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子なし親なし兄弟ありの相続
1兄弟姉妹が相続人になる
①相続人になる人は法律で決まっている
相続が発生したら、親族のうち一定の範囲の人が相続人になります。
だれが相続人になるかについては、民法で決められています。
相続人になる人は、次のとおりです。
(2)~(4)の場合、先順位の人がいる場合、後順位の人は相続人になれません。
(1)配偶者は必ず相続人になる
(2)被相続人に子どもがいる場合、子ども
(3)被相続人に子どもがいない場合、親などの直系尊属
(4)被相続人に子どもがいない場合で、かつ、親などの直系尊属が被相続人より先に死亡している場合、兄弟姉妹
②配偶者は必ず相続人になる
被相続人に配偶者がいる場合、配偶者は必ず相続人になります。
相続人になる配偶者、死亡時の法律上の配偶者のみです。
生前に離婚した元配偶者は、相続人になりません。
事実婚・内縁の配偶者は、相続人になりません。
パートナーシップ制度を利用しても、相続人になりません。
法律上の配偶者は、必ず相続人になります。
③異父兄弟・異母兄弟が相続人になる
被相続人に子どもがいない場合で、かつ、親などの直系尊属が被相続人より先に死亡している場合、兄弟姉妹が相続人になります。
兄弟姉妹と言うと、父母が同じ兄弟姉妹だけをイメージするかもしれません。
相続人になる兄弟姉妹とは、父母の両方が同じ兄弟姉妹だけではありません。
父母の一方だけ同じ兄弟姉妹も、兄弟姉妹です。
異父兄弟や異母兄弟は、父母の一方だけ同じ兄弟姉妹です。
異父兄弟・異母兄弟が相続人になります。
④父母の養子は相続人になる
父や母が養親になる養子縁組をしていることがあります。
養子縁組をした場合、養子は養親の子どもになります。
自分の実親の養子は、兄弟姉妹です。
親から見ると、実子も養子も同じ子どもだからです。
実子と養子は、兄弟姉妹です。
父と養子縁組をした養子も母と養子縁組をした養子も、兄弟姉妹です。
父母の一方だけ同じ兄弟姉妹も、兄弟姉妹だからです。
父母の養子は、兄弟姉妹です。
父母の養子は、相続人になります。
⑤養子に行った兄弟姉妹が相続人になる
兄弟姉妹が第三者の養子になる養子縁組をすることがあります。
養子縁組をした場合、養子は養親の子どもになります。
養子縁組には、2種類あります。
普通養子と特別養子です。
普通養子は、養子縁組後も実親との親子関係が継続します。
普通養子による養子縁組をしても、実親の子どものままです。
特別養子は、養子縁組後に実親との親子関係が終了します。
特別養子に養子縁組をしたら、実親の子どもでなくなります。
兄弟姉妹が普通養子による養子縁組をした場合、兄弟姉妹のままです。
普通養子による養子になった兄弟姉妹は、相続人になります。
兄弟姉妹が特別養子による養子縁組をした場合、兄弟姉妹でなくなります。
特別養子による養子になった兄弟姉妹は、相続人になりません。
子どものいない夫婦が養子縁組をする、配偶者の連れ子と養子縁組するといったことは日常的に聞くことあります。
一般的に、単に「養子」と言ったら、普通養子を指していることがほとんどです。
養子に行っても、普通養子なら兄弟姉妹のままです。
養子に行った兄弟姉妹が相続人になります。
⑥兄弟姉妹が先に死亡すると甥姪が代襲相続
相続人になる人は、法律で決められています。
相続人になるはずだった人が被相続人より先に死亡することがあります。
相続人になるはずだった人の子どもや子どもの子どもが相続します。
代襲相続とは、相続人になるはずだった人が先に死亡したため、子どもや子どもの子どもが相続することです。
兄弟姉妹が相続人になるはずだったのに、被相続人より先に死亡することがあります。
兄弟姉妹が先に死亡した場合、甥姪が相続します。
兄弟姉妹が先に死亡すると、甥姪が代襲相続します。
⑦甥姪が先に死亡すると甥姪の子どもは代襲相続しない
甥姪も被相続人より先に死亡した場合、甥姪の子どもは相続しません。
兄弟姉妹が相続する場合、代襲相続ができる範囲は一代限りだからです。
甥姪が先に死亡すると、甥姪の子どもは代襲相続しません。
2遺言書で財産の分け方を決めておく
①遺産分割協議は相続人全員で
相続が発生したら、被相続人の財産は相続人が相続します。
相続財産は、相続人全員の共有財産です。
相続財産の分け方は、相続人全員の合意で決める必要があります。
幼少期は仲よく遊んでいても、成人すると兄弟と交流は少なくなるでしょう。
関係が薄くなった兄弟姉妹と話し合いをするのは、難しくなることがあります。
話し合いが付かないと、相続財産を分けることはできません。
遺産分割協議のために、疎遠な兄弟姉妹に協力してもらう必要があります。
遺産分割協議は、相続人全員の合意で成立します。
②遺言書を作成して配偶者に全財産を相続させる
被相続人は生きている間、自分の財産を自由に処分することができます。
遺言書を作成して、自分の死後に財産をだれに引き継ぐのか自由に決めることができます。
遺言書があれば、遺言書のとおりに財産を分けることができます。
遺言書を作成して、配偶者に全財産を相続させると書くことができます。
疎遠になった相続人に、協力をしてもらう必要はなくなります。
関係が良くない相続人がいる場合、残された配偶者の精神的負担は大きいでしょう。
遺言書のとおりに分けることができるから、残された配偶者はラクができます。
遺言書を作成して、遺産分割の方法を指定することができます。
③遺言書を作成して財産を寄付できる
遺言書を作成して、自分の死後だれに引き継ぐのか自由に決めることができます。
相続人になる人は、法律で決められています。
法律で決められた相続人だけが相続することができます。
遺言書を作成して、財産を遺贈することができます。
遺贈とは、相続人や相続人以外の人に財産を引き継ぐことです。
遺言書を作成して、相続人以外の人に遺贈することができます。
疎遠になった兄弟姉妹より、お世話になった人に財産を引き継いでもらいたいことがあるでしょう。
慈善団体やボランティア団体に、遺贈することができます。
寄付をしたい気持ちはあっても、老後の資金を考えるとためらうことが多いでしょう。
自分が死亡した後に寄付するから、老後の心配をせずに寄付することができます。
遺言書を作成して、財産を寄付することができます。
④兄弟姉妹に遺留分はない
遺言書を作成して、遺産分割の方法を指定することができます。
疎遠になった兄弟姉妹に財産を引き継ぐより、協力して財産を築いた配偶者に引き継いでもらいたいでしょう。
兄弟姉妹に、遺留分はありません。
どのような財産配分にしても、兄弟姉妹は文句を言うことはできません。
例えば、全財産を配偶者に相続させる遺言書を作成しても、兄弟姉妹は遺留分を請求することはできません。
相続が発生したときに、兄弟姉妹が先に死亡していることがあります。
相続人になるはずだった兄弟姉妹が先に死亡した場合、兄弟姉妹の子どもが相続人になります。
兄弟姉妹の子どもは、甥姪です。
甥姪が代襲相続人になる場合、甥姪に遺留分はありません。
甥姪が代襲相続人になっても、甥姪は遺留分を請求することはできません。
兄弟姉妹にも甥姪にも、遺留分はありません。
⑤遺言執行者がいると相続手続をおまかせできる
遺言書を作成するだけでは、意味がありません。
遺言書の内容は、自動で実現するわけではないからです。
遺言執行者は、遺言書の内容を実現する人です。
遺言書の中で、遺言執行者を指名することができます。
相続を何度も経験する人は、あまりいません。
だれにとっても初めてで、不慣れなものです。
相続手続は、想像以上に手間と時間がかかります。
遺言執行者がいる場合、手間と時間がかかる相続手続をおまかせできます。
遺言執行者にわずらわしい相続手続をおまかせできるから、残された配偶者には心強いでしょう。
遺言執行者が遺言書の内容を実現してくれるから、遺言者にとっても心強いでしょう。
遺言執行者を指名して、相続続をおまかせすることができます。
⑥公正証書遺言がおすすめ
遺言書を作成する場合、自筆証書遺言か公正証書遺言を作成することがほとんどです。
自筆証書遺言は、自分で書いて作る遺言書です。
ひとりで作ることができるから、手軽です。
公正証書遺言は、遺言内容を公証人に伝えて公証人が取りまとめる遺言書です。
証人2人に確認してもらって、作ります。
遺言書には、厳格な書き方ルールがあります。
遺言者本人が法律に詳しいことは、あまりないでしょう。
遺言書の書き方ルールに違反すると、遺言書が無効になります。
自筆証書遺言はひとりで作ることが多いから、無効になることが少なくありません。
公正証書遺言は、公証人が取りまとめます。
公証人は、法律の専門家です。
公正証書遺言が書き方ルールの違反で無効になることは、考えられません。
公正証書遺言原本は、公証役場で厳重に保管されます。
遺言書の紛失や改ざんのトラブルも、あり得ません。
相続が発生したときは、家庭裁判所で検認手続をする必要がありません。
すぐに、失効することができます。
公正証書遺言はメリットが大きく、おすすめです。
3相続人不存在なら財産は国庫帰属
①特別縁故者は相続人がいないときだけ
相続人になる人は、法律で決められています。
相続が発生したとき、被相続人の財産は相続人が相続します。
相続できるのは、相続人だけです。
相続人以外の人は、遺贈を受けることができるけど相続することはできません。
法律で決められた相続人がまったく存在しないことがあります。
相続人がまったく存在しない場合、原則として、相続財産は国庫に帰属します。
被相続人に特別な縁故がある人がいる場合、財産を引き継がせることが適切であることがあります。
相続人がまったく存在しない場合、特別縁故者が財産を引き継ぐことができることがあります。
特別縁故者に認められるのは、相続人がまったく存在しないときだけです。
②特別縁故者に分与される財産は家庭裁判所が判断
特別縁故者とは、被相続人に特別な縁故がある人です。
特別な縁故がある人に認められるのは、次の人です。
(1)生計を同じくしていた人
(2)被相続人の療養看護につとめた人
(3)その他被相続人と特別な関係にあった人
相続人がまったく存在しない場合、家庭裁判所に対して特別縁故者財産分与の申立てをすることができます。
家庭裁判所が特別縁故者と認められるか判断します。
特別縁故者と認められれば、相続財産を分与されます。
分与される財産は、縁故の程度によって家庭裁判所が判断します。
相続財産の全部であることも一部であることもあります。
特別縁故者に認められなかった場合、相続財産は国庫に帰属します。
特別縁故者に分与される財産は、家庭裁判所が判断します。
4遺言書作成を司法書士に依頼するメリット
遺言書は、遺言者の意思を示すものです。
自分が死んだことを考えたくないという気持ちがあると、抵抗したくなるかもしれません。
実は、民法に遺言書を作ることができるのは15歳以上と定められています。
死期が迫ってから、書くものではありません。
遺言書はいつか書くものではなく、すぐに書くものです。
遺言書は遺言者の意思を示すことで、家族をトラブルから守るものです。
子どものいない夫婦の場合、遺言書の威力は大きいものです。
遺言書があることで、残された配偶者が守られます。
お互いを思いやり幸せを願う方は、遺言書作成を司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。
配偶者なしの相続
1相続人になる人は法律で決まっている
相続が発生すると、配偶者や子どもが相続することは多くの方がご存知でしょう。
相続人になる人は、民法で決められています。
相続人になる人は、次のとおりです。
①配偶者は、必ず相続人になる
②被相続人に子どもがいる場合、子ども
③被相続人に子どもがいない場合、親などの直系尊属
④被相続人に子どもがいない場合で、かつ、親などの尊属が被相続人より先に死亡している場合、兄弟姉妹
2配偶者なし子どもありの相続人と相続分
①子どもは平等
被相続人に子どもがいる場合、子どもは相続人になります。
子どもが複数いる場合、平等に分割します。
子どもが2人いる場合、平等に2分の1ずつです。
②養子と実子は平等の相続分
被相続人が第三者と養親になる養子縁組をしている場合があります。
養子縁組とは、法律上の親子関係を作る制度です。
養子縁組をした場合、養子は養親の子どもになります。
養親に実子がいても実子がいなくても、養子は相続人になります。
養子は、養親の子どもだからです。
養子と実子は、被相続人の子どもです。
養子と実子は、相続人になります。
養子と実子は、平等の相続分です。
③前婚の子どもと後婚の子どもは平等の相続分
被相続人に再婚歴があることがあります。
前婚配偶者との間に子どもがいる場合があります。
前婚の子どもと後婚の子どもは、被相続人の子どもです。
前婚の子どもと後婚の子どもは、相続人になります。
前婚の子どもと後婚の子どもは、平等の相続分です。
前婚配偶者に引き取られて、前婚の子どもと疎遠になっているかもしれません。
音信不通になっていても、相続人です。
行方不明になっていても、平等の相続分です。
④嫡出子と非嫡出子は平等の相続分
嫡出子とは、法律上の婚姻関係にある夫婦の間に誕生した子どもです。
非嫡出子とは、法律上の婚姻関係にないカップルの間に誕生した子どもです。
父が認知した場合、法律上、父の子どもになります。
父が死亡した場合、認知された子どもは相続人になります。
嫡出子と非嫡出子は、被相続人の子どもです。
嫡出子と非嫡出子は、相続人になります。
嫡出子と非嫡出子は、平等の相続分です。
以前は、非嫡出子は嫡出子の半分の相続分しかありませんでした。
平成25年9月4日最高裁判所大法廷は、相続分を半分にする取り扱いは憲法違反であると判断しました。
法律上の婚姻関係にないカップルの間に生まれることは、子どもは選べません。
子どもは親を選べませんから、子どもに責任がありません。
現在は、法律上の婚姻関係にあるカップルの間に生まれた子どもと同じ子どもだから、相続分も同じです。
