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清算型遺贈の登記手続

2024-08-28

1清算型遺贈とは財産を換金して遺贈すること

①遺言執行者が遺言書の内容を実現する

遺言書は作成するだけでは、意味がありません。

遺言書の内容は、自動で実現するわけではないからです。

遺言執行者は、遺言書の内容を実現する人です。

相続手続は、想像以上にわずらわしいものです。

遺言執行者がいると、わずらわしい相続手続をおまかせすることができます。

遺言執行者を指名しておくと、遺言書の内容を実現してくれるので安心です。

②遺言執行者が売却手続

遺贈とは、相続人や相続人以外の人に財産を引き継いでもらうことです。

多くの場合、財産はそのままの形で引き継いでもらいます。

せっかく引き継いでもらいたいと思っても、受け取る人にとって負担になることがあります。

例えば、受け取る人が遠方に住んでいる場合、不動産を自分で使うことは難しいでしょう。

自分で使うことはできないのに、固定資産税を負担し修繕や除草などの管理をしなければなりません。

財産そのままの形ではなく、売却して売却代金を受け取ってもらうことができます。

清算型遺贈とは、財産を売却して売却代金を遺贈することです。

遺言書を作成するとき、遺言執行者を指名することができます。

遺言執行者がいれば、遺言執行者が売却手続をします。

売買契約をして契約書に記名押印をするのは、遺言執行者です。

③遺言執行者がいると妨害行為ができない

遺言執行者がいない場合、遺言書の内容は相続人全員の協力で実現させます。

相続人全員が遺言書の内容に納得している場合、相続人全員の協力が得られるでしょう。

遺言書の内容に不服があると、協力は得られないでしょう。

相続人全員の協力が得られないと、相続手続を進めることができなくなります。

遺言執行者がいる場合、相続手続は遺言執行者が行います。

相続人の関与なく、相続手続を進めることができます。

相続人は、遺言執行の妨害行為ができません。

遺言執行の妨害行為は、無効になります。

遺言執行者がいると、妨害行為ができません。

2清算型遺贈の登記手続

①遺言者から買主に名義変更はできない

清算型遺贈では、財産を売却して売却代金を受遺者に受け取ってもらいます。

相続財産全部が清算型遺贈の対象の場合、相続人は何も相続しません。

遺言者から買主に所有権が移転したように感じるでしょう。

遺言者から買主に名義変更することはできません。

相続人は何も相続しないけど、相続登記をする必要があります。

清算型遺贈では、財産を売却します。

相続が発生してから売却するまでの期間があります。

相続が発生した場合、相続財産は相続人の共有財産です。

相続が発生してから売却するまでの期間、相続人全員で共有しています。

相続人全員で共有しているから、相続登記をすることで公示する必要があるからです。

実際にも被相続人から相続人全員の共有になった後、売却されます。

被相続人から直接買主に所有権は移転していません。

登記は権利変動の過程を忠実に示しているからこそ信頼があります。

被相続人から直接買主に所有権移転登記を認めた場合、権利変動の過程を忠実に公示できません。

登記制度に対する信頼が失墜することになります。

このようなことは何としても避けなければなりません。

遺言者から買主に名義変更することは、できません。

②遺言執行者が登記手続

清算型遺贈があるとき、相続登記を省略することはできません。

相続人全員に対する相続登記をします。

相続人全員が登記名義人になります。

相続人全員が登記名義人になるけど、遺言執行者が登記申請をします。

相続人の関与は、不要です。

清算型遺贈では、財産を売却して売却代金を受遺者に受け取ってもらいます。

遺言執行者がいれば、遺言執行者が売却手続をします。

不動産を売却した場合、所有権移転登記を申請します。

売却による所有権移転登記は、遺言執行者と買主が共同で登記申請をします。

相続人全員が登記名義人になっているけど、相続人の関与は不要です。

清算型遺贈の登記手続では、相続登記と売買による所有権移転登記があります。

相続登記と売買による所有権移転登記の両方とも、遺言執行者が行います。

3遺言執行者が相続登記

①申請人

遺言執行者がいる場合、遺言執行者が登記申請をすることができます。

遺言執行者が登記申請人になっても、登記名義人は相続人全員です。

遺言執行者は、登記簿上に現れません。

遺言執行者は、遺言書の内容を実現するだけの人だからです。

一般的に、相続登記は相続手続の中でも、難しい手間のかかる手続です。

司法書士などの専門家に依頼して手続してもらうことが多いでしょう。

遺言執行者は委任状を出して、相続登記を司法書士に依頼することができます。

遺言執行者からの委任状だけで、差し支えありません。

相続人からの委任状は、不要です。

②必要書類

遺言書がある場合、相続登記の必要書類は次のとおりです。

清算型遺贈をする場合、遺言書があるはずです。

遺言書がないと、遺贈は実現できないからです。

(1)被相続人の除籍謄本

(2)相続人の現在戸籍

(3)被相続人の住民票の除票

(4)不動産を相続する人の住民票

(5)遺言書

(6)遺言書検認済証明書

(7)固定資産税評価証明書

③あらかじめ相続登記

清算型遺贈の登記手続では、相続登記を省略できません。

相続登記と売買による所有権移転登記をします。

相続登記と売買による所有権移転登記は、同時申請をする必要はありません。

あらかじめ相続登記をすることができます。

実務的には、余裕をもって事前に相続登記をすることが一般的です。

相続登記をした後の登記簿を見ると、相続人が所有者として登記されています。

事情を知らない人は、相続人が真の所有者と思ってしまうでしょう。

事情を知らない人に対して、相続人が不動産を売却してしまうかもしれません。

あらかじめ相続登記をするのが一般的ですが、注意が必要です。

④遺言執行者が登記識別情報を受け取ることができる

相続登記が完了したら、原則として、登記識別情報が発行されます。

権利者であっても、登記識別情報が発行されないことがあります。

登記識別情報は、登記申請人にならなかった権利者には発行されないからです。

遺言執行者がいる場合、遺言執行者が相続登記をすることができます。

遺言執行者は、権利者ではないでしょう。

遺言執行者が相続登記をする場合、相続人名義の登記識別情報が発行されます。

遺言執行者は、相続人名義の登記識別情報を受け取ることができます。

遺言執行者の行為は、相続人に対して効力があるからです。

4遺言執行者が所有権移転登記

①必要書類

(1)登記原因証明情報

(2)登記識別情報

(3)印鑑証明書

(4)住所証明情報

(5)被相続人の除籍謄本

(6)遺言書

(7)遺言書検認済証明書

(8)固定資産税評価証明書

②登記原因証明情報は遺言執行者が押印

遺言執行者がいるときの清算型遺贈では、遺言執行者が売却手続をします。

売買契約書に記名押印するのは、遺言執行者です。

登記原因証明情報とは、不動産の権利に関する登記をするときに必要な書類のひとつです。

不動産の権利に関する登記を申請する場合、登記原因証明情報を提出します。

例えば、不動産の売買契約であれば、売買契約書を作成しているでしょう。

不動産の売買契約によって、所有権移転登記申請をします。

売買契約書は、所有権移転登記申請をするときの登記原因証明情報です。

売買契約書には、売買金額や契約条件が詳細に記載されています。

登記申請書や添付書類は、閲覧に供されることがあります。

契約の詳細や売買金額などは、他の人に知られたくないでしょう。

売買契約書の他に、法務局報告形式の登記原因証明情報を作成することができます。

売買による所有権移転登記を申請する場合、法務局報告形式の登記原因証明情報を提出することができます。

法務局報告形式の登記原因証明情報に、売主が押印したもので差し支えありません。

遺言執行者がいるときの清算型遺贈では、遺言執行者が押印します。

売買による所有権移転登記で、相続人の関与は不要です。

法務局報告形式の登記原因証明情報であれば、登記に必要な事項だけ記載することができます。

余計な情報を記載していないから、必要事項以外が公開されるのを防ぐことができます。

多くの場合、法務局報告形式の登記原因証明情報を提出します。

登記原因証明情報は、遺言執行者が押印します。

③印鑑証明書は遺言執行者の印鑑証明書

売買による所有権移転登記をする場合、登記義務者は登記申請書に実印で押印をする必要があります。

遺言執行者がいるときの清算型遺贈では、遺言執行者が実印で押印をします。

申請書の押印が実印によるものであることを確認するために、印鑑証明書を添付します。

所有権移転登記で登記義務者が印鑑証明書を提出する場合、発行後3か月以内のものである必要があります。

申請書に押印をするのが遺言執行者だから、遺言執行者の印鑑証明書を提出します。

④相続登記のとき発行された登記識別情報

売買による所有権移転登記申請をする場合、登記識別情報を提出します。

遺言執行者がいるときの清算型遺贈では、相続登記のとき発行された登記識別情報を提出します。

遺言執行者が相続登記をする場合、相続人名義の登記識別情報が発行されます。

遺言執行者は、相続人名義の登記識別情報を受け取ることができます。

多くの場合、登記識別情報は遺言執行者が預かり、そのまま売買による所有権移転登記を提出します。

5相続人不存在のときは氏名変更登記

①相続人不存在のときは相続財産は法人になる

相続人になる人は、法律で決められています。

相続人不存在とは、法律で決められた相続人がまったく存在しない場合です。

相続人がまったく存在しない場合、法律の定めで相続財産は相続財産法人になります。

通常、亡〇〇〇〇相続財産と言います。

相続人不存在の場合、相続財産は法人になります。

②亡〇〇〇〇相続財産への名義変更は氏名変更登記

相続人不存在の場合、亡〇〇〇〇相続財産に名義変更をします。

亡〇〇〇〇相続財産に権利が移転するのではありません。

亡〇〇〇〇相続財産に、名称が変わるのみです。

亡〇〇〇〇相続財産への名義変更は、氏名変更登記です。

③遺言執行者が氏名変更登記申請

清算型遺贈をする場合、相続人がいれば相続登記をします。

清算型遺贈をする場合、相続人がいないから相続登記ではなく氏名変更登記をします。

遺言執行者がいるときの清算型遺贈では、いずれも遺言執行者が申請します。

遺言執行者がいるときの清算型遺贈で相続人不存在の場合、遺言執行者が氏名変更登記を申請します。

④氏名変更登記で登記識別情報は発行されない

相続登記が完了したら、原則として、登記識別情報が発行されます。

相続登記は、所有権が移転した登記だからです。

氏名変更登記が完了したら、登記識別情報が発行されません。

氏名変更登記は、権利が移転するものではないからです。

清算型遺贈では、財産を売却します。

売買による所有権移転登記申請をする場合、登記識別情報を提出します。

遺言執行者がいるときの清算型遺贈では、相続登記のとき発行された登記識別情報を提出します。

相続人がいない場合、相続登記をしません。

氏名変更登記が完了しても、登記識別情報が発行されません。

売買による所有権移転登記申請をする場合、遺言者が権利を取得したときの権利証を提出します。

権利証を提出できない場合、遺言執行者の本人確認情報を提出します。

⑤全部包括遺贈なら相続財産清算人選任不要

相続人が不存在の場合、相続財産は原則として国庫に帰属します。

相続財産清算人は、相続財産を清算して国庫に帰属させる人です。

全財産を包括遺贈した場合、相続財産は受遺者が引き継ぎます。

包括受遺者は、相続人と同一の権利義務があります。

全部包括遺贈をした場合、相続人不存在という必要がないでしょう。

全財産を包括遺贈をする場合、相続財産清算人の選任は不要です。

遺言執行者を指名して全財産を清算して遺贈する場合、相続財産清算人の選任は不要です。

6遺言書作成と遺言執行を司法書士に依頼するメリット

遺言執行者は遺言書の内容を実現する人です。

相続人が遺言書の内容に納得していて、手続に協力的であれば、必ずしも、遺言執行者を選任する必要はありません。

遺言執行者は、相続開始後すみやかに手続を進めることができる時間と知識がある人を選ぶことが重要です。

その意味でも、家族より司法書士などの専門家に遺言執行を依頼する人が増えています。

以前は、遺言執行者は止むを得ない場合だけ、他の人に職務を任せることができるとされていましたが、現在は、止むを得ないなどの理由は不要になりました。

遺言執行者に指名され、職務をしてみたところ、思ったよりタイヘンだという場合、自己の責任で司法書士などの専門家におまかせすることもできます。

今後も、専門家に依頼する人は増えていくでしょう。

遺言執行を司法書士などの専門家に依頼した場合、相続人は基本待っているだけなので、トラブルになることが少なくなるからです。

家族を笑顔にするためにも、遺言書作成と遺言執行者選任しましょう。

家族の幸せのためにも、遺言書作成と遺言執行者選任を司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。

遺言執行者が遺贈登記

2024-08-19

1遺言執行者が遺言書の内容を実現する

①遺言執行者がいなくても遺言書は有効

遺言執行者は、遺言書の内容を実現する人です。

遺言執行者は、遺言書の不可欠な内容ではありません。

遺言書の有効無効と遺言執行者の指名の有無は、無関係です。

遺言執行者が指名されていても指名されていなくても、有効な遺言書は有効です。

遺言執行者が指名されていても指名されていなくても、無効な遺言書は無効です。

遺言執行者がいなくても、遺言書は有効です。

②遺言執行者の就任は辞退できる

遺言書を作成するとき、遺言者がひとりで作ります。

遺言書で財産のことを決めるとき、相続人や受遺者の同意は不要です。

遺言書で遺言執行者を指名するとき、遺言執行者の承諾は不要です。

いわば、一方的に決めることができます。

遺言書で遺言執行者に指名された場合、荷が重いと感じることがあるでしょう。

法律の知識がないと、遺言執行は難しいことがあります。

病気などで、責任ある職務を全うできないかもしれません。

相続人にあれこれ言われるかもと、心配になることがあります。

遺言執行者に指名されても、就任する義務はありません。

遺言執行者の就任は、ご辞退することができます。

ご辞退する場合、辞退する理由を明らかにする必要はありません。

なんとなく気が進まないでも、自信がないでも差し支えありません。

遺言執行者の就任は、辞退することができます。

③遺言執行者がいないと相続人全員の協力

遺言執行者がいなくても、遺言書は有効です。

遺言書で遺言執行者を指名しても、遺言執行者に就任する義務はありません。

遺言執行者の就任は、ご辞退することができます。

遺言執行者がいない場合、遺言書の内容は相続人全員の協力で実現させます。

遺言書の内容に相続人全員が納得している場合、相続人全員の協力が得られるでしょう。

遺言書の内容に不満がある相続人は、協力してくれないかもしれません。

相続人全員の協力が得られない場合、相続手続が進まなくなります。

遺言執行者がいない場合、相続人全員の協力が必要です。

④遺言執行者がいると妨害行為ができない

遺言執行者は、遺言書の内容を実現する人です。

遺言書の内容を実現するため、必要な権限が与えられます。

遺言執行者がいる場合、相続人は妨害行為をすることができません。

⑤遺言執行者は家庭裁判所で選任してもらえる

遺言執行者がいない場合、家庭裁判所に対して遺言執行者選任の申立てをすることができます。

家庭裁判所に申立てをして、遺言執行者を選任してもらうことができます。

遺言執行者がいない場合、遺言書の内容は相続人全員の協力で実現させます。

相続人の中には、音信不通で協力してくれないことがあります。

行方不明で連絡が取れないこともあるでしょう。

家庭裁判所に遺言執行者を選任してもらった方がラクに手続を進めることができます。

遺言執行者は、家庭裁判所で選任してもらうことができます。

⑥遺言執行者と受遺者が同一

遺言執行者になる人に、特別な資格はありません。

遺言執行者になれない人は、次のとおりです。

(1)未成年者

(2)破産者

遺言執行者は、遺言書で選任することができます。

受遺者を遺言執行者に選任することができます。

遺言執行者を家庭裁判所に選任してもらうことができます。

受遺者を遺言執行者の候補者に立てることができます。

問題がなければ、家庭裁判所は受遺者を遺言執行者に選任してくれます。

2受遺者が相続人以外で遺言執行者がいるときの遺贈登記

①申請人

遺贈登記は、権利者と義務者が共同で登記申請をします。

権利者は受遺者、義務者は遺贈義務者です。

遺言執行者がいる場合、遺贈義務者は遺言執行者です。

遺言執行者とは、遺言書の内容を実現する人です。

遺言執行者は、受遺者であっても構いません。

遺言執行者は遺言の内容を実現するために必要な行為をする権限があります。

協力しない相続人が遺言執行を妨害した場合、原則として、妨害行為は無効になります。

遺贈登記は、受遺者と遺言執行者が共同で登記申請をします。

②添付書類

登記申請書に添付する書類は、次のとおりです。

(1)遺言書

(2)検認済証明書

(3)被相続人が死亡した記載のある戸籍謄本

(4) 被相続人の除票か戸籍の除附票

(5) 不動産の権利証

(6) 遺言執行者の印鑑証明書(発行後3か月以内)

