Archive for the ‘財産調査’ Category

不動産相続で配偶者居住権

2024-02-01

1相続人になる人は法律で決まっている

相続が発生したら、親族のうち一定の範囲の人が相続人になります。

だれが相続人になるかについては、民法で決められています。

相続人になる人は、次のとおりです。

②~④の場合、先順位の人がいる場合、後順位の人は相続人になれません。

①配偶者は必ず相続人になる

②被相続人に子どもがいる場合、子ども

③被相続人に子どもがいない場合、親などの直系尊属

④被相続人に子どもがいない場合で、かつ、親などの直系尊属が被相続人より先に死亡している場合、兄弟姉妹

相続人になるはずだった人が被相続人より先に死亡した場合、相続人になるはずだった人の子どもや子どもの子どもが相続します。

相続人になるはずだった人の子どもや子どもの子どもが相続することを代襲相続と言います。

2再婚歴があると相続が複雑になる

配偶者は、必ず相続人になります。

配偶者とは、相続が発生した時点の法律上の配偶者です。

資産家の人が再婚を希望する場合、子どもから強い反発を受けることがあります。

親の結婚を祝福したい気持ちはあっても、将来、発生する相続を考えると賛成できなくなるからです。

被相続人に配偶者がいない場合、相続財産は子どもで分けることになります。

被相続人に配偶者がいる場合、相続財産を配偶者と子どもで分け合うことになります。

配偶者と子どもで相続財産を分ける場合、配偶者の法定相続分は2分の1です。

子どもから見ると、財産を奪われる気持ちになります。

相続財産を脅かす存在に見えても不思議ではありません。

再婚配偶者と子どもの関係性がいいことは、あまりないでしょう。

3再婚した配偶者が相続した財産の行方

相続が発生したら、配偶者は必ず相続人になります。

自分が死亡した後も配偶者が自宅で安心して住み続けられるように、遺言書を書いておこうと考えるケースがあります。

遺言書を書くことで、トラブルを防止しようとするものです。

再婚の場合、もう少し先を考える必要があります。

被相続人が再婚である場合、前婚配偶者との間の子どもと後婚配偶者の間に血縁関係がありません。

被相続人の財産が後婚配偶者に相続された後、後婚配偶者が相続した財産は後婚配偶者の血縁関係者に相続されます。

前婚配偶者との間の子どもは、被相続人の後婚配偶者と血縁関係がないので後婚配偶者の相続人にはなりません。

被相続人の子どもにとって思い入れのある実家や先祖伝来の土地を、血縁関係がない後婚配偶者が相続した場合に問題になります。

後婚配偶者が相続したら、その後は、後婚配偶者の連れ子などが先祖伝来の土地を相続することになるからです。

先祖代々守ってきた土地を血縁関係のない人に相続されることに心理的抵抗を感じ、トラブルに発展します。

由緒がある家柄であると、被相続人自身も血縁関係のある人に受け継いでもらいたいと考えていることがあります。

自分が死亡した後、配偶者が自宅で住み続けられるようにしてあげたいが、配偶者死亡後は自分の血縁関係者が受け継いでもらいたいといった希望です。

この場合、自分の子どもに遺贈する旨の遺言を書いてもらうという方法も考えられます。

配偶者が遺言書を書くかどうかは、配偶者の気持ち次第です。

たとえ配偶者が遺言書を書いたとしても、自分が死亡した後に書き換えるかもしれません。

遺言書は何度でも書き直しができるし、何度でも撤回ができます。

書き直しや撤回はしませんという約束は無効です。

4配偶者居住権は住居を確保する制度

①配偶者居住権とは

配偶者居住権は、相続が発生してから配偶者が住む場所を失うことがないように保護するために作られた制度です。

配偶者居住権は、自動的に発生することはありません。

遺言書や遺産分割協議などで、権利を設定する必要があります。

②配偶者居住権は法律上の配偶者のみ

配偶者居住権は、法律上の配偶者だけ取得することができます。

事実婚・内縁の配偶者は、配偶者居住権を取得することはできません。

配偶者以外の相続人も取得することはできません。

③配偶者居住権は原則配偶者の終身存続

配偶者短期居住権は期間制限があります。

配偶者居住権の存続期間は、原則として終身です。

遺言書や遺産分割協議などによって、存続期間を決めることもできます。

④配偶者居住権は登記できる

配偶者居住権は、登記をすることができます。

要件を満たせば、配偶者短期居住権と配偶者居住権のいずれも、登記をしなくても成立します。

配偶者居住権はせっかく登記できるのに、登記しないと大きな不利益があります。

例えば、建物所有者が建物を売却してしまうことがあります。

建物の買主は、建物を使うため立ち退きを求めるでしょう。

配偶者居住権の登記があれば、建物の買主に立ち退きたくないなどと文句を言うことができます。

登記がしてあれば、建物の買主に配偶者居住権を盾にそのまま住み続けることができます。

登記がしてなければ、建物の買主に配偶者居住権があるから立ち退きたくないなどと文句を言うことはできません。

建物の買主に立ち退きたくないなどと文句を言うことができるのは、登記の重要な効力です。

配偶者居住権が成立する場合、建物所有者は配偶者を追い出すことはできません。

建物所有者は、配偶者居住権設定の当事者です。

配偶者居住権の登記があっても登記がなくても、配偶者居住権の行使の邪魔をすることはできません。

配偶者が建物から立ち退かなければならなくなったのは、もとはと言えば、建物所有者が建物を売却したせいです。

建物所有者が建物を売却したことで、配偶者は追い出されたと言えます。

配偶者が追い出されたことは、建物所有者が配偶者居住権の行使の邪魔をしたことと言えます。

配偶者居住権の行使の邪魔をしたことに対して、配偶者は損害賠償請求をすることができます。

配偶者は損害賠償請求をすることができますが、住み慣れた自宅を立ち退くこと負担は大きいと言えます。

5住む権利と所有権を分けて相続することができる

①配偶者居住権で相続財産の分け方の選択肢が増えた

配偶者居住権は、配偶者が自宅に住み続けることができる権利です。

配偶者居住権を設定した場合、建物所有権から配偶者居住権を分離したと言えます。

建物所有権は、配偶者居住権の負担付き所有権です。

相続財産に建物がある場合、住む権利と所有権を分けて相続することができます。

配偶者居住権は、自動的に発生することはありません。

相続財産の分け方の選択肢を増やすものです。

従来どおり、住む権利と所有権を分けずに相続することができます。

②配偶者居住権は遺言書で設定できる

被相続人の気持ちとしては、自分が死亡した後も配偶者が自宅で住み続けられるようにしてあげたいでしょう。

被相続人に再婚歴がある場合、最終的には自分の血縁関係がある子どもに受け継いでもらいたい気持ちもあるでしょう。

被相続人は遺言書を作成して、配偶者居住権を遺贈することができます。

遺言書で、自分の血縁関係がある子どもに配偶者居住権の負担付所有権を相続させることができます。

遺言書で遺言執行者を決めておくことができます。

遺言執行者は、遺言書の内容を実現する人です。

遺言執行者は、配偶者居住権設定登記や相続登記をすることができます。

遺言執行者がいると確実に遺言内容を実現してもらえるので安心です。

③配偶者居住権は遺産分割協議で設定できる

配偶者居住権は、設定行為が必要です。

相続財産は、相続人全員の合意で分け方を決定します。

相続財産に被相続人の自宅がある場合、相続人全員の合意で配偶者居住権を設定することができます。

配偶者居住権を設定することは、相続財産の分け方の選択肢のひとつだからです。

④配偶者の死亡で配偶者居住権は消滅

配偶者居住権の存続期間は、原則として終身です。

配偶者が死亡した場合、配偶者居住権は終了します。

配偶者は、所有権を相続したのでないから配偶者の連れ子などに引き継がれることはありません。

子どもが相続した配偶者居住権の負担付き所有権は、負担のない所有権になります。

先祖伝来の地は自分の家系の人に受け継いでもらいたいという気持ちをかなえることができます。

6配偶者居住権がある相続を司法書士に依頼するメリット

相続財産のほとんどが自宅不動産のみである場合、相続財産の分け方を決める話し合いは難航します。

住み慣れた自宅で住み続けたい相続人と相続財産を受け取りたい相続人が合意できないからです。

被相続人に再婚歴がある場合、相続人になる子どもと配偶者は血縁関係がありません。

被相続人の配偶者は、相続財産を脅かす存在に見えてしまいます。

相続人になる子どもと配偶者に血縁関係がある場合、配偶者の死亡後に配偶者が受け継いだ財産を相続することができます。

相続人になる子どもと配偶者に血縁関係がない場合、配偶者の死亡後に配偶者が受け継いだ財産を相続することができません。

配偶者の連れ子などが相続人になります。

被相続人の配偶者が自宅に住み続けることに賛成できても、後に配偶者の血縁関係者に相続されることに賛成できないことがあります。

配偶者居住権の制度ができたことで、住む権利と所有権を分けて相続することができるようになりました。

配偶者居住権は、新しい選択肢です。

メリットばかりでなくデメリットもあります。

メリットデメリットを充分に理解して納得して合意することが重要です。

配偶者居住権の設定を検討する方は、司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。

借金を残して死亡したときの相続

2024-01-25

1借金は相続財産

相続が発生すると、原則として、被相続人の財産は相続人が相続します。

相続人が相続する財産が相続財産です。

相続財産は、プラスの財産とマイナスの財産があります。

プラスの財産もマイナスの財産も、相続財産です。

相続財産と聞くと、プラスの財産だけイメージしがちです。

不動産、預金、株式や投資信託などの有価証券、現金などです。

相続財産は、プラスの財産だけではなくマイナスの財産を含みます。

マイナスの財産とは、借金やローンなどです。

借金やローンなどのマイナスの財産は、相続財産です。

被相続人が第三者の連帯保証人であった場合、連帯保証人の地位は相続財産です。

連帯保証人の地位は、相続で相続人に受け継がれます。

被相続人がローン組むときに、相続人が連帯保証人になることがあります。

この場合の連帯保証人の地位は相続財産ではありません。

相続とは関係ない相続人の固有の義務です。

2借金と連帯保証人の調べ方

まず、契約書、借入明細書や督促状を探します。

通帳を記帳して取引履歴を確認すると、ローンの引落が見つかることもあります。

信用情報機関に照会すると、詳しく確認することができます。

①消費者金融からの借入  日本信用情報機構(JICC)

②クレジット会社からの借入 株式会社シー・アイ・シー(CIC)

