Archive for the ‘相続人調査’ Category
同性婚は相続対策が不可欠
1同性パートナーは遺産相続ができない
①相続人になる配偶者は法律上の配偶者だけ
配偶者は、必ず相続人になります。
配偶者は、法律上の配偶者を指します。
法律上の婚姻をしていない配偶者は、相続人になれません。
日本においては現在のところ同性婚は認められていません。
同性パートナーは、法律上の配偶者ではありません。
相続人になる配偶者は、法律上の配偶者だけです。
②パートナーシップ制度を利用しても相続人になれない
パートナーシップ制度とは、法律上の婚姻と異なる形態のカップルについて各自治体が婚姻に相当する関係と認め証明書を発行する制度です。
たくさんの自治体でパートナーシップ制度が施行されていますが、すべての自治体で施行されているわけではありません。
パートナーシップ制度が施行されている自治体では、パートナーシップ宣誓をすることができます。
自治体から、パートナーシップ宣誓受領証を発行してもらうことができます。
パートナーシップ宣誓受領証を提示することで、婚姻に相当する関係と認めてもらいやすくなるでしょう。
パートナーシップ宣誓をしても、法律上の配偶者ではありません。
パートナーシップ制度を利用しても、相続人になれません。
③同性パートナーに遺留分がない
遺留分とは、相続財産に対する最低限の権利のことです。
兄弟姉妹以外の相続人に認められます。
同性パートナーは、相続人になれません。
同性パートナーには、遺留分が認められません。
④同性パートナーに寄与分がない
寄与分の制度は、特別な貢献をした相続人に対して相続分以上の財産を受け取ってもらう制度です。
同性パートナーは、相続人になれません。
同性パートナーは、寄与分を請求することはできません。
⑤同性パートナーは特別寄与料を請求できない
特別な貢献をした人が相続人でなくても親族である場合、特別寄与者になることができます。
親族にあたるのは、次の人です。
(1)6親等内の血族
(2)配偶者
(3)3親等内の姻族
同性パートナーは、親族ではありません。
同性パートナーは、特別寄与者になることはできません。
⑥同性パートナーに配偶者居住権と配偶者短期居住権がない
配偶者居住権と配偶者短期居住権は、いずれも、被相続人の家に住んでいた配偶者が無償で住み続けることができる権利です。
配偶者居住権も配偶者短期居住権も取得することができる配偶者は、法律上の配偶者のみです。
同性パートナーは、配偶者居住権も配偶者短期居住権も取得することはできません。
死亡したパートナー名義の自宅で暮らしていた場合、住む家を失うおそれがあります。
2遺言書を作成して財産を引き継ぐ
①同性パートナーに遺贈する
遺贈とは、被相続人が遺言によって、法定相続人や法定相続人以外の人に、財産を譲ってあげることです。
相続では、法定相続人だけに譲ってあげることができます。
遺贈では、法定相続人に譲ってあげることもできるし、相続人以外の人に譲ってあげることができます。
譲ってあげる相手は、相続人以外の人でも構いません。
同性パートナーにも譲ってあげることができます。
相続では、遺言がなくても相続人が受け取ることができます。
遺贈は、遺言があるときだけ譲ってあげることができます。
同性パートナーは相続人になれませんから、相続はできません。
遺贈であれば、同性パートナーに財産を譲ってあげることができます。
遺贈とは、遺言によって、財産を譲ってあげることです。
遺贈をするためには、遺言書が不可欠です。
同性パートナーが特別な寄与をしている場合でも、同性パートナーは寄与分を請求することはできません。
被相続人は、遺贈をすることで寄与に報いてあげることができます。
②遺言書より遺留分が優先
遺留分とは、相続財産に対する最低限の権利のことです。
兄弟姉妹以外の相続人に認められます。
被相続人に子どもがいる場合、子どもが相続人になります。
被相続人に子どもがいない場合、親などの直系尊属が相続人になります。
被相続人の子どもや親などの直系尊属が相続人になる場合、遺留分があります。
相続人の遺留分を侵害するような遺言書を作成した場合、大きなトラブルになります。
遺留分権利者は、遺留分侵害額請求をすることができるからです。
遺言書を作成するだけで、遺留分を奪うことはできません。
遺留分は、相続人に認められた最低限の権利だからです。
遺言書の内容より遺留分は、優先します。
③遺言執行者選任で手続をおまかせできる
遺言書は、遺言者の意思を示すものです。
遺言書は、作成するだけでは意味がありません。
遺言書の内容は、自動的に実現するわけではないからです。
遺言執行者は、遺言書の内容を実現する人です。
遺言執行者がいない場合、相続人全員が協力して遺言書の内容を実現します。
相続人の中には、遺言書の内容を快く思わないことがあります。
遺言書の内容に賛成できない場合、遺言書の内容を実現することに協力をしないでしょう。
遺言執行者がいる場合、遺言執行者が遺言書の内容を実現してくれます。
相続人全員の協力は、不要です。
遺言書の内容に反対の相続人がいても、協力してもらう必要はありません。
遺言執行者は、遺言書の中で選任することができます。
遺言執行者を選任しておくと相続手続をおまかせすることができるから、安心です。
④公正証書遺言がおすすめ
遺言書の種類は、法律で決められています。
遺言書を作成する場合、自筆証書遺言か公正証書遺言を作るケースがほとんどです。
自筆証書遺言は、専門家の関与がなくひとりで作ることができるのでお手軽です。
遺言書には、厳格な書き方ルールがあります。
厳格な書き方ルールに合わない遺言書は、無効になります。
法律の知識がない人が遺言書を作ることがあります。
厳格な書き方ルールに抵触して無効になってしまう可能性があります。
公正証書遺言は、公証人が文書に取りまとめて作る遺言書です。
公証人は、法律の専門家です。
法律の専門家が関与するから、書き方ルールで遺言書が無効になることは考えられません。
作成した遺言書は、公証役場で厳重に保管されます。
紛失や改ざんの心配がありません。
公正証書遺言を作るのは手間がかかりますが、メリットが圧倒的に大きい遺言書です。
遺言書を作る場合は、公正証書遺言がおすすめです。
3養子縁組で相続人になる
①養子縁組で養親の子どもになる
養子縁組とは、法律上の親子関係を作る制度です。
同性パートナーの気持ちは、婚姻に相当する関係でしょう。
親子関係を作るのは、違和感があるかもしれません。
養親になる人と養子になる人が合意すれば、養子縁組をすることができます。
養子縁組をすることで、養子は養親の子どもになります。
養子は、養親の氏を名乗ります。
養子は、養親の親族になります。
養親が死亡した場合、子どもは相続人になります。
②パートナーシップ宣誓をすることができなくなる
同性パートナー間で養子縁組をした場合、法律上は親子です。
多くの場合で、パートナーシップ宣誓をすることができなくなります。
パートナーシップ宣誓をする条件に、親子関係がないことがあるからです。
③相続税の基礎控除が少なくなる可能性
同性パートナーが死亡したときに、相続税がかかることがあります。
相続財産が基礎控除の範囲内であれば、相続税はかかりません。
基礎控除は、次の計算式で求めることができます。
基礎控除=3000万円+600万円×法定相続人の人数
養子縁組をしなかった場合、兄弟姉妹が相続人であることがあります。
例えば、法定相続人になる兄弟姉妹が3人いた場合、基礎控除は4800万円です。
同性パートナー間で養子縁組をした場合、養子1人が法定相続人になるでしょう。
基礎控除は、3600万円になります。
養子縁組をすることで、たくさんの相続税を払うことになるおそれがあります。
4死因贈与契約で贈与
①遺留分は無視できない
死因贈与とは、贈与者が死亡したときに贈与する契約です。
死因贈与は契約だから、贈与する人と贈与を受ける人の合意で成立します。
贈与する人と贈与を受ける人の合意があっても、相続人の遺留分を奪うことはできません。
相続人の遺留分を侵害するような死因贈与契約を締結した場合、大きなトラブルになります。
遺留分権利者は、遺留分侵害額請求をすることができるからです。
死因贈与契約の内容より遺留分は、優先します。
②死因贈与執行者に手続はおまかせできる
死因贈与契約をする場合、執行者を選任することができます。
執行者は、死因贈与契約の内容を実現する人です。
執行者がいない場合、相続人全員が協力して死因贈与契約の内容を実現します。
執行者がいる場合、執行者が死因贈与契約の内容を実現してくれます。
相続人全員の協力は、不要です。
執行者を選任しておくと手続をおまかせすることができるから、安心です。
③贈与契約書は公正証書がおすすめ
死因贈与契約には、遺言書のような厳格な書き方ルールはありません。
贈与する人と贈与を受ける人の合意があれば、文書がなくても有効です。
死因贈与契約をしたと言っても、書面がないとだれも信用してくれないでしょう。
相続人とトラブルになることを避けるため、死因贈与契約は書面に取りまとめましょう。
死因贈与契約は公正証書にするのがおすすめです。
5特別縁故者は期待できない
①特別縁故者で財産を引き継ぐ
特別縁故者とは、被相続人に特別な縁故があったと認められた人です。
相続が発生したら、被相続人のものは相続人が相続します。
相続人になる人は、法律で決まっています。
相続人になる人がまったくいない場合、被相続人の財産は国庫に帰属します。
特別縁故者と家庭裁判所に認められた場合、被相続人の財産を引き継ぐことができます。
同性パートナーは法律上の配偶者でないだけで、事実上の配偶者でしょう。
同性パートナーが特別縁故者として認められることがあります。
特別縁故者として認められる可能性があるから、何も対策しなくていいという考えはおすすめできません。
②特別縁故者は相続人不存在のときだけ
法律上の相続人がいる場合、被相続人の財産は相続人が相続します。
特別縁故者が財産を受け継ぐ余地はありません。
③相続財産清算人選任の申立てに高額な予納金
特別縁故者として認めてもらう前提として、相続財産の清算が必要です。
被相続人の債権者がいる場合、債権者の支払いが先だからです。
相続財産の清算をする人は、家庭裁判所で選任してもらいます。
相続財産清算人選任の申立てには、予納金を納める必要があります。
財産規模にもよりますが、予納金は100万円程度になることが多いものです。
④特別縁故者はハードルが高い
特別縁故者は、家庭裁判所で認めてもらう必要があります。
特別縁故者であると主張するだけでは、認めてもらうことはできません。
家庭裁判所が納得する客観的証拠を準備する必要があります。
特別縁故者として認められるか認められないか家庭裁判所が判断します。
特別縁故者として認められても、わずかな財産だけ引き継ぐ決定がされる可能性があります。
5遺言書作成と遺言執行を司法書士に依頼するメリット
相続手続はタイヘンですが、相続人がいない場合もタイヘンです。
相続人がいないから、財産は国に持っていかれて、何もしなくていいと軽く考えがちです。
実際は、被相続人が死亡してから、国庫に帰属するまで1年以上の時間がかかります。
財産の内容によっては、100万円以上の費用の負担があることも見逃せません。
国に持っていかれるよりは、お世話になった人に受け継いでもらいたい、自分の気持ちを活かしてくれる慈善団体などに使ってもらいたいという気持ちがある人もいるでしょう。
お世話になった人に受け継いでもらいたい、自分の気持ちを活かしてくれる慈善団体などに使ってもらいたいという意思は遺言書で実現できます。
遺言書に、遺贈することを書き、遺言執行者を決めておけば、手間はかかりません。
お世話になった人は待っているだけで済みます。
遺言書は、書き方に細かいルールがあります。
細かいルールを守っていないと、遺言書は無効になってしまいます。
適切な遺言書作成と遺言執行者選任は司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。
認知された子どもは戸籍で判明
1認知されると親子関係が発生する
芸能人や政治家などの有名人に隠し子がいたとか、認知したとか言う話題を聞いたことがある人もいるでしょう。
婚姻関係にないカップルの間に生まれた子どもについて、自分の子どもと認めることを認知と言います。
認知をして、自分の子どもだと認めるのは一般的には父親です。
