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死亡した相続人が相続する遺産分割協議書
1数次相続とは
①数次相続とは相続手続中に相続人が死亡して新たな相続が発生した状態
相続が発生したら、相続財産は相続人全員の共有財産になります。
共有財産になった相続財産は、相続人全員で話し合いによる分け方の合意が不可欠です。
相続財産の分け方について、話し合いがまとまる前に、相続人が死亡して新たな相続が発生することがあります。
最初の相続の手続中に相続人が死亡して、さらに相続が発生した状態を数次相続と言います。
数次相続は、どこまででも続きます。
どこまで続くかについて、法律上の制限はありません。
最初の相続を一次相続、相続人が死亡した相続を二次相続と言います。
二次相続の相続人が死亡すると、三次相続、さらに、四次相続、五次相続という場合もあります。
相続人が死亡して新たな相続が発生することを、まとめて、数次相続と言います。
②数次相続と代襲相続のちがい
数次相続も代襲相続も相続が複雑になる代表例です。
相続人になるはずだった人が被相続人より先に死亡したため、相続人になるはずだった人の子どもや子どもの子どもが相続することがあります。
これを代襲相続と言います。
数次相続は、相続が発生した「後」に、相続人が死亡した場合です。
代襲相続は、相続が発生する「前」に、相続人になるはずだった人が死亡した場合です。
数次相続では、死亡した相続人の相続人が最初の相続の遺産分割協議に参加します。
代襲相続では、死亡した相続人の直系卑属が最初の相続の遺産分割協議に参加します。
数次相続と代襲相続では、遺産分割協議に参加する人が異なります。
遺産分割協議に参加すべき人が参加していない場合、相続財産の分け方の合意は無効になります。
遺産分割協議に参加すべきでない人が参加している場合、相続財産の分け方の合意は無効になります。
だれが話し合いに参加すべきか間違えると、せっかく合意をしても合意が無効になります。
慎重に判断しましょう。
2遺産分割協議中に相続人が死亡したら
①死亡した相続人の相続人が遺産分割協議
相続が発生したら、相続財産は相続人全員の共有財産になります。
相続財産の分け方は、相続人全員の合意で決定します。
相続財産の分け方を決める話し合いを遺産分割協議と言います。
相続財産の分け方について、相続人全員の話し合い中に一部の相続人が死亡することがあります。
相続財産の分け方が決まらないうちに一部の相続人が死亡した場合、死亡した相続人の地位は死亡した相続人の相続人に相続されます。
死亡した相続人の相続人全員と他の相続人全員が合意して、相続財産の分け方を決定します。
②死亡した相続人が相続する遺産分割協議ができる
相続人全員の話し合い中に一部の相続人が死亡した場合、死亡した相続人の相続人が遺産分割協議に参加します。
死亡した相続人の相続人は、最初の相続の相続人であることも最初の相続の相続人でないこともあります。
死亡した相続人の相続人が最初の相続の相続人でない場合、直接、相続財産を相続することはできません。
相続財産を相続できるのは、直接の相続人のみだからです。
死亡した相続人の相続人に相続財産を受け取らせたい場合、死亡した相続人が相続する合意をします。
死亡した相続人の相続人全員と他の相続人全員が合意すれば、死亡した相続人が相続することができます。
③死亡した相続人が相続する遺産分割協議書の書き方
記載例
被相続人〇〇〇〇が平成〇〇年〇〇月〇〇日に死亡し、その相続人である□□□□が令和□□年□□月□□日に死亡した。
よって、被相続人〇〇〇〇の相続人●●●●、●●●●、□□□□の相続人■■■■、■■■■の相続人全員が下記のとおり遺産分割の協議をした。
被相続人の最後の本籍 〇〇県〇〇市〇〇町〇丁目〇番地
被相続人の最後の住所 〇〇県〇〇市〇〇町〇丁目〇番〇号
被相続人の氏名 〇〇 〇〇
被相続人の生年月日 昭和〇〇年〇〇月〇〇日
被相続人の死亡日 平成〇〇年〇〇月〇〇日
相続人兼被相続人の最後の本籍 □□県□□市□□町□丁目□番地
相続人兼被相続人の最後の住所 □□県□□市□□町□丁目□番□号
相続人兼被相続人のの氏名 □□ □□
相続人兼被相続人の生年月日 昭和□□年□□月□□日
相続人兼被相続人の死亡日 令和□□年□□月□□日
1. 相続財産中、次の不動産については、相続人亡□□□□が相続する。
(財産記載省略)
令和〇〇年〇〇月〇〇日
住所 〇〇県〇〇市〇〇町〇丁目〇番地
相続人 ●●●● 実印
住所 〇〇県〇〇市〇〇町〇丁目〇番地
相続人 ●●●● 実印
住所 □□県□□市□□町□丁目□番地
相続人亡□□□□の相続人■■■■ 実印
住所 □□県□□市□□町□丁目□番地
相続人亡□□□□の相続人■■■■ 実印
3死亡した相続人を被相続人とする遺産分割協議
①死亡した相続人の相続人が遺産分割協議
最初の相続で遺産分割協議が完了した場合、死亡した相続人を被相続人とする遺産分割協議をします。
最初の相続で死亡した相続人が相続する合意をした場合、死亡した相続人は相続する財産は死亡した相続人の相続財産です。
死亡した相続人の相続人が遺産分割協議で分け方を決めることができます。
死亡した相続人の相続人が最初の相続の相続人でない場合、直接、相続財産を相続することはできません。
最初の相続の遺産分割協議では、死亡した相続人の相続人に過ぎないからです。
最初の相続の遺産分割協議で死亡した相続人が相続する合意をした後であれば、死亡した相続人の遺産分割協議でだれが相続するか死亡した相続人の相続人で決めることができます。
直接相続財産を相続することはできないけど、死亡した相続人が相続した後なら相続することができます。
②遺産分割協議書は原則として被相続人ごとに作成
数次相続とは、相続手続中に相続人が死亡して新たな相続が発生した状態です。
最初の相続と次の相続で相続人がまったく同じである場合、まとめて遺産分割協議書を作るとラクです。
最初の相続と次の相続で相続人が異なる場合、遺産分割協議書は別々に作ると分かりやすいでしょう。
遺産分割協議に参加すべきでない人が参加している場合、相続財産の分け方の合意は無効になります。
2つの相続をまとめると、遺産分割協議に参加すべきでない人が参加しているように誤解されるおそれがあるからです。
あえて誤解を招く必要はありません。
誤解のない分かりやすい遺産分割協議書を作ることを優先しましょう。
4死亡した相続人が相続する相続登記
①死亡した人が登記名義人になる相続登記は非課税
被相続人が不動産を所有していた場合、相続登記が必要になります。
死亡した相続人の相続人全員と他の相続人全員が合意すれば、死亡した相続人が相続することができます。
死亡した相続人が相続する場合、死亡した相続人名義の相続登記をすることができます。
遺産分割協議の結果、死亡した相続人が生前不動産を所有していたことになるからです。
生前不動産を所有していたことを公示するため、相続登記をすることができます。
死亡した相続人名義の相続登記をする場合、相続登記は死亡した相続人の相続人が申請します。
死亡した相続人名義の相続登記は、登録免許税が非課税になります。
登記申請書には「租税特別措置法第84条の2の3第1項により非課税」と記載します。
記載しない場合、非課税となりません。
記載を忘れて、通常どおり登録免許税を納めた場合、登録免許税は還付されません。
②中間の相続人が単独ならまとめて相続登記ができる
原則として、登記は登記原因ごとに別々に申請します。
相続登記であれば、被相続人ごとに別々に登記申請をするのが原則です。
数次相続があった場合、条件を満たせばまとめて相続登記をすることができます。
まとめて相続登記をする場合、登記申請の手間と登録免許税の節約になります。
複数の相続をまとめて相続登記ができる条件は、中間の相続人が単独であることです。
中間の相続人が単独になる場合とは、はじめから相続人が一人であるケースだけではありません。
他の相続人全員が相続放棄をした場合、相続人が単独になるケースと言えます。
複数の相続人で遺産分割協議をして一人の相続人が相続する合意をした場合、相続人が単独になるケースに含めることができます。
遺産分割協議によって死亡した相続人一人が相続する合意をした場合、中間の相続人が単独になる場合にあたります。
中間の相続人が単独になる場合だから、最初の相続と次の相続をまとめて1つの登記申請で相続登記をすることができます。
5遺産分割協議書作成を司法書士に依頼するメリット
遺産分割協議書は遺産の分け方について、相続人全員による合意を取りまとめた文書です。
合意がきちんと文書になっているからこそトラブルが防止できるといえます。
相続人全員の合意ができた後は相続手続をすることになります。
相続人全員の合意が適切に文書になっていない場合、相続手続ができなくなります。
数次相続が発生している場合、相続が複雑になります。
死亡した相続人が相続する合意をしていても、文書に表れていなければ手続は進められなくなります。
書き方に不備があると、あらためて遺産分割協議書を作り直さなければなりません。
遺産分割協議書を作り直すことで、相続人が合意を撤回するかもしれません。
相続が複雑な場合、トラブルになりやすくなります。
トラブルを防止するため、遺産分割協議書を作成したい方は、司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。
相続分の譲渡をするときの注意点
1相続分の譲渡とは
2人以上相続人がいる場合や遺言書がない場合は、遺産の分け方について相続人全員で話し合いをする必要があります。
相続人全員による話し合いのことを遺産分割協議といいます。
相続財産の分け方は、相続人全員の合意で決める必要があります。
相続人の折り合いがよくない場合、相続人全員の話し合いは大きな負担になります。
相続人全員による合意がされる前であれば、相続人が自分の相続分を譲渡することができます。
相続分を譲渡する相手は、他の相続人のうちだれかでも構わないし、相続人以外の第三者でも構いません。
有償で譲渡することも無償で譲渡することもできます。
自分の相続分の全部を譲渡することができるし、自分の相続分の一部を譲渡することができます。
自分の相続分を譲渡することができるのは、相続人全員の合意をする前だけです。
相続分を譲渡すると、相続分を譲渡した相続人は相続権を失います。
相続権を失いますから、相続財産の分け方についての、相続人全員の話し合いに参加する必要がありません。
相続分の譲渡を受けた人は、相続財産の分け方を決める話し合いに参加する必要があります。
他の相続人以外の第三者であっても、相続分を譲った人に代わって相続人全員の話し合いに参加します。
相続財産の分け方について合意をするときは、相続分の譲渡を受けた人が他の相続人以外の第三者であっても、相続人に含めなければなりません。
他の相続人以外の第三者が相続分の譲渡を受けた場合、相続分の譲渡を受けた人を除いて、相続財産の分け方の合意をしても、無効になります。
相続分の譲渡を受けた人を含めて合意をやり直すことになります。
相続人の折り合いがよくない場合、相続財産の分け方の合意は難しくなりがちです。
ときにはトラブルに発展しかねません。
相続人らのもめごとを避けるため、相続分を譲渡することは有効な手段と言えます。
2相続分の譲渡の共通の注意点
①相続分を譲渡しても借金の支払義務がある
相続が発生した場合、被相続人の財産は相続人全員の共有財産です。
相続財産というとプラスの財産だけをイメージしがちです。
プラスの財産もマイナスの財産も、相続財産です。
相続分を譲渡した場合、プラスの財産もマイナスの財産も相続分の譲り受けた人に引き継がれます。
