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特別縁故者に対する相続財産分与の申立て

2024-06-10

1相続人になる人は法律で決まっている

①相続人になる人

相続が発生したら、親族のうち一定の範囲の人が相続人になります。

だれが相続人になるかについては、民法で決められています。

相続人になる人は、次のとおりです。

(2)~(4)の場合、先順位の人がいる場合、後順位の人は相続人になれません。

(1)配偶者は必ず相続人になる

(2)被相続人に子どもがいる場合、子ども

(3)被相続人に子どもがいない場合、親などの直系尊属

(4)被相続人に子どもがいない場合で、かつ、親などの尊属が被相続人より先に死亡している場合、兄弟姉妹

相続人になるはずだった人が被相続人より先に死亡した場合、相続人になるはずだった人の子どもや子どもの子どもが相続します。

相続人になるはずだった人の子どもや子どもの子どもが相続することを代襲相続と言います。

(1)~(4)の関係の親族は、行方不明であっても、お葬式に来なくても、相続人です。

②相続人になれない人

相続人になれない人は、次のとおりです。

(1)事実婚・内縁関係の配偶者

(2)配偶者の連れ子

(3)養子縁組はしていない事実上の養子

(4)認知していない子ども

(5)子どもの配偶者や配偶者の親など血縁関係がない人

相続人になる人は、法律で決まっています。

民法で決められた人以外の人は、相続人になれません。

2特別縁故者になれる人

①特別縁故者とは

相続が発生したら、被相続人のものは相続人が相続します。

相続人になる人は、法律で決まっています。

法律で決められた相続人がまったくいないケースがあります。

法律で決められた相続人はいるけど、相続人全員が相続放棄することがあります。

家庭裁判所で相続放棄が認められた場合、相続放棄をした人ははじめから相続人でなかったと扱われます。

相続人がまったくいない場合、相続財産は最終的には国庫に帰属します。

国庫に帰属するより、被相続人と特別な関係にあった人に分与した方がいいことがあります。

被相続人と特別な関係があったと認められた場合、特別縁故者として相続財産の一部または全部の分与を受けることができます。

特別縁故者として相続財産の分与を受けるためには、家庭裁判所で認められる必要があります。

相続人がいない場合であっても、勝手に財産を引き継ぐことはできません。

②被相続人と生計を同じくしていた者

被相続人と生計を同じくしていた人とは、同一家計で生活していた人です。

被相続人と同居して、事実上、家族として暮らしていた人が該当します。

例えば、次の人が該当します。

(1)事実婚・内縁の配偶者

(2)同性パートナー

(3)配偶者の連れ子

(4)養子縁組はしていない事実上の養子

(5)認知していない子ども

③被相続人の療養看護に努めた者

療養看護に努めたとは、献身的に被相続人のお世話をしたことです。

被相続人が介護施設に入居している場合であっても、頻繁に施設に出向いてお世話していた人は特別縁故者と認められる可能性があります。

相続人でない人が私生活を犠牲にして被相続人に貢献している場合、特別縁故者として認められることがあります。

看護師や介護ヘルパーなどが報酬を得てお世話をしていた場合、特別縁故者となるのは難しいでしょう。

報酬を得てお世話をしていた場合、報酬以上に献身的にお世話をしていたことが要件になります。

④その他被相続人と特別の縁故のあった者

被相続人が生前どのような生活をしていたかは、人それぞれです。

被相続人の生活状況を考えて、相続財産を分与することが相当であることがあります。

上記の人と同様な特別な縁故があると認められる場合、特別縁故者になることができます。

⑤死後の縁故は特別縁故者と認められない

生前被相続人と疎遠であった人が葬儀や埋葬などに尽力することがあります。

葬儀や埋葬などに多額の費用を負担した場合、原則として、特別縁故者とは認められません。

もともと、お葬式の費用は喪主などお葬式を出す人が負担するものだからです。

相続財産があるからと言って、特別縁故者となるのは筋違いだからです。

⑥法人は特別縁故者になれる

被相続人の療養看護に努めた者は、特別縁故者として認められます。

被相続人の療養看護に努めた人が法人であるケースがあります。

特別縁故者は、自然人に限定されていません。

法人であっても法人格のない社団であっても、家庭裁判所に認められる可能性があります。

⑦相続人がいるときは特別縁故者に認められない

特別縁故者が認められるのは、法律で決められて相続人がいない場合に限られます。

相続人がいない場合とは、はじめから不存在であるか相続人全員が相続放棄をした場合です。

相続人は存在するけど疎遠である場合、相続人がいない場合ではありません。

相続人は存在するけど音信不通である場合、相続人がいない場合ではありません。

相続人は存在するけど行方不明の場合、相続人がいない場合ではありません。

相続人がいる場合、特別縁故者に認められることはありません。

3特別縁故者が財産分与を受けるまでの流れ

①相続財産清算人選任の申立て

相続人がまったくいない場合、相続財産は最終的には国庫に帰属します。

相続財産清算人とは、相続財産を清算して国庫に帰属させる人です。

相続人がまったくいない場合、家庭裁判所に相続財産清算人を選んでもらいます。

相続財産を清算する人を家庭裁判所に選んでもらうことを相続財産清算人選任の申立てと言います。

家庭裁判所が相続財産清算人を選任した場合、官報で公告します。

この公告で、相続人捜索の公告も一緒にします。

②債権者受遺者へ申出の公告

家庭裁判所に選任された相続財産清算人から、債権者や受遺者に対して公告が出されます。

債権者は、お金を払ってもらう権利がある人です。

受遺者は、遺言書で財産を受け取る権利がある人です。

被相続人が払うべきお金を払わないまま死亡することがあります。

債権者は、相続財産から払ってもらいたいと考えるでしょう。

相続財産清算人は、相続財産から支払をして清算します。

被相続人が受け取るべきお金を受け取らないまま死亡することがあります。

相続人がいれば、相続人が受け取ることができるはずです。

相続財産清算人は、きちんと支払をしてもらって清算します。

③相続人不存在が確定

相続人捜索の公告の期間が満了した場合、相続人不存在が確定します。

特別縁故者に対して財産が分与されるのは、相続人がいないときです。

相続人がまったくいないと思っていても、戸籍謄本などで確認する必要があります。

戸籍謄本で確認するだけでなく、相続人捜索の公告をします。

ここまで手続を履んで、相続人不存在と言えます。

④特別縁故者に対する財産分与の申立て

相続人不存在が確定した場合、特別縁故者に対する財産分与の申立てをすることができます。

特別縁故者に対する財産分与の申立てができるのは、相続人不存在が確定してから3か月以内です。

3か月を過ぎると、申立てができなくなります。

⑤特別縁故者に対する財産分与の審判

家庭裁判所で特別縁故者として認められた場合、相続財産の一部または全部が分与されます。

特別縁故者として認められなかった場合、相続財産は国庫に帰属します。

4特別縁故者に対する財産分与の申立ての方法

①申立てができる人

特別縁故者になれる人で説明したとおりです。

②申立先

被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です。

家庭裁判所の管轄は、裁判所のホームページで確認することができます。

③申立てに必要な書類

特別縁故者に対する財産分与の申立書に添付する書類は、次のとおりです。

(1)申立人の戸籍謄本

(2)被相続人の戸籍謄本

④申立手数料

特別縁故者に対する財産分与の申立てにかかる手数料は、800円です。

収入印紙を申立書に貼り付けて納入します。

収入印紙は、貼るだけで消印はしません。

申立書を受け付けたとき、家庭裁判所の人が消印をします。

手数料とは別に、予納郵券を納入します。

予納郵券とは、裁判所が手続で使う郵便切手です。

裁判所や手続の種類によって、納入する切手の種類や枚数がちがいます。

裁判所のホームページを見ると、納入する切手の種類や枚数が記載されていることがあります。

5特別縁故者の相続税

特別縁故者が多額の財産を受け取る場合、相続するのではありませんが、相続税の対象になります。

相続税がかかるのは基礎控除を超える場合です。

相続税の基礎控除=3000万円+600万円×法定相続人の人数

特別縁故者が財産を受け取る場合、法定相続人はいないはずです。

3000万円を超えて財産を受け取ったとき、相続税がかかります。

特別縁故者が相続税を納めるとき、通常時の2割加算がされます。

6遺言書があると手続がラク

被相続人が死亡してから、国庫に帰属するまで1年以上の時間がかかります。

相続財産清算人選任の申立てなど裁判所の手続は、時間と労力がかかります。

特別縁故者に対する相続財産分与の申立てをしても、家庭裁判所は必ずしも認めてくれません。

相続人がいない人は、遺言書を書いて財産の行き先を指定しましょう。

お世話になった役所や慈善団体に寄付をして、財産を活かしてもらうことができます。

財産を受け取ってもらうのは、相続人でなければならないというルールはありません。

近年は、おひとりさまなどが慈善団体への寄付を望むことが多いです。

田舎の山林など寄付する財産の種類によっては、寄付を受けてもらえないこともあります。

使い道が指定してある寄付は自由に使えないから困ると言って断られることもあります。

財産の行き先を決める場合、相手方の都合を聞いて決めましょう。

遺言書を書く前に相談することが必要です。

遺言書の内容を実行するために、遺言執行者も指定しておくと安心です。

7遺言書作成と遺言執行を司法書士に依頼するメリット

相続手続はタイヘンですが、相続人がいない場合もタイヘンです。

相続人がいないから、財産は国に持っていかれて、何もしなくていいと軽く考えがちです。

実際は、被相続人が死亡してから、国庫に帰属するまで1年以上の時間がかかります。

財産の内容によっては、100万円以上の費用の負担があることも見逃せません。

国に持っていかれるよりは、お世話になった人に受け継いでもらいたい、自分の気持ちを活かしてくれる慈善団体などに使ってもらいたいという気持ちがある人もいるでしょう。

お世話になった人に受け継いでもらいたい、自分の気持ちを活かしてくれる慈善団体などに使ってもらいたいという意思は遺言書で実現できます。

お世話になった人に受け継いでもらいたい場合、特別縁故者に対する相続財産分与の申立ができますが、必ずしも認められるとは限りません。

認められても、財産の一部のみの場合もあります。

何より、家庭裁判所に対する手続ですから、一般の人には高いハードルです。

遺言書に、遺贈することを書き、遺言執行者を決めておけば、手間はかかりません。

お世話になった人は待っているだけで済みます。

遺言書は書き方に細かいルールがあります。

細かいルールを守っていないと遺言書は無効になってしまいます。

適切な遺言書作成と遺言執行者選任は司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。

相続放棄しても死亡退職金

2024-06-07

1相続放棄をすると相続人でなくなる

①相続放棄は家庭裁判所の手続

相続が発生したら、相続人は相続を単純承認するか相続放棄するか選択することができます。

相続放棄を希望する場合、家庭裁判所に対して相続放棄を希望する申立てを提出します。

申立先の家庭裁判所は、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です。

家庭裁判所の管轄は、裁判所のホームページで調べることができます。

家庭裁判所で相続放棄が認められたら、はじめから相続人でなくなります。

②単純承認をすると相続放棄が無効になる

家庭裁判所で相続放棄が認められたら、相続放棄を撤回することはできません。

撤回とは、相続放棄が受理されたときには何も問題がなかったのに、後から問題が発生したので、なかったことにすることです。

相続人が単純承認をした後に、単純承認を撤回することはできません。

撤回を認めると、相続手続が混乱するからです。

単純承認をしたのに、家庭裁判所で相続放棄が認められることがあります。

家庭裁判所は、提出された書類に問題がなければ相続放棄を認めるからです。

家庭裁判所が認めても、単純承認をしたら相続放棄は無効です。

後から裁判で、無効になります。

③相続放棄をしても受け取りができる

相続財産を利用したり処分したりすると、単純承認と見なされます。

単純承認をしたら、相続放棄は無効です。

被相続人の死亡をきっかけに受け取る財産であっても、固有の財産であれば単純承認にはなりません。

受取人の固有の財産を受け取る場合、相続財産の利用や処分ではないからです。

2死亡退職金は支給規程で支給される

①国家公務員死亡なら国家公務員退職手当法で支給

国家公務員が退職する場合、退職手当が支給されます。

退職する国家公務員に支給される退職手当は、国家公務員退職手当法によって定められています。

国家公務員が死亡によって退職した場合、遺族に退職手当が支給されます。

国家公務員退職手当法は、退職手当を受け取る遺族について次のように定めています。

(遺族の範囲及び順位)

第2条の2第1項 この法律において、「遺族」とは、次に掲げる者をいう。

一 配偶者(届出をしないが、職員の死亡当時事実上婚姻関係と同様の事情にあつた者を含む。)