(7) 受遺者の住民票か戸籍の附票

(8) 登記委任状

(9) 不動産の評価証明書

遺言書が公正証書遺言である場合は、検認済証明書は不要です。

遺言書が自筆証書遺言である場合で、かつ、法務局で保管されていた場合は、検認済証明書は不要です。

所有権移転登記をする場合、登記原因を証明する書類を提出する必要があります。

(1)遺言書(2)検認証明書(3)被相続人が死亡した記載のある戸籍謄本(4) 被相続人の除票か戸籍の除附票は、登記原因証明情報として提出します。

売買などで所有権移転登記をする場合、法務局報告形式の登記原因証明情報を提出する場合があります。

法務局報告形式の登記原因証明情報に登記義務者が押印することで、内容の真実性が確保できるとされているからです。

遺贈は登記義務者が内容を認めただけでは、真実性が確保されません。

遺贈の真実性の担保のため、遺言書や戸籍謄本の提出が欠かせません。

このため法務局報告形式の登記原因証明情報を利用することはできません。

登記申請を司法書士に依頼する場合、遺言執行者と受遺者から登記委任状を出せば済みます。

③登録免許税

遺贈による所有権移転登記で相続人以外の人に対するものは、不動産の評価額の1000分の20です。

相続放棄をした人は、相続人でなくなります。

相続放棄をした人であっても、遺贈を受けることができます。

遺贈は、法定相続人に譲ってあげることもできるし相続人以外の人に譲ってあげることができるからです。

相続放棄をした人が遺贈を受ける場合、登録免許税は不動産の評価額の1000分の20です。

④権利証を紛失していたら

相続人以外の人に遺贈登記をする場合、権利証が必要になります。

権利証は大切なものなので、普段は人目にさらすようなことはしません。

保管場所を共有していないと、家族が見つけられなくなります。

権利証を紛失しても、権利は失われません。

遺贈による所有権移転登記をすることができます。

遺贈による所有権移転登記で権利証を提出できない場合、事前通知か本人確認のいずれかの方法をとります。

遺言執行者がいる場合、事前通知であっても本人確認であっても遺言執行者が対象になります。

3遺言執行者が住所変更登記

不動産を持っている場合、住所や氏名が変わったら、その都度手続するのが原則です。

不動産を売却する予定がない場合、先延ばししていることは割とよくあります。

先延ばししたまま、相続が発生することがあります。

先延ばししたままの場合、登記簿上の住所氏名と被相続人の住所氏名が異なります。

相続登記を申請する場合、前提として住所氏名変更登記を申請する必要はありません。

相続人に対する遺贈登記を申請する場合、前提として住所氏名変更登記を申請する必要はありません。

相続登記の申請書に、住所氏名の移り変わりを証明する書類を提出するだけで構いません。

相続人以外の人に対する遺贈登記を申請する場合、前提として住所氏名変更登記を申請する必要があります。

登記簿上の住所氏名と被相続人死亡時の住所氏名が異なっているのに、相続人以外の人に対する遺贈登記だけ申請した場合、取下げをすることになるでしょう。

後から、住所氏名変更登記を提出することはできません。

相続人以外の人に対する遺贈登記を申請する場合、遺言執行者と受遺者が申請人になります。

遺言執行者は、遺贈登記の義務者だからです。

登記簿上の住所氏名と被相続人死亡時の住所氏名が異なっている場合、住所氏名変更登記が必要です。

住所氏名変更登記をしないと、遺言執行者は登記義務を果たすことができません。

遺言執行者は、単独で住所氏名変更登記を申請することができます。

4受遺者が相続人のときの遺贈登記は単独申請

①申請人

遺言書に「遺贈する」とあれば、譲ってもらう人が相続人であっても相続人以外の人でも、遺贈で手続します。

遺贈登記は、権利者と義務者が共同で登記申請をします。

受遺者が相続人である場合、登記申請書に権利者と義務者を記載するだけで義務者の関与が不要です。

形式的には共同申請ですが、事実上、受遺者が単独申請をすることができます。

②添付書類

登記申請書に添付する書類は、次のとおりです。

(1)遺言書

(2)検認済証明書

(3)被相続人が死亡した記載のある戸籍謄本

(4) 被相続人の除票か戸籍の除附票

(5) 受遺者の住民票か戸籍の附票

(6) 登記委任状

(7) 不動産の固定資産税評価証明書

遺言書が公正証書遺言である場合は、検認済証明書は不要です。

遺言書が自筆証書遺言である場合で、かつ、法務局で保管されていた場合は、検認済証明書は不要です。

③登録免許税

(1)原則1000分の4

遺贈による所有権移転登記で相続人に対するものは、不動産の評価額の1000分の4です。

(2) 相続人が死亡している場合非課税

遺贈による所有権移転登記をする場合で、かつ、登記名義人になる人がすでに死亡している場合、

登録免許税は非課税になります。

「租税特別措置法第84条の2の3第1項により非課税」と申請書に記載する必要があります。

(3)100万円以下の土地は非課税

不動産の価額が100万円以下の場合、登録免許税は非課税になります。

「租税特別措置法第84条の2の3第2項により非課税」と申請書に記載する必要があります。

5不動産の名義変更を司法書士に依頼するメリット

大切な家族を失ったら、大きな悲しみに包まれます。

やらなければいけないと分かっていても、気力がわかない方も多いです。

不動産は重要な財産であることも多いので、登記手続は一般の方から見ると些細なことと思えるようなことでやり直しになることも多いです。

住所変更登記が必要になるか必要にならないかなどもそのひとつでしょう。

相続手続は一生のうち何度も経験するものではありません。

だれにとっても不慣れで手際よくできるものではありません。

相続手続で使われる言葉は、法律用語なので一般の方にとって、日常で聞き慣れないものでしょう。

司法書士は登記の専門家です。

相続手続も、登記手続も、丸ごとお任せいただけます。

相続手続でへとへとになる前に、司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。

相続した不動産に住所変更登記は不要

2024-08-14

1住民票上の住所を変更しても登記は変更されない

①登記の住所は自動で変更されない

不動産を所有している人は、登記をしているでしょう。

登記簿には、所有者の住所や氏名などが記録されています。

不動産を所有した後で、引っ越しをすることがあります。

引っ越しをしたら、市区町村役場などに手続をします。

住民票を移しても、市区町村役場から法務局へ連絡されません。

市区町村役場に手続をしても、登記の記録は自動で変更されることはありません。

所有者の住所が変更になった場合、住所変更登記をする必要があります。

法務局に住所変更登記を申請していない場合、登記簿上は旧住所のままです。

②相続登記の準備で登記記録の確認

登記申請を準備する場合、現在の登記記録を確認します。

現在の登記記録を確認しないと、どのような準備をすればいいか分からないからです。

登記記録を確認する方法は、2つあります。

法務局で登記簿謄本を取得する方法と登記情報を取得する方法です。

内容は、どちらも同じです。

近くの法務局で日本中どこの不動産の登記簿謄本であっても、取得することができます。

2 相続した不動産に住所変更登記は不要

①相続登記で被相続人の住民票を提出する

相続登記を申請する場合、被相続人の住民票を提出します。

被相続人の住民票には、死亡時の住所が記録されています。

住民票を移しても、登記の住所は自動で変更されません。

相続登記の申請を準備する場合、現在の登記記録を確認します。

登記記録上の住所と被相続人の住民票の住所が異なることは、少なくありません。

登記記録上の住所と被相続人の住民票の住所が異なる場合、別人であると判断されます。

家族にとっては納得できなくても、別人扱いされたら相続登記をすることはできません。

相続登記を申請する場合、被相続人の住民票を提出します。

②相続登記では住所の移り変わりを証明すればよい

登記記録上の住所と被相続人の住民票の住所が異なる場合、別人であると判断されます。

登記記録上の住所と被相続人の住民票の住所が異なる場合であっても、相続登記の前提として住所変更登記をする必要はありません。

相続登記では、住所の移り変わりを証明すればよいとされているからです。

③住民票で移り変わりを証明する

相続登記を申請する場合、被相続人の住民票を提出します。

住民票には死亡時の住所だけでなく、前住所が記録されています。

住民票に記録されている前住所が登記記録上の住所と一致することがあります。

登記記録上の住所と一致した場合、住所の移り変わりを証明できたと言えます。

住所の移り変わりを証明できたから、相続登記をすることができます。

④戸籍の附票で移り変わりを証明する

戸籍の附票とは、住所の移り変わりを取りまとめた証明書です。

本籍地の市区町村役場で、戸籍と同様に管理されています。

戸籍が作られたときに、戸籍の附票も作られます。

戸籍が作られた以降の住所の移り変わりが記録されています。

住民票には、前住所だけ記録されています。

戸籍の附票を取得すると、前住所より以前の住所が判明することがあります。

戸籍の附票に記録された住所が登記記録上の住所と一致することがあります。

登記記録上の住所と一致した場合、住所の移り変わりを証明できたと言えます。

住所の移り変わりを証明できたから、相続登記をすることができます。

⑤保存期限経過で証明ができなくなる

住民票や戸籍の附票は、永年保管ではありません。

保存期限が過ぎたものは、順次廃棄されます。

保管期限は、現在は150年です。

令和元年6月20日までは、たったの5年でした。

保存期限経過によって廃棄されてしまった後は、取得することはできません。

住民票や戸籍の附票を取得できなくなると、住所の移り変わりを証明することができなくなります。

3住所の移り変わりを証明できないときの対処法

①権利証を提出する

通常、登記上の住所と被相続人の住民票の住所が異なる場合、別人であると判断されます。

別人扱いされたら相続登記をすることはできません。

住民票や戸籍の附票が廃棄されてしまった場合、住所の移り変わりを証明することはできません。

権利証は、不動産の所有者が大切に保管しています。

権利証を提出した場合、所有者であることを証明できたと言えます。

住所の移り変わりを証明できなくても、相続登記をすることができます。

②不在籍・不在住証明書を提出する

権利証は、不動産の所有者であることを証明する重要な書類です。

普段は大切に保管して、簡単に人目にさらしてはいないでしょう。

権利証の保管場所を家族と共有していないと、家族が見つけることができなくなります。

不在籍証明書とは、申請があった本籍・氏名に該当する戸籍がないことを証明する書類です。

不在住証明書とは、申請があった住所・氏名に該当する住民票がないことを証明する書類です。

登記上の住所・氏名に該当する住民票と戸籍がないことが証明されます。

登記上の住所・氏名に該当する人が存在しないという消極的な証明と言えます。

③固定資産税の納税証明書を提出する

固定資産税は、固定資産を保有している人に課される税金です。

不動産の所有者であれば、固定資産税を納めているでしょう。

固定資産税を納めているのであれば、所有者である可能性が高いと言えます。

④相続人全員の印鑑証明書付き上申書を提出する

上申書とは、「不動産の所有者は被相続人に間違いありません」という法務局宛てのお願いです。

相続人全員が実印を押して、印鑑証明書を添付します。

上申書には相続人全員が実印で押印し、相続人全員の印鑑証明書を添付する必要があります。

遺産分割協議書に上申書の記載事項を盛り込むと相続人の手間が省けて便利です。

⑤法務局によって取り扱いが異なる

住所の移り変わりを証明できないときの対処法は、法務局によってまちまちです。

複数の書面を提出するように言われることがあります。

あらかじめ法務局と打合せのうえ、登記申請をするといいでしょう。

4遺贈で住所変更登記が必要になるケースがある

①遺言書に遺贈と書いてあったら遺贈で手続

遺贈とは、遺言書で相続人や相続人に外の人に財産を引き継いでもらうことです。

相続人になる人は、法律で決められています。

相続人は、相続することができるし遺贈を受けることができます。

遺言書に遺贈すると記載されていた場合、遺贈で手続をします。

②相続人に遺贈したときは住所変更登記不要

相続人は、相続することができるし遺贈を受けることができます。

相続する場合、相続登記をします。

相続登記では、あらかじめ住所変更登記は不要です。

住所の移り変わりを証明すれば、相続登記をすることができます。

相続人に遺贈をした場合、遺贈の登記をします。

相続人に対する遺贈の登記では、あらかじめ住所変更登記は不要です。

住所の移り変わりを証明すれば、相続人に対する遺贈の登記をすることができます。