③銀行からの借入       全国銀行協会全国銀行個人信用情報センター

すべてではありませんが、信用情報機関に連帯保証人が登録されている場合があります。

信用情報機関に照会することで、被相続人が連帯保証人になっていたことが判明するかもしれません。

不動産がある場合、抵当権や根抵当権が登記されている場合があります。

不動産を担保として借入がある可能性が高いので必ず確認しましょう。

3借金を残して死亡したときの遺族の対応

①借金を返済する

相続が発生した場合、被相続人のものは相続人全員の共有財産になります。

借金を引き継いで返済する場合、特別な手続はありません。

②相続放棄をする

相続が発生した場合、原則として、被相続人のプラスの遺産もマイナスの遺産も相続人が受け継ぎます。

被相続人のプラスの遺産もマイナスの遺産も受け継がないことを相続の放棄といいます。

相続放棄をすると、プラスの遺産を引き継がなくなりますが、マイナスの遺産も引き継ぐことがなくなります。

親の借金を引き継がないために相続放棄をするなどのケースが一般的です。

相続放棄は、家庭裁判所に対して、必要な書類をを添えて相続放棄をしたい旨の申立てをします。

この申立ては相続があったことを知ってから、原則として、3か月以内にする必要があります。

③消滅時効を援用する

消滅時効とは、長期間権利行使をしない場合に権利が行使できなくなる制度です。

債権者は、借金を払って欲しいと請求する権利があります。

債務者の事情を察して、借金を請求せずに長期間経過することがあります。

借金を請求せずに長期間経過した場合、条件にあてはまれば権利行使が許されなくなります。

長期間経過しても、自動的に借金がなくなるわけではありません。

消滅時効が完成すると、借金を払う必要がなくなります。

借金を払わなくてよくなることを、債務者が不道徳と思うことがあります。

お金を借りたのだからきちんとお金を返すべきだと考えている債務者に対して、消滅時効を押し付けるべきではありません。

消滅時効によって利益を受けるか受けないか、債務者は判断することができます。

時効の利益を受ける意思表示を時効の援用と言います。

時効を援用する場合、配達証明付き内容証明郵便で通知するのがおすすめです。

④相続財産を処分したら相続放棄が無効になる

単純承認をした場合、相続放棄をすることはできません。

相続放棄はできないのに、家庭裁判所に相続放棄の手続をして、相続放棄が認められても無効です。

単純承認したとみなされる行為は、法律で定められています。

相続財産の名義変更をした、相続財産である銀行の預貯金を引き出して使ってしまった場合が典型的です。

消滅時効の援用は、単純承認になります。

消滅時効を援用することは、相続財産の処分行為だからです。

⑤生命保険の死亡保険金は受け取ることができる

被相続人が死亡した場合に、生命保険の死亡保険金が支払われることがあります。

原則として生命保険の保険金を受け取る権利は、相続人の固有の財産です。

受取人が「相続人」と指定してあっても、相続で受け取るものではありません。

被相続人の死亡をきっかけにして、保険契約によって受取人が保険金を受け取るものです。

多くの場合、被相続人は生前に生命保険の死亡保険金を受け取る権利を持っていなかったでしょう。

相続によって、被相続人から受け継いだものではありません。

相続人の固有の財産だから、相続放棄をした人は生命保険の保険金を受け取ることができます。

生命保険の保険金を受け取ったことで、相続放棄が無効になることはありません。

4住宅ローンを残して死亡したときの相続

①住宅ローンが完済になる場合

被相続人がマイホームを購入したとき、銀行などから融資を受けることがあります。

被相続人が住宅ローンを残して死亡した場合、マイホームと住宅ローンが相続財産になります。

被相続人が住宅ローンを組んでいて、かつ、団体信用生命保険に加入している場合、住宅ローンの残りは保険金で完済されます。

住宅ローンが完済される場合、借金のことは心配せずに相続財産の分け方の話し合いをすることができます。

団体信用生命保険に加入していたか分からない場合、金融機関に確認することができます。

②住宅ローンが完済にならない場合

被相続人が住宅ローンを組んでいる場合でも、団体信用生命保険に加入していないことがあります。

年齢などの条件に合わない場合、団体信用生命保険に加入できないケースがあるからです。

住宅ローンは保険金で完済されないから、マイナスの財産として相続財産になります。

相続財産だから相続人全員の話し合いで、相続財産の分け方を決めることができます。

多くの場合、マイホームを相続する人が住宅ローンも引き継ぐ合意をします。

マイホームを相続する人が住宅ローンも引き継ぐ合意をした場合であっても、金融機関は相続人全員に対して法定相続分で借金の返済を求めることができます。

マイホームを相続する人が住宅ローンも引き継ぐ合意をした場、合意内容は相続人間の内部的な合意に過ぎないからです。

金融機関には、関係ない話だからです。

マイホームを相続する人が住宅ローンを払えなくなった場合、他の相続人は法定相続分で住宅ローンを返済しなければなりません。

5相続放棄をしても相続人が連帯保証人

相続放棄をすると、プラスの遺産を引き継がなくなりますが、マイナスの遺産も引き継ぐことがなくなります。

被相続人が第三者の借金について、連帯保証人になっていることがあります。

被相続人が連帯保証人であった場合、連帯保証人の義務は相続人が相続します。

相続人が相続放棄をした場合、連帯保証人の義務を相続しません。

被相続人がローン組むときに、相続人が連帯保証人になることがあります。

連帯保証人は、ローンを組んだ人がお金を返せなくなった場合に肩代わりをしますと銀行に約束した人です。

ローンを組んだ人がお金を返せなくなっても、銀行は肩代わりの人に請求することができます。

銀行は、安心してお金を貸すことができます。

被相続人が多額のローンを残したまま死亡した場合、相続人は相続放棄をすることができます。

相続人が相続放棄をした場合、被相続人の借金を相続することはありません。

相続人として被相続人のローンを返す義務はなくなりますが、肩代わりの義務はそのままです。

借金を肩代わりする義務は、銀行と相続人がした契約だからです。

相続とは関係ない相続人自身の固有の義務だからです。

被相続人がローンを残したまま死亡した後、相続人が相続放棄をしたら借金を返してもらえなくなります。

ローンを組んだ人がお金を返せなくなった場合に肩代わりをしますと約束してもらったのだから、銀行は約束どおり肩代わりをしてくださいと言ってきます。

相続放棄したから、肩代わりはしませんということはできません。

肩代わりの義務は、相続とは関係ない相続人固有の義務だからです。

6借金を残して死亡したときの相続を司法書士に依頼するメリット

大切な家族を失ったら、大きな悲しみに包まれます。

やらなければいけないと分かっていても、気力がわかない方も多いものです。

相続財産と聞くと、プラスの財産だけイメージしがちです。

被相続人の財産内容を家族が詳細に知っていることは、ほとんどありません。

相続手続の過程で被相続人に借金があったことを知ることになります。

できることなら、被相続人が生前対策として、相続人にどのような債務がだれに対してあるのか知らせてあげるといいでしょう。

借金と聞くと必要以上に不安に思うことがあります。

団体信用生命保険に加入している場合など借金の返済が不要になるケースもあります。

銀行などの債権者は法定相続分で相続人全員に対して連帯債務の返済を請求することができます。

このようなことは、あまり知られていません。

司法書士が、必要な手続や適切な対応についてサポートします。

相続手続を済ませていない方は司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。

私道の共有持分を相続

2024-01-01

1私道は相続財産

①道路には私道と公道がある

普段、道路を使っていろいろな所へ出かけます。

一般の交通の用に用いるのが道路です。

道路には、2種類あります。

私道と公道です。

行政が設置管理をする道路が公道です。

一般私人が設置管理する道路が私道です。

公道は、設置管理する国や地方自治体の財産です。

私道は、設置管理する人の財産です。

②私道を登記簿謄本で確認できる

私道は、一般私人が設置管理する道路です。

ひとりの人が単独で所有していることも近隣住民とみんなで所有していることもあります。

私道をみんなで共有している場合、分割した割合で道路を所有しています。

私道は通常の宅地と同様に、所有者の財産です。

自分の財産であることを第三者に権利主張するためには、登記が必要です。

道路として使っている土地の登記簿謄本を取得することができます。

登記簿を確認すると、所有者や共有持分を確認することができます。

③私道は相続財産なのに見落とされがち

被相続人が自宅の土地や建物を所有していた場合、自宅の土地や建物は相続財産になります。

被相続人の財産の大部分は自宅というケースも少なくありません。

被相続人が私道を所有していた場合、私道は相続財産になります。

自宅に至る私道が相続財産になることは見落とされがちです。

通常、自宅の土地や建物を所有している場合、固定資産税を納めます。

条件を満たした場合、私道は固定資産税がかかりません。

固定資産税がかからないから、多くの役所では固定資産税の納税通知書の課税明細書に記載されていません。

所有者本人が私道持分があることを忘れてしまっていることがあります。

所有者本人が忘れてしまっている場合、家族はなおさら認識していないでしょう。

相続が発生した後、財産調査をします。

納税通知書の課税明細書を紛失した場合、役所に固定資産課税台帳兼名寄帳を請求することができます。

固定資産課税台帳兼名寄帳にも、非課税地は記載されていないケースがあります。

固定資産課税台帳兼名寄帳は、固定資産税を課税するための書類です。

税金がかからない土地は、記載されません。

自宅の土地や建物は、個人単独で所有していることが多いです。

私道持分は、共有であることが多いでしょう。

市区町村役場に固定資産課税台帳兼名寄帳を請求する場合、個人単独所有の不動産と共有の不動産は別に請求する必要があるケースがあります。

土地を共有しているケースでは、代表者を届けておく取り扱いの市区町村があります。

共有地の代表者から請求しないと、固定資産課税台帳兼名寄帳を取得できない場合があります。

④名寄帳を発行しない市区町村役場がある

機密性の高い個人情報であることを考慮して、名古屋市など名寄帳を発行していない市区町村役場があります。

名古屋市では、課税明細書と資産明細書で代用します。

課税明細書には、固定資産税が課税される物件のみが記載されます。

資産明細書には、免税点未満で課税されない物件が記載されます。

課税明細書を請求するとき「課税されていない物件がある場合は、資産明細書も出してください」と記載すると取得することができます。

名古屋市では、私道など非課税地は課税明細書と資産明細書のいずれにも記載されません。

⑤権利証や契約書を確認する

被相続人が自宅の所有権を取得したときに権利証が発行されているはずです。

自宅を購入したときに、売買契約書を作成しているでしょう。

権利証や売買契約書を丁寧に確認しましょう。

被相続人が私道を所有していたことが判明します。

2私道の共有持分がないデメリット

自宅のある土地や建物のみ所有していて公道につながる土地を所有していない場合、私道を通行する権利がない状態になります。

現実には、私道であっても公道と同じように人や自動車が通行しているかもしれません。

法律上、私道は土地の所有者の許可なく通行することはできません。

他人の土地を通ることになりますから、所有者とトラブルになるでしょう。

土地の所有者は、自宅などを建てて土地を使用したいはずです。

ライフラインを確保するために、上下水道管やガス管の埋設や引き込み工事をする必要があります。

水道屋もガス屋も他人の土地を勝手に掘り起こすことはできません。

上下水道管やガス管の埋設や引き込み工事をするために、土地の所有者の許可が必要になります。

私道の共有持分がない場合、承諾料や使用料を請求されるかもしれません。

公道につながる土地を所有していない場合、土地の所有者から通行や道路工事を制限されてしまう可能性があります。

公道につながる土地と一緒でなければ、積極的に買おうと思う人が現れません。

公道につながらない土地を買う場合、銀行などの金融機関が融資を拒否します。

