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事実婚・内縁の証明資料に住民票の記載が重要

2025-12-10

1事実婚・内縁とは婚姻に準ずる関係

①事実婚・内縁は婚姻届を出さない夫婦関係

事実婚・内縁とは、婚姻に準ずる関係です。

法律上婚姻関係と認められるためには、婚姻届と提出する必要があります。

さまざまな事情から婚姻意思はあるものの、婚姻届を出していない夫婦があります。

法律上婚姻関係と認められていなくても、社会的に婚姻関係が認められることがあります。

事実婚・内縁は、婚姻届を出さない夫婦関係です。

②事実婚・内縁と認められるための2要件

要件(1)お互いに婚姻意思があること

お互いに、夫婦として生活する意思が必要です。

単なる同棲や恋人関係では、婚姻意思はないでしょう。

婚姻意思が認められないと、事実婚・内縁と認められません。

要件(2)夫婦同然の共同生活を営んでいること

夫婦が一定期間以上同居して、共同生活を営んでいることが必要です。

一定期間とは、概ね3年以上が目安です。

共同生活を営む期間だけでなく、生活実態が重視されます。

生計同一をしていることや日常生活を共にしていることが判断材料になります。

共同して子どもを育てている事情も、考慮されます。

③事実婚・内縁は総合的に判断される

法律婚は、戸籍に記載されます。

戸籍謄本を取得すれば、法律婚は証明することができます。

事実婚・内縁は、単独の決定的証拠がありません。

複数の証明資料を積み上げて、事実婚・内縁を証明します。

複数の証明資料を確認して、総合的に判断するからです。

事実婚・内縁の証明資料は、多いほど有利です。

ひとつの証明力は小さくても、たくさんの証拠資料が積み上がると大きな証明力があるからです。

④事実婚・内縁を証明するシーン

シーン(1)健康保険の扶養家族に入る

健康保険の被保険者の家族は、条件を満たせば、扶養家族に入ることができます。

扶養家族に入れれば、自分で保険料を負担する必要がありません。

保険者に認められれば、事実婚・内縁配偶者は扶養家族に入ることができます。

事実婚・内縁配偶者と認められるために、証明資料が必要です。

シーン(2)国民年金3号被保険者になる

厚生年金や共済年金の被保険者の配偶者は、条件を満たせば、国民年金3号被保険者になることができます。

国民年金3号被保険者になれれば、自分で保険料を負担する必要がありません。

日本年金機構に認められれば、事実婚・内縁配偶者は国民年金3号被保険者になることができます。

事実婚・内縁配偶者と認められるために、証明資料が必要です。

シーン(3)遺族年金を受け取る

遺族年金は、年金に加入していた人が死亡したときに遺族に対して支給される年金です。

日本年金機構に認められれば、事実婚・内縁配偶者に対して遺族年金が支給されます。

事実婚・内縁配偶者と認められるために、証明資料が必要です。

シーン(4)未支給年金を受け取る

年金は、後払いで支給されます。

例えば、4月分と5月分の年金は、6月に支給されます。

年金を受け取っている人が4月に死亡した場合、4月分の年金まで支給されます。

4月分の年金は、6月に振込みがされます。

多くの場合、6月の年金支払い日には、口座が凍結されているでしょう。

未支給年金とは、口座凍結などでまだ受け取っていない年金です。

日本年金機構に認められれば、事実婚・内縁配偶者に対して未支給年金が支給されます。

事実婚・内縁配偶者と認められるために、証明資料が必要です。

シーン(5)公営住宅の入居

公営住宅は、住宅に困窮する低所得者に安定した住まいを提供する制度です。

住宅供給公社に認められれば、事実婚・内縁配偶者も公営住宅に入居することができます。

例えば、名古屋市住宅供給公社では住民票に「夫(未届)」「妻(未届)」の記載が必要になるなどの証明資料が必要です。

2事実婚内縁の証明資料に住民票の記載が重要

①住民票でお互いの住所が分かる

住民票を取得すると、お互いの住所が分かります。

同じ住所地であっても、事実婚・内縁であるか分かりません。

それぞれが世帯主である場合、別世帯と考えられるからです。

例えば、ルームシェアをしていると、それぞれが世帯主です。

②住民票で同居しているか分かる

同一世帯であれば、世帯主から見た続柄が記載されています。

住民票を確認すると、一方が同居人と記載されていることがあります。

同居人と記載されている場合、同居していることが分かります。

同一世帯であっても、事実婚・内縁であるか分かりません。

同居人と記載されている場合、同棲しているだけのことがあるからです。

③住民票で事実婚・内縁と分かる

住民票を確認すると、一方が「夫(未届)」「妻(未届)」と記載されていることがあります。

「夫(未届)」「妻(未届)」と記載されている場合、事実婚・内縁と分かります。

④市区町村役場で続柄を変更する方法

事実婚・内縁を証明する場合、必ず住民票が必要になります。

事実婚・内縁を証明するシーンが予想されるなら、あらかじめ続柄を「夫(未届)」「妻(未届)」しておくのがおすすめです。

当事者双方が市区町村役場の窓口に出向きます。

同居人ではなく住民票の記載を「未届(夫)」「未届(妻)」と記載してほしい旨を明確に申し出ます。

申出には、マイナンバーカードや運転免許証などの本人確認書類が必要です。

市区町村役場が戸籍を確認し、法律上の婚姻条件を満たしていれば「未届(夫)」「未届(妻)」と記載してもらえます。

⑤「未届(夫)」「未届(妻)」と記載する総務省通知がある

平成24年2月10日総行住17号で総務省自治行政局長から「住民基本台帳事務処理要領の一部改正について(通知)」が発出されています。

通知が出てから10年以上経過しても、理解がない市区町村があります。

「未届(夫)」「未届(妻)」と記載できないと言われた場合、できない理由を確認するといいでしょう。

総務省からの通知を示して、具体的な理由を確認することが重要です。

3住民票を補う証明資料が必要になる

①住民票単独では事実婚内縁を証明できない

住民票に「未届(夫)」「未届(妻)」と記載されると、行政上は夫婦と認められやすくなります。

行政手続の便宜的な認定に過ぎません。

法律上事実婚・内縁と認められるためには、住民票だけでは不足です。

要件(1)お互いに婚姻意思があること

要件(2)夫婦同然の共同生活を営んでいること

上記の要件が認められないと、法律上事実婚・内縁とは認められないからです。

住民票における「未届(夫)」「未届(妻)」の記載は、証拠資料のひとつに過ぎません。

住民票単独では、事実婚内縁を証明できません。

②パートナシップ宣誓制度を利用

パートナシップ宣誓制度とは、同性カップルや事実婚カップルが互いに人生のパートナーと自治体に宣誓する制度です。

人生のパートナーであることを自治体から公的に証明してもらうことができます。

パートナシップ宣誓には、法律婚のような法的効果はありません。

行政サービスや社会的なシーンで、夫婦同様の扱いを受けることができます。

名古屋市には、令和4年(2022年)12月1日からファミリーシップ制度があります。

愛知県には、令和6年(2024年)4月1日からファミリーシップ宣誓制度があります。

公的な証明書が発行されるから、有力な証明になります。

③婚姻契約公正証書を作成

婚姻契約とは、婚姻意思や共同生活の取り決めを契約書にしたものです。

婚姻契約書は、公証役場で公正証書にしてもらうことができます。

当事者の本人確認をしたうえで、本人の意思確認をして公正証書にします。

公証人は、法律の専門家です。

公的な第三者が関与して公正証書にするから、高い信頼性があります。

婚姻契約公正証書は、婚姻意思の強力な証拠になります。

④共同生活を示す証拠資料

(1)賃貸借契約書

住居の賃貸借契約書で夫婦が連名で契約した場合、共同生活の強力な証拠になります。

夫婦連名で契約していなくても、居住者欄に夫婦の名前が記載されていることがあります。

居住者欄に同居人より「未届(夫)」「未届(妻)」の記載があると、有効な証拠になります。

契約を何度も更新している場合、継続的な共同生活を証明することができます。

(2)家賃・公共料金・通信費の支払記録

共同生活をしている場合、生計同一の証明が重要です。

共同口座から引き落としをしている場合、生計同一をしていると言えます。

同一のクレジットカードや銀行口座を利用している場合、経済的結びつきを示すことができます。

長期間の支払いをしている場合、安定的な共同生活を証明することができます。

(3)社会保障や扶養関係

健康保険の扶養家族になっている場合、保険者から扶養関係が認められたと言えます。

遺族年金の支給を受けている場合、日本年金機構から遺族と認められたと言えます。

ひとつひとつの証拠力は弱くても、たくさんの証拠があると強力な証拠になります。

(4)勤務先関係

勤務先への緊急連絡先に指定されている場合、勤務先から家族と認められたと言えます。

扶養手当や慶弔規程の配偶者適用履歴があると、勤務先から配偶者と認められたと言えます。

ひとつひとつの証拠力は弱くても、たくさんの証拠があると強力な証拠になります。

(5)生命保険死亡保険金の受取人

生命保険死亡保険金の受取人は、親族などに限られているのが原則です。

親族以外を受取人にすると、保険金目的の不正な事故を誘発するからです。

生命保険死亡保険金の受取人に指定されている場合、保険会社が親族と認めたと言えます。

⑤社会的に夫婦と扱われていることを示す証拠資料

(1)夫婦連名で届いた結婚式の招待状

結婚式の招待状が夫婦連名で届くことは、親族や友人から夫婦として扱われていることを示します。

社会生活上の評価を示しています。

(2)夫婦で参列した葬儀の記帳

葬儀などに夫婦で参列した場合、夫婦で揃って記帳します。

家族ぐるみでかかわりがある場合、社会的な関係を補充することができます。

(3)夫婦連名で届いた年賀状

年賀状は年1回であるものの、対外的に夫婦であることが示されると言えます。

長期間継続されていると、対外的に長期間安定的な関係があることを示すことができます。

(4)地域コミュニティーでの関係

自治会名簿の記載があると、地域で夫婦として認められていることを示すことができます。

社会的に夫婦と認められていることは、事実の積み上げが重要です。

ひとつひとつの証拠力は弱くても、たくさんの証拠があると強力な証拠になります。

4事実婚・内縁配偶者は相続人になれない

①長期間一緒にいても相続人ではない

相続人になる人は、法律で決められています。

被相続人に配偶者がいる場合、配偶者は必ず相続人になります。

相続人になる配偶者は、法律上の配偶者のみです。

事実婚・内縁配偶者は何年一緒にいても、相続人になりません。

②事実婚・内縁配偶者は特別縁故者になれる

被相続人に相続人がいない場合、相続財産は国庫に帰属するのが原則です。

被相続人に特別な縁故がある人がいる場合、相続財産を取得させる方がいいことがあります。

特別縁故者とは、被相続人に特別な縁故がある人です。

事実婚・内縁配偶者は、特別縁故者になることができます。

特別縁故者になるか、家庭裁判所が判断します。

③特別縁故者に期待するより遺言書作成して遺贈

家庭裁判所に認められないと、特別縁故者になることはできません。

家庭裁判所に認められるのは、高いハードルがあります。

特別縁故者に期待するより、遺言書作成して遺贈がおすすめです。

遺言書があれば、事実婚・内縁配偶者に自由に財産を引き継がせることができるからです。

5遺言書作成を司法書士に依頼するメリット

家族のさまざまな事情から、事実婚・内縁を選択する人がいます。

事実婚・内縁関係であっても、元気であれば不自由が少なくなっています。

事実婚・内縁の配偶者が死亡した場合、相続人になることはできません。

事実婚・内縁の配偶者に財産を受け継いでもらいたい場合、生前から準備しておくことが重要です。

遺言書は、遺言書の意思を示すものです。

遺言書は遺言者の死後に効力を生じるものなので、厳格な書き方ルールがあります。

厳格な書き方ルールに合わない遺言は、無効になります。

せっかく遺言書を作成するのであれば、公証人が関与する公正証書遺言がおすすめです。

公証人は、法律の専門家です。

公正証書遺言は公証人が文書にするから、書き方ルール違反で無効になることは考えられません。

公正証書遺言を作成する場合、事前に公証役場との打ち合わせが必要になります。

何の準備もせず公証役場に出向いても、遺言書作成をすることはできません。

公正証書遺言の作成は、司法書士などの専門家に依頼することができます。

司法書士などの専門家は、公証役場などの打ち合わせをして遺言書作成をサポートします。

司法書士などの専門家に依頼することで、スムーズに遺言書作成をすることができます。

事実婚・内縁の配偶者に財産を受け継いでもらいたい人は、司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。

