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被相続人契約の貸金庫を相続人が開ける方法

2026-01-09

1貸金庫契約者が死亡すると利用停止になる

①貸金庫契約の契約上の地位は相続財産

被相続人が生前に、貸金庫契約をしていることがあります。

貸金庫の利用契約は、賃貸借契約と考えられます。

賃貸借契約における契約上の地位は、相続財産です。

契約上の地位は、相続人全員に相続されます。

一部の相続人が単独で利用することはできません。

一部の相続人が単独で利用できないから、単独で開扉することはできません。

②貸金庫の開扉は相続人全員の同意が必要

貸金庫を開扉することは、貸金庫の管理行為と考えられています。

貸金庫を開扉するためには、相続人全員の合意が必要です。

相続人全員の合意がないまま、銀行は貸金庫の開扉を認めません。

貸金庫の契約者が死亡すると、一部の相続人が単独で開扉することはできません。

貸金庫の契約者が死亡すると、事実上、利用停止になります。

③銀行が貸金庫の開扉を認めない理由

理由(1)貸金庫の中身は相続財産だから

貸金庫の契約者が死亡すると、貸金庫の中身は相続人が相続します。

相続財産は、相続人全員の共有財産です。

共有財産の管理行為は、共有者全員の合意が必要です。

共有者である相続人全員の合意がないと、銀行は開扉を認めません。

理由(2)貸金庫内の財産の帰属を確認する必要があるから

銀行は、貸金庫の中身を把握していません。

一部の相続人が貸金庫を開扉すると、中の財産を持ち出す可能性があります。

一部の相続人が勝手に財産を持ち出すと、他の相続人から強い抗議を受けることになるでしょう。

ときには、銀行が相続争いに巻き込まれるおそれがあります。

銀行が相続争いに巻き込まれると、銀行の信用は失墜するでしょう。

貸金庫内の財産はだれに帰属するのか、確認する必要があります。

銀行は信用失墜を免れるため、一部の相続人による単独開扉を認めません。

理由(3)本人確認や権限確認が厳格だから

貸金庫契約は、本人のみ開扉できることが安全の基礎です。

契約者が死亡した後は、当然開扉することはできません。

相続人であっても、遺産分割協議が成立するまで権限があるか判断できません。

貸金庫の開扉権限が確認できる書類を提出しないと、銀行は開扉を認めません。

④勝手に開扉すると相続トラブル

一部の相続人が勝手に開扉すると、深刻な相続トラブルに発展します。

貸金庫の中には、重要な財産が保管してあることが多いからです。

他の相続人から横領や財産隠しの疑いをかけられるでしょう。

相続人全員の同意なく開扉することは、慎むべき行為です。

2被相続人契約の貸金庫を相続人が開ける方法

方法①相続人全員の同意で開扉

相続人全員の同意と立会いのうえで、貸金庫を開扉します。

最も安全で、原則的な取り扱いです。

貸金庫契約における契約上の地位は、相続人全員が共有しているからです。

相続人全員が立会えなくても、印鑑証明書付き同意書があれば開扉できるのが一般的です。

銀行は、相続人全員の同意を確認して開扉を認めます。

貸金庫内の内容物は、相続人全員で確認します。

貸金庫内の内容物は、相続財産です。

遺産分割協議の対象になります。

方法②遺言執行者による開扉

(1)遺言執行者が遺言書の内容を実現する

遺言書は、作成するだけでは意味がありません。

遺言書の内容は、自動で実現するわけではないからです。

遺言執行者とは、遺言書の内容を実現する人です。

遺言書で、遺言執行者を指名することができます。

(2)相続人の同意は不要

遺言執行者がいる場合、遺言執行者が貸金庫を開扉することができます。

遺言執行者は、遺言書の内容を実現する権限が与えられるからです。

相続人全員の同意は、不要です。

遺言執行者がいると、相続人は遺言執行者の妨害行為をすることができないからです。

(3)遺言書が無効だと相続人全員の同意

遺言書が無効になると、遺言執行者に権限はありません。

原則に立ち返って、相続人全員の同意が必要になります。

遺言書を作成する場合、自筆証書遺言か公正証書遺言を作成することがほとんどです。

自筆証書遺言は、遺言者が自分で書いて作る遺言書です。

専門家の関与なしで作られるから、無効になる可能性が高い遺言書です。

自筆証書遺言を提示しても、銀行は相続人全員の同意を要求します。

家庭裁判所の検認手続を受けた後であっても、自筆証書遺言は無効になる可能性があるからです。

遺言書が無効になると、開扉に応じた銀行は訴えられるおそれがあります。

わずかなリスクでも回避したいから、相続人全員の同意を要求します。

(4)財産目録を作成

遺言執行者は、財産目録を作成する義務があります。

貸金庫を開扉したら、内容物をひとつひとつ確認します。

立会いをした相続人と一緒に、財産目録を作成します。

遺言執行者は、すみやかに次の事項を共有します。

・貸金庫の開扉の日時

・内容物の一覧

・遺言書に基づく処理方針

・引き渡し済の内容物の記録

すみやかに財産目録を作成し相続人に情報共有すると、透明性確保に役立ちます。

方法③事実実験公正証書

(1)公証人が立会いをする

相続人全員の同意と立会いのうえで、貸金庫を開扉するのが原則です。

さまざまな家族の事情から、相続人全員の同意と立会いが得られないことがあります。

事実実験公正証書とは、公証人がその場で見聞きした事実を書き記した公正証書です。

その時点で存在した事実・状況を公的に記録するために、作成します。

(2)貸金庫の内容物を公的に証明できる

貸金庫を開扉する際、公証人に立会いを依頼します。

公証人は、次の事項を確認して公正証書を作成します。

・貸金庫を開扉したときの内容物の状況

・貸金庫の中にあった書類や現金などの数量

・遺言書の存在の有無や状態、破損状況、封印の状況

公証人は、相続とは無関係な中立的立場です。

中立的立場の公証人が客観的事実を記録するから、内容物に関するトラブルを防止することができます。

他の相続人から銀行が訴訟を提起される心配がなくなります。

事実実験公正証書があれば、財産隠しなどのトラブルから銀行が守られます。

(3)銀行によっては事実実験公正証書は必須

事実実験公正証書は、法律上の義務ではありません。

相続人間のトラブルが予想される場合、大きな威力があります。

内容物に関するトラブルを防止できるから、銀行は貸金庫の開扉に応じます。

銀行はトラブルに巻き込まれることを非常に嫌います。

銀行によっては、事実実験公正証書は必須の扱いです。

(4)相続人は見守るだけ

事実実験公正証書を作成するのは、公証人です。

相続人は、特に何もすることはありません。

公証人と銀行担当者が手続するのを見守るだけです。

内容物にもよりますが、1時間程度で手続が終了します。

(5)公証人に手数料がかかる

事実実験公正証書には、作成手数料がかかります。

貸金庫の内容物を記録するから、内容物によって金額は異なります。

公証人は貸金庫がある銀行に出張してもらう必要があるから、出張費が加算されます。

方法④家庭裁判所の手続を利用

(1)行方不明の相続人に不在者財産管理人選任の申立て

さまざまな家族の事情から、相続人と疎遠になることがあります。

長期間疎遠になったまま連絡が取れず、行方不明になることがあります。

不在者財産管理人とは、行方不明の人の財産を管理する人です。

家庭裁判所に申立てをして、不在者財産管理人を選任してもらいます。

不在者財産管理人選任の申立てから選任まで、1~2か月程度かかります。

不在者財産管理人が立会いをして、貸金庫の開扉をすることができます。

貸金庫を開扉した後は、行方不明の相続人に代わって遺産分割協議をすることができます。

不在者財産管理人が遺産分割協議をする場合、家庭裁判所の許可が必要です。

(2)生死不明の相続人に失踪宣告の申立て

長期間行方不明になったままである場合、死亡の可能性が高いことがあります。

生死不明のまま長期間経過しても、生きている扱いです。

失踪宣告とは、生死不明の人を死亡扱いにする手続です。

家庭裁判所に申立てをして、失踪宣告をしてもらいます。

失踪宣告の申立てから失踪宣告まで、1年程度かかります。

失踪宣告を受けると、たとえ生きていても死亡と見なされます。

死亡と見なされるから、相続が発生します。

相続人が立会いをして、貸金庫の開扉をすることができます。

貸金庫を開扉した後は、相続人が遺産分割協議をすることができます。

(3)相続財産一部について遺産分割調停

貸金庫契約における契約上の地位は、相続人全員が共有しています。

貸金庫契約における契約上の地位は、相続財産だからです。

相続財産一部についてのみ、遺産分割調停を申し立てることができます。

貸金庫契約における契約上の地位についてのみ、遺産分割調停を申し立てることができます。

遺産分割調停とは、家庭裁判所の助力を得て相続人全員でする話し合いです。

家庭裁判所の助力を得ても話し合いがまとまらない場合、遺産分割審判がされます。

貸金庫契約における契約上の地位について審判を受けて、開扉することができます。

(4)家庭裁判所の手続は手間と時間と費用がかかる

家庭裁判所の手続は、安易に選択すべきではありません。

家庭裁判所の手続は、複雑です。

手間と時間と費用がかかるからです。

相続人全員の同意が得られない場合、最終的手段と考えるといいでしょう。

3貸金庫を開扉する流れ

①具体的手順

手順(1)貸金庫の存在の確認

手順(2)貸金庫がある銀行へ連絡

貸金庫契約者が死亡したことを伝えれば、開扉方法の案内をしてもらえます。

手順(3)相続人調査

必要な戸籍謄本を準備します。

手順(4)相続人全員の同意取得

手順(5)銀行へ事前予約

手順(6)必要書類の提出

開扉方法の案内で指示された必要書類を提出します。

手順(7)貸金庫の開扉

②必要書類

一般的な必要書類は、次のとおりです。

・銀行指定の貸金庫開扉依頼書

・被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本

・相続人全員の戸籍謄本

・相続人全員の印鑑証明書

・相続人全員の同意書

・契約時の届出印

・貸金庫の鍵、カード

貸金庫の鍵、カードを紛失しているときは、別途手続と手数料が必要です。

4遺言書を貸金庫に入れると開扉できない

①遺言執行者の権限を証明できない

遺言執行者がいる場合、遺言執行者が貸金庫を開扉することができます。

遺言執行者が貸金庫を開扉する場合、遺言執行者であることを銀行に示す必要があります。

遺言書が貸金庫内にあると、遺言執行者であることを示すことができません。

貸金庫内に遺言書があるからと説明しても、銀行は納得してくれません。

遺言書を貸金庫に入れると、遺言執行者が開扉できなくなります。

②公正証書遺言は秘密保持に最適

遺言書には、プライベートな内容が書かれます。

生前は相続人などに、内容を知られたくないと考えるでしょう。

貸金庫に保管すれば、安心と考えるかもしれません。

貸金庫契約者が死亡した後に開扉するためには、相続人全員の同意が必要です。

相続人全員の同意がないと開扉できないから、相続人が困ります。

遺言書を貸金庫に入れると、遺言執行者が開扉できなくなります。

遺言書の内容を秘密にしたい場合、公正証書遺言がおすすめです。

公正証書遺言原本は、公証役場が厳重に保管するからです。

遺言者の生前は、公正証書遺言の内容だけでなく有無も秘密にされます。

遺言者が死亡した後に、相続人は遺言書検索システムで遺言書の有無を調べることができます。

遺言者が死亡した後に、相続人は公正証書遺言の謄本請求をすることができます。

公正証書遺言の謄本があれば、遺言執行者が貸金庫を開扉することができます。

公正証書遺言は、遺言書の秘密保持に最適です。

5貸金庫の相続と遺言書作成を司法書士に依頼するメリット

貸金庫には財産などの重要なものの他に、人目にさらしたくないものが預けてある場合があります。

遺言書は家族のためを思って書くことが多いでしょう。

家族のために書いたものの、生前に家族には見せたくない場合も少なくありません。

貸金庫は、自分だけが開けられると思うと、遺言書を預けたくなるかもしれません。

貸金庫に遺言書を預けると安心とすすめている自称専門家もいます。

相続が発生すると、貸金庫が開けられなくなることはあまり知られていません。

貸金庫に遺言書を預けたまま、相続が発生すると相続人全員の協力が必要になります。

遺言書の内容によって相続手続の方針が変わるからです。

単に遺言書を人目にさらしたくないのであれば、公正証書遺言がおすすめです。

貸金庫の相続も遺言書作成も司法書士はサポートしています。

遺言書作成を考えている方と貸金庫の相続をしたい方は、司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。

