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公正証書遺言を作成して全財産を相続させる
1一人に全財産を相続させることができる
①相続財産の分け方に制限はない
被相続人は、生前に自分の財産を自由に処分することができます。
遺言書を作成して、自分の死亡後だれに財産を引き継ぐのか自由に決めることができます。
相続人に引き継ぐことも、相続人以外の人に引き継ぐこともできます。
民法では、法定相続分が決められています。
法定相続分どおりに引き継ぐこともできるし、法定相続分とは違う割合で引き継ぐこともできます。
相続財産の分け方に、制限はないからです。
「全財産を〇〇〇〇に相続させる」遺言も、有効な遺言書です。
遺言書を作成して、相続財産の分け方を自由に決めることができます。
相続財産の分け方に、制限はありません。
②一人に全財産を相続させるときの遺言書の記載例
遺言書
遺言者は、以下のとおり遺言をする。
第1条
遺言者は、遺言者の有する全財産を、遺言者の配偶者〇〇〇〇(昭和〇年〇月〇日生まれ)に相続させる。
第2条
遺言者は、本遺言書の遺言執行者として、下記の者を指定する。
事務所住所
〇〇県〇〇市〇〇区〇〇町〇丁目〇〇番〇〇号
司法書士〇〇〇〇
昭和〇年〇月〇日生まれ
令和〇年〇月〇日
〇〇県〇〇市〇〇区〇〇町〇丁目〇〇番〇〇号
遺言者 〇〇〇〇 印
③遺言書で財産を列挙する方が分かりやすい
全財産を一人に相続させたい場合、「遺言者の有する全財産を相続させる」と書くことができます。
家族であっても、遺言者がどのような財産を保有しているのか詳細に知らないことがあります。
遺言者の気持ちとしては、当然知っているものと考えているかもしれません。
どこにどのような財産があるのか手がかりがない状態で、相続手続をするのは非常に困難です。
できることであれば、すべての財産を列挙することをおすすめします。
不動産であれば、不動産の登記事項証明書を取り寄せて書き写します。
預貯金であれば、通帳を見て金融機関の名称、支店、預金種別、口座番号を記載します。
財産を客観的に特定できない場合、相続手続ができなくなるおそれがあるからです。
そのうえで記載のない財産が見つかった場合、その財産を〇〇〇〇に相続させると記載するといいでしょう。
財産をひとつひとつ列挙する方が家族にとって分かりやすく、おすすめです。
④全財産を遺贈する記載例
遺言書
遺言者は、以下のとおり遺言をする。
第1条
遺言者は、遺言者の有する全財産を、〇〇〇〇(昭和〇年〇月〇日生まれ)に遺贈する。
第2条
遺言者は、本遺言書の遺言執行者として、下記の者を指定する。
事務所住所
〇〇県〇〇市〇〇区〇〇町〇丁目〇〇番〇〇号
司法書士〇〇〇〇
昭和〇年〇月〇日生まれ
令和〇年〇月〇日
〇〇県〇〇市〇〇区〇〇町〇丁目〇〇番〇〇号
遺言者 〇〇〇〇 印
⑤相続人以外の人に遺贈ができる
相続が発生したら、被相続人の財産は相続人が相続します。
相続人になる人は、法律で決められています。
相続人以外の人が相続することはできません。
疎遠になった相続人より、お世話になった人に財産を引き継ぎたいことがあるでしょう。
遺贈とは、遺言書を作成して相続人や相続人以外の人に財産を引き継ぐことです。
遺言書を作成して、相続人以外の第三者に全財産を遺贈することができます。
遺贈を受ける人は、自然人以外に慈善団体などの法人でも差し支えありません。
遺言書を作成して、相続人以外の人に遺贈ができます。
2公正証書遺言があっても遺留分侵害額請求ができる
①遺留分は最低限の権利
被相続人は、生前自分の財産を自由に処分することができます。
遺言書を作成して、自分の死後にだれに財産を引き継ぐのが自由に決めることができます。
被相続人の財産は、ひとりで築いた財産ではないでしょう。
家族の協力があってこそ、築くことができた財産のはずです。
被相続人の名義になっているからといって、まったく無制約の自由にすることはできません。
今まで協力してきた家族に、酷な結果となることがあるからです。
被相続人に近い関係の相続人には、相続財産に対して最低限の権利が認められています。
遺留分とは、被相続人に近い関係の相続人に認められる最低限の権利です。
遺留分は、兄弟姉妹以外の相続人に認められます。
遺留分を認められる相続人を遺留分権利者と言います。
②遺留分を侵害する遺言書でも無効にならない
被相続人に近い関係の相続人には、遺留分が認められます。
全財産を一部の相続人に相続させる遺言書を作成した場合、他の相続人の遺留分を侵害するでしょう。
遺留分を侵害しても、それだけで遺言書は無効になりません。
全財産を相続させる遺言書は、有効な遺言書です。
遺留分を侵害する遺言書でも、遺言書は無効になりません。
③有効な遺言書であっても遺留分侵害額請求ができる
遺留分は、兄弟姉妹以外の相続人に認められた最低限の権利です。
不公平な遺言書によって配分された財産が遺留分に満たない場合、遺留分侵害額請求をすることができます。
全財産を相続させる遺言書は、有効な遺言書です。
有効な遺言書であっても、遺留分侵害額請求をすることができます。
公正証書遺言であっても、遺留分侵害額請求をすることができます。
遺留分は、最低限の権利だからです。
全財産を相続させる内容で公正証書遺言を作成するだけで、遺留分を奪うことはできません。
有効な遺言書であっても、遺留分侵害額請求をすることができます。
④遺留分を認めない遺言書に効力はない
遺言書には、さまざまなことを書くことができます。
遺言書に書くことで法律上意味があることも意味がないことも、書くことができます。
家族への感謝の気持ちを持ちながら、伝える機会を逃していることがあります。
遺言書に、家族への感謝の気持ちを書くことができます。
家族への感謝の気持ちに、法律上の意味はありません。
法律上意味がない事項を付言事項と言います。
全財産を相続させる遺言書を見たら、他の相続人はがっかりするでしょう。
不公平な遺言書によって配分された財産が遺留分に満たない場合、遺留分侵害額請求をすることができます。
遺留分侵害額請求がされたら、相続人間で深刻なトラブルに発展するでしょう。
遺言書で「遺留分を認めない」「遺留分侵害額請求を禁止する」と書くことがあります。
遺言書に書くことで意味があることは、法律で決められています。
遺留分を認めない遺言書に、効力はありません。
「遺留分を認めない」「遺留分侵害額請求を禁止する」と書いた場合、付言事項と考えられます。
遺留分は、遺留分権利者に認められた最低限の権利だからです。
不公平な遺言書を作成するだけで、遺留分を奪うことはできません。
「遺留分を認めない」「遺留分侵害額請求を禁止する」と書いてあっても、遺留分侵害額請求をすることができます。
付言事項に、法律上の効力はないからです。
遺留分を認めない遺言書に、法律上の効力はありません。
⑤兄弟姉妹に遺留分はない
被相続人に子どもがいない場合で、かつ、親などの直系尊属が被相続人より先に死亡している場合、兄弟姉妹が相続人になります。
兄弟姉妹は相続人になっても、遺留分は認められません。
遺留分は、兄弟姉妹以外の相続人に認められる権利だからです。
兄弟姉妹が被相続人より先に死亡した場合、兄弟姉妹の子どもが代襲相続をします。
被相続人の甥姪が代襲相続人になっても、遺留分は認められません。
兄弟姉妹に遺留分がないから、引き継げないのが当然だからです。
全財産を相続させる遺言書を作成しても、遺留分侵害額請求を心配する必要はありません。
例えば、子どもがいない夫婦で一方が死亡した場合、配偶者と兄弟姉妹が相続人になるでしょう。
公正証書遺言を作成して、配偶者に全財産を相続させることができます。
兄弟姉妹は相続人になるから、配偶者に全財産を相続させるためには遺言書が必要になります。
兄弟姉妹が相続人になる場合、兄弟姉妹に遺留分はありません。
3公正証書遺言の作り方
STEP①遺言内容を仮作成
遺言書を作成すると言うと、財産の分け方が真っ先に思い浮かぶでしょう。
遺言者にどのような財産があるのか、だれに引き継ぐのかメモ書きをします。
財産の分け方以外のことも、遺言書に盛り込むことができます。
ステップ1で、遺言内容をメモなどで仮作成します。
STEP②財産に関する書類を準備
遺言書に財産の分け方を書く場合、客観的に特定できる必要があります。
銀行預金などであれば、金融機関名、支店名、預金種別、口座番号、口座名義で特定します。
通帳のコピーを準備するといいでしょう。
家族にとって、自宅は重要な財産でしょう。
「自宅」などの記載は、客観的に特定できるとは言えません。
家族にとって「自宅」は当然のことでしょう。
法務局など第三者にとっては、自宅はどこにあるどの不動産なのか分からないからです。
土地は、所在、地番、地目、地積で特定します。
建物は、所在、家屋番号、種類、構造、床面積で特定します。
自宅の住所は、暗記しているでしょう。
自宅がある土地や建物の所在は、住所と異なることがあります。
登記簿や権利証を確認する必要があります。
ステップ2で、財産に関する書類を準備します。
STEP③証人2人を手配
公正証書遺言を作成する場合、証人2人に確認してもらう必要があります。
証人に特別な資格は、不要です。
次の人は、証人になれません。
(1)未成年者
(2)推定相続人、受遺者、これらの人の配偶者、直系血族
(3)公証人の配偶者、4親等内の親族、書記、使用人
証人を手配するのが難しいときは、遺言書作成をサポートする司法書士に依頼することができます。
証人になる人は、公証役場に本人確認書類を提出します。
ステップ3で、証人2人を手配します。
STEP④公証人と打合せ
公正証書遺言は、原則として公証役場に出向いて作成します。
日本中どこの公証役場でも、公正証書遺言を作成することができます。
病気や身体などの事情で公証役場に出向くことができない場合、公証人に出張してもらうことができます。
公証人を予約して、遺言内容の打ち合わせをします。
公証人との打ち合わせは、適切に書面に取りまとめる点についての打合せです。
遺言者の希望を実現する方法については、事前に考えておく必要があります。
遺言内容によっては、相続人間でトラブルに発展するおそれがあるかもしれません。
トラブル防止について、公証人に相談することはできません。
どのような遺言書を作成するといいのか、司法書士などの専門家にサポートを受けるといいでしょう。
ステップ4で、公証人と打合せをします。
STEP⑤公正証書文案確認
公証人との打ち合わせが終わると、公証人から公正証書文案が示されます。
遺言書の内容が遺言者の希望に沿っているのか、よく確認します。
ステップ5で、公正証書の文案を確認します。
STEP⑥証人立会いで公正証書遺言作成
公正証書の文案に問題がなければ、遺言書の作成日を予約します。
証人2人と一緒に、遺言書作成当日に公証役場に出向きます。
遺言書作成当日は、遺言内容を口授し遺言内容に問題ないか確認します。
問題がなければ、遺言者、証人2人が署名し押印します。
時間は、長くても30分程度です。
ステップ6で、証人立会いで公正証書遺言を作成します。
STEP⑦手数料の支払
公正証書遺言を作成するためには、手数料がかかります。
手数料は、現金の他クレジットカードで支払うことができます。
公証役場に支払う手数料は、公証人手数料令によって決められています。
公証人に出張してもらったときは、手数料が1.5倍になるうえ日当と交通費実費がかかります。
公正証書遺言作成後に渡される正本と謄本の費用が数千円程度かかります。
ステップ7で、公証役場に手数料の支払います。
4遺言書作成を司法書士に依頼するメリット
自せっかく遺言書を作るのなら、確実な公正証書遺言がおすすめです。
公正証書遺言を作成するときは、司法書士などの専門家にサポートしてもらうといいでしょう。
相続人になる予定の人の遺留分に配慮し、遺言書文案作成から公正証書遺言作成まで、サポートを受けられるからです。
希望すれば、証人を準備し遺言執行までトータルでサポートしてもらうことができます。
確実な遺言書を作成できるから、遺言者は安心できます。
手間と時間がかかる相続手続から解放されるから、相続発生後に相続人は安心です。
遺言者も家族も安心できる公正証書遺言作成を司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。
公正証書遺言が無効になる
1公正証書遺言は安心確実
①書き方ルールの違反で無効はあり得ない
公正証書遺言とは、遺言内容を公証人に伝え公証人が取りまとめる遺言書です。
証人2人確認してもらって、作ります。
遺言書には、厳格な書き方ルールがあります。
書き方ルールに違反した遺言書は、無効になります。
公証人は、法律の専門家です。
遺言書の書き方ルールを熟知しています。
公正証書遺言は、書き方ルール違反で無効になることは考えられません。
自筆証書遺言は、自分で書いて作る遺言書です。
遺言者が法律に詳しいことは、あまりないでしょう。
書き方ルールに違反して無効になる例が少なくありません。
自筆証書遺言と較べると、公正証書遺言は安心確実です。
②公正証書遺言原本は公証役場で厳重保管
公正証書遺言原本は、公証役場で厳重に保管されます。
公正証書遺言作成後に渡されるのは、正本と謄本です。
正本と謄本は、遺言書のコピーです。
遺言者の手元にあるのは遺言書のコピーに過ぎないから、変造や改ざんがあり得ません。
遺言者本人が紛失する心配もありません。
自筆証書遺言は、原則として自分で保管します。
保管場所を家族と共有していないと、相続発生後に家族が見つけられないおそれがあります。
保管場所を家族と共有していると、変造や改ざんのおそれがあります。
