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相続放棄申述書を提出した後の流れ

2026-09-18

1相続放棄申述書は家庭裁判所へ提出

①相続放棄申述書とは相続放棄の意思表示の書類

相続が発生したら、相続人は相続を単純承認するか相続放棄をするか選択することができます。

相続放棄を希望する場合、家庭裁判所に相続放棄の申立てをします。

相続放棄申述書とは、家庭裁判所に提出する相続放棄の意思表示書書類です。

相続放棄申述書が受付けられると、家庭裁判所が審査を開始します。

家庭裁判所で相続放棄が認められると、はじめから相続人でなくなります。

相続放棄申述書を提出した後、次のとおり段階を経て進みます。

段階①相続放棄申述書の提出を確認

段階②補正指示があるときは対応する

段階③相続放棄照会書に回答する

段階④相続放棄申述受理通知書が届く

②家庭裁判所の手続なしで相続放棄はできない

相続財産の分け方は、相続人全員の合意で決定します。

相続人全員で合意ができれば、どのような分け方でもすることができます。

財産を一切引き継がない合意をしたとき、相続放棄をしたと表現することがあります。

財産を一切引き継がない合意をしても、相続放棄ではありません。

相続放棄をしたと表現しても、遺産分割協議を成立させたに過ぎません。

相続放棄は、家庭裁判所の手続だからです。

遺産分割協議で、相続放棄をすることはできません。

2相続放棄申述書を提出した後の流れ

段階①相続放棄申述書の提出を確認

(1)相続放棄申述書は郵送で提出ができる

相続放棄を希望する場合、家庭裁判所に相続放棄の申立てをします。

相続放棄申述書は家庭裁判所に出向いて窓口に提出する他に、郵送で提出することができます。

(2)相続放棄の期限は3か月

相続放棄には、期限があります。

相続があったことを知ってから、3か月です。

3か月経過してしまうと、自動で単純承認になります。

家庭裁判所に相続放棄申述書が提出されるまで、3か月です。

家庭裁判所に相続放棄申述書が提出されなければ、自動で単純承認になります。

(3)提出とは家庭裁判所へ届くこと

相続放棄申述書は、郵送で提出することができます。

相続放棄申述書の提出とは、相続放棄申述書が家庭裁判所へ届くことです。

郵便ポストに投函しても、家庭裁判所に届かなければ意味はありません。

相続放棄申述書は普通郵便で提出することができますが、レターパックなど記録が残る郵便がおすすめです。

普通郵便で提出すると、家庭裁判所に到着したのか分からないからです。

郵便物が迷子になったまま相続放棄の期限3か月を経過した場合、相続放棄を認められません。

家庭裁判所で相続放棄申述書が受付けられなければ、相続放棄はできません。

段階②補正指示があるときは対応する

(1)相続放棄申述書の不備は補正できる

相続放棄申述書を受付けると、家庭裁判所は内容を審査します。

相続放棄申述書に不備がある場合、家庭裁判所から連絡があります。

相続放棄申述書には、日中連絡が取れる電話番号を記載します。

家庭裁判所が連絡をする場合、相続放棄申述書に記載された連絡先に連絡をするからです。

家庭裁判所からの電話に出られなくても、すぐに折り返せば問題はありません。

相続放棄申述書に不備があっても、補正することができます。

家庭裁判所の指示どおり適切に補正をすれば、問題になることはありません。

(2)必要書類に不足があっても追完できる

相続放棄申述書には、たくさんの書類を添付します。

相続放棄で必要になる書類は、次のとおりです。

●共通で必要になる書類

・相続放棄申述書

・被相続人の住民票または戸籍の附票

・相続放棄をする人の戸籍謄本(発行後3か月以内)

