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1認知症の人でも相続放棄ができる
①認知症の人は自分で相続放棄ができない
相続が発生したら、相続人は相続を単純承認するか相続放棄をするか選択することができます。
相続放棄を希望する場合、家庭裁判所に対して相続放棄の申立てをします。
相続放棄をするためには、相続放棄を理解する判断能力が必要です。
認知症の人は、物事のメリットデメリットを適切に判断できません。
自分で判断できないから、自分で手続できません。
②認知症の相続人の代わりに成年後見人や特別代理人が判断する
認知症の人が相続放棄をする場合、代わりに判断する人が必要です。
代わりに判断する人は、成年後見人や特別代理人です。
成年後見人や特別代理人が判断して、相続放棄の手続をします。
③家族が勝手に相続放棄はできない
自分で判断できないのなら、子どもなどの家族が代わりに判断すればいいと考えるかもしれません。
相続人が認知症であっても、家族が勝手に相続放棄をすることはできません。
親などの親権者が幼い子どもの代理ができるのは、未成年者だからです。
認知症の人は未成年ではないから、家族が代わりに相続放棄をすることはできません。
④相続放棄の期限3か月は知ってから
相続放棄には、期限があります。
相続があったことを知ってから、3か月です。
判断能力を喪失した相続人が知っても、相続放棄をすべきか判断できません。
相続放棄をすべきか判断できないから、3か月はスタートしません。
認知症の相続人の家族が知っても、勝手に相続放棄をすることはできません。
勝手に相続放棄をすることはできないから、3か月はスタートしません。
相続人の判断能力が低下している場合、起算点が問題になることがあります。
成年後見人や特別代理人が知ってから、3か月はスタートします。
⑤利害関係人は相続放棄の期間伸長の申立てができる
相続放棄の期限3か月は、家庭裁判所の判断で延長してもらうことができます。
相続放棄の期間伸長の申立てとは、相続放棄の期限3か月を伸ばしてもらう手続です。
相続人以外の家族であっても、相続放棄の期間伸長の申立てをすることができます。
家庭裁判所の判断で認められれば、期限をさらに3か月程度延長してもらうことができます。
2成年後見人が判断して認知症の人が相続放棄をする
①成年後見人は認知症の人をサポートする人
認知症の人は、自分で物事のメリットデメリットを適切に判断することができません。
物事を適切に判断できないのに法律行為を行っても、無効です。
有効に法律行為を行うため、成年後見人がサポートします。
成年後見人とは、認知症の人などをサポートするため家庭裁判所に選任された人です。
認知症の人の代わりに、メリットデメリットを判断します。
成年後見人が本人の代わりに手続をします。
成年後見人は、本人の利益のために代理する義務が課されています。
②家庭裁判所に成年後見開始の申立て
(1)申立先
申立先は、本人の住所地を管轄する家庭裁判所です。
家庭裁判所の管轄は、裁判所のホームページで調べることができます。
(2) 申立人
申立人になれるのは、主に次の人です。
・本人
・配偶者
・4親等内の親族
(3) 申立てに必要な書類
成年後見開始の申立書に添付する書類は、次のとおりです。
・本人の戸籍謄本
・本人の住民票または戸籍の附票
・成年後見人候補者の住民票または戸籍の附票
・本人の診断書
・本人情報シート
・本人の健康状態に関する資料
・本人の登記がされていないことの証明書
・本人の財産に関する資料
・本人の収支に関する資料
(4)成年後見人になれる人なれない人
成年後見人になれる人に、特別な条件はありません。
成年後見開始の申立てをする際に、成年後見人の候補者を立てることができます。
成年後見人の候補者を立てても、家庭裁判所は自由に選任します。
家庭裁判所の人選に対して、異議を述べることはできません。
次の人は、成年後見人になれません。
・未成年者
・後見人を解任されたことのある人
・破産者で復権していない人
・本人に訴訟をした人と訴訟をした人の配偶者、直系血族
・行方不明の人
上記にあてはまらなくても、家庭裁判所は総合的に判断して選任しないことがあります。
(5)申立てに必要な費用
・手数料800円
申立書に収入印紙を貼り付けて、納入します。
・登記手数料2600円
収入印紙で納入します。
・連絡用郵便切手
裁判所が事務のために使う郵便切手です。
・鑑定費用5~10万円