プラスの財産もマイナスの財産も引き継がれるのは、相続分を譲渡した当事者の内部的取り決めです。
相続分を譲渡した場合、相続分を譲り渡した人は相続人のままです。
相続分を譲り受けた人は相続人ではありません。
債権者は、相続分を譲渡した当事者の内部的取り決めと無関係です。
債権者は、相続人に対して法定相続分で借金の返済を請求することができます。
相続分を譲渡したから借金の支払いをしたくないと文句を言うことはできません。
相続分を譲渡した場合でも相続人だから、被相続人の借金から逃れられません。
②相続放棄をしたら借金の支払不要
被相続人に借金があった場合、借金を相続したくないなら相続放棄がおすすめです。
家庭裁判所で相続放棄が認められた場合、はじめから相続人でなくなります。
相続人でない人に対して、被相続人の借金を請求することはできません。
被相続人の債権者から支払請求が来た場合、請求を拒むことができます。
3相続人間の相続分の譲渡の注意点
①相続人間の相続分の譲渡は贈与税はかからない
相続人全員による合意がされる前であれば、相続人が自分の相続分を譲渡することができます。
相続分の譲渡は、相続分を譲ってあげたい人と譲り受けたい人が合意すれば成立します。
譲り受ける人が他の相続人である場合、贈与税は問題になりません。
相続分の譲渡の当事者が同順位の相続人だからです。
相続人は被相続人の配偶者と長男、長女の3人であるケースがあります。
被相続人の配偶者が長男に相続分の譲渡をする場合、相続人間の相続分の譲渡です。
譲り受ける人が他の相続人だから、贈与税は問題になりません。
②相続分の譲渡が特別受益になる
譲り受ける人が他の相続人である場合、相続分の譲渡が特別受益になるかもしれません。
被相続人の配偶者が長男に相続分の譲渡をすることがあります。
相続分を譲り渡した配偶者が死亡した場合、相続人は長男と長女です。
長男は、最初の相続のときに相続分の譲渡を受けています。
長女は、相続分の譲渡を受けていません。
配偶者が死亡したときの相続で相続財産を半分ずつ分けるとしたら、不公平だと感じるでしょう。
長男は相続分の譲渡を受けているから、その分を考慮して相続財産を分けて欲しいと考えるでしょう。
相続分の譲渡が原因で、次の相続でトラブルになるおそれがあります。
③相続分の譲渡が遺留分の侵害になる
譲り受ける人が他の相続人である場合、相続分の譲渡が遺留分の侵害になるかもしれません。
遺留分とは、相続財産に対する最低限の権利です。
兄弟姉妹以外の相続人に与えられています。
被相続人の配偶者が長男に相続分の譲渡をすることがあります。
相続分を譲り渡した配偶者が死亡した場合、相続人は長男と長女です。
最初の相続における被相続人に莫大な財産があった場合、莫大な財産の2分の1が長男に譲渡されたと言えます。
配偶者が死亡したときの相続で相続財産がごくわずかであることがあります。
配偶者の相続における長女の法定相続分は2分の1、遺留分は4分の1です。
莫大な財産の2分の1を長男に譲渡したことで長女の遺留分が侵害されたと言えます。
相続分の譲渡が原因で、次の相続でトラブルになるおそれがあります。
4第三者への相続分の譲渡の注意点
①相続人以外の親族は第三者
相続分を譲り受ける人が第三者の場合というと、まったくの他人だけをイメージしがちです。
第三者とは、相続人以外の人を指しています。
相続人以外の親族は、第三者です。
相続人は被相続人の配偶者と長男、長女の3人である場合、被相続人の配偶者と長男、長女以外の人は全員第三者にあたります。
被相続人の配偶者が長男に相続分の譲渡をする場合、相続人間の相続分の譲渡です。
譲り受ける人が他の相続人だから、贈与税は問題になりません。
被相続人の配偶者が長男の子どもに相続分の譲渡をする場合、第三者への相続分の譲渡です。
譲り受ける人が第三者だから、譲り渡す人には相続税、譲り受ける人には贈与税がかかります。
贈与税は、想像するより高額になりがちです。
②相続人が死亡しても相続人以外の親族は第三者
相続財産の分け方は、相続人全員の合意で決める必要があります。
相続人全員の合意ができないまま長期間経過した場合、一部の相続人が死亡することがあります。
相続が発生したときには元気だった相続人が相続手続中に死亡して新たな相続が発生することを数次相続と言います。
最初の相続における相続人は後に死亡しても、相続人であったことは変わりはありません。
最初の相続における相続人が後に死亡しても、相続人以外の人は第三者であることに変わりはありません。
最初の相続の相続人は被相続人の配偶者と長男、長女の3人である場合、被相続人の配偶者と長男、長女以外の人は全員第三者にあたります。
最初の相続の相続手続中に長男が死亡することがあります。
死亡した長男の子どもは、長男の相続人です。
長男の子どもは長男の相続人であって、最初の相続の相続人ではありません。
最初の相続における被相続人の配偶者が長男の子どもに相続分の譲渡をすることがあります。
長男の子どもに相続分の譲渡する場合、第三者への相続分の譲渡です。
長男の子どもは、最初の相続の相続人ではないからです。
③第三者への相続分の譲渡は相続登記が複雑になる
被相続人が不動産を所有していた場合、不動産の名義変更が必要です。
相続による所有権移転登記ができるのは、相続人に対してだけです。
相続人以外の人に対して、相続登記をすることはできません。
第三者への相続分の譲渡をした場合、相続分を譲り受けた人は相続人ではありません。
相続分を譲り受けた人に対して、相続登記をすることはできません。
被相続人から相続分を譲り受けた人に対して、直接所有権移転登記をすることできません。
被相続人から相続分を譲り受けた人に直接所有権が移転した事実はないからです。
相続分の譲渡をした場合、相続分を譲り渡した人は相続分の譲渡をした後も相続人です。
(1)相続の発生で、相続人全員が法定相続分で共有
(2)一部の相続人が第三者への相続分を譲渡
(3)相続分を譲り受けた人と他の相続人で遺産分割
(1)~(3)の順に事実が発生したのだから、3件の登記申請をします。
相続人が被相続人の配偶者と長男、長女の3人であるケースで、被相続人の配偶者が長男の子どもに相続分の譲渡をすることがあります。
遺産分割協議で最終的に長男の子どもが不動産を取得する場合、次の3件の登記申請をします。
(1) 相続人全員で法定相続分で相続登記
配偶者 2分の1
長男 4分の1
長女 4分の1
(2)相続分の譲渡
長男の子ども 2分の1
(3) 遺産分割
長男の子ども 2分の1
(1)~(3)を順に3件の登記申請をする場合、それぞれ登録免許税がかかります。
登録免許税は、不動産の固定資産税評価額を基に計算します。
仮に、不動産の固定資産税評価額が5000万円だった場合、次の額を納めます。
(1) 相続人全員で法定相続分で相続登記
登録免許税の税率は1000分の4です。
登録免許税20万円です。
(2)相続分の譲渡
移転する持分が2分の1だから、2500万円に対して課税されます。
登録免許税の税率は1000分の20です。
登録免許税50万円です。
(3) 遺産分割
移転する持分が2分の1だから、2500万円に対して課税されます。
登録免許税の税率は1000分の4です。
登録免許税10万円です。
(1)~(3)を順に3件の登記申請をする場合、登録免許税は合計80万円です。
相続分の譲渡がある場合、相続登記を自分でやるのは困難です。
相続登記を司法書士などの専門家に依頼する場合、相応の費用がかかります。
先に説明したとおり、第三者への相続分の譲渡は贈与税の対象になります。
④第三者への相続分の譲渡は相続税と贈与税の対象
相続分を譲渡する相手は、他の相続人のうちだれかでも構わないし、相続人以外の第三者でも構いません。
相続分を譲り受ける人が第三者の場合、譲り渡す人には相続税がかかります。
譲り受ける人には、贈与税がかかります。
5相続分の譲渡を司法書士に依頼するメリット
相続が発生すると、相続人はたくさんの相続手続に追われます。
たくさんの手続で疲れていても、相続財産について、相続人全員による分け方の合意が必要です。
相続財産の分け方の合意はトラブルになりやすい手続です。
相続人がたくさんいると、さらにまとまりにくくなります。
相続分の譲渡を上手に使うと、話し合いをする相続人が減って、合意がしやすくなります。
通常の遺産分割で相続手続きを進めることが多いですが、状況に応じて制度を活用できます。
相続手続は、もめないようにするのが重要です。
もめないスムーズな相続手続きのためメリットデメリットを充分検討したい方は、司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。
債務があるときの遺産分割協議書
1債務は相続財産
被相続人が借金をしていることがあります。
借金をしている人が死亡しても、借金はなくなりません。
相続が発生すると、原則として、被相続人の財産は相続人が相続します。
相続人が相続する財産が、相続財産です。
相続財産はプラスの財産とマイナスの財産があります。
どちらも、相続財産です。
一般的に不動産、預金、株式や投資信託などの有価証券、現金などがイメージしやすいでしょう。
プラスの財産もマイナスの財産も、相続人が引き継ぎます。
被相続人に莫大な借金があった場合、相続放棄をすることで借金から免れることができます。
2相続人で債務を負担する人を決めることができる
①債務を負担する人を遺産分割協議書に書くことができる
相続が発生すると、原則として、被相続人の財産は相続人が相続します。
相続人が相続する財産が、相続財産です。
相続財産は、相続人全員の共有財産です。
プラスの財産は、相続人全員の合意ができれば自由に分けることができます。
マイナスの財産は、相続人全員で債務を負担する人を決めることができます。
後になって合意をしていなかったなどと言い出す人がいると、トラブルになります。
トラブルにならないように、書面に残しておくことは重要です。
相続人全員で合意したことを証明するため、遺産分割協議書に記載することができます。
②遺産分割協議書に債務を書く方法
記載例
被相続人の債務のうち次の負債は、相続人〇〇〇〇が負担する。
令和○年○月○日付金銭消費貸借契約に基づく借入金
債権者 〇〇〇〇銀行
残債務金○○万円
ただし、令和○年○月○日現在の残高
返済期限 令和○年○月○日
利息 年〇%
③相続人全員で合意しても対外的効力はない
マイナスの財産は、相続人全員で債務を負担する人を決めることができます。
相続人全員で合意しても、相続人だけの内部的な合意事項です。
相続人以外の人には、何の意味もない合意事項です。
遺産分割協議書を作成して記名し実印で押印しても、相続人以外の人には効力がありません。
相続人間のトラブル防止のため、書面にする意味があります。
相続人だけの内部的な合意事項だからです。
3債務は当然に法定相続分で相続
①債権者は相続人全員に法定相続分で請求することができる
相続人全員で債務を負担する人を決めた場合、相続人内部の合意事項です。
相続人以外の人には、何の効力もありません。
債権者は、相続人間にどのような合意があっても関係ありません。
債権者は、相続人全員に対して法定相続分で請求することができます。
相続人全員で債務を負担する人を決めたから、弁済をしたくないと文句を言うことができません。
相続人全員で債務を負担する人を決めたから、その人に請求して欲しいと文句を言うことができません。
相続人全員の合意で弁済を拒むことができるとすると、債権者が困ります。
相続人には、資力がある人も資力もない人もいます。
相続人全員の合意で資力がない相続人が債務を負担すると合意をすることが考えられます。
資力がない相続人は、ときには債務超過の相続人かもしれません。
債務超過の相続人は、自分の債務に加えて相続債務を負担することになります。