婚姻関係にないカップルの間に生まれた子どもについて出生届が提出された場合、母の戸籍に入ります。
母が戸籍の筆頭者でない場合、新たに母が筆頭者の戸籍が作られます。
新しい戸籍に母と子どもが入ります。
同じ戸籍に入ることができるのは、2世代までだからです。
子どもの戸籍には、母は記載されますが父は空欄です。
出産の事実によって、母と子どもに親子関係が発生します。
出生届が出されただけでは、父と子どもに親子関係が発生しないからです。
母親が出産後に、捨て子をしたようなレアケースでは、母親も認知をすることがあり得ます。
認知をするには、市区町村役場に認知届を提出する必要があります。
母親に自分の子どもだと認めるだけでは、法律上の認知の効果はありません。
子どもは父に対して扶養を請求することも父を相続することもできません。
市区町村役場に認知届を提出した場合、戸籍に記載されます。
認知をしたことを家族に内緒にしておいても、戸籍を見れば分かります。
認知された子どもは、相続人になります。
2誕生後に認知届を提出すると戸籍に記載される
①父の戸籍に認知事項が記載される
役所に認知届を提出した場合、父と子どもに親子関係が発生します。
父が未成年である場合でも、単独で認知をすることができます。
親などの親権者の同意は不要です。
父と子どもに親子関係が発生しますから、父の戸籍に認知事項が記載がされます。
記載されるのは、次の事項です。
身分事項 認知
認知日 令和〇年〇月〇日
認知した子の氏名 〇〇〇〇
認知した子の戸籍 〇〇県〇〇市〇〇町〇丁目〇番〇号 〇〇〇〇
認知をしたことを家族に内緒にしておいても、戸籍を見れば分かります。
認知届を出すだけでは、認知された子どもが父の戸籍に入ることはありません。
認知された子どもは父の戸籍に入りませんが、父自身の戸籍の認知事項が記載されます。
他の家族が戸籍を見た場合、認知した事実が判明します。
②子どもの戸籍に認知事項が記載される
役所に認知届を提出した場合、父と子どもに親子関係が発生します。
子どもの戸籍の父の欄に、父の氏名が記載されます。
父と子どもに親子関係が発生しますから、子どもの戸籍に認知事項が記載がされます。
記載されるのは、次の事項です。
身分事項 認知
認知日 令和〇年〇月〇日
認知者の氏名 〇〇〇〇
認知者の戸籍 〇〇県〇〇市〇〇町〇丁目〇番〇号 〇〇〇〇
送付を受けた日 令和〇年〇月〇日
受理者 〇〇県〇〇市長
③認知された子どもの住所は子どもの戸籍の附票で判明
認知された子どもは、相続人になります。
被相続人が認知された子どもの存在を家族に秘密にしていることがあります。
家族は戸籍謄本収集の過程で、認知された子どもの存在を知るでしょう。
認知された子どもに相続手続の協力を求めたくても、連絡先が分かりません。
認知された子どもの戸籍謄本を取得したら、一緒に戸籍の附票を請求します。
戸籍の附票は、住民票の異動が記録されている書類です。
戸籍の附票は、本籍地のある市区町村役場に請求します。
相続人調査で戸籍謄本を集めますから、本籍は必ず判明します。
住民票上の住所は、戸籍の附票で調べることができます。
3胎児認知をしたら戸籍の附票に記載される
①胎児認知には母の承諾が必要
父親は子どもが誕生する前に認知届を出すことができます。
子どもが誕生する前に認知届を出すことを胎児認知と言います。
胎児認知をする場合、母の承諾が必要です。
母が未成年である場合でも、単独で承諾をすることができます。
親などの親権者の同意は不要です。
②胎児認知をしたら母の戸籍の附票に記載される
胎児認知届を提出した場合、子どもが誕生するまでは父の戸籍には何も記載されません。
母の戸籍の附票に記載がされるのみです。
③子どもの戸籍に認知事項が記載される
子どもの出生届が提出された時点で、子どもの戸籍が作られ認知事項が記載されます。
記載されるのは次の事項です。
身分事項 認知
胎児認知日 令和〇年〇月〇日
認知者の氏名 〇〇〇〇
認知者の戸籍 〇〇県〇〇市〇〇町〇丁目〇番〇号 〇〇〇〇
④父の戸籍に認知事項が記載される
子どもが誕生したことで父と子どもに親子関係が発生します。
出生届が提出されてから、父の戸籍に認知事項が記載がされます。
記載されるのは次の事項です。
身分事項 認知
胎児認知日 令和〇年〇月〇日
認知した子の氏名 〇〇〇〇
認知した子の戸籍 〇〇県〇〇市〇〇町〇丁目〇番〇号 〇〇〇〇
送付を受けた日 令和〇年〇月〇日
受理者 〇〇県〇〇市長
⑤子どもが誕生しなかった場合は戸籍には何も記載されない
仮に子どもが流産や死産であった場合、母の戸籍の附票から認知の記載が削除されます。
父の戸籍は何も記載されていないから、何も影響はありません。
4父の戸籍から認知事項が消える
戸籍の作り直し(改製)がされる場合や戸籍のお引越し(転籍)をする場合があります。
戸籍が新しく作り直しがされる場合、新しい戸籍に書き写される項目と書き写されない項目があります。
父の戸籍の認知事項は、新しい戸籍に書き写されない項目です。
父が認知したときの戸籍に認知事項が記載されても、作り直し(改製)やお引越し(転籍)があった場合、書き写されません。
新しい戸籍だけを見ると、認知事項がないから認知した子どもの存在に気付かないでしょう。
相続人調査をする場合、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本が必要になります。
認知した子どもの存在の有無は、出生から死亡までの連続した戸籍謄本で証明できるからです。
5父の氏を名乗り父の戸籍に入るためには家庭裁判所の手続
認知届を出すだけでは、認知された子どもが父の戸籍に入ることはありません。
認知届を出すだけでは、認知された子どもが父の氏を名乗ることはありません。
子どもが父の氏を名乗り父の戸籍に入るためには家庭裁判所で手続が必要です。
子どもが父の氏を名乗り父の戸籍に入る手続を、子の氏の変更許可申立てと言います。
子の氏の変更許可申立ての提出先は、子どもの住所地を管轄する家庭裁判所です。
家庭裁判所の管轄は裁判所のホームページで調べることができます。
子の氏の変更許可申立てができるのは、子どもです。
子どもが15歳未満の場合は、親などの法定代理人が代理します。
子の氏の変更許可申立てに添付する書類は以下のとおりです。
①子どもの戸籍謄本
②父母のの戸籍謄本
家庭裁判所で子の氏の変更許可がされた場合、市区町村役場へ届出が必要です。
市区町村役場へ届出をする場合、家庭裁判所が出す審判書謄本の他に戸籍謄本が必要になることがあります。
6相続人調査を司法書士に依頼するメリット
本籍地の変更や国による戸籍の作り直し(改製)で多くの方は、何通もの戸籍を渡り歩いています。
古い戸籍は現在と形式が違っていて読みにくかったり、手書きの達筆な崩し字で書いてあって分かりにくかったりしますから、慣れないと戸籍集めはタイヘンです。
本籍地を何度も変更している方や結婚、離婚、養子縁組、離縁を何度もしている方は、戸籍をたくさん渡り歩いているので、膨大な手間と時間がかかることが多くなります。
戸籍には被相続人の結婚や離婚、子どもや養子の存在といった身分関係がすべて記録されています。
ですから、時には家族の方が知らない相続人が明らかになることもあります。
相続が発生した後に、認知を求めて裁判になることもあります。
相続人を確定させるために戸籍を集めるだけでも、知識のない一般の人にはタイヘンな作業です。
家族の方が知らない相続人が明らかになると、精神的な負担はさらに大きいものになります。
相続手続のうち、専門家に任せられるものは任せてしまえば、事務負担を軽減することができます。
戸籍や住民票の取り寄せも司法書士は代行します。
相続人調査でお困りの方は、司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。
兄弟姉妹が先に死亡したときの代襲相続人
1代襲相続とは
相続が発生したら、親族のうち一定の範囲の人が相続人になります。
だれが相続人になるかについては、民法で決められています。
相続人になる人は、次のとおりです。
①配偶者は必ず相続人になる
②被相続人に子どもがいる場合、子ども
③被相続人に子どもがいない場合、親などの直系尊属
④被相続人に子どもがいない場合で、かつ、親などの直系尊属が被相続人より先に死亡している場合、兄弟姉妹
相続人になるはずだった人が被相続人より先に死亡したため、相続人になるはずだった人の子どもや子どもの子どもが相続することがあります。
これを代襲相続と言います。
相続人になるはずだった人の子どもの子どもが相続することを再代襲相続と言います。
代襲相続ができるのは、相続人になるはずだった人の子どもなど直系卑属だけです。
相続人になるはずだった人を被代襲者と言います。
被代襲者の子どもなど被代襲者の直系卑属以外は代襲相続人になることができません。
被代襲者の配偶者も、被代襲者の親などの直系尊属も、被代襲者の兄弟姉妹も、代襲相続ができません。
2兄弟姉妹が先に死亡したら甥姪が代襲相続人になる
①半血兄弟の子どもが代襲相続人になる
被相続人に子どももいない場合で、かつ、親などの直系尊属が被相続人より先に死亡している場合、兄弟姉妹が相続人になります。
兄弟姉妹とは、実父実母同じ兄弟姉妹だけイメージしがちです。
実父の子ども、実母の子どもすべてが、兄弟姉妹に含まれます。
被相続人が養子縁組をした養子の場合、養親の子どもも兄弟姉妹に含まれます。
実父の子どもには、母が違う異母兄弟姉妹、父が認知した子ども、父と養子縁組をした養子、父の実子で普通養子に出した子どももすべて含まれます。
養親の子どもには、養親の実子、養親が認知した子ども、養親と普通養子縁組をした養子、養親の実子で普通養子に出した子どももすべて含まれます。
実父の子ども、実母の子ども、養親の子どもすべてが、相続人になります。
兄弟姉妹が被相続人より先に死亡している場合、兄弟姉妹の子どもが代襲相続人になります。
②養子に行った兄弟姉妹の子どもが代襲相続人になる
兄弟姉妹には、実父の子ども、実母の子どもすべて含まれます。
兄弟姉妹の中には、第三者と養子縁組をしている場合があります。
養子縁組には、2種類あります。
普通養子と特別養子です。
第三者と養子縁組をしている場合、普通養子であれば兄弟姉妹として相続人になります。
普通養子になった兄弟姉妹が被相続人より先に死亡した場合、養子に行った兄弟姉妹の子どもが代襲相続人になります。
特別養子になった兄弟姉妹は相続人になりません。
特別養子は、実親との親子関係を切るものだからです。
特別養子になった兄弟姉妹が被相続人より先に死亡した場合、養子に行った兄弟姉妹の子どもは代襲相続人になりません。
③養子の連れ子は代襲相続人にならない
兄弟姉妹には、親と養子縁組をした養子が含まれます。
養子の子どもには親族関係がある場合とない場合があります。
代襲相続人になることができるのは、被相続人の卑属のみです。
親族関係がない場合、代襲相続人になることはできません。
養子縁組をしたときに、養子に子どもがいる場合があります。
養子縁組をしたときにすでに誕生していた子どもは、養親と親族関係が生じません。
養子の連れ子は、養親の卑属ではありません。
養親の卑属ではないから、代襲相続人にはなりません。
④甥姪も被相続人より先に死亡したら代襲相続しない
被相続人の兄弟姉妹が相続する場合で、かつ、兄弟姉妹が被相続人より先に死亡している場合、兄弟姉妹の子どもが代襲相続をすることができます。
兄弟姉妹の子どもが被相続人より先に死亡している場合、兄弟姉妹の子どもの子どもは代襲相続をすることができません。
兄弟姉妹が相続する場合、代襲相続ができる範囲は一代限りだからです。
被相続人の子どもが相続する場合で、かつ、子どもが被相続人より先に死亡している場合、子どもの子どもが代襲相続をすることができます。
子どもの子どもが被相続人より先に死亡している場合、子どもの子どもの子どもは代襲相続をすることができます。
被相続人の子どもが相続する場合、下の世代の範囲に制限はありません。
兄弟姉妹が被代襲者の場合、再代襲相続はできません。
子どもが被代襲者の場合、再代襲相続はできます。
現在は兄弟姉妹が相続する場合、代襲相続ができる範囲は一代限りです。
昭和23年1月1日から昭和55年12月31日に開始した相続については、再代襲相続ができました。
3代襲相続人の相続割合
①代襲相続人は被代襲者の法定相続分を引き継ぐ
配偶者がいる場合、法定相続分は次のとおりです
(1)相続人が配偶者と子ども 配偶者2分の1 子ども2分の1
