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特別縁故者の判断基準と認められる人の共通点

2026-03-11

1特別縁故者に財産が分与される

①相続人になる人は法律で決まっている

相続が発生したら、親族のうち一定の範囲の人が相続人になります。

だれが相続人になるかについては、民法で決められています。

②相続人不存在なら国庫帰属

相続人になる人は、法律で決まっています。

相続人がまったくいない天涯孤独の人がいます。

相続人はいるけど、相続放棄をすることがあります。

家庭裁判所で相続放棄が認められた場合、はじめから相続人でなかったと扱われます。

相続人が不存在の場合、相続財産は国庫に帰属します。

③特別縁故者に対する財産分与は家庭裁判所の判断

特別縁故者とは、被相続人に特別な縁故があった人です。

相続財産を国庫に帰属させるより、特別な縁故にあった人に分与した方が適切なことがあります。

相続人不存在である場合、家庭裁判所に対して特別縁故者財産分与の申立てをすることができます。

特別縁故者に認められる要件は、次のとおりです。

(1)生計を同じくしていた人

(2)被相続人の療養看護につとめた人

(3)その他被相続人と特別な関係にあった人

家庭裁判所の判断で、特別縁故者に対して相続財産が分与されます。

特別縁故者に対する財産分与は、家庭裁判所が客観的な証拠に基づいて判断します。

客観的な証拠を充分に準備できないと、強い思いがあっても認められません。

④相続人がいると特別縁故者は認められない

特別縁故者に対する財産分与は、例外的な制度です。

相続人がいる場合、相続財産は相続人が相続します。

たとえ被相続人に特別な縁故があったとしても、相続人がいれば特別縁故者として認められることはありません。

2特別縁故者の判断基準と認められる人の共通点

①家庭裁判所が特別縁故者を判断するときの基本姿勢

(1)形式よりも実質的な生活関係を重視する

特別縁故者に認められる人は、親族であることも親族でないこともあります。

家庭裁判所は、形式よりも実質的な生活関係を重視します。

親族であるか親族でないかは、あまり重視されません。

重要なのは、被相続人の生活をどれだけ支え密接な関係をどれだけ築いていたかです。

家族同然の実態があれば、血縁よりも高く評価されます。

(2)個別事情を最大限考慮する

特別縁故者に対する財産分与は、例外的な制度です。

特別縁故者に認められるか、一律に判断することはできません。

特別縁故者の判断は、ケースごとに事情が大きく異なるためです。

特別縁故者に認められるか、次の事情を考慮します。

・共同生活の密度

・精神的な結びつき

・生活の依存度

・金銭的援助の有無

・介護の内容・期間

・被相続人の意思

家庭裁判所は、上記の内容を総合的に判断します。

その人を例外的に扱う合理性があるか、慎重に判断します。

(3)被相続人の意思を尊重する

遺言書を作成する人は、あまり多くはありません。

家庭裁判所は、被相続人の生前の言動を非常に重視します。

被相続人が遺言書の作成を検討していた場合、遺言書の内容は重要な資料になります。

被相続人の意思が読み取れる場合、特別縁故者として認める方向に傾きやすいからです。

(4)財産分与は恩恵でなく公平の回復

特別縁故者に対する財産分与は、家庭裁判所による恩恵ではありません。

被相続人の生活を支えてきた分は、本来だったら報われるべきと考えられます。

特別縁故者に対する財産分与は、報われるべき公平を後から調整する制度です。

公平の観点から、その人が支えてきた分を回復します。

(5)特別縁故者の認定は慎重姿勢

家庭裁判所の出発点は、相続人以外の人は受け取れない原則です。

例外を認めるのに、ふさわしい特別な縁故が必要です。

例外的な制度だから、特別縁故者の認定には非常に慎重です。

例外的な制度だから、分与する相続財産は必要最小限です。

自分は受け取れるはずと考えている申立人とは、出発点が違うと言えます。

国庫帰属の原則を崩すことが第三者から見ても適切であるのか、非常に慎重に判断します。

家庭裁判所は、申立人の人生や努力を評価しません。

特別縁故者に認めるのは、国庫に帰属される原則を崩す合理性があるかを評価します。

②主張より客観的証拠により判断

家庭裁判所は、特別縁故者の認定に慎重姿勢です。

申立人が自分は特別縁故者だと主張しただけで、認められることはありません。

国庫帰属より自分が受け取るほうが公平という感覚は、家庭裁判所の判断基準にありません。

原則を崩す合理性を第三者目線で評価するからです。

国庫に帰属するはずの財産を例外的に分与するから、特別扱いする合理性が必要です。

特別扱いする合理性が第三者にも分かる形で、明確に示される必要があります。

申立人の主張が客観的事実と一致しているのか、客観的証拠で確認します。

家庭裁判所は、主張より客観的証拠を重視します。

被相続人に特別な縁故があることを客観的証拠で確認したいからです。

③生計同一と判断されるための評価ポイント

ポイント(1)生活費の負担状況は最重要

生計同一とは、生活費が一体化していることです。

家庭裁判所は、お金の流れを客観的証拠で確認します。

・食費・光熱費・家賃などを共同で支払っていた

・一方が生活費の大部分を負担していた

・銀行口座の出入りが生活共同を示している

上記の事情を客観的に立証できると、特別縁故者に認められやすくなります。

ポイント(2)同居の実態がある

同居の実態とは、生活空間を共有していたことです。

住民票だけで形式的に判断せず、実質を重視します。

・同じ家に住んでいた期間

・寝食を共にしていた事実

上記の事情を客観的に立証できると、特別縁故者に認められやすくなります。

ポイント(3)家事や生活支援の実態

生計同一には、生活の相互扶助も含まれます。

金銭面だけでなく、一体として生活を営んでいたか評価されます。

・食事の準備、掃除、洗濯などを互いに行っていた

・通院付き添い、買い物、日常生活の支援

・被相続人が申立人の支援に依存していた

上記の事情を客観的に立証できると、特別縁故者に認められやすくなります。

ポイント(4)収入・支出の依存関係

家庭裁判所は、被相続人が申立人に依存していたか重視します。

・被相続人が無収入または低収入で、申立人の援助が不可欠だった

・申立人の収入で生活が成り立っていた

上記の事情を客観的に立証できると、特別縁故者に認められやすくなります。

ポイント(5)被相続人の意思

生計同一の背景に、被相続人の意思があるか確認されます。

被相続人の意思の存在は、生計同一の実態を補強する強力な要素だからです。

④療養看護につとめたと判断されるための評価ポイント

ポイント(1)看護・介護の量が最重要

家庭裁判所は、看護・介護の量を客観的証拠で確認します。

療養看護につとめたと判断されるためには、様子見のお見舞いでは不足です。

・毎日またはほぼ毎日

・数年単位の長期間に及ぶ

・入院中も頻繁な付き添い

上記の事情を客観的に立証できると、特別縁故者に認められやすくなります。

ポイント(2)看護・介護の質が最重要

家庭裁判所は、看護・介護の量を客観的証拠で確認します。

療養看護につとめたと判断されるためには、単なるお手伝いでは不足です。

被相続人の生活維持に不可欠な看護や介護であることが重視されます。

・排泄介助、入浴介助、食事介助など身体介護

・夜間の見守り

・医師の指示に基づく医療的ケア

・認知症の対応など精神的負担の大きいケア

上記の事情を客観的に立証できると、特別縁故者に認められやすくなります。

ポイント(3) 看護・介護の中心的人物であること

家庭裁判所は、看護・介護の中心的人物であることを重視します。

申立人が中心的人物として被相続人を支えていたことは、決定的評価ポイントです。

・他に介護者がいない、または申立人が中心だった

・親族がいても、実際に介護していたのは申立人だった

・介護サービスを利用していても、申立人が全体を支えていた

上記の事情を客観的に立証できると、特別縁故者に認められやすくなります。

ポイント(4)医療機関・介護施設との関与

療養看護は、家庭内だけではありません。

医療・介護の現場で、家族同然に動いていたかが評価されます。

・入院中の洗濯、食事補助、身の回りの世話

・医師・看護師との連絡調整

・退院後のケアプラン調整

上記の事情を客観的に立証できると、特別縁故者に認められやすくなります。

ポイント(5)看護・介護のために申立人が払った負担

家庭裁判所は、申立人がどれだけ自分の生活を犠牲にしたか客観的証拠で確認します。

自分の生活を犠牲にして被相続人の生活を支えた事情は、決定的評価ポイントです。

⑤被相続人と特別な関係にあったと判断されるための評価ポイント

ポイント(1)被相続人との精神的な結びつきの深さが最重要

家庭裁判所は、家族同様の精神的な結びつきを重視します。

被相続人と特別な関係にあったと判断されるためには、単なる親友では不足です。

・長年にわたる深い信頼関係

・互いに相談し合う関係

・被相続人が申立人を“家族同然”に扱っていた

・申立人が被相続人の精神的支柱になっていた

上記の事情を客観的に立証できると、特別縁故者に認められやすくなります。

ポイント(2)生活上の密接な関与

生活上の密接な関与とは、生活の中で不可欠な存在であることです。

・日常的に生活を助けていた

・生活の相談役・実務の代行役であった

・被相続人が申立人に生活の多くを依存していた

上記の事情を客観的に立証できると、特別縁故者に認められやすくなります。

ポイント(3)被相続人の生前の言動

家庭裁判所は、被相続人の意思を尊重します。

被相続人の意思を客観的に立証できると、特別な関係の評価が一気に高まります。

ポイント(4)経済的・時間的な支援の実態

家庭裁判所は、精神的な結びつきだけでなく実際の支援行動を重視します。

支援の実態が立証できると、特別な関係として認められやすくなります。

・金銭的援助

・重要な支払いの代行

・生活支援のための時間的負担

上記の事情を客観的に立証できると、特別縁故者に認められやすくなります。

ポイント(5)長期間にわたる継続性

長期間にわたる継続性は、特別な関係の根拠になります。

・数年単位の継続性

・生活の節目ごとに関わっていた

・被相続人の老後を通して支えていた

上記の事情を客観的に立証できると、特別縁故者に認められやすくなります。

⑥複数のポイントの重なりで評価される

家庭裁判所は、一つの事情だけで判断しません。

単に同居していただけ単に介護していただけでは、認められません。

特別縁故者と認めるか、総合評価するからです。

上記ポイント全部をまんべんなく、客観的証拠で示すことが重要です。

上記ポイント全部を客観的に示せないと、認められるのは難しくなります。

⑦特別縁故者に認められない典型例

ケース(1)相続人がいる

特別縁故者は、相続人不存在のときに認められる例外的な制度です。

疎遠であっても相続人がいる場合、特別縁故者に認められません。

ケース(2)死後の縁故のみ

特別縁故者は、被相続人の生前に特別な縁故があった人です。

被相続人の死亡後に葬儀や祭祀を行っても、生前に縁故があったとは言えません。

死後の縁故のみの場合、特別縁故者に認められません。

3特別縁故者に認められるハードルは高い

①形式的な証拠は集めやすい

形式的な証拠は、比較的準備しやすい証拠です。

例えば、次の証拠です。

・同居の有無を示す住民票

・入院・通院の付き添い記録

・生活費の振込記録

・家賃や光熱費等の支払い記録

上記は、生活の一部です。

被相続人の死亡後であっても、比較的準備しやすい証拠です。

準備しやすい証拠だけでは、決定打とはなりません。

評価ポイント全部を網羅する証拠が必要だからです。

②実質を裏付ける証拠は集めにくい

(1)日常生活の行為は証拠が残らない

家庭裁判所は、共同生活の密度や生活の依存度を重視します。

共同生活の密度や生活の依存度は、日常生活の行為そのものです。

日常生活の中で行っていたことを客観的に分かる形で、残すことは困難です。

現実にも、やっていたことは事実なのに証明できないという結果になります。

(2)精神的な支えあいは証拠化が難しい

家庭裁判所は、精神的な結びつきや支えあいを重視します。

深い信頼関係があったことは、客観的な証拠にしにくいものです。

家族同然だったなどの当事者の主張だけでは、客観的に認められにくいと言えます。

(3)被相続人の意思が残っていない

家庭裁判所は、被相続人の意思を尊重します。

被相続人の意思は、遺言書以外で示されることはほとんどないでしょう。

③例外的制度だから家庭裁判所は慎重姿勢

特別縁故者に財産を分与するのは、例外です。

例外だから、家庭裁判所は非常に慎重な姿勢で判断します。

当事者の主張だけでなく、客観的な証拠によって厳格に判断します。

4特別縁故者に期待するより遺言書を作成して遺贈

遺言書を作成して、自分の死後だれに財産を引き継がせるか自由に決めることができます。

遺贈とは、相続人や相続人以外の人に財産を引き継がせることです。

特別縁故者に認められるか、家庭裁判所が判断します。

家庭裁判所は、非常に慎重な姿勢で判断します。

多大な貢献があっても充分な証拠が準備できないと、特別縁故者に認められません。

特別縁故者に認められるハードルは、非常に高いと言えます。

多大な貢献は、被相続人自身が一番分かっているはずです。

多大な貢献に報いるため、遺言書を作成して遺贈することがおすすめです。

5遺言書作成を司法書士に依頼するメリット

遺言書は、被相続人の意思を示すものです。

自分が死んだことを考えたくないという気持ちがあると、抵抗したくなるかもしれません。

民法に遺言書を作ることができるのは、15歳以上と定められています。

遺言書を作成すれば、法定相続人や法定相続人以外の人に財産を引き継ぐことができます。

遺言書があって遺言執行者がいれば、相続手続はおまかせできます。

遺言者にとっても財産を受け取る人にとっても、安心です。

相続人がいない場合、想像以上に手間と時間がかかります。

手間と時間をかけても、確実に財産を引き継ぐことができるわけではありません。

お互いを思いやる方は、遺言書作成を司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。

失踪宣告をしない選択肢と代替手段の限界

2026-03-04

1失踪宣告で死亡とみなされる

①家族のために失踪宣告

相当長期間、行方不明になっている場合、死亡している可能性が高い場合があります。

条件を満たした場合、死亡の取り扱いをすることができます。

失踪宣告とは、行方不明の人が死亡した取り扱いとするための手続です。

失踪宣告がされたら、たとえ死亡していなくても死亡した取り扱いをします。

行方不明が長期化した場合、家族が困ります。

家族であっても、行方不明の人の財産を処分することができません。

行方不明者の配偶者は、再婚することができません。

残された家族のために、行方不明者を死亡したものと扱う制度が失踪宣告の制度です。

失踪宣告がされると、死亡が確認できなくても死亡と見なされます。

実際に、死亡したと証明する制度ではありません。

②失踪期間は普通失踪7年と特別失踪(危難失踪)1年

失踪宣告には、2種類があります。

普通失踪と特別失踪(危難失踪)です。

一般的に失踪宣告といった場合、普通失踪を指しています。

生死不明の期間を失踪期間と言います。

普通失踪では、失踪期間が7年です。

特別失踪(危難失踪)とは「戦地に行った者」「沈没した船舶に乗っていた者」「その他死亡の原因となる災難に遭遇した者」などを対象にする失踪宣告です。

特別失踪(危難失踪)では、失踪期間が1年です。

③自動で失踪宣告はされない

失踪期間が経過したら、家庭裁判所に対して失踪宣告の申立てをすることができます。

失踪期間が経過するだけでは、何も起きません。

国家や家庭裁判所が自動で、失踪宣告することはありません。

失踪宣告の申立てをしていないのに、自動で失踪宣告がされることはありません。

失踪宣告は、家族が行方不明になって困っている人を救済する制度だからです。

④住民票が職権消除されても死亡扱いではない

長期間行方不明になって居住実態がないと、住民票が消されることがあります。

職権消除とは、本人の届出がなくても市町村が職権で住民票を消除することです。

職権消除は、住民登録を整理するための行政処理に過ぎません。

住民票が職権消除されても、死亡扱いではありません。

⑤戸籍が高齢者消除されても死亡扱いではない

極端な高齢になると、戸籍が消されることがあります。

高齢者消除とは、家族の届出がなくても市町村が職権で戸籍を消除することです。

高齢者消除は、戸籍を整理するための行政処理に過ぎません。

戸籍が高齢者消除されても、死亡扱いではありません。

2失踪宣告をしないという選択肢と代替手段の限界

①行方不明者の財産を家族が管理している

行方不明者の財産は、家族が日常的に管理しているでしょう。

行方不明者の財産を家族が管理しているから、生活上は特に支障がないかもしれません。

生活は維持できているから、失踪宣告の必要を感じにくいでしょう。

生活の現状を維持する限り、家族が困ることはありません。

財産を処分するときになって、行方不明者本人による手続が必要になります。

家族による手続ができないから、初めて困ることになります。

家族が困るまで、失踪宣告の申立てを渋ります。

②行方不明者の借金は行方不明者の借金のまま

多大な借金を抱えたまま、家族が行方不明になることがあります。

失踪宣告を受けなければ、行方不明者は生きている扱いです。

行方不明者の借金は、行方不明者のものです。

借金を抱えて行方不明になっても、家族は借金を返済する義務はありません。

借金の相続を恐れて、失踪宣告の申立てを渋ることがあります。

③他の相続人から説明を求められる

失踪宣告を受けると、死亡扱いがされます。

失踪宣告を受けた人を被相続人として、相続が発生します。

相続手続の過程で、被相続人の財産状況を明らかにする必要があります。

過去の財産の使い道について、他の相続人から説明を求められる場面があるでしょう。

失踪宣告を放置しておけば、心理的にも実務的にもラクです。

説明を求められる場面を想像して、失踪宣告の申立てをためらうことがあります。

④失踪宣告の申立てをする義務はない

失踪宣告は、家族が行方不明になって困っている人を救済する制度です。

行方不明が長期間になっても、失踪宣告の申立てをする義務はありません。

家族が生存を信じて、帰りを待ち続けることがあります。

帰りを待つ家族にとって、死亡扱いにすることは強い葛藤があります。

家族の心情を尊重して、失踪宣告の申立ては家族の意思に委ねられています。

失踪宣告の申立てを先延ばしすると、デメリットが積み重なります。

⑤失踪宣告をしないと起きるデメリット

デメリット(1)財産処分ができない

失踪宣告をしないと、行方不明者は生きている扱いです。

行方不明になっても、行方不明者の財産は行方不明者のものです。

行方不明者の財産を処分できるのは、行方不明者だけです。

財産の処分とは、次のような行為です。

・不動産の売却

・預貯金の解約

たとえ家族であっても、行方不明者の不動産を売却することはできません。

たとえ家族であっても、行方不明者の預貯金を解約することはできません。