金融機関の融資を必要としない人しか買うことができません。

公道につながらない土地は、ほとんどの場合買い手がいません。

事実上、売買ができなくなります。

3私道の共有持分は相続財産なのに見落とされがち

被相続人が自宅の土地や建物を所有していた場合、自宅の土地や建物は相続財産になります。

被相続人の財産の大部分は自宅というケースも少なくありません。

被相続人が私道の共有持分を所有していた場合、私道の共有持分は相続財産になります。

自宅に至る私道が相続財産になることは、見落とされがちです。

通常、自宅の土地や建物を所有している場合、固定資産税を納めます。

条件を満たした場合、私道には固定資産税がかかりません。

多くの役所では固定資産税の納税通知書の課税明細書に記載されていません。

課税明細書は、固定資産税がかかる不動産の明細書だからです。

私道に固定資産税がかからない場合、固定資産税を納めてくださいと通知する必要がありません。

所有者本人が私道の共有持分があることを忘れてしまっていることがあります。

所有者本人が忘れてしまっている場合、家族はなおさら認識していないでしょう。

相続が発生した後、財産調査をします。

納税通知書の課税明細書を紛失した場合、市区町村役場に固定資産課税台帳兼名寄帳を請求することができます。

固定資産課税台帳兼名寄帳にも、非課税地は記載されていないケースがあります。

固定資産課税台帳兼名寄帳は、固定資産税を課税するための書類だからです。

固定資産税がかからない土地は、記載する必要がありません。

自宅の土地や建物は、個人単独で所有していることが多いです。

私道の共有持分は、近隣の人と共有しています。

市区町村役場に固定資産課税台帳兼名寄帳を請求する場合、個人単独所有の不動産と共有の不動産は別に請求する必要があるケースがあります。

土地を共有しているケースでは、代表者を届けておく取り扱いの市区町村役場があります。

共有地の代表者から請求しないと、固定資産課税台帳兼名寄帳を取得できない場合があります。

4私道の共有持分の記載のない遺産分割協議書は有効

自宅の土地や建物は相続財産と認識していても、私道の共有持分は見落としがちです。

被相続人のものは、原則として、相続財産になります。

相続財産は、相続人全員の共有財産です。

自宅の土地や建物のみ分け方の合意をして、遺産分割協議書を作成することができます。

遺産分割協議書は、相続財産全部まとめて作らなければならないといったルールはありません。

自宅の土地や建物のみの合意として有効です。

私道の共有持分については、相続人全員の共有財産のままです。

自動的に、自宅の土地や建物を相続する相続人のものになることはありません。

私道の共有持分について合意がない場合であっても、相続財産全体について合意をやり直す必要はありません。

私道の共有持分を見落としていた場合、あらためて、私道の共有持分について相続人全員で合意をすることができます。

相続財産を分け方の決定は、相続人全員の合意が必要です。

相続人全員の合意ができるのであれば、相続財産全部についてまとめて合意をする必要はありません。

合意できる財産から、順次合意した方が合理的なことがあるでしょう。

一部の相続財産だけ合意した遺産分割協議書であっても問題はありません。

私道の共有持分は、相続財産であることを見落とされがちです。

自宅の土地や建物について分け方の合意をしてから長期間経過した後、私道持分があることに気づくケースが少なくありません。

自宅の土地や建物について分け方の合意をしてから長期間経過した場合、当初の相続人が認知症になっているかもしれません。

認知症になった場合、物事のメリットデメリットを充分に判断することができなくなります。

認知症になった相続人に代わって相続財産の分け方の合意をする後見人を選任してもらわなければなりません。

当初の相続人が行方不明になっているかもしれません。

行方不明の相続人に代わって相続財産の分け方の合意をする不在者管理人を選任してもらわなければなりません。

当初の相続人が死亡しているかもしれません。

当初の相続人の相続人を確定させなければなりません。

私道の共有持分があることに気づいた場合、あらためて相続人を確定する必要があります。

あらためて相続人を確定したら、すみやかに相続財産の分け方の合意をしましょう。

5私道の共有持分の相続を司法書士に依頼するメリット

私道は面積が小さいことがほとんどです。

私道だけでは、資産価値は必ずしも大きくありません。

私道の共有持分は、宅地と一緒に所有することが重要です。

私道の共有持分がない土地は、経済的価値が著しく低くなるからです。

私道の共有持分であっても、公道と同じように人や自動車が通行しているでしょう。

私道を所有している認識が強くないことが多いものです。

私道の共有持分は、紛れもなく土地の所有権の一部です。

宅地と同様に私道の共有持分を相続した場合、相続登記をする必要があります。

自宅の土地や建物について相続登記をしたからといって、私道の共有持分について自動的に相続登記がされることはありません。

私道の共有持分の相続登記がしていない場合、私道の共有持分を所有していることを第三者に主張することができません。

相続登記をすることで、第三者に私道の共有持分を主張することができます。

第三者に所有権を主張できることは、登記の重要なメリットです。

固定資産税が課されていないケースでは、所有していることを見逃しがちです。

相続手続では、このようなトラブルに知らず知らずに巻き込まれてしまいます。

相続手続で不安になったら、司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。

奨学金を残して死亡したときの相続

2023-11-22

1相続人は被相続人の権利義務を引き継ぐ

①プラスの財産もマイナスの財産も相続財産

相続が発生すると、原則として、被相続人の財産は相続人が相続します。

被相続人の権利も義務も、相続人が相続します。

相続人が相続する財産が相続財産です。

相続財産は、プラスの財産とマイナスの財産があります。

相続財産と聞くと、プラスの財産だけイメージしがちです。

プラスの財産もマイナスの財産も、相続財産です。

②相続人は被相続人の借金を相続する

相続が発生した場合、被相続人のものは相続人が相続します。

相続人が相続する財産が相続財産です。

相続財産は、プラスの財産だけではありません。

相続財産には、プラスの財産とマイナスの財産があります。

マイナスの財産は、借金やローンなどです。

お金を借りた人が死亡した場合、借金やローンを返す義務は相続人が引き継ぎます。

お金を借りた人が死亡しても、借金やローンがなくなることはありません。

借金やローンが存続するから、相続人は借金やローンを返さなければなりません。

③相続人は連帯保証人の地位を相続する

お金を借りた人は、借りたお金を返さなければなりません。

お金を借りた人が経済的に困窮した場合、お金を返せなくなることがあります。

お金を返してもらえなくなると、お金を貸した人も困ります。

連帯保証人は、お金を借りた人が返せなくなったときに肩代わりをする人です。

お金を返してもらえなくなった場合、肩代わりの人がお金を返してくれます。

肩代わりの人がいると、安心してお金を貸すことができます。

お金の貸し借りは、貸す人と借りる人の契約です。

連帯保証は、お金を貸す人と連帯保証人の契約です。

お金の貸し借りと連帯保証は、当事者も内容も異なる契約です。

連帯保証人には、肩代わりの義務があります。

連帯保証人が死亡した場合、肩代わりの義務はなくなりません。

肩代わりの義務は、相続人に相続されます。

2奨学生本人が死亡したら

①奨学金返済義務は相続人が引き継ぐ

相続が発生すると、原則として、被相続人の財産は相続人が相続します。

プラスの財産もマイナスの財産も、相続財産です。

被相続人が奨学金を受けている場合があります。

奨学金には、いろいろな種類があります。

奨学金には、給付型と貸与型があります。

給付型奨学金は、返済不要です。

貸与型奨学金は、返済をしなければなりません。

特に利用者が多いのは、日本学生支援機構(JASSO)の奨学金です。

日本学生支援機構(JASSO)の奨学金のほとんどは、貸与型奨学金です。

貸与型奨学金を受けていた奨学生が死亡した場合、原則として、奨学金の返済義務は相続人に相続されます。

②相続人は相続放棄ができる

相続が発生した場合、原則として、被相続人のプラスの遺産もマイナスの遺産も相続人が受け継ぎます。

相続が発生した後、相続人は相続を単純承認するか相続放棄をするか選択することができます。

被相続人のプラスの財産もマイナスの財産も受け継がないことを相続の放棄といいます。

相続放棄を希望する場合、家庭裁判所に対して相続放棄を希望する申立てをします。

相続放棄の申立ては、相続があったことを知ってから、原則として、3か月以内にする必要があります。

家庭裁判所で相続放棄が認められた場合、被相続人の権利義務を相続することはありません。

相続放棄が認められれば、被相続人の奨学金返済義務から逃れることができます。

③相続放棄をしたら次順位相続人に奨学金返還義務

家庭裁判所で相続放棄が認められた場合、被相続人の奨学金返済義務から逃れることができます。

相続放棄が認められた場合、被相続人の奨学金返済義務から逃れることができるのは相続放棄が認められた人だけです。

相続が発生した場合、相続人になる人は法律で決まっています。

相続人になる人は、次のとおりです。

(2)~(4)の場合、先順位の人がいる場合、後順位の人は相続人になれません。

(1)配偶者は必ず相続人になる

(2)被相続人に子どもがいる場合、子ども

(3)被相続人に子どもがいない場合、親などの直系尊属

(4)被相続人に子どもがいない場合で、かつ、親などの直系尊属が被相続人より先に死亡している場合、兄弟姉妹

相続放棄が認められた場合、はじめから相続人でなくなります。

被相続人に子どもがいる場合、子どもが相続人になります。

子ども全員が相続放棄をした場合、子どもがいないものと扱われます。

被相続人に子どもがいない場合だから、親などの直系尊属が相続人になります。

親などの直系尊属が被相続人の奨学金返済義務を引き継ぎます。

被相続人に子どもがいる場合、親などの直系尊属は自分が相続人になると考えていないことがあります。

奨学金は、まとまった金額であることが多いものです。

何も聞いていない場合、奨学金の返済義務を引き継いだと聞いたときにびっくりするでしょう。

相続放棄をした場合、次順位相続人に通知する義務はありません。

次順位相続人に連絡できるのであれば、連絡してあげると親切でしょう。

④相続放棄をしても連帯保証人

家庭裁判所で相続放棄が認められた場合、被相続人の奨学金返済義務から逃れることができます。

相続放棄が認められた場合、被相続人の奨学金返済義務から逃れることができるのは相続放棄が認められた人だけです。

被相続人の奨学金返済義務自体がなくなったわけではないからです。

被相続人が奨学金に申し込みをしたときに、連帯保証人を立てていることがあります。

連帯保証人は、本人が奨学金を返せなくなったときに肩代わりをする人です。

日本学生支援機構(JASSO)の奨学金で連帯保証人になるのは、原則として、父母です。

被相続人が死亡したときに子どもがいない場合、親などの直系尊属が相続人になります。

相続人となった親などの直系尊属が家庭裁判所に手続をして、認められれば相続放棄をすることができます。

相続放棄をした場合、被相続人の奨学金返済義務から逃れることができます。

相続人全員が相続放棄をした場合、被相続人の奨学金返済義務を引き継ぐ人はいなくなります。

本人の相続人に奨学金を返してもらえないから、肩代わりの人が返済することになります。

連帯保証人は、相続放棄をしたから返済を拒むことはできません。

連帯保証は、お金を貸す人と連帯保証人の契約です。

本人が奨学金を返せなくなったときに肩代わりをすることに納得して契約をしているはずです。

連帯保証人の肩代わりの義務は、連帯保証人の固有の義務です。

連帯保証人の固有の義務だから、相続放棄をしても逃れることはできません。

相続とは無関係な連帯保証人の固有の義務だからです。

⑤返還免除には申請が必要

被相続人が奨学金の返済義務を負っていた場合、奨学金の返済義務は相続人に引き継がれます。

日本学生支援機構(JASSO)の奨学金では奨学金の返済義務を負っていた本人が死亡した場合、返還が免除される制度があります。