成年後見開始の審判をするにあたって、本人の状況を鑑定することがあります。
裁判所が鑑定を必要とすると判断された場合、鑑定の費用を納入します。
(6)選任までにかかる期間
成年後見開始の申立てから選任されるまで、およそ2~3か月程度かかります。
③成年後見開始の申立ての流れ
手順(1)申立人の決定
成年後見開始の申立てができる人は、法律で決められています。
だれが申立人になるのか、意見調整をします。
手順(2)必要書類の準備
成年後見開始の申立てには、たくさんの書類が必要になります。
医師の診断書など、作成に時間がかかる書類は早めに依頼します。
手順(3)受理面接の予約
必要書類の準備に目処がついたら、受理面接の予約を取ります。
家庭裁判所の混雑状況によっては、相当先まで予約が埋まっています。
手順(4)申立書を提出
申立書と必要書類を取りまとめて、管轄の裁判所に提出します。
窓口まで出向いて提出することもできるし、郵送で提出することもできます。
窓口に出向く場合は、受付時間に注意しましょう。
手順(5)受理面接
成年後見開始の申立てを受付けたら、家庭裁判所は書類を審査します。
同時に裁判所調査官による面談があります。
手順(6)医師による鑑定
本人の判断能力の有無や程度を判断するため、必要に応じて鑑定を命じることがあります。
鑑定費用は、申立人が負担します。
手順(7)成年後見人選任の審判
家庭裁判所が成年後見人選任の審判をします。
申立人へ審判書が送達されます。
成年後見人選任の審判が確定したら、家庭裁判所から後見登記が嘱託されます。
手順(8)成年後見人によるサポート開始
成年後見人に、代理権が発生します。
成年後見人は、定期的に家庭裁判所に報告する義務が発生します。
3利益相反になると特別代理人が必要
①利益相反で成年後見人は代理できない
成年後見人になれる人に、特別な条件はありません。
家庭裁判所に適任であると認められれば、家族が成年後見人に選任されることがあります。
家族が成年後見人に選任される場合、本人の子どもなど近い関係の家族でしょう。
認知症の人と成年後見人が同時に相続人になる相続が発生することがあります。
認知症の人と成年後見人が同時に相続人になる場合、成年後見人は認知症の人を代理することができません。
認知症の人と成年後見人が利益相反になるからです。
利益相反とは、一方がトクすると他方がソンする関係です。
例えば、認知症の人が相続放棄をすると、相続財産は一切引き継ぐことができません。
相続人である相続人は、相続財産を独り占めすることができます。
認知症の人の利益を犠牲にして成年後見人が利益を得ることは、許されません。
利益相反になるか、客観的に判断されます。
成年後見人が利益を得ようとしていないと主張しても、意味はありません。
成年後見人の主観的な判断で利益相反になるか、決められるものではないからです。
利益相反にあたる行為は、成年後見人が代理することができません。
②成年後見監督人が代理
成年後見監督人とは、成年後見人を監督する人です。
認知症の人の利益を保護するため、家庭裁判所の判断で選任されます。
認知症の人と成年後見人が利益相反になる場合、成年後見人は認知症の人を代理することができません。
成年後見人に代わって、成年後見監督人が代理します。
③成年後見監督人がいないと特別代理人が代理
任意後見では、任意後見人監督人が必ず選任されています。
法定後見では、家庭裁判所の判断で成年後見監督人が選任されていることがあります。
法定後見では、成年後見監督人が選任されていないことがあります。
成年後見監督人が選任されていない場合、特別代理人が認知症の人の代理をします。
特別代理人は、家庭裁判所に選任してもらいます。
④家庭裁判所に特別代理人選任の申立て
(1)申立先
認知症の相続人の住所地を管轄する家庭裁判所に、申立てをします。
家庭裁判所の管轄は、裁判所のホームページで確認することができます。
(2)申立てができる人
成年後見人が申立てをします。
(3)特別代理人の候補者を立てることができる
特別代理人選任の申立てで、特別代理人の候補者を立てることができます。
特別代理人候補者は、次の人がおすすめです。
・利害関係がない親族
・司法書士などの専門家
特別代理人候補者は、次の人はおすすめできません。
・利害関係人
・過去にトラブルがあった人
特別代理人の候補者を立てても、家庭裁判所は自由に選任します。
特別代理人になる人は、相続人に利害関係がない人が選任されます。
(4)必要書類
特別代理人選任の申立書に添付する必要書類は、次のとおりです。