行方不明者の預貯金を管理していても、解約には行方不明者本人が手続をする必要があります。

デメリット(2)契約の変更解除ができない

生活をするうえで、生命保険契約や賃貸借契約をしています。

契約の当事者が行方不明になっても、契約は自動でなくなりません。

行方不明になっても、家族が勝手に契約を変更解除することはできません。

契約の変更解除には、行方不明者本人が手続をする必要があります。

デメリット(3)生命保険の死亡保険金が支払われない

生命保険が掛けてある人が死亡した場合、死亡保険金が支払われます。

長期間生死不明であっても、生きている扱いです。

たとえ家族が経済的に困窮しても、生命保険の死亡保険金は支払われません。

デメリット(4)遺族年金を受け取れない

遺族年金とは、年金に加入していた人が死亡したときに遺族に対して支給される年金です。

失踪宣告を受けていないと、遺族年金は支給されません。

たとえ家族が経済的に困窮しても、生きている扱いだからです。

デメリット(5)配偶者が再婚できない

配偶者が長期間行方不明になっても、婚姻は継続中です。

婚姻関係を終了する方法は、離婚か死別のみです。

失踪宣告をしなくても、離婚訴訟で離婚する方法があります。

離婚訴訟で離婚する方法には、充分な客観的証拠が不可欠です。

離婚訴訟で離婚できるだけの証拠を準備するのは、非常に高いハードルがあります。

3失踪宣告をしないときの代替手段の限界

①代替手段として不在者財産管理人

失踪宣告をしない場合、不在者財産管理人制度を利用することが考えられます。

不在者財産管理人とは、行方不明者の財産を管理する人です。

行方不明の人は、生きている扱いのままです。

死亡扱いにしなくて済むから、家族の心理的抵抗が少なく済みます。

②行方不明者が相続人になる相続で不在者財産管理人

(1)遺産分割協議には相続人全員の合意が必要

相続人になる人は、法律で決められています。

相続が発生したのに相続人が行方不明の場合、相続手続を進められなくなります。

相続財産の分け方は、相続人全員の合意で決定する必要があるからです。

遺産分割協議とは、相続財産の分け方について相続人全員でする話し合いです。

相続人が長期間行方不明であっても、行方不明の相続人を除外できません。

(2)遺産分割協議のため不在者財産管理人

行方不明者が相続人になる相続が発生した場合、相続分は行方不明者の財産と言えます。

行方不明者の財産を管理するするため、家庭裁判所に不在者財産管理人選任の申立てをすることができます。

不在者財産管理人は、家庭裁判所が選任します。

行方不明者に代わって、不在者財産管理人が遺産分割協議に参加します。

(3)不在者財産管理人は家族の希望をかなえる人ではない

不在者財産管理人は、行方不明者の財産を管理する人です。

家族が選任の申立てをしても、家族の希望をかなえる人ではありません。

不在者財産管理人は、行方不明者の利益を守る義務があるからです。

不在者財産管理人が遺産分割協議をする場合、行方不明者の相続分を確保する必要があります。

不在者財産管理人が専門家であっても家族であっても、相続分を確保する必要があります。

相続分を確保していない遺産分割協議は、家庭裁判所が許可しません。

(4)遺産分割協議が終わっても不在者財産管理人

遺産分割協議が終わっても、不在者財産管理人の任務は終了しません。

不在者財産管理人は、行方不明者の財産を管理する人だからです。

行方不明者が帰ってくるまで、または行方不明者の死亡が判明するまで、任務は続きます。

遺産分割協議が終わっても、行方不明者の財産を管理する必要があるからです。

任務が続くから、不在者財産管理人の報酬がかかり続けます。

③不在者財産管理人は不利益処分ができない

(1)行方不明者の財産処分は許可されない

不在者財産管理人は、家族の希望をかなえる人ではありません。

行方不明者の利益を害することは、許されません。

たとえ家族が財産処分を望んでも、行方不明者の利益を害する処分は許可されません。

例えば、不動産の売却は行方不明者の利益を害すると、判断されることが多いでしょう。

行方不明者の自宅を売却して売却代金を家族が自由に使いたいなどの理由は、行方不明者の利益を害すると判断されるでしょう。

空き家で維持費だけがかかるなどの理由であれば、行方不明者の利益と判断されるでしょう。

(2)売却代金は家族が使えない

たとえ売却が許可されたとしても、売却代金は行方不明者の財産です。

行方不明者の財産は、不在者財産管理人が管理を続けます。

家族の財産だから家族で自由に使いたいという希望は、叶えられません。

④不在者財産管理人で行方不明者に相続は発生しない

不在者財産管理人とは、行方不明者の財産を管理する人です。

行方不明者を死亡扱いにする効果は、ありません。

不在者財産管理人が選任されても、行方不明者は生きている扱いです。

不在者財産管理人は、生きている行方不明者の財産を管理します。

生きている扱いだから、相続は発生しません。

行方不明者の財産は、不在者財産管理人が管理を続けます。

たとえ家族であっても、行方不明者の財産を引き継ぐ理由がないからです。

⑤二度手間になる現実

不在者財産管理人は、一見して便利な制度です。

あくまで、一時しのぎの制度です。

不在者財産管理人を選任してもらっても、死亡扱いをすることができないからです。

最終的には、失踪宣告をすることになります。

結局のところ二度手間になる現実を知ったうえで、判断することが重要です。

4失踪宣告を選択するかの判断基準

①家族の心理的ハードル

失踪宣告の法律上の要件は、判断基準にならないことがほとんどです。

法律上の失踪期間を大きく越しても、心理的ハードルがあるからです。

家族の中で失踪宣告に反対する人がいれば、失踪宣告の申立てのハードルとなるでしょう。

法律で、解決できる問題ではありません。

②失踪宣告をしないと不利益が積みあがる

失踪宣告を受けないと、いつまでたっても生きている扱いです。

財産を処分できなくなるから、財産は凍結されます。

生活の支障が目立つようになると、決断を迫られるでしょう。

不在者財産管理人制度は、一時しのぎに過ぎません。

③心理的抵抗は専門家が解決できない

失踪宣告をしない最大の理由は、家族に心理的抵抗です。

専門家に相談しても、解決できません。

次のようなときは、専門家によるアドバイスが有効です

・不在社財産管理人制度をよく理解したい。

・家庭裁判所による財産処分の許可基準を知りたい。

制度を理解する助けとして、専門家に相談する価値があります。

④メリットデメリットを考慮して判断

失踪宣告をするタイミングは、自動的に決まるものではありません。

家族が生活上の支障を感じたときが、判断のタイミングです。

失踪宣告によって得られるメリットと心理的な負担を比較し、納得できたときに判断します。

心理的ハードルで不在者財産管理人を選択するなら、二度手間と費用を覚悟すべきです。

家族の平和のためデメリットを飲めるなら、それも適切な選択です。

5生死不明の相続人がいる相続を司法書士に依頼するメリット

相続人が行方不明であることは、割とよくあることです。

行方不明の相続人がいると、相続手続を進めることができません。

相続が発生した後、困っている人はたくさんいます。

自分たちで手続しようとして、挫折する方も少なくありません。

困っている遺族はどうしていいか分からないまま、途方に暮れてしまいます。

裁判所に提出する書類作成は、司法書士の専門分野です。

途方に暮れた相続人をサポートして、相続手続を進めることができます。

相続手続で不安がある方は司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。

行方不明の配偶者と婚姻解消は離婚か失踪宣告

2026-02-25

1行方不明になっても婚姻関係は継続

①自動で婚姻関係は解消しない

配偶者が行方不明になっても、婚姻関係は継続します。

たとえ何年も連絡が取れない状態になっても、法律上は「夫」「妻」の身分があります。

長期間行方不明になっても、自動で婚姻が解消されることはありません。

長期間行方不明になっても、生きている扱いです。

婚姻関係の解消には、法的手続が必要です。

法的手続を行わない限り、法的関係の整理は進みません。

②長期間の行方不明で前に進めない

(1)財産を処分できない

長期間行方不明になっても、財産は行方不明の人のものです。

家族が行方不明の人の財産を自由に処分することはできません。

(2)再婚ができない

長期間行方不明になっても、自動で婚姻関係は解消しません。

戸籍上は、配偶者が生きている既婚者のままです。

婚姻関係が継続しているから、再婚は重婚になってしまいます。

(3)相続が発生しない

長期間行方不明になっても、相続は発生しません。

行方不明の人の財産のまま、だれも利用することができなくなります。

③婚姻関係を解消する方法

婚姻関係の解消とは、法律上の夫婦関係を終了することです。

戸籍上の婚姻関係を終了させると、再婚や相続などの財産整理を進めることができます。

婚姻関係を解消する方法は、2つあります。

離婚と失踪宣告です。

離婚とは、当事者の意思によって法律上の婚姻関係を終了することです。

失踪宣告とは、生死不明の人を死亡扱いにする手続です。

生死不明の配偶者が失踪宣告を受けたら、離婚でなく死別扱いです。

今すぐ手続を始める必要は、ありません。

今すぐ判断をする必要は、ありません。

離婚と失踪宣告は、どちらも重大な影響を及ぼします。

落ち付いて、制度を理解することが大切です。

2裁判離婚で行方不明の配偶者と婚姻解消

①離婚は当事者が生きていることが前提

離婚は、当事者双方か一方の意思によって婚姻関係を終了する制度です。

生きている配偶者との婚姻関係を終了させます。

死亡した配偶者と離婚はできません。

配偶者が死亡したら、死亡によって当然に婚姻関係は終了するからです。

②長期間行方不明になっても生きている扱い

長期間行方不明になっても、自動で死亡扱いにはなりません。

行方不明の人が、どこにいるか分からないだけです。

長期間行方不明の人は、生きている前提です。

③生きている前提だから離婚の対象

行方不明の配偶者は生きている前提だから、離婚の対象になります。

夫婦が離婚する場合、3つの方法があります。

協議離婚、調停離婚、裁判離婚です。

協議離婚と調停離婚は、当事者の話し合いによる離婚です。

行方不明の配偶者と離婚する場合、裁判離婚が選択肢になります。

④裁判離婚では離婚原因の立証が必要

裁判で離婚する場合、離婚原因が認められなければなりません。

離婚原因は、客観的証拠によって立証することが重要です。

離婚したいと主張するだけでは、裁判所は離婚を認めれくれません。

多くのケースでは、ハードルが高いと言えます。

⑤行方不明と3年以上の生死不明は別物

配偶者が3年以上生死不明である場合、離婚原因に該当します。

生死不明と行方不明は、別物です。

離婚原因となる生死不明とは、生きているのか死亡しているのか分からない状態です。

典型的には、次の事情があるケースが挙げられます。

・事故

・大災害

・海難

生存の可能性が非常に低いケースです。

配偶者が行方不明で婚姻関係を解消したい場合、生きている可能性が高いケースが多いでしょう。

・単なる家出

・音信不通

・生活費を入れない

・住所を転々としている

家庭裁判所は、生死不明に該当するか非常に厳格に審査します。

単なる行方不明3年以上は、離婚原因に該当しないと判断します。

⑥悪意の遺棄は故意を立証する必要がある

悪意の遺棄がある場合、離婚原因に該当します。

夫婦は、同居、協力、扶助の義務があります。

悪意の遺棄とは、同居、協力、扶助の義務を正当な理由なく意図的に放棄することです。

家庭裁判所は、次の点を重視します。

・意図的に家族を捨てたか。

・正当な理由なく義務を放棄したか。

配偶者が行方不明になる場合、さまざまな事情があるでしょう。

・仕事などのトラブル

・うつ病などの精神疾患

・借金問題

・生活の困窮

・事件や事故に巻き込まれた可能性

上記の事情は、家族を捨てる故意があったか不明確です。

単に行方不明であるだけで、悪意の遺棄とは認められません。

例えば次の事情があると、悪意の遺棄が認められやすいでしょう。

・生活費を入れず、他の異性と暮らしている。

・DVから逃れるために避難したのに、生活費を渡さない。

・家族を捨てて別居し、連絡を拒否している。

上記の事情は、家族を捨てる故意が明確だからです。

たとえ10年以上行方不明であっても、それだけで悪意の遺棄は認められません。

悪意の遺棄は、故意の立証が必要だからです。

⑦婚姻を継続しがたい重大な理由は立証困難

婚姻を継続しがたい重大な理由がある場合、離婚原因に該当します。

婚姻を継続しがたい重大な理由とは、夫婦関係が客観的に破綻して回復の見込みがないことです。

家庭裁判所は、夫婦の実態が失われているかを重視します。

例えば次の事情がある場合、夫婦関係が客観的に破綻していると認められやすいでしょう。

・5~10年以上の別居

・DV

・不貞行為

・深刻なモラハラ

・重度の依存症

上記の事情は、夫婦関係の破綻が明確で証拠が残りやすいでしょう。

単に行方不明であるだけで、婚姻を継続しがたい重大な理由とは認められません。

行方不明は、夫婦関係の破綻の結果であって原因ではないからです。

原因が分からないと、婚姻を継続しがたい重大な理由があるのか分かりません。

たとえ長期間行方不明であっても、夫婦関係が破綻していない可能性があります。

行方不明の配偶者がいないから、夫婦関係の悪化を証明する資料を準備できないでしょう。

事実関係によっては、認められる余地があります。

多くのケースでは、ハードルが高いと言えます。

3失踪宣告で行方不明の配偶者と婚姻解消

①残された家族のため失踪宣告

相当長期間、行方不明になっている場合、死亡している可能性が高い場合があります。

条件を満たした場合、死亡の取り扱いをすることができます。

失踪宣告とは、行方不明の人が死亡した取り扱いとするための手続です。

失踪宣告がされたら、たとえ死亡していなくても死亡した取り扱いをします。

死亡扱いする重大な手続だから、手続を進めていいのか不安に思うかもしれません。

行方不明が長期化した場合、家族が困ります。

家族であっても、行方不明の人の財産を処分することができません。

行方不明者の配偶者は、再婚することができません。

残された家族のために、行方不明者を死亡したものと扱う制度が失踪宣告の制度です。

失踪宣告がされると、死亡した取り扱いをします。

失踪宣告がされると、配偶者は再婚をすることができます。

②自動で失踪宣告はされない

失踪宣告を受けると、死亡が確認できないのに死亡と見なされます。

失踪宣告には、次の条件があります。

(1)行方不明の人が生死不明であること

(2)生死不明のまま一定期間継続していること

上記の条件を満たしたうえで、家庭裁判所に失踪宣告の申立てをします。

長期間行方不明であっても、自動で失踪宣告がされることはありません。

家庭裁判所が失踪宣告したときに、死亡と見なされます。

③普通失踪は7年で死亡と見なされる

失踪宣告には、2種類があります。

普通失踪と特別失踪(危難失踪)です。

一般的に失踪宣告といった場合、普通失踪を指しています。

生死不明の期間を失踪期間と言います。

普通失踪では、失踪期間が7年必要です。

家庭裁判所に失踪宣告の申立てをした後、家庭裁判所が死亡と認めていいか調査します。

生死不明のまま7年以上経過したと認められる場合、家庭裁判所は失踪宣告をすることができます。

普通失踪における法的な死亡日は、7年満了した日です。

④特別失踪(危難失踪)は1年で死亡と見なされる

行方不明の人が大災害や大事故にあっていることがあります。

大災害や大事故に遭った場合、死亡している可能性が非常に高いものです。

特別失踪(危難失踪)とは「戦地に行った者」「沈没した船舶に乗っていた者」「その他死亡の原因となる災難に遭遇した者」などを対象にする失踪宣告です。

死亡している可能性が非常に高いので、失踪期間は短い期間です。

特別失踪(危難失踪)では、失踪期間が1年で済みます。

生死不明のまま1年以上経過したと認められる場合、家庭裁判所は失踪宣告をすることができます。

特別失踪(危難失踪)における法的な死亡日は、危難が去った日です。

⑤失踪宣告で相続が発生する

失踪宣告がされたら、たとえ死亡していなくても死亡した取り扱いをします。

死亡の扱いがされるから、相続が発生します。

普通失踪における法的な死亡日は、7年満了した日です。

特別失踪(危難失踪)における法的な死亡日は、危難が去った日です。

失踪宣告を受けた人の財産は、法律で決められた相続人が相続します。

⑥生きていることが分かったら失踪宣告の取消

失踪宣告がされた後、本人が帰ってくることがあります。

失踪宣告がされた後、生きていることが分かった場合、失踪宣告を取り消してもらいます。

失踪宣告をするときも失踪宣告を取り消すときも、家庭裁判所の関与が必要です。

失踪宣告は、死亡したと扱う重大な手続だからです。

⑦失踪宣告の取消があったら財産は返還

失踪宣告がされると、相続が発生します。

失踪宣告が取り消されると、死亡はなかったことになります。

死亡がなかったことになるから、相続もなかったことになります。

相続によって財産を得た人は、失踪宣告を受けた人に財産を返さなければなりません。

たとえ、生きているとは思わなかったとしても、財産は返す必要があります。

返還する財産は、現に利益を受けている限度とされています。

現に利益を受けている限度とは、同じ形で残っている意味ではありません。

形を変えて残っている場合も含みます。

生活費として使ったのであれば、自分のお金をその分使わずに済んでいます。

生活費分の利益を得ていると言えます。

⑧再婚した配偶者は後婚のみ有効

(1)婚姻関係は復活する

行方不明の配偶者に失踪宣告がされたら、死別の扱いです。

失踪宣告が取消されたら、婚姻関係も復活します。

(2)再婚したら復活しない

残された配偶者は、再婚をすることができます。

再婚した後で、行方不明だった配偶者が帰ってくることがあります。

残された配偶者が再婚していた場合、前婚は復活しません。

後婚のみ有効という意見が有力です。

後婚のみ有効になるのは、残された配偶者と再婚相手が行方不明者が生きていることを知らなかった場合だけと考えられます。

4生死不明の相続人がいる相続を司法書士に依頼するメリット

相続人が行方不明であることは、割とよくあることです。

行方不明の相続人がいると、相続手続を進めることができません。

相続が発生した後、困っている人はたくさんいます。

失踪宣告の申立ては、家庭裁判所に手続が必要になります。

通常ではあまり聞かない手続になると、専門家のサポートが必要になることが多いでしょう。

困っている遺族はどうしていいか分からないまま、途方に暮れてしまいます。

裁判所に提出する書類作成は、司法書士の専門分野です。

途方に暮れた相続人をサポートして、相続手続を進めることができます。

自分たちでやってみて挫折した方も、信託銀行などから丸投げされた方も、相続手続で不安がある方は司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。

