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遺言書で臓器提供はできない
1遺言書で臓器提供はできない
①遺言事項は法律で決められている
日本で臓器移植法が施行されたのは、1997年です。
施行されてから、20年以上経過しています。
臓器移植を希望する人は年々増えていますが、臓器移植の件数は多くはありません。
臓器移植とは、臓器の機能が低下した人に他の人の臓器と取り換えて機能回復を図る医療です。
第三者の善意による臓器提供がなければ、臓器移植をすることはできません。
自分が死亡した後に、最後に社会貢献をしたいと考えることがあるでしょう。
最後の社会貢献として、臓器提供をして社会に役に立ちたいという希望があるかもしれません。
臓器提供をするために遺言書を作成するのは、意味がありません。
遺言書は、厳格な書き方ルールがあります。
遺言書に書くことで法律上意味がある事項は、法律で決められています。
遺言書に書くことで法律上意味がある事項を遺言事項と言います。
遺言事項は、次のとおりです。
(1)財産に関すること
(2)身分に関すること
(3)遺言執行に関すること
(4)それ以外のこと
臓器提供に関することは、遺言事項にありません。
遺言事項は、法律で決められています。
②臓器提供の希望は付言事項
遺言書には、法律上意味がないことを書くことができます。
遺言事項以外のことは、付言事項と言います。
付言事項に、法律上の意味はありません。
例えば、家族への感謝の気持ちや家族仲良く幸せに暮らして欲しいなどの気持ちです。
家族仲良く幸せに暮らして欲しい気持ちに、法的な拘束力はもちろんありません。
臓器提供の希望は、付言事項に過ぎません。
付言事項に、法律上の拘束力はありません。
遺言書に臓器提供の希望を書くことができます。
臓器提供の希望を書いても、法的効力はありません。
臓器提供の希望は、付言事項です。
③遺言書は火葬後に開封される
遺言書は、プライベートな内容が書かれています。
遺言者本人が積極的に家族に見せることは、あまりありません。
家族にとっても、遠慮して見ないことが多いでしょう。
封筒に入った自筆証書遺言は、相続発生後に家庭裁判所で開封してもらいます。
法務局保管の自筆証書遺言は、相続発生後に遺言書保管事実証明書や遺言書情報証明書の発行請求をすることができます。
公正証書遺言は、相続発生後に相続人が謄本請求をすることができます。
遺言者の死亡直後は、家族が遺言書の内容を知らないことが大部分でしょう。
遺言書の内容を知らないまま、火葬されます。
葬儀などがひと段落して落ち着いてから、相続手続の準備を開始します。
家族が遺言書の有無を調べるのは、死亡後1か月以上経過していることが多いでしょう。
遺言書に臓器提供を希望すると書いても、死亡直後に家族は気づきません。
家族から臓器提供を希望することを医師に伝えてもらうことができません。
火葬した後で遺言書の内容を知ったら、家族はショックを受けるでしょう。
本人の希望をかなえてあげることができなかったからです。
確かに、遺言書に臓器提供の希望を書くことができます。
遺言書に臓器提供の希望を書いても、臓器提供ができないことがほとんどです。
遺言書を見た家族は、希望をかなえてあげられなかったと後悔します。
遺言書に臓器提供の希望を書くことは、おすすめできません。
2臓器提供の意思表示の方法
①健康保険証・運転免許証・マイナンバーカードに記入

臓器移植法が改正され、健康保険証・運転免許証に意思表示欄が設置されました。
マイナンバーカードにも、意思表示欄が設置されています。
健康保険証・運転免許証・マイナンバーカードに記入することで、臓器提供の意思表示をすることができます。

健康保険証・運転免許証・マイナンバーカードに記入することも記入しないこともできます。
意思表示は、任意だからです。
意思表示欄をよく見ると、「臓器を提供しません」という項目があります。

臓器提供する意思表示も希望しない意思表示もすることができます。
臓器提供する意思表示も希望しない意思表示も、本人の意思表示です。
本人の意思表示が尊重されます。
健康保険証・運転免許証・マイナンバーカードは、身分証明書として提示することがあります。
意思表示の内容を第三者に知られたくないことがあるでしょう。
意思表示欄は、保護シールを貼って人目に触れなくすることができます。
健康保険証・運転免許証・マイナンバーカードに記入することで、臓器提供の意思表示をすることができます。
②インターネットで意思登録
日本臓器移植ネットワークのホームページから臓器提供の意思表示をすることができます。
インターネットで意思登録をしておくと、臓器提供に関する意思が確実に確認することができます。
インターネットで意思登録をすると、意思登録カードが届きます。
臓器提供の意思が変わったら、意思を変更することができます。
意思登録を削除したくなったら、意思登録を削除することができます。
臓器提供に関する本人の意思表示が尊重されるからです。
健康保険証・運転免許証・マイナンバーカードを持ち歩けなくても、インターネットで意思登録をすることができます。
③臓器提供意思表示カードに記入

臓器提供意思表示カードは、次の場所に設置してあります。
・都道府県市区町村役場窓口
・保健所
・運転免許試験場(センター)
・一部のコンビニエンスストア等

入手した臓器提供意思表示カードに記入して携帯します。
臓器提供意思表示カードに記入することで、意思表示をすることができます。
3臓器提供の希望は本人の意思と家族の同意が必要
①本人の意思は尊重される
臓器提供においては、本人の意思が尊重されます。
臓器提供をする意思も臓器提供をしない意思も、本人の意思です。
本人の意思が尊重されます。
本人の意思だけでなく、家族の承諾が必要になります。
本人が臓器提供を拒否している場合、家族が臓器提供をすることはできません。
本人の「臓器を提供しません」という意思が尊重されるからです。
本人の意思が分からない場合、家族が判断します。
本人の意思表示がないまま判断する場合、家族は動揺するでしょう。
臓器提供について家族と話し合って、情報共有をしておくことが大切です。
②親族優先の希望ができる
臓器提供を希望する場合、親族優先提供の希望をすることができます。
親族優先提供を希望の意思表示をしたい場合、「親族優先」と記入します。
親族への優先提供ができるのは、次の条件をすべて満たす場合です。
(1)臓器提供を希望する意思表示に併せて、親族優先提供を書面で表示
(2)親族が移植希望登録をしている
(3)医学的な適合条件に合致している
優先提供がされる親族は、次の人です。
(1)配偶者
配偶者は、法律上の配偶者のみです。
事実婚・内縁の配偶者は、対象外です。
(2)子ども
(3)父母
実の親子だけでなく、特別養子による養親、養子を含みます。
普通養子による養親、養子は、対象外です。
親族が移植希望登録をしていても、医学的適合条件に合わないことがあるでしょう。
対象となる親族がいない場合、親族以外の人に移植が行われます。
優先提供する親族を指名した場合、指名された人を含めた親族全体への優先提供の意思と扱われます。
「〇〇さんにだけしか提供したくない」場合、親族の人を含め提供がされません。
自殺者から親族優先提供は行われません。
臓器提供では、親族優先の希望をすることができます。
③家族の同意がないと臓器提供ができない
臓器提供においては、本人の意思が尊重されます。
本人が臓器提供を拒否している場合、家族が臓器提供をすることはできません。
本人が臓器提供を希望する意思表示をしている場合、最終的に意思決定するのは家族です。
たとえ本人が臓器提供を希望する意思表示をしても、家族が提供しないと判断したら臓器提供をすることはできません。
臓器提供について家族と話し合って、情報共有をしておくことが大切です。
実際の現場では、家族のうち一人でも反対の人がいると臓器提供を断念することになります。
家族の同意がないと、臓器提供ができません。
4遺言書作成を司法書士に依頼するメリット
遺言書は、遺言者の意思を示すものです。
自分が死んだことを考えたくないという気持ちがあると、抵抗したくなるかもしれません。
遺言書は遺言者の意思を示すことで、家族をトラブルから守るものです。
遺贈とは、遺言によって、法定相続人や法定相続人以外の人に、財産を譲ってあげるものです。
遺贈は簡単に考えがちですが、思いのほか複雑な制度です。
遺言執行には法的な知識が必要になります。
遺言の効力が発生したときに、遺言執行者からお断りをされてしまう心配があります。
せっかく遺言書を書くのですから、スムーズな手続を実現できるように配慮しましょう。
お互いを思いやり幸せを願う方は、遺言書作成を司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。
独身者に遺言書作成が重要な理由
1相続人がいないと財産は国庫帰属
①相続人になる人は法律で決まっている
相続が発生したら、親族のうち一定の範囲の人が相続人になります。
だれが相続人になるかについては、民法で決められています。
相続人になる人は、次のとおりです。
(2)~(4)の場合、先順位の人がいる場合、後順位の人は相続人になれません。
(1)配偶者は必ず相続人になる
(2)被相続人に子どもがいる場合、子ども
(3)被相続人に子どもがいない場合、親などの直系尊属
(4)被相続人に子どもがいない場合で、かつ、親などの直系尊属が被相続人より先に死亡している場合、兄弟姉妹
②絶縁しても絶交しても相続人
だれが相続人になるかについては、民法で決められています。
相続人になるかどうかは、法律の定めで決まります。
被相続人と絶縁していても、相続人になるかどうかとは関係ありません。
絶縁していたとか、絶交していたとかいう事情は、法律の定めとは無関係です。
たとえ何十年も音信不通でも、親子は親子です。
何十年も会っていなくても、兄弟姉妹は兄弟姉妹です。
子どもが重大な親不孝をした場合に、親が子どもを勘当にすることがあります。
子どもを勘当にして、絶縁状を作ることがあります。
絶縁状に、法的な効力はありません。
家の敷居をまたぐなとか、お葬式に呼ばないなども法的効力はありません。
生まれる前に父母が離婚したので、一度も被相続人に会ったことがない人もいます。
生まれてから一度も会ったことがなくても、子どもであることには変わりはありません。
③離婚後でも子どもは相続人
現在は独身者であっても、婚姻歴があることがあります。
独身者が離婚するときに、元配偶者が子どもを引き取ることがあります。
離婚時に元配偶者が引き取っても、子どもであることに変わりはありません。
被相続人に子どもがいる場合、子どもは相続人になります。
離婚時に元配偶者が親権を持っていても、子どもは子どものままです。
離婚して元配偶者が子どもを引き取った場合、長年音信不通になることがあります。
長年音信不通であっても、子どもは相続人になります。
父母が離婚しても、子どもは相続人になります。
④相続財産清算人選任の申立てに予納金
相続人になる人は、法律で決まっています。
被相続人が天涯孤独で、相続人になる人がまったくいないことがあります。
相続人になる人がまったくいない場合、相続財産は国庫に帰属します。
何もせずに、国庫に帰属するわけではありません。
被相続人に利害関係がある人がいるかもしれないからです。
例えば、被相続人にお金を貸していた人は、相続財産から返してもらいたいと思うでしょう。
相続財産清算人は、相続財産を清算して国庫に帰属させる人です。
利害関係人からの申立てによって、家庭裁判所が選任します。
お金を貸していた人は家庭裁判所に申立てをして、相続財産清算人を選任してもらうことができます。
相続財産清算人選任の申立てには申立費用、官報掲載費用の他に予納金が必要です。
予納金は、相続財産の管理や相続債権者に対する弁済などの事務負担によって決められます。
一般的な目安は、100万円程度です。
相続財産清算人選任の申立てに、予納金が必要です。
2遺言書作成で遺産分割協議不要
①疎遠な相続人はトラブルになりやすい
被相続人に配偶者がいる場合、配偶者が必ず相続人になります。
被相続人に子どもがいる場合、子どもは相続人になります。
被相続人の配偶者と子どもが相続人になる場合、お互いの事情をよく知っているでしょう。
お互いの事情が分かっていれば、思いやることができます。
相続人が被相続人の配偶者と子どもの場合、トラブルになることはあまりありません。
独身者には近い関係の家族が相続人になることは少ないでしょう。
高齢の独身者である場合、親などの直系尊属は先に死亡しているでしょう。
高齢の独身者に相続が発生した場合、相続人は兄弟姉妹になります。
大人になると、連絡を取り合うことも少なくなります。
子どものころは一緒に遊んでいたとしても、お互いの事情が分からなくなります。
兄弟姉妹それぞれに家族があり、それぞれの事情があるでしょう。
兄弟姉妹が先に死亡した場合、兄弟姉妹の子どもが代襲相続します。
兄弟姉妹の子どもと連絡を取り合うのは、より少ないでしょう。
お互いの事情だけでなく、家族の事情も分からなくなるでしょう。
相続人全員が自分の権利を主張して、話し合いがまとまりにくくなります。
関係性のうすい相続人がいる場合、各自が権利を主張をします。
疎遠な相続人がいる場合、トラブルになりやすくなります。
②遺言書で相続人以外の人に遺贈ができる
相続人になる人は、法律で決められています。
法律で決められた人以外の人は、相続人ではありません。
相続が発生したら、被相続人の財産は相続人が相続します。
相続人以外の人が相続することはできません。
長期間に渡って音信不通になった兄弟姉妹より、お世話になった人に自分の財産を活かしてもらいたい希望があることがあります。
