相続放棄してもクレジットカード

1クレジットカードは相続財産ではない

相続が発生すると、原則として、被相続人の財産は相続人が相続します。

被相続人の財産は、プラスの財産もマイナスの財産も相続財産になります。

相続人が相続する財産が、相続財産です。

被相続人の財産であっても、相続人に相続されない財産があります。

一身専属権や祭祀用財産は相続の対象になりません。

一身専属権とは、その人個人しか持つことができない権利や資格のことです。

例えば、有名な画家に絵をかいてもらう契約で、絵を完成させないまま有名な画家が死亡することがあります。

有名な画家は絵を完成させる義務を果たさないまま死亡したと言えます。

絵を完成させる義務は、有名な画家の相続人に相続されることはありません。

有名な画家に絵をかいてもらう契約をした人は、有名な画家だから契約をしたと言えます。

有名な画家の相続人に絵をかいてもらっても意味はありません。

このようなものが、一身専属です。

クレジットカードは、クレジットカード会社の会員の資格を表したものです。

クレジットカード会社の会員の資格は、その人の個人の信用情報に基づいて認められるものです。

被相続人の信用情報と相続人の信用情報は、別のものです。

クレジットカード会社の会員の資格は、相続財産ではありません。

クレジットカード会社の会員の資格は、一身専属と言えるからです。

2クレジットカード債務は相続財産

被相続人の財産は、プラスの財産もマイナスの財産も相続財産になります。

被相続人がクレジットカードを利用していた場合、未払いの利用残高があるでしょう。

未払いの利用残高は、単なる金銭債務です。

被相続人のマイナスの財産のひとつとして、相続財産になります。

3クレジットカード債務が多いときは相続放棄

①クレジットカード債務だけ相続放棄をすることはできない

相続放棄をするとマイナスの財産を受け継ぐことがなくなります。

だから、被相続人が莫大な借金を負っていた場合でも、一切借金の返済をする必要がなくなります。

被相続人が返済を滞らせていて遅延損害金が発生していた場合があります。

相続人が相続放棄をした場合、未払金も遅延損害金も払う必要はありません。

相続放棄をするとマイナスの財産すべて受け継ぐことがなくなります。

相続放棄をするとマイナスの財産だけでなく、プラスの財産も受け継ぐことがなくなります。

クレジットカード債務だけ相続放棄をすることはできません。

②相続放棄は家庭裁判所に対して3か月以内に手続

家庭裁判所に対して、必要な書類をを添えて相続放棄をしたい旨の申立てをします。

届出をする先の家庭裁判所は、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です。

家庭裁判所の管轄は裁判所のホームページで調べることができます。

相続放棄をすると、プラスの財産もマイナスの財産もすべて受け継ぐことがなくなります。

この届出は相続があったことを知ってから、原則として、3か月以内にする必要があります。

相続放棄をしたい旨の届出に添える書類は裁判所のホームページに詳しく書いてあります。

(1)被相続人の戸籍謄本

(2)被相続人の除票

(3)相続放棄する人の戸籍謄本

(4)収入印紙

(5)裁判所が手続で使う郵便切手

届出は直接、出向いて提出してもいいし、郵便で送っても差し支えありません。

届出の書き方や提出書類が心配な方は、出向いて裁判所の受付で目を通してもらうと安心です。

4クレジットカードの解約手続

①クレジットカードの解約は単純承認にならない

相続放棄をする前に単純承認をしていた場合、相続放棄はできません。

相続放棄が撤回できないように、単純承認も撤回できないからです。

相続財産を処分したり、利用した場合、単純承認をしたとみなされます。

相続財産を処分したり、利用した場合は相続放棄ができなくなります。

家庭裁判所は事情が分からず書類に問題がなければ、相続放棄を受理してしまいます。

家庭裁判所が相続放棄を受理した後でも、相続財産を処分したり、利用した場合は、無効です。

クレジットカードを解約することは、単純承認にはなりません。

クレジットカード会社の会員の資格は、相続財産ではないからです。

一般的にクレジットカードの会員規約や利用規約には、会員が死亡した場合会員資格を喪失すると明記されています。

②附帯サービスを請求すると単純承認になる

クレジットカードによっては、会員になると自動的に保険が附帯されるものがあります。

旅行中の病気やけがの保険や盗難や紛失に関する保険です。

これらの保険は、被相続人が受取人である保険金でしょう。

被相続人が受取人である保険金を請求する権利は、相続財産です。

相続財産を処分したり、利用した場合、単純承認をしたとみなされます。

家庭裁判所が相続放棄を受理した後でも、相続財産を処分したり、利用した場合は、無効です。

③チャージタイプの電子マネーを使うと単純承認になる