●配偶者・子どもが相続放棄をするケース

・被相続人の死亡の戸籍謄本

●父母が相続放棄をするケース

・被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本

・子どもや孫の死亡の戸籍謄本

●兄弟姉妹が相続放棄をするケース

・被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本

・子どもや孫の死亡の戸籍謄本

・父母や祖父母の死亡の戸籍謄本

必要書類に不足がある場合、家庭裁判所から連絡があります。

相続放棄申述書に不足があっても、追完することができます。

家庭裁判所の指示どおり適切に追完をすれば、問題になることはありません。

(3)不備がなければ補正指示もない

相続放棄申述書が適切に作成されている場合、家庭裁判所から連絡がありません。

必要書類が適切に準備されている場合、家庭裁判所から連絡がありません。

相続放棄申述書を受付けても、何も連絡がないことが一般的です。

相続放棄申述書や添付書類に不備がなければ、補正指示も不要だからです。

段階③相続放棄照会書に回答する

(1)相続放棄照会書が届く

提出された書類に問題がなければ、2週間ほどで家庭裁判所から相続放棄照会書が届きます。

相続放棄照会書とは、家庭裁判所から届く相続放棄についての意思確認です。

相続放棄は、影響の大きい手続なので間違いがないように慎重に確認します。

(2)相続放棄申述書が未着なら相続放棄照会書は届かない

相続放棄申述書が受付されたら、家庭裁判所は相続放棄照会書を発送します。

相続放棄申述書が受付されないのに、相続放棄照会書が発送されるはずはありません。

相続放棄照会書が届かない場合、相続放棄申述書が受付されていない可能性があります。

相続放棄照会書が届いたのは、相続放棄申述書が受付された証拠と言えます。

(3)回答期限までに回答書を提出

相続放棄照会書の内容は、難しいものではありません。

事実をありのままに書けばいいでしょう。

回答期限までに、回答書を提出します。

(4)相続放棄照会書が届くのは2週間後くらい後

家庭裁判所の運用によっては、相続放棄照会書が省略されることがあります。

相続放棄の申立てを提出してから3週間程度経過しても相続放棄照会書が届かない場合、家庭裁判所に確認の連絡をすると安心です。

(5)相続があったことを知ったときを回答書で説明できる

相続放棄には、3か月の期限があります。

被相続人が死亡してから3か月以内に相続放棄申述書を提出した場合、相続放棄の期限内であることは明らかです。

被相続人が死亡しても、相続放棄の期限3か月がスタートしないことがあります。

被相続人が死亡しても、相続があったことを知らないことがあるからです。

被相続人の死亡後3か月以上経過してから相続放棄申述書を提出した場合、期限後に相続放棄申述書を提出したように見えてしまいます。

相続があったことを知ってから3か月以内であれば、相続放棄をすることができます。

相続があったことを知ったときを回答書で説明することができます。

手紙が届いたことで相続があったことを知った場合、届いた手紙は重要です。

相続があったことを知った証拠になるからです。

届いた手紙のコピーを回答書に添付して提出すると、説得力があります。

段階④相続放棄申述受理通知書が届く

(1)相続放棄の結果通知

家庭裁判所が相続放棄を認める決定をしたら、相続放棄申述受理通知書を送ります。

相続放棄申述受理通知書とは、相続放棄の結果通知です。

相続放棄申述受理通知書は、相続放棄の申立てをした人にだけ送られます。

相続放棄申述書を提出してから、1か月程度で届きます。

1か月程度経過しても相続放棄申述受理通知書が届かない場合、家庭裁判所に問合せをするといいでしょう。

相続放棄照会書の回答書が家庭裁判所に届いていない場合、相続放棄申述受理通知書が届きません。

相続放棄申述受理通知書を発送しても、郵便が迷子になる可能性があるからです。

(2)相続放棄申述受理通知書が届かなくても無効にならない

相続放棄申述受理通知書は、簡素な通知書です。

家庭裁判所にとっては単なる結果通知なので、普通郵便で送られてきます。

簡素な通知書であることを知らないと、DMなどに紛れてしまうかもしれません。

相続放棄申述受理通知書が届かなくても、相続放棄は無効になることはありません。

相続放棄申述受理通知書の到達は、相続放棄の要件ではないからです。

(3)相続放棄申述受理通知書紛失でも再発行されない

相続放棄申述受理通知書は、単なる相続放棄の結果通知です。

相続放棄申述受理通知書を紛失しても、再発行の制度はありません。

相続放棄をした人にとって、相続放棄が認められたことを示す重要な書類です。

相続放棄をした人は、相続放棄申述受理証明書の発行請求をすることができます。

相続放棄申述受理通知書と相続放棄申述受理証明書は、同じ記載内容です。

相続放棄申述受理通知書を紛失したら、相続放棄申述受理証明書の発行請求をすることが合理的です。

3名古屋家庭裁判所本庁なら即日審判

①相続放棄申述受理通知書が届くまで1か月以上

相続放棄申述書を提出した後、家庭裁判所は受付けた書類を審査します。

書類に問題がなければ、相続放棄を認める決定をします。

家庭裁判所の混雑状況によりますが、相続放棄申述受理通知書が届くまで1か月以上かかります。

②条件を満たせば即日審判が受けられる

名古屋家庭裁判所本庁など一部の家庭裁判所では、即日審判を受けることができます。

即日審判とは、家庭裁判所に出向いて相続放棄の手続をすると当日処理してもらえる制度です。

即日審判の申立てができる人は、家庭裁判所が定める条件を満たした人のみです。

即日審判を受けた場合、その日のうちに相続放棄申述受理通知書を受け取ることができます。

4相続放棄を司法書士に依頼するメリット

実は、相続放棄はその相続でチャンスは1回限りです。

家庭裁判所に認められない場合、即時抗告という手続を取ることはできますが、高等裁判所の手続で、2週間以内に申立てが必要になります。

家庭裁判所で認めてもらえなかった場合、即時抗告で相続放棄を認めてもらえるのは、ごく例外的な場合に限られます。

一挙にハードルが上がると言ってよいでしょう。

相続放棄は、家庭裁判所に申立てをすることです。

届出をすれば終わりでなく、家庭裁判所から来る相続放棄照会書にも適切に回答しなければなりません。

特に、相続が発生してから3か月以内に届出ができなかった場合などは、止むを得ない事情があったことを家庭裁判所に納得してもらう必要があります。

相続放棄の届出をするときに、上申書や事情説明書という書類を添えて、家庭裁判所を説得します。

同時に、相続放棄回答書でも止むを得ない事情があったことを説明し、納得してもらいます。

納得できる事情を適切に示すことで、家庭裁判所は相続放棄を認めてくれます。

家庭裁判所が知りたいことを無視した作文やダラダラとした作文では認めてもらうことは難しいでしょう。

司法書士であれば、家庭裁判所に認めてもらえるポイントを承知していますから、認めてもらいやすい書類を作成することができます。

さらに、通常の相続放棄と同様に戸籍や住民票が必要になります。

お仕事や家事、通院などでお忙しい人には平日の昼間に役所にお出かけになって準備するのは負担が大きいものです。

戸籍や住民票は郵便による取り寄せもできますが、書類の不備などによる問い合わせはやはり役所の業務時間中の対応が必要になりますから、やはり負担は軽いとは言えません。

このような戸籍や住民票の取り寄せも司法書士は代行します。

相続放棄を考えている方は、すみやかに司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。

連絡無視の相続人に不在者財産管理人は使えない

2026-09-16

1連絡無視の相続人がいると相続手続が進まない

①遺産分割協議成立には相続人全員の合意が必要

相続が発生したら、相続財産は相続人全員の共有財産になります。

相続財産の分け方は、相続人全員の合意で決定します。

遺産分割協議とは、相続財産の分け方について相続人全員でする話し合いです。

相続人全員の合意がないと、遺産分割協議は成立しません。

一部の相続人を含めずに合意しても、無効の合意です。

連絡無視の相続人がいると、遺産分割協議が成立させられなくなります。

遺産分割協議成立には、相続人全員の合意が必要です。

②他の相続人が勝手に相続放棄をさせられない

相続人は、相続を単純承認するか相続放棄をするか選択することができます。

相続放棄を希望する場合、相続人本人が家庭裁判所に相続放棄の申立てをします。

家庭裁判所で相続放棄が認められたら、はじめから相続人でなくなります。

相続人から除外するため、他の相続人が勝手に相続放棄をさせることは許されません。

相続放棄は、相続人本人が手続をします。

連絡無視の相続人がいても、勝手に相続放棄をさせることはできません。

③不在者財産管理人は行方不明者の財産を守る人

不在者財産管理人とは、行方不明者の財産を管理する人です。

行方不明者の財産を守るため、家庭裁判所が選任します。

不在者財産管理人は、行方不明者に不利益な財産管理をすることはできません。

家庭裁判所は、行方不明者に不利益な財産管理を許可しません。

不在者財産管理人制度は、行方不明者の財産を守る制度だからです。

④不在者財産管理人は行方不明者の代理人

相続人の中に行方不明の人がいると、とても困ります。

相続手続は、相続人全員の協力が必要だからです。

遺産分割協議は、相続人全員の合意がないと成立しません。

相続人が行方不明である場合、家庭裁判所に不在者財産管理人を選任してもらうことができます。

不在者財産管理人は、行方不明者の代理人です。

行方不明の相続人の代わって、遺産分割協議に参加することができます。

不在者財産管理人と他の相続人全員の合意で、遺産分割協議を成立させることができます。

行方不明の相続人の相続人がいても、相続手続を進めることができます。

2連絡無視の相続人に不在者財産管理人は使えない

①不在者に対して不在者財産管理人を選任できる

(1)不在者財産管理人を選任する条件がある

不在者財産管理人は、家庭裁判所が選任します。

不在者財産管理人を選任する条件を満たしたときだけ、家庭裁判所は不在者財産管理人を選任することができます。

家庭裁判所が不在者財産管理人を選任する条件は、次のとおりです。

・行方不明者が不在者であること

・行方不明者が財産管理人を置いていないこと

・利害関係人から不在者財産管理人選任の申立てがあること

上記条件をすべて満たしているとき、家庭裁判所は不在者財産管理人を選任することができます。

家庭裁判所は、家族の希望をかなえる機関ではありません。

家族が不在者財産管理人を選任してほしいと希望しても、言いなりになることはありません。

不在者財産管理人選任の条件を満たしている必要があるからです。

条件を満たしていないと、不在者財産管理人は選任されません。

家庭裁判所が不在者財産管理人を選任するためには、民法の要件を満たしている必要があります。

(2)不在者とは住所居所を離れ容易に戻る見込みがない人

行方不明者が不在者である場合、家庭裁判所は不在者財産管理人を選任することができます。

不在者とは、住所や居所を離れ容易に戻る見込みがない人です。

住所や居所を離れ容易に戻る見込みがない人は、所在不明の人です。

住所や居所を離れ容易に戻る見込みがない人は、連絡不能の人です。

家庭裁判所は、所在不明で連絡不能の人に不在者財産管理人を選任することができます。

(3)客観的に所在不明で連絡不能であることが重要

家庭裁判所が不在者財産管理人を選任するためには、客観的に所在不明で連絡不能であることが重要です。

主観的に所在不明で連絡不能と主張するだけでは、家庭裁判所は不在者と認めません。

不在者財産管理人選任の申立てには、不在の事実を証する資料を添付します。

不在の事実を証する資料として、次の資料を提出することが一般的です。

・職権消除された住民票や戸籍の附票

・行方不明者届受理証明書

・「あて所に尋ねあたりません」で返戻された郵便物

・金融機関等の取引状況資料

・学校職場などの証明書

(4)消息が判明したら不在者財産管理人を選任できない

不在の事実を証する資料を参考に、家庭裁判所は補充調査をします。

家族などが調査をする場合、公的機関や医療機関は個人情報を盾にして答えてくれません。

家庭裁判所が調査をする場合、公的機関や医療機関は照会に応じます。

家族が行方不明者を探せなくても、家庭裁判所の調査で見つかることがあります。

消息が判明した場合、不在者ではありません。

行方不明者の消息が見つかったら、不在者財産管理人は選任されません。

②郵便が届く相続人は連絡不能ではない

遺産分割協議のため、相続人全員に連絡を取ります。

相続人の中には、応答がないことがあります。

応答がない相続人は、連絡不能とは言えません。

郵便が届く相続人は、連絡できる相続人だからです。

住民票上の住所地に住んでいない場合、郵便物が転送されることがあります。

本人の届出に基づいて、郵便物は転送されるはずです。

住民票上の住所地に住んでいなくても、転送先で郵便物を受け取っている可能性が高いでしょう。

郵便物を受け取っているなら、連絡できると判断されます。

郵便物が実家などに届いているだけで本人は行方不明で郵便物を受け取っていないケースでは、不在者と判断する余地があります。

③応答しないだけでは不在者ではない

相続手続に協力してほしいと手紙を書いたのに、返事がないことがあります。

単に返事がないだけで、不在者と判断することはできません。

連絡を取りたくないだけで、不在者と判断することはできません。

疎遠で返事をしたくないだけでは、不在者ではありません。

所在不明でないから、不在者財産管理人は選任されません。

連絡を無視する相続人であっても、不在者財産管理人は選任されません。

④家族の希望があっても不在者財産管理人を選任できない

不在者財産管理人制度は、行方不明者の財産を守る制度です。

行方不明者でない人に、不在者財産管理人制度を利用することはできません。

不在者財産管理人制度は、家族の希望をかなえる制度ではないからです。

家庭裁判所は、家族の希望をかなえる機関ではありません。

たとえ家族が希望しても、行方不明者でない人に不在者財産管理人を選任することはできません。

3連絡無視の相続人がいるときの選択肢

①遺産分割調停で家庭裁判所から呼出してもらう

連絡を無視する相続人であっても、相続人から除外することはできません。

連絡を拒否する相続人であっても、相続人から除外することはできません。

遺産分割協議成立には、相続人全員の合意が必要です。

相続人だけで話し合いができない場合、家庭裁判所の助力を得ることができます。

遺産分割調停とは、家庭裁判所の助力を得て相続人全員の合意を目指す手続です。

他の相続人からの連絡を無視する相続人であっても、家庭裁判所からの連絡には応じることがあります。

家庭裁判所からの呼び出しに応じないと、家庭裁判所の心証を悪くします。

家庭裁判所からの連絡を無視するメリットは、ほとんどありません。

②遺産分割審判へ移行

家庭裁判所からの連絡を無視すると、遺産分割調停が成立しなくなります。

遺産分割調停がまとまらない場合、遺産分割審判に移行します。

遺産分割審判とは、裁判所が遺産分割の方法を判断する手続です。

遺産分割審判では、相続人全員の合意は不要です。

裁判所がそれぞれの相続人の意見や相続財産の状況を考慮して、最終的な判断をします。

③10年以上経過で持分取得制度と持分譲渡制度