遺贈とは、遺言書で相続人や相続人以外の人に財産を引き継いでもらうことです。
遺言書なしで遺贈をすることはできません。
お世話になった人に自分の財産を引き継いでもらうために、遺言書を作成することができます。
③兄弟姉妹に遺留分はない
高齢の独身者が死亡した場合、相続人は兄弟姉妹や甥姪になることが多いでしょう。
兄弟姉妹や甥姪は、相続人になっても遺留分はありません。
遺留分とは、一定の相続人に認められた最低限の権利です。
兄弟姉妹以外の相続人に認められます。
遺留分が認められる相続人を遺留分権利者と言います。
遺言書などで、配分された財産が遺留分に満たないことがあります。
遺留分権利者は、遺留分侵害額請求をすることができます。
遺留分侵害額請求がされると、相続人間で深刻なトラブルに発展するでしょう。
兄弟姉妹には、遺留分は認められません。
甥姪が代襲相続人になる場合、引き継ぐべき遺留分はありません。
甥姪には、遺留分がありません。
兄弟姉妹と甥姪には遺留分がないから、遺留分侵害額請求をすることはできません。
遺留分でトラブルになることがないから、自由に財産を配分することができます。
例えば、全財産を慈善団体などに寄付することがあります。
相続人には、財産がまったく配分されません。
たとえ財産がまったく配分されなかったとしても、兄弟姉妹や甥姪は文句を言うことはできません。
兄弟姉妹や甥姪には、遺留分がないからです。
3遺言書作成で相続手続がラクになる
①準備する戸籍謄本が少なく済む
兄弟姉妹が相続人になる場合、準備する戸籍謄本がたくさんになります。
兄弟姉妹が相続人になる場合とは、子どもがいない場合で、かつ、親などの直系尊属がいない場合です。
被相続人に子どもがいないことは、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本で証明することができます。
親などの直系尊属がいないことは、親などの直系尊属の死亡の戸籍謄本で証明することができます。
相続人になる兄弟姉妹は、父母両方が同じ兄弟姉妹だけではありません。
父だけが同じ兄弟姉妹、母だけが同じ兄弟姉妹を含みます。
父の子ども全員と母の子ども全員が相続人になる兄弟姉妹です。
父の子ども全員を証明するため、父の出生から死亡までの連続した戸籍謄本が必要です。
母の子ども全員を証明するため、母の出生から死亡までの連続した戸籍謄本が必要です。
相続人を確定するためには、大量の戸籍謄本を準備する必要があります。
戸籍謄本の取り寄せは、相続手続の最初の難関です。
遺言書を作成した場合、相続人を確定する必要はありません。
遺言者の死亡を確認する戸籍謄本と財産を受け取る人の戸籍謄本のみ準備します。
遺言書を作成した場合、準備する戸籍謄本は少なく済みます。
②遺言執行者に相続手続はおまかせできる
遺言書は、作成するだけでは意味がありません。
遺言書の内容は、自動で実現するわけではないからです。
遺言執行者とは、遺言書の内容を実現する人です。
遺言書の内容を実現するため必要な権限が与えられます。
遺言執行者がいない場合、遺言書の内容は相続人全員の協力で実現します。
相続人全員が遺言書の内容に納得していれば、協力してくれるかもしれません。
相続人の中には、遺言書の内容に不満を持っていることがあります。
不満を持つ相続人は、遺言書の内容の実現に協力してくれないでしょう。
遺言書の内容に不満はなくても、仕事や家事で忙しいことがあります。
協力する気持ちはあっても、先延ばししがちになるでしょう。
相続手続は、相続以上にわずらわしいものです。
わずらわしい相続手続を負担することで、相続人がトラブルになることがあります。
遺言書を作成するときに、遺言執行者を指名することができます。
遺言執行者がいれば、わずらわしい相続手続をおまかせすることができます。
面倒で手間のかかる相続手続は遺言執行者がやってくれるので、相続人は待っているだけで済みます。
財産を受け取るだけだから、相続人のトラブルを減らすことができます。
遺言執行者がいると、相続手続はおまかせすることができます。
4公正証書遺言がおすすめ
①公正証書遺言は安心確実
遺言書を作成する場合、自筆証書遺言か公正証書遺言を作成することがほとんどです。
自筆証書遺言は、自分で書いて作る遺言書です。
公正証書遺言は、遺言内容を公証人が取りまとめて作る遺言書です。
証人2人に確認してもらって作ります。
遺言書には、厳格な書き方ルールがあります。
書き方ルールに違反すると、遺言書が無効になります。
遺言者は、法律の勉強をしたことがないでしょう。
公証人は、法律の専門家です。
書き方ルールの違反で遺言書が無効になることは、考えられません。
公正証書遺言は書き方ルールに違反することはあり得ないから、安心確実です。
公正証書遺言を作成したら、遺言書原本は公証役場で厳重保管されます。
相続人などが偽造や変造することはできないし、紛失することもありません。
相続人などが偽造や変造を疑われて、トラブルに巻き込まれることもありません。
公正証書遺言は公証役場で厳重保管されるから、安心確実です。
②認知症を疑われない元気なときに作成
遺言書を作成するのは、高齢者のイメージがあるかもしれません。
遺言書を作成するのであれば、若い元気なうちがおすすめです。
高齢者になると、認知症になるリスクが高まるからです。
重度の認知症などで物事のメリットデメリットを充分に判断できない状態では、遺言書を作成することができません。
遺言書のつもりで作成しても、無効になるでしょう。
公正証書遺言を作成する場合、公証人が遺言者の意思確認をします。
認知症であると判断されたら、遺言書を作成してもらえません。
公正証書遺言は、信用が高い遺言書と言えます。
遺言書に効力が発生するのは、遺言者が死亡したときです。
遺言書の内容に相続人が不満を持ったとき、遺言書は無効だと主張するでしょう。
遺言者は重度の認知症だったから遺言書は無効と、主張するでしょう。
遺言者は死亡しているから、反論することはできません。
相続人間で、大きなトラブルに発展するでしょう。
遺言書は、認知症を疑われないように元気なときに作成するのがおすすめです。
5遺言書作成を司法書士に依頼するメリット
遺言書は、遺言者の意思を示すものです。
自分が死んだことを考えたくないという気持ちがあると、抵抗したくなるかもしれません。
実は、民法に遺言書を作ることができるのは15歳以上と定められています。
死期が迫ってから、書くものではありません。
遺言書はいつか書くものではなく、すぐに書くものです。
遺言書は遺言者の意思を示すことで、家族をトラブルから守るものです。
独身者の場合、遺言書の威力は大きいものです。
遺言書があることで、トラブルから守られます。
お互いを思いやり幸せを願う方は、遺言書作成を司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。
相続人が認知症だから遺言書作成
1認知症の相続人はひとりで相続手続ができない
①認知症の相続人はひとりで遺産分割協議ができない
相続が発生した後、相続財産は相続人全員の共有財産になります。
相続財産を分けるためには、相続人全員の合意が必要になります。
子どもがいない被相続人が高齢で死亡した場合、配偶者や兄弟が相続人になることが多いでしょう。
高齢化社会になって、多くの方が長寿になりました。
被相続人が100歳を超すことも、珍しくありません。
配偶者や兄弟姉妹も、高齢者です。
80歳後半になると、2人に1人は認知症になっているというデータもあります。
相続人が認知症になっていることがあるでしょう。
認知症になると、物事のメリットデメリットを充分に判断できなくなります。
記憶があいまいになる人もいるでしょう。
物事のメリットデメリットを充分に判断できない状態では、相続財産の分け方について、有効な合意をすることはできません。
相続財産の分け方は、相続人全員の合意で決定しなければなりません。
認知症の相続人がいても、相続人全員の合意が不可欠です。
一部の相続人を含めないで、遺産分割協議をしても無効です。
②子どもなどは代理できない
認知症で物事のメリットデメリットを充分に判断できないのなら、子どもなどが代わりに判断すればいいという考えもあるでしょう。
幼い子どもは物事のメリットデメリットを充分に判断できないので、親などの法定代理人が代わりに、契約などの法律行為をすることができます。
幼い子どもの代わりに、親などの法定代理人が法律行為ができるのは、未成年だからです。
認知症になっている人は、未成年ではないでしょう。
だから、子どもなどが勝手に合意をすることはできないのです。
③認知症の相続人はひとりで相続放棄ができない
認知症になると物事のメリットデメリットを充分に判断できなくなったり、記憶があいまいになったりします。
物事のメリットデメリットを充分に判断できない状態では、有効に相続放棄をすることはできません。
認知症になったら、自分で相続放棄をすることはできなくなります。
2認知症の相続人は成年後見人が代理する
①成年後見人が代理で手続をする
認知症になると物事のメリットデメリットを充分に判断できなくなります。
物事のメリットデメリットを充分に判断できない状態では、相続財産の分け方について、有効な合意をすることは難しいでしょう。
物事のメリットデメリットを充分に判断できない状態では、相続放棄をするべきか単純承認をするべきか判断することはできません。
認知症の相続人はひとりで判断できないから、成年後見人が代わりに判断します。
成年後見人が認知症の相続人の代わりに相続手続をします。
②成年後見はデメリットが大きい
成年後見人は、家庭裁判所に申立てをして選任してもらう必要があります。
家庭裁判所で手続をする手間や費用がかかります。
成年後見人は、家庭裁判所が決めます。
家族が希望する人を成年後見人に選ぶことも、見知らぬ専門家を選任することもあります。
見知らぬ専門家だから他の人にして欲しいなどの不服を言うことはできません。
成年後見人は本人の利益のためにのみ、代理ができます。
成年後見の制度は、本人の財産を守るための制度だからです。
本人の財産を守るため、認知症の相続人の法定相続分を確保できない遺産分割協議には合意できません。
一部の相続人に財産を集中させたいなどの理由で相続放棄をすることはできません。
相続手続のために成年後見人を選任してもらった場合であっても、原則として成年後見制度をやめることはできません。
家族以外の専門家が成年後見人になったら、生涯に渡って報酬がかかり続けます。
成年後見人だけでなく成年後見監督人が選任されることがあります。
成年後見監督人に対しても、生涯に渡って報酬がかかり続けます。
相続手続が完了した後であっても、財産管理が制約されます。
成年後見の制度は、本人の財産を守るための制度だからです。
具体的には、贈与や貸付はできなくなります。
積極的な資産運用もできなくなります。
積極的な資産運用には、本人の財産を失うリスクがあるからです。
③家族が成年後見人に選ばれるのは20%
家族が成年後見人に選ばれるのは、およそ20%程度です。
成年後見の申立てをするときに、成年後見人の候補者を立てることはできます。
候補者を選任することか選任しないか、家庭裁判所が決定します。
遺産分割協議をするためなど相続手続のために、成年後見の申立てをすることがあります。
遺産分割協議をすることが予定されている場合、家族が成年後見人に選ばれることは少ないでしょう。
家族が成年後見人の候補者を立てる場合、子どもなど認知症の人と血縁関係が近い人でしょう。
認知症の人と成年後見人の候補者は、2人とも相続人になるでしょう。
認知症の人と成年後見人が2人とも相続人である場合、成年後見人は認知症の人を代理することができません。
一方がソンすると、他方がトクをする関係になるからです。
一方がソンすると、他方がトクをする関係のことを、利益相反と言います。
利益相反になる場合、成年後見人は認知症の人を代理することができません。
あらためて成年後見人の代わりの人を家庭裁判所に選任してもらわなければなりません。
成年後見人の代わりの人を家庭裁判所に選任してもらうことを、特別代理人選任の申立てと言います。 家庭裁判所としては、最初から利益相反にならない人を成年後見人に選任します。
3遺言書があれば成年後見は不要
①遺言書があれば遺産分割協議をしないで相続登記ができる
遺言書がある場合、相続財産は遺言書の内容どおりに分けられます。
相続財産の分け方について、相続人全員の合意は必要ありません。
相続人全員の合意は必要ないから、認知症の相続人がいても成年後見人は必要ありません。
遺言書を作成する場合、すべての財産の分け方を決めておくことがポイントです。
分け方を決めていない財産が見つかった場合、決めていない財産について相続人全員の合意が必要になるからです。
②遺言執行者がいれば相続手続はおまかせできる
遺言書で遺言執行者を指名しておくことができます。
遺言執行者とは、遺言書の内容を実現してくれる人です。
遺言執行者が遺言書の内容のとおりに実現してくれます。
遺言執行者は、遺言書の内容を実現する権限があるからです。
相続人は、遺言執行者にすべてお任せをすることができます。
例えば、認知症の相続人に自宅を相続させたい場合、遺言執行者が相続手続をします。
相続登記を司法書士などの専門家に依頼する場合、遺言執行のひとつとして遺言執行者が司法書士に登記委任状を出します。
認知症の相続人は、物事のメリットデメリットを充分に判断できないから、司法書士に登記委任状を出すことができません。
当然、自分で相続登記をすることはできないでしょう。
③遺言書は公正証書遺言がおすすめ
遺言書を作成する場合、自筆証書遺言か公正証書遺言を作るケースがほとんどです。