自分の債務に加えて相続債務を負担することは、困難でしょう。
自分の債務と相続債務を返済することができなくなったら、自己破産することになります。
自己破産をされたら、債務は返してもらえません。
他の相続人はプラスの財産を受け取っておきながらマイナスの財産を免れることになります。
債権者にとっては、理不尽なことです。
このような理不尽を許さないため、債権者は相続人全員に対して法定相続分で返済を請求することができるのです。
②他の相続人は求償ができる
債権者は、相続人全員に対して法定相続分で請求することができます。
相続人全員で債務を負担する人を決めたから、弁済をしたくないと文句を言うことができません。
相続人全員で債務を負担する人を決めたのに、債務の弁済をしなければなりません。
債権者からの請求に応じて債務を弁済した場合、債務を負担する人に請求することができます。
相続人全員で債務を負担する人を決めた場合、相続人内部では有効な合意事項だからです。
被相続人の債務が住宅ローンの場合があります。
住宅ローンがある場合、相続財産には購入した不動産があるでしょう。
購入した不動産は、プラスの財産です。
プラスの財産は、相続人全員の合意ができれば自由に分けることができます。
多くの場合、購入した不動産を相続する人が住宅ローンを負担する合意をします。
住宅ローンを負担する人以外の人が債務を弁済した場合、債務を負担する人に請求することができます。
債務を弁済した人は、負担した弁済額を請求できるだけです。
購入した住宅を相続することは、できません。
プラスの財産の分け方は、相続人全員で決めたからです。
③遺産分割協議は一方的な解除ができない
相続人全員で合意した遺産分割協議は、原則として、やり直しはできません。
相続人の1人が気が変わったからと言って、やり直しをしなければならなくなると、いつまでたっても遺産分割協議は終わらないからです。
相続財産の分け方について、相続人全員で合意したら、確定して話し合いは終了になります。
住宅ローンを負担する合意をしたから、購入した不動産を相続することに合意をしているでしょう。
住宅ローンを弁済しないなら、遺産分割協議をやり直したいと考えるかもしれません。
一般的な売買契約において、代金を支払わない場合、契約を解除することができます。
相続財産においては、このような解除制度はありません。
いったん相続財産の分け方を相続人全員で合意した場合、遺産分割協議は終了します。
遺産分割協議が終了した後は、弁済をした人が弁済金を請求する問題になります。
金銭を支払う人と受け取る人の話し合いで解決を図ります。
債務を支払うと約束した人が支払ってくれなくても、相続財産の分け方の合意をなかったことにはできません。
④債権者の合意があれば債務引受ができる
債権者は、相続人全員に対して法定相続分で請求することができます。
相続人がたくさんの人数になる場合、債権者にとっては債権回収の手間が大きくなります。
数次相続や代襲相続が発生している場合、法定相続分が細分化されます。
債権者は、各相続人に法定相続分しか請求することができません。
相続人全員に対して法定相続分で請求することができるのは、債権者が理不尽な扱いを受けることがないようにするためです。
債権者と合意できれば、相続人全員に対して法定相続分で請求することに固執する必要がありません。
相続人全員だけでなく債権者も含めて、債務を負担する人を決めることができます
債務を負担する人の資力に問題がなければ、債権者にとってもメリットがあります。
債務を負担する人が少数であれば、債権回収の手間が削減されるからです。
4債務があるときは相続放棄ができる
相続人が相続放棄をした場合、被相続人のプラスの財産もマイナスの財産も引き継ぐことがなくなります。
家庭裁判所に対して、必要な書類をを添えて相続放棄をしたい旨の申立てをします。
申立てをする先の家庭裁判所は、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です。
相続放棄をした場合、はじめから相続人でなくなります。
債権者は、相続人でない人に相続債務を請求することはできません。
はじめから相続人でなくなるのは、家庭裁判所で相続放棄を認められた場合です。
プラスの財産を受け取らない、債務は他の相続人が引き受けると合意した場合、債権者は相続債務を法定相続分で請求することができます。
家庭裁判所で相続放棄を認められていない場合、相続人のままだからです。
プラスの財産を何も受け取らない場合であっても、債権者は法定相続分で請求することができます。
債務を請求されるなどのトラブルに巻き込まれたくない場合、相続放棄をすることが有効です。
5後日債務が判明したら
①遺産分割協議後に相続放棄ができない
マイナスの財産が多い場合、相続放棄をすることを検討します。
法律で定められた一定の条件にあてはまるときは、単純承認したとみなされます。
単純承認とは、被相続人のプラスの財産もマイナスの財産も受け継ぐものです。
単純承認とみなされたら、相続放棄はできません。
相続放棄はできないのに、家庭裁判所に相続放棄の手続をして、相続放棄が認められても無効です。
家庭裁判所が事情を分からずに相続放棄を認めてしまっても、後から無効になります。
単純承認したとみなされる行為は、法律で定められています。
相続財産を処分した場合、単純承認したとみなされます。
遺産分割協議は、相続人全員の共有財産を処分することです。
遺産分割協議をした場合、単純承認にあたります。
②後日判明した債務について合意できる
相続人全員で合意したときには気づかなかった財産が後から判明することがあります。
遺産分割協議は、すべての財産について一度で合意する必要はありません。
合意できるものから、順次合意することができます。
後日財産が判明しても、後日債務が判明しても、原則として先の合意が無効になることはありません。
後日判明した財産について、相続人全員であらためて合意することができます。
相続人全員の合意が必要だから、後日判明した財産についてあらためて合意をすることが負担に感じることがあります。
後日判明した財産について、相続する人をあらかじめ決めておくことができます。
遺産分割協議書の記載例
本協議書に記載がない遺産については、相続人○○が相続し、または承継する。
上記のような遺産分割協議書があれば、後日判明した借金は相続人○○が相続します。
遺産はプラスの財産とマイナスの財産があるからです。
6遺産分割協議書作成を司法書士に依頼するメリット
遺産分割協議書は遺産の分け方について、相続人全員による合意を取りまとめた文書です。
合意がきちんと文書になっているからこそトラブルが防止できるといえます。
合意したらどのような結果になるのか誤解していることがあります。
誤解したまま遺産分割協議書を作成した場合、だまされたように感じます。
相続人全員が納得して合意することが重要です。
遺産分割協議書の書き方に不備があるとトラブルを起こしてしまう危険があります。
せっかくお話合いによる合意ができたのに、取りまとめた文書の不備でトラブルになるのは残念なことです。
トラブルを防止するため、遺産分割協議書を作成したい方は、司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。
自動車があるときの遺産分割協議成立申立書
1遺産分割協議成立申立書とは
遺産分割協議成立申立書とは、自動車の名義変更で遺産分割協議書の代わりに提出する書類です。
遺産分割協議成立申立書を利用できる場合、遺産分割協議書の提出を省略することができます。
遺産分割協議申立書は、自動車を相続する人がひとりで作ることができます。
手続きがカンタンに済ませることができるメリットがあります。
2遺産分割協議成立申立書を利用できる場合
遺産分割協議成立申立書を利用できるのは、自動車の名義変更の場合で、かつ、自動車の査定額が100万円以下の場合です。
自動車以外の財産の名義変更の場合や自動車の名義変更であっても100万円を超える自動車の場合は、遺産分割協議成立申立書を利用できません。
預貯金や不動産の名義変更には、正式な遺産分割協議書が必要です。
遺産分割協議成立申立書は遺産分割協議書と比べると略式の書類です。
100万円以下の自動車の名義変更に正式な遺産分割協議書を必要とすると手間がかかりすぎます。
だから、価格の低い自動車の名義変更については略式な書類で済ませることができるのです。
略式な書類で済ませることができるといっても、相続人全員の合意は不可欠です。
相続人全員の合意がないまま独断で手続をすると、相続人間に大きな不信感を生むことになります。
不信感が生じると、自動車以外の相続手続が進まなくなったり、家族の絆が壊れることになりかねません。
トラブルに発展させないためにも、相続人全員の合意を必ず確認しましょう。
3遺産分割協議成立申立書の作り方
遺産分割協議成立申立書の様式は、運輸局の窓口まで出向いて受け取ることができます。
国土交通省のホームページからダウンロードすることもできます。
①自動車の表示
対象の自動車の登録番号と車台番号は車検証に記載されています。
車検証を見ながら、間違えないように記入しましょう。
②被相続人
亡くなった方の氏名と死亡年月日は戸籍謄本に記載されています。
戸籍の記載を見て、記入しましょう。
③遺産分割協議成立年月日
相続財産は相続人全員の共有財産です。
相続財産の分け方は、相続人全員の話し合いによる合意が不可欠です。
相続人全員の話し合いによる合意で、自動車を相続する人が決定した日を書きます。
④申立書による申請の同意年月日
相続人全員の話し合いによる合意で相続財産の分け方を決めた後、通常はトラブルにならないように遺産分割協議書に取りまとめます。
自動車の名義変更で、価格が100万円以下の自動車の場合、正式な遺産分割協議書を省略しているでしょう。
相続人全員が、遺産分割協議成立申立書による申請に同意した日を記入します。
遺産分割協議をした日と同じであることが多いでしょう。
⑤住所と署名
自動車の相続人の住所を記入し、署名します。
住所と氏名は、印鑑証明書の記載と同じように書きます。
署名したら、実印で押印します。
4自動車の名義変更で必要な書類
自動車の名義変更で必要な書類は、次のとおりです。
①被相続人の戸籍謄本
②相続人の戸籍謄本
③印鑑証明書(発行後3か月以内のもの)
④車検証
⑤車庫証明書(発行後40日以内のもの)
⑥査定額証明書
遺産分割協議成立申立書を利用できるのは、自動車の価格が100万円以下の場合に限られます。
査定額証明書は、一般のカーディーラーや中古車ショップなどで書いてもらえます。
多くの場合、費用を負担することもないでしょう。
時には、査定証明書を書いてもらえない場合もあります。
査定証明書を書いてもらえる業者が見つからなかった場合、日本自動車査定協会に依頼することができます。
日本自動車査定協会に依頼する場合、有料で発行してくれます。
インターネットなどで、相場価格を調べてプリントしても認めてもらえません。
自動車を扱う業者の証明書を入手しましょう。
購入時の領収書を保管している場合もあるでしょう。
購入時の領収書を提出しても、査定額証明書に変えることはできません。
自動車を購入してから価値が上がることも、価値が下がることもあるからです。
5ローンが残っていないか確認
被相続人が自動車ローンを組んでいることがあります。
自動車ローンはマイナスの財産として相続財産になります。
多くの場合、自動車を相続する人がローンも引き継ぐことを相続人全員の話し合いで決めているでしょう。
マイナスの財産も相続財産ですから、相続人全員の話し合いで分け方を決めることができます。
マイナスの財産の分け方について相続人全員で決めた内容は、相続人同士の内輪の決めごとに過ぎません。