二 子、父母、孫、祖父母及び兄弟姉妹で職員の死亡当時主としてその収入によつて生計を維持していたもの

三 前号に掲げる者のほか、職員の死亡当時主としてその収入によつて生計を維持していた親族

四 子、父母、孫、祖父母及び兄弟姉妹で第二号に該当しないもの

死亡した国家公務員に配偶者がいる場合、配偶者に退職手当が支給されます。

配偶者は、法律上の配偶者だけでなく事実婚・内縁の配偶者を含みます。

死亡による退職手当は、相続によって受け取るものではありません。

事実婚・内縁の配偶者は、相続することができないからです。

死亡による退職手当は、国家公務員退職手当法で遺族に支給されます。

相続放棄をしても、死亡による退職手当を受け取ることができます。

②地方公務員死亡なら職員退職手当条例で支給

地方公務員が退職する場合、退職手当が支給されます。

退職する地方公務員に支給される退職手当は、職員退職手当条例によって定められています。

例えば、名古屋市では職員退職手当条例が定められています。

職員退職手当条例は、多くの場合、国家公務員退職手当法に準じて決められています。

地方公務員が死亡によって退職した場合、遺族に退職手当が支給されます。

名古屋市の職員退職手当条例は、退職手当を受け取る遺族について次のように定めています。

(遺族の範囲及び順位等)

第3条 この条例において「遺族」とは、次の各号に掲げる者をいう。

(1) 配偶者(届出をしないが、職員の死亡当時事実上婚姻関係と同様の事情にあった者を含む。)

(2) 子、父母、孫、祖父母及び兄弟姉妹で職員の死亡当時主としてその収入によって生計を維持していたもの

(3) 前号に掲げる者の外、職員の死亡当時主としてその収入によって生計を維持していた親族

(4) 子、父母、孫、祖父母及び兄弟姉妹で第2号に該当しないもの

死亡した名古屋市の職員に配偶者がいる場合、配偶者に退職手当が支給されます。

配偶者は、法律上の配偶者だけでなく事実婚・内縁の配偶者を含みます。

死亡による退職手当は、相続によって受け取るものではありません。

事実婚・内縁の配偶者は、相続することができないからです。

死亡による退職手当は、職員退職手当条例で遺族に支給されます。

相続放棄をしても、死亡による退職手当を受け取ることができます。

③会社員死亡なら退職金規程や就業規則で支給

会社員が退職する場合、退職手当が支給されることがあります。

会社が支給する退職金については、退職金規程や就業規則について定めていることが多いでしょう。

退職金に関する定めは、多くの場合、労働基準法施行規則や労働者災害補償保険法を参考にして決められています。

労働基準法施行規則は、次のように定めています。

第42条 遺族補償を受けるべき者は、労働者の配偶者(婚姻の届出をしなくとも事実上婚姻と同様の関係にある者を含む。以下同じ。)とする。

労働者災害補償保険法は、次のように定めています。

第16条の7第1項 遺族補償一時金を受けることができる遺族は、次の各号に掲げる者とする。

一 配偶者

二 労働者の死亡の当時その収入によつて生計を維持していた子、父母、孫及び祖父母

三 前号に該当しない子、父母、孫及び祖父母並びに兄弟姉妹

労働基準法施行規則や労働者災害補償保険法は、退職金についての定めではありません。

生計を維持されていた人が生活に困窮しないようにするために、支給する点は読み取れます。

会社の退職金規程の内容によりますが、死亡による退職手当は相続によって受け取るものではありません。

相続放棄をしても、死亡による退職手当を受け取ることができます。

④中退共加入者死亡なら中小企業退職金共済法で支給

中退共制度は、昭和34年に中小企業退職金共済法に基づき設けられた中小企業のための国の退職金制度です。

中退共制度を利用して、管理が簡単な退職金制度が手軽に作れます。

中退共加入者が退職した場合、中退共から退職金を受け取ることができます。

中退共加入者が死亡によって退職した場合、遺族は退職金を受け取ることができます。

中小企業退職金共済法は、退職金を請求できる遺族について次のように定めています。

(遺族の範囲及び順位)

第14条第1項 第10条第1項の規定により退職金の支給を受けるべき遺族は、次の各号に掲げる者とする。

一 配偶者(届出をしていないが、被共済者の死亡の当時事実上婚姻関係と同様の事情にあつた者を含む。)

二 子、父母、孫、祖父母及び兄弟姉妹で被共済者の死亡の当時主としてその収入によつて生計を維持していたもの

三 前号に掲げる者のほか、被共済者の死亡の当時主としてその収入によつて生計を維持していた親族

四 子、父母、孫、祖父母及び兄弟姉妹で第2号に該当しないもの

死亡した中退共加入者に配偶者がいる場合、配偶者は退職金を請求することができます。

配偶者は、法律上の配偶者だけでなく事実婚・内縁の配偶者を含みます。

死亡による退職手当は、相続によって受け取るものではありません。

事実婚・内縁の配偶者は、相続することができないからです。

死亡による退職金は、中小企業退職金共済法で遺族が請求できます。

相続放棄をしても、死亡による退職金を請求することができます。

3受取人の指定がないと相続財産

①相続財産は相続人全員の共有財産

死亡退職金は、支給規程で支給されます。

支給規程には、受取人が決められています。

死亡退職金は、原則として、受取人の固有の財産です。

会社の中には、退職金規程や就業規則を整備していないことがあります。

退職金規程や就業規則を整備していなくても、死亡退職金を支給することがあります。

退職金規程や就業規則がない場合、受取人を定めているとは言えません。

受取人を定めていない場合、死亡退職金は相続財産になります。

相続財産は、相続人全員の共有財産です。

相続放棄が認められた人は、はじめから相続人でなくなります。

相続人以外の人は、相続財産を相続することはできません。

②生前に受け取った退職金は相続財産

退職金は、退職する社員に支給されます。

退職した社員が退職金を受け取った後に死亡した場合、受け取った退職金は相続財産です。

退職金は、すでに退職した社員の財産になっているからです。

相続放棄が認められた人は、はじめから相続人でなくなります。

相続人以外の人は、相続財産を相続することはできません。

③生前に退職して受取前に死亡したら相続財産

退職金は、退職日に支給されないことがあります。

生前に退職して退職金の支給日までに、死亡することがあります。

退職した社員が退職金を受け取る前に死亡した場合、退職金を受け取る権利は相続財産です。

社員が退職した時点で、退職金を受け取る権利は発生しているからです。

退職金を受け取る権利は、すでに退職した社員の財産になっています。

相続放棄が認められた人は、はじめから相続人でなくなります。

相続人以外の人は、相続財産を相続することはできません。

④退職金の受取が単純承認になる

相続財産を利用したり処分したりすると、単純承認と見なされます。

単純承認をしたら、相続放棄は無効です。

死亡退職金は、支給規程で支給されます。

支給規程に定められた遺族は、死亡退職金を受け取ることができます。

死亡退職金を受け取る権利は、遺族の固有の財産だからです。

支給規程がないのに死亡退職金が支払われる場合、死亡退職金を受け取る権利は相続財産です。

死亡退職金を受け取った場合、相続財産を処分したと言えます。

相続財産を処分した場合、単純承認と見なされます。

死亡退職金の受取が単純承認になります。

家庭裁判所で認められても、相続放棄が無効になります。

4相続放棄をしても相続税

死亡退職金は、原則として、受取人の固有の財産です。

相続放棄をしても、死亡退職金を受け取ることができます。

民法上、受取人の固有の財産なのに、死亡退職金は相続税の課税対象です。

死亡退職金の合計額が非課税限度額を超えるとき、相続税の課税対象になります。

非課税限度額=500万円×法定相続人の人数

相続放棄をした人が死亡退職金を受け取る場合、非課税限度額はありません。

相続放棄をした人は、はじめから相続人でないからです。

5相続放棄を司法書士に依頼するメリット

相続放棄は、プラスの財産もマイナスの財産も引き継ぎませんという裁判所に対する申立てです。

家庭裁判所で認められないとマイナスの財産を引き継がなくて済むというメリットは受けられません。

相続放棄は、その相続でチャンスは実質的には1回限りです。

家庭裁判所に認められない場合、即時抗告という手続きを取ることはできますが、高等裁判所の手続で、2週間以内に申立てが必要になります。

家庭裁判所で認めてもらえなかった場合、即時抗告で相続放棄を認めてもらえるのは、ごく例外的な場合に限られます。

一挙にハードルが上がると言ってよいでしょう。

司法書士であれば、家庭裁判所に認めてもらえるポイントを承知しています。

認めてもらえやすい書類を作成することができます。

相続放棄をしたい旨の申立てには、戸籍謄本や住民票が必要になります。

仕事や家事、通院などで忙しい人には、平日の昼間に役所にお出かけになって準備するのは負担が大きいものです。

戸籍謄本や住民票は郵便による取り寄せもできます。

書類の不備などによる問い合わせは、役所の業務時間中の対応が必要になります。

やはり負担は軽いとは言えません。

戸籍謄本や住民票の取り寄せも、司法書士におまかせすることができます。

3か月の期間内に手続きするのは、思ったよりハードルが高いものです。

相続放棄を考えている方はすみやかに司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。

家庭裁判所に収入印紙800円

2024-06-05

1家庭裁判所の手数料は収入印紙で納入

①申立書に収入印紙800円貼付

家庭裁判所に申立てを提出する場合、手数料を納入します。

手数料は、現金で納入することはできません。

申立書に収入印紙を貼り付けて、納入します。

収入印紙を貼り付けるのは、申立書の右上部です。

収入印紙貼り付け位置に、800円分の収入印紙を貼り付けます。

②額面800円の収入印紙はない

家庭裁判所に納入する手数料が800円であっても、額面800円の収入印紙は存在しません。

例えば、次のように複数の収入印紙を組み合わせます。

・額面400円の収入印紙を2枚

・額面600円の収入印紙1枚と額面200円の収入印紙1枚

・額面200円の収入印紙4枚

申立書の収入印紙貼り付け位置は、大きなスペースではありません。

たくさんの収入印紙を貼り付けるのは、難しいでしょう。

多くても4枚程度で準備するのが、おすすめです。

2収入印紙を購入できるところ

①郵便局の郵便窓口

郵便局の郵便窓口で、収入印紙を購入することができます。

大きな郵便局には、ゆうゆう窓口が設置されています。

ゆうゆう窓口も、収入印紙を取り扱っています。

ゆうゆう窓口であれば、24時間利用可能です。

好きなときにいつでも、収入印紙を購入することができます。

郵便局の郵便窓口では、クレジットカードや電子マネーを使うことができます。

クレジットカードで、収入印紙を購入することはできません。

②コンビニエンスストア

コンビニエンスストアは、いたるところにあり24時間営業しています。

昼間に時間が取れない人にとって、コンビニエンスストアで購入できるのは便利です。

コンビニエンスストアでは、収入印紙を取り扱っていないことがあります。

取り扱っていても、主に200円印紙のみの取り扱いです。

収入印紙を4枚貼り付けることになります。

手間がかかりますが、貼り付けてあれば差し支えありません。

コンビニエンスストアによっては、電子マネーで支払いをすることができます。

③法務局の印紙売りさばき窓口

法務局の印紙売りさばき窓口で収入印紙を購入することができます。

法務局の業務時間中のみ購入することができます。

④名古屋家庭裁判所では売っていない

家庭裁判所に申立てを提出する場合、窓口に持参することができます。

申立書を自分で作成した場合、窓口で確認してもらえると安心でしょう。

名古屋家庭裁判所に申立書を持参する場合、収入印紙は裁判所で販売していません。

名古屋家庭裁判所の窓口に持参する場合、あらかじめ収入印紙を準備しておく必要があります。

⑤専門家に依頼したら準備してもらえる

家庭裁判所に提出する書類は、自分で作成することが難しいかもしれません。

裁判所に提出する書類作成は、司法書士や弁護士に依頼することができます。

司法書士や弁護士などの専門家に依頼する場合、収入印紙は専門家が準備してくれます。

3家庭裁判所に収入印紙を提出するときの注意点

①収入印紙に消印をしない

申立書を家庭裁判所に提出するときに、収入印紙800円を貼り付けます。

収入印紙800円は、申立ての手数料です。

手数料を受け取った裁判所が、収入印紙に消印を押します。

申立てをする人は、消印を押しません。

一般的に、領収書や契約書などに収入印紙を貼り付けます。

領収書や契約書などに収入印紙を貼り付けるのは、印紙税の課税文書だからです。

収入印紙を貼って消印をすることで、印紙税を納入します。

申立書は、印紙税の課税文書ではありません。

手数料の納入のために収入印紙800円を貼り付けています。

手数料の納入のためだから、申立てをする人は消印を押しません。

②登記嘱託用収入印紙は貼り付けない

家庭裁判所の手続では、手数料以外に収入印紙が必要になることがあります。

例えば、成年後見開始の申立てをする場合、手数料は800円です。

手数料以外に、収入印紙2600円分を提出します。

収入印紙2600円分は、登記嘱託用です。

成年後見制度を利用している場合、後見登記がされます。

後見開始の審判が確定した場合、裁判所書記官が後見登記を嘱託します。

収入印紙2600円分は、登記嘱託をするとき使う費用です。

成年後見開始の申立書に、貼り付けると裁判所の人が困ります。

登記嘱託用収入印紙は、小袋に入れて提出します。

4収入印紙800円が必要になる主な申立て

①相続放棄の申述

相続が発生したら、相続人は相続を単純承認するか相続放棄をするか選択することができます。

相続放棄を希望する場合、家庭裁判所に対して相続放棄を希望する申立てをします。

申立先は、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です。

相続放棄の申述をする場合、手数料を納めます。

手数料は、800円です。

被相続人が莫大な借金を抱えていた場合、相続人全員が相続放棄を望むでしょう。

相続放棄は、各相続人が自分で手続する必要があります。

相続放棄の手数料は、相続人1人あたり800円です。

手数料は、収入印紙を申立書に貼り付けて納入します。

②相続放棄の期間の伸長の申立て

相続放棄を希望する場合、期限があります。

相続があったことを知ってから、3か月以内です。

「相続があったことを知ってから」とは、被相続人が死亡して相続が発生し、その人が相続人であることを知って、かつ、相続財産を相続することを知ってから、と考えられています。