最高裁判決を受けて、平成25年9月4日以降に発生した相続では、相続分は同じ取り扱いをします。
3配偶者なし子どもなし親ありの相続人と相続分
①親などの直系尊属が相続人
配偶者がなく子どもがいない人は、相続人がいないと誤解しがちです。
被相続人に子どもがいない場合、親などの直系尊属が相続人になります。
直系とは、親子関係によってつながっている関係のことです。
本人から見て、父母や祖父母は親子関係によって繋がっています。
本人から見て、子どもや孫は親子関係によって繋がっています。
父母、祖父母、子ども、孫などは、直系です。
同じ祖先から親子関係でつながっているけど別の直系でつながっている人を傍系と言います。
本人から見て、伯叔父、伯叔母、甥姪は同じ祖先から親子関係でつながっているけど別の直系でつながっています。
伯叔父、伯叔母、甥姪は、直系ではありません。
尊属とは、前の世代の血族です。
本人から見て、父母や祖父母は前の世代の血族です。
本人から見て、父母や祖父母は尊属です。
後の世代の血族は、卑属と言います。
本人から見て、子どもや孫は後の世代の血族です。
本人から見て、子どもや孫は卑属です。
父母や祖父母は、直系で、かつ、尊属です。
被相続人に子どもがいない場合、父母や祖父母が相続人になります。
②世代の近い人が相続人になる
相続が発生したときに、父母と祖父母が健在の場合があります。
父母と祖父母が健在の場合、被相続人と最も近い世代の人が相続人になります。
父母と祖父母が健在であれば、父母が世代の近い人です。
父母が相続人になるから、祖父母は相続人にはなりません。
父母が相続放棄をした場合、父母は相続人でなくなります。
世代の近い父母が相続人でないから、次に世代の近い人が相続人になります。
父母が相続放棄をした場合、祖父母が相続人になります。
③父母は平等の相続分
父母が健在の場合、父母が相続人になります。
父母は、相続分を平等に分割します。
父母2人が相続人になる場合、平等に2分の1ずつです。
4配偶者なし子どもなし親なし兄弟ありの相続人と相続分
①兄弟姉妹が相続人
被相続人に子どもがいない場合で、かつ、親などの尊属が被相続人より先に死亡している場合、兄弟姉妹が相続人になります。
兄弟姉妹と言うと、父母が同じ兄弟姉妹だけを想像しがちです。
父母が同じ兄弟姉妹以外にも、異父兄弟姉妹、異母兄弟姉妹も兄弟姉妹です。
異父兄弟姉妹や異母兄弟姉妹は、相続人になります。
異父兄弟姉妹や異母兄弟姉妹は、兄弟姉妹だからです。
②異父兄弟・異母兄弟の相続分は2分の1
兄弟姉妹が相続人になる場合、父母の両方が同じ兄弟姉妹だけではありません。
異父兄弟・異母兄弟も、相続人になります。
親が死亡したとき、子どもの法定相続分は平等です。
異父兄弟も異母兄弟も、実子も養子も、嫡出子も非嫡出子も、同じ相続分です。
親から見たら、平等に子どもだからです。
兄弟姉妹が相続人になる場合、父母の両方が同じ兄弟姉妹と父母の一方が同じ兄弟姉妹は同じ相続分ではありません。
父母の一方が同じ兄弟姉妹の相続分は、父母の両方が同じ兄弟姉妹の半分です。
③兄弟姉妹が先に死亡したら甥姪が代襲相続
相続人になるはずだった人が被相続人より先に死亡したため、相続人になるはずだった人の子どもや子どもの子どもが相続することがあります。
これを代襲相続と言います。
相続が発生したときに、兄弟姉妹が先に死亡していることがあります。
兄弟姉妹に子どもがいれば、兄弟姉妹の子どもが相続人になります。
兄弟姉妹の子どもが相続人になる場合、死亡した兄弟姉妹の相続分を相続します。
兄弟姉妹の子どもが複数いる場合、子どもが平等に分割します。
先に死亡した兄弟姉妹が異父兄弟姉妹・異母兄弟姉妹だった場合、父母の両方が同じ兄弟姉妹の半分です。
もともと少ない相続分であることが多いです。
もともと少ない相続分を複数の子どもで分割するから、さらに少ない相続分になることが多いです。
5配偶者なし子どもなし親なし兄弟なしで特別縁故者
相続人になる人は、民法で決められています。
法律で決められた相続人が存在しない場合、相続人不存在になります。
単に配偶者がなく子どもがいないだけで、相続人がいないということはできません。
疎遠でも音信不通でも行方不明でも、相続人です。
法律で決められた相続人が不存在の場合、被相続人のものは最終的には国庫に帰属します。
国庫に帰属する前に、相続財産を清算する必要があります。
例えば、被相続人にお金を貸していた人は、相続財産から返してもらいたいと思うでしょう。
相続財産を清算して、プラスの財産が残ることがあります。
特別縁故者は家庭裁判所に申立てをして、財産の分与を受けることができます。
特別縁故者とは、被相続人と特別に親しい関係があった人です。
特別縁故者と認められるのは、事実上の夫婦(内縁関係)や養子縁組はしていないが本当の親子と同様の関係だった者、知人であるがとりわけ療養看護に努めた人などです。
特別縁故者が財産の分与を受けるためには、家庭裁判所に認められる必要があります。
6遺言書作成がおすすめ
①遺産分割協議は相続人全員で
相続が発生した場合、被相続人のものは相続人全員の共有財産になります。
相続人全員の共有財産だから、一部の相続人が勝手に処分することはできません。
相続財産の分け方は、相続人全員の合意で決めなければなりません。
異父兄弟や異母兄弟がいる場合、被相続人や被相続人の家族と疎遠であることが多いでしょう。
長期間疎遠になっていても、相続人全員の合意が不可欠です。
一部の相続人の合意がない場合、相続手続を進めることができません。
②遺言書があれば遺産分割協議は不要
異父兄弟や異母兄弟がいる場合、関係性がいいことはあまりないでしょう。
相続手続に協力してもらえないことがあります。
相続手続に協力してもらえないからと言って先延ばしをすると、相続手続はますます難しくなります。
相続人に異父兄弟や異母兄弟がいる場合、遺言書作成がおすすめです。
すべての財産の行き先が遺言書で決められていたら、遺産分割協議が不要になるからです。
遺言書を作成するのであれば、無効になりにくい公正証書遺言がおすすめです。
③遺言書作成は遺留分に注意
被相続人は、原則として、自分の財産をだれに受け継がせるかは自由に決めることができます。
財産は被相続人がひとりで築いたものではないでしょう。
家族の協力があってこそ、築くことができた財産のはずです。
被相続人の名義になっているからといって、まったく無制約の自由にすることはできません。
今まで協力してきた家族に、酷な結果となるからです。
被相続人に近い関係の相続人には相続財産に対して最低限の権利が認められています。
相続財産に対して、認められる最低限の権利のことを遺留分と言います。
遺留分は、兄弟姉妹以外の相続人に認められます。
被相続人の子どもが相続人になる場合、遺言書で遺留分を奪うことはできません。
遺留分に満たない財産を分与する遺言書であっても、作成すること自体はできます。
遺留分に満たない場合、相続人は遺留分侵害額請求をすることができます。
遺留分侵害額請求をする場合、相続人間の深刻なトラブルに発展するでしょう。
遺言書を作成する場合、遺留分に配慮して作成しましょう。
7遺言書作成と遺言執行を司法書士に依頼するメリット
相続手続はタイヘンですが、相続人がいない場合もタイヘンです。
相続人がいないから、財産は国に持っていかれて、何もしなくていいと軽く考えがちです。
実際は、被相続人が死亡してから、国庫に帰属するまで1年以上の時間がかかります。
財産の内容によっては、100万円以上の費用の負担があることも見逃せません。
国に持っていかれるよりは、お世話になった人に受け継いでもらいたい、自分の気持ちを活かしてくれる慈善団体などに使ってもらいたいという気持ちがある人もいるでしょう。
お世話になった人に受け継いでもらいたい、自分の気持ちを活かしてくれる慈善団体などに使ってもらいたいという意思は遺言書で実現できます。
お世話になった人に受け継いでもらいたい場合、特別縁故者に対する相続財産分与の申立ができますが、必ずしも認められるとは限りません。
認められても、財産の一部のみの場合もあります。
何より、家庭裁判所に対する手続ですから、一般の人には高いハードルです。
遺言書に、遺贈することを書き、遺言執行者を決めておけば、手間はかかりません。
お世話になった人は待っているだけで済みます。
遺言書は書き方に細かいルールがあります。
細かいルールを守っていないと遺言書は無効になってしまいます。
適切な遺言書作成と遺言執行者選任は司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。
廃除と欠格で相続人になれない
1相続人になる人は法律で決まっている
相続が発生したら、親族のうち一定の範囲の人が相続人になります。
だれが相続人になるかについては、民法で決められています。
相続人になる人は、次のとおりです。
①配偶者は必ず相続人になる
②被相続人に子どもがいる場合、子ども
③被相続人に子どもがいない場合、親などの直系尊属
④被相続人に子どもがいない場合で、かつ、親などの直系尊属が被相続人より先に死亡している場合、兄弟姉妹
相続人になるはずだった人が被相続人より先に死亡したため、相続人になるはずだった人の子どもや子どもの子どもが相続することがあります。
これを代襲相続と言います。
2相続人廃除で相続人になれない
例えば、被相続人に虐待をした人に、相続をさせたくないと考えるのは自然なことでしょう。
被相続人が相続させたくないと思って、他の相続人にすべての財産を相続させると遺言書を書いたとしても、遺留分を奪うことはできません。
遺留分侵害額請求をしたら、相続財産のいくらかは虐待した相続人が受け継いでしまいます。
被相続人の意思で、相続人の資格を奪うのが、相続人廃除です。
相続人の資格を奪うというのは、実質的には、遺留分を奪うことです。
遺留分のない兄弟姉妹は、廃除する必要がありません。
相続財産を受け継がせたくないのなら、他の相続人に相続させる旨の遺言書を書けばいいからです。
相続人廃除の申立ては被相続人が生前に申し立てることもできるし、遺言書で行うこともできます。
遺言書で廃除をする場合、「遺言者の長男〇〇を廃除する。理由は〇〇である。」とはっきり書きます。
「遺言者の長男〇〇には一切相続させない。」は不適切です。
廃除するの意思なのか、廃除はしないが財産を受け継がせないの意思なのか不明確だからです。
廃除はしないが財産を受け継がせない場合、遺留分があります。
廃除する場合、遺留分侵害額請求ができなくなります。
「遺言者の長男〇〇には一切相続させない。」の場合、遺留分侵害額請求ができるかできないかをめぐって相続人間でトラブルになるおそれがあります。
遺言書に「遺言者の長男〇〇を廃除する。理由は〇〇である。」の記載の他に遺言執行者を指名しましょう。
遺言による廃除の申立ては、遺言執行者がする必要があるからです。
遺言書で遺言執行者を選任しておかない場合、相続発生後、家庭裁判所に遺言執行者を選んでもらう必要があります。
家庭裁判所は、被相続人の家族の事情を知らない専門家を遺言執行者に選ぶでしょう。
相続人廃除は家庭裁判所に申立てをして、家庭裁判所が判断します。
被相続人が相続人廃除したいと言い、相続人が廃除されていいと納得していても、家庭裁判所が相続人廃除を認めないことがあります。
家庭裁判所に廃除を認めてもらうためには、廃除の根拠になる客観的証拠が不可欠です。
家族の事情を知らない専門家は、客観的証拠を集められないでしょう。
遺言書で廃除する場合、被相続人は死亡しています。
家庭裁判所で証言することはできません。
廃除の客観的証拠を準備しておく必要があります。
相続人廃除になると、遺留分も奪われます。
相続人が相続人廃除になる場合、代襲相続ができます。
相続人廃除の相続人に相続させることはできませんが、遺贈はできると考えられています。
被相続人の意思で、相続人の資格を奪うものだから、被相続人の意思で許してあげることもできるからです。
被相続人の意思で許してあげることもできるから、相続人廃除は取消の申立てもできます。
相続人廃除の申立先は被相続人の住所地の家庭裁判所です。
廃除が認められた場合、廃除の審判書と確定証明書を添えて市区町村役場へ廃除届を提出します。
家庭裁判所から役所へ連絡はされません。
相続人廃除が認められるのは、次の場合です。
①相続人が重大な侮辱をした
②暴力を振るうなどの虐待をした
③重大な非行があった
単なる親子げんかで家に寄り付かなかったとか、親の言いなりにならなかったなどの軽い理由では認められません。
暴力をふるうなども一時の激情から出たものであるとして認められない事例もあります。
相続人廃除は、非常にハードルが高い手続です。
3相続欠格で相続人になれない
だれが相続人になるかについては、民法で決められています。
同時に、民法では相続人になれない人も決められています。
例えば、被相続人を殺した人が相続することは、社会感情からみても許せない、相続する人としてふさわしくないということは納得できるでしょう。
このような相続人として許せない、ふさわしくない場合、相続人の資格が奪われることになります。
相続人としてふさわしくない人の相続資格を奪う制度を相続欠格と言います。
相続欠格は、被相続人の意思とは無関係に相続人の資格を奪う制度です。
裁判所で手続きがあるわけでなく、当然に相続資格を失います。
相続欠格になると、遺留分も奪われます。
相続人が相続欠格になる場合、代襲相続ができます。
相続欠格の相続人に相続させることはできませんし、遺贈もできないと考えられています。
相続欠格者に対して、生前贈与はできますし、生命保険金を受け取らせることはできます。
次の人が欠格になります
①故意に被相続人、同順位以上の相続人を死亡させた人、死亡させようとした人
故意がポイントです。
殺人や殺人未遂の場合、刑事事件で有罪判決を受けると欠格になります。
実刑判決だけでなく、執行猶予判決でも、欠格になります。
事故などの過失で死亡させてしまった場合は、欠格になりません。