保管場所を知っていると、他の相続人から変造や改ざんの疑いをかけられるかもしれません。
遺言書に変造や改ざんの疑いがあると、熾烈な相続人トラブルに発展するでしょう。
公正証書遺言であれば、変造や改ざんがあり得ません。
公正証書遺言原本は、公証役場で厳重に保管されるからです。
相続人トラブルを防ぐことができるから、公正証書遺言は安心確実です。
③家庭裁判所で検認不要
相続が発生したら、公正証書遺言は直ちに執行することができます。
公正証書遺言は、家庭裁判所で検認手続をする必要がないからです。
検認手続とは、自筆証書遺言などを家庭裁判所で開封して確認してもらう手続です。
自宅などで見つけた自筆証書遺言は、検認手続が必要です。
検認手続が必要なのに検認手続をしていない場合、相続手続をすることができません。
遺言書を見つけた家族が家庭裁判所に手続するのは、負担が重いでしょう。
家庭裁判所で検認手続不要だから、公正証書遺言は安心です。
2公正証書遺言が無効になる
①遺言者に遺言能力がないと無効
公正証書遺言といえども、絶対に無効にならないといったことはありません。
ごくまれに、公正証書遺言が無効になることがあります。
遺言書を作成するためには、遺言者に遺言能力があることが必要です。
遺言能力とは、遺言書の内容を理解して遺言の結果を理解する能力です。
例えば、認知症になると物事のメリットデメリットを適切に判断することができなくなります。
重度の認知症になると、遺言能力は失われたと言えるでしょう。
高齢になってから遺言書を作成した場合、遺言能力の有無が争いになることがあります。
遺言書の内容に不満を持つ相続人が現れることがあるでしょう。
不利な遺言書が無効になれば、遺言書どおりに分ける必要はなくなります。
遺言書に不満があると、相続人が遺言者の遺言能力の有無を理由に無効を主張するでしょう。
公正証書遺言の有効無効を争うとき、深刻な相続トラブルになります。
公正証書遺言を作成する場合、公証人が遺言書の意思確認をします。
遺言能力がない場合、意思確認の過程で気付くでしょう。
公正証書遺言では、遺言能力が一定程度担保されていると言えます。
遺言者に遺言能力がないと、公正証書遺言が無効になります。
②証人が不適格で無効
公正証書遺言は、証人2人に確認してもらって作ります。
証人になる人に、特別な資格はありません。
次の人は、証人になれません。
(1)未成年者
(2)推定相続人、受遺者、これらの人の配偶者、直系血族
(3)公証人の配偶者、4親等内の親族、書記、使用人
公正証書遺言を作成する場合、公証人は証人についても本人確認をします。
上記欠格事由に該当しないか、確認されます。
証人が欠格に該当していることを秘密にしていると、不適格なまま公正証書遺言が作成されてしまうでしょう。
証人が欠格事由に該当していると、公正証書遺言が無効になります。
③詐欺強迫で作成されると無効
遺言書は、遺言者の意思を示すものです。
遺言者の真意に基づかない遺言書は、無効です。
遺言者が第三者にだまされて遺言書を作成しても、真意に基づかないことは明らかです。
遺言者が第三者に強迫されて遺言書を作成しても、真意に基づかないことは明らかです。
真意に基づかない遺言書は、無効です。
遺言者が強迫されたり詐欺にあって、作成した遺言書に効力はありません。
遺言者本人が死亡した後に、詐欺強迫が認められるのは非常に困難です。
客観的な証拠がないと、詐欺強迫を証明できないからです。
詐欺強迫で作成されると、公正証書遺言が無効になります。
④口授がないと無効
公正証書遺言とは、遺言内容を公証人に伝えて作る遺言書です。
口授とは、遺言内容を公証人に伝えることです。
遺言者が高齢である場合、遺言内容をよどみなく伝えるのは難しいかもしれません。
遺言書の内容を読み聞かせて肯定的身振りや否定的挙動をしただけでは、口授があったとは認められない事例があります。
肯定的身振りや否定的挙動には、「うなずく」「首を振る」「手を握る」などがあります。
口授が必要とされる趣旨は、遺言者の真意の確保にあります。
遺言内容における遺言者の真意が確保されている場合、口授があったと認められやすいと言えます。
話すことや聞くことが不自由である人は、筆談や手話を使って口授をすることができます。
身体が不自由であっても、公正証書遺言を作成しやすくなっています。
口授がないと、公正証書遺言が無効になります。
⑤公序良俗に反すると無効
公序良俗に反する法律行為は、無効です。
遺言書の内容は、遺言者が自由に決めることができます。
例えば、不貞相手に全財産を引き継ぐ遺言書を作成することがあります。
不貞相手に全財産を引き継がせる内容であっても、直ちに遺言書が無効になるわけではありません。
不貞関係の維持や継続を目的としており相続人の生活基盤を脅かす場合、公序良俗に反し無効とすべきでしょう。
不貞相手の生活を守るためで相続人の生活を脅かすおそれがない場合、有効とすべきでしょう。
相続人に与える影響を総合的に考慮して判断されます。
公序良俗に反すると、公正証書遺言が無効になります。
⑥遺言者が15歳未満で無効
遺言書を作成すると言うと、高齢者のイメージかもしれません。
15歳に達した人は、遺言書を作成することができます。
15歳未満の人が遺言書を作成しても、無効です。
公正証書遺言を作成する場合、公証人が本人確認をします。
本人確認書類に記載された生年月日は、公証人が必ず確認します。
15歳未満の人が公正証書遺言を作成することは、ほとんどないでしょう。
遺言者が15歳未満であると、公正証書遺言が無効になります。
⑦付言事項に法的効力がない
遺言書には、財産の分け方以外のことを書くことができます。
家族への感謝の気持ちを持ちつつも、伝える機会を逃していることがあるでしょう。
遺言書に、家族への感謝の気持ちを書くことができます。
家族への感謝の気持ちに、もちろん法律上の効力はありません。
遺言書に書くことで法律上有効になることは、法律で決められています。
法律上の効力がないことは、付言事項と言います。
例えば、「遺留分を認めない」「遺留分侵害額請求を許さない」と書いてあることがあります。
遺留分とは、相続人に認められた最低限の権利です。
公正証書遺言を作成するだけで、遺留分を奪うことはできません。
「遺留分を認めない」「遺留分侵害額請求を許さない」と書いてあっても、遺留分侵害額請求をすることができます。
「遺留分を認めない」「遺留分侵害額請求を許さない」と書いてある場合、付言事項を考えられます。
公正証書遺言であっても、付言事項に法律上の効力はありません。
⑧公正証書遺言があっても遺産分割協議
相続があったら、被相続人の財産は相続人が相続します。
遺言書で相続財産の分け方が指定されている場合、遺言書のとおりに分けることができます。
遺言書が無効である場合、相続財産は相続人全員の共有財産です。
相続人間で公正証書遺言の有効無効が争われると、熾烈なトラブルになります。
公正証書遺言が無効と判断される事例は、めったにないからです。
不公平な遺言書だと感じる相続人は、遺言書の無効を主張するでしょう。
熾烈な相続トラブルに発展する前に、相続人全員で相続財産の分け方を合意した方が合理的です。
公正証書遺言があっても、遺産分割協議をすることができます。
3公正証書遺言が無効にならない
①遺留分を侵害しても有効
公正証書遺言の内容を確認したら、全財産を一部の相続人に相続させる内容であることがあります。
全財産を一部の相続人に相続させる内容であっても、直ちに遺言書が無効になるわけではありません。
他の相続人が遺留分権利者である場合、遺留分を侵害しているでしょう。
遺留分を侵害しても、遺言書は有効です。
遺留分は、権利に過ぎません。
配分された財産が遺留分に満たない場合、遺留分侵害額請求をすることができます。
遺留分権利者は、権利を行使するか行使しないか選ぶことができます。
遺言書の内容に納得できたら、遺留分侵害額請求をしないでしょう。
遺留分権利者は選択できるから、遺言書を無効にする必要がありません。
遺留分を侵害しても、公正証書遺言は有効です。
②一部の財産だけでも有効
遺言書に書いてある財産が一部だけであることがあります。
遺言者が自分の財産全体を把握していなかったのかもしれません。
他の財産には関心がなく、重要な財産だけ書いたのかもしれません。
一部の財産だけ記載されても、遺言書は有効です。
他の財産は、遺言書を作成した後に手放すつもりだったかもしれません。
遺言書作成後に、新たに財産を取得することがあるでしょう。
ひょっとすると、別の遺言書で分け方を指定したのかもしれません。
一部の財産について分け方を指定した場合、その財産について遺言書は有効です。
分け方を指定されていない財産は、相続人全員の共有財産です。
相続人全員で、分け方を決定します。
一部の財産だけでも、公正証書遺言は有効です。
③長期間経過しても時効にならない
遺言書は、遺言者が元気なときに作成します。
遺言書が作成されてから長期間経過して、相続が発生するでしょう。
遺言書が作成された後、長期間経過しても無効になりません。
遺言書に、時効はありません。
遺言者が死亡したときに、遺言書の効力が発生します。
遺言者が死亡した後、長期間経過しても無効になりません。
遺言書を作成後長期間経過しても遺言者が死亡後長期間経過しても、公正証書遺言は有効です。
4遺言書作成を司法書士に依頼するメリット
遺言書があれば、相続財産の分け方について、相続人全員で話し合いによる合意は不要です。
遺言書があれば、家族のもめごとが避けられると言えます。
遺言書の効力を争う場合、法律の知識が不可欠です。
弁護士に依頼して、交渉してもらうことになるでしょう。
一部の相続人が弁護士に依頼したら、他の相続人も弁護士に依頼しないととても太刀打ちできません。
弁護士は、依頼人の利益最大化のために働きます。
家族が争う争族になってしまいます。
家族のトラブルの多くは、遺言書作成時にサポートを受けていれば回避できるでしょう。
遺言書作成のサポートを受けるだけでなく、遺言執行者になってもらうなど遺言の実現についてもサポートしてもらうことがきます。
家族のトラブルを避けるため、公正証書遺言作成を考える方は、司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。
一人に全財産を相続させる遺言書
1一人に全財産を相続させることができる
①遺言書の内容に制限はない
遺言書を作成する場合、民法の書き方ルールが守られている必要があります。
民法には書き方ルールが定められていますが、どのような内容の遺言書を作成するかについて制限はありません。
遺言者は、生前に自分の財産を自由に処分することができます。
遺言者が、自分の死亡後に財産を自由に処分することができます。
自分の財産を相続人に受け継いでもらうことも、相続人以外の人に受け継いでもらうこともできます。
民法では、法定相続分が決められています。
法定相続分どおりに受け継いでもらうこともできるし、法定相続分とは違う割合で受け継いでもらうこともできます。
「全財産を〇〇〇〇に相続させる」遺言も、有効な遺言書です。
②一人に全財産を相続させるときの遺言書の記載例
遺言書
遺言者は、以下のとおり遺言をする。
第1条
遺言者は、遺言者の有するすべての財産を、遺言者の配偶者〇〇〇〇(昭和〇年〇月〇日生まれ)に相続させる。
第2条
遺言者は、本遺言書の遺言執行者として、下記の者を指定する。
事務所住所
〇〇県〇〇市〇〇区〇〇町〇丁目〇〇番〇〇号
司法書士〇〇〇〇
昭和〇年〇月〇日生まれ
令和〇年〇月〇日
〇〇県〇〇市〇〇区〇〇町〇丁目〇〇番〇〇号
遺言者 〇〇〇〇 印
③遺言書で財産を列挙する方が家族がラク
遺言書を作成して自分の全財産を一人に相続させたい場合、遺言者の有するすべての財産を相続させると書くことができます。
家族であっても、遺言者がどのような財産を保有しているのか知らないことがあります。
遺言者の気持ちとしては、当然知っているものと考えているかもしれません。
どこにどのような財産があるのか手がかりがない状態で、相続手続をするのは非常に困難です。
できることであれば、遺言者の有するすべての財産と記載するよりすべての財産を列挙することをおすすめします。
不動産であれば、不動産の登記事項証明書を取り寄せて書き写します。
預貯金であれば、通帳を見て金融機関の名称、支店、預金種別、口座番号を記載します。
財産を客観的に特定できない場合、相続手続ができなくなるおそれがあります。
そのうえで記載のない財産が見つかった場合、その財産を〇〇〇〇に相続させると記載するといいでしょう。
2一人に全財産を相続させる遺言書は遺留分に注意
①遺留分とは最低限認められた権利
法定相続分どおりに受け継いでもらうこともできるし、法定相続分とは違う割合で受け継いでもらうこともできます。
「全財産を〇〇〇〇に相続させる」遺言は、有効な遺言書です。
遺言者は、自分の死亡後に自分の財産を自由に処分することができます。
遺言者が築いた財産は、家族の協力があって築くことができた財産のはずです。
家族の協力があって築くことができた財産なのに、遺言者が気ままに処分したら家族にとって酷な結果になることがあります。
自分の財産を自由に処分することができると言っても、一定の範囲の相続人には最低限の権利が認められています。
一定の範囲の相続人に認められる最低限の権利を遺留分と言います。
②遺留分は兄弟姉妹以外の相続人に認められる
遺留分はすべての相続人に認められるわけではありません。
遺留分が認められる相続人と認められない相続人がいます。
遺留分は、兄弟姉妹以外の相続人に認められます。
被相続人に子どもや親などの直系尊属がいない場合、兄弟姉妹が相続人になります。
