Archive for the ‘財産調査’ Category
親子共有名義で片方死亡したときの相続
1共有者でも優先されない
①相続人になる人は法律で決まっている
相続が発生したら、親族のうち一定の範囲の人が相続人になります。
だれが相続人になるかについて、民法で決められています。
相続人になる人は、次のとおりです。
(2)~(4)の場合、先順位の人がいる場合、後順位の人は相続人になれません。
(1)配偶者は必ず相続人になる
(2)被相続人に子どもがいる場合、子ども
(3)被相続人に子どもがいない場合、親などの直系尊属
(4)被相続人に子どもがいない場合で、かつ、親などの直系尊属が被相続人より先に死亡している場合、兄弟姉妹
相続人になるはずだった人が被相続人より先に死亡した場合、相続人になるはずだった人の子どもや子どもの子どもが相続します。
相続人になるはずだった人の子どもや子どもの子どもが相続することを代襲相続と言います。
②共有者が自動的に相続するわけではない
被相続人が不動産を共有している場合、被相続人の共有持分は相続人に相続されます。
被相続人が相続人のひとりと不動産を共有していた場合、何となく共有者が相続すると思うかもしれません。
共有者のひとりが相続人である場合、自動的に被相続人の共有持分を相続できるといったことはありません。
共有者であっても、優先権はないからです。
共有者が相続人だから、自動的に相続するといったルールはありません。
③共有者が取得するのは相続人不存在のとき
相続が発生したら、被相続人のものは相続人が相続します。
被相続人が不動産を共有していた場合、被相続人は不動産の共有持分を持っています。
被相続人の共有持分は、相続人が相続します。
共有者の片方が死亡した場合、他の共有者が共有持分を取得することを聞いたことがあるかもしれません。
共有者の片方が死亡した場合に他の共有者が共有持分を取得するのは、相続人が不存在の場合です。
被相続人が天涯孤独の場合、法律で決められた相続人は存在しないでしょう。
法律で決められた相続人はいても、相続人全員が相続放棄をすることがあります。
家庭裁判所で相続放棄が認められた場合、はじめから相続人でなくなります。
法律で決められた相続人全員が相続放棄をした場合、相続人不存在と言えます。
被相続人が払うべきお金を払わないまま、死亡することがあります。
相続人不存在であれば、相続人に払ってもらうことはできません。
被相続人の財産があれば、被相続人の財産から払ってもらいたいと望むでしょう。
被相続人が不動産を共有していた場合、共有持分は財産と言えます。
被相続人に特別縁故者がいることがあります。
特別縁故者とは、被相続人に特別な縁故があった人です。
家庭裁判所に特別縁故者と認められた場合、財産が分与を受けることができます。
受け取る人がいない財産は、国庫に帰属します。
国庫に帰属すべき財産が共有持分である場合、他の共有者が取得します。
被相続人に相続人がいる場合、相続人不存在ではありません。
共有者のひとりが死亡しても、自動で他の共有者が被相続人の共有持分を取得することはできません。
2親子共有名義の建物で配偶者居住権
①配偶者短期居住権は親子共有名義の建物で認められる
配偶者短期居住権と配偶者居住権は、相続発生後に配偶者が住み場所を失わないようにするために作られた権利です。
配偶者短期居住権が認められる要件は、次のとおりです。
(1)法律上の配偶者であること
(2)被相続人の所有していた建物であること
(3)相続開始時に居住していたこと
配偶者短期居住権は、要件が満たされれば自動で認められます。
配偶者短期居住権が認められるためには、被相続人単独所有の建物に限られません。
被相続人が第三者と共有している建物であっても、配偶者短期居住権は認められます。
被相続人が配偶者以外の人と共有している建物であっても、差し支えありません。
配偶者短期居住権は、親子共有名義の建物で認められます。
②配偶者居住権は親子共有名義の建物で認められない
配偶者居住権が認められる要件は、次のとおりです。
(1)法律上の配偶者であること
(2)被相続人の所有していた建物であること
(3)相続開始時に居住していたこと
(4)配偶者居住権を設定
配偶者居住権は、自動で発生しません。
配偶者居住権を設定する必要があります。
配偶者居住権が認められるためには、被相続人単独所有の建物に限られません。
被相続人と配偶者の共有建物について、配偶者居住権が認められます。
配偶者以外の第三者と共有する建物について、配偶者居住権が認められません。
配偶者居住権は、原則として配偶者が終身居住する権利です。
配偶者以外の第三者と共有する建物である場合、配偶者居住権は大きな負担になります。
他の共有者にとって過大な負担になるから、配偶者以外の第三者と共有する建物である場合配偶者居住権は認められません。
配偶者居住権は、親子共有名義の建物で認められません。
3相続で共有を解消する
①共有持分を取得して他の財産を取得しない
相続が発生したら、被相続人のものは相続人が相続します。
親子で不動産を共有していた場合、他の共有者は相続人のひとりでしょう。
相続財産の分け方は、相続人全員の合意で決めなければなりません。
被相続人と不動産を共有していても、自動で共有持分を相続することはできません。
他の共有者である相続人が共有持分を取得して、他の財産を取得しない合意をするといいでしょう。
相続人全員で合意できれば、相続をきっかけにして共有を解消することができます。
他の相続人にとって公平と思えるだけの財産がない場合、分け方の合意はできないでしょう。
②共有持分を取得して代償金の支払い
相続財産は、分けやすい財産と分けにくい財産があるでしょう。
不動産は、分けにくい財産の代表例です。
相続財産の大部分が不動産である場合、そのまま分けるのは難しいでしょう。
一部の相続人が不動産を取得した場合、他の相続人は不公平を感じるからです。
法定相続分と較べて高価な財産を取得する場合、代償分割をすることで合意できることがあります。
代償分割とは、一部の相続人が高価な財産を相続し、他の相続人は高価な財産を相続した人から、その分のお金をもらう方法です。
他の共有者である相続人が共有持分を取得して、他の相続人に代償を払う合意をするといいでしょう。
相続人全員で合意できれば、相続をきっかけにして共有を解消することができます。
共有持分を取得する相続人は、代償金を支払わなければなりません。
共有持分を取得する相続人が代償金を準備できない場合、分け方の合意はできないでしょう。
代償金を支払うと約束したのに、支払ってもらえないと相続人間でトラブルになります。
③不動産全体を売却してお金で分ける
代償分割では、不動産を相続する人が代償金を準備する必要があります。
不動産が高価である場合、代償金を準備することが難しいでしょう。
相続財産の大部分が高価な不動産である場合、換価分割をすることで合意ができることがあります。
換価分割とは、不動産を売却してお金に換えた後、お金を分ける方法です。
換価分割は、実際に売れてからお金で分ける方法です。
相続人全員で不動産全体を売却して、お金で分ける合意をするといいでしょう。
相続人全員で合意できれば、相続をきっかけにして共有を解消することができます。
不動産の価値をいくらと考えるか、だれが実際に不動産を相続するのかで話し合いがまとまらないという心配はありません。
せっかく家族が守ってきた不動産を手放すことへの罪悪感にかられるかもしれません。
売却しようとしたのに買い手がつかないと相続手続きが長引くおそれがあります。
④共有持分の細分化はデメリットが大きい
相続財産の分け方は、相続人全員の合意で決めなければなりません。
相続財産は、複数の分け方があります。
相続人にもさまざまな考えがあるでしょう。
相続人全員の話し合いがまとまらないことは、少なくありません。
被相続人の共有持分を相続人全員で共有する方法は、話し合いが不要です。
相続人全員で法定相続分で共有するから、一見して公平に見えます。
話し合いがまとまらないと、先延ばしをしたくなります。
被相続人の共有持分をさらに細分化することはおすすめできません。
先延ばししても、メリットはないからです。
先延ばしすると、共有者にさらに相続が発生するでしょう。
共有者の共有持分は、共有者の相続人が相続します。
さらに共有者が増えることになります。
適切に相続登記をしていないと、だれにどれだけの持分があるのか分からなくなります。
共有物を処分する場合、共有者全員の合意が必要になります。
共有者が増えると、単純に話し合いが難しくなります。
気心が知れた兄弟で共有している場合、話し合いは比較的容易です。
相続で疎遠な親族と共有している場合、話し合いは難しくなるでしょう。
見知らぬ親族と共有している場合、話し合いはできなくなって先延ばしになるでしょう。
事実上、不動産の利活用ができなくなります。
共有持分の細分化はデメリットが大きいので、おすすめできません。
4相続前にできること
①遺言書作成
被相続人は生前に、自分の財産を自由に処分することができます。
被相続人は死亡後に、自分の財産をだれに引き継いでもらうか遺言書で自由に決めることができます。
遺言書で財産の行き先が決めてある場合、遺言書のとおりに分けることができます。
相続人全員で分け方の話し合いをする必要はありません。
遺言書は、作成するだけでは意味がありません。
遺言書の内容は、自動で実現するわけではないからです。
遺言書を作成する場合、遺言執行者を選任することができます。
遺言執行者は、遺言書の内容を実現する人です。
遺言執行者は、遺言書の内容を実現するために必要な権限があります。
遺言執行者がいると、わずらわしい相続手続をおまかせすることができます。
遺言書を作成すると、家族がラクになります。
②共有持分を生前贈与
被相続人は生前に、自分の財産を自由に処分することができます。
自分の持っている共有持分を生前贈与することができます。
共有持分全部を一度に贈与することもできるし、共有持分を分割して複数回に分けて贈与することもできます。
贈与する財産によっては、贈与税が課せられるかもしれません。
一般的に言って、贈与税は想像以上に高額になりがちです。
高額な贈与をする場合、税務署や税理士に相談するといいでしょう。
③子どもには遺留分がある
被相続人は生前に、自分の財産を自由に処分することができます。
被相続人は死亡後に、自分の財産をだれに引き継いでもらうか遺言書で自由に決めることができます。
財産は被相続人が1人で築いたものではないでしょう。
家族の協力があってこそ築くことができた財産のはずです。
被相続人の名義になっているからといって、まったく無制約の自由にすることはできません。
今まで協力してきた家族に、酷な結果となることがあるからです。
被相続人に近い関係の相続人には、相続財産に対して最低限の権利が認められています。
相続財産に対して、認められる最低限の権利のことを遺留分と言います。
配偶者は、必ず相続人になります。
被相続人に子どもがいる場合、子どもは相続人になります。
配偶者と子どもは、遺留分が認められています。
遺留分が認められる人のことを遺留分権利者と言います。
遺留分を侵害するような遺言書であっても、作成することはできます。
公正証書遺言であっても、遺言書作成だけで遺留分を奪うことはできません。
遺留分を侵害するような生前贈与であっても、することはできます。
遺留分を侵害した場合、遺留分権利者は遺留分侵害額請求をするでしょう。
相続人間の大きなトラブルに発展します。
遺言書作成や生前贈与をする場合、遺留分に注意しましょう。
5遺言書作成と遺言執行を司法書士に依頼するメリット
不動産を共有している場合、共有者は親子や兄弟などの近い関係の人が多いでしょう。
共有者の片方に相続が発生した場合、他の共有者が相続人であることが多いでしょう。
遺産分割協議が必要なのに、共有者だから当然に相続できると誤解しているかもしれません。
相続人でもないのに、一方的に相続すると言われても困惑するでしょう。
相続人間のトラブルに発展しがちです。
相続手続は、タイヘンです。
単なる相続人の誤解や無理解で、トラブルに発展するからです。
不動産の共有は、デメリットが大きいのでおすすめできません。
事前の対策で、防げるトラブルと言えます。
司法書士は、相続対策をサポートすることができます。
相続対策をするために、司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。
夫婦共有名義で片方死亡したときの相続
1共有者でも優先されない
①相続人になる人は法律で決まっている
相続が発生したら、親族のうち一定の範囲の人が相続人になります。
だれが相続人になるかについて、民法で決められています。
相続人になる人は、次のとおりです。
(2)~(4)の場合、先順位の人がいる場合、後順位の人は相続人になれません。
(1)配偶者は必ず相続人になる
(2)被相続人に子どもがいる場合、子ども
(3)被相続人に子どもがいない場合、親などの直系尊属