正当防衛などで、止むを得ず、死亡させてしまった場合も、欠格になりません。
同順位以上の相続人を死亡させた場合、欠格になります。
例えば、父を死亡させた相続人は父の相続で欠格になりますが、母の相続でも欠格になります。
母の相続において、父は同順位以上の相続人になるからです。
②被相続人が殺害されたのを知って、告訴や告発をしなかった人
被相続人が殺害されたことを知っていて、犯人をかばおうとする人です。
物事のメリットデメリットを充分判断できない子どもは欠格になりません。
殺人犯が配偶者や直系血族の場合は、欠格になりません。
傍系は欠格になりますから、兄弟姉妹が殺人犯の場合は、告訴告発をしなければなりません。
③詐欺・脅迫で遺言の取消・変更をさせたり、妨害した人
遺言は遺言者の意思を示すものです。
詐欺や脅迫で意思をねじ曲げさせようとすることは、許されることではありません。
④遺言書を偽造・変造・廃棄・隠匿した人
遺言書を見つけて、自分が不利になるから偽造したり、変造したり、捨てたり、隠したりすると、欠格になります。
不当な目的がある場合だけ欠格になりますから、遺言書の内容を実現してあげたいと考えて変造した場合は、欠格になりません。
相続欠格は戸籍謄本に記載されません。
金融機関などの相続手続では、欠格者である旨の証明をしない場合、相続人と扱ってしまいます。
欠格者であることの証明としては、相続欠格者が自分で作成した相続欠格者であることを認める証明書に印鑑証明書を添付したものがあります。
実際には、欠格の相続人が自分が相続欠格であることは認めないでしょう。
相続人が欠格であることを争う場合、相続権不存在確認の訴えをすることになります。
例えば、相続人ABCDの4人である場合で、相続人Dが欠格であることの確認を求める場合、原告は自分以外の相続人全員を被告にします。
原告が相続人Aである場合、相続人BCDを被告として、相続人Dが欠格であることの確認を求める訴えを起こします。
相続資格の有り無しは合一確定の必要があるからです。
4相続人調査を司法書士に依頼するメリット
本籍地の変更や国による戸籍の作り直し(改製)で多くの方は、何通もの戸籍を渡り歩いています。
古い戸籍は現在と形式が違っていて読みにくかったり、手書きの達筆な崩し字で書いてあって分かりにくかったりしますから、慣れないと戸籍集めはタイヘンです。
本籍地を何度も変更している方や結婚、離婚、養子縁組、離縁を何度もしている方は、戸籍をたくさん渡り歩いているので、膨大な手間と時間がかかることが多くなります。
お仕事や家事でお忙しい方や高齢、療養中などで手続が難しい方は、手続を丸投げできます。
ご家族にお世話が必要な方がいて、お側を離れられない方からのご相談もお受けしております。
集めてみたけど途中で挫折した方や全部集めたと思ったのに金融機関や役所からダメ出しされた方もいらっしゃいます。
このような場合、司法書士が目を通して、不足分を取り寄せします。
相続人調査でお困りのことがあれば、すみやかに司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。
平日の昼間に役所にお出かけになって準備するのは負担が大きいものです。
戸籍や住民票は郵便による取り寄せもできますが、書類の不備などによる問い合わせはやはり役所の業務時間中の対応が必要になりますから、やはり負担は軽いとは言えません。
このような戸籍や住民票の取り寄せも司法書士は代行します。
相続人調査でお困りの方は、司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。
特別養子縁組で起きやすいトラブル
1養子縁組は2種類ある
①普通養子は実親との親子関係が継続する
養子縁組には、2種類あります。
普通養子と特別養子です。
養子縁組とは、血縁関係による親子関係の他に、法律上の親子関係を作る制度です。
子どものいない夫婦が養子縁組をする、配偶者の連れ子と養子縁組するといったことは日常的に聞くことあります。
一般的に、単に「養子」と言ったら、普通養子を指していることがほとんどです。
普通養子では、養子縁組をする当事者が合意が重視されます。
当事者が合意をして、市区町村役場に届出をするだけで手続ができます。
普通養子は、養子縁組後も実親との親子関係が継続します。
養子になった後、養親と実親の両方が親です。
実親との親子関係が継続するから、実親が死亡したときに相続人になります。
実親にとっても養親にとっても、養子は子どもだからです。
普通養子は、実親との親子関係が継続します。
②特別養子は実親との親子関係が終了する
特別養子は、子どもの福祉が重視されます。
子どもの福祉のため、家庭裁判所が慎重に判断して審判をします。
特別養子は、養子縁組後に実親との親子関係が終了します。
特別養子縁組をすることは、実親との親子の縁を切ることです。
親子の縁を切る重大な決定だから、家庭裁判所は慎重に判断します。
養子になった後、養親だけが親で実親は親でなくなります。
養親にとって養子は子どもですが、実親にとって養子は子どもではありません。
実親との親子関係が終了するから、実親が死亡したときに相続人になりません。
特別養子は、実親との親子関係が終了します。
2特別養子縁組で起きやすいトラブル
トラブル①実親が特別養子縁組に同意しない
特別養子縁組では、養子縁組をした後は実親との親子関係が終了します。
原則として、実親の同意が必要です。
子どもを手放したくない親は、特別養子縁組に同意することできないでしょう。
実親の同意を求められると、敵対感情を持つかもしれません。
さまざまな事情があっても、実親が同意しないことがあります。
実親の同意が得られないと、特別養子縁組を成立させることができなくなります。
実親が意思表示ができないことがあります。
意思表示ができない場合、実親による同意はできません。
実親による虐待や悪意の遺棄があることがあります。
虐待や悪意の遺棄をする場合、実親による同意を得ることは難しいでしょう。
養子となる子どもの利益を著しく害する理由がある場合、実親による同意を不要とするべきでしょう。
・実親が意思表示ができない場合
・実親による虐待、悪意の遺棄がある場合
・その他養子となるものの利益を著しく害する場合
上記の場合、実親の同意がなくても特別養子縁組を成立させることができます。
実親が特別養子縁組に同意しない場合、トラブルになります。
トラブル②養育開始後に実親が同意を撤回する
特別養子は、子どもの福祉が重視されます。
養親と養子の相性があるかもしれません。
特別養子縁組成立までに、監護期間が6か月以上必要です。
特別養子の審判の申立て前から養育している場合、養育開始から起算されます。
子どもが自立するまで充分な養育をすることができるのか判断されます。
子どもの養育には、体力も精神力も経済力も必要だからです。
特別養子縁組において、監護期間の養育状況は特に重要です。
特別養子の解消は、縁組以上に高いハードルがあるからです。
実親の同意を得て養育を開始しても、同意を撤回することがあります。
特別養子縁組が成立すると、実親との親子関係が終了します。
実親にとっても重大な決断だから、気持ちが揺らぐことがあるでしょう。
実親による同意が撤回されたら、養育中の子どもが奪われる結果になります。
養親候補者にとっても子どもにとっても、大きな精神的負担になります。
特別養子縁組を成立させる場合、前提として特別養子適格の確認の審判があります。
特別養子適格の確認の審判では、実親の同意の有無や実親による養育状況が判断されます。
実親による同意が撤回されたら、養親候補者にとっても子どもにとっても大きな精神的負担になります。
家庭裁判所調査官による調査のうえ家庭裁判所に対して同意書を提出してから2週間経過した場合、同意を撤回することができなくなります。
家庭裁判所における審問期日において同意してから2週間経過した場合、同意を撤回することができなくなります。
実親による同意が撤回されないから、養親候補者は安心して養育をすることができます。
養育開始後に実親が同意を撤回する場合、トラブルになります。
トラブル③養親の親族が反対する
養子縁組とは、血縁関係による親子関係の他に、法律上の親子関係を作る制度です。
養子縁組をすると、養子は養親の子どもになります。
養親の親族の中には、養子縁組をよく思わない人がいるかもしれません。
養親に実子がいても、養子縁組をすることができます。
普通養子縁組も特別養子縁組も、することができます。
養親に相続が発生した場合、子どもは相続人になります。
養子は養親の子どもだから、相続人になります。
養親に実子がいても、養子は相続人です。
実子と養子がいる相続で、実子と養子は同じ相続分です。
実子と養子は、養親の子どもだからです。
養親の親族には、同じ相続分であることに納得できない人がいるかもしれません。
養親が生きている間は何も言わなくても、相続であれこれ言いたくなるでしょう。
養親の親族が反対する場合、トラブルになります。
トラブル④特別養子縁組の離縁は難しい
特別養子は、子どもの福祉が重視されます。
普通養子縁組は、当事者の合意があれば縁組をすることができます。
特別養子縁組は、家庭裁判所が慎重に判断して縁組をします。
離縁とは、養子縁組を解消することです。
普通養子縁組の解消は、当事者の合意があれば縁組を解消することができます。
特別養子縁組の解消は、縁組以上に慎重に判断されます。
特別養子縁組離縁の申立てすら、ほとんどありません。
現実的には、離縁はできないと言っていいでしょう。
特別養子縁組の離縁は、非常に高いハードルがあります。
特別養子縁組を解消したい場合、トラブルになります。
トラブル⑤養子縁組で相続税が増える
子どものいない夫婦が養子縁組をするといったことは日常的に聞くことあります。
被相続人に子どもがいない場合、親などの直系尊属が相続人になります。
被相続人に子どもがいない場合で、かつ、親などの直系尊属が被相続人より先に死亡している場合、兄弟姉妹が相続人になります。
被相続人が高齢である場合、兄弟姉妹が相続人になることが多いでしょう。
相続財産の規模が大きい場合、相続税の対象になります。
相続税には、基礎控除があります。
相続財産が基礎控除額以下であれば、相続税はかかりません。
基礎控除額は、次の式で計算することができます。
基礎控除額=3000万円+600万円×相続人の人数
基礎控除額が大きくなると、相続税が少なくなります。
例えば、配偶者と兄弟姉妹3人が相続人になる場合、基礎控除額は5400万円です。
配偶者と養子1人が相続人になる場合、基礎控除額は4200万円です。
養子縁組をしなければ、兄弟姉妹が相続人になったでしょう。
基礎控除額5400万円だったのに、基礎控除額4200万円に減ってしまいます。
基礎控除額が少なくなると、相続税が増えます。
相続税が高くなることに、不満を覚えるでしょう。
養子縁組をよく思わない親族は、さらに強い不満を感じるでしょう。
養子縁組で相続税が増えると、トラブルになります。
3トラブル防止には遺言書を作成がおすすめ
①遺言書があると遺産分割協議が不要
相続が発生したら、被相続人の財産は相続人が相続します。
相続人が相続する財産が相続財産です。
相続財産は、相続人全員の共有財産です。
遺言書がない場合、相続財産の分け方は相続人全員による話し合いで決定する必要があります。
相続人は、さまざまな考えがあるでしょう。
養子縁組に、不満を持っているかもしれません。
養子と実子が同じ相続人として同じ相続分であることに、不満があるかもしれません。
相続財産の分け方は、相続人全員の合意で決める必要があります。
不満がある相続人がいると、相続財産の分け方の合意が難しくなるでしょう。
被相続人は遺言書を作成して、相続財産の分け方を指定することができます。
遺言書で相続財産の分け方を指定した場合、遺言書どおりに分けることができます。
相続人全員の合意が不要になるから、トラブルを防止することができます。
②遺言執行者に相続手続はおまかせ
遺言書は、作成するだけでは意味がありません。
遺言書の内容は、自動で実現するわけではないからです。
遺言執行者は、遺言書の内容を実現する人です。
遺言書を作成する場合、遺言執行者を指名することができます。
遺言執行者がいる場合、相続人は遺言執行を妨害することができません。
遺言執行者が確実に遺言書の内容を実現してくれるから、安心です。
相続手続は、手間と時間がかかります。
手間と時間がかかるから、忙しいと相続手続を進めることができなくなります。
遺言執行者がいると、わずらわしい相続手続をおまかせすることができます。
遺言執行者に相続手続はおまかせできるから、遺言書にとっても相続人にとっても安心です。
③公正証書遺言がおすすめ
遺言書は、自筆証書遺言か公正証書遺言を作成することがほとんどです。
自筆証書遺言は、自分で書いて作る遺言書です。
ひとりで作ることができるから、手軽な遺言書です。
公正証書遺言は、公証人に遺言内容を伝えて公証人が取りまとめる遺言書です。
証人2人に確認してもらって作ります。
遺言書には、厳格な書き方ルールがあります。
遺言者は、ほとんど法律の勉強をしたことがないでしょう。
遺言書の書き方ルールに違反すると、遺言書が無効になります。
公証人は、法律の専門家です。
公正証書遺言で書き方ルールに違反することは、考えられません。
遺言書を作成した後、公正証書遺言原本は公証役場に厳重保管されます。
遺言書の紛失や改ざんがあり得ません。
相続が発生した後、家庭裁判所で検認手続をする必要がありません。
遺言書の内容をすぐに、執行することができます。
遺言書を作成するなら、公正証書遺言がおすすめです。
4遺言書作成を司法書士に依頼するメリット
遺言書は被相続人の意思を示すものです。
自分が死んだことを考えたくないという気持ちがあると、抵抗したくなるかもしれません。
家族がトラブルに巻き込まれることを望む人はいないでしょう。
遺言書があることでトラブルになるのは、ごく稀なケースです。
