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死亡退職金が相続財産になる例ならない例
1死亡退職金が支給規程で支給されるとき相続財産ではない
①国家公務員死亡なら国家公務員退職手当法で支給
国家公務員が退職する場合、退職手当が支給されます。
退職する国家公務員に支給される退職手当は、国家公務員退職手当法によって定められています。
国家公務員が死亡によって退職した場合、遺族に退職手当が支給されます。
国家公務員退職手当法は、退職手当を受け取る遺族について次のように定めています。
死亡した国家公務員に配偶者がいる場合、配偶者に退職手当が支給されます。
配偶者は、法律上の配偶者だけでなく事実婚・内縁の配偶者を含みます。
死亡による退職手当は、相続によって受け取るものではありません。
事実婚・内縁の配偶者は、相続することができないからです。
死亡による退職手当は、国家公務員退職手当法で遺族に支給されます。
国家公務員退職手当法で遺族に支給される死亡退職金は、相続財産ではありません。
②地方公務員死亡なら職員退職手当条例で支給
地方公務員が退職する場合、退職手当が支給されます。
退職する地方公務員に支給される退職手当は、職員退職手当条例によって定められています。
例えば、名古屋市では職員退職手当条例が定められています。
職員退職手当条例は、多くの場合、国家公務員退職手当法に準じて決められています。
地方公務員が死亡によって退職した場合、遺族に退職手当が支給されます。
名古屋市の職員退職手当条例は、退職手当を受け取る遺族について次のように定めています。
死亡した名古屋市の職員に配偶者がいる場合、配偶者に退職手当が支給されます。
配偶者は、法律上の配偶者だけでなく事実婚・内縁の配偶者を含みます。
死亡による退職手当は、相続によって受け取るものではありません。
事実婚・内縁の配偶者は、相続することができないからです。
死亡による退職手当は、職員退職手当条例で遺族に支給されます。
職員退職手当条例で遺族に支給される死亡退職金は、相続財産ではありません。
③会社員死亡なら退職金規程や就業規則で支給
会社員が退職する場合、退職手当が支給されることがあります。
会社が支給する退職金については、退職金規程や就業規則について定めていることが多いでしょう。
退職金に関する定めは、多くの場合、労働基準法施行規則や労働者災害補償保険法を参考にして決められています。
労働基準法施行規則は、次のように定めています。
労働基準法施行規則や労働者災害補償保険法は、退職金についての定めではありません。
生計を維持されていた人が生活に困窮しないようにするために、支給する点は読み取れます。
会社の退職金規程の内容によりますが、死亡による退職手当は相続によって受け取るものではありません。
会社の退職金規程で遺族に支給される死亡退職金は、相続財産ではありません。
④中退共加入者死亡なら中小企業退職金共済法で支給
中退共制度は、昭和34年に中小企業退職金共済法に基づき設けられた中小企業のための国の退職金制度です。
中退共制度を利用して、管理が簡単な退職金制度が手軽に作れます。
中退共加入者が退職した場合、中退共から退職金を受け取ることができます。
中退共加入者が死亡によって退職した場合、遺族は退職金を受け取ることができます。
中小企業退職金共済法は、退職金を請求できる遺族について次のように定めています。
死亡した中退共加入者に配偶者がいる場合、配偶者は退職金を請求することができます。
配偶者は、法律上の配偶者だけでなく事実婚・内縁の配偶者を含みます。
死亡による退職手当は、相続によって受け取るものではありません。
事実婚・内縁の配偶者は、相続することができないからです。
死亡による退職金は、中小企業退職金共済法で遺族が請求できます。
中小企業退職金共済法で遺族に支給される死亡退職金は、相続財産ではありません。
2受取人の指定がないと相続財産になる
①相続財産は相続人全員の共有財産
死亡退職金は、支給規程で支給されます。
支給規程には、受取人が決められています。
死亡退職金は、原則として、受取人の固有の財産です。
会社の中には、退職金規程や就業規則を整備していないことがあります。
退職金規程や就業規則を整備していなくても、死亡退職金を支給することがあります。
退職金規程や就業規則がない場合、受取人を定めているとは言えません。
受取人を定めていない場合、死亡退職金は相続財産になります。
相続財産は、相続人全員の共有財産です。
相続人以外の人は、相続財産を相続することはできません。
②生前に受け取った退職金は相続財産になる
退職金は、退職する社員に支給されます。
退職した社員が退職金を受け取った後に死亡した場合、受け取った退職金は相続財産です。
退職金は、すでに退職した社員の財産になっているからです。
被相続人が生前に受け取った退職金は、相続財産です。
③生前に退職して受取前に死亡したら相続財産
退職金は、退職日に支給されないことがあります。
生前に退職して退職金の支給日までに、死亡することがあります。
退職した社員が退職金を受け取る前に死亡した場合、退職金を受け取る権利は相続財産です。
社員が退職した時点で、退職金を受け取る権利は発生しているからです。
退職金を受け取る権利は、すでに退職した社員の財産になっています。
退職した社員が退職金を受け取る前に死亡しても、退職金を受け取る権利は相続財産です。
3死亡退職金が特別受益になる可能性
①特別受益は相続人間の公平のルール
特別利益とは、一部の相続人が特別に受けていた利益です。
例えば、一部の相続人だけが多額の贈与を受けているケースです。
一部の相続人だけが特別に利益を受けていたのに、無視して財産を配分すると不公平です。
相続人全員の公平のため、特別受益を持ち戻して相続財産を計算します。
特別受益者は、相続人だけです。
特別受益の制度は、相続人間の公平を図る制度だからです。
相続人以外の人が多額の贈与を受けていても、特別受益にはなりません。
特別受益を持ち戻して相続財産を配分すると、相続人間の公平を図ることができます。
特別受益の制度は、相続人間の公平のルールです。
②死亡退職金は原則として特別受益にならない
死亡退職金が支給規程で支給される場合、相続財産ではありません。
死亡退職金を受け取る権利は、受取人の固有の財産です。
相続放棄をしても、死亡退職金を受け取ることができます。
事実婚・内縁の配偶者が死亡退職金を受け取ることができます。
死亡退職金は、相続財産ではないからです。
相続人以外の人が死亡退職金を受け取った場合、特別受益の対象外です。
特別な事情がない限り死亡退職金を受け取っても、特別受益とは言えないでしょう。
③特別な事情があれば特別受益で持ち戻しの可能性
死亡退職金と同様に生命保険の死亡保険金も、相続財産ではありません。
生命保険の死亡保険金は高額になることが多いでしょう。
生命保険の死亡保険金を特別受益として認めない場合、到底是認できないほど著しい不公平が生じることがあります。
到底是認できないほど著しい不公平が生じる場合、特別受益の持ち戻しの対象になります。
死亡退職金も、到底是認できないほど著しい不公平が生じる場合、特別受益の持ち戻しの対象になる可能性があります。
4死亡退職金に相続税
死亡退職金は、原則として、受取人の固有の財産です。
相続放棄をしても、死亡退職金を受け取ることができます。
民法上、受取人の固有の財産なのに、死亡退職金は相続税の課税対象です。
死亡退職金の合計額が非課税限度額を超えるとき、相続税の課税対象になります。
非課税限度額=500万円×法定相続人の人数
相続人でない人が死亡退職金を受け取る場合、非課税限度額はありません。
5受取人以外の相続人が死亡退職金を受け取ると贈与税の対象
死亡退職金が支給規程で支給される場合、相続財産ではありません。
死亡退職金は、支給規程で定められた受取人の固有の財産です。
受取人の固有の財産だから、遺産分割の対象ではありません。
被相続人の資産規模が大きい場合、死亡退職金を含めて相続税の対象になります
死亡退職金は支給規程で決められた受取人の財産だから、受取人に相続税が課されます。
決められた受取人以外の人が死亡退職金を受け取る場合、受取人から贈与されたと考えられます。
高額な贈与がされた場合、贈与税の対象になるでしょう。
贈与税は、想像以上に高額になりがちです。
6財産調査を司法書士に依頼するメリット
相続が発生したら、ご遺族は大きな悲しみに包まれます。
大きい悲しみのなかで、もれなく迅速に相続財産を調査するのは身体的にも精神的にも大きな負担になります。
負担の大きい財産調査を司法書士などの専門家に依頼することができます。
遺族の疲れも、軽減されるでしょう。
被相続人の財産は、相続人もあまり詳しく知らないという例が意外と多いものです。
悲しみの中で被相続人の築いてきた財産をたどるのは切なく、苦しい作業です。
調査のためには、相続が発生したことの証明として戸籍謄本等の提出が求められます。
戸籍謄本等の取り寄せも含め、手続をおまかせいただけます。
仕事や家事で忙しい方や高齢、療養中などで手続きが難しい方は、手続を丸ごとおまかせできます。
家族にお世話が必要な方がいて、頻繁に家を空けられない方からのご相談もお受けしております。
財産調査でお疲れが出る前に、司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。
相続で不動産取得税はかからない
1相続で不動産取得税はかからない
①遺産分割協議で不動産取得税はかからない
相続が発生したら、被相続人の財産は相続人が相続します。
相続財産は、相続人全員の共有財産です。
相続財産の分け方は、相続人全員の合意で決める必要があります。
相続人全員による相続財産の分け方を決める話し合いを遺産分割協議と言います。
被相続人が不動産を保有していた場合、不動産は相続人が相続します。
だれが不動産を相続するのか、相続人全員の合意で決定します。
遺産分割協議で不動産を取得する相続人を決めた場合、不動産取得税はかかりません。
②相続させる遺言書で不動産取得税はかからない
被相続人は、自分の財産を自由に処分することができます。
遺言書は、遺言者の意思を示すものです。
遺言者は、遺言書で自分の財産をだれに引き継がせるか自由に決めることができます。
被相続人が不動産を保有していた場合、不動産をだれに相続させるのか自由に決めることができます。
相続させる遺言書で不動産を取得する相続人を決めた場合、不動産取得税はかかりません。
③法定相続で不動産取得税はかからない
相続人になる人は、法律で決められています。
相続人が相続する割合も、法律で決められています。
被相続人が不動産を保有していた場合、法定相続分で相続人全員が共有する相続をすることができます。
不動産の共有は圧倒的にデメリットが大きいので、おすすめできません。
法定相続分で相続人全員が相続する場合、不動産取得税はかかりません。
④相続人への遺贈で不動産取得税はかからない
遺贈とは、遺言書を作成して相続人や相続人以外の人に財産を引き継いでもらうことです。
相続人は、相続することができるし遺贈を受けることができます。
遺言書に相続させると書いてあったら、相続で手続をします。
遺言書に遺贈すると書いてあったら、遺贈で手続をします。
遺言書で相続人に不動産を遺贈する場合、不動産取得税はかかりません。
2不動産取得税は1回限りの税金
①不動産を取得するときに不動産取得税
不動産取得税とは、不動産を取得したときに1回だけ課される税金です。
有償で取得しても無償で取得しても、不動産取得税が課されます。
不動産の取得とは、売買、建築、増改築、贈与、交換です。
相続は、不動産取得税の対象ではありません。
不動産取得税は、不動産を取得したときに課される税金です。
②所有権移転登記をしなくても不動産取得税
不動産取得税がかかるから、所有権移転登記をしたくないという意見を聞きます。
不動産取得税は、不動産を取得したときに課税されます。
不動産を取得した後に所有権移転登記をしなくても、不動産取得税の対象になります。
所有権移転登記をしなくても、不動産取得税を免れることはできません。
不動産を取得したのに所有権移転登記をしないのは、デメリットが大きくおすすめできません。
事情を知らない人は、登記簿上の所有者を真実の所有者であると信じてしまうでしょう。
登記簿上の所有者が不動産を売却するかもしれません。
所有権移転登記をしないと、所有権を主張することができません。
不動産を取得したのであれば所有権移転登記をしておくことをおすすめします。
所有権移転登記をしなくても、不動産取得税はかかります。
③不動産取得税に免税点
不動産取得税には、免税点があります。
取得した不動産の価格が次の金額未満の場合、不動産取得税は課されません。
(1)土地 10万円
(2)家屋
新築、増築、改築 23万円
その他 12万円
④相続で不動産を取得したときは申告不要
不動産取得税は、都道府県税です。
不動産を取得したら、都道府県税事務所に申告をします。
申告期限は、都道府県によって異なります。
愛知県は、不動産を取得してから60日以内です。
郵送で申告することができます。
申告期限までに登記がされた場合、原則として申告は不要です。
不動産取得税が軽減される場合、不動産取得税減額等申請書を提出します。
相続で不動産を取得した場合、申告は不要です。
3相続なのに不動産取得税がかかる
①遺産分割協議のやり直しで不動産取得税
相続財産の分け方は、相続人全員の合意で決める必要があります。
相続人全員の合意ができたら、遺産分割協議は成立し話し合いは終了します。
遺産分割協議が成立したら、基本的にやり直しはできません。
一部の相続人の気が変わったからと言ってやり直しをしていたら、いつまでたっても話し合いが続くからです。
相続人全員が別の分け方の方が良かったと納得できることがあります。
一部の相続人だけでなく相続人全員が遺産分割協議のやり直しに合意できる場合、やり直しをすることができます。
遺産分割協議のやり直しをする場合、当初の合意とは異なる合意をするでしょう。