奨学金の返済義務を負っていた本人が死亡しても、自動的に免除されるわけではありません。

相続人と連帯保証人の連署のうえ、給付奨学金返還免除願を提出する必要があります。

奨学金の返還免除が認められるまで、奨学金の返還義務があります。

奨学金の返還免除が認められるまで、口座から引き落としがされるし払込通知書は届きます。

奨学金の返還免除がされるのは、返還免除がされたときに返還していなかった金額です。

返還免除には申請から承認されるまで、おおむね1~2か月かかります。

審査期間中に返済した分は、返還されません。

奨学金の返済義務が免除された場合、奨学金の返済義務自体がなくなります。

相続放棄をしてもしなくても、相続人は奨学金の返済義務がありません。

連帯保証人が、奨学金の返済義務を負うことはありません。

3連帯保証人が死亡したら

①連帯保証人の地位は相続人が引き継ぐ

相続が発生すると、原則として、被相続人の財産は相続人が相続します。

プラスの財産もマイナスの財産も、相続財産です。

被相続人が連帯保証人であった場合、連帯保証人の地位は相続人が引き継ぎます。

日本学生支援機構(JASSO)の奨学金で連帯保証人になるのは、原則として、父母です。

連帯保証人になった被相続人が死亡した場合、連帯保証人の地位は相続人全員が引き継ぎます。

相続人全員だから、奨学金を受けた人だけではありません。

連帯保証人に複数の子どもがいた場合、子ども全員が連帯保証人の地位を引き継ぎます。

奨学金を受けた人の親が連帯保証人である場合、連帯保証人の子どもは奨学金を受けた人の兄弟姉妹です。

兄弟姉妹は、自分が奨学金を受けたわけでもないのに肩代わりの義務を負うことになります。

親が連帯保証人である場合、子どもは連帯保証人の地位を相続するからです。

奨学金を受けた人が返済義務を果たせない場合、兄弟姉妹が肩代わりをしなければならなくなります。

②相続人は相続放棄ができる

相続人は、相続を単純承認するか相続放棄をするか選択することができます。

相続放棄をした場合、プラスの財産もマイナスの財産も相続することはできません。

肩代わりの義務だけ相続放棄をしたいということはできません。

相続放棄が認められた場合、財産すべて相続することはできなくなります。

③連帯保証人を立てられないときは機関保証

やむを得ない理由があるときは、連帯保証人を機関保証に変更することができます。

連帯保証人が死亡した場合は、やむを得ない理由と言えます。

機関保証とは、保証機関に保証をしてもらうことです。

日本学生支援機構(JASSO)の奨学金では、公益財団法人日本国債教育支援協会が保証をします。

機関保証を受けるためには、保証料の支払いが必要です。

奨学金の返済中に機関保証に変更する条件は、次のとおりです。

(1)延滞をしていないこと

(2)振替口座による返還をしていること

(3)本人が破産、債務整理等の状態でないこと

(4)保証料の一括振込みができること

4奨学金を残して死亡したときの相続を司法書士に依頼するメリット

大切な家族を失ったら、大きな悲しみに包まれます。

やらなければいけないと分かっていても、気力がわかない方も多いものです。

相続財産と聞くと、プラスの財産だけイメージしがちです。

被相続人が奨学金を受けていた場合、ときには500万円以上の金額になることがあります。

奨学金の平均返済期間は、およそ15年です。

想像以上の金額に驚いて奨学金の返済請求を放置することがあります。

奨学金を受けた本人が死亡した場合、奨学金の返済義務が免除されます。

奨学金の返済義務が免除は、あまり知られていません。

奨学金の返済義務が免除に申請が必要なことは、もっと知られていません。

奨学金の返済が延滞していると、原則として、免除が認められなくなります。

このようなことも、あまり知られていません。

司法書士が、必要な手続や適切な対応についてサポートします。

相続手続を済ませていない方は司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。

住宅ローンを残して死亡したときの相続

2023-11-17

1住宅ローンは相続財産

①住宅を相続する人=住宅ローンを相続する人ではない

住宅ローンの対象になっている住宅と住宅ローンは、別の相続財産です。

住宅ローンの対象になっている住宅と住宅ローンを、セットにして考えがちです。

住宅ローンの対象になっている住宅を相続した人が、住宅ローンを自動的に相続するわけではありません。

住宅ローンの対象になっている住宅と住宅ローンは、別の財産だからです。

住宅ローンの対象になっている住宅は、相続人全員の合意で分け方を決めることができます。

住宅ローンは、法定相続分で相続人が相続します。

②住宅ローンを負担する人を相続人で合意できる

住宅ローンは、相続財産です。

相続が発生した場合、相続人に引き継がれます。

相続財産の分け方は、相続人全員の合意で決めることができます。

住宅ローンの分け方を相続人全員で合意することができます。

マイナスの財産の分け方を相続人全員の合意で決めた場合、相続人の内部的な合意に過ぎません。

③債権者は法定相続分で相続人全員に対して請求できる

住宅ローンは、相続財産です。

住宅ローンを返済する人を相続人全員の合意で決めることができます。

相続人全員で住宅ローンを返済する人を決めたとしても、債権者は法定相続分で相続人全員に対して請求することができます。

銀行がローンの法定相続分の返済を請求してきた場合、相続人全員の合意でローンを返済する人を決めたからその人に請求して欲しいということはできません。

ローンを返済する人を決める合意は、相続人の内部的な合意だからです。

銀行には無関係な合意だから、銀行は相続人全員に対して法定相続分で請求することができます。

④債権者が法定相続分で相続人全員に対して請求できる理由

仮に相続人内部の取り決めで銀行からの請求を拒むことができるとすると、銀行が困ります。

相続人には、さまざまな経済状況の人がいるでしょう。

相続人の中には、債務超過の人がいることがあります。

相続人全員の合意で、債務超過の相続人がローンを返済する合意をすることが考えられます。

債務超過の相続人は、債務超過のうえにローンを返済することになります。

自分の債務のうえにローンを返済することはできないでしょう。

債務もローンも返済できなくなったら、自己破産をすることになります。

自己破産をされたら、ローンは返済してもらえません。

他の相続人はプラスの財産を受け取ってマイナスの財産を免れることができてしまいます。

銀行からすると、理不尽でしょう。

このような理不尽を許さないため、銀行は法定相続分で相続人全員に対してローンの返済を請求することができるのです。

⑤銀行に返済した後に住宅ローンを負担する人に請求できる

住宅ローンの対象になっている住宅を相続した人以外の人にも、銀行はローンの返済を求めることができます。

住宅ローンの対象になっている住宅を相続していないのに、ローンを返済したくないなどと文句を言うことはできません。

銀行にローンを返済した人は、ローンを相続すると合意した相続人に払った分を請求することができます。

⑥住宅ローンの名義変更は銀行の承諾

相続人全員で合意しても、銀行は相続人全員に対して法定相続分でローンの返済を求めることができます。

銀行の承諾がある場合、一部の相続人が住宅ローンを引き継ぐことができます。

住宅ローンを組む場合、銀行は対象になっている住宅を担保に取っています。

住宅ローンを引き継ぐ相続人に問題がなければ、多くの場合、銀行は承諾するでしょう。

住宅ローンを引き継ぐ相続人の返済能力に多少の問題があった場合でも、担保権を実行することができるからです。

担保権を実行するとは、担保に取った住宅を売却して売却代金から借金を返してもらうことです。

⑦抵当権の変更登記が必要になる

ローンの名義変更をした場合、登記が必要になります。

抵当権債務者が変更になるからです。

住宅ローンの対象になっている住宅の相続登記の他に、忘れずに抵当権の変更登記をしましょう。

2団体信用生命保険で住宅ローンが免除される

①住宅ローンは団体信用生命保険で返済できる

被相続人が住宅ローンを組む場合、団体信用生命保険に加入していることがあります。

団体信用生命保険は、加入者が住宅ローンを返済中に死亡や障害状態になったとき、保険金によって住宅ローンが弁済される保険です。

住宅ローンを組む場合、団体信用生命保険の加入が条件になっているケースが多いものです。

団体信用生命保険加入が任意である場合や年齢制限などで加入できない場合があります。

団体信用生命保険に加入している場合、契約書面が渡されているはずです。

契約書面が見つからない場合、借入先の金融機関に尋ねてみましょう。

借入先の金融機関で答えてもらえない場合、住宅金融支援機構のコールセンターに確認することができます。

団体信用生命保険に加入していた場合、保険金で住宅ローンの返済が不要になります。

②団体信用生命保険の保険金が支払われるのは1~2か月後

団体信用生命保険の保険金は、死亡後すぐに支払われるわけではありません。

保険金の請求後、保険会社の審査があるからです。

通常、保険会社の審査は1~2か月ほどかかります。

保険会社の審査中は、住宅ローンの返済が必要です。

住宅ローンの債務者が死亡した場合、収入が途絶えていることが多いでしょう。

保険金が支払われれば、審査中の返済分は返金されます。

後から返ってくるとは言え、ひとまず返済をしなければならないことを知っておく必要があります。

③住宅ローンに延滞があると団体信用生命保険の保険金が支払われない

団体信用生命保険に加入した場合、保険料が発生します。

団体信用生命保険の保険料は、住宅ローンの返済金に含まれています。

住宅ローンの返済が滞った場合、団体信用生命保険の保険料も滞ります。

一定期間保険料が滞納になった場合、団体信用生命保険は失効になります。

団体信用生命保険が失効した後、住宅ローン債務者が死亡した場合、保険金は支払われません。

④団体信用生命保険で完済できたら抵当権抹消登記

住宅ローンがなくなった場合、銀行の抵当権がなくなります。

抵当権は自動で抹消になりますが、抵当権の登記は自動で抹消されることはありません。

銀行などが自動で手続してくれることはほとんどありません。

法務局が自動で消してくれることもありません。

住宅ローンの対象になっている住宅の相続登記の他に、忘れずに抵当権の抹消登記を申請しましょう。

3住宅ローンは相続放棄ができる

相続人が相続放棄をした場合、被相続人のプラスの財産もマイナスの財産も引き継ぐことがなくなります。

住宅を売却しても返済の見込みがない場合は、相続放棄をするといいでしょう。

相続放棄は、家庭裁判所に対してする手続です。

相続発生を知ってから、3か月以内に手続をしなければなりません。

相続放棄をした場合、住宅ローンから免れますが住宅も相続することはできなくなります。

4住宅ローンの相続を司法書士に依頼するメリット

大切な家族を失ったら、大きな悲しみに包まれます。

やらなければいけないと分かっていても、気力がわかない方も多いです。

相続財産の大部分は自宅不動産というケースはとても多いです。

資産としての住宅だけに注目しがちですが、住宅ローンが残っている場合もあります。

住宅ローンが残っている住宅となると、住宅と住宅ローンを一体化して考えがちです。

住宅と住宅ローンは一体化して考える面と一体化して考えることができない面があります。

住宅ローンは銀行との関係があるからです。

住宅ローンの対象になっている住宅を相続しないのに、住宅ローンの請求を受ける可能性があります。

このようなことはあまり知られていません。

住宅ローンの対象になっている住宅の相続登記をすることには気づけても、抵当権の登記が必要になることは見落としがちです。

何となく銀行や法務局が自動でやってくれているはずだと思うかもしれません。

銀行が自動でやってくれることはほとんどありません。

法務局は申請しないと何もしてくれません。

団体信用生命保険で住宅ローンが完済になった場合、抵当権は自動で消えます。

抵当権は自動で消えますが、抵当権の登記は自動で消えません。

住宅ローン完済後、長期間経過して、抵当権がついたままであることが発覚します。

長期間経過してから抵当権を抹消するのは、手間も時間も負担になることが多いです。

司法書士が、必要な手続や適切な対応についてサポートします。

相続登記を済ませていない方は司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。

名寄帳で相続した不動産を調査