遺産分割協議における寄与分の役割と位置づけ

2026-01-08

1遺産分割協議における寄与分の役割と位置づけ

①遺産分割協議は相続人全員の合意で成立

相続が発生したら、相続財産は相続人全員の共有財産です。

相続財産の分け方は、相続人全員の合意で決定します。

遺産分割協議とは、相続財産の分け方について相続人全員でする話し合いです。

遺産分割協議は、相続人全員の合意で成立します。

②寄与分は遺産分割協議が前提の制度

寄与分とは、被相続人の財産の維持・増加について特別な貢献をした人がいる場合、特別な貢献をした人に対して、相続分以上の財産を受け継いでもらう制度です。

寄与分の制度は、相続の基本ルールではありません。

特別な貢献があったと認められた場合に限り、特別に相続のルールを修正する制度です。

寄与分は、例外の制度です。

遺産分割協議において、特別な貢献を反映させる制度が寄与分です。

寄与分は、遺産分割協議が前提です。

相続人による話し合いの場が存在するからこそ、寄与分は意味があると言えます。

寄与分を請求し、協議し、相続人全員で合意して、相続分に反映されます。

遺産分割協議が不要なら、寄与分は議論になりません。

③寄与分は自動的に加算されない

相続人が相続する相続分は、法律で決められています。

遺産分割協議は、法律で決められた相続分を参考にして具体的な財産の分け方を決める場です。

特別な貢献をした人がいても、自動で相続分は加算されません。

寄与分は、例外的な取り扱いだからです。

寄与分は、相続分を当然に加算する制度ではありません。

特別な貢献をした人がいても、当然に相続分が修正されることはありません。

寄与分は、請求主義の制度だからです。

仮に自動で加算する仕組みにすると、他の相続人の権利を侵害するおそれがあります。

権利侵害は許されませんから、主張と協議を必須にしています。

④寄与分が認められて相続分に反映される

寄与分は、遺産分割協議の中で調整される制度です。

だれがどのような貢献をしたのか、遺産分割協議の中で調整されます。

どの程度の貢献があったのか、遺産分割協議の中で決められます。

寄与分は、相続人全員の合意で決められると言えます。

寄与分は、遺産分割協議で決められるからです。

相続人全員に寄与分が認められて、相続分に反映されます。

相続人全員の合意ができなければ、裁判などで争うことになります。

裁判所は、頑張った人を救済する機関ではありません。

客観的証拠で裁判所に認められて、相続分に反映されます。

寄与分があるはずという主観的な主張だけでは、寄与分は相続分に反映されません。

例外的な取り扱いだから、寄与分の認定は非常に慎重です。

相続の基本ルールを崩す合理性が第三者にも認められる場合にのみ、認められます。

寄与分が例外的な取り扱いであることの現れです。

2 寄与分は頑張った人に報いる制度ではない

①寄与分は頑張りを評価しない

被相続人の財産の維持増加に対する特別な寄与があったとき、寄与分で評価の対象になります。

頑張ったことは、評価の対象外です。

・どれだけ時間を使ったか

・どれだけ苦労したか

・どれだけ献身的だったか

上記は、いずれも評価されません。

その人の頑張りは評価されないから、努力の量を主張しても意味がありません。

②家庭裁判所は客観的証拠で判断する

家庭裁判所は、被相続人や相続人の関係性を知りません。

相続人間の前提として共有する感情や信頼関係がありません。

寄与分があるはずという主観的な主張だけで、認められることはありません。

寄与分は、主張する人が立証する必要があります。

家庭裁判所は、何も知らない第三者です。

主観的な事実認識は、客観的証拠がなければ評価されません。

客観的証拠がないと、何も知らない第三者は判断できないからです。

どれだけ多大な貢献があっても、客観的証拠がないと寄与分は認められません。

何も知らない第三者が評価できるだけの充分な客観的証拠が必要です。

③客観的証拠が重要な理由

理由(1)寄与分は他の相続人の相続分を減らす制度だから

寄与分が認められると、寄与した相続人の相続分は増え他の相続人の相続分は減ります。

一部の相続人の主張が通ると、他の相続人がソンする制度と言えます。

大変だった、頑張ったなどの主張だけでは、寄与があったのか客観的に分かりません。

主観的な主張だけでなく、寄与があったのか、どの程度の寄与なのか客観的に確認する必要があります。

主観的主張だけで寄与分を認めると、他の相続人の権利を侵害するかもしれません。

他の相続人の権利を侵害しないため、客観的証拠が不可欠です。

理由(2)寄与分は相続の基本ルールの例外だから

相続の基本ルールは、法定相続分での遺産分割です。

寄与分は、基本ルールに対する例外です。

例外を正当化できるだけの客観的証拠が必要です。

どのような行為をどのくらいの期間行って、どのように財産の維持増加をしたのか、客観的証拠で示す必要があります。

例外を認めるに足りる正当性を示すため、客観的証拠が必要です。

理由(3)過去の事実認定が中心の制度だから

寄与分の判断は、過去に行った事実の認定する作業です。

過去の事実は、当事者の記憶があいまいになります。

当事者の主観が混じります。

家族によって、事実のとらえ方が異なります。

過去に行った事実を適切に認定するため、客観的証拠が重要です。

④寄与分が目指す公平の意味

(1)公平の対象は相続人全員

寄与分が目指す公平は、寄与分を主張する相続人のみが対象ではありません。

寄与分の申立人も他の相続人も、公平の対象です。

寄与分が目指す公平の対象は、相続人全員です。

相続人全員が公平だから、相続人全員が納得できる公平のため客観的証拠が欠かせません。

(2)寄与分の公平は救済ではない

寄与分が目指す公平は、相続人全体の相続分のバランスを整える公平です。

そもそも、公平の対象は相続人全員です。

頑張った人を救済する制度ではありません。

寄与分は、最小限数値化して調整する制度です。

寄与分は、申立人の納得や報われたい感情を救済する制度ではありません。

(3) 公平の基準は財産の維持増加

寄与分の評価対象は、財産の維持増加に対する寄与のみです。

どれだけ苦労したかなどの努力や頑張りは、評価の対象外です。

寄与分が目指す公平は、客観的な財産の維持増加に限られます。

(4)公平のため客観的証拠が必要

寄与分の認定に客観的証拠を求められると、反発や困惑が生まれます。

家庭裁判所が客観的証拠を求めるのは、疑っているからではありません。

寄与分が目指す公平は、相続人全員の公平だからです。

寄与分を主張する相続人にも他の相続人にも、不当な不利益を与えることは許されません。

相続人全員の公平のため、客観的証拠が必要です。

(5)客観的証拠に基づいて判断できる範囲の公平

客観的証拠が準備できないと、寄与分は認定されません。

寄与分が目指す公平は、客観的証拠に基づいて判断できる範囲の公平です。

寄与分を主張する相続人が感じる公平とは、異なる公平かもしれません。

自己評価を裏付ける客観的証拠が準備できないことが多いでしょう。

寄与分に期待すること自体がトラブルを深刻化させる原因です。

客観的証拠がなくても、寄与がなかったと言っているわけではありません。

家庭裁判所は、寄与分を主張する相続人の努力や頑張りを否定するわけではありません。

他の相続人に不利益を及ぼす形で寄与分を認めるためには、客観的証拠が必要であるに過ぎません。

⑤特別受益と寄与分で遺産分割は複雑になる

特別受益とは、一部の相続人だけが特別に受けた利益です。

過去に特別に受けた利益を考慮して、公平に遺産分割を実現させます。

特別受益と寄与分の制度は、どちらも公平な遺産分割を実現する制度です。

特別受益は、過去に受けた利益を戻す調整です。

寄与分は、過去に行った貢献を評価する調整です。

どちらの制度も調整のために、限定的に用いられます。

相続人が特別受益や寄与分の主張をすると、遺産分割協議が複雑になりがちです。

調整対象が増えるため、当事者の認識に差が生じやすいからです。

⑥寄与分に期待すると危険な理由

理由(1)頑張りや努力は評価されない

寄与分の評価は、財産の維持増加に限られています。

介護、家事、付き添い、見守りなどは、財産的な評価がされません。

介護や家事で頑張っても努力しても、寄与分で評価されません。

理由(2)寄与分は例外的制度

寄与分は、相続の基本ルールを崩す例外です。

基本ルールを崩すに値する特別性や合理性が必要です。

普通の介護や家事程度では、例外を認める必要はありません。

理由(3)寄与分は他の相続人の相続分を減らす

寄与分が認められると、他の相続人の相続分が減ります。

他の相続人が納得できる客観的証拠で、慎重厳格に審査されます。

理由(4)客観的証拠が残りにくい

介護や生活支援は、家族として当然に行っていることが多いです。

介護や生活支援の事実はあっても、客観的証拠が残りにくいです。

客観的証拠がないと、寄与分は認められません。

理由(5)申立人の主観と法的評価のちがい

申立人は、自分は頑張ったから報われたいと願っています。

寄与分の認定で、頑張ったことは評価の対象外です。

頑張りが否定されたと感じて、ショックを受けます。

理由(6)家族関係が壊れやすい

寄与分が認められると、他の相続人の相続分が減ります。

家族の感情的対立が発生しやすくなります。

理由(7)金額が少ない

頑張ったことの自己評価は、高くなりがちです。

寄与分は財産の維持増加についてのみ、評価されます。

介護の苦労などは、財産的評価に結びつきにくいのが現実です。

3遺言書があれば寄与分は問題にならない

①遺言書があれば遺産分割協議は不要

被相続人が生前に遺言書を作成していることがあります。

遺言書があれば、遺言書の内容どおりに遺産分割をすることができます。

遺言書の内容を実現すればいいから、遺産分割協議は不要です。

寄与分は、遺産分割協議が前提の制度です。

遺産分割協議が不要になると、寄与分は問題になりません。

寄与分が問題になるのは、被相続人の意思が明確でないからです。

遺言書があれば、寄与分を争う必要がなくなります。

②寄与分は被相続人の意思を代替できない

遺言書は、遺言者の意思を示すものです。

被相続人の意思をもっとも直接的に示すことができます。

被相続人は、だれが貢献したのか知っているはずです。

客観的証拠がなくても、どの程度の貢献なのか分かっているはずです。

寄与分は、被相続人の意思を代替できません。

被相続人の意思を示すことができるのは、遺言書だけです。

③公正証書遺言はトラブル防止になる

遺言書を作成する場合、自筆証書遺言か公正証書遺言を作成することがほとんどです。

自筆証書遺言は、自分で書いて作る遺言書です。

公正証書遺言は、遺言内容を公証人に伝え公証人が書面に取りまとめる遺言書です。

遺言書を作成する場合、公正証書遺言がおすすめです。

公正証書遺言は公証人が関与して作成します。

公証人は、法律の専門家です。

遺言書が無効になりにくく、高い信頼があります。

作成した遺言書は、公証役場で厳重保管されます。

偽造や変造を疑われるトラブルが発生しません。

公正証書遺言は、相続人間のトラブル防止になります。

4生前対策と遺産分割協議書作成を司法書士に依頼するメリット

遺産分割協議書作成は、相続手続最大の山場です。

相続財産の分け方を決めるのは、トラブルになりやすい手続だからです。

被相続人の事業を手伝っていた、療養看護に努めた相続人がいる場合、この苦労を相続で報いてもらいたいと思います。

高いハードルを越えて寄与分が認められた場合であっても、本人が思うような金額になることはほとんどありません。

法律で実質的公平が図られるのは、残念なことですが事実上困難です。

相続手続が大変だったという人は、分け方を決めることができないから大変だったのです。

生前に相続財産の分け方を対策しておくことが相続をラクにします。

相続財産の分け方が決まれば、遺産分割協議書作成は一挙にラクになります。

相続手続がラクに済めば、家族の絆が強まります。

家族の幸せのために、生前対策と遺産分割協議書作成を司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。