再婚後の相続トラブルは準備不足で表面化する

2026-02-18

1再婚後の相続で起きるトラブルは突然ではない

①問題は生前から存在している

被相続人に再婚歴がある場合、相続トラブルになりがちです。

家族が崩壊する深刻なトラブルにならなくても、わだかまりが残ることが多いでしょう。

再婚後の相続で起きるトラブルは、死亡した後に急に発生するわけではありません。

実際には、問題のタネが生前から存在するケースがほとんどです。

相続が発生するまでは、表面化していないだけです。

②配偶者と子どもは両方とも大切な家族

被相続人が再婚した場合、配偶者は大切な家族です。

前婚に子どもがいる場合、前婚の子どもは大切な家族です。

被相続人にとって、配偶者も子どもも同じ家族です。

大切な家族と思っているから、分かってくれるはずと思っています。

配偶者と前婚の子どもに、血縁関係はありません。

もちろん被相続人の生前は、日常生活が成り立っているでしょう。

問題のタネはあっても、あいまいに日常生活を続けることができます。

日常生活が成り立っているから、問題のタネに気が付きにくくなります。

③生前は遠慮して本音を言わない

配偶者も子どもも、生前は遠慮して本音を言いません。

あいまいに日常生活を続けることを優先するからです。

トラブル回避を優先するから、沈黙し続けます。

生前は本音を隠していても、相続では露骨に現れます。

④配偶者と子どもは気が付いている

配偶者と子どもは、生前は遠慮して何も言いません。

沈黙し続けるのは、トラブル回避を優先するからです。

あいまいに日常生活を続けることができなくなることは、充分に分かっています。

口に出したらトラブルになることは、充分に分かっています。

不安や不満は、口に出されず静かに積み重なっています。

配偶者と子どもはどちらも、微妙な緊張を感じ取っています。

2再婚後の相続トラブルは準備不足で表面化する

①再婚後の相続トラブルが表面化する場面

(1)法定相続分が可視化

相続人になる人は、法律で決められています。

各相続人が相続する相続分も、法律で決められています。

受取る相続分が数字で可視化されます。

(2)相続財産が一覧化

生前は被相続人の財産を正確に知らないことが多いでしょう。

相続手続にあたって、相続財産が一覧化されます。

相続財産が開示されると、疑心暗鬼になりやすいでしょう。

財産が取られた奪われたなど認識が発生します。

(3)遺産分割協議では家族の貢献が評価対象になる

相続財産は、相続人全員の共有財産です。

相続財産の分け方は、相続人全員の合意で決定します。

遺産分割協議とは、相続財産の分け方について相続人全員でする話し合いです。

遺産分割協議では、被相続人に対する家族の貢献が議題に上ります。

生前の関係性の不均衡が法的な主張として可視化されます。

②再婚後の相続トラブルが深刻化する理由

理由(1)相続人の構成が複雑

再婚後の相続では、次の人が登場します。

・配偶者

・前婚の子ども

・再婚相手との子ども

・再婚相手の連れ子

それぞれの人に、それぞれの思惑があります。

法律上の立場が異なる人が混在し、利害が衝突します。

理由(2)家族の感覚と法律上の家族が異なる

相続が発生したら、家族が相続すると感じています。

配偶者にとって、前婚の子どもは家族であるとは認識しにくいでしょう。

前婚の子どもにとって、配偶者は家族であるとは認識しにくいでしょう。

家族と感じていない人が法律上の相続人になります。

法律上の相続人が相続する事実に対し、財産を奪われたと感じやすくなります。

家族の感覚と法律上の家族が異なるから、トラブルに発展します。

理由(3)財産の帰属があいまい

再婚した人の財産は、境界があいまいです。

・前婚時代に築いた財産

・再婚後に築いた財産

・再婚相手との共有財産

・生前贈与した財産

・再婚相手名義にした財産

相続財産には、さまざまな財産が含まれています。

同じ財産であっても、当事者ごとに違う考えを持っています。

財産の帰属があいまいな場合、話し合いの論点が増えます。

財産の帰属の話し合いに自分の貢献などを主張をし始めて、話し合いが混乱します。

財産の帰属があいまいだと、トラブルに発展しやすくなります。

理由(4)財産情報の非対称性

再婚した人は、夫婦で財産情報を共有するでしょう。

親子で財産情報を共有することはあまりありません。

配偶者は財産情報を知っているのに、前婚の子どもは何も知らされていないことになります。

相続が発生すると、相続財産が可視化されます。

前婚の子どもがイメージした財産状況と大きく異なると、不信感を募らせます。

理由(5)介護の負担が不公平

再婚した人が日常生活に不自由すると、同居する配偶者が介護などを担うでしょう。

前婚の子どもは、介護などに関与しないことがあります。

介護などに関与しなくても、相続人として主張するでしょう。

介護の不公平が遺産分割の場面で、強い対立を生みます。

③最大の要因は被相続人の根拠がない安心感

再婚後の相続で問題が発生する原因は、相続人同士の性格や関係性ではありません。

最大の要因は、被相続人の根拠がない安心感にあります。

日常生活が成り立っているから、自分の家族は大丈夫と被相続人自身が信じています。

確かに、被相続人にとって配偶者と子どもは大切な家族です。

被相続人がいるから、配偶者と子どもはつながっています。

言わなくても分かってくれるはずという被相続人の甘い期待に、根拠はありません。

相続は感情でなく、法律に基づいて手続をします。

被相続人が準備しなければ、各当事者が自分の立場で考えることになります。

再婚後の相続トラブルは、だれかの悪意で発生するのではありません。

被相続人の準備不足によって、表面化するのです。

3配偶者に相続させた財産の行方

①配偶者に相続させた財産は配偶者のもの

被相続人が死亡した後、配偶者に財産を相続させることがあります。

配偶者が相続した財産は、配偶者のものです。

配偶者が死亡したら、配偶者の子どもや配偶者の兄弟姉妹などが相続します。

②前婚の子どもは配偶者の相続人ではない

被相続人にとって、配偶者と前婚の子どもは大切な家族です。

配偶者と前婚の子どもに、血縁関係がありません。

前婚の子どもは、配偶者が死亡したときの相続人になりません。

前婚の子どもは、配偶者の財産を相続することはできません。

もともとは被相続人の財産であっても、配偶者に相続させたら配偶者の財産になるからです。

③遺言書で遺贈ができる

遺贈とは、遺言書を作成して相続人や相続人以外の人に財産を引き継ぐことです。

前婚の子どもは配偶者が死亡したときの相続人ではなくても、遺贈を受けることができます。

④遺言書は書き直しができる

配偶者に遺言書を作成してもらえば、解決できると考えるかもしれません。

配偶者に、遺言書の作成を強制することはできません。

受取った財産を前婚の子どもに遺贈する内容の遺言書を作成しても、遺言書は書き直しができます。

被相続人が死亡した後に、遺言書を書き直しをすることができます。

遺言書の書き直しをする際に、前婚の子どもなどの同意は不要です。

遺言書の書き直しをしませんと約束しても、無効の約束です。

遺言書は、遺言者の意思が重視されるからです。

配偶者に遺言書を作成してもらう方法は、現実的ではありません。

4配偶者の住む場所を守る善意の判断

①配偶者に自宅を相続させると子どもは相続できない

被相続人が特に不安を感じるのが、配偶者の住まいです。

配偶者の住む場所を守るため、自宅を配偶者に相続させようと考えるケースは割とよくあります。

配偶者に自宅を相続させた場合、自宅は配偶者のものになります。

前婚の子どもは、配偶者の財産を相続することはできません。

配偶者が相続した自宅は、配偶者の死亡後に前婚の子どもが相続できません。

配偶者の財産は、配偶者の血縁関係者に相続されるからです。

②配偶者居住権設定で自宅を子どもに相続させる

配偶者居住権とは、被相続人が死亡した後も配偶者が自宅に住み続けられるようにするための権利です。

配偶者居住権を設定したうえで、自宅は前婚の子どもに相続させることができます。

配偶者居住権を設定すると、自宅を相続しなくても配偶者は自宅に住み続けることができます。

配偶者が死亡した後は、配偶者居住権は消滅します。

子どもは、配偶者居住権の負担がない自宅を取得することができます。

③配偶者居住権は万能ではない

(1)自動で配偶者居住権は発生しない

配偶者居住権は比較的新しい制度だから、内容が詳しく知られていません。

配偶者を守る制度と説明されるから、自動で取得できると誤解していることがあります。

配偶者居住権は、自動で発生しません。

配偶者居住権設定には、次の方法があります。

・遺産分割協議で設定

・遺言書で遺贈

・被相続人と配偶者で死因贈与契約

配偶者居住権があれば配偶者は自宅に住み続けることができますが、自動で発生する権利ではありません。

配偶者が何もしないと、自宅を相続した子どもとトラブルになる可能性があります。

(2)自宅を売却できなくなる

自宅を相続した子どもが自宅を処分したいと考えても、配偶者居住権の負担があります。

配偶者居住権の負担があるから、事実上、買う人はいません。

住み続けたい配偶者と売却したい子どもがトラブルになります。

(3)住めないのに管理費用の負担

不動産を所有していると、固定資産税が課されます。

自宅は配偶者が使っているのに子どもに固定資産税が課されると、不満に思うでしょう。

自宅が老朽化すると、修繕が必要になります。

修繕の負担を嫌がって、配偶者と子どもが責任を押し付け合うかもしれません。

住めないのに管理費用の負担があるから、配偶者と子どもがトラブルになる可能性があります。

(4)配偶者居住権に経済的価値がある

配偶者は今まで自宅に住み続けてきたのだから、自宅に住み続けるのは当然と考えがちです。

配偶者居住権は配偶者を守る権利だから、財産的価値は無いと根拠なく思い込みます。

配偶者居住権は自宅を使う権利だから、経済的価値が認められます。

配偶者居住権を取得すると、預貯金などは経済的価値の分だけ少なくなるでしょう。

配偶者居住権は、建物の耐用年数や配偶者の平均余命などを考慮して評価されます。

自宅を相続した子どもから見ると、配偶者居住権の評価額は不当に低く見えます。

配偶者居住権があると、自分は使えないし売却ができないし固定資産税は負担しなければならないからです。

特に相続財産の大部分が自宅である場合、配偶者と子どもがトラブルになる可能性が高まります。

(5)配偶者居住権は売却できない

配偶者居住権は、配偶者の住む権利を守る権利です。

身の回りが不自由になると、施設などに入所することがあるでしょう。

身体能力の衰えなどから自宅に戻ることが困難になっても、配偶者居住権は自動で消滅しません。

施設費用をまかなうためであっても、配偶者居住権は第三者に譲渡することができません。

配偶者居住権があると、子どもは自宅を売却できません。

自宅に戻ることが困難になっても、子どもは空き家の管理費用を負担し続けることになります。

(6)配偶者居住権の放棄に判断能力が必要

配偶者が希望すれば、配偶者居住権を放棄することができます。

配偶者居住権を放棄したら、子どもの所有権は負担がない完全な所有権に戻ります。

配偶者居住権の放棄には、配偶者の判断能力が必要です。

物事のメリットデメリットを判断できないのに、放棄はできないからです。

配偶者が認知症などで判断能力を失っている場合、成年後見人がサポートします。

成年後見人は、配偶者居住権の放棄に同意しないでしょう。

配偶者居住権の放棄は、配偶者の財産を減らす行為だからです。

(7)配偶者居住権の放棄で贈与税の対象

配偶者居住権には、経済的価値が認められます。

配偶者居住権を放棄すると、子どもは完全な所有権を取得します。

客観的には、配偶者から子どもに経済的価値が移転したと認められます。

経済的価値が移転したから、原則として贈与税の対象になります。

5問題を表面化させない準備が欠かせない

再婚後の相続で重要なのは、被相続人が事前準備をすることです。