相続が発生してから長期間経過してから、自分が相続人であることを知ることがあります。

自分が相続人であることを知ってから3か月以内であれば、相続放棄をすることができます。

相続を単純承認すべきか相続放棄をすべきか判断する3か月の期間を熟慮期間と言います。

被相続人の財産状況が分からない場合、相続を単純承認すべきか相続放棄をすべきか判断できないことがあります。

例えば、借金を何度もしていて返済が終わっているのか返済中であるのか不明であるケースです。

債権者に問い合わせても、即答できないでしょう。

取引状況を即答できない債権者がたくさんいると、3か月以内に判断できません。

熟慮期間内に判断できない場合、相続人は相続放棄の期間の伸長の申立てをすることができます。

相続放棄の期間の伸長の申立てが認められた場合、原則として、さらに3か月伸長されます。

相続放棄の期間の伸長の申立てをする場合、手数料を納めます。

手数料は、800円です。

相続放棄の期間の伸長の申立ては、各相続人が自分で手続する必要があります。

相続放棄の期間の伸長は、相続人ごとに判断されます。

相続放棄の期間の伸長の申立ての手数料は、相続人1人あたり800円です。

手数料は、収入印紙を申立書に貼り付けて納入します。

③相続財産清算人選任の申立て

家庭裁判所で相続放棄が認められた場合、はじめから相続人でなくなります。

被相続人に子どもがいる場合、子どもが相続人になります。

子どもが相続放棄をした場合、子どもは相続人でなくなります。

子ども全員が相続放棄をした場合、子どもがいない場合になります。

被相続人に子どもがいない場合、親などの直系尊属が相続人になります。

相続人になる人は、法律で決まっています。

相続人全員が相続放棄をすることができます。

相続人全員が相続放棄をした場合、相続人がいなくなります。

相続人不存在の場合、相続財産は国庫に帰属します。

被相続人が払うべきお金を払わないまま、死亡することがあります。

被相続人にプラスの財産がある場合、財産からお金を払ってもらいたいと望むでしょう。

相続財産清算人は、相続財産を清算して国庫に帰属させる人です。

相続財産清算人は、プラスの財産からお金を払って清算をします。

家庭裁判所に申立てをして、相続財産清算人を選任してもらいます。

相続財産清算人選任の申立てをする場合、手数料を納めます。

手数料は、800円です。

手数料は、収入印紙を申立書に貼り付けて納入します。

④遺言書検認の申立て

被相続人が生前に遺言書を作成していることがあります。

遺言書を作成する場合、自筆証書遺言か公正証書遺言を作るケースがほとんどです。

自筆証書遺言は、自分ひとりで書いて作った遺言書です。

自筆証書遺言を作成した後は、原則として、自分で保管します。

作成した自筆証書遺言を法務局に提出して、保管してもらうことができます。

公正証書遺言は、公証人が文書に取りまとめて作る遺言書です。

証人2人に確認してもらって作ります。

公正証書遺言を作成した後は、公正証書遺言原本は公証役場で保管されます。

相続が発生した後、遺言書を見つけることがあります。

自筆証書遺言を見つけた人や預かっている人は、家庭裁判所へ届け出る必要があります。

封がされ得いる遺言書は、家庭裁判所で開封してもらいます。

遺言書を届け出る手続を遺言書検認の申立てと言います。

遺言書検認の申立てをする場合、手数料を納めます。

手数料は、800円です。

手数料は、収入印紙を申立書に貼り付けて納入します。

⑤遺言執行者選任の申立て

自分が死亡した後に自分の財産をだれに引き継いでもらうか、遺言書で決めることができます。

遺言書は作成するだけでは、意味がありません。

遺言書の内容は自動で実現するわけではないからです。

遺言執行者は、遺言書の内容を実現する人です。

遺言執行者は、遺言書で指名することができます。

遺言書で指名しても、指名された人からご辞退されることがあります。

指名された人が先に死亡することがあります。

家庭裁判所に申立てをして、遺言執行者を選任してもらうことができます。

遺言執行者選任の申立てをする場合、手数料を納めます。

手数料は、800円です。

手数料は、収入印紙を申立書に貼り付けて納入します。

5裁判所に提出する書類作成を司法書士に依頼するメリット

相続が発生すると、家族は大きな悲しみに包まれます。

深い悲しみの中で、葬儀を執り行います。

ここから怒涛のような相続手続が始まります。

だれが相続人になるか家族にとっては当然のことと軽く考えがちです。

相続手続先の人に対して、相続人は客観的に証明する必要があります。

大した財産がないから、相続手続はカンタンに思えるかもしれません。

相続手続は、普段聞き慣れない法律用語でいっぱいです。

相続手続先は、相続人のトラブルに巻き込まれないために慎重に判断します。

想像以上に神経を使って、クタクタになります。

家庭裁判所の申立てが必要な手続をなると、さらに難易度は上がります。

司法書士は、相続人をサポートして相続手続を進めることができます。

裁判所に提出する書類作成は、司法書士の専門分野です。

スムーズに相続手続を進めたい方は、司法書士に相談することをおすすめします。

親子共有名義で片方死亡したときの相続

2024-06-03

1共有者でも優先されない

①相続人になる人は法律で決まっている

相続が発生したら、親族のうち一定の範囲の人が相続人になります。

だれが相続人になるかについて、民法で決められています。

相続人になる人は、次のとおりです。

(2)~(4)の場合、先順位の人がいる場合、後順位の人は相続人になれません。

(1)配偶者は必ず相続人になる

(2)被相続人に子どもがいる場合、子ども

(3)被相続人に子どもがいない場合、親などの直系尊属

(4)被相続人に子どもがいない場合で、かつ、親などの直系尊属が被相続人より先に死亡している場合、兄弟姉妹

相続人になるはずだった人が被相続人より先に死亡した場合、相続人になるはずだった人の子どもや子どもの子どもが相続します。

相続人になるはずだった人の子どもや子どもの子どもが相続することを代襲相続と言います。

②共有者が自動的に相続するわけではない

被相続人が不動産を共有している場合、被相続人の共有持分は相続人に相続されます。

被相続人が相続人のひとりと不動産を共有していた場合、何となく共有者が相続すると思うかもしれません。

共有者のひとりが相続人である場合、自動的に被相続人の共有持分を相続できるといったことはありません。

共有者であっても、優先権はないからです。

共有者が相続人だから、自動的に相続するといったルールはありません。

③共有者が取得するのは相続人不存在のとき

相続が発生したら、被相続人のものは相続人が相続します。

被相続人が不動産を共有していた場合、被相続人は不動産の共有持分を持っています。

被相続人の共有持分は、相続人が相続します。

共有者の片方が死亡した場合、他の共有者が共有持分を取得することを聞いたことがあるかもしれません。

共有者の片方が死亡した場合に他の共有者が共有持分を取得するのは、相続人が不存在の場合です。

被相続人が天涯孤独の場合、法律で決められた相続人は存在しないでしょう。

法律で決められた相続人はいても、相続人全員が相続放棄をすることがあります。

家庭裁判所で相続放棄が認められた場合、はじめから相続人でなくなります。

法律で決められた相続人全員が相続放棄をした場合、相続人不存在と言えます。

被相続人が払うべきお金を払わないまま、死亡することがあります。

相続人不存在であれば、相続人に払ってもらうことはできません。

被相続人の財産があれば、被相続人の財産から払ってもらいたいと望むでしょう。

被相続人が不動産を共有していた場合、共有持分は財産と言えます。

被相続人に特別縁故者がいることがあります。

特別縁故者とは、被相続人に特別な縁故があった人です。

家庭裁判所に特別縁故者と認められた場合、財産が分与を受けることができます。

受け取る人がいない財産は、国庫に帰属します。

国庫に帰属すべき財産が共有持分である場合、他の共有者が取得します。

被相続人に相続人がいる場合、相続人不存在ではありません。

共有者のひとりが死亡しても、自動で他の共有者が被相続人の共有持分を取得することはできません。

2親子共有名義の建物で配偶者居住権

①配偶者短期居住権は親子共有名義の建物で認められる

配偶者短期居住権と配偶者居住権は、相続発生後に配偶者が住み場所を失わないようにするために作られた権利です。

配偶者短期居住権が認められる要件は、次のとおりです。

(1)法律上の配偶者であること

(2)被相続人の所有していた建物であること

(3)相続開始時に居住していたこと

配偶者短期居住権は、要件が満たされれば自動で認められます。

配偶者短期居住権が認められるためには、被相続人単独所有の建物に限られません。

被相続人が第三者と共有している建物であっても、配偶者短期居住権は認められます。

被相続人が配偶者以外の人と共有している建物であっても、差し支えありません。

配偶者短期居住権は、親子共有名義の建物で認められます。

②配偶者居住権は親子共有名義の建物で認められない

配偶者居住権が認められる要件は、次のとおりです。

(1)法律上の配偶者であること

(2)被相続人の所有していた建物であること

(3)相続開始時に居住していたこと

(4)配偶者居住権を設定

配偶者居住権は、自動で発生しません。

配偶者居住権を設定する必要があります。

配偶者居住権が認められるためには、被相続人単独所有の建物に限られません。

被相続人と配偶者の共有建物について、配偶者居住権が認められます。

配偶者以外の第三者と共有する建物について、配偶者居住権が認められません。

配偶者居住権は、原則として配偶者が終身居住する権利です。

配偶者以外の第三者と共有する建物である場合、配偶者居住権は大きな負担になります。

他の共有者にとって過大な負担になるから、配偶者以外の第三者と共有する建物である場合配偶者居住権は認められません。

配偶者居住権は、親子共有名義の建物で認められません。

3相続で共有を解消する

①共有持分を取得して他の財産を取得しない

相続が発生したら、被相続人のものは相続人が相続します。

親子で不動産を共有していた場合、他の共有者は相続人のひとりでしょう。

相続財産の分け方は、相続人全員の合意で決めなければなりません。

被相続人と不動産を共有していても、自動で共有持分を相続することはできません。

他の共有者である相続人が共有持分を取得して、他の財産を取得しない合意をするといいでしょう。

相続人全員で合意できれば、相続をきっかけにして共有を解消することができます。

他の相続人にとって公平と思えるだけの財産がない場合、分け方の合意はできないでしょう。

②共有持分を取得して代償金の支払い

相続財産は、分けやすい財産と分けにくい財産があるでしょう。

不動産は、分けにくい財産の代表例です。

相続財産の大部分が不動産である場合、そのまま分けるのは難しいでしょう。

一部の相続人が不動産を取得した場合、他の相続人は不公平を感じるからです。

法定相続分と較べて高価な財産を取得する場合、代償分割をすることで合意できることがあります。

代償分割とは、一部の相続人が高価な財産を相続し、他の相続人は高価な財産を相続した人から、その分のお金をもらう方法です。

他の共有者である相続人が共有持分を取得して、他の相続人に代償を払う合意をするといいでしょう。

相続人全員で合意できれば、相続をきっかけにして共有を解消することができます。

共有持分を取得する相続人は、代償金を支払わなければなりません。

共有持分を取得する相続人が代償金を準備できない場合、分け方の合意はできないでしょう。

代償金を支払うと約束したのに、支払ってもらえないと相続人間でトラブルになります。

③不動産全体を売却してお金で分ける

代償分割では、不動産を相続する人が代償金を準備する必要があります。

不動産が高価である場合、代償金を準備することが難しいでしょう。

相続財産の大部分が高価な不動産である場合、換価分割をすることで合意ができることがあります。

換価分割とは、不動産を売却してお金に換えた後、お金を分ける方法です。

換価分割は、実際に売れてからお金で分ける方法です。

相続人全員で不動産全体を売却して、お金で分ける合意をするといいでしょう。

相続人全員で合意できれば、相続をきっかけにして共有を解消することができます。

不動産の価値をいくらと考えるか、だれが実際に不動産を相続するのかで話し合いがまとまらないという心配はありません。

せっかく家族が守ってきた不動産を手放すことへの罪悪感にかられるかもしれません。

売却しようとしたのに買い手がつかないと相続手続きが長引くおそれがあります。

④共有持分の細分化はデメリットが大きい

相続財産の分け方は、相続人全員の合意で決めなければなりません。

相続財産は、複数の分け方があります。

相続人にもさまざまな考えがあるでしょう。

相続人全員の話し合いがまとまらないことは、少なくありません。

被相続人の共有持分を相続人全員で共有する方法は、話し合いが不要です。

相続人全員で法定相続分で共有するから、一見して公平に見えます。

話し合いがまとまらないと、先延ばしをしたくなります。

被相続人の共有持分をさらに細分化することはおすすめできません。

先延ばししても、メリットはないからです。

先延ばしすると、共有者にさらに相続が発生するでしょう。

共有者の共有持分は、共有者の相続人が相続します。

さらに共有者が増えることになります。

適切に相続登記をしていないと、だれにどれだけの持分があるのか分からなくなります。

共有物を処分する場合、共有者全員の合意が必要になります。

共有者が増えると、単純に話し合いが難しくなります。

気心が知れた兄弟で共有している場合、話し合いは比較的容易です。

相続で疎遠な親族と共有している場合、話し合いは難しくなるでしょう。