(4)被相続人に子どもがいない場合で、かつ、親などの直系尊属が被相続人より先に死亡している場合、兄弟姉妹
相続人になるはずだった人が被相続人より先に死亡した場合、相続人になるはずだった人の子どもや子どもの子どもが相続します。
相続人になるはずだった人の子どもや子どもの子どもが相続することを代襲相続と言います。
②共有者が自動的に相続するわけではない
被相続人が不動産を共有している場合、被相続人の共有持分は相続人に相続されます。
被相続人が相続人のひとりと不動産を共有していた場合、何となく共有者が相続すると思うかもしれません。
共有者のひとりが相続人である場合、自動的に被相続人の共有持分を相続できるといったことはありません。
共有者であっても、優先権はないからです。
共有者が相続人だから、自動的に相続するといったルールはありません。
③共有者が取得するのは相続人不存在のとき
相続が発生したら、被相続人のものは相続人が相続します。
被相続人が不動産を共有していた場合、被相続人は不動産の共有持分を持っています。
被相続人の共有持分は、相続人が相続します。
共有者の片方が死亡した場合、他の共有者が共有持分を取得することを聞いたことがあるかもしれません。
共有者の片方が死亡した場合に他の共有者が共有持分を取得するのは、相続人が不存在の場合です。
被相続人が天涯孤独の場合、法律で決められた相続人は存在しないでしょう。
法律で決められた相続人はいても、相続人全員が相続放棄をすることがあります。
家庭裁判所で相続放棄が認められた場合、はじめから相続人でなくなります。
法律で決められた相続人全員が相続放棄をした場合、相続人不存在と言えます。
被相続人が払うべきお金を払わないまま、死亡することがあります。
相続人不存在であれば、相続人に払ってもらうことはできません。
被相続人の財産があれば、被相続人の財産から払ってもらいたいと望むでしょう。
被相続人が不動産を共有していた場合、共有持分は財産と言えます。
被相続人に特別縁故者がいることがあります。
特別縁故者とは、被相続人に特別な縁故があった人です。
家庭裁判所に特別縁故者と認められた場合、財産が分与を受けることができます。
受け取る人がいない財産は、国庫に帰属します。
国庫に帰属すべき財産が共有持分である場合、他の共有者が取得します。
被相続人に相続人がいる場合、相続人不存在ではありません。
共有者のひとりが死亡しても、自動で他の共有者が被相続人の共有持分を取得することはできません。
④ローンの有無を確認
夫婦で不動産を共有している場合、夫婦でお金を出し合って不動産を購入したケースでしょう。
不動産を購入するときに、夫婦それぞれがローンを組んでいることがあります。
被相続人にローンがある場合、ローンは相続財産です。
被相続人のローンは、原則として相続人が相続します。
多くの場合、被相続人がローンを組む際に団体信用生命保険に加入します。
ローン返済中に死亡した場合、保険金でローンは完済になります。
ローンを組む際に団体信用生命保険に加入することは義務ではありません。
ローン契約者の健康状態によっては、団体信用生命保険に加入できないことがあります。
団体信用生命保険に加入していない場合、そのままローンの返済義務が残ります。
ローンの返済義務は、相続人に相続されます。
2夫婦共有名義の建物で配偶者居住権
①配偶者短期居住権は夫婦共有名義の建物で認められる
配偶者短期居住権と配偶者居住権は、相続発生後に配偶者が住み場所を失わないようにするために作られた権利です。
配偶者短期居住権が認められる要件は、次のとおりです。
(1)法律上の配偶者であること
(2)被相続人の所有していた建物であること
(3)相続開始時に居住していたこと
配偶者短期居住権は、要件が満たされれば自動で認められます。
配偶者短期居住権が認められるためには、被相続人単独所有の建物に限られません。
被相続人が第三者と共有している建物であっても、配偶者短期居住権は認められます。
被相続人が配偶者以外の人と共有している建物であっても、差し支えありません。
配偶者短期居住権は、夫婦共有名義の建物で認められます。
②配偶者居住権は夫婦共有名義の建物で認められる
配偶者居住権が認められる要件は、次のとおりです。
(1)法律上の配偶者であること
(2)被相続人の所有していた建物であること
(3)相続開始時に居住していたこと
(4)配偶者居住権を設定
配偶者居住権は、自動で発生しません。
配偶者居住権を設定する必要があります。
配偶者居住権が認められるためには、被相続人単独所有の建物に限られません。
被相続人と配偶者の共有建物について、配偶者居住権が認められます。
配偶者以外の第三者と共有する建物について、配偶者居住権が認められません。
配偶者居住権は、原則として配偶者が終身居住する権利です。
配偶者以外の第三者と共有する建物である場合、配偶者居住権は大きな負担になります。
他の共有者にとって過大な負担になるから、配偶者以外の第三者と共有する建物である場合配偶者居住権は認められません。
配偶者居住権は、夫婦共有名義の建物で認められます。
3夫婦共有名義の片方死亡したときの相続で注意すること
①前婚の子どもは相続人
被相続人に子どもがいる場合、子どもは相続人になります。
子どもは、夫婦の子どもだけではありません。
被相続人に再婚歴がある場合、前婚配偶者との間に子どもがいることがあります。
前婚配偶者は、離婚した元配偶者は相続人になりません。
被相続人が離婚しても、子どもは被相続人の子どものままです。
離婚した元配偶者が引き取っても、被相続人の子どもです。
離婚した元配偶者の氏を名乗っていても、被相続人の子どもです。
相続が発生したら、被相続人の財産は相続財産になります。
相続財産の分け方は、相続人全員の合意で決める必要があります。
相続財産の分け方を決める話し合いを遺産分割協議と言います。
被相続人に前婚の子どもがいる場合、子どもは相続人です。
前婚の子どもを含めて、分け方の合意をしなければなりません。
一部の相続人を含めないで合意をしても、有効な合意ではありません。
前婚の子どもは、相続人になります。
②未成年の子どもに特別代理人
被相続人の子どもが赤ちゃんなどの未成年であることがあります。
未成年者は、物事のメリットデメリットを適切に判断することができません。
未成年者が契約などの法律行為をする場合、原則として親などの親権者が代わりに行います。
未成年者が相続人になる場合、親などの親権者は被相続人の配偶者でしょう。
被相続人の配偶者は、常に相続人になります。
未成年者と親などの親権者が同時に相続人である場合、親などの親権者は未成年者を代理することはできません。
親などの親権者の行為は、利益相反になるからです。
利益相反とは、一方がソンすると他方がトクをする関係です。
未成年者がソンをすると親などの親権者がトクする関係になるから、代理することはできません。
未成年にソンさせる意思はないなどの主張は、意味がありません。
親などの親権者の主観は、関係ありません。
客観的に利益相反と判断される場合、代理をすることができません。
親などの親権者が利益相反で代理ができない場合、家庭裁判所で代わりに人を選任してもらう必要があります。
代わりの人は、特別代理人と言います。
特別代理人は、未成年者の代わりに遺産分割協議に参加します。
未成年の子どもが相続人になる場合、特別代理人の選任が必要になります。
③自分のローンは残る
不動産を購入するときに、夫婦それぞれがローンを組んでいることがあります。
債務者がローン返済中に死亡した場合、団体信用生命保険の保険金でローンは完済になります。
ローンが完済になるのは、被相続人の債務だけです。
生存配偶者のローンは、今までどおり返済が必要です。
④抵当権抹消登記は申請が必要
ローンの返済が滞ったときに備えて、銀行は不動産を担保にします。
返済が滞ったときに備えて、担保にする権利を抵当権と言います。
ローンを組んだときに、不動産には抵当権設定登記がされています。
債務者がローン返済中に死亡した場合、団体信用生命保険の保険金でローンは完済になります。
ローンが完済になると、抵当権はなくなります。
抵当権がなくなっても、抵当権の登記は自動でなくなりません。
金融機関が自動で消してくれることはありません。
抵当権抹消登記は、当事者からの申請が必要です。
4相続前にできること
①遺言書作成
被相続人は生前に、自分の財産を自由に処分することができます。
被相続人は死亡後に、自分の財産をだれに引き継いでもらうか遺言書で自由に決めることができます。
遺言書で財産の行き先が決めてある場合、遺言書のとおりに分けることができます。
相続人全員で分け方の話し合いをする必要はありません。
遺言書は、作成するだけでは意味がありません。
遺言書の内容は、自動で実現するわけではないからです。
遺言書を作成する場合、遺言執行者を選任することができます。
遺言執行者は、遺言書の内容を実現する人です。
遺言執行者は、遺言書の内容を実現するために必要な権限があります。
遺言執行者がいると、わずらわしい相続手続をおまかせすることができます。
遺言書を作成すると、家族がラクになります。
②おしどり贈与を活用して共有持分を生前贈与
被相続人は生前に、自分の財産を自由に処分することができます。
自分の持っている共有持分を生前贈与することができます。
共有持分全部を一度に贈与することもできるし、共有持分を分割して複数回に分けて贈与することもできます。
贈与する財産によっては、贈与税が課せられるかもしれません。
おしどり贈与とは、贈与税の配偶者控除の特例です。
婚姻期間が20年以上の夫婦で居住用不動産を贈与したときに適用されます。
おしどり贈与の適用を受ければ、基礎控除とは別に2,000万円の控除が受けられます。
一般的に言って、贈与税は想像以上に高額になりがちです。
高額な贈与をする場合、税務署や税理士に相談するといいでしょう。
③子どもには遺留分がある
被相続人は生前に、自分の財産を自由に処分することができます。
被相続人は死亡後に、自分の財産をだれに引き継いでもらうか遺言書で自由に決めることができます。
財産は被相続人がひとりで築いたものではないでしょう。
家族の協力があってこそ築くことができた財産のはずです。
被相続人の名義になっているからといって、まったく無制約の自由にすることはできません。
今まで協力してきた家族に、酷な結果となることがあるからです。
被相続人に近い関係の相続人には、相続財産に対して最低限の権利が認められています。
相続財産に対して、認められる最低限の権利のことを遺留分と言います。
配偶者は、必ず相続人になります。
被相続人に子どもがいる場合、子どもは相続人になります。
配偶者と子どもは、遺留分が認められています。
遺留分が認められる人のことを遺留分権利者と言います。
遺留分を侵害するような遺言書であっても、作成することはできます。
公正証書遺言であっても、遺言書作成だけで遺留分を奪うことはできません。
遺留分を侵害するような生前贈与であっても、することはできます。
遺留分を侵害した場合、遺留分権利者は遺留分侵害額請求をするでしょう。
相続人間の大きなトラブルに発展します。
遺言書作成や生前贈与をする場合、遺留分に注意しましょう。
5遺言書作成と遺言執行を司法書士に依頼するメリット
不動産を共有している場合、共有者は親子や兄弟などの近い関係の人が多いでしょう。
共有者の片方に相続が発生した場合、共有者が相続人であることが多いでしょう。
共有者だから当然に相続できると誤解していることがあります。
他の相続人から見ると一方的に相続すると言われているのだからいい気持ちはしません。
相続人間のトラブルに発展しがちです。
相続手続は、タイヘンです。
単なる相続人の誤解や無理解で、トラブルに発展するからです。
不動産の共有は、デメリットが大きいのでおすすめできません。
相続人全員が合意できるのであれば、共有者が被相続人の共有持分を相続するのがおすすめです。
相続人全員の合意ができれば、です。
相続人全員が正しい知識があれば、防げるトラブルと言えます。
司法書士は、相続人をサポートすることができます。
適切な遺産分割協議をするために、司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。
現金を相続するときの注意点
1現金は相続財産
①現金は遺産分割の対象
相続が発生したら、被相続人のものは相続人全員の共有財産になります。
被相続人が手元に現金を残したまま死亡した場合、現金は相続財産です。
相続人全員の共有財産になるから、一部の相続人が勝手に取得することはできません。
現金は、遺産分割の対象です。
②相続財産の分け方は相続人全員の合意で決定
相続財産は、相続人全員の共有財産です。
現金は、相続人全員の共有財産です。
相続財産の分け方は、相続人全員の合意で決定します。
不動産や預貯金などと同様に、現金の分け方を決めるためには、相続人全員の合意が必要です。
③遺産分割協議書は相続人全員の合意の証明