兄弟姉妹が被相続人より先に死亡した場合、兄弟姉妹の子どもが代襲相続をします。
兄弟姉妹が被相続人より先に死亡した場合、兄弟姉妹の子どもは兄弟姉妹の相続分と遺留分を相続します。
兄弟姉妹に遺留分が認められないから、兄弟姉妹の子どもにも遺留分は認められません。
配偶者、子ども、親などの直系尊属は、遺留分が認められます。
③遺言書で遺留分を奪えない
「全財産を〇〇〇〇に相続させる」遺言は、有効な遺言書です。
有効な遺言書であっても、他の相続人の遺留分を奪うことはできません。
他の相続人の遺留分を奪う結果になる遺言書も、有効な遺言書です。
相続が発生した場合、遺留分を奪われた相続人は遺留分侵害額請求をすることができます。
遺留分侵害額請求を受けた場合、侵害した遺留分相当額を金銭で支払う必要があります。
相続人に面倒をかけたくない気持ちで遺言書を作るのであれば、遺留分に配慮した遺言書を作るのがおすすめです。
「全財産を〇〇〇〇に相続させる」ではなく、遺留分相当の財産を遺留分のある相続人に相続させる遺言です。
「全財産を〇〇〇〇に相続させる」を実現するために、家族がトラブルになるかもしれません。
家族を幸せにするために生涯をかけて財産を築いてきたはずです。
生涯をかけて築いた財産で家族がトラブルになったら、財産を築いた苦労が報われません。
3遺言書作成は公正証書遺言がおすすめ
①遺言書の種類
遺言書の種類は民法という法律で決められています。
大きく分けて普通方式の遺言と特別方式の遺言とあります。
普通方式の遺言は、次の3つです。
(1)自筆証書遺言
(2)公正証書遺言
(3)秘密証書遺言
特別方式の遺言は、次の4つです。
(1)死亡の危急に迫った者の遺言
(2)伝染病隔離者の遺言
(3)在船者の遺言
(4)船舶遭難者の遺言
特別方式の遺言は、生命の危機に迫っている人や航海中など交通できない人が作る特別の遺言です。
特別方式の遺言は、ごく稀な遺言と言えるでしょう。
多くの方にとって、遺言というと普通方式の遺言です。
なかでも、(1)自筆証書遺言(2)公正証書遺言のいずれかを作成される方がほとんどです。
②自筆証書遺言は無効になるリスクが大きい
自筆証書遺言は遺言者が自分で書いて作った遺言書のことです。
専門家の手を借りることなく手軽に作れるので、世の中の大半は自筆証書遺言です。
自筆証書遺言を作成する場合、筆記用具や紙に制約はありません。
ひとりで作ることができるので、作るだけであれば、費用はかかりません。
自筆証書遺言の多くは、専門家の手を借りずに作られます。
専門家のチェックがない場合、法律上効力のない遺言書になる可能性があります。
認知症など判断能力が不十分なまま遺言書が作られたのではないかという疑いが残ります。
一部の相続人から脅されて作ったのではないかとか、だれかに騙されて作ったのではないかとか疑われることがあります。
「全財産を〇〇〇〇に相続させる」に不満を持つ相続人がいた場合、このような疑いを主張するでしょう。
自筆証書遺言は、相続人間でトラブルに発展する危険性があります。
③公正証書遺言はメリットが大きい
公正証書遺言とは、遺言内容を公証人に取りまとめてもらって作る遺言書です。
遺言者が公証人に遺言内容を伝えて、証人2人に確認してもらって作ります。
公正証書遺言は、公証人が書面に取りまとめます。
法律上の不備があって遺言書が無効になるリスクが最も少ないものです。
遺言書の内容を伝えておけば、適切な表現で文書にしてもらえます。
公正証書遺言は、公証人が遺言者の意思を確認して作成します。
遺言者が認知症など判断能力が不十分な場合、公証人は遺言書を作成しません。
一部の相続人から脅されて作ったとか、だれかに騙されて作ったとか疑われることはないでしょう。
公正証書遺言原本は、公証役場で厳重に保管されます。
紛失するおそれがありません。
相続人らに偽造や変造されたり、捨てられたりする心配もありません。
公証役場で厳重に保管されているから、遺言書の検認手続が不要です。
公正証書遺言を作成するためには、費用がかかるのがデメリットです。
公正証書遺言作成の費用がかかることを考えても、家族のトラブルを防ぐ大きなメリットがあります。
4遺言執行者が遺言書の内容を実現してくれる
遺言書は遺言者の意思を示したものです。
遺言書を書いただけでは、意味がありません。
遺言書を書いただけで、自動的に遺言内容が実現するわけではないからです。
遺言書の内容を実現する人が遺言執行者です。
相続人は遺言の内容を見たら、被相続人の意思を尊重し、実現してあげたいと思うでしょう。
「全財産を〇〇〇〇に相続させる」に不満を持つ相続人がいた場合、遺言の実現に協力してくれることは望めません。
協力してくれない場合に備えて、遺言執行者を選任しておくことが有効です。
遺言執行者は遺言の内容を実現するために、必要な行為をする権限があります。
協力しない相続人が遺言執行を妨害した場合、原則として、妨害行為は無効になります。
遺言執行者はいてもいなくても、遺言書の効力に違いはありません。
遺言執行者がいると、確実に遺言者の意思を実現してもらえますから、安心です。
5遺言書作成と遺言執行を司法書士に依頼するメリット
遺言執行者は遺言書の内容を実現する人です。
相続人が遺言書の内容に納得していて、手続に協力的であれば、必ずしも、遺言執行者を選任する必要はありません。
子どもの認知など遺言執行者しかできない手続がある場合、遺言執行者を選任しておかないと、相続人に余計な手間をかけさせることになります。
遺言執行者は、相続開始後すみやかに手続を進めることができる時間と知識がある人を選ぶことが重要です。
その意味でも、家族より司法書士などの専門家に遺言執行を依頼する人が増えています。
以前は、遺言執行者は止むを得ない場合だけ、他の人に職務を任せることができるとされていましたが、現在は、止むを得ないなどの理由は不要になりました。
遺言執行者に指名され、職務をしてみたところ、思ったよりタイヘンだという場合、自己の責任で司法書士などの専門家におまかせすることもできます。
今後も、専門家に依頼する人は増えていくでしょう。
遺言執行を司法書士などの専門家に依頼した場合、相続人は基本待っているだけなので、トラブルになることが少なくなるからです。
家族を笑顔にするためにも、遺言書作成と遺言執行者選任しましょう。
家族の幸せのためにも、遺言書作成と遺言執行者選任を司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。
遺留分侵害額請求を認めない遺言書に効力はない
1遺留分は相続人の最低限の権利
①相続人になる人は法律で決まっている
相続が発生したら、親族のうち一定の範囲の人が相続人になります。
だれが相続人になるかについては、民法で決められています。
相続人になる人は、次のとおりです。
(2)~(4)の場合、先順位の人がいる場合、後順位の人は相続人になれません。
(1)配偶者は必ず相続人になる
(2)被相続人に子どもがいる場合、子ども
(3)被相続人に子どもがいない場合、親などの直系尊属
(4)被相続人に子どもがいない場合で、かつ、親などの直系尊属が被相続人より先に死亡している場合、兄弟姉妹
②近い関係の相続人に遺留分か認められる
遺言書を作成して、自分の財産をだれに受け継がせるかは自由に決めることができます。
財産は被相続人がひとりで築いたものではないでしょう。
家族の協力があってこそ、築くことができた財産のはずです。
被相続人の名義になっているからといって、まったく無制約の自由にすることはできません。
今まで協力してきた家族に、酷な結果となることがあるからです。
被相続人に近い関係の相続人には、相続財産に対して最低限の権利が認められています。
遺留分とは、相続財産に対して認められる最低限の権利です。
被相続人に近い関係の相続人には、遺留分が認められます。
③兄弟姉妹に遺留分は認められない
相続人のうち、遺留分が認められる人を遺留分権利者と言います。
相続人でない人は、遺留分権利者になることはありません。
遺留分権利者は、被相続人に近い関係の相続人です。
具体的には、次の人です。
(1)配偶者
(2)子ども
(3)親などの直系尊属
兄弟姉妹は相続人になりますが、遺留分権利者ではありません。
④遺留分放棄をした人に遺留分は認められない
遺留分権利者には、相続財産に対して最低限の権利が認められます。
遺留分に満たない財産の配分しか受けられない場合、遺留分侵害額請求をすることができます。
遺留分放棄とは、相続人自身の意思で遺留分を放棄することです。
遺留分放棄は、相続人の意思が重視されます。
遺留分放棄をすると、相続人は最低限の権利を失います。
相続が発生する前に遺留分放棄をする場合、家庭裁判所の許可の審判が必要です。
家庭裁判所の許可を得て遺留分を放棄した場合、遺留分はなくなります。
遺留分放棄をしても、相続人です。
相続人だから、相続財産を相続することができます。
遺留分放棄をすると、遺留分は認められません。
⑤廃除された相続人に遺留分は認められない
例えば、被相続人に虐待をした人に、相続をさせたくないと考えるのは自然なことでしょう。
被相続人が相続させたくないと思って、他の相続人にすべての財産を相続させると遺言書を書くことがあります。
遺言書を書くだけで、遺留分を奪うことはできません。
遺留分に満たない財産の配分しか受けられない場合、遺留分侵害額請求をすることができます。
遺留分侵害額請求をしたら、相続財産のいくらかは虐待した相続人が受け継いでしまいます。
相続人廃除とは、被相続人の意思で相続人の資格を奪う制度です。
相続人の資格を奪うとは、実質的には遺留分を奪うことです。
兄弟姉妹は、遺留分権利者ではありません。
兄弟姉妹を廃除する必要はありません。
兄弟姉妹に相続させたくない場合、遺言書を作成するだけで実現できるからです。
相続人が廃除された場合、代襲相続が発生します。
廃除された相続人の子どもや孫が相続します。
廃除された相続人に、遺留分は認められません。
⑥相続欠格の人に遺留分は認められない
だれが相続人になるかについては、民法で決められています。
同時に、民法では相続人になれない人も決められています。
例えば、被相続人を殺した人が相続することは、社会感情からみても許せない、相続する人としてふさわしくないということは納得できるでしょう。
このような相続人として許せない、ふさわしくない場合、相続人の資格が奪われます。
相続欠格とは、相続人としてふさわしくない人の相続資格を奪う制度です。
相続欠格は、被相続人の意思とは無関係に相続人の資格を奪う制度です。
裁判所などで手続があるわけでなく、当然に相続資格を失います。
相続欠格になると、遺留分も奪われます。
相続人が相続欠格になる場合、代襲相続ができます。
欠格の相続人の子どもや孫が相続します。
欠格の相続人に、遺留分は認められません。
⑦相続放棄をした人の子どもは相続しない
相続が発生したら、相続人は相続を単純承認するか相続放棄するか選択することができます。
相続放棄を希望する場合、家庭裁判所に相続放棄の申立てをします。
家庭裁判所で相続放棄が認められたら、はじめから相続人でなくなります。
相続放棄が認められたら、相続することはできません。
相続放棄が認められたら、遺留分を失います。
遺留分が認められるのは、相続人だけだからです。
相続放棄をしたら、代襲相続は発生しません。
相続放棄をした人の子どもや孫は、相続しません。
2遺留分侵害額請求を認めない遺言書に効力はない
①遺言事項は法律で決まっている
遺言書には、厳格な書き方ルールがあります。
書き方ルールだけではなく、遺言書に書くことで有効になることも法律で決められています。
遺言事項とは、遺言書に書くことで有効になることです。
遺言事項は、次の事項です。
(1)財産に関すること
(2)身分に関すること
(3)遺言執行に関すること
(4)それ以外
②遺言書に効力がないことを書くことができる
遺言事項は、法律で決められています。
遺言書には、遺言事項以外のことを書くことができます。
遺言事項以外のことに、法律上の効力はありません。
実際のところ、法律上の効力がないことを書く人はたくさんいます。
家族への感謝の気持ちがあっても、言葉にしていない人がいるでしょう。
遺言書に、家族への感謝の気持ちを書くことができます。
家族仲良く幸せに暮らして欲しいなどの希望に、法律上の効力はもちろんありません。
被相続人の感謝の言葉や希望を読むと、温かな気持ちになるでしょう。
遺言書に法律上の効力がないことを書くことができます。
③付言事項で遺留分侵害額請求を認めない
遺言書を作成する場合、法律上効力があることだけでなく法律上の効力がないことを書くことができます。
付言事項とは、遺言書に書いても法律上の効力がないことです。
付言事項には、家族への感謝の気持ちや希望を書くでしょう。
遺言書で遺留分侵害額請求を認めないと書くことがあります。
遺留分は、相続人に認められた最低限の権利です。
遺言書を作成するだけで、相続人の遺留分を奪うことはできません。
遺言書に遺留分侵害額請求を認めないと書いてある場合、付言事項と考えられます。
付言事項に、法律上の効力はありません。
遺留分侵害額請求を認めない遺言書に、法律上の効力はありません。
④遺留分侵害額請求を認めない遺言書があっても請求できる
遺言書に遺留分侵害額請求を認めないと書いてある場合、付言事項と考えられます。
付言事項に法律上の効力はないから、被相続人からのお願いと言えます。
相続人は被相続人からのお願いをかなえてもいいし、お願いを拒否しても構いません。
被相続人のお願いを拒否しても、他の相続人は文句を言うことはできません。
