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不動産相続で更地にするメリットデメリット
1不動産相続で更地にするメリット
①倒壊リスクの回避
被相続人が住んでいた家が空き家になることがあります。
空き家を解体して更地にすることを検討するかもしれません。
空き家のままにしておくと、地震や台風などで倒壊する可能性があります。
だれも住まない家は、老朽化が進みます。
壁や塀などが崩れると、隣地や通行人に損害を与えるおそれがあります。
空き家を解体して更地にすると、倒壊リスクの回避することができます。
メリット1つ目は、倒壊リスクの回避できる点です。
②近隣の景観の維持
建物が老朽化すると、見た目が良くないでしょう。
単純に相続した建物の景観が悪くなるだけでなく、地域の景観が悪くなります。
建物がある地域全体の資産価値にも、影響を及ぼすでしょう。
空き家を解体して更地にすると、近隣の景観悪化を防止することができます。
メリット2つ目は、近隣の景観を維持できる点です。
③管理の手間の削減
空き家を放置すると、加速度的に老朽化します。
近隣に住む相続人などが定期的に、風を通すなどの手入れをすることになるでしょう。
相続人が各地に散らばっている場合、建物管理の手間が負担になります。
空き家を解体して更地にすると、管理の手間の削減することができます。
メリット3つ目は、管理の手間を削減できる点です。
④売却しやすくなる
不動産は、分けにくい財産の代表例です。
相続したものの使う予定がない場合、相続人全員が売却する合意をすることがあります。
売却してお金になれば、分けやすいからです。
土地と建物を売却するより、更地の方が買い手が見つかりやすいでしょう。
更地であれば、買い手がすぐに使うことができるからです。
空き家を解体して更地にすると、売却しやすくなります。
メリット4つ目は、売却しやすくなる点です。
⑤相続土地国庫帰属制度が使える
不動産を相続したものの、どの相続人にとっても利用価値がないことがあります。
望まずに相続した不動産は、価値よりも負担が大きくなりがちです。
相続土地国庫帰属制度は、相続で取得した土地にの所有権を手放して国に引き取ってもらう制度です。
所有権を手放して国に引き取ってもらえるのは、土地だけです。
空き家は、引き取ってもらえません。
建物がある土地も、引き取ってもらえません。
空き家を解体して更地にすると、相続土地国庫帰属制度を利用することができます。
相続土地国庫帰属制度を利用するためには、審査手数料と10年分の土地管理費相当額を納入する必要があります。
建物解体費用と較べて、検討するといいでしょう。
メリット5つ目は、倒相続土地国庫帰属制度を利用できる点です。
⑥土地の状態を確認しやすい
相続した不動産を売却する場合、土地の状態は重要なポイントになるでしょう。
空き家を解体して更地にすると、土壌調査や地盤調査がしやすくなります。
メリット6つ目は、土地の状態を確認しやすくなる点です。
2不動産相続で更地にするデメリット
①建物の財産価値が失われる
多くの場合、不動産は重要な財産でしょう。
建物を解体した場合、重要な財産を失います。
空き家を解体して更地にすると、建物の財産価値が失われます。
デメリット1つ目は、建物の財産価値が失われる点です。
②固定資産税の住宅用地特例がなくなる
不動産を保有していると、固定資産税が課されます。
建物を解体すると、建物の固定資産税は課されなくなります。
建物を解体すると、土地の固定資産税は高くなります。
建物が建っている土地は、住宅用地特例が適用されていたからです。
住宅用地特例とは、建物が建っている土地は税金が安くなる特別ルールです。
住宅用地特例が適用されると、固定資産税が最大6分の1に減額されます。
空き家を解体して更地にすると、固定資産税の住宅用地特例がなくなります。
デメリット2つ目は、固定資産税の住宅用地特例がなくなる点です。
③解体費用がかかる
建物を解体する場合、解体費用がかかります。
建物の構造によって、解体費用は変わります。
建物の解体費用の目安は、次のとおりです。
木造 1坪当たり 4~5万円
鉄骨造 1坪当たり 5~6万円
コンクリート造 1坪当たり 8~15万円
道路の状況や解体の難易度によって、加算があります。
空き家を解体して更地にすると、解体費用がかかります。
デメリット3つ目は、解体費用がかかる点です。
④1か月以内に建物滅失登記
建物を解体したら、建物滅失登記をする必要があります。
建物滅失登記とは、建物を解体したときに届ける登記です。
建物を解体してから、1か月以内にする必要があります。
建物滅失登記をしないと、10万円以下のペナルティーが課されるおそれがあります。
建物滅失登記を放置すると、固定資産税がかかり続けるおそれがあります。
空き家を解体して更地にすると、1か月以内に建物滅失登記をする必要があります。
デメリット4つ目は、1か月以内に建物滅失登記をする必要がある点です。
⑤除草の手間がかかる
空き家を解体すると、空き家の管理の手間から解放されます。
空き家を解体して更地になると、空き地全体に雑草が生い茂るでしょう。
空き地全体の除草の手間がかかります。
空き家を解体して更地にすると、除草の手間がかかります。
デメリット5つ目は、除草の手間がかかる点です。
3相続した家を解体して更地にする注意点
①相続人全員の合意が必要
相続が発生すると、被相続人の財産は相続人が相続します。
相続財産は、相続人全員の共有財産です。
相続人全員の共有財産だから、一部の相続人が勝手に解体することはできません。
相続財産の分け方は、相続人全員の合意で決定します。
相続財産である建物を解体する場合、相続人全員の合意が必要です。
空き家を解体して更地にするため、相続人全員で合意します。
注意点1つ目は、相続人全員の合意が必要である点です。
②住宅ローンがあると銀行の同意
不動産を購入するときに、銀行などの金融機関で住宅ローンを組むことがあります。
多くの場合、住宅ローンを組む際に抵当権を設定します。
抵当権とは、住宅ローンが返済できなくなったときに備えて担保に取る権利です。
銀行などの金融機関は、購入した不動産に抵当権を持っています。
銀行などが担保に取ったのに、相続人が勝手に取り壊すことはできません。
銀行などが担保に取った場合、抵当権の登記があるはずです。
不動産の登記簿謄本を確認すると、分かります。
登記簿謄本とは、不動産の権利関係が記録された公的な書類です。
空き家を解体して更地にするため、住宅ローンがあると銀行の同意が必要になります。
注意点2つ目は、住宅ローンがあると銀行の同意が必要になる点です。
③再建築不可物件がある
土地と建物を売却するより、更地の方が買い手が見つかりやすいことが一般的です。
買主は、すぐに建物を建てたいからです。
現存する建物を解体したら、再び建物を建築することができないことがあります。
再建築不可物件とは、再び建物を建築することができない物件です。
接道義務を満たしていないケースや市街化調整区域にあるケースが該当します。
接道義務とは、幅員4メートル以上の道に間口2メートル以上接する義務です。
市街化調整区域とは、新しい建物を建てることが制限されている地域です。
空き家を解体して更地にすると、資産価値が大きく目減りします。
注意点3つ目は、再建築不可物件がある点です。
④解体費用の補助金に予算がある
建物を解体する場合、解体費用がかかります。
建物の規模や構造によっては、まとまった金額になるでしょう。
解体費用を準備できないので、空き家を放置することは割とよくあります。
空き家を放置することは、地域住民にとっても大きなデメリットがあります。
建物の解体費用について、補助金を受けられることがあります。
条件にあてはまれば、活用するといいでしょう。
例えば、名古屋市では名古屋市老朽危険空家等除却費補助金があります。
名古屋市老朽危険空家等除却費補助金とは、老朽化などで安全女問題がある空き家の解体費用を補助する制度です。
条件にあてはまっても、補助金を受けられないことがあります。
地方自治体の補助金には、予算があるからです。
先着順で受け付けて予算に達すると、受付が終了されます。
注意点4つ目は、解体費用の補助金に予算がある点です。
⑤相続空き家3000万円控除には条件がある
相続空き家3000万円控除とは、相続手取得した不動産の売却益を最大3000万円少なくして所得税を減らす特例です。
相続空き家3000万円控除は、空き家を減らして土地を有効活用する目的があります。
相続空き家3000万円控除を利用するためには、次の主な条件を満たす必要があります。
・建築要件 昭和56年5月31日以前に建築された一戸建て
・使用条件 相続発生まで被相続人が住んでいたこと
・譲渡期間 相続発生から3年以内の年末までに売却すること
・譲渡価格 売却価格1億円以下
・利用制限 相続から売却まで事業、貸付、他人が居住していないこと
上記は、主な条件だけです。
相続空き家3000万円控除を確実に適用するためには、税務署などに相談するのがおすすめです。
注意点5つ目は、相続空き家3000万円控除には条件がある点です。
4更地に相続登記の義務がある
①令和6年(2024年)4月1日から相続登記は義務
所有権移転登記をしない場合、所有者は不利益を被ります。
不動産に対して権利主張をする人が現れた場合、所有者のはずなのに権利主張ができないからです。
相続登記は、手間のかかる手続です。
自分で相続登記をしようとするものの、多くの人は挫折します。
相続登記をする場合、登録免許税を納付しなければなりません。
相続登記を専門家に依頼する場合、専門家に報酬を支払う必要があります。
相続登記でかかる手間と費用がもったいないと、考える人が少なくありません。
相続登記がされない場合、登記簿を見ても土地の所有者が分からなくなります。
登記簿とは、不動産の権利関係が記録される公的な帳簿です。
所有者不明の土地の発生を防止するため、相続登記をすることは義務になりました。
②相続登記の期限は3年
令和6年4月1日から相続登記は、3年以内に登記申請をする義務が課されました。
相続登記には、3年の期限が決められました。
相続登記の期限は、相続したことを知った日からスタートします。
自己のために相続の開始があったことを知って、かつ、不動産を取得することを知った日から、スタートします。
相続登記の期限は、3年です。
③相続登記をしなくても建物の解体ができる
空き家を解体して更地にすると、1か月以内に建物滅失登記をする必要があります。
建物解体の前提として、相続登記をする必要はありません。
被相続人名義のまま相続登記をせずに、建物滅失登記をすることができます。
建物の解体には、相続人全員の合意が必要です。
建物解体後の建物滅失登記は、一部の相続人がすることができます。
他の相続人の同意は、不要です。
相続登記をしなくても、建物の解体ができます。
④更地の相続登記は省略できない
建物を解体したときに、土地の相続登記は省略できません。
建物を解体した後、すぐに売却することがあるでしょう。
相続登記をしていないと、買主名義に変更することができません。
相続登記を放置すると、デメリットが多くおすすめできません。
建物を解体しても、土地の相続登記は必要です。
5相続登記を司法書士に依頼するメリット
大切な家族を失ったら、大きな悲しみに包まれます。
やらなければいけないと分かっていても、気力がわかない方も多いです。
相続手続は一生のうち何度も経験するものではないでしょう。
だれにとっても不慣れで、手際よくできるものではありません。
相続登記は、相続手続の中でも手間がかかる難しい手続です。
不動産は、重要な財産であることが多いものです。
法務局は、厳重な審査をします。
一般の人にとって些細なことと思えるようなことでやり直しになります。
実は、相続手続をスムーズにするコツがあります。
それは、はじめに相続登記をすることです。
相続登記は難しい手間がかかる手続なので、司法書士などの専門家に依頼するでしょう。
相続手続で挫折しがちなのは、戸籍謄本などの書類収集や遺産分割協議書の作成です。
書類収集や遺産分割協議書の作成は、司法書士に依頼することができます。
司法書士が戸籍謄本や遺産分割協議書を準備したうえに、法務局の厳重な審査をします。
法務局の審査が通った戸籍謄本や遺産分割協議書だから、銀行などの相続手続先で指摘があることはありません。
銀行などの独自書類の内容などに指摘があるとしても、簡単に済むことがほとんどでしょう。
相続手続をスムーズに進めたい方は、司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。
ペットのための生前対策
1ペットに相続させることはできない
①相続人になるのは人間だけ
相続が発生したら、親族のうち一定の範囲の人が相続人になります。
だれが相続人になるかについては、民法で決められています。
相続人になるのは人間だけです。
ペットは、相続人になれません。
②ペットはモノ扱い
相続人になるのは、人間だけだけです。
ペットは「家族」として、一緒に暮らすパートナーになったと言えるでしょう。
法律上は、モノ扱いです。
ペットが財産を引き継ぐことはできません。
ペットは、モノ扱いです。
③財産をペットのために使ってもらう
ペットは、大切なパートナーです。
ペットに、相続させることはできません。
ペットに相続させたい人は、自分の財産をペットのために使って欲しいと考えていると言えるでしょう。
ペットのために財産を使ってもらえれば、ペットに相続させるのと同じ効果を得ることができます。
自分の財産をペットのために使ってもらうことができます。
2遺言書を作成して負担付遺贈
①ペットと財産を引き継ぐ
受け入れがたいかもしれませんが、ペットは法律上モノ扱いです。
ペットは、被相続人の財産の一部です。
ペットを遺贈することができます。
遺贈とは、遺言書を作成して相続人や相続人以外の人に財産を引き継ぐことです。
ペットを飼育してくれる人を指定して、ペット自身を引き継ぐことができます。
指定するのは、信頼できる家族や知人などが多いでしょう。
ボランティア団体などでも、差し支えありません。
ペットと一緒に財産を引き継ぐことができます。
遺贈するときに、負担を付けることができます。
ペットを大切に飼育することを負担として、ペットと財産を引き継ぎます。
遺言書を作成して、ペットと財産を引き継ぐことができます。
②遺贈は放棄できる
遺言書は、遺言者がひとりで作成します。
相続人や遺贈を受ける人の同意や承諾は、不要です。
