相続放棄が認められたら、はじめから相続人でなくなります。

②相続放棄の期限3か月のスタートは知ってから

相続放棄には、期限があります。

相続があったことを知ってから、3か月以内です。

「相続があったことを知ってから」とは、被相続人が死亡して相続が発生し、その人が相続人であることを知って、かつ、相続財産を相続することを知ってから、と考えられています。

3か月以内に戸籍謄本や住民票などの必要書類を揃えて管轄の家庭裁判所に提出しなければなりません。

被相続人が死亡してから3か月以上経過しても、相続放棄の期限3か月はスタートしていないことがあります。

相続放棄の期限3か月のスタートは、知ってからだからです。

③被相続人の死亡を知らないと相続放棄の期限3か月はスタートしない

被相続人や被相続人の家族と疎遠である場合、死亡直後に連絡がされないことがあります。

被相続人の死亡を知らないまま、長期間経過することが少なくありません。

相続放棄の期限3か月のスタートは、知ってからです。

被相続人の死亡を知らないまま長期間経過しても、相続放棄の期限3か月はスタートしていません。

相続があったことを知ってから3か月以内であれば、家庭裁判所に相続放棄の手続をすることができます。

④先順位相続人の相続放棄を知ってから3か月

被相続人に子どもがいる場合、子どもが相続人になります。

子どもが相続人になると考えていると、遠縁の親族に被相続人の死亡を連絡しないことがあります。

相続人は相続を単純承認するか相続放棄をするか選択することができます。

子どもが相続放棄をした場合、はじめから相続人でなくなります。

子ども全員が相続放棄をした場合、子どもはいない場合になります。

先順位の人全員が相続放棄をしたら、次順位の人が相続人になります。

家庭裁判所で相続放棄が認められても、次順位相続人に連絡する義務はありません。

家庭裁判所は相続放棄を認めても、次順位相続人に通知しません。

相続人になったことを知らないまま、長期間経過することがあります。

相続人になったことを知らない場合、相続があったことを知らないと言えます。

相続があったことを知らないから、相続放棄の期限3か月はスタートしていません。

被相続人が死亡してから3か月以上経過しても、相続放棄の期限3か月はスタートしていません。

相続があったことを知ってから3か月以内であれば、家庭裁判所に相続放棄の手続をすることができます。

⑤相続財産があることを知ってから3か月

被相続人と別居している場合、被相続人の経済状況を詳しく知らないことが多いでしょう。

被相続人の死亡を知っても、財産状況を知らないことがあります。

相続財産には、プラスの財産とマイナスの財産が含まれます。

相続財産調査をしても、マイナスの財産に気づけないことがあります。

マイナスの財産があることを知らなかった場合、相続財産を相続することを知らなかったと言えます。

相続財産を相続することを知らない場合、相続があったことを知らないと言えます。

相続があったことを知らないから、相続放棄の期限3か月はスタートしていません。

被相続人が死亡してから3か月以上経過しても、相続放棄の期限3か月はスタートしていません。

相続があったことを知ってから3か月以内であれば、家庭裁判所に相続放棄の手続をすることができます。

⑥3か月の期限があることを知らなかったは認めれられない

相続放棄の申立ての期限は、原則として、相続があったことを知ってから3か月以内です。

相続放棄の期限が3か月であることは、法律で決まっています。

相続放棄の期限3か月を知らなくても、3か月経過で相続放棄ができなくなります。

「相続放棄の期限3か月を知らなかったから」は、理由にできません。

相続があったことを知ってから3か月経過したら、単純承認になります。

相続放棄の期限が3か月であることを知らないまま長期間経過すると、相続放棄が認められなくなります。

3被相続人の死亡を知らなかったときの注意点

注意①続放棄の期限3か月を過ぎたときは上申書

相続放棄の期限3か月のスタートは、相続があったことを知ってからです。

相続があったことを知らなければ、相続放棄の期限3か月がスタートしません。

相続が発生してから3か月以上経過して相続放棄の申立てをした場合、家庭裁判所は期限後の提出と誤解するでしょう。

期限3か月を過ぎても認められる理由があることを積極的にアピールする必要があります。

例えば、被相続人と疎遠であった場合、次の点を書くといいでしょう。

・相続人間の交流はない

・相続人であることを知ったきっかけ

・きっかけとなった証拠の有無

手紙などを受け取ったことで相続人であることを知った場合、手紙や封筒は重要です。

相続人であることを知ったきっかけを裏付ける証拠になるからです。

相続放棄の申立てをする際に、上申書を一緒に提出します。

上申書には、客観的事実や経緯を淡々と書きます。

家庭の事情や家族の感情などは、信頼性を失わせるからです。

家庭裁判所は、提出された書類を見て審査します。

期限3か月を過ぎても認められる理由があるか、自主的に調査をしません。

家庭裁判所が知りたいポイントを押さえて、適切にアピールすることが重要です。

期限3か月を過ぎても認めてもらうためには、上申書が有効です。

注意点1つ目は、相続放棄の期限3か月を過ぎたときは上申書です。

上申書の文例

名古屋家庭裁判所御中

私は、被相続人〇〇〇〇(令和〇年〇月〇日死亡)の相続人です。

被相続人とは、平成〇年頃から交流がなく死亡を知りませんでした。

令和〇年〇月〇日付〇〇〇銀行から相続債務について通知を受け取りました。

上記通知によって、相続人であることと相続財産について知りました。

よって、自己のために相続があったことを知った日は、令和〇年〇月〇日です。

令和〇年〇月〇日より3か月以内であるから、相続放棄の申述をします。

添付資料として、通知書の写しを同封します。

相続放棄申述人 〇〇〇〇

注意②相続財産を処分利用すると単純承認

相続人は相続を承認するか相続放棄をするか、判断することができます。

相続を承認するか相続放棄をするか判断した後に、撤回することはできません。

相続放棄をする場合、相続財産を処分することはできません。

相続財産を処分した場合、相続を承認したものと見なされます。

相続を承認した場合、承認を撤回することはできません。

家庭裁判所が事情を知らずに相続放棄を認めてしまった場合、後から無効になります。

家庭裁判所から相続放棄申述受理通知書を受け取っても、相続放棄は絶対ではありません。

相続財産を処分した場合、相続を承認したと言えるからです。

被相続人の債権者は、相続放棄は無効であると主張して借金を払って欲しいと裁判を起こすことができます。

相続放棄申述受理通知書を見せても、借金の催促が止まらない場合、債権者は相続放棄の無効を主張しているかもしれません。

債権者が裁判を起こした場合、裁判所から訴状が届きます。

訴状が届いたら、直ちに弁護士などの専門家に相談しましょう。

債権者が根拠のない主張をしている場合であっても、適切に主張立証をする必要があるからです。適切に対応しないと、裁判で相続放棄の無効が認められてしまうからです。

注意点2つ目は、相続財産を処分利用すると単純承認です。

注意③熟慮期間3か月は延長してもらえる

熟慮期間とは、相続放棄ができる3か月の期間です。

例えば、相続財産が外国など各地に点在している場合、3か月では判断できないでしょう。

相続財産調査に時間がかかる場合、家庭裁判所に認められれば延長してもらうことができます。

具体的には次の事情があると、熟慮期間延長が認められやすいでしょう。

・財産が多岐にわたる

・財産の種類が多い

・評価が困難な財産がある

注意点3つ目は、熟慮期間3か月は延長してもらえることです。

4相続放棄の手続の流れ

手順①相続財産調査

相続を単純承認するか相続放棄をするか判断するため、相続財産調査をします。

どのような財産状況でも相続放棄をする場合、相続財産調査は不要です。

手順1つ目は、相続財産調査です。

手順②必要書類の準備

相続放棄の申立ての必要書類は、次のとおりです。

(1)被相続人の戸籍謄本

(2)被相続人の住民票または戸籍の附票

(3)相続放棄する人の戸籍謄本(3か月以内のもの)