③相続人以外の人に遺贈したときは住所変更登記必要

相続人に対しても相続人以外の人に対しても、遺贈をすることができます。

相続人以外の人に対して遺贈をする場合、あらかじめ住所変更登記が必要です。

④住所変更登記は遺言執行者におまかせできる

遺贈とは、遺言書で財産を引き継いでもらうことです。

遺言書は、作成するだけでは意味がありません。

遺言書の内容は、自動で実現するわけではないからです。

遺言執行者は、遺言書の内容を実現する人です。

遺言執行者には、遺言書の内容を実現するために必要な権限が与えられています。

相続人以外の人に対して遺贈をする場合、あらかじめ住所変更登記が必要です。

住所変更登記をしてからでないと、遺贈の登記をすることはできません。

住所変更登記をすることは、遺言書の内容を実現するために不可欠です。

遺言執行者は、遺言書の内容を実現するため住所変更登記を申請することができます。

遺言執行者を選任しておくと、わずらわしい相続手続をおまかせすることができます。

住所変更登記は、遺言執行者におまかせできます。

5相続人が共有者のとき住所変更登記がおすすめ

①住所変更登記が義務化

令和8年4月1日から住所・氏名変更登記が義務化されます。

登記上の住所や氏名に変更があった場合、変更があった日から2年以内に登記を申請しなければなりません。

令和8年4月1日以前に変更があった場合も令和8年4月1日以降に変更があった場合も、義務化の対象になります。

正当な理由なく登記申請を怠った場合、5万円以下のペナルティーになるおそれがあります。

②住所変更登記をしないと別人扱い

被相続人と相続人が不動産を共有していることがあります。

相続が発生した場合、被相続人の共有持分は相続財産になります。

不動産を共有すると、デメリットが大きいものです。

相続を機に、共有を解消するといいでしょう。

被相続人と不動産を共有していた相続人が被相続人の共有持分を相続します。

相続人の登記上の住所が現在の住所と異なる場合、住所変更登記をしておくことをおすすめします。

被相続人の共有持分について相続登記をしたら、現在の住所で登記されます。

同一人物のはずなのに、異なる住所で登記されているのは違和感があるでしょう。

同じ住所になっていれば所有者と登記されるのに、住所が異なると共有者と登記されます。

住所が異なると、別人扱いされるからです。

将来、不動産を売却するときには、住所変更登記をする必要があります。

令和8年4月1日から住所・氏名変更登記が義務化されます。

共有者である相続人の住所が異なるときも、住所変更登記をするのがおすすめです。

6不動産の名義変更を司法書士に依頼するメリット

大切な家族を失ったら、大きな悲しみに包まれます。

やらなければいけないと分かっていても、気力がわかない方も多いです。

不動産は重要な財産であることも多いので、登記手続は一般の方から見ると些細なことと思えるようなことでやり直しになることも多いです。

住所変更登記が必要になるか必要にならないかなどもそのひとつでしょう。

相続手続は一生のうち何度も経験するものではありません。

だれにとっても不慣れで手際よくできるものではありません。

相続手続で使われる言葉は、法律用語なので一般の方にとって、日常で聞き慣れないものでしょう。

司法書士は登記の専門家です。

相続手続も、登記手続も、丸ごとお任せいただけます。

相続手続でへとへとになる前に、司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。

相続登記で必要な住民票

2024-08-04

1相続登記に必要な書類とは

登記申請書には、通常、相続関係説明図を添えます。

遺言書がない場合、おおむね、次の書類が必要です。

①被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本

②相続人の現在戸籍

③被相続人の住民票の除票

④不動産を相続する人の住民票

⑤遺産分割協議書

⑥相続人全員の印鑑証明書

⑦固定資産税の評価証明書

事例によっては追加書類が必要になる場合があります。

相続登記では、特段の事情がある場合を除いて、権利証は提出不要です。

2被相続人は住民票の除票が必要

①登記名義人と被相続人が同一人物であることを確認する

登記簿には所有者の住所と氏名が登記されています。

被相続人の戸籍謄本には、本籍と氏名が記載されています。

登記と戸籍謄本だけでは、名前が同じ別の人かもしれないと考えられます。

被相続人の住民票の除票は、戸籍謄本の被相続人と登記されている所有者が同一人物であることを証明するために提出します。

被相続人の住民票の除票には、被相続人の氏名、住所、本籍が記載されているからです。

市町村役場で住民票の除票を請求する場合、本籍を記載してもらってください。

本籍の記載がない住民票の除票では、同一人物であるか確認できないからです。

被相続人の住民票の除票は、被相続人の死亡後に取得する必要があります。

被相続人の死亡後にに取得した除票であれば、取得後に何年経過していても問題はありません。

②被相続人の本籍と登記上の住所が一致する場合は住民票の除票は不要

登記名義人の住所と被相続人の本籍が一致する場合、法務局は同一人物と認めてくれます。

あらためて、住民票の除票を提出する必要はありません。

本籍地       〇〇市〇〇町〇番地

登記上の住所 〇〇市〇〇町〇番地1

上記の場合、一致しているとは言えません。

本籍地と登記上の住所が違うから、住民票の除票などで同一人物であることを証明しなければなりません。

本籍地       〇〇市〇〇町〇番地1

登記上の住所 〇〇市〇〇町〇番地の1

上記の場合、一致していると認められます。

住民票の除票は提出しなくても、相続登記を認めてもらえます。

③住民票の除票と登記上の住所が一致しない場合は戸籍の附票

住民票の除票には、死亡時の住所の他に、前住所地が記載されています。

登記上の住所が前住所地より古い住所の場合、住民票の除票では住所の移り変わりを証明できません。

戸籍の附票には、その戸籍が作られてからの住所の移り変わりが書いてあります。

戸籍が作られて以降であれば、前住所だけでなく前々住所も確認することができます。

戸籍の附票に書いてあるいずれかの住所と登記簿に書いてある住所が一致した場合、被相続人の住所の移り変わりを証明したと言えます。

④戸籍の附票が取れない場合は権利証

戸籍の附票の保存期間は、現在は150年です。

令和元年6月20日以前は、たった5年でした。

平成26年6月20日以降に作られた戸籍の附票は、廃棄前に保存期間が延びたので保存されています。

令和元年6月20日以前に廃棄された場合、原則として、取得することはできません。

住民票の除票でも戸籍の附票でも住所の移り変わりが確認できない場合、権利証を提出します。

権利証は、不動産に権利があることを証明する書類だからです。

通常、相続登記では権利証を提出する必要はありません。

相続は、相続の発生という事実の発生によって登記申請をします。

不動産の持ち主は死亡した被相続人なので意思確認をしたくてもできません。

だから、不動産の持ち主の意思を確認する必要がなく、権利証を用意する必要がないのです。

権利証を提出不要にする代わりに、事実の発生を証明する戸籍謄本等を提出する必要があります。

被相続人の住所の移り変わりを証明することができない場合、権利証を提出して登記簿に書いてある人であると証明することができます。

被相続人の権利証を提出した場合、被相続人の住所の移り変わりを証明していないけど、権利者であることを証明したと言えます。

⑤権利証を見つけられなかったら相続人全員からの印鑑証明書付き上申書

土地や建物は重要な財産であることが多いので、その権利証は大切に保管してあるでしょう。

権利証は紛失しても再発行されません。

普段は大切に保管して簡単に人目にさらしたりしないものですが、相続など大切な場面で見つけることができなくなることは多々あります。

被相続人が保管していた場合、保管場所を共有していない家族が見つけられなくなるのです。

権利証が見つけられない場合、権利証を提出して権利者であることを証明することはできません。

権利証を提出することができない場合、相続人全員からの印鑑証明書付き上申書を提出します。

上申書は「不動産の所有者は被相続人に間違いありません」という法務局宛てのお願いです。

相続人全員とは、遺産分割協議に参加するべき人全員です。

その財産を相続する人だけではありません。

その財産を受け取らないけど他の財産を相続する人など遺産分割協議に参加するべき人全員から上申書を提出します。

遺産分割協議に参加するべき人全員が、実印で押印し印鑑証明書を添付します。

印鑑証明書は古いものでも差し支えありません。

法務局によっては、上申書の他に不在住証明書や不在籍証明書が必要になります。

固定資産税の納税証明書の提出が求められる場合があります。

固定資産税は、一般的に所有者が負担するものだからです。

固定資産税を負担していた場合、所有者であったと認めてもらいやすくなります。

住所がつながらない場合などイレギュラーな場合の取り扱いは、管轄の法務局によって異なる場合があります。

⑥死亡者は住民票の広域交付の対象外

住民基本台帳ネットワークシステムを利用することで、住民票がある市区町村以外でも住民票を発行してもらうことができます。

例えば、名古屋市に住民票を置いている人が他の市区町村役場で住民票を発行してもらうことができます。

名古屋市以外に住民票を置いている人が名古屋市内の区役所で住民票を発行してもらうことができます。

住民票の広域交付で、死亡した人の住民票を取得することはできません。

3相続人は住民票が必要

①相続人の最新の住所を確認する

登記簿には登記名義人の住所が登記されます。

不動産を相続する人の住民票は、不動産を相続する人の住所を証明するために提出します。

住民票に有効期限はありません。

不動産を相続する人の最新の住所が記載されているのであれば、取得後に何年経過していても問題はありません。

不動産を相続する人だけが記載されている住民票でも家族全員が記載されている住民票でも、差し支えありません。

②住所証明書であれば住民票以外でも使える

相続人が提出するべき書類は、本来、住所を証明する書類です。

市町村長や登記官などの公務員が職務上証明した書類であれば、住所証明書として認められます。

住所証明書として一番身近な書類が住民票であるに過ぎません。

住民票以外に住所証明書として認められる書類は、戸籍の附票や印鑑証明書が挙げられます。

相続手続をする場合、遺産分割協議書を作成して印鑑証明書を添付します。

遺産分割協議書に添付した印鑑証明書が1枚あれば、住所証明書としても使うことができます。

印鑑証明書には、印鑑登録をした人の住所が記載されています。

印鑑証明書を取得してから長期間経過した場合、相続人が転居する場合や住居表示が実施される場合があります。

不動産を相続する人は、最新の住所が記載された住民票を提出する必要があります。

印鑑証明書の住所と住民票の住所が違う場合、法務局は別の人であると判断します。

同一人物であることを証明するために、住所の移り変わりを証明しなければなりません。

印鑑証明書の住所から住民票の住所までの住所の移り変わりを証明する書類が追加で必要になります。

③その不動産を相続する人以外の住民票は不要

相続人の住民票は、その不動産を相続する人だけです。

相続人全員の住民票ではありません。

登記簿に記載する住所を確認するためなので、登記簿に記載されない人は住民票も不要です。

④広域交付住民票は本籍が記載されない

広域交付住民票は、住民票を置いている市区町村以外の市区町村役場で発行してもらうことができます。

広域交付住民票は、本籍を記載してもらうことができません。

住民票を置いている市区町村の市区町村役場で発行してもらう場合、申し出れば本籍を記載してもらうことができます。

相続登記で提出する住民票には、本籍の記載が必要です。

広域交付住民票は、相続登記で使うことはできません。

⑤死亡した相続人で除票が取得できないとき

不動産を相続する人が死亡してしまった場合でも、相続登記をすることができます。

生前に不動産を相続したのだから、相続した事実を登記することができます。

死亡した相続人で相続登記をする場合、原則として、住民票の除票が必要です。

住民票の除票や戸籍の附票は、永年保管ではありません。

役所で廃棄済になった場合、住民票の除票や戸籍の附票を取得することができません。

このような場合、被相続人の最後の本籍地を住所として相続登記をすることができます。

4法定相続情報一覧図を利用すると便利

①法定相続情報一覧図とは

相続手続のたびに、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍と相続人の現在戸籍の束を提出しなければなりません。