自筆証書遺言は、専門家の関与がなくひとりで作ることができるのでお手軽です。
遺言書には厳格な書き方ルールがあります。
厳格な書き方ルールに合わない遺言書は無効になります。
法律の知識がない人が遺言書を作る場合、厳格な書き方ルールに抵触して無効になってしまいます。
公正証書遺言は、法律の専門家である公証人が遺言書を作ってくれます。
法律の専門家が作ってくれますから、書き方ルールで遺言書が無効になることは考えられません。
さらに、作った遺言書は公証役場で厳重に保管されます。
紛失や改ざんの心配もありません。
公正証書遺言を作るのは手間がかかりますが、メリットが圧倒的に大きい遺言書です。
遺言書を作る場合は、公正証書遺言がおすすめです。
4認知症の相続人がいて遺言書がないのに成年後見を利用したくない場合
①不動産は法定相続で相続登記ができる
法定相続とは、相続人全員で法定相続分で相続することです。
相続人全員で法定相続分で相続する場合、遺産分割協議は必要ありません。
法定相続で相続登記した後、不動産を活用することができなくなります。
不動産を処分する場合は、共有者全員の合意が必要になるからです。
不動産を処分する場合とは、売却する場合や担保に差し入れる場合、賃貸に出す場合などを含みます。
認知症の共有者は、物事のメリットデメリットを充分に判断できません。
共有財産の処分について、有効な合意をすることは難しいでしょう。
不動産を活用する場合、成年後見人を選任してもらう必要があります。
②銀行の預貯金は遺産分割協議が必要
銀行の預貯金を解約する場合、預貯金を相続する人について相続人全員の合意が必要になります。
法定相続をしたいと言っても銀行が認めてくれることはないでしょう。
認知症の相続人がいる場合、相続人全員の合意ができないから預貯金は活用できなくなります。
預貯金の額がわずかである場合、代表相続人の請求で解約に応じてくれるケースがあります。
相続人全員の合意がなくても解約に応じてくれるのは、例外であると考えるべきでしょう。
③放置はおすすめできない
すぐに不動産を売却するのでなければ、目に見える不利益に気付きにくいため先延ばししがちです。
先延ばしすればするほど、デメリットは大きくなります。
相続登記は、相続手続の中でも難しい手続です。
長期間放置した相続登記は、飛躍的に難易度が高くなります。
長期間経過したことで必要な書類を集めることが困難になります。
長期間放置すると相続人が死亡してしまうことがあります。
相続人の相続人に協力をしてもらう必要があります。
相続人の相続人には、関係性の薄い人がいるでしょう。
関係性の薄い相続人がいると、相続手続が進みにくくなります。
5遺言書作成を司法書士に依頼するメリット
遺言書は被相続人の意思を示すものです。
自分が死んだことを考えたくないという気持ちがあると、抵抗したくなるかもしれません。
家族がトラブルに巻き込まれることを望む人はいないでしょう。
遺言書があることでトラブルになるのは、ごく稀なケースです。
遺言書がないからトラブルになるのはたくさんあります。
そのうえ、遺言書1枚あれば、相続手続きは格段にラクになります。
家族を幸せにするために遺言書を作ると考えましょう。
実際、家族の絆のためには遺言書が必要だと納得した方は遺言書を作成します。
家族の喜ぶ顔のためにやるべきことはやったと安心される方はどなたも晴れやかなお顔です。
家族の幸せを願う方は、遺言書作成を司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。
不動産を相続させるときの遺言書の書き方
1遺言書があると相続人の話し合いが不要
①分けにくい財産があると相続人全員の話し合いは難航する
相続財産にはいろいろな財産が含まれています。
不動産のように分けにくい財産もあるし、金銭のように分けやすい財産もあります。
相続が発生した場合、被相続人のものは相続人全員の共有財産になります。
相続財産の分け方は、相続人全員の合意で決定します。
相続財産の大部分が不動産のような分けにくい財産の場合、相続財産の分け方についての合意が難しくなるでしょう。
②関係の薄い相続人がいると相続人全員の話し合いは難航する
相続人になる人は法律で決まっています。
(1)配偶者は必ず相続人になる
(2)被相続人に子どもがいる場合、子ども
(3)被相続人に子どもがいない場合、親などの直系尊属
(4)被相続人に子どもがいない場合で、かつ、親などの直系尊属が被相続人より先に死亡している場合、兄弟姉妹
被相続人に子どもがいる場合、子どもは相続人になります。
被相続人に離婚歴がある場合、元配偶者が引き取った子どもは、子どもとして相続人になります。
被相続人自身も、長期間疎遠にしていたかもしれません。
被相続人の配偶者が子どもの存在を知らなかったかもしれません。
絶縁していても行方不明になっていても、相続人です。
相続財産の分け方を決めるためには、相続人全員の合意が必要です。
相続が発生してからお互いの存在を知ったような場合、話し合いが難しくなります。
関係の薄い相続人がいる合、相続財産の分け方についての合意が難しくなるでしょう。
③遺言書で財産の行き先を決めておく
相続が発生したら、相続財産は相続人全員の共有財産になります。
何も対策していなかったら、相続人全員で相続財産の分け方についての合意が不可欠です。
遺産分割協議はそうでなくても、トラブルになりやすい手続です。
話し合いが難航すると、トラブルに発展するおそれがあります。
難航するおそれがある場合、遺言書を作成することがおすすめです。
遺言書があれば、遺言書の内容とおり分ければいいからです。
2土地を相続させるときの遺言書の記載例
①単独所有の土地の記載例
遺言者は、次のとおり遺言する。
第1条
次の財産を、相続人○○に、相続させる。
所在 ○○市○○町○丁目
地番 ○番○
地目 宅地
地積 200㎡
②土地の共有持分の記載例
遺言者は、次のとおり遺言する。
第2条
次の財産を、相続人○○に、相続させる。
所在 ○○市○○町○丁目
地番 ○番○
地目 宅地
地積 200㎡
持分 4分の1
③公衆用道路の記載例
遺言者は、次のとおり遺言する。
第3条
次の財産を、相続人○○に、相続させる。
所在 ○○市○○町○丁目
地番 ○番○
地目 公衆用道路
地積 3㎡
持分 10分の1
公衆用道路も土地のひとつです。
通常の宅地などと同様に、登記簿があります。
登記簿の記載を書き写せば問題ありません。
公衆用道路は、付近住民と共有していることが多いでしょう。
共有持分を一緒に記載します。
3建物を相続させるときの遺言書の記載例
遺言者は、次のとおり遺言する。
第4条
次の財産を、相続人○○に、相続させる。
所在 ○○市○○町○丁目
家屋番号 ○番○
種類 居宅
構造 木造瓦葺2階建
床面積 1階 50.00㎡ 2階 50.00㎡
4敷地権付きマンションを相続させるときの遺言書の記載例
遺言者は、次のとおり遺言する。
第5条
次の財産を、相続人○○に、相続させる。
(一棟の建物の表示)
所在 ○○市○○町○丁目○番地○
建物の名称 ○○○○マンション
(専有部分の建物の表示)
家屋番号 ○○町○丁目○番○の○
建物の名称 ○○○
種類 居宅
構造 鉄筋コンクリート造1階建
床面積 ○階部分 ○○.○○㎡
価格 金○○○○万円
(敷地権の表示)
符号 1
所在 ○○市○○町○丁目
地番 ○番○
地目 宅地
地積 ○○○.○○㎡
(敷地権の種類)
所有権
(敷地権の割合)
持分 ○○○○○○分の○○○○○○
符号 2
所在 ○○市○○町○丁目
地番 ○番○
地目 宅地
地積 ○○○.○○㎡
(敷地権の種類)
所有権
(敷地権の割合)
持分 ○○○○○○分の○○○○○○
5不動産を相続させるときの遺言書の書き方のポイント
①不動産を相続したら相続登記
不動産を相続したら、不動産の名義を変更します。
相続による不動産の名義変更を相続登記と言います。
不動産は重要な財産であることが多いので、相続登記は法務局が厳格に審査します。
遺言書の内容に従って相続登記をする場合、遺言書を法務局に提出します。
遺言書の書き方が不適切な場合、名義変更が認められません。
不動産を相続させるために遺言書を作成する場合、相続登記ができるように書くことが重要です。
②不動産は登記簿謄本を書き写す
対象の不動産は、客観的に特定します。
客観的に分からない場合、法務局は不動産を特定できないからです。
「自宅」などの記載は、客観的に特定できるとは言えません。
家族にとっては、自宅は当然のことでしょう。
法務局など第三者にとっては、自宅はどこにあるどの不動産なのか分からないからです。
不動産の所在は自宅住所と異なることが多いので、登記簿謄本を書き写しましょう。
固定資産税の課税明細書は、登記簿謄本と異なる表記がされていることや内容が省略されている場合があります。
登記簿謄本の記載を見て、書き写します。
③土地は所在、地番、地目、地積で特定する
「自宅」などの記載は、客観的に特定できるとは言えません。
自宅に住所があるのだから、住所を書けばいいだろうと考えがちです。
土地の所在は、土地の所在する場所を表すものです。
登記簿を調べると、住所地に複数の土地が所在していることがあります。
複数の土地がある場合、地番が異なります。
地番は、土地についている番号です。
同一の所在で同一の地番の土地が複数あることはありません。
登記簿謄本の記載を見て、土地の所在と土地の地番を書き写します。
念のため、地目と地積を書き写して特定します。
④建物は所在、家屋番号、種類、構造、床面積で特定する
「自宅」などの記載は、客観的に特定できるとは言えません。
人によっては、自宅が複数あることがあります。
建物の場合も、住所と建物の所在は別物です。
広い土地に建物が複数あることはよくあることです。
複数の建物がある場合、家屋番号が異なります。
家屋番号は、建物についている番号です。
建物が建っている主たる土地の地番と同じ番号が付けられることが多いです。
同一の所在で同一の家屋番号の建物が複数あることはありません。
登記簿謄本の記載を見て、建物の所在と建物の建物を書き写します。
念のため、種類、構造、床面積を書き写して特定します。
⑤敷地権付きマンションは特定するための項目が多い
マンションには、2種類あります。
敷地権付きマンションと敷地権がないマンションです。
分譲マンションのように1棟の建物の一部を独立して所有できる建物を区分建物と言います。
区分建物が建っている土地が敷地です。
敷地を使う権利とマンションのお部屋の権利を一体化して処分するようにしたのが、敷地権付区分建物です。
敷地権付区分建物の場合、マンションを売買するとき敷地を使う権利とマンションのお部屋の権利は一緒についてきます。
敷地を使う権利だけ取引することやお部屋だけ担保に差し出すことはできません。
敷地を使う権利とマンションのお部屋の権利は、命運を共にする運命共同体です。
新しいマンションのほとんどは、敷地権付区分建物です。
敷地権付区分建物を特定するためには、次の項目を記載します。
(1)一棟の建物の表示
家屋番号、種類、構造、床面積で特定する
(2)専有部分の建物の表示
家屋番号、建物の名称、種類、構造、床面積で特定する
(3)敷地権の表示
土地の符号、所在、地番、地目、地積で特定する
マンションを特定するためには、たくさんの項目を記載しなければなりません。
⑥敷地権がないマンションは土地と建物を別々に特定する
古いマンションの中には、敷地を使う権利とマンションのお部屋の権利を一体化して処分できるルールができる前に建てられた場合があります。
ルールができる前に建てられたマンションは、敷地を使う権利とマンションのお部屋の権利を一体化していない場合があります。
土地と建物を特定する項目は、先に説明したとおりです。
土地は、所在、地番、地目、地積で特定します。
建物は、一棟の建物の表示として家屋番号、建物の名称、種類、構造、床面積を記載します。
専有部分の建物の表示として家屋番号、建物の名称、種類、構造、床面積を記載します。
土地は、マンションの所有者全員で共有しているでしょう。
共有持分の割合も記載します。
6遺言書作成と遺言執行を司法書士に依頼するメリット
遺言書は遺言者の意思を示すものです。
遺言書の書き方ルールは民法という法律で、細かく決められています。
自分が死んだ後のことは考えたくないという気持ちから、先延ばししがちです。
いろいろ言い訳を考えてしまうかもしれません。
不動産は、分けにくい財産の代表例です。
目立った財産がないから、家族がもめ事を起こすことはないという言い訳はよく聞きます。
相続財産は自宅不動産だけの場合、目立った財産がない場合と言えるでしょう。
分けにくい不動産だけの場合、家族がトラブルになりやすいケースです。
家族がトラブルに巻き込まれることを望む人はいないでしょう。
死んだ後のことを考えるのは不愉快などと言えるのは、判断力がしっかりしている証拠ですから、まず遺言書を書くことをおすすめします。
トラブルにならない場合でも、遺言書があると相続手続は格段にラクになります。
状況が変われば、遺言書は何度でも書き直すことができます。
家族を幸せにするために遺言書を作ると考えましょう。
遺言書の書き直しのご相談もお受けしています。
家族の喜ぶ顔のためにやるべきことはやったと安心される方はどなたも晴れやかなお顔です。
家族の幸せを願う方は、遺言書作成を司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。
遺言執行者と相続人は同一でいい
1遺言執行者が遺言書の内容を実現する
①相続手続は遺言執行者におまかせできる
被相続人は、自分の財産を自由に処分することができます。
遺言書を作成して、自分が死亡後にだれに引き継いでもらうのか自由に決めることができます。
遺言書は、作成するだけでは意味がありません。