(4)収入印紙800円分

(5)裁判所が手続で使う郵便切手

裁判所が手続で使う郵便切手は、裁判所ごとに金額や枚数が決められています。

必要であれば、上申書を準備します。

期限3か月を過ぎても認められる理由があることを適切にアピールしないと、相続放棄できないからです。

書類が揃わなくても、後から追加で提出することができます。

手順2つ目は、必要書類の準備です。

手順③相続放棄申述書の作成

相続放棄申述書に、必要事項を記載します。

相続放棄申述書は、相続放棄をする人の押印が必要です。

押印は、認印で差し支えありません。

手順3つは、相続放棄申述書の作成です。

手順④家庭裁判所へ提出

相続放棄申述書の提出先は、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です。

家庭裁判所の管轄は、裁判所のホームページで確認することができます。

家庭裁判所へ出向いて提出する場合、受付時間に制限があることがあります。

相続放棄申述書は、郵送で提出することができます。

普通郵便でも提出できますが、記録が残る郵便が安心です。

手順4つ目は、家庭裁判所へ提出です。

手順⑤相続放棄照会書に回答

相続放棄の申立てをすると、2週間ほどで家庭裁判所から相続放棄照会書が届きます。

相続放棄照会書とは、家庭裁判所から届く相続放棄についての意思確認です。

相続放棄は影響の大きい手続なので、間違いがないように慎重に確認します。

正直に回答して、返送します。

手順5つ目は、相続放棄照会書に回答です。

手順⑥相続放棄申述受理通知書の受領

回答に問題がなければ、家庭裁判所から審査結果が通知されます。

相続放棄申述受理通知書とは、相続放棄が認められた通知書です。

通常は照会から1~2週間程度申立てから1か月程度で、相続放棄申述受理通知書が届きます。

相続放棄申述受理通知書が届かない場合、家庭裁判所に問合わせるといいでしょう。

手順6つ目は、相続放棄申述受理通知書の受領です。

手順⑦他の相続人に通知

相続放棄の審査結果は、申立てをした人だけに通知します。

他の相続人に対して、積極的に通知しません。

相続放棄をしても他の相続人に通知する義務はありませんが、通知してあげると親切でしょう。

手順7つ目は、他の相続人に通知です。

5相続放棄を司法書士に依頼するメリット

相続放棄は、その相続でチャンスは実質的には1回限りです。

家庭裁判所に認められない場合、即時抗告という手続を取ることはできます。

高等裁判所の手続で、2週間以内に申立てが必要になります。

家庭裁判所で認めてもらえなかった場合、即時抗告で相続放棄を認めてもらえるのは、ごく例外的な場合に限られます。

一挙にハードルが上がると言ってよいでしょう。

相続放棄は、慎重に判断する必要があります。

知識がない状態で、3か月の期間内に手続するのは思ったよりハードルが高いものです。

相続放棄を考えている方は、すみやかに司法書士などの専門家に相談することをおすすめします

相続放棄の期間3か月の起算点

2025-07-03

1相続放棄ができる期間は3か月

①相続放棄の期間3か月のスタートは知ってから

相続放棄は家庭裁判所に申立てをする必要があります。

この申立ての期限は、原則として、相続があったことを知ってから3か月以内です。

相続があったことを知ってから3か月以内の期間のことを熟慮期間と言います。

「相続があったことを知ってから」とは、被相続人が死亡して相続が発生し、その人が相続人であることを知って、かつ、相続財産を相続することを知ってから、と考えられています。