大量の戸籍を持ち歩くと汚してしまったり、紛失する心配があるでしょう。

被相続人を中心にして、どういう続柄の人が相続人であるのか一目で分かるように家系図のように取りまとめてあると便利です。

この家系図と戸籍謄本等を法務局に提出して、登記官に点検してもらうことができます。

登記官は内容に問題がなかったら、地模様の入った専用紙に認証文を付けて印刷して、交付してくれます。

登記官が地模様の入った専用紙に印刷してくれた家系図のことを法定相続情報一覧図と言います。

法務局に戸籍謄本等の点検をお願いすることを法定相続情報一覧図の保管及び交付の申出と言います。

法定相続情報一覧図の保管及び交付の申出をするときに、戸籍謄本だけでなく被相続人の住民票除票や相続人の住民票を提出することができます。

家系図に被相続人の最後の住所や相続人の住所を記載しておけば、登記官は一緒に点検をしてくれます。

被相続人や相続人の住所が記載された法令相続情報一覧図があると相続手続がよりスムーズになります。

②住所が書いてある法定相続情報一覧図を提出すれば住民票は提出不要

相続登記をする場合、たくさんの書類を用意しなければなりません。

(1)被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本

(2)相続人の現在戸籍

(3)被相続人の住民票の除票

(4)不動産を相続する人の住民票

被相続人の最後の住所や相続人の住所が記載された法定相続情報一覧図を提出する場合、上記(1)~(4)の書類が提出不要になります。

法定相続情報一覧図の保管及び交付の申出をしたときに、登記官が確認しているからです。

(1)~(4)の書類だけでも大量になることが多いものです。

(1)~(4)の書類を一目で分かるようにまとめた法定相続情報一覧図はとても便利です。

③法定相続情報一覧図は再交付をすることができる

法定相続情報一覧図は、保管及び交付の申出をしたときから5年間保管されています。

5年以内であれば、法務局で再交付してもらうことができます。

5住民票は原本還付をしてもらうことができる

相続の手続先は、たくさんあるのが通常です。

相続登記で提出した住民票は、登記が完了した後に返してもらうことができます。

返してもらいたい住民票のコピーを用意します。

コピーに「原本に相違ありません」と記載し、申請人が記名押印をします。

押印する印章は、認印で構いません。

6相続登記を司法書士に依頼するメリット

相続が発生すると、相続人は悲しむ暇もなく相続手続に追われます。

ほとんどの人は相続手続は不慣れで、聞き慣れない法律用語で疲れ果ててしまいます。

インターネットの普及で多くの人は簡単に多くの情報を手にすることができるようになりました。

多くの情報の中には正しいものも、適切でないものも同じように混じっています。

相続登記もカンタンにできる、ひとりでできたという記事も散見されます。

不動産は、重要な財産であることも多いものです。

登記手続は、一般の方から見ると些細なことと思えるようなことでやり直しになります。

法務局の登記手続案内を利用すれば、シンプルな事例の申請書類などは教えてもらえます。

個別具体的な事例に関しては、わざわざ説明してくれません。

司法書士などの専門家から見れば、トラブルのないスムーズな相続手続であっても、知識のない一般の方はへとへとになってしまいます。

住所がつながらない場合など、シンプルな事例とは言えない事情がある場合は申請を取下げて、やり直しになることが多いでしょう。

司法書士は登記の専門家です。

スムーズに相続登記を完了させたい方は司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。

配偶者居住権設定登記

2024-06-26

1配偶者居住権とは

①配偶者居住権は設定が必要

配偶者居住権は、相続が発生してから配偶者が住む場所を失うことがないように保護するために作られた権利です。

配偶者居住権は、自動的に発生することはありません。

遺言書や遺産分割協議などで、権利を設定する必要があります。

②建物が被相続人と共有の場合のみ配偶者居住権は成立

建物を被相続人と配偶者以外の人と共有しているケースがあります。

配偶者居住権は、被相続人と配偶者以外の人と共有建物の場合は成立しません。

③配偶者居住権は原則配偶者の終身存続

配偶者居住権は、原則として終身です。

遺言書や遺産分割協議などによって、存続期間を決めることもできます。

④配偶者居住権は建物全体が対象

配偶者居住権では、居住部分だけでなく建物全体が対象になります。

店舗付き住宅などでは、店舗も含めて対象になります。

配偶者居住権では、店舗などから得た収入は配偶者のものにできます。

⑤配偶者居住権は登記できる

要件を満たせば、配偶者居住権は登記をしなくても成立します。

配偶者居住権はせっかく登記できるのに、登記しないと大きな不利益を受けるおそれがあります。

2配偶者居住権は設定する方法

①遺言書で遺贈

配偶者居住権は、自動的に発生することはありません。

遺贈とは、被相続人が遺言によって、法定相続人や法定相続人以外の人に、財産を譲ってあげることです。

配偶者居住権を遺言書で遺贈することができます。

②死因贈与契約で取得

自分の財産を無償で譲ってあげることを贈与と言います。

贈与は、譲り渡す人と譲り受ける人の合意がある契約です。

死因贈与は、譲り渡す人が死亡したときに贈与の効果が発生する契約です。

配偶者居住権を死因贈与契約で設定することができます。

後日トラブルになることが予想されるのであれば、死因贈与契約は公正証書にしておくといいでしょう。

死因贈与契約を締結した場合、始期付配偶者居住権設定仮登記をすることができます。

公正証書に仮登記の承諾条項をいれておくといいでしょう。

公正証書に仮登記承諾条項がある場合、始期付配偶者居住権設定仮登記は配偶者が単独申請をすることができます。

仮登記とは、今すぐ本登記をすることができない場合に将来のため登記上の順位を確保するための登記です。

財産を譲ってあげる人が死亡して、契約の効力が発生した場合、本登記を申請します。

③遺産分割協議で合意

相続が発生した場合、被相続人のものは相続人全員の共有財産になります。

相続財産の分け方は、相続人全員による話し合いの合意で決めなければなりません。

相続財産の分け方について相続人全員の話し合いを遺産分割協議と言います

被相続人の配偶者は、遺産分割協議で相続人全員の合意ができれば配偶者居住権を取得することができます。

3配偶者居住権設定登記しないと権利主張ができない

配偶者居住権は、設定が必要です。

遺言書、死因贈与契約、遺産分割協議で配偶者居住権を設定することができます。

配偶者居住権を設定しても、事情を知っているのは当事者だけです。

配偶者居住権は、登記しなくても有効です。

建物所有者は、配偶者居住権を設定した後に配偶者を追い出すことはできません。

登記をしていない場合、第三者からは配偶者居住権の存在は分かりません。

配偶者居住権が設定された事実を知らずに、第三者が建物所有者から建物を買い受けることがあります。

建物は重要な財産であることが多いので、買主は直ちに所有権移転登記をします。

買主は建物を使うため、配偶者に立ち退いて欲しいと要求するでしょう。

配偶者居住権があるから、立ち退きたくないと文句を言うことはできません。

配偶者居住権設定登記をしていない場合、権利主張ができないからです。

建物の買主に立ち退きたくないなどと文句を言うことができるのは、登記の重要な効力です。

配偶者が安心して住み続けるためには、配偶者居住権設定登記が不可欠です。

4配偶者居住権設定登記の申請人

①原則権利者と義務者の共同申請

配偶者居住権設定登記は、配偶者が単独で申請することができません。

配偶者を権利者として建物所有者を義務者として共同で申請します。

②建物所有者が協力しないときは裁判所で判決

配偶者居住権設定登記は、建物所有者の協力が必要です。

配偶者居住権を設定したのだから、建物所有者は登記申請に協力する義務があります。

建物所有者が登記申請に協力しない場合、配偶者が勝手に申請することはできません。

配偶者は建物所有者を裁判に訴えて、判決を得る必要があります。

裁判で勝訴判決を得るまでに長期間かかるのが通常です。

裁判中に建物所有者が第三者に建物を売り渡すかもしれません。

建物を買い受けた第三者が所有権移転登記をした場合、配偶者に立ち退いて欲しいと要求することができます。

第三者が所有権移転登記をした後で、勝訴判決を得ても意味はありません。

建物は第三者のものになっているからです。

建物所有者を裁判に訴える前に、処分禁止の仮処分を求める必要があります。

③遺言書で遺贈したときは遺言執行者と申請

遺言書で遺贈した場合、配偶者を権利者として遺贈義務者を義務者として共同で申請します。

遺言執行者がいる場合、遺贈義務者は遺言執行者です。

遺言執行者は、遺言書の内容を実現する人です。

遺言執行者は遺言の内容を実現するために必要な行為をする権限があります。

協力しない相続人が遺言執行を妨害した場合、原則として、妨害行為は無効になります。

遺贈登記は、受遺者と遺言執行者が共同で登記申請をします。

遺言執行者は、遺言書で指定することができます。

遺言執行者がいない場合、原則どおり建物所有者の協力が必要になります。

④死因贈与は執行者と申請

死因贈与契約で贈与をした場合、贈与契約で執行者を定めておくことができます。

配偶者を権利者として執行者を義務者として共同で申請します。

死因贈与契約で贈与をする場合、始期付配偶者居住権設定仮登記をすることができます。

建物所有者は、理論上は、第三者に所有権を移転することができます。

登記簿は、だれでも取得することができます。

始期付配偶者居住権設定仮登記がされている場合、配偶者居住権の負担が発生することが分かります。

多くの場合、建物を使いたいから購入するでしょう。

配偶者居住権の負担が発生する建物を買いたいという人は、めったにいません。

事実上、相続発生後に建物所有者が売却することは困難になります。

相続が発生する前に始期付配偶者居住権設定仮登記ができるのは、死因贈与契約で贈与をする場合のみです。

遺贈や遺産分割協議による設定をする場合、相続発生前には何もすることができません。

始期付配偶者居住権設定仮登記だけでは、権利主張をすることはできません。

配偶者居住権を権利主張するためには、仮登記を本登記にする必要があります。

5配偶者居住権設定登記の方法

①建物の相続登記をしてから配偶者居住権設定登記

配偶者居住権設定登記をする場合、建物の相続登記がされていることが前提です。

建物の相続登記を省略して配偶者居住権設定登記をすることはできません。

通常、建物の相続登記を1件目、配偶者居住権設定登記を2件目として同時に申請します。

配偶者居住権設定登記では、権利証が必要になります。

権利証は相続や遺贈による所有権移転登記が完了してはじめて発行されます。

相続や遺贈による所有権移転登記と配偶者居住権設定登記を同時にする場合、権利証が提供できなくても差し支えありません。

相続や遺贈による所有権移転登記と配偶者居住権設定登記を同時にする場合、相続登記が完了したら権利証が提供されたものとして配偶者居住権設定登記が処理されるからです。

②登記原因

登記原因は、配偶者居住権を設定した日です。

遺産分割協議による設定の場合、遺産分割協議の成立日です。

「令和○年○月○日遺産分割」です。

遺言書による遺贈や死因贈与による場合、被相続人の死亡日です。

「令和○年○月○日遺贈」「令和○年○月○日死因贈与」です。

③存続期間

配偶者居住権の存続期間は、別段の定めがない限り、配偶者の終身の間です。

別段の定めがない場合「配偶者居住権者の死亡時まで」です。

別段の定めがある場合、次のような記載です。

「令和○年○月○日から令和○年○月○日まで」

「令和○年○月○日から○年間」

「令和○年○月○日から○年間または配偶者居住権者の死亡時までのうち、いずれか短い期間」

存続期間は、原則として、延長や更新をすることはできません。

遺贈で配偶者居住権の存続期間が定められた場合、配偶者は遺贈を放棄することができます。

遺贈を放棄した後であらためて、遺産分割協議をすることができます。

④特約

配偶者居住権を設定する場合、居住建物を第三者に使用させることができることを定めることができます。

第三者が居住建物を使用収益することができる定めは、登記することができます。

「第三者に居住建物の使用または収益をさせることができる」です。

配偶者が第三者に居住建物を貸し出すことがあります。

建物に対して賃借権設定登記をする場合、通常、建物所有者の承諾書が必要になります。

配偶者居住権設定登記で「第三者に居住建物の使用または収益をさせることができる」ことが登記されていた場合、建物所有者の承諾書は不要になります。

⑤登録免許税

配偶者居住権設定登記の登録免許税は、建物の固定資産評価額の1000分の2です。

配偶者居住権設定仮登記の登録免許税は、建物の固定資産評価額の1000分の1です。

⑥配偶者居住権設定登記の必要書類

配偶者居住権設定登記申請書に次の書類を添付します。

(1)登記原因証明情報

(2)登記識別情報

(3)建物所有者の印鑑証明書

(4建物の固定資産税評価証明書

(5)登記委任状

登記原因証明情報は登記所差入方式でも差し支えありません。

配偶者居住権者の住民票は、提出する必要がありません。

配偶者居住権設定登記では、被相続人の住民票は提出不要です。

被相続人の住民票は、一緒に提出する建物の相続登記で提出します。

6配偶者居住権設定登記を司法書士に依頼するメリット

配偶者居住権は、相続が発生してから、配偶者が住む場所を失うことがないように保護するために作られた権利です。

相続財産の大部分が自宅である場合、分け方をめぐって相続人全員の話し合いがつかないケースは少なくありません。

それぞれの相続人が法定相続分を受け取りたいと主張するからです。

配偶者居住権がない場合、長年住み慣れた自宅を相続したいと思ったら、事実上自宅以外の金融資産を受け取ることができなくなります。

配偶者居住権は自宅に居住する権利のみなので、自宅に住み続けて、かつ、金融資産を確保することができます。

自宅を居住権と負担付所有権に分けることで、円満な話し合いによる合意がしやすくなります。

一方で、配偶者居住権を得た配偶者自身が死亡した場合、配偶者居住権は消滅します。

この点に着目して、相続税を減らせることをアピールしている専門家もいます。

制度のメリットデメリットを考えて、適切に選択しましょう。

家族がトラブルにならないように相続手続を完了したいと考える方は、司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。