債権者は、相続人全員に対して法定相続分で請求することができます。
自動車を相続しなかった人は、債権者に対して、自動車を相続した人がローンも支払うから請求をしないで欲しいなどと文句を言うことはできません。
ローンの返済が滞ると、家族でトラブルになることが予想されます。
自動車にローンが残っている場合、ローンを引き続き返済していくのか、自動車を売却してローンを返済するのか慎重に判断しましょう。
6損害保険の引継ぎ
自動車を相続した後、乗り続けるためには任意保険の名義変更が必要です。
手続を忘れていると事故があったときに保証が受けられなくなるおそれがあります。
保険の名義変更は各保険会社に確認しましょう。
保険会社によっては、遺産分割協議書の提出が求められる場合があります。
7遺産承継サポート(遺産整理業務)を司法書士に依頼するメリット
相続が発生すると、家族は大きな悲しみに包まれます。
大きな悲しみで力を落としていても、日常の仕事や家事をする必要があります。
そのうえ、たくさんの用事と相続手続に忙殺されます。
気力を失った状態で、不慣れな相続手続をするのはタイヘンです。
しかも、聞き慣れない法律用語でいっぱいなので、スムーズに行きません。
役所に何回も出向いて書類を集め、手続に出向いてはやり直しをすることになります。
このような複雑な相続手続は、司法書士などの専門家にまるっと依頼できます。
司法書士ができない分野の手続は、司法書士が窓口になって提携する専門家に依頼します。
手続に困ってだれかに相談したい、だれかに話を聞いてもらいたいのであれば司法書士にお聞かせください。
だれに相談していいのか分からない、司法書士に相談することなのか分からない、何となく不安だけどどうしていいのか分からないといったもので構いません。
多くの人は、相続は何回も経験していません。
だれもが不慣れなものです。
お話をするだけでラクになったということも多いです。
相続手続で気がかりがある方は、司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。
生命保険があるときの遺産分割協議書
1遺産分割協議とは
相続が発生した後、相続財産は相続人全員の共有財産になります。
相続人のひとりが勝手に処分することはできません。
相続人全員で相続財産の分け方について話し合いによる合意をして、分け方を決める必要があります。
相続財産の分け方にについて、相続人全員でする話し合いのことを遺産分割協議と言います。
遺産分割協議は、必ず、全員で合意する必要がありますが、全員が一つの場所に集まる必要はありません。
電話でもメールでも差し支えありません。
一度に全員合意する必要もありません。
一部の相続人と合意をして、次に、残りの相続人と合意をすることでも問題ありません。
最終的に相続人全員が合意できれば良いのです。
全ての財産をまとめて合意しなければならないといったこともありません。
一部の財産についてだけ合意をすることもできます。
2遺産分割の対象になる生命保険と対象にならない生命保険がある
①生命保険の死亡保険金は遺産分割の対象にならない
相続が発生したときは、被相続人が死亡したときです。
被相続人に生命保険がかけてあれば、保険金が支払われます。
生命保険の保険金は日常的に目にする金額より大きいこと多いでしょう。
他の相続人が生命保険の保険金を受け取っていると知ったら、穏やかな気持ちになれないものです。
原則として、生命保険の死亡保険金は、受取人の固有の財産です。
生命保険の死亡保険金は相続財産ではないから、遺産分割の対象になりません。
生命保険の死亡保険金は、被相続人の死亡をきっかけにして、直接、受取人が死亡保険金を請求する権利を取得します。
被相続人の死亡する前に、死亡保険金を請求する権利が発生することはありません。
死亡保険金を請求する権利は被相続人の財産ではないから、相続財産にはなりません。
生命保険の死亡保険金は、遺産分割の対象になりません。
②生命保険の入院給付金は遺産分割の対象になる
死亡保険金の受取人が被相続人であることは通常は考えられません。
生命保険には、死亡保険金以外の給付金を重視した商品があります。
入院給付金や手術一時金が代表例です。
生命保険の入院給付金や手術一時金は、入院や手術をきっかけにして、被相続人が入院給付金や手術一時金を請求する権利を取得します。
入院給付金や手術一時金を請求する権利は、被相続人の財産です。
入院給付金や手術一時金を請求する権利は被相続人の財産だから、相続財産にはなります。
生命保険の入院給付金や手術一時金は、遺産分割の対象になります。
③受取人の指定がないときは保険商品によって異なる
受取人として指定されていた人が先に死亡してしまうケースがあります。
受取人を変更する手続をする必要があるケースです。
受取人を変更しないまま、本人が死亡した場合、受取人の指定がないケースになります。
この場合の取り扱いは保険会社によって異なります。
保険会社によっては、相続財産として遺産分割協議によって受取人を決めることになります。
④著しく過大な生命保険は特別受益になる
原則として、生命保険の死亡保険金は遺産分割の対象になりません。
客観的に見て、相続財産全体から考えて不相当なほど死亡保険金が高い場合で、相続が著しく不公平で著しく不平等となってしまう場合があります。
相続が著しく不公平で著しく不平等となってしまう場合、生命保険は特別受益であると言えます。
特別受益とは、特定の相続人が特別に利益を受けたということです。
被相続人が生前に、特定の相続人に住宅購入資金を援助したなどがよくあるパターンです。
不公平な財産分与があった場合に、そのまま相続をするというのは財産分与を受けていない相続人にとって納得がいかないでしょう。
特別受益があった場合、特別受益分を相続財産に戻して、相続分を計算し直します。
相続財産に戻して相続分の計算し直しのことを、持ち戻しといいます。
多少の不公平や些細な不平等は、仕方がないこととして持ち戻しは認められません。
金額でいうと、おおむね資産全体の6割以上が生命保険の保険金の場合、著しい不公平や著しい不公平と判断されやすいでしょう。
著しく不公平で著しく不平等と考えられる場合にあたるかどうかは、金額だけで一律的に決まるものではありません。
生命保険の受取人が被相続人と同居していたかどうか、介護などのお世話をしていた状況、裕福な相続人であるか、生活に困っている相続人であるか、生命保険の受取人とその他の相続人の関係などを総合的に判断されます。
持ち戻しが認められる場合、生命保険の保険金は遺留分の計算の基礎に含まれます。
3遺産分割協議書に生命保険を書くときのの記載例
①生命保険の契約者たる地位の記載例
相続人○○○○は、次の保険契約上の契約者たる地位を取得する。
保険者 ○○生命保険株式会社
被保険者 ○○○○
保険証券番号 ○○○○○○○○
生命保険の死亡保険金は、原則として、受取人の固有の財産であるため遺産分割協議書に記載不要です。
被相続人の死亡が保険金の支払事由でない場合、保険契約は継続されます。
保険契約が継続される場合、契約上の地位が相続されます。
②生命保険の入院給付金の記載例
相続人○○○○は、次の保険契約の保険金を取得する。
保険者 ○○生命保険株式会社
被保険者 ○○○○
保険証券番号 ○○○○○○○○
生命保険の入院給付金や手術一時金は、受取人が被相続人になっています。
被相続人が受け取らないまま死亡した場合、給付金を受け取る権利は相続財産です。
保険金を請求する際に生命保険会社の人が分かるように特定して記載します。
③死亡保険金は記載しない
生命保険が遺産分割の対象となる場合、遺産分割協議書に記載します。
生命保険が遺産分割の対象とならない場合、遺産分割協議書に記載する必要はありません。
生命保険の死亡保険金を受け取る権利は、受取人の固有の財産です。
遺産分割の対象となる相続財産ではないから、遺産分割協議書に記載する必要はありません。
4生命保険金を他の相続人に分配するときの注意点
①生命保険金を代償金にするのは有効
相続財産にはいろいろな財産が含まれています。
不動産のように分けにくい財産もあるし、金銭のように分けやすい財産もあります。
相続財産の大部分が、不動産のような分けにくい財産の場合、相続財産の分け方についての合意が難しくなりがちです。
不動産のような分けにくい財産を相続する人が、他の相続人に代償金を払うと合意がまとまりやすくなります。
生命保険の死亡保険金を代償金の支払いに充てることは、問題がありません。
生命保険の死亡保険金は、相続人の固有の財産だからです。
②遺産分割の対象とならない生命保険を分割の対象にすると贈与になる
生命保険の死亡保険金は、相続人の固有の財産です。
相続財産でないから、本来、遺産分割の対象になりません。
死亡保険金の受取人が他の相続人に分割することができないわけではありません。
相続人の固有の財産だから、持ち主は自由に処分ができるからです。
固有の財産を処分しただけだから、贈与になります。
分割する金額によっては、思いもよらぬ高額の贈与税を払うことになります。
生命保険の死亡保険金を考慮にして相続財産の分け方を決める場合、遺産分割です。
贈与税の課税を避けるためにも、生命保険の死亡保険金を考慮にして相続財産の分け方を決める方がいいでしょう。
③代償金名目の贈与と判断されるおそれ
遺産分割協議書に代償分割をすることをはっきり書くことで、原則として、単なる贈与ではないと示すことができます。
代償分割をすると書いて金銭を支払う場合でも、実質的に代償金でないことがあります。
代償分割は、分けにくい財産を相続した相続人が他の相続人に代償金を払う分割方法です。
分けにくい財産の評価額を大幅に超える代償金を払う合意をした場合、実質的に代償金とは認められないでしょう。
代償金名目の贈与と判断されるおそれがあります。
例えば、相続財産が自宅1000万円のみで、相続人が長男と次男の2人の場合があります。
自宅を長男が相続した場合、長男が固有の財産から500万円程度の代償金を支払うのであれば問題はありません。
長男が固有の財産から2000万円の代償金を支払う場合、代償金名目の贈与と判断されるおそれがあります。
例えば、自宅1000万円を長男が相続した場合で、かつ、次男が生命保険の死亡保険金3000万円を受け取っている場合があります。
次男から長男へ1000万円支払うのが平等に見えるかもしれません。
次男が生命保険の死亡保険金を受け取った後、長男に1000万円支払った場合、代償金とは認められないでしょう。
生命保険の死亡保険金は受取人の固有の財産であって相続財産ではないからです。
相続による遺産分割とは無関係に贈与があったと言えます。
遺産分割協議書に代償金と明記しても、実質的に代償金とは認められません。
次男が生命保険の死亡保険金を受け取った後、長男に1000万円支払うこと自体はできないことではありません。
自分の固有の財産は、自由に贈与をすることができるからです。
自分の固有の財産を贈与した場合、金額によっては贈与税が課されます。
5生命保険の死亡保険金は相続税の対象になる
生命保険の死亡保険金は相続税の対象になります。
本来、生命保険の死亡保険金の支払請求権は、相続人の固有の財産です。
固有の財産なのに相続税の対象になるから、相続財産と誤解されます。
税金だけに過度に注目していると、生命保険は相続財産との誤解が強まります。
他の相続人から生命保険金を分配するように干渉されることになります。
生命保険の死亡保険金は相続税の対象になるだけで、相続人の固有の財産です。
相続放棄をした相続人であっても、生命保険の死亡保険金は受け取ることができます。
生命保険の死亡保険金は相続財産でないからです。