付言事項に、法律上の効力はないからです。
遺留分侵害額請求を認めない遺言書があっても、遺留分侵害額請求をすることができます。
3遺留分を侵害する遺言書でも無効にならない
①遺留分を侵害する遺言書があっても遺留分侵害額請求ができる
遺留分とは、相続財産に対して認められる最低限の権利です。
さまざまな事情から、遺留分を侵害している遺言書が見つかることがあります。
遺留分を侵害しても、遺言書が自動で無効になるわけではありません。
遺留分を侵害する遺言書を作成するだけで、相続人の遺留分は奪われません。
相続人は遺留分侵害額請求をすることも請求しないことも、選択することができます。
遺留分権利者が遺言書の内容に納得しているのなら、遺留分侵害額請求をしないでしょう。
遺留分権利者が遺言書の内容に納得しているのに、遺言書を無効にする必要はありません。
遺留分を侵害する遺言書でも、有効な遺言書です。
遺留分を侵害する遺言書があっても、遺留分侵害額請求ができるからです。
②遺言書で廃除はハードルが高い
遺留分を侵害する遺言書を作成する場合、一部の相続人に相続させたくないことがあります。
遺留分を侵害する遺言書を作成するだけで、相続人の遺留分を奪うことはできません。
廃除された相続人に、遺留分は認められません。
遺言書で、相続人を廃除することができます。
遺言執行者が家庭裁判所に申立てをして、家庭裁判所が判断します。
遺留分は、相続人に認められた最低限の権利です。
廃除されると遺留分がなくなるから、家庭裁判所は非常に慎重に審査します。
家庭裁判所に廃除を認めてもらうには、客観的証拠が重要です。
例えば、被相続人が虐待を受けた場合、証人として家庭裁判所に虐待の頻度や内容を証言することができます。
虐待を受けた本人であれば、リアリティーがある証言ができるでしょう。
遺言執行者は、詳しい家庭内の事情を知らないでしょう。
家庭裁判所を納得させられる証拠を提出するのは、難しいでしょう。
遺言書で廃除するのは、高いハードルがあります。
③遺言書があっても遺産分割協議
遺言書の内容が大きく偏っている場合、相続人の遺留分を侵害しているでしょう。
配分された財産が遺留分に満たない場合、遺留分侵害額請求をすることができます。
相続人が遺留分侵害額請求をする場合、大きなトラブルになるでしょう。
相続人間でトラブルになる遺言書なのに、あえて執行してトラブルにする必要はありません。
相続人全員で相続財産の分け方を話し合った方が合理的です。
遺言書があっても、相続人全員で遺産分割協議をすることができます。
4遺留分を侵害しない遺言書がおすすめ
①遺留分放棄は強制できない
遺留分放棄をした人は、遺留分侵害額請求をすることができません。
遺留分を侵害する遺言書があった場合、相続人はがっかりするでしょう。
遺留分侵害額請求をすると、相続人間で大きなトラブルになるおそれがあります。
相続させたくない相続人に遺留分放棄をさせれば、トラブルがなくなると考えるかもしれません。
実際のところ、自称専門家は遺留分放棄をさせればいいとアドバイスしています。
遺留分放棄は、相続人の意思が重視されます。
気に入らない相続人に、遺留分放棄を強制するものではありません。
家庭裁判所が遺留分放棄の許可を判断する場合、遺留分放棄をする充分な理由があるか審査します。
遺留分放棄をする充分な理由とは、遺留分放棄に見合う充分な経済的利益を得ていることです。
充分な利益を得ていないのに遺留分放棄をするといっても、家庭裁判所は許可してくれないでしょう。
遺留分放棄は、強制することができません。
②遺留分に配慮して遺言書作成
遺言書を作成する場合、財産の分け方について書くでしょう。
さまざまな事情から、財産の配分が多少偏るのは止むを得ないでしょう。
遺留分は、相続人に認められた最低限の権利です。
遺留分を侵害する遺言書は、相続人間でトラブルになるおそれがあります。
生涯をかけて築いた財産は、家族を幸せにするためだったでしょう。
苦労して築いた財産で家族がトラブルを起こしたら、空しい苦労になります。
遺言書を作成する場合、相続人の遺留分に配慮するのがおすすめです。
5遺言書作成を司法書士に依頼するメリット
遺留分を侵害した遺言書であっても、無条件で無効になるわけではありません。
遺言書の内容に不満のある相続人からは、無効だと主張されることが考えられます。
高齢になってから遺言書を作成した場合、認知症で判断能力が低下していたからと言われるでしょう。
遺言書が有効であれば、遺言書の内容どおりに相続手続を進めるのが原則です。
遺言書が有効か無効か争っていると、相続手続が滞ってしまいます。
遺言書作成を考えている方は、早めに取り掛かることをおすすめします。
相続人が争うことのないように、遺言書を作る方がほとんどでしょう。
家族を争族にしないために、遺言書を作ることは大切です。
認知症を疑う余地もないほど元気であるうちに、遺言書作成をすることが最善です。
遺言書など縁起でもないなどと言えるのは、元気な証拠と言えます。
まだまだ死なない!と言える今こそ遺言書作成のときです。
遺言書作成を考えている方は、早めに司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。
死亡後に養子縁組はできない
1死亡後に養子縁組はできない
①養子には普通養子と特別養子の2種類がある
養子縁組とは、血縁関係による親子関係の他に、法律上の親子関係を作る制度です。
養子には、2種類あります。
普通養子と特別養子です。
子どものいない夫婦が養子縁組をする、配偶者の連れ子と養子縁組するといったことは日常的に聞くことあります。
一般的に、単に「養子」と言ったら、普通養子を指していることがほとんどです。
特別養子では、養子縁組をした後、血縁関係のある実親との親子関係がなくなります。
②普通養子は養親と養子の合意が必要
普通養子による養子縁組をする場合、養親になる人と養子になる人の合意が必要です。
養親になる人と養子になる人が合意をしたうえで、市区町村役場に届出をすることで成立します。
養親になる人と養子になる人の合意がない場合、養子縁組をすることはできません。
遺言書に「〇〇を養子にする」と記載してあったとしても、養子縁組をすることはできません。
遺言書は、遺言者が死亡したときに効力が発生します。
遺言者が死亡した後は、養親になる人と養子になる人の合意があるとは言えません。
遺言書に「〇〇を養子にする」と記載してあったとしても、合意があるとは言えません。
当事者の死亡後に、普通養子による養子縁組をすることはできません。
③特別養子は家庭裁判所の審判
特別養子による養子縁組をした場合、血縁関係のある実親との親子関係がなくなります。
特別養子による養子縁組をすることは、実親との親子の縁を切ることです。
重大な決定なので、厳格な要件で家庭裁判所が判断します。
実の父母による著しい虐待がある場合やその他特別の事情がある場合で、かつ、子の利益のため特に必要があるときに、認められます。
特別養子による養子縁組が認められる要件は、たくさんあります。
要件のひとつに、夫婦が共同で養親になることがあります。
夫婦の一方が死亡した場合、この要件を満たせなくなります。
特別養子による養子縁組は、厳格な要件を満たしたときに決定されます。
要件を満たしていない場合、特別養子による養子縁組を決定しません。
当事者の死亡後に、特別養子による養子縁組をすることはできません。
2遺言書で養子縁組をすることはできない
①遺言書に書けることは決まっている
遺言書の書き方は、民法で決まっています。
法律的に有効な遺言をするには、民法の定めに従わなくてはなりません。
遺言書は、遺言者が死亡した後に効力が発生します。
厳格な書き方ルールがあります。
法律の定めに従った遺言であれば、何を書いてもいいというわけではありません。
遺言書に書いておくことで、意味があること、効力があることも法律で決まっています。
遺言書に書いておくことで、意味があること、効力があることを遺言事項と言います。
遺言事項は、法律で決まっています。
②遺言事項は4つある
遺言事項とは、遺言書に書いておくことで法的な効力が認められる事項です。
遺言書には、いろいろなことが記載されます。
法律上意味がある事項も法律上の意味がない事項も、記載することができます。
遺言書に書いておくことで法的な効力が認められる事項は、次のとおりです。
(1)財産に関する事項
(2)身分に関する事項
(3)遺言執行に関する事項
(4)それ以外の事項
法律上意味のない事項を書いてはいけないといったルールは、ありません。
例えば、遺留分侵害額請求をしないで欲しいといった記載に、法律上の意味はありません。
遺言事項は、4つあります。
③養子縁組は遺言事項ではない
遺言事項でない記載に、法律上の意味はありません。
遺言書に記載してあっても、無効の記載です。
遺言事項には、身分に関する事項があります。
遺言書で養子縁組ができると、感じるかもしれません。
遺言書でできる身分に関する事項は、次のとおりです。
(1)認知
(2)未成年後見人の指定
(3)相続人廃除
(4)相続人廃除の取消
普通養子による養子縁組をする場合、養親になる人と養子になる人の合意が必要です。
遺言書は、遺言者がひとりで作成することができます。
相続人などの同意を得ることなく、一方的に作成します。
遺言書に「〇〇を養子にする」と記載してあったとしても、養親になる人と養子になる人の合意があるとは言えません。
養親になる人と養子になる人の合意がない場合、養子縁組をすることはできません。
遺言書に「〇〇を養子にする」と記載してあったとしても、養子縁組をすることはできません。
養子縁組は、遺言事項ではありません。
④遺言書で相続人以外の人に遺贈ができる
遺言事項には、財産に関する事項があります。
遺言書を作成するというと、真っ先にイメージされるのが財産に関する事項でしょう。
相続が発生した場合、被相続人のものは相続人が相続します。
相続人になる人は、法律で決まっています。
相続人以外の人に財産を渡してあげたいといった希望があることがあります。
相続できるのは、相続人だけです。
相続人以外の人は、相続をすることはできません。
相続人以外の人に財産を譲ってあげたい気持ちから、遺言書に養子にすると記載することがあります。
養子は、養親の子どもです。
被相続人の子どもは、相続人になるからです。
遺言書を作成した場合、相続人以外の人に財産を譲ってあげることができます。
相続人以外の人に、相続させることはできません。
相続人以外の人に、遺贈することができます。
遺贈とは、被相続人が遺言によって、相続人や相続人以外の人に、財産を譲ってあげることです。
遺言書を作成した場合、相続人以外の人に遺贈をすることができます。
3死亡後に養子縁組を解消することができる
①普通養子の解消は養親と養子の合意が必要
普通養子による養子縁組をする場合、養親になる人と養子になる人の合意が必要です。
養親になる人と養子になる人が合意をしたうえで、市区町村役場に届出をすることで成立します。
普通養子による養子縁組を解消する場合、養親と養子の合意が必要です。
養親と養子が合意をしたうえで、市区町村役場に届出をすることで成立します。
養親と養子で養子縁組を解消する合意がない場合、養子縁組を解消することはできません。
②特別養子の解消は家庭裁判所の審判
特別養子による養子縁組は、子どもの福祉のための制度です。
子どもの福祉のため厳格な要件で、特別養子による養子縁組がされています。
特別養子による養子縁組の解消は、養親と養子だけで合意することはできません。
子どもの福祉のため厳格な要件で、家庭裁判所が判断します。
養親から特別養子の解消の申立てをすることはできません。
子どもの福祉が最優先されるからです。
養子が成人した場合、養子からも特別養子の解消の申立てができなくなります。
特別養子の解消が認められる要件に、実親が監護できることがあります。
実親による監護が必要なのは、未成年だけだからです。
実親による監護が必要なくなったら、特別養子を解消することはできなくなります。
養父母による著しい虐待がある場合やその他特別の事情がある場合で、かつ、子の利益のため特に必要があるときに、認められます。
特別養子による養子縁組を解消する場合、家庭裁判所が判断します。
③死亡しても養子縁組は解消されない
養子縁組とは、血縁関係による親子関係の他に、法律上の親子関係を作る制度です。
養親と養子は、親子になります。
養子縁組を解消した場合、親子関係はなくなります。
養親と養子の一方が死亡しても、何もしなければ養子縁組は終了しません。
養親と養子の一方が死亡しても、何もしなければ養親と養子は親子のままです。
④死後離縁は家庭裁判所の許可が必要
養親と養子が合意して、養子縁組を解消することができます。
養親と養子が合意できるのは、養親と養子の両方が生きている間だけです。
養親と養子の一方が死亡した後は、養親と養子が合意することはできません。
死後離縁とは、養親と養子のどちらかが死亡した後に、養子縁組を解消することです。
養親が死亡した後に、死後離縁をすることができます。
養子縁組の当事者の一方が死亡した後、離縁しようとするときは、家庭裁判所の許可が必要です。
死後離縁許可の申立てと言います。
死後離縁許可の申立てができるのは、養子縁組当事者のみです。
死亡した養親の親族が申し立てることはできません。
養親と養子の両方が死亡したら、死後離縁をすることはできません。
死後離縁には、家庭裁判所の許可が必要です。
⑤死後離縁をしても養子は相続人
死後離縁をした場合、養子は養親を相続することができます。
養親が死亡した時点で、養子は養親の子どもです。
被相続人の子どもは、相続人になります。