交通型ICカードなどの電子マネーは、事前にチャージして使うことができます。

被相続人がチャージした電子マネーは、相続財産です。

相続財産を処分したり、利用した場合、単純承認をしたとみなされます。

家庭裁判所が相続放棄を受理した後でも、相続財産を処分したり、利用した場合は、無効です。

④引落口座が凍結しても解約手続は必要

銀行などの金融機関は預金者が死亡したことを確認すると、口座の取引をできなくします。

この口座の取引をできなくすることを口座の凍結といいます。

口座取引をできなくしますから、ATMや窓口での引き出しもできないし、年金などの振込もできないし、公共料金などのお引落もできなくなってしまいます。

役所に死亡届を出すと凍結するなど誤った情報を信じている方もおられますが、役所や病院から個人情報が漏れることはありません。

もし、そのようなことがあったら、個人情報の漏洩として責任を問われることになるからです。

クレジットカードと紐づいている口座が凍結された場合、クレジットカードの引き落としができなくなります。

クレジットカード会社から見ると、クレジットカード債務が未払いになっただけと言えます。

クレジットカード債務が未払いになった場合でも、クレジットカードの解約手続は必要です。

相続人が口座を解約した場合でも、クレジットカードの解約手続は必要です。

⑤家族カードは使えなくなる

クレジットカードを利用している場合、家族カードが発行されていることがあります。

クレジットカードの会員本人が死亡した場合、家族カードは使用できなくなります。

家族カードは、会員本人の信用情報に基づいて発行されているからです。

会員本人が死亡により資格を喪失するから、自動的に家族カードも無効になります。

⑥解約するまで年会費がかかり続ける

クレジットカードの中には、年会費がかかることがあります。

クレジットカード会社は、会員が死亡したことを知ることができません。

クレジットカードの解約をしないと、年会費がかかり続けます。

クレジットカードの解約は、会員本人の死亡を伝えて資格喪失することを伝える意味があります。

⑦クレジットカードのポイントは失効する

クレジットカードには、ポイントがたまるものがあります。

被相続人が貯めていたポイントは、原則として相続の対象ではありません。

クレジットカードのポイントは、クレジットカードの会員資格に対して付与される特典だからです。

クレジットカードのポイントは、一身専属の権利と考えられています。

クレジットカード会社によっては、利用規約や会員規約に相続できないことを明記しています。

利用規約や会員規約に相続できないことを明記していなくても、同様と考えられています。

例外的に、利用規約や会員規約で相続できることを定めているケースがあります。

クレジットカード会社に確認するといいでしょう。

相続できる場合であっても、利用規約や会員規約で相続手続ができるのは死亡後〇か月以内など特別なルールをを定めている場合があります。

5相続放棄をしても信用情報に通知されない

相続放棄は、信用情報とは関係がありません。

一般に、信用情報に事故記録が記載されると、ローンが組めなくなります。

被相続人に莫大な借金がある場合、相続放棄をすることを考えるでしょう。

相続放棄をしても、ブラックリストに載ることはありません。

相続放棄をした場合、将来、クレジットカードを作れなくなるのではないかと心配する必要はありません。

相続放棄をする人の中には、裕福で生活に困っていないから相続放棄をしたいという人もいます。

6相続放棄を司法書士に依頼するメリット

相続放棄はプラスの財産もマイナスの財産も引き継ぎませんという裁判所に対する届出です。

相続人らとのお話合いで、プラスの財産を相続しませんと申し入れをすることではありません。

つまり、家庭裁判所で認められないとマイナスの財産を引き継がなくて済むというメリットは受けられないのです。

実は、相続放棄はその相続でチャンスは実質的には1回限りです。

家庭裁判所に認められない場合、即時抗告という手続を取ることはできますが、高等裁判所の手続で、2週間以内に申立てが必要になります。

家庭裁判所で認めてもらえなかった場合、即時抗告で相続放棄を認めてもらえるのは、ごく例外的な場合に限られます

一挙にハードルが上がると言ってよいでしょう。

相続放棄は慎重に判断する必要がありますが、いろいろな誤解から利用をためらう人が多いのも事実です。

利用をためらっていると3か月はあっという間です。

相続が発生すると、家族は親戚や知人へ連絡などで悲しみに浸る暇もないくらい忙しくなります。

3か月以内に必要書類を揃えて手続をするのは想像以上にハードルが高いものです。

相続放棄を考えている方はすみやかに司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。

keyboard_arrow_up

0527667079 問い合わせバナー 事前相談予約