遺言書の内容は、自動で実現するわけではないからです。
遺言執行者は、遺言書の内容を実現する人です。
遺言執行者がいると、相続手続は遺言執行者におまかせすることができます。
相続手続は、何度も経験することはありません。
だれにとっても初めてで、知らないことや分からないことばかりでしょう。
相続手続は、想像以上に手間と時間がかかります。
遺言執行者がいると、家族はラクができます。
手間と時間がかかる相続手続は、遺言執行者が負担してくれるからです。
相続手続は、遺言執行者におまかせできます。
②遺言執行者を指名しなくても遺言書は無効にならない
遺言執行者は、遺言書の内容を実現する人です。
遺言書を確認したところ、遺言執行者について何も書いてないことがあります。
遺言書の内容を実現する人がいないと、遺言書が無意味なものに思えるかもしれません。
遺言書には、厳格な書き方ルールがあります。
書き方ルールに違反した遺言書は、無効になります。
遺言書の書き方ルールに、遺言執行者を指名することはありません。
遺言書で遺言執行者を指名しなくても、遺言書が無効になることはありません。
③家庭裁判所で遺言執行者を選任してもらえる
遺言執行者がいると、相続手続は遺言執行者におまかせすることができます。
遺言執行者は、遺言書で指名することがほとんどです。
遺言執行者がいると、家族はラクができるからです。
遺言書の内容を実現してくれるから、遺言者にとっても安心です。
遺言書で遺言執行者を指名しても、指名された人が先に死亡することがあります。
遺言執行者を指名していなくても、遺言書は有効です。
遺言執行者がいない場合、家庭裁判所に対して遺言執行者選任の申立てをすることができます。
家庭裁判所に申立てをして、遺言執行者を選任してもらうことができます。
④子どもの認知は遺言執行者が届出
認知とは、婚姻関係にないカップルの間に生まれた子どもについて自分の子どもと認めることです。
認知をして、自分の子どもだと認めるのは一般的には父親です。
通常、母は出産の事実によって母親であることが確認できるからです。
父が生前に認知届を提出する他に、遺言で認知をすることができます。
子どもを認知する場合、市区町村役場に認知届を提出する必要があります。
父が生前に認知をする場合、自分で市区町村役場に持って行くことができます。
遺言で認知をする場合、認知届は遺言執行者が提出します。
遺言で認知をするためには、遺言執行者が欠かせません。
遺言で子どもを認知するときは、遺言執行者が市区町村役場に届出をします。
⑤相続人廃除は遺言執行者が申立て
相続人になる人は、法律で決められています。
例えば、被相続人に虐待をした人に、相続をさせたくないと考えるのは自然なことでしょう。
被相続人が相続させたくないと思って、他の相続人にすべての財産を相続させると遺言書を書くことがあります。
遺言書を作成したとしても、遺留分を奪うことはできません。
遺留分侵害額請求をしたら、相続財産のいくらかは虐待した相続人が受け継いでしまいます。
相続人廃除とは、被相続人の意思で相続人の資格を奪う制度です。
相続人の資格を奪うというのは、実質的には、遺留分を奪うことです。
被相続人が生前に廃除の申立てをする他に、遺言で廃除をすることができます。
遺言で廃除する場合、遺言執行者が家庭裁判所に申立てをします。
廃除は家庭裁判所に申立てをして、家庭裁判所が判断します。
遺言で廃除をするためには、遺言執行者が欠かせません。
遺言で相続人を廃除するときは、遺言執行者が家庭裁判所に申立てをします。
2遺言執行者は相続人と同一でいい
①遺言執行者になれる人なれない人
遺言執行者になれない人は、民法で決められています。
遺言執行者になれない人は、次のとおりです。
(1)未成年者
(2)破産者
遺言執行者は、遺言書で指名することができます。
遺言書を作成した時点で、未成年者であっても差し支えありません。
遺言執行者が欠格に該当するかどうかは、相続が発生した時点で判断します。
原則として、だれでも遺言執行者になることができます。
遺言執行者は、相続人や受遺者と同一で差し支えありません。
受遺者とは、遺言書で遺贈を受ける人です。
相続や遺贈で財産を受け取る人が遺言執行者になることができます。
遺言執行者は、遺言書の内容を実現する人です。
遺言書の内容を実現できる知識があって、相続手続をする時間がある人を指名するといいでしょう。
遺言執行者は、相続人や受遺者と同一で差し支えありません。
②遺言執行者は辞退できる
遺言執行者は、遺言書で指名することができます。
遺言書は、遺言者がひとりで作ります。
言わば、一方的に遺言執行者に指名することができます。
遺言書で遺言執行者に指名された場合、指名された人は就任する義務はありません。
指名された人が就任するか辞退するか選択することができます。
遺言書で遺言執行者に指名されても、遺言執行者への就任は辞退することができます。
遺言執行者への就任辞退は、理由を言う必要はありません。
- 何となく、気が進まない
- 遺言執行なんて、手間と時間がかかりそうだ
- 相続手続に、自信がない
- 相続人から、あれこれ言われそう
上記のような理由で、遺言執行者への就任を辞退することができます。
遺言執行者への就任を辞退する場合、すみやかに意思表示をしましょう。
遺言執行者が引き受けてくれるのか辞退するのか分からないと、相続人が困るからです。
遺言執行者への就任を辞退することができます。
③遺言執行者の辞任はハードルが高い
遺言執行者への就任を辞退するときに、理由を言う必要はありません。
遺言執行者への就任を辞退する理由は、自由です。
いったん遺言執行者に就任した後は、自由に辞任することはできません。
遺言執行者が辞任するときは、遺言執行者辞任の許可の申立てをします。
辞任するにあたって正当な理由があるときだけ、遺言執行者の辞任が許可されます。
正当な理由には、次のような理由があります。
- 病気などで長期の療養が必要
- 長期の出張
- 遠隔地への転居
正当理由は、客観的に困難であることが重視されます。
- 遺言執行が難しくて続けられない
- 面倒でやる気がなくなった
上記のような理由は、客観的に困難とは認められないでしょう。
遺言執行者に就任する前は、自由に辞退することができます。
遺言執行者に就任した後は、自由に辞任することができません。
遺言執行者に就任した後の辞任は、ハードルが高くなります。
④包括的に遺言執行を依頼する
原則として、だれでも遺言執行者になることができます。
遺言執行者は相続人や受遺者と同一であっても、問題になりません。
遺言執行者は、遺言書の内容を実現する人です。
遺言執行者は、遺言執行のため相続手続します。
相続手続は、想像以上に手間と時間がかかります。
「遺言執行が難しくて続けられない」「面倒でやる気がなくなった」などの理由で、辞任は許可されないでしょう。
遺言執行者は、遺言執行を包括的に依頼することができます。
遺言執行は、法律知識が必要な手続が多いものです。
司法書士などの専門家に任せる方がスムーズでしょう。
遺言執行者に指名されたのが2019年7月1日以降作成の遺言書であれば、遺言執行者は自己の責任で司法書士などの専門家にその任務を任せることができます。
2019年7月1日以前作成の遺言書で遺言執行者に指名された場合、止むを得ない理由があれば司法書士などの専門家にその任務を任せることができます。
包括的に遺言執行を依頼する場合、相続人などの同意は不要です。
遺言執行者は、遺言執行を包括的に依頼することができます。
⑤特定の事務だけ専門家に依頼する
遺言執行者の事務は、多岐にわたります。
比較的簡単な事務と難しい事務があるでしょう。
例えば、不動産の名義変更は、相続手続の中でも難しい手間のかかる事務です。
遺言執行者は、自分の手に余る難しい事務だけ専門家に依頼することができます。
不動産の名義変更は、相続登記と言います。
相続登記だけ、司法書士に依頼することができます。
相続登記だけ司法書士に依頼する場合、相続人などの同意は不要です。
遺言執行者は、特定の事務だけ専門家に依頼することができます。
3遺言執行者と相続人が同一のときのデメリット
①遺言執行者になれなかった相続人が不満
遺言執行者として相続人を指名する場合、相続人の代表を指名するでしょう。
相続人の代表者として、相続人から注目を集めたいかもしれません。
遺言執行者に指名されなかった相続人が不満を覚えることがあります。
②相続財産の横領を疑われる
遺言執行者は、遺言書の内容を実現する人です。
相続人全員のために、公平公正に職務を行います。
遺言書で相続財産の配分を決めるとき、一部の相続人に有利になっていることが多いでしょう。
受け取る財産が期待に足りないとき、遺言執行者の横領を疑うことがあります。
③遺言執行者に時間的負担が大きい
遺言執行者に指名されると、安易に就任を承諾することがあります。
遺言執行者は、相続人全員のため相続手続をします。
相続手続は想像以上に手間と時間がかかります。
相続手続先は、平日の昼間のみ業務を行っています。
仕事や家事で忙しい人にとって、時間的な負担が大きいでしょう。
④相続手続に時間がかかると相続人から不満
相続手続を何度もすることはありません。
だれにとっても初めてで、知らないことや分からないことでいっぱいです。
見慣れない言葉や聞き慣れない表現で、精神的負担は少なくありません。
仕事や家事で忙しい中、精神的負担の大きい事務を行うと疲れ果ててしまうでしょう。
遺言執行者がいると、他の相続人はラクです。
わずらわしい相続手続をおまかせして、待っているだけだからです。
待っているだけの相続人にとって、財産を手にするまでの時間は長いと感じるでしょう。
相続手続に時間がかかると、相続人から不満が出ます。
4遺言執行を司法書士に依頼するメリット
遺言執行者は、遺言書の内容を実現する人です。
相続人が遺言書の内容に納得していて、手続に協力的であれば、必ずしも、遺言執行者を選任する必要はありません。
子どもの認知など遺言執行者しかできない手続がある場合、遺言執行者を選任しておかないと、相続人に余計な手間をかけさせることになります。
遺言執行者は、相続開始後すみやかに手続を進めることができる時間と知識がある人を選ぶことが重要です。
その意味でも、家族より司法書士などの専門家に遺言執行を依頼する人が増えています。
以前は、遺言執行者は止むを得ない場合だけ、他の人に職務を任せることができるとされていましたが、現在は、止むを得ないなどの理由は不要になりました。
遺言執行者に指名され、職務をしてみたところ、思ったよりタイヘンだという場合、自己の責任で司法書士などの専門家におまかせすることもできます。
今後も、専門家に依頼する人は増えていくでしょう。
遺言執行を司法書士などの専門家に依頼した場合、相続人は基本待っているだけなので、トラブルになることが少なくなるからです。
家族を笑顔にするためにも、遺言書作成と遺言執行者選任しましょう。
家族の幸せのためにも、遺言書作成と遺言執行者選任を司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。
配偶者居住権を遺贈するため遺言書作成
1配偶者居住権で自宅に住み続ける条件
条件①配偶者であること
配偶者居住権とは、被相続人が所有していた家に住んでいた配偶者が一定期間無条件かつ無償で住み続けることができる権利です。
相続が発生してから配偶者が住む場所を失うことがないように、保護するために作られた権利です。
配偶者居住権を取得する配偶者は、法律上の配偶者のみです。
事実婚配偶者や内縁の配偶者は、配偶者居住権を取得することはできません。
法律上の配偶者でも、相続廃除された人や相続欠格になった人は配偶者居住権を取得することができません。
相続廃除された人や相続欠格になった人は、保護する必要がないからです。
配偶者居住権を取得する条件の1つ目は、法律上の配偶者であることです。
条件②被相続人の所有していた建物であること
配偶者居住権を設定する建物は、被相続人の所有していた建物でなければなりません。
被相続人の単独所有であるか、被相続人と配偶者の共有の場合のみ、配偶者居住権の対象にすることができます。
被相続人と配偶者以外の人と共有建物の場合、配偶者居住権は成立しません。
自宅が借家の場合、配偶者居住権は取得できません。
配偶者居住権を取得する条件の2つ目は、被相続人の所有していた建物であることです。
条件③相続開始時に無償で居住していたこと
配偶者居住権を設定するためには、配偶者が相続開始時に無償で居住していた事が必要です。
居住していたとは、生活の本拠にしていたことを指します。
自宅以外の別荘は、配偶者居住権の対象にはなりません。
生活の本拠とは、言えないからです。
配偶者が介護施設などに入所している場合、生活の本拠はその介護施設と言えるでしょう。
入院やショートステイなどで一時的に自宅を離れていたに過ぎない場合、自宅が生活の本拠と言えます。
相続が発生した時に生活の本拠の場合、配偶者居住権の対象にすることができます。
配偶者居住権を取得する条件の3つ目は、配偶者が相続開始時に無償で居住していたことです。
条件④配偶者居住権の設定をしたこと
配偶者短期居住権と違い、配偶者居住権は設定が必要です。
配偶者居住権は、要件を満たしたら自動的に権利があるというものではありません。
配偶者居住権を設定する方法は、次の4つです。
(1)遺贈
(2)死因贈与
(3)遺産分割協議
(4)遺産分割調停
上記のうち遺贈と死因贈与は、被相続人が生前に対策することができます。
相続人間のトラブル防止の観点から、生前に対策することがおすすめです。
配偶者居住権を取得する条件の4つ目は、配偶者居住権の設定をしたことです。
2配偶者居住権を遺贈するため遺言書作成
①配偶者居住権を設定するときの遺言書の書き方