相続が発生したとき、養子縁組が有効だったからです。
死後離縁をしたからと言って、さかのぼって養子でなくなるわけではありません。
相続が発生した場合、被相続人の財産は相続人全員の共有財産になります。
相続財産の分け方は、相続人全員で合意で決定する必要があります。
死後離縁をしても、養子は相続人です。
死後離縁をした養子を含めずに、他の相続人だけで分け方の合意をしても意味がありません。
死後離縁をした養子を含めない場合、相続人全員ではないからです。
養子が相続を希望しない場合、相続放棄をする必要があります。
死後離縁をした場合でも、被相続人の財産を相続することになります。
死後離縁をした養子は、養親の相続人だからです。
相続手続が終わった後に、死後離縁をすることができます。
死後離縁をした場合でも、養親から受け継いだ財産を返す必要はありません。
死後離縁をしたからと言って、さかのぼって養子でなくなるわけではないからです。 死後離縁をしても、養子は相続人です。
4遺言書作成を司法書士に依頼するメリット
遺言書を書くというと真っ先に思い浮かぶのが、財産に関することでしょう。
「揉めるほど財産はないから」などと言って、遺言書を書き渋る人は多くいます。
実際は家族でトラブルになって、家庭裁判所の助力が必要になるのは年々増えています。
その3分の1は資産総額1000万円以下です。
遺言書があれば、家族のトラブルは確実に減ります。
高齢になると判断能力が心配になる方が多くなります。
判断能力が心配になった時点では、遺言書は作れません。
今、まだまだ元気だ!と言えるのならば、遺言書を作成できるときと言えるでしょう。
家族がもめ事を起こすと取り返しがつかなくなります。
家族をトラブルから守りたい方は司法書士などの専門家に遺言書作成を依頼することをおすすめします。
相続人に対する遺贈
1相続人に対して遺贈すると書かれた遺言書
①相続人が遺贈を受けることができる
被相続人は、自分の財産を自由に処分することができます。
遺言書を作成して、自分の死後にだれに財産を引き継ぐのか自由に決めることができます。
遺贈とは、遺言書を作成して相続人や相続人以外の人に財産を引き継ぐことです。
相続人になる人は、法律で決められています。
相続できるのは、相続人だけです。
相続人以外の人は、相続できません。
相続人以外の人は、遺贈を受けることができます。
相続人は、相続できるし遺贈を受けることができます。
相続人に対して、相続させることができるし遺贈することができます。
遺言書を確認したところ、相続人に遺贈すると書いてあることがあります。
相続人に対して遺贈する遺言書は、有効です。
相続人は、相続できるし遺贈を受けることができるからです。
相続人は、遺贈を受けることができます。
②遺言書に遺贈と書いてあったら遺贈で手続
相続があったら、被相続人の財産は相続人が相続します。
遺言書を作成して、相続人に対して財産を相続させることができます。
遺言書を作成して、相続人に対して財産を遺贈することができます。
指名された相続人が財産を引き継ぎます。
遺言書に遺贈すると書いてあったら、遺贈で手続をします。
③受遺者が先に死亡したら相続財産
遺言書は、遺言者が元気なときに作成します。
遺言書に効力が発生するのは、遺言者が死亡したときです。
遺言書に効力が発生するまでに、長期間経過するのが通常です。
長期間経過するうちに、遺贈を受けるはずだった人が先に死亡することがあります。
遺贈を受けるはずだった人が先に死亡した場合、無効になります。
遺言書全体が無効になるのではありません。
先に死亡した人に遺贈する条項だけ、無効になります。
死亡した人は、遺贈を受けることができないからです。
遺言書に効力が発生したときに、生きている人だけが遺贈を受けることができます。
遺贈されるはずだった財産は、相続財産になります。
相続財産は、相続人全員の共有財産です。
相続財産の分け方は、相続人全員の合意で決定します。
④配偶者居住権は遺贈と書く
配偶者居住権とは、被相続人が所有していた家に住んでいた配偶者が一定期間無条件かつ無償で住み続けることができる権利です。
相続が発生してから配偶者が住む場所を失うことがないように、保護するために作られた権利です。
遺言書を作成して、配偶者居住権を遺贈することができます。
被相続人の配偶者は、常に相続人になります。
配偶者居住権は、財産的価値があります。
遺言書で相続人に財産を引き継ぐ場合、「相続させる」と書くことが多いでしょう。
配偶者居住権が遺贈の目的とされたとき、配偶者居住権を取得すると民法で定められてます。
配偶者居住権は、「遺贈する」と遺言書に記載します。
⑤基礎控除の範囲内なら相続税はかからない
遺贈により取得した財産にも、相続税が課されます。
相続税が課されるのは、ごくわずかな富裕層だけです。
相続税には、基礎控除があるからです。
基礎控除額は、次の計算式で求められます。
基礎控除額=3000万円+600万円×法定相続人の人数
相続財産が基礎控除額の範囲内であれば、相続税を納める必要はありません。
⑥相続人に遺贈をしても不動産取得税はかからない
不動産を取得すると、原則として、不動産取得税が課されます。
相続によって不動産を取得した場合、不動産取得税は課されません。
相続人が遺贈によって不動産を取得した場合、不動産取得税は課されません。
2相続人に対する遺贈の登記申請
①相続人に対する遺贈は単独申請ができる
遺贈を受けた財産が不動産である場合、不動産に名義変更をします。
名義変更をしないと、不動産が自分のものだと主張することができないからです。
遺言書に「相続させる」と書いていれば、相続で手続をします。
遺言書に「遺贈する」と書いていれば、遺贈で手続をします。
相続人が不動産を相続する場合、相続登記をします。
相続登記は、相続人の単独申請です。
相続人が不動産の遺贈を受ける場合、遺贈による所有権移転登記をします。
遺贈による所有権移転登記は、権利者と義務者の共同申請です。
令和5年4月1日に、法改正がありました。
相続人が不動産の遺贈を受ける場合、権利者の単独申請ができます。
令和5年4月1日以降に申請する登記は、単独申請が認められます。
令和5年4月1日以前に相続が発生していても、単独申請が認められます。
相続人に対する遺贈は、単独申請ができます。
②遺贈する不動産に住所氏名変更登記は不要
不動産を取得したら、登記をするでしょう。
登記簿には、不動産を取得したときの住所が記録されています。
遺贈の登記をする場合、遺言者の住民票の除票を提出します。
遺言者の住民票の除票には、死亡時の住所が記録されています。
登記簿を確認すると、登記簿上の住所と死亡時の住所が異なることがあります。
住民票を移しても、登記簿上の住所は自動で変更されないからです。
結婚や離婚、養子縁組や離縁で氏名が変更していることがあります。
戸籍の届出をしても、登記簿上の氏名は自動で変更されません。
登記簿上の住所氏名と死亡時の住所氏名が異なる場合、別人と判断されます。
別人と判断されたら、登記をすることはできません。
相続人に対する遺贈の登記をする場合、前提として住所氏名変更登記をする必要はありません。
登記簿上の住所氏名と死亡時の住所氏名が異なるまま、遺贈の登記をすることができます。
住所氏名変更登記をしなくていいけど、住所氏名の移り変わりを証明する必要があります。
住所の移り変わりは、住民票や戸籍の附票で証明します。
氏名の移り変わりは、戸籍謄本で証明します。
③登記原因は「遺贈」
相続人は、相続することができるし遺贈を受けることができます。
相続であっても遺贈であっても、財産を引き継ぐ点は同じです。
相続登記は、相続人が単独で申請することができます。
相続人に対する遺贈の登記は、受遺者が単独で申請することができます。
相続であっても遺贈であっても、単独で申請できる点は同じです。
遺言書に「相続させる」と書いていれば、相続で手続をします。
遺言書に「遺贈する」と書いていれば、遺贈で手続をします。
相続人に対する遺贈の登記における登記原因は、遺贈です。
相続人に対する遺贈は、遺贈で手続するからです。
④相続人に対する遺贈に権利証と印鑑証明書は不要
相続人に遺贈の登記を申請する場合、単独申請ができます。
義務者の関与は、不要です。
所有権移転登記をする場合、義務者の意思確認のため権利証と印鑑証明書を提出します。
相続人に遺贈する場合、権利証と印鑑証明書は不要です。
⑤相続人に対する遺贈は義務化の対象
所有権移転登記をすることは、所有者の権利であって義務ではありません。
不便な場所にあるなどの理由で、価値が低い土地が存在します。
所有者にとって利用価値が低い土地に対して権利主張をする人が現れた場合、所有者として権利主張する必要を感じないかもしれません。
相続登記は、手間のかかる手続です。
自分で相続登記をしようとするものの、多くの人は挫折します。
不動産の価値が低い場合、相続登記で手間と費用がもったいないと考える人が少なくありません。
適切に登記がされていないと、土地の所有者が分からなくなります。
所有者不明の土地の発生を防止するため、相続登記をすることは義務になりました。
相続登記と同様に、相続人に対する遺贈の登記も義務化の対象です。
3相続人に対する遺贈の登録免許税
①相続人に対する遺贈は1000分の4
所有権移転登記をする場合、登録免許税を納める必要があります。
登録免許税は、固定資産税評価額によって計算します。
固定資産税評価額は、固定資産財課税明細書で確認することができます。
遺贈による所有権移転登記の登録免許税の税率は、原則として、1000分の20です。
固定資産税評価額の1000分の20が登録免許税です。
相続人が遺贈を受ける場合、登録免許税が軽減されます。
相続人が遺贈を受ける場合、登録免許税の税率は、1000分の4です。
相続人が相続する場合、登録免許税の税率は、1000分の4です。
相続人が財産を引き継ぐ場合、遺贈でも相続でも同じ税率です。
相続人に対する遺贈の税率は、1000分の4です。
②死亡した相続人に対する遺贈で登録免許税は非課税
遺贈を受けるはずだった人が先に死亡した場合、遺言は無効になります。
遺贈を受けるはずだった人が先に死亡した場合、遺贈されるはずだった財産は相続財産です。
相続が発生したときは遺贈を受ける人が元気だったのに、相続手続中に死亡することがあります。
遺贈を受ける人が元気だったから、当然に遺贈を受けることができます。
相続手続中に死亡しても、生前に遺贈を受けた事実は変わりません。
死亡した相続人名義にする登記申請をすることができます。
死亡した相続人名義にする登記申請では、登録免許税は非課税にです。
遺贈による所有権移転登記をする場合、「租税特別措置法第84条の2の3第1項により非課税」と記載します。
非課税になるのに登録免許税を納付して登記が完了した場合、還付を受けることはできません。
死亡した相続人に対する遺贈による所有権移転登記は、非課税になる特例があります。
③相続人が100万円以下の土地の遺贈を受けたときは非課税
登録免許税は、固定資産税評価額によって計算します。
100万円以下の土地の遺贈を受けた場合で、かつ、遺贈を受けた人が相続人である場合、遺贈による所有権移転登記で登録免許税はかかりません。
相続人以外の人が遺贈を受けた場合、100万円以下の土地であっても課税されます。
100万円以上の土地の遺贈を受けた場合、100万円分減税されるわけではありません。
対象は100万円以下の土地だけだから、建物は対象外です。
複数の土地の遺贈を受けた場合、土地ごとに判断します。
例えば、70万円と80万円の土地の遺贈を受けた場合、両方とも登録免許税がかかりません。
被相続人が第三者と土地を共有していることがあるでしょう。
土地の共有持分を遺贈することがあります。
土地の共有持分を遺贈する場合、土地全体の固定資産評価額に持分を乗じて計算します。
例えば、全体が150万円の土地で持分2分の1を遺贈した場合、移転した持分の価額は75万円です。
100万円以下と言えるから、登録免許税はかかりません。
4遺贈を放棄しても相続人
①特定遺贈は一部の財産だけ放棄ができる
遺言書に「財産〇〇〇〇を遺贈する」と財産を具体的に書いてある場合を特定遺贈と言います。
遺言書は、遺言者がひとりで作ります。
財産を受け取る人に、同意をもらう必要はありません。
遺言書で財産を遺贈すると書いてあっても、他の相続人に気兼ねすることがあります。
財産の内容によっては、ご遠慮したいことがあるでしょう。
遺贈は、放棄することができます。
特定遺贈を放棄する場合、遺贈全部を放棄することも遺贈の一部を放棄することもできます。
相続放棄をする場合、一部の財産だけ放棄することはできません。
一部の財産だけ放棄できるのは、相続人に対する遺贈のメリットです。
特定遺贈は、一部の財産だけ放棄することができます。
②遺贈を放棄しても相続できる
遺贈を放棄した場合、遺贈されるはずだった財産を受け取る人はいなくなります。
遺贈されるはずだった財産は、相続財産です。
相続財産は、相続人全員の共有財産です。
相続財産の分け方は、相続人全員の合意で決定します。
遺贈を放棄しても、相続人のままです。
遺贈を放棄しても、相続することができます。
遺贈を放棄しても、相続財産の分け方に合意する必要があります。
遺贈を放棄しても、相続人だからです。
遺贈を放棄しても、相続することができます。
③相続放棄は家庭裁判所の手続
相続が発生したら、相続人は相続を単純承認するか相続放棄をするか選択することができます。
相続放棄を希望する場合、家庭裁判所に対して相続放棄の申立てを提出します。
相続放棄の申立ては、相続があったことを知ってから3か月以内に提出する必要があります。