被相続人が死亡してから3か月以内ではなく、相続財産を相続することを知ってから3か月以内です。

3か月以内に戸籍謄本や住民票などの必要書類を揃えて管轄の家庭裁判所に提出しなければなりません。

②相続放棄ができる期間は3か月を知らなかったからは認められない

相続放棄の申立ては、相続があったことを知ってから3か月以内にしなければなりません。

相続放棄ができる期間は3か月を知らないまま3か月経過した場合、相続放棄は認められません。

法律の定めを知らなくても、3か月過ぎてしまえば、単純承認になります。

単純承認になったら、相続放棄は認められません。

法律を勉強したことがないからなども、勉強していないから3か月以内という定めを知らなかったといえます。

3か月過ぎてしまえば、単純承認になります。

単純承認になったら、相続放棄は認められません。

2「相続があったことを知ってから」の具体例

①被相続人が死亡したことを知ってから3か月

いろいろな家族関係の中で、家族と音信不通になっているケースはたくさんあります。

被相続人の家族が知らない相続人がいることもあります。

被相続人が死亡した後、家族が知らない相続人に対してすぐに連絡がされることはないでしょう。

被相続人と絶縁していても、相続人になるかどうかとは関係ありません。

絶縁していたとか、絶交していたとかいう事情は、法律の定めとは無関係です。

たとえ何十年も音信不通でも親子は親子です。

何十年も会っていなくても兄弟姉妹は兄弟姉妹です。

被相続人が死亡してから長期間経過した後に、相続人になったことを知ることになります。

絶縁していた相続人が相続放棄をする場合、「知ってから」とは被相続人が死亡したことを知ってからです。

被相続人が死亡したことを知らない場合、相続放棄をするか単純承認をするか判断できないからです。

②相続人になったことを知ってから3か月

だれが相続人になるかについては、法律で決められています。

相続が発生した場合、被相続人の配偶者や子どもは自分が相続人になることが分かります。

被相続人の子どもが相続人になる場合、親などの直系尊属は相続人になりません。

被相続人の子ども全員が相続放棄をした場合、次順位の人が相続人になります。

家庭裁判所は相続放棄を認めた場合、相続放棄の申立てをした人にだけ通知します。

家庭裁判所は自主的に次順位相続人に先順位の相続人が相続放棄をしたことを通知しません。

相続放棄を認めてもらった人が次順位相続人に相続放棄が認められたことを通知する義務はありません。

相続放棄を認めてもらった人と親しい相続人であれば、自主的に相続放棄が認められたことを連絡してくれるかもしれません。

被相続人の子ども全員の相続放棄が認められてから長期間経過した後に、相続人になったことを知ることがあります。

自分が相続人であることを知らなかった人が相続放棄をする場合、「知ってから」とは自分が相続人になったことを知ってからです。

③未成年者が相続放棄をするときは親権者が知ってから3か月

幼い子どもや赤ちゃんが相続人になる場合があります。

幼い子どもや赤ちゃんは、財産の価値や相続放棄の意味が分からないでしょう。

物事のメリットデメリットを充分に判断できないから、未成年者はひとりで契約などの法律行為ができません。

通常、幼い子どもや赤ちゃんが契約をするなどの法律行為をする場合は、親権者などの法定代理人が代わりに契約します。

原則として、未成年者が相続放棄をする場合、親権者などの法定代理人が代わりに手続します。

未成年者はひとりで相続放棄をするか単純承認をするか判断できません。

未成年者が相続があったことを知っても、意味はありません。

未成年者が相続放棄をする場合、「知ってから」とは親権者などの法定代理人が知ってからです。

親権者などの法定代理人が相続放棄をするか単純承認をするか判断するからです。

④認知症の人が相続放棄をするときは成年後見人が知ってから3か月

相続人に認知症を発症している人がいる場合があります。

認知症になると、記憶があいまいになったり物事のメリットデメリットを充分に判断できなくなります。

物事のメリットデメリットを充分に判断できない状態では、財産の価値や相続放棄の意味が分からないでしょう。

物事のメリットデメリットを充分に判断できないから、認知症の人は契約などの法律行為ができません。

認知症の人が契約をするなどの法律行為をする場合は、成年後見人が代わりに契約します。

認知症の人が相続があったことを知っても、意味はありません。

認知症の人が相続放棄をする場合、「知ってから」とは成年後見人が知ってからです。

認知症の人に成年後見人がついていない場合、家庭裁判所に申立てが必要になります。

事案の複雑さなどで期間は変わりますが、成年後見開始の申立てをしてから成年後見人が選任されるまでは、おおむね3~4か月ほどです。

認知症の人が相続人になることを成年後見人が知ってから3か月以内に手続すれば問題になりません。

成年後見人に就任した人が、認知症の人のために相続があったことを知っていて、すでに3か月以上経過していることがあります。

相続放棄ができる期間は3か月の起算点は、成年後見人として就任してからです。

成年後見人として就任してから3か月以内であれば、相続放棄ができます。

成年後見人に就任するまでは、認知症の人を代理して相続放棄の手続ができないからです。

⑤莫大な借金があることを知ってから3か月

相続人であることを知ってから、3か月以上経過した後になって借金の存在を知ったという場合があります。

典型的には、被相続人が連帯保証人になっていた場合です。

連帯保証人は、お金を借りた人が借りたお金を返せなくなったときに肩代わりをする人のことです。

お金を借りた人が順調にお金を返している間は、何も連絡がありません。

お金を借りた人がお金を返せなくなったら、肩代わりを請求してきます。

お金を借りた人がいつお金を返せなくなるかは分かりません。

被相続人が死亡してから何年も後になって、肩代わりを請求されることがあります。

被相続人と別居していた相続人は、被相続人の経済状況を詳しく知っていることは少ないでしょう。

被相続人と疎遠な相続人なら、まったく知らないでしょう。

相続財産というとプラスの財産だけ注目しがちですが、マイナスの財産も相続財産になります。

マイナスの財産だけでなく、連帯保証人の地位も相続されます。

「相続があったことを知ってから」とは、被相続人が死亡して相続が発生し、その人が相続人であることを知って、かつ、相続財産を相続することを知ってから、です。

莫大な借金がある場合、「知ってから」とは莫大な借金があることを知ってからです。

3単純承認をすると知ってから3か月以内の相続放棄でも無効になる

相続放棄をする前に単純承認をしていた場合、相続放棄はできません。

相続放棄が撤回できないように、単純承認も撤回できないからです。

相続財産を処分したり、利用した場合、単純承認をしたとみなされます。

相続財産を処分したり、利用した場合は相続放棄ができなくなります。

家庭裁判所は事情が分からないから相続放棄を認めてしまうケースがありますが、後から無効になります。

4相続放棄の期間3か月は延長してもらうことができる

①相続の承認または放棄の期間の伸長の申立て

相続放棄は家庭裁判所に申立てをする必要があります。

この申立ての期限は、原則として、相続があったことを知ってから3か月以内です。

被相続人の財産状況を詳しく知らない場合、3か月はあっという間です。

相続放棄をするべきか単純承認をするべきか判断するために時間がかかる場合があります。

相続放棄をするべきか単純承認をするべきか判断するための資料を集めるため、相続放棄の期間3か月を延長してもらうことができます。

相続放棄の期間3か月を延長してもらうことを相続の承認または放棄の期間の伸長の申立てと言います。

相続の承認または放棄の期間の伸長の申立てを受け付けた場合、家庭裁判所が期間延長を認めるか判断します。

相続の承認または放棄の期間の伸長の申立てには、期間内に相続放棄をすべきか単純承認すべきが判断ができない具体的理由や延長が必要な期間を記載します。

判断ができない具体的理由を根拠づける資料を添付して、説得力を持たせるといいでしょう。

期間延長の必要性や理由が妥当なものであると家庭裁判所に納得してもらうことが重要です。

家庭裁判所で期間延長が認められた場合、原則として3か月延長されます。

②申立人

相続の承認または放棄の期間の伸長の申立ての申立人は、次のとおりです。

(1)利害関係人

(2)検察官

利害関係人には、相続人も含まれます。

③申立先

相続の承認または放棄の期間の伸長の申立書は、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です。

家庭裁判所の管轄は、裁判所のホームページで調べることができます。

④申立費用

相続の承認または放棄の期間の伸長の申立てには手数料がかかります。

手数料は、申立書に収入印紙を貼り付けて納入します。

収入印紙は貼り付けるだけで、消印は裁判所の人がします。

収入印紙は、郵便局やコンビニエンスストアで購入することができます。

手数料の他に、家庭裁判所で使う連絡用の郵便切手を納入します。

必要な郵便切手の金額や枚数は、家庭裁判所によって異なります。

⑤必要書類

相続の承認または放棄の期間の伸長の申立書の必要書類は、次のとおりです。

(1)被相続人の住民票除票又は戸籍附票

(2)利害関係人からの申立ての場合,利害関係を証する資料

(3)伸長を求める相続人の戸籍謄本

(4)被相続人の死亡の記載のある戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本

(5)相続人であることを証明する戸籍謄本

5相続放棄を司法書士に依頼するメリット

実は、相続放棄はその相続でチャンスは1回限りです。

家庭裁判所に認められない場合、即時抗告という手続を取ることはできます。

高等裁判所の手続で、2週間以内に申立てが必要になります。

家庭裁判所で認めてもらえなかった場合、即時抗告で相続放棄を認めてもらえるのは、ごく例外的な場合に限られます。

一挙にハードルが上がると言ってよいでしょう。

相続が発生してから3か月以内に申立てができなかったのは止むを得なかったと家庭裁判所に納得してもらって、はじめて、家庭裁判所は相続放棄を認めてくれます。

通常は家庭裁判所に対して、上申書や事情説明書という書類を添えて、説得することになります。

家庭裁判所が知りたいことを無視した作文やダラダラとした作文では認めてもらうことは難しいでしょう。

司法書士であれば、家庭裁判所に認めてもらえるポイントを承知しています。

認めてもらえやすい書類を作成することができます。

通常の相続放棄と同様に、戸籍謄本や住民票が必要になります。

仕事や家事、通院などで忙しい人には平日の昼間に役所にお出かけになって準備するのは負担が大きいものです。

戸籍謄本や住民票は郵便による取り寄せもできます。

書類の不備などによる問い合わせは、市区町村役場の業務時間中の対応が必要になります。

やはり負担は軽いとは言えません。

このような戸籍謄本や住民票の取り寄せも、司法書士は代行します。

3か月の期限が差し迫っている方や期限が過ぎてしまっている方は、すみやかに司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。