相続財産の分け方を決めるための相続人全員の話し合いを遺産分割協議と言います。
遺産分割協議で相続財産の分け方について合意ができた場合、相続人全員の合意内容を文書に取りまとめます。
遺産分割協議書は、相続人全員の合意内容を取りまとめた文書です。
相続人全員に内容を確認してもらって記名し実印で押印してもらいます。
遺産分割協議書の押印が実印による押印であることを証明するため、印鑑証明書を添付します。
相続人全員の記名押印は、遺産分割協議書に間違いがないことの証明です。
遺産分割協議書は、相続人全員の合意内容の証明書です。
遺産分割協議書と相続人全員の印鑑証明書で、相続人全員の合意内容を客観的に証明することができます。
④現金を黙っていると使い込みトラブル
相続財産は、相続人全員の共有財産です。
一部の相続人が勝手に取得することはできません。
相続財産の分け方は、相続人全員の合意で決める必要があるからです。
自宅などに現金が保管されていた場合、相続人で情報共有することが大切です。
他の相続人に何も言わないと、使い込みトラブルになるおそれがあります。
現金は、存在や金額が客観的に分かりにくいと言えます。
預貯金は、入出金履歴を金融機関に照会することができます。
現金の存在を他の相続人が知らなかったら、遺産分割の対象から外すことができてしまいます。
もちろん、相続財産は相続人全員の共有財産です。
現金を隠したり勝手に取得する行為は、刑法上の横領や窃盗になるおそれがあります。
使い込みをしていなくても、相続人が疑心暗鬼になるとトラブルになります。
被相続人の現金を見つけた場合、相続人間で情報共有することが重要です。
2現金を相続するメリット
①現金の相続は名義変更が不要
現金の相続では、名義変更手続は不要です。
銀行などの預貯金は、現金ではありません。
預貯金の相続では、相続手続が必要です。
銀行などの預貯金は、銀行から預貯金を引き出す権利だからです。
銀行から預貯金を引き出す権利をだれが相続するのか、相続人全員で合意する必要があります。
現金を相続する場合も、現金をだれが相続するのか相続人全員で合意する必要があります。
現金であっても銀行の預貯金であっても、相続人全員の合意で分け方を決める必要があります。
相続人全員の合意ができれば、すぐに現金を取得することができます。
相続人全員の合意ができるまで、一部の相続人が勝手に使うことはできません。
現金は名義変更手続が不要である点がメリットです。
②現金はすぐに使うことができる
現金の相続では、名義変更手続は不要です。
遺産分割協議ができれば、すぐに取得することができます。
例えば、不動産を相続した場合、相続登記をする必要があります。
売却してお金で分けたいと合意しても、思うようにいかないことが多いでしょう。
相続人全員が納得するような値が付かないことがあります。
売却することに納得できても、時期がよくないと考えるかもしれません。
現金はすぐに使うことができる点がメリットです。
③公平に分けやすい
相続財産には、いろいろな種類の財産があることが通常です。
現金や預貯金は、分けやすい財産です。
不動産は、分けにくい財産の代表です。
相続財産の大部分が不動産であることがあります。
相続財産の分け方について、相続人全員の合意は難航しがちです。
不動産は、分けにくい財産だからです。
相続財産の分け方は、次の方法があります。
(1)現物分割
(2)換価分割
(3)代償分割
(4)共有
(5)用益権設定による分割
どの方法にも、メリットデメリットがあります。
不動産は、公平に分けることが難しいものです。
現金や預貯金は、1円単位まで簡単に分けることができます。
現金は公平に分けることができる点がメリットです。
④遺留分侵害額請求などに対応しやすい
被相続人は、原則として、自分の財産をだれに受け継がせるかは自由に決めることができます。
財産は被相続人が1人で築いたものではないでしょう。
家族の協力があってこそ、築くことができた財産のはずです。
被相続人の名義になっているからといって、まったく無制約の自由にすることはできません。
今まで協力してきた家族に、酷な結果となることがあるからです。
被相続人に近い関係の相続人には、相続財産に対して最低限の権利が認められています。
相続財産に対して、認められる最低限の権利のことを遺留分と言います。
分配を受けた財産が遺留分に満たない場合、遺留分侵害額請求をすることができます。
遺留分を侵害した人は、遺留分侵害額請求を拒否することはできません。
遺留分侵害額請求は、遺留分に相当する金銭を請求します。
原則として、すぐに現金で支払いをしなければなりません。
現金を相続した場合、遺留分侵害額請求に対応しやすいでしょう。
現金は遺留分侵害額請求などに対応しやすい点がメリットです。
3現金を相続したときの相続税
①相続税がかかるのは基礎控除額を超えたとき
資産家や有名人が死亡した後に、多額の相続税を納付した話を聞くことがあります。
高額な相続税を想像して、不安になるかもしれません。
相続税がかかるのは、相続財産が基礎控除額を超えたときのみです。
基礎控除額は、次の計算式で求められます。
基礎控除額=3000万円+600万円×相続人の人数
相続財産が基礎控除額に収まっていれば、相続税はかかりません。
相続税の申告をしなければならない人は、実際のところ10%にも満たないわずかな人です。
相続税の申告が必要なだけで、納税は必要ない人もたくさんいます。
相続税がかかるのは、基礎控除額を超えたときのみです。
②配偶者には相続税がほとんどかからない
相続税には、配偶者控除があります。
相続税の配偶者控除は、次のうちいずれか大きい方です。
・1億6000万円
・法定相続分
相続人が配偶者のみである場合、配偶者はすべての財産を相続します。
すべての財産が配偶者控除の対象です。
配偶者は、手厚く保護されています。
配偶者控除を適用すると、配偶者が相続税を納めることは稀です。
配偶者には、相続税がほとんどかかりません。
③現金は相続税対策がしにくい
相続税の対象額は、対象となる相続財産を評価して計算します。
現金を相続する場合、額面そのままの評価額です。
不動産を相続する場合、購入額より低い評価額になることが多いでしょう。
土地の相続税評価額は、時価の80%程度が多いです。
建物の相続税評価額は、時価の70%程度が多いです。
不動産には、相続税を少なくする特例や控除が複数設けられています。
不動産を相続する場合、相続税対策がしやすいと言えます。
現金には、相続税を少なくする特例や控除がありません。
現金を相続する場合、相続税対策がしにくいと言えます。
④自宅で現金が見つかったら
遺品整理をしていると、金庫や家具などから手許現金が見つかることがあります。
被相続人の現金であれば、相続財産です。
相続税の申告が必要な財産規模である場合、手許現金は申告する必要があります。
手許現金は、有無が分かりにくい財産です。
相続税申告をした後に、多額の現金が見つかることがあります。
申告すべき財産を見つけた場合、すぐに修正申告をする必要があります。
自主的に修正申告をした場合、加算税が免除されます。
税務調査などで指摘された後に修正申告をする場合、延滞税や過少申告加算税が課されます。
意図的な財産隠しと認められる場合、さらに重加算税が課されます。
自宅で現金が見つかったら、ただちに修正申告が必要です。
4遺産分割協議証明書作成を司法書士に依頼するメリット
遺産分割協議書と遺産分割協議証明書は遺産の分け方について、相続人全員による合意を取りまとめた文書です。
前提として、話し合いによる合意ができていなければ、文書にできません。
話し合いによる合意を適切に文書にする必要があります。
書き方に不備があるとトラブルを起こしてしまう危険があります。
せっかくお話合いによる合意ができたのに、取りまとめた文書の不備でトラブルになるのは残念なことです。
トラブルを防止するため、遺産分割協議書を作成したい方は、司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。
兄弟共有名義で片方死亡したときの相続
1兄弟共有名義で片方死亡したときの相続
①相続人になる人は法律で決まっている
相続が発生したら、親族のうち一定の範囲の人が相続人になります。
だれが相続人になるかについて、民法で決められています。
相続人になる人は、次のとおりです。
(2)~(4)の場合、先順位の人がいる場合、後順位の人は相続人になれません。
(1)配偶者は必ず相続人になる
(2)被相続人に子どもがいる場合、子ども
(3)被相続人に子どもがいない場合、親などの直系尊属
(4)被相続人に子どもがいない場合で、かつ、親などの直系尊属が被相続人より先に死亡している場合、兄弟姉妹
相続人になるはずだった人が被相続人より先に死亡した場合、相続人になるはずだった人の子どもや子どもの子どもが相続します。
相続人になるはずだった人の子どもや子どもの子どもが相続することを代襲相続と言います。
②先順位の人がいたら兄弟姉妹は相続人にならない
被相続人に子どもがいる場合、子どもは相続人になります。
被相続人に子どもがいない場合、親などの直系尊属が相続人になります。
兄弟姉妹が相続人になるのは、被相続人に子どもがいない場合で、かつ、親などの直系尊属が被相続人より先に死亡している場合です。
先順位の人がいる場合、後順位の人は相続人になりません。
先順位の人がいたら、兄弟姉妹は相続人になりません。
③共有者が取得するのは相続人不存在のとき
相続が発生したら、被相続人のものは相続人が相続します。
被相続人が不動産を共有していた場合、被相続人は不動産の共有持分を持っています。
被相続人の共有持分は、相続人が相続します。
共有者の片方が死亡した場合、他の共有者が共有持分を取得することを聞いたことがあるかもしれません。
共有者の片方が死亡した場合に他の共有者が共有持分を取得するのは、相続人が不存在の場合です。
被相続人が天涯孤独の場合、法律で決められた相続人は存在しないでしょう。
法律で決められた相続人はいても、相続人全員が相続放棄をすることがあります。
家庭裁判所で相続放棄が認められた場合、はじめから相続人でなくなります。
法律で決められた相続人全員が相続放棄をした場合、相続人不存在と言えます。
被相続人が払うべきお金を払わないまま、死亡することがあります。
相続人不存在であれば、相続人に払ってもらうことはできません。
被相続人の財産があれば、被相続人の財産から払ってもらいたいと望むでしょう。
被相続人が不動産を共有していた場合、共有持分は財産と言えます。
被相続人に特別縁故者がいることがあります。
特別縁故者とは、被相続人に特別な縁故があった人です。
家庭裁判所に特別縁故者と認められた場合、財産が分与を受けることができます。
受け取る人がいない財産は、国庫に帰属します。
国庫に帰属すべき財産が共有持分である場合、他の共有者が取得します。
被相続人に相続人がいる場合、相続人不存在ではありません。
共有者のひとりが死亡しても、自動で他の共有者が被相続人の共有持分を取得することはできません。
2兄弟共有名義の建物で配偶者居住権
①配偶者短期居住権は兄弟共有名義の建物で認められる
配偶者短期居住権と配偶者居住権は、相続発生後に配偶者が住み場所を失わないようにするために作られた権利です。
配偶者短期居住権が認められる要件は、次のとおりです。
(1)法律上の配偶者であること
(2)被相続人の所有していた建物であること
(3)相続開始時に居住していたこと
配偶者短期居住権は、要件が満たされれば自動で認められます。
配偶者短期居住権が認められるためには、被相続人単独所有の建物に限られません。
被相続人が第三者と共有している建物であっても、配偶者短期居住権は認められます。
被相続人が配偶者以外の人と共有している建物であっても、差し支えありません。
配偶者短期居住権は、兄弟共有名義の建物で認められます。
②配偶者居住権は兄弟共有名義の建物で認められない
配偶者居住権が認められる要件は、次のとおりです。
(1)法律上の配偶者であること
(2)被相続人の所有していた建物であること
(3)相続開始時に居住していたこと
(4)配偶者居住権を設定
配偶者居住権は、自動で発生しません。
配偶者居住権を設定する必要があります。
配偶者居住権が認められるためには、被相続人単独所有の建物に限られません。
被相続人と配偶者の共有建物について、配偶者居住権が認められます。
配偶者以外の第三者と共有する建物について、配偶者居住権が認められません。
配偶者居住権は、原則として配偶者が終身居住する権利です。
配偶者以外の第三者と共有する建物である場合、配偶者居住権は大きな負担になります。
他の共有者にとって過大な負担になるから、配偶者以外の第三者と共有する建物である場合配偶者居住権は認められません。
配偶者居住権は、兄弟共有名義の建物で認められません。
3共有を継続するとデメリットが大きい
デメリット①共有物を処分するには共有者全員の合意が必要
共有財産は、共有している人全員が合意しないと、処分はできません。