2023-10-09

1名寄帳は所有者ごとの不動産一覧表

名寄帳は「なよせちょう」と読みます。

名寄帳とは、土地や家屋を所有者ごとにまとめた一覧表です。

市町村が税金をかけるために備えている帳簿から一覧表にまとめてくれた書類です。

市町村によっては「土地家屋固定資産課税台帳」「土地家屋名寄帳」などのさまざまな呼び方をしています。

「名寄帳」と言えば、役所の人は分かってくれますから心配は不要です。

固定資産課税台帳には、次のような項目が記載されています。

①所有者の氏名や住所

②不動産の所在や状況

③固定資産評価額

④固定資産税額

名寄帳は、不動産の所有者ごとに抽出して一覧表に取りまとめた書類です。

その市町村が把握している不動産の状況が一目で分かるので、とても便利です。

2名寄帳の取得方法

①名寄帳を取得できる人

名寄帳は、土地や家屋を所有者ごとにまとめた一覧表です。

その人の財産に関する重要な書類です。

基本的には、所有者本人だけが交付請求をすることができます。

所有者本人が死亡した場合、相続人から交付請求をすることができます。

②名寄帳を取得するときに必要な書類

相続人が交付請求をする場合、次の書類が必要です。

(1)所有者本人の除籍謄本

(2)交付請求をする人が相続人であることが分かる戸籍謄本

(3)交付請求をする人の本人確認書類

③名寄帳の申請先

名寄帳は、各市町村ごとに作られます。

土地や家屋が所在する市町村ごとに手続をします。

市町村役場の固定資産税を担当する係へ交付請求をする必要があります。

政令指定都市では、各市税事務所で手続をします。

窓口まで出向いて交付請求をすることもできるし、郵送請求をすることもできます。

郵送請求する場合、日中連絡ができる電話番号を明記しておきましょう。

返信用の封筒と切手を同封しておくと、送り返してもらえます。

手続をするときに、単独所有の物件と共有の物件のいずれも交付してくださいとお願いするといいでしょう。

④名寄帳の交付手数料

名寄帳を発行してもらうためには、手数料を納めなければなりません。

市町村ごとに違いますが、300円前後であることが多いです。

名寄帳を郵送で交付請求する場合、手数料は郵便小為替で納入します。

郵便小為替は、郵便局で購入します。

名寄帳は、単独所有の物件と共有の物件は別々に発行されます。

手数料が別々に計算されます。

3代理人が名寄帳の交付請求するときは委任状が必要

①名寄帳の交付請求を依頼した証明として委任状が必要

名寄帳は、その人の重要な財産に関する書類です。

名寄帳の交付請求を代理人に依頼する場合、委任状が必要です。

所有者本人が依頼することもできるし、所有者本人が死亡した場合は相続人が依頼することもできます。

司法書士などの専門家に遺産整理の一環として依頼する場合、委任状は司法書士が用意します。

自分で委任状を用意する必要はありません。

内容を確認して、署名押印をするだけで済みます。

②名寄帳の交付請求の委任状は認印で良い

名寄帳や課税明細書、評価証明書の取得を代理人に依頼するだけであれば、委任状の押印は認印で構いません。

遺産整理の一環として依頼する場合、預金の解約なども一緒に依頼することがあるでしょう。

金融機関などの手続がある場合、実印で押印をする必要があります。

③一部の相続人から代理人に依頼できる

相続が発生した場合、相続財産は相続人全員の共有財産になります。

相続財産の分け方を決めるためには、相続人全員の合意が不可欠です。

名寄帳の交付請求は、相続人全員でする必要はありません。

一部の相続人が交付請求をすることができます。

名寄帳の交付請求を代理人に依頼する場合、一部の相続人から委任状を出してもらえば問題がありません。

4名寄帳の見方のポイント

名寄帳は、固定資産課税台帳の内容を一覧表にまとめたものです。

固定資産税を課税するための情報がたくさん書いてあります。

相続財産を調査する場合、次の項目に注目するといいでしょう。

①不動産に関する情報

(1)不動産が土地であるか家屋であるか

(2)不動産の所在地

(3)土地であれば、地積、地目

(4)家屋であれば、家屋の種類、面積

(5)単独所有であるか共有であるか

②所有者に関する情報

(1)所有者の住所

(2)所有者の氏名

③固定資産税評価額

5名寄帳にはあるのに課税明細書に書いてない不動産がある

不動産を持っていると、固定資産税がかかります。

毎年5月ごろになると固定資産税の納税をするべき人に対して、納付書が送られます。

不動産を共有している場合、代表者にだけ送られます。

納付書の封筒に、納税通知と課税明細書が同封されています。

課税明細書は、相続した不動産を調査をするときの有力な資料です。

課税明細書には、固定資産税が非課税の不動産については記載がされていません。

所有している不動産が免税点未満の場合、課税するべき固定資産税がありません。

納めてもらう固定資産税がない場合、納税通知書と課税明細書は発行されません。

納税通知書と課税明細書は、市町村から固定資産税を納めてくださいというお知らせだからです。

自宅に隣接する公衆用道路を、個人で所有している場合や近隣の人と共有している場合があります。

一定の条件を満たしている場合、公衆用道路は固定資産税が課されません。

固定資産税が課税されていないため、私道を所有していることを見落としがちです。

自宅に隣接する公衆用道路を、個人で所有している場合や近隣の人と共有している場合、相続財産になります。

相続財産だから、相続財産の分け方を決めるため相続人全員の合意が不可欠です。

自宅の分け方について合意をした場合でも私道について合意を漏らしてしまうことがあります。

課税明細書を発見したら、念のため、市町村から名寄帳を取り寄せると安心です。

6名寄帳を見るときの注意点

①名寄帳は1月1日現在の情報

名寄帳は、固定資産課税台帳の内容を一覧表にまとめたものです。

固定資産税は、その年の1月1日の所有者が納税する義務があります。

固定資産税を課税するための書類だから、1月1日以降の変更については反映しません。

例えば、2月に取得した不動産は名寄帳に記載されていません。

2月に手放した不動産は記載されています。

②発行した市町村以外の不動産は記載されていない

名寄帳は、市町村が土地や家屋をまとめた一覧表です。

他の市町村のことは分からないから、名寄帳に記載されていません。

不動産がたくさんある場合、各地に散らばっていることがあります。

市町村ごとに名寄帳の交付請求をしなければなりません。

③法人名義の不動産は記載されていない

被相続人が会社を経営していた場合があります。

不動産を経営していた会社名義にしていることがあるでしょう。

社長と会社は、別人で扱われます。

社長個人の名寄帳に会社名義の不動産は記載されません。

④名寄帳を発行していない市町村がある

名寄帳は、その人の重要な財産に関する書類です。

機密性の高い個人情報であることを考慮して、名寄帳を発行していない役所があります。

名古屋市などでは、名寄帳を発行していません。

名古屋市では、課税明細書と資産明細書で代用します。

課税明細書には、固定資産税が課税される物件のみが記載されます。

資産明細書には、免税点未満で課税されない物件が記載されます。

課税明細書を請求するとき「課税されていない物件がある場合は、資産明細書も出してください」と記載すると取得することができます。

名古屋市では、私道など非課税地は課税明細書と資産明細書のいずれにも記載されません。

7財産調査を司法書士に依頼するメリット

相続が発生したら、遺族は大きな悲しみに包まれます。

大きい悲しみのなかで、もれなく迅速に相続財産を調査するのは身体的にも精神的にも大きな負担になります。

このような負担の大きい財産調査を司法書士などの専門家に依頼することができます。

遺族のお疲れも、軽減されるでしょう。

その後の相続手続もスムーズになります。

被相続人の財産について、相続人もあまり詳しく知らないという例は意外と多いものです。

悲しみの中で被相続人の築いてきた財産をたどるのは切なく、苦しい作業になります。

調査のためには銀行などの金融機関から、相続が発生したことの証明として戸籍等の提出が求められます。

このような戸籍等の取り寄せも含め、手続をおまかせいただけます。

お仕事や家事でお忙しい方や高齢、療養中などで手続きが難しい方は、手続を丸ごとおまかせできます。

ご家族にお世話が必要な方がいて、頻繁に家を空けられない方からのご相談もお受けしております。

財産調査でお疲れが出る前に、司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。

相続土地国庫帰属制度を利用する要件

2023-04-05

1相続土地国庫帰属制度とは

相続した土地の所有権を手放して国に引き取ってもらう制度ができました。

相続土地国庫帰属制度とは、相続した土地の所有権を手放して国に引き取ってもらう制度です。

相続土地国庫帰属制度は、令和5年4月27日からスタートします。

望まないで不動産を所有している場合、管理が負担になりがちです。

管理負担の重さから、適切な管理ができなくなり不動産が荒廃します。

適切な相続登記がされず、所有者不明土地の対策になると期待されています。

2相続土地国庫帰属制度を利用できる人とは

①土地の単独所有者で相続や遺贈で土地を受け継いだ人

相続土地国庫帰属制度とは、相続した土地の所有権を手放して国に引き取ってもらう制度です。

だれでも利用できるわけではありません。

相続土地国庫帰属制度を利用できるのは、土地を相続で取得した人です。

法定相続人が土地を遺贈で取得した場合は、相続土地国庫帰属制度を利用できます。

遺贈とは、被相続人が遺言によって、法定相続人や法定相続人以外の人に、財産を譲ってあげることです。

相続人以外の人が遺贈によって財産を譲ってもらうことができます。

遺贈によって土地を譲ってもらった人が相続人の場合、相続土地国庫帰属制度を利用できます。

遺贈によって土地を譲ってもらった人が相続人でない場合、相続土地国庫帰属制度を利用できません。

②土地の単独所有者で土地の共有持分を相続や遺贈で土地を受け継いだ人

被相続人とお金を出し合って、土地を購入することがあるでしょう。

被相続人と土地を共有している場合があります。

被相続人の土地の共有持分が相続財産になります。

土地の共有者の一方が相続人である場合、被相続人の土地の共有持分を相続します。

相続人は相続によって単独所有者になります。

土地の共有持分の一部は売買によるものですが、残りは相続によって受け継いだものです。

土地の単独所有者は土地の所有権の一部を相続や遺贈によって受け継いだ場合、相続土地国庫帰属制度を利用できます。

土地の所有権の一部を遺贈によって譲ってもらった人が相続人の場合、相続土地国庫帰属制度を利用できます。

土地の所有権の一部を遺贈によって譲ってもらった人が相続人でない場合、相続土地国庫帰属制度を利用できません。

③土地の共有者で土地の共有持分を相続や遺贈で土地を受け継いだ人

被相続人と第三者がお金を出し合って、土地を購入することがあるでしょう。

被相続人と第三者が土地を共有している場合があります。

被相続人の土地の共有持分が相続財産になります。

相続人が被相続人の土地の共有持分を相続します。

相続人は第三者と土地を共有することになります。

相続土地国庫帰属制度を利用する場合、土地の共有持分を対象にすることはできません。

土地の共有者の一部が相続や遺贈によって土地を受け継いだ場合、他の共有者全員が共同申請をすることで相続土地国庫帰属制度を利用できます。

他の共有者は、株式会社などの法人でも差し支えありません。

他の共有者が土地を取得した理由は、売買や贈与であっても差し支えありません。

3相続土地国庫帰属制度を利用できる土地とは

相続土地国庫帰属制度とは、相続した土地の所有権を手放して国に引き取ってもらう制度です。

国に引き取ってもらえるのは、土地だけです。

建物は、引き取ってもらえません。

宅地や雑種地だけでなく、山林、原野や農地を引き取ってもらうことができます。

農地の取引には、通常、農業委員会の許可等が必要になります。

相続土地国庫帰属制度を利用する場合、農業委員会の許可等は不要です。

土地であればどんな土地でも引き取ってもらえるわけではありません。

相続で取得した土地だけです。

法定相続人が遺贈で取得した土地は、相続土地国庫帰属制度を利用できます。

売買や贈与で取得した土地は、引き取ってもらうことができません。