相続人が迷うことなく、行動できるように道筋をつけておくことが重要です。

被相続人が道筋をつけておけば、相続人は対立することなく済むからです。

そのためには、次の準備が欠かせません。

・遺言書を作成して、意思を明確にする

・配偶者と子どもの両方に話し合いをする

・想定される状況を整理する

家族関係が比較的落ち着いている生前しか、対策はできません。

何もしないと、結果として最も大きなリスクになります。

6生前対策を司法書士に依頼するメリット

生前対策=相続「税」対策の誤解から、生前対策はする方はあまり多くありません。

争族対策として有効な遺言書ですら、死亡者全体からみると10%未満です。

対策しないまま認知症になると、家族に大きな面倒をかけることになります。

認知症になってからでは遅いのです。

元気なうちに、準備する必要があります。

大切な家族に面倒をかけないために生前対策をしたい方は、司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。

戸籍が高齢者消除されても失踪宣告が必要になる

2026-02-11

1戸籍が高齢者消除されても相続手続はできない

①高齢者消除で戸籍を整理する

相続人調査をすると、戸籍謄本に高齢者消除の許可と記載されていることがあります。

生年月日を確認すると、100歳以上の高齢者であることがほとんどです。

高齢者消除とは、戸籍の整理のための行政措置です。

100歳以上の高齢者が戸籍に記載されているものの死亡の可能性が高い場合に、戸籍から抹消する制度です。

法務局長の許可を得て、市長村長が職権で抹消します。

多くの場合、家族が何も知らないところで、高齢者消除がされます。

②高齢者消除があったときの戸籍の記載例

高齢者消除があったとき、戸籍には次のように記載されます。

【高齢者消除の許可日】令和〇年〇月〇日

【除籍日】令和〇年〇月〇日

③高齢者消除で相続手続ができない理由

高齢者消除で戸籍が整理されても、法律上、死亡扱いはされません。

高齢者消除は、単に戸籍の整理に過ぎないからです。

戸籍を整理して、行政手続の効率化を図ります。

行政上は死亡扱いするけど、法律上は生きている扱いです。

高齢者消除の戸籍謄本があっても、次の手続はできません。

・相続登記

・預貯金の名義変更

・生命保険の死亡保険金の請求

戸籍を高齢者消除で除籍しても、相続手続ができないのは当然です。

高齢者消除をしても、生きている扱いだからです。

高齢者消除の戸籍謄本を提示しても、死亡の証明にはなりません。

2戸籍が高齢者消除されても失踪宣告が必要になる

①失踪宣告で死亡と見なされる

戸籍が高齢者消除されている場合、死亡の可能性が非常に高いと言えます。

失踪宣告とは、行方不明の人を死亡した扱いとするための手続です。

失踪宣告がされたら、たとえ死亡していなくても死亡した取り扱いをします。

長期間生死不明のままであると、家族が困ります。

生死不明の人の財産は、家族であっても勝手に処分することができません。

失踪宣告は、家族が売却などの処分をするための制度と言えます。

②失踪宣告をしないと何もできない

失踪宣告をしないと、生死不明の人は生きている扱いのままです。

生きている人の財産だから、家族は何もできないままです。

たとえ家族であっても、持ち主以外の人は勝手に処分ができないからです。

③普通失踪と特別失踪(危難失踪)

失踪宣告には、2種類あります。

普通失踪と特別失踪(危難失踪)です。

一般的に、失踪宣告と言うときは普通失踪を指しています。

特別失踪(危難失踪)とは「戦地に行った者」「沈没した船舶に乗っていた者」「その他死亡の原因となる災難に遭遇した者」などを対象にする失踪宣告です。

④失踪宣告で相続が開始する

失踪宣告がされると、行方不明者は死亡と見なされます。

高齢者消除で行政上死亡扱いされたうえ、失踪宣告で法律上も死亡扱いになります。

死亡と見なされる日に、相続が発生します。

死亡と見なされる日は、次のとおりです。

・普通失踪 7年経過した日

・特別失踪(危難失踪) 危難が去った日

相続が発生するから、相続手続をすることができます。

失踪宣告が記載された戸籍謄本を提示して、相続手続を進めます。

失踪宣告は、死亡扱いする制度だからです。

⑤失踪宣告の条件

失踪宣告には、重大な効力があります。

失踪宣告の条件は、次のとおりです。

(1)行方不明の人が生死不明であること

(2)生死不明の期間が一定以上継続していること

失踪宣告の種類によって、生死不明の期間が異なります。

普通失踪は、7年です。

特別失踪(危難失踪)は、1年です。

生死不明のまま上記の期間を経過したと認められる場合、家庭裁判所は失踪宣告をすることができます。

⑥申立先

行方不明の人の住所地や居住地を管轄する家庭裁判所です。

家庭裁判所の管轄は、裁判所のホームページで確認することができます。

⑦失踪宣告の申立人は利害関係人のみ

生死不明のまま長期間経過しても、自動で失踪宣告はされません。

申立人が失踪宣告の申立てをする必要があります。

失踪宣告の申立てができるのは、利害関係人に限られています。

法文上は利害関係人というものの、法律上の利害関係人がある人に限られています。

例えば、次の人は法律上の利害関係人と考えられます。

・行方不明の人の配偶者

・行方不明の人の相続人

・行方不明の人と遺産分割協議をする他の相続人

単なる友人で心配している人とか相続人以外の家族は、法律上の利害関係が認められません。

失踪宣告には重大な効力があるから、申立人を限定しています。

⑧高齢者消除された戸籍謄本を提出できる

失踪宣告の申立書に添付する書類は、次のとおりです。

・行方不明の人の戸籍謄本

・行方不明の人の住民票または戸籍の附票

・失踪を証する資料

高齢者消除された戸籍謄本を提出することができます。

高齢者消除で戸籍が除籍されている場合、住民票は職権消除されているでしょう。

職権消除された住民票を失踪を証する資料として提出することができます。

警察に行方不明者届を提出している場合、行方不明者届受理証明書を提出することができます。

・申立人の利害関係を証する資料

⑨費用

(1)手数料

失踪宣告の申立てにかかる手数料は、800円です。

申立書に収入印紙を貼り付けて、納入します。

(2)連絡用郵便切手

失踪宣告の手続で、家庭裁判所が使う郵便切手を予納します。

予納する郵便切手の額面や枚数は、家庭裁判所ごとに異なります。

(3)官報公告料

家庭裁判所の指示があってから、官報公告料4816円を納入します。

失踪宣告の手続では、2回官報公告があります。

⑩失踪宣告にかかる期間

失踪委宣告の申立てから失踪宣告がされるまで、1年程度かかります。

⑪失踪宣告の申立ての流れ

手順(1)失踪宣告の申立て書の提出

手順(2)家庭裁判所による調査

手順(3)官報による公示催告

手順(4)家庭裁判所による失踪宣告の審判

手順(5)失踪宣告の確定

手順(6)市区町村役場に失踪届を提出

手順(7)戸籍に失踪宣告が記載される

⑫失踪宣告がされたときの戸籍の記載例

戸籍には、次のように記載されます。

【死亡とみなされる日】令和〇年〇月〇日

【失踪宣告の裁判確定日】令和〇年〇月〇日

【届出日】令和〇年〇月〇日

【届出人】親族 〇〇〇〇

失踪宣告がされたら、たとえ死亡していなくても死亡した取り扱いをします。

死亡の取り扱いがされるから、相続が発生します。

3失踪宣告は他の手段で代替できない

①死亡届が使えない現実

人が死亡したら、医師が死亡を確認し死亡診断書を作成します。

死亡診断書を添付して、市区町村役場に死亡届を提出します。

死亡を確認できないと、死亡届を提出することはできません。

戸籍が高齢者消除された場合、理論上は死亡届を提出する余地がないわけではありません。

現実的には、死亡を確認することは極めて困難でしょう。

死亡届を提出できるのは、極めて稀なケースに限定されます。

実際の死亡を確認できないと、生きている扱いが続きます。

失踪宣告を受けないと、死亡の扱いをすることはできません。

②不在者財産管理人選任後に失踪宣告

(1)不在者財産管理人選任の申立て

財産を残したまま、持ち主が行方不明になることがあります。

長期間行方不明になっても、家族など持ち主以外の人は勝手に処分ができません。

不在者財産管理人とは、行方不明の人の財産を管理する人です。

家庭裁判所に申立てをして、家庭裁判所が選任します。

(2)不在者財産管理人選任後も生きている扱い

不在者財産管理人が選任されても、相続は発生しません。

行方不明者は、生きている扱いです。

戸籍が高齢者消除された場合、現実的には生きている可能性は低いでしょう。

不在者財産管理人は、行方不明者の生死が明らかになるまで管理を続けます。

不在者財産管理人が管理を続ける間、報酬がかかり続けます。

(3)不在者財産管理人は家族の希望をかなえる人ではない

戸籍が高齢者消除された場合、長期間行方不明であると言えます。

長期間行方不明である場合、失踪宣告の条件を満たしているかもしれません。

失踪宣告がされると、死亡と見なされる重大な効果があります。

帰りを待つ家族の中には、心理的抵抗を覚えるかもしれません。

不在者財産管理人選任は生きている扱いだから、帰りを待つ家族の心情に適う可能性があります。

不在者財産管理人がいても、行方不明者の財産について家族は処分できないままです。

不在者財産管理人は行方不明者の財産を管理する人であって、家族の希望をかなえる人ではないからです。

(4)失踪宣告で死亡扱いができる

失踪宣告は、行方不明者を死亡と見なす制度です。

失踪宣告がされると死亡扱いがされるから、相続が発生します。

不在者財産管理人が選任されても、相続は発生しません。

不在者財産管理人が選任されても、結局のところ失踪宣告が必要になるでしょう。

失踪宣告がされないと、相続が発生しないからです。

4失踪宣告は取消しができる

①生きていたら失踪宣告取消の申立て

長期間行方不明であっても、新天地で元気に生きていることがあります。

失踪宣告は、生きて帰ってくることを前提とした制度です。

失踪宣告を受けた人が帰ってきたら、失踪宣告取消の申立てをします。

②失踪宣告取消で受取った財産は返還する

失踪宣告を受けたら、相続が発生します。

失踪宣告が取消されたら、相続で受取った財産は返還します。

相続で財産を受け取った後、相続人が財産を処分することがあるでしょう。

第三者に渡った財産は、取り返すことができません。

相続人も第三者も行方不明者が生きていたことを知らなかったのに、返還するのは酷だからです。

失踪宣告の取消を受けた人は、相続人に対して現に利益を受けている限度で返還請求をすることができます。

5生死不明の相続人がいる相続を司法書士に依頼するメリット

相続人が行方不明であることは、割とよくあることです。

行方不明の相続人がいると、相続手続を進めることができません。

相続が発生した後、困っている人はたくさんいます。

自分たちで手続しようとして、挫折する方も少なくありません。

失踪宣告の申立ては、家庭裁判所に手続が必要になります。

通常ではあまり聞かない手続になると、専門家のサポートが必要になることが多いでしょう。

信託銀行などは、高額な手数料で相続手続を代行しています。

被相続人が生前、相続人のためを思って、高額な費用を払っておいても、信託銀行はこのような手間のかかる手続を投げ出して知識のない遺族を困らせます。

知識のない相続人が困らないように高額でも費用を払ってくれたはずなのに、これでは意味がありません。

税金の専門家なども対応できないでしょう。

困っている遺族はどうしていいか分からないまま、途方に暮れてしまいます。

裁判所に提出する書類作成は、司法書士の専門分野です。

途方に暮れた相続人をサポートして、相続手続を進めることができます。

自分たちでやってみて挫折した方も、信託銀行などから丸投げされた方も、相続手続で不安がある方は司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。