相続財産でないから、相続放棄をしても関係ないのです。
6遺産分割協議書作成を司法書士に依頼するメリット
遺産分割協議書は遺産の分け方について、相続人全員による合意を取りまとめた文書です。
前提として、話し合いによる合意ができていなければ、文書にできません。
銀行などの金融機関から遺産分割協議書を提出するように言われて、とにかく書きたいという方もいます。
遺産分割協議書があるとトラブル防止になりますが、相続人全員の合意があり、合意を取りまとめているからです。
有効な合意を文書にしているから、後々のトラブルを防止できるのです。
相続人全員が有効な合意をしていない場合、かえってトラブルになってしまいます。
複雑な相続においても対応しています。
適切な遺産分割協議書を作り、家族のトラブルを避けたい方は、司法書士などの専門家にサポートを依頼することをおすすめします。
相続人が一人だけなのに遺産分割協議書
1遺産分割協議とは
相続が発生した後、相続財産は相続人全員の共有財産になります。
相続人のひとりが勝手に処分することはできません。
相続人全員で相続財産の分け方について話し合いによる合意をして、分け方を決める必要があります。
相続財産の分け方にについて、相続人全員でする話し合いのことを遺産分割協議と言います。
相続財産の分け方にについて、相続人全員で合意ができたら、合意内容を文書に取りまとめます。
相続人全員の合意内容を取りまとめた文書のことを遺産分割協議書と言います。
2相続人一人だけのときは遺産分割協議書不要
①相続人になる人は法律で決まっている
相続が発生したら、親族のうち一定の範囲の人が相続人になります。
だれが相続人になるかについては、民法で決められています。
相続人になる人は次のとおりです。
(1)配偶者は必ず相続人になる
(2)被相続人に子どもがいる場合、子ども
(3)被相続人に子どもがいない場合、親などの直系尊属
(4)被相続人に子どももいない場合で、かつ、親などの直系尊属が被相続人より先に死亡している場合、兄弟姉妹
②相続放棄をした人は相続人でなくなる
相続が発生したら、原則として、被相続人のプラスの財産もマイナスの財産も相続人が受け継ぎます。
被相続人のプラスの財産もマイナスの財産も受け継がないことを相続の放棄といいます。
相続放棄をすると、プラスの財産を引き継がなくなりますが、マイナスの財産も引き継ぐことがなくなります。
相続の放棄は被相続人ごとに判断できますから、例えば、父について相続放棄をするが、母について単純承認するでも差し支えありません。
相続の放棄は相続人ごとに判断しますから、例えば、父の相続人ついて長男は相続放棄するが、長女は単純承認するでも差し支えありません。
③相続人が一人だけの場合とは
相続放棄が認められた場合、はじめから相続人でなくなります。
子ども全員が相続放棄をした場合、子ども全員が相続人でなくなります。
子ども全員が相続人でなくなるから、子どもがいない場合になります。
被相続人に子どもがいない場合、親などの直系尊属が相続人になります。
親などの直系尊属全員が被相続人より先に死亡している場合や相続放棄をした場合、兄弟姉妹が相続人になります。
兄弟姉妹が被相続人より先に死亡している場合、兄弟姉妹の子どもが相続人になります。
相続人が一人だけの場合とは、他の相続人がいない場合のことです。
相続人と音信不通であっても、相続人が行方不明でも、相続人は相続人です。
他に相続人がいる場合、相続人が一人だけの場合とは言えません。
④相続人が一人だけの場合は当然に全財産を相続する
相続人が複数いる場合、相続財産は相続人全員の共有財産です。
相続財産は、相続人全員の合意で分け方を決める必要があります。
相続人全員で相続財産の分け方の合意ができた場合、合意内容を文書に取りまとめます。
遺産分割協議書は、相続人全員の合意内容を取りまとめた文書です。
相続人が一人だけの場合、相続人は他にいないはずです。
相続財産を共有する他の相続人はいません。
他の相続人と相続財産を共有していないから、財産の分け方の合意は必要ありません。
相続人が一人だけの場合、相続財産を分ける必要がないからです。
財産の分け方の合意が必要ないから、文書に取りまとめる必要もありません。
相続人が一人だけの場合、相続手続にあたって、遺産分割協議書は不要です。
3数次相続で相続人が一人だけになったら
①数次相続とは
相続が発生したら、相続財産は相続人全員の共有財産になります。
共有財産になった相続財産は、相続人全員で話し合いによる分け方の合意が不可欠です。
相続財産の分け方について話し合いがまとまる前に、相続人が死亡して新たな相続が発生することがあります。
最初の相続の手続中に相続人が死亡して、さらに相続が発生した状態を数次相続と言います。
数次相続は、どこまででも続きます。
どこまで続くかについて、法律上の制限はありません。
最初の相続を一次相続、相続人が死亡した相続を二次相続と言います。
二次相続の相続人が死亡すると、三次相続、さらに、四次相続、五次相続という場合もあります。
相続人が死亡して新たな相続が発生することを、まとめて、数次相続と言います。
②相続人が一人だけになったら遺産分割協議ができない
例えば、最初の相続で相続人が配偶者と子どもの場合があります。
最初の相続で相続財産の分け方について話し合いがまとまる前に、相続人が死亡して新たな相続が発生することがあります。
最初の相続の被相続人の配偶者が死亡した場合、配偶者の相続人は子ども一人です。
最初の相続において、配偶者と子どもが相続人です。
相続財産の分け方について話し合いがまとまる前に配偶者が死亡したから、子どもは配偶者の地位を相続しています。
残された子どもには直接の相続人の地位と配偶者の相続人の地位があるから、遺産分割協議ができるように見えます。
最初の相続で、配偶者と子どもは相続財産を共有しています。
次の相続で、配偶者の持分が子どもに帰属したというべきです。
子どもは直接の相続人の地位と配偶者の相続人の地位があることを理由に遺産分割協議をすることはできません。
最初の相続における被相続人名義の不動産は、2回に分けて相続登記を申請します。
配偶者と子どもが共有する登記、配偶者の持分全部移転する登記の2回です。
遺産分割協議をすることができないから、最初の被相続人から子どもへ直接権利移転していないからです。
③遺産分割協議後に相続人が一人だけになったら
相続財産は、相続人全員の合意で分け方を決める必要があります。
相続人全員の合意は、口頭であっても有効です。
相続人全員で相続財産の分け方の合意ができた場合、通常は、合意内容を文書に取りまとめます。
第三者に対して、相続人全員の合意で分け方を決めたことを信用してもらうためです。
相続人全員で相続財産の分け方の合意ができた後、文書に取りまとめる前に、相続人が死亡することがあります。
文書に取りまとめる前に相続人が死亡した場合、相続財産の分け方の合意に影響はありません。
相続人全員の合意事項は、有効です。
例えば、最初の相続において、配偶者と子どもが相続人です。
配偶者と子どもで相続財産の分け方の合意ができた後、文書に取りまとめる前に、配偶者が死亡することがあります。
配偶者と子どもでした合意事項は、配偶者の死亡後も有効です。
子どもは配偶者の死亡後に、口頭の合意内容を文書に取りまとめることができます。
配偶者と子どもで、一人が相続する合意をすることができます。
中間者が一人の場合、直接最終の相続人に相続登記をすることができます。
4数次相続で相続人が一人だけのときの遺産分割協議証明書の書き方
被相続人の最後の本籍 〇〇県〇〇市〇〇町〇丁目〇番地
被相続人の最後の住所 〇〇県〇〇市〇〇町〇丁目〇番〇号
被相続人のの氏名 〇〇 〇〇
被相続人の生年月日 昭和 〇〇年〇〇月〇〇日
被相続人の死亡日 平成〇〇年〇〇月〇〇日
相続人兼被相続人の最後の本籍 □□県□□市□□町□丁目□番地
相続人兼被相続人の最後の住所 □□県□□市□□町□丁目□番□号
相続人兼被相続人のの氏名 □□ □□
相続人兼被相続人の生年月日 昭和 □□年□□月□□日
相続人兼被相続人の死亡日 令和□□年□□月□□日
上記被相続人〇〇〇〇の死亡により開始した相続において、相続人は□□□□及び●●●●である。
平成〇〇年〇〇月〇〇日、相続人□□□□及び●●●●が行った遺産分割協議の内容は下記のとおりであることを証明する。
1. 相続財産中、次の不動産については、相続人●●●●が相続する。
(省略)
令和〇〇年〇〇月〇〇日
住所 〇〇県〇〇市〇〇町〇丁目〇番地
〇〇〇〇の相続人兼〇〇〇〇の相続人□□□□の相続人
●●●● 実印
5遺産分割協議書作成を司法書士に依頼するメリット
遺産分割協議書は遺産の分け方について、相続人全員による合意を取りまとめた文書です。
相続手続先に必要書類を尋ねると、遺産分割協議書が必要ですと一方的に言われることも少なくありません。
相続人が一人だけであれば、合意は必要ありません。
相続人が一人だけのことは、あまり多くないからです。
相続人が一人だけと思い込んでいるだけで、戸籍謄本で相続人調査をすると見知らぬ相続人が見つかることがあります。
相続人が一人だけと思い込んでいるだけで、単に疎遠な相続人であるだけのケースがあります。
相続人が一人だけと思い込んでいるだけで、音信不通であるだけのケースがあります。
行方不明であっても疎遠であっても、相続人は相続人です。
複数の相続人がいる場合、遺産分割協議書が必要になります。
数次相続が発生したために相続人が一人になった場合、よく事情を確認しないと適切な相続手続はできなくなります。
遺産分割協議書を作成したい方は、司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。
相続人が多数や遠方のときは遺産分割協議証明書
1遺産分割協議書と遺産分割協議証明書のちがい
相続が発生した後、相続財産は相続人全員の共有財産になります。
相続人のひとりが勝手に処分することはできません。
相続人全員で相続財産の分け方について話し合いによる合意をして、分け方を決める必要があります。
相続財産の分け方にについて、相続人全員でする話し合いのことを遺産分割協議と言います。
遺産分割協議は、相続人全員で合意する必要があります。
相続人全員が一つの場所に集まる必要はありません。
電話でもメールで合意しても差し支えありません。
口頭で合意しても、遺産分割協議は有効です。
相続手続先には、有効な遺産分割協議があったことを客観的に証明する必要があります。
口頭の合意は、客観的に有効な合意があったとは認められないでしょう。
遺産分割協議書と遺産分割協議証明書は、どちらも相続人全員の合意内容を記載した書面です。
遺産分割協議書は、相続人全員の合意内容を記載した書面1通を用意し、相続人全員が記名し実印を押印する形式です。
遺産分割協議証明書は、相続人全員の合意内容を記載した書面を相続人の人数分用意し、相続人各自が記名し実印を押印する形式です。
どちらの形式でも、相続人全員の合意内容を客観的に証明することができます。
一般的には遺産分割協議書の形式が多く用いられます。
相続手続先の担当者が不慣れな場合、遺産分割証明書は受け付けてもらうために長時間待たされるおそれがあります。
2遺産分割協議証明書のメリット
①相続人全員が一堂に集まらなくてよい
遺産分割協議書は、相続人全員の合意内容を記載した書面1通を用意し、相続人全員が記名し実印を押印する形式です。
相続人の人数が少なく、一堂に集まりやすい場合は便利です。
遺産分割協議証明書は、相続人全員の合意内容を記載した書面を相続人の人数分用意し、相続人各自が記名し実印を押印する形式です。
相続人全員に一斉発送し、記名押印後返送してもらうことができます。
遺産分割協議書より遺産分割協議証明書の方が効率的です。