(2)相続人が配偶者と直系尊属 配偶者3分の2 直系尊属3分の1
(3)相続人が配偶者と兄弟姉妹 配偶者4分の3 兄弟姉妹4分の1
兄弟姉妹が数人いる場合、人数で均等に分割します。
兄弟姉妹は、実父実母同じ兄弟姉妹だけではありません。
異父兄弟姉妹や異母兄弟姉妹が含まれるからです。
父だけ同じ兄弟姉妹や母だけ同じ兄弟姉妹は、父母同じ兄弟姉妹の半分になります。
父だけ同じ兄弟姉妹や母だけ同じ兄弟姉妹は、半血兄弟と言います。
代襲相続の場合、法定相続分は受け継がれます。
死亡した被代襲者の法定相続分を代襲相続人が人数で均等に分割します。
半血兄弟の法定相続分は全血兄弟の法定相続分の2分の1なので、代襲相続人の相続分が相応に少なくなります。
②兄弟姉妹には遺留分がない
遺留分とは、相続財産に対して認められる最低限の権利のことです。
兄弟姉妹以外の相続人に認められます。
兄弟姉妹が被代襲者である場合、代襲相続人は遺留分が認められません。
4代襲相続がある相続を司法書士に依頼するメリット
相続が発生すると、被相続人のものは相続財産になります。
相続財産は相続人全員の共有財産ですから、分け方を決めるためには相続人全員の合意が必要です。
相続人の一部を含めない合意や相続人でない人を含めた合意は無効になります。
相続財産の分け方の話し合いの前提として、相続人の確定はとても重要です。
代襲相続や数次相続が発生している場合、一挙に難易度が上がります。
インターネットが普及したことで、多くの情報を手軽に得ることができるようになりました。
簡単に情報発信ができるようになったこともあって、適切でない情報も有益な情報もたくさん出回っています。
相続の専門家と名乗っていながら、適切でないアドバイスを見かけることも度々あります。
代襲相続や数次相続が発生している場合、信頼できる専門家のサポートが欠かせません。
スムーズに相続手続を行いたい方は、司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。
遺留分を現金で払えない
1遺留分を渡したくないと拒否できない
①遺留分は最低限の権利
被相続人は、原則として、自分の財産をだれに受け継がせるかは自由に決めることができます。
財産は被相続人が1人で築いたものではないでしょう。
家族の協力があってこそ、築くことができた財産のはずです。
被相続人の名義になっているからといって、まったく無制約の自由にすることはできません。
今まで協力してきた家族に、酷な結果となることがあるからです。
被相続人に近い関係の相続人には、相続財産に対して最低限の権利が認められています。
相続財産に対して、認められる最低限の権利のことを遺留分と言います。
②遺留分は現金で支払う
遺留分は、相続財産に対して認められる最低限の権利です。
遺留分を侵害された場合、遺留分侵害額請求をすることができます。
遺留分侵害額請求を受けた場合、遺留分に相当する金額を現金で支払います。
相続で受け取った財産を渡す必要はありません。
遺留分に相当する金額を請求できるだけだからです。
現金で支払うルールは、令和元年7月1日以降に発生した相続に適用されます。
2遺留分侵害額請求がされたら
①遺留分は最短1年で時効消滅
遺留分を請求しないまま長期間経過した場合、遺留分侵害額請求をすることができなくなります。
遺留分侵害額請求権には、時効があるからです。
遺留分侵害額請求権の時効は、次のとおりです。
(1)侵害の事実を知ってから1年
(2)侵害がされたときから10年
権利が消滅した後に、遺留分侵害額請求があっても拒否することができます。
遺留分侵害額請求権は、最短1年で時効消滅します。
②兄弟姉妹に遺留分はない
遺留分は、相続財産に対して認められる最低限の権利です。
すべての相続人に遺留分が認められているわけではありません。
遺留分が認められるのは、配偶者、子ども、親などの直系尊属です。
被相続人に子どもと親などの直系尊属がいない場合、兄弟姉妹が相続人になります。
兄弟姉妹には、遺留分が認められていません。
兄弟姉妹は、相続人であっても遺留分はありません。
遺留分が認められていないのに、遺留分を請求して来ることがあります。
遺留分が認められていない相続人からの請求は、拒否することができます。
相続人になるはずだった兄弟姉妹が被相続人より先に死亡することがあります。
兄弟姉妹の子どもが相続します。
相続人になるはずだった人の子どもが相続することを代襲相続と言います。
代襲相続があった場合、被代襲者の相続分と遺留分を引き継ぎます。
相続人になるはずだった人が兄弟姉妹である場合、遺留分はありません。
兄弟姉妹の子どもが代襲相続人になる場合、引き継ぐべき遺留分はありません。
兄弟姉妹には、遺留分がありません。
兄弟姉妹の子どもにも、遺留分はありません。
③遺留分侵害額の確認が重要
遺留分を侵害された場合、遺留分侵害額請求をすることができます。
遺留分は、現金で請求します。
相続で受け取った財産を請求することはできません。
遺留分を侵害された相続人は、遺留分侵害額を計算して請求します。
遺留分権利者が計算した遺留分侵害額が適切な金額でないことがあります。
相続財産が金銭だけであれば、金額を争う余地はないでしょう。
相続財産には、いろいろな種類の財産があるのが通常です。
いろいろな種類の財産をいくらと考えるのか評価方法は複数あります。
被相続人が不動産を所有していることがあります。
不動産をいくらと考えるのか評価方法はいくつかあります。
どの評価方法で不動産を評価するかで、不動産の金額は大きく変わります。
遺留分侵害額請求をする人は、不動産の金額が高く評価されると有利です。
支払われる遺留分侵害額が高くなるからです。
遺留分侵害額請求を受ける人は、不動産の金額が低く評価されると有利です。
支払う遺留分侵害額が少なくなるからです。
評価方法がちがうと、相続財産全体の金額が大きく変わります。
当事者による話し合いで合意ができない場合、家庭裁判所の助力を受けることができます。
当事者は、遺留分侵害額請求の調停を申し立てることができます。
不動産は、重要な財産であることが多いものです。
評価方法で金額が大きく変わるから、適切に評価されているのか確認することが重要です。
④支払方法の合意
遺留分侵害額請求を受けた場合、遺留分に相当する金額を現金で支払います。
一括で支払うのが原則です。
当事者の合意があれば、どのような支払方法にするのか決めることができます。
相続で受け取った財産の大部分が不動産であることは少なくありません。
遺留分侵害額請求を受けた人が現金を準備できないでしょう。
遺留分侵害額請求を受けた場合、不動産を売却しなければならなくなります。
不動産を売却するためには、ある程度長期間かかります。
すぐに払ってもらいたいけど、売却期間を譲歩できるのであれば話し合いがまとまりやすくなります。
いつまでに支払うのか話し合いによる合意が大切です。
相続財産の大部分が事業用財産であることがあります。
事業用財産を売却してしまったら、事業を続けることができなくなります。
当事者が譲歩できるのであれば、分割払いの合意をするといいでしょう。
当事者の話し合いによる合意なので、話し合いがまとまらないおそれがあります。
⑤期限の許与を求める裁判
遺留分侵害額請求を受けた場合、遺留分に相当する金額を直ちに支払わなければなりません。
現金で一括払いが原則です。
財産の状況から現金で一括払いが難しいことがあります。
当事者で話し合いができれば、支払方法の合意をすることができます。
支払方法の合意ができるかどうかは、相手方次第です。
かたくなに直ちに現金一括払いを主張することが考えられます。
支払方法の合意ができない場合、裁判所に期限の許与を求める方法があります。
裁判所に期限の許与を求める場合、訴訟を提起します。
遺留分侵害額を請求する裁判中で、反訴を提起することもできます。
裁判所は遺留分侵害額の全部に期限を許与することができるし遺留分侵害額の一部だけ期限を許与することができます。
3遺留分侵害額請求を無視すると裁判手続
①調停や訴訟を提起される
遺留分は、相続財産に対して認められる最低限の権利です。
遺留分を侵害された場合、遺留分侵害額請求をすることができます。
相続した財産を渡したくないという気持ちがあるかもしれません。
遺留分侵害額請求を受けた場合、無視することはおすすめできません。
遺留分侵害額請求は、遺留分権利者の正当な権利だからです。
気に入らない相続人だから渡したくないと言えるものではありません。
遺留分侵害額請求を受けたのに放置した場合、裁判所に持ち込まれることになるでしょう。
調停とは、家庭裁判所のアドバイスを受けてする当事者の話し合いです。
当事者だけで話し合いをすると、感情的になって話し合いができないことがあります。
家庭裁判所の調停委員が間に入ると、冷静になって話し合いができるかもしれません。
調停では、当事者の話し合いによる合意を目指します。
家庭裁判所が合意を強制することはできません。
当事者が一方的な主張をした場合、調停では解決できません。
調停は、当事者の話し合いで解決を目指す手続だからです。
調停では、強制的に解決方法を決めてしまうことはありません。
家庭裁判所のアドバイスを受けても話し合いがつかない場合、調停は成立しません。
調停が成立しなかった場合、遺留分を請求する訴訟を提起することができます。
話し合いに応じてもらえない場合、調停を申し立てずに直ちに訴訟を提起することができます。
訴訟が提起された場合、裁判所から訴状が届きます。
訴状が届いたら、絶対に放置してはなりません。
訴訟が提起されたのに放置した場合、欠席裁判になります。
欠席裁判では、相手方の言い分を認めた扱いがされます。
たとえ不当に過大な請求であっても、適切に主張立証をする必要があります。
適切に主張立証をしない場合、裁判所は相手方の主張どおりの決定をします。
遺留分侵害額請求を無視すると、裁判手続になります。
②財産差押など強制執行ができる
調停は、家庭裁判所のアドバイスを受けてする当事者の話し合いです。
調停で当事者の話し合いによる合意ができた場合、合意内容を文書に取りまとめます。
調停における合意内容を取りまとめた文書を調停調書と言います。
当事者の話し合いによる合意ができたのだから、当事者が合意内容を実現するでしょう。
当事者が任意で合意内容を実現しない場合、調停調書の内容は強制執行ができます。
銀行預金などの財産に差押をして、支払を受けることができます。
調停で合意ができなかった場合、訴訟を提起することができます。
訴訟を提起したものの、和解することがあります。
和解で当事者の話し合いによる合意ができた場合、合意内容を文書に取りまとめます。
和解における合意内容を取りまとめた文書を和解調書と言います。
当事者が任意で合意内容を実現しない場合、和解調書の内容は強制執行ができます。
和解による合意ができなかった場合、裁判所が判決を出します。
当事者が任意で判決内容を実現しない場合、判決の内容は強制執行ができます。
4公正証書遺言を作成しても遺留分が優先
①遺言書で遺留分は奪えない
さまざまな家族の事情から特定の相続人に相続させたくないことがあります。
相続人が配偶者、子ども、親などの直系尊属である場合、遺留分が認められます。
遺言書で自分の財産をだれに受け継がせるかは自由に決めることができます。
遺留分を侵害するような遺言書であっても、有効な遺言書です。
有効な遺言書であっても、遺留分侵害額請求をすることができます。
遺留分は、相続財産に対して認められる最低限の権利だからです。
遺留分を侵害された場合、遺留分侵害額請求をすることができます。
遺言書を作成するだけで、遺留分を奪うことはできません。
②相続人廃除はハードルが高い
相続人廃除は、被相続人の意思で相続人の資格を奪う制度です。
相続人の資格を奪うというのは、実質的には、遺留分を奪うことです。
相続人廃除は家庭裁判所に申立てをして、家庭裁判所が判断します。
被相続人が相続人廃除したいと言い、相続人が廃除されていいと納得していても、家庭裁判所が相続人廃除を認めないことがあります。
相続人廃除は、相続人の最低限の権利を奪う重大な決定だからです。
相続人廃除が認められるのは、次の理由です。
(1)相続人が重大な侮辱をした
(2)暴力を振るうなどの虐待をした
(3)重大な非行があった
親の言いなりにならなかったなどの軽い理由では認められません。
家庭裁判所に廃除を認めてもらうためには、廃除の根拠になる客観的証拠が不可欠です。