記載例
遺言者△△は次のとおり、遺言をする。
1遺言者は、遺言者の所有する次の建物の配偶者居住権を遺言者の配偶者〇〇に遺贈する。
所在 名古屋市中区〇〇丁目〇〇番地〇〇
家屋番号 〇番〇
種類 居宅
構造 木造瓦葺
床面積 〇〇・〇〇平方メートル
2遺言者は、遺言者の所有する次の建物の負担付所有権を遺言者の長男◇◇に相続させる。
所在 名古屋市中区〇〇丁目〇〇番地〇〇
家屋番号 〇番〇
種類 居宅
構造 木造瓦葺
床面積 〇〇・〇〇平方メートル
3遺言者は、本遺言の遺言執行者として、□□を指定する。
令和〇年〇月〇日
名古屋市中区〇〇丁目〇〇番地〇
遺言者 △△ 印
②遺言書には遺贈すると書く
配偶者居住権は、遺贈によって設定することができます。
遺贈とは、遺言書で相続人や相続人以外の人に財産を受け継いでもらうことです。
法律上の配偶者は、必ず、相続人になります。
「相続人◇◇に◇◇を相続させる」
相続人に財産や権利を受け継いでもらう場合、上記の書き方が一般的です。
配偶者居住権について書く場合、「配偶者〇〇に配偶者居住権を相続させる」と書いてしまいそうです。
「配偶者〇〇に建物〇〇の配偶者居住権を遺贈する」と書きます。
配偶者居住権は、法律上、遺贈されたとき取得すると決められているからです。
③「配偶者居住権を相続させる」でも登記ができる
遺言書の記載が「配偶者〇〇に配偶者居住権を相続させる」であった場合、遺言は無効にはなりません。
「配偶者〇〇に配偶者居住権を相続させる」の記載は、特段の事情がない限り、遺贈の趣旨である考えられます。
相続させると書いた遺言書で、配偶者居住権の設定登記を申請することができます。
遺言書の書き方は、厳格なルールがあります。
実際に遺言書を作成するときは、専門家のサポートを受ける方がいいでしょう。
確実で紛失等の心配のない公正証書遺言がおすすめです。
3配偶者居住権を設定するメリット
メリット①配偶者が自宅に住み続けることができる
相続財産の大部分が自宅不動産であるケースは、少なくありません。
相続人間でトラブルが起きると、自宅を売却して遺産分割をすることになるでしょう。
遺言書で配偶者居住権を遺贈しておくと、引き続き自宅で住み続けることができます。
メリット②金融資産も確保できる
配偶者が自宅の所有権を相続する場合、預貯金などの金融資産を受け継ぐことが難しくなります。
配偶者居住権を設定した場合、自宅は配偶者居住権と負担付所有権に分けられます。
配偶者居住権は、自宅そのものよりも評価額が低くなります。
配偶者が預貯金などの金融資産をより多く受け継ぐことができます。
メリット③配偶者居住権は第三者に主張できる
配偶者居住権を設定した場合、配偶者居住権設定登記をすることができます。
配偶者居住権設定登記があれば、第三者にも配偶者居住権を主張できます。
例えば、負担付所有権を取得した相続人が建物を売却した場合、建物の買主は建物を使いたいと考えるでしょう。
建物の買主が配偶者に対して、建物の明渡を請求することが考えられます。
あらかじめ配偶者居住権設定登記がある場合、配偶者は建物の明渡請求を拒むことができます。
建物の明渡を拒むことができることは、配偶者居住権の登記がしてあることの重要な効果です。
4配偶者居住権のデメリット
デメリット①配偶者居住権は配偶者だけのもの
配偶者居住権は、財産的価値があります。
配偶者居住権は、だれかに譲渡することも売却することもできません。
配偶者居住権は配偶者だけのものだからです。
配偶者は、勝手に第三者に使用させることはできません。
負担付所有権者の許可を得ずに建物を賃貸した場合、配偶者居住権消滅請求がされるリスクがあります。
配偶者居住権消滅請求がされた場合、配偶者は自宅から追い出されてしまいます。
配偶者が介護施設などに入所して自宅に住むことがなくなっても、配偶者居住権は存続します。
配偶者居住権は、配偶者だけのものです。
デメリット②建物の売却が難しい
配偶者は、配偶者居住権を第三者に売却することはできません。
負担付所有権者は、法律上は、配偶者の許可なく建物を売却することができます。
配偶者居住権の設定登記がされている建物を買い取っても、配偶者に明渡請求ができません。
配偶者居住権の設定登記がある場合、配偶者は権利主張をすることができるからです。
買い取っても、使うことができない建物を買う人はほとんどいないでしょう。
配偶者が介護施設などに入所して自宅に住むことがなくなった場合でも、配偶者居住権は消滅しません。
負担付所有権者と協力して建物を売却する場合、まず、配偶者居住権を外す必要があります。
配偶者居住権は、第三者に売却や譲渡ができません。
配偶者が負担付所有権者に対して、配偶者居住権を放棄することになります。
配偶者居住権を放棄するためには、配偶者が物事のメリットデメリットを充分に判断できる必要があります。
配偶者が物事のメリットデメリットを充分に判断できる間しか、配偶者居住権を放棄することはできないという意味です。
配偶者が認知症になった場合、自分で配偶者居住権を放棄することはできません。
配偶者居住権を放棄したら、負担付所有権は負担のない所有権になります。
配偶者居住権は、財産的価値があります。
客観的に見ると、財産的価値が移転したと言えます。
財産的価値の移転に対しては、多くの場合、高額な贈与税が課されます。
配偶sh亜居住権を設定した場合、建物の売却が難しくなります。
デメリット③固定資産税などの負担がある
固定資産税は、原則として、所有者が納税義務者です。
配偶者居住権を取得した配偶者は、建物の必要費を負担する必要があります。
負担付所有権を取得した相続人は、配偶者に固定資産税などの必要費を請求することができます。
配偶者居住権者は、固定資産税を負担する必要があります。
デメリット④増改築をするために所有者の同意が必要
配偶者居住権は、建物に住む権利です。
住むために必要な修繕をする権利はありますが、増改築をする権利はありません。
修繕のレベルを超える増改築をするためには、負担付所有権者の同意が必要です。
5配偶者居住権の遺贈を司法書士に依頼するメリット
配偶者居住権は、期間を定めることもできますが、原則として、配偶者の死亡まで存続します。
配偶者が死亡したら、配偶者居住権は消滅します。
配偶者の保有していた財産的価値が消滅することから、配偶者が死亡したときの相続税を減らすことができる点に注目が集まっています。
デメリットについては、あまり考慮されていません。
配偶者居住権は、配偶者だけの権利です。
配偶者居住権の譲渡ができません。
配偶者居住権の設定された建物は、取引されることは通常考えられません。
配偶者が介護施設などに入所したために自宅に住むことがなくなっても、配偶者居住権は消滅しません。
配偶者が自宅に住まなくなったため、自宅を売却しようとする場合、配偶者居住権があるため買い手が見つかりません。
配偶者居住権を外すためには、配偶者が配偶者居住権を放棄する必要があります。
配偶者居住権を放棄するためには、物事のメリットデメリットを判断できる能力が必要です。
将来、自宅を売却する可能性があるのなら、配偶者居住権を設定するのは慎重に判断するべきでしょう。
配偶者居住権を設定するのなら、認知症対策はセットで考えることが重要です。
高齢化社会になって、多くの方は長生きになりました。
長生きになったことは、認知症になるリスクが高くなったということです。
認知症対策がとても重要になっています。
配偶者居住権は、遺言書を適切に書くことで遺贈することができます。
遺言書を書く前に、配偶者居住権を遺贈することが本当に適切なのかを考えなければなりません。
配偶者居住権を設定するのがいいのか、別の方法をとった方がいいか、司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。
孫に農地を相続させたい
1農地の名義変更に農地法の許可が必要
①農地の権利移動で農地法3条の許可が必要
農地は、食糧生産のために重要な役割を担っています。
勝手に手放したり勝手に農業をやめてしまうと、国の食糧生産に大きな影響があります。
農地の権利移動には、農地法第3条の許可が必要です。
許可が必要になる権利移動は、売買、贈与、賃貸などです。
農地法第3条の許可の要件は、次のとおりです。
(1) 全部効率利用要件
全部効率利用要件とは、農地の全部をつかって効率よく農業をすることです。
農地を耕作するのに充分な労働力が確保されているか技術があるか審査されます。
労働力が不足する場合、充分な能力がある機械があるか審査されます。
(2)農作業常時従事要件
農作業常時従事要件とは、農作業に常時従事することです。
常時とは、年間150日以上とされています。
住居と生計を同一する家族が満たせば認められます。
権利者本人だけでなく家族で助け合えば、要件を満たすことができます。
(3)下限面積要件
下限面積要件とは、農地を取得する人の耕作する面積の要件です。
下限面積は、5000平方メートルです。
すでに耕作している土地がある場合、合算して審査されます。
地域によっては、下限面積要件を緩和しています。
新規の就農者を増やしたいことがあるからです。
(4)地域調和要件
地域調和要件とは、地域の取組に協力的であることです。
地域の活動に支障がある場合、許可されにくくなります。
例えば、地域全体で無農薬栽培に取り組んでいる場合、協力しない人には許可されにくいでしょう。
②農地の転用で農地法4条の許可が必要
農地の転用とは、農地を農地以外の土地にすることです。
例えば、農地を宅地にして家を建てる場合、農地の転用に該当します。
農地の転用には、農地法第4条の許可が必要です。
③農地の転用と権利移動で農地法5条の許可が必要
農地の転用と権利移動をする場合があります。
例えば、農地を売却したうえで宅地にして家を建てる場合です。
農地の転用と権利移動をするには、農地法第5条の許可が必要です。
④許可がないと権利取得ができない
農地の権利移動には、農地法第3条の許可が必要です。
農地法の許可は、権利移動の効力発生要件です。
農地法の許可書が到達したときに、権利が移転します。
農地法の許可がないと、権利を取得することはできません。
2孫に農地を相続させることができる
①孫は相続人ではない
相続が発生したら、親族のうち一定の範囲の人が相続人になります。
だれが相続人になるかについては、民法で決められています。
相続人になる人は、次のとおりです。
(2)~(4)の場合、先順位の人がいる場合、後順位の人は相続人になれません。
(1)配偶者は必ず相続人になる
(2)被相続人に子どもがいる場合、子ども
(3)被相続人に子どもがいない場合、親などの直系尊属
(4)被相続人に子どもがいない場合で、かつ、親などの直系尊属が被相続人より先に死亡している場合、兄弟姉妹
②子どもが先に死亡すると孫は代襲相続人
被相続人に子どもがいる場合、子どもが相続人になります。
子どもが相続人になる場合、孫は相続人ではありません。
相続人になるはずだった子どもが被相続人より先に死亡することがあります。
相続人になるはずだった子どもが被相続人より先に死亡した場合、子どもの子どもが代襲相続します。
子どもが先に死亡すると、孫は代襲相続人になります。
③孫と養子縁組をすると相続人になる
養子縁組とは、血縁関係がある親子とは別に法律上の親子関係を作る制度です。
被相続人は、孫と養子縁組をすることができます。
被相続人が養親で、孫が養子になります。
養子は、養親の子どもです。
被相続人に子どもがいる場合、子どもが相続人になります。
養子は、相続人になります。
被相続人の実子と養子は、同じ子どもです。
被相続人に実子がいても、養子は相続人です。
養子は、養親の子どもだからです。
孫と養子縁組をした場合、孫は相続人になります。
④相続で農地を取得するときは3条の許可不要
相続人になる人は、法律で決まっています。
法律で決められた人だけが相続人になります。
相続できるのは、相続人だけです。
相続人が農地を取得する場合、農地法第3条の許可は不要です。
孫が相続人になる場合、孫が農地を取得するときに農地法第3条の許可は不要です。
農地法第3条の許可を得ずに農地を取得する場合、農地法第3条の3の定めにより届出が必要です。
農地法第3条の3の定めによる届出は、農業委員会に対して提出します。
提出期限は、相続があったことをしてから10か月以内です。
相続で農地を取得するときは、農地法第3条の許可は不要です。
3孫に農地を特定遺贈をすることができる
①相続人以外の人に特定遺贈ができる
孫が相続人でない場合、孫は相続することはできません。
孫に農地を受け継いでもらいたい場合、別の方法を考える必要があります。
被相続人は遺言書を作成して、自分の財産を遺贈することができます。
遺贈とは、遺言書によって相続人や相続人以外の人に財産を譲ってあげることです。
特定遺贈とは、財産を特定して譲ってあげることです。
遺言書に「財産○○を遺贈する」と具体的に書いてある場合です。
特定遺贈では、遺言書に書かれた財産を受け継ぐだけです。
他の財産を受け取ることはありません。
相続人以外の人に、特定遺贈ができます。
特定遺贈は、相続人にも相続人以外の人にもすることができるからです。
孫が相続人でなくても、特定遺贈をすることができます。
②相続人でない孫に特定遺贈するときは3条の許可が必要
遺贈は、遺言書で財産を受け継ぐことです。
遺贈は、相続ではありません。
相続人以外の人が特定遺贈で財産を受け継ぐことができます。
相続人以外の人が特定遺贈で農地を受け継ぐ場合、農地法第3条の許可が必要です。
相続人以外の人に特定遺贈をしたい場合、許可されるのか農業委員会に確認しておくといいでしょう。
農業委員会の許可が得られない場合、遺言の内容は実現できなくなります。
子どもが相続人になる場合、孫は相続人ではありません。
