Author Archive

法定相続情報一覧図の申出人に遺言執行者

2024-09-26

1法定相続情報一覧図があると便利

相続が発生すると、相続人は相続手続をすることになります。

相続手続先は、多くの市区町村役場や銀行などの金融機関などです。

相続手続では、たくさんの戸籍謄本を提出します。

相続手続のたびに、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本と相続人の現在戸籍の束が必要になるからです。

大量の戸籍謄本を持ち歩くと汚してしまったり、紛失する心配があるでしょう。

受け取る市区町村役場や銀行などの金融機関にとっても、戸籍謄本の束を読解するのは手間のかかる事務です。

被相続人を中心にして、どういう続柄の人が相続人であるのか一目で分かるように家系図のように取りまとめてあると便利です。

この家系図と戸籍謄本等を法務局に提出して、登記官に点検してもらうことができます。

登記官は内容に問題がなかったら、地模様の入った専用紙に認証文を付けて印刷して、交付してくれます。

これが法定相続情報証明制度です。

登記官が地模様の入った専用紙に印刷してくれた家系図のことを法定相続情報一覧図と言います。

多くは家系図のように書きますが、相続人をずらっと書き並べることもできます。

税務申告など連記式の法定相続情報一覧図は提出できない場合があるので、作成前によく確認しましょう。

2法定相続情報一覧図の申出人に遺言執行者

①相続人は申出人になれる

相続人は、法定相続情報一覧図の保管及び交付の申出の申出人になることができます。

相続人は、自分で手続をすることができます。

司法書士などの専門家や他の家族を代理人に立てて、手続を依頼することもできます。

相続人は、法定相続情報一覧図の保管及び交付の申出の申出人になることができます。

②相続人の地位を相続した人は申出人になれる

相続が発生したときには生きていたのに、相続手続中に相続人が死亡することがあります。

相続手続中に相続人が死亡して、次の相続が発生することを数次相続と言います。

相続手続中に相続人が死亡した場合、相続人の地位が相続されます。

死亡した相続人の相続人は、相続人の地位を相続した人です。

死亡した相続人の相続人は、最初の相続の相続人ではありません。

相続人の地位を相続した人は、法定相続情報一覧図の保管及び交付の申出の申出人になることができます。

③遺言執行者は申出人になれる

被相続人が生前に遺言書を作成している場合があります。

遺言執行者とは、遺言書の内容を実現する人です。

遺言執行者がいると、相続手続をおまかせすることができます。

遺言者にとっては、遺言書の内容を実現してもらえるので安心です。

相続人にとっても、わずらわしい相続手続をおまかせすることができるのでラクです。

法定相続情報一覧図の保管及び交付の申出は、遺言執行の一環と言えます。

遺言執行者は、法定相続情報一覧図の保管及び交付の申出の申出人になることができます。

④受遺者は申出人になれない

被相続人は、自分の死後だれに財産を引き継いでもらうのか自由に決めることができます。

遺言書を作成して、相続人や相続人以外の人に財産を受け継いでもらうことができます。

遺贈とは、遺言書で財産を相続人や相続人以外の人に受け継いでもらうことです。

遺贈で財産を受け取る人を受遺者と言います。

相続人は、法定相続情報一覧図の保管及び交付の申出の申出人になることができます。

相続人でない受遺者は、法定相続情報一覧図の保管及び交付の申出の申出人になることができません。

包括受遺者は相続人と同一の権利義務を有すると民法にあります。

法定相続情報一覧図の保管及び交付の申出の申出人になることができるように思うかもしれません。

法定相続情報一覧図の保管及び交付の申出の申出人になることができるのは、戸籍謄本で確認できる人に限られています。

受遺者は、法定相続情報一覧図の保管及び交付の申出の申出人になれません。

⑤成年後見人は認知症の人の代理で手続ができる

相続人は、法定相続情報一覧図の保管及び交付の申出の申出人になることができます。

相続人が認知症であることがあります。

認知症になると、物事のメリットデメリットを充分に判断することができなくなります。

成年後見人は、物事のメリットデメリットを充分に判断することができなくなった人をサポートする人です。

成年後見人は認知症の人に代わって、法定相続情報一覧図の保管及び交付の申出をすることができます。

成年後見人は、認知症の人に代わって手続をするだけです。

法定相続情報一覧図の保管及び交付の申出の申出人は、認知症の本人です。

成年後見人は、認知症の人に代わって法定相続情報一覧図の作成をすることができます。

法定相続情報一覧図には、作成者の住所と氏名を記載します。

認知症の人の住所と氏名を記載したうえで、成年後見人の住所と氏名を記載します。

成年後見人は、認知症の人に代わって作成しただけだからです。

成年後見人が弁護士や司法書士などの専門家である場合、「弁護士」「司法書士」などの記載はしません。

弁護士や司法書士として依頼を受けて作成したものではないからです。

成年後見人は認知症の人の代理で法定相続情報一覧図の保管及び交付の申出をすることができます。

⑥法定相続情報証明制度を利用できない場合がある

法定相続情報一覧図の保管及び交付の申出をする場合、被相続人の出生から死亡まで連続した戸籍謄本を提出します。

必要な戸籍謄本を提出できない場合、法定相続情報証明制度を利用することができません。

被相続人や相続人に日本国籍がない人が含まれている場合、戸籍謄本を提出できません。

法定相続情報証明制度を利用できない場合、相続人であっても申出人になることはできません。

3申出人は法定相続情報一覧図の保管及び交付の申出書に名前を書く人

①複数の人が申出人になることができる

法定相続情報一覧図の保管及び交付の申出書と記載例は、法務局のホームページからダウンロードすることができます。

法定相続情報一覧図の保管及び交付の申出書に名前を書く人が申出人です。

ダウンロードした申出書の記載例を見ると、申出人の表示欄は一人だけ書いてあります。

申出人は一人に決めなければならないという意味ではありません。

複数の人が申出人になることができます。

②申出人は一覧図に記載が必要

法定相続情報一覧図の保管及び交付の申出をするとき、一覧図は自分で作成して提出します。

法務局が一覧図を作ってくれるのではありません。

一覧図を作る場合、申出人を記載する必要があります。

相続人が申出人になる場合、一覧図に名前が出ているでしょう。

名前の近くに申出人と添え書きをします。

相続人の地位を相続した人が申出人になる場合、一覧図に名前が出ていません。

最初の相続が発生したとき、死亡した相続人は生きていたから、死亡した相続人の名前を記載するからです。

法定相続情報一覧図は、被相続人一人につき一つの一覧図を作ります。

2つの相続をまとめた一覧図を作ることはできません。

2つの相続をまとめた一覧図を提出した場合、作り直しになります。

2つの相続をまとめた一覧図を作ることはできないから、最初の相続の一覧図に死亡した相続人の相続人の名前は出ていません。

一覧図に名前が出ていない人が申出人になる場合、右下などに代理人の氏名、作成年月日を書く近くにまとめて書きます。

申出人の記載がない場合、作り直しになります。

③申出書に申出人の押印は不要

法定相続情報一覧図の保管及び交付の申出書は、押印不要です。

申出人は、押印をする必要はありません。

④申出人は委任状に押印が不要

申出人は、自分で手続をすることができます。

司法書士などの専門家や他の家族を代理人に立てて、手続を依頼することもできます。

司法書士などの専門家や他の家族に手続を依頼する場合、委任状が必要になります。

法定相続情報一覧図の保管及び交付の申出書の委任状は、押印不要です。

申出人は、押印する必要はありません。

司法書士などの専門家や他の家族が手続する場合、依頼を受けた専門家や家族は申出書に押印する必要はありません。

法定相続情報一覧図の保管及び交付の申出は、法定相続情報一覧図の保管及び交付の申出だけ手続をすることもできるし相続登記と一緒に手続をすることもできます。

相続登記と法定相続情報一覧図の保管及び交付の申出を一緒に司法書士などの専門家に依頼することができます。

まとめて依頼する場合、司法書士などの専門家にそれぞれ委任をする必要があります。

それぞれの委任事項を1枚の委任状に取りまとめることができます。

1枚の委任状に取りまとめた場合、委任状に押印が必要です。

相続登記の委任状は、押印を省略することができないからです。

4申出人は本人確認書類の提出が必要

①本人確認書類とは

法定相続情報一覧図の保管及び交付の申出書には、申出人の本人確認書類を提出する必要があります。

本人確認書類とは、次の書類です。

(1)運転免許証の表裏のコピー

(2)マイナンバーカードの表のコピー

(3)住民票

(4)戸籍の附票

(1)運転免許証の表裏のコピー(2)マイナンバーカードの表のコピーを提出する場合、原本に相違ありませんと記載して申出人が記名します。

記名のみで押印は不要です。

(3)住民票(4)戸籍の附票は、コピーではなく市区町村役場で発行されたものをそのまま提出します。

②本人確認書類は原本還付してもらうことができる

法定相続情報一覧図の保管及び交付の申出書には、申出人の本人確認書類の他に被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本を提出します。