失踪宣告の手続で官報公告3か月の位置づけ

2026-02-05

1失踪宣告の手続で官報公告3か月の位置づけ

①失踪宣告で死亡と見なされる

相当長期間、行方不明になっている場合、死亡している可能性が高い場合があります。

条件を満たした場合、死亡の取り扱いをすることができます。

失踪宣告とは、行方不明の人が死亡した取り扱いとするための手続です。

失踪宣告がされたら、たとえ死亡していなくても死亡した取り扱いをします。

行方不明が長期化した場合、家族が困ります。

家族であっても、行方不明の人の財産を処分することができません。

行方不明者の配偶者は、再婚することができません。

残された家族のために、行方不明者を死亡したものと扱う制度が失踪宣告の制度です。

②失踪宣告までの流れ

手順(1)必要書類の準備

失踪宣告の申立てでは、次の書類を準備します。

・生死不明の人の戸籍謄本

・生死不明の人の住民票または戸籍の附票

・失踪を証する資料

・利害関係があることを証する資料

手順(2)失踪宣告の申立て

失踪宣告の申立てができるのは、利害関係がある人のみです。

失踪宣告の申立書と必要書類を取りまとめて、家庭裁判所へ提出します。

提出先は、生死不明の人の住所地を管轄する家庭裁判所です。

手順(3)家庭裁判所による調査

失踪宣告の申立書を受付けたら、家庭裁判所は公的機関などに調査をします。

手順(4)家庭裁判所が官報公告

公的機関などに対して調査をしても、生存の痕跡が見つからないことがあります。

家庭裁判所は、届出催告の官報公告を行います。

手順(5)失踪宣告の審判

届出催告の官報公告をしても届出がないときは、失踪宣告の審判がされます。

失踪宣告の審判がされてから2週間経過で、審判が確定します。

手順(6)市区町村役場へ失踪届

市区町村役場に、失踪届を提出します。

失踪届が受理されると、戸籍に失踪宣告が記載されます。

手順(7)相続手続

失踪宣告がされると、死亡と扱われます。

失踪宣告がされた人を被相続人として、相続が発生します。

相続手続には、失踪宣告が記載された戸籍謄本を準備します。

③官報公告は家庭裁判所が手配する

失踪宣告における官報公告は、家庭裁判所が手配します。

申立人や家族は、何もすることはありません。

申立人や家族は、公告費用を払うだけです。

申立人や家族が判断や選択することは、ありません。

④官報公告3か月で死亡にするか確認する

失踪宣告は、重大な影響がある手続です。

家庭裁判所は、慎重に手続を進めます。

失踪宣告の手続で、官報公告が行われます。

官報公告3か月では、死亡になりません。

官報公告3か月は、死亡を前提に家庭裁判所が確認する期間です。

失踪宣告の手続において、透明性を確保するため官報公告を行います。

官報公告は、失踪宣告における重要な手続のひとつです。

官報公告の期間が満了しても、生死不明の人は自動で死亡扱いになりません。

死亡扱いにする手続の途中のひとつに過ぎないからです。

2 失踪宣告の官報公告は2回行われる

①審判前に官報公告

(1)官報公告で情報収集する

失踪宣告の審判前に、1回目の官報公告をします。

失踪宣告の審判前に行う官報公告は、失踪に関する届出の催告です。

官報公告の内容は、次のとおりです。

・次の人に失踪宣告の申立てがありました。

・該当の人や該当の人の生死を知る人は、家庭裁判所に届出をしてください。

・届出がないと、失踪宣告されます。

官報公告をする前に、家庭裁判所は公的機関などに対して調査をしています。

公的機関が知らない情報を持つ人がいる可能性があるので、官報公告で情報収集します。

官報公告は、広く社会全体に呼び掛けて情報収集する手段です。

失踪宣告がされると死亡扱いになるから、家庭裁判所は慎重に調査します。

官報公告は、失踪宣告の要件確認の最終段階です。

(2)普通失踪の公告期間は3か月以上

失踪宣告には、2種類あります。

普通失踪と特別失踪(危難失踪)です。

一般的に失踪宣告といった場合、普通失踪を指しています。

普通失踪の公告期間は、3か月以上です。

(3)特別失踪(危難失踪)の公告期間は1か月以上

特別失踪(危難失踪)は、行方不明の人が大災害や大事故にあっている場合の失踪宣告です。

大災害や大事故に巻き込まれた場合、死亡の可能性が非常に高いものです。

特別失踪(危難失踪)の公告期間は、1か月以上です。

(4)官報公告は家庭裁判所が手配

官報公告は、家庭裁判所が自動で手配します。

申立人や家族が官報公告の申込等をする必要はありません。

公告期間は、法律で決められています。

家庭裁判所が勝手に公告期間を短縮することはできません。

(5)官報公告の費用を負担する

官報公告をするためには、公告費用がかかります。

公告費用は、家庭裁判所の指示があってから納入します。

②審判後に官報公告

(1)失踪宣告の官報公告

だれからも申出がないまま公告期間が経過したら、失踪宣告の審判がされます

失踪宣告の審判後に、2回目の官報公告をします。

失踪宣告の審判後に行う官報公告は、失踪宣告確定のお知らせです。

官報公告の内容は、次のとおりです。

・次の人に失踪宣告の審判がされ、確定しました。

2回目の官報公告は、失踪宣告がされた事実の公表です。

(2)官報公告で透明性と公開性を確保する

失踪宣告がされると、死亡扱いになります。

勝手に死亡扱いにされたと言う不信感を生まないように、官報公告で公開性を確保しています。

事後にトラブルを生まないように、官報公告で手続の透明性を確保しています。

家族間のトラブルだけでなく、債権者や取引関係者等のトラブルを防止する機能があります。

③生存情報があると失踪宣告は却下になる

1回目の官報公告は、生死不明の人に関する情報取集のために行われます。

官報公告による呼びかけに応じて、生存の情報が寄せられることがあります。

失踪宣告前に本人が見つかった場合、失踪宣告はされません。

失踪宣告は、生死不明の状態が継続しているときにされるものだからです。

失踪宣告の要件が欠けるから、家庭裁判所が申立てを却下します。

家庭裁判所が申立てを却下する前に、申立てを取下げることができます。

④失踪宣告の取消も官報公告

(1)失踪宣告後に本人が生きていた

失踪宣告がされたのに、本人は新天地で元気に生きていることがあります。

失踪宣告がされると、戸籍に失踪宣告が記載されます。

何らかの手続で戸籍謄本などを請求すると、失踪宣告がされていることが判明します。

(2)生存が判明しても自動で取消されない

失踪宣告を受けた人は、死亡の扱いがされます。

生存が判明しても、自動で失踪宣告は取消されません。

失踪宣告取消の申立てをして失踪宣告取消の審判が確定するまで、死亡の扱いのままです。

(3)失踪宣告取消に官報公告

失踪宣告取消の審判が確定すると、官報公告がされます。

官報公告の内容は、次のとおりです。

・次の人に失踪宣告取消の審判がされ、確定しました。

失踪宣告の取消がされた事実の公表です。

3失踪宣告確定後の手続

①失踪宣告で相続が開始する

失踪宣告を受けた人は、死亡の扱いがされます。

死亡と見なされる日に、相続が発生します。

失踪宣告の手続は、長期間かかります。

相続が開始する日は、失踪宣告の申立てをした日ではありません。

裁判所が失踪宣告をした日でもありません。

相続手続の基準になるのが、死亡と見なされる日です。

②官報公告があっても相続手続はできない

失踪宣告では、官報公告が行われます。

官報公告が行われても、直ちに相続手続を進めることはできません。

官報公告がされても、戸籍には何も記載されないからです。

相続手続先の人は、官報公告で相続手続ができるか判断しません。

相続手続には、戸籍謄本が必要です。

③失踪宣告後は失踪届で戸籍に反映

失踪宣告の審判がされた後、2週間経過で審判が確定します。

失踪宣告後は、市区町村役場に失踪届を提出します。

失踪届には、失踪宣告の審判書と確定証明書を添付します。

失踪届が受理されると、戸籍に失踪宣告が記載されます。

戸籍に反映されるまで、2週間程度かかります。

④失踪宣告が記載された戸籍謄本で相続手続

失踪宣告がされると、相続が発生します。

失踪宣告がされたことは、戸籍謄本に記載されます。

相続手続には、失踪宣告が記載された戸籍謄本を提出します。

4失踪宣告の官報公告に対する誤解

誤解①家族の感情で官報公告は省略できる

失踪宣告は重大な影響があるから、家族は漠然とした不安を抱きがちです。

家族の感情で、官報公告は省略できると期待するかもしれません。

官報公告は、家庭裁判所が手配します。

家族の感情で、手続を省略することはできません。

家族だけで静かに手続を進めたいなどの希望があっても、官報公告は省略できません。

誤解②官報公告で広く周知される

新しく法律が成立すると、官報で公布されます。

官報で公布するのは、社会に広く周知するためです。

官報は、一般の人が日常的に目にする媒体ではありません。

失踪宣告の官報公告は、形式的な公示に過ぎません。

身の回りの人が官報を見て、あれこれ言うことはほとんどないでしょう。

実質的な周知効果は、限定的だからです。

誤解③官報公告では詳細な個人情報が掲載される

官報公告がされると、家族の事情が詳細に掲載されると不安になるかもしれません。

1回目の官報公告は、生死不明の人や知っている人に対する呼びかけです。

生死不明の人を特定できれば、官報公告の役目を果たすことができます。

家族の事情を公告する意味がありません。

生死不明の人の氏名や生年月日など、プライバシーに該当しない程度の最小限の内容です。

誤解④官報公告で戸籍に死亡が記載される

1回目の官報公告は、単に生死不明の人に関する情報収集の呼びかけに過ぎません。

1回目の官報公告の時点では、死亡扱いはされません。

官報公告の後で、家庭裁判所が失踪宣告の審判をします。

失踪宣告の審判が確定した後に、死亡扱いがされます。

失踪宣告の審判が確定しても、自動で戸籍に記載されません。

申立人が市区町村役場に、失踪届を提出する必要があるからです。

失踪届を提出すると、戸籍には失踪宣告が記載されます。

失踪届は、死亡届とは別の届出です。

失踪宣告で死亡扱いがされても、戸籍には死亡は記載されません。

5生死不明の相続人がいる相続を司法書士に依頼するメリット

相続人が行方不明であることは、割とよくあることです。

行方不明の相続人がいると、相続手続を進めることができません。

相続が発生した後、困っている人はたくさんいます。

自分たちで手続しようとして、挫折する方も少なくありません。

失踪宣告の申立ては、家庭裁判所に手続が必要になります。

通常ではあまり聞かない手続になると、専門家のサポートが必要になることが多いでしょう。

信託銀行などは、高額な手数料で相続手続を代行しています。

被相続人が生前、相続人のためを思って、高額な費用を払っておいても、信託銀行はこのような手間のかかる手続を投げ出して知識のない遺族を困らせます。

知識のない相続人が困らないように高額でも費用を払ってくれたはずなのに、これでは意味がありません。

税金の専門家なども対応できないでしょう。

困っている遺族はどうしていいか分からないまま、途方に暮れてしまいます。

裁判所に提出する書類作成は、司法書士の専門分野です。

途方に暮れた相続人をサポートして、相続手続を進めることができます。

自分たちでやってみて挫折した方も、信託銀行などから丸投げされた方も、相続手続で不安がある方は司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。