孫に相続させることはできません。
孫に遺贈することができます。
孫が特定遺贈で農地を受け継ぐ場合、農地法第3条の許可が必要です。
孫は、相続人以外の人だからです。
③相続人である孫に特定遺贈するときは3条の許可が不要
被相続人に子どもがいる場合、子どもが相続人になります。
相続人になるはずだった子どもが被相続人より先に死亡した場合、子どもの子どもが代襲相続します。
子どもが先に死亡すると、孫は代襲相続人になります。
被相続人が孫と養子縁組をした場合、孫は被相続人の子どもです。
孫が被相続人の養子になった場合、孫は相続人になります。
遺言書を作成して、相続人に対して特定遺贈をすることができます。
相続人である孫に農地を特定遺贈をした場合、農地法第3条の許可が不要です。
農地法第3条の許可なしで、農地を取得することができます。
農地法第3条の許可なしで農地を取得したときは、農地法第3条の3の定めによる届出が必要です。
4孫に農地を全部包括遺贈することができる
①相続人以外の人に全部包括遺贈ができる
遺贈とは、遺言書によって相続人や相続人以外の人に財産を譲ってあげることです。
包括遺贈とは、財産を特定せずに譲ってあげることです。
全部包括遺贈は「財産すべてを包括遺贈する」と記載してある場合です。
全部包括遺贈をする場合、法定相続人や法定相続人以外の人に全財産を譲ってあげることができます。
孫が相続人でなくても、全部包括遺贈をすることができます。
②全部包括遺贈を受けると遺産分割協議の余地はない
全部包括遺贈を受けた場合、相続財産は相続人と共有することがありません。
相続が発生したときに、遺言書が効力を発します。
遺言書が効力を発したときに、全部包括受遺者が財産すべてを受け継ぎます。
全部包括受遺者は、遺産分割協議をする必要がありません。
相続人や全部包括受遺者が遺産分割協議を望んでも、遺産分割協議の余地がありません。
③孫に全部包括遺贈するときは3条の許可が不要
包括遺贈を受けた場合、相続人と同一の権利と義務があります。
包括遺贈で農地を受け継ぐ場合、農地法第3条の許可が不要です。
農地法第3条の許可なしで、農地を取得することができます。
農地法第3条の許可なしで農地を取得したときは、農地法第3条の3の定めによる届出が必要です。
5孫に一部包括遺贈することができる
①相続人以外の人に一部包括遺贈ができる
遺贈とは、遺言書によって相続人や相続人以外の人に財産を譲ってあげることです。
包括遺贈とは、割合だけ指定して譲ってあげることです。
一部包括遺贈は「財産の3分の1を包括遺贈する」と記載してある場合です。
包括遺贈では、何を遺贈するのか具体的財産は記載されていません。
②一部包括遺贈を受けたら遺産分割協議
一部包括遺贈は、指定した割合で財産を譲るものです。
一部包括遺贈を受けた場合、遺産分割協議に参加します。
包括受遺者が遺産分割協議に参加するのは、権利であるし義務でもあります。
遺言書は割合だけ書いてあるだけで、具体的な財産は記載されていないからです。
相続財産は、包括遺贈を受けた人と相続人全員で共有しています。
相続財産の分け方について、包括遺贈を受けた人と相続人全員で合意する必要があります。
包括受遺者がいるのに、相続人全員だけで遺産分割協議をしても無効です。
包括受遺者は、相続人と同一の権利義務が与えられているからです。
遺産分割協議の結果次第では、農地を受け取ることができないかもしれません。
一部包括遺贈を受けただけでは、何を受け取るのか決められていないからです。
一部包括遺贈を受けたら、遺産分割協議が必要です。
③孫に一部包括遺贈するときは3条の許可が不要
包括遺贈を受けた場合、相続人と同一の権利と義務があります。
包括遺贈で農地を受け継ぐ場合、農地法第3条の許可が不要です。
農地法第3条の許可なしで、農地を取得することができます。
農地法第3条の許可なしで農地を取得したときは、農地法第3条の3の定めによる届出が必要です。
④包括遺贈は負債も受け継ぐ
特定遺贈では、遺言書に書いてある特定の財産を受け継ぐだけです。
遺言書に書いていない他の財産を受け継ぐことはありません。
特定遺贈では、負債を受け継ぐことはありません。
包括遺贈を受けた場合、相続人と同一の権利と義務があります。
相続財産に負債がある場合、指定された割合で負債を引き継ぎます。
農業を営んでいる場合、多額の負債があることがあります。
包括遺贈を受ける場合、農地だけでなく多額の負債を引き継ぐことになります。
6孫に農地を贈与することができる
①孫に農地を生前贈与で3条の許可が必要
生前贈与をする場合、贈与する人と贈与を受ける人の合意が必要です。
農地を贈与の対象にすることができます。
贈与を受ける人は、親子でも親子以外の人でも差し支えありません。
農地を生前贈与する場合、農地法第3条の許可が必要です。
農地法の許可がないと、権利を取得することはできません。
孫に農地を生前贈与する場合、農地法第3条の許可が必要です。
②孫に農地を死因贈与で3条の許可が必要
贈与は、贈与する人と贈与を受ける人の契約です。
死因贈与は、贈与する人が死亡したときに効力が発生する贈与契約です。
農地を死因贈与の対象にすることができます。
農地を死因贈与する場合、農地法第3条の許可が必要です。
農地法の許可がないと、権利を取得することはできません。
孫に農地を死因贈与する場合、農地法第3条の許可が必要です。
7遺言書作成を司法書士に依頼するメリット
遺言書は、被相続人の意思を示すものです。
自分が死んだことを考えたくないという気持ちがあると、抵抗したくなるかもしれません。
民法に遺言書を作ることができるのは、15歳以上と定められています。
死期が迫ってから、書くものではありません。
遺言書は被相続人の意思を示すことで、家族をトラブルから守るものです。
遺贈とは、被相続人が遺言によって、法定相続人や法定相続人以外の人に、財産を譲ってあげるものです。
遺贈は簡単に考えがちですが、思いのほか複雑な制度です。
受け継いでもらう財産に不動産がある場合、譲ってもらう人だけでは登記申請ができません。
遺言執行者がいない場合、相続人全員の協力が必要です。
遺言書で遺言執行者を決めておきましょう。
遺言執行には、法的な知識が必要になります。
遺言の効力が発生したときに、遺言執行者からお断りをされてしまう心配があります。
遺言の効力が発生した後の場合、遺言執行者は家庭裁判所に決めてもらう必要があります。
不動産以外の財産であっても、遺言書の内容に納得していない相続人がいる場合、受遺者に引渡そうとしないこともあります。
せっかく遺言書を書くのですから、スムーズな手続を実現できるように配慮しましょう。
遺言執行者を選任することで、家族をトラブルから守ろうという気持ちを実現することができます。
お互いを思いやり幸せを願う方は、遺言書作成を司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。
遺言書を見せてくれない
1遺言者が遺言書を見せてくれない
①遺言者の生存中は遺言書に効力がない
被相続人は、自分の財産を自由に処分することができます。
被相続人は、遺言書を作成して自分の財産を自由に引き継いでもらうことができます。
遺言書を作成したと聞いたら、内容が気になることでしょう。
遺言書を作成しても、遺言者の生存中は効力がありません。
遺言書の効力が発生するのは、遺言者が死亡したときだからです。
②遺言者は遺言書を書き直しができる
遺言書は、遺言者の意思を示すものです。
遺言者の最終の意思が優先されます。
遺言者は、遺言書を書き直すことができます。
遺言書を作成した後に、事情が変わることがあるからです。
財産の状況が変わる場合、書き直しが必要になるでしょう。
新たに誕生した孫や曽孫に、財産を譲りたくなるかもしれません。
財産を相続させる予定だった相続人が先に死亡することがあります。
遺言書は、何度でも書き直しができます。
複数の遺言書がある場合で、内容が両立しない場合、日付の新しい遺言書が有効になります。
相続人らと遺言書の書き直しはしないと約束しても、無効の約束です。
遺言書を書き直しするにあたって、相続人などの同意を受けなければならないと言ったルールはありません。
③遺言者は見せる義務はない
遺言書を作成したと言うのに、遺言書を見せてくれないことがあります。
たとえ、相続人になる予定の人であっても秘密にしておきたい内容があるでしょう。
遺言者の生存中、遺言書を見ることはできません。
遺言書を書き直しした場合、相続人などに報告する必要はありません。
遺言書は遺言者がひとりで作成できるから、ひとりで書き直しをすることができます。
遺言者本人は、他の人に遺言書を見せる義務はありません。
遺言者が見せてくれない場合、相続が発生するまで見ることはできません。
2相続開始後に公正証書遺言を見せてくれない
①公正証書遺言は公証役場で厳重保管
公正証書遺言は、遺言内容を公証人に取りまとめてもらって作る遺言書です。
証人2人に確認してもらって作成します。
公正証書遺言を作成した後、原本は公証役場で厳重保管されます。
公正証書遺言を作成した場合、遺言書の正本と謄本が渡されます。
正本や謄本を紛失しても、原本は公証役場で厳重保管されています。
公正証書遺言原本は公証役場に厳重保管されるから、紛失や改ざんの心配がありません。
②公証役場で検索ができる
公正証書遺言を作った場合、公証役場はデータを管理しています。
公証役場で遺言の有無を調べてもらうことができます。
昭和64年1月1日以降に作った公正証書遺言、秘密証書遺言が対象です。
コンピューターに登録されているのは、次の事項です。
・遺言した人の名前
・公証人の名前
・公証役場の名前
・遺言書を作った日
調べてもらうための手数料は、無料です。
全国どこの公証役場でも、調べてもらうことができます。
まずは近くの公証役場に出向いて、調べてもらいましょう。
郵便で調べてもらうように、請求することはできません。
遺言者が生存中は、遺言者本人と遺言者本人の代理人だけが調べてもらうことができます。
たとえ、家族の人が調べてもらおうとしても、答えてもらえません。
③公証役場で謄本請求ができる
遺言書の有無は、近くの公証役場で検索してもらうことができます。
公証役場のコンピューターで公正証書遺言があると分かった場合でも、内容については教えてもらえません。
公正証書遺言原本は、遺言書を作成した公証役場で厳重保管されています。
遺言書を作成した公証役場に対して、謄本を請求することができます。
謄本を見ると、遺言書の内容を知ることができます。
遺言者が生存中は、遺言者本人と遺言者本人の代理人だけが請求することができます。
たとえ、家族の人が請求しても、答えてもらえません。
遺言者の死亡後は、法律上の利害関係がある人だけが請求できます。
遺言者の相続人は、利害関係がある人です。
謄本を請求する場合、所定の手数料がかかります。
3相続開始後に自筆証書遺言を見せてくれない
①自筆証書遺言は家庭裁判所に提出
相続が発生した後に遺品整理をしていると、自筆証書遺言が見つかることがあります。
自筆証書遺言を見つけた人や預かっていた人は、家庭裁判所に提出する必要があります。
遺言書を家庭裁判所に届出ることを遺言書検認の申立てと言います。
遺言書検認の申立てを受け付けたら、家庭裁判所は相続人全員を家庭裁判所に呼び出します。
封筒に入って封がされている遺言書は、相続人立会いで家庭裁判所で開封してもらいます。
勝手に開封すると、5万円以下のペナルテイーになるおそれがあります。
遺言書であることに気づかず開封してしまっても、遺言書は無効になりません。
慌てて小細工をせずに、正直にそのまま提出します。
②検認調書が作成される
遺言書の検認とは、家庭裁判所で遺言書の状態を確認してもらう手続です。
遺言書の有効無効を確認する手続ではありません。
検認手続では、遺言書のの状態や形、書き直しや訂正箇所、日付や署名がどうなっているか裁判所が確認します。
確認した内容は、検認調書に取りまとめられます。
検認期日以降に遺言の改ざんや変造があった場合、検認調書と照らし合わせて確認することができます。
検認調書を見ると分かってしまうから、改ざんや変造を予防することができます。
遺言書の検認手続は、遺言書の改ざんや変造を予防する手続です。
遺言書の検認手続で、検認調書が作成されます。
③検認調書の謄本請求ができる
遺言書検認の申立てを受け付けたら、家庭裁判所は相続人全員を家庭裁判所に呼び出します。
遺言書があることを相続人に知らせ、立会の機会を与えるためです。
遺言書の検認期日に呼び出しがあった場合、申立人以外の人は欠席して差し支えありません。
検認期日に出席しても欠席しても、財産を相続できなくなることはありません。
検認期日に出席すれば、遺言書の内容を見ることができるでしょう。
検認期日に欠席しても、検認調書の謄本を請求することができます。
検認調書には、提出された遺言書のコピーが付いています。
検認調書の謄本請求で、遺言書の内容を知ることができます。
④検認をしないと相続手続ができない
検認を受けても受けなくても、遺言書の効果に変わりはありません。
検認を受けても受けなくても、無効の遺言書は無効です。
検認を受けても受けなくても、有効の遺言書は有効です。
検認は遺言書の状態を確認してもらうことであって、遺言書が有効か無効かを判断してもらうことではないからです。
検認を受けても受けなくても遺言書の効果は変わりませんが、検認を受けていない遺言書で相続手続はできません。
検認の後、検認済証明書の交付を申請しましょう。
遺言書と検認済証明書を一緒にして、相続手続を行います。
⑤検認を怠ると欠格のおそれ
だれが相続人になるかについては、民法で決められています。
同時に、民法では相続人になれない人も決められています。