遺言書で廃除する場合、被相続人は死亡しています。
家庭裁判所で証言することはできません。
廃除の客観的証拠を準備しておく必要があります。
相続人が相続人廃除された場合、代襲相続ができます。
相続人廃除は、非常にハードルが高い手続です。
③付言事項は法的効力がない
さまざまな家族の事情から特定の相続人に相続させたくないことがあります。
相続人が配偶者、子ども、親などの直系尊属である場合、遺留分が認められます。
自称専門家は、遺言書の付言事項を書けばいいと言っています。
付言事項に遺留分侵害額請求をしないようにと書けばトラブルにならないといったアドバイスです。
遺言書の付言事項は、単なるお願いです。
法的法力はありません。
付言事項に書いてあっても、遺留分侵害額請求をすることができます。
5遺言書作成を司法書士に依頼するメリット
自筆証書遺言の多くは、専門家のサポートなしで一人で作ります。
遺言書の厳格な書き方ルールが守られていないと、無効になってしまいます。
形式的な書き方ルールは守られていても、内容があいまいで遺言書を実現できないことも多々あります。
相続人の遺留分に配慮されておらず、トラブルに発展することあります。
せっかく遺言書を作るのなら確実な公正証書遺言をおすすめします。
司法書士などの専門家は、遺言書文案作成から公正証書遺言作成、遺言執行までトータルでサポートします。
司法書士からトータルでサポートを受けると、確実な遺言を作成できるから安心できます。
相続人は、相続発生後の面倒な相続手続から解放されます。
遺言者も家族も安心できる公正証書遺言作成を司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。
死後離婚・姻族関係終了届を出しても子どもは代襲相続
1姻族関係終了届(死後離婚)とは
①姻族関係終了届は市区町村役場の届出
姻族とは、配偶者の両親や配偶者の兄弟姉妹などの親族のことです。
配偶者の生前に離婚したら、当然に姻族関係は終了します。
配偶者と離婚しないまま配偶者が死亡した場合、姻族関係は終了しません。
配偶者が死亡した後、希望すれば、姻族関係を終了させることができます。
姻族関係を終了させる届出のことを、姻族関係終了届と言います。
市区町村役場に姻族関係終了届を提出することで、姻族関係を終了させることができます。
姻族関係終了届を俗に死後離婚と言います。
②戸籍に変更はない
市区町村役場に姻族関係終了届を提出することで、姻族関係を終了させることができます。
姻族関係終了届を提出した場合、戸籍に記載されます。
戸籍の記載例
姻族関係終了
【死亡配偶者の親族との姻族関係終了日】令和〇年〇月〇日
【死亡配偶者氏名】〇〇〇〇
【死亡配偶者の戸籍】愛知県名古屋市〇〇区〇〇町〇丁目〇番地 〇〇〇〇
戸籍に記載されるだけです。
今までの戸籍から、除籍されることはありません。
新しい戸籍が自動的に作られることはありません。
③氏に変更はない
姻族関係終了届を提出した場合、今までの氏をそのまま使います。
姻族関係終了届を提出しただけで、復氏することはありません。
復氏をしたい場合、あらためて復氏届が必要です。
復氏届を提出した場合、現在の戸籍から除籍されます。
新しく戸籍を作ってもらうか、婚姻前の戸籍に戻してもらうか選択することができます。
④遺族年金の受給権に影響しない
配偶者が死亡した場合、条件を満たせば遺族年金を受給することができます。
姻族関係終了届を提出しても、死亡配偶者との婚姻関係がなくなることがないからです。
姻族関係終了届を提出しても、遺族年金を受け取ることができます。
遺族年金を受け取りながら姻族関係終了届を提出しても、遺族年金の支給が取り消されることはありません。
遺族年金を返還するように言われることはありません。
姻族関係終了届は、遺族年金と無関係だからです。
⑤配偶者は相続人
姻族関係終了届は、配偶者の死亡後、死亡配偶者の両親や兄弟姉妹などとの関係を終了させるものに過ぎません。
相続が発生した時点の法律上の配偶者は、常に相続人になります。
姻族関係終了届を提出しても提出しなくても、相続人です。
被相続人の配偶者は、相続する権利があります。
死亡配偶者の財産を相続した後、姻族関係終了届を提出することがあります。
姻族関係終了届を出しても、相続が無効になることはありません。
姻族関係終了届は、相続と無関係だからです。
2姻族関係終了届(死後離婚)を出しても子どもに影響しない
①子どもの親族関係に影響しない
姻族関係終了届は、配偶者の死亡後、死亡配偶者の両親や兄弟姉妹などとの関係を終了させる届出です。
死亡配偶者との間に子どもがいる場合、子どもの親族関係に影響はありません。
姻族関係終了届を提出した場合、死亡配偶者と子どもは親子のままです。
死亡配偶者の親と子どもは、祖父母と孫のままです。
死亡配偶者の兄弟姉妹と子どもは、伯叔父・伯叔母と甥姪のままです。
子どもの親族関係は、影響がありません。
姻族関係終了届は、生存配偶者と死亡配偶者の両親や兄弟姉妹などとの関係を終了させるだけの効力があるに過ぎません。
②子どもの扶養義務に影響しない
法律上の扶養義務があるのは、原則として、直系血族と兄弟姉妹です。
場合によっては、3親等内の親族も扶養義務を負うことがあります。
死亡配偶者の父母は、子どもから見ると祖父母だから2親等です。
死亡配偶者の兄弟姉妹は、子どもから見ると伯叔父・伯叔母だから3親等です。
姻族関係終了届を提出した場合、生存配偶者は親族関係がなくなります。
死亡配偶者の父母や兄弟姉妹の扶養義務はありません。
姻族関係終了届を提出しても、子どもの親族関係に影響はありません。
事情によっては、子どもは扶養義務を負うことがあります。
③子どもの戸籍に影響しない
姻族関係終了届を提出した場合、届出をした人の欄に姻族関係終了が記載がされます。
姻族関係終了届を提出しても、子どもの戸籍に影響はありません。
今までの戸籍から、除籍されることはありません。
新しい戸籍が自動的に作られることはありません。
④子どもの氏に影響しない
姻族関係終了届を提出した場合、子どもは今までの氏をそのまま使います。
姻族関係終了届を提出しただけで、子どもの氏が変更されることはありません。
生存配偶者が復氏を希望する場合、姻族関係終了届とは別に復氏届を提出します。
復氏届で氏を変更することができるのは、生存配偶者本人だけです。
生存配偶者が復氏届を出した場合、子どもの氏が自動的に変更されることはありません。
子どもの氏を変更したい場合、家庭裁判所の許可が必要です。
⑤子どもの遺族年金の受給権に影響しない
遺族年金は、配偶者だけでなく子どもにも受給権があります。
子のある配偶者が遺族年金を受給する場合、子は支給停止になります。
子は遺族年金の受給権はあるけど、支給停止になっているに過ぎません。
姻族関係終了届を提出した場合、子どもの遺族年金の受給権に影響しません。
子のある配偶者が再婚した場合、失権します。
失権したら、遺族年金を受け取ることはできません。
死亡配偶者との間に子どもがいる場合、要件を満たせば、子どもが遺族年金を受け取ることができます。
姻族関係終了届は、子どもの遺族年金の受給権に影響しないからです。
⑥子どもの相続に影響しない
姻族関係終了届は、配偶者の死亡後、死亡配偶者の両親や兄弟姉妹などとの関係を終了させる届出です。
死亡配偶者との間に子どもがいる場合、子どもの親族関係に影響はありません。
死亡配偶者との間に子どもがいる場合、子どもは相続人になります。
子どもが財産を相続した後に、姻族関係終了届を出しても相続が無効になることはありません。
姻族関係終了届を出し後に、財産を相続できなくなることはありません。
3姻族関係終了届(死後離婚)を出しても子どもは代襲相続
①代襲相続とは
相続が発生した場合、相続人になる人は法律で決まっています。
相続人になる人は、次のとおりです。
(1)配偶者は必ず相続人になる
(2)被相続人に子どもがいる場合、子ども
(3)被相続人に子どもがいない場合、親などの直系尊属
(4)被相続人に子どもがいない場合で、かつ、親などの直系尊属が被相続人より先に死亡している場合、兄弟姉妹
相続人になるはずだった人が被相続人より先に死亡したため、相続人になるはずだった人の子どもや子どもの子どもが相続することがあります。
これを代襲相続と言います。
相続人になるはずだった人の子どもの子どもが相続することを再代襲相続と言います。
代襲相続ができるのは、相続人になるはずだった人の子どもなど被代襲者の直系卑属だけです。
②死亡配偶者の親が死亡したら子どもは代襲相続人
姻族関係終了届は、生存配偶者と死亡配偶者の両親や兄弟姉妹などとの関係を終了させるだけの効力があるに過ぎません。
子どもの親族関係に影響はありません。
死亡配偶者の親が死亡することがあります。
死亡配偶者の親が被相続人です。
被相続人から見ると、相続人になるはずだった子どもが先に死亡しています。
相続人になるはずだった死亡配偶者の子どもが代襲相続をします。
姻族関係終了届を出しても、子どもの親族関係に影響がないからです。
③死亡配偶者の兄弟姉妹が死亡したら子どもは代襲相続人
死亡配偶者の兄弟姉妹が死亡することがあります。
死亡した兄弟姉妹が被相続人です。
被相続人に子どもがいない場合で、かつ、親などの直系尊属が先に死亡していることがあります。
被相続人に子どもがいない場合で、かつ、親などの直系尊属が先に死亡している場合、相続人は兄弟姉妹です。
死亡配偶者は、被相続人の兄弟姉妹だから相続人になるはずだった人です。
相続人になるはずだった死亡配偶者の子どもが代襲相続をします。
姻族関係終了届を出しても、子どもの親族関係に影響がないからです。
④子どもが未成年なら生存配偶者が遺産分割協議
生存配偶者と死亡配偶者の親族らと折り合いが良くないこともあるでしょう。
生存配偶者は、姻族関係終了届を出すことで親族関係を終了させることができます。
姻族関係終了届を出しても、子どもの親族関係に影響はありません。
死亡配偶者の親や兄弟姉妹は、子どもにとって親族のままです。
死亡配偶者の親や兄弟姉妹が死亡した場合、子どもは相続人になります。
相続が発生した場合、被相続人のものは相続人全員の共有財産になります。
相続財産の分け方は、相続人全員の合意で決定しなければなりません。
相続財産の分け方について合意することは、財産の処分と言えます。
未成年は、物事のメリットデメリットを充分に判断できません。
未成年が財産を処分する場合、親などの親権者が代わりに判断します。
未成年の子どもが相続人になる場合、生存配偶者が親権者でしょう。
生存配偶者が未成年の子どもに代わって、遺産分割協議に参加しなければなりません。
5姻族関係終了届(死後離婚)で注意すること
①撤回ができない
いったん姻族関係終了届が受理されると、撤回はできません。
充分検討して、提出することを決めましょう。
②援助が受けられない
姻族関係が終了した場合、死亡配偶者の両親や兄弟姉妹に対する扶養義務がなくなります。
このことは同時に、死亡配偶者の両親や兄弟姉妹から扶養を受けることもできなくなることを意味しています。
経済的に困ることがあっても、援助は受けられなくなるでしょう。
死亡配偶者との間に子どもがいる場合、子どものための援助も受けにくくなるでしょう。
③死亡配偶者の法要に参加しにくい
死亡配偶者の法要を死亡配偶者の両親や兄弟姉妹が主催する場合、参加しにくくなるかもしれません。
死亡配偶者の血縁関係者から参加を拒まれることも考えられます。
死亡配偶者のお墓が私有地にある場合、お墓参りも難しくなるかもしれません。
共同墓地などだれでもお墓参りができる場所に葬るなどするといいでしょう。
④お墓が別々になる
死亡配偶者のためにお墓を新たに建立せず、家のお墓に葬ることがあるでしょう。
姻族関係終了届を提出すると、自分が死亡したとき、そのお墓に入れてもらうことは難しくなるでしょう。
死亡配偶者と同じお墓に眠ることはできなくなります。
⑤子どもの理解を得られない
死亡配偶者との間に子どもがいる場合、子どもと死亡配偶者の両親や兄弟姉妹の親族関係は影響がありません。
子どもと死亡配偶者の両親や兄弟姉妹の親族関係はそのまま続きます。
子どもから抵抗されることもあるでしょう。
子どもにとって、精神的ダメージであることも想定しておく必要があります。
6姻族関係終了届について司法書士に相談するメリット
姻族関係終了届は、マスコミなどから死後離婚と称して取り上げられています。
本来、配偶者の死別によって婚姻関係が終了しています。