持分取得制度は、一部の相続人が行方不明であるときに他の相続人が持分を取得する制度です。

持分譲渡制度は、一部の相続人が行方不明であるときに不動産全体を第三者に譲渡する制度です。

裁判所の関与のもと、持分取得制度と持分譲渡制度を利用することができます。

遺産分割協議ができないまま10年以上経過した場合、行方不明の相続人の持分を取得することができます。

相続人による遺産分割協議の機会を保障するためです。

4生死不明の相続人がいる相続を司法書士に依頼するメリット

相続人が行方不明であることは、割とよくあることです。

行方不明の相続人がいると、相続手続を進めることができません。

相続が発生した後、困っている人はたくさんいます。

自分たちで手続しようとして、挫折する方も少なくありません。

困っている遺族はどうしていいか分からないまま、途方に暮れてしまいます。

裁判所に提出する書類作成は、司法書士の専門分野です。

途方に暮れた相続人をサポートして、相続手続を進めることができます。

相続手続で不安がある方は司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。

家族信託と相続放棄の危険な組合せ

2026-09-15

1家族信託と相続放棄は安全な制度

①家族信託は安全な制度

(1)家族信託とは財産の管理処分を依頼する契約

家族信託とは、家族間で財産の管理処分を依頼する契約です。

家族信託の登場人物は、主に次の3者です。

・委託者 財産の管理処分を依頼する人

・受託者 財産の管理処分を任される人

・受益者 財産から得られる利益を受け取る人

信託契約をする場合、契約当事者に判断能力が必要です。

信託契約の定めに従って、受託者が自由に財産を管理処分することができます。

委託者の認知症対策で家族信託をする場合、委託者と受益者は同じ人です。

委託者兼受益者が重度の認知症になった後で、信託契約をすることはできません。

家族信託をすれば、たとえ委託者が認知症になっても財産が凍結されることがありません。

信託契約の範囲内で、受託者が財産を管理処分するからです。

受託者が適切に財産管理をする範囲において、危険はありません。

(2)家族信託に遺言書の機能がある

家族信託をするとき、契約書でさまざまなことを決めておきます。

信託契約で、家族信託が終了する理由を決めておくことができます。

信託契約で、帰属権利者を決めておくことができます。

帰属権利者とは、家族信託が終了したとき残った信託財産を引き継ぐ人です。

委託者の相続人でも相続人以外の人でも、帰属権利者に指名することができます。

信託終了による信託財産の引継ぎは、相続ではないからです。

遺言書を作成する場合、遺言者の財産を引き継ぐ人を指名することができます。

遺言書がある場合、遺言書の内容どおり遺産分割をすることができます。

認知症対策で家族信託をする場合、委託者の死亡で家族信託を終了させることが一般的です。

委託者の死亡で家族信託が終了した場合、信託契約の内容どおりに信託財産を引き継ぎます。

家族信託で残った信託財産を引き継ぐことと遺言書で財産を引き継ぐことは、同じ機能と言えます。

家族信託には、遺言書の機能があります。

遺言書の機能を適切に活用する範囲において、危険はありません。

②相続放棄は安全な制度

相続が発生したら、相続人は相続を単純承認するか相続放棄をするか選択することができます。

相続放棄を希望する場合、家庭裁判所に相続放棄の申立てをします。

家庭裁判所で相続放棄が認められたら、はじめから相続人でなくなります。

相続放棄をした人は、相続財産を一切引き継ぎません。

家庭裁判所で相続放棄が認められたら、撤回することはできません。

撤回とは、相続放棄が受理されたときには何も問題がなかったのに、後から問題が発生したので、なかったことにすることです。

「借金ばかりと思っていたから相続放棄をしたのに、莫大なプラスの財産が見つかったから相続放棄はなかったことにしたい」は、撤回です。

相続放棄は、撤回できません。

相続放棄が認められたのに撤回を認めると、相続の現場が混乱するからです。

適切に相続放棄をする範囲において、危険はありません。

2家族信託と相続放棄の危険な組合せ

①信託財産は独立した財産になる

信託財産とは、信託契約で管理処分を依頼した財産です。

家族信託をすると、信託財産は受託者名義になります。

受託者名義になるけど、受託者の固有の財産になるわけではありません。

信託契約によって、管理処分を依頼されただけだからです。

信託財産は、委託者の固有の財産とは別に扱われます。

信託財産は、受託者の固有の財産とは別に扱われます。

委託者の財産ではなく受託者の財産でもない、独立した財産です。

信託財産は受託者の名義になっているだけで、独立した財産です。

②相続放棄の効力は相続財産にのみ及ぶ

家族信託をしても、相続人は相続放棄をすることができます。

相続放棄をした人は、相続財産を一切引き継ぎません。

相続放棄で引き継ぐことができないのは、相続財産のみです。

家族信託をした場合、委託者が管理処分を依頼した財産は信託財産です。

信託財産は、委託者の固有の財産とは別に扱われます。

委託者が死亡したら、委託者の固有の財産のみ相続財産になります。

委託者の死亡で家族信託が終了する場合、信託財産は帰属権利者が引き継ぎます。

帰属権利者が相続人であっても相続人でなくても、帰属権利者が引き継ぎます。

帰属権利者が相続放棄をしても単純承認をしても、信託契約は影響を受けません。

信託財産を引き継ぐのは、相続ではないからです。

③借金逃れで家族信託を悪用することはできない

(1)委託者に借金があるケースで問題になる

信託財産は、委託者の固有の財産ではありません。

委託者が死亡しても、信託財産は相続財産になりません。

帰属権利者が相続人であっても相続人でなくても、帰属権利者が引き継ぎます。

委託者に莫大な借金がある場合、問題になることがあります。

委託者の財産がわずかなプラスの財産と莫大なマイナスの財産であるケースです。

信託契約を締結して、わずかなプラスの財産すべてを信託財産にすることが考えられます。

莫大なマイナスの財産は、委託者の固有の財産のままです。

この後、委託者が死亡した場合、相続人は相続放棄をするでしょう。

(2)原則どおりでは債権者に理不尽な結果になる

原則どおりなら、わずかなプラスの財産は帰属権利者が引き継ぎます。

原則どおりなら、莫大なマイナスの財産は相続人は引き継ぎません。

多くの場合、帰属権利者は委託者に近い関係の家族です。

相続が発生したら、相続人になるでしょう。

わずかなプラスの財産を引き継いで莫大なマイナスの財産を引き継がないことになってしまいます。

原則どおりでは、債権者に理不尽な結果になってしまいます。

(3)詐害信託は取消請求ができる

債権者は裁判所に訴えて、詐害信託の取消し請求をすることができます。

詐害信託の取消し請求では、受託者が裁判の被告になります。

詐害信託とは、債権者を害することを知って設定した信託です。

借金逃れで信託契約をした場合、委託者兼受益者は債権者を害することを知っているはずです。

委託者兼受益者は、自分の経済状況を知っているからです。

自分の財産状況から主要な財産を信託すれば、債権者を害することは分かります。

委託者兼受益者が債権者を害することを知って設定した信託は、詐害信託です。

委託者兼受益者が認知症などで認識できなかったら、詐害信託以前の問題です。

契約当事者に充分な判断能力がない場合、家族信託は無効だからです。

有効に信託契約をするためには、充分な判断能力が必要です。

受託者は債権者を害することを知っていても知らなくても、関係はありません。

受託者は、委託者から信託財産を管理処分を依頼されただけの人だからです。

信託財産を預かっているだけだから、知っていても知らなくても保護する必要がありません。

受託者が債権者を害することを知らなかったと主張しても、詐害信託になります。

裁判所に詐害信託と認められたら、信託は取り消されます。

(4)信託が取消されると信託財産は固有の財産に復帰する

信託が取消されると、信託財産は委託者の固有の財産に復帰します。

信託財産は、もともと委託者の固有の財産だったからです。

委託者が死亡したら、委託者の固有の財産は相続財産になります。

固有の財産は相続財産だから、相続人が引き継ぎます。

相続放棄をした人は、相続財産を一切引き継ぎません。

信託が取消されても、相続放棄は撤回できません。

相続放棄の撤回を認めると、相続の現場が混乱するからです。

④家族信託の悪用は発覚する

(1)不動産を信託すると登記簿で公示される

家族信託をする場合、自宅などの不動産を信託財産にすることがほとんどです。

不動産を信託財産にした場合、次の事項が登記簿にに記録されます。

・所有者 受託者

・信託による所有権移転であること

・信託目録

不動産の登記簿謄本は、だれでも取得することができます。

登記簿の内容は個人情報ではなく、公示情報だからです。

債権者などの第三者であっても、登記簿謄本を取得することができます。

登記簿謄本を確認すれば、信託したことは判明します。

債権者は登記簿謄本を取得するだけで、信託の存在を知ることができます。

(2)家族や親族から情報漏洩

家族信託は、家族間で財産の管理処分を依頼する契約です。

家族間の秘密にすれば、債権者に知られないと感じるかもしれません。

家族間でトラブルがあると、信託の存在が債権者に伝わります。

相続人間に不満があると、家族や親族から情報漏洩が起きます。

人間関係の中で、秘密は成立しません。

詐害行為取消訴訟の多くは、家族や親族からの情報提供で始まります。

(3)裁判所からの文書提出命令に強制力がある

債権者が金融機関に信託口口座の有無を照会しても、個人情報を盾に回答しません。

債権者は、裁判所に対して文書提出命令の申立てをすることができます。

家族や親族からの情報を疎明して、文書提出命令の申立てをすることができます。

裁判所による文書提出命令によって、文書の提出義務が課されます。

裁判所からの文書提出命令には、強制力があります。

金融機関は、裁判所の文書提出命令に従います。

提出する文書によって、次の点が明らかになるでしょう。

・信託契約書

・信託口口座の開設記録

・委託者から受託者への資金移動の記録

・信託口口座の取引履歴

家族信託を悪用すると、必ず露見します。

⑤遺留分逃れで家族信託を悪用することはできない

遺留分とは、相続人に認められた最低限の権利です。

相続財産に対する一定の割合の財産が最低限の権利として認められています。

配分された財産が遺留分に満たない場合、遺留分侵害額請求をすることができます。

家族信託をすると、信託財産は相続財産でなくなります。

家族信託を悪用して、遺留分侵害額請求を回避することは許されません。

遺留分侵害額請求を回避する目的の家族信託は、公序良俗に反するからです。

3家族信託を司法書士に依頼するメリット

家族信託は、信託契約によって柔軟に設計することができます。

今までの遺言書や後見などでできないことも実現することができます。

柔軟で自由に設計できるからこそ、契約内容や手続きは難しく専門家のサポートが欠かせません。

委託者の固有の財産から切り離して、だれの財産でもない独立した財産にできることも大きな魅力でしょう。

一方で、このような魅力を悪用することを考える人がいるかもしれません。

借金から逃れるために信託を利用するなどは、典型例でしょう。

このようなことをすると大きなトラブルになってしまいます。

これ以外にも、委託者の固有の財産から切り離して、だれの財産でもない独立した財産にできることから、遺留分を侵害する恐れもあります。

遺留分侵害額請求から逃れるために信託を悪用する事例もあります。

委託者、受託者、受益者の関係者がすべて家族で完結するから安心と言えますが、全員に知識がないことが多くトラブルに発展しやすいと言えます。

家族全員が家族信託について話し合い、充分知識をつけて、何でも相談できるのであれば、円滑に運用することができるでしょう。

充分な知識がないのに、信託を設定するとトラブルが起きると言えます。

受託者監督人など家族以外の専門家のサポートを受ける方が安心できる場合もあります。

家族信託は、公正証書で契約しなくても有効になります。

公正証書は公証人という専門家の目も通るし、契約内容についてのトラブルを防ぐこともできます。

やはり専門家のサポートが欠かせないというべきでしょう。

家族信託を考えている方は司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。

公正証書遺言の遺言者死亡後の手続

2026-09-14

1公正証書遺言の遺言者死亡後に通知されない

①公証役場から通知されない

(1)公証役場は遺言者の死亡を知らない

公正証書遺言を作成したら、遺言書原本は公証役場が厳重保管します。

公正証書遺言を作成して厳重保管することが公証役場の任務です。

遺言者が死亡しても、公証役場に届出をするルールはありません。

市区町村役場に死亡届を出しても、公証役場に連絡されるルールはありません。

公証役場は、遺言者の死亡を知る手段がありません。

(2)公証役場は相続人を知らない

相続が発生したら、相続人調査をします。

相続人調査をするのは、相続人です。

公証役場は、自動で相続人調査をすることはできません。

公証役場は、相続人を知る手段がありません。

公証役場には、相続人調査をする権限も義務もありません。

(3)相続人に通知されない

公証役場は、遺言者の死亡を知る手段がありません。

公証役場は、相続人を知る手段がありません。

公証役場には、相続人に通知する権限も義務もありません。

公証役場から相続人に対して、公正証書遺言があることを通知されません。

②家庭裁判所から通知されない

(1)家庭裁判所は検認手続で呼び出しをする

自宅などで自筆証書遺言が見つかったら、家庭裁判所に提出する必要があります。

検認手続とは、自宅などで見つかった自筆証書遺言を家庭裁判所に提出して開封してもらう手続です。

検認の申立てを受付けたら、相続人全員を家庭裁判所に呼び出します。

家庭裁判所から呼び出しがあったら、相続人は遺言書があることを知ることができます。

(2)公正証書遺言は検認手続不要

自宅などで公正証書遺言が見つかったら、家庭裁判所に提出する必要がありません。

公正証書遺言は、検認手続が不要だからです。

家庭裁判所から検認手続のため、呼び出されることはありません。

③法務局から通知されない

(1)自筆証書遺言の法務局保管制度は保管方法の選択肢

自筆証書遺言を作成したら、法務局に提出して保管を依頼することができます。

自筆証書遺言の法務局保管制度は、保管方法の選択肢です。

(2)遺言書保管中に遺言者が死亡すると通知する

自筆証書遺言保管中に遺言者が死亡すると、相続人に対して法務局から通知されます。

公証役場が保管している公正証書遺言の遺言者が死亡しても、法務局は通知しません。

2公正証書遺言の遺言者死亡後に遺言書の内容を確認する

①公正証書遺言作成時に正本と謄本が渡される

公正証書遺言を作成したら、遺言書原本は公証役場で厳重保管されます。

遺言者には、正本と謄本が渡されます。

遺言者の自宅などで遺品整理をしていると、正本や謄本が見つかることがあります。

正本や謄本が見つかったら、そのまま遺言書の内容を実現することができます。

②公証役場で公正証書遺言の有無を確認できる

公正証書遺言を作成したら、遺言検索システムに登録されます。

全国の公証役場で作成された公正証書遺言は、一元管理されています。