被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本は、原則として原本還付されます。

原則として原本還付されるから、コピーを提出する必要はありません。

本人確認書類は、原則として原本還付されません。

本人確認書類は、希望したときだけ原本還付されます。

原本還付を希望する場合、本人確認書類のコピーも一緒に添付します。

コピーに、原本に相違ありませんと記載して申出人が記名します。

記名のみで押印は不要です。

余白がない場合は、コピーの裏面に記載することができます。

5法定相続情報一覧図の作成を司法書士に依頼するメリット

法定相続情報一覧図は、後に登記官が認証文を付して交付されるので、書き方が厳格に決まっています。

法定相続情報一覧図と似たものに、相続関係説明図があります。

相続関係説明図は、単なる事情説明の書類に過ぎません。

登記官が点検をするものではないから、比較的自由に書くことができます。

これらの違いを理解して、ポイントを押さえて書くことが重要です。

相続手続が少ない場合など、法定相続情報一覧図を作るまでもないこともあるでしょう。

銀行口座をたくさん持っているなど、相続手続をする手続先が多い場合は、法定相続情報一覧図は大変便利です。

仕事や家事で忙しい方は、このような手続はすべてお任せいただけます。

すみやかな手続を考えている方は、司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。

戸籍の附票の取得方法

2024-09-26

1戸籍の附票で相続人の住所が分かる

①戸籍の附票は住所を証明する書類

相続人調査をする場合、必要な戸籍を読み解いて相続人を確定させていきます。

被相続人が死亡したとき、健在であった相続人が判明するでしょう。

相続人の現在戸籍を取得するときに、一緒に戸籍の附票も請求しましょう。

戸籍の附票は、住民票の異動が記録されている書類です。

住民票は、住民票を置いている市区町村役場に請求する必要があります。

住所が分からないと、請求できなくて困ってしまいます。

戸籍の附票は、戸籍謄本とちがい広域交付で取得することはできません。

本籍地のある市区町村役場に請求します。

相続人調査で戸籍謄本を集めますから、本籍は必ず判明します。

住民票上の住所は、戸籍の附票で調べることができます。

戸籍の附票は、本籍地の市区町村役場に出向いて請求することもできるし、郵便で請求することもできます。

本籍地の市区町村役場に請求する場合は、戸籍謄本や戸籍の附票は、相続人であれば、だれでも取得することができます。

②戸籍謄本と戸籍の附票のちがい

大切な家族が死亡したら、相続の手続をすることになります。

相続手続のため、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本を集めます。

戸籍には、その人の身分関係がすべて記録されています。

結婚や離婚、子どもや養子の存在を家族には内緒にしている人もいます。

身分関係に関することは、戸籍には記録されています。

その人の身分関係を証明する書類が戸籍謄本です。

戸籍の附票は、戸籍を一緒に保管されている書類です。

その人が戸籍に入ってから除籍されるまでの住所が記録されています。

戸籍には、住所は記録されていません。

戸籍謄本には、住所は記載されません。

戸籍の附票に、住所が記載されています。

戸籍謄本に記載されている人の住所を確認するためには、戸籍の附票が必要です。

戸籍の附票を取得する場合、本籍の記載をしてくださいとわざわざ言う必要があります。

請求しないと本籍の記載が省略されるからです。

本籍の記載が省略された戸籍の附票の場合、戸籍謄本に記載されている人の住所の証明とは言えません。

単なる同姓同名の人かもしれないからです。

本籍と氏名と生年月日が一致するから、同一人物と認めてもらえます。

③住民票と戸籍の附票のちがい

戸籍の附票には、その人が戸籍に入ってから除籍されるまでの住所が記録されています。

戸籍の附票は、その人の住所を証明する書類と言えます。

一般的に、住所を証明する公的書類としては住民票の方がなじみがあるでしょう。

住民票には、現在の住所の他に前住所が記載されています。

前の前の住所は、記載されていません。

戸籍の附票には、その人が戸籍に入ってから除籍されるまでの住所が記録されています。

その人が戸籍に入ってから除籍されるまでの間に住所を転々としていた場合、住所の移り変わりが分かります。

被相続人が不動産を所有していた場合、相続登記をします。

不動産を所有している人が住所を変更した場合、原則として、その都度住所変更登記をします。

不動産を所有している人が住所を変更したのに住所変更登記をしないままであることは多々あります。

住所変更登記をしていない場合、被相続人の死亡時の住所と登記簿の住所が一致しません。

被相続人の死亡時の住所と登記簿の住所が一致しない場合、住所の移り変わりを証明する必要があります。

住所の移り変わりを証明しない場合、単なる同姓同名の人かもしれないからです。

住所の移り変わりを証明するために、戸籍の附票や住民票を提出します。

登記簿の住所が戸籍に入ってから除籍されるまでの住所であれば、戸籍の附票を提出すればいいでしょう。

その人が戸籍に入る前の住所で、かつ、前住所地であれば、住民票を提出すればいいでしょう。

戸籍の附票には、その人が戸籍に入る前の住所は記載されていません。

戸籍の附票で住所の移り変わりを証明できないけど、住民票で証明できる場合があります。

④除附票を請求することができる

戸籍の附票には、その人が戸籍に入ってから除籍されるまでの住所が記録されています。

多くの人は、出生から死亡までの間に結婚や離婚、養子縁組や離縁、戸籍の作り直しなどで複数の戸籍を渡り歩いています。

結婚や離婚、養子縁組や離縁、戸籍の作り直しなどで除籍される場合、新しい戸籍に身分事項が記録されます。

同時に、新しい戸籍の附票に住所が記録されます。

死亡時の戸籍の附票で住所の移り変わりを証明できない場合でも、古い戸籍の附票を取得すると証明できるかもしれません。

⑤戸籍の附票は保存期間経過で取得できなくなる

戸籍の附票は、戸籍を一緒に保管されている書類です。

戸籍の附票は、永久保管ではありません。

市区町村役場は保存期間を決めていて、古くなった戸籍の附票は順次廃棄します。

戸籍の附票の保存期間は、現在は150年です。

令和元年6月20日以前は、たった5年でした。

平成26年6月20日以降に作られた戸籍の附票は、廃棄前に保存期間が延びたので保存されています。

令和元年6月20日以前に廃棄された場合、原則として、取得することはできません。

2戸籍の附票の取得方法

①戸籍の附票を請求できる人

戸籍の附票は、個人情報が記載されています。

だれでも請求できるわけではありません。

請求できる人は、次のとおりです。

(1)戸籍に記載されている本人

(2)戸籍に記載されている人の配偶者、直系尊属、直系卑属

(3)戸籍請求をする正当な利害関係人

利害関係人から請求する場合、利害関係があることの証明書が必要になります。

戸籍の附票の取得は、代理人に委任することができます。

代理人に委任する場合、委任状が必要になります。

相続手続などを司法書士などの専門家に依頼する場合、一緒に戸籍謄本や戸籍の附票の取得を依頼することができます。

②戸籍の附票の請求先

戸籍の附票の請求先は、本籍地の市区町村役場です。

戸籍の広域交付制度で、戸籍の附票を請求することはできません。

③戸籍の附票の取得方法

(1)本籍地の市区町村役場の窓口で取得する

(2)本籍地の市区町村役場に郵送請求する

戸籍の附票は、郵送で請求することができます。

請求する人の身分証明書のコピーを添えて郵送します。

市区町村役場によっては、郵送事務センターなどに送付する必要がある場合があります。

郵送請求をする場合は、市区町村役場のホームページなどで確認するといいでしょう。

あらかじめ返信用の切手が貼ってある返信用の封筒を一緒に送ると、返送してくれます。

郵送するときは普通郵便でも構いません。

レターパックなど、追跡できる郵便を利用すると、安心です。

(3)コンビニ交付サービスで取得する

本籍地の市区町村役場がコンビニ交付サービスに対応している場合があります。

地方公共団体情報システム機構のホームページで、コンビニ交付サービスに対応しているか調べることができます。

マイナンバーカードを使って、本籍地まで行かないでも戸籍の附票を取得することができます。

コンビニ交付サービスで取得できるのは、現在戸籍の附票のみです。

被相続人の除附票は、取得できません。

④戸籍の附票の発行手数料

戸籍の附票を請求する場合、発行手数料を納入しなければなりません。

手数料は、市区町村役場によって異なります。

おおむね、300円程度です。

郵送請求すると高くなる場合やコンビニ交付の場合は安くなる場合があります。

郵送請求する場合、戸籍の附票の手数料は定額小為替で納入します。

定額小為替は、郵便局で購入することができます。

登記簿上の住所から死亡時の住所までの移り変わりを証明する場合、戸籍の附票が複数必要になることがあります。

戸籍の附票が複数になる場合、発行手数料がかさみます。

手数料が不足することがないように、多めに送っておくと余りは返してもらえます。

3戸籍の附票は本人確認書類になる

戸籍の附票には、その人が戸籍に入ってから除籍されるまでの住所が記録されています。

戸籍の附票は、その人の住所を証明する書類と言えます。

当然、氏名が記載されています。

法改正によって、戸籍の附票の記載事項に生年月日と男女の別が追加されました。

戸籍の附票は、本人特定事項がすべて記載されることになりました。

犯罪収益移転防止法などに規定される本人確認書類として使うことができます。

4相続人調査を司法書士に依頼するメリット

本籍地の変更や国による戸籍の作り直し(改製)で、多くの方は何通もの戸籍を渡り歩いています。

古い戸籍は現在と形式が違っていて、読みにくいものです。

手書きの達筆な崩し字で書いてあって、分かりにくいものです。

慣れないと、戸籍謄本の収集はタイヘンです。

本籍地を何度も変更している方や結婚、離婚、養子縁組、離縁を何度もしている方は、戸籍をたくさん渡り歩いています。

膨大な手間と時間がかかるでしょう。

市区町村役場や法務局の手続では、通常、戸籍謄本や住民票の期限は問われません。

銀行預金の解約など銀行の手続では、銀行独自で期限を設けている場合があります。

手続後、集めた戸籍謄本や住民票を返却してくれる場合と返却してくれない場合があります。

期限があって、かつ、返却してくれるところから優先して手続するといいでしょう。

集めた戸籍謄本や住民票を返却してくれないところをはじめに手続すると、集め直しになるからです。

段取りよく要領よく手続するには、ちょっとしたコツがいります。

仕事や家事で忙しい方や高齢、療養中などで手続が難しい人は、手続を丸ごとおまかせすることができます。

ご家族にお世話が必要な方がいて、お側を離れられない方からのご相談もお受けしております。

集めてみたけど、途中で挫折することがあります。

全部集めたと思ったのに、金融機関や手続先からダメ出しされることがあります。

このような場合、司法書士が目を通して、不足分を取り寄せします。

相続人調査でお困りのことがあれば、すみやかに司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。

平日の昼間に役所にお出かけになって準備するのは、負担が大きいものです。

戸籍謄本や住民票は郵便による取り寄せもできます。

書類の不備などによる問い合わせは、市区町村役場の業務時間中の対応が必要になります。

やはり、負担は軽いとは言えません。

このような戸籍や住民票の取り寄せも司法書士は代行します。

相続人調査でお困りの方は、司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。

死亡した相続人がいるときの法定相続情報一覧図

2024-09-26

1法定相続情報一覧図とは

相続が発生すると、相続人は多くの役所や銀行などの金融機関などで相続手続をすることになります。

相続手続のたびに、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍と相続人の現在戸籍の束を提出しなければなりません。