原野商法の被害を受けて所有している土地は、引き取ってもらうことができません。

被相続人が原野商法の被害を受けて所有していた土地は、相続人が相続した後に、引き取ってもらうことができます。

4相続土地国庫帰属制度で門前払いになる土地とは

次の土地は、国に引き取ってもらうことはできません。

①建物がある土地

国に引き取ってもらうことができるのは、土地のみです。

建物は引き取ってもらえません。

建物がある場合、土地も引き取ってもらえません。

建物自体は取り壊されているのに、建物の登記が残っている場合があります。

建物が取り壊されている場合、建物滅失登記が必要です。

②担保権や利用権がある土地

お金の貸し借りをするとき、返済が滞るときに備えて不動産などを担保に差し出すことがあります。

お金を貸した人は、不動産を担保に取ります。

順調に返済されているときは、不動産は担保に差し出した人が使うことができます。

返済が滞った場合、担保に取った人は不動産を取り上げて売り払うことができます。

不動産の売却金から貸したお金を返してもらうことができます。

担保権とは、返済が滞った場合に取り上げて売り払うことができる権利です。

担保権がある土地を国に引き取ってもらえるとすると、国の財産が急に取り上げられることになりかねません。

担保権がある不動産を国に引き取ってもらうことはできません。

利用権とは、地上権、地役権、賃借権など土地を使う権利のことです。

土地を使う権利がある人がいる土地を国に引き取ってもらえるとすると、国は土地を使う権利について配慮をしなければならなくなります。

利用権がある土地を国に引き取ってもらうことはできません。

③他人が利用する土地

地上権、地役権、賃借権など土地を使う権利がなくても、他人が土地を使用することが予定されている土地があります。

他人の使用が予定されている土地とは、次の土地です。

以下に該当する土地を国に引き取ってもらうことはできません。

(1)通路の土地

現在通路として使われている土地です。

(2)墓地内の土地

墓地として都道府県知事の許可を受けた土地です。

(3)境内地

宗教法人が所有していない土地も含まれます。

(4)水道、悪水路、ため池の土地

水道の水源地、貯水池として現在使用されている土地です。

かんがい用や悪水路として現在使用されている土地です。

生活用水、農業用水、工業用水のための水路を含みます。

耕地かんがい用ため池、防災用用水貯留池として現在使用されている土地です。

④土壌汚染など有害物質がある土地

土壌汚染がある土地は、有害物質の除去に多大な費用がかかります。

土壌汚染がある土地を国に引き取ってもらうことはできません。

⑤境界不明の土地

隣接する土地と境界について争いがある土地です。

申請する人以外に、その土地の所有権を主張する人がいる土地も含まれます。

このような土地を国に引き取ってもらえるとすると、国が争いに巻き込まれて土地が管理できなくなります。

測量や境界確認書を提出する必要はありませんが、争いがないことが条件です。

申請をした場合、法務局から隣接所有者に境界争いがないかお尋ねがあります。

境界不明の土地を国に引き取ってもらうことはできません。

5相続土地国庫帰属制度の審査で引き取ってもらえない土地とは

次の土地は、審査のうえで承認してもらうことはできません。

①崖地

勾配30度以上で、かつ、高さ5メートル以上の土地で、通常の管理に過分の費用や労力がかかる土地を国に引き取ってもらうことはできません。

通常の管理に過分の費用や労力がかかる土地とは、土砂災害が起きる土地や擁壁工事が必要な土地などです。

②工作物、車両、樹木がある土地

工作物、車両、樹木があるだけで引き取ってもらえない土地になるわけではありません。

工作物、樹木があって、かつ、土地の管理処分が困難になる場合、国に引き取ってもらえなくなります。

民家、公道、線路近くで倒木のおそれがある場合や災害防止のため定期的伐採が必要になる場合は、国に引き取ってもらえません。

放置すると周辺の土地に侵入する竹がある場合、定期的伐採が必要になるから、国に引き取ってもらえません。

建物がある土地は、国に引き取ってもらえません。

建物と言えないまでも、廃屋がある土地も、国に引き取ってもらえません。

放置車両がある土地は車両、国に引き取ってもらえません。

③地下にある有体物の除去が必要な土地

産業廃棄物や建築資材、建物基礎やコンクリート片がある土地は、国に引き取ってもらえません。

古い水道管、浄化槽、井戸、大きな石がある土地は、国に引き取ってもらえません。

④袋地、不法占拠者がいる土地

他の土地を通らないと行動に出られない土地は、国に引き取ってもらえません。

第三者が不法占拠している土地は、国に引き取ってもらえません。

別荘管理組合から管理費用を請求されるなどトラブルになる可能性の高い土地は、国に引き取ってもらえません。

⑤管理に費用や労力が多くかかる土地

(1)災害の危険がある土地

土砂崩れ、地割れ、陥没、水の漏出などの災害が起きるおそれがある土地は、国に引き取ってもらえません。

(2)鳥獣、病害虫などが生息している土地

スズメバチ、ヒグマなどにより周辺土地に被害が起きるおそれがある土地は、国に引き取ってもらえません。

(3)森林整備が必要な土地

造林、間伐、保育が必要な山林は、国に引き取ってもらえません。

(4)国に金銭負担が発生する土地

(5)所有者が負担すべき債務を国が負担することになる土地

土地改良事業の負担金などが発生する土地は、国に引き取ってもらえません。

6相続土地国庫帰属制度の利用を司法書士に依頼するメリット

土地を証有している場合、管理をしなければなりません。

希望せずに土地を所有している場合、管理が負担になることがあります。

管理負担の重さから、適切な管理が難しくなります。

希望しないのであれば、相続放棄をすることができます。

相続放棄をしたら、他の財産を相続することもできなくなります。

管理負担の重い土地だけ選択して、放棄をすることはできません。

相続土地国庫帰属制度を利用した場合、管理負担の重い土地だけ選択して利用することができます。

相続人にとって選択肢が増えたと言えるでしょう。

相続土地国庫帰属制度を利用するハードルは低いものではありません。

条件に合う土地だけ国は引き取ってくれます。

相続は、家族ごとに事情が違います。

制度をよく知って、適切に対応しましょう。

適切な選択ができるように司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。

相続土地国庫帰属制度とは

2023-02-27

1相続土地国庫帰属制度とは

相続した土地の所有権を手放して国に引き取ってもらう制度ができました。

相続土地国庫帰属制度とは、相続した土地の所有権を手放して国に引き取ってもらう制度です。

相続土地国庫帰属制度は、令和5年4月27日からスタートします。

望まないで不動産を所有している場合、管理が負担になりがちです。

管理負担の重さから、適切な管理ができなくなり不動産が荒廃します。

適切な相続登記がされず、所有者不明土地の対策になると期待されています。

2相続土地国庫帰属制度を利用できる人とは

相続土地国庫帰属制度とは、相続した土地の所有権を手放して国に引き取ってもらう制度です。

だれでも利用できるわけではありません。

相続土地国庫帰属制度を利用できるのは、土地を相続で取得した人です。

法定相続人が土地を遺贈で取得した場合は、相続土地国庫帰属制度を利用できます。

相続土地国庫帰属制度が始まる前に相続した人であっても、制度を利用することができます。

3相続土地国庫帰属制度を利用できる土地とは

相続土地国庫帰属制度とは、相続した土地の所有権を手放して国に引き取ってもらう制度です。

国に引き取ってもらえるのは、土地だけです。

建物は、引き取ってもらえません。

宅地や雑種地だけでなく、山林、原野や農地を引き取ってもらうことができます。

農地の取引には、通常、農業委員会の許可等が必要になります。

相続土地国庫帰属制度を利用する場合、農業委員会の許可等は不要です。

土地であればどんな土地でも引き取ってもらえるわけではありません。

相続で取得した土地だけです。

法定相続人が遺贈で取得した土地は、相続土地国庫帰属制度を利用できます。

売買や贈与で取得した土地は、引き取ってもらうことができません。

原野商法の被害を受けて所有している土地は、引き取ってもらうことができません。

被相続人が原野商法の被害を受けて所有していた土地は、相続人が相続した後に、引き取ってもらうことができます。

4相続土地国庫帰属制度で門前払いになる土地とは

次の土地は、国に引き取ってもらうことはできません。

①建物がある土地

②担保権や利用権がある土地

③他人が利用する土地

④土壌汚染など有害物質がある土地

⑤境界不明の土地

5相続土地国庫帰属制度の審査で引き取ってもらえない土地とは

次の土地は、審査のうえで承認してもらうことはできません。

①崖地

②工作物、車両、樹木がある土地

③地下にある有体物の除去が必要な土地

④袋地、不法占拠者がいる土地

⑤管理に費用や労力が多くかかる土地

(1)災害の危険がある土地

(2)害獣などが生息している土地

(3)森林整備が必要な土地

(4)国に金銭負担が発生する土地

(5)所有者が負担すべき債務を国が負担することになる土地

6相続土地国庫帰属の承認申請書の注意点

①提出先は土地の所在地の法務局本局のみ

相続土地国庫帰属制度の利用を希望する場合、相続土地国庫帰属の承認申請書を提出します。

提出先は、土地が所在する法務局本局の国庫帰属申請窓口です。

法務局の出張所や支局に提出することはできません。

②相続土地国庫帰属の承認申請書は自分で作成

相続土地国庫帰属の承認申請書は専用の様式があるわけではありません。

相続土地国庫帰属の承認申請書は、自分で作成する必要があります。

自分で作る代わりに、弁護士、司法書士、行政書士に作成してもらうことができます。

申請代理人になることができるのは、法定代理人のみです。

法定代理人とは、親権者、未成年後見人、成年後見人などです。

弁護士、司法書士、行政書士であっても、申請代理人になることはできません。

③相続土地国庫帰属の承認申請書は郵送提出ができる

相続土地国庫帰属の承認申請書は、窓口に出向いて提出することもできるし郵送で提出することもできます。

郵送で提出する場合は、書留郵便かレターパックプラスにします。

表書きに「国庫帰属申請書在中」などと記載して、相続土地国庫帰属の承認申請書であることが分かるようにします。

本人が相続土地国庫帰属の承認申請書を作成し実印を押印した場合、家族が使者として法務局の窓口に持っていって提出することができます。

家族が使者として法務局の窓口に持っていった場合、申請書の補正はできません。

④相続土地国庫帰属の承認申請書には手数料がかかる

相続土地国庫帰属の承認申請には、手数料がかかります。

手数料は、収入印紙で納入します。

収入印紙は、法務局が割印をします。

申請者は貼るだけで、割印はしません。

相続土地国庫帰属の承認申請書を取り下げた場合であっても却下や不承認になった場合でも、手数料は返してもらえません。

7相続土地国庫帰属の承認申請書の添付書類

添付書類のうち印鑑証明書以外の書類は、原本還付してもらうことができます。

原本還付を希望する場合、書類のコピーを一緒に提出します。

書類のコピーに「原本に相違ありません」と記載する必要があります。

相続土地国庫帰属の承認申請書の添付書類は、次のとおりです。

①土地の位置及び範囲を明らかにする図面

国土地理院地図や登記所備付地図等に、申請者が認識している土地の範囲をマーキングする方法で作成します。

②隣接する土地との境界点を明らかにする写真

①の土地の図面に境界点の場所を記載して、境界点の写真を添付します。

どの境界点の写真であるか分かるように写真に番号を付けて①の土地の図面に記載します。

境界点に目印がない場合、ポール、プレートなどで目印を設置して写真を取ります。

現地調査で確認してもらうためです。

③土地の形状を明らかにする写真

近景と遠景の写真を添付します。

建物や工作物の有無が分かるように、複数の写真を添付します。

④印鑑証明書

印鑑証明書の期限はありません。

印鑑証明書は、原本還付をしてもらうことはできません。

⑤相続人が遺贈を受けたことを証する書面

⑥土地の所有権登記名義人(表題部所有者)から相続又は一般承継があったことを証する書面

登記名義人と申請人が異なる場合に必要になります。

⑦固定資産税評価額証明書(任意)