高齢者消除の戸籍謄本で相続手続はできない

2025-12-05

1高齢者消除の戸籍謄本で相続手続はできない

①高齢者消除は戸籍の整理に過ぎない

相続人調査をすると、戸籍謄本に高齢者消除の許可と記載されていることがあります。

生年月日を確認すると、100歳以上の高齢者であることがほとんどです。

高齢者消除とは、戸籍の整理のための行政措置です。

100歳以上の高齢者が戸籍に記載されているものの死亡の可能性が高い場合に、戸籍から抹消する制度です。

法務局長の許可を得て、市長村長が職権で抹消します。

②高齢者消除で死亡扱いはされない

高齢者消除で除籍されても、法律上は死亡扱いはされません。

高齢者消除は、戸籍整理のための行政措置に過ぎないからです。

行政上は死亡扱いするけど、法律上は生きている扱いです。

単に行政手続で戸籍の整理をしただけだから、法律上の相続は発生しません。

高齢者消除によって除籍されても、生きている扱いです。

高齢者消除の戸籍謄本で、相続手続はできません。

③高齢者消除で代襲相続は発生しない

相続人調査をすると、相続人の戸籍が高齢者消除されていることがあります。

代襲相続とは、相続人になるはずの人が被相続人より先に死亡した場合に子どもや孫が相続することです。

高齢者消除と記載されて除籍されても、代襲相続は発生しません。

高齢者消除と記載されても、生きている扱いだからです。

④高齢者消除があったときの戸籍の記載例

高齢者消除があったとき、戸籍には次のように記載されます。

【高齢者消除の許可日】令和〇年〇月〇日

【除籍日】令和〇年〇月〇日

⑤高齢者消除の戸籍謄本でできない相続手続の具体例

(1)不動産の相続登記

高齢者消除された人が不動産を保有していることがあります。

相続が発生したら、相続登記をします。

高齢者消除の戸籍謄本で、相続登記をすることはできません。

(2)預貯金の名義変更や払戻

相続で預貯金の名義変更や払戻をする場合、死亡の記載がある戸籍謄本が必要です。

高齢者消除の戸籍謄本で、預貯金の名義変更や払戻はできません。

(3)遺産分割協議書の作成

相続人の戸籍が高齢者消除されても、相続人のままです。

高齢者消除がされても、その人は生きている扱いだからです。

高齢者消除された人を含めずに、遺産分割協議を成立させることはできません。

遺産分割協議を成立させることができないから、遺産分割協議書を作成することができません。

2 高齢者消除後に相続手続を進める方法

方法①失踪宣告で死亡と見なされる

(1)残された家族のために失踪宣告

戸籍が高齢者消除されている場合、死亡の可能性が非常に高いと言えます。

失踪宣告とは、行方不明の人を死亡した扱いとするための手続です。

失踪宣告がされたら、たとえ死亡していなくても死亡した取り扱いをします。

行方不明が長期化した場合、家族が困ります。

家族であっても、行方不明の人の財産を処分することができません。

残された家族のために、行方不明者を死亡したものと扱う制度が失踪宣告の制度です。

失踪宣告がされると、死亡した取り扱いをします。

(2)失踪宣告の条件

失踪宣告には、死亡と見なされるという強い効果があります。

失踪宣告が認められるためには、次の条件があります。

①行方不明の人が生死不明であること

②生死不明のまま一定期間継続していること

(3)普通失踪は7年で失踪宣告

失踪宣告には、2種類があります。

普通失踪と特別失踪(危難失踪)です。

死亡したことが確認できないのに、死亡と見なされます。

一般的に失踪宣告といった場合、普通失踪を指しています。

生死不明の期間を失踪期間と言います。

普通失踪では、失踪期間が7年必要です。

生死不明のまま7年経過した場合に、自動的に死亡と見なされるわけではありません。

家庭裁判所が失踪宣告したときに、死亡と見なされます

(4)特別失踪(危難失踪)は1年で失踪宣告

行方不明の人が大災害や大事故にあっていることがあります。

大災害や大事故に遭った場合、死亡している可能性が非常に高いものです。

特別失踪(危難失踪)とは「戦地に行った者」「沈没した船舶に乗っていた者」「その他死亡の原因となる災難に遭遇した者」などを対象にする失踪宣告です。

死亡している可能性が非常に高いので、失踪期間は短い期間です。

特別失踪(危難失踪)では、失踪期間が1年で済みます。

生死不明のまま1年以上経過したと認められる場合、家庭裁判所は失踪宣告をすることができます。

(5)申立先

行方不明の人の住所地や居住地を管轄する家庭裁判所です。

家庭裁判所の管轄は、裁判所のホームページで確認することができます。

(6)申立てができる人

行方不明の人に、法律上の利害関係がある人です。

例えば、次の人は申立人になることができます。

・行方不明の人の配偶者

・行方不明の人の相続人

・行方不明の人と遺産分割協議をする他の相続人

(7)必要書類

失踪宣告の申立書に添付する書類は、次のとおりです。

・行方不明の人の戸籍謄本

・行方不明の人の住民票または戸籍の附票

・失踪を証する資料

高齢者消除で戸籍が除籍されている場合、住民票は職権消除されているでしょう。

職権消除された住民票を失踪を証する資料として提出することができます。

警察に行方不明者届を提出している場合、行方不明者届受理証明書を提出することができます。

・申立人の利害関係を証する資料

(8)費用

・手数料

失踪宣告の申立てにかかる手数料は、800円です。

申立書に収入印紙を貼り付けて、納入します。

・連絡用郵便切手

家庭裁判所が手続で使う郵便切手を予納します。

郵便切手の額面や枚数は、家庭裁判所ごとに異なります。

・官報公告料

家庭裁判所の指示があってから、官報公告料4816円を納入します。

失踪宣告の手続では、2回官報公告があります。

(9)失踪宣告にかかる期間

失踪委宣告の申立てから失踪宣告がされるまで、1年程度かかります。

(10)失踪宣告の流れ

①家庭裁判所へ失踪宣告の申立て

②家庭裁判所による調査

③官報で公示催告

④家庭裁判所による審判

⑤失踪宣告の確定

⑥市区町村役場に失踪届

⑦戸籍に失踪宣告が記載される

(11) 失踪宣告がされたときの戸籍の記載例

戸籍には、次のように記載されます。

【死亡とみなされる日】令和〇年〇月〇日

【失踪宣告の裁判確定日】令和〇年〇月〇日

【届出日】令和〇年〇月〇日

【届出人】親族 〇〇〇〇

失踪宣告がされたら、たとえ死亡していなくても死亡した取り扱いをします。

死亡の取り扱いがされるから、相続が発生します。

方法②不在者財産管理人選任で遺産分割協議

(1)高齢者消除では遺産分割協議から除外できない

相続が発生したら、被相続人の財産は相続人全員の共有財産になります。

相続財産の分け方は、相続人全員の合意で決定します。

遺産分割協議とは、相続財産の分け方について相続人全員でする話し合いです。

相続人全員の合意がないと、遺産分割協議は成立しません。

一部の相続人を含めずに合意をしても、無効の合意です。

一部の相続人が高齢者消除の対象であっても、遺産分割協議から除外できません。

(2)高齢者消除された人の代わりに不在者財産管理人

不在者財産管理人とは、行方不明の人の財産を管理する人です。

行方不明の人が相続人になる相続があった場合、代わりに遺産分割協議をすることができます。

不在者財産管理人が遺産分割協議をする場合、家庭裁判所の許可が必要です。

遺産分割協議は、財産の管理行為を越える財産処分行為だからです。

(3)不在者財産管理人選任で相続は発生しない

失踪宣告には、死亡と見なされるという強い効果があります。

行方不明の人の帰りを待つ家族にとって、心理的抵抗を覚えることがあります。

不在者財産管理人を選任してもらっても、行方不明の人は生きている扱いです。

行方不明の人が死亡した扱いは、されません。

帰りを待つ家族の心情に、適うことがあります。

行方不明の人が死亡した扱いはされないから、相続が発生することもありません。

(4)申立先

行方不明の人の住所地や居住地を管轄する家庭裁判所です。

家庭裁判所の管轄は、裁判所のホームページで確認することができます。

(5)申立てができる人

行方不明の人に、法律上の利害関係がある人です。

例えば、次の人は申立人になることができます。

・行方不明の人の配偶者

・行方不明の人の相続人

・行方不明の人と遺産分割協議をする他の相続人

・行方不明の人の債権者

・検察官

(6)必要書類

不在者財産管理人選任の申立書に添付する書類は、次のとおりです。

・行方不明の人の戸籍謄本

・行方不明の人の住民票または戸籍の附票

・不在者財産管理人候補者の住民票または戸籍の附票

・行方不明の人の財産に関する資料

・利害関係を証する資料

(7)費用

・手数料

不在者財産管理人選任の申立てにかかる手数料は、800円です。

申立書に収入印紙を貼り付けて、納入します。

・連絡用郵便切手

家庭裁判所が手続で使う郵便切手を予納します。

郵便切手の額面や枚数は、家庭裁判所ごとに異なります。

・予納金

財産管理のために必要な費用を予納します。

事件の内容によっては、100万円程度になることがあります。

(8)不在者財産管理人選任にかかる期間

不在者財産管理人選任の申立てから選任がされるまで、数か月程度かかります。

(9)不在者財産管理人選任の流れ

①家庭裁判所へ不在者財産管理人選任の申立て

②家庭裁判所による審査

③不在者財産管理人選任の審判

④不在者財産管理人の職務開始

⑤家庭裁判所に権限外行為の許可の申立て

⑥家庭裁判所に権限外行為の許可の審判

⑦遺産分割協議

(10)死亡扱いにするためには失踪宣告

行方不明の人が帰ってくるまで、不在者財産管理人は財産管理を継続します。

戸籍が高齢者消除された場合、帰ってくる見込みは低いでしょう。

行方不明の人を死亡扱いにするためには、あらためて失踪宣告の申立てが必要です。

方法③死亡診断書死体検案書があれば死亡届

人が死亡したら、市区町村役場に死亡届を提出します。

高齢者消除された後であっても、死亡届を提出することができます。

死亡届を提出するためには、医師による死亡診断書や死体検案書が必要です。

死亡してから長期間経過すると、死亡診断書や死体検案書を取得することが困難になるでしょう。

やむを得ない理由によって死亡診断書や死体検案書を取得することができない場合、死亡の事実を証する書類を提出することができます。

例えば、次の書類を死亡の事実を証する書類として提出することができます。

・埋火葬許可証の写し

・寺院等の葬儀証明書

・過去帳の写し

3住所が分からない相続人がいる相続を司法書士に依頼するメリット

相続が発生した後、相続手続を進めたいのに住所が分からない相続人や行方不明の相続人がいて困っている人はたくさんいます。

自分たちで手続しようとして、挫折する人も少なくありません。

不在者財産管理人選任の申立てなど家庭裁判所に手続きが必要になる場合などは、専門家のサポートが必要になることが多いでしょう。

裁判所に提出する書類作成は、司法書士の専門分野です。

途方に暮れた相続人をサポートして、相続手続を進めることができます。

自分たちでやってみて挫折した人や相続手続で不安がある方は、司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。