大量の戸籍を持ち歩くと汚してしまったり、紛失する心配があるでしょう。

受け取る役所や銀行などの金融機関にとっても、戸籍謄本の束を読解するのは手間のかかる事務です。

被相続人を中心にして、どういう続柄の人が相続人であるのか一目で分かるように家系図のように取りまとめてあると便利です。

この家系図と戸籍謄本等を法務局に提出して、登記官に点検してもらうことができます。

登記官は内容に問題がなかったら、地模様の入った専用紙に認証文を付けて印刷して、交付してくれます。

これが法定相続情報証明制度です。

登記官が地模様の入った専用紙に印刷してくれた家系図のことを法定相続情報一覧図と言います。

多くは家系図のように書きますが、相続人をずらっと書き並べることもできます。

税務申告など連記式の法定相続情報一覧図は提出できない場合があるので、作成前によく確認しましょう。

2数次相続と代襲相続のちがい

①数次相続とは

相続が発生したら、相続財産は相続人全員の共有財産になります。

共有財産になった相続財産は、相続人全員で話し合いによる分け方の合意が不可欠です。

相続財産の分け方について、話し合いがまとまる前に、相続人が死亡して新たな相続が発生することがあります。

最初の相続の手続中に相続人が死亡して、さらに相続が発生した状態を数次相続と言います。

数次相続は、どこまででも続きます。

どこまで続くかについて、法律上の制限はありません。

最初の相続を一次相続、相続人が死亡した相続を二次相続と言います。

二次相続の相続人が死亡すると、三次相続、さらに、四次相続、五次相続という場合もあります。

相続人が死亡して新たな相続が発生することを、まとめて、数次相続と言います。

②代襲相続とは

数次相続も代襲相続も相続が複雑になる代表例です。

相続人になるはずだった人が被相続人より先に死亡したため、相続人になるはずだった人の子どもや子どもの子どもが相続することがあります。

これを代襲相続と言います。

数次相続は、相続が発生した「後」に、相続人が死亡した場合です。

代襲相続は、相続が発生する「前」に、相続人が死亡した場合です。

数次相続では、死亡した相続人の相続人が最初の相続の遺産分割協議に参加します。

代襲相続では、死亡した相続人の直系卑属が最初の相続の遺産分割協議に参加します。

3数次相続があるときの法定相続情報一覧図の書き方

①ひとつの相続にひとつの法定相続情報一覧図

数次相続では、最初の相続と次の相続が発生しています。

数次相続が発生している場合、法定相続情報一覧図は一緒に作ることはできません。

最初の相続の法定相続情報一覧図と次の相続の法定相続情報一覧図は、別々に作ります。

最初の相続の法定相続情報一覧図には、生きていた相続人はそのまま記載します。

法定相続情報一覧図は、その相続における相続人を見やすく取りまとめた書類だからです。

法定相続情報一覧図を作成したときには、すでに死亡した相続人について死亡日を書くことはできません。

死亡日を記載した場合、書き直しになります。

すでに死亡した相続人について、死亡時の住所を記載することができます。

最初の相続が発生したときには、生きていた相続人だからです。

死亡した相続人について、あらためて法定相続情報一覧図を作成します。

法定相続情報一覧図を見るときは、相続が発生したときに生きていた相続人が現在は死亡しているかもしれないということに注意する必要があります。

②複数の相続をまとめた相続関係説明図があると便利

相続関係説明図は単なる説明のための家系図です。

法務局の点検や認証文はありません。

単に説明のために自由に書くことができます。

数次相続をひとまとめにした相続関係説明図を作ると、相続全体が分かりやすくなります。

複数の法定相続情報一覧図を提出する場合、相続関係説明図を一緒に添付すると親切でしょう。

③死亡した相続人の相続人は最初の相続の申出人になれる

最初の相続における死亡した相続人の相続人は、最初の相続の法定相続情報一覧図の保管及び交付の申出をすることができます。

死亡した相続人の相続人は、相続人の地位を相続しているからです。

法定相続情報一覧図の保管及び交付の申出をする場合、家系図に申出人を記載しなければなりません。

通常の相続であれば申出人は家系図に現れていますから、家系図の氏名の近くに申出人と記載します。

数次相続の場合、死亡した相続人の相続人が最初の相続の法定相続情報一覧図の保管及び交付の申出をすることができます。

死亡した相続人の相続人は、最初の相続の家系図に相続人として現れません。

家系図に現れない人が申出人になる場合、作成者氏名の近くにまとめて記載します。

4代襲相続があるときの法定相続情報一覧図の書き方

①代襲相続があるときはひとつの法定相続情報一覧図

代襲相続とは、相続人になるはずだった人が被相続人より先に死亡したため、相続人になるはずだった人の子どもが相続することです。

相続人になるはずだった人とその子どもも被相続人より先に死亡した場合、相続人になるはずだった人の子どもの子どもが相続します。

代襲相続が複数発生している場合であっても、ひとつの法定相続情報一覧図に取りまとめます。

代襲相続人は、相続人だからです。

②相続人になるはずだった人の氏名は記載できない

被相続人より先に死亡した子どもは、「被代襲者」と記載して死亡年月日を記載します。

被代襲者の名前を記載することはできません。

被代襲者は被相続人より先に死亡しているから、相続とは関係がないからです。

③相続人が廃除されたら法定相続情報一覧図に記載できない

相続人が廃除された場合にも、代襲相続は発生します。

相続人が廃除された場合、法定相続情報一覧図に記載することはできません。

廃除された場合、相続人になることはできないからです。

廃除は、戸籍で確認することができます。

戸籍で確認することができるから、法定相続情報一覧図に記載した場合、書き直しになります。

廃除された相続人は、被代襲者と記載することもできません。

廃除された相続人の代襲相続人を記載することもできません。

④相続人が欠格になっても法定相続情報一覧図に記載する

相続人が欠格になった場合、法定相続情報一覧図に記載します。

欠格は戸籍に記載されないからです。

戸籍謄本で確認することができないから、法定相続情報一覧図に記載しない場合、書き直しになります。

欠格になった場合、相続人になることはできません。

欠格に該当する証明書を添付しても、相続欠格であることを記載することはできません。

欠格になった相続人は、被代襲者と記載することもできません。

廃除された相続人の代襲相続人を記載することもできません。

5相続人のいない子どもは法定相続情報一覧図に書けない

法定相続情報一覧図には、被相続人の相続に関係ないことを記載することはできません。

被相続人の子どもであっても、被相続人より先に死亡していて、かつ、子どもの子どもなど代襲相続をする人がいない場合、死亡した子どもを書くことはできません。

死亡した子どもは、相続とは関係がないからです。

6死亡した配偶者がいるときの法定相続情報一覧図の書き方

①先に死亡した配偶者は相続人ではない

法定相続情報一覧図には、被相続人の相続に関係ないことを記載することはできません。

被相続人より先に死亡した配偶者は、法定相続情報一覧図に書けません。

被相続人より先に死亡した配偶者は、相続人ではないからです。

離婚した元配偶者も、法定相続情報一覧図に書けません。

内縁・事実婚の配偶者も、法定相続情報一覧図に書けません。

どちらも、相続人ではないからです。

具体的な氏名や生年月日、死亡年月日を記載せず、「元配偶者」「男」「女」であれば書き直しにはなりません。

②相続関係説明図には死亡した配偶者を記載する

相続関係説明図は、被相続人を中心にして、どういう続柄の人が相続人であるのかを一目で分かるように、家系図のように取りまとめた書類のことです。

単に説明のための書類なので、実情を自由に記載することができます。

相続関係説明図には、死亡した配偶者や離婚した配偶者も記載します。

7相続関係説明図と法定相続情報一覧図の作成を司法書士に依頼するメリット

相続関係説明図は比較的自由に相続に関係する事項を記入することができます。

手続先の人が見やすいものを作る必要があります。

法定相続情報一覧図は、法務局が確認して認証文を入れてもらうものです。

法定相続情報一覧図は、書き方に細かいルールがあります。

これらの違いを理解して、ポイントを押さえて作成する必要があります。

前提として、相続人確定のための戸籍収集や遺産分割協議書の作成もあります。

このような戸籍等の取り寄せも含め、手続をおまかせいただけます。

お仕事や家事でお忙しい方や高齢、療養中などで手続が難しい方は、手続をまるっと依頼できます。

ご家族にお世話が必要な方がいて、お側を離れられない方からのご相談もお受けしております。

間違いのない相続関係説明図の作成や法定相続情報一覧図の作成を考えている方は、司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。

分籍届を出しても相続人

2024-09-25

1分籍しても相続人

①相続人になる人は法律で決まっている

相続が発生したら、親族のうち一定の範囲の人が相続人になります。

だれが相続人になるかについては、民法で決められています。

相続人になる人は、次のとおりです。

(2)~(4)の場合、先順位の人がいる場合、後順位の人は相続人になれません。

(1)配偶者は必ず相続人になる

(2)被相続人に子どもがいる場合、子ども

(3)被相続人に子どもがいない場合、親などの直系尊属

(4)被相続人に子どもがいない場合で、かつ、親などの直系尊属が被相続人より先に死亡している場合、兄弟姉妹

②戸籍は身分関係の帳簿

戸籍とは、その人の身分関係の事項が記録されている帳簿です。

多くの方にとって、相続人がだれなのかは当たり前のことと軽く考えがちです。

家族以外の第三者に対しては、相続人がだれなのか客観的に証明する必要があります。

客観的に証明するとは、具体的には、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本を全部揃えることです。

戸籍には、その人に身分関係の事項がすべて記録されているからです。

戸籍謄本は、戸籍の内容の証明書です。

結婚や離婚、子どもや養子の存在を家族には内緒にしている人がいます。

戸籍には、すべて記録されています。

戸籍が新しくなったときに、書き写される項目と書き写されない項目があります。

書き写されない項目を確認するために、出生から死亡までの連続した戸籍謄本を全部揃える必要があるのです。

出生から死亡までの連続した戸籍謄本を全部揃えると、すべて明るみに出ます。

戸籍は、身分関係の帳簿です。

③絶縁しても相続人

だれが相続人になるかについては、民法で決められています。

相続人になるかどうかは、法律の定めで決まります。

被相続人と絶縁していても、相続人になるかどうかとは関係ありません。

絶縁していたとか、絶交していたとかいう事情は、法律の定めとは無関係です。

何十年も音信不通でも、親子は親子です。

何十年も会っていなくても、兄弟姉妹は兄弟姉妹です。

子どもが重大な親不孝をした場合に、親が子どもを勘当にすることがあります。

子どもを勘当にして、絶縁状を作ることがあります。

絶縁状に、法的な効力はありません。

家の敷居をまたぐなとか、お葬式に呼ばないなども法的効力はありません。

絶縁しても、相続人になります。

④行方不明になっても相続人

被相続人や被相続人の家族と連絡を取り合わないまま、長期間経過することがあります。

絶縁して音信不通になったまま、転居することがあるでしょう。

被相続人や被相続人の家族のだれもが、連絡を取れなくなることがあります。

どこで何をしているのか、だれも知らないまま行方不明になるかもしれません。

行方不明になっても、相続人は相続人です。

被相続人と音信不通だったからとか、お葬式にも来ていないのにという気持ちはあるでしょう。

行方不明になっても、相続人として除外することはできません。

行方不明になっても、相続人になります。

2分籍で親子関係はなくならない

①分籍とは在籍の戸籍から単独の戸籍を編成すること

戸籍とは、その人の身分関係を記録する帳簿です。

戸籍には、出生や死亡、婚姻や離婚、養子縁組や離縁と言った身分関係の事項が記録されています。

現在は、夫婦と子どもで戸籍が編製されています。

子どもが婚姻をしたときに、親の戸籍から抜けて新戸籍が編製されます。

子どもは婚姻をしなくても、親の戸籍を抜けて新戸籍を編成してもらうことができます。

分籍とは、親の戸籍を抜けて単独の戸籍を編製してもらうことです。

②分籍で親と別の戸籍になる

戸籍とは、その人の身分関係を記録する帳簿です。

分籍とは、身分関係を記録する帳簿を分けただけです。

帳簿を別にしても、親子関係がなくなることはありません。

子どもが婚姻をしたとき、親の戸籍から抜けて新戸籍が編製されます。

子どもが婚姻をしても、親子関係がなくなることはありません。

新戸籍が編製されても、帳簿が別になっただけだからです。

子どもが分籍をしても、親子関係がなくなることはありません。

新戸籍が編製されても、帳簿が別になっただけだからです。

分籍をしても、親子関係がなくなることはありません。

③分籍で親の戸籍から除籍されたときの記載例

分籍を希望する場合、分籍届を提出します。

分籍届が受理された場合、現在の戸籍から除籍されます。

分籍をした人の名前の横に、除籍と記載されます。

戸籍の記載例

身分事項 分籍

【分籍日】令和〇年〇月〇日

【送付を受けた日】令和〇年〇月〇日

【受理者】〇〇県〇〇市長

【新本籍】○○県○○市○○区○○町○丁目○番地 筆頭者 ○○○○

④分籍で新戸籍が作られたときの記載例

分籍届が受理された場合、新しい戸籍が編製されます。

戸籍の記載例

身分事項 分籍

【分籍日】令和〇年〇月〇日

【従前戸籍】○○県○○市○○区○○町○丁目○番地 筆頭者 ○○○○

【送付を受けた日】令和〇年〇月〇日

【受理者】〇〇県〇〇市長

分籍後に、婚姻や離婚、養子縁組や離縁と言った身分関係の事項が発生することがあります。

戸籍に記載すべき事項があった場合、新しい戸籍にのみ記載されます。

3相続したくないなら相続放棄

①相続放棄は家庭裁判所に手続

相続が発生したら、相続人は相続を単純承認するか相続放棄をするか選択することができます。

相続放棄をする場合、家庭裁判所に対して相続放棄を希望する申立てをします。

相続放棄ができる期間には、3か月の期限があります。

相続があったことを知ってから3か月以内の期間のことを熟慮期間と言います。

「相続があったことを知ってから」とは、被相続人が死亡して相続が発生し、その人が相続人であることを知って、かつ、相続財産を相続することを知ってから、と考えられています。