遺言書がないからトラブルになるのはたくさんあります。
そのうえ、遺言書1枚あれば、相続手続は格段にラクになります。
家族を幸せにするために遺言書を作ると考えましょう。
実際、家族の絆のためには遺言書が必要だと納得した方は遺言書を作成します。
家族の喜ぶ顔のためにやるべきことはやったと安心される方はどなたも晴れやかなお顔です。
家族の幸せを願う方は、遺言書作成を司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。
戸籍の筆頭者・住民票の世帯主が死亡したら
1相続人調査で被相続人の戸籍謄本収集
①被相続人の出生から死亡まで連続した戸籍謄本が必要になる理由
多くの方にとって、相続人がだれなのかは当たり前のことと軽く考えがちです。
家族以外の第三者に対しては、相続人がだれなのか客観的に証明する必要があります。
客観的に証明するとは、具体的には、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本を全部揃えることです。
戸籍には、その人に身分関係がすべて記録されているからです。
結婚や離婚、子どもや養子の存在を家族には内緒にしている方もいます。
戸籍には、記録されています。
戸籍謄本をすべて揃えると、秘密にしていたことが明るみに出ます。
多くの人は、複数の戸籍を渡り歩いています。
例えば、結婚すると親の戸籍から夫婦の戸籍に移ります。
戸籍が新しくなったときに、書き写される項目と書き写されない項目があります。
書き写されない項目を確認するために、出生から死亡までの連続した戸籍謄本を全部揃える必要があるのです。
②本籍地が分からないときは住民票を取得
戸籍謄本は、本籍地のある市区町村役場に請求します。
戸籍の請求を受ける市区町村役場は、本籍地と戸籍の筆頭者で戸籍を特定します。
本籍地と筆頭者が分からない場合があるでしょう。
本籍地と筆頭者が分からない場合、住民票を取得すると判明します。
住民票を請求するときに、本籍地と筆頭者の記載に☑を入れて請求します。
何もしないと、本籍地や筆頭者の記載が省略された住民票が発行されるからです。
本籍地や筆頭者は、個人情報です。
プライバシー保護のため、本籍地や筆頭者が省略されてしまいます。
2戸籍の筆頭者が死亡しても筆頭者は変更されない
①戸籍の筆頭者とは先頭に書かれている人
戸籍謄本を見ると、一番上に本籍地と名前が書いてあります。
戸籍の筆頭者とは、一番上に書いてある名前の人です。
戸籍謄本を見ても「筆頭者」と見出しがついているわけではありません。
戸籍の筆頭者は生きている人であることも死亡した人であることもあります。
戸籍の筆頭者が死亡した場合、戸籍の筆頭者が変更にならないからです。
戸籍の筆頭者とは、戸籍の先頭に書かれている人に過ぎません。
先頭に書かれている人が生きていても死亡しても、先頭に書かれている人のままです。
戸籍の筆頭者とは、戸籍の先頭に書かれている人です。
②戸籍の筆頭者は戸籍を特定するための見出し
戸籍の筆頭者は、戸籍の見出しに過ぎません。
戸籍の請求を受ける市区町村役場は、本籍地と戸籍の筆頭者で戸籍を特定します。
結婚などで新戸籍が作られる場合、もともといた本籍地を新戸籍の本籍地に指定することがあります。
複数の兄弟姉妹がもともといた本籍地を新戸籍の本籍地に指定することは割とよくあることです。
同じ本籍地の人がたくさんいる場合、どの人の戸籍を請求するのか特定する必要があります。
戸籍の筆頭者で、戸籍を特定することができます。
筆頭者が生きている人でも死亡している人でも、戸籍を特定することができます。
請求された戸籍を特定できれば、筆頭者が生きている人でも死亡している人でも関係ありません。
戸籍の筆頭者は、戸籍の見出しに過ぎないからです。
③復氏届を提出すると新戸籍で筆頭者になる
戸籍の筆頭者が死亡した場合、筆頭者は変更されません。
戸籍の中の人は、全員戸籍の筆頭者と同じ氏を名乗ります。
婚姻で氏を変更した人で配偶者が死亡した場合、婚姻前の氏に復することができます。
婚姻前の氏に復することを復氏と言います。
復氏をしたい場合は、市区町村役場に復氏届を提出する必要があります。
復氏届を出した場合、新戸籍が作られて筆頭者になります。
戸籍の筆頭者が死亡したからと言って自動的に筆頭者になることはありません。
④姻族関係終了届を提出しても筆頭者は変更されない
配偶者が死亡した場合であっても、死亡配偶者の血族と生存配偶者の姻族関係は終了しません。
生存配偶者が姻族関係を終了させたい場合、市区町村役場に姻族関係終了届を提出する必要があります。
姻族関係終了届を提出した場合であっても、復氏はしません。
復氏しないから婚姻中の氏を名乗り続けます。
復氏を希望する場合、姻族関係終了届とは別に復氏届を提出します。
復氏届を出した場合、新戸籍が作られて筆頭者になります。
姻族関係終了届を提出しただけの場合、氏に影響はありません。
戸籍が新しく作られることはありません。
姻族関係終了届を提出しただけの場合、戸籍の筆頭者が変更されることはありません。
3住民票の世帯主が死亡したら世帯主は変更される
①住民票の世帯主は世帯の代表者
住民票の世帯主は、その世帯の代表者です。
世帯主が死亡すると、世帯主は変更されます。
世帯主が死亡した場合、世帯主変更届を提出します。
世帯主が死亡した後、残った人が1人だけの場合はわざわざ変更届を出さなくても差し支えありません。
残った人が世帯主になるのは、明白だからです。
②世帯主はだれでもよい
住民票の世帯主は、その世帯の代表者です。
代表者になるために、収入などの条件はありません。
多くの場合、一家の生計を支えている人や一家の中心になっている人、年長者が世帯主です。
4戸籍謄本や住民票は郵送で請求できる
①窓口請求なら近くの市区町村役場で
相続人を確定するためには、たくさんの戸籍謄本が必要になります。
被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本を全部揃える必要があるからです。
戸籍謄本は、本籍地の市区町村役場に備えられています。
令和6年3月1日から、戸籍謄本の広域交付が始まりました。
広域交付が利用できるのは、次の人です。
(1)その戸籍に記載がある人
(2)記載がある人の直系血族
広域交付制度を利用すれば、本籍地以外の市区町村役場で戸籍謄本を請求することができます。
広域交付制度を利用して、近隣の市区町村役場で戸籍謄本を取得することができます。
②広域交付を利用できないときは郵送で
戸籍謄本等の広域交付を利用できるのは、窓口請求のみです。
仕事や家事で忙しい人は、窓口に出向くことが難しいでしょう。
身体が不自由な人は、代理人に依頼したいかもしれません。
代理にによる請求は、広域交付の対象外です。
広域交付を利用できない場合、戸籍謄本や住民票は郵送で請求することができます。
③発行手数料は定額小為替で納入
戸籍謄本や住民票を発行してもらうためには、発行手数料を納める必要があります。
戸籍謄本や住民票郵送で請求する場合、発行手数料は定額小為替で納入します。
郵便切手や収入印紙は、受け付けてもらえません。
郵便切手や収入印紙は、換金できないためです。
相続手続では、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本が必要です。
本籍地を何度も変更している方や結婚、離婚、養子縁組、離縁を何度もしている方は、戸籍をたくさん渡り歩いています。
手数料が足りなくなることがないように、少し多めに送るといいでしょう。
④定額小為替は郵便局で購入
定額小為替は、郵便局の貯金窓口で購入します。
時間によっては、郵便窓口は開いていても貯金窓口は閉まっていることがあります。
定額小為替を購入するときは、窓口時間を確認しておくといいでしょう。
定額小為替は、銀行やコンビニエンスストアでは購入することができません。
⑤定額小為替の購入に手数料がかかる
定額小為替の購入には、定額小為替1枚につき200円の手数料がかかります。
定額小為替には、6か月の有効期限があります。
6か月を過ぎたら再発行してもらわないと使うことができません。
再発行にも1枚につき200円の手数料がかかります。
5相続人調査を司法書士に依頼するメリット
本籍地の変更や国による戸籍の作り直し(改製)で多くの方は、何通もの戸籍を渡り歩いています。
古い戸籍は、現在と形式が違っていて読みにくいものです。
古い戸籍は、手書きの達筆な崩し字で書いてあって分かりにくいでしょう。
慣れないと、戸籍集めはタイヘンです。
本籍地を何度も変更している方や結婚、離婚、養子縁組、離縁を何度もしている方は、戸籍をたくさん渡り歩いているます。
戸籍を集めるだけで、膨大な手間と時間がかかります。
役所や法務局の手続では、通常、戸籍謄本や住民票の期限は問われません。
銀行預金の解約など銀行の手続では、銀行独自で期限を設けている場合があります。
集めた戸籍謄本や住民票を手続後、返却してくれる場合、返却してくれない場合があります。
期限があって、かつ、返却してくれるところから優先して手続するといいでしょう。
集めた戸籍謄本や住民票を返却してくれないところをはじめに手続すると、集めた戸籍謄本や住民票の集め直しになるからです。
段取りよく要領よく手続するには、ちょっとしたコツがいります。
仕事や家事で忙しい方や高齢、療養中などで手続が難しい方は、手続きを丸ごとおまかせすることができます。
家族にお世話が必要な方がいて、そばを離れられない方からの相談もお受けしております。
集めてみたけど、途中で挫折したことがあるでしょう。
全部集めたと思ったのに、金融機関や役所からダメ出しされることがあります。
このような場合、司法書士が目を通して、不足分を取り寄せします。
相続人調査でお困りのことがあれば、すみやかに司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。
平日の昼間に役所にお出かけになって準備するのは負担が大きいものです。
戸籍謄本や住民票は、郵便による取り寄せもできます。
書類の不備などによる問い合わせは、市区町村役場の業務時間中の対応が必要になります。
負担は、軽いとは言えません。
戸籍謄本や住民票の取り寄せも、司法書士は代行します。
相続人調査でお困りの方は、司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。
特別養子縁組の条件は厳しい
1特別養子縁組で実親との親子関係が終了する
①普通養子と特別養子のちがい
養子縁組には、2種類あります。
普通養子と特別養子です。
養子縁組とは、血縁関係による親子関係の他に、法律上の親子関係を作る制度です。
子どものいない夫婦が養子縁組をする、配偶者の連れ子と養子縁組するといったことは日常的に聞くことあります。
一般的に、単に「養子」と言ったら、普通養子を指していることがほとんどです。
普通養子では、養子縁組をする当事者が合意が重視されます。
当事者が合意をして、市区町村役場に届出をするだけで手続ができます。
特別養子は、子どもの福祉が重視されます。
子どもの福祉のために家庭裁判所が慎重に判断して決定します。
②特別養子縁組成立に家庭裁判所の審判2回必要
普通養子縁組では、養子縁組をした後も実親との親子関係は継続します。
特別養子縁組では、養子縁組をした後は実親との親子関係が終了します。
特別養子縁組をすることは、実親との親子の縁が切れることです。
実親との親子の縁を切る重大な決定だから、家庭裁判所は慎重に判断して決定します。
特別養子縁組成立には、家庭裁判所の審判が2回必要です。
特別養子適格の審判と特別養子縁組成立の審判です。
家庭裁判所の審判を2回に分けることで、養親候補者の負担軽減が期待できます。
③相続税の基礎控除が増える
相続税を計算する場合には、基礎控除があります。
相続税の基礎控除=3000万円+法定相続人の人数×600万円
基礎控除が増えれば、その分だけ相続税が少なく済みます。
法定相続人として相続税の基礎控除を計算するとき、実子がいない場合で、かつ、普通養子がいる場合は2人まで含めることができます。
実子がいる場合で、かつ、普通養子がいる場合は1人まで含めることができます。
特別養子がいる場合、法定相続人に含める人数に制限はありません。
④特別養子縁組の離縁は非常に難しい
特別養子は、子どもの福祉が重視されます。
普通養子縁組は、当事者の合意があれば縁組をすることができます。
特別養子縁組は、家庭裁判所が慎重に判断して縁組をします。
離縁とは、養子縁組を解消することです。
特別養子縁組の解消は、縁組以上に慎重に判断されます。
特別養子縁組離縁の申立てすら、ほとんどありません。
現実的には、離縁はできないと言っていいでしょう。
特別養子縁組の離縁は、非常に高いハードルがあります。
2特別養子適格の確認の審判で実親の同意を確認する
①特別養子縁組成立に実親の同意が必要
特別養子縁組では、養子縁組をした後は実親との親子関係が終了します。
原則として、実親の同意が必要です。
②実親の同意がなくても特別養子縁組
特別養子は、子どもの福祉が重視されます。
実親が意思表示ができないことがあります。
意思表示ができない場合、実親による同意はできません。
実親による虐待や悪意の遺棄があることがあります。
虐待や悪意の遺棄をする場合、実親による同意を得ることは難しいでしょう。
養子となる子どもの利益を著しく害する理由がある場合、実親による同意を不要とするべきでしょう。
・実親が意思表示ができない場合
・実親による虐待、悪意の遺棄がある場合
・その他養子となるものの利益を著しく害する場合
上記の場合、実親の同意がなくても特別養子縁組を成立させることができます。
③児童相談所長が特別養子適格の確認の審判の申立て
特別養子適格の確認の審判では、実親の同意の有無や実親による養育状況が判断されます。
特別養子縁組成立には、原則として実親の同意が必要です。
実親による虐待、悪意の遺棄があるなどの事情がある場合、実親の同意は不要です。