相続で必要な戸籍謄本を家族が代理取得する方法

2025-11-28

1相続人確定のため戸籍謄本が必要

①相続人は戸籍謄本で証明する

相続手続の最初の難関が相続人の確定です。

相続が発生した場合、だれが相続人になるのか家族にとっては当然分かっていることでしょう。

家族にとっては当たり前のことでも、第三者には分かりません。

相続の手続先には、客観的に証明する必要があります。

相続人を客観的に証明するとは、戸籍謄本で証明するということです。

戸籍には、その人の身分事項がすべて記載されています。

身分事項とは、その人の出生、結婚、離婚、養子縁組、離縁、認知、死亡、失踪など身分関係の項目です。

過去の身分関係の事項を家族に秘密にしているかもしれません。

戸籍謄本を確認すると、すべて明るみに出ます。

戸籍には、身分事項がすべて記載されているからです。

戸籍謄本をすべて揃えることで、相続人を客観的に証明することができます。

②戸籍謄本を無条件で取得できる人は限られている

戸籍には、その人の身分関係が記録されています。

身分関係の項目は、その人のプライベートな項目です。

自分のプライベートな情報は、みだりに他人に知られたくないでしょう。

戸籍謄本は、第三者が興味本位で取得することはできません。

本人が自分の戸籍謄本を取得する場合、本人確認のうえ交付されます。

自分の戸籍謄本だから、委任状が要らないのは当然です。

戸籍に記載されている人の配偶者は、委任状なしで戸籍謄本を請求することができます。

戸籍に記載されている人の直系尊属と直系卑属は、委任状なしで戸籍謄本を請求することができます。

本人から、委任状を出してもらう必要はありません。

直系とは、親子関係によってつながっている関係のことです。

③国等に提出する必要があるとき取得できる

国や地方公共団体に提出する必要がある場合、委任状なしで戸籍謄本を請求することができます。

戸籍を取得するための正当な理由があると言えるからです。

相続登記をする場合、法務局にたくさんの戸籍謄本を提出します。

国に提出する必要がある場合だから、委任状なしで戸籍謄本を請求することができます。

④代理人は本人の権利を代理行使する

戸籍謄本は、代理人を立てて取得することができます。

代理人は、本人の権利を代理行使します。

代理請求をする場合、本人が発行する委任状が必要です。

たとえ家族が代理人になる場合でも、本人が発行する委任状と本人確認書類が必要です。

本人確認書類の例は、運転免許証やマイナンバーカードです。

⑤委任状のひな形と記載例

⑥第三者請求で広域交付は利用できない

広域交付制度を利用すれば、本籍地以外の市区町村役場で戸籍謄本を請求することができます。

広域交付制度を利用して、近隣の市区町村役場で戸籍謄本を取得することができます。

広域交付を利用して戸籍謄本を請求することができる人は、次の人です。

(1)その戸籍に記載がある人

(2)記載がある人の直系血族

上記の人以外は、広域交付を利用することができません。

戸籍に記載がある人の兄弟姉妹は、第三者請求をします。

たとえ家族であっても、第三者請求です。

第三者請求で、広域交付は利用できません。

第三者請求では、本籍地の市区町村役場に請求する必要があります。

⑦代理請求で広域交付は利用できない

広域交付を利用できるのは、請求人が自分で窓口に出向いたときのみです。

代理人を立てて、広域交付を利用することはできません。

たとえ代理人が家族であっても、、広域交付は利用できません。

代理請求では、本籍地の市区町村役場に請求する必要があります。

2相続で必要な戸籍謄本を家族が代理取得する方法

ケース①請求人が相続人のひとり

(1)親などの直系尊属の戸籍謄本は無条件に取得できる

被相続人が親などの直系尊属である場合、相続人である子どもは無条件で戸籍謄本を取得することができます。

相続人である子どもから見て、被相続人は直系尊属だからです。

直系尊属の戸籍謄本は、無条件で取得することができます。

(2)親などの直系尊属の戸籍謄本は広域交付を利用できる

相続人である子どもが市区町村役場の窓口に出向けば、広域交付を利用することができます。

相続手続では、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本が必要になります。

親などの直系尊属の戸籍謄本は、広域交付を利用して取得することができます。

(3)兄弟姉妹の戸籍謄本は第三者請求

戸籍謄本を無条件で取得できる人は、限られています。

兄弟姉妹は、直系ではありません。

兄弟姉妹は家族であっても、無条件で戸籍謄本を取得することができません。

兄弟姉妹の戸籍謄本は、第三者請求で取得することができます。

第三者請求で、広域交付は利用できません。

兄弟姉妹の戸籍謄本は、本籍地の市区町村役場に請求する必要があります。

ケース②相続人の配偶者が代理人

(1)配偶者の戸籍謄本は無条件に取得できる

戸籍に記載されている人は、自分の戸籍謄本を請求することができます。

夫婦は、必ず同じ戸籍にいるはずです。

自分の戸籍謄本を取得すると、相続人である配偶者が記載されています。

相続人である配偶者の戸籍謄本は、無条件に取得することができます。

(2)相続人から委任状を発行してもらって請求

相続人が仕事や家事で忙しいと、配偶者を代理人に立てて戸籍謄本を取得することがあります。

代理人となる配偶者は、相続人から委任状を発行してもらう必要があります。

代理人となる配偶者は、相続人の権利を代理行使するからです。

(3)代理請求で第三者請求ができる

相続人である配偶者は、親などの直系尊属の戸籍謄本を無条件に取得することができます。

代理人である配偶者は、相続人である配偶者の権利を代理行使することができます。

相続人である配偶者は、兄弟姉妹の戸籍謄本を無条件に取得することができません。

兄弟姉妹の戸籍謄本は、第三者請求で取得することができます。

代理人である配偶者は、相続人である配偶者の権利を代理行使することができます。

兄弟姉妹の戸籍謄本は、代理請求かつ第三者請求で取得することができます。

(4)代理請求は広域交付が利用できない

広域交付を利用できるのは、請求人が自分で窓口に出向いたときのみです。

相続人の配偶者が代理人である場合、広域交付を利用することはできません。

ケース③相続人の子どもが代理人

(1)親などの直系尊属の戸籍謄本は無条件に取得できる

相続人が高齢である場合、相続人の子どもが代理人になることがあります。

相続人の親が被相続人である場合、代理人となる相続人の子どもから見ると被相続人は直系尊属です。

直系尊属の戸籍謄本は、無条件で取得することができます。

(2)相続人である親も直系尊属

相続手続をする場合、相続人全員の現在戸籍が必要です。

相続人の子どもが代理人である場合、相続人である親は直系尊属です。

直系尊属の戸籍謄本は、無条件で取得することができます。

相続人である親の委任状なしで、戸籍謄本を取得することができます。

(3)親の兄弟姉妹の戸籍謄本は第三者請求

相続人である親の兄弟姉妹が相続人になる場合、兄弟姉妹の現在戸籍が必要です。

相続人は、第三者請求で兄弟姉妹の戸籍謄本を取得することができます。

相続人の子どもが代理人となって、相続人の権利を代理行使することができます。

兄弟姉妹の戸籍謄本は、代理請求かつ第三者請求で取得することができます。

3戸籍謄本を取得する方法

①窓口請求

(1)広域交付が利用できるのは窓口請求のみ

戸籍謄本は、本籍地の市区町村役場に請求するのが原則です。

請求者本人が窓口に出向いて請求する場合、広域交付を利用することができます。

広域交付が利用できるのは、窓口請求のみです。

家族が代理請求をする場合、広域交付は利用できません。

(2)不備があればすぐに補正ができる

戸籍謄本を窓口請求する場合、即日処理されます。

不備があれば、その場で補正することができます。

②代理請求

(1)家族であっても委任状が必要

代理人は、本人の権利を代理行使する人です。

代理人は、市区町村役場に委任状を提示する必要があります。

たとえ家族であっても、本人から依頼されたことを証明する必要があるからです。

(2)代理人は広域交付を利用できない

広域交付が利用できるのは、本人請求のみです。

戸籍謄本は、代理人を立てて請求ができます。

代理人は、広域交付を利用できません。

たとえ家族であっても、代理人は広域交付を利用できません。

③郵送請求

(1)交付請求書を郵送することができる

戸籍謄本の交付請求書を郵送して、戸籍謄本を取得することができます。

戸籍謄本の交付請求書は、本籍地の市区町村役場に提出します。

(2)内容不備があると受理されない

戸籍謄本の交付請求書に、不備が見つかることがあります。

郵送請求で不備があった場合、市区町村役場から電話などで連絡があります。

日中に連絡がつく電話番号などを記載しておきます。

電話連絡がつかない場合、補正を求める手紙と一緒に書類が返送されます。

(3)手数料は郵便小為替で納入

戸籍謄本を請求する際に、市区町村役場に手数料を納入します。

窓口請求をする場合、その場で現金や電子マネーなどで納入することができます。

郵送請求をする場合、手数料は郵便小為替で納入します。

郵便小為替は、郵便局の貯金窓口で購入します。

郵便局であっても、郵便窓口では購入できません。

コンビニエンスストアなどでも、購入できません。

(4)かかる期間

郵送請求をすると、戸籍謄本が届くまでに時間がかかります。

おおむね1週間から10日程度かかります。

④コンビニエンスストアで取得

(1)マイナンバーカードが必要

コンビニエンスストア内のマルチコピー機を操作して、戸籍謄本を取得することができます。

コンビニエンスストアで取得するためには、マイナンバーカードと暗証番号が必要です。

(2)本籍地の自治体がコンビニ発行に対応

コンビニエンスストアで取得するためには、本籍地の自治体がコンビニ発行に対応している必要があります。

(3)マイナンバーの持ち主のみ

コンビニエンスストアで取得できるのは、マイナンバーの持ち主のみです。

家族の戸籍謄本を取得することはできません。

第三者請求で戸籍謄本を取得することも代理請求で取得することも、できません。

⑤本籍地の調べ方

戸籍謄本を取得する場合、本籍地が必要になります。

本籍地を調べるためには、次の方法があります。

・本籍地の記載入り住民票を取得する

・運転免許証のICチップをスマートフォンアプリで読み取る

・マイナンバーカードを使って戸籍謄本をコンビニエンスストアで取得

自分の本籍地が判明したら、戸籍謄本をたどって被相続人や他の相続人の本籍地が判明します。

⑥戸籍謄本収集は司法書士に依頼できる

相続が発生したら、相続人調査をします。

相続人調査では、たくさんの戸籍謄本を準備する必要があります。

戸籍謄本の収集は、相続手続最初の難関です。

戸籍謄本の収集が困難である場合、司法書士などの専門家に依頼することができます。