②紛失リスクが軽減される
相続人が各地に散らばっていて集まりにくい場合、郵送で遺産分割協議書を一巡していくことになります。
途中の相続人が遺産分割協議書を紛失するおそれがあります。
遺産分割協議書は、1通に相続人全員が記名押印をしなければなりません。
途中で紛失したら、最初からやり直しになります。
相続人の人数が多くなるほど紛失リスクは大きくなります。
遺産分割協議証明書では、相続人全員に一斉発送し、記名押印後返送してもらいます。
紛失した場合、紛失した相続人の分だけやり直しになります。
遺産分割協議証明書では、紛失リスクを軽減することができます。
③短期間で書類作成ができる
郵送で遺産分割協議書を一巡していく場合、のんびりした相続人が次の人に郵送するまでに時間がかかりがちです。
連絡が取りにくい相続人がいる場合、なかなか記名押印をしてくれないかもしれません。
疎遠な相続人がいる場合、連絡が取りにくく時間が長くかかる傾向があります。
④相続手続先の手続がスムーズ
遺産分割協議書の記名押印は、相続人全員が集まりやすいときにされるのが一般的です。
多くは、お正月、GW、お盆の時期でしょう。
お正月、GW、お盆の時期の後に、相続手続先に書類が殺到しがちです。
相続手続先によっては、通常より手続きに時間がかかります。
遺産分割協議証明書では、相続人全員に一斉発送し、記名押印後返送してもらいます。
相続人全員が一堂に会する必要がないので、書類が集まり次第に相続手続を進めることができます。
相続手続先の繁忙期に重ならずに相続手続を進めることができます。
3遺産分割協議証明書の書き方と注意点
①遺産分割協議証明書の記載例
遺産分割協議証明書
共同相続人である私たちは、以下の相続について、下記のとおり遺産分割協議が成立したことを証明する。
被相続人の最後の本籍 〇〇県〇〇市〇〇町〇丁目〇番地
被相続人の最後の住所 〇〇県〇〇市〇〇町〇丁目〇番〇号
被相続人のの氏名 〇〇 〇〇
被相続人の生年月日 昭和〇〇年〇〇月〇〇日
被相続人の死亡日 令和〇〇年〇〇月〇〇日
1
相続財産中、次の不動産については、相続人○○○○が相続する。
所在 ○○市○○町○丁目
地番 ○番○
地目 宅地
地積 200㎡
2
相続財産中、次の被相続人名義の財産については、相続人○○○○が相続する。
金融機関名 ○○銀行 ○○支店
預金種別 普通預金
口座番号 ○○○○○○○
金融機関名 ○○銀行 ○○支店
預金種別 定期預金
口座番号 ○○○○○○○
令和 年 月 日
相続人の住所 〇〇県〇〇市〇〇町〇丁目〇番〇号
相続人の氏名 〇〇 〇〇 (実印)
②同じ内容で相続人の人数分作成
遺産分割協議は、相続人全員で合意する必要があります。
相続人全員の合意内容を証明する書面だから、遺産分割協議証明書は相続人全員が同じ内容にします。
相続人全員に対して一斉発送するから、同じ書面を相続人の人数分用意します。
遺産分割協議証明書は、手書きで作成してもパソコンなどで作成しても差し支えありません。
相続人全員の遺産分割協議証明書が同じ内容である必要があるから、手書きよりはパソコンなどで作成した方がいいでしょう。
③日付はバラバラでよい
遺産分割協議証明書は、相続人全員が各自合意内容を証明する形式です。
証明日がバラバラになるのは当然のことです。
遺産分割協議はいつまでにしなければならないといったルールはありません。
相続が発生した日以降であれば、日付はいつでも構いません。
④押印は必ず実印で
遺産分割協議は、相続人全員の合意が不可欠です。
相続人全員の合意があれば、口頭の合意であっても無効とは言えません。
相続手続先には、相続人全員の合意を客観的に証明する必要があります。
相続人全員の合意を客観的に証明するため、遺産分割協議証明書は実印で押印しなければなりません。
⑤印鑑証明書を添付してもらう
遺産分割協議証明書の押印が実印による押印であることを証明するため、印鑑証明書を添付します。
実印がない相続人には、あらかじめ印鑑登録をしてもらう必要があります。
本人が市区町村役場に出向いて手続きをすれば、その場で印鑑登録と印鑑証明書を発行してもらうことができます。
相続登記をする場合、遺産分割協議証明書に添付する印鑑証明書に有効期限はありません。
以前取得したものがあれば、古いものでも差し支えありません。
銀行などの相続手続先では独自ルールを決めている場合があります。
多くは、3~6か月以内の印鑑証明書を必要とします。
4遺産分割協議証明書が送られてきたら
遺産分割協議証明書は、相続人全員の合意内容が記載されているはずです。
内容をよく読んで確認しましょう。
記名押印をした場合、記載内容に同意したとみなされます。
いったん記名押印をしたら、後からやり直すのは非常に困難になります。
相続人全員の合意内容に間違いがない場合は、すみやかに記名し実印で押印しましょう。
返送する場合は、印鑑証明書を忘れず添付しましょう。
5遺産分割協議証明書の提出先
遺産分割協議証明書は、相続人全員の合意を客観的に証明する書面です。
相続手続をする場合に必要になります。
遺産分割協議証明書の提出先は、主に次の5つです。
①相続登記をするとき法務局へ提出
②預貯金の解約をするとき銀行など金融機関へ提出
③自動車の名義変更をするとき運輸支局へ提出
④株の名義変更をするとき証券会社へ提出
⑤相続税申告をするとき税務署へ提出
相続手続をする場合、遺産分割協議証明書や印鑑証明書は原本を提出しなければなりません。
遺産分割協議書や印鑑証明書のコピーを提出しても受け付けてもらえません。
遺産分割協議証明書や印鑑証明書を提出した場合、原本は返してもらえます。
返してもらうための手続は、提出先によって違います。
6数次相続があった後の遺産分割協議証明書
①数次相続とは
相続が発生したら、相続財産は相続人全員の共有財産になります。
共有財産になった相続財産は、相続人全員で話し合いによる分け方の合意が不可欠です。
相続財産の分け方について話し合いがまとまる前に、相続人が死亡して新たな相続が発生することがあります。
最初の相続の手続中に相続人が死亡して、さらに相続が発生した状態を数次相続と言います。
②相続人が一人だけになったら遺産分割協議ができない
例えば、最初の相続で相続人が配偶者と子どもの場合があります。
最初の相続で相続財産の分け方について話し合いがまとまる前に、相続人が死亡して新たな相続が発生することがあります。
最初の相続の被相続人の配偶者が死亡した場合、配偶者の相続人は子ども一人です。
最初の相続において、配偶者と子どもが相続人です。
最初の相続で、配偶者と子どもは相続財産を共有しています。
次の相続で、配偶者の持分が子どもに帰属したというべきです。
子どもは直接の相続人の地位と配偶者の相続人の地位があることを理由に遺産分割協議をすることはできません。
③遺産分割協議後に相続人が一人だけになったら
相続財産は、相続人全員の合意で分け方を決める必要があります。
相続人全員の合意は、口頭であっても有効です。
相続人全員で相続財産の分け方の合意ができた場合、通常は、合意内容を文書に取りまとめます。
相続手続先に対して、相続人全員の合意で分け方を決めたことを客観的に証明するためです。
相続人全員で相続財産の分け方の合意ができた後、文書に取りまとめる前に、相続人が死亡することがあります。
文書に取りまとめる前に相続人が死亡した場合、相続財産の分け方の合意に影響はありません。
相続人全員の合意事項は、有効です。
例えば、最初の相続において、配偶者と子どもが相続人です。
配偶者と子どもで相続財産の分け方の合意ができた後、文書に取りまとめる前に、配偶者が死亡することがあります。
配偶者と子どもでした合意事項は、配偶者の死亡後も有効です。
子どもは配偶者の死亡後に、口頭の合意内容を文書に取りまとめることができます。
子どもが遺産分割協議証明書を作成して、生前に合意があったことを客観的に証明します。
7遺産分割協議証明書作成を司法書士に依頼するメリット
遺産分割協議書と遺産分割協議証明書は遺産の分け方について、相続人全員による合意を取りまとめた文書です。
前提として、話し合いによる合意ができていなければ、文書にできません。
話し合いによる合意を適切に文書にする必要があります。
書き方に不備があるとトラブルを起こしてしまう危険があります。
せっかくお話合いによる合意ができたのに、取りまとめた文書の不備でトラブルになるのは残念なことです。
トラブルを防止するため、遺産分割協議書を作成したい方は、司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。
遺産分割協議書の提出先
1遺産分割協議とは
相続が発生した後、相続財産は相続人全員の共有財産になります。
相続人のひとりが勝手に処分することはできません。
相続人全員で相続財産の分け方について話し合いによる合意をして、分け方を決める必要があります。
相続財産の分け方にについて、相続人全員でする話し合いのことを遺産分割協議と言います。
遺産分割協議は、必ず、全員で合意する必要がありますが、全員が一つの場所に集まる必要はありません。
電話でもメールでも差し支えありません。
一度に全員合意する必要もありません。
一部の相続人と合意をして、次に、残りの相続人と合意をすることでも問題ありません。
最終的に相続人全員が合意できれば良いのです。
全ての財産をまとめて合意しなければならないといったこともありません。
一部の財産についてだけ合意をすることもできます。
2遺産分割協議書の提出先は主に5つ
①相続登記をするとき法務局へ提出
被相続人が不動産を所有していた場合、不動産の名義変更が必要になります。
不動産の名義変更のことを相続登記と言います。
不動産を共有することはデメリットが大きいので、おすすめできません。
複数の相続人がいる場合、話し合いによる合意をして単独所有にするといいでしょう。
相続人全員で話し合いによる合意をした場合、合意内容を取りまとめます。
合意内容を取りまとめた文書が遺産分割協議書です。
相続人全員による合意内容に基づいて相続登記をする場合、遺産分割協議書が必要です。
遺産分割協議書には、それぞれの相続人が記名し実印を押印します。
遺産分割協議書の押印が実印による押印であることを証明するため、印鑑証明書を添付します。
②預貯金の解約をするとき銀行など金融機関へ提出
銀行などの金融機関は、口座の持ち主が死亡したことを知ったら口座を凍結します。
口座を凍結したら、預貯金の引出し、口座の解約ができなくなります。
預貯金の引出し、口座の解約をするために、口座の凍結解除をしてもらわなければなりません。
金融機関によっては、専用の相続届を用意している場合があります。
相続届に合意内容を記載し、相続人全員が記名し実印で押印します。
相続届の押印が実印による押印であることを証明するため、印鑑証明書を添付します。
遺産分割協議書を作成した場合、口座を引き継ぐ人だけが相続届を記載します。
遺産分割協議書を作成した方が手続がラクになるでしょう。
③自動車の名義変更をするとき運輸支局へ提出
被相続人が自動車を保有していた場合、自動車の名義変更が必要になります。
自動車の名義変更をする場合、原則として、遺産分割協議書の提出を求められます。
査定額が100万円以下の普通自動車は、遺産分割協議書の提出までは求められません。
遺産分割協議書の代わりに、遺産分割協議成立申立書を提出すれば済みます。
遺産分割協議成立申立書は、自動車を引き継ぐ相続人だけが記名し実印で押印します。
相続人全員の記名や実印での押印が不要になりますから、手続がカンタンになります。
書類の作成がカンタンになるだけで、相続人全員の合意が不要になるわけではありません。
相続人全員の合意は不可欠です。
④株の名義変更をするとき証券会社へ提出