墓地の相続登記

2024-05-01

1相続財産にならない財産がある

①一身専属権は相続財産ではない

相続が発生すると、被相続人のものは相続人が相続します。

相続人が相続する財産が相続財産です。

被相続人のものでも、相続人が相続しない財産があります。

一身専属権とは、その人個人しか持つことができない権利や資格のことです。

権利行使をするかしないか、本来の権利者個人の意思次第とするのが適当とされる権利です。

一身専属権は、相続人が相続しません。

一身専属権は、相続財産ではありません。

②祭祀用財産は相続財産ではない

祭祀用財産とは、墓地、墓石、仏壇、家系図などの先祖祭祀のための財産です。

相続財産は、相続人全員の共有財産です。

相続財産は、相続人全員の合意で分け方を決めます。

墓地、墓石、仏壇、家系図などの財産は、通常の財産と同様にすることはできません。

相続人全員の合意で分け方を決めることは、適切ではないでしょう。

祭祀用財産は、祭祀を主宰すべき人が受け継ぎます。

祭祀を主宰すべき人を、祭祀承継者と言います。

祭祀用財産は、相続財産ではありません。

③相続人固有の財産は相続財産ではない

被相続人の死亡をきっかけに、相続が発生します。

被相続人の死亡をきっかけに、財産を受け取ることがあります。

被相続人の死亡をきっかけに受け取る財産には、相続で受け取る財産以外の財産があります。

例えば、被相続人に生命保険がかけてある場合、死亡保険金が支払われます。

生命保険の死亡保険金は、保険契約で支払われる財産です。

被相続人の生前に死亡保険金を受け取る権利はなかったはずです。

被相続人から相続する財産ではありません。

生命保険の死亡保険金は、受取人の固有の財産です。

受取人が「相続人」であっても、相続財産ではありません。

相続人固有の財産は、相続財産ではありません。

2墓地を所有していたら相続登記が必要

①登記簿謄本で所有者を確認する

被相続人がお墓を購入していることがあります。

被相続人が寺院の檀家になっていて、お墓を引き継いでいることがあるでしょう。

墓地を所有していた場合、相続登記が必要です。

墓地を所有しているのは、寺院や地方自治体であることがあります。

寺院や地方自治体が墓地を所有している場合、墓地を利用する契約をしているでしょう。

墓地を所有していない場合、相続登記は不要です。

墓地の登記簿謄本を取得すると、所有者が判明します。

登記簿謄本を取得して所有者を確認すると、相続登記が必要であるか確認することができます。

②墓地が祭祀用財産なら祭祀承継者が受け継ぐ

祭祀用財産は、祭祀承継者が受け継ぎます。

祭祀承継者は、相続人であることも相続人以外の人であることもあります。

祭祀用財産は、相続人以外の人が受け継ぐことができます。

祭祀用財産は、相続によって受け継ぐものではないからです。

墓地が祭祀用財産の場合、祭祀承継者が受け継ぎます。

③墓地が相続財産なら相続人が相続する

墓地には、祭祀用財産である墓地と相続財産である墓地があります。

祭祀用財産は、先祖祭祀のための財産です。

墓地には、先祖以外の人や神が祀られていることがあります。

先祖以外の人や神が祀られている場合、祭祀用財産とは言えません。

先祖祭祀とは、無関係だからです。

祭祀用財産以外の財産だから、相続財産になります。

相続財産は、相続人全員の共有財産です。

相続財産の分け方は、相続人全員の合意で決定します。

墓地が相続財産の場合、相続人が相続します。

④永代使用権は相続登記不要

お墓を購入した場合、墓地の所有権を得たと思うかもしれません。

通常、霊園には管理規約があります。

お墓を購入するとは、霊園と使用契約を結ぶことです。

霊園の区画を使う権利を得て、使用料や管理料を支払います。

霊園の区画を使う権利のことを永代使用権とか墓地利用権と言います。

永代使用権や墓地利用権は、墓地を利用する権利に過ぎません。

永代使用権や墓地利用権は、登記不要です。

永代使用権や墓地利用権は、霊園の管理規約に基づいて家族が引き継ぎます。

霊園の管理規約によっては、一定の範囲の親族のみが受け継ぐことができると決められています。

墓地の永代使用権は、相続登記不要です。

3墓地が祭祀用財産のときの相続登記

①登記原因は「年月日民法第897条による承継」

祭祀用財産は、祭祀承継者が受け継ぎます。

祭祀承継者が引き継ぐことは、民法第897条によって定められています。

祭祀承継者が墓地を引き継ぐ場合、登記原因は「年月日民法第897条による承継」です。

年月日は、祭祀用財産を引き継ぐ日です。

②相続人全員と祭祀承継者で共同申請

墓地を祭祀承継者に引き継ぐ場合、相続人全員と祭祀承継者の共同申請です。

祭祀承継者を登記権利者、相続人全員を登記義務者として共同で申請します。

祭祀承継者は、遺言書で指名されることがあります。

遺言書で遺言執行者が選任されている場合、遺言執行者が義務者になります。

遺言執行者は、遺言書の内容を実現する人だからです。

相続人全員と祭祀承継者が共同申請をする場合、登記申請書に押印をします。

登記申請書の押印は、祭祀承継者は認印による押印で差し支えありません。

相続人全員の押印は、実印による押印が必要です。

相続人全員の押印は、登記義務者の押印だからです。

③必要書類

祭祀用財産の相続登記をする場合、次の書類が必要です。

(1)登記原因証明情報

(2)被相続人の権利証

(3)相続人全員の印鑑証明書

(4)祭祀承継者の住民票

登記原因証明情報は、祭祀用財産の承継があったことの証明書です。

祭祀承継者の決定方法によって、次のような書類を提出します。

(1)被相続人が指定したとき

遺言書、相続人全員による指定内容の証明書

(2)慣習で決まったとき

相続人全員による祭祀承継者を確認した証明書

(3)家庭裁判所が指定したとき

調停調書、審判書と確定証明書

墓地が祭祀用財産である場合、祭祀用財産であることを証明する書類は不要です。

登記官の審査は、形式的審査にとどまるからです。

④登録免許税は非課税

墓地の登記簿謄本を取得すると、地目を確認することができます。

地目が「墓地」である土地は、登録免許税が課されません。

所有権移転登記だけでなく、登記名義人住所変更登記も非課税です。

登録免許税が課されない場合、登記申請書に根拠となる法律の規定を記載する必要があります。

「墓地」である土地の場合、「登録免許税法第5条第10号により非課税」と記載します。

登記地目が墓地であっても、評価証明書などで現況が雑種地になっていることがあります。

登記地目が「墓地」である場合、登録免許税が課されません。

逆に、登記地目が雑種地であっても、評価証明書などで現況が墓地になっていることがあります。

登記地目が「墓地」でない場合、登録免許税が課されます。

4墓地が相続財産のときの相続登記

①登記原因は相続

相続財産は、相続人が相続します。

対象の財産が墓地であっても墓地以外の財産であっても、ちがいはありません。

相続人が墓地を引き継ぐ場合、登記原因は「年月日相続」です。

年月日は、被相続人が死亡した日です。

②相続人が単独申請

墓地を相続人が引き継ぐ場合、相続人の単独申請です。

多くの場合、複数の相続人がいるものの遺産分割協議で相続人のひとりが相続するでしょう。

相続登記は、その不動産を相続する相続人が単独で申請することができます。

財産を相続しない相続人は、申請人になる必要がありません。

相続財産の相続登記する場合、登記申請書に押印をします。

登記申請書の押印は、認印による押印で差し支えありません。

③必要書類

相続財産の相続登記をする場合、次の書類が必要です。

(1)被相続人の住民票の除票

(2)被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本

(3)相続人全員の現在戸籍

(4)遺産分割協議書

(5)相続人全員の印鑑証明書

(6)相続する人の住民票

(7)評価証明書

④登録免許税は非課税

墓地の登記簿謄本を取得すると、地目を確認することができます。

地目が「墓地」である土地は、登録免許税が課されません。

所有権移転登記だけでなく、登記名義人住所変更登記も非課税です。

登録免許税が課されない場合、登記申請書に根拠となる法律の規定を記載する必要があります。

「墓地」である土地の場合、「登録免許税法第5条第10号により非課税」と記載します。

登記地目が墓地であっても、評価証明書などで現況が雑種地になっていることがあります。

登記地目が「墓地」である場合、登録免許税が課されません。

逆に、登記地目が雑種地であっても、評価証明書などで現況が墓地になっていることがあります。

登記地目が「墓地」でない場合、登録免許税が課されます。

5相続放棄をしても祭祀承継者

①祭祀承継者の主な役割

祭祀承継者は、先祖祭祀を主宰する人です。

先祖祭祀を主宰する人として、お墓や仏壇などの管理が主な役割です。

定期的なお墓参りの他に、霊園への管理料や使用料の支払を負担します。

お墓にだれの遺骨を納めるか、お墓を移転するかなども単独で判断することができます。

祭祀承継者になった場合、一周忌などの法要を主宰して、お布施などの支払をすることになるでしょう。

祭祀承継者になった場合であっても、祭祀を行う法的義務を負うものではありません。

②祭祀承継者は相続のルールが適用されない

相続人のうちのひとりが祭祀承継者になるのが一般的です。

お墓が複数ある場合、それぞれに祭祀承継者がいる場合もあります。

祭祀を主宰すべき人になる資格は、特にありません。

相続人であっても相続人以外の人であっても、祭祀承継者になることができます。

親族であっても親族以外の人であっても、祭祀承継者になることができます。

氏が同じ人であっても氏がちがう人であっても、祭祀承継者になることができます。

相続のルールが適用されるものではありません。

先祖祭祀は、親族の伝統や慣習、考え、気持ちと切り離せないからです。

③祭祀承継者の決め方

祭祀承継者は、次のように決められます。

(1)被相続人の指定に従う

被相続人が祭祀を主宰すべき人として指定する場合、一方的に指定することができます。

トラブル防止のために、本人の同意をもらっておく方がいいでしょう。

(2)慣習に従って決める

(3)家庭裁判所で決定する

被相続人が指定しておらず慣習も明らかでない場合、家庭裁判所が指名します。

被相続人の意思、相続人の身分関係、過去の生活感情、祭祀を主宰する意欲や能力、他の相続人や周りの人の意見を聞いて総合的に判断します。