配偶者の一方が死亡した後に、離婚することはできません。
死亡配偶者の両親や兄弟姉妹との関係性を解消する点に注目されたものです。
法律上の扶養義務から逃れられる以上に、嫁は親の介護をして当然など社会通念の押し付けから逃れられるのが大きいでしょう。
死亡配偶者の両親や兄弟姉妹がお金を無心することや生活に過剰に干渉することにストレスをためているケースもあります。
姻族関係終了届は、配偶者の死亡後、死亡配偶者の両親や兄弟姉妹などとの関係を終了させるものに過ぎません。
死亡配偶者の両親や兄弟姉妹などの誤解から、相続放棄をするように迫られることもあるでしょう。
死亡配偶者の両親や兄弟姉妹などが感情的になって、すでに相続した財産を返すように要求されることもあるでしょう。
姻族関係終了届を提出しても、死亡配偶者の財産は相続できます。
相続手続をスムーズに終わらせるために、まず正しい知識を手に入れましょう。
姻族関係終了届は、相続に影響はありません。
遺族年金にも、影響はありません。
生命保険の受け取りにも、影響はありません。
姻族関係終了届のことでご心配があれば、司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。
兄弟姉妹は相続人でも遺留分はない
1兄弟姉妹は相続人になる
①相続人になる人は法律で決まっている
相続が発生したら、親族のうち一定の範囲の人が相続人になります。
だれが相続人になるかについては、民法で決められています。
相続人になる人は、次のとおりです。
(2)~(4)の場合、先順位の人がいる場合、後順位の人は相続人になれません。
(1)配偶者は必ず相続人になる
(2)被相続人に子どもがいる場合、子ども
(3)被相続人に子どもがいない場合、親などの直系尊属
(4)被相続人に子どもがいない場合で、かつ、親などの直系尊属が被相続人より先に死亡している場合、兄弟姉妹
②兄弟姉妹が先に死亡したら甥姪が代襲相続人
相続人になるはずだった人が被相続人より先に死亡したため、相続人になるはずだった人の子どもや子どもの子どもが相続することがあります。
これを代襲相続と言います。
相続人になるはずだった人の子どもの子どもが相続することを再代襲相続と言います。
被相続人に子どもがいない場合で、かつ、親などの直系尊属が被相続人より先に死亡している場合、兄弟姉妹が相続人になります。
相続人になるはずだった兄弟姉妹が被相続人より先に死亡することがあります。
相続人になるはずだった兄弟姉妹の子どもが代襲相続をします。
兄弟姉妹の子どもは、被相続人から見ると甥姪です。
兄弟姉妹が被相続人より先に死亡した場合、甥姪が代襲相続人になります。
③兄弟姉妹の相続分
配偶者がいる場合、法定相続分は次のとおりです
(1)相続人が配偶者と子ども 配偶者2分の1 子ども2分の1
(2)相続人が配偶者と直系尊属 配偶者3分の2 直系尊属3分の1
(3)相続人が配偶者と兄弟姉妹 配偶者4分の3 兄弟姉妹4分の1
兄弟姉妹が数人いる場合、人数で均等に分割します。
兄弟姉妹は、実父実母同じ兄弟姉妹だけではありません。
異父兄弟姉妹や異母兄弟姉妹が含まれるからです。
父だけ同じ兄弟姉妹や母だけ同じ兄弟姉妹は、父母同じ兄弟姉妹の半分になります。
父だけ同じ兄弟姉妹や母だけ同じ兄弟姉妹は、半血兄弟と言います。
2兄弟姉妹に遺留分はない
①遺留分は相続人の最低限の権利
被相続人は、原則として、自分の財産をだれに受け継がせるかは自由に決めることができます。
とはいえ、財産は被相続人が1人で築いたものではないでしょう。
家族の協力があったからこそ、築くことができた財産のはずです。
被相続人の名義になっているからといって、まったく無制約の自由にすることはできません。
今まで協力してきた家族に酷な結果となることがあるからです。
このため、被相続人に近い関係の相続人には相続財産に対して最低限の権利が認められています。
相続財産に対して認められる最低限の権利のことを遺留分と言います。
②兄弟姉妹に遺留分はない
遺留分は、相続人の最低限の権利です。
被相続人に近い関係の相続人にのみ、認められます。
具体的には、配偶者、子ども、親などの直系尊属に認められます。
被相続人に子どもがいない場合で、かつ、親などの直系尊属が被相続人より先に死亡している場合、兄弟姉妹が相続人になります。
兄弟姉妹は相続人になっても、遺留分は認められません。
③甥姪に遺留分はない
遺留分が認められる人のことを遺留分権利者と言います。
兄弟姉妹は相続人になっても、遺留分権利者ではありません。
代襲相続とは、相続人になるはずだった人が被相続人より先に死亡したため、相続人になるはずだった人の子どもが相続することです。
代襲相続があった場合、法定相続分と遺留分は受け継がれます。
甥姪が相続人になるケースは、相続人になるはずだった兄弟姉妹が被相続人より先に死亡したケースです。
兄弟姉妹が被相続人より先に死亡したため代襲相続が発生した場合、被代襲者の法定相続分と遺留分は受け継がれます。
被代襲者は、先に死亡した兄弟姉妹です。
兄弟姉妹には、遺留分がありません。
受け継ぐべき遺留分が認められていないから、代襲相続人にも遺留分は認められません。
甥姪が相続人になる場合、甥姪に遺留分は認められません。
3兄弟姉妹に遺留分がない理由
①兄弟姉妹は関係が遠いから
法定相続人は、配偶者、子ども、親などの直系尊属、兄弟姉妹です。
法定相続人の中で、兄弟姉妹は被相続人との血縁関係が遠いと言えます。
法定相続人の中で、兄弟姉妹は低い相続順位です。
遺留分を認める必要も低いと考えられています。
被相続人との関係が遠いから、兄弟姉妹は遺留分が認められません。
②兄弟姉妹は代襲相続ができるから
被相続人に子どもがいない場合で、かつ、親などの直系尊属が被相続人より先に死亡している場合、兄弟姉妹が相続人になります。
兄弟姉妹が被相続人より先に死亡したため代襲相続が発生した場合、兄弟姉妹の子どもが代襲相続をします。
兄弟姉妹の子どもは、被相続人から見ると甥姪の関係になります。
法定相続人の中で、兄弟姉妹は被相続人との血縁関係が遠いと言えます。
兄弟姉妹に遺留分を認める必要も低いと考えられています。
代襲相続が発生した場合、兄弟姉妹より関係が遠い甥姪が相続人になります。
兄弟姉妹ですら遺留分を認める必要も低いのだから、甥姪に遺留分を認める必要はさらに低いでしょう。
遺留分を認める必要が低い兄弟姉妹よりも、被相続人の意思を優先するべきと言えます。
代襲相続ができるから、兄弟姉妹は遺留分が認められません。
③兄弟姉妹は生計が別だから
財産は被相続人が1人で築いたものではないでしょう。
家族の協力があったからこそ、築くことができた財産のはずです。
今まで協力してきた家族のため、遺留分の制度があります。
兄弟姉妹は、被相続人と同じ世代です。
兄弟姉妹は、お互いに独立して生計を立てているでしょう。
被相続人が財産を築くにあたって、大きな協力していることは少ないでしょう。
配偶者、子ども、親などの直系尊属の協力が大きいはずです。
配偶者、子ども、親などの直系尊属は、被相続人の財産に依存して生活をしていたでしょう。
配偶者、子ども、親などの直系尊属を優先するのが妥当であると考えられます。
生計が別だから、兄弟姉妹は遺留分が認められません。
4遺言書の内容と異なる遺産分割協議ができる
①兄弟姉妹は遺留分侵害額請求をすることはできない
遺言書は、遺言者の意思を示すものです。
被相続人の財産は、原則として、被相続人の意思が最大限尊重されるべきものでしょう。
相続人としても、被相続人の意思を尊重し、遺言書の内容を実現させてあげたいと思うでしょう。
兄弟姉妹が相続人になる場合、兄弟姉妹に遺留分はありません。
被相続人が遺言書を作成した場合、一部の相続人はまったく財産を相続させない内容であることがあります。
財産をまったく相続させない遺言書であっても、兄弟姉妹は異議を述べることはできません。
兄弟姉妹には、遺留分がないからです。
兄弟姉妹には遺留分が認められていないから、遺留分侵害額請求をすることはできません。
②相続人全員の合意で遺産分割協議
ときには相続人全員が他の分け方の方がいいと考えていることがあります。
相続人全員にとって不都合になる遺言書をあえて執行する必要はありません。
相続人全員で相続財産の分け方を合意した方が合理的です。
相続人全員が合意すれば、遺言書の内容と異なる内容で遺産分割協議をすることができます。
③遺産分割協議に受遺者の同意
遺言を確認したところ、法定相続人や法定相続人以外の人に、財産を譲ってあげることが記載されていることがあります。
遺言書の内容どおりにしないで相続人の話し合いで遺産分割をしたい場合、あらかじめ受遺者の同意を受けておく必要があります。
遺言書で財産を受け取れるはずだったのに、一方的に受け取る権利を奪うことはできないからです。
④遺産分割協議に遺言執行者の同意
遺言書で遺言執行者が指名されている場合があります。
遺言執行者がいる場合、相続人は遺言書の記載にかかる相続財産を処分することはできなくなります。
遺言書に記載されているとおりに遺言執行者が財産を分配する義務があるからです。
遺言書の内容を無視して相続人全員の合意で遺産分割協議」をしたい場合、あらかじめ遺言執行者の同意を受けておく必要があります。
5遺言書作成を司法書士に依頼するメリット
自筆証書遺言の多くは、専門家のサポートなしで一人で作ります。
その結果、遺言書の厳格な書き方ルールが守られておらず、無効になってしまいます。
形式的な書き方ルールは守られていても、内容があいまいであることがあります。
内容があいまいな遺言書は、実現することが困難です。
相続人の遺留分に配慮されていないことがあります。
相続人間でトラブルに発展するでしょう。
せっかく遺言書を作るのなら確実な公正証書遺言をおすすめします。
司法書士などの専門家は相続人になる予定の人の遺留分にも配慮します。
遺言書文案作成から公正証書遺言作成、遺言執行まで、司法書士がトータルでサポートします。
司法書士からトータルでサポートを受けると、遺言者は確実な遺言を遺せるので安心できるでしょう。
相続発生後も、相続人は面倒な相続手続から解放されます。
遺言者も家族も安心できる公正証書遺言作成を司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。
離婚後でも子どもは相続人
1相続人になる人は法律で決まっている
相続が発生したら、親族のうち一定の範囲の人が相続人になります。
誰が相続人になるかについては、民法で決められています。
相続人になる人は、次のとおりです。
②~④の場合、先順位の人がいる場合、後順位の人は相続人になれません。
子どもがいるのに、親などの直系尊属が相続人になることはないのです。
①配偶者は必ず相続人になる
②被相続人に子どもがいる場合、子ども
子どもがいたが被相続人より先に死亡していた場合、子どもの子ども
③被相続人に子どもがいない場合、親などの直系尊属
④被相続人に子どもがいない場合で、かつ、親などの直系尊属が被相続人より先に死亡している場合、兄弟姉妹
兄弟姉妹が被相続人より先に死亡している場合、兄弟姉妹の子ども
2離婚した元配偶者は相続人ではない
配偶者は、必ず相続人になります。
配偶者とは、相続が発生した時点の配偶者です。
相続が発生する直前に配偶者になった場合、配偶者です。
配偶者だから、相続人になります。
相続が発生する直前に配偶者でなくなった場合、配偶者でありません。
配偶者ではないから、相続人になりません。
離婚した元配偶者は、相続人ではありません。
配偶者とは、法律上の配偶者です。
内縁の配偶者や事実婚の配偶者は、相続人になりません。
被相続人が再婚していた場合、再婚配偶者は相続人になります。
相続が発生する直前に法律上の配偶者になった場合、配偶者です。
配偶者だから、相続人になります。
3離婚後でも子どもは相続人になる
①父母が離婚しても子どもは相続人になる
被相続人に子どもがいる場合、子どもは相続人になります。
実の子どもは、もちろんのこと、被相続人の子どもです。
被相続人が養親になる養子縁組した場合、養子は被相続人の子どもです。
被相続人が認知した子どもは、被相続人の子どもです。
出生前の胎児も、被相続人の子どもに含まれます。
被相続人が離婚した後、元配偶者が引き取った子どもは、被相続人の子どもです。
被相続人の子どもだから、相続人になります。
元配偶者が引き取っても、子どもでなくなることはないからです。