養親候補者は、実親による養育状況は分からないのが通常です。
実親が同意しない場合、実親による虐待、悪意の遺棄があるなどの事情を証明する必要があります。
養親候補者が証明することは、非常に負担が重いでしょう。
特別養子適格の確認の審判は、養親候補者以外に児童相談所長が申立てることができます。
児童相談所長は、申立人として実親による虐待、悪意の遺棄があるなどの事情を証明することができます。
児童相談所長は、実親による養育状況について知っているはずです。
児童相談所長が申立人として関与するから、養親候補者の負担が軽減されることが期待されます。
児童相談所長が特別養子適格の確認の審判の申立てをすることができます。
④同意後2週間経過で撤回ができなくなる
特別養子縁組成立には、原則として実親の同意が必要です。
いったん実親が同意したのに、同意を撤回することがあります。
実親が同意を撤回すると、同意が無効になります。
実親による同意が得られたと安心していたのに、同意を撤回されると不安になるでしょう。
養育を開始していた場合、子どもを奪われる結果となるからです。
家庭裁判所調査官による調査のうえ家庭裁判所に対して同意書を提出してから2週間経過した場合、同意を撤回することができなくなります。
家庭裁判所における審問期日において同意してから2週間経過した場合、同意を撤回することができなくなります。
実親による同意が撤回されないから、養親候補者は安心して養育をすることができます。
実親により同意から2週間経過すると、同意の撤回ができなくなります。
3特別養子縁組の成立の審判で親子になる
条件①配偶者がいること
特別養子縁組で養親になる人は、配偶者がいる人である必要があります。
配偶者がある人とは、法律上の婚姻をしているという意味です。
事実婚・内縁は、配偶者がある人と判断されません。
同性婚の人も、特別養子縁組をすることはできません。
条件の1つ目は、配偶者がいることです。
条件②養親の年齢25歳以上
特別養子縁組で養親になる人には、年齢制限があります。
養親になる人は、25歳以上の人です。
夫婦の一方が25歳以上で、かつ、他方が20歳以上なら条件を満たしていると判断されます。
法律上は、年齢の上限がありません。
特別養子は、子どもの福祉が重視されます。
養親が非常に高齢である場合、子どもの福祉のために適切でないと考えられるかもしれません。
子どもが自立するまでに、充分な養育をする必要があるからです。
自治体や特別養子縁組あっせん団体によっては、独自で年齢の上限を決めています。
おおむね40~45歳程度が上限です。
新生児をあっせんする団体は、45歳未満であることが多いでしょう。
新生児をあっせんすることがない団体は、45歳以上でも受け入れてもらえることがあります。
条件の2つ目は、養親の年齢が25歳以上であることです。
条件③養子の年齢請求時15歳未満
特別養子縁組で養親になる人だけでなく養子になる人にも、年齢制限があります。
家庭裁判所に特別養子の審判の申立てをする時点で、15歳未満であることです。
特別養子縁組が成立するまでに18歳になった場合、特別養子縁組は成立しません。
15歳未満から養親候補者に養育されている場合で、かつ、やむを得ない理由がある場合、18歳未満であれば特別養子の審判の申立てをすることができます。
法律改正前は、原則として6歳未満でした。
実親が同意しないまま子どもが学齢期になると、特別養子縁組をすることができませんでした。
法律改正によって、特別養子縁組が成立しやすくなったと言えます。
条件の3つ目は、養子の年齢が15歳未満であることです。
条件④15歳以上の養子は本人の同意
条件を満たせば子どもが18歳になるまで、特別養子縁組を成立させることができます。
普通養子縁組では15歳以上で、自分の意思で養子縁組をすることができます。
養子となる人が15歳以上である場合、養子となる人の同意が必要です。
養子となる人が15歳未満である場合、同意は不要ですが本人の意思は尊重されます。
条件の4つ目は、養子が15歳以上である場合に本人の同意が必要になることです。
条件⑤監護期間6か月以上
特別養子は、子どもの福祉が重視されます。
養親と養子の相性があるかもしれません。
特別養子縁組成立までに、監護期間が6か月以上必要です。
特別養子の審判の申立て前から養育している場合、養育開始から起算されます。
子どもが自立するまで充分な養育をすることができるのか判断されます。
子どもの養育には、体力も精神力も経済力も必要だからです。
特別養子縁組において、監護期間の養育状況は特に重要です。
特別養子の解消は、縁組以上に高いハードルがあるからです。
条件の5つ目は、監護期間6か月以上あることです。
条件⑥子どもの利益のため特に必要があること
特別養子縁組は、子どもの福祉のための制度です。
子どもの利益のため必要がある場合に、特別養子縁組を成立させることができます。
条件の6つ目は、子どもの利益のため特に必要があることです。
4特別養子縁組届で戸籍に反映
①審判確定後に市区町村役場へ届出が必要
特別養子縁組は、家庭裁判所の審判で成立します。
家庭裁判所は審判をした後に、市区町村役場に連絡をしません。
特別養子の審判を請求した養父母は、市区町村役場に特別養子縁組届を提出する必要があります。
特別養子縁組届を提出する場合、家庭裁判所の審判書と確定証明書が必要です。
審判書は、自動で送られてきます。
確定証明書は、確定した後に家庭裁判所に対して請求する必要があります。
特別養子縁組届を提出すると、戸籍に反映します。
②戸籍の記載は実子同様「長男」「長女」
養親の戸籍に入った後の戸籍の記載例
戸籍に記録されている者
名 〇〇
生年月日 令和〇年〇月〇日
父 〇〇〇〇(養父の氏名)
母 〇〇〇〇(養母の氏名)
続柄 長男
(途中省略)
身分事項 民法817条の2
民法817条の2による裁判確定日 令和〇年〇月〇日
届出日 令和〇年〇月〇日
届出人 父母
従前戸籍 〇〇県〇〇市〇〇町〇丁目〇番〇号 〇〇〇〇
養親の身分条項には何も記載がされません。
養子の身分事項にだけ、民法817条の2と記載がされます。
法律の専門知識がない人は、見ても何のことか分からないでしょう。
従前戸籍に実親の本籍地と同じ本籍地が記載されるものの、筆頭者は養子本人で実親の氏名は記載されません。
特別養子であることを知られたくない人のための配慮がされています。
③養子ひとりの戸籍が作られる
本籍 〇〇県〇〇市〇〇町〇丁目〇番〇号(実親の本籍地)
氏名 〇〇〇〇(養親の氏)
戸籍に記録されている者
名 〇〇
生年月日 令和〇年〇月〇日
父 〇〇〇〇(養父の氏名)
母 〇〇〇〇(養母の氏名)
続柄 長男
(途中省略)
身分事項 特別養子縁組
特別養子縁組の裁判確定日 令和〇年〇月〇日
養父氏名 〇〇〇〇
養母氏名 〇〇〇〇
届出日 令和〇年〇月〇日
届出人 父母
送付を受けた日 令和〇年〇月〇日
受理者 〇〇県〇〇市長
従前戸籍 〇〇県〇〇市〇〇町〇丁目〇番〇号 〇〇〇〇
入籍戸籍 〇〇県〇〇市〇〇町〇丁目〇番〇号 〇〇〇〇
実親の本籍地と同じ本籍地、養親の氏の名前で、養子が筆頭者になった新戸籍が作られます。
普通養子のように養父、養母ではなく、父母の欄に、養親の氏名が記載されます。
続柄の欄には、普通養子のように養子、養女ではなく、長男、長女などと記載されます。
新戸籍が作られたら、その日のうちに除籍されて養親の戸籍に入籍します。
④実親の戸籍から除籍される
実親の戸籍の記載例
身分事項 特別養子縁組
特別養子縁組の裁判確定日 令和〇年〇月〇日
届出日 令和〇年〇月〇日
届出人 養父母
送付を受けた日 令和〇年〇月〇日
受理者 〇〇県〇〇市長
新本籍 〇〇県〇〇市〇〇町〇丁目〇番〇号
縁組後の氏 〇〇
この記載がされると、実親の戸籍から除籍されますから、除籍と記載されています。
5相続人調査を司法書士に依頼するメリット
本籍地の変更や国による戸籍の作り直し(改製)で多くの方は、何通もの戸籍を渡り歩いています。
古い戸籍は現在と形式が違っていて読みにくかったり、手書きの達筆な崩し字で書いてあって分かりにくかったりしますから、慣れないと戸籍集めはタイヘンです。
本籍地を何度も変更している方や結婚、離婚、養子縁組、離縁を何度もしている方は、戸籍をたくさん渡り歩いているので、膨大な手間と時間がかかることが多くなります。
戸籍には被相続人の結婚や離婚、子どもや養子の存在といった身分関係がすべて記録されています。
相続人を確定させるために戸籍を集めるだけでも、知識のない一般の人にはタイヘンな作業です。
相続手続のうち、専門家に任せられるものは任せてしまえば、事務負担を軽減することができます。
戸籍や住民票の取り寄せも司法書士は代行します。
相続人調査でお困りの方は、司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。
亡くなった親の戸籍謄本の取り方
1相続で戸籍謄本が必要になる
①被相続人の出生~死亡の戸籍謄本が必要になる
相続が発生したら、被相続人の財産は相続人が相続します。
家族にとって、だれが相続人なのか当然のことと軽く考えているでしょう。
家族以外の相続手続先に対しては、客観的に証明する必要があります。
客観的に証明するとは、被相続人の戸籍謄本を集めることです。
被相続人の戸籍謄本は、出生から死亡までの連続した戸籍謄本が必要です。
②被相続人の出生~死亡の戸籍謄本が必要になる理由
被相続人の最後の戸籍謄本を取得すると、出生事項と死亡事項を確認することができるでしょう。
出生事項と死亡事項を確認できても、出生から死亡までの連続した戸籍謄本とは言えません。
多くの人は、たくさんの戸籍を渡り歩いています。
生まれたときは、親の戸籍に入っているでしょう。
婚姻をすると、夫婦の戸籍に入ります。
転籍や戸籍の改製で、作り直しがされることがあります。
渡り歩いてきた戸籍をすべて集める必要があります。
戸籍は、その人の身分事項が記録されている帳簿です。
身分事項とは、出生や死亡、結婚や離婚、養子縁組や離縁、認知などの事項です。
結婚や離婚、養子縁組や離縁を家族に秘密にしている人がいます。
戸籍には、すべて記録されています。
記録された後、転籍や戸籍の改製で戸籍が作り直されることがあります。
戸籍が作り直されるとき、新しい戸籍に書き写される事項と書き写されない事項があります。
新しい戸籍謄本だけ見ると、書き写されない事項を見落としてしまいます。
書き写されない事項の代表例は、認知事項です。
被相続人に認知された子どもは、被相続人の子どもです。
認知された子どもは、相続人になります。
認知事項は、書き写されません。
新しい戸籍謄本だけ見ると、認知された子どもの存在に気づけないでしょう。
認知された子どもの存在を見落とさないため、出生から死亡までの連続した戸籍謄本が必要になります。
③相続人全員の戸籍謄本が必要になる
相続手続をする場合、相続人の戸籍謄本を準備する必要があります。
相続人の戸籍謄本は、現在の戸籍謄本のみで差し支えありません。
相続人の戸籍謄本は、相続が発生した時点で相続人が健在であったことを確認するためだからです。
相続発生前に発行された戸籍謄本を使うことはできません。
相続が発生した時点で相続人が健在であったか、客観的に分からないからです。
④戸籍の附票で住所が判明する
相続が発生したら、被相続人の財産は相続人が相続します。
被相続人の財産は、相続財産です。
相続財産は、相続人全員の共有財産です。
相続財産の分け方は、相続人全員の合意で決める必要があります。
相続人調査をすると、ときには思いもよらない相続人が判明することがあります。
思いもよらない相続人が見つかっても、だれも連絡先を知らないかもしれません。
相続人の住所は、戸籍の附票で判明します。
戸籍謄本を請求するときに、一緒に戸籍の附票を請求します。
戸籍の附票は、本籍地の市区町村役場で取得することができます。
戸籍の附票には、住民票の異動が記録されています。
思いもよらない相続人が見つかっても、戸籍の附票で相続人の住所が判明します。
2亡くなった親の戸籍謄本の取り方
①親の戸籍謄本は広域交付の対象
相続が発生したら、相続人は相続手続をします。
相続手続の最初の難関は、相続人調査です。
親が亡くなった場合、死亡した親の出生から死亡までの連続した戸籍謄本をすべて用意する必要があります。
親の戸籍謄本は、広域交付で取得することができます。
直系血族の戸籍謄本は、広域交付の対象だからです。
戸籍謄本の広域交付とは、本籍地の市区町村役場以外の市区町村役場で戸籍謄本を取得する制度です。
例えば、本籍地が名古屋市以外の人が名古屋市内の各区役所で、戸籍謄本を取得することができます。
本籍地が名古屋市の人が名古屋市以外の市区町村役場で、戸籍謄本を取得することができます。
出生から死亡までの連続した戸籍謄本をすべて近隣の市区町村役場で取得することができます。
親の本籍地でなくても近隣の市区町村役場に出向いて取得することができるので、とても便利です。
親の戸籍謄本は、広域交付の対象です。
②広域交付で代理請求はできない
広域交付制度を利用する場合、請求人が市区町村役場に出向く必要があります。
市区町村役場は、平日の昼間のみ業務を行っています。
仕事や家事で忙しい人にとって、平日の昼間に時間を作るのは難しいでしょう。
代理人に依頼して、戸籍謄本を取得することができます。
代理人を立てて戸籍謄本を取得する場合、広域交付を利用することはできません。
一般的に、赤ちゃんなどの未成年者が契約などをする場合、親などが代わりにするでしょう。
赤ちゃんなどの未成年者が相続人になる場合、親などが代わりに戸籍謄本を取得することができます。
親などが代わりに戸籍謄本を取得する場合、広域交付を利用することはできません。
親は、赤ちゃんなどの未成年者の代理人だからです。
代理人が任意代理人であっても法定代理人であっても、広域交付を利用することはできません。
広域交付で、代理請求はできません。
③広域交付で郵送請求ができない
広域交付制度を利用する場合、請求人が市区町村役場に出向く必要があります。