いわば一方的に遺言書を作成することができます。
財産を引き継ぐとは言うものの、ありがた迷惑であることがあります。
遺言書に書いてあるとは言うものの、相続人とトラブルになるおそれがあります。
遺言書に書いてあっても、遺贈を受けるか遺贈を辞退するか選択することができます。
遺言書の内容を押し付けることはできないからです。
ペットを飼育して欲しいと思って遺言書を書いても、遺贈は放棄することができます。
③ペットは自分で移動できない
大切なペットと自分が死ぬまで一緒にいたいと、考える人が多いでしょう。
自宅でだれにも気づかれずに死亡する人は、たくさんいます。
ペットは世話をする人を失うと、とても困ります。
ペットは、自分では何もできないからです。
自分が死亡した後に、ペットが自分で新しい飼い主のところへ移動することができません。
ペットは、自宅で飼っているでしょう。
自宅に立ち入ることができるのは、家族など限られた人だけです。
遺言書でペットを遺贈すると書くだけでなく、自宅に立ち入ってペットを引き取る必要があります。
だれかが適当にやってくれるだろうという考えは通用しません。
ペットは、自分で移動できません。
④遺言者死亡で遺言書の効力発生
遺言書に効力が発生するのは、遺言者が死亡したときです。
急病で病院に運ばれる人も、たくさんいます。
身の回りのことが不自由になって、施設などに入所することがあるでしょう。
施設などにペットを連れていくことはできないでしょう。
ペットのことを思うのなら、元気なうちにペットを引き渡す方がいいでしょう。
遺言者が死亡したときに、遺言書の効力が発生します。
⑤遺言書が無効になると遺贈も無効
ペットを遺贈するときに、多額の財産を一緒に遺贈することがあります。
相続人の中には、家族以外の人の財産を遺贈することを良く思わないかもしれません。
遺贈しなければ、相続財産になるはずだったからです。
遺言書なしで、遺贈をすることはできません。
遺言書が無効になると、遺贈も無効になります。
⑥公正証書遺言がおすすめ
遺言書を作成するためには、遺言能力が必要です。
遺言能力とは、遺言書の内容を理解して結果を認識する能力です。
重度の認知症になると、遺言能力が失われます。
遺言書の内容に不満がある場合、遺言書の無効を主張するでしょう。
遺言者が高齢であった場合、遺言書の無効を主張して遺言能力の有無を争うでしょう。
遺言書に書いてあるとは言うものの相続人とトラブルになる場合、遺贈を放棄するでしょう。
公正証書遺言は、遺言内容を公証人に伝え公証人が文書に取りまとめる遺言書です。
公正証書遺言を作成する場合、公証人は遺言者の意思を確認します。
遺言能力を失っている場合、適切に受け答えができないでしょう。
公証人が関与して作るから、公正証書遺言には高い信頼性があります。
公正証書遺言は、トラブル防止に役立ちます。
遺言書を作成する場合、公正証書遺言がおすすめです。
3負担付贈与契約
①贈与者と受贈者の合意で契約
遺言書は、遺言者が一方的に作成することができます。
相続が発生した後に、遺贈を放棄されるかもしれません。
自分の財産は、生きている間に自由に処分することができます。
贈与は、契約です。
贈与者と受贈者の合意で、贈与契約をすることができます。
ペットを飼育してくれる人と合意して、ペット自身を引き継ぐことができます。
ペットと一緒に財産を贈与することができます。
贈与するときに、負担を付けることができます。
ペットを大切に飼育することを負担として、ペットと財産を引き継ぎます。
贈与者と受贈者の合意で贈与契約をするから、贈与する人は安心です。
②死因贈与契約は贈与者の死亡で効力発生
贈与者と受贈者の合意で、贈与契約をします。
死因贈与とは、贈与者が死亡したときに贈与する契約です。
遺贈のときと同様に、ペットの引取が問題になります。
ペットは、自分で新しい飼い主のところへ移動できないからです。
ペットのことを思うのなら、元気なうちにペットを引き渡す方がいいでしょう。
贈与者が死亡したときに、死因贈与契約の効力が発生します。
③公正証書で死因贈与契約がおすすめ
死因贈与は、当事者の合意による契約です。
当事者が合意したら、贈与契約は成立します。
合意できれば、口頭の合意でも差し支えありません。
口約束の合意では、信用されないことが多いでしょう。
死因贈与契約は、贈与者が死亡したときに効力が発生します。
贈与者の家族は、死因贈与契約のことを何も知らないことがあります。
死因贈与契約をしたことを客観的に明らかにするため、書面にすることが重要です。
死因贈与契約は、公正証書にすることができます。
公正証書には、高い信頼性があります。
せっかく大切なペットの飼育を引き受けてくれたのだから、トラブルに巻き込まないように配慮することが大切です。
4ペット信託で信託監督人
①信託契約でペットの世話を依頼する
信託の仕組みを活用して、ペットの飼育を任せることができます。
信託は、委託者と受託者による契約です。
委託者兼受益者になるのは、当初の飼い主です。
受託者になるのは、新しい飼い主です。
委託者兼受益者は、受託者に対してペットと飼育費などの財産を信託します。
受託者は、信託契約に基づいてペットの世話をする義務を負います。
②適切に飼育しているか監督してもらえる
ペット信託では、信託監督人を置くことができます。
信託監督人とは、契約上の義務を果たしているか監督する人です。
受託者が適切にペットを飼育しているか、監督します。
信託監督人がいると、適切に飼育してもらえるから安心です。
親族とトラブルにならないようにするため、信託契約は公正証書にするのがおすすめです。
③ペット信託の流れ
ペット信託をする流れは、次のとおりです。
(1)受託者や信託監督人を決める
大切なペットの飼育を依頼するから、信頼できる人がいいでしょう。
(2)信託内容を決める
信託契約は、契約でやってもらいたいことを決めることからスタートします。
大切なペットをどのように飼育して欲しいか、不安に思うことを書き出すといいでしょう。
(3)契約書を作成する
契約内容を文書に取りまとめます。
(4)公正証書にする
私文書でも信託契約をすることができますが、公正証書にすることがおすすめです。
公正証書にすると、手数料がかかります。
5死後事務委任契約で飼育を依頼
①死後事務委任契約で依頼できること
死後事務委任契約とは、委任者が死亡した後の事務を依頼する契約です。
依頼する内容は、次のような事項が多いでしょう。
・親族や知人への連絡
・葬儀、火葬、納骨などに関する事務
・医療費や施設費などの清算
・税金や債務などの支払い
・健康保険や年金などの届出
上記の他に、ペットの世話を依頼することができます。
②死後事務委任契約で依頼できないこと
次のことは、死後事務委任契約で依頼できません。
・相続に関すること
・身分に関する事項
・生前に発生する手続
死後事務委任契約は、当時者で合意できればいろいろな事を依頼することができます。
相続や身分に関する事項は、遺言書を活用することです。
生前に発生する事務は、別途財産管理契約や後見契約で依頼する必要があります。
③公正証書で死後事務委任契約がおすすめ
死後事務委任契約は、委任者が死亡したときに効力が発生する契約です。
贈与契約などと同様に委任者の家族は、死後事務委任契約のことを何も知らないことがあります。
死後事務委任契約をしたことを客観的に明らかにするため、書面にすることが重要です。
死後事務委任は、公正証書にすることができます。
公正証書には、高い信頼性があります。
トラブルに巻き込まないように、配慮することが大切です。
④死後事務委任契約の流れ
死後事務委任契約をする流れは、次のとおりです。
(1)受任者を決める
大切なペットの飼育を依頼するから、信頼できる人がいいでしょう。
(2契約内容を決める
死後事務委任契約は、契約でやってもらいたいことを決めることからスタートします。
自分の死後にやってもらいたいこと、大切なペットをどのように飼育して欲しいか書き出すといいでしょう。
(3)契約書を作成する
契約内容を文書に取りまとめます。
(4)公正証書にする
私文書でも信託契約をすることができますが、公正証書にすることがおすすめです。
公正証書にすると、手数料がかかります。
6ペットのための生前対策の比較
①負担対遺贈
メリット
・遺言でペットと財産を引き継ぐことができる
・法的効力がある
デメリット
・遺贈を放棄するおそれがある
・遺言が無効になると遺贈も無効になる
②負担付贈与契約
メリット
・当事者が合意するから確実
デメリット
・贈与者と受贈者の合意しても家族が知らないおそれがある
③ペット信託
メリット
・財産はペットのためにしか使えない
・信託監督人に監督してもらうことができる
・ペットの死亡後の財産の引き継ぎ先を決めることができる
デメリット
・信託契約書作成に専門家の費用がかかる
④死後事務委任契約
メリット
・ペットの世話以外にもさまざまなことを依頼することができる
デメリット
・依頼できないことがある
・生前の事務は別途依頼する必要がある
7ペットの生前対策を司法書士に依頼するメリット
人生100年時代のさびしさや孤独の辛さから、ペットに癒しを求めている人が増えています。
ペットは「家族」として一緒に暮らすパートナーになったと言えるでしょう。
自分では何もできないペットの行く末を心配するのは当然のことです。
ペットは法律上は「モノ」に過ぎませんが、大切な家族です。
単なるモノとは違う配慮が必要になります。
飼い主にとって大切な家族であっても、他の親族からはそう思っていないこともあります。
制度にはメリットデメリットがあります。
この他にも、家族信託の仕組みをペットに応用する方法もあります。
制度を知って上手に生かすこと、は飼い主だけができることです。
大切な「家族」の幸せのために、司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。
投資信託を相続
1投資信託は相続財産
①投資信託は金融商品
相続が発生したら、被相続人のものは相続人が相続します。
被相続人が生前保有していた財産が相続財産です。
相続財産は、相続人全員の共有財産です。
預貯金や株式以外に、いろいろな金融商品が販売されています。
被相続人が生前に投資信託を保有していることがあります。
投資信託は、金融商品のひとつです。
投資信託は、内容が複雑なものも多いものです。
投資に詳しくないから、よく分からないと思ってしまうかもしれません。
お金を預けて、資産運用の専門家が株式や債券で運用して、運用成果を分配してもらう仕組みです。
投資信託は、株式や債券で運用します。
投資信託の権利は、受益権と言います。
投資信託の受益権は、財産的な価値があります。
被相続人が保有していた投資信託の受益権は、相続財産です。
②投資信託に通帳はない
被相続人が銀行などに預貯金の口座を持っていた場合、通帳を持っているでしょう。
被相続人が投資信託を保有していた場合、通帳にあたるものがはじめからありません。
投資信託を保有している場合、証券会社などから手紙が届きます。
運用報告書や取引残高報告書などです。
自宅でこれらの書類がないか探してみましょう。
被相続人の預貯金の通帳を確認すると、証券口座への入出金履歴が見つかることがあります。
投資信託を保有していたことを知っている場合、どこの証券会社に口座があるのか探します。
取引していた証券会社が判明したら、証券会社に連絡します。
相続人は、証券会社に対して取引残高証明書の発行を請求することができます。
取引残高証明書には、どの投資信託を何口持っていたのか詳しく記載されています。
取引残高証明書の発行は、各相続人が単独で請求することができます。
③投資信託の受益権は当然分割されない
投資信託を相続するとは、運用成果を分配してもらう権利を相続することです。
投資信託の受益権は、口数を単位にしています。
当然に分割できると思うかもしれません。
投資信託の権利は、相続人全員の合意で分け方を決める必要があります。
仮に相続分が2分の1だからと言っても、被相続人の保有していた投資信託の口数の2分の1を相続できるわけではありません。
投資信託の受益権は、運用成果を分配してもらう権利だけではありません。
投資信託が適切に運用されているのか監督する権利があります。
投資信託の受益者は、出資者だからです。
投資信託の受益権は、単純な金銭支払請求権ではありません。
被相続人が投資信託を保有していた場合、投資信託を監督する権利も持っていたはずです。
投資信託を監督する権利は、分割することができません。
投資信託を監督する権利を含めて、投資信託の権利の分け方は相続人全員で決めなければなりません。
投資信託の受益権は、当然分割されません。
④投資信託の収益金は当然分割されない
投資信託は、運用成果を分配してもらう仕組みです。
あらかじめ決めらた日に、収益の分配金や償還金が支払われます。
投資信託の受益権は、当然分割されません。
投資信託の分け方は、相続人全員の合意で決めなければなりません。
なかなか相続人全員の合意ができないことがあります。
相続人全員が話し合いの途中であっても、決められた日になれば収益の分配金や償還金が支払われます。
相続発生後に相続人の話し合い中に発生した分配金や償還金は、当然に分割されません。
仮に相続分が2分の1だからと言っても、分配金や償還金の2分の1を相続できるわけではありません。
分配金や償還金を受け取る権利は、投資信託の受益権の一部と言えるからです。
分配金や償還金を受け取る権利だけを切り離すことはできません。
投資信託の受益権の分け方は、相続人全員の合意で決めなければなりません。
分配金や償還金を受け取るためには、相続人全員の合意が必要になります。
投資信託の収益金は、当然分割されません。
2相続発生で証券口座が凍結される
相続が発生したことを証券会社が知った場合、証券口座を凍結します。
口座の凍結とは、口座取引をすべて停止することです。
銀行の預貯金の口座と同様に相続手続が完了するまで、投資信託の処分などができなくなります。
相続財産は、相続人全員の共有財産です。
投資信託の権利は、相続人全員の合意で分け方を決める必要があります。
相続人全の合意ができないうちに、一部の相続人が勝手に投資信託を売却することがあります。
相続人全員の共有財産なのに勝手に独り占めをしたら、大きなトラブルになるでしょう。
証券会社などは他の相続人から強い抗議を受けることになります。
抗議を受けるだけでなく、相続人のトラブルに巻き込まれることになるかもしれません。
被相続人の財産が守られないとなったら、証券会社の信用は失墜するでしょう。