遺産分割協議のやり直しによって、不動産を取得することがあります。
相続で不動産を取得した場合、不動産取得税の対象ではありません。
遺産分割協議のやり直しは、法律上、相続手続の一環です。
税務上は、相続手続の一環ではなく贈与の扱いです。
遺産分割協議のやり直しによって不動産を取得する場合、不動産取得税が課されます。
遺産分割協議のやり直しによって不動産を取得するのは、贈与扱いだからです。
②代償分割で不動産を譲渡すると不動産取得税
相続財産には、分けやすい財産と分けにくい財産があります。
金銭は、分けやすい財産です。
不動産は、分けにくい財産です。
相続財産の大部分が不動産のような分けにくい財産である場合、相続人全員の合意は難しくなりがちです。
相続財産の大部分が不動産のような分けにくい財産の場合、代償分割をすることで合意ができる場合があります。
代償分割とは、一部の相続人が不動産を相続し、残りの相続人は不動産を相続した人から、その分のお金をもらう方法です。
代償を受け取ることで、公平な遺産分割を実現しやすくなるでしょう。
代償は、お金に限られるものではありません。
代償として、固有の不動産を譲渡することがあります。
代償として不動産を譲渡する場合、不動産取得税が課されます。
代償の支払いは、相続とは考えられないからです。
4相続でないから不動産取得税がかかる
①相続人以外の人へ特定遺贈で不動産取得税
遺贈とは、遺言書を作成した相続人や相続人以外の人に財産を引き継いでもらうことです。
相続人は、相続で財産を引き継ぐことができるし遺贈で財産を引き継ぐことができます。
相続人以外の人は、相続で財産を引き継ぐことはできません。
遺贈には、2種類あります。
特定遺贈と包括遺贈です。
特定遺贈とは、遺言書に、「財産〇〇〇〇を遺贈する」と財産を具体的に書いてある場合です。
包括遺贈とは、遺言書に、「財産すべてを包括遺贈する」「財産の2分の1を包括遺贈する」と割合だけ書いて財産を具体的に書いてない場合です。
相続人以外の人に不動産を遺贈することができます。
特定遺贈で相続人以外の人が不動産を取得した場合、不動産取得税が課されます。
②生前贈与で不動産取得税
人は自分の財産を自由に贈与することができます。
生前贈与とは、財産の持ち主が生きている間に無償で財産を引き継ぐことです。
将来の相続を想定して、生前贈与をすることがあります。
生前贈与は、将来の相続と同一視することはできません。
贈与によって不動産を取得した場合、不動産取得税が課されます。
生前贈与は、贈与です。
生前贈与によって不動産を取得した場合、不動産取得税が課されます。
③相続時精算課税で不動産取得税
相続時精算課税制度とは、贈与税の制度です。
相続時精算課税を選択すると、2500万円まで特別控除があります。
累計2500万円までの贈与が非課税になります。
贈与した財産を相続財産に算入して、相続税を計算する制度です。
次の条件に該当する場合、相続時精算課税制度を選択することができます。
(1)贈与する人 60歳以上の父母または祖父母
(2)贈与を受ける人 18歳以上の子どもや孫
相続時精算課税制度を適切に利用したら、大きな節税が期待できるでしょう。
相続時精算課税制度を利用して、不動産を取得することができます。
相続時精算課税制度を利用して不動産を取得する場合、不動産取得税が課されます。
相続時精算課税制度を利用して不動産を取得するのは、贈与扱いだからです。
④夫婦間の居住用不動産の特例で不動産取得税
夫婦間の居住用不動産の特例とは、贈与税の制度です。
夫婦間の居住用不動産の特例を利用すると、最高2000万円まで配偶者控除を受けることができます。
次の条件に該当する場合、夫婦間の居住用不動産の特例を受けることができます。
(1)夫婦の婚姻期間20年を過ぎた後の贈与
(2)贈与された財産は居住用不動産または居住用不動産を取得するための金銭
(3)贈与を受けた年の翌年3月15日までに贈与を受けた人が現実に居住
夫婦間の居住用不動産の特例を受けることで、大きな節税が期待できるでしょう。
夫婦間の居住用不動産の特例を利用して、不動産を取得することができます。
夫婦間の居住用不動産の特例を利用して不動産を取得する場合、不動産取得税が課されます。
夫婦間の居住用不動産の特例を利用して不動産を取得するのは、贈与扱いだからです。
⑤相続人でも死因贈与は不動産取得税
遺贈とは、遺言書を作成した相続人や相続人以外の人に財産を引き継いでもらうことです。
遺言書は、遺言者がひとりで作成することができます。
遺言書を作成するときに、相続人や財産を受け取る人の同意は不要です。
贈与は、贈与をする人と贈与を受け取る人の契約です。
死因贈与は、贈与をする人が死亡したときに効力が発生する贈与契約です。
贈与契約は、贈与をする人と贈与を受け取る人の合意があれば口約束でも成立します。
口約束の贈与契約は立証が難しいのでおすすめしませんが、口約束の死因贈与契約も有効です。
死因贈与で財産を受け取った場合、相続税の対象になります。
死因贈与契約によって、不動産を取得することができます。
死因贈与契約によって不動産を取得する場合、不動産取得税が課されます。
死因贈与契約によって不動産を取得するのは、贈与扱いだからです。
5相続登記を司法書士に依頼するメリット
相続登記は、たくさんある相続手続の中でも難しい手続です。
相続手続は多くの場合、何度も経験するものではありません。
だれにとっても不慣れで聞き慣れない法律用語で疲れ果ててしまいます。
不動産は重要な財産なので、一般の人が些細なことと思えるようなことでやり直しになります。
インターネットなどで多くの情報を手にすることができるようになりました。
相続登記を自分でやった、カンタンにできたという記事を見かけることもあります。
司法書士などの専門家から見てカンタンな登記申請であっても、一般の人が手続しようとすると思わぬ落とし穴があることがあります。
相続が発生してから長期間経過した後の登記申請は、想像以上に難解です。
自分で登記申請をしてみても、法務局から不足や不備を指摘されるでしょう。
ときには、何が問題なのか分からなかったというケースもあります。
自分でやってみて挫折した場合も司法書士はサポートします。
相続登記をスムーズに終わらせたい方は、司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。
税金を滞納したまま死亡したときの相続
1滞納者が死亡しても支払免除にならない
①プラスの財産とマイナスの財産を相続する
相続が発生したら、被相続人の財産は相続人が相続します。
相続人が相続する財産が相続財産です。
被相続人の財産には、さまざまな種類の財産があるでしょう。
相続財産というと、プラスの財産だけをイメージしがちです。
例えば、不動産、預金、株式や投資信託などの有価証券、現金などです。
実際は、プラスの財産とマイナスの財産の両方が相続財産です。
マイナスの財産とは、借金やローンなどです。
相続人は、プラスの財産とマイナスの財産の両方を相続します。
②滞納している税金は相続人に支払義務
被相続人が税金を滞納したまま、死亡することがあります。
滞納している税金の支払義務は、相続財産です。
相続人は、被相続人が滞納した税金を相続します。
税金を滞納したまま滞納者が死亡しても、支払免除にはなりません。
滞納した税金は、マイナスの財産と言えます。
相続人は、プラスの財産とマイナスの財産の両方を相続します。
被相続人が滞納した税金は、相続人に支払義務があります。
③相続する税金の典型例
滞納する税金の典型例は、次のとおりです。
(1)住民税
(2)国民健康保険税
(3)固定資産税・都市計画税
(4)所得税
税金の滞納があるのか分からない場合、税務署や役所の税務課に確認することができます。
④納税義務承継通知書が届く
税金を滞納したまま死亡した場合、課税権者は相続人を調査することができます。
課税権者とは、税務署や市区町村など税金を徴収する権限がある公的機関のことです。
課税権者は、市区町村から滞納者の戸籍謄本を取り寄せて相続人を調査します。
相続人が判明したら、納税義務承継通知書を送付します。
納税義務承継通知書とは、納税義務が通知書の受取人に承継されたことのお知らせです。
納税通知書には、次の項目が書かれています。
(1)納税義務が継承された旨
(2)税金の滞納額
(3)納税義務の割合
(4)請求期限
さまざまな家族の事情から、被相続人と疎遠になっていることがあるでしょう。
納税義務承継通知書が届くことで、自分が相続人であることを知るかもしれません。
税金を滞納したまま死亡した場合、納税義務承継通知書が届きます。
2遺産分割協議は内部的取り決め
①滞納している税金を相続する人を決めることができる
相続が発生したら、被相続人の財産は相続人が相続します。
相続財産は、相続人全員の共有財産です。
相続財産の分け方は、相続人全員の合意で決定します。
相続財産の分け方を決めるため相続人全員でする話し合いを遺産分割協議と言います。
被相続人が税金を滞納していた場合、滞納していた税金は相続財産です。
滞納していた税金をだれが相続するのか、相続人全員で話し合いをすることができます。
相続人全員で合意ができたら、書面に取りまとめます。
相続人全員の合意内容を取りまとめた書面を遺産分割協議書と言います。
遺産分割協議書の内容に問題がないか相続人全員に確認してもらいます。
問題がなければ、相続人全員が記名し実印で押印します。
遺産分割協議書の押印が実印によることを証明するため、印鑑証明書を添付します。
遺産分割協議で滞納している税金を相続する人を決めることができます。
②相続する人を決めても税金の支払義務がある
相続財産の分け方は、相続人全員の合意で決定します。
相続人全員の合意で、滞納していた税金を相続する人を決めることができます。
滞納していた税金を相続する人を決めても、相続人全員に税金の支払義務があります。
相続人全員の合意は、相続人同士の内部的合意事項だからです。
遺産分割協議書に記名し実印で押印しても、相続人以外の人には何の効力もありません。
相続人間のトラブルを防止するために、遺産分割協議書を作成することに意味があります。
遺産分割協議で相続する人を決めても、相続人全員に税金の支払義務があります。
③相続人全員に税金の支払義務がある理由
仮に、相続人に税金の支払義務がないとすると不都合な結果になります。
相続人には、さまざまな経済状況の人がいるでしょう。
資力がある人も資力がない人もいます。
中には債務超過に陥っている相続人がいることがあります。
相続財産の分け方は、相続人全員の合意で決定します。
債務超過の相続人が滞納している税金を相続する合意をするかもしれません。
自分の債務だけで債務超過になっているのに、滞納している税金を負担することになります。
自分の債務と滞納している税金の両方は、払えないでしょう。
債務超過の人は、自己破産することになります。
自己破産したら、滞納している税金は払うことはできません。
他の相続人はプラスの財産を受け取っておきながら、滞納していた税金は払われません。
税金をきちんと払っている納税者から見ると、理不尽な結果となります。
このような理不尽を許さないため、相続人全員に税金の支払義務があります。
④相続人全員が法定相続分で納税
相続人になる人は、法律で決まっています。
相続人が相続する相続分も、法律で決まっています。
各相続人が引き継ぐのは、滞納していた税金の法定相続分のみです。
相続人全員が法定相続分で滞納していた税金を納めます。
3税金の滞納を放置したら
①滞納処分が開始される
税金を納めないまま放置すると、滞納処分が開始されます。
滞納処分とは、納税者の意思に関わらず強制的に税金を取り立てるための手続です。
通常、財産を差押え、差押えた財産を換価し、税金に充当する一連の手続です。
被相続人が税金を滞納していた場合、滞納処分が開始していることがあります。
税金滞納者であった被相続人に滞納処分が開始していた場合、相続人が滞納処分を引き継ぎます。
滞納者が死亡しても、滞納処分の効果が失われるものではないからです。
税金を滞納したまま放置すると、滞納処分が開始されます。
②滞納処分の流れ
滞納処分は、納税者の意思に関わらず強制的に税金を取り立てるための手続です。
滞納処分の基本的な流れは、次のとおりです。
(1)督促状の送付
納期限を過ぎても納付がされない場合、督促状が送付されます。
督促状の送付は、滞納処分の前提の処分です。
納期限が過ぎると、延滞税が課されます。
延滞税だけの滞納も、滞納処分の対象です。
(2)文書や電話で催告
督促状が送付されても納付されない場合、文書や電話で納税催告がされます。
納税担当者と納付交渉で、分割納付や納付猶予が認められることがあります。
多くの場合、納付猶予が認められるのは、災害などの一定の理由が必要です。
(3)財産調査
文書や電話で催告しても納付されない場合、財産調査が行われます。
調査対象は、金融機関や勤務先、取引先などです。
財産調査をするにあたって、滞納者の承諾は不要です。
滞納処分は、納税者の意思に関わらず強制的に税金を取り立てるための手続だからです。
金融機関や勤務先、取引先は、財産調査に協力しなければなりません。
個人情報であることを理由に、協力を拒むことはできません。
(4)財産の差押
財産調査で滞納者の財産が判明したら、差押がされます。
差押えられた財産は、滞納者の意思に関わらず財産処分ができなくなります。
金銭的価値がある財産はすべて、差押の対象になります。
(5)換価処分し配当
差押えた財産は、強制的に換価されます。
例えば、不動産であれば競売し売却代金は滞納している税金に充当されます。
滞納してる税金に充当しても残余があれば、滞納者に配当されます。
③相続人の財産に差押がされる
被相続人が税金を滞納したまま死亡した場合、税金の支払義務は相続人が相続します。
滞納している税金の支払義務は、相続人に引き継がれます。
相続人が滞納した税金を放置していた場合、滞納処分が開始されます。
被相続人が滞納していた税金のために、相続人の財産が差し押さえられるかもしれません。