相続人などの利害関係人は、最寄の公証役場で遺言検索システムを利用することができます。

遺言検索システムを利用すると、公正証書遺言の有無が判明します。

遺言検索システムを利用しても、遺言書の内容を確認することはできません。

③遺言書を作成した公証役場に謄本請求

公正証書遺言の存在が判明しても、自動で遺言書が送られることはありません。

遺言書を作成した公証役場に対して、謄本を請求することができます。

遺言書の謄本を取得すると、遺言書の内容を確認することができます。

謄本を請求する場合、所定の手数料がかかります。

④他の相続人に遺言書の開示を請求する権利はない

遺言書があると聞いたら、内容が気になるのは当然です。

遺言書があると聞いたのに、他の相続人が見せてくれないことがあります。

たとえ相続人であっても、他の相続人に遺言書の開示を請求する権利はありません。

遺言書の開示を拒まれても、当然、権利侵害ではありません。

公証役場に対して手続すれば、公正証書遺言の内容を確認することができます。

⑤相続人は遺言書を他の相続人に見せる義務はない

遺言書を保管しているなら、他の相続人に対して遺言書を開示する義務があるはずと思うかもしれません。

相続人は、遺言書を他の相続人に見せる義務はありません。

相続人であることと他の相続人に遺言書の開示を請求することは、別問題です。

遺言書の開示を拒まれても、当然、義務違反ではありません。

公証役場に対して手続すれば、公正証書遺言の内容を確認することができます。

⑥謄本の郵送請求は手続が複雑

公正証書遺言の謄本は、遺言書を作成した公証役場以外に請求することができません。

公正証書遺言の謄本は、郵送で請求することができます。

公正証書遺言の謄本の郵送請求は、署名認証手続を含むから非常に複雑です。

書類準備の負担が大きくなるから、おすすめできません。

司法書士などの専門家を代理人に立てて、依頼するのがおすすめです。

⑦遺言者生存中は相続人は請求できない

遺言者生存中は、相続人であっても遺言検索システムを利用することができません。

遺言者生存中は、相続人であっても遺言書の謄本を請求することができません。

遺言者生存中は、遺言者の遺言の自由を守る必要があるからです。

3公正証書遺言の遺言者死亡後に遺言書の内容を実現する

①遺言書の内容は自動で実現しない

遺言書を作成するだけでは、意味がありません。

遺言書の内容は、自動で実現するわけではないからです。

遺言検索システムを利用しても、遺言書の内容は自動で実現しません。

遺言書の謄本を取得しても、遺言書の内容は自動で実現しません。

作成した遺言書が公正証書遺言であっても、遺言書の内容が自動で実現することはありません。

②遺言書で遺言執行者を指名できる

遺言書を作成するときに、遺言執行者を指名することができます。

遺言執行者とは、遺言書の内容を実現する人です。

遺言執行者に指名された人が就任に同意した場合、遺言執行者が相続手続をします。

遺言執行者がいる場合、相続人は遺言執行者の妨害行為をすることはできません。

手間と時間がかかる相続手続を遺言執行者におまかせできるから、相続人は安心です。

③遺言執行者は遺言書の内容を通知する義務がある

遺言執行者がいる場合、相続人は遺言執行が適切に行われるか見守る権利があります。

遺言執行が適切に行われるか見守るため、遺言執行者は遺言書の内容を相続人に通知する義務があります。

相続人は、他の相続人に遺言書の開示を請求する権利はありません。

相続人は、遺言書を他の相続人に見せる義務はありません。

相続人は、遺言執行者に遺言書の開示を請求する権利はあります。

遺言執行者は、遺言書を相続人に見せる義務はあります。

他の相続人に請求せずに遺言執行者に請求すると、スムーズです。

④遺言執行者がいなくても遺言書は無効にならない

遺言書を確認すると、遺言執行者が指名していないことがあります。

遺言執行者が指名されていなくても、遺言書は無効になりません。

遺言執行者が指名してあっても、就任を承諾する義務はありません。

遺言執行者に指名された人が就任を辞退した場合、遺言書は有効のままです。

遺言執行者がいなくても、遺言書は無効になりません。

⑤相続人全員の協力で遺言書の内容を実現

遺言執行者がいる場合、遺言執行者が遺言書の内容を実現します。

遺言執行者がいない場合、相続人全員の協力で遺言書の内容を実現します。

実印による押印や印鑑証明書の提出に協力してもらえないと、相続手続が進められなくなります。

⑥家庭裁判所に遺言執行者を選任してもらえる

遺言執行者がいない場合、遺言書の内容を実現するため相続人全員の協力が必要です。

一部の相続人に不利な内容であった場合、遺言書の内容の実現に協力してもらえないでしょう。

遺言執行者がいない場合、家庭裁判所に対して遺言執行者選任の申立てをすることができます。

家庭裁判所が選任した遺言執行者に、遺言書の内容を実現してもらうことができます。

⑦遺言執行者が相続登記を申請

被相続人が不動産を保有していた場合、不動産の名義変更を行います。

相続登記とは、不動産の名義変更です。

遺言執行者がいる場合、遺言執行者が相続登記を申請することができます。

⑧遺言執行者が預貯金の口座凍結解除

預貯金口座の持ち主が死亡すると、口座は凍結されます。

口座凍結とは、口座取引の停止です。

遺言執行者がいる場合、遺言執行者が口座凍結解除をすることができます。

4公正証書遺言の遺言者死亡後の流れ

手順①遺言者の死亡を確認

遺言者が死亡すると、死亡届が提出されます。

戸籍謄本を取得すると、死亡が記載されています。

手順②公正証書遺言の正本や謄本を探す

公正証書遺言を作成した際に、遺言者に正本と謄本が渡されます。

遺言者の自宅などを探すと、正本や謄本が見つかることがあります。

手順③相続人調査

公正証書遺言があっても、相続人調査が必要です。

相続手続をする場合、相続人であることを証明する必要があるからです。

戸籍謄本を提出して、相続人であることを証明します。

手順④公正証書遺言の内容確認

遺言検索システムを利用して、公正証書遺言の有無を確認することができます。

遺言検索システムを利用する場合、相続人であることを客観的に証明する必要があります。

公正証書遺言の存在が確認できた場合、謄本請求をすることができます。

遺言書の謄本請求をする場合、相続人であることを客観的に証明する必要があります。

戸籍謄本を公証役場に提出して、相続人であることを証明します。

遺言書の謄本を取得できたら、公正証書遺言の内容を確認することができます。

手順⑤遺言書の内容を実現する

遺言執行者がいる場合、遺言執行者が遺言書の内容を実現します。

遺言執行者がいない場合、相続人全員の協力で遺言書の内容を実現します。

遺言執行者がいない場合、家庭裁判所に遺言執行者選任の申立てをすることができます。

遺言執行者には、遺言書の開示義務があります。

5遺言書作成を司法書士に依頼するメリット

遺言書がある場合、相続財産について、相続人全員で、分け方を合意する必要はありません。

トラブルになりやすい遺産分割協議で、相続人全員で合意をしなくていいのは大きなメリットです。

せっかく遺言書を作成しても、遺族に見つけてもらえなければ意味がありません。

同時に、死亡する前に自分に都合の悪い遺言書を隠したり捨ててしまったりする心配があります。

さらに、遺言書には厳格な書き方ルールがあります。

ルールが守られていない遺言書は無効になります。

書き方のルールは守られていても、内容があいまいだったり、不適切であったために、実現できない遺言書も少なくありません。

せっかく遺言書を書くのであれば、家族を幸せにできる遺言書を確実に作りましょう。

司法書士は、確実な遺言書を作るお手伝いをします。

家族のために適切で確実な遺言書を作りたい方は、司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。

寄与分を主張しても勝手に相続登記はできない

2026-09-13

1寄与分を主張しても勝手に相続登記はできない

①寄与分を主張しても自分のものにできない

相続が発生したら、被相続人の財産は相続人全員の共有財産です。

相続財産を勝手に独り占めすることは、許されません。

寄与分を主張しても、相続財産は相続人全員の共有財産のままです。

寄与分とは、被相続人の財産の維持・増加について特別な貢献をした人がいる場合、特別な貢献をした人に対して、相続分以上の財産を受け継いでもらう制度です。

寄与分を主張するだけで、自動で財産を自分のものにすることはできません。

不動産を取得するには、法的な根拠が必要です。

寄与分を主張しただけでは、不動産を取得する根拠として不足です。

②被相続人の家事介護をしただけで自分のものにできない

被相続人の家事や介護などをしたことが結果的に、被相続人の財産の維持・増加について特別な貢献をしたと認められることがあるかもしれません。

被相続人の財産管理や介護をしただけで、自動で寄与分が認められるわけではありません。

たとえ寄与分が認められても、財産を取得できることも取得できないこともあります。

被相続人の財産管理や介護をしただけなら、相続財産は相続人全員の共有財産のままです。

被相続人の財産管理や介護をしただけで、自動で財産を自分のものにすることはできません。

③被相続人から財産管理を任されても自分のものにできない

被相続人の財産について、生前財産管理を任されていることがあります。

被相続人の生前に財産管理を任されていたとしても、自動で財産を自分のものにすることはできません。

相続が発生したら、被相続人の財産は相続人全員の共有財産だからです。

生前に財産管理を任されていたとしても、相続財産は相続人全員の共有財産のままです。

生前に財産管理を任されていただけで、自動で財産を自分のものにすることはできません。

④寄与分の有無に関わらず相続登記ができる

(1)法定相続による相続登記は相続人全員の共有名義

相続が発生したら、相続財産は相続人全員による共有財産です。

相続人になる人は、法律で決められています。

相続人が相続する相続分は、法律で決められています。

遺産分割協議中は、相続人全員が法定相続分で共有しています。

相続人全員が法定相続分で共有していることを登記することができます。

法定相続による相続登記とは、相続人全員が法定相続分で共有している内容の登記です。

法定相続による相続登記をしても、寄与分が認められるかは別の話です。

法定相続による相続登記で、特定の不動産を自分ひとりのものにできるわけではありません。

不動産を取得する根拠は、法律の定めです。

(2)遺言書による相続登記で遺言書の内容を実現

被相続人が生前に、遺言書を作成していることがあります。

遺言書がある場合、遺言書の内容どおりに財産を引き継ぐことができます。

遺言書の内容に基づいて、相続登記をすることができます。

不動産を取得する根拠は、遺言書の内容です。

(3)遺産分割協議による相続登記で合意内容どおりに登記

相続財産の分け方は、相続人全員の合意で決定します。

遺産分割協議とは、相続財産の分け方について相続人全員で行う話し合いです。

相続人全員の合意で、不動産を取得する人を決定します。

遺産分割協議を成立させて、相続登記をすることができます。

不動産を取得する根拠は、遺産分割協議です。

(4)寄与分を主張するだけで自分ひとりの名義にできない

寄与分を主張するだけで、自動で財産を自分のものにすることはできません。

寄与分の主張があるかにかかわらず、相続登記をすることができます。

寄与分の主張に関わらず、法定相続による相続登記は相続人全員が法定相続分で共有する登記です。

寄与分の主張に関わらず、遺言書の内容による相続登記は遺言書の内容どおりの登記です。

寄与分の主張に関わらず、遺産分割協議は相続人全員の合意で成立します。

遺産分割協議による相続登記は、遺産分割協議書の内容どおりの登記です。

寄与分を主張するだけで、自分ひとりの名義にすることはできません。

2寄与分は遺産分割協議が前提の制度

①遺産分割協議成立には相続人全員の合意が必要

相続財産の分け方は、相続人全員の合意で決定します。

遺産分割協議は、相続人全員の合意で成立します。

②寄与分は例外の制度

相続人が相続する相続分は、法律で決められています。

遺産分割協議は、法律で決められた相続分を参考にして具体的な財産の分け方を決める場です。

寄与分の制度は、相続の基本ルールではありません。

特別な貢献があったと認められた場合に限り、特別に相続のルールを修正する制度です。

寄与分は、例外の制度です。

遺産分割協議において、特別な貢献を反映させる制度が寄与分です。

寄与分は、遺産分割協議が前提です。

相続人による話し合いの場が存在するからこそ、寄与分は意味があると言えます。

寄与分を請求し、協議し、相続人全員で合意して、相続分に反映されます。

③寄与分は自動的に加算されない

相続人が相続する相続分は、法律で決められています。

遺産分割協議は、法律で決められた相続分を参考にして具体的な財産の分け方を決める場です。

特別な貢献をした人がいても、自動で相続分は加算されません。

寄与分は、例外的な取り扱いだからです。

寄与分は、相続分を当然に加算する制度ではありません。

特別な貢献をした人がいても、当然に相続分が修正されることはありません。

寄与分は、請求主義の制度だからです。

仮に自動で加算する仕組みにすると、他の相続人の権利を侵害するおそれがあります。

権利侵害は許されませんから、主張と協議を必須にしています。

④相続人全員の合意ができれば証拠は不要

寄与分は、遺産分割協議が前提の制度です。

遺産分割協議の中で、だれがどのような貢献をしたのか具体的に調整されます。

だれがどのような貢献をしたのか、相続人全員で合意します。

だれがどのような貢献をしたのか、考慮したうえで相続財産の分け方を決定します。

相続人全員の合意ができれば、どのような貢献をしたのか証拠は不要です。

相続人全員の合意ができれば、裁判所で貢献の内容を認定してもらう必要はないからです。

⑤相続人間で合意ができなければ裁判所の手続

相続人全員で合意ができなければ、裁判などで争うことになるでしょう。

どのような貢献をしたのか客観的証拠がないと、寄与分は認められません。

寄与分は例外的制度だから、裁判所は寄与分の認定に非常に慎重な姿勢です。

相続の基本ルールを崩す合理性が第三者にも認められる場合にのみ、認められます。

寄与分が例外的な取り扱いであることの現れです。

⑥寄与分で頑張りは評価されない

寄与分は、誤解が多い制度です。

頑張った人が報われる制度と、説明されることが多いからです。

介護で頑張った人は、自分の頑張りを認められたいと考えます。

自分の頑張りを寄与分で、認めてほしいと考えがちです。

裁判所は、頑張った人を救済する機関ではありません。

寄与分で、頑張りは認められません。

頑張ったことは、評価の対象外だからです。

家族のために尽くしてきたことは、決して無駄ではありません。

寄与分は頑張りを評価する仕組みではないから、努力が法律上の評価につながらないのです。

主観的評価軸と法律上の評価軸は、異なります。

法律上の評価軸に当てはまらないと、寄与分は認められません。

⑦寄与分で評価されるのは財産の維持増加のみ

寄与分とは、被相続人の財産の維持・増加について特別な貢献をした人がいる場合、特別な貢献をした人に対して、相続分以上の財産を受け継いでもらう制度です。

寄与分で評価されるのは、財産の維持増加のみです。

寄与分が認められるのは、直接的に財産の維持増加に貢献することが条件です。

寄与分を主張する人が次の主張をすることがあります。