大切な財産を預かっているのだから、信用失墜は何としても避けたいはずです。
相続人間のトラブルに巻き込まれないため、相続発生を知ったら証券口座は凍結されます。
3投資信託の相続手続
①遺産分割協議で相続人全員の合意
被相続人が保有していた投資信託は、相続財産です。
相続財産を分けるためには、相続人全員で話し合いによる合意をする必要があります。
相続財産は、相続人全員の共有財産です。
一部の相続人が勝手に処分することはできません。
投資信託の分け方について相続人全員の合意ができたら、合意内容を文書に取りまとめます。
相続財産の分け方について相続人全員合意内容を取りまとめた文書を遺産分割協議書と言います。
遺産分割協議書は、相続人全員が確認のうえ記名し実印で押印します。
遺産分割協議書の押印が実印によるものであることを証明するため、印鑑証明書を添付します。
②相続手続書類を提出
投資信託の相続手続は、証券会社ごとに多少異なります。
おおむね、次の書類が必要です。
(1)名義書換請求書
(2)被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本
(3)相続人の現在戸籍
(4)相続人全員による遺産分割協議書
(5)相続人全員の印鑑証明書
③相続人の口座開設
投資信託を相続する場合、相続人の証券口座が必要です。
相続人がその証券会社に口座を持っていない場合、あらかじめ、口座開設が必要になります。
被相続人の口座から直接投資信託を売却することはできません。
口座開設には、本人確認書類やマイナンバーが分かる書類が必要です。
④相続人名義の口座へ移管
投資信託を売却できるようになるのは、相続手続が完了してからです。
相続人名義の口座に移管されたら、相続人自身の固有の財産です。
保有し続けることも売却することも、自由にできます。
⑤被相続人の口座閉鎖
被相続人の資産がすべて移管された段階で、被相続人の口座は閉鎖されます。
4投資信託を相続するときの注意点
①投資信託は価格変動する
投資信託は、株式や債券で運用します。
株式や債券は、日々大きな値動きがあります。
売却時期や方法で、売却金に大きな差が出ることがあります。
相続人全員の話し合いをしている間にも、大きな値動きがあります。
売却時期や方法で、トラブルになるおそれがあります。
相続人間のトラブルを防止するため、売却時期や方法について合意しておくといいでしょう。
合意内容は、遺産分割協議書に明記するのがおすすめです。
②遺産分割協議中も収益分配金が入金される
相続財産の分け方について、相続人全員で合意できるまで長引くことがあります。
相続人全員の話し合いをしている間にも、収益分配金が入金されることがあります。
収益分配金相当額をどうするのかについても、話し合いで合意しておく必要があります。
これらの合意事項は、忘れず遺産分割協議書に盛り込みましょう。
③遺産分割協議書の書き方不備で贈与税
投資信託をどのように分けるか、相続人全員の合意で決定します。
特定の相続人が投資信託を相続して、他の相続人はその分のお金をもらう方法があります。
投資信託を売却して、売却金を相続人で分ける方法でもいいでしょう。
これらの合意事項は、忘れず遺産分割協議書に盛り込みます。
遺産分割協議書の書き方が不適切な場合、贈与とみなされて贈与税がかかるおそれがあります。
一般的に、贈与税は想像以上に高額です。
④投資信託を売却する場合、解約違約金に注意
投資信託の種類によっては一定の期間に投資信託を売却した場合、解約違約金がかかる特約を定めていることがあります。
投資信託を売却して、売却金を相続人で分ける方法を検討する場合、解約違約金がかかるのか確認しましょう。
解約違約金がかかってでも売却するのか、解約違約金がかからない時期まで待って売却するのか、充分に検討する必要があります。
投資信託は、株式や債券で運用します。
価値が大きく上がることも、大きく下がることもあります。
解約違約金がかからない時期まで待って売却する場合、投資信託自体の価値が大きく下がることもあり得ます。
売却時期や方法でトラブルになることのないように、話し合いで合意しておく必要があります。
⑤投資信託を売却するときの税金に注意
投資信託は、価値が大きく上がることも大きく下がることもあります。
被相続人が投資信託を購入したときと比べて、売却するときには大きく値上がりしていることがあります。
投資信託の値上がり益は、課税対象になります。
5投資信託の相続を司法書士に依頼するメリット
金融商品にあまり関心のない相続人は、投資信託がよく分からないでしょう。
一般の預貯金であれば、値動きがありません。
話し合いが長引いても、あまり大きな影響はありません。
投資信託は、株式や債券で運用します。
日々、大きな値動きがあります。
解約違約金がかかったり、税金がかかったりします。
預貯金などの相続よりトラブルになりやすいものです。
証券会社などの手続も、分かりにくいことが多いものです。
相続手続は司法書士などの専門家に、丸ごとおまかせできます。
トラブルなく円満な相続手続をしたい方は、司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。
分譲マンションの相続手続と活用法
1分譲マンションの相続手続
①遺言書があれば遺言書どおりに遺産分割
被相続人が生前に、遺言書で財産の分け方を指定していることがあります。
相続財産の分け方は、被相続人の意思が最も尊重されるべきでしょう。
遺言書があれば遺言書どおりに、遺産分割をすることができます。
②遺言書の探し方
遺言書を作成する場合、自筆証書遺言か公正証書遺言を作成することがほとんどです。
自筆証書遺言とは、自分で書いて作る遺言書です。
自筆証書遺言を作った後は、原則として、自分で保管します。
条件にあてはまれば、法務局に保管してもらうことができます。
公正証書遺言とは、遺言内容を公証人に伝え公証人が書面に取りまとめる遺言書です。
公正証書遺言を作った後は、公証役場で厳重保管されます。
公正証書遺言は、カンタンに探すことができます。
公正証書遺言は、検索システムに登録されているからです。
相続が発生した後、相続人は検索システムで公正証書遺言の有無を確認してもらうことができます。
法務局で保管してもらっている自筆証書遺言は、カンタンに探すことができます。
遺言書情報証明書を発行してもらえばいいからです。
相続が発生した後、相続人は遺言書情報証明書を発行してもらうことができます。
遺言書情報証明書は、法務局が預かっている自筆証書遺言の内容を証明した書類です。
自宅などで保管している自筆証書遺言は、探しにくいかもしれません。
保管場所を家族と共有していると、改ざんや変造のリスクがあるからです。
自宅などで保管している自筆証書遺言は、遺品整理をしていると見つかることがあります。
自宅などで見つけた自筆証書遺言は、家庭裁判所で開封してもらいます。
③戸籍謄本で相続人を証明
相続人になる人は、法律で決まっています。
家族にとって、だれが相続人になるか当然のことと考えているでしょう。
相続人になる人は、戸籍謄本で客観的に証明する必要があります。
相続人は、戸籍謄本で証明します。
④相続人全員で遺産分割協議
遺言書を作成する人は、あまり多くありません。
遺言書がない場合、相続財産の分け方は相続人全員の合意で決定します。
遺産分割協議とは、相続財産の分け方について相続人全員でする話合いです。
一部の相続人を含めないと、遺産分割協議は無効になります。
遺産分割協議は、相続人全員の合意で決定します。
⑤分譲マンションを相続するときの遺産分割協議書の書き方
記載例
(一棟の建物の表示)
所在 ○○市○○町○丁目○番地○
建物の名称 ○○○○マンション
(専有部分の建物の表示)
家屋番号 ○○町○丁目○番○の○
建物の名称 ○○○
種類 居宅
構造 鉄筋コンクリート造1階建
床面積 ○階部分 ○○.○○㎡
(敷地権の表示)
符号 1
所在 ○○市○○町○丁目
地番 ○番○
地目 宅地
地積 ○○○.○○㎡
(敷地権の種類)
所有権
(敷地権の割合)
持分 ○○○○○○分の○○○○○○
符号 2
所在 ○○市○○町○丁目
地番 ○番○
地目 宅地
地積 ○○○.○○㎡
(敷地権の種類)
所有権
(敷地権の割合)
持分 ○○○○○○分の○○○○○○
⑥遺産分割協議書に不備があると相続登記ができない
不動産は、重要な財産であることが多いでしょう。
重要な財産の名義を変更する手続だから、法務局は慎重に審査します。
相続登記は、一般の人が些細なことと思うようなことでやり直しになります。
一般的に、相続登記は相続手続の中でも手間がかかる難しい手続です。
マンションを相続する場合、記載すべき項目がたくさんあります。
マンションの登記簿謄本には、たくさんの項目が登記されています。
登記簿謄本から書き写すだけとは言うものの、簡単なことではないでしょう。
遺産分割協議書の記載が不適切であった場合、相続人全員の合意が不明確になります。
相続人全員の合意が不明確である場合、相続登記ができなくなるでしょう。
遺産分割協議書に不備があると、相続登記ができなくなります。
⑦令和6年4月1日から相続登記義務化
令和6年(2024年)4月1日から、相続登記をする義務が課されました。
相続登記の期限は、3年です。
令和6年(2024年)4月1日以降に発生した相続は、当然に対象になります。
相続があったことを知ってから、相続登記の期限3年がスタートします。
相続登記の期限3年を経過すると、ペナルティーの対象になります。
令和6年(2024年)4月1日以前に発生した相続も、義務化の対象です。
過去の相続は、すでに3年を経過していることが多いでしょう。
過去の相続は、令和9年3月31日が期限になります。
所有者不明の土地の発生を防止するため、相続登記をすることは義務になりました。
⑧相続登記義務化で10万円以下のペナルティーが課される
令和6年4月1日から相続登記をする義務が課されました。
相続登記の義務を果たしていない場合、ペナルティーが課されます。
ペナルティーの内容は、10万円以下の過料です。
過料とは、行政上の義務違反に対するペナルティーです。
過料は刑罰ではないから、前科が付きません。
前科が付かないと言っても、10万円以下のペナルティーは負担が重いでしょう。
相続登記の義務を果たしていないと、10万円以下の過料が課される可能性があります。
2相続登記の手順
手順①戸籍謄本や住民票の収集
遺言書がないときの必要書類は、次のとおりです。
・被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本
・被相続人の住民票
・相続人の戸籍謄本
・相続人全員の印鑑証明書
・固定資産税の評価証明書
相続登記の手順1つ目は、戸籍謄本や住民票を収集することです。
手順②遺産分割協議
相続人全員の合意で相続財産の分け方を決めます。
相続人全員の合意がまとまったら、書面に取りまとめます。
遺産分割協議書は、相続人全員が実印で押印します。
相続登記の手順2つ目は、遺産分割協議をすることです。
手順③登記申請書の作成
登記申請書を作成します。
法務局のホームページを見ると、記載例が掲載されています。
必要事項は、正確に記載します。
相続登記の手順3つ目は、登記申請書の作成です。
手順④管轄法務局へ登記申請
登記申請書と必要書類を取りまとめて、管轄法務局へ提出します。
登記申請にあたって、登録免許税が課されます。
登録免許税は、収入印紙で納入します。
相続登記の手順4つ目は、管轄法務局へ登記申請することです。
手順⑤登記完了
登記が完了すると、権利証が発行されます。
相続登記の手順5つ目は、登記完了です。
3分譲マンション相続後の活用法
①自分で住む
分譲マンションを相続した後、自分で住むことが考えられます。
自分で住むことのメリットは、次のとおりです。
・新たな住居費用がかからない。
・引き継いだ財産を維持できる。
自分で住むことのデメリットは、次のとおりです。
・管理の手間がかかる。
分譲マンション相続後の活用法1つ目は、自分で住むことです。
②賃貸に出す
分譲マンションを相続した後、賃貸に出して賃料を得ることができます。
賃貸に出すことのメリットは、次のとおりです。
・定期的な不労所得を得ることができる。
・マンションの劣化を抑えることができる。
・資産価値を維持できる。
賃貸に出すことのデメリットは、次のとおりです。
・賃貸管理の手間がかかる。
・空室リスクがある。
分譲マンション相続後の活用法2つ目は、賃貸に出すことです。
③売却
分譲マンションを相続した後、売却して現金にすることができます。
売却のメリットは、次のとおりです。
・まとまった現金を手に入れることができる。
・維持管理の手間や費用がかからない。
売却のデメリットは、次のとおりです。
・引き継いだ資産を手放すことになる。
・売却の手間や費用がかかる。
分譲マンション相続後の活用法3つ目は、売却することです。
4分譲マンションを相続する注意点
①売却するときでも相続登記は省略できない
不動産を相続したら、名義変更をします。
不動産を持ち続けるときだけでなく直ちに売却するときも、相続登記が必要です。
相続登記をしないと、買主に所有権移転登記をすることができないからです。
相続後すぐに売却するときでも、相続登記は省略できません。
②ローン残債は相続人全員が法定相続分で相続
被相続人がローンを組んで、マンションを購入していることがあります。
相続が発生したときに、ローンが残っているかもしれません。
ローンの対象になっているマンションとローンは、別の財産です。
ローンの対象になっているマンションを相続した人が自動でローンを引き継ぐわけではありません。
ローンの対象になっているマンションは、遺産分割協議で相続する人を決めることができます。
遺産分割協議でローンを引き継ぐ人を決めたとしても、債権者は相続人全員に法定相続分で返済を求めることができます。
遺産分割協議でローンを引き継ぐ人を決めたから、その人に請求してもらいたいと文句を言うことはできません。
遺産分割協議でローンを引き継ぐ人を決めたとしても、相続人間の内部的合意だからです。
債権者には関係ない話だからです。
ローン残債は、相続人全員が法定相続分で相続します。
③ローン完済しても抵当権抹消登記
被相続人が住宅ローンを組む場合、団体信用生命保険に加入していることがあります。
団体信用生命保険は、加入者が住宅ローンを返済中に死亡や障害状態になったとき、保険金によって住宅ローンが弁済される保険です。
住宅ローンを組む場合、団体信用生命保険の加入が条件になっているケースが多いものです。