5遺贈による所有権移転登記を司法書士に依頼するメリット
相続が発生すると、相続人は悲しむ暇もなく相続手続に追われます。
ほとんどの人は相続手続は不慣れで、聞き慣れない法律用語で疲れ果ててしまいます。
インターネットの普及で多くの人は簡単に多くの情報を手にすることができるようになりました。
多くの情報の中には正しいものも、適切でないものも同じように混じっています。
登録免許税の計算を間違えた場合、法務局から補正指示がされます。
計算間違いで納付不足の場合、追加納付をすれば済みます。
計算間違いで納め過ぎの場合、過誤納額還付請求書を提出すれば、還付してもらえます。
登録免許税が還付されるまでに、1か月程度かかります。
司法書士は登記の専門家です。
スムーズに登記手続を完了させたい方は司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。
相続人・受遺者が先に死亡したときの遺言書
1遺言書は元気なときに作成する
①重度の認知症になると遺言書は作成できない
15歳以上の人は、遺言書を作成することができます。
遺言書を作成するには、遺言能力が必要だからです。
遺言能力とは、遺言書の内容を理解しメリットデメリットを充分に判断する能力です。
遺言書は、判断能力がしっかりしているうちだけ作成することができます。
認知症になると、物事のメリットデメリットを充分に判断することが難しくなります。
初期の認知症で、簡単な内容の遺言書であれば作成できるかもしれません。
重度の認知症になると、物事のメリットデメリットを判断することができなくなるでしょう。
物事のメリットデメリットを判断することができない状態で、遺言書を作成することはできません。
遺言書のつもりで書いても、無効です。
②高齢で遺言書を作成すると相続人間のトラブルを招く可能性
高齢化社会になって、多くの人は長寿になりました。
高齢になると、認知症を発症することがあるでしょう。
80歳後半になると、2人に1人は認知症になっているというデータもあります。
遺言書は、高齢になってから作成するイメージがあるかもしれません。
高齢になってから遺言書を作成するのは、おすすめできません。
重度の認知症になると、遺言書を作成することができなくなるからです。
遺言書を作成する場合、財産の分け方について書くでしょう。
一部の相続人にとって、期待どおりの分け方ではないことがあります。
期待した財産を受け取れないと、がっかりします。
遺言者が認知症になっていて、判断能力がなかったからと考えるでしょう。
期待した財産を受け取れない相続人は、遺言書の無効を訴えるでしょう。
遺言書の無効を争うとき、相続人間で大きなトラブルになります。
遺言書は、元気なときに作成します。
だれから見ても認知症の疑いがないくらい、元気なときに作成するのがおすすめです。
高齢で遺言書を作成すると、相続人間のトラブルを招く可能性があります。
2相続人・受遺者が先に死亡したときの遺言書
①遺言者が死亡したときに遺言書は効力発生
遺言書は、元気なときに作成するのがおすすめです。
遺言者が死亡するまで、遺言書には効力がありません。
遺言者が死亡したときに、遺言書に効力が発生します。
遺言書を作成してから遺言者が死亡するまで、長期間経過することが多いでしょう。
長期間経過しても、遺言書が無効になることはありません。
遺言書に、有効期限はありません。
遺言書に効力が発生するのは、遺言者が死亡したときだからです。
②先に死亡した相続人は相続できない
相続人になる人は、法律で決められています。
相続人になる人は、相続が発生したときに生きている人のみです。
先に死亡した人は、相続人になることはできません。
「相続人〇〇〇〇に財産〇〇を相続させる」
上記のような遺言書を作成しても、遺言者が生きている間は効力がありません。
上記のような遺言書を作成しても、遺言者が生きている間は何の権利もありません。
遺言書に効力が発生するのは、遺言者が死亡したときだからです。
相続が発生したら財産を引き継ぐことができると予想しているでしょう。
遺言者が生きている間は、期待権すらありません。
遺言者が死亡するまで、遺言書に効力が発生しないからです。
先に死亡した人は、相続人になることはできません。
先に死亡した相続人は、財産を引き継ぐことはできません。
相続人が先に死亡した場合、遺言は無効になります。
遺言書に効力が発生したときに、相続人は生きている必要があるからです。
先に死亡した相続人は、相続できません。
③先に死亡した受遺者は遺贈を受けることができない
被相続人は、生前に自分の財産を自由に処分することができます。
遺言書を作成して、自分の死後にだれに引き継ぐのか自由に決めることができます。
遺贈とは、遺言書を作成して相続人や相続人以外の人に財産を引き継ぐことです。
遺贈によって財産を引き継ぐ人を受遺者と言います。
相続人は、相続することができるし遺贈を受けることができます。
遺贈を受けることができるのは、、相続が発生したときに生きている人のみです。
先に死亡した人は、受遺者になることはできません。
「〇〇〇〇に財産〇〇を遺贈する」
上記のような遺言書を作成しても、遺言者が生きている間は効力がありません。
上記のような遺言書を作成しても、遺言者が生きている間は何の権利もありません。
遺言書に効力が発生するのは、遺言者が死亡したときだからです。
先に死亡した人は、受遺者になることはできません。
先に死亡した受遺者は、財産を引き継ぐことはできません。
受遺者が先に死亡した場合、遺言は無効になります。
遺言書に効力が発生したときに、受遺者は生きている必要があるからです。
先に死亡した受遺者は、遺贈を受けることができません。
④遺言書の内容は代襲相続できない
相続人になる人は、法律で決められています。
被相続人に子どもがいる場合、子どもは相続人になります。
相続が発生した時点で、子どもが先に死亡していることがあります。
相続人になるはずだった子どもが先に死亡した場合、子どもの子どもが相続人になります。
子どもの子どもが相続人になることを代襲相続と言います。
相続人が先に死亡した場合、遺言は無効になります。
受遺者が先に死亡した場合、遺言は無効になります。
相続人・受遺者が先に死亡した場合、代襲相続をすることはできません。
遺言書によって財産を受け取る権利は、本人限りだからです。
遺言書の内容は、代襲相続ができません。
⑤受け取る人がいない財産は相続財産
相続人が先に死亡した場合、遺言は無効になります。
受遺者が先に死亡した場合、遺言は無効になります。
相続人・受遺者が先に死亡した場合、代襲相続をすることはできません。
相続人・受遺者が受け取るはずだった財産は、受け取る人がいなくなります。
遺言書で受け取る人の指定がない財産は、相続財産になります。
相続財産は、相続人全員の共有財産です。
相続財産の分け方は、相続人全員の合意で決める必要があります。
相続人になるはずだった人が先に死亡した場合、死亡した相続人の子どもは代襲相続ができます。
死亡した相続人の子どもは代襲相続人として、遺産分割協議に参加します。
死亡した相続人の子どもが代襲相続人であっても、優先権はありません。
遺言は無効になっているからです。
相続人全員の合意が得られれば、その財産を相続することができます。
⑥遺言書自体は有効
遺言者より相続人・受遺者が先に死亡したとき、遺言は無効になります。
無効になるのは、遺言者より先に死亡した相続人・受遺者にかかる部分のみです。
遺言全体が無効になるのではありません。
遺言書自体は、有効です。
遺言者より先に死亡した相続人・受遺者にかかる部分以外は、有効です。
3相続人・受遺者が先に死亡したときの対処方法
①遺言書は何度でも書き直しができる
遺言書は、遺言者の意思を示すものです。
遺言書を作成してから、遺言者が死亡するまでに長期間あるのが通常です。
長期間経過するうちに、財産状況が変わることがあるでしょう。
長期間経過するうちに、相続人や受遺者が先に死亡することがあるでしょう。
遺言者自身が考えを変えることがあります。
遺言書を作成した後に、書き直しをすることができます。
書き直しをするにあたって、相続人や受遺者の同意は不要です。
遺言によって財産を取得することが予想できるとしても、遺言者の生前は期待権すらないからです。
遺言書の書き直しをしないと約束していても、無効の約束です。
遺言書の書き直しをしないと約束していても、遺言書の書き直しをすることができます。
遺言書は、何度でも書き直しができます。
②死亡したときに備えて予備的遺言
相続人が先に死亡した場合、遺言は無効になります。
受遺者が先に死亡した場合、遺言は無効になります。
遺言書を作成する場合、財産を引き継ぐ人は遺言者より長生きすることを想定しているでしょう。
遺言者より若い世代の人であっても、先に死亡する可能性は否定できません。
相続人・受遺者が先に死亡した場合、相続人・受遺者の子どもなどに引き継ぐ希望があることがあります。
財産を引き継ぐ人が先に死亡したときに備えて、二次的に承継先を決めておくことができます。
二次的に承継先を決めておくことで、遺言者が別段の意思表示をしたと言えます。
遺言者が別段の意思表示をした場合、遺言者の意思に従います。
予備的遺言は、遺言者の別段の意思表示です。
予備的遺言について、さらに予備的遺言をすることもできます。
予備的遺言をすると、遺言が複雑になりがちです。
司法書士などの専門家のサポートを受けて遺言書を作成するのがおすすめです。
③家族信託を利用する
家族信託とは、自由に売る権利や自由に管理する権利を信頼できる家族に渡して、自分はものから利益を受け取る権利だけ持つ仕組みです。
本人と信頼できる家族で、家族信託契約を締結します。
家族信託契約において、さまざまなことを決めておくことができます。
例えば、信託する期間や信託が終了したときに残った財産を引き継ぐ人を決めておくことができます。
家族信託で残った財産を引き継ぐ人を帰属権利者と言います。
信託終了時に財産を引き継ぐ人が先に死亡していることがあるでしょう。
先に死亡したときに備えて、予備的帰属権利者を決めておくことができます。
家族信託を上手に利用すると、家族のトラブルを減らすことができます。
4受遺者が後に死亡したときは遺贈は有効
①受遺者が死亡しても名義変更ができる
遺言者が死亡した後に相次いで受遺者が死亡することがあります。
遺贈された財産の名義変更をする前に受遺者が死亡しても、遺贈は有効です。
受遺者が死亡しても、財産の名義変更をすることができます。
例えば、遺贈された財産が不動産である場合、死亡した受遺者名義に変更することができます。
受遺者が生前に不動産の所有者であったことを公示する必要があるからです。
遺言執行者と受遺者の相続人が協力して、所有権移転登記をします。
②受遺者の相続人は遺贈の放棄ができる
遺贈とは、遺言書で相続人や相続人以外の人に財産を引き継いでもらうことです。
遺言書は、遺言者がひとりで作ります。
遺言書は、相続人などの関与なしで作ることができます。
遺言で遺贈や相続のことを定める場合、遺言者が受け取る人の意見を聞かずに、一方的に決めることができます。
遺言に書いてあるからとは言っても、受け取ると相続人に気兼ねすることがあります。
相続人とトラブルになりたくないから、ご辞退したい場合もあるでしょう。
遺贈は、放棄することができます。
受遺者が相次いで死亡した場合、遺贈の放棄をする権利は相続人に相続されます。
受遺者の相続人は、遺贈を放棄することができます。
5遺言書作成と遺言執行を司法書士に依頼するメリット
遺言書は、遺言者の意思を示すものです。
遺言書の書き方ルールは民法という法律で、細かく決められています。
自分が死んだ後のことは考えたくないという気持ちから、先延ばししがちです。
いろいろ言い訳を考えてしまうかもしれません。
不動産は、分けにくい財産の代表例です。
目立った財産がないから、家族がもめ事を起こすことはないという言い訳はよく聞きます。
相続財産は自宅不動産だけの場合、目立った財産がない場合と言えるでしょう。
分けにくい不動産だけの場合、家族がトラブルになりやすいケースです。
家族がトラブルに巻き込まれることを望む人はいないでしょう。
死んだ後のことを考えるのは不愉快などと言えるのは、判断力がしっかりしている証拠です。
まず、遺言書を書くことをおすすめします。
トラブルにならない場合でも、遺言書があると相続手続は格段にラクになります。
状況が変われば、遺言書は何度でも書き直すことができます。
家族を幸せにするために遺言書を作ると考えましょう。
遺言書の書き直しのご相談もお受けしています。
家族の喜ぶ顔のためにやるべきことはやったと安心される方はどなたも晴れやかなお顔です。
家族の幸せを願う方は、遺言書作成を司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。
遺贈にかかる税金
1遺贈とは遺言書で財産を引き継ぐこと
①遺言書なしで遺贈はできない
被相続人は生前、自分の財産を自由に処分することができます。
遺言書を作成して、自分の死後だれに引き継いでもらうのか自由に決めることができます。
遺贈とは、遺言書を作成して相続人や相続人以外の人に財産を引き継ぐことです。
相続が発生したら、被相続人の財産は相続人が相続します。
相続人になる人は、法律で決められています。
法律で決められた相続人は、相続で財産を引き継ぐことができます。
相続人以外の人は、相続することはできません。
相続人でなくても、遺贈を受けることができます。
相続人以外の人に対して、遺贈をすることができるからです。
遺贈は、遺言書で財産を引き継ぐことです。