被相続人が証券会社に口座を持っていた場合、相続手続が必要になります。
遺産分割協議書を作成している場合、提出を求められるでしょう。
証券会社も金融機関同様、専用の相続届を用意している場合があります。
相続届に合意内容を記載し、相続人全員が記名し実印で押印します。
相続届の押印が実印による押印であることを証明するため、印鑑証明書を添付します。
遺産分割協議書を作成した場合、口座を引き継ぐ人だけが相続届を記載します。
遺産分割協議書を作成した方が手続がラクになるでしょう。
株式の相続手続をする場合、株式を相続する人が口座を開設している必要があります。
株式を相続する相続人が株取引に詳しくない場合、売却して現金にしたいと思うかもしれません。
株式を売却するのであれば、相続人が自分で手続をしなければなりません。
相続手続をすれば、証券会社が売却してくれるわけではありません。
⑤相続税申告をするとき税務署へ提出
相続が発生しても、相続税申告が必要ない場合がほとんどです。
相続税申告が必要になる人は、全体の10%にも満たないわずかな人だからです。
相続税には、基礎控除があります。
基礎控除=3000万円+600万円×法定相続人の人数
基礎控除は、上記の計算式で求められます。
相続財産が基礎控除以下の場合、相続税はかかりません。
相続税申告すら不要です。
基礎控除を超す場合、相続税申告が必要になります。
遺産分割協議書などの書類とともに相続税申告書を税務署に提出します。
3遺産分割協議書のコピーは使えない
①遺産分割協議書は原本が必要
相続手続をする場合、遺産分割協議書や印鑑証明書は原本を提出しなければなりません。
遺産分割協議書や印鑑証明書のコピーを提出しても受け付けてもらえません。
②遺産分割協議書の原本は返してもらえる
遺産分割協議書や印鑑証明書を提出した場合、原本は返してもらえます。
返してもらうための手続は、提出先によって違います。
法務局などではコピーを取って原本に相違ありませんと記載したうえ、記名押印を求められます。
銀行などの金融機関では、提出先でコピーを取るのでコピーの提出不要と言われる場合があります。
コピーを提出するだけで、原本に相違ありませんなどの記載をしない場合があります。
スムーズに手続をするために原本還付してもらう方法についても、手続先によく確認して対応しましょう。
③遺産分割協議書は相続人全員が原本を持つべき
相続手続をするだけのためであれば、遺産分割協議書は1通あれば充分です。
遺産分割協議書は、相続財産の分け方について相続人全員の合意内容を取りまとめた文書です。
後から合意内容について相続人間で争いになるかもしれません。
遺産分割協議書が手元にあれば、合意内容を確認することができます。
遺産分割協議書に記名して実印で押印してある場合、合意したことを証明することができます。
遺産分割協議書のコピーでは、高い証明力はありません。
相続人間の争いにならないように、遺産分割協議書を作成します。
相続人各自が原本を持つことができるように、相続人の人数分の遺産分割協議書を作成します。
4提出先ごとに遺産分割協議書を作ることができる
遺産分割協議書は、相続財産の分け方について相続人全員の合意内容を取りまとめた文書です。
1通の遺産分割協議書で相続財産すべてを記載する必要はありません。
相続財産の分け方は、一部の財産だけ合意しても有効だからです。
相続財産に不動産と銀行の預貯金がある場合、不動産だけ記載した遺産分割協議書と銀行の預貯金だけ記載した遺産分割協議書を作ることができます。
不動産だけ記載した遺産分割協議書も銀行の預貯金だけ記載した遺産分割協議書も、どちらも有効です。
不動産だけ記載した遺産分割協議書を法務局に提出して相続登記を進めることができます。
相続登記の手続中に、銀行の預貯金だけ記載した遺産分割協議書を銀行に提出して銀行口座の凍結解除を進めることができます。
さらに銀行ごとに遺産分割協議書を作ることもできます。
相続手続は、時間がかかります。
銀行の預貯金の解約などで1か月程度かかることも少なくありません。
相続手続を同時進行で進めると、すみやかに手続が完了します。
5遺産分割協議書作成を司法書士に依頼するメリット
遺産分割協議書は遺産の分け方について、相続人全員による合意を取りまとめた文書です。
合意がきちんと文書になっているからこそトラブルが防止できるといえます。
つまり、書き方に不備があるとトラブルを起こしてしまう危険があります。
せっかくお話合いによる合意ができたのに、取りまとめた文書の不備でトラブルになるのは残念なことです。
トラブルを防止するため、遺産分割協議書を作成したい方は、司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。
相続手続で実印と印鑑証明書が必要になる
1印鑑証明書とは
①市区町村役場に印鑑を登録することができる
15歳以上の人は、自分の印鑑を住民票のある市区町村役場に登録することができます。
印鑑証明書は、本人の登録した印鑑による印影であることを証明する書類です。
市区町村役場に登録した印鑑を実印と言います。
②印鑑証明書が必要になる理由
相続手続を進めようとすると、印鑑証明書を用意するように言われます。
重要な契約や大切な場面では、本人の意思確認のために押印をしてもらうことが多くあります。
特に重要な場面では、実印で押印してもらいます。
実印は本人が大切に保管しているから実印で押印されている場合、本人の意思で押印されたと言えるでしょう。
実印で押印したことを証明するために、印鑑証明書が必要になります。
実印で押印し印鑑証明書を添付することで本人の意思であることが間違いないと第三者にも信用してもらえます。
2遺産分割協議書を作成すると実印と印鑑証明書が必要になる
①相続人全員の合意を証明するため
相続が発生した後、相続財産は相続人全員の共有財産になります。
相続人のひとりが勝手に処分することはできません。
相続財産の分け方について相続人全員で合意をする必要があります。
相続財産の分け方にについて、相続人全員でする話し合いのことを遺産分割協議と言います。
相続財産の分け方について、相続人全員で合意したら、確定して話し合いは終了になります。
全ての財産をまとめて合意しなければならないといったこともありません。
一部の財産についてだけ合意をすることもできます。
相続人全員の合意ができたら、合意内容を文書に取りまとめます。
相続財産の分け方にについて相続人全員の合意内容を取りまとめた文書を遺産分割協議書と言います。
遺産分割協議書は、相続人全員が記名して実印で押印します。
遺産分割協議書の押印が実印であることを証明するために、印鑑証明書を添付します。
相続人全員が実印で押印し印鑑証明書を添付することで、相続手続先に対して相続人全員の合意があることを証明することができます。
②相続登記で遺産分割協議書が必要なとき実印と印鑑証明書が必要になる
相続人が複数である場合や遺言書がない場合、遺産分割協議が必要になります。
相続登記で遺産分割協議書を提出する場合、実印で押印し印鑑証明書を添付します。
相続人が一人の場合、話し合いをするべき他の相続人はいません。
遺言書がある場合、相続人全員の話し合いは必要ありません。
遺産分割協議が必要ない場合、遺産分割協議書は必要ありません。
遺産分割協議書を作成しない場合、印鑑証明書を提出する必要もありません。
印鑑証明書は、遺産分割協議書の押印が実印によるものであることを証明するために添付するからです。
相続登記で遺産分割協議書と印鑑証明書を提出する場合、印鑑証明書に期限はありません。
古い印鑑証明書を提出しても差し支えありません。
相続登記で提出した遺産分割協議書と印鑑証明書は、希望すれば原本還付をしてもらうことができます。
③相続税申告で遺産分割協議書が必要なとき実印と印鑑証明書が必要になる
相続税の申告書等の書類には実印を押印する必要はありません。
認印で差し支えありません。
実印で押印が必要になるのは、遺産分割協議書です。
遺産分割協議書に相続人全員が実印で押印する必要があります。
遺産分割協議書に実印で押印したことを証明するために印鑑証明書を添付します。
相続人が一人の場合や遺言書がある場合、印鑑証明書は不要です。
相続税申告で遺産分割協議書と印鑑証明書を提出する場合、印鑑証明書に期限はありません。
古い印鑑証明書を提出しても差し支えありません。
相続税申告で提出した印鑑証明書は、原本還付をしてもらうことができません。
④相続放棄は実印と印鑑証明書は不要
家庭裁判所に対して、必要な書類をを添えて相続放棄をしたい旨の届出をします。
届出をする先の家庭裁判所は、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です。
家庭裁判所の管轄は裁判所のホームページで調べることができます。
相続放棄をしたい旨の届出の書類のことを、相続放棄申述書と言います。
相続放棄申述書は、相続放棄の届出をする人が押印をします。
実印で押印してももちろんいいのですが、押印は認印で充分です。
実印を押さないから、印鑑証明書を提出することもありません。
にもかかわらず、相続放棄の手続のため実印と印鑑証明書を用意して欲しいと他の相続人に言われたというケースがあります。
相続放棄のためと称していますが、相続放棄の手続のはずがありません。
相続放棄の手続は、相続放棄をする相続人が自分でするものだからです。
相続放棄の手続には、実印も印鑑証明書も不要です。
実印と印鑑証明書を渡して欲しいと言ってきた場合、別の手続をしようとしています。
具体的には、遺産分割協議と相続放棄を混同していると言えます。
自称専門家の場合、遺産分割協議と相続放棄を混同しているケースは度々あります。
3預金の解約や生命保険の請求で印鑑証明書が必要になる
①銀行預金を解約する場合
口座の持ち主が死亡したことを金融機関が知った場合、口座を凍結します。
口座が凍結されると、口座から引き出しや振り込みができなくなります。
口座の凍結解除に印鑑証明書が必要になります。
金融機関によって相続手続が異なりますが、多くの場合、次の人の印鑑証明書が必要です。
(1)相続人が一人だけの場合
預貯金を相続する人の印鑑証明書
(2)遺産分割協議書がある場合
相続人全員の印鑑証明書
銀行預金の解約などで遺産分割協議書と印鑑証明書を提出する場合、独自ルールで印鑑証明書に期限をもうけています。
期限は3か月や6か月以内のことが多いです。
古い印鑑証明書を提出した場合、印鑑証明書を取得し直すことになります。
銀行預金の解約などで遺産分割協議書と印鑑証明書を提出する場合、多くは原本還付をしてもらえます。
(3)遺言書がある場合
預貯金を相続する人の印鑑証明書
(4)裁判所の手続で相続する人が決まった場合
預貯金を相続する人の印鑑証明書
②生命保険の死亡保険金を請求をする場合
生命保険の死亡保険金を請求する場合、受取人の確認のため、印鑑証明書が必要になります。
4実印を押してもらえない場合
①実印がない場合は印鑑登録をしてもらう
実印は、本人の意思が特に重視される重要な場面でのみ使います。
相続人の中には、印鑑登録をしたことがない人がいるかもしれません。
印鑑登録をしていない場合、印鑑証明書は発行されません。
実印は、重要な場面でのみ使うものだから、普段は人目にさらすことはないでしょう。
大切に保管して、そのままどこに保管したか分からなくなることがあります。
過去に印鑑登録をしたものの実印を紛失した場合、印鑑の廃止をすることができます。
あらためて印鑑登録をすることで登録した印鑑を実印として使うことができます。
②相続人が海外在住者の場合は署名証明書
15歳以上の人は、自分の印鑑を住民票のある市区町村役場に登録することができます。