4相続人確定を司法書士に依頼するメリット

本籍地の変更や国による戸籍の作り直し(改製)で多くの方は、何通もの戸籍を渡り歩いています。

相続手続のために、たくさんの戸籍謄本を集めなければなりません。

古い戸籍は現在と形式が違っています。

慣れないと、読みにくいものです。

現代とちがって、古い戸籍は手書きで書いてあります。

手書きの達筆な崩し字で書いてあると、分かりにくいものです。

戸籍集めは、相続以上にタイヘンです。

本籍地を何度も変更している人は、たくさんの戸籍を渡り歩いています。

結婚、離婚、養子縁組、離縁を何度もしている人は、戸籍が何度も作り直されています。

戸籍をたくさん渡り歩いているので、戸籍集めは膨大な手間と時間がかかります。

段取りよく要領よく手続するには、ちょっとしたコツがいります。

お仕事や家事でお忙しい方や高齢、療養中などで手続が難しい方は、手続をおまかせできます。

相続人調査でお困りのことがあれば、すみやかに司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。

相続人の住民票が職権消除されたときの対応方法

2025-11-21

1市区町村役場が行方不明と判断すると職権消除する

①行方不明になると本人申請なしで住民票を削除できる

死亡や転出などで実際にその住所に住んでいないにも関わらず、住民票が残ったままであることがあります。

職権消除とは、住民基本台帳法に基づいて本人申請なしで住民票が削除されることです。

長期間所在不明で生活実態が確認できないとき、行政記録の正確性を保つために行われます。

市区町村は、次の場合に住所について調査をします。

・市区町村からの郵便が届かない

・居住者から申出がある

市区町村の調査で居住が確認できないと判断された場合、住民票は職権で消除されます。

住民票が職権消除されたケースとは、行方不明が公的に確認されたケースと言えます。

②職権消除されても相続人の地位は失わない

職権消除とは、その住所に居住していない場合に市区町村が本人申請なしで住民票を削除する手続です。

職権消除は、行政記録を正確に保つための措置に過ぎません。

職権消除されても、相続人の地位は失いません。

住民票が職権消除されても、戸籍には何も記録されません。

相続人になる人は、戸籍の記録で判断されます。

居住実態に関わらず、民法で決められた人は相続人になります。

たとえ行方不明であっても、戸籍に記録された人は相続人です。

職権消除されても、法律上の身分や権利義務に直接影響はありません。

③相続人の住民票が職権消除されたときの問題点

(1)遺産分割協議ができない

相続が発生したら、被相続人の財産は相続財産になります。

相続財産は、相続人全員の共有財産です。

相続財産の分け方は、相続人全員の合意で決定します。

遺産分割協議とは、相続財産の分け方について相続人全員でする話し合いです。

たとえ行方不明の相続人がいても、相続人全員の合意が必要です。

行方不明の相続人がいると、遺産分割協議ができなくなります。

(2)遺産分割協議未了でも相続登記義務化

被相続人が不動産を保有していた場合、不動産の名義変更を行います。

相続登記とは、相続による不動産の名義変更です。

相続登記には、3年の期限が決められました。

3年以内に相続登記の義務を果たさないと、ペナルティーの対象になります。

ペナルティーの内容は、10万円以下の過料です。

多くの場合、遺産分割協議が成立してから相続登記をします。

遺産分割協議が成立しなくても、相続登記の義務は免れられません。

④親族による所在調査には限界がある

遺産分割協議成立には、相続人全員の合意が必要です。

行方不明の相続人を除外して合意しても、遺産分割協議は成立しません。

親族が所在調査をしても、事実上見つけることは困難です。

住民票が職権消除される前には、市区町村役場が一定の調査を行っているからです。

親族であれば、特別な手がかかりがあるかもしれません。

例えば、次のような手がかかりです。

・行方不明者の友人や知人

・行方不明者の仕事の関係者

・元配偶者や子ども

市区町村役場が知らないような手がかかりがある場合、親族による所在調査が有効です。

多くの場合、親族による所在調査には限界があると言えます。

⑤海外在住であれば外務省の所在調査制度

外務省の所在調査制度とは、海外に在留している可能性が高く半年以上所在確認ができない日本人の連絡先を確認するサービスです。

外務省の所在調査制度は、3親等内の親族が利用することができます。

外務省の所在調査制度では、得られる情報が限定的です。

在外公館に対し、在留届やたびレジの情報を基に安否確認をします。

たびレジとは、外務省が提供する海外渡航者向け安全情報登録サービスです。

在外公館は捜査機関ではないから、細かな住所調査や行方の捜索はできません。

在留届などが出されている場合に限り、連絡が可能であることがあります。

本人への連絡ができたとしても、本人の同意なく居場所の開示はできません。

多くの場合、外務省の所在調査制度には限界があると言えます。

2相続人の住民票が職権消除されたときの対応方法

①不在者財産管理人選任の申立て

(1)不在者財産管理人が代わりに遺産分割協議

行方不明の相続人がいると、遺産分割協議を成立させることができません。

不在者財産管理人は、行方不明の代わりの人です。

行方不明の相続人の権利を代行することができます。

家庭裁判所に申立てをして、不在者財産管理人を選任してもらうことができます。

不在者財産管理人が代わりに、遺産分割協議を成立させることができます。

(2)申立人

不在者財産管理人選任の申立ができるのは、次の人です。

・利害関係人

・検察官

他の相続人は、利害関係人と考えられます。

(3)申立先

行方不明者の従来の住所地や居所地を管轄する家庭裁判所です。

家庭裁判所の管轄は、裁判所のホームページで確認することができます。

(4)添付書類

不在者財産管理人選任の申立書に添付する書類は、次のとおりです。

・行方不明の人の戸籍謄本

・行方不明の人の戸籍の附票

・不在者財産管理人の候補者の住民票か戸籍の附票

・行方不明であることが分かる資料

・行方不明の人の財産の状況の分かる資料

・利害関係の分かる資料

通常は、提出した書類のみで審査がされます。

書類の内容によっては家庭裁判所から申立人が呼び出されて事情聴取が行われます。

(5)申立てにかかる費用

①手数料

不在者財産管理人選任の申立てをする場合、家庭裁判所に手数料を納入します。

手数料は、行方不明の人1人につき、800円です。

手数料は、収入印紙で納入します。

②予納郵券

手数料とは別に、裁判所が手続に使う郵便切手を予納します。

予納する郵便切手は、家庭裁判所によって金額や枚数が異なります。

およそ3000~5000円程度です。

③予納金

不在者財産管理人選任の申立てをする際に、家庭裁判所に予納金を納入します。

予納金の額は事件によって、異なります。

おおむね数十万円~100万円程度です。

予納金は、事案に応じて裁判所が決定します。

行方不明の人の財産が少なければ、予納金として申立人が負担します。

事件終了後、予納金が余れば返還されます。

(6)申立てにかかる期間

不在者財産管理人選任の申立てをしてから選任されるまで、数か月~半年ほどかかります。

(7)遺産分割協議をするためには権限外行為の許可の申立て

不在者財産管理人は、行方不明の人の財産を保存管理をする人です。

原則として、財産の保存管理以外の権限はありません。

例えば、不動産の修繕は、財産の保存行為と認められます。

遺産分割協議は、財産の保存管理ではなく処分行為です。

不在者財産管理人は、遺産分割協議をする権限はないはずです。

不在者財産管理人が有効に遺産分割協議を成立させるため、家庭裁判所の許可が必要です。

遺産分割協議は、権限外行為だからです。

家庭裁判所の許可を得るためには、行方不明の相続人に法定相続分の財産の確保が必要です。

行方不明の相続人に不利になるような遺産分割協議をすることは、家庭裁判所が許可しません。

相続税が少なくなるような遺産分割協議を望んでも、許可されません。

被相続人の面倒を見ていた人に財産を多くする遺産分割であっても、許可されません。

不在者財産管理人が家族であっても家族以外の専門家であっても、同じことです。

行方不明の相続人に不利になる遺産分割協議は、許可されないからです。

有効に遺産分割協議を成立させるため、家庭裁判所による権限外行為の許可が必要です。

②失踪宣告

(1)失踪宣告で死亡と見なされる

相当長期間、行方不明になっている場合、死亡している可能性が高い場合があります。

条件を満たした場合、死亡の取り扱いをすることができます。

失踪宣告とは、行方不明の人が死亡した取り扱いとするための手続です。

失踪宣告がされたら、たとえ死亡していなくても死亡した取り扱いをします。

(2)普通失踪は7年で死亡と見なされる

一般的に失踪宣告といった場合、普通失踪を指しています。

生死不明の期間を失踪期間と言います。

普通失踪では、失踪期間が7年必要です。

生死不明のまま7年経過した場合に、自動的に死亡と見なされるわけではありません。

家庭裁判所が失踪宣告したときに、死亡と見なされます。

(3) 特別失踪(危難失踪)は1年で死亡と見なされる

行方不明の人が大災害や大事故にあっていることがあります。

大災害や大事故に遭った場合、死亡している可能性が非常に高いものです。

特別失踪(危難失踪)とは「戦地に行った者」「沈没した船舶に乗っていた者」「その他死亡の原因となる災難に遭遇した者」などを対象にする失踪宣告です。

死亡している可能性が非常に高いので、失踪期間は短い期間です。

特別失踪(危難失踪)では、失踪期間が1年で済みます。

生死不明のまま1年以上経過したと認められる場合、家庭裁判所は失踪宣告をすることができます。

(4)失踪宣告は慎重に検討

行方不明者に失踪宣告がされると、死亡した扱いがされます。

失踪宣告がされると、相続が発生することになります。

相続関係が変更されるから、相続手続が複雑になります。

失踪宣告は、慎重に検討する必要があります。

3住所が分からない相続人がいる相続を司法書士に依頼するメリット

相続が発生した後、相続手続を進めたいのに住所が分からない相続人や行方不明の相続人がいて困っている人はたくさんいます。

自分たちで手続しようとして、挫折する人も少なくありません。

不在者財産管理人選任の申立てなど家庭裁判所に手続きが必要になる場合などは、専門家のサポートが必要になることが多いでしょう。

裁判所に提出する書類作成は、司法書士の専門分野です。

途方に暮れた相続人をサポートして、相続手続を進めることができます。

自分たちでやってみて挫折した人や相続手続で不安がある方は、司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。