仕事や家事で忙しい人にとって、仕事場や自宅を離れることができないでしょう。
戸籍謄本は、郵送で取得することができます。
郵送で戸籍謄本を取得する場合、広域交付を利用することはできません。
広域交付が利用できるのは、窓口請求のみだからです。
広域交付で郵送請求はできません。
④広域交付で戸籍の附票は対象外
思いもよらない相続人が見つかっても、戸籍の附票で相続人の住所が判明します。
戸籍の附票は、広域交付の対象外です。
戸籍の附票は、郵送で取得することができます。
請求人が窓口に出向いても、広域交付で請求することはできません。
広域交付で、戸籍の附票は対象外です。
⑤広域交付が利用できないときは本籍地の市区町村役場へ請求
戸籍謄本は、原則として、本籍地の市区町村役場に請求します。
広域交付を利用できない場合、本籍地の市区町村役場に請求します。
本籍地の市区町村役場が遠方である場合、郵送で請求することができます。
多くの人は、たくさんの戸籍を渡り歩いています。
複数の本籍地があることが多いでしょう。
それぞれの市区町村役場に、戸籍謄本を請求する必要があります。
広域交付ができない場合、本籍地の市区町村役場へ請求する必要があります。
⑥郵送請求で定額小為替
戸籍謄本や戸籍の附票を請求する場合、市区町村役場に発行手数料を払う必要があります。
窓口請求をする場合、その場で現金や電子マネーで支払うことができます。
戸籍謄本や戸籍の附票を郵送請求する場合、発行手数料は定額小為替で納入します。
定額小為替は、「ていがくこがわせ」と読みます。
現金は、普通郵便で送ることができません。
現金封筒を送る場合、書留料金が追加でかかります。
定額小為替は、普通郵便で送ることができます。
定額小為替は、郵便局の貯金窓口で購入することができます。
定額小為替の発行手数料は、1枚200円です。
戸籍謄本や戸籍の附票を郵送請求する場合、一緒に定額小為替を送ります。
⑦親の戸籍に入っている人はコンビニで取得できる
本籍地の市区町村役場によっては、戸籍謄本のコンビニ交付サービスに対応していることがあります。
地方公共団体情報システム機構のホームページで、本籍地の市区町村役場が戸籍謄本のコンビニ交付サービスに対応しているか調べることができます。
コンビニエンスストアは日本中いたるところにあるから、とても便利です。
戸籍謄本のコンビニ交付を利用するには、マイナンバーカードが必要です。
除籍謄本は、戸籍謄本のコンビニ交付の対象外です。
請求人が親と同じ戸籍に入っている場合、コンビニで自分の戸籍謄本を取得することができます。
自分の戸籍謄本を確認すると、親の戸籍を確認することができます。
親の戸籍に入っている人は、コンビニで親の戸籍謄本を取得することができます。
3法定相続情報一覧図があると便利
①法定相続情報一覧図を使うと相続手続がラク
相続が発生すると、相続人は相続手続をすることになります。
相続手続先は、市区町村役場や銀行などの金融機関です。
相続手続では、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本と相続人の現在戸籍を提出します。
相続手続のたびに、大量の戸籍謄本を提出しなければなりません。
大量の戸籍謄本を持ち歩くと、汚してしまったり紛失したりする心配があるでしょう。
相続手続先にとっても、戸籍謄本の束を読解するのは手間のかかる事務です。
被相続人を中心にして、どういう続柄の人が相続人であるのか一目で分かるように家系図のように取りまとめてあると便利です。
この家系図と戸籍謄本等を法務局に提出して、登記官に点検してもらうことができます。
登記官は内容に問題がなかったら、地模様の入った専用紙に認証文を付けて印刷して、交付してくれます。
地模様の入った専用紙に印刷してくれた家系図のことを法定相続情報一覧図と言います。
多くの場合、家系図のように書きます。
相続人をずらっと書き並べることもできます。
連記式の法定相続情報一覧図は、税務申告などで提出できないことがあります。
②法定相続情報一覧図は再交付をしてもらえる
法定相続情報一覧図は、最初の申出をするときに必要な通数を交付してもらうことができます。
相続手続をするにつれて、新たに財産が見つかることがあるでしょう。
法定相続情報一覧図が不足した場合、後日交付してもらうことができます。
最初の申出の後で、法定相続情報一覧図を交付してもらうことを法定相続情報一覧図の再交付の申出と言います。
法定相続情報一覧図の再交付の申出ができるのは、最初の申出人のみです。
たとえ相続人であっても最初の申出人でない人は、再交付の申出をすることができません。
法定相続情報一覧図の再交付の申出書は、押印不要です。
法定相続情報一覧図の再交付の申出ができる法務局は、最初の申出をした法務局のみです。
遠方の法務局であれば、郵送で法定相続情報一覧図の再交付の申出書を提出することができます。
4相続手続を司法書士に依頼するメリット
相続が発生したら、ご遺族は大きな悲しみに包まれます。
大きい悲しみのなかで、相続財産を調査するのは身体的にも精神的にも大きな負担になります。
負担の大きい財産調査を司法書士などの専門家に依頼することができます。
その後の相続手続がスムーズになります。
被相続人の財産は、相続人もあまり詳しく知らないという例が意外と多いものです。
悲しみの中で被相続人の築いてきた財産をたどるのは切なく、苦しい作業になります。
相続財産調査のためには銀行などの金融機関から、相続が発生したことの証明として戸籍謄本等の提出が求められます。
戸籍謄本等の取り寄せも含め、手続をおまかせいただけます。
仕事や家事で忙しい方や高齢、療養中などで手続が難しい方は、手続を丸ごとおまかせできます。
家族にお世話が必要な方がいて、頻繁に家を空けられない方からのご相談もお受けしております。
財産調査でお疲れが出る前に、司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。
戸籍謄本の郵送請求で定額小為替
1戸籍謄本の郵送請求で定額小為替が必要になる
①戸籍謄本が必要になる理由
相続が発生したら、相続手続をします。
相続手続先から、たくさんの戸籍謄本を提出するように言われます。
相続手続先に提出した戸籍に不足があると、相続手続を進めることはできません。
多くの方にとって、相続人がだれなのかは当たり前のことと軽く考えがちです。
家族以外の第三者に対しては、相続人がだれなのか客観的に証明する必要があります。
必要な戸籍謄本をすべて揃えることで、相続人を客観的に証明することができます。
戸籍には、その人の身分関係がすべて記録されています。
結婚や離婚、子どもや養子の存在を家族には内緒にしている人もいます。
家族が知らない相続人が、戸籍には記録されているかもしれません。
②戸籍謄本は本籍地の市区町村役場へ請求
戸籍は、本籍地の市区町村役場が管理しています。
戸籍謄本は、本籍地の市区町村役場に請求します。
被相続人の戸籍謄本を請求する場合、被相続人の本籍地の市区町村役場に請求しなければなりません。
相続手続をする場合、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本を用意します。
出生から死亡まで同じ本籍地であれば、1か所の市区町村役場ですべての戸籍謄本を取得することができます。
出生から死亡まで同じ本籍地であることは、多くはありません。
多くの場合、複数の市区町村役場で取得することになります。
③戸籍謄本は郵送で請求することができる
戸籍謄本は、本籍地の市区町村役場に請求します。
近隣の市区町村役場であれば出向いて請求することができるでしょう。
本籍地が遠方の場合、郵送で請求することができます。
市区町村役場によっては、郵送受付センターなどを設置していることがあります。
市区町村役場に確認してから、請求書を発送しましょう。
戸籍謄本や住民票を郵送請求する場合、郵送受付センターあてに送付します。
窓口がある市区町村役場に送付すると、余計な時間がかかってしまいます。
④発行手数料は定額小為替で納入する
市区町村役場の窓口に出向いて戸籍謄本を請求した場合、発行手数料は窓口で現金などで支払います。
戸籍謄本を郵送で請求する場合、定額小為替で納入することが一般的です。
定額小為替は、「ていがくこがわせ」と読みます。
現金で納入することができる市区町村役場であれば、現金封筒で現金を一緒に送ることができます。
現金は、普通郵便で送ることができません。
現金封筒を送る場合、書留料金が追加でかかります。
定額小為替は、普通郵便で送ることができます。
⑤定額小為替の受取人欄は空欄で
定額小為替を見ると、指定受取人おなまえ欄があります。
本来、受取人欄に受取人の名前を記入して送るものです。
戸籍謄本の請求のために定額小為替を送る場合、受取人欄を記入しないことが一般的です。
市区町村役場によっては、空欄のまま送るように指定されている場合があります。
あえて記載すると書き間違いをしてしまうおそれがあります。
購入した定額小為替をそのまま郵送すれば、問題はありません。
⑥定額小為替は多めに郵送する
相続手続をする場合、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄が必要になります。
戸籍謄本を請求する場合、戸籍が何通になるのか分からないのが通常です。
あらかじめ市区町村役場に問い合わせても、答えてはくれません。
不足しないように、多めに入れておくと安心です。
定額小為替が不足した場合、市区町村役場から連絡があります。
すぐに追加発送します。
不足分が到着するまで、戸籍謄本を発行してくれません。
⑦お釣りは原則定額小為替で返ってくる
定額小為替は、戸籍謄本の発行手数料に不足しないように多めに郵送します。
お釣りは、原則として、定額小為替で返してもらえます。
市区町村役場によっては、定額小為替でなく、郵便切手で返してくることがあります。
お釣りを郵便切手で返してくる市区町村役場であっても、発行手数料を郵便切手で納入することはできません。
⑧定額小為替は郵便局で換金できる
受け取った定額小為替は、郵便局の貯金窓口に持っていくと換金することができます。
換金するときに必要なものは、本人確認書類と認印です。
定額小為替は、発行日から5年経過すると換金できなくなります。
忘れないうちに、換金しておきましょう。
2定額小為替の買い方
①定額小為替は郵便局の貯金窓口で購入コンビニでは買えない
定額小為替は、郵便局の貯金窓口で購入することができます。
定額小為替振出請求書に必要事項を書いて、窓口に提出します。
貯金窓口は、郵便窓口と別になっていることが多いものです。
業務取扱時間も、郵便窓口とは異なることがあります。
登記簿謄本を取得するときは、収入印紙で手数料を納入します。
収入印紙は、郵便の郵便窓口で購入することができます。
郵便の郵便窓口以外にも、コンビニエンスストアや法務局などで購入することができます。
定額小為替は、郵便の郵便窓口ではなく貯金窓口で購入します。
定額小為替は、コンビニエンスストアや法務局などで購入できません。
定額小為替は、郵便局の貯金窓口で購入できます。
②定額小為替購入は現金のみ切手やクレジットカードで購入できない
定額小為替を購入するときは、現金のみの取り扱いです。
切手で定額小為替を購入することは、できません。
10万円を超えるときは、本人確認書類が必要になります。
郵便窓口では、クレジットカードなどで支払いをすることができます。
郵便局や取扱商品によっては、キャッシュレス決済を利用することができます。
貯金窓口は、クレジットカードやキャッシュレス決済などで支払いをすることはできません。
定額小為替は、貯金窓口での取り扱いです。
定額小為替は、クレジットカードやキャッシュレス決済で購入することはできません。
定額小為替購入は、現金のみです。
切手やクレジットカードで、購入できません。
③定額小為替の種類
定額小為替は、次の種類があります。
50円
100円
150円
200円
250円
300円
350円
400円
450円
500円
750円
1000円
必要な金額分を組み合わせて購入します。
④定額小為替の発行手数料は1枚200円消費税込
定額小為替を購入する場合、発行手数料は消費税込で1枚200円かかります。
1回200円ではなく、1枚200円です。
例えば、450円の定額小為替1枚を購入するために、200円の発行手数料がかかります。
50円と400円の定額小為替2枚を購入するために、400円の発行手数料がかかります。
⑤定額小為替の有効期限は6か月
定額小為替には、有効期限があります。
発行されてから、6か月以内です。
有効期限が過ぎてしまった場合、書き換えをすることができます。
書き換え手数料は、消費税込で1枚200円です。
書き換えは、時間がかかります。
書き換えをするより、換金してあらためて購入した方が手間がかかりません。
⑥土日祝日は定額小為替を購入できない
定額小為替は、郵便局の貯金窓口で購入することができます。
コンビニエンスストアなどで、定額小為替を購入することはできません。
郵便局が業務を行っていない日は、購入することはできません。
地域の中央郵便局などの大きな郵便局には、ゆうゆう窓口が設置されています。
ゆうゆう窓口では、夜間や土日祝日などでも郵便業務を行っています。
切手や収入印紙は、ゆうゆう窓口で購入することができます。
ゆうゆう窓口で行っているのは、郵便業務の一部のみです。
定額小為替は、貯金業務です。
ゆうゆう窓口の取り扱いの範囲外です。
ゆうゆう窓口で、定額小為替を購入することはできません。
定額小為替を購入するには、郵便局の業務時間に窓口に出向く必要があります。
土日祝日は、定額小為替を購入できません。
3定額小為替は評価証明書や住民票の郵送請求でも使える
相続手続をする場合、たくさんの書類を準備しなければなりません。
例えば、遺言書がないときの相続登記の必要書類は、次のとおりです。
(1)被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本