見知らぬ親族と共有している場合、話し合いはできなくなって先延ばしになるでしょう。

事実上、不動産の利活用ができなくなります。

共有持分の細分化はデメリットが大きいので、おすすめできません。

4相続前にできること

①遺言書作成

被相続人は生前に、自分の財産を自由に処分することができます。

被相続人は死亡後に、自分の財産をだれに引き継いでもらうか遺言書で自由に決めることができます。

遺言書で財産の行き先が決めてある場合、遺言書のとおりに分けることができます。

相続人全員で分け方の話し合いをする必要はありません。

遺言書は、作成するだけでは意味がありません。

遺言書の内容は、自動で実現するわけではないからです。

遺言書を作成する場合、遺言執行者を選任することができます。

遺言執行者は、遺言書の内容を実現する人です。

遺言執行者は、遺言書の内容を実現するために必要な権限があります。

遺言執行者がいると、わずらわしい相続手続をおまかせすることができます。

遺言書を作成すると、家族がラクになります。

②共有持分を生前贈与

被相続人は生前に、自分の財産を自由に処分することができます。

自分の持っている共有持分を生前贈与することができます。

共有持分全部を一度に贈与することもできるし、共有持分を分割して複数回に分けて贈与することもできます。

贈与する財産によっては、贈与税が課せられるかもしれません。

一般的に言って、贈与税は想像以上に高額になりがちです。

高額な贈与をする場合、税務署や税理士に相談するといいでしょう。

③子どもには遺留分がある

被相続人は生前に、自分の財産を自由に処分することができます。

被相続人は死亡後に、自分の財産をだれに引き継いでもらうか遺言書で自由に決めることができます。

財産は被相続人が1人で築いたものではないでしょう。

家族の協力があってこそ築くことができた財産のはずです。

被相続人の名義になっているからといって、まったく無制約の自由にすることはできません。

今まで協力してきた家族に、酷な結果となることがあるからです。

被相続人に近い関係の相続人には、相続財産に対して最低限の権利が認められています。

相続財産に対して、認められる最低限の権利のことを遺留分と言います。

配偶者は、必ず相続人になります。

被相続人に子どもがいる場合、子どもは相続人になります。

配偶者と子どもは、遺留分が認められています。

遺留分が認められる人のことを遺留分権利者と言います。

遺留分を侵害するような遺言書であっても、作成することはできます。

公正証書遺言であっても、遺言書作成だけで遺留分を奪うことはできません。

遺留分を侵害するような生前贈与であっても、することはできます。

遺留分を侵害した場合、遺留分権利者は遺留分侵害額請求をするでしょう。

相続人間の大きなトラブルに発展します。

遺言書作成や生前贈与をする場合、遺留分に注意しましょう。

5遺言書作成と遺言執行を司法書士に依頼するメリット

不動産を共有している場合、共有者は親子や兄弟などの近い関係の人が多いでしょう。

共有者の片方に相続が発生した場合、他の共有者が相続人であることが多いでしょう。

遺産分割協議が必要なのに、共有者だから当然に相続できると誤解しているかもしれません。

相続人でもないのに、一方的に相続すると言われても困惑するでしょう。

相続人間のトラブルに発展しがちです。

相続手続は、タイヘンです。

単なる相続人の誤解や無理解で、トラブルに発展するからです。

不動産の共有は、デメリットが大きいのでおすすめできません。

事前の対策で、防げるトラブルと言えます。

司法書士は、相続対策をサポートすることができます。

相続対策をするために、司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。

名義人死亡後に口座凍結を確認する方法

2024-06-02

1名義人死亡後に口座凍結を確認する方法

銀行などの預貯金口座は、日常生活に欠かせません。

多くの人は、銀行などに預貯金口座を持っているでしょう。

口座の持ち主が死亡したら、口座が凍結されます。

口座の凍結とは、口座の取引ができなくなることです。

口座の取引が停止されると、入出金、振込、引落ができなくなります。

口座凍結している場合、引き出せなくなります。

口座凍結しているか確認のため、キャッシュカードで引出ししてみるといいでしょう。

口座凍結後にATMなどで残高照会をしてみると、窓口などを案内するメッセージが表示されます。

口座に入金しようとしても振込みをしようとしても、エラーになります。

口座凍結で、口座の取引が停止されているからです。

口座取引を試してみることで、口座凍結を確認することができます。

2金融機関が名義人死亡を知ると口座凍結

①口座凍結のタイミング

口座の持ち主が死亡したら、口座が凍結されます。

口座の持ち主が死亡後、ただちに凍結するわけではありません。

口座の持ち主が死亡したことを銀行などの金融機関が知ったときに、口座凍結します。

口座凍結までに、タイムラグがあります。

人が死亡したら、医師が死亡診断書を作成します。

医師や病院は、銀行などの金融機関に連絡しません。

医師や病院は、死亡した人がどの銀行に口座を持っているか知りません。

人が死亡したら、市区町村役場に死亡届を提出します。

市区町村役場は、銀行などの金融機関に連絡しません。

市区町村役場は、、死亡した人がどの銀行に口座を持っているか知りません。

人が死亡した事実は、個人情報です。

個人情報を外部に漏らしたら、責任を問われることになるでしょう。

医師や病院、市区町村役場から、銀行などの金融機関に漏れることは考えられません。

口座の持ち主が死亡したら、相続人が銀行に問い合わせをするでしょう。

相続財産の確認や口座の解約方法を確認するためです。

相続人が金融機関に問い合わせをしたときに、口座の持ち主の死亡を知ります。

口座の持ち主の死亡の事実を知ったときに、口座は凍結されます。

②口座凍結する理由

大切な家族が死亡したら、葬儀を行います。

病院や施設などの費用を清算する必要があります。

葬儀費用や施設病院の費用は、ある程度まとまった金額になることが多いでしょう。

被相続人の預貯金を引き出して、支払いたいと考えるかもしれません。

口座の持ち主が死亡したら、口座が凍結されます。

相続が発生したら、被相続人のものは相続人が相続します。

被相続人の預貯金は、相続人全員の共有財産です。

一部の相続人が勝手に引き出した場合、他の相続人とトラブルになるでしょう。

被相続人の預貯金が安易に引き出されると、金融機関は他の相続人から強い抗議を受けることになります。

金融機関が相続争いに巻き込まれるおそれがあります。

被相続人の大切な預貯金を守れないとなったら、金融機関の信用は失墜するでしょう。

金融機関は信用失墜を避けるため、口座を凍結します。

③口座凍結に期限はない

口座の持ち主が死亡したら、口座が凍結されます。

口座凍結に期限はありません。

凍結解除の手続をしなければ、いつまでたっても凍結されたままです。

長期間経過すれば、自動で凍結解除されることはありません。

金融機関が相続争いに巻き込まれないために、口座凍結しているからです。

預貯金の分け方について、相続人全員が合意するまで口座凍結は続きます。

相続財産の分け方について、相続人全員の合意が難しいことがあります。

ときには何十年も合意ができないことがあります。

何十年も合意ができない場合、何十年も凍結されたままです。

口座凍結に、期限はないからです。

④口座凍結前の引出は相続人全員で情報共有

銀行などの金融機関が死亡の事実を知ったときに、口座凍結します。

金融機関が死亡の事実を知る前は、引出ができてしまいます。

口座の持ち主が死亡したら、口座の預貯金は相続財産です。

相続財産は、相続人全員の共有財産です。

相続発生後に引出しをすると、他の相続人からは勝手に横領していると見えるでしょう。

葬儀費用や施設病院の費用は、ある程度まとまった金額になります。

引出しをする場合、引き出した金額と使い途について他の相続人に情報共有をしましょう。

情報共有のうえで領収書を保管するのがおすすめです。

⑤口座凍結されたら引落口座の変更

口座が凍結されると、入出金、振込、引落ができなくなります。

公共料金や住宅ローンなどの引落口座に指定されている場合、引落が実行できなくなります。

口座が凍結された場合、引落口座の変更が必要になります。

口座凍結によって引落が実行できなかった場合、納付書などが送られてきます。

納付忘れにならないように、郵便物に注意しましょう。

3口座凍結を解除する方法

①相続人確定

被相続人の預貯金は、相続人全員の共有財産です。

被相続人の預貯金の分け方は、相続人全員の合意で決める必要があります。

相続が発生した場合、だれが相続人になるか家族にとっては当然のことでしょう。

銀行などの第三者に対しては、客観的に証明する必要があります。

客観的に証明するとは、具体的には戸籍謄本を用意することです。

戸籍には、その人の身分に関する事項がすべて記載されています。

身分に関する事項とは、結婚や離婚、養子縁組や離縁、認知などの事項です。

結婚や離婚、養子縁組や離縁、認知などの事項を家族には秘密にしていることがあります。

戸籍謄本を揃えると、すべて明るみに出ます。

相続人確定のため、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本を準備します。

転籍や改製があった場合、戸籍は作り直しがされます。

戸籍が作り直されたとき、新しい戸籍に書き写される項目と書き写されない項目があります。

書き写されない項目を確認するため、出生から死亡までの連続した戸籍謄本が必要です。

相続人確定には、たくさんの戸籍謄本が必要になります。

②遺産分割協議が必要

相続財産の分け方は、相続人全員の合意で決定します。

一部の相続人を含めずに合意しても、無効の合意です。

相続財産の分け方は、相続人の多数決で決めることができません。

相続人全員の合意が必要です。

相続人全員の合意ができたら、合意内容を書面に取りまとめます。

相続財産の分け方について、取りまとめた書面を遺産分割協議書と言います。

遺産分割協議書の内容に間違いがないか、相続人全員に確認をしてもらいます。

問題がなければ、記名し実印で押印をしてもらいます。

遺産分割協議書の押印が実印による押印であることを証明するため、印鑑証明書を添付します。

遺産分割協議書は、相続人全員の合意内容の証明書です。

預貯金の分け方について、相続人全員が合意するまで口座凍結は続きます。

たくさんの戸籍謄本と遺産分割協議書を提出することで、相続人全員の合意があることを証明することができます。

相続人全員の合意があることを確認できれば、銀行は口座の凍結を解除してくれます。

③遺言書があると手続がラク

被相続人は、生前に自分の財産を自由に処分することができます。

被相続人は、遺言書で自分の財産をだれに相続させるのか自由に決めることができます。

遺言書は、遺言者の意思を示すものです。

相続人としても、遺言書の内容を実現してあげたいと考えるでしょう。

遺言書がある場合、遺言書の内容のとおり分けることができます。

相続人全員で分け方の合意をする必要はありません。

相続財産の分け方は、相続人全員の合意が必要です。

1人でも反対の相続人がいると、相続財産の分け方を決めることができません。

遺言書があると、相続人全員で話し合いをする必要がなくなります。

遺産分割協議はトラブルになりやすいから、遺言書があるとトラブル防止になります。

遺言書は、作成するだけでは意味がありません。

遺言書の内容は、自動で実現するわけではないからです。

遺言書で遺言執行者を決めておくのがおすすめです。

遺言執行者は、遺言書の内容を実現する人です。

遺言執行者は、遺言書の内容を実現するために必要な権限が与えられます。

相続手続は、想像以上に手間と時間がかかります。

遺言執行者がいると、わずらわしい相続手続をおまかせすることができます。

遺言書があると、相続手続がラクになります。

④遺産分割協議前に仮払い制度

相続財産の分け方は、相続人全員の合意で決定します。

相続財産の分け方について、相続人全員の合意が難しいことがあります。

何十年も合意ができない場合、何十年も凍結されたままです。

葬儀費用や施設病院の費用は、ある程度まとまった金額になります。

葬儀会社や施設病院には、期限までの支払う必要があるでしょう。

遺産分割協議前に、仮払い制度を利用することができます。

預金の仮払いを受けるには、2つの方法があります。

銀行などの金融機関に手続をする方法と家庭裁判所に手続をする方法です。

どちらかというと、銀行などの金融機関に手続をする方法が簡単です。

銀行などの金融機関に手続をする場合、仮払い上限額の計算式は次のとおりです。

仮払いの上限額=死亡時の預金額×1/3×法定相続分

計算式で求められた上限額が150万円を超えた場合、150万円になります。

預金の金額が少ない場合や法定相続人が多い場合、150万円の仮払いを受けることができません。

仮払いを受ける対象は、預金だけです。

家庭裁判所に手続をする方法は、遺産分割調停や遺産分割審判が申し立てられていることが前提です。

そのうえで、仮分割の仮処分の申立てをすることができます。

仮払いを受けることができる金額は、家庭裁判所が決定します。

家庭裁判所で認められれば、法律で決められた仮払いの上限額以上の金額の仮払いを受けることができます。

4法定相続情報一覧図があると便利

口座凍結解除は、金融機関ごとに手続が必要です。

被相続人がたくさんの金融機関に口座を持っている場合、それぞれの金融機関に手続をしなければなりません。

相続手続のたびに、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本と相続人の現在戸籍の束を提出します。