処分するとは、共有物を売却する、第三者に賃貸することなどです。
たくさんの人で共有している場合、合意がまとまりにくくなります。
共有者の多数決では、ありません。
1人でも反対の人がいると、共有者全員の合意があるとは言えなくなります。
1人でも反対の人がいると、処分はできません。
デメリット②共有者に相続が発生する
共有物を処分するためには、共有者全員の合意が必要です。
共有者が多くなると、共有者全員の合意が難しくなります。
簡単に、合意ができなくなります。
共有者全員の合意ができないから、売却などの判断は先延ばししがちです。
せっかくの資産なのに、事実上、利活用ができなくなります。
判断の先延ばしにより長期間経過すると、共有者に相続が発生することがあります。
共有者に相続が発生すると、共有者の共有持分は相続財産になります。
相続財産とは言うものの、利活用が難しい財産です。
共有者の相続人は、だれも積極的に相続したがらないでしょう。
死亡した共有者の共有持分を、相続人全員が法定相続分で細分化して共有することがあります。
だれもが相続したがらないから、やむを得ないともいえます。
このような相続が何人もの共有者の間で発生することがあります。
さらに共有者がたくさんになり、共有持分がさらに細分化されます。
相続したくない財産だから、相続登記を先延ばししがちです。
だれにどれだけの共有持分があるのか登記簿謄本を見ても、分からなくなります。
デメリット③共有持分を売却するおそれ
共有物全体を売却する場合、共有者全員の合意が必要です。
それぞれの共有者が持っている共有持分を売却する場合、他の共有者の合意は不要です。
あまり知られていませんが、共有者が持っている共有持分を買い取る業者がいます。
共有持分を買い取る業者は、ビジネスです。
遠慮なく共有者としての権利を主張します。
共有者としての権利とは、共有持分買取請求や共有物分割請求などです。
共有者間で話し合いができなければ、当然、裁判所に持ち込まれることになるでしょう。
共有持分を買い取る業者は、弁護士を付けてくるでしょう。
知識のない一般の人では、対応できません。
弁護士に依頼することになるでしょう。
一部の共有者が自分の共有持分を売却した場合、大きなトラブルに巻き込まれることになります。
4相続が発生する前にできること
①共有を解消する
不動産の共有は、デメリットが多くおすすめできません。
すでに不動産を共有しているのであれば、早期に単独所有にすることをおすすめします。
共有不動産を処分するには、共有者全員の合意が必要です。
気心が知れた兄弟で共有している場合、話し合いは比較的容易でしょう。
共有を解消するためには、次の方法があります。
(1)自分の共有持分を売渡す
(2)相手の共有持分を買取る
(3)共有者全員で不動産全体を売却する
どの方法をとるにしても、相手方との合意が不可欠です。
共有者のひとりに相続が発生した場合、共有者の共有持分は相続人が相続します。
気心が知れた兄弟だから気軽に話せたのに、兄弟の相続人となると気軽に話せないでしょう。
共有を解消するための合意が難しくなります。
共有のまま相続が発生した場合、家族が苦労します。
不動産を共有している場合、早めに共有を解消することをおすすめします。
②遺言書を作成して共有持分を遺贈
相続が発生したら、被相続人の財産は相続人が相続します。
先順位の人がいる場合、後順位の人は相続人になりません。
兄弟姉妹が相続人になるのは、被相続人に子どもがいない場合で、かつ、親などの直系尊属が被相続人より先に死亡している場合です。
兄弟姉妹が相続人にならない場合、兄弟姉妹が相続することはできません。
相続人にならないであっても、財産を引き継いでもらうことができます。
被相続人は、生前に遺言書を作成することができます。
遺言書で、自分の財産を相続人や相続人以外の人に譲ってあげることができます。
遺贈とは、遺言書で相続人や相続人以外の人に財産を譲ってあげることです。
兄弟姉妹は、相続人以外の人として遺贈を受けることができます。
遺言書は、作成するだけでは意味がありません。
遺言書の内容は、自動で実現するわけではないからです。
遺言書を作成する場合、遺言執行者を選任することができます。
遺言執行者は、遺言書の内容を実現する人です。
遺言執行者は、遺言書の内容を実現するために必要な権限があります。
遺言執行者がいると、わずらわしい相続手続をおまかせすることができます。
遺言書を作成して、他の共有者に共有持分を遺贈することができます。
5遺言書作成と遺言執行を司法書士に依頼するメリット
不動産を共有している場合、共有者は親子や兄弟などの近い関係の人が多いでしょう。
共有者の片方に相続が発生した場合、他の共有者が相続人であることが多いでしょう。
兄弟姉妹で共有している場合、相続人でないことがあります。
相続できないにもかかわらず、共有者だから当然に相続できると誤解しているかもしれません。
相続人でもないのに、一方的に相続すると言われても困惑するでしょう。
相続人間のトラブルに発展しがちです。
相続手続は、タイヘンです。
単なる相続人の誤解や無理解で、トラブルに発展するからです。
不動産の共有は、デメリットが大きいのでおすすめできません。
事前の対策で、防げるトラブルと言えます。
司法書士は、相続対策をサポートすることができます。
相続対策をするために、司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。
投資信託を相続
1投資信託は相続財産
①投資信託は金融商品
相続が発生したら、被相続人のものは相続人が相続します。
被相続人が生前保有していた財産が相続財産です。
相続財産は、相続人全員の共有財産です。
預貯金や株式以外に、いろいろな金融商品が販売されています。
被相続人が生前に投資信託を保有していることがあります。
投資信託は、金融商品のひとつです。
投資信託は、内容が複雑なものも多いものです。
投資に詳しくないから、よく分からないと思ってしまうかもしれません。
お金を預けて、資産運用の専門家が株式や債券で運用して、運用成果を分配してもらう仕組みです。
投資信託は、株式や債券で運用します。
投資信託の権利は、受益権と言います。
投資信託の受益権は、財産的な価値があります。
被相続人が保有していた投資信託の受益権は、相続財産です。
②投資信託に通帳はない
被相続人が銀行などに預貯金の口座を持っていた場合、通帳を持っているでしょう。
被相続人が投資信託を法有していた場合、通帳にあたるものがはじめからありません。
投資信託を保有している場合、証券会社などから手紙が届きます。
運用報告書や取引残高報告書などです。
自宅でこれらの書類がないか探してみましょう。
被相続人の預貯金の通帳を確認すると、証券口座への入出金履歴が見つかることがあります。
投資信託を保有していたことを知っている場合、どこの証券会社に口座があるのか探します。
取引していた証券会社が判明したら、証券会社に連絡します。
相続人は、証券会社に対して取引残高証明書の発行を請求することができます。
取引残高証明書には、どの投資信託を何口持っていたのか詳しく記載されています。
取引残高証明書の発行は、各相続人が単独で請求することができます。
③投資信託の受益権は当然分割されない
投資信託を相続するとは、運用成果を分配してもらう権利を相続することです。
投資信託の受益権は、口数を単位にしています。
当然に分割できると思うかもしれません。
投資信託の権利は、相続人全員の合意で分け方を決める必要があります。
仮に相続分が2分の1だからと言っても、被相続人の保有していた投資信託の口数の2分の1を相続できるわけではありません。
投資信託の受益権は、運用成果を分配してもらう権利だけではありません。
投資信託が適切に運用されているのか監督する権利があります。
投資信託の受益者は、出資者だからです。
投資信託の受益権は、単純な金銭支払請求権ではありません。
被相続人が投資信託を保有していた場合、投資信託を監督する権利も持っていたはずです。
投資信託を監督する権利は、分割することができません。
投資信託を監督する権利を含めて、投資信託の権利の分け方は相続人全員で決めなければなりません。
投資信託の受益権は、当然分割されません。
④投資信託の収益金は当然分割されない
投資信託は、運用成果を分配してもらう仕組みです。
あらかじめ決めらた日に、収益の分配金や償還金が支払われます。
投資信託の受益権は、当然分割されません。
投資信託の分け方は、相続人全員の合意で決めなければなりません。
なかなか相続人全員の合意ができないことがあります。
相続人全員が話し合いの途中であっても、決められた日になれば収益の分配金や償還金が支払われます。
相続発生後に相続人の話し合い中に発生した分配金や償還金は、当然に分割されません。
仮に相続分が2分の1だからと言っても、分配金や償還金の2分の1を相続できるわけではありません。
分配金や償還金を受け取る権利は、投資信託の受益権の一部と言えるからです。
分配金や償還金を受け取る権利だけを切り離すことはできません。
投資信託の受益権の分け方は、相続人全員の合意で決めなければなりません。
分配金や償還金を受け取るためには、相続人全員の合意が必要になります。
投資信託の収益金は、当然分割されません。
2相続発生で証券口座が凍結される
相続が発生したことを証券会社が知った場合、証券口座を凍結します。
口座の凍結とは、口座取引をすべて停止することです。
銀行の預貯金の口座と同様に相続手続が完了するまで、投資信託の処分などができなくなります。
相続財産は、相続人全員の共有財産です。
投資信託の権利は、相続人全員の合意で分け方を決める必要があります。
相続人全の合意ができないうちに、一部の相続人が勝手に投資信託を売却することがあります。
相続人全員の共有財産なのに勝手に独り占めをしたら、大きなトラブルになるでしょう。
証券会社などは他の相続人から強い抗議を受けることになります。
抗議を受けるだけでなく、相続人のトラブルに巻き込まれることになるかもしれません。
被相続人の財産が守られないとなったら、証券会社の信用は失墜するでしょう。
大切な財産を預かているのだから、信用失墜は何としても避けたいはずです。
相続人間のトラブルに巻き込まれないため、相続発生を知ったら証券口座は凍結されます。
3投資信託の相続手続
①遺産分割協議で相続人全員の合意
被相続人が保有していた投資信託は、相続財産です。
相続財産を分けるためには、相続人全員で話し合いによる合意をする必要があります。
相続財産は、相続人全員の共有財産です。
一部の相続人が勝手に処分することはできません。
投資信託の分け方について相続人全員の合意ができたら、合意内容を文書に取りまとめます。
相続財産の分け方について相続人全員合意内容を取りまとめた文書を遺産分割協議書と言います。
遺産分割協議書は、相続人全員が確認のうえ記名し実印で押印します。
遺産分割協議書の押印が実印によるものであることを証明するため、印鑑証明書を添付します。
②相続手続書類を提出
投資信託の相続手続は、証券会社ごとに多少異なります。
おおむね、次の書類が必要です。
(1)名義書換請求書
(2)被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本
(3)相続人の現在戸籍
(4)相続人全員による遺産分割協議書
(5)相続人全員の印鑑証明書
③相続人の口座開設
投資信託を相続する場合、相続人の証券口座が必要です。
相続人がその証券会社に口座を持っていない場合、あらかじめ、口座開設が必要になります。
被相続人の口座から直接投資信託を売却することはできません。
口座開設には、本人確認書類やマイナンバーが分かる書類が必要です。
④相続人名義の口座へ移管
投資信託を売却できるようになるのは、相続手続が完了してからです。
相続人名義の口座に移管されたら、相続人自身の固有の財産です。
保有し続けることも売却することも、自由にできます。
⑤被相続人の口座閉鎖
被相続人の資産がすべて移管された段階で、被相続人の口座は閉鎖されます。
4投資信託を相続するときの注意点
①投資信託は価格変動する
投資信託は、株式や債券で運用します。
株式や債券は、日々大きな値動きがあります。
売却時期や方法で、売却金に大きな差が出ることがあります。
相続人全員の話し合いをしている間にも、大きな値動きがあります。
売却時期や方法で、トラブルになるおそれがあります。
相続人間のトラブルを防止するため、売却時期や方法について合意しておくといいでしょう。
合意内容は、遺産分割協議書に明記するのがおすすめです。
②遺産分割協議中も収益分配金が入金される
相続財産の分け方について、相続人全員で合意できるまで長引くことがあります。
相続人全員の話し合いをしている間にも、収益分配金が入金されることがあります。
収益分配金相当額をどうするのかについても、話し合いで合意しておく必要があります。