相続関係説明図に相続放棄を明記する方法

2025-07-02

1相続関係説明図は説明のための資料

①相続関係を説明する

相続関係説明図とは、相続関係を説明するための資料です。

相続が発生したら、法律で決められた人が相続人になります。

相続手続先に対しては、相続人であることを戸籍謄本で客観的に証明する必要があります。

戸籍には、その人の身分関係の事項がすべて記録されているからです。

相続手続では、たくさんの戸籍謄本が必要になります。

たくさんの戸籍謄本を読み解くのは、手間と時間がかかる事務です。

相続関係説明図は、相続手続先の人のための説明資料です。

たくさんの戸籍謄本を読み解くときの手助けになるように、分かりやすく作成します。

相続関係説明図は、相続関係の説明資料です。

②家系図型資料で説明する

相続人になる人は、法律で決められています。

被相続人を中心にして、どのような続柄の人が相続人になるのか、家系図型に取りまとめます。

被相続人と相続人の関係を家系図型で、図示します。

相続関係説明図があると、相続関係が一目で分かります。

相続関係が一目で分かるから、とても便利です。

相続関係説明図は、家系図型資料です。

③相続関係説明図は自由に作成できる

相続関係説明図は、任意に提出する説明資料です。

書き方や様式に、厳格なルールはありません。

相続関係説明図は、自由に作成することができます。

相続関係説明図は、手書きで作成してもパソコンなどで作成しても差し支えありません。

相続手続先の人のため、分かりやすく書くことが重要です。

④相続関係説明図を利用する場面

(1)相続登記

相続登記で、相続関係説明図を提出する義務はありません。

相続関係説明図を提出すると、手続が容易になるため申請書に添付します。

(2)預貯金の口座凍結解除

預貯金の口座凍結解除で、相続関係説明図を提出する義務はありません。

相続関係説明図を提出すると、手続が容易になるため任意で提出を求められます。

(3)司法書士などの専門家に相談

司法書士などの専門家に相談で、相続関係説明図を提出する義務はありません。

相続関係説明図を提出すると、説明しやすくなるため有意義な相談をすることができます。

(4)家庭裁判所の調停や裁判

家庭裁判所の調停や裁判で、相続関係説明図を提出する義務はありません。

相続関係説明図を提出すると、説明しやすくなるため任意で提出を求められます。

⑤相続関係説明図と法定相続情報一覧図のちがい

ちがい(1)公的証明力

相続関係説明図は相続関係の説明資料で、公的証明力がありません。

法定相続情報一覧図は、法務局が発行する公的証明書です。

ちがい1つ目は、公的証明力です。

ちがい(2)作成者

相続関係説明図は、相続関係の説明するため相続手続をする人が作成します。

法定相続情報一覧図は、法務局が発行します。

ちがい2つ目は、作成者です。

ちがい(3)戸籍謄本の必要の有無

相続関係説明図を提出しても、証明書類として戸籍謄本等の提出が必要です。

法定相続情報一覧図を提出したら、証明書類として戸籍謄本等の提出が不要です。

ちがい3つ目は、戸籍謄本の必要の有無です。

ちがい(4)記載内容の自由度

相続関係説明図は、自由に作成できます。

法定相続情報一覧図は、厳格な書き方ルールに従う必要があります。

ちがい4つ目は、記載内容の自由度です。

ちがい(5)取得・作成の手間

相続関係説明図は自由に書くことができるから、作成に手間があまりかかりません。

法定相続情報一覧図の保管及び交付の申出を提出してから交付されるまで、1か月程度かかります。

ちがい5つ目は、取得・作成の手間です。

2相続放棄で相続人でなくなる

①相続放棄は家庭裁判所の手続

相続が発生したら、相続人は相続を単純承認するか相続放棄するか選択することができます。

相続放棄を希望する場合、家庭裁判所に相続放棄の申立てをします。

家庭裁判所で相続放棄が認められたら、はじめから相続人でなくなります。

家庭裁判所で相続放棄が認められた場合だけ、相続放棄の効果を受けられます。

相続放棄は、家庭裁判所に対する手続です。

②子ども全員相続放棄で次順位相続人

被相続人に子どもがいる場合、子どもが相続人になります。

子どもが相続放棄をした場合、はじめから相続人でなくなります。

子ども全員が相続放棄をした場合、子どもがいない場合になります。

被相続人に子どもがいない場合、親などの直系尊属が相続人になります。

親などの直系尊属全員も相続放棄をした場合、次順位の兄弟姉妹が相続人になります。

子ども全員が相続放棄すると、次順位の人が相続人になります。

③相続放棄した人の子どもは代襲相続しない

代襲相続とは、相続人になるはずだった人が先に死亡した場合に子どもなどが相続人になることです。

例えば、相続人になるはずだった子どもが先に死亡した場合に子どもの子どもが相続人になります。

相続人になるはずだった人が相続放棄をした場合、代襲相続は発生しません。

相続放棄は、代襲相続の発生原因ではないからです。

相続放棄した人の子どもは、代襲相続しません。

④財産を引き継がない合意は相続放棄ではない

相続財産は、相続人全員の共有財産です。

相続財産の分け方は、相続人全員の合意で決定します。

相続人全員による話し合いで、一部の相続人が財産を引き継がない合意をすることがあります。

財産を引き継がない合意をすることを相続放棄と表現することがあります。

相続放棄と表現しても、相続放棄ではありません。

相続放棄は、家庭裁判所に対する手続だからです。

家庭裁判所で相続放棄が認められていないのに、相続放棄をすることはできません。

財産を引き継がない合意をすることは、遺産分割です。

相続人全員で相続財産の分け方を合意したからです。

財産を引き継がない合意は、相続放棄ではありません。

3相続関係説明図に相続放棄を明記する方法

①氏名の横に「相続放棄」

相続関係説明図は、自由に作成することができます。

相続手続先の人に分かりやすいように、相続放棄を明記することができます。

具体的には、相続放棄をした人の氏名の横に「相続放棄」と表示します。

「相続放棄」と書いてあると、はじめから相続人でなくなったことが一目で分かります。

相続関係説明図に相続放棄を明記することで、相続関係の誤解を防ぐことができます。

相続放棄の有無が明確でないと、相続人の誤認からトラブルになるおそれがあります。

②相続放棄した人の子どもは記載しない

相続関係説明図の書き方は、厳格なルールがありません。

自由に書いて、相続関係を分かりやすく説明することができます。

相続関係説明図に、相続放棄をした人の子どもは記載する必要はありません。

相続放棄した人の子どもは、代襲相続しないからです。

相続関係説明図に相続放棄した人の子どもを記載すると、かえって分かりにくくなります。

相続放棄した人の子どもは、相続に無関係の人だからです。

相続関係説明図に、相続放棄をした人の子どもは記載しません。

③次順位相続人を記載できる

相続関係説明図は、相続手続先の人への説明資料です。

相続関係を一目で分かるように、作成することが重要です。

子ども全員が相続放棄すると、次順位の人が相続人になります。

相続関係説明図には、次順位相続人を記載することができます。