大量の戸籍謄本を持ち歩くと汚してしまったり、紛失する心配があるでしょう。

受け取る銀行などの金融機関にとっても、戸籍謄本の束を読解するのは手間のかかる事務です。

被相続人を中心にして、どういう続柄の人が相続人であるのか一目で分かるように家系図のように取りまとめてあると便利です。

この家系図と戸籍謄本等を法務局に提出して、登記官に点検してもらうことができます。

登記官は内容に問題がなかったら、地模様の入った専用紙に認証文を付けて印刷して、交付してくれます。

これが法定相続情報証明制度です。

登記官が地模様の入った専用紙に印刷してくれた家系図のことを法定相続情報一覧図と言います。

多くは家系図のように書きますが、相続人をずらっと書き並べることもできます。

法定相続情報一覧図があると、便利です。

5預貯金口座の相続手続を司法書士に依頼するメリット

口座を凍結されてしまったら、書類をそろえて手続きすれば解除してもらえます。

凍結解除に必要な書類は、銀行などの金融機関によってまちまちです。

手続の方法や手続にかかる期間も、まちまちです。

銀行内部で取扱が統一されていないことも、少なくありません。

窓口や電話で確認したことであっても、上席の方に通してもらえず、やり直しになることも多々あります。

口座凍結解除は、スムーズに手続きできないことが多いのが現状です。

日常生活に不可欠な銀行口座だからこそ、スムーズに手続したいと思う方が多いでしょう。

仕事や家事で忙しい方や高齢、療養中などで手続が難しい方は、手続を丸ごとおまかせできます。

家族にお世話が必要な方がいて、お側を離れられない方からのご相談もお受けしております。

凍結口座をスムーズに解除したい方は、司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。

司法書士に遺言執行を依頼する

2024-06-02

1遺言執行者とは

①遺言執行者は遺言書の内容を実現する人

遺言書は、遺言者の意思を示したものです。

遺言書を書いただけでは、意味がありません。

遺言書を書いただけで、自動的に遺言内容が実現するわけではないからです。

遺言書の内容を実現する人が遺言執行者です。

相続人は遺言の内容を見たら、被相続人の意思を尊重し、実現してあげたいと思うでしょう。

相続人にとって不利な内容になっている場合、遺言の実現に協力してくれないこともあります。

遺言執行者を選任しておくと、遺言執行者が遺言書の内容を実現してくれます。

遺言執行者は遺言の内容を実現するために必要な行為をする権限があります。

協力しない相続人が遺言執行を妨害した場合、原則として、妨害行為は無効になります。

遺言執行者はいてもいなくても、遺言書の効力に違いはありません。

遺言執行者がいると、確実に遺言者の意思を実現してもらえますから、安心です。

②遺言執行者の選任方法

遺言執行者を決める方法は、次の3つがあります。

(1)遺言書で指名する

(2)遺言執行者を指名する人を遺言書で指名する

(3)遺言者が死亡した後、家庭裁判所に選んでもらう

(3)家庭裁判所に遺言執行者を選んでもらうことを遺言執行者選任の申立てと言います。

相続発生後に、家族が家庭裁判所で手続をするのは手間がかかります。

家族に面倒をかけるより、遺言書で遺言執行者を指名するのがおすすめです。

遺言者は、遺言執行者を自由に指名することができます。

親族のうちから選んでも構わないし、司法書士などの専門家に依頼することもできます。

家族から選んだ場合、相続人同士の関係性や財産状況が分かっているので相続手続がスムーズに進むかもしれません。

難易度の高い相続手続や財産状況が複雑な場合、対応しきれなくなることがあります。

司法書士などの専門家に遺言執行者になってもらう場合、専門性や中立性の面から安心です。

③遺言執行者がいると家族がラク

遺言執行者がいても遺言執行者がいなくても、遺言書の効力にちがいはありません。

遺言執行者がいる場合、遺言執行者が遺言書の内容を実現します。

遺言執行者がいない場合、相続人全員の協力で遺言書の内容を実現します。

相続人全員が遺言書の内容に納得していて相続手続に協力できる場合、必ずしも遺言執行者を選任する必要はありません。

相続人の中には遺言書の内容に納得していても、相続手続に協力する時間的余裕がない人がいるでしょう。

相続手続に協力する気持ちがあっても、知識不足から行き違いを起こすことがあります。

相続手続は何度も経験するものではないから、だれにとっても不慣れでスムーズに手続を進めることができません。

相続が発生したら、膨大な手続があります。

相続手続をする先は、銀行などの金融機関や役所、法務局、家庭裁判所などです。

いずれも、平日の昼間しか手続できません。

相続手続をカンタンに考えていると、スムーズに行かない手続にイライラします。

仕事や家事で忙しい人にとって、不慣れな手続にさらにイライラが募ります。

遺言執行者がいる場合、面倒な相続手続をおまかせすることができます。

家族は待っているだけです。

遺言執行者がいると、家族はラクができます。

2遺言執行者になれる人なれない人

①未成年・破産者は遺言執行者になれない

未成年・破産者は、遺言執行者になることができません。

遺言書を作成したとき、未成年者であっても相続が発生したときに成年に達していれば遺言執行者になることができます。

結婚している人は未成年であっても、成年扱いされます。

破産申立の後、裁判所から免責許可決定を受けていれば、遺言執行者になることができます。

②相続人・受遺者は遺言執行者になれる

遺言者は、遺言執行者を自由に指名することができます。

財産を受け継いでもらう人を遺言執行者に指名することができます。

遺言書で相続人や相続人以外の人に財産を受け継いでもらうことを遺贈と言います。

遺贈で財産を譲り受ける人を受遺者と言います。

受遺者を遺言執行者に指名することができます。

多くの場合、遺贈で財産を受け継いでもらうのは相続人以外の人です。

相続人に財産を受け継いでもらう場合、相続させればいいからです。

不動産を遺贈する場合、遺贈登記が必要になります。

遺言執行者がいない場合で、かつ、相続人以外の人が受遺者として遺贈登記を申請する場合、相続人全員の協力が必要になります。

相続人以外の人が財産を受け取ることに、納得できない相続人がいるかもしれません。

遺言書の内容に納得できない相続人は、遺贈登記に協力してくれないでしょう。

遺言執行者がいる場合、相続人全員の協力は不要です。

遺言執行者は、遺言書の内容を実現する人だからです。

協力しない相続人が遺言執行を妨害した場合、原則として、妨害行為は無効になります。

③司法書士に遺言執行を依頼できる

遺言執行者は、遺言書の内容を実現する人です。

相続手続を相続人全員の代わりにやってくれます。

相続手続はカンタンに考えがちですが、想像以上に面倒で手間と時間がかかります。

相続手続は法律の知識が必要になることも少なくありません。

家族を遺言執行者に指名することができますが、荷が重いものです。

司法書士は、相続手続をはじめとする法律の専門家です。

司法書士などの専門家に遺言執行を依頼することができます。

家族がわずらわしい相続手続から解放されるから、家族のトラブルが軽減されます。

④遺言執行者が司法書士に遺言執行を依頼できる

遺言執行者は、未成年や破産者でなければだれでも指名することができます。

遺言執行者に就任した後、あまりの大変さに音を上げることがあります。

相続手続はだれにとっても経験が少ないためスムーズに進めるのが難しいからです。

遺言執行者は、司法書士などの専門家に遺言執行を依頼することができます。

2019年7月1日以前作成の遺言書で遺言執行者に指名された場合、止むを得ない理由があれば司法書士などの専門家にその任務を任せることができます。

遺言執行者に指名されたのが2019年7月1日以降作成の遺言書であれば、遺言執行者は自己の責任で司法書士などの専門家にその任務を任せることができます。

止むを得ない理由がなくても、専門家に任せることができるように変更になりました。

遺言執行は法律知識が必要な手続が多いので、専門家に任せる方がスムーズでしょう。

法律改正で、専門家に任せやすくなったといえます。

3遺言執行者の役割

①遺言執行者就任を通知する

遺言執行者は、遺言書の内容を実現する人です。

遺言書の内容を実現するために必要な権限があります。

遺言執行者のやることは細々とあります。

遺言書の内容と遺言執行者に就任したことを相続人や遺贈を受ける人にお知らせします。

遺言執行者に指名されてもお断りができます。

お断りの理由を言う必要はありません。

仕事が忙しいでも、自信がないでも、何となく気が進まないでも構いません。

断るときは、すみやかに意思表示をしましょう。

②遺言書の検認の申立て

法務局保管でない自筆証書遺言や秘密証書遺言の場合、遺言書の検認が必要です。

公正証書遺言は、検認不要です。

遺言書の検認には時間がかかることから、遺言書作成は公正証書遺言がおすすめです。

③相続人調査

被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍を取り寄せます。

戸籍の取り寄せは、思う以上に時間や労力がかかります。

古い戸籍は現在の戸籍と書き方が違ううえに、手書きなので読み解くのに苦労するかもしれません。

④財産調査

相続財産には、プラスの財産とマイナスの財産があります。

不動産の権利証や預貯金の残高証明書や借入金等を調査して、財産の全容を明らかにします。

財産を一覧表に取りまとめ、すみやかに相続人に交付します。

⑤遺言内容の執行

(1)預貯金などの解約

ほとんどの場合、相続財産に預貯金が含まれています。

銀行などの金融機関は口座の持ち主が死亡したことを確認すると口座を凍結します。

銀行の預貯金口座は日常生活に不可欠なので、すみやかに手続きする必要があります。

遺言書の内容を越えて手続きすることはできません。

例えば、〇〇銀行〇〇支店 普通預金 口座番号〇〇〇〇を相続人〇〇に相続させる

上記遺言がある場合、普通預金だけ解約できます。

別の支店の口座や定期預金は解約できません。

(2)不動産の名義変更

遺贈をする場合も、相続する場合も、遺言執行者が登記申請ができます。

遺言執行者は、司法書士や弁護士に依頼することができます。

(3)家庭裁判所へ申立てや役所への届出

子どもの認知や相続人廃除の申立て、相続人廃除の取消の申立てなどは遺言執行者がします。

申立てが認められた後、戸籍の届出も遺言執行者が行います。

⑥相続財産の換価

財産を売却して得られたお金を相続人に平等に分けるように指定してあることがあります。

不動産の場合、売却が指定してある場合でも、相続登記が必要です。

⑦遺言執行の完了報告

すべての任務が終了したら、相続人全員に職務完了を報告します。

4遺言執行を司法書士に依頼するメリット

遺言執行者は遺言書の内容を実現する人です。

相続人が遺言書の内容に納得していて、手続に協力的であれば、必ずしも、遺言執行者を選任する必要はありません。

子どもの認知など遺言執行者しかできない手続がある場合、遺言執行者を選任しておかないと、相続人に余計な手間をかけさせることになります。

遺言執行者は、相続開始後すみやかに手続を進めることができる時間と知識がある人を選ぶことが重要です。

その意味でも、家族より司法書士などの専門家に遺言執行を依頼する人が増えています。

以前は、遺言執行者は止むを得ない場合だけ、他の人に職務を任せることができるとされていましたが、現在は、止むを得ないなどの理由は不要になりました。

遺言執行者に指名され、職務をしてみたところ、思ったよりタイヘンだという場合、自己の責任で司法書士などの専門家におまかせすることもできます。