自己破産しても相続人

2026-01-29

1自己破産をしても相続人

①相続人になる人は法律で決まっている

相続が発生したら、親族のうち一定の範囲の人が相続人になります。

だれが相続人になるかについては、民法で決められています。

相続人になる人は、次のとおりです。

(2)~(4)の場合、先順位の人がいる場合、後順位の人は相続人になれません。

(1)配偶者は必ず相続人になる

(2)被相続人に子どもがいる場合、子ども

(3)被相続人に子どもがいない場合、親などの直系尊属

(4)被相続人に子どもがいない場合で、かつ、親などの直系尊属が被相続人より先に死亡している場合、兄弟姉妹

②自己破産をすると財産は債権者に配当される

自己破産とは、借金の支払を免除してもらう手続です。

破産者のプラスの財産を債権者に公平に分配して、マイナスの財産をなしにします。

マイナスの財産が無くなるから、人生のやり直しの機会を得ることができます。

自己破産では、自己破産の申立ての後に破産手続開始決定がされます。

破産手続開始決定がされた後、相続が発生しても破産手続が取り消されたり止まったりすることはありません。

③自己破産しても相続欠格にならない

相続人が自己破産をしただけであれば、欠格になることはありません。

相続欠格とは、相続人としてふさわしくない人の相続資格を奪う制度です。

相続人になれない人は、民法で決められています。

欠格になるのは、次のような理由がある人です。

(1) 故意に被相続人、同順位以上の相続人を死亡させた人、死亡させようとした人

(2) 被相続人が殺害されたのを知って、告訴や告発をしなかった人

(3) 詐欺・脅迫で遺言の取消・変更をさせたり、妨害した人

(4) 遺言書を偽造・変造・廃棄・隠匿した人

④自己破産しても相続人廃除できない

自己破産の理由によっては、廃除されるかもしれません。

相続人廃除とは、被相続人の意思で、相続人の資格を奪う制度です。

相続人の資格を奪うというのは、実質的には、遺留分を奪うことです。

相続人の廃除は遺留分を奪う重大な決定だから、家庭裁判所は慎重に判断します。

相続人の廃除は、次のような理由があるときに認められます。

(1)被相続人に虐待をした

(2)度重なる重大な親不孝をした

(3)被相続に重大な侮辱をした

(4)重大犯罪をして有罪判決を受けた

(5)多額の借金を被相続人に払わせた

(6)愛人と暮らすなどの不貞行為をする配偶者

単に、相続人が自己破産をしただけであれば、相続人廃除が認められることはないでしょう。

2相続発生後に破産手続開始決定

①相続財産は相続人全員の共有財産

相続が発生した場合、被相続人のものは相続人全員の共有財産になります。

相続財産の分け方は、相続人全員の合意で決定します。

相続に財産の分け方を決めるための相続人全員の話し合いを遺産分割協議と言います。

遺産分割協議が成立するまでは、相続財産に対して各相続人が共有持分を持っています。

相続財産に対する共有持分は、各相続人の財産です。

各相続人は、法定相続分で相続財産に対して財産を持っていると言えます。

②相続財産は破産財団に組み込まれる

自己破産をした場合、破産者の財産は債権者に公平に分配されます。

債権者に公平に分配するため、破産者は財産の管理処分権を失います。

破産管財人は、中立公平の立場で破産手続を進める人です。

中立公平の立場から、破産管財人が債権者に財産を分配します。

債権者に分配されるのは、破産手続開始決定がされた時点の破産者の財産です。

相続発生後に破産手続開始決定がされた場合、各相続人の共有持分は破産財団に組み込まれます。

相続財産に対する共有持分は、各相続人の財産だからです。

破産管財人は、中立公平の立場で破産者の財産を管理処分します。

③遺産分割協議は破産管財人が参加

相続人は、法定相続分で相続財産に対して財産を持っていると言えます。

相続人が自己破産をした場合、相続財産に対する法定相続分は債権者に公平に分配されるべき財産です。

破産者の財産を債権者に公平に分配するため、遺産分割協議は破産管財人が参加します。

破産者は財産の管理処分権を失っているから、自分で遺産分割協議に参加することはできません。

遺産分割協議は、相続財産に対する法定相続分を処分することだからです。

遺産分割協議書に記名し押印をするのは、破産管財人です。

④破産者の相続分は債権者に分配される

自己破産をした場合、破産者の財産は債権者に公平に分配されます。

相続財産を取得した場合、破産者が取得した財産は債権者に分配されます。

⑤相続放棄をすると家族に財産を渡せる

相続が発生した場合、相続人は単純承認をするか相続放棄をするか選択することができます。

相続放棄を希望する場合、家庭裁判所に相続放棄の申立てをします。

家庭裁判所で相続放棄が認められたら、はじめから相続人でなくなります。

相続放棄をした後に破産手続開始決定がされた場合、相続財産は破産財団に組み込まれません。

自己破産の申立てをした人は、相続人ではないからです。

相続財産は、破産手続とは無関係な財産です。

自己破産する人は、どちらにしても相続財産を引き継ぐことはできません。

単純承認をしたら、破産財団に組み込まれます。

相続放棄をしたら、他の相続人が引き継ぐことができます。

相続発生後に破産手続開始決定の場合は、どちらかを選択します。

⑥相続放棄は詐害行為ではない

相続人が多額の借金を抱えている場合、債権者は相続財産から借金を返してもらいたいと期待するでしょう。

相続すれば多額の財産が手に入るのに、相続放棄をしたら相続財産は受け継ぐことはできません。

詐害行為とは、債権者が困ることを知っているのに自分の財産を不当に減少させる行為です。

債権者は裁判所に訴えて、詐害行為を取り消すことができます。

相続放棄は、詐害行為ではありません。

相続放棄は、財産処分行為ではないからです。

相続人が相続放棄をした場合、詐害行為として取り消すことはできません。

3破産手続開始決定後に相続発生

①自己破産で人生をやり直す

自己破産をした場合、破産者の財産は債権者に公平に分配されます。

破産手続開始決定がされた時点以降に、破産者が財産を取得することがあります。

破産手続開始決定がされた時点以降に取得した財産は、債権者に分配されません。

自己破産の制度は、人生のやり直しの機会を得る制度だからです。

破産手続開始決定がされた時点以降に取得した財産を債権者に分配できるとしたら、破産者は人生のやり直しをすることができなくなります。

②自己破産した人が遺産分割協議

相続が発生した場合、被相続人のものは相続人全員の共有財産になります。

相続人は、法定相続分で相続財産に対して財産を持っていると言えます。

相続人が相続財産の共有を始めたのは、相続が発生したときです。

破産手続開始決定がされた時点以降に相続が発生した場合、破産手続開始決定がされた時点以降に相続財産の共有持分を取得したと言えます。

破産手続開始決定がされた時点以降に取得した財産は、自己破産した人が人生のやり直しをするための財産です。

自己破産した人が自由に処分することができます。

遺産分割協議は、相続財産に対する法定相続分を処分することです。

自己破産した人が自由に処分できるから、遺産分割協議は自分で参加することができます。

4破産手続開始決定直前の遺産分割協議

①遺産分割協議が詐害行為になる

遺産分割協議とは、相続財産の分け方を決めるため相続人全員でする話し合いです。

破産手続開始決定がされる前であれば、財産の管理処分権があります。

自己破産をした場合、引き継いだ財産は破産財団に組み込まれます。

他の相続人が相続する合意をしようと、考えるかもしれません。

遺産分割協議は、相続財産に対する共有持分を処分することです。

遺産分割協議で、債権者が困ることを知っているのに自分の財産を不当に減少させたと言えます。

自己破産予定で財産を取得しない遺産分割協議をすることは、債権者を困らせる行為です。

自己破産予定で財産を取得しない遺産分割協議をすることは、不当な財産減少行為です。

自己破産する人が財産を取得しない遺産分割協議は、詐害行為です。

②破産管財人が否認権行使して取り返される

破産管財人は、詐害行為にあたる遺産分割協議に対して否認権を行使することができます。

破産管財人は否認権を行使して、財産を取り返すことができます。

5相続放棄を司法書士に依頼するメリット

自己破産をするといろいろなことが制限されるというイメージがある方は少なくありません。

そのイメージとあいまって、相続することもできないという誤解があります。

自己破産をしても相続権は失われません。

自己破産をしたから相続放棄をしなければならないといったことはありません。

自己破産を検討しているのであれば、早めに準備を進めるのがいいでしょう。

相続の発生が予想されるのであれば、なおさら早めに破産手続き始決定を受けておくことを目指しましょう。

破産手続開始決定を受けた後であれば、取得した財産は破産手続とは無関係になるからです。

大切な家族を失ったら家族は大きな悲しみに包まれます。

大きな悲しみで何もする気になれないことも多いでしょう。

相続手続は一生に何度も経験するものではありません。

だれにとっても不慣れでだれにとっても聞き慣れない言葉でいっぱいです。

相続放棄をはじめとして相続手続全般をサポートしています。

相続放棄を検討している方は、すみやかに司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。

事実婚・内縁関係を証明するには

2026-01-28

1事実婚・内縁関係は戸籍謄本で証明できない

①法律婚は戸籍謄本で一目瞭然

法律上婚姻関係と認められるためには、婚姻届を提出する必要があります。

婚姻届を提出すると、戸籍に記載されます。

法律婚は、戸籍謄本で証明することができます。

事実婚・内縁関係とは、婚姻届を出さない夫婦関係です。

婚姻届を提出しないから、戸籍には何も記載されません。

事実婚・内縁関係は、戸籍謄本で証明できません。

②第三者は資料で判断する

事実婚・内縁関係の当事者は、当然、夫婦であると認識しているでしょう。

夫婦だから分かってもらえると、誤解しがちです。

第三者は、事実婚・内縁関係を資料で判断します。

事実婚・内縁関係は、当事者が積極的に証明する必要があります。

事実婚・内縁関係には、戸籍謄本のような決定的証拠はありません。

客観的資料を積み重ねて、証明する必要があります。

③事実婚・内縁関係と認められる条件

条件(1)婚姻意思があること

婚姻意思があることとは、お互いに夫婦として共同生活を営む意思があることです。

形式的な届出の有無ではなく、実質的な夫婦である意思が重視されます。

条件(2)同一世帯で共同生活の実態があること

同一世帯で共同生活の実態があることとは、社会通念上夫婦と認められる生活実態があることです。

次の事項が重視されます。

・同居していること

・家計の共同があること

・協力扶助があること

条件(3)社会的承認があること

社会的承認があることとは、社会的に夫婦と認識されていることです。

周囲から夫婦であると認められ、対外的に夫婦であると振舞っていることです。

④決定的証拠がないから複数資料で補強する

事実婚・内縁関係には、決定的証拠がありません。

客観的資料を複数積み重ねて、証明します。

事実婚・内縁関係は、複数の資料によって3つの条件を総合的に判断されます。

単独の資料だけで、事実婚・内縁関係が認められるのは難しいでしょう。

単独の資料は、決定打にはならないからです。

複数の資料で相互に補強するほど、説得力が高まります。

一部の条件が弱くても、他の条件や資料で補強することができます。

やみくもに、たくさんの資料を準備する必要はありません。

第三者は、客観的に確認できる資料を重視するからです。

公的機関が確認した資料は、強い証拠力があります。

当事者だけで作成した資料は、補助的な役割を果たします。

事実婚・内縁関係と認められる条件を客観的に証明できるように、資料を準備します。

社会的承認があることは、公的な資料や準公的な資料が見込めません。