(2)相続人の現在戸籍
(3)被相続人の住民票の除票
(4)不動産を相続する人の住民票
(5)遺産分割協議書
(6)相続人全員の印鑑証明書
(7)固定資産税評価証明書
戸籍謄本以外にも、市区町村役場から住民票や固定資産税評価証明書を取得する必要があります。
住民票は、住民票を置いている市区町村役場に請求します。
固定資産税評価証明書は、不動産の所在地の市区町村役場や市税事務所へ請求します。
住民票や固定資産税評価証明書は、郵送で請求することができます。
住民票や固定資産税評価証明書を郵送請求する場合も、発行手数料がかかります。
戸籍謄本を請求する場合と同様に、定額小為替で納入します。
4遺言書があれば必要な戸籍謄本は少ない
被相続人が生前に遺言書を作成していることがあります。
遺言書で財産の分け方が決めてある場合、相続人全員の話し合いは必要ありません。
被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本は、相続人を確定するために必要になります。
相続人全員の話し合いが不要だから、相続人を確定する必要もありません。
遺言書がある場合、被相続人の戸籍謄本は死亡を証明する戸籍謄本だけで済みます。
遺言書に「相続人〇〇に相続させる」とある場合、相続人〇〇の現在戸籍は必要です。
相続人〇〇が遺言者より先に死亡した場合、「相続人〇〇に相続させる」条項は無効になるからです。
遺言書があれば、必要な戸籍謄本は少なく済みます。
遺言書を作成しておくことで、相続手続が格段にラクになります。
5相続人調査を司法書士に依頼するメリット
本籍地の変更や国による戸籍の作り直し(改製)で多くの方は、何通もの戸籍を渡り歩いています。
古い戸籍は現在と形式が違っていて読みにくかったり、手書きの達筆な崩し字で書いてあって分かりにくかったりしますから、慣れないと戸籍集めはタイヘンです。
本籍地を何度も変更している方や結婚、離婚、養子縁組、離縁を何度もしている方は、戸籍をたくさん渡り歩いています。
膨大な手間と時間がかかることが多くなります。
役所や法務局の手続では、通常、戸籍や住民票の期限は問われません。
銀行預金の解約など銀行の手続では、銀行独自で期限を設けている場合があります。
集めた戸籍や住民票を手続後、返却してくれる場合、返却してくれない場合があります。
期限があって、かつ、返却してくれるところから優先して手続するといいでしょう。
集めた戸籍や住民票を返却してくれないところをはじめに手続すると、集めた戸籍や住民票の集め直しになるからです。
段取りよく要領よく手続するにはちょっとしたコツがいります。
お仕事や家事でお忙しい方や高齢、療養中などで手続が難しい方は、手続をおまかせできます。
家族にお世話が必要な方がいて、お側を離れられない方からのご相談もお受けしております。
集めてみたけど途中で挫折した方や全部集めたと思ったのに金融機関や役所からダメ出しされた方もいらっしゃいます。
このような場合、司法書士が目を通して不足分を取り寄せします。
相続人調査でお困りのことがあれば、すみやかに司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。
平日の昼間に役所にお出かけになって準備するのは負担が大きいものです。
戸籍や住民票は郵便による取り寄せもできますが、書類の不備などによる問い合わせはやはり役所の業務時間中の対応が必要になりますから、やはり負担は軽いとは言えません。
このような戸籍や住民票の取り寄せも司法書士は代行します。
相続人調査でお困りの方は、司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。
戸籍謄本に子どもの記載がない
1戸籍謄本に子どもの記載がない
①戸籍の改製で作り直しがされる
戸籍は、その人の身分事項が記録される帳簿です。
本籍地の市区町村役場に備えられています。
戸籍の様式や編成基準は、法律で決められています。
法律が改正されると、新しい様式や編成基準に合わせて戸籍が作り直されます。
戸籍の改製とは、法律の改正で戸籍が作り直されることです。
戸籍の改製で、作り直しがされます。
②転籍で戸籍は作り直しがされる
戸籍の筆頭者及び配偶者は、本籍地を変更することができます。
転籍とは、本籍地を変更することです。
同じ市区町村内で本籍地を変更する場合、戸籍は作り直しがされません。
転籍先が現在の本籍地の市区町村と異なる場合、戸籍は作り直しがされます。
別の市区町村に転籍した場合、戸籍は作り直しがされます。
③作り直しで書き写されない項目がある
戸籍の改製があるとき、戸籍が作り直しがされます。
別の市区町村に転籍した場合、戸籍は作り直しがされます。
戸籍が作り直される場合、すべての項目が書き写されるわけではありません。
新しい戸籍に書き写される項目と書き写されない項目があります。
新しい戸籍に書き写される項目は、戸籍法施行規則第39条第1項に定められています。
新しい戸籍に書き写される項目は、次のとおりです。
(1)出生に関する事項
(2)嫡出でない子について、認知に関する事項
(3)養子について、現に養親子関係の継続するその養子縁組に関する事項
(4)夫婦について、現に婚姻関係の継続するその婚姻に関する事項及び配偶者の国籍に関する事項
(5)現に未成年者である者についての親権又は未成年者の後見に関する事項
(6)推定相続人の廃除に関する事項でその取消しのないもの
(7)日本の国籍の選択の宣言又は外国の国籍の喪失に関する事項
(8)名の変更に関する事項
(9)性別の取扱いの変更に関する事項
戸籍が作り直されるとき、新しい戸籍に書き写されない項目があります。
④除籍された子どもは書き写されない
戸籍は、その人の身分事項が記録される帳簿です。
子どもが戸籍を抜けた場合、生きていれば新たな戸籍に身分事項が記録されているはずです。
除籍とは、戸籍を抜けることです。
子どもが戸籍を抜けた後、改製や転籍をすることがあります。
改製や転籍で新たな戸籍が作られた場合、除籍された子どもは書き写されません。
改製後や転籍後の戸籍謄本に、子どもは記載されません。
改製後や転籍後の戸籍謄本だけを見ると、除籍された子どもに気づけないでしょう。
除籍された子どもは、新しい戸籍に書き写されません。
⑤父の戸籍に認知事項が書き写されない
戸籍が作り直されるとき、新しい戸籍に書き写されない項目があります。
書き写される項目は、先に説明したとおりです。
認知とは、婚姻関係にないカップルの間に生まれた子どもについて自分の子どもと認めることです。
認知をして、自分の子どもだと認めるのは一般的には父親です。
通常、母は出産の事実によって母親であることが確認できるからです。
市区町村役場に認知届を提出すると、父の戸籍と子どもの戸籍の両方に記載されます。
認知をした後、改製や転籍をすることがあります。
改製や転籍で新たな戸籍が作られた場合、父の戸籍に認知事項は書き写されません。
改製や転籍で新たな戸籍が作られた場合、子どもの戸籍に認知事項は書き写されます。
新しい戸籍に書き写される項目は、嫡出でない子について、認知に関する事項と決められているからです。
書き写すのは、嫡出でない「子」についてだけです。
嫡出でない「子の親」については、対象外です。
戸籍法施行規則第39条第1項に定められていないから、父の戸籍に認知事項は書き写されません。
改製後や転籍後の父の戸籍謄本に、認知事項は記載されません。
改製後や転籍後の戸籍謄本だけを見ると、認知された子どもに気づけないでしょう。
認知事項は、父の新しい戸籍に書き写されません。
2除籍されても相続人
①婚姻した子どもは相続人
子どもが法律上の婚姻をした場合、新しく夫婦の戸籍が作られます。
親の戸籍から除籍されて、夫婦の戸籍に入ります。
夫婦の戸籍が作られても、親子関係には何も影響はありません。
結婚しても、親子は親子です。
結婚しても、兄弟姉妹は兄弟姉妹です。
結婚で除籍されても、相続人になります。
②養子縁組をしても普通養子なら相続人
養子には、2種類あります。
特別養子と普通養子です。
養子縁組とは、血縁関係による親子関係の他に、法律上の親子関係を作る制度です。
子どものいない夫婦が養子縁組をする、配偶者の連れ子と養子縁組するといったことは日常的に聞くことあります。
一般的に、単に「養子」と言ったら、普通養子を指していることがほとんどです。
普通養子では、養子縁組をする当事者の合意が重視されます。
当事者が合意をして、市区町村役場に届出をするだけで手続ができます。
特別養子は、子どもの福祉が重視されます。
子どもの福祉のために家庭裁判所が慎重に判断して決定します。
養子は、原則として、養親の戸籍に入ります。
現在の戸籍から除籍されて、養親の戸籍に移ります。
普通養子による養子縁組をした場合、実親との親子関係は継続します。
養親の戸籍に移っても、親子関係には何も影響はありません。
普通養子による養子縁組をしても、親子は親子です。
普通養子による養子縁組をしても、兄弟姉妹は兄弟姉妹です。
普通養子による養子縁組で除籍されても、相続人になります。
養親が戸籍の筆頭者や筆頭者の配偶者でないことがあります。
戸籍の筆頭者や筆頭者の配偶者でない人が養親になる養子縁組をする場合、新しい戸籍が作られます。
養子は、新しい戸籍に入ります。
養子が養親の現在の戸籍に入る場合と養親の新しい戸籍に入る場合があります。
市区町村役場にある帳簿の作り方が違うだけに過ぎません。
養子になる人が婚姻中の場合、養親の戸籍に入ることはありません。
婚姻中の人は、夫婦の戸籍に入っているからです。
戸籍の身分事項に養子縁組をしたことが記録されます。
婚姻中の人が養子になる場合、もともと別の戸籍にいます。
もともと別の戸籍にいても、養子は子どもです。
養子縁組とは、血縁関係による親子関係の他に、法律上の親子関係を作る制度だからです。
実親にとっても子どもで、養親にとっても子どもです。
実親の相続人になるし、養親の相続人になります。
養親の戸籍に移っても、もともと別の戸籍にいても、相続人になります。
③分籍した子どもは相続人
多くの場合、親と未婚の子どもは同じ戸籍に入っています。
分籍とは、届出人を筆頭者とする新しい戸籍を作る手続です。
分籍は、戸籍の筆頭者と筆頭者の配偶者以外の18歳以上の人がすることができます。
分籍をすると、親の戸籍から除籍されて新しい戸籍が作られます。
親の戸籍から抜けて、新しい戸籍が作られるだけです。
市区町村役場にある帳簿が新しくなったに過ぎません。
親子関係には、何も影響がありません。
分籍をしても、親子は親子です。
分籍をしても、兄弟姉妹は兄弟姉妹です。
分籍で除籍されても、相続人になります。
④離婚後も子どもは相続人
被相続人に子どもがいる場合、子どもは相続人になります。
被相続人に離婚歴があることがあります。
離婚の際に、子どもは元配偶者に引き取られることがあります。
元配偶者が引き取った子どもは、被相続人の子どもです。
被相続人が離婚をしても、親子関係には何も影響はありません。
元配偶者が引き取っても、親子関係がなくなることはありません。
被相続人が離婚したとき、子どもが未成年であることがあります。
元配偶者が引き取った子どもの親権は、元配偶者が持つことがあります。
どちらが親権を持っても、親子関係には何も影響はありません。
元配偶者が親権を持っても、親子関係がなくなることはありません。
被相続人が離婚をした場合、元配偶者は除籍されます。
何もしなければ、子どもの戸籍はそのままです。
子どもを引き取った元配偶者が自分と同じ氏を名乗ってほしいと思うことがあります。
子どもの氏は、家庭裁判所の許可を得て変更することができます。
家庭裁判所で氏の変更が認められた後、子どもを自分と同じ戸籍に入れておきたいと思うでしょう。
市区町村役場に入籍届を提出することで、子どもを自分と同じ戸籍に入れておくことができます。
被相続人の元配偶者が子どもを引き取った場合、子どもは元配偶者の戸籍に入っていることが多いでしょう。
戸籍は、単なる帳簿に過ぎません。
被相続人が離婚をしても、親子は親子です。
被相続人が離婚をしても、兄弟姉妹は兄弟姉妹です。
被相続人の離婚で戸籍から除籍されても、相続人になります。
3相続手続で戸籍謄本が必要になる
①相続人になる人は法律で決まっている
相続が発生したら、親族のうち一定の範囲の人が相続人になります。
だれが相続人になるかについては、民法で決められています。
相続人になる人は、次のとおりです。
(2)~(4)の場合、先順位の人がいる場合、後順位の人は相続人になれません。
(1)配偶者は必ず相続人になる
(2)被相続人に子どもがいる場合、子ども
(3)被相続人に子どもがいない場合、親などの直系尊属
(4)被相続人に子どもがいない場合で、かつ、親などの直系尊属が被相続人より先に死亡している場合、兄弟姉妹
②被相続人に出生~死亡の連続した戸籍謄本が必要
戸籍の改製があるとき、戸籍が作り直しがされます。
別の市区町村に転籍した場合、戸籍は作り直しがされます。
戸籍が作り直される場合、すべての項目が書き写されるわけではありません。
死亡時の戸籍謄本だけ見ると、除籍された子どもや認知された子どもを見落としてしまうでしょう。
戸籍を抜けても、被相続人の子どもは相続人になります。
相続人の確認のため、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本が必要になります。
③委任状なしで子どもの戸籍謄本を取得できる
相続人調査をする場合、被相続人の戸籍謄本の他に相続人全員の戸籍謄本を準備する必要があります。
相続が発生した時点で、相続人が生きていることを証明するためです。
被相続人に子どもがいる場合、子どもは相続人になります。
子どもの戸籍謄本が必要になります。
委任状なしで戸籍謄本を取得できる人は、次の人です。
(1)同一戸籍の人
(2)配偶者
(3)直系尊属
(4)直系卑属
戸籍が別になっても、委任状なしで子どもの戸籍謄本を取得することができます。