・精神的な支えになった。

・本人の安心感を高めた。

・家庭を円満にした。

上記はいずれも、直接的に財産の維持増加につながっていません。

精神的な支えや本人の安心感に、意味がないわけではありません。

寄与分で評価されないという意味です。

3寄与分を主張しても相続登記の手順は変わらない

手順①遺言書の有無を調査

被相続人が遺言書を作成していることがあります。

遺言書があれば、遺言書のとおりに遺産分割をすることができます。

手順②相続人調査

戸籍謄本を取得して、すべての相続人を確認します。

被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本を取得します。

相続人の人数が多い場合や複雑な相続である場合、相続人調査に手間と時間がかかります。

手順③不動産調査

相続登記の対象になる不動産を特定します。

名寄帳や固定資産税課税明細書を確認するといいでしょう。

不動産を特定したら登記簿謄本を取得すると、現在の状況が確認できます。

手順④遺産分割協議書の作成

相続人全員の合意がまとまったら、合意内容を書面に取りまとめます。

遺産分割協議書とは、相続人全員の合意内容を取りまとめた書面です。

合意内容に間違いがないか、相続人全員に確認してもらいます。

合意内容に問題がなければ、相続人全員に記名し実印で押印をしてもらいます。

手順⑤必要書類の準備

(1)遺言書がない場合

遺言書がない場合の必要書類は、次のとおりです。

・被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本

・相続人の現在戸籍

・被相続人の住民票の除票

・不動産を相続する人の住民票

・遺産分割協議書

・相続人全員の印鑑証明書

・不動産の評価証明書

(2)遺言書がある場合

遺言書がある場合の必要書類は、次のとおりです。

・被相続人の除籍謄本

・相続人の現在戸籍

・被相続人の住民票の除票

・不動産を相続する人の住民票

・遺言書

・遺言書検認証明書

・不動産の評価証明書

手順⑥登記申請書の作成

登記申請書のひな型は、法務局のホームページに出ています。

パソコンなどで作っても手書きで作っても、問題ありません。

手順⑦法務局へ提出

登記申請書と必要書類を取りまとめて、法務局へ提出します。

提出先の法務局は、不動産の所在地を管轄する法務局です。

手順⑧登記完了

提出書類が法務局で審査されます。

問題がなければ、新しい所有者として登記簿に記録されます。

4相続登記を司法書士に依頼するメリット

相続が発生すると、相続人はたくさんの相続手続に追われて悲しむ暇もありません。

ほとんどの方は、相続を何度も経験するものではありません。

手続に不慣れで、聞き慣れない法律用語でへとへとになります。

一般的にいって、相続登記は、その中でも難しい手間のかかる手続です。

不動産は、重要な財産であることが多いものです。

一般の方からすると、些細なことと思えるようなことでやり直しになります。

本人が自分で申請している場合、些細なことであれば法務局の窓口まで出向いて申請書の記載を補正することができるケースがあります。

申請書の記載誤りがあると、委任状も記載誤りになります。

代理人に依頼して申請している場合、委任状の記載も一緒に補正する必要があります。

委任状の記載内容は、本人が依頼したことのはずです。

代理人が補正することを認めてもらえない場合が多いものです。

申請書と委任状の記載が一致していない場合、適切な委任を受けていないと判断されます。

適切な委任を受けていない場合、申請書は受け付けてもらえません。

いったん申請を取り下げて、やり直しになります。

相続登記は簡単そうに見えても、思わぬ落とし穴があることもあります。

法務局の登記相談に行っても、何が良くないのか分からなかったというケースも多いです。

司法書士はこのような方をサポートしております。

相続登記を自分でやってみたけど、挫折した方の相談も受け付けております。

相続登記をスムーズに完了させたい方は、司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。

相続人が複数いるときの相続人申告登記

2026-09-11

1相続人が複数いるとき相続人全員に相続登記の義務

①相続登記は義務

令和6年4月1日から、相続登記は義務になりました。

令和6年4月1日以降に発生した相続は、もちろん対象になります。

令和6年4月1日以前発生の相続も、義務化の対象です。

②相続人全員に相続登記の義務がある

相続登記の義務は、相続人全員に課されています。

一部の相続人だけに任せると、相続登記が先延ばしされるからです。

相続登記義務化は、所有者不明土地の発生を防ぐ制度です。

相続登記の先延ばしを防止するため、相続人全員に義務が課されました。

③相続登記の義務を果たさないとペナルティー

相続登記の期限は、3年です。

相続登記の申請義務を果たしていない場合、ペナルティーが課されます。

ペナルティーの内容は、10万円以下の過料です。

ペナルティーを払っても、相続登記を代わりにやってくれることはありません。

④相続人申告登記でペナルティーを回避

相続人申告登記とは、相続人が法務局に対し自分が相続人であることを申告する制度です。

申告に基づいて、登記官が職権で相続人の住所や氏名を登記に付記します。

相続人申告登記をした場合、相続登記の義務を履行したと扱われます。

相続人申告登記は、相続登記の義務を履行しやすくする制度です。

相続人申告登記をすると、ペナルティーを回避することができます。

⑤相続人申告登記で各相続人が個別で義務履行

相続人申告登記をすると、相続登記の義務を履行したと扱われます。

相続登記の義務を履行したと扱われるのは、相続人申告登記をした人のみです。

相続人申告登記をした人のみ、ペナルティーを回避することができます。

相続人申告登記をした人以外の相続人は、ペナルティーを回避することができません。

相続登記の義務履行は、相続人単位で判断されます。

一部の相続人が相続人申告登記をしても、他の相続人の相続登記の義務履行に影響がありません。

一部の相続人が相続人申告登記をしても、他の相続人はペナルティーを回避することができません。

過半数の相続人が相続人申告登記をしても、他の相続人はペナルティーを回避することができません。

相続人申告登記をした人のみ、相続登記の義務を履行したと扱われるからです。

2相続人が複数いるときの相続人申告登記

①ひとりで相続人申告登記ができる

相続人申告登記は、相続人が法務局に対し自分が相続人であることを申告する制度です。

自分が相続人であることは、ひとりで申告することができます。

他の相続人が相続手続に協力してくれなくても、相続人申告登記をすることができます。

相続人申告登記は、権利関係に影響がないからです。

相続が発生した時点で、相続人であることは確定しています。

他の相続人の協力がなくても、相続人です。

相続人であるという事実を申告するだけだから、ひとりで手続をすることができます。

相続人申告登記をすると、ペナルティーを回避することができます。

相続人申告登記をした人だけ、ペナルティーを回避することができます。

他の相続人の協力がなくても、自分の行動でリスクを回避することができます。

②複数の相続人が連名で相続人申告登記ができる

相続人申告登記は、複数の相続人が連名で申請することができます。

相続人申告登記をすると、相続登記の義務を履行したと扱われます。

連名で相続人申告登記をした場合、連名で申請した人だけが相続登記の義務を履行したと扱われます。

2人が連名で相続人申告登記をした場合、連名で申請した2人だけが相続登記の義務を履行したと扱われます。

3人が連名で相続人申告登記をした場合、連名で申請した3人だけが相続登記の義務を履行したと扱われます。

相続人申告登記をしなかった他の相続人は、ペナルティーを回避することができません。

連名で申請しなかった他の相続人は、相続登記の義務を履行したと扱われないからです。

一部の相続人だけが連名で相続人申告登記をした場合、他の相続人は相続登記の義務を履行したと扱われません。

相続人全員が連名で相続人申告登記をした場合、相続人全員が相続登記の義務を履行したと扱われます。

相続人全員が連名で相続人申告登記をした場合、相続人全員がペナルティーを回避することができます。

③委任状を出して代表相続人に相続人申告登記を依頼

相続人申告登記は、相続人が自分で申請するのが原則です。

相続人申告登記は、代理人を立てて依頼することができます。

代理人を立てて依頼する場合、委任状を出す必要があります。

たとえ家族に依頼する場合であっても、委任状なしで相続人申告登記をすることはできません。

代表相続人に依頼する場合、委任状が必要です。

委任状は、依頼内容の証明書だからです。

依頼を受けたことを法務局に客観的に示せないと、相続人申告登記は認められません。

委任状がなければ、代表相続人は自分の相続人申告登記のみできます。

代表相続人のみ、相続登記の義務を履行したと扱われます。

代表相続人が相続人申告登記をしても、他の相続人は義務を履行したとは扱われません。

代表相続人が相続人申告登記をしても、他の相続人はペナルティーを回避することができません。

他の相続人は、相続登記の義務を履行したと扱われないからです。

④相続人申告登記で申し出る内容

相続人申告登記では、次の事項を申出します。

(1)申出人の氏名及び住所

(2)代理人の氏名及び住所

(3)申出の目的

(4)申出に係る不動産の所在事項

相続人になる人は、法律で決められています。

相続人になる人が相続人申告登記の申出をします。

相続人申告登記の申出書に、押印は不要です。

書式はありますが、枠に従って記入する申請書ではありません。

書式に従って、白紙に必要事項を全部自分で記載する方式です。

⑤相続人申告登記の必要書類

(1)配偶者または子どもが申出をする場合

・被相続人の除票

・被相続人の戸籍謄本

・申出人の戸籍謄本

・申出人の住民票

・委任状

(2)親などの直系尊属が申出をする場合

・被相続人の除票

・被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本

・申出人の戸籍謄本

・申出人の住民票

・委任状

(3)委任状に押印不要

相続登記をする場合、委任状に押印が必要です。

相続人申告登記では、委任状に押印は必要ありません。

相続人申告登記の申出書も、押印は不要です。

(4)提出書類は原本還付をしてもらえる

相続人申告登記の添付書類は、希望すれば原本還付してもらえます。

住所の記載入り相続関係説明図を添付した場合、住民票もコピーを提出したと扱われます。

(5)廃棄済の書類があるときは上申書

相続登記義務化は、令和6年4月1日以前に発生の相続であっても対象になります。

古い相続の場合、被相続人の住民票を取得できないことがあります。

住民票には、保存期間が決められているからです。

保存期間が経過したら、順次廃棄されます。

住民票や戸籍の附票を提出できない場合、申出人から法務局長あて上申書を提出します。

上申書とは、被相続人と所有権登記名義人は同一人物ですという申立てです。

上申書には、申立人の印鑑証明書を添付します。

被相続人の死亡日から考えて廃棄済であることが明らかである場合、不在籍証明書などの公的書類は不要です。

(6)法定相続情報一覧図を利用できる

相続人申告登記は、法定相続情報一覧図を利用することができます。

すでに法定相続情報一覧図を取得している場合、利用することができます。

相続人申告登記をするために、法定相続情報一覧図の保管及び交付の申出をするのは現実的ではありません。

法定相続情報一覧図の保管及び交付の申出をしても、申出人が戸籍謄本の収集や法定相続情報一覧図案を作成する必要があるからです。

相続人申告登記をする場合、遺産分割協議がまとまらないケースがほとんどでしょう。

相続人間で協力体制がないと、だれが法定相続情報一覧図の保管及び交付の申出をするのか話し合いが必要になります。

遺産分割協議がまとまらないうえに新たな話し合いをすることになります。

(7)住民票コードは利用できない

住民票コードとは、11桁の数字です。

マイナンバーとは、別の番号です。

行政機関が同一人物であるか、確認するための内部識別子です。

相続人申告登記では、住民票コードを利用することはできません。

住民票コードの利用範囲は、法律で厳格に制限されているからです。

3相続人申告登記をしても相続登記

①相続人申告登記をしても名義は被相続人のまま

相続人申告登記をすると、相続人であると登記簿に記載されます。

相続人であると登記簿に記載されただけで、登記名義人は被相続人のままです。

相続人申告登記をしても、名義変更の効果はないからです。

相続人申告登記は、ペナルティーを回避する制度です。

ペナルティーを回避する効果しかないから、登記名義人は被相続人のままです。

②相続人申告登記をしても権利を取得できない

相続人申告登記をすると、登記名義人の相続人であることが公示されます。

相続人であることは、不動産を取得する可能性がある人であるに過ぎません。

相続人であることは、不動産を取得しない可能性がある人です。

相続人申告登記をしても、権利を取得する効果はありません。

③相続人申告登記は相続登記の代替ではない

被相続人が不動産を保有していた場合、不動産の名義変更をします。

相続登記とは、不動産の名義変更です。

相続人申告登記は、相続登記の代替ではありません。

相続登記と相続人申告登記は、全く別の効果がある別の制度です。

④不動産を取得したら相続登記が必要

相続が発生したら、相続財産は相続人全員の共有財産です。

相続財産の分け方は、相続人全員の合意で決定します。

相続人全員の合意がまとまったら、不動産の取得者が相続登記をします。

相続登記は、不動産の取得者であることを公示する手続だからです。

相続人申告登記をしても、不動産を取得する可能性がある人であるに過ぎません。

不動産を取得する可能性がある人であることが公示されたに過ぎません。

相続登記をすると、不動産の取得者であることが公示されます。

不動産を売却などする場合、相続手続を省略できません。

不動産を取得する可能性があるだけの人と売買契約をするのは、買主にとってリスクが大きいからです。

不動産を取得する可能性があるだけの人と媒介契約をするのは、不動産業者にとってリスクが大きいからです。

相続人申告登記をしても、相続登記は必要です。

相続人申告登記は、相続登記の代替ではないからです。

4相続登記を司法書士に依頼するメリット

大切な家族を失ったら、大きな悲しみに包まれます。

やらなければいけないと分かっていても、気力がわかない方も多いです。

相続手続は一生のうち何度も経験するものではないでしょう。

だれにとっても不慣れで、手際よくできるものではありません。

相続登記は、相続手続の中でも手間がかかる難しい手続です。

相続登記は難しい手間がかかる手続なので、司法書士などの専門家に依頼するでしょう。

相続手続で挫折しがちなのは、戸籍謄本などの書類収集や遺産分割協議書の作成です。

書類収集や遺産分割協議書の作成は、司法書士に依頼することができます。

司法書士が戸籍謄本や遺産分割協議書を準備したうえに、法務局の厳重な審査をします。

法務局の審査が通った戸籍謄本や遺産分割協議書だから、銀行などの相続手続先で指摘があることはありません。

銀行などの独自書類の内容などに指摘があるとしても、簡単に済むことがほとんどでしょう。