被相続人がローン返済中に死亡した場合、ローンは完済になります。
住宅ローンを組む場合、銀行は対象になっている住宅を担保に取っています。
担保に取って、抵当権設定登記をしているでしょう。
ローンが完済されると、抵当権は消滅します。
抵当権が消滅しても、抵当権の登記は自動で抹消されません。
銀行などが自動で抹消してくれることも、ないでしょう。
ローン完済したら、抵当権抹消登記をする必要があります。
④相続税申告は10か月以内
相続財産の規模が大きい場合、相続税の対象になります。
相続財産に分譲マンションが含まれる場合、適切に評価することが重要です。
分譲マンションは、土地部分と建物部分があります。
土地は、路線価で評価します。
建物は、固定資産税評価額です。
分譲マンションの場合、相続税評価額は時価と大幅に異なることがあります。
相続税は、10か月以内に申告納税をします。
5相続登記を司法書士に依頼するメリット
大切な家族を失ったら、大きな悲しみに包まれます。
やらなければいけないと分かっていても、気力がわかない方も多いです。
相続手続は一生のうち何度も経験するものではありません。
だれにとっても不慣れで、手際よくできるものではないでしょう。
相続手続で使われる言葉は、法律用語です。
一般の方にとって、日常で聞き慣れないものでしょう。
不動産は重要な財産であることも多いので、登記手続きは一般の方から見ると些細なことと思えるようなことでやり直しになることも多いです。
やり直しで済めば、良かったと言えるかもしれません。
知識がない人が登記簿謄本から見落としなく、読み解くのは難しいものです。
日常の仕事や家事をこなしたうえに、相続手続があると、疲労困憊になってしまいます。
相続手続に疲れてイライラすると普段は温厚な人でも、トラブルを引き起こしかねません。
司法書士などの専門家は、相続手続をサポートします。
相続手続でへとへとになったから先延ばしするより、司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。
相続で不動産取得税はかからない
1相続で不動産取得税はかからない
①遺産分割協議で不動産取得税はかからない
相続が発生したら、被相続人の財産は相続人が相続します。
相続財産は、相続人全員の共有財産です。
相続財産の分け方は、相続人全員の合意で決める必要があります。
相続人全員による相続財産の分け方を決める話し合いを遺産分割協議と言います。
被相続人が不動産を保有していた場合、不動産は相続人が相続します。
だれが不動産を相続するのか、相続人全員の合意で決定します。
遺産分割協議で不動産を取得する相続人を決めた場合、不動産取得税はかかりません。
②相続させる遺言書で不動産取得税はかからない
被相続人は、自分の財産を自由に処分することができます。
遺言書は、遺言者の意思を示すものです。
遺言者は、遺言書で自分の財産をだれに引き継がせるか自由に決めることができます。
被相続人が不動産を保有していた場合、不動産をだれに相続させるのか自由に決めることができます。
相続させる遺言書で不動産を取得する相続人を決めた場合、不動産取得税はかかりません。
③法定相続で不動産取得税はかからない
相続人になる人は、法律で決められています。
相続人が相続する割合も、法律で決められています。
被相続人が不動産を保有していた場合、法定相続分で相続人全員が共有する相続をすることができます。
不動産の共有は圧倒的にデメリットが大きいので、おすすめできません。
法定相続分で相続人全員が相続する場合、不動産取得税はかかりません。
④相続人への遺贈で不動産取得税はかからない
遺贈とは、遺言書を作成して相続人や相続人以外の人に財産を引き継いでもらうことです。
相続人は、相続することができるし遺贈を受けることができます。
遺言書に相続させると書いてあったら、相続で手続をします。
遺言書に遺贈すると書いてあったら、遺贈で手続をします。
遺言書で相続人に不動産を遺贈する場合、不動産取得税はかかりません。
2不動産取得税は1回限りの税金
①不動産を取得するときに不動産取得税
不動産取得税とは、不動産を取得したときに1回だけ課される税金です。
有償で取得しても無償で取得しても、不動産取得税が課されます。
不動産の取得とは、売買、建築、増改築、贈与、交換です。
相続は、不動産取得税の対象ではありません。
不動産取得税は、不動産を取得したときに課される税金です。
②所有権移転登記をしなくても不動産取得税
不動産取得税がかかるから、所有権移転登記をしたくないという意見を聞きます。
不動産取得税は、不動産を取得したときに課税されます。
不動産を取得した後に所有権移転登記をしなくても、不動産取得税の対象になります。
所有権移転登記をしなくても、不動産取得税を免れることはできません。
不動産を取得したのに所有権移転登記をしないのは、デメリットが大きくおすすめできません。
所有権移転登記をしなくても、不動産取得税はかかります。
③不動産取得税に免税点
不動産取得税には、免税点があります。
取得した不動産の価格が次の金額未満の場合、不動産取得税は課されません。
(1)土地 10万円
(2)家屋
新築、増築、改築 23万円
その他 12万円
④相続で不動産を取得したときは申告不要
不動産取得税は、都道府県税です。
不動産を取得したら、都道府県税事務所に申告をします。
申告期限は、都道府県によって異なります。
愛知県は、不動産を取得してから60日以内です。
郵送で申告することができます。
申告期限までに登記がされた場合、原則として申告は不要です。
不動産取得税が軽減される場合、不動産取得税減額等申請書を提出します。
相続で不動産を取得した場合、申告は不要です。
⑤不動産取得税の計算方法
不動産取得税は、次の計算式で求められます。
不動産取得税=固定資産税評価額×税率
税率は、不動産によって異なります。
・土地や住宅 3%
・住宅以外の建物 4%
不動産取得税には、軽減措置があります。
住宅を取得するときは、固定資産税評価額から1200万円控除します。
住宅を新築したときは、固定資産税評価額から1300万円控除します。
具体的な計算の方法は、都道府県税事務所におたずねください。
3相続なのに不動産取得税がかかる
①遺産分割協議のやり直しで不動産取得税
相続財産の分け方は、相続人全員の合意で決める必要があります。
相続人全員の合意ができたら、遺産分割協議は成立し話し合いは終了します。
相続人全員が別の分け方の方が良かったと納得できることがあります。
遺産分割協議のやり直しによって、不動産を取得することがあります。
相続で不動産を取得した場合、不動産取得税の対象ではありません。
遺産分割協議のやり直しは、法律上、相続手続の一環です。
税務上は、相続手続の一環ではなく贈与の扱いです。
遺産分割協議のやり直しによって不動産を取得する場合、不動産取得税が課されます。
遺産分割協議のやり直しによって不動産を取得するのは、贈与扱いだからです。
②代償分割で不動産を譲渡すると不動産取得税
相続財産には、分けやすい財産と分けにくい財産があります。
金銭は、分けやすい財産です。
不動産は、分けにくい財産です。
相続財産の大部分が不動産のような分けにくい財産である場合、相続人全員の合意は難しくなりがちです。
相続財産の大部分が不動産のような分けにくい財産の場合、代償分割をすることで合意ができる場合があります。
代償分割とは、一部の相続人が不動産を相続し、残りの相続人は不動産を相続した人から、その分のお金をもらう方法です。
代償を受け取ることで、公平な遺産分割を実現しやすくなるでしょう。
代償は、お金に限られるものではありません。
代償として、固有の不動産を譲渡することがあります。
代償として不動産を譲渡する場合、不動産取得税が課されます。
代償の支払いは、相続とは考えられないからです。
4相続でないから不動産取得税がかかる
①相続人以外の人へ特定遺贈で不動産取得税
遺贈とは、遺言書を作成した相続人や相続人以外の人に財産を引き継いでもらうことです。
相続人は、相続で財産を引き継ぐことができるし遺贈で財産を引き継ぐことができます。
相続人以外の人は、相続で財産を引き継ぐことはできません。
遺贈には、2種類あります。
特定遺贈と包括遺贈です。
特定遺贈とは、遺言書に、「財産〇〇〇〇を遺贈する」と財産を具体的に書いてある場合です。
包括遺贈とは、遺言書に、「財産すべてを包括遺贈する」「財産の2分の1を包括遺贈する」と割合だけ書いて財産を具体的に書いてない場合です。
相続人以外の人に不動産を遺贈することができます。
特定遺贈で相続人以外の人が不動産を取得した場合、不動産取得税が課されます。
②生前贈与で不動産取得税
人は自分の財産を自由に贈与することができます。
生前贈与とは、財産の持ち主が生きている間に無償で財産を引き継ぐことです。
将来の相続を想定して、生前贈与をすることがあります。
生前贈与は、将来の相続と同一視することはできません。
贈与によって不動産を取得した場合、不動産取得税が課されます。
生前贈与は、贈与です。
生前贈与によって不動産を取得した場合、不動産取得税が課されます。
③相続時精算課税で不動産取得税
相続時精算課税制度とは、贈与税の制度です。
相続時精算課税を選択すると、2500万円まで特別控除があります。
累計2500万円までの贈与が非課税になります。
贈与した財産を相続財産に算入して、相続税を計算する制度です。
次の条件に該当する場合、相続時精算課税制度を選択することができます。
(1)贈与する人 60歳以上の父母または祖父母
(2)贈与を受ける人 18歳以上の子どもや孫
相続時精算課税制度を適切に利用したら、大きな節税が期待できるでしょう。
相続時精算課税制度を利用して、不動産を取得することができます。
相続時精算課税制度を利用して不動産を取得する場合、不動産取得税が課されます。
相続時精算課税制度を利用して不動産を取得するのは、贈与扱いだからです。
④夫婦間の居住用不動産の特例で不動産取得税
夫婦間の居住用不動産の特例とは、贈与税の制度です。
夫婦間の居住用不動産の特例を利用すると、最高2000万円まで配偶者控除を受けることができます。
次の条件に該当する場合、夫婦間の居住用不動産の特例を受けることができます。
(1)夫婦の婚姻期間20年を過ぎた後の贈与
(2)贈与された財産は居住用不動産または居住用不動産を取得するための金銭
(3)贈与を受けた年の翌年3月15日までに贈与を受けた人が現実に居住
夫婦間の居住用不動産の特例を受けることで、大きな節税が期待できるでしょう。
夫婦間の居住用不動産の特例を利用して、不動産を取得することができます。
夫婦間の居住用不動産の特例を利用して不動産を取得する場合、不動産取得税が課されます。
夫婦間の居住用不動産の特例を利用して不動産を取得するのは、贈与扱いだからです。
⑤相続人でも死因贈与は不動産取得税
遺贈とは、遺言書を作成した相続人や相続人以外の人に財産を引き継いでもらうことです。
遺言書は、遺言者がひとりで作成することができます。
遺言書を作成するときに、相続人や財産を受け取る人の同意は不要です。
贈与は、贈与をする人と贈与を受け取る人の契約です。
死因贈与は、贈与をする人が死亡したときに効力が発生する贈与契約です。
贈与契約は、贈与をする人と贈与を受け取る人の合意があれば口約束でも成立します。
口約束の贈与契約は立証が難しいのでおすすめしませんが、口約束の死因贈与契約も有効です。
死因贈与で財産を受け取った場合、相続税の対象になります。
死因贈与契約によって、不動産を取得することができます。
死因贈与契約によって不動産を取得する場合、不動産取得税が課されます。
死因贈与契約によって不動産を取得するのは、贈与扱いだからです。
5不動産取得税以外に課される税金
①登録免許税
相続で不動産を取得した場合、相続登記をします。
遺贈で不動産を取得した場合、遺贈による所有権移転登記をします。
登録免許税は、不動産取得税とは別に課される税金です。
登記申請で、登録免許税が課されます。
②固定資産税
固定資産税は、毎年1月1日現在の不動産の所有者に対して課される税金です。
相続登記をしなくても、固定資産税が課されます。
固定資産税は、不動産取得税とは別に課される税金です。
通常、固定資産税の課税標準金額と不動産取得税の課税標準金額は同じです。
毎年4~5月ころ、固定資産税の納税通知書が届きます。
③譲渡所得税
譲渡所得税は、相続した不動産を売却したときに値上がり益に対して課される税金です。
譲渡所得税は、不動産取得税とは別に課される税金です。
穣徳所得が発生した場合、確定申告をして納税します。
④相続税
相続財産の規模が大きい場合、相続税の対象になります。
相続税は、不動産取得税とは別に課される税金です。
不動産の価値を適切に評価して、相続税申告と納税をします。
⑤贈与税
贈与税は、生前贈与をしたときに課されます。
贈与税は、不動産取得税とは別に課される税金です。
相続時精算課税制度を利用すると、生前贈与と相続を一体的に扱うことができます。
6相続登記を司法書士に依頼するメリット
相続登記は、たくさんある相続手続の中でも難しい手続です。
相続手続は多くの場合、何度も経験するものではありません。
だれにとっても不慣れで聞き慣れない法律用語で疲れ果ててしまいます。
不動産は重要な財産なので、一般の人が些細なことと思えるようなことでやり直しになります。
インターネットなどで多くの情報を手にすることができるようになりました。
相続登記を自分でやった、カンタンにできたという記事を見かけることもあります。
司法書士などの専門家から見てカンタンな登記申請であっても、一般の人が手続しようとすると思わぬ落とし穴があることがあります。
相続が発生してから長期間経過した後の登記申請は、想像以上に難解です。
自分で登記申請をしてみても、法務局から不足や不備を指摘されるでしょう。
ときには、何が問題なのか分からなかったというケースもあります。
自分でやってみて挫折した場合も司法書士はサポートします。
相続登記をスムーズに終わらせたい方は、司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。
未支給年金は相続財産ではない
1口座凍結で未支給年金が発生する
①口座の持ち主が死亡すると口座凍結
多くの人は、銀行などに口座を持っているでしょう。
口座の持ち主が死亡したら、銀行などの口座は凍結されます。
口座凍結とは、口座取引をできなくすることです。
口座が凍結されると、年金の振込を受けることができなくなります。