弱い証拠力だからこそ、さまざまな角度から承認されていることをバランスよく示す必要があります。

できるだけ証拠力のある資料をバランスよく、複数準備することがおすすめです。

過去の生活実態に基づく資料は、散逸していることも多いでしょう。

現在準備できる資料を組み合わせて、説明することが重要です。

⑤事実婚・内縁を証明するシーン

シーン(1)健康保険の扶養家族に入る

シーン(2)国民年金3号被保険者になる

シーン(3)遺族年金を受け取る

シーン(4)未支給年金を受け取る

シーン(5)公営住宅の入居

2事実婚・内縁関係で婚姻意思を証明するには

①パートナーシップ宣誓書

事実婚・内縁関係が認められるには、婚姻意思が認められる必要があります。

婚姻意思がないと、単なる同棲になるからです。

当事者が婚姻意思があると思っているだけでは、証明になりません。

パートナーシップ宣誓制度とは、お互いを人生のパートナーであると宣誓する制度です。

自治体がパートナーシップ宣誓を受付けたことを証明します。

パートナーシップ宣誓には、法的な効力はありません。

パートナーシップ宣誓書は公的な書類だから、高い証拠力があります。

自治体によっては、事実婚・内縁関係の人は制度利用ができないことがあります。

②婚姻契約公正証書

婚姻契約公正証書とは、夫婦が結婚生活に関する取り決めを公正証書にしたものです。

婚姻契約公正証書では、お互いをパートナーとする意思を明確にします。

生活費の負担や共有財産の範囲などを盛り込むことができます。

公正証書とは、公証人が作成する公文書です。

公正証書は、公証人が本人確認のうえ本人の意思を確認して作成します。

婚姻契約公正証書を作成しても、法律婚の効力を変えることはできません。

公正証書には、高い信頼性と高い証拠力があります。

③結婚証明書

結婚証明書とは、結婚式で新郎新婦が結婚する証明としてサインする書類です。

結婚証明書は単なる結婚式の演出のひとつで、公的書類ではありません。

ゲストの前でサインすることで、結婚の誓いを形に残すことができます。

婚姻届とちがい、法的効力はありません。

結婚証明書は公的書類ではないから、結婚証明書だけでは弱い証拠です。

④婚姻意思は後から証明できない

事実婚・内縁関係は、過去の事実の積み重ねで証明します。

事実婚・内縁配偶者が死亡した後、婚姻意思を証明することは難しくなります。

3事実婚・内縁関係で同一世帯で共同生活の実態を証明するには

①住民票で同一世帯を証明できる

事実婚・内縁関係が認められるには、同一世帯で共同生活の実態を認められる必要があります。

住民票は、世帯ごとに作成されます。

世帯とは、同一の住居に居住し、かつ、生計を共にする人の集まりと考えられています。

事実婚・内縁関係であっても、それぞれが世帯主で別の住民票になっていることがあります。

それぞれが世帯主で別の住民票になっていると、共同生活の実態が認められにくいでしょう。

例えば、シェアハウスで暮らしている人は、同一住所であっても共同生活の実態はありません。

事実婚・内縁関係であれば、共同生活をしているでしょう。

希望すれば、住民票を同一世帯にしてもらうことができます。

住民票は公的書類だから、高い証拠力があります。

②住民票の続柄に「夫(未届)」「妻(未届)」

住民票を確認すると、世帯主から見た続柄が記載されます。

同一世帯であっても、事実婚・内縁関係であるか分かりません。

例えば、友人同士でルームシェアをする場合や単なる同棲の場合、事実婚・内縁関係はありません。

住民票の世帯主から見て、同居人であると言えます。

事実婚・内縁関係がある場合、同居人ではなく「夫(未届)」「妻(未届)」が適切でしょう。

住民票の異動届を提出して、続柄を「夫(未届)」「妻(未届)」にしてもらうことができます。

住民票の異動届を提出する際に、事実婚・内縁関係の実態を説明する必要があります。

自治体によっては口頭の説明だけでなく、次の資料を準備すると納得してもらいやすいでしょう。

・不動産の賃貸借契約書

・生活費の共同が分かる書類

・パートナーシップ宣誓書

・婚姻契約公正証書

自治体から事実婚・内縁関係が認められたら、続柄が「夫(未届)」「妻(未届)」に変更されます。

平成24年2月10日総行住17号で総務省自治行政局長から「住民基本台帳事務処理要領の一部改正について(通知)」が発出されています。

「未届(夫)」「未届(妻)」と記載できないと言われた場合、できない理由を確認するといいでしょう。

住民票は公的書類だから、高い証拠力があります。

③住民票で長期間の同居を証明できる

事実婚・内縁関係が認められるには、共同生活の実態が重視されます。

共同生活が短期間である場合、事実婚・内縁関係とは認められにくいでしょう。

共同生活が長期間安定的に継続している場合、法律婚の夫婦と同様の生活実態があると認められやすくなります。

住民票を取得すると、共同生活の期間が判明します。

共同生活の期間は決定的な証拠にはなりませんが、長期間の共同生活の事実は補強証拠になります。

④賃貸借契約書の記載

事実婚・内縁関係が認められるために、賃貸借契約書は有効です。

賃貸借契約書は、生活の本拠を共有していることを示すことができます。

同一住所で共同生活をしていることを客観的に示すことができるからです。

連名で賃貸借契約をしている場合や互いに連帯保証人になっている契約は、高い証拠力があります。

賃貸借契約書の同居人欄に記載があり、住民票の続柄と整合性があるといいでしょう。

⑤家賃・公共料金・通信費の支払記録

共同生活をしている場合、生計同一の証明が重要です。

共同口座から引き落としをしている場合、生計同一をしていると言えます。

同一のクレジットカードや銀行口座を利用している場合、経済的結びつきを示すことができます。

長期間の支払いをしている場合、安定的な共同生活を証明することができます。

⑥社会保障や扶養関係

健康保険の扶養家族になっている場合、保険者から扶養関係が認められたと言えます。

遺族年金の支給を受けている場合、日本年金機構から遺族と認められたと言えます。

ひとつひとつの証拠力は弱くても、たくさんの証拠があると強力な証拠になります。

⑦共同生活の実態は婚姻意思の補強証拠になる

当事者が婚姻意思があると思っていると、共同生活をするようになるでしょう。

共同生活の実態を証明することは、婚姻意思があることの補強証拠になります。

4事実婚・内縁関係で社会的承認があることを証明するには

①民生委員発行の事実婚証明書

民生委員とは、厚生労働大臣から嘱託された地方公務員です。

地域の身近な相談にのり、行政や専門機関につなぐパイプ役です。

地域の民生委員に依頼すると、事実婚証明書を発行してくれることがあります。

事実婚証明書を発行してくれるか、民生委員の考えによります。

民生委員が確認した事実関係によって、証拠力が強くなることも弱くなることもあります。

②勤務先で家族扱い

勤務先で家族扱いを受けている場合、第三者である勤務先が家族と認めていると言えます。

勤務先で家族扱いを受ける場合、一定の審査があるから証拠力が比較的強いと言えるでしょう。

例えば、事実婚・内縁の配偶者を対象にして、扶養手当が支給されていることがあります。

扶養手当が支給されている給与明細書は、社会的承認がある資料として有効です。

勤務先の慶弔規程に基づいて、配偶者と扱われることがあります。

結婚祝い金の支給、配偶者として弔慰金の支給などがあれば、社会的承認がある資料として有効です。

勤務先に、緊急連絡先を登録するでしょう。

緊急連絡先は、勤務先が最も信頼できる家族と扱う対象です。

社内システムの緊急連絡先欄に登録されている記録は、社会的承認がある資料として有効です。

③親族からの上申書

親族から家族扱いを受けている場合、身近な第三者である親族が家族と認めていると言えます。

身近な第三者である親族が明確に夫婦と認めている上申書は、社会的承認がある資料として有効です。

親族の集まりに夫婦として参加している事実は、社会的承認の外形として非常に有効です。

結婚式や葬儀に夫婦参加をする場合、夫婦で記帳しているでしょう。

お盆や正月などへの夫婦参加をする場合、家族写真に写っていることがあります。

夫婦の記帳や家族写真は、社会的承認がある資料として有効です。

④社会的承認は婚姻意思の補強証拠になる

当事者が婚姻意思があると思っていると、社会的承認を求めるようになるでしょう。

社会的承認を証明することは、婚姻意思があることの補強証拠になります。

5事実婚・内縁関係を証明しても相続できない

①相続人は法律上の配偶者のみ

被相続人に配偶者がいる場合、配偶者は必ず相続人になります。

相続人になる配偶者は、法律上の配偶者のみです。

事実婚・内縁関係の配偶者は、相続人になることはできません。

事実婚・内縁関係を証明できても、相続では限界があります。

②特別縁故者は家庭裁判所が判断

被相続人に相続人がいない場合、原則として相続財産は国庫に帰属します。

被相続人に特別な縁故がある人がいる場合、国庫に帰属させるより特別縁故者に分与する方が適切なことがあります。

特別縁故者とは、被相続人に特別な縁故がある人です。

事実婚・内縁関係の配偶者は、特別縁故者に認められる可能性があります。

特別縁故者であるか家庭裁判所が判断するから、財産が分与されるか不確定です。

特別縁故者に期待するより、遺言書を作成して遺贈がおすすめです。

遺言書で遺贈すれば、確実だからです。

6遺言書作成を司法書士に依頼するメリット

家族のさまざまな事情から、事実婚・内縁を選択する人がいます。

事実婚・内縁関係であっても、元気であれば不自由が少なくなっています。

事実婚・内縁の配偶者が死亡した場合、相続人になることはできません。

事実婚・内縁の配偶者に財産を受け継いでもらいたい場合、生前から準備しておくことが重要です。

遺言書は、遺言書の意思を示すものです。

遺言書は遺言者の死後に効力を生じるものなので、厳格な書き方ルールがあります。

厳格な書き方ルールに合わない遺言は、無効になります。

せっかく遺言書を作成するのであれば、公証人が関与する公正証書遺言がおすすめです。

公証人は、法律の専門家です。

公正証書遺言は公証人が文書にするから、書き方ルール違反で無効になることは考えられません。

公正証書遺言を作成する場合、事前に公証役場との打ち合わせが必要になります。

何の準備もせず公証役場に出向いても、遺言書作成をすることはできません。

公正証書遺言の作成は、司法書士などの専門家に依頼することができます。

司法書士などの専門家は、公証役場などの打ち合わせをして遺言書作成をサポートします。

司法書士などの専門家に依頼することで、スムーズに遺言書作成をすることができます。

事実婚・内縁の配偶者に財産を受け継いでもらいたい人は、司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。

失踪宣告による法的な死亡日は7年満了した日

2026-01-21

1失踪宣告で死亡と見なされる

①残された家族のため失踪宣告

相当長期間、行方不明になっている場合、死亡している可能性が高い場合があります。

条件を満たした場合、死亡の取り扱いをすることができます。

失踪宣告とは、行方不明の人が死亡した取り扱いとするための手続です。

失踪宣告がされたら、たとえ死亡していなくても死亡した取り扱いをします。

行方不明が長期化した場合、家族が困ります。

家族であっても、行方不明の人の財産を処分することができません。

行方不明者の配偶者は、再婚することができません。

残された家族のために、行方不明者を死亡したものと扱う制度が失踪宣告の制度です。

②長期間生死不明でも自動で死亡扱いにならない

失踪宣告は、家庭裁判所の手続です。

たとえ長期間生死不明であっても、自動で失踪宣告がされることはありません。

失踪宣告がされると、極めて重大な法的効果があるからです。

家庭裁判所が関与して、社会的に正当な手続で慎重に確定させる必要があるからです。

法的効果の重大性を考慮して、家庭裁判所は公平中立的に審査します。

③普通失踪と特別失踪(危難失踪)