住民票のない人は、自分の印鑑を登録する市区町村役場がありません。
印鑑を登録できないから、印鑑証明書を発行してもらうことができません。
海外在住者は、印鑑証明書の代わりに署名証明書を添付します。
署名証明書は、在外公館で発行してもらうことができます。
署名すべき遺産分割協議書を在外公館に持参して、領事の面前で署名します。
領事の面前で署名したことを証明してくれます。
署名した遺産分割協議書と署名証明書を綴り合せます。
③相続人が収監中の場合は施設長の証明書
相続人が刑事施設などに収監されている場合があります。
刑事施設などでは実印を保管していないし、印鑑証明書を取り寄せることができません。
遺産分割協議書を差入し、署名し指印を押してもらいます。
指印の横に、本人の指印に相違ありませんと書いて、施設長に証明をしてもらいます。
④相続人が相続財産の分け方に合意していない場合は裁判手続
相続財産は、相続人全員の共有財産です。
相続財産の分け方は、相続人全員の合意によって決定します。
遺産分割協議書は、相続人全員の合意内容を取りまとめたもののはずです。
遺産分割協議書に実印を押印しない場合や印鑑証明書を渡してくれない場合、相続財産の分け方に合意していない可能性があります。
遺産分割協議は、相続人全員の合意でなければなりません。
多数決で決めることはできませんから、一人でも反対の人がいると相続手続を進めることはできなくなります。
まずは粘り強く話し合いをするのが大切です。
どうしても話し合いができない場合、家庭裁判所の助力を借りて遺産分割をすることになります。
5印鑑証明書を渡したくない場合
①司法書士などの専門家に相続手続を依頼する
遺産分割協議書は、相続人全員が記名して実印で押印します。
遺産分割協議書の押印が実印であることを証明するために、印鑑証明書を添付します。
相続人全員の印鑑証明書がない場合、原則として、相続手続を進めることはできません。
一部の相続人から一方的に印鑑証明書を渡すように迫られた場合、不安な気持ちになるでしょう。
日ごろから金遣いが荒い相続人や多額の借金を負っている相続人から言われた場合、印鑑証明書を悪用されるのではないかと疑心暗鬼になるかもしれません。
遺産分割協議の内容に納得しているが、印鑑証明書などの悪用が心配な場合です。
相続手続は、司法書士などの専門家に依頼することができます。
司法書士などの専門家に依頼して、直接、司法書士に渡すといいでしょう。
相続手続が終わった後も、直接返して欲しい旨を伝えると直接やり取りができます。
②自分が代表相続人として相続手続をする
司法書士などの専門家に依頼しない場合で、自分が代表相続人として相続手続をする方法があります。
相続手続は、一般的に手間と時間がかかります。
自分が面倒な手続をすると申し出ると、喜んで印鑑証明書などの相続書類を渡してくれるかもしれません。
6相続手続を司法書士に依頼するメリット
相続が発生すると、相続人は悲しむ暇もなく相続手続に追われます。
ほとんどの人は相続手続は不慣れで、聞き慣れない法律用語で疲れ果ててしまいます。
インターネットの普及で多くの人は簡単に多くの情報を手にすることができるようになりました。
多くの情報の中には正しいものも、適切でないものも同じように混じっています。
相続登記も簡単にできる、ひとりでできたという記事も散見されます。
不動産は重要な財産であることも多いので、登記手続きは一般の方から見ると些細なことと思えるようなことでやり直しになることも多いものです。
法務局の登記相談を利用すれば、シンプルな事例の申請書類などは教えてもらえますが、通常と異なる事例に関しては、相談する側から話さないとわざわざ説明してくれません。
知識のない方にとっては、通常と異なっているかどうか判断がつかないでしょう。
司法書士などの専門家から見れば、トラブルのないスムーズな相続手続であっても、知識のない一般の方はへとへとになってしまいます。
住所がつながらない場合など、シンプルな事例とは言えない事情がある場合は申請を取下げて、やり直しになることが多いでしょう。
司法書士は登記の専門家です。
スムーズに相続手続を完了させたい方は司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。
遺産分割協議書に預金の分け方を書く方法
1遺産分割協議が必要な場合
①遺言書に書いていない財産が見つかった場合
遺言書がある場合、その遺言書のとおり相続します。
原則として、相続人全員による話し合いは必要ありません。
遺言書があっても、遺言書に書いていない財産が見つかることがあります。
この場合は、見つかった財産の分け方を決めるため、相続人全員による合意が必要になります。
②遺言書が無効な場合
遺言書の書き方ルールは厳格に決まっています。
この書き方ルールに添わない遺言書が見つかることがあります。
せっかくの遺言書ですが、書き方ルールに添わない遺言書は無効です。
遺言書はないものとして扱われます。
遺言書がない場合と同じように、見つかった財産の分け方を決めるため、相続人全員による合意が必要になります。
③遺言書の内容と異なる相続をする場合
法的に有効な遺言書がある場合、原則として、遺言書のとおり相続することになります。
遺言書によって相続する人と相続人全員が合意をすれば遺言書の内容と異なる合意した内容の相続をすることができます。
2遺産分割協議書に預金の分け方を書く方法
①銀行の記載例
相続財産中、次の被相続人名義の財産については、相続人○○○○が相続する。
金融機関名 ○○銀行 ○○支店
預金種別 普通預金
口座番号 ○○○○○○○
金融機関名 ○○銀行 ○○支店
預金種別 定期預金
口座番号 ○○○○○○○
②ゆうちょ銀行の記載例
相続財産中、次の被相続人名義の財産については、相続人○○○○が相続する。
金融機関名 ゆうちょ銀行
通常貯金
記号 ○○○○○
番号 ○○○○○○○○
金融機関名 ゆうちょ銀行
定額貯金
記号 ○○○○○
番号 ○○○○○○○○
③信用金庫や農業協同組合の出資金の記載例
相続財産中、次の被相続人名義の財産については、相続人○○○○が相続する。
金融機関名 ○○信用金庫○○支店
預金種別 普通預金
口座番号 ○○○○○○○
出資金 会員番号○○○○○○○
信用金庫や農業協同組合に口座がある場合、出資金の合意を忘れがちです。
口座の解約だけでなく出資金の払戻を受けるために、もれなく記載しましょう。
④代表相続人の相続して代償金を支払う場合の記載例
第1条
相続財産中、次の被相続人名義の財産については、相続人○○○○が相続する。
金融機関名 ○○銀行 ○○支店
預金種別 普通預金
口座番号 ○○○○○○○
金融機関名 ○○銀行 ○○支店
預金種別 定期預金
口座番号 ○○○○○○○
第2条
相続人○○○○は前条の預金を取得する代償として、次のとおり令和○年○月○日限り指定口座に振込みの方法により支払う。
振込手数料は相続人○○○○の負担とする
相続人□□□□ □□□万円
相続人◇◇◇◇ ◇◇◇万円
預貯金を分ける場合、金融機関ごとに分ける合意ができないことがあります。
預貯金の残高に違いがあるからです。
公平な分割のため、代表相続人が相続して代償金を払う方法をとることができます。
遺産分割協議書に代表相続人が相続することだけを記載した場合、代償金の支払いに対して贈与税が課されるリスクがあります。
遺産分割の代償金であることを明記して、贈与税課税のリスクを回避します。
3遺産分割協議書に預金の分け方を書くときの注意点
①預貯金を分けるためには相続人全員の合意が必要
金融機関は、口座の持ち主が死亡した事実を知った時点で口座を凍結します。
相続人であっても一人が勝手に口座を解約することはできません。
相続人の一人が勝手に口座を解約できるとすると、相続人間で大きなトラブルになるでしょう。
銀行は、他の相続人から強い抗議を受けることになります。
被相続人の預金を守れなかった場合、銀行の信頼は失墜すると言えます。
このようなことを防ぐため、銀行は口座を凍結します。
凍結した口座は、預金の引き出しや引き落としができません。
口座の凍結解除をしてもらうためには、相続人全員で預金の分け方の合意をする必要があります。
相続人全員の合意ができなければ、口座は凍結されたままです。
②遺産分割協議書に金額は記載不要
遺産分割協議書は、相続財産の分け方を取りまとめた文書です。
相続財産の分け方が分かるように記載すればいいと言えます。
財産の分け方は、財産を特定できるように記載します。
預貯金であれば、○○銀行○○支店普通預金口座番号○○○○○○○のように口座で特定すれば充分でしょう。
口座の残高を記載した場合、利息や配当金などを含めて正確に記載しなければなりません。
不備があると銀行は解約に応じてくれません。
わざわざ金額を記載する必要はないでしょう。
③銀行ごとに遺産分割協議書を作ることができる
金融機関は、口座の持ち主が死亡した事実を知った時点で口座を凍結します。
生活資金の口座は、早く凍結解除してもらいたいものです。
遺産分割協議書は、相続財産すべてを1通に取りまとめる必要はありません。
生活資金の口座だけ先に分け方の合意をすることができます。
合意ができた財産についてだけ遺産分割協議書を作ることができます。
銀行ごとに別々の遺産分割協議書を作ることも差し支えありません。
4遺産分割前の預金払い戻し
口座がいったん凍結されると、遺産の分け方について相続人全員で合意するまで、預金の引き出しはできません。
なのに、被相続人の未払い入院費や葬儀の費用を被相続人の口座から払おうとすることが多いのです。
すぐに現金が必要な場合、分割前の預金払い戻し制度があります。
分割前の預金払い戻し制度は手続方法が2種類あります。
銀行などの金融機関に直接手続する方法と家庭裁判所に手続する方法です。
①銀行に直接手続する方法
カンタンで費用が掛かりません。
払い戻し額は最高で150万円です。
預金額や法定相続分によってはもっと低いこともあります。
②家庭裁判所に手続する方法
調停や審判の申立をしていることが前提条件です。
家庭裁判所の手続なので、煩雑で時間と手間の負担が大きいです。
払戻の必要があることを裁判所に説明する必要があります。
必要が認められれば預金全額の払戻も認められることもあります。
家庭裁判所の判断で、預金全額の払戻が認められない場合もあります。
分割前の預金払い戻しをすると、単純承認したと判断されるおそれがあります。
単純承認したと判断された場合、相続放棄ができなくなります。
相続財産の内容がはっきりしないうちに利用するのは慎重に判断しましょう。
5預貯金口座の相続手続を司法書士に依頼するメリット
口座を凍結されてしまったら、書類を揃えて手続すれば解除してもらえます。
このとき必要な書類は銀行などの金融機関によってまちまちで、手続にかかる方法や手続にかかる期間もまちまちです。
銀行内部で取扱が統一されていないことも少なくありません。
窓口や電話で確認したことであっても、上席の方に通してもらえないケースも多々あります。
このため何度確認しても違う説明をされたり、やり直しになることがあります。
口座の解約は、スムーズに手続できないことが多いのが現状です。
日常生活に不可欠な銀行口座だからこそ、スムーズに手続したいと思う方が多いでしょう。
お仕事や家事でお忙しい方や高齢、療養中などで手続きが難しい方は、手続を丸ごとおまかせできます。
ご家族にお世話が必要な方がいて、お側を離れられない方からのご相談もお受けしております。
凍結口座をスムーズに解除したい方は、司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。
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