失踪宣告の申立て前に知っておくべき注意点

2026-01-07

1失踪宣告で死亡と見なされる

①家族のために失踪宣告

相当長期間、行方不明になっている場合、死亡している可能性が高いことがあります。

条件を満たした場合、死亡の取り扱いをすることができます。

失踪宣告とは、行方不明の人が死亡した取り扱いとするための手続です。

失踪宣告がされたら、たとえ死亡していなくても死亡した取り扱いをします。

行方不明が長期化すると、家族が困ります。

家族であっても、行方不明の人の財産を処分することができません。

行方不明者の配偶者は、再婚することができません。

残された家族のために、行方不明者を死亡したものと扱う制度が失踪宣告の制度です。

②失踪宣告には条件がある

失踪宣告とは、行方不明の人が死亡した取り扱いとするための手続です。

失踪選考がされると、死亡と見なされるという強い効果があります。

失踪宣告が認められるためには、次の条件があります。

(1)行方不明の人が生死不明であること

(2)生死不明のまま一定期間継続していること

③失踪宣告で相続が発生する

失踪宣告がされると、相続が発生します。

失踪宣告がされると、死亡と見なされるからです。

相続人になるはずの人が先に死亡したら、代襲相続が発生します。

失踪宣告で死亡と見なされても、代襲相続は発生します。

相続人が後に死亡したら、数次相続が発生します。

失踪宣告がされると、死亡と見なされる日に相続が発生します。

死亡と見なされる日は、自由に選ぶことができません。

失踪宣告で相続が発生すると、相続が複雑になります。

④失踪宣告で婚姻関係が終了する

失踪宣告がされると、婚姻関係が終了します。

失踪宣告がされると、死亡と見なされるからです。

失踪宣告がされた人の配偶者は、再婚することができます。

2失踪宣告の申立て前に知っておくべき注意点

①失踪宣告には時間がかかる

(1)失踪期間を満たす必要がある

失踪宣告には、2種類があります。

普通失踪と特別失踪(危難失踪)です。

一般的に失踪宣告といった場合、普通失踪を指しています。

失踪期間とは、生死不明の期間です。

普通失踪では、失踪期間が7年必要です。

特別失踪(危難失踪)とは「戦地に行った者」「沈没した船舶に乗っていた者」「その他死亡の原因となる災難に遭遇した者」などを対象にする失踪宣告です。

死亡している可能性が非常に高いので、失踪期間は短い期間です。

特別失踪(危難失踪)では、失踪期間が1年で済みます。

失踪宣告がされるためには、失踪期間を満たす必要があります。

(2)失踪宣告する際に家庭裁判所の調査

失踪宣告がされると死亡の扱いがされるから、家庭裁判所は慎重に調査をします。

家庭裁判所は、次のような記録の照会をします。

・住民票の異動履歴

・戸籍の動き

・運転免許証の更新履歴

・雇用保険の履歴

・出入国の記録

行方不明者がどこかで生活している痕跡がないか、家庭裁判所が調査します。

家庭裁判所の調査で、消息が判明することも少なくありません。

消息が判明したら、失踪宣告の申立ては却下されます。

生死不明の状態が継続しているか、慎重に確認します。

(3)申立人や家族に照会

申立人や家族に対して、家庭裁判所が調査します。

調査方法は、次の方法のいずれかです。

・家庭裁判所から照会書が届く

・家庭裁判所から電話照会

・家庭裁判所に呼出して面談

家庭裁判所からは、申立ての経緯や最後に連絡が取れた日などが質問されます。

最後に連絡が取れた日などは、分からないことが多いでしょう。

分からないと答えても、差し支えありません。

(4)家庭裁判所から官報公告

家庭裁判所は調査を終えた後、官報公告を行います。

官報公告の内容は、行方不明者に対する届出の呼びかけです。

届出期間満了日は、次のとおりです。

・普通失踪 3か月以上

・特別失踪(危難失踪) 1か月以上

届出期間満了日までに、届出がないと失踪宣告がされます。

(5)申立てから失踪宣告がされるまでの期間

失踪宣告の申立てを行うと、直ちに失踪宣告が出ると期待してしまうかもしれません。

失踪宣告の申立てをしても失踪宣告がされるまで、1年程度かかるのが通常です。

失踪宣告の申立ては、慎重に運用されているからです。

(6)失踪宣告後は失踪届で戸籍に反映

失踪宣告の審判が確定した後に、市区町村役場に届出が必要です。

失踪届とは、失踪宣告の審判が確定した後に市区町村役場に提出する届出です。

提出期限は、失踪宣告の審判が確定してから10日以内です。

死亡したときに提出する死亡届とは、別の書類です。

失踪届は、多くの市区町村役場でホームページからダウンロードができます。

失踪届が受理されることで、失踪宣告がされたことが戸籍に記載されます。

②失踪宣告の申立人は限られている

(1)失踪宣告には申立てが必要

生死不明のまま一定期間継続していると、失踪宣告がされます。

自動で、失踪宣告がされることはありません。

長期間行方不明であっても、家族は帰りを待っていることがあるからです。

家族の心情に配慮して、失踪宣告は申立てが必要です。

(2)失踪宣告の申立人は利害関係人のみ

失踪宣告の申立人は、民法上、利害関係人と定められています。

利害関係人と定められているものの、法律上の利害関係人に限定されると考えられています。

単なる利害関係人は、申立人になることはできません。

法律上の利害関係人に限定される理由は、次のとおりです。

・失踪宣告は、死亡扱いと言う重大な効果があるため。

・失踪宣告の悪用や濫用を防止するため。

・本人の権利や利益を保護すべきだから。

法律上の具体的な利害関係がある人だけが申立人になることができます。

(3)心配しているだけでは申立てができない

失踪宣告がされると、重大な結果が発生します。

単なる友人や知り合いが心配しているだけでは、法律上の利害関係人に認められません。

感情だけで申立てを認めると、濫用のおそれがあるからです。

(4)役所や検察官は申立てができない

行方不明の人がいる場合、検察官が不在者財産管理人の申立てをすることができます。

不在者財産管理人とは、行方不明の人の財産を管理する人です。

失踪宣告の申立ては、役所や検察官が申立人になることができません。

財産管理と死亡扱いは、法的影響力の重さが大きく違います。

国家や自治体が職権で進める制度設計では、ありません。

行方不明者の帰りを待つ親族の気持ちを尊重する目的もあります。

③死亡と見なされる日に相続発生

(1)失踪宣告の申立日は死亡と見なされる日と無関係

失踪宣告がされると、行方不明者は死亡と見なされます。

死亡と見なされる日に、相続が発生します。

死亡と見なされる日は、次の日です。

・普通失踪 生死不明から7年経過した日

・特別失踪(危難失踪) 危難が去った日

死亡と見なされる日は、法律で決められています。

死亡と見なされる日は、失踪宣告の申立日とは無関係です。

(2)相続が複雑になる

死亡と見なされる日は、自由に決めることができません。

死亡と見なされる日によっては、代襲相続や数次相続が発生することがあります。

遺産分割協議に参加する人をよく確認する必要があります。

失踪宣告があると、相続が複雑になりがちです。

④行方不明者が帰ってきたら失踪宣告の取消

(1)失踪宣告は自動で取消されない

長期間行方不明であっても、新天地で元気に生きていることがあります。

失踪宣告がされても、本人は何も困らず元気に生きているかもしれません。

何らかの手続のために戸籍謄本などを取得すると、失踪宣告がされていることに気が付きます。

失踪宣告がされた人の生存が判明しても、自動で失踪宣告は取消されません。

失踪宣告がされた人の生存が判明したら、家庭裁判所に対して失踪宣告取消の申立てをします。

(2)受け取った財産は返還する

失踪宣告によって財産を受け取った人は、失踪宣告の取消で財産を返還する必要があります。

例えば、次の財産を受け取った場合、返還が必要です。

・生命保険の死亡保険金

・相続財産

・遺族年金

財産を受け取った人が行方不明の人が生きていることを知っていても知らなくても、返還義務があります。

返還する財産は、現に利益を受けている限度と考えられています。

現に利益を受けている限度とは、返還時点でその者の財産状態の中に残っている利得です。

例えば、受け取った財産を生活費として費消したら、生活費相当額の利益を受けていると言えます。

生活費相当額を返還する必要があります。

(3)第三者に渡った財産は取り返せない

財産を受け取った人は、自分の財産を処分することができます。

例えば、不動産を相続したら、第三者に売却することがあるでしょう。

財産を受け取った人と第三者の両方とも、行方不明者が生きていることは知らないでしょう。

失踪宣告取消前に第三者に売却した不動産は、取り返せません。

取消前に善意でなされた法律行為は、失踪宣告取消の影響を受けないからです。

失踪宣告の取消を受けた人は、相続人に対して現に利益を受けている限度で返還請求をすることができます。

3失踪宣告の申立ての方法

①申立てができる人

申立てができる人は、法律上の利害関係がある人です。

具体的には、次の人です。

・配偶者

・相続人

・受遺者

・不在者財産管理人

②申立先

行方不明者の住所地または居住地を管轄する家庭裁判所です。

家庭裁判所の管轄は、裁判所のホームページで確認することができます。

③必要書類

失踪宣告の申立書に添付する書類は、次のとおりです。

・行方不明者の戸籍謄本

・行方不明者の住民票または戸籍の附票

・失踪を証する資料

・申立人の利害関係を証する資料

④費用

(1)手数料

失踪宣告の申立て手数料は、800円です。

申立書に収入印紙を貼り付けて納入します。

(2)連絡用の郵便切手

家庭裁判所が手続に使う郵便切手を予納します。

郵便切手の額面や枚数は、裁判所ごとに異なります。

(3)官報公告料

失踪宣告では、2回官報公告があります。

官報公告料は、4816円です。

家庭裁判所の指示があってから、納入します。

⑤失踪宣告の流れ

手順(1)失踪宣告の申立て

失踪宣告の申立書と必要書類を準備して、家庭裁判所に提出します。

窓口に出向いて提出しても郵送で提出しても、差し支えありません。

手順(2)家庭裁判所の調査

公的機関などに生活している痕跡がないか、家庭裁判所が確認します。

手順(3)官報公告

行方不明者に対して、届出るように官報で公告します。

普通失踪の場合、届出期間は3か月です。

手順(4)失踪宣告の審判

届出がなければ、失踪宣告の審判がされます。

異議がなければ、そのまま確定します。

手順(5)失踪届を市区町村役場に提出

失踪宣告の審判と確定証明書を添えて、市区町村役場に失踪届を提出します。

失踪届を提出すると、戸籍に反映します。

4生死不明の相続人がいる相続を司法書士に依頼するメリット

相続人が行方不明であることは、割とよくあることです。

行方不明の相続人がいると、相続手続を進めることができません。

相続が発生した後、困っている人はたくさんいます。

自分たちで手続しようとして、挫折する方も少なくありません。

失踪宣告の申立ては、家庭裁判所に手続が必要になります。

通常ではあまり聞かない手続になると、専門家のサポートが必要になることが多いでしょう。

信託銀行などは、高額な手数料で相続手続を代行しています。

被相続人が生前、相続人のためを思って、高額な費用を払っておいても、信託銀行はこのような手間のかかる手続を投げ出して知識のない遺族を困らせます。

知識のない相続人が困らないように高額でも費用を払ってくれたはずなのに、これでは意味がありません。

税金の専門家なども対応できないでしょう。

困っている遺族はどうしていいか分からないまま、途方に暮れてしまいます。

裁判所に提出する書類作成は、司法書士の専門分野です。

途方に暮れた相続人をサポートして、相続手続を進めることができます。

自分たちでやってみて挫折した方も、信託銀行などから丸投げされた方も、相続手続で不安がある方は司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。