口座の持ち主が死亡すると、口座は凍結されます。
②年金は死亡月まで支給される
口座が凍結されると、口座取引はすべてできなくなります。
振込みもできないし、公共料金などの引落しもできなくなってしまいます。
年金を受け取っている人は、口座振り込みで受け取っているでしょう。
年金は、後払いで支給されます。
例えば、4月分と5月分の年金は、6月に支給されます。
年金は、死亡月まで支給されます。
年金を受け取っている人が4月に死亡した場合、4月分の年金まで支給されます。
4月分の年金は、6月に振込みがされます。
多くの場合、6月には口座が凍結しているでしょう。
4月分の年金は、受け取ることができません。
未支給年金とは、受け取ることができなかった年金です。
年金は後払いだから、必ず未支給年金が発生します。
口座凍結で、未支給年金が発生します。
2公的年金の未支給年金は相続財産ではない
①未支給年金は遺産分割協議の対象ではない
相続が発生したら、被相続人の財産は相続人が相続します。
相続財産は、相続人全員の共有財産です。
相続財産の分け方は、相続人全員の合意で決める必要があります。
被相続人が年金を受け取っていたから、受け取るはずの年金は相続財産に見えるかもしれません。
公的年金の未支給年金は、相続財産ではありません。
相続財産は、民法に基づいて相続人が相続します。
未支給年金は、法律に基づいて一定の遺族に支給されます。
未支給年金を支給する根拠法は、国民年金法第19条、厚生年金保険法第37条、国家公務員共済組合法第42条、地方公務員等共済組合法第47条があります。
いずれの法律によっても、相続財産ではないと考えられています。
最高裁判所も平成7年11月7日判決で、相続財産ではないと判示しています。
未支給年金を受け取る権利は、受給権者の固有の財産です。
固有の財産とは、相続財産ではなく、もとからその人の財産であるという意味です。
公的年金の未支給年金は、相続人全員で分け方を決めることはできません。
公的年金の未支給年金は、遺産分割協議の対象ではないからです。
②相続放棄をしても未支給年金
相続が発生したら、相続人は相続を単純承認するか相続放棄をするか選択することができます。
相続放棄を希望する場合、家庭裁判所に対して相続放棄の申立てをします。
家庭裁判所で相続放棄が認められたら、はじめから相続人でなくなります。
相続財産は、相続人が相続します。
相続放棄をした人は、相続財産を相続することはできません。
プラスの財産もマイナスの財産も、相続することはありません。
公的年金の未支給年金は、相続財産ではありません。
法律で決められた一定の遺族は、未支給年金を受け取ることができます。
一定の遺族の中には、相続人である人もいるし相続人でない人もいるでしょう。
法律の定めによる一定の遺族であれば、未支給年金を請求することができます。
公的年金の未支給年金を受け取る権利は、一定の遺族の固有の権利だからです。
相続財産を処分した場合、単純承認をしたとみなされます。
単純承認をした場合、相続放棄をすることはできません。
未支給年金を受け取る権利は、相続財産ではありません。
未支給年金は、法律で一定の遺族に認められた権利です。
死亡した被相続人が受け取るはずの年金を相続するものではありません。
未支給年金を受け取る権利は、遺族の固有の財産です。
被相続人から相続した相続財産ではないから、相続放棄とは無関係です。
相続人が相続放棄をした場合でも相続放棄をしない場合でも、法律の定めに基づいて未支給年金を受け取ることができます。
未支給年金を受け取っても、相続の単純承認をしたと言われることはありません。
未支給年金を受け取る権利は、相続財産ではなく遺族の固有の財産だからです。
相続放棄をした後に未支給年金を請求した場合、相続放棄が無効になることはないし、未支給年金を返還するように言われることはありません。
未支給年金を受け取った後に相続放棄をした場合、相続放棄が無効になることはないし、未支給年金を返還するように言われることはありません。
未支給年金を受け取る権利は、遺族の固有の権利だから、相続放棄とは無関係です。
すでに相続放棄をした場合でも、これから相続放棄をするつもりでも、未支給年金を受け取ることができます。
③事実婚・内縁の配偶者が未支給年金
公的年金の未支給年金は、一定の遺族に支給されます。
一定の遺族の条件に、死亡した年金受給者に生計を維持されていた人という条件があります。
相続人になる人は、民法で決まっています。
相続人になる人には、生計を維持されていた人という条件はありません。
配偶者は、死亡した年金受給者に生計を維持されていた人でしょう。
死亡した年金受給者に生計を維持されていた配偶者は、法律上の配偶者でないことがあります。
相続人になる配偶者は、法律上の配偶者に限られます。
事実婚・内縁の配偶者は、相続人になりません。
事実婚・内縁の配偶者は、公的年金の未支給年金を請求することができます。
公的年金の未支給年金を請求する権利は、一定の遺族の固有の権利だからです。
公的年金の未支給年金は相続財産ではないから、事実婚・内縁の配偶者が受け取ることができます。
3未支給年金の受取方法
①未支給年金を請求できる人
未支給年金を受け取ることができるのは、次の人のうち優先順位の高い人です。
(1)配偶者
(2)子
(3)父母
(4)孫
(5)祖父母
(6)兄弟姉妹
(7)その他これら以外の3親等内の親族
未支給年金は、年金を受け取っていた人と生計を同じくしていた人が受け取ることができます。
遺族年金と未支給年金は、別の制度です。
遺族年金を受け取ることができる場合で、かつ、未支給年金を受け取ることができる場合、それぞれの手続が必要です。
②未支給年金を請求に必要な書類
未支給年金を受け取るためには、受給権者死亡届と未支給年金・未払い給付金請求書の提出が必要です。
受給権者死亡届に添付する書類は、次のとおりです。
(1)年金証書
(2)死亡の事実を明らかにできる書類
(2)死亡の事実を明らかにできる書類は、戸籍謄本、市区町村長に提出した死亡診断書のコピー、死亡届の記載事項証明書などです。
未支給年金・未払い給付金請求書に添付する書類は、次のとおりです。
(1)年金証書
(2)被相続人と請求者の続柄が分かる戸籍謄本
(3)被相続人と請求者が生計を同じくしていたことが分かる住民票と除票
(4)受け取りを希望する金融機関の通帳
(5)生計同一についての申立書(被相続人と請求者が別世帯の場合)
(2)戸籍謄本(3)住民票は、死亡日より後に発行されたものが必要です。
(2)戸籍謄本(3)住民票は、原本を返してもらうことができます。
③未支給年金は5年以内に請求
未支給年金を受け取るためには、請求をしなければなりません。
未支給年金を受け取る権利は、何もしないで放置すると時効で消滅します。
年金支払い日の翌月の初日から起算して5年で時効消滅します。
5年経過で時効消滅すると、未支給年金を受け取ることができなくなります。
未支給年金を受け取る権利が亡くなる前に、請求しましょう。
④繰り下げ受給の待機中の死亡は未支給年金で請求できる
被相続人が年金の繰り下げ受給の待機中に死亡する場合があります。
年金の繰り下げ受給の待機中に死亡した場合、本人が受け取るはずだった年金を遺族が請求することができます。
65歳から死亡した月の分までの年金が、未支給年金として支給されます。
未支給年金には、待機した分の増額は反映されません。
この場合、時効の起算は65歳からです。
⑤未支給年金が振り込まれるまでに3か月
未支給年金を請求した後、問題がなければ3か月程度で振り込まれます。
未支給年金の請求書を提出した後、未支給年金支給決定通知書が発送されます。
支給されないときは、不該当通知書が発送されます。
⑥未支給年金に相続税はかからない
公的年金の未支給年金は、相続財産ではありません。
相続税法は、相続財産でないのに相続税がかかる財産を定めています。
相続財産でないのに相続税がかかる財産をみなし相続財産と言います。
公的年金の未支給年金は、見なし相続財産でもありません。
公的年金の未支給年金は、相続税の対象ではありません。
⑦未支給年金は受取人の所得になる
未支給年金は、法律で一定の遺族に認められた権利です。
受取人の固有の財産だから、受取人の所得になります。
受け取る年金や金額によっては、所得税がかかります。
受け取った年の翌年3月15日までに確定申告が必要になる場合があります。
4企業年金の未支給は相続税の対象になる
①現職死亡の企業年金は死亡退職金扱い
社員が現職で死亡し企業年金が遺族に支払われた場合、死亡退職金と見なされます。
死亡退職金は、相続財産でないのに相続税がかかる財産です。
死亡退職金には、非課税限度額があります。
非課税限度額=500万円×法定相続人の数
死亡退職金が非課税限度額以下である場合、相続税は課税されません。
相続人以外の人が死亡退職金を受け取った場合、非課税の適用はありません。
②企業年金受給中の死亡は定期金扱い
企業年金受給中に死亡し遺族に未支給年金が支払われた場合、定期金と見なされます。
定期金に関する権利は、相続財産です。
定期金にかかる権利は、非課税枠はありません。
5私的年金の未支給は相続税の対象になる
被相続人が個人年金の契約を締結していることがあります。
年金受給中に死亡し遺族に未支給年金が支払われた場合、年金受給権を相続したと言えます。
私的年金の年金受給権は、相続財産です。
私的年金の年金受給権は、非課税枠はありません。
6財産調査を司法書士に依頼するメリット
相続が発生したら、遺族は大きな悲しみに包まれます。
大きい悲しみのなかで、相続財産を調査するのは身体的にも精神的にも大きな負担になります。
負担の大きい財産調査を司法書士などの専門家に依頼すれば、遺族の疲れも軽減されるでしょう。
相続手続も、スムーズになります。
被相続人の財産は、相続人もあまり詳しく知らないという例が意外と多いものです。
悲しみの中で被相続人の築いてきた財産をたどるのは切なく、苦しい作業です。
調査のためには銀行などの金融機関から、相続が発生したことの証明として戸籍謄本等の提出が求められます。
戸籍謄本の取り寄せも含め、手続をおまかせいただけます。
仕事や家事で忙しい方や高齢、療養中などで手続きが難しい方は、手続を丸ごとおまかせできます。
家族にお世話が必要な方がいて、頻繁に家を空けられない方からのご相談もお受けしております。
財産調査でお疲れが出る前に、司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。
相続登記義務化で墓地の取り扱い
1令和6年(2024年)4月1日から相続登記義務化
①令和6年(2024年)4月1日から相続登記は義務
所有権移転登記をしない場合、所有者は不利益を被ります。
不動産に対して権利主張をする人が現れた場合、所有者のはずなのに権利主張ができないからです。
相続登記は、手間のかかる手続です。
自分で相続登記をしようとするものの、多くの人は挫折します。
相続登記がされない場合、登記簿を見ても土地の所有者が分からなくなります。
登記簿とは、不動産の権利関係が記録される公的な帳簿です。
所有者不明の土地の発生を防止するため、相続登記をすることは義務になりました。
②相続登記義務化でペナルティーが課される
令和6年4月1日から相続登記をする義務が課されました。
相続登記の義務を果たしていない場合、ペナルティーが課されます。
ペナルティーの内容は、10万円以下の過料です。
過料とは、行政上の義務違反に対するペナルティーです。
過料は刑罰ではないから、前科が付きません。
前科が付かないと言っても、10万円以下のペナルティーは負担が重いでしょう。
相続登記の義務を果たしていないと、10万円以下の過料が課される可能性があります。
③期限3年経過でペナルティーの対象
令和6年(2024年)4月1日から、相続登記をする義務が課されました。
相続登記の期限は、3年です。
令和6年(2024年)4月1日以降に発生した相続は、当然に対象になります。
相続があったことを知ってから、相続登記の期限3年がスタートします。
相続登記の期限3年を経過すると、ペナルティーの対象になります。
令和6年(2024年)4月1日以前に発生した相続も、義務化の対象です。
④令和6年(2024年)4月1日以前発生の相続も義務化の対象
令和6年4月1日から、相続登記は義務になりました。
令和6年4月1日以降に発生した相続は、もちろん対象になります。
令和6年4月1日以前発生の相続も、義務化の対象です。
令和6年4月1日以前発生の相続では、令和9年3月31日までに相続登記をする義務があります。
⑤相続登記義務化の背景
不動産の権利を取得したら、すぐに登記申請をします。
登記がないと、権利主張ができないからです。
不動産登記簿を見たら、不動産の権利関係が分かります。
不便な場所にあるなど価値の低い土地について、相続登記がされていないことがあります。
相続登記がされていないと、所有者がだれなのか分からなくなります。
不動産を売ってほしい場合だれにお願いしたらいいのか、登記簿を見ても分かりません。
例えば、公共事業のために土地を売ってほしい場合、所有者が分からないと公共事業ができなくなります。
社会全体にとって、大きな損失でしょう。
社会全体の利益のため、相続登記が義務化されました。
⑥相続登記が必要な墓地と不要な墓地
被相続人が不動産を所有していた場合、相続登記をする必要があります。
被相続人が墓地として使用していた土地があるでしょう。
墓地の登記簿を見ると、所有者を確認することができます。
墓地の所有者が被相続人である場合、相続登記をする必要があります。
例えば、個人墓地は被相続人が所有者でしょう。
墓地は、相続登記義務化の対象になる可能性があります。
墓地の所有者が被相続人以外の人である場合、相続登記は不要です。
お墓を建てるため、墓地の区画を利用する権利を持っていることがあります。
墓地の区画を利用する権利は登記されないから、相続登記は不要です。
例えば、自治体や寺院が墓地の所有者である場合、永代使用権とか墓地利用権を持っていただけでしょう。
永代使用権とか墓地利用権とは、墓地の区画を利用する権利です。
墓地には、相続登記が必要な墓地と不要な墓地があります。
2祭祀財産である墓地を承継する方法
①祭祀財産とは先祖祭祀のための財産
祭祀用財産とは、先祖祭祀のための財産です。
例えば、墓地、墓石、仏壇、家系図などがあります。
被相続人の財産であっても、相続財産ではありません。
先祖祭祀は、親族の伝統や慣習、考え、気持ちと切り離せません。
相続のルールで承継するのは、適切ではないからです。