被相続人が離婚しても、親権をどちらが持っていたとしても、子どもでなくなることはありません。
長年音信不通であったとしても、行方不明であっても、子どもであることには変わりません。
父母が離婚しても、子どもは相続人になります。
②戸籍から抜けても子どもは相続人になる
離婚した後、元配偶者が引き取った子どもが、被相続人の戸籍から抜けていることがあります。
元配偶者の戸籍に入っている場合、相続に影響はありません。
元配偶者の戸籍に入っていても、被相続人の子どもだからです。
被相続人の戸籍から抜けても、子どもは相続人になります。
③氏が違っていても子どもは相続人になる
離婚した後、婚姻によって氏を変更した人は婚姻前の氏に戻ります。
離婚した元配偶者が婚姻前の氏に戻った場合、子どもを引き取っていれば子どもの氏を変更するでしょう。
被相続人の氏と別の氏を使っていることになります。
子どもが被相続人と別の氏を使っている場合、相続に影響はありません。
子どもが被相続人と別の氏を使っていても、被相続人の子どもだからです。
子どもが被相続人と別の氏を使っていても、子どもは相続人になります。
④親権がなくても相続人になる
離婚するとき、子どもが未成年である場合があります。
父母のいずれかが親権者になります。
子どもの親権者がだれであっても、相続に影響はありません。
子どもの親権者がだれであっても、被相続人の子どもだからです。
被相続人の元配偶者が親権者であっても、子どもは相続人になります。
親権をどちらが持っていたとしても、子どもでなくなることはないからです。
被相続人の元配偶者が親権者の場合、子どもは相続人になります。
⑤養子になっていても相続人になる
養子縁組とは、血縁関係による親子関係の他に、法律上の親子関係を作る制度です。
離婚した後、元配偶者が別の人と再婚している場合があります。
元配偶者の再婚相手と子どもが養子縁組をすることがあります。
養子縁組には、2種類あります。
普通養子と特別養子です。
子どものいない夫婦が養子縁組をする、配偶者の連れ子と養子縁組するといったことは日常的に聞くことあります。
一般的に、単に「養子」と言ったら、普通養子を指していることがほとんどです。
普通養子による養子縁組では、養子縁組をした後も血縁関係のある実親との親子関係は続きます。
普通養子は、養親も相続するし、実親も相続します。
普通養子は、養親の子どもであって実親の子どもだからです。
特別養子は、厳格な要件で家庭裁判所が決定する養子縁組です。
特別養子では、養子縁組をした後、血縁関係のある実親との親子関係がなくなります。
実の父母による著しい虐待がある場合やその他特別の事情がある場合で、かつ、子の利益のため特に必要があるときに、認められます。
特別養子は、養親を相続しますが、実親は相続しません。
⑥離婚のとき父母が相続しないと約束しても相続人になる
離婚するときに、相続しないと父母が約束する場合があります。
相続が発生した後、相続したくない場合は相続放棄をすることができます。
相続放棄は、相続発生後に家庭裁判所に対してする手続です。
相続発生前に、相続放棄をすることはできません。
相続放棄は、相続人本人の意思が重視されます。
相続人本人は、子ども自身です。
父母が約束しても、何の意味もありません。
離婚するときに、相続しないと念書を書いて渡している場合があります。
念書を書いて、実印押印のうえ印鑑証明書を添えた場合でも、まったく価値がありません。
無意味な念書があっても、子どもは相続人になります
相続財産の分け方は、相続人全員の合意で決定します。
一部の相続人を含めないで相続財産の分け方について合意をしても無効です。
相続しないと念書があるからと言っても、銀行も法務局も相手をしてくれません。
離婚のとき父母が相続しないと約束しても、子どもは相続人になります。
4子どもには遺留分がある
被相続人が離婚しても、被相続人の子どもは相続人です。
元配偶者が引き取った子どもであっても、相続人になります。
被相続人が離婚しても、親権をどちらが持っていたとしても、長年音信不通であったとしても、子どもであることには変わらないからです。
子どもには、遺留分があります。
家庭裁判所で廃除が認められた場合を除いて相続させない場合、トラブルになるでしょう。
長年、養育費を払ってきたから、もう充分だ。
長い間、顔も見ていないから、相続人にしたくない。
離婚した当時に慰謝料を払ってから、相続財産を渡したくない。
離婚後に築いた財産だから、再婚配偶者と再婚配偶者の子どもに相続させたい。
これらは、どれも理由になりません。
子どもにまったく相続させない内容の遺言書を書いた場合、遺留分侵害額請求がされるおそれがあります。
5子どもが相続をしたくない場合は相続放棄
離婚後に元配偶者が引き取って育てていた場合、子どもは被相続人と疎遠になっていることが多いでしょう。
疎遠な相続人がいる場合、相続トラブルに発展することが多いものです。
長年、顔も見ていない被相続人の相続に関わり合いになりたくないという気持ちになるかもしれません。
相続手続に関わりたくない場合、相続放棄をすることができます。
相続放棄は、被相続人の借金を受け継ぎたくない場合以外でもすることができます。
相続放棄の理由は、借金を引き継ぎたくないために限られるものではありません。
相続手続に関わりたくないためであっても、差し支えありません。
家庭裁判所に相続放棄の手続をして、認めてもらえれば相続手続から解放されます。
他の相続人から連絡があったのに、無視するケースがあります。
面倒くさい、関わり合いになりたくないという意思を無視する形で示しているのかもしれません。
他の相続人からの連絡を無視した場合、相続手続が完了しません。
他の相続人としても、相続手続を進めるために何度でも連絡してくるでしょう。
相続財産の分け方は相続人全員で合意する必要があるからです。
相続人全員でなければ無効になります。
他の相続人からの連絡を無視すると、余計に関わり続けることになります。
相続が発生したら、必ず、相続手続に関わることになります。
関わり合いになりたくない場合、相続放棄の手続をとることができます。
6遺言書を作成すれば遺産分割協議は不要
疎遠な相続人がいる場合、高確率で相続トラブルに発展します。
被相続人とも他の相続人とも疎遠であった場合、連絡しても無視されることがあります。
関わり合いになりたくない気持ちで無視している場合もあるし、不審な連絡があったと思って無視している場合もあります。
相続人が行方不明である場合、不在者財産管理人の選任を申し立てることができます。
家庭裁判所に行方不明の相続人の代わりの人を選んでもらう手続です。
相続人が行方不明の場合、不在者財産管理人が行方不明の人の代わりに遺産分割協議をしてもらうことができます。
住所が分かっていて、そこに住んでいることが分かっている場合、不在者とは言えません。
不在者でないから、家庭裁判所に不在者財産管理人を選任してくださいとお願いすることはできません。
住所が分かっていて、そこに住んでいることが分かっている場合、粘り強く連絡して欲しいとお願いするしかなくなります。
疎遠な相続人がいる場合、相続が発生した後に家族は大変大きな苦労を背負うことになります。
相続財産の分け方は、相続人全員で合意する必要があるからです。
一部の相続人を含まないで相続財産の分け方を合意しても無効になるからです。
被相続人が遺言書で相続財産の分け方を指定しておけば解決します。
遺言書のとおり、分ければいいからです。
遺言書があれば、相続財産の分け方の合意は必要ありません。
遺言書で相続財産の分け方を指定したうえで、遺言執行者を指定すると安心です。
煩わしい相続手続を遺言執行者におまかせできるからです。
7離婚歴のある人の相続を司法書士に依頼するメリット
遺言書を書くというと真っ先に思い浮かぶのが、財産に関することでしょう。
「揉めるほど財産はないから」などと言って、遺言書を書き渋る人は多くいます。
実際は家族でトラブルになって、家庭裁判所の助力が必要になるケースは年々増えています。
家庭裁判所に持ち込まれる事件の3分の1は、資産総額1000万円以下です。
疎遠な相続人がいると、話し合いはまとまりにくくなります。
遺言書があれば、家族のトラブルは確実に減ります。
遺言書があれば、相続手続は格段にラクになります。
判断能力が心配になった時点では、遺言書は作れません。
高齢になると判断能力が心配になる方が多くなります。
家族をトラブルから守りたい方は早めに司法書士などの専門家に遺言書作成を依頼することをおすすめします。
死後離縁をしても養子は相続人
1死後離縁とは死亡後に養子縁組を解消すること
養子縁組とは、血縁関係による親子関係の他に、法律上の親子関係を作る制度です。
養親と養子が合意して市区町村役場に届出をして、養子縁組をします。
養親と養子が合意して、養子縁組を解消することができます。
養親と養子が合意して市区町村役場に届出をして、養子縁組を解消します。
養親と養子のどちらかが死亡した後に、養子縁組を解消することができます。
死後離縁とは、養親と養子のどちらかが死亡した後に、養子縁組を解消することです。
養子縁組を解消したら、亡くなった養親や亡くなった養子の親族との親族関係が終了になります。
養親と養子の一方が死亡しても、何もしなければ養子縁組は終了しません。
死後離縁の手続をしてはじめて、親族関係が終了になります。
2死後離縁をしても養子は相続人
死後離縁とは、養親と養子のどちらかが死亡した後に、養子縁組を解消することです。
養親が死亡した後に、死後離縁をすることができます。
死後離縁をした場合、養子は養親を相続することができます。
養親が死亡した時点で、養子は養親の子どもです。
被相続人の子どもは、相続人になります。
相続が発生したとき、養子縁組が有効だったからです。
死後離縁をしたからと言って、さかのぼって養子でなくなるわけではありません。
相続が発生した場合、被相続人のものは相続人全員の共有財産になります。
相続財産は、相続人全員で、分け方の合意をする必要があります。
死後離縁をしても、養子は相続人です。
死後離縁をした養子を含めずに、他の相続人だけで分け方の合意をしても意味がありません。
死後離縁をした養子を含めない場合、相続人全員でないからです。
養子が相続を希望しない場合、相続放棄をする必要があります。
死後離縁をした場合でも、被相続人のマイナスの財産を相続することになります。
死後離縁をした養子は、養親の相続人だからです。
相続手続が終わった後に、死後離縁をすることができます。
死後離縁をした場合でも、養親から受け継いだ財産を返す必要はありません。
死後離縁をしたからと言って、さかのぼって養子でなくなるわけではないからです。
3死後離縁の効果
①死亡した養親の親族を扶養する義務がなくなる
離縁をした場合、養子縁組を解消します。
死亡した養親の親族との親族関係が終了になります。
法律上、直系血族と兄弟姉妹は互いに扶養する義務があります。
養子縁組をすると、養親と養子の間に法律上の親子関係が作られます。
養子縁組の効力がある場合、養子は養親だけでなく、養親の親族も扶養する義務があります。
養親と養子の一方が死亡しても、何もしなければ養子縁組は終了しません。
何もしなければ、養親の親族を扶養する義務があることには変わりはありません。
死後離縁をした場合、死亡した養親の親族との親族関係が終了になります。
死亡した養親の親族との親族関係が終了した場合、死亡した養親の親族を扶養する義務がなくなります。
②死亡した養親の親族に相続が発生しても相続しない
養子縁組を解消した場合、死亡した養親の親族との親族関係が終了になります。
死亡した養親の親族が死亡しても、相続人になることはありません。
死亡した養親の親族のプラスの財産もマイナスの財産も受け継ぐことがなくなります。
相続が発生した場合、被相続人のものは相続人全員の共有財産になります。
相続財産は、相続人全員で、分け方の合意をする必要があります。
死亡した養親の親族の相続財産の分け方について、話し合いに参加する必要もなくなります。
死亡した養親の親族が死亡しても、相続人にならないからです。
死亡した養親の実子や養親の兄弟姉妹と折り合いがよくない人もいるでしょう。
養親が死亡した後にまで関わり合いを持ちたくないと思う人もいます。
死後離縁をすると、扶養義務がなくなり、相続することもなくなります。
折り合いがよくない養親の親族と関わりを持つ必要がなくなります。