④広域交付で子どもの戸籍謄本を取得できる
戸籍謄本は、本籍地の市区町村役場に請求するのが原則です。
戸籍謄本の広域交付とは、本籍地以外の近隣の市区町村役場で戸籍謄本を取得できる制度です。
委任状なしで戸籍謄本を取得できる人は、戸籍謄本の広域交付を利用することができます。
戸籍謄本の広域交付は、窓口請求のみの対応です。
代理人による請求や郵送請求は、対象外です。
戸籍が別になっても、広域交付で子どもの戸籍謄本を取得することができます。
4相続人調査を司法書士に依頼するメリット
本籍地の変更や国による戸籍の作り直し(改製)で多くの方は、何通もの戸籍を渡り歩いています。
古い戸籍は現在と形式が違っていて読みにくいものです。
手書きの達筆な崩し字で書いてあると、分かりにくいでしょう。
慣れないと戸籍集めはタイヘンです。
本籍地を何度も変更している方や結婚、離婚、養子縁組、離縁を何度もしている方は、戸籍をたくさん渡り歩いているので、膨大な手間と時間がかかることが多くなります。
戸籍には被相続人の結婚や離婚、子どもや養子の存在といった身分関係がすべて記録されています。
家族の方が知らない相続人が明らかになることもあります。
相続人を確定させるために戸籍を集めるだけでも、知識のない一般の人にはタイヘンな作業です。
家族の方が知らない相続人が明らかになると、精神的な負担はさらに大きいものになります。
相続手続のうち、専門家に任せられるものは任せてしまうといいでしょう。
家族の事務負担を軽減することができます。
戸籍謄本や住民票の取り寄せも司法書士は代行します。
相続人調査でお困りの方は、司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。
子どもがいない夫婦の相続人は配偶者のみではない
1子どもがいない夫婦の相続人は配偶者のみではない
①相続人になる人は法律で決まっている
相続が発生したら、親族のうち一定の範囲の人が相続人になります。
だれが相続人になるかについては、民法で決められています。
相続人になる人は、次のとおりです。
(2)~(4)の場合、先順位の人がいる場合、後順位の人は相続人になれません。
(1)配偶者は必ず相続人になる
(2)被相続人に子どもがいる場合、子ども
(3)被相続人に子どもがいない場合、親などの直系尊属
(4)被相続人に子どもがいない場合で、かつ、親などの直系尊属が被相続人より先に死亡している場合、兄弟姉妹
②事実婚・内縁の配偶者に相続権はない
配偶者は、必ず相続人になります。
相続人になる配偶者は、法律上の配偶者のみです。
事実婚・内縁の配偶者は、相続人になれません。
何年一緒にいても、事実婚・内縁の配偶者は相続人になれません。
被相続人に莫大な借金があっても、事実婚・内縁の配偶者が借金を引き継いでしまうことはありません。
莫大な借金を心配して、相続放棄をする必要はありません。
事実婚・内縁の配偶者は相続人でないから、土地などの不動産を相続することもできません。
離婚して法律上の配偶者でなくなった元配偶者も相続人になれません。
法律上の配偶者でなくなった元配偶者が、離婚後、内縁の配偶者であっても、相続人になれません。
事実婚・内縁の配偶者に、相続権はありません。
③前婚の子どもは相続人になる
被相続人に離婚歴があることがあります。
離婚した元配偶者は、相続人になりません。
離婚した元配偶者との間に、子どもがいることがあります。
被相続人に子どもがいる場合、子どもは相続人になります。
被相続人が離婚しても、子どもは相続人になります。
離婚して元配偶者が子どもを引き取っても、子どもは子どもだからです。
子どもが未成年である場合、元配偶者が親権を持つことがあります。
だれが親権者であっても、子どもは子どもです。
子どものために養育費を払っていることも払っていないこともあるでしょう。
養育費を払っていても払っていなくても、子どもは子どもです。
養育費を受け取っていても受け取っていなくても、子どもは子どもです。
子どもは、相続人になります。
離婚した後に元配偶者が再婚することがあります。
元配偶者の再婚相手と子どもが養子縁組をすることがあります。
子どもとの縁が切れた気持ちになるかもしれません。
普通養子による養子縁組をした場合、実親との親子関係は継続します。
普通養子による養子縁組であれば、子どもは子どものままです。
子どもは、相続人になります。
④疎遠になっても相続人になる
相続人になる人は、法律で決まっています。
さまざまな家族の事情から、被相続人や被相続人の家族と連絡を取り合っていないことがあります。
家族の事情とは無関係に、相続人になる人は法律で決められています。
疎遠になっても、相続人になります。
長期間連絡を取り合っていない場合、連絡先をだれも知らないことがあります。
だれも連絡先を知らなくても、相続人は相続人です。
行方不明の人も、相続人になります。
⑤半血兄弟が相続人になる
被相続人に子どもがいない場合で、かつ、親などの直系尊属が被相続人より先に死亡している場合、兄弟姉妹が相続人になります。
兄弟姉妹と言うと、父母が同じ兄弟姉妹だけを想像しがちです。
兄弟姉妹には、異父兄弟と異母兄弟が含まれます。
異父兄弟と異母兄弟をまとめて、半血兄弟と言います。
異父兄弟や異母兄弟と関係がいいことは、あまりないでしょう。
被相続人に子どもがいない場合で、かつ、親などの直系尊属が被相続人より先に死亡している場合、半血兄弟も相続人になります。
⑥相続人は配偶者のみは珍しい
相続が発生したら、配偶者や子どもが相続人になることはよく知られています。
子どもがいない夫婦の場合、配偶者のみが相続人になると誤解しているかもしれません。
配偶者以外に相続人はいないと言いながら、実際は疎遠な兄弟姉妹がいることがあります。
半血兄弟がいる場合、被相続人自身も半血兄弟の存在を知らないかもしれません。
被相続人が知らなくても、相続人は相続人です。
実際のところ相続人は配偶者のみは、珍しいケースです。
2子どもがいない夫婦の相続人と相続分・遺留分
①配偶者と子どもが相続人
被相続人に子どもがいる場合、子どもは相続人になります。
配偶者と子どもが相続人になる場合、法定相続分は次のとおりです。
・配偶者の法定相続分 2分の1
・子どもの法定相続分 2分の1
子どもが複数いる場合、2分の1の相続分を平等に分け合います。
配偶者と子どもには、遺留分が認められます。
遺留分とは、相続人に認められる最低限の権利です。
被相続人に近い関係の相続人に認められます。
配偶者と子どもが相続人になる場合、遺留分は次のとおりです。
・配偶者の遺留分 4分の1
・子どもの遺留分 4分の1
子どもが複数いる場合、4分の1の遺留分を平等に分け合います。
②配偶者と親などの直系尊属が相続人
被相続人に子どもがいない場合、親などの直系尊属が相続人になります。
配偶者と親などの直系尊属が相続人になる場合、法定相続分は次のとおりです。
・配偶者の法定相続分 3分の2
・親などの直系尊属の法定相続分 3分の1
親などの直系尊属が複数いる場合、3分の1の相続分を平等に分け合います。
配偶者と親などの直系尊属には、遺留分が認められます。
配偶者と親などの直系尊属が相続人になる場合、遺留分は次のとおりです。
・配偶者の遺留分 3分の1
・親などの直系尊属の遺留分 6分の1
親などの直系尊属が複数いる場合、6分の1の遺留分を平等に分け合います。
③配偶者と兄弟姉妹が相続人
被相続人に子どもがいない場合で、かつ、親などの直系尊属が被相続人より先に死亡している場合、兄弟姉妹が相続人になります。
配偶者と兄弟姉妹が相続人になる場合、法定相続分は次のとおりです。
・配偶者の法定相続分 4分の3
・兄弟姉妹の法定相続分 4分の1
兄弟姉妹が複数いる場合、4分の1の相続分を平等に分け合います。
配偶者と兄弟姉妹には、遺留分が認められません。
配偶者と兄弟姉妹が相続人になる場合、遺留分は次のとおりです。
・配偶者の遺留分 2分の1
・兄弟姉妹の遺留分 なし
④配偶者と全血兄弟と半血兄弟が相続人
兄弟姉妹が相続人になる場合、全血兄弟だけでなく半血兄弟も相続人になります。
全血兄弟とは、父母が同じ兄弟姉妹です。
全血兄弟と半血兄弟の法定相続分は、同じではありません。
嫡出子と非嫡出子の法定相続分は、同じになりました。
半血兄弟の法定相続分は、半分のままです。
配偶者と兄弟姉妹が相続人になる場合、法定相続分は先に説明したとおりです。
兄弟姉妹が複数いる場合、平等に分け合います。
例えば、全血兄弟1人と半血兄弟1人がいる場合、4分の1の相続分を次のように分け合います。
全血兄弟の法定相続分 6分の1
半血兄弟の法定相続分 12分の1
兄弟姉妹には、遺留分は認められません。
3配偶者に全財産を相続させる遺言書
①遺言書を作成して遺産分割の方法を指定
子どもがいない夫婦であっても、残された配偶者のみが相続人になるのは珍しいケースです。
多くの場合、残された配偶者と被相続人の親族が相続人になります。
被相続人の親族と残された配偶者の関係が良くないことがあります。
長年疎遠になっていても、相続手続では協力してもらう必要があります。
被相続人が遺言書を作成して、相続財産の分け方を指定することができます。
遺言書で遺産分割の方法を指定した場合、遺言書のとおりに分けることができます。
疎遠な相続人と話し合いをする必要はありません。
関係が良くない親族がいる場合、残された配偶者の精神的負担は大きいでしょう。
遺言書のとおりに分けることができるから、残された配偶者はラクができます。
遺言書を作成して、遺産分割の方法を指定することができます。
②遺言執行者を指名して相続手続をおまかせ
遺言書を作成するだけでは、意味がありません。
遺言書の内容は、自動で実現するわけではないからです。
遺言執行者は、遺言書の内容を実現する人です。
遺言書の中で、遺言執行者を指名することができます。
相続を何度も経験する人は、あまりいません。
だれにとっても初めてで、不慣れなものです。
相続手続は、想像以上に手間と時間がかかります。
遺言執行者がいる場合、手間と時間がかかる相続手続をおまかせできます。
遺言執行者にわずらわしい相続手続をおまかせできるから、残された配偶者には心強いでしょう。
遺言執行者が遺言書の内容を実現してくれるから、遺言者にとっても心強いでしょう。
遺言執行者を指名して、相続続をおまかせすることができます。
③兄弟姉妹に遺留分はない
遺言書を作成して、遺産分割の方法を指定することができます。
疎遠になった兄弟姉妹に財産を引き継ぐより、協力して財産を築いた配偶者に引き継いでもらいたいでしょう。
兄弟姉妹に、遺留分はありません。
どのような財産配分にしても、兄弟姉妹は文句を言うことはできません。
例えば、全財産を配偶者に相続させる遺言書を作成しても、兄弟姉妹は遺留分を請求することはできません。
相続が発生したときに、兄弟姉妹が先に死亡していることがあります。
相続人になるはずだった兄弟姉妹が先に死亡した場合、兄弟姉妹の子どもが相続人になります。
兄弟姉妹の子どもは、甥姪です。
甥姪が代襲相続人になる場合、甥姪に遺留分はありません。
甥姪が代襲相続人になっても、甥姪は遺留分を請求することはできません。
兄弟姉妹にも甥姪にも、遺留分はありません。
④配偶者居住権を遺贈して住む場所を確保
遺言書を作成する場合、相続人に遺留分に配慮することは重要です。
遺留分を侵害する遺言書がある場合、相続人間でトラブルになるおそれがあるからです。
子どもや親などの直系尊属が相続人になる場合、遺留分が認められます。
相続財産の大部分が自宅などの不動産である場合、遺産分割が難しくなるでしょう。
残された配偶者に住む場所を確保させたいと思って、自宅を相続させるかもしれません。
不動産の価値が高い場合、遺留分を侵害することになるからです。
配偶者に住む場所を確保させたい場合、配偶者居住権を遺贈する方法があります。
不動産の所有権を相続させるより、配偶者居住権の経済的価値は低いでしょう。
配偶者居住権を遺贈して、住む場所を確保することができます。
⑤夫婦一緒に遺言書作成なら予備的遺言
子どもがいない夫婦が相続対策をする場合、夫婦一緒にするといいでしょう。
遺言書を作成する場合、夫婦一緒に作成します。
子どもがいない夫婦が遺言書を作成する場合、相手に全財産を相続させる内容であることがほとんどです。
夫婦が相手に全財産を相続させる遺言書を作成した場合、残された配偶者の遺言書は無駄になります。
相続が発生したときに、遺言書は効力が発生するからです。
残された配偶者が死亡したとき、残された配偶者の遺言書に効力は発生します。
残された配偶者の遺言書は、先に死亡した配偶者に全財産を相続させる内容でしょう。
先に死亡した配偶者に、相続させることはできません。
財産を受け取る人が先に死亡した場合、遺言は無効になるからです。
夫婦が遺言書を作成する場合、どちらが先に死亡するか分かりません。
財産を受け取る人が先に死亡したときに備えて、予備的遺言をするのがおすすめです。
先に死亡したときに備えて、財産を受け取る人を指定しておく方法です。
夫婦一緒に遺言書作成なら予備的遺言がおすすめです。
4遺言書作成を司法書士に依頼するメリット
遺言書は、遺言者の意思を示すものです。
自分が死んだことを考えたくないという気持ちがあると、抵抗したくなるかもしれません。
実は、民法に遺言書を作ることができるのは15歳以上と定められています。
死期が迫ってから、書くものではありません。
遺言書はいつか書くものではなく、すぐに書くものです。
遺言書は遺言者の意思を示すことで、家族をトラブルから守るものです。
子どものいない夫婦の場合、遺言書の威力は大きいものです。
遺言書があることで、残された配偶者が守られます。
お互いを思いやり幸せを願う方は、遺言書作成を司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。
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