相続手続をスムーズに進めたい方は、司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。

借地権付き建物を相続

2026-09-11

1借地権付き建物は相続の対象になる

①借地権とは建物所有目的で土地を借りる権利

被相続人が土地を借りて、建物を所有していることがあります。

借地権とは、建物所有目的で土地を借りる権利です。

建物だけでなく、借地権も相続の対象です。

②被相続人の借地契約の内容を引き継ぐ

被相続人が土地を借りている場合、地主と借地契約をしているはずです。

借地権を相続すると、借地契約の内容も引き継ぎます。

相続人は被相続人の生前同様に土地を使って、建物に住み続けることができます。

相続によって、新たに借地契約の内容が決まるわけではありません。

相続によって、新たに借地契約の内容が変更されるわけではありません。

相続人が借地権を引き継いでも、同じ条件で借地契約が引き継がれます。

③借地権の相続に地主の承諾は不要

借地権者に相続が発生した場合、借地権は相続人が引き継ぎます。

借地権の相続に、地主の同意や承諾は不要です。

相続は、借地権をそのまま引き継ぎます。

相続は、譲渡ではありません。

地主の同意や承諾は不要だから、譲渡承諾料を支払う必要はありません。

譲渡承諾料を支払う義務がなくても、地主との関係を重視して任意で支払うことができます。

④借地権の遺贈に地主の承諾が必要

被相続人は遺言書を作成して、自分の財産を引き継ぐことができます。

遺贈とは、遺言書で相続人や相続人以外の人に財産を引き継ぐことです。

借地権の遺贈を受ける場合、原則として地主の承諾が必要です。

実務的には地主に承諾を求める場合、承諾料の支払いが必要になりのが一般的です。

地主が承諾しない場合、裁判所の手続を利用して借地権譲渡の許可を受けることになります。

⑤相続したことを地主に通知

借地権を相続したことは、地主に通知する法的義務はありません。

法的義務がなくても、実務上、地主に通知するのがおすすめです。

地代の振込名義が新しい相続人に変更したことを伝えておくと、トラブル防止になるからです。

⑥相続発生後も地代の支払義務がある

借地権者に相続が発生した場合、相続人は借地契約の内容をそのまま引き継ぎます。

相続人は、借地契約で決められた期日までに決められた地代を払う義務も引き継ぎます。

地代の支払義務は、相続人全員の義務です。

地代の支払を怠ると、借地契約を解除されるおそれがあります。

たとえ遺産分割協議中であっても、地代の支払を怠ると解除される可能性があります。

遺産分割協議中であっても、地代の支払を放置していい理由になりません。

借地契約を維持するためには、地代の支払をすることが重要です。

遺産分割協議中の地代の支払いについて、合意することができます。

借地権付き建物の取得者が最終的に地代を負担する合意は、割とよくあります。

⑦無償の使用貸借は借主死亡で原則終了

親族間など土地の貸し借りをする場合、地代を無償にすることがあります。

使用貸借とは、無償でモノを使用収益し終了時にモノを返還する契約です。

使用貸借は、原則として借主が死亡すると終了します。

借地権が使用貸借であった場合、原則として借地権は相続の対象になりません。

個別事情によっては、相続人が使用貸借の借地権を引き継ぐ可能性があります。

⑧相続放棄で相続人でなくなる

相続が発生したら、相続人は相続を単純承認するか相続放棄をするか選択することができます。

相続放棄を希望する場合、家庭裁判所に対して相続放棄の申立てをします。

家庭裁判所で相続放棄が認められた場合、はじめから相続人でなくなります。

相続放棄をしたら、一切の財産を相続することはできません。

借地権付き建物のみ、相続放棄をすることはできません。

⑨借地権には財産的価値がある

借地権には、財産的価値があると考えられています。

財産規模が一定以上大きい場合、相続税の申告と納税が必要です。

借地権がある場合、適切に財産評価をして申告する必要があります。

2借地権付き建物の相続手続は建物の相続登記と地代の引継

手順①遺言書の有無を確認

被相続人が遺言書を作成していた場合、遺言書のとおりに財産を引き継ぎます。

まず、自宅などで遺言書がないか確認します。

相続人は、公証役場で公正証書遺言の有無を確認することができます。

相続人は、法務局で自筆証書遺言の保管の有無を確認することができます。

手順②相続人調査

相続人になる人は、法律で決められています。

被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本を取得して、相続人を確定させます。

手順③相続財産調査

借地権を相続すると、借地契約の内容も引き継ぎます。

借地契約書を探し、内容を確認します。

地代の他にも、契約期間、更新条件、建て替えや増改築に関する事項を確認します。

借地契約の内容を確認して、土地と建物の登記簿謄本を取得します。

土地の登記簿謄本で借地権が登記されているか、確認します。

借地契約書が見つからない場合、地主が保管している契約書を見せてもらうといいでしょう。

手順④遺産分割協議

遺言書がない場合、相続財産の分け方は相続人全員の合意で決定します。

借地権付き建物をだれが引き継ぐのか、相続人全員で合意します。

借地権と建物は、同じ相続人が相続するのが一般的です。

別の相続人が相続すると、建物の利用や処分で法律関係が不安定になるからです。

合意がまとまったら、合意内容は遺産分割協議書に取りまとめます。

手順⑤相続登記

建物について、相続登記を申請します。

令和6年4月1日から相続登記は、3年以内に登記申請をする義務が課されました。

相続があったことを知ってから3年以内に登記申請をしないと、ペナルティーが課されるおそれがあります。

ペナルティーの内容は、10万円以下の過料です。

手順⑥相続したことを地主に通知

相続によって相続人が借地権を引き継ぐ場合、地主の承諾は不要です。

地代の引継によるトラブル防止のため、相続したことを地主に通知します。

3借地権付き建物の相続登記の方法

①相続登記の対象は建物のみがほとんど

借地権付き建物の相続登記の対象は、建物のみであることがほとんどです。

多くの場合、建物の相続登記のみ行えば問題はありません。

借地権の内容によっては、登記されているケースがあります。

借地権が登記されている場合、建物とは別に借地権の相続登記をします。

②相続登記を申請する人

建物を相続した相続人が申請します。

相続登記は、司法書士などの専門家に依頼することができます。

③相続登記の必要書類

(1)遺言書がない場合

遺言書がない場合の必要書類は、次のとおりです。

・被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本

・相続人の現在戸籍

・被相続人の住民票の除票

・不動産を相続する人の住民票

・遺産分割協議書

・相続人全員の印鑑証明書

・不動産の評価証明書

(2)遺言書がある場合

遺言書がある場合の必要書類は、次のとおりです。

・被相続人の除籍謄本

・相続人の現在戸籍

・被相続人の住民票の除票

・不動産を相続する人の住民票

・遺言書

・遺言書検認証明書

・不動産の評価証明書

④登録免許税がかかる

登記を申請する場合、登録免許税を納入します。

相続登記の登録免許税は、不動産の固定資産評価額を基に計算します。

相続登記の税率は、1000分の4です。

例えば固定資産評価額5000万円の不動産について相続登記をする場合、登録免許税は20万円です。

4相続した後の借地権付き建物

①建物滅失で借地権が消滅するおそれ

借地権は、建物所有目的で土地を借りる権利です。

建物が滅失したまま放置すると、借地権が消滅するおそれがあります。

何らかの事情で建物が滅失した後も借地権があることを主張するためには、対処が必要です。

借地上に次の事項を掲示すると、借地権があることを主張することができます。

・滅失した建物を特定する事項

・建物が滅失した日

・新たに建物を建築すること

借地契約の最初の満了までの期間内で天災等で滅失した建物の再建築には、地主の許可は不要です。

滅失した建物の再建築は、借地権者の生活維持のために重要なことと考えられているからです。

②借地契約更新後の建て替えや増改築は契約内容に従う

相続人は、被相続人の借地契約の内容を引き継ぎます。

借地契約を確認すると、契約更新後の建て替えや増改築に地主の承諾を必要とする条項があることがあります。

契約更新後に建て替えや増改築をしたい場合、借地契約の内容に従う必要があります。

実務的には地主に承諾を求める場合、承諾料の支払いが必要になるのが一般的です。

③建物と借地権を譲渡すると地主の承諾が必要

相続で借地権を引き継ぐ場合、地主の承諾は不要です。

相続による借地権の引継は、譲渡ではないからです。

相続した後、贈与や売買をすることがあります。

贈与や売買をする相手が親族であっても、地主の承諾が必要です。

実務的には地主に承諾を求める場合、承諾料の支払いが必要になるのが一般的です。

地主が承諾しない場合、裁判所の手続を利用して借地権譲渡の許可を受けることになります。

5借地権付き建物の相続を司法書士に依頼するメリット

相続財産の分け方は、相続人全員で合意する必要があります。

相続人全員で話し合いによる合意は、トラブルが起きやすいものです。

相続は、相続人間だけでトラブルが起きるのではありません。

借地に建物を所有している場合、地主が関係します。

相続をきっかけに、譲渡承諾料を請求してくることがあります。

相続を理由に、契約内容をうやむやにすることもあります。

意図的でないにしてもトラブルに巻き込まれがちです。

司法書士は単なる登記の書類を書いているだけではありません。

法律の知識があれば防げるトラブルは多いです。

相続が発生してから、相続人は相続手続に追われてへとへとになっているでしょう。

スムーズに相続手続を完了させたい方は司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。

遺産分割協議における寄与分の役割と位置づけ

2026-09-10

1遺産分割協議における寄与分の役割と位置づけ

①遺産分割協議は相続人全員の合意で成立

相続が発生したら、相続財産は相続人全員の共有財産です。

相続財産の分け方は、相続人全員の合意で決定します。

遺産分割協議とは、相続財産の分け方について相続人全員でする話し合いです。

遺産分割協議は、相続人全員の合意で成立します。

②寄与分は遺産分割協議が前提の制度

寄与分とは、被相続人の財産の維持・増加について特別な貢献をした人がいる場合、特別な貢献をした人に対して、相続分以上の財産を受け継いでもらう制度です。

寄与分の制度は、相続の基本ルールではありません。

特別な貢献があったと認められた場合に限り、特別に相続のルールを修正する制度です。

寄与分は、例外の制度です。

遺産分割協議において、特別な貢献を反映させる制度が寄与分です。

寄与分は、遺産分割協議が前提です。

相続人による話し合いの場が存在するからこそ、寄与分は意味があると言えます。

寄与分を請求し、協議し、相続人全員で合意して、相続分に反映されます。

遺産分割協議が不要なら、寄与分は議論になりません。

③寄与分は自動的に加算されない

相続人が相続する相続分は、法律で決められています。

遺産分割協議は、法律で決められた相続分を参考にして具体的な財産の分け方を決める場です。

特別な貢献をした人がいても、自動で相続分は加算されません。

寄与分は、例外的な取り扱いだからです。

寄与分は、相続分を当然に加算する制度ではありません。

特別な貢献をした人がいても、当然に相続分が修正されることはありません。

寄与分は、請求主義の制度だからです。

仮に自動で加算する仕組みにすると、他の相続人の権利を侵害するおそれがあります。

権利侵害は許されませんから、主張と協議を必須にしています。

④寄与分が認められて相続分に反映される

寄与分は、遺産分割協議の中で調整される制度です。

だれがどのような貢献をしたのか、遺産分割協議の中で調整されます。

どの程度の貢献があったのか、遺産分割協議の中で決められます。

寄与分は、相続人全員の合意で決められると言えます。

寄与分は、遺産分割協議で決められるからです。

相続人全員に寄与分が認められて、相続分に反映されます。

相続人全員の合意ができなければ、裁判などで争うことになります。

裁判所は、頑張った人を救済する機関ではありません。

客観的証拠で裁判所に認められて、相続分に反映されます。

寄与分があるはずという主観的な主張だけでは、寄与分は相続分に反映されません。

例外的な取り扱いだから、寄与分の認定は非常に慎重です。

相続の基本ルールを崩す合理性が第三者にも認められる場合にのみ、認められます。

寄与分が例外的な取り扱いであることの現れです。

2 寄与分は頑張った人に報いる制度ではない

①寄与分は頑張りを評価しない

被相続人の財産の維持増加に対する特別な寄与があったとき、寄与分で評価の対象になります。

頑張ったことは、評価の対象外です。

・どれだけ時間を使ったか

・どれだけ苦労したか

・どれだけ献身的だったか

上記は、いずれも評価されません。

その人の頑張りは評価されないから、努力の量を主張しても意味がありません。

②家庭裁判所は客観的証拠で判断する

家庭裁判所は、被相続人や相続人の関係性を知りません。

相続人間の前提として共有する感情や信頼関係がありません。

寄与分があるはずという主観的な主張だけで、認められることはありません。

寄与分は、主張する人が立証する必要があります。

家庭裁判所は、何も知らない第三者です。

主観的な事実認識は、客観的証拠がなければ評価されません。

客観的証拠がないと、何も知らない第三者は判断できないからです。

どれだけ多大な貢献があっても、客観的証拠がないと寄与分は認められません。

何も知らない第三者が評価できるだけの充分な客観的証拠が必要です。

③客観的証拠が重要な理由

理由(1)寄与分は他の相続人の相続分を減らす制度だから

寄与分が認められると、寄与した相続人の相続分は増え他の相続人の相続分は減ります。

一部の相続人の主張が通ると、他の相続人がソンする制度と言えます。

大変だった、頑張ったなどの主張だけでは、寄与があったのか客観的に分かりません。

主観的な主張だけでなく、寄与があったのか、どの程度の寄与なのか客観的に確認する必要があります。

主観的主張だけで寄与分を認めると、他の相続人の権利を侵害するかもしれません。

他の相続人の権利を侵害しないため、客観的証拠が不可欠です。

理由(2)寄与分は相続の基本ルールの例外だから

相続の基本ルールは、法定相続分での遺産分割です。

寄与分は、基本ルールに対する例外です。

例外を正当化できるだけの客観的証拠が必要です。

どのような行為をどのくらいの期間行って、どのように財産の維持増加をしたのか、客観的証拠で示す必要があります。

例外を認めるに足りる正当性を示すため、客観的証拠が必要です。

理由(3)過去の事実認定が中心の制度だから

寄与分の判断は、過去に行った事実の認定する作業です。

過去の事実は、当事者の記憶があいまいになります。

当事者の主観が混じります。

家族によって、事実のとらえ方が異なります。

過去に行った事実を適切に認定するため、客観的証拠が重要です。

④寄与分が目指す公平の意味

(1)公平の対象は相続人全員

寄与分が目指す公平は、寄与分を主張する相続人のみが対象ではありません。

寄与分の申立人も他の相続人も、公平の対象です。