これらの合意事項は、忘れず遺産分割協議書に盛り込みましょう。
③遺産分割協議書の書き方不備で贈与税
投資信託をどのように分けるか、相続人全員の合意で決定します。
特定の相続人が投資信託を相続して、他の相続人はその分のお金をもらう方法があります。
投資信託を売却して、売却金を相続人で分ける方法でもいいでしょう。
これらの合意事項は、忘れず遺産分割協議書に盛り込みます。
遺産分割協議書の書き方が不適切な場合、贈与とみなされて贈与税がかかるおそれがあります。
一般的に、贈与税は想像以上に高額です。
④投資信託を売却する場合、解約違約金に注意
投資信託の種類によっては一定の期間に投資信託を売却した場合、解約違約金がかかる特約を定めていることがあります。
投資信託を売却して、売却金を相続人で分ける方法を検討する場合、解約違約金がかかるのか確認しましょう。
解約違約金がかかってでも売却するのか、解約違約金がかからない時期まで待って売却するのか、充分に検討する必要があります。
投資信託は、株式や債券で運用します。
価値が大きく上がることも、大きく下がることもあります。
解約違約金がかからない時期まで待って売却する場合、投資信託自体の価値が大きく下がることもあり得ます。
売却時期や方法でトラブルになることのないように、話し合いで合意しておく必要があります。
⑤投資信託を売却するときの税金に注意
投資信託は、価値が大きく上がることも大きく下がることもあります。
被相続人が投資信託を購入したときと比べて、売却するときには大きく値上がりしていることがあります。
投資信託の値上がり益は、課税対象になります。
5投資信託の相続を司法書士に依頼するメリット
金融商品にあまり関心のない相続人は、投資信託がよく分からないでしょう。
一般の預貯金であれば、値動きがありません。
話し合いが長引いても、あまり大きな影響はありません。
投資信託は、株式や債券で運用します。
日々、大きな値動きがあります。
解約違約金がかかったり、税金がかかったりします。
預貯金などの相続よりトラブルになりやすいものです。
証券会社などの手続も、分かりにくいことが多いものです。
相続手続は司法書士などの専門家に、丸ごとおまかせできます。
トラブルなく円満な相続手続をしたい方は、司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。
共有名義人の片方が死亡したときの相続
1共有者であっても優先権はない
①相続人になる人は法律で決まっている
相続が発生したら、親族のうち一定の範囲の人が相続人になります。
だれが相続人になるかについて、民法で決められています。
相続人になる人は、次のとおりです。
(2)~(4)の場合、先順位の人がいる場合、後順位の人は相続人になれません。
(1)配偶者は必ず相続人になる
(2)被相続人に子どもがいる場合、子ども
(3)被相続人に子どもがいない場合、親などの直系尊属
(4)被相続人に子どもがいない場合で、かつ、親などの直系尊属が被相続人より先に死亡している場合、兄弟姉妹
相続人になるはずだった人が被相続人より先に死亡した場合、相続人になるはずだった人の子どもや子どもの子どもが相続します。
相続人になるはずだった人の子どもや子どもの子どもが相続することを代襲相続と言います。
②共有者が自動的に相続するわけではない
被相続人が不動産を共有している場合、被相続人の共有持分は相続人に相続されます。
被相続人が相続人のひとりと不動産を共有していた場合、何となく共有者が相続すると思うかもしれません。
共有者のひとりが相続人である場合、自動的に被相続人の共有持分を相続できるといったことはありません。
共有者であっても、優先権はないからです。
共有者が相続人だから、自動的に相続するといったルールはありません。
③共有者が共有持分を取得するためには遺産分割協議
相続が発生したら、被相続人のものは相続人全員の共有財産になります。
相続財産の分け方は、相続人全員の合意で決める必要があります。
被相続人の共有持分は、相続財産になります。
相続人のうちだれが相続するのか、相続人全員の合意で決めなければなりません。
相続人が共有者のひとりであっても、自動的に共有持分を相続することはできません。
共有者のひとりである相続人が自動的に相続できると誤解しているかもしれません。
誤解があると、相続人間で話し合いが付かなくなるおそれがあります。
相続人全員の合意ができるのであれば、共有者である相続人が相続できるといいでしょう。
相続人全員の合意が難しい場合、安易に共有にすることはおすすめできません。
不動産の共有は、デメリットが大きいからです。
2不動産の共有はデメリットが大きい
デメリット①共有物を処分するには共有者全員の合意が必要
共有財産は、共有している人全員が合意しないと、処分はできません。
処分するとは、共有物を売却する、第三者に賃貸することなどです。
たくさんの人で共有している場合、合意がまとまりにくくなります。
共有者の多数決では、ありません。
1人でも反対の人がいると、共有者全員の合意があるとは言えなくなります。
1人でも反対の人がいると、処分はできません。
デメリット②共有者に相続が発生する
共有物を処分するためには、共有者全員の合意が必要です。
共有者が多くなると、共有者全員の合意が難しくなります。
簡単に、合意ができなくなります。
共有者全員の合意ができないから、売却などの判断は先延ばししがちです。
せっかくの資産なのに、事実上、利活用ができなくなります。
判断の先延ばしにより長期間経過すると、共有者に相続が発生することがあります。
共有者に相続が発生すると、共有者の共有持分は相続財産になります。
相続財産とは言うものの、利活用が難しい財産です。
共有者の相続人は、だれも積極的に相続したがらないでしょう。
死亡した共有者の共有持分を、相続人全員が法定相続分で細分化して共有することがあります。
だれもが相続したがらないから、やむを得ないともいえます。
このような相続が何人もの共有者の間で発生することがあります。
さらに共有者がたくさんになり、共有持分がさらに細分化されます。
相続したくない財産だから、相続登記を先延ばししがちです。
だれにどれだけの共有持分があるのか登記簿謄本を見ても、分からなくなります。
デメリット③共有持分を売却するおそれ
共有物全体を売却する場合、共有者全員の合意が必要です。
それぞれの共有者が持っている共有持分を売却する場合、他の共有者の合意は不要です。
あまり知られていませんが、共有者が持っている共有持分を買い取る業者がいます。
共有持分を買い取る業者は、ビジネスです。
遠慮なく共有者としての権利を主張します。
共有者としての権利とは、共有持分買取請求や共有物分割請求などです。
共有者間で話し合いができなければ、当然、裁判所に持ち込まれることになるでしょう。
共有持分を買い取る業者は、弁護士を付けてくるでしょう。
知識のない一般の人では、対応できません。
弁護士に依頼することになるでしょう。
一部の共有者が自分の共有持分を売却した場合、大きなトラブルに巻き込まれることになります。
3共有者である被相続人に相続人がいないときの共有持分の行方
①相続債権者がいる場合
被相続人が天涯孤独で親族がいないこともあります。
配偶者、子ども、親などの直系尊属、兄弟姉妹がだれもいない場合、相続人不存在になります。
相続人がいても、相続放棄をすることがあります。
家庭裁判所で相続放棄が認められた場合、はじめから相続人でなくなります。
相続人不存在の場合、相続財産は清算されます。
原則として、相続財産は売却して、相続債権者への支払にあてられます。
被相続人が共有持分を持っていた場合、共有持分は相続財産になります。
共有持分は売却しようとしても、買い手が見つからないのが通常です。
買い手が見つかったとしても、著しく価格が低くなってしまいます。
確かに、共有持分を買い取る業者はいます。
買い取り額は、おおむね時価の1~3割程度です。
多くの場合、他の共有者に買取をお願いすることになります。
被相続人と不動産を共有していた人が対価を支払って、被相続人の共有持分を買い取ることになります。
②特別縁故者がいる場合
特別縁故者とは、被相続人に特別な縁故があった人です。
内縁の配偶者や事実上の養子など被相続人と生計を同じくしていた者や被相続人の療養看護に努めた者などです。
家庭裁判所に認められれば、特別縁故者は被相続人の財産を受け取ることができます。
受け取る財産は、家庭裁判所が決めます。
被相続人の財産の全部であることもあるし、一部だけのこともあります。
被相続人がたくさんの財産を残しても、特別縁故者が受け継ぐ財産はほんの少ししか認められないこともあります。
③相続債権者も特別縁故者もいない場合
被相続人と不動産を共有していた人が共有持分を取得します。
4マンションは共有者が取得できない
マンションは、建物部分と敷地権の共有部分があります。
建物部分は単独所有、敷地権は共有です。
建物部分と敷地権の共有部分は、所有者を一致させるルールになっています。
所有者を一致させないと、売却のとき混乱するからです。
相続債権者も特別縁故者もいない場合、相続財産は国庫に帰属します。
建物部分は単独所有なので、国庫に帰属します。
敷地権が共有になっていても、他の共有者が取得することはできません。
所有者を一致させるルールがあるからです。
他の共有者が取得すると、所有者を一致させるルールを守れなくなるからです。
敷地権は、建物部分と一緒に国庫に帰属します。
所有者を一致させるルールが優先されるからです。
5共有者が受け継ぐのは費用と時間がかかる
共有持分を持つ人が死亡した場合、被相続人の共有持分は相続財産になります。
相続財産は、相続人が相続します。
相続人不存在の場合、相続債権者に支払われます。
債権者に支払っても余りがある場合、特別縁故者に分与されます。
特別縁故者に分与しても余りがある場合、他の共有者が受け継ぎます。
他の共有者が受け継ぐまで、手続が複雑です。
共有者が特別縁故者と話し合いをしたり財産を勝手に分けたりすることはできません。
家庭裁判所に相続財産清算人を選んでもらうところから、手続がスタートします。
相続財産清算人と家庭裁判所の手を借りて、ひとつひとつ手続をするしかありません。
相続財産清算人を選んでもらうためには、家庭裁判所に予納金を納める必要があります。
予納金は管理する財産の状況によって違いますが、100万円程度かかるのが目安です。
他の共有者が受け継ぐまで、たくさんの費用がかかります。
被相続人が死亡してから、共有者が受け継ぐまで1年以上の時間がかかります。
他の共有者が受け継ぐまで、長い時間がかかります。
6遺言書があると手続がラク
不動産を共有している人は、遺言書を書いて財産の行き先を指定しましょう。
共有持分は、遺言書で共有者に遺贈することや死因贈与をすることができます。
共有者に自分の共有持分を受け取ってもらう気持ちがある場合、遺言書は有効です。
遺言書1枚あると、手続がラクになるからです。
遺言書がない場合、家庭裁判所の手を借りて1年以上の時間をかけて手続することになります。
遺贈とは、遺言書で、相続人や相続人以外の人に、財産を受け取ってもらう制度です。
だれに受け取ってもらうかは、遺言者本人が決めることができます
共有持分を特別縁故者に遺贈することや死因贈与をすることができます。
家庭裁判所は特別縁故者と認めてくれることも、認めてくれないこともあります。
7遺言書作成と遺言執行を司法書士に依頼するメリット
不動産を共有している場合、共有者は親子や兄弟などの近い関係の人が多いでしょう。
共有者の片方に相続が発生した場合、共有者が相続人であることが多いでしょう。
共有者だから当然に相続できると誤解していることがあります。
他の相続人から見ると一方的に相続すると言われているのだからいい気持ちはしません。
相続人間のトラブルに発展しがちです。
相続手続は、タイヘンです。
単なる相続人の誤解や無理解で、トラブルに発展するからです。
不動産の共有は、デメリットが大きいのでおすすめできません。
相続人全員が合意できるのであれば、共有者が被相続人の共有持分を相続するのがおすすめです。
相続人全員の合意ができれば、です。
相続人全員が正しい知識があれば、防げるトラブルと言えます。
司法書士は、相続人をサポートすることができます。
適切な遺産分割協議をするために、司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。
不動産相続で配偶者居住権
1相続人になる人は法律で決まっている
相続が発生したら、親族のうち一定の範囲の人が相続人になります。
だれが相続人になるかについては、民法で決められています。
相続人になる人は、次のとおりです。
②~④の場合、先順位の人がいる場合、後順位の人は相続人になれません。
①配偶者は必ず相続人になる
②被相続人に子どもがいる場合、子ども
③被相続人に子どもがいない場合、親などの直系尊属
④被相続人に子どもがいない場合で、かつ、親などの直系尊属が被相続人より先に死亡している場合、兄弟姉妹