税金の支払義務は、相続人に引き継がれたからです。
自分の税金はきちんと納めているのに、という言い訳は通用しません。
被相続人から引き継いだ税金についても、支払義務があるからです。
被相続人が滞納した税金を放置したら、相続人の財産が差押えられます。
4相続放棄で滞納している税金を免れる
①3か月以内に家庭裁判所で手続
相続が発生したら、相続人は相続を単純承認するか相続放棄をするか選択することができます。
相続放棄を選択した場合、はじめから相続人でなくなります。
相続放棄を希望する場合、家庭裁判所に対して相続放棄を希望する申立てをします。
相続放棄には、期限があります。
相続があったことを知ってから、3か月以内です。
相続があってから長期間経過した後、納税義務承継通知書が届くことがあります。
納税義務承継通知書が届いたことで、相続があったことを知るかもしれません。
納税義務承継通知書が届いたことで相続があったことを知った場合、納税義務承継通知書は重要です。
相続があったことを知ってから3か月以内であることを証明する証拠だからです。
相続放棄を希望する場合、3か月以内に家庭裁判所に手続をします。
②相続放棄をしたら他の財産は相続できない
相続放棄をしたら、はじめから相続人でなくなります。
マイナスの財産を相続しないし、プラスの財産を相続しません。
被相続人の滞納した借金を相続しないし、他の財産も相続しません。
相続放棄をしたら、他の財産は相続できなくなります。
③相続放棄は撤回できない
相続人は、相続を単純承認するか相続放棄をするか選択することができます。
相続を単純承認するか相続放棄をするか選択した後は、撤回することはできません。
仮に撤回を認めると、相続が混乱するからです。
家庭裁判所で相続放棄が認められた後、撤回することはできません。
④単純承認をすると相続放棄は無効
家庭裁判所で相続放棄が認められても、実際は無効であることがあります。
単純承認をしたのに、相続放棄の申立てをすることがあるからです。
被相続人の財産を処分したり利用したりした場合、単純承認と見なされます。
相続放棄を希望しているのに、相続人が被相続人の財産を処分したり利用したりすることがあります。
相続人が自覚せずに、被相続人の財産を処分したり利用したりすることがあるでしょう。
相続人が自覚していなくても被相続人の財産を処分したり利用したりした場合、単純承認と見なされます。
単純承認をした後に家庭裁判所が相続放棄を認める決定をしても、無効の決定です。
単純承認をすると、相続放棄は無効になります。
⑤相続放棄で次順位相続人に支払義務
相続人になる人は、法律で決められています。
相続人が相続放棄をした場合、はじめから相続人でなくなります。
被相続人に子どもがいる場合、子どもは相続人になります。
子どもが相続放棄をした場合、子どもは相続人でなくなります。
子ども全員が相続放棄をした場合、子どもはいない場合になります。
子どもがいない場合、相続人になるのは親などの直系尊属です。
相続放棄で次順位の人が相続人になります。
滞納していた税金は、次順位の人が相続します。
滞納していた税金の支払義務があると聞いたら、びっくりするでしょう。
相続放棄をしても、次順位の人に知らせる義務はありません。
知らせる義務がなくても、知らせてあげると親切でしょう。
相続放棄で、次順位相続人が支払義務を負うからです。
⑥相続放棄をしても死亡保険金は受け取れる
被相続人が死亡した場合に、生命保険の死亡保険金が支払われることがあります。
原則として生命保険の保険金を受け取る権利は、相続人の固有の財産です。
受取人が「相続人」と指定してあっても、相続で受け取るものではありません。
被相続人の死亡をきっかけにして、保険契約によって受取人が保険金を受け取るものです。
多くの場合、被相続人は生前に生命保険の死亡保険金を受け取る権利を持っていなかったでしょう。
相続によって、被相続人から受け継いだものではありません。
相続人の固有の財産だから、相続放棄をした人は生命保険の保険金を受け取ることができます。
生命保険の保険金を受け取ったことで、相続放棄が無効になることはありません。
5相続放棄を司法書士に依頼するメリット
相続放棄は、チャンスは1回限りです。
家庭裁判所に認められない場合、即時抗告という手続を取ることはできます。
高等裁判所の手続で、2週間以内に申立てが必要になります。
家庭裁判所で認めてもらえなかった場合、即時抗告で相続放棄を認めてもらえるのは、ごく例外的な場合に限られます。
一挙にハードルが上がると言ってよいでしょう。
相続が発生してから3か月以内に手続ができなかったのは止むを得なかったと家庭裁判所に納得してもらうことが重要です。
家庭裁判所に対して、上申書や事情説明書という書類を添えて、説得します。
家庭裁判所が知りたいことを無視した作文やダラダラとした作文では認めてもらうことは難しいでしょう。
司法書士であれば、家庭裁判所に認めてもらえるポイントを承知しています。
認めてもらえやすい書類を作成することができます。
相続放棄を考えている方は、すみやかに司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。
消費者金融の借金があるのに死亡
1消費者金融の借金は相続財産
①相続人になる人は法律で決まっている
相続が発生したら、親族のうち一定の範囲の人が相続人になります。
だれが相続人になるかについては、民法で決められています。
相続人になる人は、次のとおりです。
(2)~(4)の場合、先順位の人がいる場合、後順位の人は相続人になれません。
(1)配偶者は必ず相続人になる
(2)被相続人に子どもがいる場合、子ども
(3)被相続人に子どもがいない場合、親などの直系尊属
(4)被相続人に子どもがいない場合で、かつ、親などの直系尊属が被相続人より先に死亡している場合、兄弟姉妹
②返済義務があるのは債務者だけ
お金を借りたら、借りたお金は返さなければなりません。
原則として、消費者金融の契約には保証人は不要です。
保証人とは、お金が返せなくなったときに肩代わりをする人です。
保証人には、肩代わりをする義務があります。
返済義務があるのは、債務者だけです。
たとえ債務者の家族であっても保証人でなければ、肩代わりをする義務はありません。
ドラマや映画の中では、家族の借金だから返済して当然などと言って取立てをしていることがあります。
債務者が返済に行き詰っても、家族には借金を返済する義務も肩代わりの義務もありません。
返済義務があるのは、債務者だけです。
③債務者が死亡しても契約はなくならない
債務者が生きている間、返済義務があるのは債務者だけです。
債務者が死亡した場合、契約は相続の対象になります。
債務者が借金苦を理由に死亡しても、契約は消えてなくなりません。
住宅ローンの債務者が死亡した場合、団体信用生命保険の保険金でローンが完済になります。
奨学金を受けていた奨学生が死亡した場合、奨学金の返済は認められれば免除されることがあります。
消費者金融の借金は、債務者が死亡しても返済が免除されることはありません。
債務者が死亡しても、契約はなくならないからです。
④消費者金融の借金は相続人が相続する
債務者が死亡した場合、契約は相続の対象になります。
相続が発生したら、被相続人のものは相続人が相続します。
被相続人のプラスの財産とマイナスの財産が相続財産です。
消費者金融の借金は、相続財産のひとつです。
消費者金融の借金は、法定相続分で相続人が相続します。
2消費者金融の借金を調べる方法
①自宅で書類を探す
相続が発生した後に遺品整理をしていると、借入明細書や督促状が見つかることがあります。
多くの場合、被相続人が生前に銀行の預貯金口座を保有していたでしょう。
預貯金の通帳を記帳すると、消費者金融の引落が見つかることがあります。
消費者金融の引落が見つかったら、借り入れの状況を尋ねるといいでしょう。
自宅保管している書類を探すことで、被相続人の借金が判明します。
②信用情報機関に開示請求をする
消費者金融から借金があるかもしれないと不安になることがあります。
被相続人と別居している場合、詳しい財産状況は分からないことが多いでしょう。
被相続人に借金があるかもしれないと不安な場合、信用情報機関に照会することができます。
信用情報は、個人情報の一部です。
信用情報には、本人を特定するための情報とローンやクレジットなどの取引内容、返済状況に関する情報があります。
消費者金融やクレジット会社は、指定信用情報機関に加入しています。
信用情報を確認すると、ローンやクレジットなどの取引内容、返済状況が詳しく分かります。
(1)日本信用情報機構(JICC)
(2)株式会社シー・アイ・シー(CIC)
(3)全国銀行協会全国銀行個人信用情報センター(KSC)
消費者金融やクレジット会社が複数の信用情報機関に加入していることがあります。
信用情報機関は、信用情報を相互に共有することができます。
信用情報は、本人や本人の相続人が開示請求をすることができます。
信用情報機関に開示請求をすることで、被相続人の借金を調べることができます。
3相続放棄で借金の相続を免れる
①相続放棄は家庭裁判所の手続
債務者が死亡しても、借金を返済する義務はなくなりません。
消費者金融の借金は、相続財産です。
相続が発生したら、相続人は相続を単純承認するか相続放棄をするか選択することができます。
相続放棄を希望する場合、家庭裁判所に対して相続放棄を希望する申立てをします。
家庭裁判所の手続をせずに、相続放棄をすることはできません。
相続放棄の期限は、相続があったことを知ってから3か月です。
「相続があったことを知ってから」とは、被相続人が死亡して相続が発生し、その人が相続人であることを知って、かつ、相続財産を相続することを知ってから、と考えられています。
家庭裁判所で相続放棄が認められたら、はじめから相続人でなくなります。
消費者金融に莫大な借金があっても、相続放棄をして借金を免れることができます。
②相続放棄をしても契約はなくならない
相続放棄をしたら、はじめから相続人でなくなります。
相続放棄が認められても、契約は消えてなくなりません。
被相続人に子どもがいる場合、子どもが相続人になります。
子どもが相続放棄をしたら、はじめから相続人でなくなります。
子ども全員が相続放棄をしたら、子どもがいない場合になります。
被相続人に子どもがいない場合、親などの直系尊属が相続人になります。
子どもに相続放棄が認められても、契約は消えてなくならないからです。
相続人が相続放棄をすると、次順位の人が相続人になります。
次順位の人も相続放棄を希望するのであれば、家庭裁判所に対して手続をする必要があります。
相続放棄をしても、借金を返済する義務はなくなりません。
③相続人全員が相続放棄できる
相続人になる人は、法律で決まっています。
相続放棄は、多くの場合、被相続人のマイナスの遺産を引き継がないために行われます。
相続人が全員相続放棄をしたら、被相続人の借金なのに、だれも責任をとらないことになります。
だれも責任をとらないことに対して、後ろめたく思う人もいるかもしれません。
相続放棄は、相続人ひとりひとりが自分の意思で自由に判断できるものです。
結果として、相続人全員が相続放棄を選択することになっても、法律上、やむを得ないことです。
配偶者と子ども全員が相続放棄をした場合、次順位の親などの直系尊属が相続人になります。
親などの直系尊属全員が相続放棄をした場合、次順位の兄弟姉妹が相続人になります。
兄弟姉妹全員が相続放棄をした場合、次順位の相続人はいません。
借金がどこまでも無限に追いかけてくることはありません。
だれが相続人になるかについては、法律で決められているからです。
相続人全員が相続放棄をした場合、相続人不存在になります。
相続人不存在になっても、相続人でない人が借金の返済を迫られることはありません。
相続人全員が相続放棄をすることができます。
④単純承認をすると相続放棄は無効になる
家庭裁判所で相続放棄が認められたら、はじめから相続人でなくなります。
消費者金融の莫大な借金があっても、相続することはありません。
相続が発生したら、相続人は相続を単純承認するか相続放棄をするか選択することができます。
単純承認したとみなされる行為は、法律で定められています。
相続財産の名義変更をした、相続財産である銀行の預貯金を引き出して使ってしまった場合が典型的です。
単純承認をしたのに、家庭裁判所に対して相続放棄を希望する申立てをすることがあります。
単純承認をした後に、相続放棄をすることはできません。
相続放棄はできないのに、家庭裁判所に相続放棄の手続をして、相続放棄が認められても無効です。
相続放棄の申立てがあった場合、家庭裁判所は提出した書類を見て審査をします。
提出書類に問題がなければ、相続放棄を認める決定をしてしまいます。
家庭裁判所で相続放棄が認められても、無効の決定です。
単純承認をした場合、債権者は相続放棄は無効だから借金を返済して欲しいと裁判を起こすことができます。
単純承認をすると、相続放棄は無効になります。
⑤相続放棄をしても生命保険の死亡保険金
被相続人に生命保険がかけてある場合、死亡保険金が支払われます。
原則として生命保険の保険金を受け取る権利は、相続人の固有の財産です。
受取人が「相続人」と指定してあっても、相続で受け取るものではありません。
被相続人の死亡をきっかけにして、保険契約によって受取人が保険金を受け取るものです。
多くの場合、被相続人は生前に生命保険の死亡保険金を受け取る権利を持っていなかったでしょう。
相続によって、被相続人から受け継いだものではありません。
相続人の固有の財産だから、相続放棄をした人は生命保険の保険金を受け取ることができます。
生命保険の保険金を受け取ったことで、相続放棄が無効になることはありません。
相続放棄をした場合、消費者金融の借金を引き継ぐことはありません。
相続放棄をしても、生命保険の死亡保険金を受け取ることができます。
債務者の家族であっても、生命保険の死亡保険金で債務者の借金を返済する義務はありません。
4消滅時効が完成しても借金の請求
①消滅時効の援用で借金から免れる