ネット証券の口座名義人が死亡したときの相続

2026-01-05

1ネット証券の口座は名義人死亡で凍結される

①ネット証券とは店舗を持たない証券会社

ネット証券とは、店舗を持たない証券会社です。

IDやパスワードを使って、インターネットだけで取引できます。

パソコンやスマートフォンがあれば、24時間いつでも手軽に取引ができます。

店舗を持つ証券会社と較べると、安い手数料でとても便利です。

ネット証券は、インターネットで完結する安くて便利な証券会社です。

②口座名義人の死亡で凍結される

銀行などの口座名義人が死亡すると、口座は凍結されます。

証券会社の口座名義人が死亡すると、口座は凍結されます。

口座凍結とは、口座取引の停止です。

証券会社の口座が凍結されると、次の取引が停止されます。

・株式などの売買

・口座からの出金

・口座への入金

口座凍結のタイミングは、証券会社が口座名義人の死亡を知ったとき

です。

多くは、家族などが証券会社に問合わせをしたときに、口座名義人の死亡を知ります。

被相続人が複数の証券会社に口座を持っていた場合、各証券会社が知ったときに凍結されます。

一部の証券会社が死亡を知っても、他の証券会社に連絡しません。

証券会社同士で、情報共有する仕組みがないからです。

③ネット証券が分かりにくい理由

理由(1)郵便物がない

ネット証券は、口座開設も取引もインターネットで完結します。

郵便物は、ほとんど来ません。

ネット証券からの連絡は、メールで届きます。

理由(2)モノがない

銀行のように、通帳やキャッシュカードがありません。

銀行の通帳やキャッシュカードは、日常生活の中で自然に目にする機会があるでしょう。

株券なども、電子化されています。

自宅などで保管されるモノがありません。

理由(3)家族が気付かない

ネット証券は、IDやパスワードを共有しないことを前提にしています。

本人以外の人がログインすることは、禁止されています。

本人が積極的に家族と情報共有することは、あまりありません。

④ネット証券は調査できる

被相続人が株式取引を行っていたのに、証券会社が分からないことは少なくありません。

銀行の取引履歴などを丁寧に確認すると、ネット証券への入金記録が判明することがあります。

配当金が入金されているかもしれません。

まったく手がかりがなくても、証券保管振替機構に照会することができます。

株式は完全電子化され、名義変更や移管は証券保管振替機構が集中管理されているからです。

相続人は単独で、証券保管振替機構に照会することができます。

手数料は、5000~6000円程度です。

証券保管振替機構に照会すると、取引していた証券会社が判明します。

2ネット証券の口座名義人が死亡したときの相続

手順①ネット証券を探す

ネット証券は、安くて便利な証券会社です。

複数の証券会社に、口座開設をしていることが少なくありません。

相続人は、どこの証券会社に口座があるのか調べる必要があります。

手順②ネット証券に口座名義人の死亡を連絡

取引がある証券会社が判明したら、口座名義人が死亡したことを連絡します。

ひとまずコールセンターなどに、電話するといいでしょう。

ネット証券が口座名義人の死亡を知った時点で、口座は凍結されます。

手順③預かり資産残高証明書を請求

相続人は、単独で被相続人の預かり資産残高証明書を請求することができます。

ネット証券であっても、郵送請求が一般的です。

発行手数料は、1通1000円程度です。

手順④遺産分割協議書の作成

ネット証券にある株式や有価証券は、相続財産です。

相続財産の分け方は、相続人全員の合意で決定します。

遺産分割協議とは、相続人全員による相続財産の分け方を決めるための話合いです。

相続人全員による合意がまとまったら、合意内容を書面に取りまとめます。

遺産分割協議書とは、相続人全員の合意内容の証明書です。

合意内容に間違いがないか、相続人全員に確認してもらいます。

間違いがないことを確認したうえで、相続人全員が記名し実印で押印します。

実印による押印であることを証明するため、印鑑証明書を添付します。

手順⑤必要書類の準備

ネット証券に口座名義人の死亡を連絡すると、相続手続の案内がされます。

ネット証券のホームページなどにも、相続手続専用ページが用意されています。

ネット証券から、相続手続の書類や必要書類のリストが届きます。

ネット証券の案内に従って、必要書類を準備します。

遺言書がないときの代表的な必要書類は、次のとおりです。

・証券会社指定の株式名義書き換え請求書

・被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本

・相続人全員の現在戸籍

・遺産分割協議書

・相続人全員の印鑑証明書

必要書類や手続手順は、証券会社によって若干異なります。

証券会社によって、独自ルールで3~6か月の有効期限を決めていることがあります。

必要な書類が準備できないと、相続手続が進められなくなります。

手順⑥相続人名義の口座開設

被相続人の株式を引き継ぐため、相続する人は証券会社に口座を開設します。

口座開設には、本人確認書類やマイナンバーが分かる書類が必要です。

手順⑦書類提出

必要書類が全部揃ったら、証券会社に提出します。

必要書類が揃っていないと、手続が進まなくなります。

手順⑧移管手続完了

提出書類に問題がなければ、相続人の口座に移管されます。

相続人が売却できるのは、移管された後です。

書類を提出してから、移管手続が完了するまでに1か月程度かかります。

相続人の口座に移管されると、被相続人の口座は閉鎖されます。

手順⑨必要に応じて換価

相続人の口座に移管された後、株式は売却することができます。

遺産分割協議では、相続した株式等を換価して現金で分割する合意をすることができます。

相続した株式等を換価した場合、譲渡所得が発生することがあります。

譲渡所得が発生した場合、確定申告が必要になります。

3相続トラブルを招く危険な行為

①IDやパスワードを共有

ネット証券の口座が凍結されるのは、ネット証券が口座名義人の死亡を知ったときです。

たとえ口座名義人が死亡しても、ネット証券が死亡を知らなければ口座は凍結されません。

IDやパスワードを共有する行為は、相続トラブルを招く危険な行為です。

IDやパスワードを共有した相続人が勝手に売却などができるからです。

株式には、大きな値動きがあります。

勝手な取引で、大きな損失が発生する可能性があります。

たとえ被相続人の判断で取引しても、相続人の勝手な取引で発生した損失と疑われるでしょう。

勝手な取引を疑われると、深刻なトラブルに発展します。

②証券口座の調査不充分

ネット証券は郵便が少ないので、家族には気づきにくいでしょう。

複数のネット証券で口座を持っていることは、少なくありません。

証券口座の調査不充分は、相続トラブルを招く危険な行為です。

家族がネット証券の口座に気づかないと、遺産分割協議の対象から漏れてしまいます。

後から新たな財産が見つかったら、新たな財産について遺産分割協議をします。

新たにネット証券の口座が見つかると、相続人間の信頼関係が壊れがちです。

後から発覚した財産は、隠されたように感じるからです。

財産隠しがあったと疑われると、深刻なトラブルに発展します。

③ネット証券の相続手続を長期間放置

ネット証券には、店舗がありません。

相続手続で疑問があっても、店舗で相談することができません。

電話・メールでの問い合わせが中心で、手続に時間がかかります。

何か分からないことがあると、先延ばししがちです。

ネット証券の相続手続を長期間放置することは、相続トラブルを招く危険な行為です。

相続手続が完了しないと、相続した株式は売却できません。

株式には、大きな値動きがあります。

相続した株式の価値が大きく変動すると、新たなトラブルに発展します。

相続手続を長期間放置すると、深刻なトラブルに発展します。

4ネット証券の相続でトラブルを回避する方法

①証券会社一覧表を作成

ネット証券は、郵便物がほとんどありません。

ネット証券の相続では、家族がネット証券の存在に気づかないことがトラブルの原因です。

取引がある証券会社を一覧表にしておくことがおすすめです。

証券会社一覧表を作成しておくと、隠れ資産を防止することができます。

遺産分割協議のやり直しを防止し、相続人間の信頼関係を維持することができます。

②口座名義人死亡で口座凍結

証券会社が口座名義人の死亡を知ったとき、証券口座は凍結されます。

一部の相続人が連絡することで、口座を凍結してもらうことができます。

口座が凍結されたら、一部の相続人が勝手に売却などはできません。

一部の相続人が勝手に売却すると、深刻なトラブルに発展します。

他の相続人とトラブルにならないため、口座凍結は安心材料と言えます。

③IDやパスワードを共有しない

IDやパスワードを共有すると、相続人間の疑念が一気に発生します。

IDやパスワードなどのログイン情報は、封筒に入れて封印しておきます。

④相続人全員で情報共有

ネット証券の相続手続は、郵送中心です。

ネット証券から届く書類は、相続人全員に情報共有するのがおすすめです。

一部の相続人のみが情報を独占すると、財産を隠されたと感じるおそれがあるからです。

相続人全員で情報共有すると、遺産分割協議のやり直しを防止することができます。

5株式の名義変更を司法書士に依頼するメリット

株取引に関心のない相続人は、現物の株式を受け取ることに不安を覚えます。

株式は日々値段が大きく変わりますから、トラブルになりがちです。

これらのトラブルは、相続人全員で相続財産の分け方を合意するときに、相続人全員で考えておけば防げます。

株式の名義変更でもめごとを起こしたくない方は、司法書士などの専門家に依頼するのをおすすめします。

公正証書遺言の内容は生前に確認できない

2026-01-02

1公正証書遺言は公証役場で作成する

①自筆証書遺言と公正証書遺言

遺言書を作成する場合、自筆証書遺言か公正証書遺言を作成することがほとんどです。

自筆証書遺言とは、自分で書いて作る遺言書です。

ひとりで作ることができるから、手軽です。

公正証書遺言とは、遺言内容を公証人に伝え公証人が書面に取りまとめる遺言書です。

証人2人に確認してもらって、作ります。

②家族は証人になることができない

公正証書遺言は、証人2人が立ち会って作成します。

公正証書遺言作成時の証人は、利害関係がない第三者であることが必要です。

③公正証書遺言は公証人が関与して作成

公正証書遺言は、公証人が関与して作成します。

公証人は、遺言者の本人確認をします。

公証人は、遺言者本人の意思確認をします。

本人確認をしたうえで、本人の意思確認をして、公正証書遺言を作成します。

公証人は、法律の専門家です。

公証人は、遺言書の厳格な書き方ルールを熟知しています。

公証人が関与するから、公正証書遺言は無効になりにくい遺言書です。

④公正証書遺言は公証役場で厳重保管

公正証書遺言作成後は、遺言書原本は公

証役場で厳重に保管されます。

公正証書遺言は、隠す余地がありません。

遺言者には、正本と謄本が渡されます。

正本と謄本は、遺言書のコピーです。

遺言者が死亡した後は、正本や謄本で遺言書の内容を実現します。

遺言者が死亡した後も、原本は公証役場で厳重に保管され続けます。

遺言書原本は公証役場で厳重に保管されるから、遺言書を紛失することはあり得ません。

遺言書原本は公証役場で厳重に保管されるから、改ざんや変造のトラブルがあり得ません。

公正証書遺言は、家族のトラブルになりにくい遺言書です。

2公正証書遺言の内容は生前に確認できない

①生前に確認できるのは遺言者本人のみ

遺言書は、遺言者の最終の意思表示です。

遺言者の生前は、家族が遺言書の内容を知ることはできません。

生前に確認できるのは、遺言者本人のみです。

②公正証書遺言が生前に内容確認できない理由

理由(1)遺言の自由を守るため

遺言者がどのような遺言をするのか、自由に決めることができます。

遺言の自由を守る必要があります。

仮に遺言者の生前に家族が遺言内容を知ることができるとすると、不当な影響を受けるおそれがあります。

遺言の自由を守るため、不当な影響を排除する必要があります。

理由(2)相続人間のトラブルを防止するため

不当な影響を受けるのは、遺言者だけではありません。

家族が遺言内容を知ることができるとすると、遺言者の生前から相続トラブルに発展します。

相続人間のトラブルを防止するため、遺言書の内容は確認できません。

家族であっても相続人になる予定の人であっても第三者であっても、遺言書の内容は確認できません。

③証人は遺言内容を開示できない

公正証書遺言は、証人2人に確認してもらって作ります。

証人は、遺言書作成時に立会いをします。

遺言書作成時に立会いをするから、遺言書の内容を知ることになるでしょう。

遺言者の家族は、証人になることはできません。

遺言の自由と真正性を守るためと、考えられています。

遺言者の家族は、遺言内容に利害関係があります。

遺言者に、不当な影響を与えるおそれがあります。

公正証書遺言の作成において疑義が生じないように、中立公正な立場の証人が立ち会います。

証人に、守秘義務を定めた法律はありません。

遺言者との信頼関係から、秘密にすることが当然に求められると考えられています。

証人は、遺言内容を開示する人ではありません。

遺言者の家族が遺言内容の開示を求めても、応じるべきではありません。

④生前は遺言書作成の有無も確認できない

遺言者の生前は、遺言書作成の有無も確認できません。

遺言書があると知ると、自分に不利な内容かもしれないと不安になることがあります。

財産の分け方が決まっていると知ると、自分に有利な遺言書を作成するように不当な影響を与える可能性があります。

遺言書作成の有無は、重要な情報です。

遺言書の有無だけで、遺言者の意思形成の自由が侵害されるおそれがあるからです。

遺言者がだれにも気兼ねなく自由に遺言書を作成できることが重要です。

遺言者は、自由に遺言書を作成し、自由に遺言書を変更し、自由に遺言書を撤回することができます。

遺言の自由とは、自由に遺言書を作成し、自由に遺言書を変更し、自由に遺言書を撤回できることです。

生前に遺言書作成の有無も確認できないのは、遺言の自由を守るためです。

⑤公証役場の守秘義務は遺言の内容だけでなく有無も対象

公正証書遺言は、公証人が取りまとめます。

公証人には、守秘義務があります。

公証人の守秘義務の対象は、次のとおりです。

・遺言の内容

・遺言書を作ったか作っていないか

・いつ作ったか

・どの公証役場どの公証人が作ったか

遺言書は、重要なプライバシー情報です。

公証人には、重い守秘義務が課されています。

⑥遺言者が認知症になっても家族は確認できない

遺言書を作成するためには、遺言能力が必要です。

遺言能力とは、遺言書に書いた内容を理解し遺言の結果のメリットデメリットを充分に判断できる能力です。

元気なときに遺言書を作成し、後に認知症になることがあります。

重度の認知症になると遺言能力が失われるから、あらためて遺言を作ることができなくなります。

重度の認知症になっても、家族は遺言内容や遺言の有無を確認できません。

遺言者の生前は、遺言者のセンシティブな個人情報です。

重度の認知症になっても、プライバシーは保護されます。

遺言能力の有無は、遺言の秘密保持とは無関係です。

たとえ重度の認知症になっても、家族の干渉を防ぐ必要があります。

⑦成年後見人も遺言内容は確認できない

成年後見人は、認知症の人のサポートをする人です。

認知症になると、物事のメリットデメリットを適切に判断することができなくなります。

成年後見人は、認知症の人に代わって物事のメリットデメリットを判断します。

たとえ成年後見人であっても、遺言内容や遺言の有無は確認できません。

成年後見人が家族であっても専門家であっても、遺言内容や遺言の有無は確認できません。

成年後見人がサポートできるのは、認知症の人が生きている間のみです。

認知症の人が死亡した後は、権限を失います。

認知症の人が死亡した後、財産処理に関する権限はありません。

遺言書は、遺言者が死亡したときに効力が発生します。

成年後見人は、遺言内容に関与する必要がありません。