今後も、専門家に依頼する人は増えていくでしょう。

遺言執行を司法書士などの専門家に依頼した場合、相続人は基本待っているだけなので、トラブルになることが少なくなるからです。

家族を笑顔にするためにも、遺言書作成と遺言執行者選任しましょう。

家族の幸せのためにも、遺言書作成と遺言執行者選任を司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。

養子縁組の条件

2024-05-31

1普通養子と特別養子のちがい

①普通養子は実親との親子関係が継続する

養子縁組とは、血縁関係による親子関係の他に、法律上の親子関係を作る制度です。

養子には、2種類あります。

普通養子と特別養子です。

子どものいない夫婦が養子縁組をする、配偶者の連れ子と養子縁組するといったことは日常的に聞くことあります。

一般的に、単に「養子」と言ったら、普通養子を指していることがほとんどです。

普通養子による養子縁組をした場合、血縁関係のある実親との親子関係は継続します。

普通養子は、養親も相続するし実親も相続します。

普通養子は、実親の子どもで、かつ、養親の子どもだからです。

普通養子は、実親との親子関係が継続します。

②特別養子は実親との親子関係が終了する

特別養子による養子縁組をした場合、血縁関係のある実親との親子関係が終了します。

特別養子による養子縁組は、親子の縁を切る重大な決定です。

厳格な要件で、家庭裁判所が決定します。

実の父母による著しい虐待がある場合やその他特別の事情がある場合で、かつ、子の利益のため特に必要があるときに、認められます。

特別養子は、養親を相続しますが実親は相続しません。

配偶者の嫡出子である実子と特別養子縁組をする場合、特別養子は実親である養親の配偶者との親子関係が存続します。

実親である養親の配偶者が死亡した場合、特別養子は相続人になります。

実親である養親の配偶者が死亡した後、実親である養親の配偶者の親が死亡した場合、代襲相続人になります。

特別養子は、実親の子どもでなくなり、養親の子どもです。

特別養子は、実親との親子関係が終了します。

2普通養子による養子縁組の条件

①養親になる人と養子になる人の合意

養子縁組をするためには、当事者の合意が不可欠です。

養子になる人が15歳未満の場合、自分で判断することはできません。

養子になる人の代わりに、親などの親権者が承諾します。

②養子縁組届を提出

養子縁組は、市区町村役場に養子縁組届を提出することで成立します。

養子縁組届の押印は、任意です。

養子縁組の当事者と証人の署名があれば、だれが市区町村役場に持って行っても差し支えありません。

持って行く人は、使者だからです。

持って行くだけであれば、委任状は不要です。

提出先は、養親または養子の本籍地か住所地の市区町村役場です。

③養親は20歳以上

養親になれるのは、20歳以上の人です。

成年になるのは、18歳です。

成年が18歳になっても、養親になるのは20歳以上です。

養親の年齢に、上限はありません。

④養子は尊属や年長者でない

尊属は、養子になることができません。

尊属とは、前の世代の血族です。

本人から見て、父母や祖父母は前の世代の血族です。

年長者は、養子になることができません。

年少者であっても、尊属は養子になることはできません。

伯叔父や伯叔母が年少であることがあります。

伯叔父や伯叔母は、尊属です。

伯叔父や伯叔母が年少であっても、養子になることはできません。

⑤未成年者を養子にするときは家庭裁判所の許可

未成年者を養子にする場合、家庭裁判所の許可が必要です。

養子になる人が自分の卑属や配偶者の卑属である場合、家庭裁判所の許可は不要です。

⑥結婚している人が未成年者を養子にするときは夫婦共同縁組

結婚している人が未成年者を養子にする場合、夫婦が共同で養子縁組をします。

未成年者を養子にする場合、家庭裁判所の許可が必要です。

家庭裁判所の許可を得ても、夫婦ともに養親になる必要があります。

配偶者の連れ子と養子縁組をする場合、夫婦共同縁組をする必要がありません。

⑦養親または養子が結婚しているときは配偶者の同意

養親または養子が結婚している場合、配偶者の同意が必要です。

結婚している人が未成年者を養子にする場合、夫婦が共同で養子縁組をします。

結婚している人が未成年者を養子にする場合でなければ、夫婦共同縁組をする必要はありません。

配偶者の同意を得るだけで済みます。

⑧後見人が被後見人を養子にするときは家庭裁判所の許可

後見人が被後見人を養子にする場合、家庭裁判所の許可が必要です。

後見人の任務が終了した後でも、管理の計算が終わらない間は家庭裁判所の許可が必要です。

家庭裁判所の強化が必要なのは、成年後見人と未成年後見人の両方です。

⑨養子の年齢に制限はない

養親になれるのは、20歳以上の人です。

養子になる人に、年齢制限はありません。

養親より年長者が養子になれないだけです。

高齢者になっても、養子になることができます。

⑩独身の人が養子縁組ができる

普通養子による養子縁組をする場合、独身の人が養親になることができます。

養親または養子が結婚している場合、配偶者の同意が必要です。

配偶者がいない人が養親になれないという意味はありません。

特別養子による養子縁組をする場合、独身の人が養親になることができません。

⑪養子の人数に法律上の制限はない

養親になる人と養子になる人の合意で、養子縁組することができます。

養親は、複数の養子と養子縁組をすることができます。

養子縁組の数に、法律上の制限はありません。

養子は、養親の子どもです。

養親が死亡したときに、養子は相続人になります。

被相続人の財産規模によっては、相続税の対象になるでしょう。

相続税を計算する場合、養子の数に制限があります。

被相続人に実子がいる場合、養子は1人までです。

被相続人に実子がいない場合、養子は2人までです。

上記の養子の数の制限は、相続税を計算するときだけの話です。

被相続人に実子がいても、複数の養子がいることがあります。

複数の養子全員が被相続人の子どもです。

被相続人の子ども全員が相続人です。

養子縁組の数に、法律上の制限はないからです。

⑫養親の人数に法律上の制限はない

養子縁組の数に、法律上の制限はありません。

養子は、複数の養親と養子縁組をすることができます。

養子は、養親の子どもです。

養親が死亡したときに、養子は相続人になります。

最初の養親が死亡したときに、養子は相続人になります。

次の養親が死亡したときに、養子は相続人になります。

最初の養親にとっても次の養親にとっても、養子は子どもだからです。

実親が死亡したときに、普通養子による養子は相続人になります。

実親にとっても、養子は子どもだからです。

子どもは、相続人になります。

養親の人数に法律上の制限は、ありません。

⑬養子縁組に収入要件はない

養子縁組をする場合、収入の基準はありません。

養親になる人も養子になる人も、収入による制限はありません。

養親になる人が共働きであっても、問題にはなりません。

3特別養子による養子縁組の条件は厳しい

①養親は結婚している人であること

特別養子の養親になるためには、配偶者がある人でなければなりません。

配偶者は法律上の配偶者に限られます。

内縁・事実婚の配偶者や同性パートナーは、特別養子を迎えることはできません。

夫婦共同で養親になる必要があります。

養子が一方の血縁関係のある嫡出子である場合は、配偶者のみ特別養子になることができます。

②養親は25歳以上であること

特別養子の養親になるためには、養親は25歳以上でなければなりません。

夫婦のうち一方が25歳以上であれば他方が25歳未満であっても、構いません。

③養子は15歳未満であること

特別養子の申立てをする時点で15歳であれば特別養子になることができます。

家庭裁判所が特別養子を成立させるまでに18歳になってしまったら特別養子になることはできません。

養子が15歳になる前から引き続き監護をされている場合で、かつ、やむを得ない理由で特別養子の申立てができなかった場合は特別養子になることができます。

やむを得ない理由があるかは、家庭裁判所が決定します。

やむを得ない理由があると認められて、かつ、養子が18歳未満であれば特別養子になることができます。

④養子が15歳以上であれば養子の同意があること

特別養子は子どもの福祉のために成立させる制度です。

15歳未満であれば養子の同意は必要ありませんが、子どもの意思は重視されます。

⑤実親の同意があること

特別養子では、養子縁組をした後、血縁関係のある実親との親子関係がなくなります。

実親の同意が必要になります。

次の場合は、実親の同意は必要ありません。

(1)父母が意思表示ができないとき

(2)父母による虐待、悪意の遺棄があるとき

(3)養子となる子どもの利益を著しく害するとき

一定の条件がある場合、父母の同意は撤回することができません。

⑥監護期間が6か月以上あること

養親による監護期間が6か月以上あることが条件になります。

養親による監護期間がスタートしたときには、実親が特別養子に同意していなくても構いません。

実親が特別養子に同意するか同意しないか分からない状態で、監護をスタートするのは精神的に負担が大きいものです。

4成人同士の養子縁組の条件

①成人同士の養子縁組は普通養子のみ

養子縁組には、普通養子と特別養子の2種類があります。

特別養子による養子は、15歳未満であることであることが条件です。

普通養子による養子は、年齢制限がありません。

成人同士が養子縁組をする場合、普通養子による養子縁組だけです。

②成人同士の養子縁組は当事者の合意が重要

成人同士で養子縁組をする場合、特別な条件はありません。

成人同士の養子縁組で重要な条件は、次のとおりです。

(1)養親になる人と養子になる人の合意

(2)養子縁組届を提出

(3)養子は尊属や年長者でない

養子縁組の条件は、先に説明したとおりです。

成人同士で養子縁組をする場合、あまり考慮する必要がないものが多いでしょう。

③養子縁組をすると養親の氏

養子縁組をすると、養子は養親の氏を名乗ります。

成人同士で養子縁組をしても、養子は養親の氏を名乗ります。

成人同士で養子縁組をした場合、氏が変更される点に注意する必要があります。

氏の変更は、社会生活上の負担が大きいからです。

養子になる人が結婚していても戸籍の筆頭者の場合、養親の氏に変更されます。

戸籍の筆頭者が養親の氏に変わるから、配偶者の氏も自動で変更されます。

養子になる人が戸籍の筆頭者の配偶者である場合、養親の氏でなく婚姻時に決めた氏を名乗ります。

養子に子どもがいる場合、養子の子どもの氏は自動で変更されません。

養子の子どもの氏を変更したい場合、別の手続が必要です。

5相続人調査を司法書士に依頼するメリット

本籍地の変更や国による戸籍の作り直し(改製)で多くの方は、何通もの戸籍を渡り歩いています。

古い戸籍は現在と形式が違っていて、読みにくいものです。

手書きの達筆な崩し字で書いてあって、分かりにくいものです。

慣れないと、戸籍集めはタイヘンです。

本籍地を何度も変更している方や結婚、離婚、養子縁組、離縁を何度もしている方は、戸籍をたくさん渡り歩いています。

戸籍謄本を集めるだけで、膨大な手間と時間がかかります。

戸籍には被相続人の結婚や離婚、子どもや養子の存在といった身分関係がすべて記録されています。

時には、家族の方が知らない相続人が明らかになることもあります。

相続が発生した後に、認知を求めて裁判になることもあります。

相続人を確定させるために戸籍を集めるだけでも、知識のない一般の人にはタイヘンな作業です。