被相続人の借金が相当古いものであることがあります。
相当古い借金である場合、時効が完成するために必要な期間を経過しているかもしれません。
時効完成後の借金は、消滅時効を援用することで返済を免れることができます。
消費者金融は消滅時効が完成した借金であっても、請求してくることがあります。
消滅時効が完成するために必要な期間を経過しても、借金はなくなったわけではないからです。
債務者が消滅時効の利益を受けることを潔しとするか、分からないと言う理由もあります。
債務者が消滅時効の利益を受けることを希望する場合、時効援用の意思表示をする必要があります。
②時効援用でプラスの財産を相続
消費者金融の借金が時効消滅している場合、相続人は消滅時効を援用することができます。
被相続人に莫大なマイナスの財産と莫大なプラスの財産があることがあります。
莫大なマイナスの財産の時効消滅を援用したら、マイナスの財産を引き継ぐことなくプラスの財産を引き継ぐことができます。
③債務承認で時効が更新される
債務者に相続が発生したら、消費者金融は戸籍謄本等で相続人を調査することができます。
相続人に借金を返済してもらおうと考えて、連絡してくることがあります。
時効援用の意思表示をする前に債務承認をした場合、時効は更新されます。
例えば、次のような行為があると時効が更新されます。
・借金の一部の返済
・借金の返済猶予の申出
・借金の分割払いの申出
時効が更新されると、消滅時効の利益を受けることができなくなります。
被相続人に古い借金がある場合、慎重な対応が必要です。
④消滅時効を援用すると単純承認になる
消滅時効を援用することは、相続財産の処分行為です。
相続財産を処分した場合、相続を単純承認したと判断されます。
ひょっとしたら他にも莫大な借金が見つかるかもしれません。
新たに見つかった借金は、時効消滅していない可能性があります。
単純承認をした後に、相続放棄をすることはできません。
相続放棄は撤回できないように単純承認も撤回することができないからです。
被相続人に古い借金がある場合、慎重な対応が必要です。
5消費者金融の借金を残して死亡したときの相続を司法書士に依頼するメリット
大切な家族を失ったら、大きな悲しみに包まれます。
やらなければいけないと分かっていても、気力がわかない方も多いものです。
相続財産と聞くと、プラスの財産だけイメージしがちです。
被相続人の財産内容を家族が詳細に知っていることは、ほとんどありません。
相続手続の過程で被相続人に借金があったことを知ることになります。
消費者金融の借金は、想像以上に高額になることがあります。
司法書士が、必要な手続や適切な対応についてサポートします。
相続手続を済ませていない方は司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。
相続人が名寄帳を取得する方法
1名寄帳は所有する不動産の一覧表
①被相続人の不動産をまとめて確認できる
相続が発生すると、被相続人の財産を調査します。
家族であっても、被相続人の財産状況を詳細に知っていることは少ないでしょう。
被相続人と離れて暮らしていると、被相続人の財産状況が何も分からないかもしれません。
名寄帳とは、その人が所有する不動産の一覧表です。
名寄帳は、「なよせちょう」と読みます。
不動産を持っていると、固定資産税を納める必要があります。
市区町村は固定資産税を課税するために、固定資産税課税台帳を作成しています。
名寄帳は、固定資産税課税台帳を所有者ごとにまとめた書類です。
名寄帳は、市区町村によってはさまざまな呼び方をしています。
例えば「土地家屋固定資産課税台帳」「土地家屋名寄帳」などです。
名寄帳と言えば分かってもらえるので、心配は不要です。
名寄帳を見ると、その人が所有する不動産をまとめて確認することができます。
②納税通知書に記載がない不動産を確認できる
固定資産税が課されている場合、市区町村役場から納税通知書が届きます。
納税通知書に添付されている課税明細書を見ると、課税対象となった不動産が記載されています。
課税明細書に記載されている不動産は、その人が所有する不動産の一覧表と言えます。
名寄帳も課税明細書も、その人が所有する不動産の一覧表です。
課税明細書は、固定資産税が課税された内容の一覧表です。
不動産によっては、固定資産税がかからないことがあります。
固定資産税がかからない不動産は、課税明細書に記載されません。
名寄帳は、固定資産税課税台帳を所有者ごとにまとめた書類です。
固定資産税課税台帳には、固定資産税がかからない不動産であっても記載されています。
今は条件を満たしているから固定資産税が非課税になっているけど、条件を満たさなくなったら固定資産税がかかる不動産だからです。
名寄帳を見ると、課税明細書に記載されていない不動産が見つかることがあります。
課税明細書に記載されていなくても、被相続人の不動産です。
被相続人の不動産は、相続財産です。
名寄帳を見ると、納税通知書に記載がない不動産を確認することができます。
2相続人が名寄帳を取得する方法
①名寄帳は相続人が請求できる
名寄帳は、その人が所有する不動産の一覧表です。
その人の財産状況は、他の人に知られたくないものでしょう。
名寄帳を請求することができるのは、原則として、納税義務者本人のみです。
名寄帳は、納税義務者と無関係な人が請求することはできません。
納税義務者が死亡した場合、納税義務者の相続人が名寄帳を請求することができます。
名寄帳は、一部の相続人から請求することができます。
②名寄帳を請求するときの必要書類
名寄帳は、納税義務者と無関係な人が請求することはできません。
納税義務者本人以外の人が請求する場合、関係が分かる書類が必要です。
納税義務者の相続人は、名寄帳を請求することができます。
納税義務者の相続人が名寄帳を請求する場合、次の書類が必要です。
(1)所有者本人の除籍謄本
(2)交付請求をする人が相続人であることが分かる戸籍謄本
(3)交付請求をする人の本人確認書類
③名寄帳の請求先
名寄帳は、固定資産税を課税するための台帳から一覧表にした書類です。
固定資産税課税台帳は、市町村が作成します。
名寄帳は、市町村ごとに請求する必要があります。
名寄帳の請求先は、不動産が所在する市区町村役場の固定資産税担当です。
政令指定都市では、市税事務所に請求します。
④郵送で名寄帳を請求できる
名寄帳を請求する場合、市区町村役場の窓口に出向く方法が一般的です。
窓口まで出向くことが難しい場合、郵送で請求することができます。
郵送で請求する場合、日中連絡が取れる電話番号を書いておくといいでしょう。
郵送した書類に不備がある場合、連絡をしてもらえることがあるからです。
請求書を郵送するときに返信用の封筒と切手を同封しておくと、送り返してもらえます。
⑤名寄帳請求に手数料がかかる
名寄帳を発行してもらう場合、手数料を納める必要があります。
名寄帳の発行手数料は、市区町村ごとに異なります。
おおむね300円程度であることが多いでしょう。
市区町村役場の窓口に出向いて請求する場合、窓口で支払いをすることができます。
名寄帳を郵送請求する場合、手数料は郵便小為替で納入します。
郵便小為替は、郵便局の貯金窓口で購入することができます。
市区町村によっては、土地と家屋は別々に発行されることがあります。
単独所有の不動産と共有の不動産は別々に発行されることがあります。
別々に発行される場合、それぞれに発行手数料がかかるでしょう。
被相続人がたくさんの不動産を保有していた場合、名寄帳が1枚に書き切れないことがあります。
複数の名寄帳が発行された場合と考えて、手数料が計算されることがあります。
郵送請求をする場合、郵便小為替は多めに入れておくといいでしょう。
余った分は、郵便小為替で返してもらえます。
3代理人が名寄帳を請求するときは委任状
①名寄帳の交付請求を依頼した証明として委任状が必要
名寄帳は、その人の重要な財産に関する書類です。
名寄帳の交付請求を代理人に依頼する場合、委任状が必要です。
所有者本人が依頼することもできるし、所有者本人が死亡した場合は相続人が依頼することもできます。
司法書士などの専門家に遺産整理の一環として依頼する場合、委任状は司法書士が用意します。
自分で委任状を用意する必要はありません。
内容を確認して、署名押印をするだけで済みます。
代理人を立てて名寄帳の請求を依頼する場合、委任状が必要です。
②名寄帳の交付請求の委任状は認印で良い
名寄帳や課税明細書、評価証明書の取得を代理人に依頼するだけであれば、委任状の押印は認印で構いません。
遺産整理の一環として依頼する場合、預金の解約なども一緒に依頼することがあるでしょう。
金融機関などの手続がある場合、実印で押印をする必要があります。
③一部の相続人から代理人に依頼できる
相続が発生した場合、相続財産は相続人全員の共有財産になります。
相続財産の分け方を決めるためには、相続人全員の合意が不可欠です。
名寄帳の交付請求は、相続人全員でする必要はありません。
一部の相続人が交付請求をすることができます。
名寄帳の交付請求を代理人に依頼する場合、一部の相続人から委任状を出してもらえば問題がありません。
4名寄帳を確認するときの注意点
注意①名寄帳は1月1日現在の情報
名寄帳を見ると、その人の不動産を確認できるのでとても便利です。
名寄帳は、その年の1月1日現在の状況で作成されています。
固定資産税は、その年の1月1日の所有者に対して課されるからです。
固定資産税のための書類だから、1月1日以降の変更について反映しません。
例えば、2月に取得した不動産は、名寄帳に記載されません。
3月に手放したはずの不動産は、名寄帳に記載されています。
名寄帳の内容は、1月1日現在であることに注意する必要があります。
注意②発行した自治体以外の不動産は記載されない
名寄帳は、固定資産税課税台帳を所有者ごとにまとめた書類です。
固定資産税課税台帳は、市区町村ごとに作成しています。
固定資産税課税台帳は、本来固定資産税を課税するための書類だからです。
他の市区町村に所在する不動産のことは、その自治体では把握されていません。
他の市区町村に所在する不動産について、その自治体の名寄帳に記載されません。
被相続人がたくさんの不動産を保有していることがあります。
不動産が各地に散らばっている場合、所在地の市区町村役場に請求します。
名寄帳は、発行した自治体以外の不動産は記載されないことに注意する必要があります。
注意③会社名義の不動産は別で請求
名寄帳は、固定資産税課税台帳を所有者ごとにまとめた書類です。
被相続人が会社を経営していることがあります。
不動産を会社の名義にしていることがあるでしょう。
社長個人と会社は、別人扱いされます。
社長個人の名寄帳を請求した場合、社長個人が所有者になっている不動産だけが記載されます。
社長個人の名寄帳に、会社名義の不動産は記載されません。
会社名義の不動産を確認するためには、会社の名寄帳を別で請求する必要があることに注意する必要があります。
注意④名古屋市など発行していない自治体がある
名寄帳は、その人の重要な財産に関する書類です。
機密性の高い個人情報であることを考慮して、名寄帳を発行していない役所があります。
名古屋市などでは、名寄帳を発行していません。
名古屋市では、課税明細書と資産明細書で代用します。
課税明細書には、固定資産税が課税される物件のみが記載されます。
資産明細書には、免税点未満で課税されない物件が記載されます。
課税明細書を請求するとき「課税されていない物件がある場合は、資産明細書も出してください」と記載すると取得することができます。
名古屋市では、私道など非課税地は課税明細書と資産明細書のいずれにも記載されません。
5後から相続財産が見つかったら
①原則として見つかった財産だけ遺産分割協議
名寄帳を見ると、その人が所有する不動産をまとめて確認することができます。
名寄帳かあると、とても便利です。
それでも相続財産を見落としてしまうことはあるでしょう。
相続財産は、相続人全員の共有財産です。
相続財産の分け方は、相続人全員の合意で決定します。
遺産分割協議をした後で、新たに相続財産が見つかることがあります。
新たな財産が見つかった場合、原則として、先の遺産分割協議は有効です。
新たな財産の分け方だけ、あらためて相続人全員で決定します。
後から相続財産が見つかったら、原則として見つかった財産だけ遺産分割協議をします。
②遺産分割協議のやり直しは例外
遺産分割協議が終わった後で新たに財産が見つかっても、原則としてやり直しはしません。
一部の相続財産についてだけ、遺産分割協議をすることができるからです。
新たに財産が見つかった場合、あらためて遺産分割協議をすることができないわけではありません。
新たに財産が見つかった場合に、遺産分割協議をやり直すのは例外です。
相続人全員がやり直しに納得している場合、遺産分割協議をやり直すことができます。
相続財産に含まれるはずの重要財産が隠されていた場合、遺産分割協議をやり直すことができます。
遺産分割協議のやり直しは、例外です。
③相続登記は義務になった
相続財産が不動産である場合、不動産の名義変更をします。
不動産の名義変更を相続登記と言います。
2024年4月1日に相続登記の義務化が開始されました。
相続によって所有権を取得したことを知ってから、3年以内に相続登記をしなければなりません。
3年以内に相続登記がされない場合、10万円以下のペナルティーになります。
6財産調査を司法書士に依頼するメリット
相続が発生したら、遺族は大きな悲しみに包まれます。
大きい悲しみのなかで、もれなく迅速に相続財産を調査するのは身体的にも精神的にも大きな負担になります。
このような負担の大きい財産調査を司法書士などの専門家に依頼することができます。
遺族のお疲れも、軽減されるでしょう。
その後の相続手続もスムーズになります。
被相続人の財産について、相続人もあまり詳しく知らないという例は意外と多いものです。
悲しみの中で被相続人の築いてきた財産をたどるのは切なく、苦しい作業になります。
調査のためには銀行などの金融機関から、相続が発生したことの証明として戸籍謄本等の提出が求められます。