祭祀財産とは、先祖祭祀のための財産です。
②祭祀主宰者が墓地を承継
祭祀財産は、祭祀主宰者が承継します。
祭祀主宰者とは、先祖祭祀を主宰する人です。
祭祀主宰者が墓地を承継します。
③祭祀主宰者の決め方
相続人のひとりが祭祀主宰者になるのが多いでしょう。
祭祀承継者は、次のように決められます。
(1)被相続人の指定に従う
(2)慣習に従って決める
(3)家庭裁判所で決定する
被相続人が指定しておらず慣習も明らかでない場合、家庭裁判所が指名します。
被相続人の意思、相続人の身分関係、過去の生活感情、祭祀を主宰する意欲や能力、他の相続人や周りの人の意見を聞いて総合的に判断します。
④祭祀主宰者は辞退できない
相続が発生したら、相続人は相続を単純承認するか相続放棄をするか選択することができます。
祭祀主宰者には、相続放棄のように辞退する制度はありません。
被相続人の指定、慣習、家庭裁判所の指定で、祭祀主宰者に選ばれると、拒否することはできません。
祭祀主宰者を辞退することはできません。
⑤相続放棄をしても祭祀主宰者
相続放棄をしても、祭祀主宰者は無関係です。
相続放棄をしても、祭祀主宰者に選ばれることがあります。
祭祀財産は、相続財産ではありません。
家庭裁判所で相続放棄が認められても、祭祀主宰者は祭祀財産を承継します。
3祭祀財産である墓地の相続登記
①登記原因は「年月日民法第897条による承継」
祭祀用財産は、祭祀承継者が受け継ぎます。
祭祀承継者が引き継ぐことは、民法第897条によって定められています。
祭祀承継者が墓地を引き継ぐ場合、登記原因は「年月日民法第897条による承継」です。
年月日は、祭祀用財産を引き継ぐ日です。
②権利者と義務者の共同申請
祭祀財産である墓地の名義変更は、権利者と義務者が協力して申請します。
権利者は、新しい祭祀主宰者です。
義務者は、遺言執行者がいるときは遺言執行者です。
遺言執行者とは、遺言書の内容を実現する人です。
遺言執行者がいないときは、登記名義人の相続人全員です。
登記申請書は、登記申請人が押印します。
義務者は、実印で押印します。
遺言執行者と相続人全員は、実印で押印する必要があります。
③必要書類
祭祀用財産の相続登記をする場合、次の書類が必要です。
(1)登記原因証明情報
(2)被相続人の権利証
(3)相続人全員の印鑑証明書
(4)祭祀承継者の住民票
登記原因証明情報は、祭祀用財産の承継があったことの証明書です。
祭祀承継者の決定方法によって、次のような書類を提出します。
(1)被相続人が指定したとき
遺言書、相続人全員による指定内容の証明書
(2)慣習で決まったとき
相続人全員による祭祀承継者を確認した証明書
(3)家庭裁判所が指定したとき
調停調書、審判書と確定証明書
墓地が祭祀用財産である場合、祭祀用財産であることを証明する書類は不要です。
④登録免許税は非課税
土地の登記簿謄本を取得すると、地目を確認することができます。
地目とは、不動産登記法で決められた土地の区分です。
地目は、土地の用途や利用目的などで分類されます。
現況が雑種地であっても登記地目が「墓地」である土地は、登録免許税が課されません。
現況が墓地であっても登記地目が「雑種地」である土地は、登録免許税が課されます。
登録免許税が課されない場合、登記申請書に根拠となる法律の規定を記載する必要があります。
「墓地」である土地の場合、「登録免許税法第5条第10号により非課税」と記載します。
4相続財産である墓地を承継する方法
①先祖祭祀と無関係な墓地は相続財産
墓地は、原則として、相続財産ではなく祭祀用財産です。
墓地に先祖や親族が葬られている場合、祭祀用財産です。
墓地に先祖や親族以外の人が葬られている場合、相続財産です。
先祖や親族以外の人が葬られている場合、先祖祭祀とは無関係だからです。
先祖祭祀と無関係な一般の財産と同様に、相続財産です。
先祖祭祀と無関係な墓地は、相続財産です。
②遺産分割協議で決める
相続財産は、相続人全員の共有財産です。
相続財産の分け方は、相続人全員の合意で決定します。
相続財産である墓地は、一般の財産同様に遺産分割協議の対象です。
遺産分割協議とは、相続財産の分け方を決めるための相続人全員による話し合いです。
相続財産の分け方について相続人全員の合意がまとまったら、合意内容を書面に取りまとめます。
遺産分割協議書は、相続財産の分け方について相続人全員による合意の証明書です。
相続財産である墓地を承継するために、遺産分割協議をします。
③相続人の単独申請
相続登記は、通常の財産と同様に相続する相続人の単独申請です。
④必要書類
遺言書がない相続登記で必要になる書類は、次のとおりです。
(1)被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本
(2)相続人の現在戸籍
(3)被相続人の住民票の除票
(4)不動産を相続する人の住民票
(5)遺産分割協議書
(6)相続人全員の印鑑証明書
(7)不動産の評価証明書
事例によっては、この他に書類が必要になることがあります。
相続登記で使う書類は、他の相続手続でも必要になるでしょう。
登記申請書の添付書類は、希望すれば返却してもらうことができます。
返却して欲しい書類のコピーを添付して、「原本に相違ありません。」と書いて記名押印します。
⑤登録免許税は非課税
土地の登記簿謄本を取得すると、地目を確認することができます。
地目とは、不動産登記法で決められた土地の区分です。
地目は、土地の用途や利用目的などで分類されます。
現況が雑種地であっても登記地目が「墓地」である土地は、登録免許税が課されません。
現況が墓地であっても登記地目が「雑種地」である土地は、登録免許税が課されます。
登録免許税が課されない場合、登記申請書に根拠となる法律の規定を記載する必要があります。
「墓地」である土地の場合、「登録免許税法第5条第10号により非課税」と記載します。
墓地が相続財産であっても祭祀財産であっても、非課税になります。
5相続登記を司法書士に依頼するメリット
大切な家族を失ったら、大きな悲しみに包まれます。
やらなければいけないと分かっていても、気力がわかない方も多いです。
相続手続きは一生のうち何度も経験するものではないため、だれにとっても不慣れで手際よくできるものではありません。
相続登記は、相続手続の中でも手間がかかる難しい手続です。
不動産は重要な財産であることが多いので、法務局は厳重な審査をします。
一般の人にとって些細なことと思えるようなことでやり直しになります。
売却する予定がないのなら、先延ばししたい誘惑にかられるかもしれません。
実は、相続手続をスムーズにするコツがあります。
それは、はじめに相続登記をすることです。
相続登記は難しい手間がかかる手続なので、司法書士などの専門家に依頼するでしょう。
相続手続で挫折しがちなのは、戸籍謄本などの書類収集や遺産分割協議書の作成です。
書類収集や遺産分割協議書の作成は、司法書士に依頼することができます。
司法書士が戸籍謄本や遺産分割協議書を準備したうえに、法務局の厳重な審査をします。
法務局の審査が通った戸籍謄本や遺産分割協議書だから、銀行などの相続手続先で指摘があることはありません。
銀行などの独自書類の内容などに指摘があるとしても、簡単に済むことがほとんどでしょう。
相続手続をスムーズに進めたい方は、司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。
死亡退職金が相続財産になる例ならない例
1死亡退職金が支給規程で支給されるとき相続財産ではない
①国家公務員死亡なら国家公務員退職手当法で支給
国家公務員が退職する場合、退職手当が支給されます。
退職する国家公務員に支給される退職手当は、国家公務員退職手当法によって定められています。
国家公務員が死亡によって退職した場合、遺族に退職手当が支給されます。
国家公務員退職手当法は、退職手当を受け取る遺族について次のように定めています。
(遺族の範囲及び順位)
国家公務員退職手当法
第2条の2第1項 この法律において、「遺族」とは、次に掲げる者をいう。
一 配偶者(届出をしないが、職員の死亡当時事実上婚姻関係と同様の事情にあつた者を含む。)
二 子、父母、孫、祖父母及び兄弟姉妹で職員の死亡当時主としてその収入によつて生計を維持していたもの
三 前号に掲げる者のほか、職員の死亡当時主としてその収入によつて生計を維持していた親族
四 子、父母、孫、祖父母及び兄弟姉妹で第二号に該当しないもの
死亡した国家公務員に配偶者がいる場合、配偶者に退職手当が支給されます。
配偶者は、法律上の配偶者だけでなく事実婚・内縁の配偶者を含みます。
死亡による退職手当は、相続によって受け取るものではありません。
事実婚・内縁の配偶者は、相続することができないからです。
死亡による退職手当は、国家公務員退職手当法で遺族に支給されます。
国家公務員退職手当法で遺族に支給される死亡退職金は、相続財産ではありません。
②地方公務員死亡なら職員退職手当条例で支給
地方公務員が退職する場合、退職手当が支給されます。
退職する地方公務員に支給される退職手当は、職員退職手当条例によって定められています。
例えば、名古屋市では職員退職手当条例が定められています。
職員退職手当条例は、多くの場合、国家公務員退職手当法に準じて決められています。
地方公務員が死亡によって退職した場合、遺族に退職手当が支給されます。
名古屋市の職員退職手当条例は、退職手当を受け取る遺族について次のように定めています。
(遺族の範囲及び順位等)
名古屋市の職員退職手当条例
第3条 この条例において「遺族」とは、次の各号に掲げる者をいう。
(1) 配偶者(届出をしないが、職員の死亡当時事実上婚姻関係と同様の事情にあった者を含む。)
(2) 子、父母、孫、祖父母及び兄弟姉妹で職員の死亡当時主としてその収入によって生計を維持していたもの
(3) 前号に掲げる者の外、職員の死亡当時主としてその収入によって生計を維持していた親族
(4) 子、父母、孫、祖父母及び兄弟姉妹で第2号に該当しないもの
死亡した名古屋市の職員に配偶者がいる場合、配偶者に退職手当が支給されます。
配偶者は、法律上の配偶者だけでなく事実婚・内縁の配偶者を含みます。
死亡による退職手当は、相続によって受け取るものではありません。
事実婚・内縁の配偶者は、相続することができないからです。
死亡による退職手当は、職員退職手当条例で遺族に支給されます。
職員退職手当条例で遺族に支給される死亡退職金は、相続財産ではありません。
③会社員死亡なら退職金規程や就業規則で支給
会社員が退職する場合、退職手当が支給されることがあります。
会社が支給する退職金については、退職金規程や就業規則について定めていることが多いでしょう。
退職金に関する定めは、多くの場合、労働基準法施行規則や労働者災害補償保険法を参考にして決められています。
労働基準法施行規則は、次のように定めています。
第42条 遺族補償を受けるべき者は、労働者の配偶者(婚姻の届出をしなくとも事実上婚姻と同様の関係にある者を含む。以下同じ。)とする。
労働基準法施行規則
労働者災害補償保険法は、次のように定めています。
第16条の7第1項 遺族補償一時金を受けることができる遺族は、次の各号に掲げる者とする。
一 配偶者
二 労働者の死亡の当時その収入によつて生計を維持していた子、父母、孫及び祖父母
三 前号に該当しない子、父母、孫及び祖父母並びに兄弟姉妹
労働基準法施行規則や労働者災害補償保険法は、退職金についての定めではありません。
生計を維持されていた人が生活に困窮しないようにするために、支給する点は読み取れます。
会社の退職金規程の内容によりますが、死亡による退職手当は相続によって受け取るものではありません。
会社の退職金規程で遺族に支給される死亡退職金は、相続財産ではありません。
④中退共加入者死亡なら中小企業退職金共済法で支給
中退共制度は、昭和34年に中小企業退職金共済法に基づき設けられた中小企業のための国の退職金制度です。
中退共制度を利用して、管理が簡単な退職金制度が手軽に作れます。
中退共加入者が退職した場合、中退共から退職金を受け取ることができます。
中退共加入者が死亡によって退職した場合、遺族は退職金を受け取ることができます。
中小企業退職金共済法は、退職金を請求できる遺族について次のように定めています。
(遺族の範囲及び順位)
中小企業退職金共済法
第14条第1項 第10条第1項の規定により退職金の支給を受けるべき遺族は、次の各号に掲げる者とする。
一 配偶者(届出をしていないが、被共済者の死亡の当時事実上婚姻関係と同様の事情にあつた者を含む。)
二 子、父母、孫、祖父母及び兄弟姉妹で被共済者の死亡の当時主としてその収入によつて生計を維持していたもの
三 前号に掲げる者のほか、被共済者の死亡の当時主としてその収入によつて生計を維持していた親族
四 子、父母、孫、祖父母及び兄弟姉妹で第2号に該当しないもの
死亡した中退共加入者に配偶者がいる場合、配偶者は退職金を請求することができます。
配偶者は、法律上の配偶者だけでなく事実婚・内縁の配偶者を含みます。
死亡による退職手当は、相続によって受け取るものではありません。
事実婚・内縁の配偶者は、相続することができないからです。
死亡による退職金は、中小企業退職金共済法で遺族が請求できます。
中小企業退職金共済法で遺族に支給される死亡退職金は、相続財産ではありません。
2受取人の指定がないと相続財産になる
①相続財産は相続人全員の共有財産
死亡退職金は、支給規程で支給されます。
支給規程には、受取人が決められています。
死亡退職金は、原則として、受取人の固有の財産です。
会社の中には、退職金規程や就業規則を整備していないことがあります。
退職金規程や就業規則を整備していなくても、死亡退職金を支給することがあります。
退職金規程や就業規則がない場合、受取人を定めているとは言えません。
受取人を定めていない場合、死亡退職金は相続財産になります。
相続財産は、相続人全員の共有財産です。
相続人以外の人は、相続財産を相続することはできません。
②生前に受け取った退職金は相続財産になる
退職金は、退職する社員に支給されます。
退職した社員が退職金を受け取った後に死亡した場合、受け取った退職金は相続財産です。
退職金は、すでに退職した社員の財産になっているからです。
被相続人が生前に受け取った退職金は、相続財産です。
③生前に退職して受取前に死亡したら相続財産
退職金は、退職日に支給されないことがあります。
生前に退職して退職金の支給日までに、死亡することがあります。