家庭裁判所で認められなければ、相続放棄の効果はありません。

相続放棄は、家庭裁判所の手続だからです。

②分籍しても相続放棄の効果はない

分籍とは、在籍の戸籍から単独の戸籍を編成することです。

戸籍は、単に、その人の身分関係を記録する帳簿に過ぎません。

分籍をしたら、帳簿が別になるだけです。

帳簿を別にしても、親子関係がなくなることはありません。

分籍しても、親子の縁が切れることはありません。

被相続人に子どもがいる場合、子どもは相続人になります。

子どもが分籍しても、相続人になります。

子どもが分籍をしても、子どものままだからです。

子どもが分籍をしても、相続放棄の効果はありません。

相続放棄は、家庭裁判所の手続だからです。

家庭裁判所で認められなければ、相続放棄の効果はありません。

③相続放棄の期限3か月のスタートは知ってから

だれが相続人になるかについては、民法で決められています。

被相続人に子どもがいる場合、子どもは相続人になります。

子どもと絶縁しても、相続人になります。

子どもが行方不明になっても、相続人になります。

被相続人や被相続人の家族と連絡を取り合っていない場合、死亡後すぐに相続があったことを知ることができないことがあります。

相続放棄ができる期間には、3か月の期限があります。

3か月のスタートは、被相続人が死亡してからではありません。

被相続人が死亡してから3か月以上経過しても、相続放棄が認められることがあります。

相続放棄の期限3か月のスタートは、知ってからだからです。

被相続人が死亡してから長期間経過した後に相続放棄の申立てをする場合、事情を説明するといいでしょう。

家庭裁判所が書類を見るだけでは、いつ相続があったことを知ったか分からないからです。

通常は、詳しい事情を上申書に書いて一緒に提出します。

相続が発生してから3か月以内に届出ができなかったのは止むを得なかったと、家庭裁判所に納得してもらうことがポイントです。

被相続人の家族や市区町村役場などから手紙を受け取って、相続があったことを知るでしょう。

受け取った手紙は、重要です。

相続があったことを知った証拠になるからです。

上申書に手紙を添えて提出すると、説得力が増します。

相続放棄の期限3か月のスタートは、知ってからです。

4相続させたくないなら相続人廃除

①遺言書を作成するだけで遺留分は奪えない

相続人に相続させたくないと考えるとき、遺言書作成が真っ先に思い浮かぶでしょう。

遺言書を作成した場合、原則として、相続財産は遺言書のとおりに分けることができます。

遺言書を作成するだけで、相続人の遺留分を奪うことはできません。

遺留分とは、相続人に認められた最低限の権利です。

遺留分は、兄弟姉妹以外の相続人に認められます。

被相続人に子どもがいる場合、子どもは相続人になります。

子どもが分籍しても、相続人になります。

子どもは、遺留分権利者です。

遺言書を作成するだけで、子どもの遺留分を奪うことはできません。

②相続人廃除は家庭裁判所の判断

相続人廃除とは、被相続人の判断で相続人の資格を奪う制度です。

相続させたくないなら、相続人廃除を申し立てることができます。

相続人廃除は家庭裁判所に申立てをして、家庭裁判所が判断します。

家庭裁判所は、相続人廃除について非常に慎重に審査します。

単なる親子げんかで家に寄り付かなかったとか、親の言いなりにならなかったなどの軽い理由では認められません。

暴力をふるうなども一時の激情から出たものである場合、認められません。

家庭裁判所に廃除を認めてもらうためには、廃除の根拠になる客観的証拠が不可欠です。

相続人廃除は、非常にハードルが高い手続です。

③廃除されると代襲相続

相続人が廃除された場合、相続人の資格が奪われます。

廃除された相続人に子どもがいる場合、代襲相続が発生します。

廃除された相続人の子どもが代襲相続人になります。

代襲相続人に相続させたくない場合、あらためて代襲相続人の廃除が必要です。

廃除された相続人の子どもだからなど理不尽な理由で、代襲相続人の廃除は認められません。

5特別養子になると親子関係がなくなる

特別養子では、養子縁組をした後、血縁関係のある実親との親子関係がなくなります。

特別養子による養子縁組は、親子の縁を切る重大な決定です。

厳格な要件が満たされたときだけ、特別養子が認められます。

実の父母による著しい虐待がある場合やその他特別の事情がある場合で、かつ、子の利益のため特に必要があるときです。

特別養子になると、実親との親子関係がなくなります。

特別養子は養親を相続しますが、実親は相続しません。

特別養子になると実親との親子関係がなくなります。

父親から認知を受けないまま特別養子になった場合、実の父親はもはや認知をすることができなくなります。

配偶者の嫡出子と特別養子縁組をする場合、特別養子は実親である養親の配偶者との親子関係が存続します。

実親である養親の配偶者が死亡した場合、特別養子は相続人になります。

実親である養親の配偶者が死亡した後、実親である養親の配偶者の親が死亡した場合、代襲相続人になります。

6相続人調査を司法書士に依頼するメリット

本籍地の変更や国による戸籍の作り直し(改製)で多くの方は、何通もの戸籍を渡り歩いています。

古い戸籍は現在と形式が違っていて読みにくいものです。

手書きの達筆な崩し字で書いてあると、分かりにくいでしょう。

慣れないと、戸籍集めはタイヘンです。

本籍地を何度も変更している方や結婚、離婚、養子縁組、離縁を何度もしている方は、戸籍をたくさん渡り歩いているので、膨大な手間と時間がかかります。

戸籍には被相続人の結婚や離婚、子どもや養子の存在といった身分関係がすべて記録されています。

家族の方が知らない相続人が明らかになることがあります。

相続人を確定させるために戸籍を集めるだけでも、知識のない一般の人にはタイヘンな作業です。

家族の方が知らない相続人が明らかになると、精神的な負担はさらに大きいものになります。

相続手続のうち、専門家に任せられるものは任せてしまうといいでしょう。

家族の事務負担を軽減することができます。

戸籍謄本や住民票の取り寄せも、司法書士は代行します。

相続人調査でお困りの方は、司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。

相続放棄の管轄は被相続人の最後の住所地の家庭裁判所

2024-09-23

1相続放棄でプラスの財産もマイナスの財産も相続しない

相続が発生したら、被相続人の財産は相続人が相続します。

相続人が相続する財産が相続財産です。

相続財産というと、プラスの財産だけ注目するかもしれません。

プラスの財産だけでなく、マイナスの財産も相続財産です。

被相続人の一切の財産を受け継がないことを相続の放棄といいます。

相続放棄をすると、はじめから相続人でなくなります。

相続財産は、プラスの財産もマイナスの財産も引き継ぐことがなくなります。

相続の放棄は、被相続人ごとに判断できます。

例えば、父について相続放棄をするが、母について単純承認するでも差し支えありません。

相続の放棄は、相続人ごとに判断します。

例えば、父の相続人ついて長男は相続放棄するが、長女は単純承認するでも差し支えありません。

2相続放棄の管轄は被相続人の最後の住所地の家庭裁判所

①相続放棄は相続が開始した地を管轄する家庭裁判所へ申立て

家庭裁判所に対して、必要な書類を添えて相続放棄を希望する申立てをします。

申立てをする先の家庭裁判所は、相続が開始した地を管轄する家庭裁判所です。

相続が開始した地とは、被相続人の最後の住所地です。

相続放棄を希望する人の住所地の家庭裁判所ではありません。

例えば、被相続人の最後の住所地が名古屋市の場合、名古屋家庭裁判所に相続放棄の手続をします。

相続人の住所が東京であっても大阪であっても、名古屋家庭裁判所が管轄するからです。

被相続人の最後の住所地が分かれば、裁判所のホームページで管轄する家庭裁判所を調べることができます。

②相続放棄は家庭裁判所へ手続

相続放棄を希望する場合、家庭裁判所に対して手続する必要があります。

相続放棄をしたと言いながら、家庭裁判所に手続をしていないケースがあります。

相続が発生した場合、被相続人の財産は相続人全員の共有財産になります。

相続財産の分け方は、相続人全員の合意で決める必要があります。

相続財産の分け方を決める話し合いにおいて、相続財産を受け取らないと宣言することがあります。

相続人全員の話し合いで財産を受け取らないと合意しても、相続放棄ではありません。

相続放棄をすると、プラスの財産もマイナスの財産も引き継ぐことがなくなります。

家庭裁判所で相続放棄が認められた場合、プラスの財産もマイナスの財産も引き継ぐことはありません。

家庭裁判所に対して手続をしていない場合、相続放棄とは認められません。

3被相続人の最後の住所の調べ方

①被相続人の除票を取得する

被相続人と連絡を取り合っていた場合、相続が発生した後の早い時期に相続手続をすることができます。

相続放棄は、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に対して手続をします。

被相続人の最後の住所地は、被相続人の除票を取得すると判明します。

被相続人の除票は、住民票を置いていた市区町村役場に請求します。

死亡した人について、広域交付住民票を取得することはできません。

広域交付住民票は、住民票を置いていた市区町村役場以外の市区町村役場で住民票を取得することができる制度です。

例えば、名古屋市に住民票を置いている人が名古屋市以外の市区町村役場で住民票を取得することができます。

名古屋市以外に住民票を置いている人が名古屋市の各区役所で住民票を取得することができます。

住民票の広域交付制度で、住民票の除票を発行してもらうことはできません。

住民票を置いていた市区町村役場で除票を取得すれば、最後の住所地は判明します。

②被相続人の戸籍の附票を取得する

生前に連絡をとりあっていなかった場合、相続が発生した後、長期間経過してから相続人であることを知ることがあります。

例えば、父母が離婚した後に一度も会っていない親が死亡した場合、相続人になります。

子どもがいない伯叔父や伯叔母が死亡した場合、相続人になります。

被相続人や被相続人の家族と音信不通であった場合、被相続人に関する情報が全く分からないかもしれません。

被相続人に関する情報が全く分からない場合、被相続人の最後の住所地を探さなければなりません。

被相続人の最後の住所地が分からない場合、戸籍の附票で調べることができます。

被相続人の戸籍の附票は、被相続人の本籍地の市区町村役場に請求します。

被相続人に関する情報が全く分からない場合、まず自分の本籍地の市区町村役場に自分の戸籍謄本を請求します。

自分の本籍地が分からない場合、自分の住民票のある市区町村役場に自分の住民票を請求します。

自分の住民票を請求するときに、本籍地の記載のある住民票と指定します。

自分の住民票に自分の本籍地が記載されているから、自分の本籍地は判明します。

自分の戸籍謄本を取得したら、順番に被相続人の戸籍までたどっていきます。

被相続人の戸籍までたどることができたら、被相続人の死亡時の戸籍までたどり着きます。

死亡時の戸籍までたどり着いた場合、戸籍の附票を取得することができます。

被相続人の戸籍の附票を取得すれば、最後の住所地は判明します。

③住民票が消除されている人がいる

住民票や戸籍の附票に、最後の住所地が記載されていないことがあります。

住民票を置いているのに長期間更地である場合、居住していないことは明らかです。

市区町村役場から郵便が届かないまま長期間行方不明になっている場合、調査のうえ市区町村役場が住民票を消除するからです。

住民票が消除されると、最後の住所地が判明しません。

④住民票や戸籍の附票は保存期間経過で廃棄される

住民票や戸籍の附票は該当の市区町村役場に請求すれば、取得することができます。

住民票や戸籍の附票は、永年保管ではありません。

今でこそ保存期間は150年ですが、令和元年までは5年でした。

市区町村役場は、保存期間を過ぎた書類を順に廃棄します。

相続が発生した後、長期間経過してから相続人であることを知ることがあります。

住民票や戸籍の附票は保存期間経過した場合、取得することができなくなります。

住民票や戸籍の附票が廃棄済になると、最後の住所地が判明しません。

4死亡届の記載事項証明書で住所を調べる

①死亡届の記載事項証明書に死亡者の住所が記載されている

相続放棄の手続をする場合、被相続人の除票や戸籍の附票を提出するのが原則です。

被相続人の最後の住所地が判明しない場合、家庭裁判所の管轄が定まりません。

被相続人の最後の住所地が分かる公的書類を探す必要があります。

人が死亡した場合、市区町村役場に死亡届を提出します。

死亡届の記載事項証明書とは、市区町村役場に提出した死亡届の写しです。

死亡届には、死亡者の氏名、本籍地の他に住所を記載します。

死亡届の記載事項証明書を取得した場合、被相続人の最後の住所地を確認することができます。

②死亡届の提出先

死亡届の提出先になる市区町村役場は、次のとおりです。

(1)死亡者の死亡地

(2)死亡者の本籍地

(3)届出人の住所地

死亡届が提出された後、一定期間は受け付けた市区町村役場で保管されます。

受け付けた市区町村役場で保管されている期間中は、受け付けた市区町村役場に対して死亡届の記載事項証明書を請求します。

③死亡届の記載事項証明書を請求できる人

死亡届は、原則として、非公開です。

利害関係がある人で、かつ、特別な事由がある場合のみ、死亡届記載事項証明書を請求することができます。

死亡届の記載事項証明書を請求することができる人は、次の人です。

(1)配偶者

(2)6親等内の血族

(3)3親等内の姻族

上記(1)~(3)の人であって、かつ、特別な事由がある人が死亡届記載事項証明書を請求することができます。

④死亡届の記載事項証明書の請求先

死亡届が提出された後、一定期間後、死亡した人の本籍地を管轄する法務局に送られました。

令和6年2月までに市区町村役場で受理された死亡届は、一定期間経過後、法務局で保管されます。

法務局に送られた後は、管轄の法務局に対して死亡届の記載事項証明書を請求します。

法務局は、市区町村役場から送付を受けた年度の翌年から27年間保管しています。

令和6年3月以降に市区町村役場で受理された死亡届は、市区町村役場で保管されます。

市区町村役場での保管期間は、次のとおりです。

・電子化された届出書は10年

・紙で保管されている届出書5年

市区町村役場で保管されている期間中は、受け付けた市区町村役場に対して死亡届の記載事項証明書を請求します。

住民票や戸籍の附票が廃棄された後でも、死亡届の記載事項証明書を取得できることがあります。

死亡届の記載事項証明書を取得すれば、最後の住所地は判明します。

5死亡者所有の不動産の登記簿謄本で調べる

空き家等の登記名義人が死亡した場合、現在の管理者が適切に管理していないことがあります。

適切な管理を促すため、市区町村役場は相続人に通知を送ります。

市区町村役場から届いた通知を見て相続の発生を知ることがあります。

ほとんど面識のない遠縁の親族の相続人である場合、被相続人に関する情報が全く分からないでしょう。

適切な管理を促すために市区町村役場が連絡する場合、長期間空き家等になっているケースでしょう。

多くの場合、住民票や戸籍の附票は保存期間経過で廃棄されています。

被相続人が不動産を所有していた場合、登記がされているのが一般的です。

所有権登記がされている場合、所有者の住所が登記されています。

不動産の登記簿謄本を取得すれば、最後の住所地は判明します。

6住所の手がかりが何もないときは東京家庭裁判所

被相続人が死亡してから長期間経過していた場合、被相続人に関する情報を全く取得することができないことがあります。

被相続人の住所に関する情報が全くない場合、家庭裁判所の管轄が定まらなくなります。

このような場合、法律の定めで事件にかかる財産の所在地の管轄の家庭裁判所が管轄します。

さらに、財産に関する手がかりもないことがあります。

最後の住所地について手がかりになる資料が全くない場合、東京都千代田区として扱われます。

東京都千代田区は、東京家庭裁判所が管轄します。

7相続放棄を司法書士に依頼するメリット

相続放棄は、その相続でチャンスは1回限りです。

家庭裁判所に認められない場合、即時抗告という手続を取ることはできます。

高等裁判所の手続で、2週間以内に申立てが必要になります。

家庭裁判所で認めてもらえなかった場合、即時抗告で相続放棄を認めてもらえるのは、ごく例外的な場合に限られます。

一挙に、ハードルが上がると言ってよいでしょう。

相続が発生してから3か月以内に届出ができなかったのは止むを得なかったと家庭裁判所に納得してもらって、はじめて、家庭裁判所は相続放棄を認めてくれます。

通常は家庭裁判所に対して、上申書や事情説明書という書類を添えて、説得することになります。

家庭裁判所が知りたいことを無視した作文やダラダラとした作文では認めてもらうことは難しいでしょう。

司法書士であれば、家庭裁判所に認めてもらえるポイントを承知しています。

認めてもらえやすい書類を作成することができます。

通常の相続放棄と同様に、戸籍謄本や住民票が必要になります。

仕事や家事、通院などで忙しい人には、平日の昼間に市区町村役場に出向いて準備するのは負担が大きいものです。

戸籍謄本や住民票は、郵便による取り寄せができます。

書類の不備などによる問い合わせは、市区町村役場の業務時間中の対応が必要になります。

事務負担は、軽いとは言えません。

戸籍謄本や住民票の取り寄せは、司法書士におまかせすることができます。

3か月の期限が差し迫っている方や期限が過ぎてしまっている方は、すみやかに司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。