家庭裁判所は、総合的に考えて最もふさわしい人を祭祀承継者に指名します。

④祭祀承継者は拒否できない

祭祀承継者に選ばれた場合、祭祀承継者になることを拒否することはできません。

相続が発生したら、相続人は相続を単純承認するか相続放棄をするか選択することができます。

家庭裁判所で相続放棄が認められた場合、はじめから相続人でなくなります。

祭祀承継者には、放棄する制度がありません。

祭祀承継者は、相続のルールが適用されません。

相続放棄をした人が祭祀継承者に指名されることがあります。

祭祀承継者は指名された場合、拒否することはできません。

6墓地の相続登記を司法書士に依頼するメリット

お墓の分譲とかお墓の販売と聞くと、お墓を所有している気持ちになるかもしれません。

現代では、お墓を買うことは永代使用契約をすることです。

単に永代使用契約をして永代使用権を得るだけであれば、登記は無関係です。

墓地埋葬法ができる前から使用している墓地は、現在も各地に存在に存在しています。

新しく墓地を作ることは難しくても、すでにある墓地は使い続けることができます。

墓地を所有している場合、相続登記が必要です。

多くの場合、墓地に固定資産税がかかりません。

墓地を所有している認識がうすいでしょう。

遠方の墓地が不便な場合、お墓のお引越しをしようとすることがあります。

墓じまいをしようとしたときに、登記が必要であることに気がつきます。

ときには、祖父やそれ以前の先祖の名義のままになっていることがあります。

相続登記がされないままになっている場合、難易度は高くなります。

墓地を相続する場合は、司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。

失踪宣告後に相続登記

2024-04-26

1失踪宣告で死亡と見なされる

①単なる音信不通で失踪宣告はされない

相当長期間、行方不明になっている場合、死亡している可能性が高い場合があります。

被相続人や他の相続人と音信不通で連絡先が分からない程度であれば、生死不明とは言えません。

条件を満たした場合、死亡の取り扱いをすることができます。

失踪宣告とは、行方不明の人が死亡した取り扱いとするための手続です。

失踪宣告がされたら、たとえ死亡していなくても死亡した取り扱いをします。

死亡した取り扱いをしますから、失踪宣告がされた人に相続が発生します。

②失踪宣告には家庭裁判所の調査がある

家庭裁判所は、失踪宣告の申立書を受け付けた後、独自で調査をします。

家庭裁判所は、官報と裁判所の掲示板にお知らせを出します。

申立人にいろいろな書類の提出を求めたり、文書で照会したりします。

ときには、家庭裁判所から呼出がある場合もあります。

失踪宣告は死亡と見なす手続だから、丁寧に調査します。

③失踪宣告の審判が確定したら失踪届

家庭裁判所の調査で生存が確認されることがあります。

生存が確認された場合、失踪宣告の申立ては取り下げることになります。

どこからも届出がなければ、家庭裁判所は失踪宣告の審判をします。

家庭裁判所が審判をした後に不服を言う人がいなければ、失踪宣告の審判は確定します。

家庭裁判所が審判をした後に不服を言うことができる期間は、2週間です。

失踪宣告の審判がされた後なにごともなく2週間経過すると、失踪宣告の審判は確定します。

失踪宣告が確定した場合、家庭裁判所はあらためて官報にお知らせを出します。

このお知らせは「失踪宣告がされました」という意味です。

④市区町村役場に失踪届を提出

家庭裁判所が失踪宣告の審判をした場合、申立人に審判書謄本が送られます。

審判書謄本と確定証明書を添えて市区町村役場に失踪届を提出します。

⑤戸籍に失踪宣告が記載される

市区町村役場に届出をして、はじめて戸籍に記載がされます。

相続手続では、失踪宣告の記載のある戸籍が必要になりますから、届出をしないと相続手続が進まなくなります。

戸籍には次のように記載されます。

【死亡とみなされる日】令和〇年〇月〇日

【失踪宣告の裁判確定日】令和〇年〇月〇日

【届出日】令和〇年〇月〇日

【届出人】親族 ○○○○

2失踪宣告を受けたら相続が開始する

①失踪宣告を受けた人が被相続人になるケース

失踪宣告とは、行方不明の人が死亡した取り扱いとするための手続です。

失踪宣告を受けた人は死亡したと扱われますから、相続が開始します。

失踪宣告された人を被相続人として、相続手続をします。

相続が発生する日は、死亡とみなされる日です。

失踪宣告の申立てをした日ではありません。

普通失踪であれば、生死不明になってから7年間経過したときです。

特別失踪であれば、危難が去ったときです。

相当長期間、行方不明になっていた後に失踪宣告がされる場合があります。

失踪宣告を受けた人が死亡とみなされる日に生きていた相続人が後に死亡することがあります。

生きていた相続人が後に死亡した場合、数次相続になります。

失踪宣告を受けた人が死亡とみなされる日に相続人になるはずだった人がすでに死亡していることがあります。

相続人になるはずだった人がすでに死亡している場合、代襲相続になります。

相続手続に参加する人が異なります。

②失踪宣告を受けた人が相続人になるケース

相続人調査をすると、ときには思いもよらない相続人が判明することがあります。

相続人であることを知っていても、連絡を取ったことがない人やどこに住んでいるのか分からない人が現れることがあります。

親族だれも連絡を取っていないまま、長期間行方不明になっていることがあります。

相続人が行方不明になっている場合、相続財産の分け方についての相続人全員の合意ができません。

相当長期間、行方不明になっている場合、死亡している可能性が高い場合があります。

行方不明になっている相続人が失踪宣告を受けた場合、死亡したと扱われます。

失踪宣告を受けた相続人に相続が発生する日は、死亡とみなされる日です。

相当長期間、行方不明になっていた後に失踪宣告がされる場合があります。

行方不明の相続人に失踪宣告がされた場合、被相続人の死亡日より後に死亡と見なされることがあります。

被相続人の死亡日より後に死亡と見なされた場合、数次相続になります。

行方不明の相続人に失踪宣告がされた場合、被相続人の死亡日より前に死亡と見なされることがあります。

被相続人の死亡日より前に死亡と見なされた場合、代襲相続になります。

相続手続に参加する人が異なります。

相続財産の分け方は、相続人全員での合意しなければなりません。

相続手続に参加する人を間違えると、遺産分割協議は無効になります。

3相続財産に不動産があれば相続登記

①失踪宣告を受けて相続が発生しても相続登記は通常どおり

失踪宣告は、行方不明の人が死亡した取り扱いとするための手続です。

失踪宣告を受けた人は、死亡とみなされる日に死亡したとみなされます。

失踪宣告を受けた人が不動産を所有していた場合、相続登記をします。

失踪宣告であっても、通常の死亡と変わることはありません。

相続登記をする場合、通常の相続登記と同じです。

行方不明になってから長期間経過しているので、数次相続や代襲相続など複雑な相続になりやすいです。

相続が発生したら、相続財産は相続人全員の共有財産です。

相続手続に参加する人を間違えないようにしましょう。

相続財産の分け方は、相続人全員の合意で決定します。

相続人全員による分け方の合意ができたら、合意内容を文書に取りまとめます。

相続人全員の合意内容を取りまとめた文書を遺産分割協議書と言います。

登記申請書には、通常、相続関係説明図を添えます。

遺言書がない場合、おおむね、次の書類が必要です。

(1)被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本

(2)相続人の現在戸籍

(3)被相続人の住民票の除票

(4)不動産を相続する人の住民票

(5)遺産分割協議書

(6)相続人全員の印鑑証明書

(7)不動産の固定資産税評価証明書

事例によっては追加書類が必要になる場合があります。

被相続人が失踪宣告を受けた場合、戸籍に失踪宣告の記載がされます。

法務局に提出する戸籍謄本は、失踪宣告の記載がされた戸籍謄本である必要があります。

失踪届を提出した直後に戸籍謄本を請求した場合、失踪宣告の記載がされているか確認しましょう。

②相続人が失踪宣告を受けても相続登記は通常どおり

失踪宣告を受けた人は、死亡とみなされる日に死亡したとみなされます。

被相続人が不動産を所有していた場合、相続登記をします。

相続人が失踪宣告を受けても、通常の死亡と変わることはありません。

相続が発生したら、相続財産は相続人全員の共有財産です。

相続手続に参加する人を間違えないようにしましょう。

相続財産の分け方を決める場合、相続人全員による合意が不可欠です。

相続人全員による分け方の合意ができたら、合意内容を文書に取りまとめます。

相続人全員の合意内容を取りまとめた文書を遺産分割協議書と言います。

失踪宣告が確定するまでに、他の相続人で相続財産をどのように分けるか話し合いをしているでしょう。

失踪宣告が確定した後に、相続人全員で遺産分割協議書を作成します。

4生死不明の相続人がいる相続を司法書士に依頼するメリット

相続が発生した後、早く平穏な日常を取り戻したいでしょう。

相続人が行方不明であることは、割とよくあることです。

行方不明の相続人がいると、相続手続を進めることができません。

相続が発生した後、困っている人はたくさんいます。

自分たちで手続しようとして、挫折する方も少なくありません。

失踪宣告の申立ては、家庭裁判所に手続が必要になります。

通常ではあまり聞かない手続になると、専門家のサポートが必要になることが多いでしょう。

信託銀行などは、高額な手数料で相続手続を代行しています。

被相続人が生前、相続人のためを思って、高額な費用を払っておいても、信託銀行はこのような手間のかかる手続を投げ出して知識のない遺族を困らせます。

知識のない相続人が困らないように高額でも費用を払ってくれたはずなのに、これでは意味がありません。

税金の専門家なども対応できないでしょう。

困っている遺族はどうしていいか分からないまま、途方に暮れてしまいます。

裁判所に提出する書類作成は、司法書士の専門分野です。

途方に暮れた相続人をサポートして、相続手続を進めることができます。

自分たちでやってみて挫折した方も、信託銀行などから丸投げされた方も、相続手続で不安がある方は司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。