例えば、被相続人を殺した人が相続することは社会感情からみても許せない、相続する人としてふさわしくないということは納得できるでしょう。
相続人としてふさわしくない人の相続資格を奪う制度を相続欠格と言います。
遺言書は、遺言者の意思を示すものです。
相続人としても、遺言者の意思を実現させてあげたいでしょう。
相続人が遺言書を隠匿して不当な利益を得ようとする場合、相続する人としてふさわしくないと言えます。
自筆証書遺言を見つけた人は、家庭裁判所に提出して検認を受けなければなりません。
遺言書の検認を怠ると、遺言書の隠匿にあたると判断されるおそれがあります。
遺言書の内容が自分に不利な内容である場合、不当な利益を得ようとしたと言えるでしょう。
他の相続人が遺留分侵害額請求をするのを避ける目的がある場合、不当な利益を得ようとしたと言えるでしょう。
不当な利益を得る目的で遺言書を隠匿した場合、相続欠格になるおそれがあります。
4法務局保管の自筆証書遺言を見せてくれない
①法務局保管の自筆証書遺言は検認不要
自筆証書遺言を作成した後、自分で保管するのが原則です。
自筆証書遺言は、保管場所に困ります。
遺言書の保管場所を家族と共有していないと、相続が発生した後に遺言書を見つけてもらえないかもしれません。
遺言書の保管場所を家族と共有していると、遺言書を破棄されたり改ざんされたりする心配があります。
自筆証書遺言を法務局に提出して、保管してもらうことができます。
法務局で保管してもらっている自筆証書遺言は、家庭裁判所の検認手続が不要です。
法務局保管の自筆証書遺言は、法務局で厳重保管されているからです。
②自筆証書保管事実証明書の交付請求ができる
自筆証書遺言を預かった場合、法務局はデータを管理しています。
法務局で遺言の有無を調べてもらうことができます。
遺言の有無を調べてもらうことができる法務局は、遺言書保管事務を扱っている法務局のみです。
名古屋市内であれば、名古屋法務局本局のみです。
熱田出張所や名東出張所では、遺言の有無を調べてもらうことができません。
遺言書保管事務を扱っている法務局は、法務局のホームページで調べることができます。
遺言書保管事務を扱っている法務局であれば、日本中どこの法務局でも請求することができます。
自筆証書遺言を預かっているか調べてもらうことを、遺言書保管事実証明書の交付請求と言います。
遺言者が生存中は、たとえ家族であっても交付請求をすることはできません。
遺言書保管事実証明書の交付請求には、所定の手数料がかかります。
郵送で請求する場合は、返信用の切手と封筒を添付します。
遺言者が自筆証書遺言を法務局に預けたとき、法務局は保管証を渡します。
保管証があれば、遺言書保管事実証明書の交付請求を省略することができます。
③遺言書情報証明書の交付請求ができる
遺言をした人が預けた遺言書は、預けた本人以外には返してはもらえません。
遺言をした遺言者本人が死亡した後は、相続人であっても返還されません。
その代わりに、遺言書の画像を印刷して交付するように請求することができます。
遺言書の画像を印刷して交付するように請求することを遺言書情報証明書の交付請求と言います。
遺言書情報証明書を見ると、遺言書の内容を知ることができます。
相続手続では、遺言書原本の代わりとして使うことができます。
相続人が遺言書情報証明書を受け取ったら、法務局から他の相続人全員に対して、遺言書を預かっていることが通知されます。
5遺言執行者には遺言書の開示義務がある
遺言書は作成するだけでは意味がありません。
遺言書の内容は、自動で実現するわけではないからです。
遺言執行者は、遺言書の内容を実現する人です。
遺言書の内容を実現するために、必要な権限が与えられます。
遺言執行者が職務を開始した場合、相続人に遺言書の内容を通知をする義務があります。
遺言執行者がいる場合、遺言書の開示を求めることができます。
遺言書の内容によっては、相続人の遺留分が侵害されていることがあるでしょう。
遺留分侵害額請求をする機会を与えるためにも、遺言書の内容を知らせることは重要です。
遺言執行者には、遺言書の開示義務があります。
6遺言書作成を司法書士に依頼するメリット
遺言書がある場合、相続財産について、相続人全員で、分け方を合意する必要はありません。
もっともトラブルになりやすい遺産分割協議で、相続人全員で合意をしなくていいのは大きなメリットです。
せっかく遺言書を作成しても、遺族に見つけてもらえなければ意味がありません。
同時に、死亡する前に自分に都合の悪い遺言書を隠したり捨ててしまったりする心配があります。
さらに、遺言書には厳格な書き方ルールがあります。
ルールが守られていない遺言書は無効になります。
書き方のルールは守られていても、内容があいまいだったり、不適切であったために、実現できない遺言書も少なくありません。
せっかく遺言書を書くのであれば、家族を幸せにできる遺言書を確実に作りましょう。
司法書士は確実な遺言書を作るお手伝いをします。
家族のために適切で確実な遺言書を作りたい方は、司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。
遺言書なしで遺贈はできない
1遺言書なしで遺贈はできない
①遺贈とは遺言書で財産を引き継いでもらうこと
遺贈とは、遺言書を作成して財産を引き継いでもらうことです。
相続人や相続人以外の人に、引き継いでもらうことができます。
相続が発生したら、被相続人の財産は相続人が相続します。
相続人になる人は、法律で決められています。
法律で決められた人以外の人が相続人になることはできません。
法律で決められた人以外の人が遺贈を受けることできます。
遺贈は、相続人以外の人に財産を引き継いでもらうことができるからです。
遺言書を作成して、相続人や相続人以外の人に財産を引き継いでもらうことができます。
②無効の遺言書で遺贈はできない
相続が発生したら、被相続人の財産は相続人が相続します。
遺言書がなくても、相続人は被相続人の財産を相続します。
相続人以外の人は、相続することはできません。
相続できるのは、法律で決められた相続人だけだからです。
相続人以外の人は、遺贈を受けることができます。
遺贈は、遺言書に従って財産を引き継ぐことです。
遺言書なしで、遺贈を受けることはできません。
被相続人が遺言書のつもりで、書面を作っていることがあります。
遺言書には、厳格な書き方ルールがあります。
書き方ルールに違反した遺言書は、無効です。
遺言書が無効になったら、遺贈をすることはできません。
遺贈は、遺言書に従って財産を引き継いでもらうことだからです。
無効の遺言書で、遺贈をすることはできません。
③口頭の遺言はハードルが高い
「私が死亡したら財産を譲る」と、被相続人が常々言っていることがあります。
財産を譲ってもらえると、期待してしまうでしょう。
遺言書作成する場合、自筆証書遺言か公正証書遺言を作成することがほとんどです。
自筆証書遺言は、自分で書いて作る遺言書です。
遺言者がひとりで作ることができるから、手軽な遺言書です。
公正証書遺言は、遺言内容を伝えて公証人が取りまとめる遺言書です。
証人2人に確認してもらって作ります。
自筆証書遺言と公正証書遺言は、どちらも遺言内容は書面にします。
口頭で、自筆証書遺言や公正証書遺言を作ることはできません。
口頭で遺言をすることができないわけではありません。
遺言者に生命の危機が迫っているなどの事情がある場合、口頭で遺言をすることができます。
「私が死亡したら財産を譲る」と被相続人が常々言っていたなどの軽い事情で認められるものではありません。
実際に生命の危機が迫っているときに、遺言をすることはほとんどありません。
特殊な事情があるときに特別に遺言ができること自体、あまり知られていません。
遺言者に生命の危機が迫っているときの遺言は、20日以内に家庭裁判所に対して確認の審判が必要です。
期限までに確認がされなければ、遺言の効力がありません。
遺言者に生命の危機が迫っているときの遺言は、通常の遺言ができるようになってから6か月経過したら当然に無効になります。
口頭で遺言をすることは、非常に高いハードルがあります。
④公正証書遺言がおすすめ
遺言書なしで、遺贈をすることはできません。
せっかく遺言書を作成しても、遺言書が無効になったら遺贈をすることはできなくなります。
遺言者は、法律の知識がないことが多いでしょう。
専門家のアドバイスを受けずに遺言書を作成すると、書き方ルールに違反しがちです。
書き方ルールに違反した遺言書は、無効になります。
公正証書遺言は、公証人が書面に取りまとめます。
公証人は、法律の専門家です。
公正証書遺言は公証人が関与します。
書き方ルールに違反して、遺言書が無効になることは考えられません。
公正証書遺言原本は、公証役場で厳重に保管されます。
公証役場で厳重に保管されているから、改ざんや変造があり得ません。
仮に相続人間で改ざんや変造が疑われた場合、大きなトラブルになるでしょう。
公正証書遺言は改ざんや変造があり得ないから、相続人間のトラブルを減らすことができます。
せっかく遺言書を作成するのであれば、公正証書遺言がおすすめです。
2遺言書がないときは相続人が相続
①遺産分割協議は相続人全員の合意が必要
相続が発生したら、被相続人の財産は相続人が相続します。
相続財産は、相続人全員の共有財産です。
相続財産の分け方は、相続人全員の合意で決める必要があります。
遺言書がある場合、遺言書のとおりに財産を分けることができます。
遺言書がない場合、相続人全員の話し合いで分け方を決定します。
「私が死亡したら財産を譲る」と、被相続人が常々言っていることがあります。
「私が死亡したら財産を譲る」と言った相手が相続人であることがあります。
他の相続人全員が被相続人の言葉に納得していれば、相続人全員の合意ができるでしょう。
一部の相続人が被相続人の言葉に納得できないことがあります。
納得できない相続人がいる場合、相続人全員の合意は難しいでしょう。
合意できない相続人がいる場合、相続財産の分け方を決めることはできません。
相続財産の分け方は、多数決で決めることはできないからです。
遺産分割協議の成立には、相続人全員の合意が必要です。
②相続人が相続した後に贈与ができる
相続が発生したら、被相続人の財産は相続人が相続します。
相続人になる人は、法律で決められています。
法律で決められた人以外の人は、相続人になりません。
相続人以外の人は、相続することはできません。
「私が死亡したら財産を譲る」と言った相手が相続人以外の人であることがあります。
相続人全員が合意しても、相続人以外の人は相続することはできません。
相続できるのは、相続人だけだからです。
相続人が一旦相続した後、贈与することはできます。
自分の財産は、自由に贈与することができるからです。
贈与する財産によっては、贈与税の対象になります。
贈与税は、想像以上に高額になりがちです。
3死因贈与は口頭でも成立
①死因贈与は契約
遺贈とは、遺言書を作成して財産を引き継いでもらうことです。
相続人や相続人以外の人に、財産を引き継いでもらうことができます。
財産を引き継いでもらう方法は、遺贈だけではありません。
財産の持ち主は、自分の財産を自由に贈与することができます。
贈与は、贈与する人と贈与を受ける人の契約です。
「私が死亡したら財産を贈与する」と言った約束も、有効です。
「私が死亡したら財産を贈与する」と言った約束を死因贈与と言います。
贈与を受ける人は、相続人であっても相続人以外の人であっても差し支えありません。
遺贈をするためには、遺言書が必要です。
遺言書なしに、遺贈をすることはできません。
贈与は贈与する人と贈与を受ける人の合意で成立します。
合意があれば成立するから、口頭の合意でも有効です。
贈与契約は、契約書などの書面作成を要件とはされていないからです。
②贈与契約書がないと信用されない
贈与契約は、口頭の合意でも成立します。
贈与する人が生きている場合、贈与をすぐに実行してくれるでしょう。
死因贈与は、贈与する人が死亡した後に実行される契約です。
贈与する義務は、贈与する人の相続人が相続します。
贈与する人の相続人は、贈与契約のことを知らないかもしれません。
贈与契約を知らない場合、贈与する人の相続人は贈与を実行しないでしょう。
贈与を実行してもらうためには、贈与契約があったことを立証する必要があります。
口頭の贈与契約は、立証が困難です。
贈与契約は口頭の合意でも成立しますが、おすすめできません。
口頭のみの贈与契約は、第三者に信用されないからです。
③死因贈与の実現には相続人全員の協力
「私が死亡したら財産を贈与する」と言った約束も、有効です。
約束してもらうだけでは、意味がありません。
贈与は自動で実現されるわけではないからです。
贈与すると約束してもらった財産は、相続人が管理しているでしょう。
贈与してもらうには、相続人全員の協力が必要です。
被相続人が贈与契約を知っていても、相続人は贈与契約に賛成できないかもしれません。
贈与契約に不満を持つ相続人は、贈与の実行に協力をしてくれないでしょう。
死因贈与の実現には、相続人全員の協力が必要です。
④死因贈与契約は公正証書がおすすめ
死因贈与は口頭でも成立しますが、おすすめできません。
相続人に、信用されないからです。
口頭で合意するだけよりは、贈与契約書を作成する方がいいでしょう。
単に私文書で作成するよりは、公正証書にするのがおすすめです。
公正証書で死因贈与契約をすることで、相続人らとのトラブルを減らすことができます。
死因贈与契約書の作成は、公正証書がおすすめです。
⑤死因贈与は生前に仮登記ができる
「私が死亡したら財産を贈与する」と約束した財産が不動産であることがあります。
死因贈与契約をした場合、生前に不動産に仮登記をすることができます。
仮登記とは、将来の登記の順位を保全する登記です。