次順位相続人を記載すると、相続関係が一目で分かります。

④法定相続情報一覧図に相続放棄は記載できない

法定相続情報一覧図は、法務局の認証文が入る公的証明書です。

厳格な書き方ルールに従う必要があります。

法定相続情報一覧図に、相続放棄を記載することはできません。

相続放棄を記載すると、書き直しになります。

たとえ、相続放棄申述受理通知書を提出しても、相続放棄を記載することはできません。

相続放棄申述受理通知書を提出することはできないからです。

相続放棄申述受理通知書を提出した場合でも、提出していないものと扱われます。

4相続関係説明図利用で相続手続を簡略化

①登記原因証明情報として相続関係説明図を送信

相続登記は、紙で申請することができるしオンラインで申請することができます。

オンラインで登記申請する場合、登記原因証明情報をPDFにして一緒に提出する必要があります。

相続登記における登記原因証明書情報は、たくさんの戸籍謄本や相続放棄申述受理通知書です。

たくさんの戸籍謄本や相続放棄申述受理通知書をPDFにするのは、手間と時間がかかります。

相続関係説明図を作成した場合、相続関係説明図をPDFにして提出することができます。

相続関係説明図1通をPDFにするだけで、登記原因証明情報を提出したと扱われます。

相続関係説明図は、登記原因証明情報として役立ちます。

②原本還付で役立つ

相続登記では、たくさんの戸籍謄本を提出します。

相続登記以外でも、たくさんの相続手続をすることになるでしょう。

各相続手続先で、たくさんの戸籍謄本や相続放棄申述受理通知書を提出することになります。

各相続手続先のために戸籍謄本や相続放棄申述受理通知書を取得すると、取得費用と手間が無視できなくなるでしょう。

相続登記で提出した戸籍謄本や相続放棄申述受理通知書等は、希望すれば原本還付してもらえます。

原本還付を希望する場合、原本還付してもらいたい書類をコピーして提出します。

コピーに、「原本に相違ありません」と記載して、申請人が記名押印をします。

たくさんの戸籍謄本をコピーするのは、手間と時間がかかります。

相続関係説明図を提出した場合、戸籍謄本のコピーを提出したと扱われます。

相続関係説明図を提出して、たくさんの戸籍謄本の原本還付を受けることができます。

相続関係説明図を提出しても、戸籍謄本以外の書類はコピーが必要です。

具体的には、次の書類はコピーを提出して、原本還付を受けることができます。

・住民票や戸籍の附票

・遺産分割協議書

・印鑑証明書

・外国発行の戸籍謄本

・相続放棄申述受理通知書

相続関係説明図は、原本還付で役立ちます。

③相続関係説明図は公的書類ではない

相続関係説明図は、相続関係を説明するための資料です。

相続関係が一目で理解できるから、相続関係説明図はとても便利です。

相続関係説明図を提出しても、戸籍謄本一式や相続放棄申述受理通知書は提出する必要があります。

相続関係説明図は、公的書類ではないからです。

相続手続すべてで、戸籍謄本一式や相続放棄申述受理通知書を提出します。

5相続関係説明図を作成するポイント

ポイント①戸籍謄本や住民票の記載どおりに正確に記載

相続関係説明図に記載する氏名や住所は、正確に記載する必要があります。

戸籍謄本や住民票の記載どおりに、正確に記載します。

「丁目」「番地」「号」などの記載を省略して、「-」「の」「ノ」に変換することはおすすめできません。

旧字の記載を新字に変換せず、そのまま記載します。

ポイント1つ目は、戸籍謄本や住民票の記載どおりに正確に記載することです。

ポイント②相続人全員もれなく記載

相続人を適切に把握しないと、相続手続が進められなくなります。

相続関係説明図に、相続人全員もれなく記載することが重要です。

特に、次の人は、要注意です。

・認知された子ども

・養子

・養子に出した実子

ポイント2つ目は、相続人全員もれなく記載です。

ポイント③死亡日を明記

被相続人の子どもは、相続人になります。

相続人になるはずだったのに子どもが先に死亡した場合、代襲相続が発生します。

相続人だったのに相続手続中に子どもが死亡した場合、数次相続が発生します。

代襲相続は、子どもが先に死亡したケースです。

数次相続は、子どもが後に死亡したケースです。

代襲相続と数次相続で、相続人になる人が異なります。

相続関係を把握しやすくするため、死亡日を明記します。

ポイント3つ目は、死亡日を明記です。

ポイント④家系図形式で相続関係を明示

配偶者は、二重線で結びます。

その他の関係は、一本線で結びます。

家系図形式で分かりやすく、相続関係を明示します。

ポイント4つ目は、家系図形式で相続関係を明示です。

ポイント⑤司法書士などの専門家に相談

相続関係が複雑な場合、司法書士などの専門家のサポートが必要です。

相続関係説明図の作成を含めて、サポートを受けることができます。

ポイント5つ目は、司法書士などの専門家に相談です。

6相続関係説明図作成を司法書士に依頼するメリットとデメリット

メリット①正確な相続関係説明図が作成できる

司法書士は、相続手続に精通しています。

戸籍謄本を適切に読解して、相続人の把握をします。

司法書士に依頼すると、正確な相続関係説明図が作成できます。

メリット1つ目は、正確な相続関係説明図が作成できることです。

メリット②複雑な相続に対応

養子縁組、数次相続、代襲相続、相続放棄などがあると、相続が複雑になります。

複雑な家族関係があっても、司法書士は的確に対応します。

メリット2つ目は、複雑な相続に対応してもらえることです。

メリット③必要書類収集をおまかせ

相続関係説明図作成には、たくさんの書類を準備する必要があります。

司法書士に依頼すると、必要書類収集をおまかせすることができます。

相続人が自分で市区町村役場を回る手間や時間を削減することができます。

メリット3つ目は、必要書類収集をおまかせできることです。

デメリット①費用がかかる

司法書士に依頼すると、司法書士費用がかかります。

内容が複雑な場合、費用がかさむ傾向があります。

デメリット1つ目は、費用がかかることです。

デメリット②打合せの時間がかかる

書類のやり取りや打合せが必要になることがあります。

デメリット2つ目は、打合せの時間がかかることです。

相続放棄の期限3か月を知らなかった

2025-06-04

1知らなくても相続放棄の期限3か月経過で単純承認

①相続放棄に3か月の期間制限がある

相続が発生したら、相続人は相続を単純承認するか相続放棄するか選択することができます。

相続放棄を希望する場合、家庭裁判所に相続放棄の申立てをします。

相続放棄には、3か月の期限があります。

3か月の期限内に、家庭裁判所に対して相続放棄の申立てをします。

②相続放棄の期限3か月のスタートは知ってから

相続放棄の申立ての期限は、原則として、相続があったことを知ってから3か月以内です。

相続があったことを知ってから3か月以内の期間のことを熟慮期間と言います。

「相続があったことを知ってから」とは、被相続人が死亡して相続が発生し、その人が相続人であることを知って、かつ、相続財産を相続することを知ってから、と考えられています。