相続登記を家族が代理申請

2024-04-15

1相続登記を家族が代理申請

①相続登記は相続人本人が自分で申請できる

被相続人が不動産を所有していた場合、不動産は相続人が相続します。

相続登記は、不動産の名義変更のことです。

不動産を相続する相続人が自分で相続登記をすることができます。

相続登記は、相続手続の中でも複雑で手間のかかる手続です。

不動産は、多くの人にとって重要な財産です。

法務局は、重要な財産の名義変更を慎重に審査するからです。

(1)法律の素養がある

(2)調べものが好き

(3)平日の日中に役所に何度も足を運ぶ充分な時間と根気熱意がある

上記にあてはまる人は、相続登記に向いているかもしれません。

相続登記は、相続人本人が自分で申請することができます。

②無報酬で1回限りなら家族が代理申請できる

相続登記は、相続手続の中でも複雑で手間のかかる手続です。

自分で登記申請をするのが難しい場合は、代わりの人に申請してもらうことができます。

無報酬でかつ、業務として代理するのでないのなら、家族に依頼して申請してもらうことができます。

業務として代理するとは、反復継続する意思が認められることです。

今回が1回目でも今後も同じことをする意思がある場合、業務として代理していると判断されます。

今後も同じことをする意思がある場合、違法になります。

無報酬で1回限りなら、家族が代理で申請することができます。

③報酬を受けて業務として代理できるのは司法書士と弁護士だけ

報酬を受けて業務として代理できるのは、国家資格者だけです。

登記申請を報酬を受けて業務として代理できるのは、司法書士と弁護士だけです。

2代理申請に委任状が必要

①委任状は依頼されたことの証明書

相続登記は、家族に依頼して代理で申請してもらうことができます。

相続人本人以外の人が登記申請をする場合、家族であっても委任状が必要です。

委任状は、相続人本人から依頼されたことの証明書です。

相続登記を申請する場合、たくさんの添付書類と一緒に委任状を法務局に提出します。

相続人本人以外の人が申請する場合、書面で依頼を受けたことを証明する必要があるからです。

申請する権限が認められない場合、相続登記をすることができません。

司法書士や弁護士に依頼する場合であっても家族であっても、委任状は必要です。

委任状は、相続人本人から依頼されたことの証明書です。

②不適切な委任状は認められない

適切な依頼を受けていない場合、相続登記を取り下げることになるでしょう。

適切な依頼を受けていない場合、相続登記を代理する権限が認められないからです。

不動産は、多くの人にとって重要な財産です。

登記申請書だけでなく、委任状についても法務局は慎重に審査します。

委任状は、依頼されたことの証明書だからです。

委任状の記載が不適切であった場合、適切な依頼を受けたとは言えなくなります。

だいたい合っているから大丈夫ではなく、完璧な記載が求められます。

一般の人から見ると、些細なことと思えるようなことでやり直しになります。

相続登記に委任状には、登記申請書の内容と同じ内容を記載します。

登記申請書を訂正することができても、代理人は委任状の記載を訂正できないことが多いものです。

委任状の内容は、本人が依頼した内容だからです。

適切な委任を受けていないと判断されることになります。

適切な委任を受けていない場合、相続登記の申請を取り下げることになります。

不適切な委任状は、相続登記が認められなくなります。

③委任状の押印は認印で良い

委任状は、代理人に依頼した内容を証明する書類です。

依頼した人は、委任状に押印しなければなりません。

押印は、実印である必要はありません。

依頼した人の認印で差し支えありません。

委任状に書き間違いを見つけた場合、名前の横に押した印と同一印を押印して、訂正します。

④委任状に契印・割印

委任状に書くべき内容は、たくさんあります。

複数ページに渡る委任状になることがあります。

1通の委任状であることが分かるように、割印・契印を施します。

クリップでとめるだけなど差し替えができる状態では、委任内容を証明できるとは言えないからです。

適切な委任があったと認められない場合、相続登記を取り下げなければならなくなります。

委任状が複数枚になる場合、割印・契印を施します。

3家族が代理申請をするときの委任状の書き方

司法書士などの専門家に依頼する場合、委任状は司法書士が用意します。

登記申請を依頼するのであれば、司法書士が作成した委任状に記名押印するだけで済みます。

相続登記に必要な委任状には、次のことを記載します。

①相続登記を依頼される人の名前と住所

②相続登記を依頼する旨

 「次の登記申請に関する一切の権限を委任します。」と記載すると分かりやすいでしょう。

③登記の目的

④登記原因

⑤相続人

③~⑤は、相続登記の申請書と同じです。

あらかじめ申請書を作ってあるのであれば、そのまま丸写しすれば記載できます。

申請書の記載を書き直す場合、委任状の記載を一緒に書き直す必要があります。

内容が一致していない場合、適切な委任を受けていないと判断されるおそれがあります。

適切な委任を受けていない場合、登記申請を受け付けてもらえないかもしれません。

⑤相続人は、まず括弧をつけて被相続人の氏名をフルネームで記載します。

相続人が複数で共有する場合、相続人の住所氏名だけでなく持分も記載します。

⑥不動産の表示

相続登記の対象になる不動産の表示を記載します。

目的になる不動産の登記簿謄本を確認して、そのまま書き写せば記載できます。

記載事項は、申請書の内容と同じです。

土地であれば、次の事項を記載するといいでしょう。

(1)所在

(2)地番

(3)地目

(4)地積

建物であれば次の事項を記載するといいでしょう。

(1)所在

(2)家屋番号

(3)種類

(4)構造

(5)床面積

建物でも敷地権のあるマンションの一室であれば次の事項を記載するといいでしょう。

(1)一棟の建物の表示

i所在

ii建物の名称

(2)専有部分の建物の表示

i家屋番号

ii建物の名称

iii種類

iv構造

v床面積

(3)敷地権の目的である土地の表示

i土地の符号

ii所在及び地番

iii地目

iv地積

(4)敷地権の表示

i土地の符号

ii敷地権の種類

iii敷地権の割合

相続の対象が土地と建物など不動産が複数ある場合、順番に書き連ねれば差し支えありません。

不動産がたくさんある場合、書くべき項目の書き忘れに注意しましょう。

書くべき項目の書き忘れがあった場合、不動産が特定できないと指摘されるおそれがあります。

不動産を特定できない委任状の場合、登記申請を受け付けてもらえません。

⑦依頼する項目の補足事項

相続登記を申請する場合、登記申請だけでなく付随する手続があります。

手続の一環として一緒にお願いしておくと、手続がスムーズになります。

付随項目を書き忘れてしまうと、代理人が手続できなくなります。

具体的には、次のような項目です。

 1.登記識別情報の受領の件及びその受領について復代理人選任に関する一切の件

 1.登記識別情報の受領に関する一切の件

 1.原本還付請求及び受領に関する一切の件

 1.復代理人選任に関する一切の件

 1.登記に係る登録免許税の還付金を受領する件

特に「登記識別情報の受領に関する一切の件」は重要です。

登記識別情報とは、権利証のことです。

代わりに登記申請をお願いしたのに、権利証を受け取りするために法務局に出向かなければならなくなるからです。

⑧日付

⑨登記申請をお願いする人の住所氏名

ふだん住所は簡単な記載をしている場合であっても、住民票の記載どおり書きましょう。

⓾押印

名前の横に押印します。

4委任状が不要になる例外

①相続人が未成年で親権者が申請

相続人本人が赤ちゃんであることがあります。

赤ちゃんなどの未成年者は、物事の良しあしを適切に判断することができません。

相続人が赤ちゃんである場合、親などの親権者が代わりに相続登記をすることができます。

未成年者は充分な判断ができないから、親などの親権者があらゆることを代理することが認められています。

未成年者に代わって親などの親権者が相続登記をする場合、委任状は不要です。

委任状の代わりに、親などの親権者であることを証明する書類が必要です。

親などの親権者と言えども、他人だからです。

親などの親権者であることを証明する書類とは、親子関係を証明する戸籍謄本です。

相続登記をする場合、親子関係を証明する戸籍謄本は発行後3か月以内のものでなければなりません。

②相続人が認知症で成年後見人が申請

相続人が認知症であることがあります。

認知症になると、物事のメリットデメリットを充分に判断することができなくなります。

記憶があいまいになることがあるでしょう。

認知症の人は自分で判断することができないから、成年後見人が代わりに判断します。

成年後見人は、認知症の人をサポートする人です。

認知症の人に代わって成年後見人が相続登記をする場合、委任状は不要です。

委任状の代わりに、成年後見人であることを証明する書類が必要です。

成年後見人と言えども、他人だからです。

成年後見制度を利用している場合、登記がされます。

成年後見人であることは、後見登記事項証明書で証明することができます。

相続登記をする場合、成年後見人であることを証明する後見登記事項証明書は発行後3か月以内のものでなければなりません。

③遺言執行者が相続登記

被相続人が遺言書を作成していることがあります。

遺言書がある場合、遺言書の内容どおりに財産を分けることができます。

遺言執行者は、遺言書の内容を実現する人です。

遺言執行者は、相続人のため相続登記を申請することができます。

遺言執行者が相続登記を申請する場合、委任状は不要です。

委任状の代わりに、遺言執行者であることを証明する書類が必要です。

遺言執行者が遺言書で指名された場合、遺言書で証明することができます。

遺言執行者が家庭裁判所で選任された場合、選任審判書と確定証明書で証明することができます。

④法定相続で権利証が発行されない

相続人になる人は、法律で決まっています。

相続人になる人の相続分も、法律で決まっています。

法律で決まっている相続分を法定相続分と言います。

相続人は、法定相続分で相続することができます。

法定相続分で相続すると、相続人全員で共有することになります。

不動産の共有はデメリットが多いので、おすすめできません。

相続人全員の合意があれば、法定相続分以外の分け方をすることができます。

多くの場合、相続人全員の合意で分け方を決めます。

相続人全員が法定相続分で共有する相続をする場合、原則として、相続人全員が相続手続に参加します。

相続登記をする場合、相続人全員が申請するのが原則です。

例外として、一部の相続人から委任状なしで相続登記を申請することができます。

一部の相続人から相続登記を申請する場合であっても、相続人全員が登記名義人になります。

相続人全員が登記名義人になるのに、登記申請人になった相続人にだけ権利証が発行されます。

登記申請人になっていない相続人に対して、権利証は発行されません。

後から権利証を発行してもらうこともできません。

一部の相続人が相続人全員のために相続登記をすることができるけど、おすすめできません。

権利証がないと、不動産を売却するときや担保に差し出すときに困るからです。

5相続登記を司法書士に依頼するメリット

相続が発生すると、相続人はたくさんの相続手続に追われて悲しむ暇もありません。

ほとんどの方は、相続を何度も経験するものではありません。

手続に不慣れで、聞き慣れない法律用語でへとへとになります。

一般的にいって、相続登記は、その中でも難しい手間のかかる手続です。

不動産は、重要な財産であることが多いものです。

一般の方からすると、些細なことと思えるようなことでやり直しになります。

本人が自分で申請している場合、些細なことであれば法務局の窓口まで出向いて申請書の記載を補正することができるケースがあります。

申請書の記載誤りがあると、委任状も記載誤りになります。

代理人に依頼して申請している場合、委任状の記載も一緒に補正する必要があります。

委任状の記載内容は、本人が依頼したことのはずです。

代理人が補正することを認めてもらえない場合が多いものです。

申請書と委任状の記載が一致していない場合、適切な委任を受けていないと判断されます。

適切な委任を受けていない場合、申請書は受け付けてもらえません。

いったん申請を取り下げて、やり直しになります。

相続登記は簡単そうに見えても、思わぬ落とし穴があることもあります。

法務局の登記相談に行っても、何が良くないのか分からなかったというケースも多いです。

司法書士はこのような方をサポートしております。

相続登記を自分でやってみたけど、挫折した方の相談も受け付けております。

相続登記をスムーズに完了させたい方は、司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。

相続登記で委任状

2024-03-28

1委任状で相続登記の依頼を証明する

①相続登記を依頼するときに委任状が必要

相続登記は、自分で申請することができます。

自分で登記申請をするのが難しい場合は、代わりの人に申請してもらうことができます。

業務として代理人になることができるのは、司法書士と弁護士のみです。

司法書士や弁護士といった国家資格者でなければ、報酬を受けて業務として登記申請の代理はできません。

無報酬で1回だけ家族のために、代わりに登記申請するのであれば、国家資格者でなくても差し支えありません。

自分の代わりに登記申請をしてもらう場合、委任状を一緒に提出します。

司法書士などの専門家に依頼するときも家族に依頼するときも、委任状が必要です。

登記申請を依頼した場合、法務局に対して書面で依頼の事実を証明する必要があるからです。

②不適切な委任状は認められない

委任状は、代理人に依頼した内容を証明する書類です。

委任状の記載が不適切であった場合、適切な依頼を受けたとは言えなくなります。

多くの人にとって、不動産は重要な財産です。

相続登記は、法務局で厳格に審査されます。

だいたい合っているから大丈夫ではなく、完璧な記載が求められます。

一般の人から見ると、些細なことと思えるようなことでやり直しになります。

相続登記に委任状には、登記申請書の内容と同じ内容を記載します。

登記申請書を訂正することができても、代理人は委任状の記載を訂正できないことが多いものです。

委任状の内容は、本人が依頼した内容だからです。

適切な委任を受けていないと判断されることになります。

適切な委任を受けていない場合、相続登記の申請を取り下げることになります。

2他人の登記申請であっても委任状が不要な例外

①未成年者の代わりに親権者が相続登記

身近な家族であっても、自分以外の人は他人として扱われます。

相続人が赤ちゃんである場合、親などの親権者は代わりに相続登記の申請をすることができます。

本人が赤ちゃんなどの未成年者である場合、自分で委任状は書けないでしょう。

未成年者は、物事のメリットデメリットを充分に判断することができません。

充分な判断ができないから、親などの親権者があらゆることを代わりにすることが認められています。

未成年者の代わりに親権者が相続登記をする場合、委任状は不要です。

未成年者の代わりに親権者が相続登記をする場合、他に書類が必要になります。

未成年者といえども、他人の登記申請をすることには変わらないからです。

親などの親権者が申請する場合、親子関係を証明する戸籍謄本が必要になります。

相続人である未成年者のため、親などの親権者が司法書士に依頼することができます。

親などの親権者から司法書士に対する委任状を出して、登記申請を依頼することができます。

司法書士は、親子関係を証明する戸籍謄本と委任状を法務局に提出します。

②認知症の人の代わりに成年後見人が相続登記

本人が重度の認知症である場合、成年後見制度を利用していることがあります。

重度の認知症である場合、物事のメリットデメリットを充分に判断できません。

成年後見制度を利用している場合、成年後見人はあらゆることを代わりにすることが認められています。

認知症の人の代わりに成年後見人が相続登記をする場合、委任状は不要です。

認知症の人の代わりに成年後見人が相続登記をする場合、成年後見人であることを証明する必要があります。

成年後見登記事項証明書で、証明することができます。

相続人である認知症の人のため、成年後見人が司法書士に依頼することができます。

司法書士は、成年後見登記事項証明書と委任状を法務局に提出します。

③相続人の代わりに遺言執行者が相続登記

被相続人が生前に遺言書を作成して遺言執行者を指名していることがあります。

遺言執行者とは、遺言書の内容を実現する人です。

遺言執行者は、遺言執行のため必要な一切の行為をする権利と義務があります。

遺言執行のため遺言執行者が相続登記をする場合、委任状は不要です。

遺言執行のため遺言執行者が相続登記をする場合、遺言執行者であることを証明する必要があります。

遺言執行者を指名している遺言書で、証明することができます。

検認が必要な遺言書の場合、検認済証明書も必要です。

相続人のため、遺言執行者が司法書士に依頼することができます。

司法書士は、遺言書、検認済証明書と委任状を法務局に提出します。

④相続人全員のため一部の相続人が相続登記

相続人になる人は、法律で決まっています。

相続人になる人の相続分も、法律で決まっています。

法律で決まっている相続分を法定相続分と言います。

相続人は、法定相続分で相続することができます。

法定相続分で相続すると、相続人全員で共有することになります。

不動産の共有はデメリットが多いので、おすすめできません。

相続人全員の合意があれば、法定相続分以外の分け方をすることができます。

多くの場合、相続人全員の合意で分け方を決めます。

相続人全員が法定相続分で共有する相続をする場合、原則として、相続人全員が相続手続に参加します。

相続登記をする場合、相続人全員が申請するのが原則です。