このような戸籍謄本等の取り寄せも含め、手続をおまかせいただけます。
お仕事や家事でお忙しい方や高齢、療養中などで手続が難しい方は、手続を丸ごとおまかせできます。
ご家族にお世話が必要な方がいて、頻繁に家を空けられない方からのご相談もお受けしております。
財産調査でお疲れが出る前に、司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。
名寄帳で相続した不動産を調査
1名寄帳は所有者ごとの不動産一覧表
名寄帳は「なよせちょう」と読みます。
名寄帳とは、土地や家屋を所有者ごとにまとめた一覧表です。
市町村が税金をかけるために備えている帳簿から一覧表にまとめてくれた書類です。
市町村によっては「土地家屋固定資産課税台帳」「土地家屋名寄帳」などのさまざまな呼び方をしています。
「名寄帳」と言えば、役所の人は分かってくれますから心配は不要です。
固定資産課税台帳には、次のような項目が記載されています。
①所有者の氏名や住所
②不動産の所在や状況
③固定資産評価額
④固定資産税額
名寄帳は、不動産の所有者ごとに抽出して一覧表に取りまとめた書類です。
その市町村が把握している不動産の状況が一目で分かるので、とても便利です。
2名寄帳の取得方法
①名寄帳を取得できる人
名寄帳は、土地や家屋を所有者ごとにまとめた一覧表です。
その人の財産に関する重要な書類です。
基本的には、所有者本人だけが交付請求をすることができます。
所有者本人が死亡した場合、相続人から交付請求をすることができます。
②名寄帳を取得するときに必要な書類
相続人が交付請求をする場合、次の書類が必要です。
(1)所有者本人の除籍謄本
(2)交付請求をする人が相続人であることが分かる戸籍謄本
(3)交付請求をする人の本人確認書類
③名寄帳の申請先
名寄帳は、各市町村ごとに作られます。
土地や家屋が所在する市町村ごとに手続をします。
市町村役場の固定資産税を担当する係へ交付請求をする必要があります。
政令指定都市では、各市税事務所で手続をします。
窓口まで出向いて交付請求をすることもできるし、郵送請求をすることもできます。
郵送請求する場合、日中連絡ができる電話番号を明記しておきましょう。
返信用の封筒と切手を同封しておくと、送り返してもらえます。
手続をするときに、単独所有の物件と共有の物件のいずれも交付してくださいとお願いするといいでしょう。
④名寄帳の交付手数料
名寄帳を発行してもらうためには、手数料を納めなければなりません。
市町村ごとに違いますが、300円前後であることが多いです。
名寄帳を郵送で交付請求する場合、手数料は郵便小為替で納入します。
郵便小為替は、郵便局で購入します。
名寄帳は、単独所有の物件と共有の物件は別々に発行されます。
手数料が別々に計算されます。
3代理人が名寄帳の交付請求するときは委任状が必要
①名寄帳の交付請求を依頼した証明として委任状が必要
名寄帳は、その人の重要な財産に関する書類です。
名寄帳の交付請求を代理人に依頼する場合、委任状が必要です。
所有者本人が依頼することもできるし、所有者本人が死亡した場合は相続人が依頼することもできます。
司法書士などの専門家に遺産整理の一環として依頼する場合、委任状は司法書士が用意します。
自分で委任状を用意する必要はありません。
内容を確認して、署名押印をするだけで済みます。
②名寄帳の交付請求の委任状は認印で良い
名寄帳や課税明細書、評価証明書の取得を代理人に依頼するだけであれば、委任状の押印は認印で構いません。
遺産整理の一環として依頼する場合、預金の解約なども一緒に依頼することがあるでしょう。
金融機関などの手続がある場合、実印で押印をする必要があります。
③一部の相続人から代理人に依頼できる
相続が発生した場合、相続財産は相続人全員の共有財産になります。
相続財産の分け方を決めるためには、相続人全員の合意が不可欠です。
名寄帳の交付請求は、相続人全員でする必要はありません。
一部の相続人が交付請求をすることができます。
名寄帳の交付請求を代理人に依頼する場合、一部の相続人から委任状を出してもらえば問題がありません。
4名寄帳の見方のポイント
名寄帳は、固定資産課税台帳の内容を一覧表にまとめたものです。
固定資産税を課税するための情報がたくさん書いてあります。
相続財産を調査する場合、次の項目に注目するといいでしょう。
①不動産に関する情報
(1)不動産が土地であるか家屋であるか
(2)不動産の所在地
(3)土地であれば、地積、地目
(4)家屋であれば、家屋の種類、面積
(5)単独所有であるか共有であるか
②所有者に関する情報
(1)所有者の住所
(2)所有者の氏名
③固定資産税評価額
5名寄帳にはあるのに課税明細書に書いてない不動産がある
不動産を持っていると、固定資産税がかかります。
毎年5月ごろになると固定資産税の納税をするべき人に対して、納付書が送られます。
不動産を共有している場合、代表者にだけ送られます。
納付書の封筒に、納税通知と課税明細書が同封されています。
課税明細書は、相続した不動産を調査をするときの有力な資料です。
課税明細書には、固定資産税が非課税の不動産については記載がされていません。
所有している不動産が免税点未満の場合、課税するべき固定資産税がありません。
納めてもらう固定資産税がない場合、納税通知書と課税明細書は発行されません。
納税通知書と課税明細書は、市町村から固定資産税を納めてくださいというお知らせだからです。
自宅に隣接する公衆用道路を、個人で所有している場合や近隣の人と共有している場合があります。
一定の条件を満たしている場合、公衆用道路は固定資産税が課されません。
固定資産税が課税されていないため、私道を所有していることを見落としがちです。
自宅に隣接する公衆用道路を、個人で所有している場合や近隣の人と共有している場合、相続財産になります。
相続財産だから、相続財産の分け方を決めるため相続人全員の合意が不可欠です。
自宅の分け方について合意をした場合でも私道について合意を漏らしてしまうことがあります。
課税明細書を発見したら、念のため、市町村から名寄帳を取り寄せると安心です。
6名寄帳を見るときの注意点
①名寄帳は1月1日現在の情報
名寄帳は、固定資産課税台帳の内容を一覧表にまとめたものです。
固定資産税は、その年の1月1日の所有者が納税する義務があります。
固定資産税を課税するための書類だから、1月1日以降の変更については反映しません。
例えば、2月に取得した不動産は名寄帳に記載されていません。
2月に手放した不動産は記載されています。
②発行した市町村以外の不動産は記載されていない
名寄帳は、市町村が土地や家屋をまとめた一覧表です。
他の市町村のことは分からないから、名寄帳に記載されていません。
不動産がたくさんある場合、各地に散らばっていることがあります。
市町村ごとに名寄帳の交付請求をしなければなりません。
③法人名義の不動産は記載されていない
被相続人が会社を経営していた場合があります。
不動産を経営していた会社名義にしていることがあるでしょう。
社長と会社は、別人で扱われます。
社長個人の名寄帳に会社名義の不動産は記載されません。
④名寄帳を発行していない市町村がある
名寄帳は、その人の重要な財産に関する書類です。
機密性の高い個人情報であることを考慮して、名寄帳を発行していない役所があります。
名古屋市などでは、名寄帳を発行していません。
名古屋市では、課税明細書と資産明細書で代用します。
課税明細書には、固定資産税が課税される物件のみが記載されます。
資産明細書には、免税点未満で課税されない物件が記載されます。
課税明細書を請求するとき「課税されていない物件がある場合は、資産明細書も出してください」と記載すると取得することができます。
名古屋市では、私道など非課税地は課税明細書と資産明細書のいずれにも記載されません。
7財産調査を司法書士に依頼するメリット
相続が発生したら、遺族は大きな悲しみに包まれます。
大きい悲しみのなかで、もれなく迅速に相続財産を調査するのは身体的にも精神的にも大きな負担になります。
負担の大きい財産調査を司法書士などの専門家に依頼することができます。
遺族のお疲れも、軽減されるでしょう。
その後の相続手続もスムーズになります。
被相続人の財産について、相続人もあまり詳しく知らないという例は意外と多いものです。
悲しみの中で被相続人の築いてきた財産をたどるのは切なく、苦しい作業になります。
調査のためには銀行などの金融機関から、相続が発生したことの証明として戸籍謄本等の提出が求められます。
このような戸籍謄本等の取り寄せも含め、手続をおまかせいただけます。
仕事や家事でお忙しい方や高齢、療養中などで手続きが難しい方は、手続を丸ごとおまかせできます。
家族にお世話が必要な方がいて、頻繁に家を空けられない方からのご相談もお受けしております。
財産調査でお疲れが出る前に、司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。
被相続人の通帳を見せてもらえない
1金融機関に開示請求ができる
①相続人は通帳を見せる義務はない
銀行口座は、日常生活に欠かすことができません。
多くの人は、銀行に口座を持っているでしょう。
口座の持ち主が死亡した場合、口座の預貯金は相続人に相続されます。
口座の預貯金は、相続人全員の共有財産です。
相続財産の分け方は、相続人全員の合意で決める必要があります。
被相続人の財産は、被相続人の同居の家族などが管理していることが多いでしょう。
被相続人の同居の家族などが被相続人の財産を管理することは問題ではありません。
被相続人が預貯金口座を持っている可能性が高いのに、通帳を見せてもらえないことがあります。
相続財産の状況が分からないと、分け方の話し合いができません。
通帳を見せてもらえないことで、話し合いができなくなります。
自分の相続分に照らして、適切な分け方であるのか判断できないからです。
通帳を見せてもらえないことも、違法ではありません。
一部の相続人が他の相続人に、通帳を見せる義務はないからです。
通帳を見せないと、他の相続人は疑心暗鬼になります。
通帳を見せる義務はないけど、開示した方がいいでしょう。
通帳を見せてもらえれば、安心して話し合いができるからです。
②金融機関に残高証明書を発行してもらえる
被相続人の家族が通帳を管理している場合、管理している家族も相続人でしょう。
通帳を見せてくれない場合、自力で財産調査をする必要があります。
被相続人の預貯金口座がある金融機関に対して、口座の残高証明書を発行してもらうことができます。
被相続人の死亡時の残高証明書を取得した場合、相続が発生したときの預貯金の残高が分かります。
被相続人の通帳を見せてもらえない場合、金融機関に残高証明書を発行してもらうことができます。
③金融機関に取引履歴を発行してもらえる
被相続人の死亡時の残高証明書を確認すると、想像以上に金額が少ないことがあります。
生前の経済状況から大きく乖離する場合、一部の相続人に贈与がされているかもしれません。
一部の相続人が受け取った贈与を考慮しないで、相続財産を分けるのは不公平です。
生前贈与は特別受益として、相続財産に持ち戻すと公平な遺産分割ができます。
生前の経済状況から大きく乖離する場合、一部の相続人が引き出して自分の口座などに財産を隠しているかもしれません。
残高証明書は、残高しか確認することができません。
被相続人の預貯金口座がある金融機関に対して、口座の取引履歴を発行してもらうことができます。
被相続人の死亡時の取引履歴を取得した場合、口座の入出金状況が分かります。
通帳を見せてもらえない場合、後ろめたい事情があるかもしれません。
口座の入出金状況を確認すると、通常とは異なる出金が見つかることがあります。
被相続人の通帳を見せてもらえない場合、金融機関に取引履歴を発行してもらうことができます。
④銀行口座を網羅的に調べることはできない
被相続人の通帳を見せてもらえないときの対処法は、金融機関に残高証明書と取引履歴を発行してもらうことです。
残高証明書と取引履歴を発行してもらうためには、銀行などに発行請求をする必要があります。
被相続人がどこの金融機関に口座を持っているのか分からない場合、網羅的に調べる方法はありません。
被相続人の住所の近隣などの金融機関と取引をしていることが多いでしょう。
心当たりのある金融機関に対して、ひとつひとつ確認する必要があります。
被相続人と同居していた家族に協力してもらって、遺品などを調べるといいでしょう。
高齢者は、ゆうちょ銀行の口座を持っていること多いので確認してみるといいでしょう。
銀行などの預貯金口座は、網羅的に調べる方法はありません。
⑤証券口座は一括検索ができる
銀行などの預貯金口座は、ひとつひとつ確認する必要があります。
一括して網羅的に調べる方法がないからです。
被相続人が株式の取引をしていた場合、証券会社の口座を持っていたでしょう。
どこの証券会社に口座を持っていたか分からない場合、一括して検索することができます。
証券会社の口座は、証券保管振替機構に対して口座の開示請求をすることができるからです。
口座の開示請求では、被相続人が取引していた証券会社が判明します。
判明した証券会社に対して、残高証明書を発行してもらうことができます。
銀行口座は、一括検索ができません。
証券口座は、一括検索ができます。
2残高証明書と取引履歴を発行してもらう方法
①各相続人が単独で発行請求ができる
残高証明書と取引履歴は、金融機関に発行してもらうことができます。
相続人は、金融機関に発行請求をすることができます。
残高証明書と取引履歴の発行は、各相続人が単独で請求することができます。
残高証明書と取引履歴の発行は、保存行為と考えられるからです。
相続人全員で請求しなければならないと言ったルールはありません。
他の相続人の同意が必要になることもありません。
通帳を持っていなくても持っていても、残高証明書と取引履歴の発行請求をすることができます。
②必要書類
残高証明書と取引履歴の発行請求をする場合、次の書類が必要になります。