失踪宣告には、2種類があります。

普通失踪と特別失踪(危難失踪)です。

失踪宣告とは、行方不明の人が死亡した取り扱いとするための手続です。

死亡したことが確認できないのに、死亡と見なされます。

死亡と見なされるという強い効果があります。

失踪宣告が認められるためには、次の条件があります。

(1)行方不明の人が生死不明であること

(2)生死不明のまま一定期間継続していること

2失踪宣告による法的な死亡日は7年満了した日

①家庭裁判所が失踪宣告する

失踪宣告における家庭裁判所の役割は、死亡の効果を宣言することです。

民法が定めた基準に従って、法的な死亡日はすでに定まっています。

家庭裁判所は、法的な死亡日を決める権限がありません。

法的な死亡日は民法が定めるから、家庭裁判所は死亡日を変更する裁量が認められていません。

家庭裁判所が失踪宣告をすることで、法的な効果を確定させます。

法的な死亡日を確定させるまで、さまざまな手続を行います。

失踪宣告には重大な効果があるから、慎重に手続を進める必要があるからです。

失踪宣告では複数の日付が登場するため、どれが死亡日か分かりにくくなりがちです。

特に、審判日や官報公告日は区切りとして印象に残りやすく、誤解が生じやすい日付です。

②普通失踪は7年満了日に死亡と見なされる

(1)普通失踪の失踪期間は7年

一般的に失踪宣告といった場合、普通失踪を指しています。

失踪期間とは、生死不明の期間です。

普通失踪では、失踪期間が7年必要です。

7年は生存の可能性と残された家族の生活の限界における均衡点として、法律が定めた期間です。

生死不明とは、客観的に生きている情報も死亡した情報も得られない状態です。

普通失踪による法的な死亡日は、7年満了した日です。

(2)失踪期間7年の起算点

失踪宣告の申立てを受付けたら、家庭裁判所はさまざまな公的機関に調査をします。

失踪期間7年の起算点は、客観的に最後に消息が確認できた日です。

例えば、次の日が起算点になります。

・最後に会った日

・最後に電話やメール等で連絡が取れた日

・最後に生存が確認できた日

生死不明の人がいつの間にか、いなくなっていることがあるでしょう。

さまざまな調査から遅くともこのころには生死不明だったと、家庭裁判所が認定することができます。

家庭裁判所が認定した日から、起算します。

最後に消息が確認できた日は、家庭裁判所が判断します。

失踪宣告で死亡と扱うから、客観的事実が重視されます。

家族の記憶や主張などで、人為的に操作できる日を起算点にすることはできません。

失踪期間7年の起算点は、失踪宣告の要件を満たしているか確認するための日に過ぎません。

(3)7年満了日に死亡と見なされる

普通失踪では、生死不明のまま7年満了した日に死亡と見なされます。

普通失踪による法的な死亡日は、7年満了した日です。

例えば、令和2年2月14日に最後に生存が確認された場合、令和9年2月14日に失踪期間7年が満了します。

法的な死亡日は、令和9年2月14日です。

(4)初日不算入の影響を受けない

失踪期間7年の起算点は、最後に消息が確認できた日です。

最後に消息が確認できた日は、失踪期間7年の初日です。

死亡と見なされる日は、令和9年2月14日であって令和9年2月15日ではありません。

③特別失踪(危難失踪)は危難が去ったときに死亡と見なされる

(1)特別失踪(危難失踪)の失踪期間は1年

特別失踪(危難失踪)は、事故や災害などで生死不明になったときに適用されます。

死亡の可能性が非常に高いときに認められる特別な失踪宣告です。

失踪期間は短いのは、生存の可能性が非常に低いからです。

特別失踪(危難失踪)の失踪期間は、1年です。

(2)生死不明1年で失踪宣告の申立てができる

たとえ長期間生死不明であっても、自動で失踪宣告がされることはありません。

家族など利害関係人から、失踪宣告の申立てが必要です。

帰りを待つ家族の心情に、配慮するためです。

特別失踪(危難失踪)では、生死不明から1年経過すると失踪宣告の申立てができます。

(3)危難が去ったときに死亡と見なされる

普通失踪の失踪期間は、7年です。

普通失踪では、生死不明のまま7年満了した日に死亡と見なされます。

特別失踪(危難失踪)の失踪期間は、1年です。

特別失踪(危難失踪) では、危難が去ったときに死亡と見なされます。

失踪期間が満了したときに、死亡と見なされるのではありません。

生死不明1年は、失踪宣告の申立てができる要件に過ぎません。

④失踪宣告の審判日は死亡の効果を宣言した日

(1)家庭裁判所は死亡の効果を確定するのみ

失踪宣告の手続には、家庭裁判所が関与します。

失踪宣告を受けると、死亡と見なされます。

家庭裁判所は、死亡の効果を宣言するに過ぎません。

失踪宣告の審判日は、法的な死亡日ではありません。

失踪宣告の審判日は、死亡の効果を確認した日です。

(2)家庭裁判所は死亡日を創作できない

失踪宣告の審判日は、法的な死亡日ではありません。

失踪宣告の審判日を法的な死亡日にすると、家庭裁判所が死亡日を創作することになるからです。

家庭裁判所が死亡日を創作できるとすると、事件や審理期間で死亡日が異なることになります。

公平性や中立性の観点から、大きな問題になります。

失踪宣告は死亡の効果があるから、相続などに大きな影響を与えます。

相続や身分関係の安定性を害することは許されません。

(3)失踪宣告の審判確定日も法的な死亡日ではない

失踪宣告の審判は2週間経過で、確定します。

失踪宣告の審判が確定した日も、法的な死亡日ではありません。

失踪宣告の審判が確定した日も、失踪宣告に必要な手続日のひとつに過ぎません。

⑤官報公告日は法的な死亡日ではない

(1)官報公告は失踪宣告の手続の一部

失踪宣告の申立てを受付けたら、家庭裁判所は慎重に審査します。

官報公告は、失踪宣告の手続の途中の一部です。

官報公告をしても、死亡と見なされるわけではありません。

(2)官報公告で情報収集する

失踪宣告の手続で、家庭裁判所は官報に公告を出します。

官報公告の内容は、次のとおりです。

・次の人に失踪宣告の申立てがありました。

・該当の人や該当の人の生死を知る人は、家庭裁判所に届出をしてください。

・届出がないと、失踪宣告されます。

家庭裁判所は、官報公告で情報収集します。

官報公告は、家庭裁判所の調査が透明で公平であることの表れです。

官報公告日は、法的な死亡日ではありません。

ときには、本人や本人の生存情報が寄せられることがあります。

生存情報が寄せられたら、もちろん死亡扱いはされません。

(3)公告期間満了日も死亡日ではない

官報公告には、公告期間が定められています。

公告期間は、次のとおりです。

・普通失踪3か月以上

・特別失踪(危難失踪) 1か月以上

公告期間が満了しても、死亡扱いはされません。

公告期間満了日も、法的な死亡日ではありません。

(4)公告期間は家庭裁判所が判断する

公告期間は、情報収集のための便宜的期間に過ぎません。

公告期間は、事件の性質や家庭裁判所判断で適宜左右されます。

公告期間満了日を法的な死亡日にすると、家庭裁判所が死亡日を創作することになります。

公平性や中立性の観点から、大きな問題になります。

家庭裁判所が恣意的に死亡日を創作することは、許されることではありません。

相続や身分関係の安定性を維持するため、公告期間満了日も法的な死亡日にはなりません。

3失踪宣告後は失踪届で戸籍に反映

①失踪宣告確定後は死亡届でなく失踪届

失踪宣告は、家庭裁判所の審判です。

家庭裁判所が失踪宣告の審判をした後、審判が確定しても市区町村役場に連絡されることはありません。

失踪宣告の審判が確定した後に、市区町村役場に届出が必要です。

失踪届とは、失踪宣告の審判が確定した後に市区町村役場に提出する届出です。

死亡したときに提出する死亡届とは、別の書類です。

失踪届は、多くの市区町村役場でホームページからダウンロードができます。

失踪届が受理されると、失踪宣告がされたことが戸籍に記載されます。

②失踪宣告がされたときの戸籍の記載例

戸籍には次のように記載されます。

【死亡とみなされる日】令和〇年〇月〇日

【失踪宣告の裁判確定日】令和〇年〇月〇日

【届出日】令和〇年〇月〇日

【届出人】親族 〇〇〇〇

③失踪宣告が記載された戸籍で相続手続

失踪宣告を受けると、たとえ死亡していなくても死亡した取り扱いをします。

失踪宣告を受けた人を被相続人として、相続が発生します。

相続手続の基準になるのが、死亡と見なされる日です。

死亡と見なされる日が、相続発生の日です。

4失踪宣告がされるまで時間がかかる

手順①失踪の事実が発生

長期間、生死不明の状態が続きます。

失踪期間は、次のとおりです。

・普通失踪 7年以上

・特別失踪(危難失踪) 1年以上

手順②失踪宣告の申立て

家族など利害関係人が失踪宣告の申立てを提出します。

失踪宣告の申立日は、法的な死亡日ではありません。

法的な死亡日は、利害関係人などが自由に決めることはできないからです。

手順③家庭裁判所の審査

家庭裁判所は、公的機関などに対して生存の痕跡がないか慎重に調査します。

手順④官報公告

生存の痕跡がない場合、家庭裁判所が官報に公告を出します。

官報公告は、家庭裁判所からの呼びかけです。

官報による公告を出した日は、法的な死亡日ではありません。

官報公告が満了した日は、法的な死亡日ではありません。

手順⑤失踪宣告の審判

官報公告をしても生存情報がない場合、失踪宣告の審判がされます。

失踪宣告の審判によって、民法が定めた日に死亡と見なされます。

死亡と見なされる日は、次のとおりです。

・普通失踪 7年満了した日

・特別失踪(危難失踪) 危難が去った日

手順⑥失踪届の提出

市区町村役場に、失踪届を提出します。

失踪届提出には、失踪宣告の審判書と確定証明書が必要です。

5生死不明の相続人がいる相続を司法書士に依頼するメリット

相続人が行方不明であることは、割とよくあることです。

行方不明の相続人がいると、相続手続を進めることができません。

困っている遺族はどうしていいか分からないまま、途方に暮れてしまいます。

裁判所に提出する書類作成は、司法書士の専門分野です。

途方に暮れた相続人をサポートして、相続手続を進めることができます。

相続手続で不安がある方は、司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。

失踪宣告を受けた後に起きることの全体像

2026-01-14

1 失踪宣告で死亡と見なされる

①残された家族のため失踪宣告

相当長期間、行方不明になっている場合、死亡している可能性が高い場合があります。

条件を満たした場合、死亡の取り扱いをすることができます。

失踪宣告とは、行方不明の人が死亡した取り扱いとするための手続です。

失踪宣告がされたら、たとえ死亡していなくても死亡した取り扱いをします。

失踪宣告は、死亡と判断するものではなく法律関係を整理する手続です。

行方不明が長期化した場合、家族が困ります。

家族であっても、行方不明の人の財産を処分することができません。

行方不明者の配偶者は、再婚することができません。

残された家族のために、行方不明者を死亡したものと扱う制度が失踪宣告の制度です。

②普通失踪と特別失踪(危難失踪)

失踪宣告には、2種類あります。

普通失踪と特別失踪(危難失踪)です。

普通失踪と特別失踪(危難失踪)で、失踪期間が異なります。

失踪期間とは、生死不明の期間です。

一般的に失踪宣告といった場合、普通失踪を指しています。

普通失踪の失踪期間は、7年です。

特別失踪(危難失踪)とは「戦地に行った者」「沈没した船舶に乗っていた者」「その他死亡の原因となる災難に遭遇した者」などを対象にする失踪宣告です。

特別失踪(危難失踪) の失踪期間は、1年です。

2失踪宣告を受けた後に起きることの全体像

①失踪宣告を受けた後に財産関係で起きること

(1)死亡と見なされる日に相続が発生する

失踪宣告がされると、たとえ死亡していなくても死亡した取り扱いをします。

普通失踪では生死不明になってから7年間経過したときに、死亡したものと見なされます。

特別失踪(危難失踪)では危難が去ったときに、死亡したものと見なされます。

たとえ死亡していなくても死亡した取り扱いをするから、相続が開始します。

失踪宣告では、死亡と見なされる日が重要です。

死亡と見なされる日に、相続が発生するからです。

失踪宣告の申立て日や審判日は、相続発生日とは無関係です。

死亡と見なされる日を基準に、相続人を確認します。

(2)相続登記ができる

被相続人が不動産を保有していた場合、不動産の名義変更をします。

失踪宣告を受けた人が不動産を保有していた場合、不動産の名義変更をします。

失踪宣告を受けると、死亡の扱いを受けるからです。

相続登記には、3年の期限が決められました。

相続登記の義務を怠ると、ペナルティーの対象になります。

(3)預貯金の相続手続ができる

相続が発生すると、預貯金は相続人が相続します。

失踪宣告を受けた人の預貯金は、相続人が相続します。

失踪宣告で死亡扱いがされるから、相続手続を進めることができます。

(4)生命保険の死亡保険金を受け取れる

行方不明者に生命保険がかけてある場合、死亡保険金を請求することができます。

死亡保険金を請求する場合、多くの保険会社で失踪宣告の審判書と確定証明書が必要です。

失踪宣告の審判書を見ないと、災害特約などに該当しているか分からないからです。

(5)住宅ローンは団体信用生命保険で完済

団体信用生命保険とは、住宅ローンの返済に特化した生命保険です。

住宅ローンの債務者が死亡したとき、保険金で住宅ローンが完済になります。

民間の金融機関で住宅ローンを組む場合、団体信用生命保険の加入が条件になっているのがほとんどです。

住宅ローンの債務者が失踪宣告を受けた場合、保険金で住宅ローンが完済になります。

失踪宣告は、死亡と見なす制度だからです。

(6)失踪宣告で借金を引き継ぐ

借金を抱えたまま、債務者が行方不明になることがあります。

長期間生死不明のまま、失踪宣告を受けることがあります。

行方不明者の借金は、相続財産です。

行方不明者の相続人が借金を相続します。

(7)相続放棄ができる

相続が発生したら、相続人は相続を単純承認するか相続放棄をするか選択することができます。

長期間生死不明であっても、失踪宣告がされるまでは生きている扱いです。

被相続人の生前は、相続放棄をすることはできません。

失踪宣告を受けた後、相続人は相続放棄をすることができます。

相続放棄には、3か月の期限があります。

相続があったことを知ってから3か月以内に、家庭裁判所に対して相続放棄の申立てをします。

(8)相続税申告が必要になる

失踪宣告を受けた人の財産規模が一定以上である場合、相続税申告が必要になります。

②失踪宣告を受けた後に身分関係で起きること

(1)失踪届提出で戸籍に記載される

失踪宣告は、家庭裁判所の審判です。

家庭裁判所が失踪宣告の審判をした後、審判が確定しても市区町村役場に連絡されることはありません。

失踪宣告の審判が確定した後に、市区町村役場に失踪届を提出する必要があります。

失踪届は、死亡届とは別の届出です。

失踪届が受理されることで、失踪宣告がされたことが戸籍に記載されます。

失踪宣告が記載された戸籍謄本を提出することで、生死不明の人が法的に死亡した取り扱いがされることを証明できます。

戸籍には、次のように記載されます。

【死亡とみなされる日】令和〇年〇月〇日

【失踪宣告の裁判確定日】令和〇年〇月〇日

【届出日】令和〇年〇月〇日

【届出人】親族 ○○○○

(2)配偶者は再婚できる

行方不明者が失踪宣告を受けたら、死亡した扱いがされます。

行方不明者に配偶者がいる場合、死別と同じ扱いがされます。

失踪宣告によって婚姻関係は、終了になります。

死別した後、生存配偶者は再婚することができます。

失踪宣告を受けた後、残された配偶者は再婚することができます。

③帰ってきたら失踪宣告の取消

(1)生存が判明しても自動で失踪宣告は取消されない

長期間行方不明であっても、新天地で元気に生きていることがあります。

失踪宣告がされても、本人は何も困らず元気に生きているかもしれません。

何らかの手続のために戸籍謄本などを取得すると、失踪宣告がされていることに気が付きます。

失踪宣告がされた人の生存が判明しても、自動で失踪宣告は取消されません。

失踪宣告がされた人の生存が判明したら、家庭裁判所に対して失踪宣告取消の申立てをします。

(2)失踪宣告取消で財産は返還

失踪宣告によって財産を受け取った人は、失踪宣告の取消で財産を返還する必要があります。

例えば、次の財産を受け取った場合、返還が必要です。

・生命保険の死亡保険金

・相続財産

・遺族年金

財産を受け取った人が行方不明の人が生きていることを知っていても知らなくても、返還義務があります。

返還する財産は、現に利益を受けている限度と考えられています。

現に利益を受けている限度とは、返還時点でその者の財産状態の中に残っている利得です。
例えば、受け取った財産を生活費として費消したら、生活費相当額の利益を受けていると言えます。

生活費相当額を返還する必要があります。

(3)第三者に渡った財産は取り返せない

財産を受け取った人は、自分の財産を処分することができます。

例えば、不動産を相続したら、第三者に売却することがあるでしょう。

財産を受け取った人と第三者の両方とも、行方不明者が生きていることは知らないでしょう。

失踪宣告取消前に第三者に売却した不動産は、取り返せません。

取消前に善意でなされた法律行為は、失踪宣告取消の影響を受けないからです。

失踪宣告の取消を受けた人は、相続人に対して現に利益を受けている限度で返還請求をすることができます。

(4)配偶者の再婚は有効のまま

失踪宣告が取消されたら、婚姻関係は復活します。

失踪宣告を受けた後、残された配偶者は再婚することができます。

再婚した後に、行方不明者が帰ってくることがあります。

行方不明者が帰ってきた場合、再婚は有効のままです。

行方不明者との婚姻関係は、復活しません。

再婚した人の生活の安定を保護するためです。

3失踪宣告の申立て前に知っておくべき注意点

①失踪宣告には時間がかかる

(1)失踪期間を満たす必要がある

失踪宣告には、2種類があります。

普通失踪と特別失踪(危難失踪)です。

一般的に失踪宣告といった場合、普通失踪を指しています。

失踪期間とは、生死不明の期間です。

普通失踪では、失踪期間が7年必要です。

特別失踪(危難失踪)とは「戦地に行った者」「沈没した船舶に乗っていた者」「その他死亡の原因となる災難に遭遇した者」などを対象にする失踪宣告です。

死亡している可能性が非常に高いので、失踪期間は短い期間です。

特別失踪(危難失踪)では、失踪期間が1年で済みます。

失踪宣告がされるためには、失踪期間を満たす必要があります。

(2)失踪宣告する際に家庭裁判所の調査

失踪宣告がされると死亡の扱いがされるから、家庭裁判所は慎重に調査をします。

家庭裁判所の調査で、消息が判明することも少なくありません。

消息が判明したら、失踪宣告の申立ては却下されます。

(3)家庭裁判所から官報公告

家庭裁判所は調査を終えた後、官報公告を行います。

官報公告の内容は、行方不明者に対する届出の呼びかけです。

届出期間満了日は、次のとおりです。

・普通失踪 3か月以上

・特別失踪(危難失踪) 1か月以上

届出期間満了日までに、届出がないと失踪宣告がされます。

失踪宣告の申立てを行うと、直ちに失踪宣告が出ると期待してしまうかもしれません。

失踪宣告の申立てをしても失踪宣告がされるまで、1年程度かかるのが通常です。

②失踪宣告の申立人は限られている

(1)失踪宣告には申立てが必要

生死不明のまま一定期間継続していると、失踪宣告がされます。

自動で、失踪宣告がされることはありません。

長期間行方不明であっても、家族は帰りを待っていることがあるからです。

家族の心情に配慮して、失踪宣告は申立てが必要です。

(2)失踪宣告の申立人は利害関係人のみ

失踪宣告の申立人は、民法上、利害関係人と定められています。

利害関係人と定められているものの、法律上の利害関係人に限定されると考えられています。

単なる利害関係人は、申立人になることはできません。

法律上の利害関係人に限定される理由は、次のとおりです。

・失踪宣告は、死亡扱いと言う重大な効果があるため。

・失踪宣告の悪用や濫用を防止するため。

・本人の権利や利益を保護すべきだから。

法律上の具体的な利害関係がある人だけが申立人になることができます。

(3)心配しているだけでは申立てができない

失踪宣告がされると、重大な結果が発生します。

単なる友人や知り合いが心配しているだけでは、法律上の利害関係人に認められません。

感情だけで申立てを認めると、濫用のおそれがあるからです。

③死亡と見なされる日は自由に選べない

失踪宣告がされると、行方不明者は死亡と見なされます。

死亡と見なされる日に、相続が発生します。

死亡と見なされる日は、次の日です。

・普通失踪 生死不明から7年経過した日

・特別失踪(危難失踪) 危難が去った日

死亡と見なされる日は、法律で決められています。

死亡と見なされる日は、失踪宣告の申立日とは無関係です。

4生死不明の相続人がいる相続を司法書士に依頼するメリット

相続人が行方不明であることは、割とよくあることです。

行方不明の相続人がいると、相続手続を進めることができません。

相続が発生した後、困っている人はたくさんいます。

自分たちで手続しようとして、挫折する方も少なくありません。

失踪宣告の申立ては、家庭裁判所に手続が必要になります。

通常ではあまり聞かない手続になると、専門家のサポートが必要になることが多いでしょう。

信託銀行などは、高額な手数料で相続手続を代行しています。

被相続人が生前、相続人のためを思って、高額な費用を払っておいても、信託銀行はこのような手間のかかる手続を投げ出して知識のない遺族を困らせます。

知識のない相続人が困らないように高額でも費用を払ってくれたはずなのに、これでは意味がありません。

税金の専門家なども対応できないでしょう。

困っている遺族はどうしていいか分からないまま、途方に暮れてしまいます。

裁判所に提出する書類作成は、司法書士の専門分野です。

途方に暮れた相続人をサポートして、相続手続を進めることができます。

自分たちでやってみて挫折した方も、信託銀行などから丸投げされた方も、相続手続で不安がある方は司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。

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