成年後見人は、本人の代わりに財産管理をする人です。

本人の意思を代弁する存在では、ありません。

遺言書は、遺言者の最終意思を示すものです。

遺言者以外の人が代理することや代弁することは、許されません。

成年後見人も、遺言内容や遺言の有無は確認できません。

⑧家族による遺言検索システム利用は遺言者死亡後のみ

公正証書遺言を作成すると、遺言検索システムに登録されます。

遺言検索システムを利用すると、遺言書の有無が判明します。

昭和64年1月1日以降に作った公正証書遺言、秘密証書遺言が対象です。

家族が遺言検索システムの利用請求ができるのは、遺言者が死亡した後のみです。

遺言検索システムの利用請求には、次の書類が必要です。

・遺言者死亡の記載がある戸籍謄本

・相続人であることが分かる戸籍謄本

・本人確認書類

3相続開始後に公正証書遺言を確認できる

①遺言検索システム利用で遺言書の有無が分かる

遺言者が死亡した後であれば、相続人は遺言検索システムを利用することができます。

日本中どこの公証役場でも、遺言検索システムで遺言書の有無を調べてもらうことができます。

②遺言書の謄本請求で内容確認ができる

遺言検索システムで分かるのは、遺言書作成の有無のみです。

遺言書内容は、遺言検索システムでは分かりません。

遺言書の謄本請求で、遺言書の内容確認ができます。

遺言書を作成した公証役場に対して、遺言書の謄本請求をします。

遺言書を作成した公証役場は、遺言検索システムで判明します。

4遺言書作成を司法書士に依頼するメリット

遺言書は、被相続人の意思を示すものです。

自分が死んだことを考えたくないという気持ちがあると、抵抗したくなるかもしれません。

民法に遺言書を作ることができるのは、15歳以上と定められています。

遺言書を作成すれば、法定相続人や法定相続人以外の人に財産を引き継ぐことができます。

遺言書作成は、先延ばししがちです。

先延ばしすると、相続人間のトラブルに発展しがちです。

家族の幸せを願う方は、遺言書作成を司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。

アパート経営の相続は不動産と貸主を承継

2026-01-01

1アパート経営の相続は不動産と貸主を承継

①不動産の相続だけではない

被相続人がアパート経営をしていた場合、相続人がアパート経営を引き継ぎます。

経営していたアパートという建物や敷地の土地を引き継ぐことはイメージしやすいでしょう。

アパート経営の相続で引き継ぐものは、不動産だけではありません。

アパート経営を相続すると、「家賃を受け取る立場」と「責任を負う立場」を引き継ぎます。

アパート経営の相続とは、不動産だけではなく権利義務がセットになっていると言えます。

②アパート経営を相続すると新しい貸主になる

アパート経営の本質は、賃貸借契約の貸主になることです。

アパート経営の相続とは、賃貸借契約の貸主を立場を引き継ぐことです。

アパート経営を相続すると、新しい貸主になります。

賃貸借契約の貸主には、さまざまな権利や義務があります。

相続によって、相続人は賃貸借契約を引き継ぎます。

新しい貸主は、次のような権利や義務を引き継ぎます。

・家賃を受け取る権利

・敷金を返還する義務

・修繕をする義務

・契約更新や解約に関する権利義務

賃貸借契約によって発生した権利義務がそのまま相続人に移転します。

③貸主と不動産は切り離せない

アパートに賃貸借契約は、不動産に結びついた権利関係です。

アパートの所有者が変わっても、賃貸借契約は継続します。

新しい所有者が自動的に貸主になります。

新しい所有者と新しい賃貸借契約をする必要はありません。

アパートの所有者が変わっても、敷金返還義務は新しい所有者に移転します。

貸主と不動産は、切り離せません。

④アパート経営の相続で借金を引き継ぐ

アパート経営は、事業です。

アパート経営をするとき、無借金経営であることはあまりないでしょう。

アパート経営の相続では、プラスの財産だけでなくマイナスの財産も引き継ぎます。

例えば次の財産が相続人に引き継がれます。

・修繕積立金や預かり金

・未収家賃

・未払いの修繕費

・アパートローン

・固定資産税などの税金

⑤管理会社との契約を引き継ぐ

被相続人がアパート経営ををするにあたって、さまざまな契約をしていることがあります。

・管理会社と管理委託契約

・清掃メンテナンス会社と清掃メンテナンス契約

・保証会社と家賃保証契約

・保険会社と火災保険契約

被相続人が締結したさまざまな契約は、相続人に引き継がれます。

2アパート経営の相続で感じる不安と解決策

不安①引き継ぐものが分からない

アパート経営に携わっていないと、引き継ぐものが分からない不安が先に立ちます。

アパート経営に関する財産や契約、負債を棚卸すると、いいでしょう。

何があるのか分からないことが不安の原因だから、まず見える化することが重要です。

棚卸で分かることは、次のとおりです。

・土地や建物などの不動産

・賃貸借契約の状況

・管理会社との契約状況

・ローン残高

・修繕履歴や修繕計画

・税金の状況

引き継ぐものが判明すると、分からない不安が和らぎます。

不安②遺産分割協議がまとまらない

(1)相続人全員の合意が必要

相続財産は、相続人全員の共有財産です。

相続財産の分け方は、相続人全員の合意で決定します。

遺産分割協議とは、相続財産の分け方について相続人全員でする話し合いです。

相続人全員の合意ができないと、遺産分割協議を成立させることができません。

(2)不動産は分けにくい

被相続人がアパート経営をしていると、難航しがちです。

相続財産に、不動産が含まれているからです。

不動産は、分けにくい財産の代表例です。

現金は、分けやすい財産の代表例です。

現金なら平等に分けられますが、アパートは平等に分けることが困難です。

(3)アパートの価値が分からない

アパートなどの収益不動産は、価値が見えにくい財産です。

次の事項を考慮して、価値を判断するのが一般的です。

・建物の築年数

・修繕履歴や修繕費

・家賃設定と空室リスク

・ローン残高

・管理会社の質や契約内容

・将来の大規模修繕の必要性

・アパート経営の収益性

アパート経営に携わってこなかった相続人には、アパートの価値が分からないと感じられます。

相続税評価額だけで、アパートの価値は決められません。

(4)相続人間に情報格差がある

アパート経営に携わってこなかった相続人は、アパートの経営状況が分からないでしょう。

アパートの経営状況が分からない相続人は、疑心暗鬼になります。

相続人間に情報格差があると、不信感が生まれます。

(5)収益が絡むから欲が刺激される

アパート経営をすると、毎月家賃収入があります。

収益が絡むと、欲が刺激されます。

不信感のうえに欲が刺激されると、遺産分割協議がまとまらなくなります。

(6)不安の根拠は情報不足

アパート経営に携わってこなかった相続人にとって、アパート経営の相続は分からないことだらけです。

分からないことがあると、無意識に悪い方へ解釈してしまいます。

不安の根拠は、情報不足です。

分からないから、一見して公平に見える共有を選択しがちです。

不安が募ると、共有名義を選択しやすくなります。

不安③遺産分割の方法が分からない

(1)現物分割のメリットデメリット

現物分割とは、一部の相続人がアパートを相続し他の相続人が預貯金などを相続する方法です。

アパートを相続する人がアパート経営を引き継ぎます。

現物分割のメリットは、アパート経営の意思決定が一本化されてスムーズになることです。

アパート経営の責任と収益が明確になります。

現物分割のデメリットは、アパートに見合う他の財産が必要になることです。

他の財産がわずかである場合、現物分割の合意が難しくなります。

(2)共有のメリットデメリット

共有とは、複数の相続人で共有名義にする方法です。

一見して平等考えられるから、軽率に共有を選びがちです。

共有のメリットは、他の財産がなくても共有にすることができることです。

共有のデメリットは、あらゆる決定に共有者全員の同意が必要になることです。

修繕、家賃設定、売却などにひとりでも反対がいると、意思決定が停滞します。

将来次世代になると、さらに共有者が増えて意思決定が難しくなります。

(3)代償分割のメリットデメリット

代償分割とは、一部の相続人がアパートを相続し他の相続人が代償金を受け取る方法です。

代償分割のメリットは、代償金を受取ることができるから納得感を得やすい点です。

代償分割のデメリットは、2つあります。

代償金の金額が決められなくなることと代償金を払う資力が必要になることです。

公平な遺産分割を実現するため、代償金を支払います。

前提としてアパートの価値を合意していないと、公平な代償金の金額が決められなくなります。

(4)換価分割のメリットデメリット

換価分割とは、アパートを売却して金銭で分ける方法です。

換価分割のメリットは、公平に分割できるからトラブルになりにくい点です。

換価分割のデメリットは、相続人全員の合意が必要になる点です。

アパート経営を続けたい相続人がいる場合、大きな不満になるでしょう。

売却できても売却金額でトラブルになる可能性があります。

不安④共有名義にすると家族関係が悪化する不安

(1)何も決められなくなる

アパートを共有名義にすると、次のような決定に共有者全員の合意が必要です。

・大規模修繕

・家賃設定

・管理会社の変更

・売却

共有者のひとりが反対すると、意思決定が停滞します。

意見が合わなくなると、家族のトラブルに発展します。

共有名義にすると、仲がいい家族であっても破綻しやすくなります。

(2)責任の押し付け合いになる

アパート経営は、手間がかかります。

修繕の手配や入居者対応があるからです。

共有者全員が忙しいから、他の人に対応して欲しいと考えがちです。

口を出すのに責任を取らない人が現れる構造になってしまいます。

共有名義にすると、責任の所在があいまいになります。

責任の押し付け合いになるから、家族のトラブルに発展します。

(3)収益分配でトラブルになる

アパート経営をすると、家賃収入が発生します。

修繕の手配や入居者対応は特定の人が担うのに、収益は平等に分配すると不満につながります。

仲がいい家族ほど、不満が爆発する可能性があります。

共有名義にすると、収益分配でトラブルになる可能性があります。

(4)将来の相続でさらに複雑化

共有者が死亡すると、共有持分は相続されます。

共有持分は、さらに細分化されて相続されます。

共有者が増えると、共有者全員の合意はさらに困難になります。

共有者の合意ができなくなると、アパート経営は事実上できなくなります。

修繕も家賃設定も、できなくなるからです。

売却も、できなくなります。

(5)共有回避が最善の方法

不動産など分けにくい財産がある場合、軽率に共有を選びがちです。

一見して公平に見えることから、納得しやすいからです。

不動産の共有名義は、おすすめできません。

もっともトラブルを避けられる方法は、共有回避です。

代償分割や換価分割で、共有を回避する方法がおすすめです。

(6)共有トラブルの根本原因は情報不足

共有トラブルの根本原因は、情報不足 です。

情報不足が欲と疑心暗鬼を生み、トラブルを引き起こすからです。

少なくとも次の事項は、共有者全員で情報共有します。

・修繕履歴と修繕計画

・ローンの返済状況と残高

・家賃収入と経費

・管理会社の契約内容

アパートの状況が透明になると、欲と疑心暗鬼は暴走しません。

(7)共有者間でルールを明確化

共有にすると、責任の所在があいまいになりトラブルを引き起こします。

どうしても共有にするのなら、共有者間のルール作りが欠かせません。

次の事項を決めておくと、トラブルが減ります。

・管理を担当する人

・修繕の判断基準

・経費の負担割合

・家賃収入の分配方法

・売却の条件

ルールを決めておくと、次世代にも引き継ぎやすくなります。

3相続後に考える選択肢

①アパート経営を引き継いで貸主の責任を引き受ける

アパート経営は、事業です。

アパート経営を相続するとは、アパートの事業承継です。

不動産などの目に見える財産だけでなく、貸主の責任を引き継ぎます。

アパート経営という事業の当事者になると言えます。

②アパートを売却して貸主の責任を整理する

アパート経営という事業の当事者になるのは、荷が重いと感じるかもしれません。

アパートを売却して、貸主の責任を整理することができます。

アパートを売却することは、合法で合理的な選択で無責任ではありません。

アパートの買主がアパート経営を引き継ぎます。

アパートを売却しても、入居者に迷惑をかけることはありません。

4アパート経営の相続を司法書士に依頼するメリット

大切な家族を失ったら、大きな悲しみに包まれます。

やらなければいけないと分かっていても、気力がわかない方も多いです。

法律上は、貸主も借主も相続が発生すれば相続人にその地位が相続されるだけですが、契約内容や賃料関係、敷金関係があいまいになってトラブルになりがちです。

貸主の地位を主張するためにも、相続登記は不可欠です。

相続するのであれば、まず相続登記を確実に済ませましょう。

司法書士が、必要な手続や適切な対応についてサポートします。

相続登記を済ませていない方は司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。

連絡のつかない相続人への対処法

2025-12-31

1遺産分割協議には相続人全員の合意が必要

①連絡がつかなくても遺産分割協議から除外できない

相続が発生したら、相続財産は相続人全員の共有財産です。

相続財産の分け方は、相続人全員の合意で決定します。

一部の相続人を含めずに合意しても、無効の合意です。

連絡がつかなくても、遺産分割協議から除外できません。

②疎遠な相続人を除外できない

相続人調査をすると、思いもよらない相続人が見つかることがあります。

遺産分割協議成立には、相続人全員の合意が必要です。

疎遠な相続人を遺産分割協議から除外できません。

思いもよらない相続人であっても連絡がつかなくても、遺産分割協議から除外できません。

③多数決では決められない

遺産分割協議が成立しないと、相続手続が進められなくなります。

一部の相続人が反対しても、結論は変わらないと考えるかもしれません。

多数決で、遺産分割協議を成立させることはできません。

遺産分割協議成立には、相続人全員の合意が必要だからです。

たった一人でも合意できない相続人がいると、遺産分割協議は成立しません。

無効の遺産分割協議で、相続手続を進めることはできません。

④相続手続を勝手に進めることはできない

相続人全員の合意がないまま、勝手に相続手続を進めることはできません。

一部の相続人を含めずに合意しても、無効の合意だからです。

勝手に相続手続を進めると、相続財産の使い込みに見えるでしょう。

深刻な相続トラブルに、発展します。

⑤遺産分割協議を先延ばししても解決しない

遺産分割協議が成立しないと、先延ばしをしたくなります。

先延ばしをしても、解決しないことがほとんどです。

先延ばしが長期化すると、相続人間の関係が悪化します。

相続人が疎遠になり、ますます非協力的になります。

先延ばしが長期化すると、法律関係が複雑化します。

元気だった相続人が死亡すると、関係者が増えますます合意がしにくくなります。

2 連絡のつかない相続人への対処法

①戸籍謄本を取得して相続人を確定

相続手続ではじめにすることは、相続人調査です。

だれが相続人になるのか、家族にとって分かっていることかもしれません。

相続手続先に対しては、客観的に証明する必要があります。

客観的に証明するとは、戸籍謄本を用意することです。

戸籍には、その人の身分事項がすべて記録されているからです。

戸籍謄本で身分事項を確認するから、思いもよらない相続人が見つかります。

まず戸籍謄本を取得して、相続人を確定します。

②戸籍の附票を取得して住所を調べる

思いもよらない相続人が見つかっても、連絡先が分からないことが多いでしょう。

相続人調査で相続人の戸籍謄本を取得するときに、一緒に戸籍の附票を請求します。

戸籍の附票とは、住所の異動が記録された書類です。