寄与分が目指す公平の対象は、相続人全員です。

相続人全員が公平だから、相続人全員が納得できる公平のため客観的証拠が欠かせません。

(2)寄与分の公平は救済ではない

寄与分が目指す公平は、相続人全体の相続分のバランスを整える公平です。

そもそも、公平の対象は相続人全員です。

頑張った人を救済する制度ではありません。

寄与分は、最小限数値化して調整する制度です。

寄与分は、申立人の納得や報われたい感情を救済する制度ではありません。

(3) 公平の基準は財産の維持増加

寄与分の評価対象は、財産の維持増加に対する寄与のみです。

どれだけ苦労したかなどの努力や頑張りは、評価の対象外です。

寄与分が目指す公平は、客観的な財産の維持増加に限られます。

(4)公平のため客観的証拠が必要

寄与分の認定に客観的証拠を求められると、反発や困惑が生まれます。

家庭裁判所が客観的証拠を求めるのは、疑っているからではありません。

寄与分が目指す公平は、相続人全員の公平だからです。

寄与分を主張する相続人にも他の相続人にも、不当な不利益を与えることは許されません。

相続人全員の公平のため、客観的証拠が必要です。

(5)客観的証拠に基づいて判断できる範囲の公平

客観的証拠が準備できないと、寄与分は認定されません。

寄与分が目指す公平は、客観的証拠に基づいて判断できる範囲の公平です。

寄与分を主張する相続人が感じる公平とは、異なる公平かもしれません。

自己評価を裏付ける客観的証拠が準備できないことが多いでしょう。

寄与分に期待すること自体がトラブルを深刻化させる原因です。

客観的証拠がなくても、寄与がなかったと言っているわけではありません。

家庭裁判所は、寄与分を主張する相続人の努力や頑張りを否定するわけではありません。

他の相続人に不利益を及ぼす形で寄与分を認めるためには、客観的証拠が必要であるに過ぎません。

⑤特別受益と寄与分で遺産分割は複雑になる

特別受益とは、一部の相続人だけが特別に受けた利益です。

過去に特別に受けた利益を考慮して、公平に遺産分割を実現させます。

特別受益と寄与分の制度は、どちらも公平な遺産分割を実現する制度です。

特別受益は、過去に受けた利益を戻す調整です。

寄与分は、過去に行った貢献を評価する調整です。

どちらの制度も調整のために、限定的に用いられます。

相続人が特別受益や寄与分の主張をすると、遺産分割協議が複雑になりがちです。

調整対象が増えるため、当事者の認識に差が生じやすいからです。

⑥寄与分に期待すると危険な理由

理由(1)頑張りや努力は評価されない

寄与分の評価は、財産の維持増加に限られています。

介護、家事、付き添い、見守りなどは、財産的な評価がされません。

介護や家事で頑張っても努力しても、寄与分で評価されません。

理由(2)寄与分は例外的制度

寄与分は、相続の基本ルールを崩す例外です。

基本ルールを崩すに値する特別性や合理性が必要です。

普通の介護や家事程度では、例外を認める必要はありません。

理由(3)寄与分は他の相続人の相続分を減らす

寄与分が認められると、他の相続人の相続分が減ります。

他の相続人が納得できる客観的証拠で、慎重厳格に審査されます。

理由(4)客観的証拠が残りにくい

介護や生活支援は、家族として当然に行っていることが多いです。

介護や生活支援の事実はあっても、客観的証拠が残りにくいです。

客観的証拠がないと、寄与分は認められません。

理由(5)申立人の主観と法的評価のちがい

申立人は、自分は頑張ったから報われたいと願っています。

寄与分の認定で、頑張ったことは評価の対象外です。

頑張りが否定されたと感じて、ショックを受けます。

理由(6)家族関係が壊れやすい

寄与分が認められると、他の相続人の相続分が減ります。

家族の感情的対立が発生しやすくなります。

理由(7)金額が少ない

頑張ったことの自己評価は、高くなりがちです。

寄与分は財産の維持増加についてのみ、評価されます。

介護の苦労などは、財産的評価に結びつきにくいのが現実です。

3遺言書があれば寄与分は問題にならない

①遺言書があれば遺産分割協議は不要

被相続人が生前に遺言書を作成していることがあります。

遺言書があれば、遺言書の内容どおりに遺産分割をすることができます。

遺言書の内容を実現すればいいから、遺産分割協議は不要です。

寄与分は、遺産分割協議が前提の制度です。

遺産分割協議が不要になると、寄与分は問題になりません。

寄与分が問題になるのは、被相続人の意思が明確でないからです。

遺言書があれば、寄与分を争う必要がなくなります。

②寄与分は被相続人の意思を代替できない

遺言書は、遺言者の意思を示すものです。

被相続人の意思をもっとも直接的に示すことができます。

被相続人は、だれが貢献したのか知っているはずです。

客観的証拠がなくても、どの程度の貢献なのか分かっているはずです。

寄与分は、被相続人の意思を代替できません。

被相続人の意思を示すことができるのは、遺言書だけです。

③公正証書遺言はトラブル防止になる

遺言書を作成する場合、自筆証書遺言か公正証書遺言を作成することがほとんどです。

自筆証書遺言は、自分で書いて作る遺言書です。

公正証書遺言は、遺言内容を公証人に伝え公証人が書面に取りまとめる遺言書です。

遺言書を作成する場合、公正証書遺言がおすすめです。

公正証書遺言は公証人が関与して作成します。

公証人は、法律の専門家です。

遺言書が無効になりにくく、高い信頼があります。

作成した遺言書は、公証役場で厳重保管されます。

偽造や変造を疑われるトラブルが発生しません。

公正証書遺言は、相続人間のトラブル防止になります。

4生前対策と遺産分割協議書作成を司法書士に依頼するメリット

遺産分割協議書作成は、相続手続最大の山場です。

相続財産の分け方を決めるのは、トラブルになりやすい手続だからです。

被相続人の事業を手伝っていた、療養看護に努めた相続人がいる場合、この苦労を相続で報いてもらいたいと思います。

高いハードルを越えて寄与分が認められた場合であっても、本人が思うような金額になることはほとんどありません。

法律で実質的公平が図られるのは、残念なことですが事実上困難です。

相続手続が大変だったという人は、分け方を決めることができないから大変だったのです。

生前に相続財産の分け方を対策しておくことが相続をラクにします。

相続財産の分け方が決まれば、遺産分割協議書作成は一挙にラクになります。

相続手続がラクに済めば、家族の絆が強まります。

家族の幸せのために、生前対策と遺産分割協議書作成を司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。

寄与分が認められるケースと必要になる証拠

2026-09-10

1寄与分で例外的に相続分を調整する

①相続の基本原則は法定相続分

相続人が相続する相続分は、法律で決められています。

相続の基本原則は、法定相続分による遺産分割です。

②財産の維持増加に限定して寄与分で調整する

寄与分とは、被相続人の財産の維持・増加について特別な貢献をした人がいる場合、特別な貢献をした人に対して、相続分以上の財産を受け継いでもらう制度です。

寄与分で評価されるのは、財産の維持増加のみです。

寄与分が認められるのは、直接的に財産の維持増加に貢献することが条件です。

直接的に財産の維持増加に貢献したときに限って、例外的に相続分を調整します。

③具体的で直接的な因果関係が必要

寄与分が認められるためには、被相続人の財産の維持・増加について特別な貢献をしたことが重要です。

被相続人の財産の維持・増加と特別な貢献に、具体的で直接的な因果関係が必要です。

・単なる好影響

・間接的なプラス効果

・結果的に助かった

上記のようなレベルでは、寄与分は認められません。

寄与分を主張する人の行為と財産の維持・増加が直接結びついていることが重要です。

仮定を積み重ねる多段階連鎖推論では、寄与分は認められません。

風が吹けば桶屋が儲かる程度では、推測に過ぎないからです。

寄与分は例外的制度だから、相続の基本を崩すだけの客観的合理性が必要です。

④家庭裁判所は客観的証拠で判断

家庭裁判所は、何も知らない第三者です。

家族の関係性や役割分担を共有していません。

家庭裁判所は、客観的証拠で判断します。

現実には、長期間経過する中で記憶があいまいになります。

頑張った努力したなどの主観的主張のみで、数値化できないことがあります。

たとえ多大な貢献をしても具体的な行為を客観的証拠で説明しないと、寄与分は認められません。

具体性が欠けると、寄与分として評価できません。

例外を認めるに足りる客観的合理性を支えるため、客観的証拠で判断します。

⑤寄与分が認められるための最低条件

条件(1)扶養義務を明確に超える行為

条件(2)財産の維持・増加との直接因果関係

条件(3)金額として算定可能

条件(4)客観証拠が充分に存在

条件(5)他の相続人の減額を正当化できる合理性

⑥家庭裁判所が寄与分を慎重に審査する理由

理由(1)相続の基本原則に対する例外的調整だから

寄与分の制度は、例外です。

例外が広く認められると、相続手続の安定性が崩壊します。

裁判所は寄与分を慎重に審査して、相続の基本原則を維持します。

理由(2)相続人全員の公平のため

寄与分が認められると、他の相続人の相続分が減少します。

法定相続分は、法律が定めた分配の原則です。

寄与分が目指す公平は、相続人全員の公平です。

他の相続人の減額を正当化できるか、客観的証拠で慎重に審査します。

理由(3)扶養義務との境界があいまいだから

家族には、扶養義務があります。

通常の家事・介護・見守りは、扶養義務の範囲内です。

寄与分が認められるのは、扶養義務の範囲の明確に超える特別の寄与のみです。

扶養義務の範囲であるのか、慎重に審査する必要があります。

理由(4)感情的対立が極端に強いから

主観的評価には、客観的な基準がありません。

寄与分では財産の維持・増加についてのみ、限定的に評価します。

裁判所は、紛争を解決する機関だからです。

2寄与分が認められるケースと必要になる証拠

ケース①被相続人の事業への無償従事

(1)裁判所が重点的に審査するポイント

・好景気や市場拡大によるものではないか

・他の役員や従業員の貢献ではないか

・通常の報酬を受けていないか

(2)経済的効果の立証ポイント

経済的効果は、金額の算定可能が必須です。

感覚的評価ではなく、財務分析レベルの立証が必要です。

具体的には、次の資料を準備します。

・決算書、損益計算書、貸借対照表

・月次売上資料、試算表

(3)直接的因果関係の立証ポイント

行為と利益増加に、具体的な因果関係が必要です。

単なる好景気や市場拡大ではなく、合理的な因果関係を立証します。

具体的には、次の資料を準備します。

・主要取引契約書、新規顧客契約書

・事業計画書、改善提案書

・銀行などの交渉資料、融資契約資料

いずれも関与した人が明確に分かる必要があります。

関与した人が分からないと、直接的因果関係が立証できないからです。

(4)特別性の立証ポイント

特別性とは、他の相続人より明らかに大きな貢献をしていることです。

単なる家族の家族の手伝い程度を超えて、経営判断に関与していることを立証します。

具体的には、次の資料を準備します。

・株主総会議事録、取締役会議事録

・社内組織図、職務分掌表

(5)無償性・低報酬性の立証ポイント

通常の報酬や給与を受け取っていた場合、寄与分で評価はされません。

具体的には、次の資料を準備します。

・給与明細、賃金台帳

(6)理論上認められ得る典型例

・赤字会社を黒字化

・破産を回避

・大口取引の獲得

ケース②不動産管理で家賃収入増加

(1)裁判所が重点的に審査するポイント

・市場全体の賃料上昇ではないか

・職業的・専従的管理であるか

・他人の貢献ではないか

(2)経済的効果の立証ポイント

不動産管理の前後で、増加額を立証します。

具体的には、次の資料を準備します。

・不動産管理前後の家賃収入一覧表、

・確定申告書の控え、通帳の写し

(3)直接的因果関係の立証ポイント

行為と賃料増加に、説明可能な因果関係が必要です。

具体的な管理行為によって賃料増加になったことを立証します。

具体的には、次の資料を準備します。

・管理物件の空室率推移資料、地域全体の空室率推移資料

・賃料台帳、地域全体の賃料相場資料

・リフォーム提案書、工事契約書、施工前後写真

・滞納賃料の回収資料、交渉記録、和解契約書

同じ地域・同種物件との比較で差が出ていないと、景気要因と判断されます。

リフォームと賃料上昇に時間が経過していると、因果関係が否定されやすくなります。

(4)特別性の立証ポイント

被相続人や他の相続人が関与せず、一手に管理会社レベルの業務をしたことを立証します。

管理業務の専門性と専従性、継続性の立証が重要ポイントです。

単なる鍵の受け渡し程度では、寄与分は認められません。

具体的には、次の資料を準備します。

・高齢で管理不能である医療記録、診断書

・不動産業者の陳述書、メール記録、更新契約書の署名者

・鍵の管理記録、銀行振込手続き履歴、クレーム対応履歴

(5)無償性・低報酬性の立証ポイント

相当な対価を受けている場合は、原則として寄与分は否定されます。

管理委託契約があれば、契約対価で評価済と判断されます。

具体的には、次の資料を準備します。

・決算書

(6)理論上認められ得る典型例

・長期間空室物件を立て直した

・大規模滞納を回収

・老朽物件を改善し高収益化

ケース③不動産の大規模改修・価値増加行為

(1)裁判所が重点的に審査するポイント

・大規模修繕をだれが主導したか

・自己資金を拠出または無償で実行

・大規模修繕により客観的価値が増加したか

(2)経済的効果の立証ポイント

通常の修繕ではなく、大規模修繕が重視されます。

例えば、外壁全面改修、屋上防水全面更新、耐震補強などです。

具体的には、次の資料を準備します。

・不動産の鑑定評価書、収益還元法による試算書、家賃単価上昇資料

(3)直接的因果関係の立証ポイント

不動産の管理は、不動産価値の減少を防ぐ行為です。

不動産の大規模修繕は、不動産価値を増加させる行為です。

不動産投資の側面が強くなります。

不動産投資によって、財産価値が上昇したことを数字で指名すことが重要です。

具体的には、次の資料を準備します。

・不動産の鑑定評価書、収益還元法による試算書、家賃単価上昇資料

(4)特別性の立証ポイント

大規模修繕は、自己資本の投入、経営判断、リスク負担を伴います。

だれでもできるものではないと、判断されやすいです。

具体的には、次の資料を準備します。

・工事請負契約書、見積書、請求書

・振込記録、施工前後の写真、工事内容説明書

(5)無償性・低報酬性の立証ポイント

相当な対価を受けている場合は、原則として寄与分は否定されます。

(6)理論上認められ得る典型例

・賃貸物件の大規模修繕を自己責任で行って家賃収入を増加した

・自己資本を投入して建物改修し資産価値向上

ケース④専門職レベルの医療・看護

(1)裁判所が重点的に審査するポイント

・医師や看護師などが本来は有償で提供される高度医療・専門的処置を無償で提供したか

・扶養義務の範囲を明確に超えているか

・専門的役務に市場価値があるか

・財産維持との具体的直接的因果関係

・無償であるか

(2)直接的因果関係の立証ポイント

●医学的管理の不可欠性

要介護度が高い、医療依存度が高い、24時間観察が必要であることは、医学的管理の不可欠性を示します。

具体的には、次の資料を準備します。