(1)被相続人の死亡が記載されている戸籍謄本
(2)発行請求をする相続人の現在戸籍
(3) 発行請求をする相続人の印鑑証明書
(4) 発行請求をする相続人の本人確認書類
事情によっては、追加で書類が必要になることがあります。
相続手続をする場合、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本が必要になります。
相続手続では、相続人全員を確認する必要があるからです。
残高証明書と取引履歴の発行請求をする場合、被相続人の死亡が記載されている戸籍謄本のみで差し支えありません。
相続人全員を確認する必要は、ないからです。
残高証明書と取引履歴の発行は、一部の相続人が請求することができます。
他の相続人の承諾は、不要です。
残高証明書と取引履歴の発行請求をする場合、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本は不要です。
残高証明書と取引履歴の発行請求をする場合、所定の手数料を払う必要があります。
③取引履歴は10年分
取引履歴の発行は、いつからいつまでと期間を定めて請求します。
一般的な金融機関は、取引履歴の保管期間を10年と定めています。
金融機関の保管期間内であれば、発行してもらうことができます。
金融機関によっては、10年間以上の取引履歴を発行してもらうことができます。
取引履歴を発行してもらうときの手数料は、金融機関によってまちまちです。
金融機関によっては、1日当たりで手数料を定めていることがあります。
10年分の取引履歴を請求すると、思わぬ高額な費用になることがあります。
取引履歴は、10年分発行してもらうことができます。
④生前に解約されていたら
被相続人の口座の残高証明書と取引履歴は、相続人が発行請求をすることができます。
残高証明書と取引履歴の発行請求は、相続財産の保存行為だからです。
被相続人の口座が生前に解約されている場合、相続財産はありません。
相続財産の保存行為ではないから、相続人は残高証明書と取引履歴をすることができないのが原則です。
ときには、金融機関の好意で発行してくれることがあります。
預貯金口座の取引履歴は、遺産分割協議の重要な資料になります。
金融機関に重要な資料であることを説明して、開示に協力してもらうことが大切です。
被相続人の口座が生前に解約されている場合、原則として、残高証明書と取引履歴の発行請求はできません。
3残高証明書と取引履歴を請求するときの注意点
①窓口請求するなら事前予約
近隣の金融機関の場合、直接窓口に行って手続をするのが便利です。
残高証明書と取引履歴の発行請求は、一般的な手続ではありません。
残高証明書と取引履歴の発行請求に、慣れている人はほとんどいないでしょう。
窓口は行けば係の人の説明を聞きながら、手続をすることができます。
金融機関によっては事前予約なしに窓口に行っても、対応できる係員がいないことがあります。
対応できる係員がいない場合、再度窓口に行くことになるでしょう。
まず窓口に行く前に、電話やホームページから予約をするのがおすすめです。
予約せずに窓口に行った場合、予約優先で長時間待たされることになります。
直接窓口に行って手続をする場合、事前予約が必要です。
②郵送請求するなら半月から1か月かかる
取引していた金融機関が遠方である場合、郵便で手続をするのが便利です。
残高証明書と取引履歴の発行請求は、一般的な手続ではありません。
金融機関のホームページなどに請求用紙が掲載されていないことが多いでしょう。
金融機関に電話をして、残高証明書や取引履歴の発行請求書を取り寄せます。
金融機関によっては、あらかじめ必要書類を提出してから請求用紙が送られてくることがあります。
請求用紙を提出して、問題がなければ発行手数料のお知らせと振込先が通知されます。
窓口に行った場合、手数料はその場で支払うことができます。
郵送で手続をする場合、手数料は指定の口座に振込みをする必要があります。
スムーズに手続をした場合でも、何度も郵便のやり取りをすることになります。
書き間違いや金融機関の案内間違いがあると、やり取りが増えます。
郵送で残高証明書と取引履歴を発行請求する場合、半月から1か月程度かかることが多いです。
やり取りが増えると、1か月以上かかります。
郵送請求するなら、半月から1か月かかります。
4使い込みの疑いがあるときは
①遺産分割協議で話し合い
通帳を見せてもらえない場合、後ろめたい事情があるかもしれません。
口座の入出金状況を確認すると、通常とは異なる出金が見つかることがあります。
相続財産の状況は、話し合いの前提です。
被相続人と離れて暮らしていた場合、どのような費用が必要であったか把握していないことが多いでしょう。
通常とは異なる出金が見つかった場合、どのような使い途であったか確認しましょう。
被相続人と同居していた家族にとっては、当然に必要な費用であったかもしれません。
使い込みと決めつけると、相続人間で鋭い対決になります。
領収書などを見せてもらえば、納得できるでしょう。
使い途の分からない出金は、遺産分割協議で話し合いをします。
②話し合いができないなら遺産分割調停
遺産分割協議は、相続財産の分け方について相続人全員でする話し合いです。
相続人で話し合いができない場合、遺産分割調停の申立てをすることができます。
遺産分割調停では、家庭裁判所の助力を得て相続人全員の合意を目指します。
相続人だけで話し合いをした場合、それぞれの主張をして話し合いがまとまらないことがあります。
家庭裁判所の調停委員に話す場合、少し落ち付いて話ができるでしょう。
家庭裁判所の調停委員から公平な意見を根拠にしてアドバイスがされると、納得できるかもしれません。
調停委員から客観的なアドバイスを受けて、相続人全員の合意を目指します。
5被相続人の通帳を見せてもらえないとき司法書士に依頼するメリット
被相続人の通帳を見せてもらえないことは、少なくありません。
被相続人の通帳を見せたくないことも、少なくありません。
通帳を見せなくても、相続人は自力で調べることができます。
通帳を見せてもらえなくても、相続人は自力で調べることができます。
被相続人の通帳は、被相続人の同居の家族が管理していることが多いでしょう。
被相続人の通帳を見せてもらえないと、同居の家族への不信感が募ります。
被相続人の通帳を見せないことに、メリットはありません。
被相続人の通帳を見せないことは、相続人間で大きなトラブルに発展しがちです。
デメリットが非常に大きく、メリットはありません。
必要な費用であれば、支出するのは当然のことです。
丁寧に説明して、領収書などを見せると納得してもらえるでしょう。
被相続人の通帳を見せてもらえないとき、金融機関に残高証明書と取引履歴を請求することができます。
司法書士に、このような手続をおまかせすることができます。
客観的に見て、紛争に発展している場合は弁護士を紹介します。
被相続人の通帳を見せてもらえない場合、司法書士に相談することをおすすめします。
未支給年金は相続財産ではない
1口座凍結で未支給年金が発生する
①口座の持ち主が死亡すると口座凍結
銀行などの口座は、日常生活に欠かせません。
多くの人は、銀行などに口座を持っているでしょう。
口座の持ち主が死亡したら、口座は凍結されます。
口座凍結とは、口座取引をできなくすることです。
口座が凍結されると、預入れや引出しなどの口座取引はすべてできなくなります。
口座の持ち主が死亡すると、口座は凍結されます。
②年金は死亡月まで支給される
口座が凍結されると、口座取引はすべてできなくなります。
振込みもできないし、公共料金などの引落しもできなくなってしまいます。
年金を受け取っている人は、口座振り込みで受け取っているでしょう。
年金は、後払いで支給されます。
例えば、4月分と5月分の年金は、6月に支給されます。
年金は、死亡月まで支給されます。
年金を受け取っている人が4月に死亡した場合、4月分の年金まで支給されます。
4月分の年金は、6月に振込みがされます。
多くの場合、6月には口座が凍結しているでしょう。
4月分の年金は、受け取ることができません。
未支給年金とは、受け取ることができなかった年金です。
年金は後払いだから、必ず未支給年金が発生します。
口座凍結で、未支給年金が発生します。
2公的年金の未支給年金は相続財産ではない
①未支給年金は遺産分割協議の対象ではない
相続が発生したら、被相続人の財産は相続人が相続します。
相続財産は、相続人全員の共有財産です。
相続財産の分け方は、相続人全員の合意で決める必要があります。
被相続人が年金を受け取っていたから、受け取るはずの年金は相続財産に見えるかもしれません。
公的年金の未支給年金は、相続財産ではありません。
相続財産は、民法に基づいて相続人が相続します。
未支給年金は、別の法律に基づいて一定の遺族に支給されます。
公的年金の未支給年金は、相続人全員で分け方を決めることはできません。
公的年金の未支給年金は、遺産分割協議の対象ではないからです。
②相続放棄をしても未支給年金
相続が発生したら、相続人は相続を単純承認するか相続放棄をするか選択することができます。
相続放棄を希望する場合、家庭裁判所に対して相続放棄の申立てをします。
家庭裁判所で相続放棄が認められたら、はじめから相続人でなくなります。
相続財産は、相続人が相続します。
はじめから相続人でなくなるから、相続財産を相続することはできません。
プラスの財産もマイナスの財産も、相続することはありません。
公的年金の未支給年金は、相続財産ではありません。
一定の遺族は、未支給年金を受け取ることができます。
一定の遺族の中には、相続人である人もいるし相続人でない人もいるでしょう。
相続人である人も相続人でない人も、一定の遺族であれば未支給年金を請求することができます。
公的年金の未支給年金を受け取る権利は、一定の遺族の固有の権利です。
相続財産を処分した場合、単純承認をしたとみなされます。
単純承認をした場合、相続放棄をすることはできません。
未支給年金を受け取る権利は、相続財産ではありません。
未支給年金は、法律で一定の遺族に認められた権利です。
死亡した被相続人が受け取るはずの年金を受け継いだものではありません。
法律で認められた遺族の固有の権利です。
被相続人から相続した相続財産ではないから、相続放棄とは無関係です。
相続人が相続放棄をした場合でも相続放棄をしない場合でも、法律の定めに基づいて未支給年金を受け取ることができます。
未支給年金を受け取っても、相続の単純承認をしたと言われることはありません。
未支給年金を受け取る権利は、相続財産ではなく遺族の固有の財産だからです。
相続放棄をした後に未支給年金を請求した場合、相続放棄が無効になることはないし、未支給年金を返還するように言われることはありません。
未支給年金を受け取った後に相続放棄をした場合、相続放棄が無効になることはないし、未支給年金を返還するように言われることはありません。
未支給年金を受け取る権利は、遺族の固有の権利だから、相続放棄とは無関係です。
すでに相続放棄をした場合でも、これから相続放棄をするつもりでも、未支給年金を受け取ることができます。
③事実婚・内縁の配偶者が未支給年金
公的年金の未支給年金は、一定の遺族に支給されます。
一定の遺族の条件に、死亡した年金受給者に生計を維持されていた人という条件があります。
相続人になる人は、民法で決まっています。
相続人になる人には、生計を維持されていた人という条件はありません。
配偶者は、死亡した年金受給者に生計を維持されていた人でしょう。
死亡した年金受給者に生計を維持されていた配偶者は、法律上の配偶者でないことがあります。
相続人になる配偶者は、法律上の配偶者に限られます。
事実婚・内縁の配偶者は、相続人になりません。
事実婚・内縁の配偶者は、公的年金の未支給年金を請求することができます。
公的年金の未支給年金を請求する権利は、一定の遺族の固有の権利だからです。
公的年金の未支給年金は相続財産ではないから、事実婚・内縁の配偶者が受け取ることができます。
3未支給年金の受取方法
①未支給年金を請求できる人
未支給年金を受け取ることができるのは、次の人のうち優先順位の高い人です。
(1)配偶者
(2)子
(3)父母
(4)孫
(5)祖父母
(6)兄弟姉妹
(7)その他これら以外の3親等内の親族
未支給年金は、年金を受け取っていた人と生計を同じくしていた人が受け取ることができます。
遺族年金と未支給年金は、別の制度です。
遺族年金を受け取ることができる場合で、かつ、未支給年金を受け取ることができる場合、それぞれの手続が必要です。
②未支給年金を請求に必要な書類
未支給年金を受け取るためには、受給権者死亡届と未支給年金・未払い給付金請求書の提出が必要です。
受給権者死亡届に添付する書類は、次のとおりです。
(1)年金証書
(2)死亡の事実を明らかにできる書類
(2)死亡の事実を明らかにできる書類は、戸籍謄本、市区町村長に提出した死亡診断書のコピー、死亡届の記載事項証明書などです。
未支給年金・未払い給付金請求書に添付する書類は、次のとおりです。
(1)年金証書
(2)被相続人と請求者の続柄が分かる戸籍謄本
(3)被相続人と請求者が生計を同じくしていたことが分かる住民票と除票
(4)受け取りを希望する金融機関の通帳
(5)生計同一についての申立書(被相続人と請求者が別世帯の場合)
(2)戸籍謄本(3)住民票は、死亡日より後に発行されたものが必要です。
(2)戸籍謄本(3)住民票は、原本を返してもらうことができます。
③未支給年金は5年以内に請求
未支給年金を受け取るためには、請求をしなければなりません。
未支給年金を受け取る権利は、何もしないで放置すると時効で消滅します。
年金支払い日の翌月の初日から起算して5年で時効消滅します。
5年経過で時効消滅すると、未支給年金を受け取ることができなくなります。
未支給年金を受け取る権利が亡くなる前に、請求しましょう。
④繰り下げ受給の待機中の死亡は未支給年金で請求できる
被相続人が年金の繰り下げ受給の待機中に死亡する場合があります。