家族の方が知らない相続人が明らかになると、精神的な負担はさらに大きいものになります。

相続手続のうち、専門家に任せられるものは任せてしまえば、事務負担を軽減することができます。

戸籍や住民票の取り寄せも司法書士は代行します。

相続人調査でお困りの方は、司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。

失踪宣告で生命保険の請求

2024-05-29

1失踪宣告で死亡と見なされる

①普通失踪は生死不明7年満了で死亡

行方不明になってから長期間経過している場合、死亡している可能性が高いことがあります。

失踪宣告は、死亡した可能性が高い行方不明者を法律上死亡した取り扱いにする手続です。

失踪宣告を受けた人は、たとえ死亡していなくても死亡した取り扱いがされます。

失踪宣告には、2種類あります。

普通失踪と特別失踪(危難失踪)です。

一般的に失踪宣告といった場合、普通失踪を指しています。

生死不明の期間を失踪期間と言います。

普通失踪の失踪期間は、7年です。

普通失踪は、行方不明になってから7年経過後に失踪宣告の申立てをすることができます。

普通失踪は、生死不明7年満了で死亡と見なされます。

②危難が去ってから1年で特別(危難)失踪

行方不明の人が大災害や大事故にあっていることがあります。

大災害や大事故に遭った場合、死亡している可能性が非常に高いものです。

特別失踪(危難失踪)とは、次の事情がある人が対象です。

(1)戦地に行った者

(2)沈没した船舶に乗っていた者

(3)その他死亡の原因となる災難に遭遇した者

死亡している可能性が非常に高いので、失踪期間は短い期間です。

特別(危難) 失踪では、失踪期間が1年です。

特別(危難) 失踪は、危難が去ってから1年経過後に失踪宣告の申立てをすることができます。

特別失踪(危難失踪)では、危難が去ったときに死亡と見なされます。

③失踪届で戸籍に反映

失踪宣告は、家庭裁判所の審判です。

家庭裁判所が失踪宣告の審判をした後、審判が確定しても市区町村役場に連絡されることはありません。

失踪宣告の審判が確定した後に、市区町村役場に届出が必要です。

失踪宣告の審判が確定した後に市区町村役場に提出する届出を失踪届と言います。

死亡したときに提出する死亡届とは別の書類です。

失踪届は、多くの市区町村役場でホームページからダウンロードができます。

失踪届が受理されることで、失踪宣告がされたことが戸籍に記載されます。

失踪宣告が記載された戸籍謄本を提出することで、生死不明の人が法的に死亡した取り扱いがされることを証明できます。

④行方不明のまま認定死亡で死亡届

人が死亡した場合、通常、医師が死亡の確認をします。

海難事故や震災などで死亡は確実であっても遺体を確認できない場合があります。

遺体が見つからない場合、医師が死亡の確認をすることができません。

海難事故や震災などで死亡が確実の場合、行政機関が市町村長に対して死亡の報告をします。

死亡の報告書を添えて、市区町村役場に死亡届を提出することができます。

死亡の報告によって死亡が認定され、戸籍に記載がされます。

行政機関が市町村長に対して死亡の報告をしたら、戸籍上も死亡と扱う制度が認定死亡です。

事実上、死亡の推定が認められます。

⑤単なる行方不明は生存扱い

行方不明の人は、法律上生きている人です。

長期間行方不明になっていても、法律上生きている人のままです。

生きているままだから、生命保険の死亡保険金は支払われません。

単なる行方不明の人は、生命保険の死亡保険金は支払われません。

2失踪宣告で生命保険の請求

①戸籍に反映したら生命保険の請求

失踪宣告の審判が確定した場合、市区町村役場に失踪届を提出します。

認定死亡の場合、市区町村役場に死亡届を提出します。

失踪届や死亡届が受理された場合、戸籍に記載されます。

死亡したことが確認できなくても、死亡と取り扱われます。

失踪宣告や死亡の記載がある戸籍謄本を提出して、生命保険を請求します。

生命保険の死亡保険金は、死亡によって給付されます。

失踪宣告や認定死亡は、死亡と同様の効果があります。

生命保険の死亡保険金は、失踪宣告や認定死亡であっても給付されます。

被保険者の死亡が戸籍に反映したら、生命保険を請求することができます。

②団体信用生命保険で住宅ローン完済

団体信用生命保険とは、住宅ローンの返済に特化した生命保険です。

住宅ローンの債務者が死亡したとき、保険金で住宅ローンが完済になります。

民間の金融機関で住宅ローンを組む場合、団体信用生命保険の加入が条件になっているのがほとんどです。

住宅ローンの債務者が失踪宣告を受けた場合、保険金で住宅ローンが完済になります。

失踪宣告は、死亡と見なす制度だからです。

団体信用生命保険で住宅ローンは完済になります。

③契約が終了していると保険金が支払われない

生命保険の死亡保険金が給付されるのは、契約が継続している場合のみです。

被保険者が死亡と見なされる前に契約が終了している場合、死亡保険金は給付されません。

保険料の納入ができなくても、直ちに契約が終了するわけではありません。

契約内容によって異なるものの、1か月の猶予期間があります。

生命保険の多くは、解約した場合に解約返戻金が支払われるでしょう。

解約返戻金がある保険で猶予期間内に保険料が納入されなかった場合、保険商品によっては自動振替貸付がされます。

自動振替貸付とは、解約返戻金の範囲で保険料を立て替えて契約を維持する制度です。

普通失踪であれば、失踪期間は7年です。

特別(危難) 失踪であれば、失踪期間は1年です。

自動振替貸付を利用できても、デメリットが大きいでしょう。

保険契約を継続させるため、保険料を納入する必要があります。

④普通失踪は災害特約の対象外

普通失踪は、生死不明7年満了で死亡と見なされます。

生死不明の理由は、問われません。

生命保険商品によっては、災害特約がついていることがあります。

災害特約とは、災害で死亡した場合に保険金を増額してもらうことができる特約です。

普通失踪では、災害による死亡とは認められません。

普通失踪は、災害特約の対象外です。

⑤生きていたら保険金は返還

失踪宣告を受けた人は、たとえ死亡していなくても死亡した取り扱いがされます。

失踪宣告がされたけど、実は本人は新天地で元気に生きていたということがあります。

失踪宣告を受けた人が生きていた場合、失踪宣告は取り消されます。

失踪宣告は取り消された場合、受け取った生命保険金は返還しなければなりません。

返す財産は、現に利益を受けている限度においてのみとされています。

手許に現金が残っているのなら、受け取った現金をそのまま返すことができます。

不動産などを購入したのであれば、不動産に形を変えて利益を保有しています。

生活費などで使ったのであれば、その分の預貯金などが減らさずに済んでいるでしょう。

現に利益を受けている限度において、生命保険の保険金を返還しなければなりません。

3生命保険を解約できるのは契約者だけ

①行方不明者が契約していると家族は解約できない

普通失踪であれば、失踪期間は7年です。

特別(危難) 失踪であれば、失踪期間は1年です。

失踪期間経過後に、失踪宣告の申立てができます。

失踪期間経過後に失踪宣告の申立てをしても、失踪宣告がされるとは限りません。

裁判所の調査で、生存が確認されることがあるからです。

失踪宣告がされるまで、保険契約を維持する必要があります。

不確実な死亡保険金をあてにするより、解約返戻金を受け取りたいと考えるかもしれません。

生命保険契約を解約することができるのは、契約者のみです。

契約者以外の人が手続をする場合、契約者から委任状が必要です。

行方不明の人が契約者の場合、契約を解約することはできません。

契約者を差し置いて家族が勝手に解約することはできません。

②不在者財産管理人は解約できる

不在者財産管理人とは、行方不明の人の財産を保存管理する人です。

不在者財産管理人は、家庭裁判所に選任してもらう必要があります。

生命保険契約は、行方不明の人の財産です。

生命保険の解約は、行方不明の人の財産の処分と言えます。

本来、不在者財産管理人は、財産の保存と管理しかできません。

行方不明の人の生命保険を解約するためには、家庭裁判所に権限外行為の許可が必要です。

不在者財産管理人は、家庭裁判所の許可を得て保険契約を解約することができます。

4生命保険契約は調べることができる

①口座の引落記録等で判明

生命保険に入っているはずだが、保険証書がどうしても見つからないこともあるでしょう。

保険証書が見つからなくても、保険契約が無効になることはありません。

保険契約は、保険証書がなくても有効です。

契約の条件を満たせば、保険金は支払われます。

保険証書が見つからなくても、保険会社からの通知が見つかるでしょう。

銀行口座からの引落記録などで、保険会社が判明することも多いものです。

保険会社を探して、相談しましょう。

通常、保険証書には保険の種類や保険の番号が書いてあります。

保険金の支払請求をするとき、保険の種類や番号があると、比較的スムーズに手続できます。

保険の種類や番号が分からない場合、通常より手続に時間がかかります。

②生命保険契約照会制度

保険証書が見つからない場合、どこの保険会社に入っているのかすら分からないこともあるでしょう。

生命保険契約があるかどうか分からない場合、一般社団法人生命保険協会に対して、調査をしてもらうことができます。

調査は、インターネットや郵便で依頼することができます。

調査をしてもらう対象は、一般社団法人生命保険協会に加入している保険会社のみです。

本人が死亡した場合、調査を依頼することができる人は、次のとおりです。

(1)法定相続人

(2)遺言執行者

本人が死亡した場合に必要な書類は、次のとおりです。

(1)調査を依頼する人の本人確認書類

(2)本人と依頼する人の身分関係が分かる戸籍謄本

(3)死亡診断書

調査を依頼するためには、所定の手数料がかかります。

水害や大震災のような災害にあった場合、保険証書が流失したり、焼失することもあります。

自然災害による被害で保険証書を紛失しても、保険契約が無効になることはありません。

多くの方が保険証書を紛失する事態になるので、照会センターが設置されて、特別体制がとられます。

5生死不明の相続人がいる相続を司法書士に依頼するメリット

行方不明の相続人や長期間行方不明で死亡の可能性の高い相続人がいる例は、少なくありません。

相続人が行方不明の場合、相続手続を進められなくなります。

相続手続を進めたいのに、困っている人はたくさんいます。

自分たちで手続しようとして挫折する方も少なくありません。

失踪宣告の申立てなどは、家庭裁判所に手続が必要になります。

通常ではあまり聞かない手続になると、専門家のサポートが必要になるでしょう。

信託銀行などは、高額な手数料で相続手続を代行しています。

被相続人が生前、相続人のためを思って、高額な費用を払っておいても、信託銀行はこのような手間のかかる手続を投げ出して知識のない遺族を困らせます。

知識のない相続人が困らないように高額でも費用を払ってくれたはずなのに、これでは意味がありません。

税金の専門家なども対応できず、困っている遺族はどうしていいか分からないまま途方に暮れてしまいます。

裁判所に提出する書類作成は司法書士の専門分野です。

途方に暮れた相続人をサポートして相続手続を進めることができます。

自分たちでやってみて挫折した方も、信託銀行などから丸投げされた方も、相続手続で不安がある方は司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。