住民票は、住民票を置いている市区町村役場に請求します。

住所が分からないと、住民票は請求できません。

戸籍の附票は、本籍地の市区町村役場に請求します。

相続人調査をするから、本籍地は必ず判明します。

相続手続のため、相続人はだれでも戸籍の附票を請求することができます。

③手紙を書いて相続手続協力のお願い

相続人の住所が判明したら、手紙を書いて相続手続に協力してもらえるようにお願いします。

丁寧に言葉を選んで、先方の気分を害さないように配慮しましょう。

内容は、次の事項がいいでしょう。

・被相続人と手紙を送る人の関係

・被相続人が死亡した事実

・相続関係説明図

連絡先を書いて、連絡が欲しいとお願いします。

電話や面談で詳細な説明をすると、スムーズでしょう。

その気がなくても先方がいい印象を持たないと、その後の手続が難航します。

④相続人が見つからなくても相続手続先は困らない

遺産分割協議が成立しないと、相続人は困ります。

相続手続を進めることができなくなるからです。

遺産分割協議が成立しなくても、相続手続先は困りません。

遺産分割協議が成立しないから、相続手続に応じないだけです。

遺産分割協議が成立しなくても、ペナルティーが課されることはありません。

遺産分割協議が成立しないから、相続登記ができないかもしれません。

相続人申告登記で、ペナルティーを回避することができます。

遺産分割協議が成立しなくても、相続税申告をすることができます。

遺産分割協議が成立しないから、単に特例などが使えないに過ぎません。

⑤連絡が取れない不利益は相続人全員が負担

遺産分割協議が成立しないと、他の相続人から不満が出ることがあります。

相続人調査は、本来、相続人全員が協力して行うべきものです。

相続人と連絡がつかないことは、だれの責任ではありません。

相続人を探せなかったこと自体に、法的な責任はありません。

遺産分割協議が成立しないまま長期間経過すると、相続人全員に影響があります。

相続手続が進められない不利益は、相続人全員が負担すべき問題です。

相続人全員による協力で法的制度を使って、解決する問題です。

⑥相当な調査をしても連絡がつかない

連絡がつかない相続人であっても、合意は不可欠です。

連絡がつかないから、探さなくてもいいといったことはありません。

相当な調査をしても連絡がつかないなら、法的手続に進めるのが合理的です。

相当な調査とは、法的手続を進めることができる程度の調査です。

具体的には、次の順番で調査します。

(1)戸籍謄本と戸籍の附票を取得する

(2)住民票を取得

(3)書留郵便による通知・配達記録による通知

通常は、上記(1)~(3)を行えば、不足と言われることはありません。

事案によっては、現地調査をする必要があるでしょう。

家庭裁判所が手続を受け付けてくれる程度の調査をすれば充分です。

見つからないこと自体は、だれの責任でもありません。

3相続人に連絡がつかないときの法的手続

①連絡に応じないなら遺産分割調停の申立て

遺産分割調停とは、家庭裁判所の助力を得て相続人の合意形成を目指す手続です。

一部の相続人が他の相続人を相手方にとして、遺産分割調停の申立てができます。

連絡に応じない相続人に対して、家庭裁判所から呼出しをしてもらうことができます。

家庭裁判所の呼出しに、強制力はありません。

家庭裁判所の呼出しに応じないと、遺産分割調停でも合意をすることができなくなります。

遺産分割調停が成立しない場合、遺産分割審判に移行します。

遺産分割審判とは、家庭裁判所が遺産の分割方法を決定する手続です。

相続人間で話し合いがつかない場合、裁判所が客観的証拠に基づいて公平に判断します。

②行方不明なら不在者財産管理人選任の申立て

住民票や戸籍の附票を取得できても、郵便が送り返されることがあります。

住民票上の住所地に、住んでいないことがあるからです。

不在者財産管理人とは、行方不明者の財産管理をする人です。

行方不明の相続人に代わって、不在者財産管理人が遺産分割協議に参加します。

不在者財産管理人が遺産分割協議に参加すれば、有効に遺産分割協議を成立させることができます。

③長期間生死不明なら失踪宣告の申立て

失踪宣告とは、行方不明の人が死亡した取り扱いとするための手続です。

たとえ死亡していなくても、失踪宣告で死亡と見なされます。

失踪宣告で死亡と見なされるから、失踪宣告を受けた人に相続が発生します。

失踪宣告を受けた人の相続人が遺産分割協議に参加します。

失踪宣告を受けた人の相続人が遺産分割協議に参加すれば、有効に遺産分割協議を成立させることができます。

4遺産分割協議を放置するデメリット

デメリット①預貯金が凍結されたまま

預貯金口座の持ち主が死亡すると、口座が凍結されます。

口座の凍結とは、口座取引の停止です。

預貯金の引出、引落、解約が停止されます。

遺産分割協議が成立するまで、凍結解除ができません。

遺産分割協議が成立しないまま放置すると、口座の預貯金を引き出せなくなります。

相続人の一人であっても、預貯金を引き出すことができません。

デメリット②相続登記ができない

不動産を相続したら、相続登記をする義務が課されました。

遺産分割協議が成立してから、相続登記をすることが一般的です。

3年以内に登記しないと、ペナルティーが課されるおそれがあります。

ペナルティーの内容は、10万円以下の過料です。

遺産分割協議を放置すると、相続登記の義務違反になるリスクが発生します。

デメリット③不動産を売却できない

相続が発生した後に、不動産を売却したいことがあります。

遺産分割協議を放置すると、相続人全員の共有のままです。

相続登記未了のまま、不動産を売却することは事実上できません。

相続登記が完了しないと、だれが相続したのか分からないからです。

デメリット④相続人が認知症になる

遺産分割協議を先延ばしするうちに、相続人が認知症になることがあります。

認知症などになると、物事のメリットデメリットを適切に判断できなくなります。

物事のメリットデメリットを適切に判断できないまま、自分で遺産分割協議はできません。

成年後見人の選任が必要になり、相続手続がさらに難しくなります。

5連絡がつかない相続人がいる相続を司法書士に依頼するメリット

相続が発生した後、相続手続を進めたいのに住所が分からない相続人や行方不明の相続人がいて困っている人はたくさんいます。

自分たちで手続しようとして、挫折する人も少なくありません。

不在者財産管理人選任の申立てなど家庭裁判所に手続が必要になる場合などは、専門家のサポートが必要になることが多いでしょう。

裁判所に提出する書類作成は、司法書士の専門分野です。

途方に暮れた相続人をサポートして、相続手続を進めることができます。

自分たちでやってみて挫折した人や相続手続で不安がある方は、司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。

相続人であることを知らなかったから相続放棄

2025-12-29

1相続放棄で相続人でなくなる

①相続放棄は家庭裁判所で手続

相続が発生したら、相続人は相続を単純承認するか相続放棄をするか選択することができます。

相続放棄をすると、被相続人のプラスの財産もマイナスの財産も引き継ぎません。

相続放棄をすると、はじめから相続人でなくなるからです。

相続放棄を希望する場合、家庭裁判所に相続放棄の申立てをします。

②相続放棄の期限は3か月

相続放棄には、期限があります。

相続があったことを知ってから、3か月以内です。

被相続人が死亡してから、3か月以内ではありません。

「相続があったことを知ってから」とは、被相続人が死亡して相続が発生し、その人が相続人であることを知って、かつ、相続財産を相続することを知ってから、と考えられています。

③3か月経過すると単純承認

家庭裁判所に手続しないまま3か月経過すると、単純承認になります。

3か月以内に手続するルールを知らなくても、3か月経過で単純承認になります。

単純承認になったら、相続放棄は認められません。

④相続放棄をしても通知されない

相続放棄が認められると、家庭裁判所から相続放棄申述受理通知書が届きます。

家庭裁判所は、相続放棄の申立てをした人にだけ通知します。

家庭裁判所は、自主的に後順位相続人に通知しません。

家庭裁判所は、積極的に債権者に通知しません。

相続放棄をした人に、後順位相続人に通知する義務はありません。

相続放棄をした人に、債権者に通知する義務はありません。

⑤相続の承認または放棄の期間の伸長の申立て

被相続人の財産状況を詳しく知らないと、3か月はあっという間です。

相続を単純承認するか相続放棄をするか判断するために、時間がかかることがあります。

判断するための資料を集めるため、相続放棄の期限を延長してもらうことができます。

相続の承認または放棄の期間の伸長の申立てとは、3か月の期間を延長してもらう手続です。

期間延長の必要性や理由が妥当であるか、家庭裁判所が判断します。

判断ができない具体的理由を根拠づける資料を添付して、説得力を持たせるといいでしょう。

家庭裁判所で期間延長が認められた場合、原則として3か月延長されます。

2相続人であることを知らなかったから相続放棄

①先順位の相続人がいるから知らなかった

(1)子どもが相続人になると直系尊属や兄弟姉妹は相続人にならない

相続人になる人は、法律で決まっています。

被相続人に子どもがいる場合、子どもは相続人になります。

子どもが相続人になる場合、親などの直系尊属や兄弟姉妹は相続人になりません。

被相続人の死亡を知っても、被相続人の子どもが相続すると信じていることがあります。

被相続人の子どもが相続すると信じていると、相続人であることを知らないでしょう。

(2)子ども全員が相続放棄をする

被相続人の子どもと疎遠になっていると、相続の事情が分からないでしょう。

被相続人の子どもが相続放棄をすることがあります。

相続放棄が認められても、親などの直系尊属や兄弟姉妹に通知されません。

被相続人の子ども全員が相続放棄をすると、子どもがいない場合になります。

被相続人に子どもがいない場合、親などの直系尊属が相続人になります。

(3)先順位相続人の相続放棄を知ったときから3か月

相続放棄の期限3か月のスタートは、知ってからです。

相続放棄が認められても、後順位相続人に通知する義務はありません。

家庭裁判所から、後順位相続人に通知されません。

先順位の相続人が相続放棄をしたことを知らないのは、やむを得ないことです。

相続放棄の期限3か月は、先順位相続人が相続放棄をしたことを知ったときにスタートします。

②代襲相続人であることを知らなかった

(1)相続人になるはずだった人が先に死亡すると代襲相続

代襲相続とは、相続人になるはずだった人が被相続人より先に死亡したときに相続人になるはずだった人の子どもが相続人になることです。

被相続人に子どもがいる場合、子どもは相続人になります。

子どもが相続人になる場合、子どもの子どもは相続人になりません。

被相続人の死亡を知っても、被相続人の子どもが相続すると信じていることがあります。

被相続人の子どもが相続すると信じていると、代襲相続人であることを知らないでしょう。

被相続人の子どもと疎遠になっていると、相続の事情が分からないでしょう。

被相続人の子どもが先に死亡していた場合、子どもの子どもが相続人になります。

(2)兄弟姉妹が先に死亡したときも代襲相続

被相続人に子どもがなく、かつ、親などの直系尊属が先に死亡している場合、兄弟姉妹が相続人になります。

兄弟姉妹が先に死亡した場合、兄弟姉妹の子どもが代襲相続をします。

子どもだけでなく兄弟姉妹でも、代襲相続が発生します。

(3)代襲相続人であることを知ったときから3か月

代襲相続が発生する場合、被相続人との関係が薄いことが多いでしょう。

代襲相続人になったことを知らないのは、やむを得ないことです。

相続放棄の期限3か月は、代襲相続人であることを知ったときにスタートします。

(4)相続放棄で代襲相続は発生しない

被相続人の子どもが相続放棄をしても、代襲相続は発生しません。

相続放棄をした人の子どもは、相続人になりません。

代襲相続は発生しないから、相続放棄をした人の子どもは相続放棄をする必要がありません。

③上申書を提出して事情説明

相続放棄の期限は、3か月です。

相続発生から3か月以内に相続放棄の申立てをした場合、期限内であることは明らかです。

相続発生から3か月以上経過しても、相続放棄が認められることがあります。

相続放棄の期限3か月のスタートは、知ってからだからです。

相続放棄の申立てをするだけでは、3か月以上経過の申立てと誤解されるでしょう。

いつ相続があったことを知ったのか、積極的に家庭裁判所にアピールする必要があります。

上申書とは、いつ相続があったことを知ったのか説明する書類です。

知らなかった事実は、客観的資料で証明できません。

上申書の役割は感情的に訴えることではなく、知らなかったことを合理的に説明することです。

相続人であることを知らなかった場合、次の点を詳しく記載します。

・被相続人や被相続人の家族と疎遠であったなどの関係性

・被相続人の死亡を知った日

・被相続人の死亡を知ったきっかけ

・他の相続人から連絡がなかった事情

④上申書に証明資料を添付すると説得力がある

相続放棄の期限3か月のスタートは、知ってからです。

知ってからとは、次のことをすべて理解したときです。

・被相続人が死亡したこと

・自分が相続人になったこと

・相続財産を相続すること

相続人であることを知らなかった場合、自分が相続人になったことを知った日が重要です。

自分が相続人になったことは、手紙などで知ることが多いでしょう。

自分が相続人になったことを知るきっかけになった手紙は、重要です。

自分が相続人になったことを知った日を裏付ける客観的証拠になるからです。

上申書に証明資料を添付すると説得力があります。

証明資料がなくても、相続放棄が認められなくなることはありません。

時系列が明確で、一貫性がある説明ができることが重要です。

⑤単に知らなかっただけでは認められない

相続人であることを知らなかった場合、相続放棄が認められる可能性があります。

相続放棄の期限3か月のスタートは、知ってからだからです。

相続人であることを知らなかった場合とは、知らなかったことについて合理的な理由があるときと考えられています。

単なる多忙や単に聞いていなかったから知らなかったのは、合理的な理由ではないでしょう。

合理的な理由がないと、相続放棄は認められません。

客観的に知り得た時点で、相続放棄の期限3か月がスタートするからです。

相続放棄の期限3か月は、相続人の主観的事情に左右されません。

たとえ相続人が多忙で知らなくても、客観的に知り得たときから3か月経過で相続放棄ができなくなります。

⑥相続放棄の有無の照会ができる

家庭裁判所は、自主的に後順位相続人に通知しません。

相続放棄をした人に、後順位相続人に通知する義務はありません。

親などの直系尊属や兄弟姉妹から家庭裁判所に照会すれば、回答してもらえます。

相続放棄の有無の照会とは、相続放棄をしたか家庭裁判所に照会する制度です。

後順位相続人や債権者が照会することができます。

3相続財産を利用処分すると相続放棄が無効になる

相続が発生したら、相続人は相続を単純承認するか相続放棄をするか選択することができます。

相続があったことを知らなかったと言いつつも、単純承認をしてしまうことがあります。

相続財産を利用処分した場合、単純承認と見なされるからです。

単純承認をしたら、相続放棄はできません。

詳しい事情が分からないまま、家庭裁判所が相続放棄を認める決定をしてしまうことがあります。

相続財産を利用処分すると、相続放棄は無効になります。

家庭裁判所が相続放棄を認めても、債権者などは相続放棄の無効を主張して裁判を起こすことができます。


4相続放棄の手続の流れ

手順①相続財産調査

相続を単純承認するか相続放棄をするか判断するため、相続財産調査をします。

どのような財産状況でも相続放棄をする場合、相続財産調査は不要です。

手順1つ目は、相続財産調査です。

手順②必要書類の準備

相続放棄の申立ての必要書類は、次のとおりです。

(1)被相続人の戸籍謄本

(2)被相続人の住民票または戸籍の附票

(3)相続放棄する人の戸籍謄本(3か月以内のもの)