・認知症の人の戸籍謄本
・成年後見登記事項証明書
・相続関係説明図
・特別代理人の候補者の住民票または戸籍の附票
・利益相反の具体的説明書
(5)申立て費用
認知症の人1人につき、800円です。
申立て費用は、収入印紙を申立書に貼り付けて納入します。
申立て費用とは別に、予納郵券を納入します。
予納郵券とは、裁判所が手続に使う郵便切手です。
(6)審理期間
特別代理人選任の申立てから選任がされるまで、およそ1~2か月程度かかります。
⑤特別代理人選任の申立ての流れ
手順(1)必要書類の準備
特別代理人選任の申立てには 、たくさんの書類が必要になります。
手順(2)申立書を提出
申立書と必要書類を取りまとめて、管轄の裁判所に提出します。
窓口まで出向いて提出することもできるし、郵送で提出することもできます。
窓口に出向く場合は、受付時間に注意しましょう。
手順(3)特別代理人選任の審判
家庭裁判所が特別代理人選任の審判をします。
申立人へ審判書が送達されます。
⑥相続放棄後に特別代理人の任務終了
特別代理人が選任されたら、認知症の相続人を代理して相続放棄をすることができます。
相続放棄が認められた後、特別代理人の任務は終了します。
特別代理人は、特定の法律行為の代理人だからです。
特別代理人の任務終了で、報告義務は通常ありません。
家庭裁判所によっては、任務終了報告を求めることがあります。
4認知症の人が相続放棄をするときの注意点
注意①相続放棄の期限3か月のスタートは知ってから
(1)利益相反になる成年後見人が知っても3か月はスタートしない
成年後見人が認知症の相続人を代理できる場合、成年後見人が知った時点で3か月がスタートします。
成年後見人と認知症の相続人が利益相反になる場合、成年後見人は認知症の相続人を代理できません。
成年後見人が認知症の相続人を代理できない場合、成年後見人が知った時点で3か月がスタートしません。
(2)特別代理人が知ってから3か月がスタートする
特別代理人が相続があったことを知った時点で、相続放棄の期限3か月がスタートします。
特別代理人は家庭裁判所に選任されてから、認知症の相続人を代理することができます。
特別代理人として、利害関係がない親族が選任されることがあります。
親族であれば、相続があったことを知っていることが多いでしょう。
親族として相続があったことを知っていても、相続放棄の期限3か月がスタートしません。
特別代理人に選任されていないと、認知症の相続人を代理できないからです。
注意②相続放棄の期限は伸長してもらえる
相続財産が複雑である場合、3か月の熟慮期間内に調査が難しいことがあります。
3か月の熟慮期間を経過してしまいそうな場合、家庭裁判所に相続の期間の伸長の申立てができます。
家庭裁判所の審査によって、さらに3か月伸長されます。
注意③本人に不利益な相続放棄はできない
成年後見人も特別代理人も、認知症の人の利益を保護するために選任されます。
たとえ家族が望んでも本人の不利益になる場合、相続放棄をすることは許されません。
認知症の相続人の利益を犠牲にして、家族が利益を得ることは許されないからです。
注意④相続放棄後も成年後見は継続
相続放棄が認められた後になっても、成年後見は終了しません。
成年後見人は、認知症の人をサポートする人だからです。
認知症の人は判断能力が低下しているから、サポートなしにすることはできません。
相続放棄のために成年後見人を選任してもらったとしても、成年後見は継続します。
原則として、認知症の人が死亡するまで、成年後見は終了しません。
成年後見をやめたいと家族が望んでも、成年後見は継続します。
成年後見は、家族の希望をかなえる制度ではないからです。
4認知症の相続人がいる相続を司法書士に依頼するメリット
相続手続を進めたいのに、認知症の相続人がいて困っている人はたくさんいます。
認知症の人がいると、お世話をしている家族は家を空けられません。
家庭裁判所に成年後見開始の申立てをするなど、法律の知識のない相続人にとって高いハードルとなります。
裁判所に提出する書類作成は、司法書士の専門分野です。
途方に暮れた相続人をサポートして相続手続を進めることができます。
自分たちでやってみて挫折した方や相続手続で不安がある方は、司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。

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