相続放棄の期限3か月のスタートは、相続があったことを知ってからです。

③法律を知らなかったは理由にできない

相続放棄の申立ての期限は、原則として、相続があったことを知ってから3か月以内です。

相続放棄の期限が3か月であることは、法律で決まっています。

相続放棄の期限3か月を知らなくても、3か月経過で相続放棄ができなくなります。

「相続放棄の期限3か月を知らなかったから」は、理由にできません。

④疎遠になっても3か月経過で単純承認

さまざまな家族の事情から、被相続人や被相続人の家族と疎遠になることがあります。

相続人になる人は、法律で決められています。

法律で決められた相続人は、疎遠になっても相続人です。

長期間会っていないとか葬式にも来なかったなどの事情は、無関係です。

熟慮期間は、たったの3か月です。

熟慮期間中に何もしなければ、単純承認になります。

相続放棄の期限3か月を知らなくても、3か月経過で相続放棄ができなくなります。

④念書で相続放棄はできない

相続放棄を希望する場合、家庭裁判所に対して手続をします。

家庭裁判所に手続をしないのに、相続放棄をすることはできません。

被相続人が相続人に対して「相続放棄をします」と約束させるケースがあります。

「相続放棄をします」と念書を書いても、相続放棄はできません。

相続人間で「相続放棄をします」と約束するケースがあります。

「相続放棄をします」と他の相続人に申入書を差し入れても、相続放棄はできません。

相続放棄は、家庭裁判所の手続だからです。

家庭裁判所に対して手続しないまま3か月経過したら、単純承認になります。

相続放棄の期限3か月を知らなくても、3か月経過で相続放棄ができなくなります。

⑤相続放棄の期限3か月を延長

相続を単純承認するか相続放棄するか選択するには、被相続人の財産調査が必要になることが多いでしょう。

被相続人の財産状況によっては、調査に時間がかかります。

相続放棄の期限3か月以内に、判断ができないかもしれません。

相続放棄の熟慮期間は、家庭裁判所の判断で延長してもらうことができます。

申立てをしても、延長が認められない可能性があります。

家庭裁判所は、客観的証拠で判断するからです。

単に考えている、単に迷っているなど、漠然とした理由で熟慮期間の延長は認められません。

客観的に熟慮期間延長が必要になると認められれば、相続放棄の期限3か月を延長してもらうことができます。

2期限3か月を過ぎても認められる理由

①被相続人の死亡を知らなかったから相続放棄

相続人調査をすると、家族の知らない相続人が判明することがあります。

家族が知らない相続人に対して、相続発生直後に連絡がされることはないでしょう。

長期間経過してから、自分が相続人であったことを知ることがあります。

相続放棄は、自己のために相続があったことを知ってから3か月以内に手続する必要があります。

期限3か月のスタートは、相続があったことを知ってからです。

相続があったことを知らなかった場合、3か月がスタートしません。

生前に被相続人や被相続人の家族と交流がない場合、被相続人の死亡を知らないのは自然です。

家庭裁判所が知りたいポイントは、被相続人の死亡を知らなかった点です。

上申書に、次の点を書くといいでしょう。

・生前に被相続人や被相続人の家族と交流がない

・葬式の連絡がなかった、参列していない

・被相続人の死亡を知ったきっかけ

手紙などを受け取ったことで死亡を知った場合、手紙や封筒は重要です。

被相続人の死亡を知ったきっかけを裏付ける証拠になるからです。

被相続人の死亡を知らないのは当然だと、家庭裁判所に納得してもらうのが重要です。

相続があったことを知ってから3か月以内であれば、相続放棄が認められます。

②先順位相続人の相続放棄を知らなかったから相続放棄

相続が発生したら、親族のうち一定の範囲の人が相続人になります。

だれが相続人になるか、民法で決められています。

被相続人に子どもがいる場合、子どもが相続人になります。

子どもが相続人になる場合、親などの直系尊属や兄弟姉妹は相続人になりません。

子どもは相続人だから、相続放棄をすることができます。

親などの直系尊属や兄弟姉妹は相続人でないから、相続放棄をすることはできません。

子どもが相続放棄をした場合、はじめから相続人でなくなります。

子ども全員が相続放棄をした場合、被相続人に子どもがいない場合になります。

被相続人に子どもがいない場合、親などの直系尊属が相続人になります。

家庭裁判所は相続放棄を認めた場合、相続放棄申述受理通知書を送付します。

相続放棄申述受理通知書は、相続放棄の申立てをした人にだけ送られます。

家庭裁判所は、自主的に次順位相続人に通知することはありません。

相続放棄が認められた人は、次順位相続人に通知する義務はありません。

次順位相続人と疎遠である場合、通知することはほとんどないでしょう。

親などの直系尊属が相続人になったのに、長期間知らないままになることがあります。

家庭裁判所が知りたいポイントは、先順位相続人の相続放棄を知らなかった点です。

上申書に、次の点を書くといいでしょう。

・相続人間の交流がない

・相続人であることを知ったきっかけ

手紙などを受け取ったことで相続人であることを知った場合、手紙や封筒は重要です。

相続人であることを知ったきっかけを裏付ける証拠になるからです。

先順位相続人の相続放棄を知らなかったのは当然だと、家庭裁判所に納得してもらうのが重要です。

相続放棄は、自己のために相続があったことを知ってから3か月以内に手続する必要があります。

期限3か月のスタートは、相続人になったことを知ってからです。

相続人になったことを知らなかった場合、3か月がスタートしません。

相続人になったことを知ってから3か月以内であれば、相続放棄が認められます。

③借金があることを知らなかったから相続放棄

被相続人は、さまざまな財産を保有しているでしょう。

財産には、プラスの財産とマイナスの財産があります。

プラスの財産とマイナスの財産の両方が相続財産になります。

マイナスの財産には、ローンや借金だけではありません。

例えば、第三者が借金をするときに、被相続人が連帯保証人になっていることがあります。

連帯保証人の地位は、相続されます。

連帯保証人とは、借金をした人がお金を返せなくなったときに肩代わりをする人のことです。

お金を借りた人が返済している間は、何も連絡がないのが通常です。

被相続人が死亡してから何年も経過した後に、お金が返せなくなることがあります。

債権者から、肩代わりをしてくださいと書類が届きます。

連帯保証人は、お金を返せなくなったときに肩代わりをする人だからです。

肩代わりの義務は、相続人に相続されます。

債権者から書類が届いたことで、マイナスの財産の存在を知ることになります。

家庭裁判所が知りたいポイントは、借金があることを知らなかった点です。

上申書に、次の点を書くといいでしょう。

・相続財産状況を調べても、分からなかったこと

・被相続人の債務を知ったきっかけ

督促状などを受け取ったことで債務を知った場合、手紙や封筒は重要です。

被相続人の債務があることを知ったきっかけを裏付ける証拠になるからです。

借金があることを知らなかったのは当然だと、家庭裁判所に納得してもらうのが重要です。

相続放棄は、自己のために相続があったことを知ってから3か月以内に手続する必要があります。

期限3か月のスタートは、マイナスの財産の存在を知ってからです。

マイナスの財産の存在を知らなかった場合、3か月がスタートしません。

マイナスの財産の存在を知ってから3か月以内であれば、相続放棄が認められます。

④相続放棄の期限3か月を過ぎたときは上申書

相続放棄の期限3か月のスタートは、相続があったことを知ってからです。

相続があったことを知らなければ、相続放棄の期限3か月がスタートしません。

相続が発生してから3か月以上経過して相続放棄の申立てをした場合、家庭裁判所は期限後の提出と誤解するでしょう。

期限3か月を過ぎても認められる理由があることを積極的にアピールする必要があります。

相続放棄の申立てをする際に、上申書を一緒に提出します。

家庭裁判所は、提出された書類を見て審査します。

期限3か月を過ぎても認められる理由があるか、自主的に調査をしません。

家庭裁判所が知りたいポイントを押さえて、適切にアピールすることが重要です。

期限3か月を過ぎても認めてもらうためには、上申書が有効です。

3相続放棄の手続の流れ

手順①相続財産調査

相続を単純承認するか相続放棄をするか判断するため、相続財産調査をします。

どのような財産状況でも相続放棄をする場合、相続財産調査は不要です。

手順1つ目は、相続財産調査です。

手順②必要書類の準備

相続放棄の申立ての必要書類は、次のとおりです。

(1)被相続人の戸籍謄本

(2)被相続人の住民票または戸籍の附票

(3)相続放棄する人の戸籍謄本(3か月以内のもの)