相続人になるはずだった人が被相続人より先に死亡した場合、相続人になるはずだった人の子どもや子どもの子どもが相続します。
相続人になるはずだった人の子どもや子どもの子どもが相続することを代襲相続と言います。
2再婚歴があると相続が複雑になる
配偶者は、必ず相続人になります。
配偶者とは、相続が発生した時点の法律上の配偶者です。
資産家の人が再婚を希望する場合、子どもから強い反発を受けることがあります。
親の結婚を祝福したい気持ちはあっても、将来、発生する相続を考えると賛成できなくなるからです。
被相続人に配偶者がいない場合、相続財産は子どもで分けることになります。
被相続人に配偶者がいる場合、相続財産を配偶者と子どもで分け合うことになります。
配偶者と子どもで相続財産を分ける場合、配偶者の法定相続分は2分の1です。
子どもから見ると、財産を奪われる気持ちになります。
相続財産を脅かす存在に見えても不思議ではありません。
再婚配偶者と子どもの関係性がいいことは、あまりないでしょう。
3再婚した配偶者が相続した財産の行方
相続が発生したら、配偶者は必ず相続人になります。
自分が死亡した後も配偶者が自宅で安心して住み続けられるように、遺言書を書いておこうと考えるケースがあります。
遺言書を書くことで、トラブルを防止しようとするものです。
再婚の場合、もう少し先を考える必要があります。
被相続人が再婚である場合、前婚配偶者との間の子どもと後婚配偶者の間に血縁関係がありません。
被相続人の財産が後婚配偶者に相続された後、後婚配偶者が相続した財産は後婚配偶者の血縁関係者に相続されます。
前婚配偶者との間の子どもは、被相続人の後婚配偶者と血縁関係がないので後婚配偶者の相続人にはなりません。
被相続人の子どもにとって思い入れのある実家や先祖伝来の土地を、血縁関係がない後婚配偶者が相続した場合に問題になります。
後婚配偶者が相続したら、その後は、後婚配偶者の連れ子などが先祖伝来の土地を相続することになるからです。
先祖代々守ってきた土地を血縁関係のない人に相続されることに心理的抵抗を感じ、トラブルに発展します。
由緒がある家柄であると、被相続人自身も血縁関係のある人に受け継いでもらいたいと考えていることがあります。
自分が死亡した後、配偶者が自宅で住み続けられるようにしてあげたいが、配偶者死亡後は自分の血縁関係者が受け継いでもらいたいといった希望です。
この場合、自分の子どもに遺贈する旨の遺言を書いてもらうという方法も考えられます。
配偶者が遺言書を書くかどうかは、配偶者の気持ち次第です。
たとえ配偶者が遺言書を書いたとしても、自分が死亡した後に書き換えるかもしれません。
遺言書は何度でも書き直しができるし、何度でも撤回ができます。
書き直しや撤回はしませんという約束は無効です。
4配偶者居住権は住居を確保する制度
①配偶者居住権とは
配偶者居住権は、相続が発生してから配偶者が住む場所を失うことがないように保護するために作られた制度です。
配偶者居住権は、自動的に発生することはありません。
遺言書や遺産分割協議などで、権利を設定する必要があります。
②配偶者居住権は法律上の配偶者のみ
配偶者居住権は、法律上の配偶者だけ取得することができます。
事実婚・内縁の配偶者は、配偶者居住権を取得することはできません。
配偶者以外の相続人も取得することはできません。
③配偶者居住権は原則配偶者の終身存続
配偶者短期居住権は期間制限があります。
配偶者居住権の存続期間は、原則として終身です。
遺言書や遺産分割協議などによって、存続期間を決めることもできます。
④配偶者居住権は登記できる
配偶者居住権は、登記をすることができます。
要件を満たせば、配偶者短期居住権と配偶者居住権のいずれも、登記をしなくても成立します。
配偶者居住権はせっかく登記できるのに、登記しないと大きな不利益があります。
例えば、建物所有者が建物を売却してしまうことがあります。
建物の買主は、建物を使うため立ち退きを求めるでしょう。
配偶者居住権の登記があれば、建物の買主に立ち退きたくないなどと文句を言うことができます。
登記がしてあれば、建物の買主に配偶者居住権を盾にそのまま住み続けることができます。
登記がしてなければ、建物の買主に配偶者居住権があるから立ち退きたくないなどと文句を言うことはできません。
建物の買主に立ち退きたくないなどと文句を言うことができるのは、登記の重要な効力です。
配偶者居住権が成立する場合、建物所有者は配偶者を追い出すことはできません。
建物所有者は、配偶者居住権設定の当事者です。
配偶者居住権の登記があっても登記がなくても、配偶者居住権の行使の邪魔をすることはできません。
配偶者が建物から立ち退かなければならなくなったのは、もとはと言えば、建物所有者が建物を売却したせいです。
建物所有者が建物を売却したことで、配偶者は追い出されたと言えます。
配偶者が追い出されたことは、建物所有者が配偶者居住権の行使の邪魔をしたことと言えます。
配偶者居住権の行使の邪魔をしたことに対して、配偶者は損害賠償請求をすることができます。
配偶者は損害賠償請求をすることができますが、住み慣れた自宅を立ち退くこと負担は大きいと言えます。
5住む権利と所有権を分けて相続することができる
①配偶者居住権で相続財産の分け方の選択肢が増えた
配偶者居住権は、配偶者が自宅に住み続けることができる権利です。
配偶者居住権を設定した場合、建物所有権から配偶者居住権を分離したと言えます。
建物所有権は、配偶者居住権の負担付き所有権です。
相続財産に建物がある場合、住む権利と所有権を分けて相続することができます。
配偶者居住権は、自動的に発生することはありません。
相続財産の分け方の選択肢を増やすものです。
従来どおり、住む権利と所有権を分けずに相続することができます。
②配偶者居住権は遺言書で設定できる
被相続人の気持ちとしては、自分が死亡した後も配偶者が自宅で住み続けられるようにしてあげたいでしょう。
被相続人に再婚歴がある場合、最終的には自分の血縁関係がある子どもに受け継いでもらいたい気持ちもあるでしょう。
被相続人は遺言書を作成して、配偶者居住権を遺贈することができます。
遺言書で、自分の血縁関係がある子どもに配偶者居住権の負担付所有権を相続させることができます。
遺言書で遺言執行者を決めておくことができます。
遺言執行者は、遺言書の内容を実現する人です。
遺言執行者は、配偶者居住権設定登記や相続登記をすることができます。
遺言執行者がいると確実に遺言内容を実現してもらえるので安心です。
③配偶者居住権は遺産分割協議で設定できる
配偶者居住権は、設定行為が必要です。
相続財産は、相続人全員の合意で分け方を決定します。
相続財産に被相続人の自宅がある場合、相続人全員の合意で配偶者居住権を設定することができます。
配偶者居住権を設定することは、相続財産の分け方の選択肢のひとつだからです。
④配偶者の死亡で配偶者居住権は消滅
配偶者居住権の存続期間は、原則として終身です。
配偶者が死亡した場合、配偶者居住権は終了します。
配偶者は、所有権を相続したのでないから配偶者の連れ子などに引き継がれることはありません。
子どもが相続した配偶者居住権の負担付き所有権は、負担のない所有権になります。
先祖伝来の地は自分の家系の人に受け継いでもらいたいという気持ちをかなえることができます。
6配偶者居住権がある相続を司法書士に依頼するメリット
相続財産のほとんどが自宅不動産のみである場合、相続財産の分け方を決める話し合いは難航します。
住み慣れた自宅で住み続けたい相続人と相続財産を受け取りたい相続人が合意できないからです。
被相続人に再婚歴がある場合、相続人になる子どもと配偶者は血縁関係がありません。
被相続人の配偶者は、相続財産を脅かす存在に見えてしまいます。
相続人になる子どもと配偶者に血縁関係がある場合、配偶者の死亡後に配偶者が受け継いだ財産を相続することができます。
相続人になる子どもと配偶者に血縁関係がない場合、配偶者の死亡後に配偶者が受け継いだ財産を相続することができません。
配偶者の連れ子などが相続人になります。
被相続人の配偶者が自宅に住み続けることに賛成できても、後に配偶者の血縁関係者に相続されることに賛成できないことがあります。
配偶者居住権の制度ができたことで、住む権利と所有権を分けて相続することができるようになりました。
配偶者居住権は、新しい選択肢です。
メリットばかりでなくデメリットもあります。
メリットデメリットを充分に理解して納得して合意することが重要です。
配偶者居住権の設定を検討する方は、司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。
借金を残して死亡したときの相続
1借金は相続財産
相続が発生すると、原則として、被相続人の財産は相続人が相続します。
相続人が相続する財産が相続財産です。
相続財産は、プラスの財産とマイナスの財産があります。
プラスの財産もマイナスの財産も、相続財産です。
相続財産と聞くと、プラスの財産だけイメージしがちです。
不動産、預金、株式や投資信託などの有価証券、現金などです。
相続財産は、プラスの財産だけではなくマイナスの財産を含みます。
マイナスの財産とは、借金やローンなどです。
借金やローンなどのマイナスの財産は、相続財産です。
被相続人が第三者の連帯保証人であった場合、連帯保証人の地位は相続財産です。
連帯保証人の地位は、相続で相続人に受け継がれます。
被相続人がローン組むときに、相続人が連帯保証人になることがあります。
この場合の連帯保証人の地位は相続財産ではありません。
相続とは関係ない相続人の固有の義務です。
2借金と連帯保証人の調べ方
まず、契約書、借入明細書や督促状を探します。
通帳を記帳して取引履歴を確認すると、ローンの引落が見つかることもあります。
信用情報機関に照会すると、詳しく確認することができます。
①消費者金融からの借入 日本信用情報機構(JICC)
②クレジット会社からの借入 株式会社シー・アイ・シー(CIC)
③銀行からの借入 全国銀行協会全国銀行個人信用情報センター
すべてではありませんが、信用情報機関に連帯保証人が登録されている場合があります。
信用情報機関に照会することで、被相続人が連帯保証人になっていたことが判明するかもしれません。
不動産がある場合、抵当権や根抵当権が登記されている場合があります。
不動産を担保として借入がある可能性が高いので必ず確認しましょう。
3借金を残して死亡したときの遺族の対応
①借金を返済する
相続が発生した場合、被相続人のものは相続人全員の共有財産になります。
借金を引き継いで返済する場合、特別な手続はありません。
②相続放棄をする
相続が発生した場合、原則として、被相続人のプラスの遺産もマイナスの遺産も相続人が受け継ぎます。
被相続人のプラスの遺産もマイナスの遺産も受け継がないことを相続の放棄といいます。
相続放棄をすると、プラスの遺産を引き継がなくなりますが、マイナスの遺産も引き継ぐことがなくなります。
親の借金を引き継がないために相続放棄をするなどのケースが一般的です。
相続放棄は、家庭裁判所に対して、必要な書類をを添えて相続放棄をしたい旨の申立てをします。
この申立ては相続があったことを知ってから、原則として、3か月以内にする必要があります。
③消滅時効を援用する
消滅時効とは、長期間権利行使をしない場合に権利が行使できなくなる制度です。
債権者は、借金を払って欲しいと請求する権利があります。
債務者の事情を察して、借金を請求せずに長期間経過することがあります。
借金を請求せずに長期間経過した場合、条件にあてはまれば権利行使が許されなくなります。
長期間経過しても、自動的に借金がなくなるわけではありません。
消滅時効が完成すると、借金を払う必要がなくなります。
借金を払わなくてよくなることを、債務者が不道徳と思うことがあります。
お金を借りたのだからきちんとお金を返すべきだと考えている債務者に対して、消滅時効を押し付けるべきではありません。
消滅時効によって利益を受けるか受けないか、債務者は判断することができます。
時効の利益を受ける意思表示を時効の援用と言います。
時効を援用する場合、配達証明付き内容証明郵便で通知するのがおすすめです。
④相続財産を処分したら相続放棄が無効になる
単純承認をした場合、相続放棄をすることはできません。
相続放棄はできないのに、家庭裁判所に相続放棄の手続をして、相続放棄が認められても無効です。
単純承認したとみなされる行為は、法律で定められています。
相続財産の名義変更をした、相続財産である銀行の預貯金を引き出して使ってしまった場合が典型的です。
消滅時効の援用は、単純承認になります。
消滅時効を援用することは、相続財産の処分行為だからです。
⑤生命保険の死亡保険金は受け取ることができる
被相続人が死亡した場合に、生命保険の死亡保険金が支払われることがあります。
原則として生命保険の保険金を受け取る権利は、相続人の固有の財産です。