遺贈による所有権移転登記を単独申請

2024-09-22

1遺言書を作成して遺贈

①相続人になる人は法律で決まっている

相続が発生したら、親族のうち一定の範囲の人が相続人になります。

だれが相続人になるかについては、民法で決められています。

相続人になる人は、次のとおりです。

(2)~(4)の場合、先順位の人がいる場合、後順位の人は相続人になれません。

(1)配偶者は必ず相続人になる

(2)被相続人に子どもがいる場合、子ども

(3)被相続人に子どもがいない場合、親などの直系尊属

(4)被相続人に子どもがいない場合で、かつ、親などの直系尊属が被相続人より先に死亡している場合、兄弟姉妹

②相続人にも相続人以外にも遺贈ができる

自分が生きている間、自分の財産は自由に処分することができます。

遺言書を作成して自分が死亡した後、自分の財産をだれに引き継いでもらうのか自由に決めることができます。

遺贈とは、遺言書で相続人や相続人以外の人に財産を引き継いでもらうことです。

相続人になる人は、法律で決まっています。

相続できるのは、法律で決められた相続人のみです。

疎遠になった相続人より、お世話になった人に財産を引き継いでもらいたいことがあるでしょう。

相続人以外の人は、相続できません。

相続人は、相続することができるし遺贈を受けることができます。

遺贈を受ける人を受遺者と言います。

相続人以外の人は、相続することはできないけど遺贈を受けることができます。

遺言書を作成すれば、相続人にも相続人以外の人にも遺贈をすることができます。

2相続人に遺贈するとき単独申請ができる

①令和5年4月1日以降単独申請ができる

相続人は、相続することができるし遺贈を受けることができます。

遺言書に「相続させる」と書いていれば、相続で手続をします。

遺言書に「遺贈する」と書いていれば、遺贈で手続をします。

相続人が不動産を相続する場合、相続登記をします。

相続登記は、相続人の単独申請です。

相続人が不動産の遺贈を受ける場合、遺贈による所有権移転登記をします。

遺贈による所有権移転登記は、権利者と義務者の共同申請です。

令和5年4月1日に、法改正がありました。

相続人が不動産の遺贈を受ける場合、権利者の単独申請ができます。

令和5年4月1日以降に申請する登記は、単独申請が認められます。

令和5年4月1日以前に相続が発生していても、単独申請が認められます。

相続人に遺贈する場合、令和5年4月1日以降は単独申請ができます。

②相続人に遺贈で単独申請するときの登記申請書

記載例

登記の目的 所有権移転

原因 令和〇年〇月〇日遺贈

権利者(申請人) 〇〇市〇〇区〇〇町〇丁目〇番〇号

           〇〇〇〇 印

義務者 〇〇市〇〇区〇〇町〇丁目〇番〇号

      〇〇〇〇

添付情報 登記原因証明情報

       住所証明情報

令和〇年〇月〇日申請 〇〇法務局

課税価額 金〇〇〇〇万円

登録免許税 金〇〇〇〇円

③相続人に遺贈するとき権利証と印鑑証明書は不要

相続人に遺贈する場合、単独申請ができます。

義務者の関与は、不要です。

所有権移転登記をする場合、義務者の意思確認のため権利証と印鑑証明書を提出します。

相続人に遺贈する場合、権利証と印鑑証明書は不要です。

④相続人であることは戸籍謄本で証明する

遺贈による所有権移転登記をする場合、権利者と義務者の共同申請が原則です。

相続人に対する遺贈の場合のみ、単独申請が認められます。

単独申請をする場合、受遺者が相続人であることを証明する必要があります。

相続人であることは、戸籍謄本で証明します。

⑤相続人に遺贈するとき登録免許税は1000分の4

所有権移転登記を申請する場合、登録免許税を納める必要があります。

登録免許税は、固定資産税評価額に対して税率をかけて計算します。

遺贈による所有権移転登記をする場合、登録免許税の税率は1000分の20です。

相続人に遺贈である場合、登録免許税の税率は1000分の4に軽減されます。

⑥相続人に遺贈するとき住所変更は不要

不動産を取得したら、登記をするでしょう。

登記簿には、不動産を取得したときの住所が記録されています。

遺贈の登記をする場合、遺言者の住民票の除票を提出します。

遺言者の住民票の除票には、死亡時の住所が記録されています。

登記簿を確認すると、登記簿上の住所と死亡時の住所が異なることがあります。

住民票を移しても、登記簿上の住所は自動で変更されないからです。

登記簿上の住所と死亡時の住所が異なる場合、別人と判断されます。

別人と判断されたら、登記をすることはできません。

相続人に対する遺贈の登記をする場合、前提として住所変更登記をする必要はありません。

登記簿上の住所と死亡時の住所が異なるまま、遺贈の登記をすることができます。

住所変更登記をしなくていいけど、住所の移り変わりを証明する必要があります。

住所の移り変わりは、住民票や戸籍の附票で証明します。

3受遺者を遺言執行者に指名して単独申請

①遺言執行者は遺言書で指名できる

遺贈とは、遺言書で相続人や相続人以外の人に財産を引き継いでもらうことです。

遺言書を作成するだけでは、意味がありません。

遺言書の内容は、自動で実現するわけではないからです。

遺言執行者は、遺言書の内容を実現する人です。

遺言書の内容を実現するため、必要な権限が与えられます。

遺言者は、遺言執行者を自由に選任することができます。

遺言執行者は、遺言書で指名することができます。

②受遺者を遺言執行者に指名できる

遺言執行者は、遺言者が自由に指名することができます。

遺言執行者になるのに、特別な資格はありません。

未成年者と破産者が遺言執行者になれないだけです。

遺言執行者として、相続人や受遺者を指名することができます。

不動産を遺贈をする場合、遺贈による所有権移転登記をします。

遺贈による所有権移転登記は、権利者と義務者が共同で申請します。

権利者は、受遺者です。

義務者は、遺言執行者です。

受遺者が遺言執行者である場合、他の人の協力が不要です。

受遺者が遺言執行者である場合、事実上の単独申請になります。

③受遺者が遺言執行者のときの登記申請書

記載例

登記の目的 所有権移転

原因 令和〇年〇月〇日遺贈

権利者 〇〇市〇〇区〇〇町〇丁目〇番〇号

        〇〇〇〇 印

義務者 〇〇市〇〇区〇〇町〇丁目〇番〇号

       亡〇〇〇〇

上記遺言執行者 〇〇市〇〇区〇〇町〇丁目〇番〇号

              〇〇〇〇 印

添付情報 登記原因証明情報

       登記識別情報

       印鑑証明書

       住所証明情報

令和〇年〇月〇日申請 〇〇法務局

課税価額 金〇〇〇〇万円

登録免許税 金〇〇〇〇円

④権利証がないときは遺言執行者の本人確認

相続人に遺贈するとき、権利証と印鑑証明書は不要です。

相続人以外の人に遺贈するとき、権利証と印鑑証明書は必要です。

権利証は、被相続人が不動産を取得したときの権利証です。

印鑑証明書は、遺言執行者の印鑑証明書です。

被相続人が不動産を取得したときの権利証は、被相続人の家族が保管しているでしょう。

権利証の保管場所を家族と共有していないかもしれません。

法務局に権利証を提出できない場合、司法書士が本人確認をします。

相続人以外の人に遺贈するとき、遺言執行者の本人確認をします。

⑤遺言執行者が住所変更登記

登記簿を確認すると、登記簿上の住所と死亡時の住所が異なることがあります。

住民票を移しても、登記簿上の住所は自動で変更されないからです。

登記簿上の住所と死亡時の住所が異なる場合、別人と判断されます。

別人と判断されたら、登記をすることはできません。

相続人に対する遺贈の登記をする場合、前提として住所変更登記をする必要はありません。

相続人以外の人に対する遺贈の登記をする場合、前提として住所変更登記をする必要があります。

遺言執行者は、遺言書の内容を実現する人です。

遺言書の内容を実現するため、必要な権限が与えられます。

登記簿上の住所と死亡時の住所が異なる場合、そのままでは遺言書の内容を実現できません。

遺言執行者は、被相続人の住所変更登記をすることができます。

遺言書の内容を実現するため、住所変更登記をする必要があるからです。

登記簿上の住所と死亡時の住所が異なる場合、遺言執行者が住所変更登記を申請します。

4遺言執行者がいないときは相続人全員の協力

①遺言執行者がいなくても遺言書は有効

遺言執行者は、遺言書の内容を実現する人です。

遺言執行者は、遺言書の不可欠な内容ではありません。

遺言書の有効無効と遺言執行者の指名の有無は、無関係です。

遺言執行者が指名されていても指名されていなくても、有効な遺言書は有効です。

遺言執行者が指名されていても指名されていなくても、無効な遺言書は無効です。

遺言執行者がいなくても、遺言書は有効です。

②相続人全員の協力で所有権移転登記

遺言執行者がいなくても、遺言書は有効です。

遺言書で遺言執行者を指名しても、遺言執行者に就任する義務はありません。

遺言執行者の就任は、ご辞退することができます。

遺言執行者がいない場合、遺言書の内容は相続人全員の協力で実現させます。

遺言書の内容に相続人全員が納得している場合、相続人全員の協力が得られるでしょう。

遺言書の内容に不満がある相続人は、協力してくれないかもしれません。

相続人全員の協力が得られない場合、相続手続が進まなくなります。

遺言執行者がいない場合、相続人全員の協力が必要です。

③遺言執行者は家庭裁判所で選任してもらえる

遺言執行者がいない場合、家庭裁判所に対して遺言執行者選任の申立てをすることができます。

家庭裁判所に申立てをして、遺言執行者を選任してもらうことができます。

遺言執行者がいない場合、遺言書の内容は相続人全員の協力で実現させます。

相続人の中には、音信不通で協力してくれないことがあります。

行方不明で連絡が取れないこともあるでしょう。

家庭裁判所に遺言執行者を選任してもらった方がラクに手続を進めることができます。

遺言執行者は、家庭裁判所で選任してもらうことができます。

5不動産の名義変更を司法書士に依頼するメリット

大切な家族を失ったら、大きな悲しみに包まれます。

やらなければいけないと分かっていても、気力がわかない方も多いものです。

一般的に不動産は、家族にとって重要な財産でしょう。

登記手続は、一般の方から見ると些細なことと思えるようなことでやり直しになります。

住所変更登記が必要になるか必要にならないかなども、そのひとつでしょう。

相続手続は、一生のうち何度も経験するものではありません。

だれにとっても、不慣れで手際よくできるものではありません。

相続手続で使われる言葉は、法律用語です。

一般の方にとって、日常で聞き慣れないものでしょう。

司法書士は、登記の専門家です。

相続手続も、登記手続も、丸ごとお任せいただけます。

相続手続でへとへとになる前に、司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。

遺贈する不動産に住所氏名変更登記

2024-09-22

1遺言書を作成して遺贈

①相続人になる人は法律で決まっている

相続が発生したら、親族のうち一定の範囲の人が相続人になります。

だれが相続人になるかについては、民法で決められています。

相続人になる人は、次のとおりです。

(2)~(4)の場合、先順位の人がいる場合、後順位の人は相続人になれません。

(1)配偶者は必ず相続人になる

(2)被相続人に子どもがいる場合、子ども

(3)被相続人に子どもがいない場合、親などの直系尊属

(4)被相続人に子どもがいない場合で、かつ、親などの直系尊属が被相続人より先に死亡している場合、兄弟姉妹

②相続人にも相続人以外にも遺贈ができる

自分が生きている間、自分の財産は自由に処分することができます。

遺言書を作成して自分が死亡した後、自分の財産をだれに引き継いでもらうのか自由に決めることができます。

遺贈とは、遺言書で相続人や相続人以外の人に財産を引き継いでもらうことです。

相続人になる人は、法律で決まっています。

相続できるのは、法律で決められた相続人のみです。

疎遠になった相続人より、お世話になった人に財産を引き継いでもらいたいことがあるでしょう。

相続人以外の人は、相続できません。

相続人は、相続することができるし遺贈を受けることができます。

相続人以外の人は、相続することはできないけど遺贈を受けることができます。

遺言書を作成すれば、相続人にも相続人以外の人にも遺贈をすることができます。

2住所や氏名を変更しても登記は変更されない

①登記の住所氏名は自動で変更されない

不動産を所有している人は、登記をしているでしょう。

登記簿には、所有者の住所や氏名などが記録されています。

不動産を所有した後で、引っ越しをすることがあります。

引っ越しをしたら、市区町村役場などに手続をします。

住民票を移しても、市区町村役場から法務局へ連絡されません。

結婚・離婚や養子縁組・離縁で氏名を変更しても、市区町村役場から法務局へ連絡されません。

市区町村役場に手続をしても、登記の記録は自動で変更されることはありません。

所有者の住所が変更になった場合、住所変更登記をする必要があります。

所有者の氏名が変更になった場合、氏名変更登記をする必要があります。

法務局に住所氏名変更登記を申請していない場合、登記簿上は旧住所旧氏名のままです。

②相続登記の準備で登記記録の確認

登記申請を準備する場合、現在の登記記録を確認します。

現在の登記記録を確認しないと、どのような準備をすればいいか分からないからです。

登記記録を確認する方法は、2つあります。

法務局で登記簿謄本を取得する方法と登記情報を取得する方法です。