(4)収入印紙800円分

(5)裁判所が手続で使う郵便切手

裁判所が手続で使う郵便切手は、裁判所ごとに金額や枚数が決められています。

必要であれば、上申書を準備します。

期限3か月を過ぎても認められる理由があることを適切にアピールしないと、相続放棄できないからです。

書類が揃わなくても、後から追加で提出することができます。

手順2つ目は、必要書類の準備です。

手順③相続放棄申述書の作成

相続放棄申述書に、必要事項を記載します。

相続放棄申述書は、相続放棄をする人の押印が必要です。

押印は、認印で差し支えありません。

手順3つは、相続放棄申述書の作成です。

手順④家庭裁判所へ提出

相続放棄申述書の提出先は、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です。

家庭裁判所の管轄は、裁判所のホームページで確認することができます。

家庭裁判所へ出向いて提出する場合、受付時間に制限があることがあります。

相続放棄申述書は、郵送で提出することができます。

普通郵便でも提出できますが、記録が残る郵便が安心です。

手順4つ目は、家庭裁判所へ提出です。

手順⑤相続放棄照会書に回答

相続放棄の申立てをすると、2週間ほどで家庭裁判所から相続放棄照会書が届きます。

相続放棄照会書とは、家庭裁判所から届く相続放棄についての意思確認です。

相続放棄は影響の大きい手続なので、間違いがないように慎重に確認します。

正直に回答して、返送します。

手順5つ目は、相続放棄照会書に回答です。

手順⑥相続放棄申述受理通知書の受領

回答に問題がなければ、家庭裁判所から審査結果が通知されます。

相続放棄申述受理通知書とは、相続放棄が認められた通知書です。

通常は照会から1~2週間程度申立てから1か月程度で、相続放棄申述受理通知書が届きます。

相続放棄申述受理通知書が届かない場合、家庭裁判所に問合わせるといいでしょう。

手順6つ目は、相続放棄申述受理通知書の受領です。

手順⑦他の相続人に通知

相続放棄の審査結果は、申立てをした人だけに通知します。

他の相続人に対して、積極的に通知しません。

相続放棄をしても他の相続人に通知する義務はありませんが、通知してあげると親切でしょう。

手順7つ目は、他の相続人に通知です。

4相続放棄を司法書士に依頼するメリット

相続放棄は、その相続でチャンスは1回限りです。

家庭裁判所に認められない場合、即時抗告という手続を取ることはできます。

高等裁判所の手続で、2週間以内に申立てが必要になります。

家庭裁判所で認めてもらえなかった場合、即時抗告で相続放棄を認めてもらえるのは、ごく例外的な場合に限られます。

一挙にハードルが上がると言ってよいでしょう。

相続が発生してから3か月以内に申立てができなかったのは止むを得なかったと家庭裁判所に納得してもらって、はじめて、家庭裁判所は相続放棄を認めてくれます。

通常は家庭裁判所に対して上申書や事情説明書という書類を添えて、説得することになります。

家庭裁判所が知りたいことを無視した作文では、認めてもらうことは難しいでしょう。

司法書士であれば、家庭裁判所に認めてもらえるポイントを承知しています。

認めてもらえやすい書類を作成することができます。

3か月の期限が差し迫っている方や期限が過ぎてしまっている方は、すみやかに司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。

第三者が相続放棄を確認する方法

2025-05-26

1第三者が相続放棄を確認できる

①家庭裁判所は通知しない

相続が発生したら、相続人は相続を単純承認するか相続放棄するか選択することができます。

相続放棄を希望する場合、家庭裁判所に対して相続放棄の申立てをします。

相続放棄が認められたら、家庭裁判所は申立てをした人にだけ通知します。

家庭裁判所は、自主的に債権者に対して通知しません。

家庭裁判所は、積極的に次順位相続人に対して通知しません。

②相続放棄の確認が必要になるケース

ケース(1)相続人間で協力が得られないケース

家庭裁判所で相続放棄が認められたら、はじめから相続人でなくなります。

被相続人の子どもが相続放棄をしたら、相続人でなくなります。

子ども全員が相続放棄をしたら、子どもがいない場合になります。

被相続人に子どもがいない場合、親などの直系尊属が相続人になります。

相続放棄が認められても、家庭裁判所は次順位相続人に対して通知しません。

家庭裁判所で相続放棄が認められても、次順位相続人に通知する義務はありません。

相続人間で協力が得られない場合、先順位の人が相続放棄したのか確認する必要があります。

ケース1つ目は、相続人間で協力が得られないケースです。

ケース(2)債権者が借金の請求をするケース

被相続人が借金を抱えたまま、死亡することがあります。

被相続人の借金は、相続財産です。

相続財産だから、相続人が借金を引き継ぎます。

借金を引き継ぎたくない場合、相続放棄をするでしょう。

相続放棄が認められても、家庭裁判所は債権者に対して通知しません。

家庭裁判所で相続放棄が認められても、債権者に通知する義務はありません。

相続債権者が借金の請求をする場合、相続放棄したのか確認する必要があります。

ケース2つ目は、相続債権者が借金の請求をするケースです。

ケース(3)債権者から通知が届いたケース

被相続人が借金を抱えたまま、死亡することがあります。

被相続人に子どもがいる場合、子どもが相続人になります。

次順位相続人は、相続に関係ないものと安心しているでしょう。

被相続人に子どもがいるのに、借金の返済を求める通知が届くことがあります。

相続放棄が認められても、家庭裁判所は次順位相続人に対して通知しません。

家庭裁判所で相続放棄が認められても、次順位相続人に通知する義務はありません。

債権者から通知が届いた場合、先順位の人が相続放棄したのか確認する必要があります。

ケース3つ目は、債権者から通知が届いたケースです。

ケース(4)他の相続人が相続手続をするケース

相続が発生したら、相続人は相続手続をします。

不動産があれば、法務局で名義変更をします。

預貯金があれば、金融機関で口座凍結解除をします。

相続手続では、相続人全員の協力が必要です。

相続放棄をした人は、相続手続に協力する必要はありません。

相続放棄をした人は、はじめから相続人でなくなるからです。

相続放棄が認められても、家庭裁判所は法務局や金融機関に対して通知しません。

家庭裁判所で相続放棄が認められても、法務局や金融機関に通知する義務はありません。

他の相続人が相続手続をする場合、相続放棄したのか確認する必要があります。

ケース4つ目は、他の相続人が相続手続をするケースです。

ケース(5)相続財産清算人が相続財産を国庫に帰属するケース

法律で決められた相続人がまったく存在しない場合、相続財産は国庫に帰属します。

相続財産清算人とは、相続財産を清算して国庫に帰属する人です。

相続人が存在しないか確実に確認して、国庫に帰属します。

相続財産清算人が相続財産を国庫に帰属する場合、相続放棄したのか確認する必要があります。

ケース5つ目は、相続財産清算人が相続財産を国庫に帰属するケースです。

③相続放棄の確認ができる第三者

相続放棄をした本人は、相続放棄の確認をすることができます。

相続放棄が認められた後、他の相続人の相続放棄の有無を確認することはできません。

相続放棄が認められると、はじめから相続人でなくなるからです。

相続放棄の確認ができる第三者は、法律上の利害関係がある人です。

具体的には、次の人です。

・共同相続人

・後順位相続人

・被相続人の債権者

・相続財産清算人

相続放棄の確認をするためには、法律上の利害関係があることを疎明する必要があります。

疎明とは、家庭裁判所に分かってもらうことです。

2第三者が相続放棄を確認する方法

①相続放棄の照会をするタイミング

相続放棄には、3か月の期限があります。

相続人は相続を単純承認するか相続放棄をするか判断するため、3か月の猶予があります。

相続が発生してから3か月経過していない場合、相続人が熟慮中であると考えられます。

相続発生後3か月経過後以降に、照会します。

②照会先

相続放棄の申述の有無の照会先は、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です。

被相続人の最後の住所地は、被相続人の住民票や戸籍の附票で確認することができます。

家庭裁判所の管轄は、裁判所のホームページで確認することができます。

③必要書類

(1)相続人が照会する場合

・被相続人の本籍地入り住民票または戸籍の附票

・照会者と被相続人の関係が分かる戸籍謄本(発行から3か月以内のもの)