受取人が「相続人」と指定してあっても、相続で受け取るものではありません。
被相続人の死亡をきっかけにして、保険契約によって受取人が保険金を受け取るものです。
多くの場合、被相続人は生前に生命保険の死亡保険金を受け取る権利を持っていなかったでしょう。
相続によって、被相続人から受け継いだものではありません。
相続人の固有の財産だから、相続放棄をした人は生命保険の保険金を受け取ることができます。
生命保険の保険金を受け取ったことで、相続放棄が無効になることはありません。
4住宅ローンを残して死亡したときの相続
①住宅ローンが完済になる場合
被相続人がマイホームを購入したとき、銀行などから融資を受けることがあります。
被相続人が住宅ローンを残して死亡した場合、マイホームと住宅ローンが相続財産になります。
被相続人が住宅ローンを組んでいて、かつ、団体信用生命保険に加入している場合、住宅ローンの残りは保険金で完済されます。
住宅ローンが完済される場合、借金のことは心配せずに相続財産の分け方の話し合いをすることができます。
団体信用生命保険に加入していたか分からない場合、金融機関に確認することができます。
②住宅ローンが完済にならない場合
被相続人が住宅ローンを組んでいる場合でも、団体信用生命保険に加入していないことがあります。
年齢などの条件に合わない場合、団体信用生命保険に加入できないケースがあるからです。
住宅ローンは保険金で完済されないから、マイナスの財産として相続財産になります。
相続財産だから相続人全員の話し合いで、相続財産の分け方を決めることができます。
多くの場合、マイホームを相続する人が住宅ローンも引き継ぐ合意をします。
マイホームを相続する人が住宅ローンも引き継ぐ合意をした場合であっても、金融機関は相続人全員に対して法定相続分で借金の返済を求めることができます。
マイホームを相続する人が住宅ローンも引き継ぐ合意をした場、合意内容は相続人間の内部的な合意に過ぎないからです。
金融機関には、関係ない話だからです。
マイホームを相続する人が住宅ローンを払えなくなった場合、他の相続人は法定相続分で住宅ローンを返済しなければなりません。
5相続放棄をしても相続人が連帯保証人
相続放棄をすると、プラスの遺産を引き継がなくなりますが、マイナスの遺産も引き継ぐことがなくなります。
被相続人が第三者の借金について、連帯保証人になっていることがあります。
被相続人が連帯保証人であった場合、連帯保証人の義務は相続人が相続します。
相続人が相続放棄をした場合、連帯保証人の義務を相続しません。
被相続人がローン組むときに、相続人が連帯保証人になることがあります。
連帯保証人は、ローンを組んだ人がお金を返せなくなった場合に肩代わりをしますと銀行に約束した人です。
ローンを組んだ人がお金を返せなくなっても、銀行は肩代わりの人に請求することができます。
銀行は、安心してお金を貸すことができます。
被相続人が多額のローンを残したまま死亡した場合、相続人は相続放棄をすることができます。
相続人が相続放棄をした場合、被相続人の借金を相続することはありません。
相続人として被相続人のローンを返す義務はなくなりますが、肩代わりの義務はそのままです。
借金を肩代わりする義務は、銀行と相続人がした契約だからです。
相続とは関係ない相続人自身の固有の義務だからです。
被相続人がローンを残したまま死亡した後、相続人が相続放棄をしたら借金を返してもらえなくなります。
ローンを組んだ人がお金を返せなくなった場合に肩代わりをしますと約束してもらったのだから、銀行は約束どおり肩代わりをしてくださいと言ってきます。
相続放棄したから、肩代わりはしませんということはできません。
肩代わりの義務は、相続とは関係ない相続人固有の義務だからです。
6借金を残して死亡したときの相続を司法書士に依頼するメリット
大切な家族を失ったら、大きな悲しみに包まれます。
やらなければいけないと分かっていても、気力がわかない方も多いものです。
相続財産と聞くと、プラスの財産だけイメージしがちです。
被相続人の財産内容を家族が詳細に知っていることは、ほとんどありません。
相続手続の過程で被相続人に借金があったことを知ることになります。
できることなら、被相続人が生前対策として、相続人にどのような債務がだれに対してあるのか知らせてあげるといいでしょう。
借金と聞くと必要以上に不安に思うことがあります。
団体信用生命保険に加入している場合など借金の返済が不要になるケースもあります。
銀行などの債権者は法定相続分で相続人全員に対して連帯債務の返済を請求することができます。
このようなことは、あまり知られていません。
司法書士が、必要な手続や適切な対応についてサポートします。
相続手続を済ませていない方は司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。
私道の共有持分を相続
1私道は相続財産
①道路には私道と公道がある
普段、道路を使っていろいろな所へ出かけます。
一般の交通の用に用いるのが道路です。
道路には、2種類あります。
私道と公道です。
行政が設置管理をする道路が公道です。
一般私人が設置管理する道路が私道です。
公道は、設置管理する国や地方自治体の財産です。
私道は、設置管理する人の財産です。
②私道を登記簿謄本で確認できる
私道は、一般私人が設置管理する道路です。
ひとりの人が単独で所有していることも近隣住民とみんなで所有していることもあります。
私道をみんなで共有している場合、分割した割合で道路を所有しています。
私道は通常の宅地と同様に、所有者の財産です。
自分の財産であることを第三者に権利主張するためには、登記が必要です。
道路として使っている土地の登記簿謄本を取得することができます。
登記簿を確認すると、所有者や共有持分を確認することができます。
③私道は相続財産なのに見落とされがち
被相続人が自宅の土地や建物を所有していた場合、自宅の土地や建物は相続財産になります。
被相続人の財産の大部分は自宅というケースも少なくありません。
被相続人が私道を所有していた場合、私道は相続財産になります。
自宅に至る私道が相続財産になることは見落とされがちです。
通常、自宅の土地や建物を所有している場合、固定資産税を納めます。
条件を満たした場合、私道は固定資産税がかかりません。
固定資産税がかからないから、多くの役所では固定資産税の納税通知書の課税明細書に記載されていません。
所有者本人が私道持分があることを忘れてしまっていることがあります。
所有者本人が忘れてしまっている場合、家族はなおさら認識していないでしょう。
相続が発生した後、財産調査をします。
納税通知書の課税明細書を紛失した場合、役所に固定資産課税台帳兼名寄帳を請求することができます。
固定資産課税台帳兼名寄帳にも、非課税地は記載されていないケースがあります。
固定資産課税台帳兼名寄帳は、固定資産税を課税するための書類です。
税金がかからない土地は、記載されません。
自宅の土地や建物は、個人単独で所有していることが多いです。
私道持分は、共有であることが多いでしょう。
市区町村役場に固定資産課税台帳兼名寄帳を請求する場合、個人単独所有の不動産と共有の不動産は別に請求する必要があるケースがあります。
土地を共有しているケースでは、代表者を届けておく取り扱いの市区町村があります。
共有地の代表者から請求しないと、固定資産課税台帳兼名寄帳を取得できない場合があります。
④名寄帳を発行しない市区町村役場がある
機密性の高い個人情報であることを考慮して、名古屋市など名寄帳を発行していない市区町村役場があります。
名古屋市では、課税明細書と資産明細書で代用します。
課税明細書には、固定資産税が課税される物件のみが記載されます。
資産明細書には、免税点未満で課税されない物件が記載されます。
課税明細書を請求するとき「課税されていない物件がある場合は、資産明細書も出してください」と記載すると取得することができます。
名古屋市では、私道など非課税地は課税明細書と資産明細書のいずれにも記載されません。
⑤権利証や契約書を確認する
被相続人が自宅の所有権を取得したときに権利証が発行されているはずです。
自宅を購入したときに、売買契約書を作成しているでしょう。
権利証や売買契約書を丁寧に確認しましょう。
被相続人が私道を所有していたことが判明します。
2私道の共有持分がないデメリット
自宅のある土地や建物のみ所有していて公道につながる土地を所有していない場合、私道を通行する権利がない状態になります。
現実には、私道であっても公道と同じように人や自動車が通行しているかもしれません。
法律上、私道は土地の所有者の許可なく通行することはできません。
他人の土地を通ることになりますから、所有者とトラブルになるでしょう。
土地の所有者は、自宅などを建てて土地を使用したいはずです。
ライフラインを確保するために、上下水道管やガス管の埋設や引き込み工事をする必要があります。
水道屋もガス屋も他人の土地を勝手に掘り起こすことはできません。
上下水道管やガス管の埋設や引き込み工事をするために、土地の所有者の許可が必要になります。
私道の共有持分がない場合、承諾料や使用料を請求されるかもしれません。
公道につながる土地を所有していない場合、土地の所有者から通行や道路工事を制限されてしまう可能性があります。
公道につながる土地と一緒でなければ、積極的に買おうと思う人が現れません。
公道につながらない土地を買う場合、銀行などの金融機関が融資を拒否します。
金融機関の融資を必要としない人しか買うことができません。
公道につながらない土地は、ほとんどの場合買い手がいません。
事実上、売買ができなくなります。
3私道の共有持分は相続財産なのに見落とされがち
被相続人が自宅の土地や建物を所有していた場合、自宅の土地や建物は相続財産になります。
被相続人の財産の大部分は自宅というケースも少なくありません。
被相続人が私道の共有持分を所有していた場合、私道の共有持分は相続財産になります。
自宅に至る私道が相続財産になることは、見落とされがちです。
通常、自宅の土地や建物を所有している場合、固定資産税を納めます。
条件を満たした場合、私道には固定資産税がかかりません。
多くの役所では固定資産税の納税通知書の課税明細書に記載されていません。
課税明細書は、固定資産税がかかる不動産の明細書だからです。
私道に固定資産税がかからない場合、固定資産税を納めてくださいと通知する必要がありません。
所有者本人が私道の共有持分があることを忘れてしまっていることがあります。
所有者本人が忘れてしまっている場合、家族はなおさら認識していないでしょう。
相続が発生した後、財産調査をします。
納税通知書の課税明細書を紛失した場合、市区町村役場に固定資産課税台帳兼名寄帳を請求することができます。
固定資産課税台帳兼名寄帳にも、非課税地は記載されていないケースがあります。
固定資産課税台帳兼名寄帳は、固定資産税を課税するための書類だからです。
固定資産税がかからない土地は、記載する必要がありません。
自宅の土地や建物は、個人単独で所有していることが多いです。
私道の共有持分は、近隣の人と共有しています。
市区町村役場に固定資産課税台帳兼名寄帳を請求する場合、個人単独所有の不動産と共有の不動産は別に請求する必要があるケースがあります。
土地を共有しているケースでは、代表者を届けておく取り扱いの市区町村役場があります。
共有地の代表者から請求しないと、固定資産課税台帳兼名寄帳を取得できない場合があります。
4私道の共有持分の記載のない遺産分割協議書は有効
自宅の土地や建物は相続財産と認識していても、私道の共有持分は見落としがちです。
被相続人のものは、原則として、相続財産になります。
相続財産は、相続人全員の共有財産です。
自宅の土地や建物のみ分け方の合意をして、遺産分割協議書を作成することができます。
遺産分割協議書は、相続財産全部まとめて作らなければならないといったルールはありません。
自宅の土地や建物のみの合意として有効です。
私道の共有持分については、相続人全員の共有財産のままです。
自動的に、自宅の土地や建物を相続する相続人のものになることはありません。
私道の共有持分について合意がない場合であっても、相続財産全体について合意をやり直す必要はありません。
私道の共有持分を見落としていた場合、あらためて、私道の共有持分について相続人全員で合意をすることができます。
相続財産を分け方の決定は、相続人全員の合意が必要です。
相続人全員の合意ができるのであれば、相続財産全部についてまとめて合意をする必要はありません。
合意できる財産から、順次合意した方が合理的なことがあるでしょう。
一部の相続財産だけ合意した遺産分割協議書であっても問題はありません。
私道の共有持分は、相続財産であることを見落とされがちです。
自宅の土地や建物について分け方の合意をしてから長期間経過した後、私道持分があることに気づくケースが少なくありません。
自宅の土地や建物について分け方の合意をしてから長期間経過した場合、当初の相続人が認知症になっているかもしれません。