内容は、どちらも同じです。

近くの法務局で日本中どこの不動産の登記簿謄本であっても、取得することができます。

3相続人に遺贈するとき住所氏名変更登記は不要

①遺言書に遺贈とあれば遺贈で手続

相続人は、相続することができるし遺贈を受けることができます。

遺言書に「相続させる」と書いてある場合、相続で手続をします。

遺言書に「遺贈する」と書いてある場合、遺贈で手続をします。

②遺贈の登記で遺言書の住民票を提出

不動産を遺贈する場合、不動産の名義変更をします。

遺贈の登記をする場合、遺言者の住民票の除票を提出します。

遺言者の住民票の除票には、死亡時の住所が記録されています。

登記簿を確認すると、登記簿上の住所と死亡時の住所が異なることがあります。

住民票を移しても、登記簿上の住所は自動で変更されないからです。

登記簿上の住所と死亡時の住所が異なる場合、別人と判断されます。

別人と判断されたら、登記をすることはできません。

遺贈の登記で、遺言書の住民票を提出します。

③住所氏名変更登記をせずに遺贈の登記ができる

相続人に対する遺贈の登記をする場合、前提として住所氏名変更登記は不要です。

登記簿上の住所氏名と死亡時の住所氏名が異なるまま、遺贈の登記をすることができます。

④住所氏名の移り変わりを証明する書類は必要

登記簿上の住所氏名と死亡時の住所氏名が異なる場合、別人と判断されます。

相続人に対する遺贈の登記をする場合、前提として住所変更登記は不要です。

住所氏名変更登記をしなくても、住所氏名の移り変わりを証明する必要があります。

住所氏名の移り変わりが証明できないと、別人と判断されるからです。

別人と判断されたら、登記をすることはできません。

住所氏名変更登記は不要ですが、住所氏名の移り変わりを証明する必要があります。

⑤住所氏名の移り変わりを証明する書類に保管期限

住所の移り変わりを証明するために、住民票を提出することができます。

住民票には、死亡時の住所だけでなく前住所が記載されているからです。

登記簿上の住所が前住所地より以前の住所地であることがあります。

住所の移り変わりを証明するために、戸籍の附票を提出することができます。

戸籍の附票には、その戸籍が作られた以降の住所の移り変わりが記録されています。

住民票と戸籍の附票は、永年保管ではありません。

保存期限が過ぎたものは、順次廃棄されます。

保管期限は、現在は150年です。

令和元年6月20日までは、たったの5年でした。

保存期限経過によって廃棄されてしまった後は、取得することはできません。

住民票や戸籍の附票を取得できなくなると、住所の移り変わりを証明することができなくなります。

⑥住所氏名の移り変わりを証明できないときの対処法

住所氏名の移り変わりを証明できないときは、次の対処法があります。

(1)権利証を提出する

権利証は、不動産の所有者が大切に保管しています。

権利証を提出した場合、所有者であることを証明できたと言えます。

(2)不在籍・不在住証明書を提出する

不在籍証明書とは、申請があった本籍・氏名に該当する戸籍がないことを証明する書類です。

不在住証明書とは、申請があった住所・氏名に該当する住民票がないことを証明する書類です。

登記上の住所・氏名に該当する住民票と戸籍がないことが証明されます。

(3)固定資産税の納税証明書を提出する

固定資産税は、固定資産を保有している人に課される税金です。

不動産の所有者であれば、固定資産税を納めているでしょう。

固定資産税を納めているのであれば、所有者である可能性が高いと言えます。

(4)相続人全員の印鑑証明書付き上申書を提出する

上申書とは、「不動産の所有者は被相続人に間違いありません」という法務局宛てのお願いです。

相続人全員が実印を押して、印鑑証明書を添付します。

上申書には相続人が実印で押印し、相続人の印鑑証明書を添付する必要があります。

住所の移り変わりを証明できないときの対処法は、法務局によってまちまちです。

複数の書面を提出するように言われることがあります。

あらかじめ法務局と打合せのうえ、登記申請をするといいでしょう。

4相続人以外に遺贈をするとき住所氏名変更登記が必要

①孫は相続人ではない

家族以外の赤の他人にも、遺贈をすることができます。

相続人は、相続することができるし遺贈を受けることができます。

相続人は相続できるから、遺言書にも相続させると書かれることが多いでしょう。

相続人以外の人は相続できないから、遺贈すると書かれます。

赤の他人という表現は、相続人以外の人を強調する意味です。

被相続人に子どもがいる場合、子どもは相続人になります。

子どもが相続人になる場合、孫は相続人ではありません。

孫は、家族のひとりでしょう。

赤の他人と同様に言うことについて、納得できない気持ちになるかもしれません。

孫は、相続人ではありません。

孫に遺贈することができます。

孫は相続人でないから、相続人以外の人に遺贈する方法で手続をします。

②一部の相続人が住所氏名変更登記

登記簿上の住所氏名と死亡時の住所氏名が異なる場合、別人と判断されます。

相続人に対する遺贈の登記をする場合、前提として住所氏名変更登記は不要です。

相続人以外の人に対する遺贈の登記をする場合、前提として住所氏名変更登記は必要です。

相続人以外の人に対する遺贈の登記をする前提として住所氏名変更登記をする場合、一部の相続人が住所氏名変更登記をすることができます。

住所氏名変更登記は、保存行為だからです。

登記申請は、知識のない人にとって難しいことが多いでしょう。

登記申請を司法書士などの専門家に依頼することができます。

司法書士に依頼する場合、一部の相続人から委任状を出すだけで差し支えありません。

一部の相続人が住所氏名変更登記をすることができます。

③遺言執行者が住所氏名変更登記

遺贈とは、遺言書を作成して財産を引き継いでもらうことです。

遺言書は、作成するだけでは意味がありません。

遺言書の内容は、自動で実現するわけではないないからです。

遺言執行者は、遺言書の内容を実現する人です。

遺言書の内容を実現するため、必要な権限が与えられます。

遺言書で相続人以外の人に遺贈する場合、前提として住所氏名変更登記が必要です。

登記簿上の住所氏名と死亡時の住所氏名が異なる場合、別人と判断されるからです。

遺言書の内容を実現するため、遺言執行者は住所氏名変更登記をすることができます。

登記申請を司法書士などの専門家に依頼する場合、遺言執行者から委任状を出します。

遺言執行者が住所氏名変更登記をすることができます。

④住所氏名の移り変わりを証明できないときは遺言執行者が上申書

住所氏名の移り変わりを証明できないときは、権利証を提出します。

被相続人の権利証を紛失していることは、少なくありません。

法務局宛て上申書を提出する場合、遺言執行者が上申書を提出します。

上申書に添付する印鑑証明書は、遺言執行者の印鑑証明書です。

5相続した不動産に住所氏名変更登記は不要

登記記録上の住所氏名と被相続人の住民票の住所氏名が異なる場合、別人であると判断されます。

登記記録上の住所氏名と被相続人の住民票の住所氏名が異なる場合であっても、相続登記の前提として住所氏名変更登記をする必要はありません。

相続登記では、住所の移り変わりを証明すればよいとされているからです。

遺言執行者がいる場合、遺言執行者が相続登記をすることができます。

6不動産の名義変更を司法書士に依頼するメリット

大切な家族を失ったら、大きな悲しみに包まれます。

やらなければいけないと分かっていても、気力がわかない方も多いです。

不動産は、重要な財産であることも多いものです。

登記手続は一般の方から見ると、些細なことと思えるようなことでやり直しになります。

住所変更登記が必要になるか必要にならないかなども、そのひとつでしょう。

相続手続は、一生のうち何度も経験するものではありません。

だれにとっても不慣れで、手際よくできるものではありません。

相続手続で使われる言葉は、法律用語です。

一般の方にとって、日常で聞き慣れないものでしょう。

司法書士は、登記の専門家です。

相続手続も登記手続も、丸ごとお任せいただけます。

相続手続でへとへとになる前に、司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。

任意後見契約は登記される

2024-09-20

1任意後見契約は公正証書で契約

①信頼できる人と契約する

認知症や精神障害や知的障害などで判断能力が低下すると、物事の良しあしを適切に判断することができなくなります。

記憶があいまいになる人もいるでしょう。

任意後見とは、将来に備えて信頼できる人にサポートを依頼する契約です。

任意後見は、だれと契約するのか本人が自分で決めることができます。

任意後見契約をした場合、物事のメリットデメリットを充分に判断できなくなった後にサポートしてもらいます。

自分の財産管理などを依頼するから、信頼できる人と契約します。

多くの場合、本人の子どもなど近い関係の家族でしょう。

家庭裁判所で成年後見開始の審判をしてもらう場合、成年後見人は家庭裁判所が決めます。

家族が成年後見人に選ばれるのは、20パーセント程度です。

任意後見契約では、本人が選んだ人にサポートを依頼することができます。

②任意後見契約は公正証書で作成

任意後見契約は、判断能力が低下したときにサポートを依頼する契約です。

重要な契約だから、公正証書で契約をしなければなりません。

公正証書は、公証人に作ってもらう文書です。

単なる口約束や個人間の契約書では、効力がありません。

公証人は、法律の専門家です。

法律の専門家が当事者の意思確認をして、公正証書を作成します。

任意後見契約は、公正証書で作成します。

③公証人が法務局に登記嘱託

任意後見契約を締結すると、契約の内容は登記されます。

任意後見契約をしても後見が開始しても、戸籍に記載されません。

仮に戸籍に記載されるとしたら、不安を覚える人がいるでしょう。

戸籍ではなく後見登記簿で管理されています。

任意後見契約をした当事者は、自分で登記申請をする必要はありません。

自動的に、公証人が法務局に登記を嘱託するからです。

④任意後見契約をするだけでは効力がない

任意後見は、将来に備えて信頼できる人にサポートを依頼する契約です。

契約だから、物事のメリットデメリットを充分に判断できるときに締結します。

任意後見契約は、締結するだけでは効力がありません。

任意後見契約をしたときは、物事のメリットデメリットを充分に判断できるはずです。

物事のメリットデメリットを充分に判断できる間、サポートは必要ないでしょう。

物事のメリットデメリットを充分に判断できなくなったら、サポートが必要になります。

サポートが必要ないから、任意後見契約は効力がありません。

任意後見契約をするだけでは、任意後見人として本人を代理することはできません。

2任意後見契約は登記される

①任意後見契約締結後発効前の登記事項

任意後見契約を締結すると、公証人が登記を嘱託します。

任意後見契約を締結した後で発効前の登記事項は、次のとおりです。

(1)公証人の氏名、所属、公正証書の番号、作成年月日

(2)本人の氏名、生年月日、住所、本籍

(3)任意後見受任者の氏名、住所

(4)代理権の範囲

任意後見契約は、締結するだけでは効力がありません。

任意後見契約をするだけでは、任意後見人として本人を代理することはできません。

任意後見契約を締結しただけの状態では、任意後見人ではありません。

任意後見人ではなく、任意後見受任者です。

任意後見受任者とは、任意後見契約が発効したら任意後見人になる人です。

後見登記事項証明書を見ると、任意後見人ではなく任意後見受任者と記載されています。

記載の仕方がちがうから、任意後見人として本人を代理できるのか代理できないのか判断することができます。

②任意後見契約発効後の登記事項

(1)公証人の氏名、所属、公正証書の番号、作成年月日

(2)本人の氏名、生年月日、住所、本籍

(3)任意後見人の氏名、住所

(4)代理権の範囲

(5)任意後見監督人の氏名、住所

任意後見契約が発効したら、任意後見人はサポートを開始します。

任意後見人は、任意後見契約に従って本人を代理することができます。

後見登記事項証明書を見ると、任意後見受任者ではなく任意後見人と記載されています。

記載の仕方がちがうから、任意後見人として本人を代理できるのか代理できないのか判断することができます。

③任意後見監督人選任後に効力発生

任意後見契約は、締結するだけでは効力がありません。

任意後見契約が発効するのは、任意後見監督人が選任された後です。

本人が認知症を発症したら、家庭裁判所に対して任意後見監督人選任の申立てをします。

家庭裁判所が任意後見監督人を選任した後、任意後見契約が発効します。

任意後見契約が発効してから、任意後見人が本人をサポートを開始します。

法定後見では、後見監督人が選任されることも選任されないこともあります。

任意後見では、任意後見監督人は必ず選任されます。

任意後見監督人が選任されないと、任意後見契約が発効しないからです。

任意後見監督人選任後に、任意後見契約の効力が発生します。

④任意後見人の代理権は後見登記事項証明書で証明できる

任意後見契約が発効した後、任意後見人は本人のサポートを開始します。

任意後見契約に従って、本人を代理します。

任意後見契約が発効した後は、本人は判断能力を失っています。

判断能力を失った後だから、本人が委任状などで代理権を証明することはできません。

後見登記事項証明書を取得すると、代理権の範囲が記載されています。

任意後見契約で本人がサポートを依頼した内容は、登記されています。