死後離縁が代襲相続に与える影響

2025-10-22

1死後離縁とは死亡後に養子縁組を解消すること

①死亡しても養子縁組は終了しない

養子縁組とは、血縁関係による親子関係の他に、法律上の親子関係を作る制度です。

養親になる人と養子になる人が合意したうえで、市区町村役場に届出をして養子縁組をします。

養親と養子が合意したうえで、市区町村役場に届出をして養子縁組を解消することができます。

養子縁組を解消したら、亡くなった養親や亡くなった養子の親族との親族関係が終了になります。

養親と養子の一方が死亡しても、何もしなければ養子縁組は終了しません。

②死後離縁ができるのは縁組当事者のみ

死後離縁とは、死亡後に養子縁組を解消することです。

当事者の一方が死亡しても、自動で養子縁組は終了しません。

当事者の一方が死亡した後に、死後離縁で親族関係を整理することができます。

親族関係を整理することで、無用な相続トラブルを回避することができます。

死後離縁ができるのは、養子縁組の当事者で生きている人のみです。

死亡した当事者の親族は、死後離縁をすることはできません。

例えば、養親が死亡した場合、死後離縁ができるのは養子のみです。

養親の親族は、死後離縁をすることはできません。

③特別養子は死後離縁ができない

養子縁組には、2種類あります。

特別養子と普通養子です。

特別養子は、縁組後に実親との親族関係が終了します。

普通養子は、縁組後に実親との親族関係が継続します。

特別養子は厳格な条件で、家庭裁判所の判断が判断して養子縁組をします。

特別養子は厳格な条件で、家庭裁判所の判断が判断して養子縁組を解消します。

特別養子は、死後離縁をすることはできません。

厳格な条件を満たすことができないからです。

2相続人が先に死亡したら代襲相続

①養子が先に死亡すると代襲相続

(1)養子縁組後に出生した子どもは代襲相続できる

被相続人に子どもがいる場合、子どもは相続人になります。

被相続人に養子がいる場合、養子は相続人になります。

養子は、被相続人の子どもだからです。

相続人になるはずだったのに、子どもが先に死亡することがあります。

養子が先に死亡した後に、養親が死亡することがあります。

代襲相続とは、相続人になるはずだった人が被相続人より先に死亡したときに相続人になるはずだった人の子どもや孫が相続することです。

子どもが先に死亡した場合、孫が代襲相続します。

養子が先に死亡した場合、養子縁組後に出生した養子の子どもは代襲相続ができます。

代襲相続ができるのは、養子縁組後に出生した養子の子どものみです。

(2)養子の連れ子は代襲相続できない

養親と養子が養子縁組をした時点で、すでに養子に子どもがいることがあります。

養子の連れ子は、代襲相続をすることができません。

養子縁組で養親と養子に、親子関係が作られます。

養親と養子の子どもに、親族関係は作られないからです。

親族関係がないから、養子の連れ子は代襲相続をすることができません。

②養親の兄弟姉妹が死亡したら養子が代襲相続

養親が死亡した後に、養親の兄弟姉妹が死亡することがあります。

死亡した兄弟姉妹に子どもや親のなどの直系尊属がいない場合、被相続人の兄弟姉妹が相続人になります。

相続人になるはずだった養親が先に死亡したから、養子が代襲相続をします。

③実子と養子に区別はない

養子は、被相続人の子どもです。

実子と養子に、区別はありません。

実子と養子は、平等に相続人になります。

実子がいても、養子は相続人になります。

実子がいても、養子は同じ相続分です。

3死後離縁が代襲相続に与える影響

①死後離縁をしても相続に影響しないポイント

ポイント(1)相続した財産は返還不要

死後離縁をしても、すでに発生した相続に影響はありません。

死後離縁の効力は、将来に向かって発生するからです。

遺産分割をした後、死後離縁をすることがあります。

死後離縁をしても、さかのぼって相続人でなくなることはありません。

相続した時点で、相続人のままです。

死後離縁をしても、相続した財産は返還する必要はありません。

ポイント(2)遺産分割協議に参加する権利義務がある

相続財産の分け方は、相続人全員の合意で決定します。

遺産分割協議とは、相続財産の分け方について相続人全員でする話し合いです。

一部の相続人を含めずに合意をしても、遺産分割協議は成立しません。

死後離縁をしても、養子は相続人です。

養子には、遺産分割協議に参加する権利義務があります。

養子を含めて合意をしないと、遺産分割協議は成立しません。

ポイント(3)成立した遺産分割協議は無効にならない

相続人全員の合意ができたら、遺産分割協議が成立し終了します。

遺産分割協議が成立した後に、死後離縁をすることがあります。

死後離縁をしても、遺産分割協議が無効になることはありません。

死後離縁の効力は遡らないから、養子は相続人のままです。

成立した遺産分割協議が無効になることはありません。

ポイント(4)相続権はなくならない

相続が発生した時点で、被相続人の子どもは相続人になります。

死後離縁をしても、相続が発生した時点で養子であることには変わりません。

死後離縁の効力は、将来に向かって発生するからです。

死後離縁をしても、養子の相続権はなくなりません。

②すでに発生した代襲相続に影響はない

死後離縁が成立しても、すでに発生している相続や代襲相続には影響しません。

例えば、養親が死亡した後に、養親の兄弟姉妹が死亡することがあります。

相続人になるはずだった養親が先に死亡しているから、養子が代襲相続人になります。

養親の兄弟姉妹が死亡した後で、養子は死後離縁をすることができます。

死後離縁をしても、養子は代襲相続人のままです。

すでに発生した代襲相続に、影響はありません。

③将来の相続トラブルを防止する

死後離縁をする最大のメリットは、相続トラブルを回避できる点です。

遺産分割協議成立には、相続人全員の合意が必要になるからです。

養親の兄弟姉妹が死亡したときに、養子は代襲相続人になります。

遺産分割協議は、トラブルになりやすい手続です。

死亡した養親の親族との間で、トラブルになる可能性があります。

死後離縁をすると、死亡した養親と養子間の親子関係を解消することができます。

死亡した養親の兄弟姉妹と養子間の親続関係を終了することができます。

死亡した養親の兄弟姉妹が死亡しても、代襲相続人になりません。

死亡した養親の親などの直系尊属と養子間の親続関係を終了することができます。

死亡した養親の親などの直系尊属が死亡しても、代襲相続人になりません。

死後離縁後は遺産分割協議に参加する権利と義務も、なくなります。

死後離縁によって、死亡した養親との親子関係を解消したからです。

相続手続に関与しないから、精神的にも負担を無くすことができます。

死後離縁は、将来の安心を得るための整理手続と言えます。

死後離縁は、将来の代襲相続を法律上発生させない確実な手段だからです。

④死後離縁をしても相続放棄

相続が発生したら、相続人は相続を単純承認するか相続放棄をするか選択することができます。

相続放棄を希望する場合、家庭裁判所に対して相続放棄の申立てをします。

死後離縁をしても、すでに発生した相続人影響はありません。

相続を希望しないなら、相続放棄の手続が必要です。

家庭裁判所で相続放棄が認められたら、はじめから相続人でなくなります。

⑤代襲相続権剥奪目的で死後離縁はできない

養子が死亡した後に養親が死亡した場合、養子の子どもは代襲相続をすることができます。

養親が死後離縁をすると、代襲相続をすることはできません。

死後離縁で、養親と養子の親子関係が解消されるからです。

本来、代襲相続人の相続権を奪う手続は、相続人廃除です。

厳格な廃除の手続を潜脱するため、代襲相続権剥奪目的で死後離縁をすることは許されません。

4死後離縁の申立て

①死後離縁には家庭裁判所の許可が必要

養親と養子が合意したうえで、市区町村役場に届出をして養子縁組を解消することができます。

養子縁組の解消は、養親と養子が合意をして市区町村役場に届出をするのが原則です。

養子縁組の当事者の一方が死亡した後は、合意をすることができません。

死後離縁をする場合、家庭裁判所の許可が必要です。

家庭裁判所の許可の審判が確定した時点で、離縁の効果が発生します。

②申立先

死後離縁の申立ての提出先は、申立人の住所地を管轄する家庭裁判所です。

家庭裁判所の管轄は、裁判所のホームページで確認することができます。

③申立ができる人

死後離縁の申立てができるのは、養子縁組の当事者のみです。

死亡した当事者の親族は、申立てをすることができません。

④必要書類

死後離縁の申立書には、次の書類を添付します。

(1)養親の戸籍謄本

(2)養子の戸籍謄本

(3)申立人の住民票

⑤費用

(1)手数料

手数料は、養子1人あたり800円です。

収入印紙800円分を申立書に貼り付けて、提出します。

(2)連絡用郵便切手

家庭裁判所が手続で使う郵便切手を予納します。

家庭裁判所ごとに、提出する郵便切手の額面や枚数が異なります。

例えば、名古屋家庭裁判所では、次のとおり提出します。

・500円切手 2枚

・110円切手 10枚

⑥死後離縁の流れ

手順(1)申立書の準備

家庭裁判所の書式を利用して、申立書を作成します。

手順(2)必要書類の準備

死後離縁の申立てに必要な書類は、先に説明したとおりです。

死亡した人は、死亡の記載がある戸籍謄本を準備します。

手順(3)家庭裁判所へ申立書を提出

申立書と必要書類を取りまとめて、家庭裁判所へ提出します。

窓口に出向いて提出することもできるし、郵送で提出することもできます。

手順(4)家庭裁判所の審査

死後離縁の申立書を受付けたら、審査をします。

申立人の意思が真意に基づくものか、不当な目的でないか審査します。

必要に応じて、事情聴取や書面照会が行われます。

手順(5)審判の確定

死後離縁の許可の審判書が送達されます。

審判書が送達されてから、2週間で確定します。

確定したら家庭裁判所に申請して、確定証明書を取得します。

手順(6)離縁届の提出

市区町村役場に、離縁届を提出します。

離縁届を提出するときは、次の書類が必要です。

・死後離縁の許可の審判書

・確定証明書

離縁届を提出する際に、本人確認書類の提示が必要です。

市区町村役場で離縁届が受理されると、戸籍に反映します。

5養子がいる相続を司法書士に依頼するメリット

相続税を減らすために、税金の専門家から養子縁組をすすめられることがあります。

税金を減ることだけ強調されて、他のことに考えが及んでいない方も多いです。

税金について考慮することは大切ですが、税金のメリットだけ注目すると後悔することになるでしょう。

死後離縁を考える人の多くは、生前から親族間の関わり合いで疲れ果てています。

養親のためを思って、何も言えないのです。

死亡した養親の相続で、何も対策していないとトラブルが目に見える形になります。

被相続人が遺言書を書いておけば、トラブルは大幅に減ります。

内容不備になることの少ない確実な公正証書遺言を作成することをおすすめします。

家族の幸せを思って築いた財産なのに、トラブルのタネになっては悲しいでしょう。

家族のために、公正証書遺言を作成したい方は、司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。

特別養子縁組解消の条件は非常に厳しい

2025-09-18

1特別養子縁組は子どもの利益が最優先

①特別養子縁組で実親との親子関係は終了する

養子縁組とは、血縁関係による親子関係の他に法律上の親子関係を作る制度です。

養子縁組には、2種類あります。

特別養子と普通養子です。

特別養子は、養子縁組後に実親との親子関係が終了します。

普通養子は、養子縁組後も実親との親子関係が継続します。

一般的に、単に「養子」と言ったら、普通養子を指していることがほとんどです。

②特別養子で子どもの福祉を保障する

普通養子は、養親になる人と養子になる人が合意して市区町村役場に届出をします。

普通養子では、当事者の合意が重視されます。

特別養子制度は、子どもに安定した家庭環境を提供することが最大の目的です。

家庭での養育が愛着形成や自尊感情の育成に、大きく寄与するからです。

特別養子では、子どもの福祉が重視されます。

特別養子縁組は、養親でなく子どもの利益が最優先されます。

③特別養子と普通養子のちがい

ちがい(1)目的

特別養子は、実親による監護ができないときの子どもの福祉の保障です。

普通養子は、親族関係の調整や相続対策など柔軟な目的に応じます。

ちがい(2)成立要件

特別養子は、厳格な要件で家庭裁判所の審判が必要です。

普通養子は、当事者の合意と市区町村役場への届出で縁組することができます。

ちがい(3)実親との親子関係

特別養子は、実親との親子関係が終了します。

普通養子は、実親との親子関係が継続します。

ちがい(4)戸籍の表記

特別養子は、「長男」「長女」など実子同様に記載されます。

普通養子は、「養子」「養女」と記載されます。

ちがい(5)相続関係

特別養子は、養親のみ相続し実親を相続しません。

普通養子は、養親と実親両方を相続します。

ちがい(6)離縁の可否

特別養子は、厳格な要件で家庭裁判所の審判が必要です。

普通養子は、当事者の合意と市区町村役場への届出で離縁することができます。

ちがい(7)養親の要件

特別養子は、原則として、25歳以上で夫婦共同で養子縁組をします。

普通養子は、20歳以上であれば単身でも養子縁組ができます。

2特別養子縁組解消の条件は非常に厳しい

①特別養子縁組解消が認められる条件

(1)養親の虐待等で養子の利益が著しく害されること

(2)実父母が相当の監護を行える状況にあること

(3)養子の利益のために解消が特に必要と認められること

上記3つの条件がすべて満たされる必要があります。

例えば、養親の虐待があっても実親が監護できない状況であれば、特別養子縁組解消は認められません。

②特別養子縁組解消は家庭裁判所が判断

特別養子縁組の制度は、子どもの福祉を最優先されます。

安定的な家族関係を優先するため、特別養子縁組解消は非常に厳しく制限されています。

上記3つの条件がすべて満たされているか、家庭裁判所が厳しく審査します。

特別養子縁組解消は、子どもの利益のために特に必要でなければなりません。

一時的な問題や養親側の都合で、特別養子縁組解消は認められません。

普通養子縁組は、当事者の合意と市区町村役場への届出で解消することができます。

当事者だけで合意できなければ、家庭裁判所の調停を利用することができます。

特別養子縁組は、当事者の合意と市区町村役場への届出で解消できません。

家庭裁判所の調停で、特別養子縁組を解消する制度もありません。

特別養子縁組解消は、家庭裁判所に申立てをして家庭裁判所が判断します。

③養親は特別養子縁組解消を請求できない

家庭裁判所に対して、特別養子解消を請求できるのは、次の人です。

(1)養子

(2)実父母

(3)検察官

養親は、特別養子縁組解消を請求できません。

特別養子の制度は、子どもの利益が最優先されるからです。

養親の都合で離縁できるとなると、子どもの安定的な家庭環境が損なわれるでしょう。

養親の都合で実親の元へ戻る理由を軽々しく作らないため、養親は特別養子縁組解消を請求できません。

④実子誕生は解消理由にならない

養親に実子が誕生しても、特別養子との関係に影響を与えません。

特別養子の制度は、子どもの利益が最優先されるからです。

養親は、養子と実子を平等に育てる責任があります。

「実子との関係を優先したい」「実子にのみ相続させたい」などの事情があっても、養親は特別養子縁組解消を請求することはできません。

実子誕生は、特別養子縁組解消の理由にできません。

養親の都合で、特別養子縁組解消はできません。

⑤養親の離婚や再婚は解消理由にならない

特別養子縁組は、原則として、夫婦共同で養子縁組をします。

夫婦共同で養子縁組をした後で、養親夫婦が離婚することがあるでしょう。

養親夫婦が離婚し養親の一方による養育から離れても、養親と養子の親子関係は継続します。

養親の一方が再婚しても、特別養子縁組を解消する理由にはなりません。

養親の離婚や再婚があると、家族関係が不安定になるでしょう。

養親の離婚や再婚があっても、「養親の虐待等で養子の利益が著しく害されること」に該当しないでしょう。

養親の離婚や再婚があっても、「養子の利益のために解消が特に必要と認められること」に該当しないでしょう。

家庭裁判所は、子どもの利益のため条件に該当するか厳格に審査します。

単なる家族構成の変化程度の軽い理由で、特別養子縁組解消を認めてくれないでしょう。

⑥死後離縁は対象外

死後離縁とは、養親と養子のどちらかが死亡した後に、養子縁組を解消することです。

養子縁組を解消したら、死亡した養親や死亡した養子の親族との親族関係が終了になります。

特別養子縁組は、死後離縁の対象外です。

当事者が死亡した後に、条件を満たすことができなくなるからです。

例えば、「養親の虐待等で養子の利益が著しく害されること」はあり得ないでしょう。

たとえ、養親の親族と関係が悪化しても、特別養子縁組解消は認められないでしょう。

⑦特別養子解消の実態

特別養子縁組解消は、家庭裁判所が厳しく審査します。

現実的にも、特別養子縁組解消の申立て自体ほとんどありません。

令和元年度から特別養子縁組解消の申立ては、たった4件です。

特別養子縁組解消の申立てがあっても、認容は0件です。

特別養子縁組解消の条件は、非常に厳しいことが数次のうえからもよく分かります。

年度新規受付件数認容却下取下げ
令和元年度0000
令和2年度0000
令和3年度2000
令和4年度1012
令和5年度1000
令和6年度0001
裁判所司法統計情報 第3表家事審判の受理、既済、未済手続別事件別件数より

3特別養子縁組の解消手続の流れ

手順①申立ての準備

特別養子縁組解消の申立ての添付書類は、次のとおりです。

・特別養子縁組成立時の審判書謄本

・養子の戸籍謄本

・養親の戸籍謄本

・実親の戸籍謄本

・養子の住民票または戸籍の附票

・虐待等の証拠資料

・実父母の監護能力を示す資料

特別養子縁組解消の申立てができるのは、養子本人、実父母、検察官だけです。

養親は、特別養子縁組解消の申立てができません。

手順②家庭裁判所へ申立て

特別養子縁組解消の申立書と添付書類を取りまとめて、家庭裁判所に提出します。

提出先は、養子の住所地を管轄する家庭裁判所です。

家庭裁判所の管轄は、裁判所のホームページで確認することができます。

特別養子縁組解消の申立手の手数料は、養子1人につき800円です。

手数料は、収入印紙を申立書に貼り付けて納入します。

手数料とは別に、裁判所が使う郵便切手を5000円程度予納します。

予納する郵便切手は、裁判所によって額面や枚数が決められています。

例えば、名古屋家庭裁判所は、次のとおりです。

養親複数のとき

・500円 6枚

・110円 20枚

・10円 20枚

養親1名のとき

・500円 4枚

・110円 20枚

・10円 20枚

手順③家庭裁判所の審理

特別養子縁組解消は、家庭裁判所が非常に厳しく審査します。

裁判所調査官により、養親子関係や実親の監護能力について事実確認がされます。

養子の年齢に応じて、本人の意向調査があります。

支援機関などへの事情聴取を含めて、慎重に審査します。

家庭裁判所の審理は、数か月~1年以上かかります。

手順④家庭裁判所の審判

家庭裁判所が3つの条件がすべて満たされると判断したときのみ、解消を容認する審判がされます。

特別養子縁組解消の審判が確定したら、確定証明書を取得します。

特別養子縁組解消の審判が確定すると、養親子関係が解消されて実親子関係が回復します。

手順⑤特別養子離縁届を提出

市区町村役場へ、特別養子離縁届を提出します。

特別養子離縁届には、次の書類を添付します。

・家庭裁判所による審判書謄本

・確定証明書

手順⑥戸籍に反映

・養親の戸籍から除籍された戸籍の記載例

戸籍に記録されている者

名 〇〇

生年月日 令和〇年〇月〇日

父 〇〇〇〇(養父の氏名)

母 〇〇〇〇(養母の氏名)

続柄 長男

(途中省略)