退職した社員が退職金を受け取る前に死亡した場合、退職金を受け取る権利は相続財産です。
社員が退職した時点で、退職金を受け取る権利は発生しているからです。
退職金を受け取る権利は、すでに退職した社員の財産になっています。
退職した社員が退職金を受け取る前に死亡しても、退職金を受け取る権利は相続財産です。
3死亡退職金が特別受益になる可能性
①特別受益は相続人間の公平のルール
特別利益とは、一部の相続人が特別に受けていた利益です。
例えば、一部の相続人だけが多額の贈与を受けているケースです。
一部の相続人だけが特別に利益を受けていたのに、無視して財産を配分すると不公平です。
相続人全員の公平のため、特別受益を持ち戻して相続財産を計算します。
特別受益者は、相続人だけです。
特別受益の制度は、相続人間の公平を図る制度だからです。
相続人以外の人が多額の贈与を受けていても、特別受益にはなりません。
特別受益を持ち戻して相続財産を配分すると、相続人間の公平を図ることができます。
特別受益の制度は、相続人間の公平のルールです。
②死亡退職金は原則として特別受益にならない
死亡退職金が支給規程で支給される場合、相続財産ではありません。
死亡退職金を受け取る権利は、受取人の固有の財産です。
相続放棄をしても、死亡退職金を受け取ることができます。
事実婚・内縁の配偶者が死亡退職金を受け取ることができます。
死亡退職金は、相続財産ではないからです。
相続人以外の人が死亡退職金を受け取った場合、特別受益の対象外です。
特別な事情がない限り死亡退職金を受け取っても、特別受益とは言えないでしょう。
③特別な事情があれば特別受益で持ち戻しの可能性
死亡退職金と同様に生命保険の死亡保険金も、相続財産ではありません。
生命保険の死亡保険金は高額になることが多いでしょう。
生命保険の死亡保険金を特別受益として認めない場合、到底是認できないほど著しい不公平が生じることがあります。
到底是認できないほど著しい不公平が生じる場合、特別受益の持ち戻しの対象になります。
死亡退職金も、到底是認できないほど著しい不公平が生じる場合、特別受益の持ち戻しの対象になる可能性があります。
4死亡退職金に相続税
死亡退職金は、原則として、受取人の固有の財産です。
相続放棄をしても、死亡退職金を受け取ることができます。
民法上、受取人の固有の財産なのに、死亡退職金は相続税の課税対象です。
死亡退職金の合計額が非課税限度額を超えるとき、相続税の課税対象になります。
非課税限度額=500万円×法定相続人の人数
相続人でない人が死亡退職金を受け取る場合、非課税限度額はありません。
5受取人以外の相続人が死亡退職金を受け取ると贈与税の対象
死亡退職金が支給規程で支給される場合、相続財産ではありません。
死亡退職金は、支給規程で定められた受取人の固有の財産です。
受取人の固有の財産だから、遺産分割の対象ではありません。
被相続人の資産規模が大きい場合、死亡退職金を含めて相続税の対象になります
死亡退職金は支給規程で決められた受取人の財産だから、受取人に相続税が課されます。
決められた受取人以外の人が死亡退職金を受け取る場合、受取人から贈与されたと考えられます。
高額な贈与がされた場合、贈与税の対象になるでしょう。
贈与税は、想像以上に高額になりがちです。
6財産調査を司法書士に依頼するメリット
相続が発生したら、ご遺族は大きな悲しみに包まれます。
大きい悲しみのなかで、もれなく迅速に相続財産を調査するのは身体的にも精神的にも大きな負担になります。
負担の大きい財産調査を司法書士などの専門家に依頼することができます。
遺族の疲れも、軽減されるでしょう。
被相続人の財産は、相続人もあまり詳しく知らないという例が意外と多いものです。
悲しみの中で被相続人の築いてきた財産をたどるのは切なく、苦しい作業です。
調査のためには、相続が発生したことの証明として戸籍謄本等の提出が求められます。
戸籍謄本等の取り寄せも含め、手続をおまかせいただけます。
仕事や家事で忙しい方や高齢、療養中などで手続きが難しい方は、手続を丸ごとおまかせできます。
家族にお世話が必要な方がいて、頻繁に家を空けられない方からのご相談もお受けしております。
財産調査でお疲れが出る前に、司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。
税金を滞納したまま死亡したときの相続
1滞納者が死亡しても支払免除にならない
①プラスの財産とマイナスの財産を相続する
相続が発生したら、被相続人の財産は相続人が相続します。
相続人が相続する財産が相続財産です。
被相続人の財産には、さまざまな種類の財産があるでしょう。
相続財産というと、プラスの財産だけをイメージしがちです。
例えば、不動産、預金、株式や投資信託などの有価証券、現金などです。
実際は、プラスの財産とマイナスの財産の両方が相続財産です。
マイナスの財産とは、借金やローンなどです。
相続人は、プラスの財産とマイナスの財産の両方を相続します。
②滞納している税金は相続人に支払義務
被相続人が税金を滞納したまま、死亡することがあります。
滞納している税金の支払義務は、相続財産です。
相続人は、被相続人が滞納した税金を相続します。
税金を滞納したまま滞納者が死亡しても、支払免除にはなりません。
滞納した税金は、マイナスの財産と言えます。
相続人は、プラスの財産とマイナスの財産の両方を相続します。
被相続人が滞納した税金は、相続人に支払義務があります。
③相続する税金の典型例
滞納する税金の典型例は、次のとおりです。
(1)住民税
(2)国民健康保険税
(3)固定資産税・都市計画税
(4)所得税
税金の滞納があるのか分からない場合、税務署や役所の税務課に確認することができます。
④納税義務承継通知書が届く
税金を滞納したまま死亡した場合、課税権者は相続人を調査することができます。
課税権者とは、税務署や市区町村など税金を徴収する権限がある公的機関のことです。
課税権者は、市区町村から滞納者の戸籍謄本を取り寄せて相続人を調査します。
相続人が判明したら、納税義務承継通知書を送付します。
納税義務承継通知書とは、納税義務が通知書の受取人に承継されたことのお知らせです。
納税通知書には、次の項目が書かれています。
(1)納税義務が継承された旨
(2)税金の滞納額
(3)納税義務の割合
(4)請求期限
さまざまな家族の事情から、被相続人と疎遠になっていることがあるでしょう。
納税義務承継通知書が届くことで、自分が相続人であることを知るかもしれません。
税金を滞納したまま死亡した場合、納税義務承継通知書が届きます。
2遺産分割協議は内部的取り決め
①滞納している税金を相続する人を決めることができる
相続が発生したら、被相続人の財産は相続人が相続します。
相続財産は、相続人全員の共有財産です。
相続財産の分け方は、相続人全員の合意で決定します。
相続財産の分け方を決めるため相続人全員でする話し合いを遺産分割協議と言います。
被相続人が税金を滞納していた場合、滞納していた税金は相続財産です。
滞納していた税金をだれが相続するのか、相続人全員で話し合いをすることができます。
相続人全員で合意ができたら、書面に取りまとめます。
相続人全員の合意内容を取りまとめた書面を遺産分割協議書と言います。
遺産分割協議書の内容に問題がないか相続人全員に確認してもらいます。
問題がなければ、相続人全員が記名し実印で押印します。
遺産分割協議書の押印が実印によることを証明するため、印鑑証明書を添付します。
遺産分割協議で滞納している税金を相続する人を決めることができます。
②相続する人を決めても税金の支払義務がある
相続財産の分け方は、相続人全員の合意で決定します。
相続人全員の合意で、滞納していた税金を相続する人を決めることができます。
滞納していた税金を相続する人を決めても、相続人全員に税金の支払義務があります。
相続人全員の合意は、相続人同士の内部的合意事項だからです。
遺産分割協議書に記名し実印で押印しても、相続人以外の人には何の効力もありません。
相続人間のトラブルを防止するために、遺産分割協議書を作成することに意味があります。
遺産分割協議で相続する人を決めても、相続人全員に税金の支払義務があります。
③相続人全員に税金の支払義務がある理由
仮に、相続人に税金の支払義務がないとすると不都合な結果になります。
相続人には、さまざまな経済状況の人がいるでしょう。
資力がある人も資力がない人もいます。
中には債務超過に陥っている相続人がいることがあります。
相続財産の分け方は、相続人全員の合意で決定します。
債務超過の相続人が滞納している税金を相続する合意をするかもしれません。
自分の債務だけで債務超過になっているのに、滞納している税金を負担することになります。
自分の債務と滞納している税金の両方は、払えないでしょう。
債務超過の人は、自己破産することになります。
自己破産したら、滞納している税金は払うことはできません。
他の相続人はプラスの財産を受け取っておきながら、滞納していた税金は払われません。
税金をきちんと払っている納税者から見ると、理不尽な結果となります。
このような理不尽を許さないため、相続人全員に税金の支払義務があります。
④相続人全員が法定相続分で納税
相続人になる人は、法律で決まっています。
相続人が相続する相続分も、法律で決まっています。
各相続人が引き継ぐのは、滞納していた税金の法定相続分のみです。
相続人全員が法定相続分で滞納していた税金を納めます。
3税金の滞納を放置したら
①滞納処分が開始される
税金を納めないまま放置すると、滞納処分が開始されます。
滞納処分とは、納税者の意思に関わらず強制的に税金を取り立てるための手続です。
通常、財産を差押え、差押えた財産を換価し、税金に充当する一連の手続です。
被相続人が税金を滞納していた場合、滞納処分が開始していることがあります。
税金滞納者であった被相続人に滞納処分が開始していた場合、相続人が滞納処分を引き継ぎます。
滞納者が死亡しても、滞納処分の効果が失われるものではないからです。
税金を滞納したまま放置すると、滞納処分が開始されます。
②滞納処分の流れ
滞納処分は、納税者の意思に関わらず強制的に税金を取り立てるための手続です。
滞納処分の基本的な流れは、次のとおりです。
(1)督促状の送付
納期限を過ぎても納付がされない場合、督促状が送付されます。
督促状の送付は、滞納処分の前提の処分です。
納期限が過ぎると、延滞税が課されます。
延滞税だけの滞納も、滞納処分の対象です。
(2)文書や電話で催告
督促状が送付されても納付されない場合、文書や電話で納税催告がされます。
納税担当者と納付交渉で、分割納付や納付猶予が認められることがあります。
多くの場合、納付猶予が認められるのは、災害などの一定の理由が必要です。
(3)財産調査
文書や電話で催告しても納付されない場合、財産調査が行われます。
調査対象は、金融機関や勤務先、取引先などです。
財産調査をするにあたって、滞納者の承諾は不要です。
滞納処分は、納税者の意思に関わらず強制的に税金を取り立てるための手続だからです。
金融機関や勤務先、取引先は、財産調査に協力しなければなりません。
個人情報であることを理由に、協力を拒むことはできません。
(4)財産の差押
財産調査で滞納者の財産が判明したら、差押がされます。
差押えられた財産は、滞納者の意思に関わらず財産処分ができなくなります。
金銭的価値がある財産はすべて、差押の対象になります。
(5)換価処分し配当
差押えた財産は、強制的に換価されます。
例えば、不動産であれば競売し売却代金は滞納している税金に充当されます。
滞納してる税金に充当しても残余があれば、滞納者に配当されます。
③相続人の財産に差押がされる
被相続人が税金を滞納したまま死亡した場合、税金の支払義務は相続人が相続します。
滞納している税金の支払義務は、相続人に引き継がれます。
相続人が滞納した税金を放置していた場合、滞納処分が開始されます。
被相続人が滞納していた税金のために、相続人の財産が差し押さえられるかもしれません。
税金の支払義務は、相続人に引き継がれたからです。
自分の税金はきちんと納めているのに、という言い訳は通用しません。
被相続人から引き継いだ税金についても、支払義務があるからです。
被相続人が滞納した税金を放置したら、相続人の財産が差押えられます。
4相続放棄で滞納している税金を免れる
①3か月以内に家庭裁判所で手続
相続が発生したら、相続人は相続を単純承認するか相続放棄をするか選択することができます。
相続放棄を選択した場合、はじめから相続人でなくなります。
相続放棄を希望する場合、家庭裁判所に対して相続放棄を希望する申立てをします。
相続放棄には、期限があります。
相続があったことを知ってから、3か月以内です。
相続があってから長期間経過した後、納税義務承継通知書が届くことがあります。
納税義務承継通知書が届いたことで、相続があったことを知るかもしれません。
納税義務承継通知書が届いたことで相続があったことを知った場合、納税義務承継通知書は重要です。
相続があったことを知ってから3か月以内であることを証明する証拠だからです。
相続放棄を希望する場合、3か月以内に家庭裁判所に手続をします。
②相続放棄をしたら他の財産は相続できない
相続放棄をしたら、はじめから相続人でなくなります。
マイナスの財産を相続しないし、プラスの財産を相続しません。
被相続人の滞納した借金を相続しないし、他の財産も相続しません。
相続放棄をしたら、他の財産は相続できなくなります。
③相続放棄は撤回できない
相続人は、相続を単純承認するか相続放棄をするか選択することができます。
相続を単純承認するか相続放棄をするか選択した後は、撤回することはできません。
仮に撤回を認めると、相続が混乱するからです。
家庭裁判所で相続放棄が認められた後、撤回することはできません。
④単純承認をすると相続放棄は無効
家庭裁判所で相続放棄が認められても、実際は無効であることがあります。
単純承認をしたのに、相続放棄の申立てをすることがあるからです。
被相続人の財産を処分したり利用したりした場合、単純承認と見なされます。
相続放棄を希望しているのに、相続人が被相続人の財産を処分したり利用したりすることがあります。
相続人が自覚せずに、被相続人の財産を処分したり利用したりすることがあるでしょう。
相続人が自覚していなくても被相続人の財産を処分したり利用したりした場合、単純承認と見なされます。
単純承認をした後に家庭裁判所が相続放棄を認める決定をしても、無効の決定です。