死亡した養親の親族が経済的に困ったときも、体が不自由になって介護などが必要になったときも協力する必要がありません。
死亡した養親の親族を相続することもなくなります。
親族間のトラブルから、逃れることができます。
③養子縁組前の氏に変更
養子縁組を解消した場合、原則として、養子は養子縁組前の氏に戻ります。
養子縁組から7年以上経っている場合、養子縁組中の氏をそのまま使うことができます。
養子縁組中の氏を使う場合、3か月以内に届出をする必要があります。
養子縁組中の氏を使う届出を離縁の際に称していた氏を称する届出と言います。
4死後離縁には家庭裁判所の許可が必要
養親と養子が合意して、養子縁組を解消することができます。
養親と養子が合意できるのは、養親と養子の両方が生きている間だけです。
養親と養子の一方が死亡した後は、養親と養子が合意することはできません。
養子縁組の当事者の一方が死亡した後、離縁しようとするときは、家庭裁判所の許可が必要です。
死後離縁許可の申立てと言います。
死後離縁許可の申立てができるのは、養子縁組当事者のみです。
死亡した養親の親族が申し立てることはできません。
養親と養子の両方が死亡したら、死後離縁をすることはできません。
養子は15歳未満の場合、離縁した後に法定代理人になる人が代わりに手続きをします。
死後離縁許可の申立先は、申立人の住所地の家庭裁判所です。
家庭裁判所の管轄は、裁判所のホームページで調べることができます。
死後離縁許可の申立書に添付する書類は、次のとおりです。
①養親の戸籍謄本
②養子の戸籍謄本
書類に問題がなければ、原則として、許可されます。
相続や扶養などで多大な恩恵を受けておきながら扶養を免れたい場合や死亡した養子に幼い子どもがいて離縁すると死亡した養子の子どもに重大な支障がある場合は認められません。
死後離縁許可の申立てをしてから、1~2か月ほどで決定がされます。
5市区町村役場へ離縁届の提出
死後離縁が認められた場合でも、家庭裁判所から自動的に役所へ連絡されることはありません。
家庭裁判所の手続とは別に、市区町村役場に離縁届を提出する必要があります。
死後離縁許可は、審判という形式で行われます。
審判は、確定する必要があります。
審判確定証明書を家庭裁判所に請求しておきましょう。
離縁届に添付する書類は、次のとおりです。
①死後離縁審判決定書謄本
②審判確定証明書
③養親の戸籍謄本
④養子の戸籍謄本
⑤本人確認書類
届出には、証人2人必要です。
養子縁組を解消すると、原則として、養子は養子縁組前の氏に戻ります。
養子縁組から7年以上経っている場合、養子縁組中の氏をそのまま使うことができます。
死後離縁後も養子縁組中の氏をそのまま使うことを希望する場合は、離縁届と一緒に、離縁の際に称していた氏を称する届出も提出します。
6特別養子が成年になったら離縁はできない
養子には、2種類あります。
普通養子と特別養子です。
一般的に、単に「養子」と言ったら、普通養子を指していることがほとんどです。
特別養子では、養子縁組をした後、血縁関係のある実親との親子関係がなくなります。
特別養子の縁組は、同時に実親との親子の縁を切る重大な決定です。
厳格な要件で、家庭裁判所が決定します。
実の父母による著しい虐待がある場合やその他特別の事情がある場合で、かつ、子の利益のため特に必要があるときに、認められます。
特別養子の離縁は、法律に明記された重大な理由があるときだけ、家庭裁判所が決定します。
養親による著しい虐待がある場合やその他特別の事情がある場合など、厳格な要件があてはまるときだけ離縁が認められます。
離縁を認める厳格な要件に「実父母が相当の監護をすることができること」があります。
監護が必要なのは、未成年だけです。
監護が不要になる成年になったら、離縁は認められません。
7養子がいる相続を司法書士に依頼するメリット
相続税を減らすために、税金の専門家から養子縁組をすすめられることがあります。
税金を減ることだけ強調されて、他のことに考えが及んでいない方も多いです。
税金について考慮することは大切ですが、税金のメリットだけ注目すると後悔することになるでしょう。
死後離縁を考える人の多くは、生前から親族間の関わり合いで疲れ果てています。
養親のためを思って、何も言えないのです。
死亡した養親の相続で、何も対策していないとトラブルが目に見える形になります。
少なくとも、相続財産の分け方で、相続人全員の合意がなくても、相続手続が進められるようにしておきましょう。
被相続人が遺言書を書いておけば、トラブルは大幅に減ります。
内容不備になることの少ない確実な公正証書遺言を作成することをおすすめします。
家族の幸せを思って築いた財産なのに、トラブルのタネになっては悲しいでしょう。
家族のために、公正証書遺言を作成したい方は、司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。
異父兄弟・異母兄弟が相続人
1相続人になる人は法律で決まっている
相続が発生すると、配偶者や子どもが相続することは多くの方がご存知でしょう。
相続人になる人は、民法で決められています。
相続人になる人は、次のとおりです。
①配偶者は必ず相続人になる
②被相続人に子どもがいる場合、子ども
③被相続人に子どもがいない場合、親などの直系尊属
④被相続人に子どもがいない場合で、かつ、親などの直系尊属が被相続人より先に死亡している場合、兄弟姉妹
2親の相続で異父兄弟・異母兄弟が相続人
①被相続人の子どもが相続人
相続が発生した場合、被相続人の子どもが相続人になります。
自分の親が死亡した場合、自分は相続人になります。
自分の親が死亡した場合、自分の兄弟姉妹が相続人になります。
自分の兄弟姉妹は、自分の親から見たら子どもにあたるからです。
②前婚の子どもと後婚の子どもが相続人
被相続人に再婚歴があることがあります。
前婚配偶者との間に子どもがいることがあります。
後婚配偶者との間に子どもがいることがあります。
前婚配偶者との間の子どもも後婚配偶者との間の子どもも、被相続人の子どもです。
被相続人の子どもであることに、ちがいはありません。
被相続人の子どもだから、相続人になります。
③被相続人の実子と養子が相続人
被相続人が養親になる養子縁組をしていることがあります。
被相続人が養子縁組をした場合、養子は被相続人の子どもになります。
被相続人に実子がいても実子がいなくても、養子は被相続人の子どもです。
被相続人に実子がいても実子がいなくても、養子は被相続人の相続人になります。
被相続人の実子と養子は、同じ被相続人の子どもです。
被相続人の子どもだから、相続人になります。
④養子に行った子どもが相続人
被相続人の実子が第三者の養子となる養子縁組をしていることがあります。
養子縁組には、2種類あります。
普通養子と特別養子です。
養子縁組とは、血縁関係による親子関係の他に法律上の親子関係を作る制度です。
子どものいない夫婦が養子縁組をする、配偶者の連れ子と養子縁組するといったことは日常的に聞くことあります。
一般的に、単に「養子」と言ったら、普通養子を指していることがほとんどです。
普通養子では、養子縁組をする当事者が合意が重視されます。
当事者が合意をして役所に届出をするだけで、養子縁組ができます。
特別養子は、子どもの福祉が重視されます。
子どもの福祉のため、家庭裁判所が慎重に判断して決定します。
被相続人の実子が第三者の養子となる養子縁組をしている場合、普通養子による養子縁組であれば被相続人の子どもです。
被相続人の子どもだから、相続人になります。
被相続人の実子が第三者の養子となる養子縁組をしている場合、特別養子による養子縁組であれば被相続人の子どもではありません。
特別養子による養子縁組をした場合、実親との親子関係がなくなります。
被相続人の子どもでなくなるから、相続人にはなりません。
⑤嫡出子と非嫡出子が相続人
嫡出子とは、法律上の婚姻関係にある夫婦の間に誕生した子どもです。
非嫡出子は、法律上の婚姻関係にない男女の間に誕生した子どもです。
法律上の婚姻関係にない男女の間に誕生した場合、父と子どもの親子関係は明らかではありません。
父と子どもについて法律上の親子関係を発生させるためは、認知が必要です。
母と子どもは、分娩の事実によって親子関係は明らかです。
母と子どもは、認知は不要です。
認知した子どもは、法律上の親子関係があります。
法律上の婚姻関係があっても婚姻関係がなくても、同じ子どもです。
嫡出子も非嫡出子も、同じ子どもです。
被相続人の子どもだから、相続人になります。
以前は、非嫡出子は嫡出子の半分の相続分しかありませんでした。
平成25年9月4日最高裁判所大法廷は、相続分を半分にする取り扱いは憲法違反であると判断しました。
法律上の婚姻関係にないカップルの間に生まれることは、子どもは選べません。
子どもは親を選べませんから、子どもに責任がありません。
現在は、法律上の婚姻関係にあるカップルの間に生まれた子どもと相続分も同じです。
最高裁判決を受けて、平成25年9月4日以降に発生した相続では、相続分は同じ取り扱いをします。
⑥異父兄弟・異母兄弟が先に死亡したら代襲相続
自分の親が死亡する前に、異父兄弟・異母兄弟が先に死亡することがあります。
異父兄弟・異母兄弟は、被相続人から見たら子どもです。
相続人になるはずの人が被相続人より先に死亡した場合、代襲相続が発生します。
代襲相続とは、相続人になるはずだった人の子どもや子どもの子どもが相続することです。
親の相続で異父兄弟・異母兄弟が先に死亡した場合、異父兄弟・異母兄弟の子どもが相続人になります。
3異父兄弟・異母兄弟が相続人なのに自分は相続人になれないケース
①父の再婚相手の子どもではない
自分の父に再婚歴があることがあります。
父の再婚相手が死亡した場合、再婚相手の子どもが相続人になります。
父が再婚しても、父の再婚相手と自分が親子になることはありません。
父の再婚相手の子どもではありません。
父の再婚相手の子どもではないから、相続人にはなりません。
父と再婚相手との間に子どもがいることがあります。
自分から見ると、異父兄弟です。
父の再婚相手が死亡した場合、異父兄弟は再婚相手の子どもです。
被相続人の子どもだから、相続人になります。
父の再婚相手が死亡した場合、異父兄弟が相続人なのに自分は相続人になりません。
②再婚相手と養子縁組をしたら子どもになる
父が再婚しても、父の再婚相手と親子になることはありません。
父の再婚相手と養子縁組をすることができます。
養子縁組は、血縁関係による親子関係の他に法律上の親子関係を作る制度です。
父の再婚相手と養子縁組をした場合、親子関係が作られます。
父の再婚相手の子どもになるから、相続人になります。
③父が先に死亡しても代襲相続はできない
相続が発生した場合、配偶者は必ず相続人になります。
父の再婚相手が死亡する前に父が死亡した場合、父は相続人になるはずだった人です。
代襲相続とは、相続人になるはずだった人の子どもや子どもの子どもが相続することです。
父が先に死亡した場合、相続人になるはずだった人の子どもが代襲相続人になると思うかもしれません。
代襲相続における相続人になるはずだった人を被代襲者と言います。
被代襲者になれるのは、被相続人の子どもなどの直系卑属であるか被相続人の兄弟姉妹のみです。
被相続人の配偶者は、被代襲者になることはできません。
父が先に死亡しても、代襲相続はできません。
4異父兄弟・異母兄弟が相続人になれないケース
母が死亡した場合、母の子どもが相続人になります。
父の再婚相手との間に子どもがいても、母の子どもではありません。
父に再婚相手との間の子どもがいる場合、異父兄弟です。
異父兄弟は、母の子どもではありません。
母の子どもではないから、母の相続で相続人にはなりません。
5異父兄弟・異母兄弟が死亡したときの相続人
①父母の一方だけ同じ兄弟姉妹は兄弟姉妹
相続人になる人は、法律で決まっています。
被相続人に子どもがいない場合で、かつ、親などの尊属が被相続人より先に死亡している場合、兄弟姉妹が相続人になります。
兄弟姉妹が相続人になるというと、父母の両方が同じ兄弟姉妹をイメージしがちです。
相続人になる兄弟姉妹とは、父母の両方が同じ兄弟姉妹だけではありません。
父母の一方だけ同じ兄弟姉妹も、兄弟姉妹です。
異父兄弟や異母兄弟は、父母の一方だけ同じ兄弟姉妹です。
父母の一方とだけ養子縁組をした養子も、兄弟姉妹です。
②異父兄弟・異母兄弟の法定相続分
兄弟姉妹が相続人になる場合、父母の両方が同じ兄弟姉妹だけではありません。