(4)収入印紙800円分

(5)裁判所が手続で使う郵便切手

裁判所が手続で使う郵便切手は、裁判所ごとに金額や枚数が決められています。

手順2つ目は、必要書類の準備です。

手順③相続放棄申述書の作成

相続放棄申述書に、必要事項を記載します。

相続放棄申述書は、相続放棄をする人の押印が必要です。

押印は、認印で差し支えありません。

手順3つは、相続放棄申述書の作成です。

手順④家庭裁判所へ提出

相続放棄申述書の提出先は、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です。

家庭裁判所の管轄は、裁判所のホームページで確認することができます。

家庭裁判所へ出向いて提出する場合、受付時間に制限があることがあります。

相続放棄申述書は、郵送で提出することができます。

普通郵便でも提出できますが、記録が残る郵便が安心です。

手順4つ目は、家庭裁判所へ提出です。

手順⑤相続放棄照会書に回答

相続放棄の申立てをすると、2週間ほどで家庭裁判所から相続放棄照会書が届きます。

相続放棄照会書とは、家庭裁判所から届く相続放棄についての意思確認です。

相続放棄は影響の大きい手続なので、間違いがないように慎重に確認します。

正直に回答して、返送します。

手順5つ目は、相続放棄照会書に回答です。

手順⑥相続放棄申述受理通知書の受領

回答に問題がなければ、家庭裁判所から審査結果が通知されます。

相続放棄申述受理通知書とは、相続放棄が認められた通知書です。

手順6つ目は、相続放棄申述受理通知書の受領です。

手順⑦他の相続人に通知

相続放棄の審査結果は、申立てをした人だけに通知します。

他の相続人に対して、積極的に通知しません。

相続放棄をしても他の相続人に通知する義務はありませんが、通知してあげると親切でしょう。

手順7つ目は、他の相続人に通知です。

5相続放棄を司法書士に依頼するメリット

相続放棄は、プラスの財産もマイナスの財産も引き継ぎませんという裁判所に対する申立てです。

相続人らとのお話合いで、プラスの財産を相続しませんと申し入れをすることではありません。

家庭裁判所で認められないと、相続放棄のメリットは受けらません。

相続放棄はその相続でチャンスは実質的には1回限りです。

家庭裁判所に認められない場合、即時抗告という手続を取ることはできます。

高等裁判所の手続で、2週間以内に申立てが必要になります。

家庭裁判所で認めてもらえなかった場合、即時抗告で相続放棄を認めてもらえるのは、ごく例外的な場合に限られます

一挙に、ハードルが上がると言ってよいでしょう。

3か月以内に必要書類を揃えて手続をするのは、想像以上にハードルが高いものです。

相続放棄を考えている方は、すみやかに司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。

遺言書が原因で相続した不動産が売却できない

2025-12-26

1相続した不動産は売却できる

①相続人が売却手続

相続した不動産は、相続人が自由に処分できます。

遺言書の存在が相続した不動産の売却を妨げることはありません。

遺言書の内容や手続の進め方によって、不動産の売却手続が進まなくなります。

②売却するまで固定資産税はかかり続ける

固定資産税とは、不動産を保有していると課される税金です。

相続した不動産に、固定資産税は課されます。

遺産分割協議中は、相続人全員が連帯して固定資産税全額を納付する義務があります。

売却できない状態が長引くと、固定資産税が嵩みます。

不動産を売却するまで、固定資産税はかかり続けます。

③遺言書があっても遺産分割協議ができる

遺言書を作成して、財産の分け方を指定することができます。

遺言書で相続財産の分け方が指定されている場合、遺産分割協議は不要です。

遺産分割協議とは、相続人全員による相続財産の分け方についての話合いです。

ときには、遺言書の内容が大きく偏っていることがあります。

内容が極端に偏った遺言書をそのまま執行すると、相続人間で深刻なトラブルになります。

相続人間でトラブルになるおそれがあるのに、わざわざ執行してトラブルにする必要はありません。

相続人全員で話し合って、相続財産の分け方を決める方が合理的です。

遺言書があっても、相続人全員の合意で遺産分割協議をすることができます。

④売却する前提で遺言書を作成できる

遺言書を作成すると言うと、財産の分け方を真っ先にイメージするでしょう。

相続財産に不動産が含まれる場合、分け方に困ることがあります。

不動産をそのまま分ける方法の他に、売却して金銭で分けることができます。

売却する前提で、遺言書を作成することができます。

2遺言書が原因で相続した不動産が売却できない

ケース①自宅保管の自筆証書遺言

(1)売却できない理由

遺言書を作成する場合、公正証書遺言か自筆証書遺言を作成することがほとんどです。

公正証書遺言とは、遺言内容を公証人に伝え公証人が書面に取りまとめる遺言書です。

自筆証書遺言とは、自分で書いて作る遺言書です。

遺言書は、遺言者が死亡したときに効力が発生します。

公正証書遺言は、遺言者が死亡した後すぐに執行することができます。

自宅などで保管していた自筆証書遺言は、遺言者が死亡した後すぐに執行することができません。

家庭裁判所で、検認手続をする必要があるからです。

検認手続とは、自筆証書遺言を家庭裁判所に提出して開封してもらう手続です。

検認手続が必要なのに検認手続をしないと、相続手続を進めることができません。

相続手続を進められないと、不動産の売却手続を進めることができません。

(2)売却するための対策

自筆証書遺言を見つけた人や預かっていた人は、家庭裁判所に対して自筆証書遺言検認の申立てをします。

自筆証書遺言検認の申立てを受付けたら、相続人全員を家庭裁判所に呼び出します。

検認期日では、遺言書を開封し遺言書の内容や形状を確認します。

検認が終わったら、検認済証明書を発行してもらいます。

自筆証書遺言と検認済証明書を添えて、相続手続をします。

相続登記が完了したら、不動産の売却手続を進めることができます。

ケース②内容が不明瞭な遺言書

(1)売却できない理由

自筆証書遺言は、専門家のサポートなしで作られることがほとんどです。

専門家のサポートがないと、適切な記載をすることは難しいでしょう。

「自宅は、お兄ちゃんに任せる。」

上記の記載は、内容が不明瞭な遺言書の代表例です。

自宅とは、どこに所在するどの不動産なのか分かりません。

お兄ちゃんとは、だれなのか分かりません。

任せるとは、相続させるのか管理させるのか分かりません。

内容が不明瞭な遺言書があっても、相続手続を進めることができません。

相続手続を進められないと、不動産の売却手続を進めることができません。

(2)売却するための対策

遺言書があっても、相続人全員の合意で遺産分割協議をすることができます。

相続人全員で適切な合意をした後、合意内容を書面に取りまとめます。

合意内容を取りまとめた書面を遺産分割協議書と言います。

適切な内容の遺産分割協議書を添えて、相続手続をします。

相続登記が完了したら、不動産の売却手続を進めることができます。

ケース③書き方ルール違反の遺言書

(1)売却できない理由

遺言書には、厳格な書き方ルールがあります。

公正証書遺言は、公証人が書面に取りまとめます。

公証人は、法律の専門家です。

公証人が関与したのに、書き方ルールに違反することは考えられません。

自筆証書遺言は、ひとりで作成されることがほとんどです。

書き方ルールに違反すると、遺言書が無効になります。

例えば、次の遺言書は書き方ルールの違反で無効になります。

・遺言書の本文がPCなどで作成

・遺言者以外の人が代筆

・〇月吉日など日付と特定できない

・日付スタンプが押してあって、自書していない

・押印がない

無効の遺言書があっても、相続手続を進めることができません。

相続手続を進められないと、不動産の売却手続を進めることができません。

(2)売却するための対策

遺言書が無効の場合、遺言書による相続手続はできません。

遺言書が無効になると、遺言書がなかった扱いになるからです。

遺言書がない場合、相続財産の分け方は相続人全員の合意で決定します。

遺産分割協議が成立したら、相続手続を進めることができます。

相続登記が完了したら、不動産の売却手続を進めることができます。

ケース④共有で相続させる遺言書

(1)売却できない理由

遺言書で相続財産の分け方が指定されている場合、遺言書の内容どおりに遺産分割をすることができます。

遺言書の内容が共有で相続させる場合、不動産は共有になります。

不動産が共有になると、一部の相続人だけで不動産を売却することはできません。

共有する不動産を売却するためには、共有者全員の同意が必要だからです。

(2)売却するための対策

遺言書の内容が共有で相続させる場合、共有で相続登記をすることができます。

共有者全員の協力があれば、不動産を売却することができます。

共有者全員の協力が難しい場合、家庭裁判所に共有物分割調停を申し立てることができます。

共有物分割調停とは、家庭裁判所の助力を得て共有者全員による合意を目指す制度です。

共有物分割調停で合意ができないときは、共有物分割請求訴訟をすることができます。

ケース⑤遺言執行者がいる

(1)売却できない理由

遺言書は、作成するだけでは意味がありません。

遺言書の内容は、自動で実現するわけではないからです。

遺言執行者とは、遺言書の内容を実現する人です。

遺言書で、遺言執行者を指名することができます。

遺言執行者がいる場合、相続人は遺言執行者の妨害行為はできません。

相続人が不動産を売却したいと思っても、遺言書の実現が優先されるからです。

(2)売却するための対策

遺言執行者には、遺言書の内容を実現する義務があります。

相続人は、遺言執行者を無視して勝手に不動産の売却行為はできません。

相続人は、遺言執行者の妨害行為はできないからです。

遺言執行者は遺言書の内容を実現する人で、相続人の希望をかなえる人ではありません。

不動産の売却行為が必要で合理的であれば、遺言執行者の協力が得られるでしょう。

遺言執行者の協力が得れば、不動産を売却することができます。

例外的なケースでは、家庭裁判所に解任の申立てをすることができます。

例えば、遺言執行者が長期間職務を放置するケースや横領など違法行為をしたケースです。

遺言書に書いていないのに不動産売却に協力してもらえないだけでは、解任事由にあたらないでしょう。

遺言執行が完了したら、財産は相続人のものになります。

相続人は、相続した不動産を自由に処分することができます。

ケース⑥遺言書で遺贈

(1)売却できない理由

遺贈とは、遺言書を作成して相続人や相続人以外の人に財産を引き継ぐことです。

相続人に対して不動産を遺贈した場合、遺贈を受けた相続人は他の人の協力なしで所有権移転登記をすることができます。

相続人以外の人に対して不動産を遺贈した場合、遺贈義務者の協力がないと所有権移転登記をすることができません。

遺言執行者がいる場合、遺贈義務者は遺言執行者です。

遺言執行者がいない場合、遺贈義務者は相続人全員です。

遺言書の内容に不満がある相続人がいると、相続手続を進められなくなります。

(2)売却するための対策

遺言執行者には、遺言書の内容を実現する義務があります。

遺言執行者が協力しないことは、あまり考えられません。

遺言書で遺言執行者が指名されていない場合、家庭裁判所に遺言執行者選任の申立てをすることができます。

家庭裁判所が選任した遺言執行者と協力して、所有権移転登記をすることができます。

所有権移転登記が完了したら、不動産の売却手続を進めることができます。

3売却予定でも相続登記は省略できない

①権利変動の過程を公示する

相続した不動産をすぐに売却する予定の場合、相続登記の手間と費用がもったいないと考えるかもしれません。

相続登記を省略することはできません。

登記制度は、現在の所有者を公示しているだけではないからです。

登記制度で、権利変動の過程も公示しています。

相続登記の省略を認めると、適切な権利変動の過程が公示されなくなります。

登記制度への信頼が大きく損なわれます。

登記制度への信頼を維持するため、相続登記は省略できません。

②すみやかな相続登記で売却手続がスムーズ

相続が発生したら、相続財産は相続人全員の共有財産になるのが一般的です。

相続登記をしないと、だれが相続するのか客観的に分からないと言えるでしょう。

だれが所有者なのか分からないと、トラブルに巻き込まれるおそれがあります。

トラブルに巻き込まれるおそれがある不動産は、購入を諦めるでしょう。

相続登記をしないと、売却手続が進まなくなります。

相続登記をすると、所有者が客観的に明らかになります。

すみやかな相続登記で、売却手続がスムーズになります。

4不動産を売却しやすい遺言書を作成する

①売却して金銭で分割を明記

遺言書を作成して、不動産を売却し金銭で分けることを明記することができます。

遺言書に明記してあると、相続人間の調整が容易になります。

②遺言執行者を指名

遺言執行者がいると、遺言者にとって安心です。

遺言書の内容を確実に、実現してくれるからです。

遺言執行者がいると、相続人にとって安心です。

手間と時間がかかる相続手続をおまかせすることができるからです。