単純承認をすると、相続放棄は無効になります。
⑤相続放棄で次順位相続人に支払義務
相続人になる人は、法律で決められています。
相続人が相続放棄をした場合、はじめから相続人でなくなります。
被相続人に子どもがいる場合、子どもは相続人になります。
子どもが相続放棄をした場合、子どもは相続人でなくなります。
子ども全員が相続放棄をした場合、子どもはいない場合になります。
子どもがいない場合、相続人になるのは親などの直系尊属です。
相続放棄で次順位の人が相続人になります。
滞納していた税金は、次順位の人が相続します。
滞納していた税金の支払義務があると聞いたら、びっくりするでしょう。
相続放棄をしても、次順位の人に知らせる義務はありません。
知らせる義務がなくても、知らせてあげると親切でしょう。
相続放棄で、次順位相続人が支払義務を負うからです。
⑥相続放棄をしても死亡保険金は受け取れる
被相続人が死亡した場合に、生命保険の死亡保険金が支払われることがあります。
原則として生命保険の保険金を受け取る権利は、相続人の固有の財産です。
受取人が「相続人」と指定してあっても、相続で受け取るものではありません。
被相続人の死亡をきっかけにして、保険契約によって受取人が保険金を受け取るものです。
多くの場合、被相続人は生前に生命保険の死亡保険金を受け取る権利を持っていなかったでしょう。
相続によって、被相続人から受け継いだものではありません。
相続人の固有の財産だから、相続放棄をした人は生命保険の保険金を受け取ることができます。
生命保険の保険金を受け取ったことで、相続放棄が無効になることはありません。
5相続放棄を司法書士に依頼するメリット
相続放棄は、チャンスは1回限りです。
家庭裁判所に認められない場合、即時抗告という手続を取ることはできます。
高等裁判所の手続で、2週間以内に申立てが必要になります。
家庭裁判所で認めてもらえなかった場合、即時抗告で相続放棄を認めてもらえるのは、ごく例外的な場合に限られます。
一挙にハードルが上がると言ってよいでしょう。
相続が発生してから3か月以内に手続ができなかったのは止むを得なかったと家庭裁判所に納得してもらうことが重要です。
家庭裁判所に対して、上申書や事情説明書という書類を添えて、説得します。
家庭裁判所が知りたいことを無視した作文やダラダラとした作文では認めてもらうことは難しいでしょう。
司法書士であれば、家庭裁判所に認めてもらえるポイントを承知しています。
認めてもらえやすい書類を作成することができます。
相続放棄を考えている方は、すみやかに司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。
消費者金融の借金があるのに死亡
1消費者金融の借金は相続財産
①相続人になる人は法律で決まっている
相続が発生したら、親族のうち一定の範囲の人が相続人になります。
だれが相続人になるかについては、民法で決められています。
相続人になる人は、次のとおりです。
(2)~(4)の場合、先順位の人がいる場合、後順位の人は相続人になれません。
(1)配偶者は必ず相続人になる
(2)被相続人に子どもがいる場合、子ども
(3)被相続人に子どもがいない場合、親などの直系尊属
(4)被相続人に子どもがいない場合で、かつ、親などの直系尊属が被相続人より先に死亡している場合、兄弟姉妹
②返済義務があるのは債務者だけ
お金を借りたら、借りたお金は返さなければなりません。
原則として、消費者金融の契約には保証人は不要です。
保証人とは、お金が返せなくなったときに肩代わりをする人です。
保証人には、肩代わりをする義務があります。
返済義務があるのは、債務者だけです。
たとえ債務者の家族であっても保証人でなければ、肩代わりをする義務はありません。
ドラマや映画の中では、家族の借金だから返済して当然などと言って取立てをしていることがあります。
債務者が返済に行き詰っても、家族には借金を返済する義務も肩代わりの義務もありません。
返済義務があるのは、債務者だけです。
③債務者が死亡しても契約はなくならない
債務者が生きている間、返済義務があるのは債務者だけです。
債務者が死亡した場合、契約は相続の対象になります。
債務者が借金苦を理由に死亡しても、契約は消えてなくなりません。
住宅ローンの債務者が死亡した場合、団体信用生命保険の保険金でローンが完済になります。
奨学金を受けていた奨学生が死亡した場合、奨学金の返済は認められれば免除されることがあります。
消費者金融の借金は、債務者が死亡しても返済が免除されることはありません。
債務者が死亡しても、契約はなくならないからです。
④消費者金融の借金は相続人が相続する
債務者が死亡した場合、契約は相続の対象になります。
相続が発生したら、被相続人のものは相続人が相続します。
被相続人のプラスの財産とマイナスの財産が相続財産です。
消費者金融の借金は、相続財産のひとつです。
消費者金融の借金は、法定相続分で相続人が相続します。
2消費者金融の借金を調べる方法
①自宅で書類を探す
相続が発生した後に遺品整理をしていると、借入明細書や督促状が見つかることがあります。
多くの場合、被相続人が生前に銀行の預貯金口座を保有していたでしょう。
預貯金の通帳を記帳すると、消費者金融の引落が見つかることがあります。
消費者金融の引落が見つかったら、借り入れの状況を尋ねるといいでしょう。
自宅保管している書類を探すことで、被相続人の借金が判明します。
②信用情報機関に開示請求をする
消費者金融から借金があるかもしれないと不安になることがあります。
被相続人と別居している場合、詳しい財産状況は分からないことが多いでしょう。
被相続人に借金があるかもしれないと不安な場合、信用情報機関に照会することができます。
信用情報は、個人情報の一部です。
信用情報には、本人を特定するための情報とローンやクレジットなどの取引内容、返済状況に関する情報があります。
消費者金融やクレジット会社は、指定信用情報機関に加入しています。
信用情報を確認すると、ローンやクレジットなどの取引内容、返済状況が詳しく分かります。
(1)日本信用情報機構(JICC)
(2)株式会社シー・アイ・シー(CIC)
(3)全国銀行協会全国銀行個人信用情報センター(KSC)
消費者金融やクレジット会社が複数の信用情報機関に加入していることがあります。
信用情報機関は、信用情報を相互に共有することができます。
信用情報は、本人や本人の相続人が開示請求をすることができます。
信用情報機関に開示請求をすることで、被相続人の借金を調べることができます。
3相続放棄で借金の相続を免れる
①相続放棄は家庭裁判所の手続
債務者が死亡しても、借金を返済する義務はなくなりません。
消費者金融の借金は、相続財産です。
相続が発生したら、相続人は相続を単純承認するか相続放棄をするか選択することができます。
相続放棄を希望する場合、家庭裁判所に対して相続放棄を希望する申立てをします。
家庭裁判所の手続をせずに、相続放棄をすることはできません。
相続放棄の期限は、相続があったことを知ってから3か月です。
「相続があったことを知ってから」とは、被相続人が死亡して相続が発生し、その人が相続人であることを知って、かつ、相続財産を相続することを知ってから、と考えられています。
家庭裁判所で相続放棄が認められたら、はじめから相続人でなくなります。
消費者金融に莫大な借金があっても、相続放棄をして借金を免れることができます。
②相続放棄をしても契約はなくならない
相続放棄をしたら、はじめから相続人でなくなります。
相続放棄が認められても、契約は消えてなくなりません。
被相続人に子どもがいる場合、子どもが相続人になります。
子どもが相続放棄をしたら、はじめから相続人でなくなります。
子ども全員が相続放棄をしたら、子どもがいない場合になります。
被相続人に子どもがいない場合、親などの直系尊属が相続人になります。
子どもに相続放棄が認められても、契約は消えてなくならないからです。
相続人が相続放棄をすると、次順位の人が相続人になります。
次順位の人も相続放棄を希望するのであれば、家庭裁判所に対して手続をする必要があります。
相続放棄をしても、借金を返済する義務はなくなりません。
③相続人全員が相続放棄できる
相続人になる人は、法律で決まっています。
相続放棄は、多くの場合、被相続人のマイナスの遺産を引き継がないために行われます。
相続人が全員相続放棄をしたら、被相続人の借金なのに、だれも責任をとらないことになります。
だれも責任をとらないことに対して、後ろめたく思う人もいるかもしれません。
相続放棄は、相続人ひとりひとりが自分の意思で自由に判断できるものです。
結果として、相続人全員が相続放棄を選択することになっても、法律上、やむを得ないことです。
配偶者と子ども全員が相続放棄をした場合、次順位の親などの直系尊属が相続人になります。
親などの直系尊属全員が相続放棄をした場合、次順位の兄弟姉妹が相続人になります。
兄弟姉妹全員が相続放棄をした場合、次順位の相続人はいません。
借金がどこまでも無限に追いかけてくることはありません。
だれが相続人になるかについては、法律で決められているからです。
相続人全員が相続放棄をした場合、相続人不存在になります。
相続人不存在になっても、相続人でない人が借金の返済を迫られることはありません。
相続人全員が相続放棄をすることができます。
④単純承認をすると相続放棄は無効になる
家庭裁判所で相続放棄が認められたら、はじめから相続人でなくなります。
消費者金融の莫大な借金があっても、相続することはありません。
相続が発生したら、相続人は相続を単純承認するか相続放棄をするか選択することができます。
単純承認したとみなされる行為は、法律で定められています。
相続財産の名義変更をした、相続財産である銀行の預貯金を引き出して使ってしまった場合が典型的です。
単純承認をしたのに、家庭裁判所に対して相続放棄を希望する申立てをすることがあります。
単純承認をした後に、相続放棄をすることはできません。
相続放棄はできないのに、家庭裁判所に相続放棄の手続をして、相続放棄が認められても無効です。
相続放棄の申立てがあった場合、家庭裁判所は提出した書類を見て審査をします。
提出書類に問題がなければ、相続放棄を認める決定をしてしまいます。
家庭裁判所で相続放棄が認められても、無効の決定です。
単純承認をした場合、債権者は相続放棄は無効だから借金を返済して欲しいと裁判を起こすことができます。
単純承認をすると、相続放棄は無効になります。
⑤相続放棄をしても生命保険の死亡保険金
被相続人に生命保険がかけてある場合、死亡保険金が支払われます。
原則として生命保険の保険金を受け取る権利は、相続人の固有の財産です。
受取人が「相続人」と指定してあっても、相続で受け取るものではありません。
被相続人の死亡をきっかけにして、保険契約によって受取人が保険金を受け取るものです。
多くの場合、被相続人は生前に生命保険の死亡保険金を受け取る権利を持っていなかったでしょう。
相続によって、被相続人から受け継いだものではありません。
相続人の固有の財産だから、相続放棄をした人は生命保険の保険金を受け取ることができます。
生命保険の保険金を受け取ったことで、相続放棄が無効になることはありません。
相続放棄をした場合、消費者金融の借金を引き継ぐことはありません。
相続放棄をしても、生命保険の死亡保険金を受け取ることができます。
債務者の家族であっても、生命保険の死亡保険金で債務者の借金を返済する義務はありません。
4消滅時効が完成しても借金の請求
①消滅時効の援用で借金から免れる
被相続人の借金が相当古いものであることがあります。
相当古い借金である場合、時効が完成するために必要な期間を経過しているかもしれません。
時効完成後の借金は、消滅時効を援用することで返済を免れることができます。
消費者金融は消滅時効が完成した借金であっても、請求してくることがあります。
消滅時効が完成するために必要な期間を経過しても、借金はなくなったわけではないからです。
債務者が消滅時効の利益を受けることを潔しとするか、分からないと言う理由もあります。
債務者が消滅時効の利益を受けることを希望する場合、時効援用の意思表示をする必要があります。
②時効援用でプラスの財産を相続
消費者金融の借金が時効消滅している場合、相続人は消滅時効を援用することができます。
被相続人に莫大なマイナスの財産と莫大なプラスの財産があることがあります。
莫大なマイナスの財産の時効消滅を援用したら、マイナスの財産を引き継ぐことなくプラスの財産を引き継ぐことができます。
③債務承認で時効が更新される
債務者に相続が発生したら、消費者金融は戸籍謄本等で相続人を調査することができます。
相続人に借金を返済してもらおうと考えて、連絡してくることがあります。
時効援用の意思表示をする前に債務承認をした場合、時効は更新されます。
例えば、次のような行為があると時効が更新されます。
・借金の一部の返済
・借金の返済猶予の申出
・借金の分割払いの申出
時効が更新されると、消滅時効の利益を受けることができなくなります。
被相続人に古い借金がある場合、慎重な対応が必要です。
④消滅時効を援用すると単純承認になる
消滅時効を援用することは、相続財産の処分行為です。
相続財産を処分した場合、相続を単純承認したと判断されます。
ひょっとしたら他にも莫大な借金が見つかるかもしれません。
新たに見つかった借金は、時効消滅していない可能性があります。
単純承認をした後に、相続放棄をすることはできません。
相続放棄は撤回できないように単純承認も撤回することができないからです。
被相続人に古い借金がある場合、慎重な対応が必要です。
5消費者金融の借金を残して死亡したときの相続を司法書士に依頼するメリット
大切な家族を失ったら、大きな悲しみに包まれます。
やらなければいけないと分かっていても、気力がわかない方も多いものです。
相続財産と聞くと、プラスの財産だけイメージしがちです。
被相続人の財産内容を家族が詳細に知っていることは、ほとんどありません。
相続手続の過程で被相続人に借金があったことを知ることになります。
消費者金融の借金は、想像以上に高額になることがあります。
司法書士が、必要な手続や適切な対応についてサポートします。
相続手続を済ませていない方は司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。
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