任意後見人の代理権は、後見登記事項証明書で証明することができます。

3後見登記事項証明書の取得方法

①窓口請求は本局のみ

後見登記事項証明書は、法務局の窓口に出向いて発行請求をすることができます。

東京であれば、東京法務局後見登録課のみです。

東京以外であれば、法務局・地方法務局本局の戸籍課のみです。

例えば、愛知県内には、14か所の法務局があります。

後見登記事項証明書の発行請求ができるのは、名古屋市中区三の丸の名古屋法務局本局だけです。

名古屋市内であっても、熱田出張所や名東出張所で発行請求をすることはできません。

本人や任意後見人の住所・本籍による制限はありません。

住所や本籍がどこにあっても、上記窓口に出向けば手続できます。

後見登記事項証明書の窓口請求は、法務局・地方法務局の本局のみです。

②郵送請求は東京法務局後見登録課のみ

法務局・地方法務局の本局に出向くことができる人は、窓口請求が便利でしょう。

法務局・地方法務局は、平日の昼間のみ業務を行っています。

仕事や家事で忙しい人にとって、近くであっても出向くことは難しいでしょう。

後見登記事項証明書は、郵送で請求することができます。

後見登記事項証明書の輸送請求を受け付けているのは、東京法務局のみです。

各地の法務局・地方法務局に郵送しても、受け付けてもらえません。

名古屋法務局本局は、窓口請求に対応していますが、郵送請求に対応していません。

後見登記事項証明書の郵送請求は、東京法務局後見登録課のみです。

③請求できる人

後見登記事項証明書を請求することができるのは、次の人です。

(1)本人

(2)4親等内の親族

(3)任意後見人

(4)任意後見監督人

不動産や会社の登記事項証明書は、だれでも取得することができます。

後見登記事項証明書は、取得できる人が限定されています。

任意後見契約が発効している場合、本人は認知症などで判断能力を失っています。

本人にとっても家族にとっても、他の人に知られたくないことでしょう。

本人のプライバシーに配慮して、請求できる人が制限されています。

任意後見人は、本人を代理して取引をすることができます。

任意後見人が代理できるのは、本人がサポートを依頼した内容のみです。

取引の相手方は、任意後見人の権限を確認したいと思うでしょう。

本人がサポートを依頼した内容以外は、任意後見人は代理ができないからです。

後見登記事項証明書を取得すると、代理権の範囲が記載されています。

取引の相手方は、後見登記事項証明書を取得することはできません。

任意後見人が後見登記事項証明書を取得して、相手方に見せる必要があります。

後見登記事項証明書は、請求できる人が制限されています。

④申請書・委任状は押印不要

後見登記事項証明書を取得する場合、登記事項証明申請書を提出します。

登記事項証明申請書は、法務局の窓口に備え付けてあります。

登記事項証明申請書は、記名するだけで押印は不要です。

後見登記事項証明書は、請求できる人が自分で申請してもいいし代理人を立てて依頼することもできます。

代理人を立てて依頼する場合、代理人に対して委任状を発行します。

委任状は、記名するだけで押印は不要です。

後見登記事項証明書を取得する場合、申請書や委任状に押印は不要です。

⑤手数料は収入印紙で納入

後見登記事項証明書を取得する場合、手数料を納入する必要があります。

後見登記事項証明書の手数料は、1通あたり550円です。

登記事項証明申請書に収入印紙を貼り付けて納入します。

貼り付けるだけで、消印は押しません。

登記事項証明申請書を受け付けたとき、法務局の人が消印を押すからです。

収入印紙は、法務局の印紙売りさばき窓口の他、郵便局の郵便窓口で購入することができます。

後見登記事項証明書の手数料は、収入印紙で納入します。

⑥後見登記事項証明書の有効期限

後見登記事項証明書自体に、有効期限はありません。

後見登記事項証明書に「有効期限令和〇年〇月〇日」と記載されることはありません。

後見登記事項証明書は、発行した時点の証明書に過ぎないからです。

古い証明書の場合、現在では内容が異なっていることがあるでしょう。

提出先が有効期限を決めていることがあります。

例えば、相続登記で後見登記事項証明書を提出する場合、発行後3か月以内の証明書である必要があります。

本人のために融資を受ける場合、金融機関などは独自ルールで有効期限を決めていることが多いでしょう。

後見登記事項証明書の有効期限は、提出先に確認することが重要です。

4任意後見契約を司法書士に依頼するメリット

任意後見制度は、あらかじめ契約で「必要になったら後見人になってください」とお願いしておく制度です。

認知症が進んでから任意後見契約をすることはできません。

重度の認知症になった後は、成年後見(法定後見)をするしかなくなります。

成年後見(法定後見)では、家庭裁判所が成年後見人を決めます。

家族が成年後見人になれることも家族以外の専門家が選ばれることもあります。

任意後見契約では、本人の選んだ人に後見人になってもらうことができます。

家族以外の人が成年後見人になることが不安である人にとって、任意後見制度は有力な選択肢になるでしょう。

任意後見契約は締結して終わりではありません。

本人が自分らしく生きるために、みんなでサポートする制度です。

任意後見制度の活用を考えている方は、司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。

遺言執行者と相続人は同一でいい

2024-09-19

1遺言執行者が遺言書の内容を実現する

①相続手続は遺言執行者におまかせできる

被相続人は、自分の財産を自由に処分することができます。

遺言書を作成して、自分が死亡後にだれに引き継いでもらうのか自由に決めることができます。

遺言書は、作成するだけでは意味がありません。

遺言書の内容は、自動で実現するわけではないからです。

遺言執行者は、遺言書の内容を実現する人です。

遺言執行者がいると、相続手続は遺言執行者におまかせすることができます。

相続手続は、何度も経験することはありません。

だれにとっても初めてで、知らないことや分からないことばかりでしょう。

相続手続は、想像以上に手間と時間がかかります。

遺言執行者がいると、家族はラクができます。

手間と時間がかかる相続手続は、遺言執行者が負担してくれるからです。

相続手続は、遺言執行者におまかせできます。

②遺言執行者を指名しなくても遺言書は無効にならない

遺言執行者は、遺言書の内容を実現する人です。

遺言書を確認したところ、遺言執行者について何も書いてないことがあります。

遺言書の内容を実現する人がいないと、遺言書が無意味なものに思えるかもしれません。

遺言書には、厳格な書き方ルールがあります。

書き方ルールに違反した遺言書は、無効になります。

遺言書の書き方ルールに、遺言執行者を指名することはありません。

遺言書で遺言執行者を指名しなくても、遺言書が無効になることはありません。

③家庭裁判所で遺言執行者を選任してもらえる

遺言執行者がいると、相続手続は遺言執行者におまかせすることができます。

遺言執行者は、遺言書で指名することがほとんどです。

遺言執行者がいると、家族はラクができるからです。

遺言書の内容を実現してくれるから、遺言者にとっても安心です。

遺言書で遺言執行者を指名しても、指名された人が先に死亡することがあります。

遺言執行者を指名していなくても、遺言書は有効です。

遺言執行者がいない場合、家庭裁判所に対して遺言執行者選任の申立てをすることができます。

家庭裁判所に申立てをして、遺言執行者を選任してもらうことができます。

④子どもの認知は遺言執行者が届出

認知とは、婚姻関係にないカップルの間に生まれた子どもについて自分の子どもと認めることです。

認知をして、自分の子どもだと認めるのは一般的には父親です。

通常、母は出産の事実によって母親であることが確認できるからです。

父が生前に認知届を提出する他に、遺言で認知をすることができます。

子どもを認知する場合、市区町村役場に認知届を提出する必要があります。

父が生前に認知をする場合、自分で市区町村役場に持って行くことができます。

遺言で認知をする場合、認知届は遺言執行者が提出します。

遺言で認知をするためには、遺言執行者が欠かせません。

遺言で子どもを認知するときは、遺言執行者が市区町村役場に届出をします。

⑤相続人廃除は遺言執行者が申立て

相続人になる人は、法律で決められています。

例えば、被相続人に虐待をした人に、相続をさせたくないと考えるのは自然なことでしょう。

被相続人が相続させたくないと思って、他の相続人にすべての財産を相続させると遺言書を書くことがあります。

遺言書を作成したとしても、遺留分を奪うことはできません。

遺留分侵害額請求をしたら、相続財産のいくらかは虐待した相続人が受け継いでしまいます。

相続人廃除とは、被相続人の意思で相続人の資格を奪う制度です。

相続人の資格を奪うというのは、実質的には、遺留分を奪うことです。

被相続人が生前に廃除の申立てをする他に、遺言で廃除をすることができます。

遺言で廃除する場合、遺言執行者が家庭裁判所に申立てをします。

廃除は家庭裁判所に申立てをして、家庭裁判所が判断します。

遺言で廃除をするためには、遺言執行者が欠かせません。

遺言で相続人を廃除するときは、遺言執行者が家庭裁判所に申立てをします。

2遺言執行者は相続人と同一でいい

①遺言執行者になれる人なれない人

遺言執行者になれない人は、民法で決められています。

遺言執行者になれない人は、次のとおりです。

(1)未成年者

(2)破産者

遺言執行者は、遺言書で指名することができます。

遺言書を作成した時点で、未成年者であっても差し支えありません。

遺言執行者が欠格に該当するかどうかは、相続が発生した時点で判断します。

原則として、だれでも遺言執行者になることができます。

遺言執行者は、相続人や受遺者と同一で差し支えありません。

受遺者とは、遺言書で遺贈を受ける人です。

相続や遺贈で財産を受け取る人が遺言執行者になることができます。

遺言執行者は、遺言書の内容を実現する人です。

遺言書の内容を実現できる知識があって、相続手続をする時間がある人を指名するといいでしょう。

遺言執行者は、相続人や受遺者と同一で差し支えありません。

②遺言執行者は辞退できる

遺言執行者は、遺言書で指名することができます。

遺言書は、遺言者がひとりで作ります。

言わば、一方的に遺言執行者に指名することができます。

遺言書で遺言執行者に指名された場合、指名された人は就任する義務はありません。

指名された人が就任するか辞退するか選択することができます。

遺言書で遺言執行者に指名されても、遺言執行者への就任は辞退することができます。

遺言執行者への就任辞退は、理由を言う必要はありません。

  • 何となく、気が進まない
  • 遺言執行なんて、手間と時間がかかりそうだ
  • 相続手続に、自信がない
  • 相続人から、あれこれ言われそう

上記のような理由で、遺言執行者への就任を辞退することができます。

遺言執行者への就任を辞退する場合、すみやかに意思表示をしましょう。

遺言執行者が引き受けてくれるのか辞退するのか分からないと、相続人が困るからです。

遺言執行者への就任を辞退することができます。

③遺言執行者の辞任はハードルが高い

遺言執行者への就任を辞退するときに、理由を言う必要はありません。

遺言執行者への就任を辞退する理由は、自由です。

いったん遺言執行者に就任した後は、自由に辞任することはできません。

遺言執行者が辞任するときは、遺言執行者辞任の許可の申立てをします。

辞任するにあたって正当な理由があるときだけ、遺言執行者の辞任が許可されます。

正当な理由には、次のような理由があります。

  • 病気などで長期の療養が必要
  • 長期の出張
  • 遠隔地への転居

正当理由は、客観的に困難であることが重視されます。

  • 遺言執行が難しくて続けられない
  • 面倒でやる気がなくなった

上記のような理由は、客観的に困難とは認められないでしょう。

遺言執行者に就任する前は、自由に辞退することができます。

遺言執行者に就任した後は、自由に辞任することができません。

遺言執行者に就任した後の辞任は、ハードルが高くなります。

④包括的に遺言執行を依頼する

原則として、だれでも遺言執行者になることができます。

遺言執行者は相続人や受遺者と同一であっても、問題になりません。

遺言執行者は、遺言書の内容を実現する人です。

遺言執行者は、遺言執行のため相続手続します。

相続手続は、想像以上に手間と時間がかかります。

「遺言執行が難しくて続けられない」「面倒でやる気がなくなった」などの理由で、辞任は許可されないでしょう。

遺言執行者は、遺言執行を包括的に依頼することができます。

遺言執行は、法律知識が必要な手続が多いものです。

司法書士などの専門家に任せる方がスムーズでしょう。

遺言執行者に指名されたのが2019年7月1日以降作成の遺言書であれば、遺言執行者は自己の責任で司法書士などの専門家にその任務を任せることができます。

2019年7月1日以前作成の遺言書で遺言執行者に指名された場合、止むを得ない理由があれば司法書士などの専門家にその任務を任せることができます。

包括的に遺言執行を依頼する場合、相続人などの同意は不要です。

遺言執行者は、遺言執行を包括的に依頼することができます。

⑤特定の事務だけ専門家に依頼する

遺言執行者の事務は、多岐にわたります。

比較的簡単な事務と難しい事務があるでしょう。

例えば、不動産の名義変更は、相続手続の中でも難しい手間のかかる事務です。