特別失踪(危難失踪)は危難が去ってから1年で申立て

2024-05-27

1失踪宣告には普通失踪と特別(危難) 失踪がある

①普通失踪は生死不明7年で死亡

一般的に失踪宣告といった場合、普通失踪を指しています。

生死不明の期間を失踪期間と言います。

普通失踪では、失踪期間が7年必要です。

生死不明のまま7年経過した場合に、自動的に死亡と見なされるわけではありません。

家庭裁判所が失踪宣告したときに、死亡と見なされます。

②特別失踪(危難失踪)は事故や災害で生死不明

行方不明の人が大災害や大事故にあっていることがあります。

大災害や大事故に遭った場合、死亡している可能性が非常に高いものです。

特別失踪(危難失踪)とは、次の事情がある人が対象です。

(1)戦地に行った者

(2)沈没した船舶に乗っていた者

(3)その他死亡の原因となる災難に遭遇した者

死亡している可能性が非常に高いので、失踪期間は短い期間です。

特別 (危難) 失踪では、失踪期間が1年です。

生死不明のまま1年経過した場合に、自動的に死亡と見なされるわけではありません。

家庭裁判所が失踪宣告したときに、死亡と見なされます。

③失踪宣告をしなかったら行方不明のまま

相当長期間、行方不明になっている場合、死亡している可能性が高い場合があります。

条件を満たした場合、死亡の取り扱いをすることができます。

失踪宣告とは、行方不明の人が死亡した取り扱いとするための手続です。

失踪宣告がされたら、たとえ死亡していなくても死亡した取り扱いをします。

長期間行方不明であっても失踪宣告をしなかったら、単に行方不明のままです。

相当長期間行方不明であっても死亡と扱うことはできません。

生きている扱いがされるから、行方不明の人の財産は行方不明の人のものです。

他の人が勝手に処分することはできません。

④残された家族のため失踪宣告

行方不明が長期化した場合、家族が困ります。

家族であっても、行方不明の人の財産を処分することができません。

行方不明者の配偶者は、再婚することができません。

残された家族のために、行方不明者を死亡したものと扱う制度が失踪宣告の制度です。

失踪宣告がされると、死亡した取り扱いをします。

失踪宣告がされた人に、相続が発生します。

行方不明者の配偶者は死別した扱いになるから、再婚をすることができます。

2特別 (危難) 失踪は危難が去ってから1年で申立て

①特別 (危難) 失踪になる危難とは

大災害や大事故に遭った場合、死亡している可能性が非常に高いものです。

死亡している可能性が非常に高い危難が特別失踪(危難失踪)になる危難です。

民法には、戦地に臨んだ者、沈没した船舶の中に在った者その他死亡の原因となるべき危難に遭遇した者と例示されています。

飛行機やヘリコプターの墜落事故に遭遇した場合、死亡の原因となるべき危難と言えます。

大災害にあった人は、死亡の原因となるべき危難に遭遇した者と言えるでしょう。

例えば、大地震や水害、土砂崩れ、雪崩などです。

大災害でなくても、登山中に行方不明になることがあります。

山の天候は、急変しやすく予想が難しいでしょう。

行方不明になった人の登山経験や登山技術から充分な装備を携行していないことがあります。

登山ルートや標高によっては、凍死する危険があるでしょう。

死亡の原因となるべき危難があったと認められることがあります。

特別 (危難) 失踪になる危難とは、死亡している可能性が非常に高い危難です。

②失踪宣告は利害関係人が申立て

失踪宣告とは、行方不明の人が死亡した取り扱いとするための手続です。

人を死亡と見なす手続だから、非常に強い効果があります。

自動的に、失踪宣告がされることはありません。

失踪宣告の申立てをすることができる人は、限定されています。

失踪宣告の申立てができるのは、利害関係人だけです。

法律には利害関係人と書いてありますが、法律上の利害関係がある人と解釈されています。

相当長期間行方不明であっても、家族が行方不明の人の帰りを待っていることがあります。

失踪宣告を受けた人は、死亡と扱われます。

帰ってくると信じて待っている家族にとって、死亡扱いを強制するのは酷でしょう。

検察官は、失踪宣告の申立て人にはなれません。

失踪宣告は、利害関係人からの申立てが必要です。

③1年経過後に失踪宣告の申立て

相当長期間行方不明の場合、家族の気持ちに整理をつけるために失踪宣告の申立てをすることができます。

家族の気持ちの整理がつかないと、失踪宣告の申立てはできないでしょう。

危難が去ってから1年経過以上経過した後であれば、失踪宣告の申立てをすることができます。

1年以上経過した後さらに長期間経過してから、失踪宣告の申立てをすることができます。

④死亡と見なされる日は危難が去ったとき

特別失踪(危難失踪)は、大災害や大事故に遭ったときの失踪宣告です。

大災害や大事故に遭った場合、非常に死亡の可能性が高いものです。

特別失踪(危難失踪)では、危難が去ったときに死亡と見なされます。

危難が去った日が失踪宣告と受けた人の死亡日です。

現実的には、大災害や大事故に遭ったときは危難が去ったときと言えるでしょう。

失踪宣告の申立ては、危難が去ってから1年以上経過してから提出します。

1年経過したときに死亡と見なされるわけではありません。

1年以上経過してから申立てをするけど、死亡と見なされる日は危難が去った日です。

⑤死亡と見なされる日に相続が開始する

失踪宣告がされると、死亡した取り扱いをします。

失踪宣告がされた人に、相続が発生します。

死亡と見なされる日で相続が発生します。

家族の気持ちの整理がつかないと、失踪宣告の申立てをするまでに長期間経過していることがあります。

危難が去ってから失踪宣告を受けるまでの前後で家族が死亡することがあります。

死亡と見なされる日の前に相続人になるはずだった人が死亡した場合、代襲相続が発生します。

死亡と見なされる日の後に相続人が死亡した場合、数次相続が発生します。

相続が発生した場合、被相続人のものは相続人全員の共有財産になります。

相続財産の分け方は、相続人全員の合意で決定します。

だれが相続人になるのかよく確認することが大切です。

3認定死亡で死亡と見なされる

①行政機関の報告に基づいて認定死亡

人が死亡した場合、通常、医師が死亡の確認をします。

海難事故や震災などで死亡は確実であっても遺体を確認できない場合があります。

遺体が見つからない場合、医師が死亡の確認をすることができません。

海難事故や震災などで死亡が確実の場合、行政機関が市町村長に対して死亡の報告をします。

死亡の報告書を添えて、市区町村役場に死亡届を提出することができます。

死亡の報告によって死亡が認定され、戸籍に記載がされます。

行政機関による死亡の報告に基づいて、戸籍上も死亡と扱う制度が認定死亡です。

事実上、死亡の推定が認められます。

認定死亡により、相続が開始します。

行政機関による報告に基づいて、死亡が認定されます。

②認定死亡がされたときは相続が開始する

認定死亡の場合、死亡が確実であっても死亡日が分からないことがほとんどです。

推定令和○年○月○日死亡

推定令和○年○月○日頃死亡

令和○年○月○日から同月○日の間死亡

年月日不詳

戸籍を確認した場合に、上記のような記載がされている場合があります。

このような記載であっても、相続が開始しますから相続手続をすることができます。

相続手続をする場合も、戸籍のとおり記載すれば支障はありません。

4生死不明の相続人がいる相続を司法書士に依頼するメリット

相続が発生した後、相続手続を進めたいのに行方不明の相続人や長期間行方不明で死亡の可能性の高い相続人がいて困っている人はたくさんいます。

自分たちで手続しようとして、挫折する方も少なくありません。

失踪宣告の申立てなどは、家庭裁判所に対して手続が必要になります。

通常ではあまり聞かない手続になると、専門家のサポートが必要になることが多いでしょう。

信託銀行などは、高額な手数料で相続手続を代行しています。

被相続人が生前、相続人のためを思って、高額な費用を払っておいても、信託銀行はこのような手間のかかる手続を投げ出して知識のない遺族を困らせます。

知識のない相続人が困らないように高額でも費用を払ってくれたはずなのに、これでは意味がありません。

税金の専門家なども対応できず、困っている遺族はどうしていいか分からないまま途方に暮れてしまいます。

裁判所に提出する書類作成は司法書士の専門分野です。

途方に暮れた相続人をサポートして相続手続を進めることができます。

自分たちでやってみて挫折した方も、信託銀行などから丸投げされた方も、相続手続で不安がある方は司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。

成年後見人であることを証明する方法

2024-05-26

1成年後見人は認知症の人をサポートする

①成年後見人の権限は財産管理と身上保護

認知症、精神障害や知的障害などになると、ひとりで判断することが不安になることがあります。

判断能力が低下すると、物事の良しあしを適切に判断することができなくなります。

記憶があいまいになる人もいるでしょう。

ひとりで決めることが心細くなった人をサポートする制度が成年後見の制度です。

成年後見の制度を利用して、本人の思いを分かち合い一緒に考えお手伝いをします。

成年後見人は、認知症などの人をサポートする人です。

成年後見人は、財産管理と身上保護の両面でサポートします。

財産管理とは、不動産や預貯金の管理、遺産分割協議などの手続をすることです。

身上保護とは、介護・福祉サービスの利用契約、施設入所契約などの手続をすることです。

②成年後見人は本人の代わりに契約をする

ひとりで判断することが不安な状態になると、自分に不利益になることが分からなくなります。

不利な契約をしてしまったり、不必要な契約をしてしまうことがあります。

そのような状態をつけこんでくる悪質な業者等の被害を受けてしまうかもしれません。

成年後見人は、本人の代わりに契約などの内容を判断します。

成年後見人が必要であると判断したら、本人の代わりに契約などの法律行為をします。

成年後見人には、大きな権限が与えられると言えます。

③成年後見人の権限は公的書類で証明

成年後見人は、認知症などの人をサポートする人です。

ひとりで判断できない人の代わりに、契約などの内容を判断します。

本人の代わりに契約などの法律行為をします。

契約の相手方から見ると、本当に権限があるのか心配になるでしょう。

成年後見人が認知症などの人の代わりに事務を行う場合、公的書類の提出を求められます。

成年後見人の権限は、公的書類で証明します。

2成年後見人であることを証明する方法

①後見開始の審判書謄本と審判確定証明書を提示する

成年後見人は、家庭裁判所が選任します。

成年後見制度を利用するためには、成年後見開始の申立てをして選任の審判がされる必要があります。

審判がされたら、審判書謄本が届きます。

審判の内容は、申立人、成年後見人に文書で告知されます。

審判書謄本を見れば、成年後見人に選任されたことが分かります。

成年後見開始の審判がされた場合、不服申し立てをすることができます。

成年後見開始の審判に対する不服申し立ては、即時抗告と言います。

即時抗告の期間は、審判書謄本を受け取ってから2週間です。

審判書謄本を受け取ってから2週間以内に即時抗告の申立てがなければ、審判は確定します。

成年後見人であることは、審判書を見ると分かります。

審判書謄本だけでは、審判が確定したことは分かりません。

審判が確定したことは、確定証明書で証明することができます。

成年後見人の権限があることは、審判書謄本と確定証明書で証明できます。

②成年後見登記事項証明書を提示する

成年後見開始の審判が確定したら、家庭裁判所から登記が嘱託されます。

成年後見制度を利用している場合、登記がされます。

成年後見登記事項証明書は、登記された内容の証明書です。

成年後見登記事項証明書には、次の事項が記載されています。

(1)法定後見の種類

(2)成年後見人の氏名、住所

(3)成年被後見人の氏名、本籍、住所

家庭裁判所から登記嘱託がされた場合、登記が完了するまでに2週間から1か月程度かかります。

登記手続中は、成年後見登記事項証明書を請求することができません。

成年後見人であることは、成年後見登記事項証明書を見ると分かります。

成年後見人の権限があることは、成年後見登記事項証明書で証明できます。

③成年後見は戸籍謄本に記載されない

成年後見制度を利用している場合、登記がされます。

成年後見を利用しても、戸籍に記載されることはありません。

戸籍謄本を取得しても、成年後見人であることは証明できません。

3成年後見人であることの証明書を取得する方法

①審判書謄本は自動で届く

成年後見開始の審判がされたら、審判書謄本が届きます。

申立人、本人、成年後見人に審判の内容を告知するためです。

成年後見開始の申立てをしたら、手続をしなくても審判書謄本が送られてきます。

必要であれば、審判書謄本を追加で発行してもらうことができます。

審判書謄本の交付請求先は、審判をした家庭裁判所です。

手数料は、150円です。

手数料は、申請書に収入印紙を貼付する方法で納入します。

収入印紙は貼り付けるだけで、消印を押しません。

収入印紙に消印をするのは、家庭裁判所の人だからです。

②確定証明書は申請が必要

審判書謄本だけでは、審判が確定したことは分かりません。

審判が確定したことは、確定証明書で証明することができます。

審判書謄本は、特別な手続をしなくても自動で届きます。

確定証明書は、自動で届けられることはありません。

確定証明書を取得するためには、申請が必要です。

確定証明書の交付請求先は、審判をした家庭裁判所です。

手数料は、150円です。

手数料は、申請書に収入印紙を貼付する方法で納入します。

収入印紙は貼り付けるだけで、消印を押しません。

収入印紙に消印をするのは、家庭裁判所の人だからです。

③成年後見登記事項証明書の取得方法

成年後見制度を利用している場合、登記がされます。

後見登記がされたら、成年後見登記事項証明書を請求することができます。

成年後見登記事項証明書は、法務局の窓口に出向いて請求する方法と郵送で請求する方法があります。

法務局の窓口に出向いて請求する場合、すべての法務局で対応しているわけではありません。

東京都の窓口請求先は、東京法務局後見登録課のみです。

東京都以外の窓口請求先は、各法務局・地方法務局の本局の戸籍課だけです。

愛知県であれば、窓口請求先は名古屋法務局本局の戸籍課だけです。

法務局の支局や出張所が近所にあっても、手続できません。

名古屋市内であっても、熱田出張所や名東出張所では手続することができません。

住所や本籍がどこにあっても、上記窓口に出向けば手続できます。

法務局・地方法務局に出向くのが難しい人は、郵送請求がいいでしょう。

郵送請求は、東京法務局後見登録課のみの取り扱いです。

名古屋法務局本局の戸籍課に郵送しても、受け付けてもらえません。

不動産や会社などの登記簿謄本は、だれでも取得することができます。

成年後見登記事項証明書は、請求できる人が制限されています。

成年後見登記事項証明書は、重要な個人情報だからです。

成年後見登記事項証明書を請求できるのは、次の人です。

(1)成年被後見人本人

(2)4親等内の親族

(3)成年後見人

窓口請求する場合、必要なものは次のとおりです。

(1)登記事項証明申請書

(2)本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカード等)

(3)認印

(4)親族関係を確認できる戸籍謄本(発行日から3か月以内のもの)

(5)委任状(代理人が請求する場合)

会社や法人が代理人になる場合、代表者からの委任状が必要になります。

代表者の資格を証明するために、3か月以内の登記事項証明書が必要になります。

登記事項証明申請書は、窓口備え付けの申請書を使うことができます。

ホームページからダウンロードした申請書を使うことができます。

(2)本人確認書類は原本を窓口で提示します。

本人確認書類は、次の書類です。

・運転免許証

・マイナンバーカード

・パスポート

証明書の発行手数料は、収入印紙で納入します。

収入印紙は、法務局、郵便局の郵便窓口で購入することができます。

4成年後見人であることの証明書の有効期限

①証明書自体に有効期限はない

成年後見人であることを証明する方法は、2通りあります。

審判書謄本と確定証明書を提示する方法と成年後見登記事項証明書を提示する方法です。

審判書謄本は、審判の内容を当事者に告知するための書類です。

審判書謄本自体に、有効期限令和〇年〇月〇日と記載されてはいません。

確定証明書は、審判の内容が確定したことを証明する書類です。

確定証明書に、有効期限令和〇年〇月〇日と記載されてはいません。

成年後見登記事項証明書は、登記された内容を証明する書類です。

成年後見登記事項証明書自体に、有効期限令和〇年〇月〇日と記載されてはいません。

成年後見人であることの証明書自体に、有効期限はありません。

②不動産登記では3か月以内の証明書

成年後見人は、財産管理の面で認知症の人をサポートします。

財産管理のひとつに、認知症の人が相続人になるときの相続手続があります。

認知症の人が相続人として不動産を相続する場合、成年後見人が代わりに手続をします。

成年後見人が認知症の人の代わりに相続登記をする場合、成年後見人であることを証明しなければなりません。

法務局に対して成年後見人であることを証明する書類を提出する場合、有効期限が決められています。

成年後見人が不動産登記をする場合、発行後3か月以内の書類を提出しなければなりません。

③年金事務所は3か月以内の証明書

成年後見人にサポートをしてもらっている人は、判断能力が低下している人です。

年金に関する通知書を受け取っても、理解することが難しいでしょう。

成年後見人は、本人をサポートするため通知書の送付を受けることができます。

成年後見人が認知症の人の代わりに通知書を受け取りたい場合、年金事務所に年金受給権者通知書等送付先変更申出書を提出します。

年金事務所に対して成年後見人であることを証明する書類を提出する場合、有効期限が決められています。

成年後見人が年金受給権者通知書等送付先変更申出書を提出する場合、発行後6か月以内の書類を提出しなければなりません。

④手続先が独自ルールで有効期限を決めている

成年後見人は、本人のサポートのため幅広い権限が認められています。

サポートが必要になる手続先で、成年後見人であることの証明を求められます。

手続先は、独自ルールで有効期限を決めています。

一度証明書を提出しても、手続の度に必要にあることが多いでしょう。

手続先が独自ルールを確認して、手続を進める必要があります。

5成年後見開始の申立てを司法書士に依頼するメリット

認知症や精神障害や知的障害などで、判断能力が低下すると、物事の良しあしが適切に判断することができなくなります。

記憶があいまいになる人もいるでしょう。

ひとりで判断することが不安になったり心細くなったりしてしまう人をサポートする制度が成年後見の制度です。

本人自身も不安になりますし、家族も不安になります。

身のまわりの不自由を補うために、身近な家族がお世話をすることが多くなるでしょう。

成年後見の申立ては家庭裁判所へ手続が必要です。

身のまわりのお世話をしている家族が本人の判断能力の低下に気づくことが多いです。

身のまわりのお世話をしながら、たくさんの書類を用意して煩雑な手続をするのは負担が大きいでしょう。

司法書士は裁判所に提出する書類作成もサポートしております。

成年後見開始の申立てが必要なのに忙しくて手続をすすめられない方は、司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。

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