⑧承認申請土地の境界等に関する資料(任意)

8承認された土地だけ国に引き取ってもらえる

①国に引き取ってもらうために審査がある

法務局は、相続土地国庫帰属の承認申請書を受け付けたら書面審査をします。

相続土地国庫帰属制度で門前払いになる土地に該当した場合、却下になります。

書面審査を通過したら、実地調査をします。

申請者に実地調査の同行を求められる場合があります。

相続土地国庫帰属制度の審査で引き取ってもらえない土地に該当した場合、不承認になります。

承認された土地だけ国に引き取ってもらえます。

②審査にかかる期間は半年~1年程

相続土地国庫帰属制度の標準審査期間は、半年~1年程です。

相続土地国庫帰属制度の審査期間中に申請人が死亡した場合、申請者の地位を承継することができます。

申請者の地位を承継する申出は、相続があった日から60日間です。

申請者の地位を承継する申出には、相続があったことが分かる書類が必要です。

申請者の地位を承継する申出がない場合、申請は却下されます。

③承認になったら負担金を納めなければならない

相続土地国庫帰属制度で国が引き取ってくれる場合、負担金を納付しなければなりません。

負担金は、土地管理費の10年分相当額とされています。

法務省のホームページに計算シートが掲載されています。

相続土地国庫帰属の承認がされた場合、負担金は30日以内に納入しなければなりません。

負担金が30日以内に納入されない場合、相続土地国庫帰属の承認は失効します。

隣接する複数の土地が同じ区分の土地の場合、一つの土地として負担金の計算をしてもらうことができます。

一つの土地として負担金の計算をしてもらうためには、合算負担金申出書を提出する必要があります。

合算負担金申出書を提出できるのは、申請書提出から承認がされるまでの間です。

9相続土地国庫帰属制度の利用を司法書士に依頼するメリット

相続土地国庫帰属制度を利用した場合、負担の重い土地を国に引き取ってもらうことができます。

管理負担から解放される選択肢が増えたと言えるでしょう。

一方で、相続土地国庫帰属制度を利用できる土地には、条件があります。

他に相続する人がいるのであれば、相続放棄をした方がいいかもしれません。

だれも相続したがらない場合、不動産の押し付け合いになりがちです。

相続人全員が相続放棄をした場合、相続財産管理人が選任されるまで管理義務があります。

家庭裁判所に相続財産管理人を選任してもらうには、予納金の納付が必要です。

予納金は、100万円以上になる場合があります。

どのような選択をするのがいいのかは、ケースバイケースと言えます。

スムーズに相続手続を進めたい方は、司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。

貸したお金と抵当権を相続

2022-12-05

1被相続人が貸したお金は相続財産

マイホームを購入したときに、銀行などから融資を受けることがあるでしょう。

お金の貸し借りというと、銀行などの金融機関でローンを組むことをイメージするかもしれません。

銀行などの金融機関からお金を借りるだけでなく、個人間でお金の貸し借りをすることがあります。

個人間でお金を借りることも、個人間でお金を貸してあげることもあるでしょう。

被相続人がお金の貸し借りをしているケースがあります。

第三者にお金を貸している場合、お金を借りた人から貸したお金を返してもらう権利があります。

被相続人がお金を貸していた場合、被相続人はお金を返してもらう権利を持っていたはずです。

お金を貸した人に相続が発生した場合、貸したお金を返してもらう権利は相続財産になります。

貸したお金を返してもらう権利は相続財産として、相続人に相続されます。

お金を貸した人が死亡した場合に、借金が消えてなくなることはありません。

相続人は、貸したお金を返してもらう権利を相続しますから、お金を借りた人に対して、貸したお金を返すように請求することができます。

2抵当権は相続財産

第三者に対してまとまった額を貸してあげる場合、借金の返済が滞ったときに備えて、不動産を担保に取ります。

返済が滞ったときに備えて、担保にする権利を抵当権と言います。

お金を貸した人を債権者と言います。

担保に取った人を抵当権者と言います。

お金を貸した人が担保に取りますから、債権者は抵当権者です。

貸したお金を返してもらう権利は相続財産として、相続人に相続されます。

担保にする権利は相続財産として、相続人に相続されます。

抵当権は、借金の返済が滞ったときに備えて、担保に取る権利です。

具体的には、借金の返済が滞った場合、担保に取った不動産を競売にかけて売却代金から優先的に借金を返してもらうことができます。

担保に取った不動産を競売にかけて売却代金から優先的に借金を返してもらう権利が相続されます。

お金を貸した人が死亡した場合に、担保に取る権利が消えてなくなることはありません。

担保に取る権利は借金が滞ったときの備えですから、借金が消えるときまで一緒についています。

貸金債権と抵当権は、抵当権者(債権者)の財産です。

貸金債権と抵当権は、抵当権者(債権者)のプラスの財産のひとつとして、抵当権者(債権者)の相続人に受け継がれます。

原則として、貸金債権と抵当権は一緒についていくことになります。

3被相続人が貸したお金を相続人が返してもらうことができる

①まずは遺産分割協議

貸金債権と抵当権は、相続財産になります。

相続財産の分け方は、相続人全員で話し合いによる合意が不可欠です。

貸金債権と抵当権を、だれが引き継ぐのか決めましょう。

貸金債権と抵当権を相続する人の合意がまとまったら、合意内容を書面に取りまとめます。

②債権者が死亡しても時効は進行する

お金を貸した人が死亡した場合、生きているときと同様に時効は進行します。

時効期間が経過すると、お金を借りていた人は時効を援用することができます。

債務者が時効を援用した場合、貸したお金を返してもらうことができなくなります。

時効が完成しないようにするために、時効中断する必要があります。

時効中断の代表例は、債務者に対して、お金を返してくださいと請求することです。

単に、お手紙などでお金を返してくださいと請求した場合、6か月以内に裁判などの強力な手続をしなければなりません。

6か月以内に裁判などの強力な手続をした場合、時効は中断します。

時効が中断した場合、今まで経過した期間が無効になります。

今まで経過した期間が無効になったら、あらためて、時効が進行します。

③相続人が請求すると債務者からあやしまれる

個人間でお金の貸し借りをする場合、親しい関係の人であることが多いでしょう。

お金を貸した人とは親しい間柄だったとしても、お金を貸した人の相続人と面識がないことがあります。

被相続人が貸したお金は、相続人が返してもらうことができます。

お金を貸した人の相続人と面識がない場合、被相続人が貸したお金を返して欲しいと言われても戸惑うでしょう。

本当にお金を貸してくれた人の相続人なのか、不安になります。

お金を貸した人が死亡した後、無関係の人なのに相続人と称して、被相続人が貸したお金を返して欲しいと要求するケースがあるからです。

本当は無関係の人なのに、借りたお金を返すつもりで安易にお金を支払った場合、返済したとは認められません。

本当の相続人から被相続人が貸したお金を返して欲しいと請求された場合、あらためて、返済しなければなりません。

お金を返済する人が安易にお金を支払った場合、二重払いをしなければなりません。

借りたお金を返すつもりで無関係の人に支払ったお金は、ほとんどの場合、返ってこないでしょう。

④債務者は弁済供託をすることができる

お金を返す人は、誠実に借りたお金を返したいと思っているでしょう。

次々と相続人と称する人が現れて被相続人が貸したお金を返して欲しいと要求するケースがあります。

だれもが自分こそは本当の相続人であると称するから、困ってしまいます。

本当は無関係の人なのに、借りたお金を返すつもりで安易にお金を支払った場合、返済したとは認められません。

まとまったお金の貸し借りの場合、利息を付ける約束をしているでしょう。

返済期限に返済できなかった場合、遅延損害金も支払わなければなりません。

誠実に借りたお金を返したいと思っている誠実な債務者のため、一定条件の下で法務局にお金を預けることができます。

法務局にお金を預けた場合、お金を返したと扱われます。

法務局にお金を預けることを、弁済供託と言います。

弁済供託ができるのは次のとおりです。

(1)受領拒否:債権者が受け取りをしてくれないとき

(2)不受領意思が明確:債権者が受け取りをしない意思を明確にしているとき

(3)債権者不確知:債権者がだれか分からないとき

(4)受領不能:債権者が受け取りができないとき

次々と相続人と称する人が現れた場合であれば、債権者不確知を理由として、弁済供託をすることができます。

お金を返したと扱われますから、二重払いや利息、遅延損害金の心配がなくなります。

供託した後は、被相続人が貸したお金を返して欲しいと言われても応じる必要はありません。

被相続人が貸したお金を返したと扱われるからです。

本当の債権者であれば、法務局に対してその事実を証明して供託したお金を払ってもらうことができます。

4抵当権が消えるのは借りたお金を完済したとき

抵当権は、返済が滞ったときに備えて、担保にする権利です。

貸したお金が返し終わるまで、いつ返済が滞るか分かりません。

抵当権は、原則として、貸したお金を返し終わるまで消えません。

貸したお金が相続人に相続された場合、抵当権も一緒に相続人に相続されます。

抵当権が相続されても、抵当権の登記は自動で移転することはありません。

抵当権の相続登記が必要です。

抵当権が消滅する前に相続が発生していますから、抵当権の相続登記が必要になります。

抵当権の相続登記は、所有権の相続登記と同様に、相続人の単独申請です。

借りたお金を完済した場合、借金が消滅します。

借金が消滅した場合、抵当権は一緒に消滅します。

借金が相続された後に借金を完済した場合、抵当権の相続登記を省略することはできません。

抵当権は、被相続人→相続人→消滅になったからです。

実体のない登記を認めた場合、登記制度への信頼が失墜します。

このようなことは許されません。

抵当権の相続登記をした後、抵当権抹消登記を申請します。

抵当権抹消登記は、抵当権者になった相続人と不動産の所有者の共同申請です。

5抵当権抹消登記はすみやかに

わざわざ抵当権付き不動産を買う人はいません。

不動産を売却するときになって抵当権がついたままになっていることに気がつきます。

おそらく借金の返済が終わったことで安心したのでしょう。

安心して抵当権の登記がついたままであることを忘れてしまったのでしょう。

借金がすべて返済されれば、抵当権は消滅します。

抵当権が消滅しても、抵当権の登記は自動で消滅することはありません。

法務局が自動で消してくれることもありません。

担保に取った人と担保に差し出した人が一緒に、法務局に抵当権を消す申請しなければ、抵当権の登記は登記簿に残り続けます。

抵当権は、返済が滞ったときに備えて、担保にする権利です。

返済が滞ったら、抵当権者は不動産を売り払って、借金の返済に充てることができます。