例外として、一部の相続人から相続登記を申請することができます。

一部の相続人から相続登記を申請する場合であっても、相続人全員が登記名義人になります。

相続人全員のため、一部の相続人が司法書士に依頼することができます。

司法書士は、一部の相続人からの委任状を法務局に提出します。

相続人全員が登記名義人になるのに、登記申請人になった相続人にだけ権利証が発行されます。

登記申請人になっていない相続人に対して、権利証は発行されません。

後から権利証を発行してもらうこともできません。

一部の相続人が相続人全員のために相続登記をすることができるけど、おすすめできません。

権利証がないと、不動産を売却するときや担保に差し出すときに困るからです。

3相続登記に必要な委任状の書き方

司法書士などの専門家に依頼する場合、委任状は司法書士が用意します。

登記申請を依頼するのであれば、司法書士が作成した委任状に記名押印するだけで済みます。

相続登記に必要な委任状には、次のことを記載します。

①相続登記を依頼される人の名前と住所

②相続登記を依頼する旨

 「次の登記申請に関する一切の権限を委任します。」と記載すると分かりやすいでしょう。

③登記の目的

④登記原因

⑤相続人

③~⑤は、相続登記の申請書と同じです。

あらかじめ申請書を作ってあるのであれば、そのまま丸写しすれば記載できます。

申請書の記載を書き直す場合、委任状の記載を一緒に書き直す必要があります。

内容が一致していない場合、適切な委任を受けていないと判断されるおそれがあります。

適切な委任を受けていない場合、登記申請を受け付けてもらえないかもしれません。

⑤相続人は、まず括弧をつけて被相続人の氏名をフルネームで記載します。

相続人が複数で共有する場合、相続人の住所氏名だけでなく持分も記載します。

⑥不動産の表示

相続登記の対象になる不動産の表示を記載します。

目的になる不動産の登記簿謄本を確認して、そのまま書き写せば記載できます。

記載事項は、申請書の内容と同じです。

土地であれば、次の事項を記載するといいでしょう。

(1)所在

(2)地番

(3)地目

(4)地積

建物であれば、次の事項を記載するといいでしょう。

(1)所在

(2)家屋番号

(3)種類

(4)構造

(5)床面積

建物でも敷地権のあるマンションの一室であれば次の事項を記載するといいでしょう。

(1)一棟の建物の表示

i所在

ii建物の名称

(2)専有部分の建物の表示

i家屋番号

ii建物の名称

iii種類

iv構造

v床面積

(3)敷地権の目的である土地の表示

i土地の符号

ii所在及び地番

iii地目

iv地積

(4)敷地権の表示

i土地の符号

ii敷地権の種類

iii敷地権の割合

相続の対象が土地と建物など不動産が複数ある場合、順番に書き連ねれば差し支えありません。

不動産がたくさんある場合、書くべき項目の書き忘れに注意しましょう。

書くべき項目の書き忘れがあった場合、不動産が特定できないと指摘されるおそれがあります。

不動産を特定できない委任状の場合、登記申請を受け付けてもらえません。

⑦依頼する項目の補足事項

相続登記を申請する場合、登記申請だけでなく付随する手続があります。

手続の一環として一緒にお願いしておくと、手続がスムーズになります。

付随項目を書き忘れてしまうと、代理人が手続できなくなります。

具体的には、次のような項目です。

 1.登記識別情報の受領の件及びその受領について復代理人選任に関する一切の件

 1.登記識別情報の受領に関する一切の件

 1.原本還付請求及び受領に関する一切の件

 1.復代理人選任に関する一切の件

 1.登記に係る登録免許税の還付金を受領する件

特に「登記識別情報の受領に関する一切の件」は重要です。

登記識別情報とは、権利証のことです。

代わりに登記申請をお願いしたのに、権利証を受け取りするために法務局に出向かなければならなくなるからです。

⑧日付

⑨登記申請をお願いする人の住所氏名

ふだん住所は簡単な記載をしている場合であっても、住民票の記載どおり書きましょう。

⓾押印

名前の横に押印します。

4委任状の押印は実印でなく認印でいい

委任状は、代理人に依頼した内容を証明する書類です。

依頼した人は、委任状に押印しなければなりません。

押印は、実印である必要はありません。

依頼した人の認印で差し支えありません。

委任状に書き間違いを見つけた場合、名前の横に押した印と同一印を押印して、訂正します。

5委任状に割印・契印

委任状に書くべき内容は、たくさんあります。

複数ページに渡る委任状になることがあります。

1通の委任状であることが分かるように、割印・契印を施します。

クリップでとめるだけなど差し替えができる状態では、委任内容を証明できるとは言えないからです。

適切な委任があったと認められない場合、相続登記を取り下げなければならなくなります。

6相続登記を司法書士に依頼するメリット

相続が発生すると、相続人はたくさんの相続手続に追われて悲しむ暇もありません。

ほとんどの方は、相続を何度も経験するものではありません。

手続に不慣れで、聞き慣れない法律用語でへとへとになります。

一般的にいって、相続登記は、その中でも難しい手間のかかる手続です。

不動産は、重要な財産であることが多いものです。

一般の方からすると、些細なことと思えるようなことでやり直しになります。

本人が自分で申請している場合、些細なことであれば法務局の窓口まで出向いて申請書の記載を補正することができるケースがあります。

申請書の記載誤りがあると、委任状も記載誤りになります。

代理人に依頼して申請している場合、委任状の記載も一緒に補正する必要があります。

委任状の記載内容は、本人が依頼したことのはずです。

代理人が補正することを認めてもらえない場合が多いものです。

申請書と委任状の記載が一致していない場合、適切な委任を受けていないと判断されます。

適切な委任を受けていない場合、申請書は受け付けてもらえません。

いったん申請を取り下げて、やり直しになります。

相続登記は簡単そうに見えても、思わぬ落とし穴があることもあります。

法務局の登記相談に行っても、何が良くないのか分からなかったというケースも多いです。

司法書士はこのような方をサポートしております。

相続登記を自分でやってみたけど、挫折した方の相談も受け付けております。

相続登記をスムーズに完了させたい方は、司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。

共有名義人の片方死亡後放置は危険

2024-03-18

1放置すると遺産分割協議が難しくなる

①遺産分割協議は相続人全員の合意が必要

相続が発生したら、被相続人のものは相続人が相続します。

相続人が相続する財産が相続財産です。

被相続人が第三者と財産を共有していた場合、財産の共有持分を持っています。

被相続人が持っていた共有持分は、相続財産です。

相続財産は、相続人全員の共有財産です。

相続財産の分け方は、相続人全員の合意で決める必要があります。

ときには一部の相続人と共有しているかもしれません。

一部の相続人と財産を共有していても、被相続人が持っていた共有持分は相続財産です。

他の共有者である相続人が優先して相続できるわけではありません。

他の共有者である相続人が相続する場合でも、相続人全員の合意が必要です。

共有名義人の片方が死亡した後、放置するのはおすすめできません。

②当初の相続人が死亡する

遺産分割協議の成立には、相続人全員の合意が必要です。

相続手続は、わずらわしいものです。

相続が発生した後、相続手続を放置したくなるかもしれません。

相続手続を放置した場合、当初の相続人が後に死亡することがあります。

当初の相続人の相続人を含めて、話し合いをする必要があります。

当初の相続人は、仲の良い兄弟などで話がしやすかったかもしれません。

死亡した相続人の配偶者や子どもなどが相続するでしょう。

関係が薄い相続人がいると、相続財産の分け方についての話し合いは難航しがちです。

当初の相続人が死亡すると、遺産分割協議が難しくなります。

③相続人が認知症になる

相続人の中には、相当高齢の人がいることがあります。

相続が発生した当時は、元気だったのに後に認知症を発症することがあります。

認知症になると、物事の良しあしを適切に判断することができなくなります。

物事の良しあしを判断することができない人は、自分で相続財産の分け方について合意することはできません。

自分で判断することができないから、サポートする人が代わりに判断します。

子どもなどが勝手に判断することはできません。

勝手に判断して遺産分割協議書を作成しても、無効の書面です。

認知症の人のために、家庭裁判所がサポートする人を選任します。

認知症の人をサポートする人を成年後見人と言います。

成年後見人は、家庭裁判所が選任します。

認知症の人の子どもなど家族を選任することもあるし、家族以外の専門家を選任することもあります。

子どもなど家族が選任されるのは、全体の20%程度です。

成年後見人が認知症の人の代わりに相続財産の分け方について話し合いをします。

成年後見人は、認知症の人の財産を守るために働きます。

家族の意向をかなえてくれる人ではありません。

家族の事情を考慮した柔軟な対応は、認知症の人の利益にならないことが多いでしょう。

成年後見人は、法定相続分を下回る合意をすることはできません。

成年後見人が家族であっても、家族の意向どおりの合意をすることはできません。

成年後見人は、家庭裁判所から監督されているからです。

法定相続分を下回る合意は、認知症の人の利益にならない合意です。

家庭裁判所の同意を得られないでしょう。

子どもなど家族を選任された場合であっても、成年後見人は家庭裁判所から監督されます。

遺産分割協議のために成年後見人を選任しても、相続手続完了後に成年後見制度をやめることはできません。

当初の相続人が後に認知症になると、遺産分割協議が難しくなります。

④相続人が行方不明になる

相続財産の分け方は、相続人全員の合意で決めなければなりません。

相続人の中には、さまざまな事情を抱えている人がいるでしょう。

一部の相続人が行方不明になって、連絡が取れなくなることがあります。

連絡が取れないからと言っても、話し合いから除外することはできません。

一部の相続人を除外して相続財産の分け方を合意しても、無効の合意になるからです。

行方不明の相続人がいる場合、代わりに話し合いをする人を家庭裁判所に選んでもらいます。

行方不明の人の代わりに話し合いをする人を不在者財産管理人と言います。

不在者財産管理人が行方不明の人の代わりに、相続財産の分け方について話し合いをします。

不在者財産管理人は、行方不明の人の財産を守るために働きます。

不在者財産管理人は、家族の意向をかなえてくれる人ではありません。

家族の事情を考慮した柔軟な対応は、行方不明の人の利益にならないことが多いでしょう。

不在者財産管理人が相続財産の分け方について合意する場合、家庭裁判所の許可が必要です。

行方不明の人の法定相続分が確保されていない場合、家庭裁判所は許可をしないでしょう。

家族の事情を考慮した柔軟な取り扱いは困難です。

当初の相続人が後に行方不明になると、遺産分割協議が難しくなります。

2放置すると不動産活用ができない

①不動産を売却できない

相続財産の大部分が不動産である場合、相続人間で分け方の合意が難しくなります。

利用する予定のない不動産は、すぐに売却したいことがあります。

実家などはお金を出し合った人で共有していることが多いでしょう。

共有名義人の片方が死亡した後、他の共有名義人が相続人のひとりかもしれません。

他の共有名義人が被相続人の共有持分を相続して、単独所有者になった気持ちでいることがあります。

単独所有者になったつもりでも、客観的には被相続人の共有持分は相続財産です。

共有名義人が死亡した後に何もしないままの場合、被相続人名義のままになっているでしょう。

不動産を売却する場合、買主に名義を移さなければなりません。

被相続人名義から直接買主に名義を移すことはできません。

被相続人が生前に売却したのではないからです。

被相続人が死亡した後に、相続人が売却したはずです。

相続登記を省略することはできません。

被相続人から相続人に所有権が移転したことを公示する必要があるからです。

相続登記をしていない場合、買主に名義を移すことができなくなります。

買主が不動産の所有者であることを対外的に主張する際に登記が必要です。

所有権移転登記をしていないと、対外的に所有者であることを主張することができません。

買主は、とても困ります。

対外的に所有者であることを主張できないのなら、その不動産を買うことを諦めるでしょう。

相続登記をしないまま放置すると、不動産を売却することができなくなります。

②不動産を担保にできない

不動産を担保に金融機関から融資を受けることがあります。

借金の返済が滞ったときに備えて、金融機関は不動産を担保に取ります。

返済が滞ったときに備えて、担保にする権利を抵当権と言います。

お金を貸した人が担保に取りますから、債権者は抵当権者です。

抵当権は、登記をすることができます。

抵当権設定登記をしていないと、対外的に抵当権者であることを主張することができません。

金融機関は、とても困ります。

抵当権は、借金の返済が滞ったときに備えて担保に取る権利です。

具体的には、借金の返済が滞った場合、担保に取った不動産を競売にかけて売却代金から優先的に借金を返してもらうことができます。

対外的に抵当権者であることを主張できない場合、抵当権を設定した意味がなくなります。

被相続人名義のままで、抵当権設定登記をすることはできません。

担保に差し出したのは、相続人だからです。

相続登記を省略することはできません。

被相続人から相続人に所有権が移転したことを公示する必要があるからです。

3放置すると相続登記が困難になる

①相続登記にはたくさんの書類が必要になる

相続による不動産の名義変更を相続登記と言います。

相続登記には、たくさんの書類が必要になります。

遺言書がない場合、おおむね次の書類が必要です。

(1)被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本

(2)相続人の現在戸籍

(3)被相続人の住民票の除票

(4)不動産を相続する人の住民票

(5)遺産分割協議書

(6)相続人全員の印鑑証明書

(7)不動産の評価証明書

遺言書がある場合、おおむね次の書類が必要です。

(1)被相続人の除籍謄本

(2)相続人の現在戸籍

(3)被相続人の住民票の除票

(4)不動産を相続する人の住民票

(5)遺言書

(6)遺言書検認証明書

(7)不動産の評価証明書

事例によって追加書類が必要なることがあります

②戸籍謄本や住民票が保存期間経過で廃棄される

相続手続の最初の難関は、戸籍謄本の収集です。

相続登記には、たくさんの書類が必要になります。

戸籍謄本などの書類取集があまりにタイヘンで、挫折する人は少なくありません。

挫折したまま長期間放置すると、ますますタイヘンになります。

戸籍謄本や住民票は、永年保管ではないからです。

保存期間が決められていて、古いものから順次廃棄されます。

保存期間が経過した書類は、請求しても発行してもらえません。

必要な書類を提出できない場合、別の書類が必要になります。

一般的な事例とは異なる場合、法務局と打合せが必要になるでしょう。

長期間放置すると、相続登記が困難になります。

4放置された私道の共有持分の相続は非常に困難

被相続人がマイホームを所有していた場合、自宅の土地建物が相続財産であることは承知しているでしょう。

相続財産の分け方は、相続人全員の合意で決めなければなりません。

自宅の土地建物について分け方の合意をした後に、私道の共有持分が見つかることがあります。

私道とは、一般私人が設置管理する道路です。

自宅の前面道路が公道ではなく私道であることがあります。

行政が設置管理をする道路が公道です。

多くの場合、私道は自宅に至る道路でしょう。

近隣住民と私道を共有していることがあります。

私道の共有持分は、自宅の土地建物とは別の財産です。

自宅の土地建物を相続した人が自動で相続できるものではありません。

自宅を使う人が私道を使います。

自宅を使う人が私道を使うとしても、私道の共有持分の分け方について別の合意が必要です。

私道の共有持分と自宅の土地建物は、別の財産だからです。

私道の共有持分は、相続登記が見落とされがちです。

自宅の土地建物は財産だと認識していても、道路を自分の財産と認識していないことが多いからです。

被相続人が認識していないと、家族はなおさら認識が薄いでしょう。

相続が発生してから長期間経過した後に、私道の共有持分が見つかります。

相続人が意図していなくても、長期間放置されていたと言えます。

先に説明したとおり、当初の相続人が死亡しているかもしれません。

当初の相続人が認知症になっているかもしれません。

当初の相続人が行方不明になっているかもしれません。

相続が発生した後に長期間放置された場合、相続人の確定が難しくなります。

家庭裁判所の手続が必要になることがあります。

必要な書類を準備できなくなることがあります。

相続が発生した後に長期間放置された場合、相続登記は非常に難しくなります。

5相続登記を司法書士に依頼するメリット

相続が発生すると、相続人は悲しむ暇もなく相続手続に追われます。

ほとんどの人は相続手続は不慣れで、聞き慣れない法律用語で疲れ果ててしまいます。

インターネットの普及で多くの人は簡単に多くの情報を手にすることができるようになりました。

多くの情報の中には正しいものも、適切でないものも同じように混じっています。

司法書士は、登記の専門家です。

スムーズに相続登記を完了させたい方は司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。

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