身分事項 民法817条の2

民法817条の2による裁判確定日 令和〇年〇月〇日

届出日 令和〇年〇月〇日

届出人 父母

従前戸籍 〇〇県〇〇市〇〇町〇丁目〇番地 〇〇〇〇

身分事項 特別養子離縁

特別養子離縁の裁判確定日 令和〇年〇月〇日

届出日 令和〇年〇月〇日

届出人 母

送付を受けた日 令和〇年〇月〇日

受理者 愛知県名古屋市長

新本籍 〇〇県〇〇市〇〇町〇丁目〇番地

離縁後の氏 〇〇

上記記載がされると、養親の戸籍から除籍されますから、除籍と記載されています。

4相続人調査を司法書士に依頼するメリット

本籍地の変更や国による戸籍の作り直し(改製)で多くの方は、何通もの戸籍を渡り歩いています。

古い戸籍は現在と形式が違っていて読みにくかったり、手書きの達筆な崩し字で書いてあって分かりにくかったりしますから、慣れないと戸籍集めはタイヘンです。

本籍地を何度も変更している方や結婚、離婚、養子縁組、離縁を何度もしている方は、戸籍をたくさん渡り歩いているので、膨大な手間と時間がかかることが多くなります。

戸籍には被相続人の結婚や離婚、子どもや養子の存在といった身分関係がすべて記録されています。

相続人を確定させるために戸籍を集めるだけでも、知識のない一般の人にはタイヘンな作業です。

相続手続のうち、専門家に任せられるものは任せてしまえば、事務負担を軽減することができます。

戸籍や住民票の取り寄せも司法書士は代行します。

相続人調査でお困りの方は、司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。

養子縁組の解消と相続

2025-09-17

1養子と実子は同じ子ども

①相続人になる人は法律で決まっている

相続が発生したら、親族のうち一定の範囲の人が相続人になります。

だれが相続人になるかについては、民法で決められています。

相続人になる人は次のとおりです。

(2)~(4)の場合、先順位の人がいる場合、後順位の人は相続人になれません。

(1)配偶者は必ず相続人になる

(2)被相続人に子どもがいる場合、子ども

(3)被相続人に子どもがいない場合、親などの直系尊属

(4)被相続人に子どもがいない場合で、かつ、親などの直系尊属が被相続人より先に死亡している場合、兄弟姉妹

②養子縁組で子どもになる

養子縁組は、血縁関係による親子関係の他に、法律上の親子関係を作る制度です。

養子縁組をした場合、養親と養子は親子になります。

被相続人が養親になる養子縁組をした場合、被相続人と養子は親子です。

養子は、養親の子どもです。

③養子は相続人になる

被相続人に子どもがいる場合、子どもは相続人になります。

被相続人に養子がいる場合、養子は被相続人の子どもです。

被相続人の養子は、相続人になります。

被相続人に実子がいる場合、もちろん実子は被相続人の子どもです。

被相続人の実子は、相続人になります。

被相続人の実子がいる場合であっても、養子は相続人です。

被相続人に養子と実子がいる場合、養子と実子が相続人になります。

養子と実子は、同じ子どもだからです。

2生前の養子縁組解消で相続人にならない

①当事者の合意で離縁する

養子縁組とは、血縁関係による親子関係の他に、法律上の親子関係を作る制度です。

養親と養子が合意して市区町村役場に届出をして、養子縁組をします。

養親と養子が合意して、養子縁組を解消することができます。

養親と養子が合意して市区町村役場に届出をして、養子縁組を解消します。

養子縁組を解消することを離縁と言います。

離縁をしたら、親子関係がなくなります。

養子縁組を解消する場合、まず当事者が話し合いによる合意をします。

②離縁調停で離縁する

当事者の一方が養子縁組を解消したいのに、相手方に拒否されることがあります。

当事者で養子縁組を解消する話し合いができない場合、離縁調停を申立てをすることができます。

離縁調停とは、家庭裁判所のアドバイスを受けてする当事者の話し合いです。

当事者だけで話し合いをした場合、感情的になってしまうかもしれません。

家庭裁判所の調停委員に話す場合、少し落ち付いて話ができるでしょう。

家庭裁判所の調停委員から公平な意見を根拠にしてアドバイスがされると、納得できるかもしれません。

調停委員から客観的なアドバイスを受けて、当事者の合意を目指します。

当事者で合意ができた場合、合意内容を文書にします。

調停が成立した場合、合意内容は調停調書に取りまとめます。

調停が成立しても、市区町村役場に届出をする必要があります。

調停は、当事者が合意するために家庭裁判所の助力を得ることができるだけだからです。

③裁判による判決で離縁する

当事者が一方的な主張をした場合、当事者の合意ができないことがあります。

当事者の話し合いによる合意ができない場合、訴訟を提起することができます。

離縁を認める事由がある場合、判決によって離縁することができます。

離縁を認める事由を離縁事由と言います。

離縁事由は、次のとおりです。

(1)他の一方から悪意で遺棄されたとき

(2)他の一方の生死が三年以上明らかでないとき

(3)その他縁組を継続し難い重大な事由があるとき

縁組を継続し難い重大な事由とは、正常な親子関係が破綻して回復の見込みがないことです。

当事者の両方またはどちらかに責任があるときに限られません。

養子縁組の継続を強制しても親子関係の正常化が期待できない場合、離縁事由に該当するとされます。

具体的には、次の事情がある場合、離縁事由があると言えます。

(1)暴行、虐待、重大な侮辱

(2)絶縁、長期間の別居

(3)経済的不和、家業継承などの対立

(4)縁組当事者の夫婦関係の破綻

離縁事由がある場合、判決で離縁することができます。

判決が確定しても、市区町村役場に届出をする必要があります。

②離縁後は相続人にならない

離縁後に相続が発生した場合、元養子は相続人になりません。

元養子は、被相続人の子どもでなくなったからです。

元養親に実子がいる場合、実子はもちろん相続人です。

元養親に実子がいないことがあります。

他の養子がいなければ、子どもがいない場合になります。

被相続人に子どもがいない場合、親などの直系尊属が相続人になります。

(4)被相続人に子どもがいない場合で、かつ、親などの直系尊属が被相続人より先に死亡している場合、兄弟姉妹が相続人になります。

③特別養子の離縁は家庭裁判所の審判

養子には、2種類あります。

普通養子と特別養子です。

一般的に、単に「養子」と言ったら、普通養子を指していることがほとんどです。

普通養子による養子縁組は、当事者の合意で解消することができます。

特別養子では、養子縁組をした後、血縁関係のある実親との親子関係がなくなります。

特別養子の縁組は、同時に実親との親子の縁を切る重大な決定です。

厳格な要件で、家庭裁判所が決定します。

実の父母による著しい虐待がある場合やその他特別の事情がある場合で、かつ、子の利益のため特に必要があるときに、認められます。

特別養子の離縁は、法律に明記された重大な理由があるときだけ、家庭裁判所が決定します。

養親による著しい虐待がある場合やその他特別の事情がある場合など、厳格な要件があてはまるときだけ離縁が認められます。

離縁を認める厳格な要件に「実父母が相当の監護をすることができること」があります。

監護が必要なのは、未成年だけです。

監護が不要になる成年になったら、離縁は認められません。

3死後の養子縁組解消で養親の相続人になる

①養親が死亡しても養子縁組は終了しない

養親が死亡した場合、何もしなければ親子関係は解消されません。

当事者の一方が死亡しても、親子関係は継続します。

養子縁組の効力がある場合、養子は養親だけでなく、養親の親族も扶養する義務があります。

養親が死亡した後も、養親の親族を扶養する義務があります。

養親が死亡した後に、養子縁組を解消することができます。

当事者の一方が死亡した後に養子縁組を解消することを死後離縁と言います。

死後離縁をした場合、親子関係が終了になります。

死後離縁以降は、養親の親族も扶養する義務がなくなります。

養親が死亡しても、死後離縁をするまで養子縁組は継続します。

②死後離縁をしても養親の相続人

死後離縁とは、養親と養子のどちらかが死亡した後に、養子縁組を解消することです。

養親が死亡した後に、死後離縁をすることができます。

死後離縁をした場合、養子は養親を相続することができます。

養親が死亡した時点で、養子は養親の子どもです。

被相続人の子どもは、相続人になります。

相続が発生したとき、養子縁組が有効だったからです。

死後離縁は、死後離縁以降の親子関係を終了する制度です。

親子関係終了の効果は、さかのぼりません。

養親の死亡時は、養子のままです。

被相続人の子どもです。

死後離縁をしても、養親の相続人になります。

③死後離縁後は養親の実子死亡で相続人にならない

死後離縁は、死後離縁以降の親子関係を終了する制度です。

死後離縁以降に、養親の実子が死亡することがあります。

養親の実子に子どもがいない場合で、かつ、親などの直系尊属が被相続人より先に死亡している場合があります。

被相続人に子どもがいない場合で、かつ、親などの直系尊属が被相続人より先に死亡している場合、兄弟姉妹が相続人になります。

養子縁組継続中は、養親と養子は親子です。

養子は、養親の子どもと兄弟姉妹になります。

養親の死亡後で死後離縁をする前に養親の実子が死亡した場合、養子は相続人になります。

死後離縁をした場合、親子関係が終了になります。

養親の子どもと兄弟姉妹でなくなります。

死後離縁をした後に養親の実子が死亡した場合、養子は相続人になりません。

④死後離縁で代襲相続人にならない

死後離縁をすると、死亡した養親の親族との親族関係が終了になります。

死亡した養親の親などの直系尊属が死亡しても、代襲相続人になることはありません。

死亡した養親の兄弟姉妹が死亡しても、代襲相続人になることはありません。

死後離縁をした場合、親子関係が終了になります。

代襲相続ができるのは、被代襲者の直系卑属だけだからです。

④死後離縁は家庭裁判所の許可

養親と養子が合意して、養子縁組を解消することができます。

養親と養子が合意できるのは、養親と養子の両方が生きている間だけです。

養親と養子の一方が死亡した後は、養親と養子が合意することはできません。

養子縁組の当事者の一方が死亡した後、離縁しようとするときは、家庭裁判所の許可が必要です。

死後離縁許可の申立てと言います。

死後離縁許可の申立てができるのは、養子縁組当事者のみです。

死亡した養親の親族が申し立てることはできません。

養親と養子の両方が死亡したら、死後離縁をすることはできません。

養子は15歳未満の場合、離縁した後に法定代理人になる人が代わりに手続きをします。

死後離縁許可の申立先は、申立人の住所地の家庭裁判所です。

家庭裁判所の管轄は、裁判所のホームページで調べることができます。

死後離縁許可の申立書に添付する書類は、次のとおりです。

(1)養親の戸籍謄本

(2)養子の戸籍謄本

書類に問題がなければ、原則として、許可されます。

相続や扶養などで多大な恩恵を受けておきながら扶養を免れたい場合や死亡した養子に幼い子どもがいて離縁すると死亡した養子の子どもに重大な支障がある場合は認められません。

死後離縁許可の申立てをしてから、1~2か月ほどで決定がされます。

死後離縁が認められた場合でも、家庭裁判所から自動的に役所へ連絡されることはありません。

家庭裁判所の手続とは別に、市区町村役場に養子離縁届を提出する必要があります。

4養子がいる相続を司法書士に依頼するメリット

相続税を減らすために、税金の専門家から養子縁組をすすめられることがあります。

税金を減ることだけ強調されて、他のことに考えが及んでいない方も多いです。

税金について考慮することは大切ですが、税金のメリットだけ注目すると後悔することになるでしょう。

死後離縁を考える人の多くは、生前から親族間の関わり合いで疲れ果てています。

養親のためを思って、何も言えないのです。

死亡した養親の相続で、何も対策していないとトラブルが目に見える形になります。

少なくとも、相続財産の分け方で、相続人全員の合意がなくても、相続手続が進められるようにしておきましょう。

被相続人が遺言書を書いておけば、トラブルは大幅に減ります。

内容不備になることの少ない確実な公正証書遺言を作成することをおすすめします。

家族の幸せを思って築いた財産なのに、トラブルのタネになっては悲しいでしょう。

家族のために、公正証書遺言を作成したい方は、司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。

死後離縁をしても養子は相続人

2025-09-17

1死後離縁とは死亡後に養子縁組を解消すること

養子縁組とは、血縁関係による親子関係の他に、法律上の親子関係を作る制度です。

養親と養子が合意して市区町村役場に届出をして、養子縁組をします。

養親と養子が合意して、養子縁組を解消することができます。

養親と養子が合意して市区町村役場に届出をして、養子縁組を解消します。

養親と養子のどちらかが死亡した後に、養子縁組を解消することができます。

死後離縁とは、養親と養子のどちらかが死亡した後に、養子縁組を解消することです。

養子縁組を解消したら、亡くなった養親や亡くなった養子の親族との親族関係が終了になります。

養親と養子の一方が死亡しても、何もしなければ養子縁組は終了しません。

死後離縁の手続をしてはじめて、親族関係が終了になります。

2死後離縁をしても養子は相続人

死後離縁とは、養親と養子のどちらかが死亡した後に、養子縁組を解消することです。

養親が死亡した後に、死後離縁をすることができます。

死後離縁をした場合、養子は養親を相続することができます。

養親が死亡した時点で、養子は養親の子どもです。

被相続人の子どもは、相続人になります。

相続が発生したとき、養子縁組が有効だったからです。

死後離縁をしたからと言って、さかのぼって養子でなくなるわけではありません。

相続が発生した場合、被相続人のものは相続人全員の共有財産になります。

相続財産は、相続人全員で、分け方の合意をする必要があります。

死後離縁をしても、養子は相続人です。

死後離縁をした養子を含めずに、他の相続人だけで分け方の合意をしても意味がありません。

死後離縁をした養子を含めない場合、相続人全員でないからです。

養子が相続を希望しない場合、相続放棄をする必要があります。

死後離縁をした場合でも、被相続人のマイナスの財産を相続することになります。

死後離縁をした養子は、養親の相続人だからです。

相続手続が終わった後に、死後離縁をすることができます。

死後離縁をした場合でも、養親から受け継いだ財産を返す必要はありません。

死後離縁をしたからと言って、さかのぼって養子でなくなるわけではないからです。

3死後離縁の効果

①死亡した養親の親族を扶養する義務がなくなる

離縁をした場合、養子縁組を解消します。

死亡した養親の親族との親族関係が終了になります。

法律上、直系血族と兄弟姉妹は互いに扶養する義務があります。

養子縁組をすると、養親と養子の間に法律上の親子関係が作られます。

養子縁組の効力がある場合、養子は養親だけでなく、養親の親族も扶養する義務があります。

養親と養子の一方が死亡しても、何もしなければ養子縁組は終了しません。

何もしなければ、養親の親族を扶養する義務があることには変わりはありません。

死後離縁をした場合、死亡した養親の親族との親族関係が終了になります。

死亡した養親の親族との親族関係が終了した場合、死亡した養親の親族を扶養する義務がなくなります。

②死亡した養親の親族に相続が発生しても相続しない

養子縁組を解消した場合、死亡した養親の親族との親族関係が終了になります。

死亡した養親の親族が死亡しても、相続人になることはありません。

死亡した養親の親族のプラスの財産もマイナスの財産も受け継ぐことがなくなります。

相続が発生した場合、被相続人のものは相続人全員の共有財産になります。

相続財産は、相続人全員で、分け方の合意をする必要があります。

死亡した養親の親族の相続財産の分け方について、話し合いに参加する必要もなくなります。

死亡した養親の親族が死亡しても、相続人にならないからです。

死亡した養親の実子や養親の兄弟姉妹と折り合いがよくない人もいるでしょう。

養親が死亡した後にまで関わり合いを持ちたくないと思う人もいます。

死後離縁をすると、扶養義務がなくなり、相続することもなくなります。

折り合いがよくない養親の親族と関わりを持つ必要がなくなります。

死亡した養親の親族が経済的に困ったときも、体が不自由になって介護などが必要になったときも協力する必要がありません。

死亡した養親の親族を相続することもなくなります。

親族間のトラブルから、逃れることができます。

③養子縁組前の氏に変更

養子縁組を解消した場合、原則として、養子は養子縁組前の氏に戻ります。

養子縁組から7年以上経っている場合、養子縁組中の氏をそのまま使うことができます。

養子縁組中の氏を使う場合、3か月以内に届出をする必要があります。

養子縁組中の氏を使う届出を離縁の際に称していた氏を称する届出と言います。

4死後離縁には家庭裁判所の許可が必要

養親と養子が合意して、養子縁組を解消することができます。

養親と養子が合意できるのは、養親と養子の両方が生きている間だけです。

養親と養子の一方が死亡した後は、養親と養子が合意することはできません。

養子縁組の当事者の一方が死亡した後、離縁しようとするときは、家庭裁判所の許可が必要です。

死後離縁許可の申立てと言います。

死後離縁許可の申立てができるのは、養子縁組当事者のみです。

死亡した養親の親族が申し立てることはできません。

養親と養子の両方が死亡したら、死後離縁をすることはできません。

養子は15歳未満の場合、離縁した後に法定代理人になる人が代わりに手続きをします。

死後離縁許可の申立先は、申立人の住所地の家庭裁判所です。

家庭裁判所の管轄は、裁判所のホームページで調べることができます。

死後離縁許可の申立書に添付する書類は、次のとおりです。

①養親の戸籍謄本

②養子の戸籍謄本

書類に問題がなければ、原則として、許可されます。

相続や扶養などで多大な恩恵を受けておきながら扶養を免れたい場合や死亡した養子に幼い子どもがいて離縁すると死亡した養子の子どもに重大な支障がある場合は認められません。