異父兄弟・異母兄弟も、相続人になります。
親が死亡したとき、子どもの法定相続分は平等です。
異父兄弟も異母兄弟も、実子も養子も、嫡出子も非嫡出子も、同じ相続分です。
親から見たら、平等に子どもだからです。
兄弟姉妹が相続人になる場合、父母の両方が同じ兄弟姉妹と父母の一方が同じ兄弟姉妹は同じ相続分ではありません。
父母の一方が同じ兄弟姉妹の相続分は、父母の両方が同じ兄弟姉妹の半分です。
6遺言書作成がおすすめ
①遺産分割協議は相続人全員で
相続が発生した場合、被相続人のものは相続人全員の共有財産になります。
相続人全員の共有財産だから、一部の相続人が勝手に処分することはできません。
相続財産の分け方は、相続人全員の合意で決めなければなりません。
異父兄弟や異母兄弟がいる場合、被相続人や被相続人の家族と疎遠であることが多いでしょう。
長期間疎遠になっていても、相続人全員の合意が不可欠です。
一部の相続人の合意がない場合、相続手続を進めることができません。
②遺言書があれば遺産分割協議は不要
異父兄弟や異母兄弟がいる場合、関係性がいいことはあまりないでしょう。
相続手続に協力してもらえないことがあります。
相続手続に協力してもらえないからと言って先延ばしをすると、相続手続はますます難しくなります。
相続人に異父兄弟や異母兄弟がいる場合、遺言書作成がおすすめです。
すべての財産の行き先が遺言書で決められていたら、遺産分割協議が不要になるからです。
遺言書を作成するのであれば、無効になりにくい公正証書遺言がおすすめです。
③遺言書作成は遺留分に注意
被相続人は、原則として、自分の財産をだれに受け継がせるかは自由に決めることができます。
とはいえ、財産は被相続人が1人で築いたものではなく、家族の協力があって築くことができたもののはずです。
被相続人の名義になっているからといって、まったく無制約の自由にすると今まで協力してきた家族に酷な結果となることもあります。
被相続人に近い関係の相続人には相続財産に対して最低限の権利が認められています。
相続財産に対して、認められる最低限の権利のことを遺留分と言います。
遺留分は、兄弟姉妹以外の相続人に認められます。
被相続人の子どもが相続人になる場合、遺言書で遺留分を奪うことはできません。
遺留分に満たない財産を分与する遺言書であっても、作成すること自体はできます。
遺留分に満たない場合、相続人は遺留分侵害額請求をすることができます。
遺留分侵害額請求をする場合、相続人間の深刻なトラブルに発展するでしょう。
遺言書を作成する場合、遺留分に配慮して作成しましょう。
7相続人調査を司法書士に依頼するメリット
相続が発生したら、最初の難関は戸籍謄本の収集です。
本籍地の変更や国による戸籍の作り直し(改製)で多くの方は、何通もの戸籍を渡り歩いています。
慣れないと戸籍集めは、タイヘンです。
古い戸籍は現在と形式が違っていて読みにくかったり、手書きの達筆な崩し字で書いてあって分かりにくかったりするからです。
本籍地を何度も変更している方や結婚、離婚、養子縁組、離縁を何度もしている方は、戸籍をたくさん渡り歩いています。
戸籍収集に、膨大な手間と時間がかかることが多くなります。
戸籍には被相続人の結婚や離婚、子どもや養子の存在といった身分関係がすべて記録されています。
ときには、家族が知らない相続人が明らかになることもあります。
相続が発生した後に、認知を求めて裁判になることもあります。
相続人を確定させるために戸籍を集めるだけでも、知識のない一般の人にはタイヘンな作業です。
家族の方が知らない相続人が明らかになると、精神的な負担はさらに大きいものになります。
相続手続のうち、専門家に任せられるものは任せてしまえば、事務負担を軽減することができます。
戸籍や住民票の取り寄せも司法書士は代行します。
相続人調査でお困りの方は、司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。
失踪宣告後は失踪届で戸籍に反映
1失踪宣告で死亡と見なされる
①残された家族のため失踪宣告
相当長期間、行方不明になっている場合、死亡している可能性が高い場合があります。
条件を満たした場合、死亡の取り扱いをすることができます。
失踪宣告とは、行方不明の人が死亡した取り扱いとするための手続です。
失踪宣告がされたら、たとえ死亡していなくても死亡した取り扱いをします。
行方不明が長期化した場合、家族が困ります。
家族であっても、行方不明の人の財産を処分することができません。
行方不明者の配偶者は、再婚することができません。
残された家族のために、行方不明者を死亡したものと扱う制度が失踪宣告の制度です。
失踪宣告がされると、死亡した取り扱いをします。
失踪宣告がされた人に、相続が発生します。
相続財産は、相続人全員の共有財産になります。
相続人全員の合意があれば、相続財産を自由に分けることができます。
遺産分割協議によって相続した後は、相続人が自由に処分をすることができます。
②失踪宣告には条件がある
失踪宣告には、2種類があります。
普通失踪と特別失踪(危難失踪)です。
失踪宣告とは、行方不明の人が死亡した取り扱いとするための手続です。
死亡したことが確認できないのに、死亡と見なされます。
死亡と見なされるという強い効果があります。
失踪宣告が認められるためには、次の条件があります。
(1)行方不明の人が生死不明であること
(2)生死不明のまま一定期間継続していること
2失踪宣告は家庭裁判所で審判
①失踪宣告の審判は2週間で確定
家庭裁判所に失踪宣告の申立てをした後、家庭裁判所が死亡と認めていいか調査します。
家庭裁判所が死亡と認めていいと判断した場合、失踪宣告の審判がされます。
家庭裁判所が決定したことについて不服がある人がいる場合があります。
失踪宣告の審判がされた後、不服の受付をします。
不服の受付期間は、2週間です。
失踪宣告の審判がされた後、2週間経過してもだれも不服の申立てがなかったら確定します。
②家庭裁判所から官報公告がされる
失踪宣告の審判が確定した場合、家庭裁判所は官報でお知らせをします。
官報を見ている人は、少ないでしょう。
官報でお知らせするだけで、家庭裁判所は個別に連絡しません。
申立人や利害関係人に、失踪宣告が確定しましたよとお知らせがされることはありません。
市区町村役場に、失踪宣告が確定しましたよとお知らせがされることはありません。
③確定証明書取得は家庭裁判所に申請
家庭裁判所が失踪宣告の審判をした場合、審判書は自動的に送られてきます。
審判書が届いてから2週間だれも不服を申し立てなければ、審判は確定します。
審判が確定しても、自動で確定証明書は送られてきません。
失踪宣告の審判が確定した後、確定証明書が必要になります。
いつ確定するのか確認して家庭裁判所に発行申請をします。
3市区町村役場に失踪届提出で戸籍に反映
①失踪宣告確定後は死亡届でなく失踪届
失踪宣告は、家庭裁判所の審判です。
家庭裁判所が失踪宣告の審判をした後、審判が確定しても市区町村役場に連絡されることはありません。
失踪宣告の審判が確定した後に、市区町村役場に届出が必要です。
失踪宣告の審判が確定した後に市区町村役場に提出する届出を失踪届と言います。
死亡したときに提出する死亡届とは別の書類です。
失踪届は、多くの市区町村役場でホームページからダウンロードができます。
失踪届が受理されることで、失踪宣告がされたことが戸籍に記載されます。
失踪宣告が記載された戸籍謄本を提出することで、生死不明の人が法的に死亡した取り扱いがされることを証明できます。
②失踪届を提出する人
家庭裁判所が失踪宣告の審判をした後、市区町村役場に連絡しません。
審判が確定しても、市区町村役場に連絡しません。
失踪宣告の審判が確定した後、失踪宣告の申立て人は、市区町村役場に失踪届をします。
③失踪届の届出期限
失踪宣告の審判が確定してから、10日以内です。
10日しかないので、すみやかに手続する必要があります。
④失踪届の提出先
失踪届の提出先は次の市区町村役場です。
(1)失踪宣告を受けた人の本籍地
(2)届出人の所在地
⑤失踪届の添付書類
失踪届の添付書類は、次のとおりです。
(1) 失踪宣告の審判書
(2)確定証明書
(3)失踪宣告を受けた人の戸籍謄本
(4)届出人の戸籍謄本
(3)失踪宣告を受けた人の戸籍謄本(4)届出人の戸籍謄本は、本籍地の市区町村役場に提出する場合は不要です。
⑥失踪宣告がされたときの戸籍の記載例
戸籍には次のように記載されます。
【死亡とみなされる日】令和〇年〇月〇日
【失踪宣告の裁判確定日】令和〇年〇月〇日
【届出日】令和〇年〇月〇日
【届出人】親族 ○○○○
⑦戸籍に反映するには時間がかかる
失踪届を提出しても、戸籍に反映されるまでには時間がかかります。
死亡届を提出しても時間がかかるのと同様です。
⑧失踪届を出しても探してもらえない
失踪届は、失踪宣告の審判が確定した後に市区町村役場に提出する届出です。
市区町村役場は、失踪届を受理したら失踪宣告がされたことを戸籍に記載します。
失踪届を出しても、市区町村役場が生死不明の人を探してくれることはありません。
失踪届は、死亡と扱ってもらうための届出だからです。
生死不明の人を探してもらいたい場合、警察へ行方不明者届を提出します。
行方不明者届は、以前は捜索願と呼んでいました。
失踪届と行方不明者届(捜索願)は、まったく別の届出です。
4失踪宣告で相続が開始する
①相続開始日は死亡と見なされる日
失踪宣告がされると、たとえ死亡していなくても死亡した取り扱いをします。
普通失踪では生死不明になってから7年間経過したときに、死亡したものと見なされます。
特別失踪(危難失踪)では危難が去ったときに、死亡したものと見なされます。
たとえ死亡していなくても死亡した取り扱いをするから、相続が開始します。
死亡と見なされる日が、相続が開始する日です。
失踪宣告の手続は、長期間かかります。
相続が開始する日は、失踪宣告の申立てをした日ではありません。
裁判所が失踪宣告をした日でもありません。
相続手続の基準になるのが、死亡と見なされる日です。
②失踪宣告後に相続放棄ができる
莫大な借金をしたまま音信不通になる人がいます。
いつか自分に借金が降りかかってくるのではないかと不安になることでしょう。
被相続人の生前に相続放棄をすることはできません。
行方不明の人は生きていると判断されます。
相続放棄ができるのは、相続人だけだからです。
行方不明なだけで生きているのだから、相続放棄を受け付けてもらえません。
失踪宣告は、行方不明の人が死亡した取り扱いとするための手続です。
失踪宣告がされた場合、相続が発生します。
相続放棄の申立てをする場合、被相続人の戸籍謄本を提出します。
被相続人の戸籍に失踪宣告の記載がされている必要があります。
相続放棄の申立ての期限は、原則として、相続があったことを知ってから3か月以内です。
「相続があったことを知ってから」とは、被相続人が死亡して相続が発生し、その人が相続人であることを知って、かつ、相続財産を相続することを知ってから、と考えられています。
5生死不明の相続人がいる相続を司法書士に依頼するメリット
相続が発生した後、相続手続を進めたいのに行方不明の相続人や長期間行方不明で死亡の可能性の高い相続人がいて困っている人はたくさんいます。
自分たちで手続しようとして挫折する方も少なくありません。
失踪宣告の申立など家庭裁判所に手続が必要になる場合など通常ではあまり聞かない手続になると専門家のサポートが必要になることが多いでしょう。
信託銀行などは、高額な手数料で相続手続を代行しています。
被相続人が生前、相続人のためを思って、高額な費用を払っておいても、信託銀行はこのような手間のかかる手続を投げ出して知識のない遺族を困らせます。
知識のない相続人が困らないように高額でも費用を払ってくれたはずなのに、これでは意味がありません。
税金の専門家なども対応できず、困っている遺族はどうしていいか分からないまま途方に暮れてしまいます。
裁判所に提出する書類作成は司法書士の専門分野です。
途方に暮れた相続人をサポートして相続手続を進めることができます。
自分たちでやってみて挫折した方も、信託銀行などから丸投げされた方も、相続手続で不安がある方は司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。
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