認知症になった場合、物事のメリットデメリットを充分に判断することができなくなります。
認知症になった相続人に代わって相続財産の分け方の合意をする後見人を選任してもらわなければなりません。
当初の相続人が行方不明になっているかもしれません。
行方不明の相続人に代わって相続財産の分け方の合意をする不在者管理人を選任してもらわなければなりません。
当初の相続人が死亡しているかもしれません。
当初の相続人の相続人を確定させなければなりません。
私道の共有持分があることに気づいた場合、あらためて相続人を確定する必要があります。
あらためて相続人を確定したら、すみやかに相続財産の分け方の合意をしましょう。
5私道の共有持分の相続を司法書士に依頼するメリット
私道は面積が小さいことがほとんどです。
私道だけでは、資産価値は必ずしも大きくありません。
私道の共有持分は、宅地と一緒に所有することが重要です。
私道の共有持分がない土地は、経済的価値が著しく低くなるからです。
私道の共有持分であっても、公道と同じように人や自動車が通行しているでしょう。
私道を所有している認識が強くないことが多いものです。
私道の共有持分は、紛れもなく土地の所有権の一部です。
宅地と同様に私道の共有持分を相続した場合、相続登記をする必要があります。
自宅の土地や建物について相続登記をしたからといって、私道の共有持分について自動的に相続登記がされることはありません。
私道の共有持分の相続登記がしていない場合、私道の共有持分を所有していることを第三者に主張することができません。
相続登記をすることで、第三者に私道の共有持分を主張することができます。
第三者に所有権を主張できることは、登記の重要なメリットです。
固定資産税が課されていないケースでは、所有していることを見逃しがちです。
相続手続では、このようなトラブルに知らず知らずに巻き込まれてしまいます。
相続手続で不安になったら、司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。
奨学金を残して死亡したときの相続
1相続人は被相続人の権利義務を引き継ぐ
①プラスの財産もマイナスの財産も相続財産
相続が発生すると、原則として、被相続人の財産は相続人が相続します。
被相続人の権利も義務も、相続人が相続します。
相続人が相続する財産が相続財産です。
相続財産は、プラスの財産とマイナスの財産があります。
相続財産と聞くと、プラスの財産だけイメージしがちです。
プラスの財産もマイナスの財産も、相続財産です。
②相続人は被相続人の借金を相続する
相続が発生した場合、被相続人のものは相続人が相続します。
相続人が相続する財産が相続財産です。
相続財産は、プラスの財産だけではありません。
相続財産には、プラスの財産とマイナスの財産があります。
マイナスの財産は、借金やローンなどです。
お金を借りた人が死亡した場合、借金やローンを返す義務は相続人が引き継ぎます。
お金を借りた人が死亡しても、借金やローンがなくなることはありません。
借金やローンが存続するから、相続人は借金やローンを返さなければなりません。
③相続人は連帯保証人の地位を相続する
お金を借りた人は、借りたお金を返さなければなりません。
お金を借りた人が経済的に困窮した場合、お金を返せなくなることがあります。
お金を返してもらえなくなると、お金を貸した人も困ります。
連帯保証人は、お金を借りた人が返せなくなったときに肩代わりをする人です。
お金を返してもらえなくなった場合、肩代わりの人がお金を返してくれます。
肩代わりの人がいると、安心してお金を貸すことができます。
お金の貸し借りは、貸す人と借りる人の契約です。
連帯保証は、お金を貸す人と連帯保証人の契約です。
お金の貸し借りと連帯保証は、当事者も内容も異なる契約です。
連帯保証人には、肩代わりの義務があります。
連帯保証人が死亡した場合、肩代わりの義務はなくなりません。
肩代わりの義務は、相続人に相続されます。
2奨学生本人が死亡したら
①奨学金返済義務は相続人が引き継ぐ
相続が発生すると、原則として、被相続人の財産は相続人が相続します。
プラスの財産もマイナスの財産も、相続財産です。
被相続人が奨学金を受けている場合があります。
奨学金には、いろいろな種類があります。
奨学金には、給付型と貸与型があります。
給付型奨学金は、返済不要です。
貸与型奨学金は、返済をしなければなりません。
特に利用者が多いのは、日本学生支援機構(JASSO)の奨学金です。
日本学生支援機構(JASSO)の奨学金のほとんどは、貸与型奨学金です。
貸与型奨学金を受けていた奨学生が死亡した場合、原則として、奨学金の返済義務は相続人に相続されます。
②相続人は相続放棄ができる
相続が発生した場合、原則として、被相続人のプラスの遺産もマイナスの遺産も相続人が受け継ぎます。
相続が発生した後、相続人は相続を単純承認するか相続放棄をするか選択することができます。
被相続人のプラスの財産もマイナスの財産も受け継がないことを相続の放棄といいます。
相続放棄を希望する場合、家庭裁判所に対して相続放棄を希望する申立てをします。
相続放棄の申立ては、相続があったことを知ってから、原則として、3か月以内にする必要があります。
家庭裁判所で相続放棄が認められた場合、被相続人の権利義務を相続することはありません。
相続放棄が認められれば、被相続人の奨学金返済義務から逃れることができます。
③相続放棄をしたら次順位相続人に奨学金返還義務
家庭裁判所で相続放棄が認められた場合、被相続人の奨学金返済義務から逃れることができます。
相続放棄が認められた場合、被相続人の奨学金返済義務から逃れることができるのは相続放棄が認められた人だけです。
相続が発生した場合、相続人になる人は法律で決まっています。
相続人になる人は、次のとおりです。
(2)~(4)の場合、先順位の人がいる場合、後順位の人は相続人になれません。
(1)配偶者は必ず相続人になる
(2)被相続人に子どもがいる場合、子ども
(3)被相続人に子どもがいない場合、親などの直系尊属
(4)被相続人に子どもがいない場合で、かつ、親などの直系尊属が被相続人より先に死亡している場合、兄弟姉妹
相続放棄が認められた場合、はじめから相続人でなくなります。
被相続人に子どもがいる場合、子どもが相続人になります。
子ども全員が相続放棄をした場合、子どもがいないものと扱われます。
被相続人に子どもがいない場合だから、親などの直系尊属が相続人になります。
親などの直系尊属が被相続人の奨学金返済義務を引き継ぎます。
被相続人に子どもがいる場合、親などの直系尊属は自分が相続人になると考えていないことがあります。
奨学金は、まとまった金額であることが多いものです。
何も聞いていない場合、奨学金の返済義務を引き継いだと聞いたときにびっくりするでしょう。
相続放棄をした場合、次順位相続人に通知する義務はありません。
次順位相続人に連絡できるのであれば、連絡してあげると親切でしょう。
④相続放棄をしても連帯保証人
家庭裁判所で相続放棄が認められた場合、被相続人の奨学金返済義務から逃れることができます。
相続放棄が認められた場合、被相続人の奨学金返済義務から逃れることができるのは相続放棄が認められた人だけです。
被相続人の奨学金返済義務自体がなくなったわけではないからです。
被相続人が奨学金に申し込みをしたときに、連帯保証人を立てていることがあります。
連帯保証人は、本人が奨学金を返せなくなったときに肩代わりをする人です。
日本学生支援機構(JASSO)の奨学金で連帯保証人になるのは、原則として、父母です。
被相続人が死亡したときに子どもがいない場合、親などの直系尊属が相続人になります。
相続人となった親などの直系尊属が家庭裁判所に手続をして、認められれば相続放棄をすることができます。
相続放棄をした場合、被相続人の奨学金返済義務から逃れることができます。
相続人全員が相続放棄をした場合、被相続人の奨学金返済義務を引き継ぐ人はいなくなります。
本人の相続人に奨学金を返してもらえないから、肩代わりの人が返済することになります。
連帯保証人は、相続放棄をしたから返済を拒むことはできません。
連帯保証は、お金を貸す人と連帯保証人の契約です。
本人が奨学金を返せなくなったときに肩代わりをすることに納得して契約をしているはずです。
連帯保証人の肩代わりの義務は、連帯保証人の固有の義務です。
連帯保証人の固有の義務だから、相続放棄をしても逃れることはできません。
相続とは無関係な連帯保証人の固有の義務だからです。
⑤返還免除には申請が必要
被相続人が奨学金の返済義務を負っていた場合、奨学金の返済義務は相続人に引き継がれます。
日本学生支援機構(JASSO)の奨学金では奨学金の返済義務を負っていた本人が死亡した場合、返還が免除される制度があります。
奨学金の返済義務を負っていた本人が死亡しても、自動的に免除されるわけではありません。
相続人と連帯保証人の連署のうえ、給付奨学金返還免除願を提出する必要があります。
奨学金の返還免除が認められるまで、奨学金の返還義務があります。
奨学金の返還免除が認められるまで、口座から引き落としがされるし払込通知書は届きます。
奨学金の返還免除がされるのは、返還免除がされたときに返還していなかった金額です。
返還免除には申請から承認されるまで、おおむね1~2か月かかります。
審査期間中に返済した分は、返還されません。
奨学金の返済義務が免除された場合、奨学金の返済義務自体がなくなります。
相続放棄をしてもしなくても、相続人は奨学金の返済義務がありません。
連帯保証人が、奨学金の返済義務を負うことはありません。
3連帯保証人が死亡したら
①連帯保証人の地位は相続人が引き継ぐ
相続が発生すると、原則として、被相続人の財産は相続人が相続します。
プラスの財産もマイナスの財産も、相続財産です。
被相続人が連帯保証人であった場合、連帯保証人の地位は相続人が引き継ぎます。
日本学生支援機構(JASSO)の奨学金で連帯保証人になるのは、原則として、父母です。
連帯保証人になった被相続人が死亡した場合、連帯保証人の地位は相続人全員が引き継ぎます。
相続人全員だから、奨学金を受けた人だけではありません。
連帯保証人に複数の子どもがいた場合、子ども全員が連帯保証人の地位を引き継ぎます。
奨学金を受けた人の親が連帯保証人である場合、連帯保証人の子どもは奨学金を受けた人の兄弟姉妹です。
兄弟姉妹は、自分が奨学金を受けたわけでもないのに肩代わりの義務を負うことになります。
親が連帯保証人である場合、子どもは連帯保証人の地位を相続するからです。
奨学金を受けた人が返済義務を果たせない場合、兄弟姉妹が肩代わりをしなければならなくなります。
②相続人は相続放棄ができる
相続人は、相続を単純承認するか相続放棄をするか選択することができます。
相続放棄をした場合、プラスの財産もマイナスの財産も相続することはできません。
肩代わりの義務だけ相続放棄をしたいということはできません。
相続放棄が認められた場合、財産すべて相続することはできなくなります。
③連帯保証人を立てられないときは機関保証
やむを得ない理由があるときは、連帯保証人を機関保証に変更することができます。
連帯保証人が死亡した場合は、やむを得ない理由と言えます。
機関保証とは、保証機関に保証をしてもらうことです。
日本学生支援機構(JASSO)の奨学金では、公益財団法人日本国債教育支援協会が保証をします。
機関保証を受けるためには、保証料の支払いが必要です。
奨学金の返済中に機関保証に変更する条件は、次のとおりです。
(1)延滞をしていないこと
(2)振替口座による返還をしていること
(3)本人が破産、債務整理等の状態でないこと
(4)保証料の一括振込みができること
4奨学金を残して死亡したときの相続を司法書士に依頼するメリット
大切な家族を失ったら、大きな悲しみに包まれます。
やらなければいけないと分かっていても、気力がわかない方も多いものです。
相続財産と聞くと、プラスの財産だけイメージしがちです。
被相続人が奨学金を受けていた場合、ときには500万円以上の金額になることがあります。
奨学金の平均返済期間は、およそ15年です。
想像以上の金額に驚いて奨学金の返済請求を放置することがあります。
奨学金を受けた本人が死亡した場合、奨学金の返済義務が免除されます。
奨学金の返済義務が免除は、あまり知られていません。
奨学金の返済義務が免除に申請が必要なことは、もっと知られていません。
奨学金の返済が延滞していると、原則として、免除が認められなくなります。
このようなことも、あまり知られていません。
司法書士が、必要な手続や適切な対応についてサポートします。
相続手続を済ませていない方は司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。
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