通常の登記は、仮登記と比較して本登記と言います。
仮登記がされた後は、登記簿上に死因贈与を受ける人がいることが公示されます。
相続が発生した後、相続人が死因贈与契約を知らないことがあります。
相続人が相続して、すぐに売却することがあります。
仮に仮登記がない場合、死因贈与契約のことを知らずに不動産を売却してしまうでしょう。
売却したら、買主は直ちに所有権移転登記をします。
買主が所有権を主張するためには、所有権移転登記をする必要があるからです。
買主が所有権移転登記をした後で、死因贈与をされていたと文句を言うことはできません。
所有権を主張するためには、登記が必要だからです。
仮登記があれば、死因贈与を受ける人がいることが分かります。
仮登記があれば、事実上契約する人はいないでしょう。
死因贈与は、生前に仮登記ができます。
4遺言書作成を司法書士に依頼するメリット
遺言書は、遺言者の意思を示すものです。
自分が死んだことを考えたくないという気持ちがあると、抵抗したくなるかもしれません。
遺言書は遺言者の意思を示すことで、家族をトラブルから守るものです。
遺贈とは、遺言によって、法定相続人や法定相続人以外の人に、財産を譲ってあげるものです。
遺贈は簡単に考えがちですが、思いのほか複雑な制度です。
遺言執行には法的な知識が必要になります。
遺言の効力が発生したときに、遺言執行者からお断りをされてしまう心配があります。
せっかく遺言書を書くのですから、スムーズな手続を実現できるように配慮しましょう。
お互いを思いやり幸せを願う方は、遺言書作成を司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。
遺言執行者が遺贈義務者
1遺言書を作成して遺贈
①遺言書で相続人や相続人以外の人に遺贈ができる
自分が生きている間、自分の財産を自由に処分することができます。
自分が死亡した後、自分の財産をだれに引き継いでもらうのか自由に決めることができます。
遺贈とは、遺言書で相続人や相続人以外の人に財産を引き継いでもらうことです。
相続人になる人は、法律で決められています。
相続人は、相続することができるし遺贈を受けることができます。
相続人以外の人は、相続することはできません。
遺贈を受けることができます。
財産を引き継いでもらう場合、遺言書に基づいて相続手続をします。
相続手続先の人が分かるように、財産を引き継ぐ人と引き継ぐ財産を特定することが重要です。
遺言書を作成して、相続人や相続人以外の人に遺贈をすることができます。
②遺言執行者が遺言書の内容を実現する
遺言書は、作成するだけでは意味がありません。
遺言書の内容は、自動で実現されるわけではないからです。
遺言執行者は、遺言書の内容を実現する人です。
遺言書の内容を実現するため、必要な権限が与えられます。
遺言執行者がいる場合、相続人は遺言執行の妨害行為はできません。
遺言執行者が遺言書の内容を実現してくれます。
③受遺者・相続人を遺言執行者に選任できる
遺言執行者は、遺言書で選任することができます。
遺言書を作成する前に、遺言執行者に選任する人に承諾をもらっておくといいでしょう。
遺言書は、遺言執行者を選任しても選任しなくても有効です。
遺言執行者になるのに、特別な資格はありません。
次の人は、遺言執行者になることはできません。
(1)未成年者
(2)破産者
上記の人以外であれば、だれでも遺言執行者になることができます。
相続人を遺言執行者に選任しても、差し支えありません。
受遺者を遺言執行者に指名しても、問題はありません。
受遺者とは、遺贈を受ける人です。
遺言執行者になれないのは、未成年者と破産者だけだからです。
受遺者・相続人を遺言執行者に選任することができます。
2遺言執行者が遺贈義務者
①遺贈義務者とは遺贈を実行する義務を負う人
遺贈とは、遺言書で相続人や相続人以外の人に財産を引き継いでもらうことです。
遺言書は、遺言者が死亡したときに効力が発生します。
遺言者は死亡した後だから、自分で遺贈を実行することができません。
だれかが遺贈を実行する必要があります。
遺贈義務者とは、遺贈を実行し実現する義務を負う人です。
②遺言執行者が遺贈を実行する
遺言執行者は、遺言書の内容を実現する人です。
遺言書に遺贈することがある場合、遺言執行者が遺贈を実行し実現します。
遺言執行者は、遺贈義務者です。
③遺言執行者は家庭裁判所で選任してもらえる
相続手続は、何度も経験することはないでしょう。
だれにとっても不慣れで、分からないことがいっぱいです。
スムーズに手続できることは、あまりないでしょう。
遺言執行者は、遺言書の内容を実現する人です。
遺言執行者がいると、わずらわしい相続手続をおまかせすることができます。
遺言書で遺言執行者を選任していない場合、家庭裁判所に遺言執行者選任の申立てをすることができます。
遺言執行者は、家庭裁判所で選任してもらうことができます。
④遺言執行者がいないときは相続人が遺贈を実行する
遺言書は、遺言執行者を選任しても選任しなくても有効です。
遺言書で遺言執行者を選任しても、遺言執行者に就任する義務はありません。
遺言書で選任した遺言執行者から就任を辞退されることがあります。
遺言執行者がいない場合、相続人が遺贈を実行し実現します。
遺言執行者がいない場合、遺贈義務者は相続人です。
⑤遺言執行者と相続人がいないときは相続財産清算人
被相続人が天涯孤独である場合、法律で決められた相続人が存在しないことがあります。
相続人がまったくいない場合、家庭裁判所に相続財産清算人選任の申立てをすることができます。
相続財産清算人が選任された場合、相続財産清算人が遺贈を実行し実現します。
相続財産清算人が選任された場合、遺贈義務者は相続財産清算人です。
3遺贈義務者に引渡義務
①相続発生の状態で引渡し
遺贈義務者とは、遺贈を実行し実現する義務を負う人です。
遺贈義務者には、遺贈する財産を引き渡す義務があります。
受遺者から引き渡し請求があった場合、引渡を拒絶することはできません。
遺贈義務者は、相続が発生した時点の状態で引渡す義務があります。
相続が発生した時点で遺贈する財産がすでに損傷していた場合、そのままの状態で引渡せば義務を果たしたことになります。
相続が発生した時点ですでに損傷していた場合、修理する義務はありません。
修理費用を負担する必要はありません。
②相続発生後に損傷したら修理して引渡し
遺贈義務者は、相続が発生した時点の状態で引渡す義務があります。
相続発生後に損傷し修理が必要になった場合、修理する必要があります。
修理費用を負担しなければなりません。
4受遺者が相続人のときの遺贈登記
①申請人
遺言書に「遺贈する」とあれば、譲ってもらう人が相続人であっても相続人以外の人でも、遺贈で手続します。
遺贈登記は、権利者と義務者が共同で登記申請をします。
受遺者が相続人である場合、登記申請書に権利者と義務者を記載するだけで義務者の関与が不要です。
形式的には共同申請ですが、事実上、受遺者が単独申請をすることができます。
②添付書類
登記申請書に添付する書類は次のとおりです。
(1)遺言書
(2)検認証明書
(3)被相続人が死亡した記載のある戸籍謄本
(4) 被相続人の除票か戸籍の除附票
(5) 受遺者の住民票か戸籍の附票
(6) 登記委任状
(7) 不動産の固定資産税評価証明書
遺言書が公正証書遺言である場合は、検認証明書は不要です。
遺言書が自筆証書遺言である場合で、かつ、法務局で保管されていた場合は、検認証明書は不要です。
③登録免許税
(1)原則1000分の4
遺贈による所有権移転登記で相続人に対するものは、不動産の評価額の1000分の4です。
(2) 相続人が死亡している場合非課税
遺贈による所有権移転登記をする場合で、かつ、登記名義人になる人がすでに死亡している場合、
登録免許税は非課税になります。
「租税特別措置法第84条の2の3第1項により非課税」と申請書に記載する必要があります。
(3)100万円以下の土地は非課税
不動産の価額が100万円以下の場合、登録免許税は非課税になります。
「租税特別措置法第84条の2の3第2項により非課税」と申請書に記載する必要があります。
5受遺者が相続人以外で遺言執行者がいるときの遺贈登記
①申請人
遺贈登記は、権利者と義務者が共同で登記申請をします。
権利者は受遺者、義務者は遺贈義務者です。
遺言執行者がいる場合、遺贈義務者は遺言執行者です。
遺言執行者とは、遺言書の内容を実現する人です。
遺言執行者は、受遺者であっても構いません。
遺言執行者は遺言の内容を実現するために必要な行為をする権限があります。
協力しない相続人が遺言執行を妨害した場合、原則として、妨害行為は無効になります。
遺贈登記は、受遺者と遺言執行者が共同で登記申請をします。
②添付書類
登記申請書に添付する書類は次のとおりです。
(1)遺言書
(2)検認証明書
(3)被相続人が死亡した記載のある戸籍謄本
(4) 被相続人の除票か戸籍の除附票
(5) 不動産の権利証
(6) 遺言執行者の印鑑証明書(発行後3か月以内)
(7) 受遺者の住民票か戸籍の附票
(8) 登記委任状
(9) 不動産の評価証明書
遺言書が公正証書遺言である場合は、検認証明書は不要です。
遺言書が自筆証書遺言である場合で、かつ、法務局で保管されていた場合は、検認証明書は不要です。
所有権移転登記をする場合、登記原因を証明する書類を提出する必要があります。
(1)遺言書(2)検認証明書(3)被相続人が死亡した記載のある戸籍謄本(4) 被相続人の除票か戸籍の除附票は、登記原因証明情報として提出します。
売買などで所有権移転登記をする場合、法務局報告形式の登記原因証明情報を提出する場合があります。
法務局報告形式の登記原因証明情報に登記義務者が押印することで、内容の真実性が確保できるとされているからです。
遺贈は登記義務者が内容を認めただけでは、真実性が確保されません。
遺贈の真実性の担保のため、遺言書や戸籍謄本の提出が欠かせません。
このため法務局報告形式の登記原因証明情報を利用することはできません。
登記申請を司法書士に依頼する場合、遺言執行者と受遺者から登記委任状を出せば済みます。
③登録免許税
遺贈による所有権移転登記で相続人以外の人に対するものは、不動産の評価額の1000分の20です。
6遺贈義務者が住所変更登記
不動産を持っている場合、住所や氏名が変わったら、その都度手続するのが原則です。
不動産を売却する予定がない場合、先延ばししていることは割とよくあります。
相続登記では、登記簿上の住所氏名と被相続人死亡時の住所氏名が異なっている場合、住所変更登記や氏名変更登記はする必要がありません。
遺贈の登記では、登記簿上の住所氏名と被相続人死亡時の住所氏名が異なっている場合、住所変更登記や氏名変更登記が必要です。
遺贈義務者が住所変更登記や氏名変更登記をする必要があります。
登記簿上の住所氏名と被相続人死亡時の住所氏名が異なっているのに、住所変更登記や氏名変更登記を申請せずに、遺贈登記を申請した場合、遺贈登記を取下げすることになります。
後から住所変更登記や氏名変更登記を出しても、認められません。
7特定遺贈の放棄は遺贈義務者へ通知
①特定遺贈の放棄は遺贈義務者へ通知
特定遺贈は、遺言書を作成して財産を引き継いでもらうことです。
遺言書は、遺言者がひとりで作ります。
相続人や財産を受け取る人の同意なく、一方的に遺言書を作ることができます。
財産を引き継ぐことができるとは言っても、ありがた迷惑であることがあります。
遺言書に書いてあるからと言っても、相続人に気兼ねすることがあります。
相続人とトラブルになりたくないから、ご辞退したいことがあるでしょう。
遺贈は、放棄することができます。
特定遺贈を放棄する場合、遺贈義務者に通知します。
遺言執行者がいる場合、遺言執行者が遺贈義務者です。
遺言執行者がいない場合、相続人が遺贈義務者です。
遺言執行者も相続人もいない場合、相続財産清算人が遺贈義務者です。
特定遺贈の放棄は、遺贈義務者へ通知します。
②特定遺贈は一部放棄ができる
特定遺贈は、遺言書を作成して特定された具体的な財産を引き継いでもらうことです。
特定遺贈は、一部の財産だけ受け取って他の財産を放棄することができます。
例えば「現金500万円と土地を遺贈する」遺言書があった場合、次の選択をすることができます。
(1)現金500万円と土地を受け取る
(2)現金500万円のうち100万円と土地を受け取る(現金400万円を放棄する)
(3)現金500万円のうち100万円だけ受け取る(現金400万円と土地を放棄する)
(4)何も受け取らない(特定遺贈すべてを放棄する)
具体的に分けることができるのであれば、一部だけ受け取ることができます。
特定遺贈は、一部だけ放棄することができます。
8不動産の名義変更を司法書士に依頼するメリット
大切な家族を失ったら、大きな悲しみに包まれます。
やらなければいけないと分かっていても、気力がわかない方も多いです。
不動産は重要な財産であることも多いので、登記手続は一般の方から見ると些細なことと思えるようなことでやり直しになることも多いです。
住所変更登記が必要になるか必要にならないかなどもそのひとつでしょう。
相続手続は一生のうち何度も経験するものではありません。
だれにとっても不慣れで手際よくできるものではありません。
相続手続で使われる言葉は、法律用語なので一般の方にとって、日常で聞き慣れないものでしょう。
司法書士は登記の専門家です。
相続手続も、登記手続も、丸ごとお任せいただけます。
相続手続でへとへとになる前に、司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。
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