・主治医による意見書、処置内容の指示書

・要介護認定の資料、医療記録

●実際に専門的医学管理を行ったこと

単なる見守りでは、不足です。

専門職レベルの医療・看護は、扶養義務の範囲を超すことが明らかです。

家族の助け合いで、専門職レベルの医療・看護はできないからです。

医師や看護師であっても、単なる家事介護が認められません。

点滴管理、褥瘡デブリードマン、経管栄養管理など、専門的判断を必要とする行為であることを立証します。

具体的には、次の資料です。

・医師や看護師などの免許証、資格証、登録済証明書

・在宅で医療的管理が必要だったことの主治医による診断書、具体的処置内容の指示書

・処置記録や看護記録、主治医への報告記録

●施設入所や入院の蓋然性の高さ

施設入所や入院がほぼ確実であったことが重要です。

具体的には、次の資料です。

・主治医による医療型施設入所の意見書、ケアマネジャーによる意見書、ケアプラン

・施設の空床確認書

●代替可能性の低さ

制度上可能であったかではなく、現実的に代替可能であったかを重視します。

現実的に代替可能であったかとは、制度利用では対応しきれない状態です。

介護保険限度内で収まるケースやヘルパー利用で足りるケースでは、財産維持との因果関係が弱いと判断されます。

具体的には、次の資料です。

・ケアプランやサービス利用限度額資料、訪問看護単位数試算表

・主治医による常時観察の指示書、頻回の対応記録、急変記録

●専従性・継続性

短期では、認められにくいでしょう。

数年単位で、ほぼ専従状態であることが重要です。

具体的には、次の資料です。

・勤務時間短縮記録、退職証明書

(3)経済的効果との立証ポイント

医師や看護師による専門的役務には市場価値があり、客観的な市場単価があります。

診療報酬基準があるからです。

いくらの経済的価値を無償提供したか、客観的に明確にしやすいと言えます。

具体的には、次の資料を準備します。

・施設の見積書、月額利用料試算表

(4)無償性・低報酬性の立証ポイント

相当の対価を得ていた場合、寄与分で評価するのは二重評価になります。

無償であるか著しい低報酬であることが重要です。

具体的には、次の資料を準備します。

・入金が分かる通帳の写し

(5)特別性の立証ポイント

単なる家族の助け合いを超えて、専門職レベルの医療・看護を行ったことが重視されます。

具体的には、次の資料を準備します。

・医師や看護師などの免許証、資格者証、登録証明書

(6)理論上認められ得る典型例

・医療依存度が極めて高い在宅管理

・実際に入所・入院を検討していたが回避した

・公的サービス上限を超える医療対応が必要だった

3家族による家事介護は寄与分で評価されにくい理由

理由①頑張ったことは評価されない

寄与分は、財産の維持増加のみ限定的に評価する制度です。

家事や介護で頑張ったことは、法的に評価されません。

理由②家族としての自然な行為

家族は、扶養義務があります。

家族の助け合いの範囲内の行為は、特別な貢献とは言えません。

理由③生活維持が目的の行為

食事、入浴、排せつなどの介護や買い物、掃除などの家事は、日常生活を維持する行為です。

財産の維持増加とは無関係な行為は、寄与分で評価されません。

理由④因果関係を立証できない

家事や介護によって財産がいくら維持増加したのか、客観的数字で示すことは困難です。

施設費用を節約できたとしても、仮定を積み重ねる多段階連鎖推論で寄与分は認められません。

理由⑤客観的証拠がほとんどない

日常生活の世話は、長期間に渡ります。

客観的資料は、散逸しがちです。

客観的資料がないと、主観的主張だけでは裁判所は判断できません。

4生前対策と遺産分割協議書作成を司法書士に依頼するメリット

遺産分割協議書作成は、相続手続最大の山場です。

相続財産の分け方を決めるのは、トラブルになりやすい手続だからです。

被相続人の事業を手伝っていた、療養看護に努めた相続人がいる場合、この苦労を相続で報いてもらいたいと思います。

高いハードルを越えて寄与分が認められた場合であっても、本人が思うような金額になることはほとんどありません。

法律で実質的公平が図られるのは、残念なことですが事実上困難です。

相続手続が大変だったという人は、分け方を決めることができないから大変だったのです。

生前に相続財産の分け方を対策しておくことが相続をラクにします。

相続財産の分け方が決まれば、遺産分割協議書作成は一挙にラクになります。

相続手続がラクに済めば、家族の絆が強まります。

家族の幸せのために、生前対策と遺産分割協議書作成を司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。

借地権付き建物があっても相続放棄ができる

2026-09-10

1借地権付き建物があっても相続放棄ができる

①借地権とは建物所有目的で土地を借りる権利

被相続人が土地を借りて、建物を所有していることがあります。

借地権とは、建物所有目的で土地を借りる権利です。

建物だけでなく、借地権も相続の対象です。

②相続放棄の期限は3か月

相続が発生したら、相続人は相続を単純承認するか相続放棄をするか選択することができます。

相続放棄を希望する場合、家庭裁判所に対して相続放棄の申立てをします。

相続放棄には、期限があります。

相続放棄の期限は、相続があったことを知ってから3か月です。

家庭裁判所で相続放棄が認められた場合、はじめから相続人でなくなります。

相続放棄をしたら、一切の財産を相続することはできません。

借地権付き建物のみ、相続放棄をすることはできません。

③相続放棄に地主の同意は不要

相続を単純承認するか相続放棄をするか、相続人がひとりで判断することができます。

相続を単純承認するときも相続放棄をするときも、地主の同意は不要です。

④相続放棄で次順位の人が相続人になる

相続人になる人は、法律で決められています。

先順位の人が相続人になる場合、後順位の人は相続人になりません。

家庭裁判所で相続放棄が認められた場合、はじめから相続人でなくなります。

被相続人の子どもが相続放棄をした場合、子どもは相続人でなくなります。

被相続人の子ども全員が相続放棄をした場合、次順位の人が相続人になります。

次順位の人は、親などの直系尊属や兄弟姉妹です。

相続放棄をした人の子どもは、次順位相続人ではありません。

⑤相続人全員が相続放棄をすることができる

次順位の人が相続人になったら、相続を単純承認するか相続放棄をするか選択することができます。

次順位の人に相続放棄が認められた場合、はじめから相続人でなくなります。

法律で決められた人全員が相続放棄をすることがあります。

法律で決められた人全員が相続放棄をしたら、相続人は不存在になります。

相続人全員が相続放棄をして相続人不存在になることは、割とよくあることです。

⑥相続財産を利用処分すると単純承認

相続放棄をしたら、はじめから相続人でなくなります。

相続人でなくなるから、相続財産を処分する権限はないはずです。

相続放棄した人は、借地権付き建物を解体することはできません。

相続放棄した人は、借地権付き建物を売却することはできません。

相続放棄した人は、借地契約を解除することはできません。

借地権付き建物を解体したり売却したりすることや借地契約を解除することは、相続財産を処分することです。

相続財産を処分することは、相続人であることを前提とした行為です。

相続財産を利用処分すると、相続放棄は無効になります。

借地権付き建物以外の財産についても、相続放棄をした人は利用処分をすることができません。

⑦相続放棄をすると地代を支払う必要はない

(1)相続発生後の地代を支払う必要はない

相続放棄をしても、借地契約は継続します。

地代は、相続人が負担します。

相続放棄をすると、地代を支払う必要はありません。

相続放棄をした人は、相続人でなくなるからです。

(2)相続発生前の未払地代を支払う必要はない

被相続人が生前に支払うべき地代を滞納していることがあります。

未納の地代は、相続財産です。

未納地代は、相続人が引き継ぎます。

相続放棄をすると、未納地代を引き継ぐ必要はありません。

相続放棄をした人は、相続人でなくなるからです。

⑧地主に借地権を相続しないと言っても意味はない

被相続人の借地権と建物は、相続財産です。

相続が発生したら、借地権と建物は相続人が相続します。

地主に借地権を相続しないと言っても、意味はありません。

相続放棄は、家庭裁判所に対する手続です。

地主に借地権を相続しないと言っても、相続放棄はできません。

相続放棄をしたら、借地権付き建物を含めて一切の財産を相続することはできません。

2相続放棄をしても借地契約は自動で終了しない

①借地権は相続財産として相続人が引き継ぐ

被相続人の財産は、原則として相続人が引き継ぎます。

被相続人が借地権を持っていた場合、借地権は相続財産です。

被相続人の借地権は、相続人が引き継ぎます。

借地権者が死亡しても、借地契約は終了しません。

被相続人が締結した借地契約の内容は、相続人が引き継ぎます。

②相続放棄をした人は借地契約を引き継がない

相続放棄をしたら、はじめから相続人でなくなります。

相続放棄をした人は、相続財産を一切引き継ぎません。

相続放棄をしても、借地契約に影響はありません。

借地契約は、相続人が引き継ぐからです。

相続放棄をした人が借地契約を引き継がないだけで、相続人が借地契約を引き継ぎます。

相続放棄をしても、借地契約が自動で終了することはありません。

③相続放棄をしても借地権付き建物は地主のものにならない

相続放棄をしても、借地契約に影響はありません。

相続放棄をしても、借地上の建物に影響はありません。

相続放棄をした人が引き継がないだけで、相続人は借地権と借地上の建物を引き継ぎます。

借地権と借地上の建物は、相続財産だからです。

相続放棄をしても、借地権付き建物は自動で地主のものになりません。

相続人全員が相続放棄をしても、借地権付き建物は自動で地主のものになりません。

④相続放棄をしても土地を返還したことにならない

相続放棄をしても、借地契約はそのままの内容で継続します。

相続放棄をしても、土地を返還したことにはなりません。

相続人は地主と合意して、借地契約を終了させることができます。

相続人は建物を解体して、更地を返還することができます。

借地契約を終了させることや更地を返還することは、相続放棄した人はできません。

借地契約を終了させることや更地を返還することは、相続人であることを前提とした行為だからです。

相続財産を利用処分すると、相続放棄は無効になります。

相続放棄をすると、相続財産を利用処分ができなくなります。

⑤相続放棄をしても保存義務が継続する

相続放棄をした人は、相続財産を利用処分することはできません。

相続放棄をしても、相続放棄のときに現に相続財産を占有している人は保存する義務があります。

相続人全員が相続放棄をしても、借地権付き建物は自動で地主のものになりません。

他の相続人や相続財産清算人に財産を引き継ぐまで、保存義務が継続します。

相続財産清算人とは、相続人が不存在のとき相続財産を精算して国庫に帰属させる人です。

相続財産清算人に財産を引き継ぎたい場合、家庭裁判所に相続財産清算人選任の申立てをする必要があります。

相続財産清算人選任の申立てにおいては、予納金を納付するように求められます。

予納金は、相続財産の清算に必要な事務費に充てられます。

建物の解体が必要になるなら、解体費用を考慮して家庭裁判所が予納金を決定します。

相続財産の状況によっては、数十~100万円程度になることがあります。

相続放棄をしても、実質的に建物の解体費用の負担を避けられるわけではありません。

3相続放棄をしないで借地権付き建物を手放す方法

①遺産分割協議で他の相続人が引き継ぐ合意ができる

相続財産は、相続人全員の共有財産です。

相続財産の分け方は相続人全員の合意で決定します。

遺産分割協議とは、相続財産の分け方について相続人全員で行う話し合いです。

相続人全員で合意できれば、どのような合意でもすることができます。

一部の相続人が借地権付き建物全体を取得する合意をすることができます。

他の相続人は、相続財産を一切取得しない合意をすることができます。

相続財産を一切取得しない合意をすることを相続放棄と表現することがあります。

相続放棄と表現しても、遺産分割協議は相続放棄ではありません。

遺産分割協議と相続放棄は、別の手続です。

他の相続人が借地権建物を取得する合意がまとまった場合、借地権付き建物を手放すことができます。

②地主の承諾を得て借地権付き建物を売却

(1)借地権譲渡に地主の承諾が必要

被相続人の建物を引き継ぎたい人がいない場合、売却することが選択肢になります。

建物を売却できれば付随して、借地権を譲渡することができます。

借地権の譲渡には、地主の承諾が必要です。

実務的には地主に承諾を求める場合、承諾料の支払いが必要になるのが一般的です。

地主の承諾が得られない場合、スムーズに売却手続が進まなくなる可能性があります。

地主が承諾しない場合、裁判所の手続を利用して借地権譲渡の許可を受けることになるからです。

(2)地主が承諾しない場合に買主は時価で建物買取請求ができる

地主が借地権譲渡に承諾しない場合、買主は時価で建物買取請求をすることができます。

地主に対して買取請求をする対象は、建物のみで借地権は含まれません。

地主に対して買取請求をする場合、借地権は消滅するのが前提だからです。

第三者に対して売却する場合、借地権付き建物を売却します。

借地権は、経済的価値があると考えられています。

地価が高い土地の借地権は、高額な評価額になります。

建物の評価額によっては、借地権の評価額が高いことも少なくありません。

③建物を解体して更地を地主に返却

建物と借地契約は、相続人にそのままに引き継がれます。

借地契約を引き継いだ相続人は、借地契約を終了することができます。

借地契約が終了した場合、地主は建物所有者に対して建物を解体して明け渡すように請求することができます。

建物を解体して更地にするのは、借地契約を引き継いだ人の義務です。

借地契約を終了しても、建物は地主のものになりません。

建物を解体する費用は、建物所有者が負担します。

借地契約を終了しても、原則として建物の解体費用を地主に負担してもらうことはできません。

4相続放棄を司法書士に依頼するメリット

実は、相続放棄はその相続でチャンスは1回限りです。

家庭裁判所に認められない場合、即時抗告という手続を取ることができます。

即時抗告は高等裁判所の手続で、2週間以内に申立てが必要になります。

家庭裁判所で認めてもらえなかった場合、即時抗告で相続放棄を認めてもらえるのは、ごく例外的な場合に限られます。

一挙にハードルが上がると言ってよいでしょう。

相続放棄は、撤回ができません。

相続放棄をする前に、慎重に判断する必要があります。

せっかく相続放棄が認められても、相続財産を処分したら無効になりかねません。

このような行為をしてしまわないように、あらかじめ知識を付けておく必要があります。

相続放棄を自分で手続したい人の中には、相続放棄が無効になることまで考えていない場合が多いです。

司法書士は、相続放棄が無効にならないようにサポートしています。

せっかく手続しても、相続放棄が無効になったら意味がありません。

相続放棄を考えている方は、司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。

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