年金の繰り下げ受給の待機中に死亡した場合、本人が受け取るはずだった年金を遺族が請求することができます。
65歳から死亡した月の分までの年金が、未支給年金として支給されます。
未支給年金には、待機した分の増額は反映されません。
この場合、時効の起算は65歳からです。
⑤未支給年金が振り込まれるまでに3か月
未支給年金を請求した後、問題がなければ3か月程度で振り込まれます。
未支給年金の請求書を提出した後、未支給年金支給決定通知書が発送されます。
支給されないときは、不該当通知書が発送されます。
⑥未支給年金に相続税はかからない
公的年金の未支給年金は、相続財産ではありません。
相続税法は、相続財産でないのに相続税がかかる財産を定めています。
相続財産でないのに相続税がかかる財産をみなし相続財産と言います。
公的年金の未支給年金は、見なし相続財産でもありません。
公的年金の未支給年金は、相続税の対象ではありません。
⑦未支給年金は受取人の所得になる
未支給年金は、法律で一定の遺族に認められた権利です。
受取人の固有の財産だから、受取人の所得になります。
受け取る年金や金額によっては、所得税がかかります。
受け取った年の翌年3月15日までに確定申告が必要になる場合があります。
4企業年金の未支給は相続税の対象になる
①現職死亡の企業年金は死亡退職金扱い
社員が現職で死亡し企業年金が遺族に支払われた場合、死亡退職金と見なされます。
死亡退職金は、相続財産でないのに相続税がかかる財産です。
死亡退職金には、非課税限度額があります。
非課税限度額=500万円×法定相続人の数
死亡退職金が非課税限度額以下である場合、相続税は課税されません。
相続人以外の人が死亡退職金を受け取った場合、非課税の適用はありません。
②企業年金受給中の死亡は定期金扱い
企業年金受給中に死亡し遺族に未支給年金が支払われた場合、定期金と見なされます。
定期金に関する権利は、相続財産です。
定期金にかかる権利は、非課税枠はありません。
5私的年金の未支給は相続税の対象になる
被相続人が個人年金の契約を締結していることがあります。
年金受給中に死亡し遺族に未支給年金が支払われた場合、年金受給権を相続したと言えます。
私的年金の年金受給権は、相続財産です。
私的年金の年金受給権は、非課税枠はありません。
6財産調査を司法書士に依頼するメリット
相続が発生したら、ご遺族は大きな悲しみに包まれます。
大きい悲しみのなかで、もれなく迅速に相続財産を調査するのは身体的にも精神的にも大きな負担になります。
負担の大きい財産調査を司法書士などの専門家に依頼すれば、遺族のお疲れも軽減されるでしょう。
その後の相続手続もスムーズになります。
被相続人の財産は、相続人もあまり詳しく知らないという例が意外と多いものです。
悲しみの中で被相続人の築いてきた財産をたどるのは切なく、苦しい作業になります。
調査のためには銀行などの金融機関から、相続が発生したことの証明として戸籍謄本等の提出が求められます。
戸籍謄本の取り寄せも含め、手続をおまかせいただけます。
仕事や家事でお忙しい方や高齢、療養中などで手続きが難しい方は、手続きを丸ごとおまかせできます。
家族にお世話が必要な方がいて、頻繁に家を空けられない方からのご相談もお受けしております。
財産調査でお疲れが出る前に、司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。
失踪宣告で借金を相続
1失踪宣告で相続が開始する
①失踪宣告で死亡と見なされる
相当長期間、行方不明になっている場合、死亡している可能性が高い場合があります。
条件を満たした場合、死亡の取り扱いをすることができます。
失踪宣告とは、行方不明の人が死亡した取り扱いとするための手続です。
失踪宣告がされたら、たとえ死亡していなくても死亡した取り扱いをします。
行方不明が長期化した場合、家族が困ります。
家族であっても、行方不明の人の財産を処分することができません。
行方不明者の配偶者は、再婚することができません。
残された家族のために、行方不明者を死亡したものと扱う制度が失踪宣告の制度です。
失踪宣告がされると、死亡した取り扱いをします。
失踪宣告がされた人に、相続が発生します。
相続財産は、相続人全員の共有財産になります。
相続人全員の合意があれば、相続財産を自由に分けることができます。
遺産分割協議によって相続した後は、相続人が自由に処分をすることができます。
②普通失踪は生死不明7年
一般的に失踪宣告といった場合、普通失踪を指しています。
生死不明の期間を失踪期間と言います。
普通失踪では、失踪期間が7年必要です。
生死不明のまま7年経過した場合に、自動的に死亡と見なされるわけではありません。
家庭裁判所が失踪宣告したときに、死亡と見なされます。
生死不明の人の家族や利害関係人は、家庭裁判所に失踪宣告の申立てをすることができます。
家庭裁判所に失踪宣告の申立てをした後、家庭裁判所が死亡と認めていいか調査します。
家庭裁判所の状況や事件の内容によっては、調査のために1年ほどかかる場合もあります。
生死不明のまま7年以上経過したと認められる場合、家庭裁判所は失踪宣告をすることができます。
③特別失踪(危難失踪) は生死不明1年
行方不明の人が大災害や大事故にあっていることがあります。
大災害や大事故に遭った場合、死亡している可能性が非常に高いものです。
特別失踪(危難失踪)とは「戦地に行った者」「沈没した船舶に乗っていた者」「その他死亡の原因となる災難に遭遇した者」などを対象にする失踪宣告です。
死亡している可能性が非常に高いので、失踪期間は短い期間です。
特別失踪(危難失踪)では、失踪期間が1年で済みます。
生死不明のまま1年以上経過したと認められる場合、家庭裁判所は失踪宣告をすることができます。
④死亡と見なされる日に相続開始
失踪宣告がされると、たとえ死亡していなくても死亡した取り扱いをします。
普通失踪では生死不明になってから7年間経過したときに、死亡したものと見なされます。
特別失踪(危難失踪)では危難が去ったときに、死亡したものと見なされます。
たとえ死亡していなくても死亡した取り扱いをするから、相続が開始します。
死亡と見なされる日が、相続が開始する日です。
失踪宣告の手続は、長期間かかります。
相続が開始する日は、失踪宣告の申立てをした日ではありません。
裁判所が失踪宣告をした日でもありません。
相続手続の基準になるのが、死亡と見なされる日です。
2行方不明なら家族に取立てができない
①家族に返済義務はない
お金を借りたら、借りたお金を返さなければなりません。
お金を返す義務は、お金を借りた人だけの義務です。
お金を借りた後、借金を返せなくなることがあります。
借金を返せなくなった場合、お金を借りた人が責任を取ります。
お金を返す義務は、お金を借りた人だけの義務だからです。
借金がきっかけになって、行方不明になることがあります。
借金の返済を滞らせて行方不明になっても、家族に返済義務はありません。
お金を借りた人の責任であって、家族はお金を借りた人ではないからです。
借金を滞らせても、家族が自動で借金を返済する義務を負うことはありません。
②連帯保証人は肩代わりの義務がある
お金を借りるときに、連帯保証人を立てることがあります。
連帯保証人は、借金を返せなくなったときに肩代わりをする人です。
借金を返せなくなった場合でも肩代わりをしてくれるから、安心してお金を貸すことができます。
お金を借りるときに、家族が連帯保証人になることがあります。
お金を借りた人が返済を滞らせた場合、連帯保証人は肩代わりをしなければなりません。
お金を借りた人が返済を滞らせたまま行方不明になった場合、代わりに返済をしなければなりません。
連帯保証人は、借金を返せなくなったときに肩代わりをしますと約束した人だからです。
連帯保証人は、肩代わりの義務があります。
③第三者への取立ては違法行為
お金を返す義務は、お金を借りた人だけの義務です。
連帯保証人には、肩代わりに義務があります。
家族であっても、お金を返す義務はありません。
連帯保証人になっていないのに、自動で借金を返済する義務を負うことはありません。
債権者は借金を返してもらいたいから、家族に連絡を取ってくるでしょう。
お金を返す義務がない人に対して、みだりに催促する行為は違法です。
貸金業者は、行政から監督を受けています。
執拗な催促をする場合、行政に苦情を申し入れることができます。
違法な取り立てと認められた場合、業務停止などの行政処分が行われます。
第三者への取立ては、違法行為です。
3失踪宣告後は借金は相続財産
①失踪宣告で相続人に返済義務
失踪宣告がされると、たとえ死亡していなくても死亡した取り扱いをします。
失踪宣告で、相続が発生します。
相続が発生すると、被相続人のものは相続人が相続します。
被相続人のプラスの財産とマイナスの財産が相続財産です。
被相続人が借金を抱えたまま死亡した場合、借金は相続人全員に相続されます。
借金は相続されるから、相続人は借金の返済義務を相続します。
失踪宣告がされると、相続人全員に借金の返済義務が引き継がれます。
②失踪宣告後は借金の調査ができる
お金を返す義務は、お金を借りた人だけの義務です。
借金がいくらあるかなどの信用情報は、重要な個人情報です。
お金を借りた人が生きている間、家族が勝手に借金を調査することはできません。
お金を借りた人に失踪宣告がされた場合、相続人は借金の調査をすることができます。
消費者金融やクレジット会社は、指定信用情報機関に加入しています。
信用情報を確認すると、ローンやクレジットなどの取引内容、返済状況が詳しく分かります。
(1)日本信用情報機構(JICC)
(2)株式会社シー・アイ・シー(CIC)
(3)全国銀行協会全国銀行個人信用情報センター(KSC)
相続人は、信用情報機関に対して情報開示を請求することができます。
信用情報機関に開示請求をすることで、被相続人の借金を調べることができます。
③失踪宣告後は相続放棄ができる
失踪宣告がされるまでは、行方不明の人は生きている扱いです。
相続が発生した後、相続人は相続を単純承認するか相続放棄をするか選択することができます。
相続放棄を希望する場合、家庭裁判所に対して相続放棄を希望する申立てをします。
被相続人が生きている間は、相続放棄をすることできません。
相当長期間行方不明であっても、失踪宣告されずに行方不明のままなら生きている扱いです。
行方不明のままなのに相続放棄の申立てを提出しても、受け付けてもらえません。
④相続放棄をしても生命保険の死亡保険金
相続が発生した後、相続人は相続を単純承認するか相続放棄をするか選択することができます。
単純承認と見なされる行為は、法律で定められています。
相続財産の名義変更をした、相続財産である銀行の預貯金を引き出して使ってしまった場合が典型的です。
単純承認をしたのに、家庭裁判所で相続放棄が認められても無効です。
単純承認をしたら、撤回することはできないからです。
失踪宣告がされると、たとえ死亡していなくても死亡した取り扱いをします。
行方不明になった人に生命保険がかけてあった場合、生命保険の死亡保険金が支払われます。
原則として生命保険の保険金を受け取る権利は、相続人の固有の財産です。
受取人が「相続人」と指定してあっても、相続で受け取るものではありません。
被相続人の死亡をきっかけにして、保険契約によって受取人が保険金を受け取るものです。
相続によって、被相続人から受け継いだものではありません。
相続人の固有の財産だから、相続放棄をした人は生命保険の保険金を受け取ることができます。
生命保険の保険金を受け取ったことで、相続放棄が無効になることはありません。
相続放棄をした場合、消費者金融の借金を引き継ぐことはありません。
相続放棄をしても、生命保険の死亡保険金を受け取ることができます。
債務者の家族であっても、生命保険の死亡保険金で債務者の借金を返済する義務はありません。
4失踪宣告を受けた人が生きていたら
①失踪宣告の取消は家庭裁判所で手続
失踪宣告がされたけど、実は本人は新天地で元気に生きていたということがあります。
失踪宣告をされた人が生きていると分かっても、自動的に失踪宣告が取り消されるわけではありません。
家庭裁判所は失踪宣告された人が、その後、生きているかどうか分からないからです。
失踪宣告された人が生きていることが分かった場合や失踪宣告されたときと異なる時期に死亡したことが判明した場合、家庭裁判所に失踪宣告の取消の審判の申立てをします。
家庭裁判所が失踪宣告を取消した場合、失踪宣告による死亡の効果がなかったことになります。
失踪宣告の取消をしたときも、官報にお知らせを出します。
②財産は返還しなければならない
失踪宣告とは、行方不明の人が死亡した取り扱いとする手続です。
失踪宣告がされると、相続が開始します。
失踪宣告が取り消されると、行方不明者が死亡したことはなかったことになります。
死亡がなかったことになりますから、相続もなかったことになります。
相続によって財産を得た人は、行方不明者に財産を返さなければなりません。
たとえ、行方不明者が生きているとは思わなかったとしても、財産は返す必要があります。
返す財産は、現に利益を受けている限度とされています。
相続人が遊興費などで使ってしまっている場合は、返す必要がありません。
生活費や自分の借金の返済に充てている場合などは、現に利益を受けていると言えます。
その分は、返還が必要です。
現に利益を受けている限度とは、同じ形で残っている意味ではありません。
形を変えて残っている場合も含みます。
生活費として使ったのであれば、自分のお金をその分使わずに済んでいます。
生活費分の利益を得ていると言えます。
③生命保険も返還しなければならない
死亡により支払われるものとして、生命保険の保険金は高額なものでしょう。
失踪宣告が取り消されると、返還しなければなりません。
住宅ローンを組むときに団体信用生命保険に加入している場合、生命保険金で住宅ローンの残額を支払っているでしょう。
住宅ローンの残額を支払わなくてもよくなったという形で利益が残っていると考えられます。
現に利益を受けていると言えますから、この利益を返還しなければなりません。