遺言書が無効になると、遺贈はできません。
遺言書がないと、相続人以外の人は財産を引き継ぐことはできません。
遺言書なしで、遺贈はできません。
②特定遺贈とは財産を特定して遺贈
遺贈には、2種類あります。
特定遺贈と包括遺贈です。
特定遺贈とは、具体的に財産を特定して遺贈をすることです。
「〇〇〇〇に財産〇〇を遺贈する」
上記のような遺言書があるとき、特定遺贈です。
遺言書に書いていない財産を引き継ぐことはありません。
財産を引き継いでもらう場合、遺言書に基づいて相続手続をします。
引き継いでもらう財産は、相続手続先の人が分かるように具体的に記載することが重要です。
客観的に分からないと、相続手続ができなくなるからです。
特定遺贈とは、財産を特定して遺贈することです。
③包括遺贈とは割合を指定して遺贈
包括遺贈とは、具体的な財産を特定せずに割合を指定して遺贈することです。
「財産すべてを包括遺贈する」「財産の2分の1を包括遺贈する」
上記のような遺言書があるとき、包括遺贈です。
包括遺贈では、遺言書に具体的な財産が書いてありません。
包括遺贈を受けた場合、相続人全員と相続財産の分け方を決める必要があります。
相続財産の分け方について相続人全員とする話し合いを遺産分割協議と言います。
具体的にどの財産を引き継ぐのか遺産分割協議で話し合います。
包括遺贈を受けた人は、相続人と同一の権利義務が与えられます。
相続財産に、マイナスの財産が含まれることがあります。
包括遺贈を受けた人は、指定された割合でマイナスの財産も引き継ぎます。
包括遺贈とは、割合を指定して遺贈することです。
④死因贈与は当事者の契約
遺贈は、遺言書を作成して自分の財産を引き継ぐことです。
遺言書は、遺言者が死亡したときに効力が発生します。
遺言者が死亡したときに、遺言書の効力が発生して財産を引き継ぎます。
死亡をきっかけにに財産を引き継ぐ方法は、遺贈の他に死因贈与によることができます。
贈与は、贈与する人と贈与を受ける人の契約です。
死因贈与は、贈与をする人が死亡したときに効力が発生する贈与契約です。
当事者が合意をすれば、口頭でも贈与をすることができます。
死因贈与をする場合、遺言書は不要です。
死因贈与は、当事者の契約だからです。
2遺贈を受けた人に相続税
①相続税に基礎控除がある
資産家が死亡したとき、高額の相続税を納めた話を聞いたことがあるでしょう。
資産規模が大きい場合、相続税の対象になります。
相続税の対象になるのは、相続した人だけではありません。
遺贈を受けた人に、相続税が課されることがあります。
相続税が課されるのは、ごくわずかな資産家が死亡したときだけです。
実際のところ、95%の人は相続税の対象ではありません。
相続税には、基礎控除があるからです。
資産規模が基礎控除額の範囲内であれば、相続税は課されません。
相続税の基礎控除額は、次の式で計算します。
基礎控除額=3000万円+600万円×法定相続人の人数
法定相続人がたくさんいる場合、基礎控除額は大きくなります。
例えば、法定相続人が配偶者と子ども2人の場合、法定相続人は3人です。
基礎控除額=3000万円+600万円×3人
基礎控除額は、4800万円です。
遺産総額が4800万円を超えなければ、相続税の対象ではありません。
相続税には、基礎控除があります。
②各種控除や特例がある
相続税には、各種の控除や特例が用意されています。
要件を満たせば、納めるべき相続税を減らすことができます。
例えば、小規模宅地の特例があります。
小規模宅地の特例とは、被相続人が所有していた土地の評価額について最大で80%減額できる特例です。
各種特例や控除を上手に活用すると、納めるべき相続税を減らすことができます。
相続税申告が必要なだけで、納税が不要になるケースも少なくありません。
相続税は、各種控除や特例があります。
③相続税2割加算がある
遺贈は、遺言書を作成して相続人以外の人に財産を引き継ぐことです。
相続人は、何もしなくても相続できます。
遺贈を受けるのは、多くの場合、相続人以外の人でしょう。
遺贈を受けた場合、資産規模によっては相続税の対象になります。
被相続人の配偶者や1親等の血族以外の人が財産を受け取る場合、相続税が2割加算になります。
例えば、兄弟姉妹や孫は、2親等です。
1親等の血族以外の人になるから、2割加算の対象です。
被相続人の配偶者や1親等の血族以外の人は、相続税2割加算になります。
④条件を満たした寄付で相続税がかからない
相続人が相続した財産だから、相続税の対象になるのが原則です。
相続人が相続財産から、社会貢献のため寄付をすることがあります。
寄付を受ける相手が、国や地方自治体、公益団体などである場合、相続税が非課税になります。
相続税の申告期限までに、財産を寄付する必要があります。
条件を満たした寄付をすることで、相続税が非課税になります。
3遺贈を受けた人に不動産取得税
①相続人以外の人が特定遺贈を受けると不動産取得税がかかる
不動産取得税とは、不動産を取得したときに1回だけ課される税金です。
有償で取得しても無償で取得しても、課税されます。
登記をしても登記をしなくても、課税されます。
不動産の取得とは、売買、建築、増改築、贈与、交換です。
相続で不動産を取得した場合、不動産取得税は課されません。
相続人以外の人が特定遺贈で不動産を取得した場合、不動産取得税が課されます。
②相続人が特定遺贈を受けても不動産取得税はかからない
遺贈は、相続人や相続人以外の人に財産を引き継ぐことです。
相続人は相続する以外に、遺贈を受けることができます。
相続人が特定遺贈を受ける場合、不動産取得税は課されません。
③相続人以外の人が包括遺贈を受けると不動産取得税はかからない
包括遺贈を受けた人は、相続人と同一の権利義務が与えられます。
相続で不動産を取得した場合、不動産取得税は課されません。
相続人以外の人が包括遺贈を受けた場合、不動産取得税は課されません。
④死因贈与を受けると不動産取得税がかかる
死因贈与は、贈与をする人が死亡したときに効力が発生する贈与契約です。
被相続人と相続人間で死因贈与契約をすることがあります。
死因贈与契約によって、不動産を取得することができます。
死因贈与契約によって不動産を取得する場合、不動産取得税が課されます。
死因贈与契約によって不動産を取得するのは、贈与扱いだからです。
相続人が死因贈与で不動産を取得した場合、不動産取得税が課されます。
相続人以外の人が死因贈与で不動産を取得した場合、不動産取得税が課されます。
4遺贈を受けた人に登録免許税
①相続人が遺贈を受けると税率1000分の4
不動産を取得した場合、名義変更が必要です。
名義変更をしないと、自分のものであると権利主張ができないからです。
相続人が不動産の遺贈を受けた場合、単独で登記申請をすることができます。
他の相続人の協力は、不要です。
被相続人の権利証も、不要です。
相続人が不動産の遺贈を受けた場合、相続登記義務化の対象です。
遺贈による所有権移転の登記をする場合、登録免許税を納める必要があります。
登録免許税は、不動産の固定資産税評価額を基に計算します。
相続人が不動産の遺贈を受けた場合、税率は1000分の4です。
不動産の固定資産税評価額の1000分の4を計算して、登録免許税を納めます。
相続人が遺贈を受けた場合、税率は1000分の4です。
②相続人以外の人が遺贈を受けると税率1000分の20
相続人以外の人が不動産の遺贈を受けた場合、遺贈義務者と共同で登記申請をします。
遺言執行者がいる場合、遺言執行者は遺贈義務者です。
遺言執行者と協力して、登記申請をすることができます。
相続人以外の人が不動産の遺贈を受けた場合、相続登記義務化の対象外です。
相続人以外の人が不動産の遺贈を受けた場合、税率は1000分の20です。
不動産の固定資産税評価額の1000分の20を計算して、登録免許税を納めます。
相続人以外の人が遺贈を受けた場合、税率は1000分の20です。
③条件を満たした寄付で登録免許税は非課税
登記申請をする場合、登録免許税を納めるのが原則です。
相続人以外の人に対して、遺贈をすることができます。
遺贈を受ける人は、自然人以外に会社や慈善団体などであっても差し支えありません。
相続人以外の人に遺贈する場合、税率は1000分の20です。
遺言者が社会貢献のため、公益団体などに財産を遺贈することがあります。
寄付を受ける相手が、国や地方自治体、公益団体などである場合、登録免許税が非課税になります。
公益団体に対する寄付である場合、公益事業に使われることが条件です。
非課税の特例を受けるためには、要件に該当していることの証明書が必要です。
条件を満たした寄付をした場合、登録免許税は非課税になります。
5相続人に譲渡所得税と住民税
①値上がり益に課税される
被相続人が財産を取得してから、財産が値上がりしていることがあります。
遺贈によって財産が移転した場合、税務上は値上がり益が実現したと見なされます。
値上がり益が実現したと見なされるから、値上がり益に課税されます。
保有期間と金額によって、所得税と住民税の対象になります。
②納付するのは相続人
譲渡所得税と住民税が課されるのは、遺贈者の相続人です。
遺贈を受けた人では、ありません。
6遺贈を受けた法人に法人税
資産規模が大きい場合、遺贈を受けた人に対し相続税が課されることがあります。
相続人以外の人に対して、遺贈をすることができます。
遺贈を受ける人は、自然人以外に会社や慈善団体などであっても差し支えありません。
相続税の対象になるのは、自然人だけです。
自然人以外の会社や慈善団体などが遺贈を受ける場合、相続税の対象外です。
自然人以外の会社や慈善団体などが遺贈を受ける場合、法人税の対象です。
7遺言書作成を司法書士に依頼するメリット
遺言書は、遺言者の意思を示すものです。
自分が死んだことを考えたくないという気持ちがあると、抵抗したくなるかもしれません。
民法に遺言書を作ることができるのは、15歳以上と定められています。
死期が迫ってから書くものではありません。
遺言書は遺言者の意思を示すことで、家族をトラブルから守るものです。
遺贈とは、遺言によって、法定相続人や法定相続人以外の人に、財産を譲ってあげるものです。
遺贈は簡単に考えがちですが、思いのほか複雑な制度です。
遺言書で、遺言執行者を決めておくのがおすすめです。
遺言執行には法的な知識が必要になります。
遺言の効力が発生したときに、遺言執行者からお断りをされてしまう心配もあります。
遺言の効力が発生した後の場合、遺言執行者は家庭裁判所に決めてもらうことができます。
遺言書の内容に納得していない相続人がいる場合、受遺者に引渡そうとしないかもしれません。
家族をトラブルから守ろうという気持ちを実現するために、せっかく遺言書を書くのでしょう。
スムーズな手続を実現できるように、配慮しましょう。
お互いを思いやり幸せを願う方は、遺言書作成を司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。
公正証書遺言を作っても遺留分が優先
1遺留分は相続人の最低限の権利
被相続人は、原則として、自分の財産をだれに受け継がせるかは自由に決めることができます。
財産は被相続人がひとりで築いたものではないでしょう。
家族の協力があってこそ築くことができた財産のはずです。
被相続人の名義になっているからといって、まったく無制約の自由にすることはできません。
今まで協力してきた家族に、酷な結果となることがあるからです。
被相続人に近い関係の相続人には、相続財産に対して最低限の権利が認められています。
相続財産に対して、認められる最低限の権利のことを遺留分と言います。
遺留分は、法定相続分に総体的遺留分をかけて計算します。
2法定相続人と遺留分権利者
相続が発生したら、親族のうち一定の範囲の人が相続人になります。
だれが相続人になるかについては、民法で決められています。
相続人になる人は次のとおりです。
②~④の場合、先順位の人がいる場合、後順位の人は相続人になれません。
①配偶者は必ず相続人になる
②被相続人に子どもがいる場合、子ども
③被相続人に子どもがいない場合、親などの直系尊属
④被相続人に子どもがいない場合で、かつ、親などの直系尊属が被相続人より先に死亡している場合、兄弟姉妹
相続人になるはずだった人が被相続人より先に死亡したため、相続人になるはずだった人の子どもや子どもの子どもが相続します。
このような相続を代襲相続と言います。
遺留分は①配偶者②子ども③親などの直系尊属に認められます。
④兄弟姉妹は遺留分がありません。
遺留分が認められる人のことを遺留分権利者と言います。
代襲相続があった場合、法定相続分と遺留分は受け継がれます。
④兄弟姉妹は遺留分がありませんから、兄弟姉妹が被相続人より先に死亡したため、兄弟姉妹の子どもが相続する場合、兄弟姉妹の子どもは遺留分がありません。
故意に被相続人や先順位・同順位の相続人を殺害した人や殺害しようとした人などは、相続欠格者となります。
相続欠格者は相続資格を失いますから、遺留分も失います。
被相続人に対して、虐待や重大な侮辱をした人は、廃除されます。
相続廃除者は相続資格を失いますから、遺留分も失います。
3法定相続分
配偶者がいる場合、法定相続分は次のとおりです
①相続人が配偶者と子ども 配偶者2分の1 子ども2分の1
②相続人が配偶者と直系尊属 配偶者3分の2 直系尊属3分の1
③相続人が配偶者と兄弟姉妹 配偶者4分の3 兄弟姉妹4分の1
①で子どもが数人いる場合、②で直系尊属が数人いる場合、③で兄弟姉妹が数人いる場合は、人数で均等に分割します。
③で父だけ同じ兄弟姉妹や母だけ同じ兄弟姉妹は、父母同じ兄弟姉妹の半分になります。
例えば、