・相続関係説明図

・照会者の本人確認書類

具体的には、運転免許証やマイナンバーカードなどのコピーです。

・返信用の封筒と切手

(2)利害関係人が照会する場合

・被相続人の本籍地入り住民票または戸籍の附票

・照会者の資格を確認する書類

個人の場合は、照会者の本人確認書類

具体的には、運転免許証やマイナンバーカードなどのコピーです。

法人の場合は、法人の登記簿謄本

・利害関係を証明する書類

具体的には、金銭消費貸借契約書、訴状、競売申立書、競売開始決定、債務名義等の各写し、担保権が記載された不動産登記簿謄本、その他債権の存在を証する書面などです。

・返信用の封筒と切手

必要書類は、家庭裁判所によって運用が異なります。

管轄の家庭裁判所に確認したうえで、照会するといいでしょう。

④郵送で照会できる

相続放棄の申述の有無の照会は、郵送で家庭裁判所に提出することができます。

⑤手数料

相続放棄の申述の有無の照会は、手数料は無料です。

⑥回答までにかかる期間

相続放棄の申述の有無の照会は、郵送で結果が通知されます。

回答までにかかる期間は、家庭裁判所によって異なります。

多くの場合、1週間~1か月程度で、通知されます。

⑦相続放棄申述受理証明書は別途申請

相続放棄の申述の有無の照会の回答書で、相続手続が進められないことが多いでしょう。

相続手続のため、相続放棄申述受理証明書を別途申請します。

相続放棄申述受理証明書を申請する場合、手数料150円が必要です。

⑧法律上の利害関係が必要になる理由

理由(1)プライバシーの保護

相続を単純承認するか相続放棄をするか、相続人の重大な意思決定です。

無関係な第三者が自由に照会できるとすると、プライバシーが侵害されます。

被相続人や相続人のプライバシーを侵害することは、許されません。

プライバシーを保護するため、法律上の利害関係が必要になります。

理由1つ目は、プライバシーの保護です。

理由(2)権利濫用の防止

相続を単純承認するか相続放棄をするか、相続人の財産権に直接大きな影響があります。

無関係な第三者が自由に照会できるとすると、相続人に対する嫌がらせを誘発する危険があります。

相続人に対する嫌がらせを防止するため、法律上の利害関係が必要になります。

理由2つ目は、権利濫用の防止です。

理由(3)家庭裁判所の事務の効率化

相続放棄は、家庭裁判所に対して手続します。

家庭裁判所に対して、相続放棄を確認することができます。

無関係な第三者が自由に照会できるとすると、家庭裁判所に事務負担が重くなります。

家庭裁判所の事務の効率化のため、法律上の利害関係が必要になります。

理由3つ目は、家庭裁判所の事務の効率化です。

理由(4)法的権利の正当な行使

相続放棄をすると、後順位相続人の相続権や債権者による債権回収など具体的な影響があります。

無関係な第三者が自由に照会しても、法的権利の正当な行使につながりません。

法的権利の正当な行使のため、法律上の利害関係が必要になります。

理由4つ目は、法的権利の正当な行使です。

3照会が認められないケース

ケース①照会できる資格がないケース

相続放棄の申述の有無の照会は、だれでも自由に照会できるわけではありません。

単なる知人など無関係な人は、照会が認められません。

認められないケース1つ目は、照会できる資格がないケースです。

ケース②必要書類が不足不備のケース

相続放棄の申述の有無の照会には、たくさんの書類が必要になります。

必要書類が不足すると、相続放棄の申述の有無の照会が認められません。

利害関係人が照会する場合、法律上の利害関係があることを家庭裁判所に分かってもらう必要があります。

例えば、金銭消費貸借契約書を提出する場合、金銭消費貸借契約書の借主の住所氏名が被相続人の住所氏名と異なることがあります。

家庭裁判所は別人と判断して、利害関係を認めないでしょう。

利害関係を認めてもらうため、住所氏名の移り変わりが分かる戸籍謄本や戸籍の附票を提出します。

法律上の利害関係があると分かってもらえないと、照会が認められません。

認められないケース2つ目は、必要書類が不足不備のケースです。

4相続放棄を確認するときの注意点

注意①調査対象期間は家庭裁判所によって異なる

相続放棄の有無の照会で確認できる期間は、家庭裁判所によって異なります。

10年以上過去の相続放棄である場合、家庭裁判所によっては確認できないかもしれません。

10年以上過去の相続では、調査対象期間が次のとおり限定されています。

・第1順位の相続人 死亡日から3か月以内

・後順位の相続人 先順位の相続人の相続放棄から3か月以内

相続放棄から30年以上経過すると、どこの家庭裁判所であっても確認できません。

相続放棄の書類は、永年保管ではないからです。

注意点1つ目は、調査対象期間は家庭裁判所によって異なることです。

注意②確認できるのは相続人目録に記載した人だけ

相続放棄の有無の照会の2枚目は、相続人目録です。

家庭裁判所に相続放棄の有無を確認したい対象者を記載します。

相続人目録に記載していない場合、家庭裁判所は調査をしません。

先順位の相続人が相続放棄をしたか確認したい場合、先順位の相続人全員の氏名を記載します。

注意点2つ目は、確認できるのは相続人目録に記載した人だけです。

注意③却下されても再照会ができる

法律上の利害関係があると分かってもらえないと、相続放棄の有無の照会が認められません。

法律上の利害関係があるのに適切な書類を提出できないと、家庭裁判所に分かってもらえません。

書類の不足が理由で照会が却下された場合、不足を補って再度照会することができます。

却下された理由がよく分からない場合、司法書士などの専門家に相談することが有効です。

注意点3つ目は、却下されても再照会ができることです。

5相続放棄を司法書士に依頼するメリット

相続放棄は、家庭裁判所に対して手続する必要があります。

家庭裁判所で相続放棄が認められた場合、プラスの財産もマイナスの財産も引き継ぐことがなくなります。

相続放棄をすると、初めから相続人でなくなるからです。

家庭裁判所で相続放棄が認められた場合、相続に関する手続には関与しなくて済むと安心してしまいがちです。

家庭裁判所で相続放棄が認められた場合であっても、相続財産を処分した場合、相続放棄が無効になります。

相続放棄は簡単そうに見えて、実はいろいろなことを考慮しなければならない手続です。

相続放棄を考えている方は、司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。

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