死後離縁許可の申立てをしてから、1~2か月ほどで決定がされます。

5養子離縁届で戸籍に反映

①市区町村役場へ養子離縁届の提出

死後離縁が認められた場合でも、家庭裁判所から自動的に市区町村役場へ連絡されることはありません。

家庭裁判所の手続とは別に、市区町村役場に養子離縁届を提出する必要があります。

死後離縁許可は、審判という形式で行われます。

審判は、確定する必要があります。

審判確定証明書を家庭裁判所に請求しておきましょう。

養子離縁届に添付する書類は、次のとおりです。

(1)死後離縁審判決定書謄本

(2)審判確定証明書

(3)本人確認書類

届出には、証人2人必要です。

養子離縁届は、届出人が署名するだけで押印は任意です。

市区町村役場へ養子離縁届を提出することで、戸籍に反映します。

②養子縁組7年で離縁の際に称していた氏を称する届出を提出できる

養子縁組を解消すると、原則として、養子は養子縁組前の氏に戻ります。

養子縁組から7年以上経っている場合、養子縁組中の氏をそのまま使うことができます。

死後離縁後も養子縁組中の氏をそのまま使うことを希望する場合は、養子離縁届と一緒に、離縁の際に称していた氏を称する届出も提出します。

6特別養子が成年になったら離縁はできない

養子には、2種類あります。

普通養子と特別養子です。

一般的に、単に「養子」と言ったら、普通養子を指していることがほとんどです。

特別養子では、養子縁組をした後、血縁関係のある実親との親子関係がなくなります。

特別養子の縁組は、同時に実親との親子の縁を切る重大な決定です。

厳格な要件で、家庭裁判所が決定します。

実の父母による著しい虐待がある場合やその他特別の事情がある場合で、かつ、子の利益のため特に必要があるときに、認められます。

特別養子の離縁は、法律に明記された重大な理由があるときだけ、家庭裁判所が決定します。

養親による著しい虐待がある場合やその他特別の事情がある場合など、厳格な要件があてはまるときだけ離縁が認められます。

離縁を認める厳格な要件に「実父母が相当の監護をすることができること」があります。

監護が必要なのは、未成年だけです。

監護が不要になる成年になったら、離縁は認められません。

7養子がいる相続を司法書士に依頼するメリット

相続税を減らすために、税金の専門家から養子縁組をすすめられることがあります。

税金を減ることだけ強調されて、他のことに考えが及んでいない方も多いです。

税金について考慮することは大切ですが、税金のメリットだけ注目すると後悔することになるでしょう。

死後離縁を考える人の多くは、生前から親族間の関わり合いで疲れ果てています。

養親のためを思って、何も言えないのです。

死亡した養親の相続で、何も対策していないとトラブルが目に見える形になります。

少なくとも、相続財産の分け方で、相続人全員の合意がなくても、相続手続が進められるようにしておきましょう。

被相続人が遺言書を書いておけば、トラブルは大幅に減ります。

内容不備になることの少ない確実な公正証書遺言を作成することをおすすめします。

家族の幸せを思って築いた財産なのに、トラブルのタネになっては悲しいでしょう。

家族のために、公正証書遺言を作成したい方は、司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。

代襲相続の範囲とトラブル回避方法

2025-09-10

1代襲相続が発生する条件

条件①被代襲者が相続人

相続人になる人は、法律で決められています。

代襲相続とは、相続人になるはずだった人が死亡などしたときに相続人になるはずだった人の子どもなどが相続する制度です。

被代襲者とは、相続人になるはずだった人です。

被代襲者が相続人である場合、代襲相続が発生します。

条件②被代襲者が死亡・廃除・欠格

代襲相続が発生する代表例は、被代襲者が死亡したときです。

廃除とは、被相続人の意思で相続人の資格を奪う制度です。

虐待・重大な侮辱・著しい非行があった場合に限り、家庭裁判所の判断で廃除されます。

欠格とは、法律で決められた重大な非行があったときに相続人の資格を奪う制度です。

例えば、被相続人を故意に殺害したり、遺言書を偽造隠匿した場合、欠格になります。

廃除や欠格で相続人の資格が奪われた場合、代襲相続が発生します。

条件③代襲者は被代襲者の直系卑属

直系卑属とは、自分より後の世代の直系の血族です。

具体的には、子ども、孫、曽孫などの子孫が該当します。

養子縁組をすると、養子は卑属になります。

条件④被相続人と代襲者に親族関係

代襲相続が発生するのは、代襲者と被相続人に親族関係がある場合に限られます。

養子縁組をすると、養親と養子に親族関係が作られます。

養親と養子の子どもには、親族関係が作られません。

養子縁組後に出生した養子の子どもは、親族関係が作られます。

2代襲相続の範囲

①子どもの代襲相続の範囲

(1)子どもの死亡で孫が代襲相続

被相続人に子どもがいる場合、子どもは相続人になります。

相続人になるはずだったのに子どもが先に死亡した場合、子どもの子どもが代襲相続をします。

一部の子どもが死亡していても、他の子どもが健在であることがあります。

他の子どもが健在でも、代襲相続は発生します。

代襲相続人は、無視できません。

(2)子どもの代襲相続はどこまでも続く

代襲相続するはずだったのに孫が先に死亡した場合、孫の子どもが再代襲相続をします。

子どもの代襲相続は、どこまでも続きます。

相続が発生した時点で存在していれば、曽孫でも玄孫でも代襲相続をすることができます。

子ども代襲相続に、制限はないからです。

(3)養子の子どもが代襲相続できないケース

被相続人が養子縁組をすると、養子は相続人になります。

養子は、養親の子どもだからです。

相続人になるはずだったのに養子が先に死亡した場合、代襲相続が発生します。

養子の子どもは、代襲相続ができるケースとできないケースがあります。

代襲相続が発生するのは、被相続人と代襲者に親族関係があることが条件だからです。

被相続人と養子の子どもに親族関係がある場合、代襲相続ができます。

被相続人と養子の子どもに親族関係があるとは、養子縁組後に子どもが出生したケースです。

養子縁組前に子どもが出生したケースでは、代襲相続ができません。

②親などの直系尊属は代襲相続ができない

(1)近い世代の人が相続人

被相続人に子どもがいない場合、親などの直系尊属が相続人になります。

直系尊属とは、自分より前の世代の直系の血族です。

具体的には、親、祖父母、曽祖父母などの先祖が該当します。

世代が異なる直系尊属が複数いる場合、近い世代の人が相続人になります。

例えば、父母と祖父母がいる場合、近い世代の父母が相続人になります。

(2)祖父母が相続できるが代襲相続ではない

親などの直系尊属は、代襲相続ができません。

例えば、父母が先に死亡している場合、祖父母が相続人になることがあります。

祖父母が相続人になるのは、代襲相続ではありません。

祖父母は、親などの直系尊属だから相続人になります。

③兄弟姉妹の代襲相続の範囲

(1)半血兄弟が被代襲者になる

被相続人に子どもがいない場合で、かつ、親などの直系尊属が被相続人より先に死亡している場合、兄弟姉妹が相続人になります。

兄弟姉妹が先に死亡すると、代襲相続が発生します。

兄弟姉妹とは、父母の両方が同じ兄弟姉妹だけを想像するかもしれません。

父母の一方が同じ兄弟姉妹も、相続人になります。

半血兄弟とは、父母の一方が同じ兄弟姉妹です。

半血兄弟が先に死亡すると、代襲相続が発生します。

(2)親の養子が被代襲者

被相続人の親が第三者を養子にする養子縁組をすることがあります。

養子は、養親の子どもです。

被相続人の親と養子縁組をすると、被相続人と兄弟姉妹になります。

被相続人の親の養子が先に死亡すると、被代襲者になります。

(3)兄弟姉妹の代襲相続は一代限り

兄弟姉妹の代襲相続は、一代限りです。

代襲相続するはずだったのに甥姪が先に死亡した場合、甥姪の子どもが再代襲相続をしません。

子どもの代襲相続人は、制限がありません。

代襲相続するはずだったのに孫が先に死亡した場合、孫の子どもが再代襲相続をします。

被相続人と甥姪は、関係が薄いことが多いでしょう。

甥姪の子どもに代襲相続を認めない趣旨は、不合理に遠い関係に相続させない合理性にあります。

(4)親の養子の子どもが代襲相続できないケース

被相続人の親が養子縁組をすると、養子は兄弟姉妹になります。

親の養子は、兄弟姉妹だからです。

相続人になるはずだったのに養子が先に死亡した場合、代襲相続が発生します。

養子の子どもは、代襲相続ができるケースとできないケースがあります。

代襲相続が発生するのは、被相続人と代襲者に親族関係があることが条件だからです。

被相続人と養子の子どもに親族関係がある場合、代襲相続ができます。

被相続人と養子の子どもに親族関係があるとは、養子縁組後に子どもが出生したケースです。

養子縁組前に子どもが出生したケースでは、代襲相続ができません。

④配偶者は代襲相続できない

(1)配偶者は代襲相続人にならない

代襲者は被代襲者の直系卑属であることが条件です。

被相続人の子どもが先に死亡した場合、代襲相続が発生します。

代襲者は、死亡した子どもの子どもなど直系卑属のみです。

死亡した子どもの配偶者は、代襲相続できません。

(2)配偶者は被代襲者にならない

被相続人の配偶者は、相続人になります。

相続人になるはずだったのに配偶者が先に死亡した場合、代襲相続が発生しません。

配偶者に連れ子がいても、連れ子は相続人になりません。

配偶者に連れ子は、被相続人と親族関係がありません。

⑤相続放棄をしても代襲相続は発生しない

相続放棄をしたら、はじめから相続人でなくなります。

相続人になるはずだったのに相続放棄をした場合、代襲相続が発生しません。

相続放棄は、代襲相続の発生原因ではないからです。

3代襲相続で起きやすいトラブルと回避方法

トラブル①代襲相続人を無視して遺産分割協議

相続が発生したら、相続財産は相続人全員の共有財産です。

相続財産の分け方は、相続人全員の合意で決定します。

一部の相続人を含めずに合意しても、無効の合意です。

代襲相続人を無視して遺産分割協議をすると、トラブルに発展します。

トラブルの対処法は、再協議を求めることです。

代襲相続人を含めず合意しても、相続手続を進めることができないからです。

トラブルの防止法は、被相続人が生前に遺言書を作成することです。

遺言書があれば、遺産分割協議をせずに遺産分割をすることができるからです。

トラブル②不利な遺産分割協議書に押印を強要

代襲相続人は、他の相続人より若い世代であることが多いでしょう。

代襲相続人との力関係で、権利主張がしにくいことがあります。

代襲相続人に不利な遺産分割協議書に押印を要求すると、トラブルに発展します。

トラブルの対処法は、安易に押印をしないことです。

安易に押印すると、覆すことは困難になるからです。

トラブルの防止法は、被相続人が生前に遺言書を作成することです。

遺言書があれば、遺産分割協議をせずに遺産分割をすることができるからです。

トラブル③相続財産を開示してもらえない

被相続人の財産状況は、家族であっても詳しく知らないことがあります。

被相続人と同居していた相続人がいる場合、相続財産を開示しないことがあります。

相続財産の全容が分からないと、疑心暗鬼になります。

トラブルの対処法は、各相続人が独自で調査することです。

例えば、通帳を開示しなくても、各相続人は金融機関に照会することができます。

トラブルの防止法は、被相続人が生前に財産目録を作成することです。

トラブル④相続放棄の強要

代襲相続が発生している場合、相続人間で情報や感情の共有が乏しいことがあります。

相続財産を独り占めしたい、下の世代に渡したくないと、考えていることがあります。

上の世代の人の言いなりになって当然などと考えていると、トラブルに発展します。

トラブルの対処法は、強要の証拠を確保して法的対応を取ることです。

トラブルの防止法は、相続放棄の制度をよく理解してもらうことです。

相続人は、相続を単純承認するか相続放棄をするか判断することができます。

他の相続人が強要できるものではありません。

トラブル⑤代襲相続人が非協力的

被相続人や被相続人の家族と代襲相続人の交流が少ないことがあります。

相続手続は手間と時間がかかるから、関与したくないかもしれません。

代襲相続人が相続手続に非協力的だと、トラブルに発展します。

トラブルの対処法は、家庭裁判所の調停を申し立てることです。

相続手続に関与したくない相続人は、相続放棄をするのが有効です。

家庭裁判所で相続放棄が認められると、はじめから相続人でなくなるからです。

トラブルの防止法は、被相続人が生前に遺言書を作成することです。

遺言書があれば、遺産分割協議をせずに遺産分割をすることができるからです。

トラブル⑥借金を知らずに相続してしまう

相続財産には、プラスの財産とマイナスの財産があります。

相続人は、プラスの財産とマイナスの財産を相続します。

被相続人が莫大な借金を抱えているのに気づかず、相続してしまうことがあります。

トラブルの対処法は、家庭裁判所で相続放棄をすることです。

トラブルの防止法は、事前に債務を調査することです。

安易に相続財産に手を付けると、相続放棄をすることができなくなるからです。

4代襲相続がある相続を司法書士に依頼するメリット

相続が発生すると、被相続人のものは相続財産になります。

相続財産は相続人全員の共有財産ですから、分け方を決めるためには相続人全員の合意が必要です。

相続人の一部を含めない合意や相続人でない人を含めた合意は無効になります。

相続財産の分け方の話し合いの前提として、相続人の確定はとても重要です。

代襲相続や数次相続が発生している場合、一挙に難易度が上がります。

インターネットが普及したことで、多くの情報を手軽に得ることができるようになりました。

簡単に情報発信ができるようになったこともあって、適切でない情報も有益な情報もたくさん出回っています。

相続の専門家と名乗っていながら、適切でないアドバイスを見かけることも度々あります。

代襲相続や数次相続が発生している場合、信頼できる専門家のサポートが欠かせません。