5生死不明の相続人がいる相続を司法書士に依頼するメリット
相続人が行方不明であることは、割とよくあることです。
行方不明の相続人がいると、相続手続を進めることができません。
相続が発生した後、困っている人はたくさんいます。
自分たちで手続しようとして、挫折する方も少なくありません。
失踪宣告の申立ては、家庭裁判所に手続が必要になります。
通常ではあまり聞かない手続になると、専門家のサポートが必要になることが多いでしょう。
信託銀行などは、高額な手数料で相続手続を代行しています。
被相続人が生前、相続人のためを思って、高額な費用を払っておいても、信託銀行はこのような手間のかかる手続を投げ出して知識のない遺族を困らせます。
知識のない相続人が困らないように高額でも費用を払ってくれたはずなのに、これでは意味がありません。
税金の専門家なども対応できないでしょう。
困っている遺族はどうしていいか分からないまま、途方に暮れてしまいます。
裁判所に提出する書類作成は、司法書士の専門分野です。
途方に暮れた相続人をサポートして、相続手続を進めることができます。
自分たちでやってみて挫折した方も、信託銀行などから丸投げされた方も、相続手続で不安がある方は司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。
相続した借金の時効援用
1借金と連帯保証人の地位は相続される
①相続人になる人は法律で決まっている
相続が発生したら、親族のうち一定の範囲の人が相続人になります。
だれが相続人になるかについては、民法で決められています。
相続人になる人は、次のとおりです。
(2)~(4)の場合、先順位の人がいる場合、後順位の人は相続人になれません。
(1)配偶者は必ず相続人になる
(2)被相続人に子どもがいる場合、子ども
(3)被相続人に子どもがいない場合、親などの直系尊属
(4)被相続人に子どもがいない場合で、かつ、親などの直系尊属が被相続人より先に死亡している場合、兄弟姉妹
②債務者が死亡したら借金は相続される
相続が発生したら、被相続人のものは相続人が引き継ぎます。
被相続人のものには、さまざまなものがあるでしょう。
相続財産というと、プラスの財産だけ想像しがちです。
相続財産には、マイナスの財産が含まれます。
被相続人が借金をしたまま、死亡することがあります。
被相続人の借金は、相続人全員が相続します。
債務者が死亡しても、借金はなくならないからです。
債務者が死亡したら、債務者の相続人全員が借金を相続します。
③連帯保証人が死亡したら保証債務は相続される
被相続人が第三者の借金について、連帯保証人になっていることがあります。
連帯保証人とは、債務者が借金を返せないときに肩代わりをする人です。
連帯保証人には、肩代わりの義務があります。
保証債務とは、連帯保証人が負う肩代わりの義務です。
保証債務は、連帯保証人の相続人全員が相続します。
連帯保証人が死亡しても、肩代わりの義務はなくならないからです。
連帯保証人が死亡したら、連帯保証人の相続人全員が借金を相続します。
2相続した借金の時効援用
①消滅時効で権利行使ができなくなる
消滅時効とは、長期間権利行使をしない場合に権利が行使できなくなる制度です。
債権者は、借金を払って欲しいと請求する権利があります。
債務者の事情を察して、借金を請求せずに長期間経過することがあります。
借金を請求せずに長期間経過した場合、条件にあてはまれば権利行使が許されなくなります。
②消滅時効の利益を受けるため時効援用通知
長期間経過しても、自動的に借金がなくなるわけではありません。
消滅時効が完成すると、借金を払う必要がなくなります。
借金を払わなくてよくなることを、債務者が不道徳と思うことがあります。
お金を借りたのだからきちんとお金を返すべきだと考えている債務者に対して、消滅時効を押し付けるべきではありません。
消滅時効によって利益を受けるか受けないか、債務者は判断することができます。
時効の利益を受ける意思表示を時効の援用と言います。
時効を援用する場合、配達証明付き内容証明郵便で通知するのがおすすめです。
③消滅時効援用は各相続人が判断
被相続人の借金は、相続人全員が相続します。
債権者は、各相続人に対して法定相続分で借金を請求することができます。
消滅時効によって利益を受けるか受けないか、各相続人が判断することができます。
借金を払わなくてよくなることを不道徳と思う相続人に対して、消滅時効を押し付けるべきではないからです。
時効を援用する場合、時効援用を通知します。
一部の相続人だけが時効援用通知をした場合、通知した相続人だけ効果があります。
相続人全員が時効援用を希望する場合、相続人全員が連名で時効援用を通知します。
家族のさまざまな事情から、相続人が疎遠になっていることがあります。
相続人全員に連絡が取れないことがあるでしょう。
相続人全員で時効援用通知をする義務はありません。
消滅時効によって利益を受けるか受けないか、各相続人が判断することができるからです。
3連帯保証人が借金の時効援用
①消滅時効で保証債務を免れる
連帯保証人は、債務者が借金を返せないときに肩代わりをする人です。
債権者は、借金を肩代わりして欲しいと請求する権利があります。
債務者の事情を察して、借金の肩代わりを請求せずに長期間経過することがあります。
借金の肩代わりを請求せずに長期間経過した場合、条件にあてはまれば権利行使が許されなくなります。
②消滅時効の利益を受けるため時効援用通知
消滅時効が完成すると、借金を払う必要がなくなります。
借金がなくなれば、自動で肩代わりの義務はなくなります。
消滅時効によって利益を受けるか受けないか、債務者は判断することができます。
債務者の判断とは別に、連帯保証人は独自で判断することができます。
連帯保証人は、主債務と連帯保証債務の消滅時効を援用することができます。
主債務の消滅時効を援用しても連帯保証債務の消滅時効を援用しても、肩代わりの義務はなくなります。
借金がなくなれば、自動で肩代わりの義務はなくなるからです。
時効を援用する場合、配達証明付き内容証明郵便で通知するのがおすすめです。
③消滅時効援用は各相続人が判断
被相続人の肩代わりの義務は、相続人全員が相続します。
債権者は、各相続人に対して法定相続分で肩代わりを請求することができます。
消滅時効によって利益を受けるか受けないか、各相続人が判断することができます。
肩代わりをしなくてよくなることを不道徳と思う相続人に対して、消滅時効を押し付けるべきではないからです。
時効を援用する場合、時効援用を通知します。
一部の相続人だけが時効援用通知をした場合、通知した相続人だけ効果があります。
消滅時効援用は、各相続人が判断することができます。
4時効期間が経過しても請求してくる
①時効援用するまで請求してくる
債権者は、借金を払って欲しいと請求する権利があります。
時効期間が経過しても、債権者には借金を払って欲しいと請求する権利があります。
借金を払わなくてよくなることを、債務者が不道徳と思うことがあるからです。
債権者から借金を払って欲しいと請求されたら、借金を払ってくれるかもしれません。
借金を払ってくれるかもしれないと考えるから、消滅時効が完成していることを知っていても請求してきます。
被相続人の借金は、相続人全員が相続します。
被相続人の取引状況について、相続人はよく分からないことが多いでしょう。
債権者から借金を払って欲しいと請求されたら、相続人が払ってくれることが多いでしょう。
消滅時効によって利益を受けるか受けないか、債務者は判断することができます。
時効援用するまで、債権者は借金を請求してきます。
②債務承認で時効が更新される
債権者から被相続人の借金を返して欲しいと言われたら、びっくりするでしょう。
被相続人の借金が多額である場合、返済は待って欲しいと言ってしまうかもしれません。
債権者から一括返済が難しいなら分割返済でもいいと言われたら、承諾するかもしれません。
返済は待って欲しいと言った場合、債務を承認したと言えます。
借金の存在を前提にして、返済の猶予を申し出ているからです。
分割返済を承諾した場合、債務を承認したと言えます。
借金の存在を前提にして、分割返済を承諾しているからです。
債務を承認した場合、時効は更新されます。
時効が更新された場合、借金は消滅しません。
③時効期間経過後に主債務者が債務承認
債務を承認した場合、時効は更新されます。
時効期間経過後に、主債務者が債務承認をすることがあります。
消滅時効によって利益を受けるか受けないか、主債務者は判断することができるからです。
債務承認をした主債務者は、借金を払わなければなりません。
債務者の判断とは別に、連帯保証人は独自で判断することができます。
主債務者が債務承認をしても、連帯保証人は消滅時効を援用することができます。
消滅時効を援用した連帯保証人は、借金を肩代わりする義務がなくなります。
④時効期間経過後に連帯保証人が債務承認
時効期間経過後に、連帯保証人が債務承認をすることがあります。
連帯保証人が債務承認をした場合、承認したのは肩代わりの義務です。
連帯保証人には、もともと肩代わりに義務しかないからです。
連帯保証人が債務承認をしても、主債務者は消滅時効を援用することができます。
主債務者には、借金を返す義務があります。
連帯保証人が債務承認をしても、借金を返す義務には影響がないからです。
主債務者は消滅時効を援用した場合、借金がなくなります。
借金がなくなれば、自動で肩代わりの義務はなくなります。
肩代わりの義務を承認しても、借金がなくなれば自動で肩代わりの義務はなくなります。
借金がなくなったのに、肩代わりの義務だけ残ることはありません。
5時効援用で相続放棄が無効になる
①相続放棄をすると一切相続できない
被相続人が借金をしたまま死亡した場合、相続人は相続放棄を検討するでしょう。
家庭裁判所で相続放棄が認められた場合、はじめから相続人でなくなります。
相続放棄をした場合、被相続人の借金を相続することはありません。
借金だけでなく、プラスの財産も相続することはできなくなります。
相続放棄をすると、一切相続できません。
②相続放棄や単純承認の撤回はできない
相続が発生したら、相続人は相続を単純承認するか相続放棄をするか選択することができます。
相続放棄を希望する場合、家庭裁判所に相続放棄を希望する申立てをします。
相続放棄をしたら、相続放棄を撤回することはできません。
相続放棄が撤回できないように、単純承認を撤回することはできません。
相続放棄や単純承認の撤回を認めると、相続手続が混乱するからです。
③相続財産を処分すると単純承認
単純承認をしたら、相続放棄をすることはできません。
相続放棄はできないのに、家庭裁判所に相続放棄の手続がされることがあります。
家庭裁判所は事情を知らないから、相続放棄が認めてしまうでしょう。
事情を知らない家庭裁判所が相続放棄を認めても、無効です。
単純承認したとみなされる行為は、法律で定められています。
相続財産の名義変更をした、相続財産である銀行の預貯金を引き出して使ってしまった場合が典型的です。
単に、引き出しただけであれば、処分とは言えないことが多いでしょう。
引き出したうえ、自分の口座に送金して保管すると、「処分した」と評価される可能性が高くなります。
銀行の預貯金を引き出してお葬式の支払にあてた場合、状況によっては、処分したと判断されることもあります。
相続財産を処分する場合、単純承認になります。
④時効援用は単純承認になる
被相続人の借金すべてが時効完成していた場合、消滅時効を援用するといいでしょう。
消滅時効を援用した場合、借金を引き継ぐことなくプラスの財産を引き継ぐことができます。
被相続人の借金について消滅時効を援用することは、財産を処分することです。
相続財産を処分した場合、相続を単純承認したと判断されます。
単純承認をしたのに、相続放棄が認められても無効です。
消滅時効は、更新されることがあります。
消滅時効が更新された場合、あらためて時効が進行します。
被相続人が複数の借金をしていることがあります。
一部の借金が消滅時効を援用できたとしても、他の借金の消滅時効は完成していないことがあります。
被相続人のマイナスの財産の全容が明らかでない状態で、消滅時効を援用するのは危険です。
消滅時効を援用すると、相続を単純承認したと判断されるからです。
6相続放棄を司法書士に依頼するメリット
相続放棄は、その相続でチャンスは1回限りです。
家庭裁判所に認められない場合、即時抗告という手続を取ることはできます。
高等裁判所の手続で、2週間以内に申立てが必要になります。
家庭裁判所で認めてもらえなかった場合、即時抗告で相続放棄を認めてもらえるのは、ごく例外的な場合に限られます。
一挙にハードルが上がると言ってよいでしょう。
相続が発生してから3か月以内に届出ができなかったのは止むを得なかったと家庭裁判所に納得してもらって、はじめて、家庭裁判所は相続放棄を認めてくれます。
通常は家庭裁判所に対して、上申書や事情説明書という書類を添えて、説得することになります。
家庭裁判所が知りたいことを無視した作文やダラダラとした作文では認めてもらうことは難しいでしょう。
司法書士であれば、家庭裁判所に認めてもらえるポイントを承知しています。
認めてもらえやすい書類を作成することができます。
通常の相続放棄と同様に戸籍謄本や住民票が必要になります。
仕事や家事、通院などでお忙しい人には平日の昼間に役所にお出かけになって準備するのは負担が大きいものです。
戸籍や住民票は郵便による取り寄せもできます。
書類の不備などによる問い合わせは、市区町村役場の業務時間中の対応が必要になります。
やはり負担は軽いとは言えません。
このような戸籍謄本や住民票の取り寄せも司法書士は代行します。
3か月の期限が差し迫っている方や期限が過ぎてしまっている方は、すみやかに司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。
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