遺言執行者は、自分の手に余る難しい事務だけ専門家に依頼することができます。

不動産の名義変更は、相続登記と言います。

相続登記だけ、司法書士に依頼することができます。

相続登記だけ司法書士に依頼する場合、相続人などの同意は不要です。

遺言執行者は、特定の事務だけ専門家に依頼することができます。

3遺言執行者と相続人が同一のときのデメリット

①遺言執行者になれなかった相続人が不満

遺言執行者として相続人を指名する場合、相続人の代表を指名するでしょう。

相続人の代表者として、相続人から注目を集めたいかもしれません。

遺言執行者に指名されなかった相続人が不満を覚えることがあります。

②相続財産の横領を疑われる

遺言執行者は、遺言書の内容を実現する人です。

相続人全員のために、公平公正に職務を行います。

遺言書で相続財産の配分を決めるとき、一部の相続人に有利になっていることが多いでしょう。

受け取る財産が期待に足りないとき、遺言執行者の横領を疑うことがあります。

③遺言執行者に時間的負担が大きい

遺言執行者に指名されると、安易に就任を承諾することがあります。

遺言執行者は、相続人全員のため相続手続をします。

相続手続は想像以上に手間と時間がかかります。

相続手続先は、平日の昼間のみ業務を行っています。

仕事や家事で忙しい人にとって、時間的な負担が大きいでしょう。

④相続手続に時間がかかると相続人から不満

相続手続を何度もすることはありません。

だれにとっても初めてで、知らないことや分からないことでいっぱいです。

見慣れない言葉や聞き慣れない表現で、精神的負担は少なくありません。

仕事や家事で忙しい中、精神的負担の大きい事務を行うと疲れ果ててしまうでしょう。

遺言執行者がいると、他の相続人はラクです。

わずらわしい相続手続をおまかせして、待っているだけだからです。

待っているだけの相続人にとって、財産を手にするまでの時間は長いと感じるでしょう。

相続手続に時間がかかると、相続人から不満が出ます。

4遺言執行を司法書士に依頼するメリット

遺言執行者は、遺言書の内容を実現する人です。

相続人が遺言書の内容に納得していて、手続に協力的であれば、必ずしも、遺言執行者を選任する必要はありません。

子どもの認知など遺言執行者しかできない手続がある場合、遺言執行者を選任しておかないと、相続人に余計な手間をかけさせることになります。

遺言執行者は、相続開始後すみやかに手続を進めることができる時間と知識がある人を選ぶことが重要です。

その意味でも、家族より司法書士などの専門家に遺言執行を依頼する人が増えています。

以前は、遺言執行者は止むを得ない場合だけ、他の人に職務を任せることができるとされていましたが、現在は、止むを得ないなどの理由は不要になりました。

遺言執行者に指名され、職務をしてみたところ、思ったよりタイヘンだという場合、自己の責任で司法書士などの専門家におまかせすることもできます。

今後も、専門家に依頼する人は増えていくでしょう。

遺言執行を司法書士などの専門家に依頼した場合、相続人は基本待っているだけなので、トラブルになることが少なくなるからです。

家族を笑顔にするためにも、遺言書作成と遺言執行者選任しましょう。

家族の幸せのためにも、遺言書作成と遺言執行者選任を司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。

不動産を相続させるときの遺言書の書き方

2024-09-19

1遺言書があると相続人の話し合いが不要

①分けにくい財産があると相続人全員の話し合いは難航する

相続財産にはいろいろな財産が含まれています。

不動産のように分けにくい財産もあるし、金銭のように分けやすい財産もあります。

相続が発生した場合、被相続人のものは相続人全員の共有財産になります。

相続財産の分け方は、相続人全員の合意で決定します。

相続財産の大部分が不動産のような分けにくい財産の場合、相続財産の分け方についての合意が難しくなるでしょう。

②関係の薄い相続人がいると相続人全員の話し合いは難航する

相続人になる人は法律で決まっています。

(1)配偶者は必ず相続人になる

(2)被相続人に子どもがいる場合、子ども

(3)被相続人に子どもがいない場合、親などの直系尊属

(4)被相続人に子どもがいない場合で、かつ、親などの直系尊属が被相続人より先に死亡している場合、兄弟姉妹

被相続人に子どもがいる場合、子どもは相続人になります。

被相続人に離婚歴がある場合、元配偶者が引き取った子どもは、子どもとして相続人になります。

被相続人自身も、長期間疎遠にしていたかもしれません。

被相続人の配偶者が子どもの存在を知らなかったかもしれません。

絶縁していても行方不明になっていても、相続人です。

相続財産の分け方を決めるためには、相続人全員の合意が必要です。

相続が発生してからお互いの存在を知ったような場合、話し合いが難しくなります。

関係の薄い相続人がいる合、相続財産の分け方についての合意が難しくなるでしょう。

③遺言書で財産の行き先を決めておく

相続が発生したら、相続財産は相続人全員の共有財産になります。

何も対策していなかったら、相続人全員で相続財産の分け方についての合意が不可欠です。

遺産分割協議はそうでなくても、トラブルになりやすい手続です。

話し合いが難航すると、トラブルに発展するおそれがあります。

難航するおそれがある場合、遺言書を作成することがおすすめです。

遺言書があれば、遺言書の内容とおり分ければいいからです。

2土地を相続させるときの遺言書の記載例

①単独所有の土地の記載例

遺言者は、次のとおり遺言する。

第1条

次の財産を、相続人○○に、相続させる。

所在 ○○市○○町○丁目

地番 ○番○

地目 宅地

地積 200㎡

②土地の共有持分の記載例

遺言者は、次のとおり遺言する。

第2条

次の財産を、相続人○○に、相続させる。

所在 ○○市○○町○丁目

地番 ○番○

地目 宅地

地積 200㎡

持分 4分の1

③公衆用道路の記載例

遺言者は、次のとおり遺言する。

第3条

次の財産を、相続人○○に、相続させる。

所在 ○○市○○町○丁目

地番 ○番○

地目 公衆用道路

地積 3㎡

持分 10分の1

公衆用道路も土地のひとつです。

通常の宅地などと同様に、登記簿があります。

登記簿の記載を書き写せば問題ありません。

公衆用道路は、付近住民と共有していることが多いでしょう。

共有持分を一緒に記載します。

3建物を相続させるときの遺言書の記載例

遺言者は、次のとおり遺言する。

第4条

次の財産を、相続人○○に、相続させる。

所在 ○○市○○町○丁目

家屋番号 ○番○

種類 居宅

構造 木造瓦葺2階建

床面積 1階 50.00㎡ 2階 50.00㎡

4敷地権付きマンションを相続させるときの遺言書の記載例

遺言者は、次のとおり遺言する。

第5条

次の財産を、相続人○○に、相続させる。

(一棟の建物の表示)

所在 ○○市○○町○丁目○番地○

建物の名称 ○○○○マンション

(専有部分の建物の表示)

家屋番号 ○○町○丁目○番○の○

建物の名称 ○○○

種類 居宅

構造 鉄筋コンクリート造1階建

床面積 ○階部分 ○○.○○㎡

価格 金○○○○万円

(敷地権の表示)

符号 1

所在 ○○市○○町○丁目

地番 ○番○

地目 宅地

地積 ○○○.○○㎡

(敷地権の種類)

所有権

(敷地権の割合)

持分 ○○○○○○分の○○○○○○

符号 2

所在 ○○市○○町○丁目

地番 ○番○

地目 宅地

地積 ○○○.○○㎡

(敷地権の種類)

所有権

(敷地権の割合)

持分 ○○○○○○分の○○○○○○

5不動産を相続させるときの遺言書の書き方のポイント

①不動産を相続したら相続登記

不動産を相続したら、不動産の名義を変更します。

相続による不動産の名義変更を相続登記と言います。

不動産は重要な財産であることが多いので、相続登記は法務局が厳格に審査します。

遺言書の内容に従って相続登記をする場合、遺言書を法務局に提出します。

遺言書の書き方が不適切な場合、名義変更が認められません。

不動産を相続させるために遺言書を作成する場合、相続登記ができるように書くことが重要です。

②不動産は登記簿謄本を書き写す

対象の不動産は、客観的に特定します。

客観的に分からない場合、法務局は不動産を特定できないからです。

「自宅」などの記載は、客観的に特定できるとは言えません。

家族にとっては、自宅は当然のことでしょう。

法務局など第三者にとっては、自宅はどこにあるどの不動産なのか分からないからです。

不動産の所在は自宅住所と異なることが多いので、登記簿謄本を書き写しましょう。

固定資産税の課税明細書は、登記簿謄本と異なる表記がされていることや内容が省略されている場合があります。

登記簿謄本の記載を見て、書き写します。

③土地は所在、地番、地目、地積で特定する

「自宅」などの記載は、客観的に特定できるとは言えません。

自宅に住所があるのだから、住所を書けばいいだろうと考えがちです。

土地の所在は、土地の所在する場所を表すものです。

登記簿を調べると、住所地に複数の土地が所在していることがあります。

複数の土地がある場合、地番が異なります。

地番は、土地についている番号です。

同一の所在で同一の地番の土地が複数あることはありません。

登記簿謄本の記載を見て、土地の所在と土地の地番を書き写します。

念のため、地目と地積を書き写して特定します。

④建物は所在、家屋番号、種類、構造、床面積で特定する

「自宅」などの記載は、客観的に特定できるとは言えません。

人によっては、自宅が複数あることがあります。

建物の場合も、住所と建物の所在は別物です。

広い土地に建物が複数あることはよくあることです。

複数の建物がある場合、家屋番号が異なります。

家屋番号は、建物についている番号です。

建物が建っている主たる土地の地番と同じ番号が付けられることが多いです。

同一の所在で同一の家屋番号の建物が複数あることはありません。

登記簿謄本の記載を見て、建物の所在と建物の建物を書き写します。

念のため、種類、構造、床面積を書き写して特定します。

⑤敷地権付きマンションは特定するための項目が多い

マンションには、2種類あります。

敷地権付きマンションと敷地権がないマンションです。

分譲マンションのように1棟の建物の一部を独立して所有できる建物を区分建物と言います。

区分建物が建っている土地が敷地です。

敷地を使う権利とマンションのお部屋の権利を一体化して処分するようにしたのが、敷地権付区分建物です。

敷地権付区分建物の場合、マンションを売買するとき敷地を使う権利とマンションのお部屋の権利は一緒についてきます。

敷地を使う権利だけ取引することやお部屋だけ担保に差し出すことはできません。

敷地を使う権利とマンションのお部屋の権利は、命運を共にする運命共同体です。

新しいマンションのほとんどは、敷地権付区分建物です。

敷地権付区分建物を特定するためには、次の項目を記載します。

(1)一棟の建物の表示

家屋番号、種類、構造、床面積で特定する

(2)専有部分の建物の表示

家屋番号、建物の名称、種類、構造、床面積で特定する

(3)敷地権の表示

土地の符号、所在、地番、地目、地積で特定する

マンションを特定するためには、たくさんの項目を記載しなければなりません。

⑥敷地権がないマンションは土地と建物を別々に特定する

古いマンションの中には、敷地を使う権利とマンションのお部屋の権利を一体化して処分できるルールができる前に建てられた場合があります。

ルールができる前に建てられたマンションは、敷地を使う権利とマンションのお部屋の権利を一体化していない場合があります。

土地と建物を特定する項目は、先に説明したとおりです。

土地は、所在、地番、地目、地積で特定します。

建物は、一棟の建物の表示として家屋番号、建物の名称、種類、構造、床面積を記載します。

専有部分の建物の表示として家屋番号、建物の名称、種類、構造、床面積を記載します。

土地は、マンションの所有者全員で共有しているでしょう。

共有持分の割合も記載します。

6遺言書作成と遺言執行を司法書士に依頼するメリット

遺言書は遺言者の意思を示すものです。

遺言書の書き方ルールは民法という法律で、細かく決められています。

自分が死んだ後のことは考えたくないという気持ちから、先延ばししがちです。

いろいろ言い訳を考えてしまうかもしれません。

不動産は、分けにくい財産の代表例です。

目立った財産がないから、家族がもめ事を起こすことはないという言い訳はよく聞きます。

相続財産は自宅不動産だけの場合、目立った財産がない場合と言えるでしょう。

分けにくい不動産だけの場合、家族がトラブルになりやすいケースです。

家族がトラブルに巻き込まれることを望む人はいないでしょう。

死んだ後のことを考えるのは不愉快などと言えるのは、判断力がしっかりしている証拠ですから、まず遺言書を書くことをおすすめします。

トラブルにならない場合でも、遺言書があると相続手続は格段にラクになります。

状況が変われば、遺言書は何度でも書き直すことができます。

家族を幸せにするために遺言書を作ると考えましょう。

遺言書の書き直しのご相談もお受けしています。

家族の喜ぶ顔のためにやるべきことはやったと安心される方はどなたも晴れやかなお顔です。

家族の幸せを願う方は、遺言書作成を司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。

« Older Entries Newer Entries »

keyboard_arrow_up

0527667079 問い合わせバナー 事前相談予約