スムーズに相続手続を行いたい方は、司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。

特別縁故者が受け取れる財産

2025-08-25

1特別縁故者に相続財産が分与される

①相続人不存在で相続財産は国庫帰属

天涯孤独の人に、相続人はいません。

相続人がいても、相続放棄をすることがあります。

家庭裁判所で相続放棄が認められると、はじめから相続人でなくなります。

相続人がまったくいない場合、相続財産は国庫に帰属します。

②特別縁故者が受け取れる財産が相続財産を受け取れる

特別縁故者とは、被相続人に特別な縁故があった人です。

相続財産を国庫に帰属させるより、特別な関係にあった人に分与した方が適切なことがあります。

相続人不存在である場合、家庭裁判所に対して特別縁故者財産分与の申立てをすることができます。

家庭裁判所に特別縁故者と認められれば、相続財産を分与されます。

③分与される財産は家庭裁判所の判断

相続財産を引き継ぐためには、家庭裁判所に特別縁故者と認められることが重要です。

主観的に特別縁故者であると主張するだけでは、相続財産を引き継ぐことはできないからです。

どの財産をいくら引き継ぐのか、家庭裁判所が決定します。

特別縁故者に認められても、相続財産全額が分与されない可能性があります。

濃密な縁故には高額な財産が、薄い縁故にはわずかな財産が分与されるからです。

濃密な縁故があると主張しても充分な証拠を準備できなければ、家庭裁判所は認めてくれないでしょう。

特別縁故者であるか、家庭裁判所が慎重に判断します。

特別縁故者に分与される財産は、家庭裁判所が慎重に判断します。

④特別縁故者制度の意義

(1)被相続人の意思の尊重

被相続人が生前に親密な関係を築いた人が存在することがあります。

仮に遺言書を作成すれば、親密な関係の人に財産を引き継ぐでしょう。

被相続人の潜在的意思を尊重して、相続財産を分与します。

(2)社会的配慮・人道的配慮

事実婚・内縁の配偶者や長年療養看護に尽力した人は、実質的に被相続人をサポートしていたと言えます。

実質的に被相続人をサポートしていた人に対して、生活保障の役割を果たします。

社会的配慮・人道的配慮から、相続財産を分与します。

(3)国庫帰属を抑制

特別縁故者制度によって、相続財産の国庫帰属が抑制されます。

国庫に帰属させるより、国民感情に添った柔軟な分配をした方が社会的に有益と言えます。

国庫帰属を抑制するため、相続財産を分与します。

2特別縁故者が受け取れる財産

①縁故の濃さで一部財産の分与

(1)縁故の濃淡で分与金額に差がつく

特別縁故者は、複数の人が認められることがあります。

各特別縁故者に分与する財産は、家庭裁判所が判断します。

縁故の濃淡で、分与金額に差がつきます。

東京家庭裁判所平成24年4月20日審判のケースを紹介します。

相続財産は、総額1億4000万円でした。

申立人1人目は、被相続人の甥の妻です。

被相続人の甥の生前に、親密な交流があると認められました。

被相続人の甥の死亡後は、疎遠になりました。

被相続人が自分が死亡した後は財産の管理処分を甥に任せると、伝えたことが評価されました。

裁判所は、縁故の程度が比較的に薄いと評価しました。

被相続人の甥の妻は特別縁故者に認められ、500万円のみ分与されました。

申立人2人目は、被相続人の妻の従妹です。

被相続人が死亡する7年前から自宅の鍵を預かり、高い頻度で自宅を訪問し家事をしました。

歩行困難になった被相続人の妻の世話を続けた点や被相続人とともに妻の葬儀を行った点が評価されました。

裁判所は、通常の親戚付き合いを超えた親密な関係と評価しました。

被相続人の妻の従妹は特別縁故者に認められ、2500万円分与されました。

特別縁故者に認められたものの、縁故の濃淡で分与金額に差がつきました。

(2)生前の交流が限定的で一部分与

東京高等裁判所平成26年5月21日決定のケースを紹介します。

相続財産は、総額3億7875万円でした。

申立人は、被相続人の従兄です。

被相続人は自宅に引きこもりがちで、周囲と円滑な交際が難しくなっていました。

被相続人宅の害虫駆除作業や建物の修理など、重要な対外的行為をしました。

民生委員や近隣と連絡を取り、時々被相続人の安否確認をしました。

裁判所は、縁故の程度が比較的に薄いと評価しました。

被相続人の従兄は特別縁故者に認められ、300万円分与されました。

②成年後見人に一部分与

大阪高等裁判所平成20年10月24日決定のケースを紹介します。

相続財産は、総額6283万円でした。

申立人は、被相続人の叔母の孫とその配偶者です。

被相続人の叔母の孫の配偶者は、被相続人の成年後見人でした。

申立人2人は遠距離にも関わらず、多数回老人ホームや入院先を訪問しました。

親身になって療養看護や財産管理に尽くし、相当の費用を負担して葬儀や供養を行いました。

裁判所は、成年後見人の一般的職務を超える親密な関係と評価しました。

被相続人の叔母の孫とその配偶者は特別縁故者に認められ、それぞれ500万円分与されました。

③薄い縁故で分与が認められない

(1)従姉の養子に薄い縁故で分与なし

東京高等裁判所平成26年1月15日決定のケースを紹介します。

申立人は、被相続人の従姉の養子です。

被相続人とは、本家と分家として親戚付き合いがありました。

被相続人の葬儀や供養をするため、多額の支出をした主張がありました。

被相続人宅の庭木や草木の伐採や掃除をし、継続していく意思がありました。

裁判所は、生前の交流が比較的に薄いと評価しました。

被相続人の従姉の養子は特別縁故者に認められず、分与はされませんでした。

(2)いとこに通常の交流のみで分与なし

東京高等裁判所平成27年2月27日決定のケースを紹介します。

申立人は、被相続人のいとこ5名です。

申立人は、被相続人の親族です。

血縁関係があるものの、生活や日常的継続的な交流は薄いものでした。

被相続人の生前に、特段の援助や療養看護など密接な関係は認められませんでした。

裁判所は、特別縁故者と認める客観的事情や裏付けとなる証拠は充分でないと評価しました。

被相続人のいとこ5名は特別縁故者に認められず、分与はされませんでした。

④死後の縁故のみで分与なし

(1)遠縁の親族に生前の交流なしで分与なし

鹿児島家庭裁判所昭和45年1月20日審判のケースを紹介します。

申立人は、被相続人の遠縁の親族です。

被相続人と生前の交流がほとんどありませんでした。

死後に葬儀を主宰し、財産管理を行いました。

裁判所は、生前の縁故がほとんどないと評価しました。

死後の縁故のみで、特別縁故者と認められないと判断しました。

遠縁の親族は特別縁故者に認められず、分与はされませんでした。

(2)遠縁の親族に生前の縁故を補強して一部分与

大阪高等裁判所平成20年10月24日決定のケースを紹介します。

申立人は、被相続人の遠縁の親族です。

被相続人の生前に、療養看護を尽くし財産管理をしました。

そのうえで死後に葬儀を主宰し、財産管理を行いました。

裁判所は、療養看護や財産の管理に加え死後の供養についても充分に斟酌すると判断しました。

遠縁の親族は特別縁故者に認められ、500万円分与されました。

3特別縁故者に認められる条件

①生計を同じくしていた人

例えば、事実婚・内縁の配偶者は、相続人ではありません。

事実婚・内縁の配偶者は、被相続人と一緒に暮らして生計を同じくしていたでしょう。

相続人不存在である場合、特別縁故者に認められる可能性があります。

例えば、配偶者の連れ子は被相続人の子どもではないから、相続人ではありません。

連れ子が相続人と一緒に暮らして、生計を同じくしていることがあります。

相続人不存在である場合、特別縁故者に認められる可能性があります。

特別縁故者に認められるか、家庭裁判所が判断します。

家庭裁判所は当事者の主張だけでなく、客観的な証拠を重視します。

被相続人と一緒に暮らして生計を同じくしていた場合、同一の住民票があるでしょう。

事実婚・内縁の配偶者は、住民票に「夫(未届)」「妻(未届)」と記載してもらえます。

長年同居していたことも、住民票で証明することができます。

住民票は公的書類だから、有力な証拠になります。

長年同居して生計を同じくしている場合、特別な縁故があったと認められやすくなるでしょう。

②被相続人の療養看護につとめた人

療養看護につとめた人とは、被相続人の身の回りの世話を献身的にした人です。

例えば、子どもの配偶者やいとこが被相続人の療養看護につとめていることがあります。

親族として助け合いをする以上に献身的に療養看護に努めていた場合、特別縁故者に認められる可能性があります。

例えば、11年間にわたり被相続人を我が子同様に看護養育し病気となってからも療養看護に努めた叔母は、特別縁故者として認められました。

療養看護につとめたことは、次の書類で証明することができます。

(1)医療費や介護費の領収書

(2)療養看護のための交通費の領収書

(3)被相続人と頻繁に交流していたことが分かる手紙、写真、メール、日記

(4)献身的に療養看護につとめていたことが分かる手紙、写真、メール

証拠は長期間に渡って複数回準備できると、親密な関係が認められやすいでしょう。

一時的な縁故や短期間の関係は、認められにくい傾向があるからです。

領収書は、患者の氏名、期間、金額を確認します。

手紙、写真、メール、日記などは、日付が入っていることを確認します。

③その他被相続人と特別な関係にあった人

特別縁故者とは、被相続人に特別な縁故があった人です。

遺言書がなくても、その人に相続財産を受け継がせるのが適当と考えられる特別な関係がある人は特別縁故者と認められる可能性があります。

例えば、被相続人が生前設立し発展に尽力してきた法人があることがあります。

被相続人が心血注いできた法人は、相続財産を受け継がせるのに適切と考えられるでしょう。

被相続人と特別な関係にあったと認められた場合、特別縁故者に認められることがあります。

被相続人と特別な関係にあったことは、次の書類で証明することができます。

(1)被相続人と親密な関係にあったことが分かる手紙、写真、メール、日記

(2)被相続人と頻繁に交流していたことが分かる手紙、写真、メール、日記

(3)被相続人が相続財産を引き継がせる意思があったことが分かる書類

家庭裁判所は証拠の真実性、継続性、被相続人との関係の深さを重視しています。

4特別縁故者が受け取る財産に相続税

①基礎控除額は3000万円のみ

相続財産の規模が一定以上である場合、相続税の対象になります。

相続税には、基礎控除があるからです。

基礎控除額は、次の計算式で求めることができます。

基礎控除額=3000万円+600万円×相続人の人数

特別縁故者に相続財産が分与される場合、相続人は不存在のはずです。

基礎控除額は、3000万円のみです。

②相続税2割加算の対象

被相続人の配偶者や2親等内の血族以外の人は、相続税2割加算の対象になります。

被相続人と関係が深く生活上のつながりが強い人に、税制上の優遇があるからです。

特別縁故者が相続財産を引き継ぐ場合、相続税が2割加算されます。

③分与の審判確定から10か月以内に申告納税

相続税は、被相続人の死亡を知った翌日から10か月以内に申告納税をするのが原則です。

特別縁故者が申告納税をする場合、相続財産分与の審判確定した翌日から起算します。

審判確定は、確定証明書で確認することができます。

5特別縁故者に対する相続財産分与の申立て

①相続人不存在確定から3か月以内に申立て

特別縁故者に対する相続財産分与の申立てができるのは、相続人不存在確定から3か月です。

相続財産管理人が選任されたら、家庭裁判所が相続人捜索の公告を出します。

相続人捜索の公告期間は、6か月です。

相続人不存在確定とは、相続人捜索の公告期間6か月が満了したときです。

相続人不存在確定から3か月経過してしまうと、申立てを受付けてもらえません。

相続人不存在が確定しても、だれも知らせてくれません。

②申立てに必要な書類

特別縁故者に対する相続財産分与の申立書に添付する書類は、次のとおりです。

(1)申立人の戸籍謄本

(2)被相続人の戸籍謄本

上記必要書類の他に、濃密な縁故があったことを証明する客観的証拠を添付します。

③家庭裁判所の裁量が大きい

特別縁故者に認められるか認められないか、家庭裁判所が判断します。

分与される財産は、家庭裁判所が判断します。

家庭裁判所に、大きな裁量が認められています。

主観的に特別縁故者であると主張しても充分な客観的証拠が準備できないと、特別縁故者に認められないでしょう。

特別縁故者に認められても充分な客観的証拠が準備できないと、少額の財産だけ分与されるでしょう。

分与が認められなかった場合、救済措置はありません。

6特別縁故者に期待するより遺言書作成で遺贈

特別縁故者に認められるためには、想像以上に高いハードルがあります。

遺言書を作成して、自分の死後だれに財産を引き継がせるか自由に決めることができます。

遺贈とは、相続人や相続人以外の人に財産を引き継がせることです。

家庭裁判所には大きな裁量があるから、特別縁故者に認められるか不確実です。

遺言書を作成しておけば、確実に遺贈することができます。

遺言執行者を指名すれば、いっそう確実になるでしょう。

特別縁故者に期待するより、遺言書を作成して遺贈がおすすめです。

7遺言書作成を司法書士に依頼するメリット

遺言書は、被相続人の意思を示すものです。

自分が死んだことを考えたくないという気持ちがあると、抵抗したくなるかもしれません。

民法に遺言書を作ることができるのは、15歳以上と定められています。

遺言書を作成すれば、法定相続人や法定相続人以外の人に財産を引き継ぐことができます。

遺言書があって遺言執行者がいれば、相続手続はおまかせできます。

遺言者にとっても財産を受け取る人にとっても、安心です。

相続人がいない場合、想像以上に手間と時間がかかります。

手間と時間をかけても、確実に財産を引き継ぐことができるわけではありません。

お互いを思いやる方は、遺言書作成を司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。

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