不動産を売却する場合、相続手続をしたうえ売却手続が必要です。

遺言執行者におまかせできると、相続人間のトラブルを回避することができます。

③公正証書遺言がおすすめ

公正証書遺言は、公証人が関与しています。

書き方ルールの違反などで、遺言書が無効になることは考えられません。

司法書士などの専門家にサポートしてもらうと、相続人間でトラブルになりにくい遺言書を作成することができます。

遺言書を作成するなら、公正証書遺言がおすすめです。

5相続後の不動産売却を司法書士に依頼するメリット

相続した不動産を売却したいという方は、少なからずいます。

相続も不動産の売却も、一生のうちに何度も経験するものではありません。

だれにとっても慣れない相続手続と売却手続を並行して進めるのは大変なことです。

平日は仕事や家事をしながら、さらに大切な家族を失った悲しみを抱えながら、これらを手続するのは想像以上に大変です。

土地を売却するためには、相続登記が必須です。

司法書士は、余計な費用や余計な手間をかけないように手続をします。

相続後の不動産売却を確実に進たい方は、司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。

失踪宣告の申立人は法律上の利害関係人のみ

2025-12-25

1失踪宣告で死亡と見なされる

①残された家族のため失踪宣告

相当長期間、行方不明になっている場合、死亡している可能性が高い場合があります。

条件を満たした場合、死亡の取り扱いをすることができます。

失踪宣告とは、行方不明の人が死亡した取り扱いとするための手続です。

失踪宣告がされたら、たとえ死亡していなくても死亡した取り扱いをします。

②普通失踪と特別失踪(危難失踪)

失踪宣告には、2種類があります。

普通失踪と特別失踪(危難失踪)です。

死亡したことが確認できないのに、死亡と見なされます。

死亡と見なされるという強い効果があります。

失踪宣告が認められるためには、次の条件があります。

(1)行方不明の人が生死不明であること

(2)生死不明のまま一定期間継続していること

普通失踪は、7年で死亡と見なされます。

特別失踪(危難失踪)は、1年で死亡と見なされます。

③死亡と見なされる日に死亡

失踪宣告は、家庭裁判所の審判です。

失踪宣告の審判が確定した後に、市区町村役場に届出が必要です。

失踪宣告の審判が確定した後に市区町村役場に提出する届出を失踪届と言います。

失踪届が受理されることで、失踪宣告がされたことが戸籍に記載されます。

普通失踪は行方不明になってから、7年経過した日に死亡と見なされます。

特別失踪(危難失踪)は危難が去ったときに、死亡と見なされます。

死亡と見なされる日は、家庭裁判所が判断します。

失踪宣告の審判日は、死亡日と無関係です。

死亡と見なされる日に、死亡したと扱われます。

2失踪宣告の申立人は法律上の利害関係人のみ

①利害関係人ではなく法律上の利害関係人に限定

失踪宣告の申立人は、民法上、利害関係人と定められています。

利害関係人と定められているものの、法律上の利害関係人に限定されると考えられています。

単なる利害関係人は、申立人になることはできません。

法律上の利害関係人に限定される理由は、次のとおりです。

・失踪宣告は、死亡扱いと言う重大な効果があるため。

・失踪宣告の悪用や濫用を防止するため。

・本人の権利や利益を保護すべきだから。

法律上の具体的な利害関係がある人だけが申立人になることができます。

②配偶者は法律上の利害関係人

(1)配偶者は常に相続人

行方不明者が死亡すると、配偶者は相続人になります。

行方不明者に財産があれば、財産を相続することができます。

(2)死亡により婚姻関係が消滅

行方不明者が死亡すると、配偶者は再婚することができます。

行方不明者が死亡すると、婚姻関係が消滅するからです。

単に再婚したいだけなら、失踪宣告をする必要がないかもしれません。

配偶者が3年以上生死不明である場合、離婚訴訟によって離婚ができるからです。

③相続人は法律上の利害関係人

(1)行方不明者が被相続人になるときの相続人

行方不明者が死亡すると、相続が発生します。

行方不明者に財産があれば、財産を相続することができます。

(2)行方不明者が共同相続人になるときの他の相続人

相続が発生したら、被相続人の財産は相続人が相続します。

相続財産の分け方は、相続人全員の合意で決定します。

一部の相続人が生死不明になると、相続財産の分け方について話し合いができなくなります。

④後順位相続人は法律上の利害関係人ではない

被相続人に子どもがいる場合、子どもは相続人になります。

子どもが相続人になるから、親などの直系尊属や兄弟姉妹は相続人になりません。

行方不明者が死亡しても、財産を取得することはありません。

後順位相続人は事実上の利害関係があったとしても、法律上の利害関係が認められません。

⑤相続人以外の親族は法律上の利害関係人ではない

相続人以外の親族は、法律上の利害関係人に該当しません。

行方不明者が死亡しても、財産を取得することはありません。

相続人以外の親族は事実上の利害関係があったとしても、法律上の利害関係が認められません。

⑥受遺者は法律上の利害関係人

受遺者とは、遺贈を受ける人です。

遺贈とは、遺言書で相続人や相続人以外の人に財産を引き継ぐことです。

行方不明者が死亡すると、遺言書に効力が発生します。

遺言書に遺贈すると書いてあれば、財産を引き継ぐことができます。

失踪宣告の申立をする場合、受遺者であると証明する必要があります。

公正証書遺言を預かっている場合は、公正証書遺言で証明することができます。

封筒に入った自筆証書遺言や法務局保管の自筆証書遺言では、証明することができません。

受遺者と証明できないと、申立人と認められないでしょう。

⑦生命保険の死亡保険金の受取人は法律上の利害関係人

行方不明者に生命保険がかけてあった場合、死亡保険金が支払われます。

行方不明者が死亡すると、受取人は死亡保険金を受け取ることができます。

失踪宣告の申立をする場合、死亡保険金の受取人であると証明する必要があります。

生命保険の保険証書などを準備する必要があります。

⑧行方不明者の保証人は法律上の利害関係人

保証人とは、借金を肩代わりする人です。

借金を抱えたまま、債務者が長期間生死不明になることがあります。

債務者が返済を滞らせたまま生死不明になると、債権者は保証人に請求します。

保証人は肩代わりの約束をしているから、債権者からの請求を拒めません。

保証人は肩代わりをした後、債務者に請求することができます。

債権者からの請求を拒めない点と債務者に求償できる点に、法律上の利害関係があると考えられます。

⑨行方不明者の債権者は法律上の利害関係人ではない

行方不明者が死亡すると、債務は相続人に相続されます。

相続人に相続されても、債権自体に変化はありません。

債権者に利害関係があるとしても、事実上の利害関係に過ぎません。

失踪宣告は、債権回収の便宜のための制度ではありません。

行方不明の債務者に財産があるのなら、債権者は不在者財産管理人選任の申立てをすることができます。

不在者財産管理人とは、行方不明の人の財産を管理する人です。

債権者は、行方不明者の財産から債権を回収する手段があります。

債権者に利害関係があるとしても、事実上の利害関係に過ぎません。

⑩推定相続人の債権者は法律上の利害関係人ではない

行方不明者が死亡すると、行方不明者の財産は相続人に相続されます。

行方不明者の財産を相続したら、相続財産から借金の返済を期待するかもしれません。

相続財産を相続するか相続放棄するか、相続人が自由に決めます。

推定相続人の債権者があれこれ言うことではありません。

債権者に利害関係があるとしても、事実上の利害関係に過ぎません。

⑪行方不明者の債務者は法律上の利害関係人ではない

行方不明者が死亡しても、債務者には影響がありません。

債権者が行方不明で弁済ができない場合、受領不能を理由に供託をすることができます。

債務者に利害関係があるとしても、事実上の利害関係に過ぎません。

⑫不法行為加害者が法律上の利害関係人

不法行為加害者とは、故意または過失によって他人に損害を与えた人です。

例えば、交通事故の加害者は、典型的な不法行為加害者です。

交通事故で被害者が死亡した場合、近親者は固有の慰謝料を請求することができます。

近親者が行方不明者である場合、不法行為加害者は法律上の利害関係人と言えます。

近親者が交通事故の前に死亡したと見なされたら、近親者による固有の慰謝料を請求されないからです。

近親者による固有の慰謝料請求権の発生の有無が法律上の利害関係です。

⑬不在者財産管理人は法律上の利害関係人

不在者財産管理人は、行方不明者が帰ってくるまで財産管理を続けます。

行方不明者が死亡すると、不在者財産管理人の任務は終了します。

行方不明者の財産は、相続人が相続するからです。

不在者財産管理人は、行方不明者の金銭を法務局に供託することができます。

行方不明者の財産が金銭のみであれば、供託することで不在者財産管理人の任務終了になります。

わざわざ失踪宣告をする必要はないでしょう。

⑭不動産の共有者は法律上の利害関係人

不動産など共有物の管理の決定は、持分割合の過半数で決定します。

不動産など共有物の処分の決定は、共有者全員の同意が必要です。

共有者の一部に行方不明者がいると、管理や処分の決定が停滞します。

行方不明者が死亡すると、共有持分は相続人が相続します。

相続人が意思決定に参加するから、他の共有者の法的地位が安定します。

⑮事実婚・内縁の配偶者は法律上の利害関係人ではない

法律婚の配偶者は、法律上の利害関係人です。

事実婚・内縁の配偶者は、法律上の利害関係人ではありません。

婚姻関係や相続関係に、具体的な権利がないからです。

事実婚・内縁関係の人は、遺言書を作成していることがあります。

遺言書で遺贈を受ける人であれば、法律上の利害関係があります。

事実婚・内縁の配偶者で法律上の利害関係がなくとも、受遺者なら法律上の利害関係があります。

⑯単なる友人知人は法律上の利害関係人ではない

「心配だから」「困っているから」だけの第三者は、法律上の利害関係人ではありません。

感情的理由だけで法律上の利害関係がないと、失踪宣告の申立てをすることはできません。

⑰役所や検察官は申立てができない

不在者財産管理人選任の申立ては、検察官が申立人になることができます。

失踪宣告の申立ては、役所や検察官が申立人になることができません。

財産管理と死亡扱いは、法的影響力の重さが大きく違います。

国家や自治体が職権で進める制度設計ではありません。

行方不明者の帰りを待つ親族の気持ちを尊重する目的もあります。

3失踪宣告の申立人になれないときの現実的対処法

①利害関係人に申立てを依頼

自分が法律上の利害関係人でなくても、法律上の利害関係人に依頼することはできます。

法律上の利害関係人が失踪宣告の申立てをすれば、結果的に失踪宣告がされます。

②不在者財産管理人選任の申立てをする

不在者財産管理人選任の申立ては、申立てできる人が広く認められています。

不在者財産管理人選任の申立てをして、不在者財産管理人が失踪宣告の申立てをすることができる可能性があります。

不在者財産管理人選任の申立てでは、予納金を納める必要があります。

事件によっては、予納金が100万円程度かかることがあります。

③所在等不明共有者持分取得制度を利用

所在等不明共有者持分取得制度とは、行方不明の共有者の持分を買取ることができる制度です。

不動産の共有者が行方不明者である場合、失踪宣告や不在者財産管理人制度より使いやすいことがあります。

④家庭裁判所で法律相談はできない

家庭裁判所は、法律相談をする機関ではありません。

裁判所の管轄や必要書類の有無を相談することはできます。

4生死不明の相続人がいる相続を司法書士に依頼するメリット

相続人が行方不明であることは、割とよくあることです。

行方不明の相続人がいると、相続手続を進めることができません。

相続が発生した後、困っている人はたくさんいます。

自分たちで手続しようとして、挫折する方も少なくありません。

失踪宣告の申立ては、家庭裁判所に手続が必要になります。

通常ではあまり聞かない手続になると、専門家のサポートが必要になることが多いでしょう。

信託銀行などは、高額な手数料で相続手続を代行しています。

被相続人が生前、相続人のためを思って、高額な費用を払っておいても、信託銀行はこのような手間のかかる手続を投げ出して知識のない遺族を困らせます。

知識のない相続人が困らないように高額でも費用を払ってくれたはずなのに、これでは意味がありません。

税金の専門家なども対応できないでしょう。

困っている遺族はどうしていいか分からないまま、途方に暮れてしまいます。

裁判所に提出する書類作成は、司法書士の専門分野です。

途方に暮れた相続人をサポートして、相続手続を進めることができます。

自分たちでやってみて挫折した方も、信託銀行などから丸投げされた方も、相続手続で不安がある方は司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。

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