このような権利が付いた不動産は、いつ抵当権者が現れて売り払われるか分からないので、怖くて売買できません。

借金の返済が終わった後、すみやかに抵当権抹消登記をしておかないと手間と時間が余計にかかります。

借金の返済が終わったのか終わっていないのか事実関係が分からなくなるからです。

借金の返済が終わったはずであっても、証拠を用意できないこともあります。

事情を知らない相続人がいる場合、抵当権抹消に協力してくれない可能性もあります。

相続人が行方不明になって連絡が取れないこともあります。

抵当権抹消登記に協力しない相続人がいた場合、裁判を起こして判決をとる必要があります。

長期間経過するほど、難易度は上がります。

抵当権消滅登記はすみやかに済ませましょう。

6抵当権移転登記と抵当権抹消登記を司法書士に依頼するメリット

借金の返済が終わると、ほっとします。

抵当権の抹消登記は多少遅くなっても特段の不都合がないから、多忙にまぎれがちです。

不動産を売却したり、相続が発生したときに気がつくことが多いです。

借金返済が完了してから長期間経過すると、事実関係が確認できなくなったり、関係者と連絡が取れなくなったり、連絡を無視されたりします。

通常の抵当権抹消登記は、司法書士であれば難しい手続ではありません。

借金返済が完了してから長期間経過すると、関係者の協力を得るのが難しくなりがちです。

関係者の協力を得られない場合、裁判所の助力が必要になります。

抵当権の抹消登記を先延ばしした代償は、非常に高くつきます。

抵当権消滅登記はすみやかに済ませましょう。

スムーズに登記を完了させたい方は、司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。

お墓を相続

2022-11-25

1お墓は相続財産でない

相続が発生すると、原則として、被相続人の財産は相続人が相続します。

相続人が相続する財産が、相続財産です。

被相続人の財産であっても、相続人に相続されない財産があります。

一身専属権や祭祀用財産は相続の対象になりません。

一身専属権とは、その人個人しか持つことができない権利や資格のことです。

権利行使をするかしないか、本来の権利者個人の意思次第とするのが適当とされる権利です。

祭祀用財産とは、墓地、墓石、仏壇、家系図などの先祖祭祀のための財産のことです。

お墓は相続財産ではなく、祭祀用財産です。

相続財産ではないから、遺産分割協議は必要ありません。

祭祀用財産は、祭祀を主宰すべき人が受け継ぎます。

祭祀を主宰すべき人を、祭祀承継者と言います。

相続財産の分け方についての合意とは別に決定します。

お墓は相続財産ではありませんから、相続放棄とは無関係です。

相続放棄をしても相続放棄をしなくても、お墓を受け継ぐことができます。

お墓を受け継ぐのは、祭祀承継者だからです。

2祭祀承継者とは

祭祀を主宰すべき人を、祭祀承継者と言います。

お墓は、祭祀承継者が受け継ぎます。

①祭祀承継者の主な役割

祭祀承継者は祭祀を主宰する人ですから、お墓や仏壇などの管理が主な役割です。

定期的なお墓参りの他に、霊園への管理料や使用料の支払を負担します。

お墓にだれの遺骨を納めるか、お墓を移転するかなども単独で判断することができます。

祭祀承継者になった場合、一周忌などの法要を主宰して、お布施などの支払をすることになるでしょう。

祭祀承継者になった場合であっても、祭祀を行う法的義務を負うものではありません。

②祭祀承継者になるメリット

祭祀承継者は祭祀を主宰することになります。

被相続人の一周忌や三回忌などの法要をどのような形で行うか決めることができます。

このような先祖供養を主宰することで家族の中で一定の役割を果たすことになります。

責任感がある人にとっては、家族の中で一定の責任を果たすことがやりがいにつながります。

お墓や仏壇の管理を任されることから、お墓や仏壇を自宅に引き取りたいという希望のある人にはメリットになるでしょう。

③祭祀承継者になるデメリット

祭祀承継者になった場合、お墓を管理することになります。

日常的なお墓参りやお墓の掃除をしなければなりません。

霊園に対して、管理料や使用料の支払を負担しなければなりません。

お墓が災害や老朽化で倒壊した場合まず祭祀承継者に連絡が来ますから、対応する必要があります。

これらの負担が大きいのが祭祀承継者になるデメリットです。

④祭祀承継者の決め方

相続人のうちのひとりが祭祀承継者になるのが一般的です。

お墓が複数ある場合、それぞれに祭祀承継者がいる場合もあります。

祭祀を主宰すべき人になる資格は、特にありません。

相続人であっても相続人以外の人でも、親族であっても親族でなくても、祭祀を主宰すべき人になることができます。

苗字が同じでない人であっても祭祀承継者になることができます。

ときには霊園管理者が祭祀承継者になる場合もあります。

相続のルールが適用されるものではありません。

先祖を祀ることは、親族の伝統や慣習、考え、気持ちと切り離せないからです。

祭祀用財産は親族の伝統や慣習、考え、気持ちと切り離せないから、相続財産一般と同様に分配することはできません。

祭祀承継者は、次のように決められます。

(1)被相続人の指定に従う

(2)慣習に従って決める

(3)家庭裁判所で決定する

被相続人が祭祀を主宰すべき人として指定する場合、一方的に指定することができます。

トラブル防止のために、本人の同意をもらっておく方がいいでしょう。

被相続人が指定しておらず慣習も明らかでない場合、家庭裁判所が指名します。

被相続人の意思、相続人の身分関係、過去の生活感情、祭祀を主宰する意欲や能力、他の相続人や周りの人の意見を聞いて総合的に判断します。

家庭裁判所は、総合的に考えて最もふさわしい人を祭祀承継者に指名します。

3お墓の承継の方法

①お墓の永代使用権の場合は霊園で手続

被相続人が霊園のお墓を購入している場合があります。

寺院の檀家になっていてお墓を受け継いでいる場合もあります。

お墓は祭祀を主宰すべき人が受け継ぎます。

祭祀を主宰すべき人を祭祀承継者と言います。

お墓の販売や墓地の分譲の広告を目にしたことがある人も多いでしょう。

お墓を購入したのだから、墓地の所有権を得たと思うかもしれません。

通常、霊園には管理規約があります。

お墓を購入するとは、霊園と使用契約を結ぶことです。

霊園の区画を使う権利を得て、使用料や管理料を支払います。

霊園の区画を使う権利のことを永代使用権とか墓地利用権と言います。

永代利用権はお墓そのものではありませんが、お墓に付随するものとして祭祀用財産に含まれます。

永代使用権は、霊園を使う権利に過ぎません。

墓地を所有するものではありません。

お墓の契約者が死亡した場合、霊園の管理規約に基づいて家族が引き続き使うことができます。

霊園の管理規約で一定の範囲の親族のみが受け継ぐことができると決められている場合があります。

お墓をだれが引き継ぐか決めるときに、霊園の管理規約を確認しておきましょう。

永代使用権は、登記とは無関係です。

霊園の管理規約に従って、永代使用権を引き継いだ届出をします。

②お墓の相続放棄はできない

被相続人の指定、慣習、家庭裁判所の選択などで祭祀承継者に選ばれると、祭祀承継者になることを拒否することはできません。

相続が発生した後、相続放棄をした場合、相続人でなくなります。

祭祀承継者には放棄する制度がありません。

お墓は相続財産ではありませんから、相続放棄とは無関係です。

相続放棄をしても相続放棄をしなくても、お墓を受け継ぐことができます。

祭祀承継者に指名されたら、相続放棄をしても相続放棄をしなくても、お墓を受け継がなければなりません。

③墓地を所有している場合は登記が必要

現在では、墓地の永続性や非営利性を確保するため墓地を作るためには都道府県知事の許可が必要です。

都道府県知事の許可が得られるのは、原則として、墓地を作ることができる地方自治体や宗教法人などのみです。

昭和23年施行の墓地埋葬法ができる前には、個人が自分の土地に墓地を作ることができました。

これらの個人墓地は、現在も墓地として使い続けることができます。

個人墓地は永代使用権を得ているのではなく、所有権を保有しています。

所有権の移転があった場合、所有権の移転の登記をする必要があります。

④墓地が相続財産の場合がある

お墓は、原則として、相続財産ではなく祭祀用財産です。

相続財産でないから、財産の分け方を相続人全員で合意する必要はありません。

被相続人が所有する土地が、墓地である場合があります。

登記簿謄本の表題部の地目の欄に「墓地」と書いてある場合です。

墓地に先祖や親族が葬られている場合、祭祀用財産で相続財産ではありません。

墓地に先祖や親族以外の人が葬られている場合、祭祀用財産ではなく相続財産です。

先祖や親族以外の人が葬られている場合、先祖祭祀とは無関係だからです。

先祖祭祀と無関係な一般の財産と同様に相続財産になります。

相続財産だから、財産の分け方を相続人全員で合意する必要があります。

4墓じまいと墓開きは多額の費用がかかる

祭祀承継者に選ばれた場合、お墓を含む祭祀用財産を受け継ぐことになります。

祭祀承継者には放棄する制度がありません。

自宅から遠方のお墓を受け継ぐことになったら、自分でお墓を管理することができなくなります。

祭祀承継者がお墓を移転したい場合、他の親族の同意が必要になることはありません。

お墓の移転をするには、墓じまいと墓開きをすることになります。

墓じまいをするには、改葬許可申請が必要になる他、墓地の使用契約を解約する必要があります。

お墓開きをするには、改葬許可申請が必要になる他、墓地の使用契約をする必要があります。

寺院や霊園の手続や墓石の撤去と設置に思わぬ高額の費用がかかる場合があります。

祭祀承継者がこれらの負担をした場合、他の親族に当然に分担を求めることができるものではありません。

相続財産の分け方を話し合うときにお墓の移転の費用負担を含めて決めておくといいでしょう。

5お墓の相続を司法書士に依頼するメリット

お墓の分譲とかお墓の販売と聞くと、お墓を所有している気持ちになるかもしれません。

現代では、お墓を買うことは永代使用契約をすることです。

単に永代使用契約をして永代使用権を得るだけであれば、登記は無関係です。

一方で、道路わきや集落の外れなどに作られた個人墓地は現在でも使い続けることができます。

個人墓地は、多くの場合、土地を個人で所有しています。

集落の人などと共有している場合もあります。

所有権が移転した場合、登記をしておく必要があります。

墓地には固定資産税がかからないことが多いため、所有していることを認識していないかもしれません。

遠方の墓地が不便な場合、お墓のお引越しをしようとすることがあります。

墓じまいをしようとしたときに、登記が必要であることに気がつきます。

ときには、祖父やそれ以前の先祖の名義のままになっていることがあります。

お墓として利用し続けているときは気づかないものの、お墓を引っ越すときにタイヘンになります。

お墓を相続する場合は、司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。

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