①で、子どもが3人の場合、配偶者2分の1、子どもはそれぞれ6分の1です。
②で、実親2人、養親1人の場合、配偶者3分の2、実親、養親それぞれ9分の1です。
③で、父だけ同じ兄弟姉妹1人、父母同じ兄弟姉妹2人の場合、配偶者4分の3、父だけ同じ兄弟姉妹20分の1、父母同じ兄弟姉妹それぞれ10分の1です。
配偶者がいない場合、法定相続分は人数で均等に分割します。
相続人が兄弟姉妹の場合、父だけ同じ兄弟姉妹や母だけ同じ兄弟姉妹は、父母同じ兄弟姉妹の半分になります。
代襲相続の場合、法定相続分は受け継がれます。
例えば、相続人が配偶者と生きている子ども1人、被相続人より先に死亡した子どもの子ども2人の場合、配偶者2分の1、生きている子ども4分の1、被相続人より先に死亡した子どもの子どもそれぞれ8分の1になります。
4遺留分は法定相続分の2分の1、直系尊属だけのときは3分の1
それぞれの人の遺留分は、法定相続分に総体的遺留分をかけて計算します。
総体的遺留分は相続人によって異なります。
①相続人が直系尊属だけの場合、3分の1です。
②直系尊属以外の人がいる場合、2分の1です。
例えば、
事例1
相続人が配偶者、子どもが2人の場合
法定相続分は、配偶者2分の1、子どもはそれぞれ4分の1です。
遺留分は、配偶者4分の1、子どもはそれぞれ8分の1です。
事例2
相続人が配偶者、実親2人、養親1人の場合
法定相続分は、配偶者3分の2、実親、養親それぞれ9分の1です。
遺留分は、配偶者3分の1、実親、養親それぞれ18分の1です。
事例3
相続人が配偶者、父だけ同じ兄弟姉妹1人、父母同じ兄弟姉妹2人の場合
法定相続分は、配偶者4分の3、父だけ同じ兄弟姉妹20分の1、父母同じ兄弟姉妹それぞれ10分の1です。
遺留分は、配偶者8分の3、父だけ同じ兄弟姉妹40分の1、父母同じ兄弟姉妹それぞれ20分の1です。
5遺留分は遺贈→死因贈与→生前贈与の順で請求する
遺留分は、相続財産に対して最低限の権利です。
遺留分を請求できる対象は次のとおりです。
①遺贈
遺言によって、財産を譲ることです。
②死因贈与
死亡を原因とした、財産を譲ってあげる人と譲ってもらう人の契約です。
③生前贈与
被相続人が生きているうちにした贈与契約です。
遺留分が侵害されたら、①遺贈→②死因贈与→③生前贈与の順に請求することができます。
①遺贈だけでは遺留分に足りない場合、②死因贈与にも請求できます。
③生前贈与がたくさんあるときは、日付の新しいものから順番に請求します。
遺贈や死因贈与、生前贈与をする場合、極端な分与をすると、遺留分を侵害することになります。
遺留分を侵害するような分与にならないように、配慮する必要があるでしょう。
相続が発生してから、遺留分侵害額請求をする場合、トラブルに発展していることが多いです。
家族がトラブルに巻き込まれるのを望む人はいないでしょう。
財産を分与する場合、トラブルのもとにならないように充分配慮しましょう。
6遺留分侵害額請求は金銭で請求する
遺留分が侵害されたら、遺留分を請求することができます。
請求するときは、遺留分に相当するお金を請求します。
不動産などの現物を請求することはできません。
遺留分侵害額請求は、侵害している人と話し合いから始めます。
侵害している人が相続人であれば、財産の分け方について、相続人全員で話し合いをしているのが通常ですから、穏やかな話し合いは難しいかもしれません。
侵害している人が遺贈を受けた人など相続人以外の人であれば、そもそも話し合いに応じてくれないかもしれません。
遺留分侵害額請求は時効があります。
相続の発生と遺留分侵害の事実を知ってから、1年です。
1年以内に請求しないと、遺留分侵害額請求はできなくなります。
穏やかな話し合いで解決できそうにない場合、弁護士に相談し内容証明郵便で遺留分侵害額請求書を送りましょう。
7遺言書作成を司法書士に依頼するメリット
自筆証書遺言の多くは、専門家のサポートなしで一人で作ります。
その結果、遺言書の厳格な書き方ルールが守られておらず、無効になってしまいます。
形式的な書き方ルールは守られていても、内容があいまいで遺言書を実現できないことも多々あります。
さらに、相続人の遺留分に配慮されておらず、トラブルに発展する例もあります。
せっかく遺言書を作るのなら確実な公正証書遺言をおすすめします。
司法書士などの専門家は相続人になる予定の人の遺留分にも配慮して、遺言書文案作成から公正証書遺言作成、遺言執行までトータルでサポートします。
司法書士からトータルでサポートを受けると、遺言者は確実な遺言を遺せるので安心できるでしょう。相続発生後も、相続人は面倒な相続手続から解放されます。
遺言者も家族も安心できる公正証書遺言作成を司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。
遺言書で臓器提供はできない
1遺言書で臓器提供はできない
①遺言事項は法律で決められている
日本で臓器移植法が施行されたのは、1997年です。
施行されてから、20年以上経過しています。
臓器移植を希望する人は年々増えていますが、臓器移植の件数は多くはありません。
臓器移植とは、臓器の機能が低下した人に他の人の臓器と取り換えて機能回復を図る医療です。
第三者の善意による臓器提供がなければ、臓器移植をすることはできません。
自分が死亡した後に、最後に社会貢献をしたいと考えることがあるでしょう。
最後の社会貢献として、臓器提供をして社会に役に立ちたいという希望があるかもしれません。
臓器提供をするために遺言書を作成するのは、意味がありません。
遺言書は、厳格な書き方ルールがあります。
遺言書に書くことで法律上意味がある事項は、法律で決められています。
遺言書に書くことで法律上意味がある事項を遺言事項と言います。
遺言事項は、次のとおりです。
(1)財産に関すること
(2)身分に関すること
(3)遺言執行に関すること
(4)それ以外のこと
臓器提供に関することは、遺言事項にありません。
遺言事項は、法律で決められています。
②臓器提供の希望は付言事項
遺言書には、法律上意味がないことを書くことができます。
遺言事項以外のことは、付言事項と言います。
付言事項に、法律上の意味はありません。
例えば、家族への感謝の気持ちや家族仲良く幸せに暮らして欲しいなどの気持ちです。
家族仲良く幸せに暮らして欲しい気持ちに、法的な拘束力はもちろんありません。
臓器提供の希望は、付言事項に過ぎません。
付言事項に、法律上の拘束力はありません。
遺言書に臓器提供の希望を書くことができます。
臓器提供の希望を書いても、法的効力はありません。
臓器提供の希望は、付言事項です。
③遺言書は火葬後に開封される
遺言書は、プライベートな内容が書かれています。
遺言者本人が積極的に家族に見せることは、あまりありません。
家族にとっても、遠慮して見ないことが多いでしょう。
封筒に入った自筆証書遺言は、相続発生後に家庭裁判所で開封してもらいます。
法務局保管の自筆証書遺言は、相続発生後に遺言書保管事実証明書や遺言書情報証明書の発行請求をすることができます。
公正証書遺言は、相続発生後に相続人が謄本請求をすることができます。
遺言者の死亡直後は、家族が遺言書の内容を知らないことが大部分でしょう。
遺言書の内容を知らないまま、火葬されます。
葬儀などがひと段落して落ち着いてから、相続手続の準備を開始します。
家族が遺言書の有無を調べるのは、死亡後1か月以上経過していることが多いでしょう。
遺言書に臓器提供を希望すると書いても、死亡直後に家族は気づきません。
家族から臓器提供を希望することを医師に伝えてもらうことができません。
火葬した後で遺言書の内容を知ったら、家族はショックを受けるでしょう。
本人の希望をかなえてあげることができなかったからです。
確かに、遺言書に臓器提供の希望を書くことができます。
遺言書に臓器提供の希望を書いても、臓器提供ができないことがほとんどです。
遺言書を見た家族は、希望をかなえてあげられなかったと後悔します。
遺言書に臓器提供の希望を書くことは、おすすめできません。
2臓器提供の意思表示の方法
①健康保険証・運転免許証・マイナンバーカードに記入
臓器移植法が改正され、健康保険証・運転免許証に意思表示欄が設置されました。
マイナンバーカードにも、意思表示欄が設置されています。
健康保険証・運転免許証・マイナンバーカードに記入することで、臓器提供の意思表示をすることができます。
健康保険証・運転免許証・マイナンバーカードに記入することも記入しないこともできます。
意思表示は、任意だからです。
意思表示欄をよく見ると、「臓器を提供しません」という項目があります。
臓器提供する意思表示も希望しない意思表示もすることができます。
臓器提供する意思表示も希望しない意思表示も、本人の意思表示です。
本人の意思表示が尊重されます。
健康保険証・運転免許証・マイナンバーカードは、身分証明書として提示することがあります。
意思表示の内容を第三者に知られたくないことがあるでしょう。
意思表示欄は、保護シールを貼って人目に触れなくすることができます。
健康保険証・運転免許証・マイナンバーカードに記入することで、臓器提供の意思表示をすることができます。
②インターネットで意思登録
日本臓器移植ネットワークのホームページから臓器提供の意思表示をすることができます。
インターネットで意思登録をしておくと、臓器提供に関する意思が確実に確認することができます。
インターネットで意思登録をすると、意思登録カードが届きます。
臓器提供の意思が変わったら、意思を変更することができます。
意思登録を削除したくなったら、意思登録を削除することができます。
臓器提供に関する本人の意思表示が尊重されるからです。
健康保険証・運転免許証・マイナンバーカードを持ち歩けなくても、インターネットで意思登録をすることができます。
③臓器提供意思表示カードに記入
臓器提供意思表示カードは、次の場所に設置してあります。
・都道府県市区町村役場窓口
・保健所
・運転免許試験場(センター)
・一部のコンビニエンスストア等
入手した臓器提供意思表示カードに記入して携帯します。
臓器提供意思表示カードに記入することで、意思表示をすることができます。
3臓器提供の希望は本人の意思と家族の同意が必要
①本人の意思は尊重される
臓器提供においては、本人の意思が尊重されます。
臓器提供をする意思も臓器提供をしない意思も、本人の意思です。
本人の意思が尊重されます。
本人の意思だけでなく、家族の承諾が必要になります。
本人が臓器提供を拒否している場合、家族が臓器提供をすることはできません。
本人の「臓器を提供しません」という意思が尊重されるからです。
本人の意思が分からない場合、家族が判断します。
本人の意思表示がないまま判断する場合、家族は動揺するでしょう。
臓器提供について家族と話し合って、情報共有をしておくことが大切です。
②親族優先の希望ができる
臓器提供を希望する場合、親族優先提供の希望をすることができます。
親族優先提供を希望の意思表示をしたい場合、「親族優先」と記入します。
親族への優先提供ができるのは、次の条件をすべて満たす場合です。
(1)臓器提供を希望する意思表示に併せて、親族優先提供を書面で表示
(2)親族が移植希望登録をしている
(3)医学的な適合条件に合致している
優先提供がされる親族は、次の人です。
(1)配偶者
配偶者は、法律上の配偶者のみです。
事実婚・内縁の配偶者は、対象外です。
(2)子ども
(3)父母
実の親子だけでなく、特別養子による養親、養子を含みます。
普通養子による養親、養子は、対象外です。
親族が移植希望登録をしていても、医学的適合条件に合わないことがあるでしょう。
対象となる親族がいない場合、親族以外の人に移植が行われます。
優先提供する親族を指名した場合、指名された人を含めた親族全体への優先提供の意思と扱われます。
「〇〇さんにだけしか提供したくない」場合、親族の人を含め提供がされません。
自殺者から親族優先提供は行われません。
臓器提供では、親族優先の希望をすることができます。
③家族の同意がないと臓器提供ができない
臓器提供においては、本人の意思が尊重されます。
本人が臓器提供を拒否している場合、家族が臓器提供をすることはできません。
本人が臓器提供を希望する意思表示をしている場合、最終的に意思決定するのは家族です。
たとえ本人が臓器提供を希望する意思表示をしても、家族が提供しないと判断したら臓器提供をすることはできません。
臓器提供について家族と話し合って、情報共有をしておくことが大切です。
実際の現場では、家族のうち一人でも反対の人がいると臓器提供を断念することになります。
家族の同意がないと、臓器提供ができません。
4遺言書作成を司法書士に依頼するメリット
遺言書は、遺言者の意思を示すものです。
自分が死んだことを考えたくないという気持ちがあると、抵抗したくなるかもしれません。
遺言書は遺言者の意思を示すことで、家族をトラブルから守るものです。
遺贈とは、遺言によって、法定相続人や法定相続人以外の人に、財産を譲ってあげるものです。
遺贈は簡単に考えがちですが、思いのほか複雑な制度です。
遺言執行には法的な知識が必要になります。
遺言の効力が発生したときに、遺言執行者からお断りをされてしまう心配があります。
せっかく遺言書を書くのですから、スムーズな手続を実現できるように配慮しましょう。
お互いを思いやり幸せを願う方は、遺言書作成を司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。
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