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配偶者居住権を遺贈するため遺言書作成

2024-09-16

1配偶者居住権で自宅に住み続ける条件

条件①配偶者であること

配偶者居住権とは、被相続人が所有していた家に住んでいた配偶者が一定期間無条件かつ無償で住み続けることができる権利です。

相続が発生してから配偶者が住む場所を失うことがないように、保護するために作られた権利です。

配偶者居住権を取得する配偶者は、法律上の配偶者のみです。

事実婚配偶者や内縁の配偶者は、配偶者居住権を取得することはできません。

法律上の配偶者でも、相続廃除された人や相続欠格になった人は配偶者居住権を取得することができません。

相続廃除された人や相続欠格になった人は、保護する必要がないからです。

配偶者居住権を取得する条件の1つ目は、法律上の配偶者であることです。

条件②被相続人の所有していた建物であること

配偶者居住権を設定する建物は、被相続人の所有していた建物でなければなりません。

被相続人の単独所有であるか、被相続人と配偶者の共有の場合のみ、配偶者居住権の対象にすることができます。

被相続人と配偶者以外の人と共有建物の場合、配偶者居住権は成立しません。

自宅が借家の場合、配偶者居住権は取得できません。

配偶者居住権を取得する条件の2つ目は、被相続人の所有していた建物であることです。

条件③相続開始時に無償で居住していたこと

配偶者居住権を設定するためには、配偶者が相続開始時に無償で居住していた事が必要です。

居住していたとは、生活の本拠にしていたことを指します。

自宅以外の別荘は、配偶者居住権の対象にはなりません。

生活の本拠とは、言えないからです。

配偶者が介護施設などに入所している場合、生活の本拠はその介護施設と言えるでしょう。

入院やショートステイなどで一時的に自宅を離れていたに過ぎない場合、自宅が生活の本拠と言えます。

相続が発生した時に生活の本拠の場合、配偶者居住権の対象にすることができます。

配偶者居住権を取得する条件の3つ目は、配偶者が相続開始時に無償で居住していたことです。

条件④配偶者居住権の設定をしたこと

配偶者短期居住権と違い、配偶者居住権は設定が必要です。

配偶者居住権は、要件を満たしたら自動的に権利があるというものではありません。

配偶者居住権を設定する方法は、次の4つです。

(1)遺贈

(2)死因贈与

(3)遺産分割協議

(4)遺産分割調停

上記のうち遺贈と死因贈与は、被相続人が生前に対策することができます。

相続人間のトラブル防止の観点から、生前に対策することがおすすめです。

配偶者居住権を取得する条件の4つ目は、配偶者居住権の設定をしたことです。

2配偶者居住権を遺贈するため遺言書作成

①配偶者居住権を設定するときの遺言書の書き方

記載例

遺言者△△は次のとおり、遺言をする。

1遺言者は、遺言者の所有する次の建物の配偶者居住権を遺言者の配偶者〇〇に遺贈する。

所在    名古屋市中区〇〇丁目〇〇番地〇〇

家屋番号 〇番〇

種類    居宅

構造    木造瓦葺

床面積  〇〇・〇〇平方メートル

2遺言者は、遺言者の所有する次の建物の負担付所有権を遺言者の長男◇◇に相続させる。

所在    名古屋市中区〇〇丁目〇〇番地〇〇

家屋番号 〇番〇

種類    居宅

構造    木造瓦葺

床面積  〇〇・〇〇平方メートル

3遺言者は、本遺言の遺言執行者として、□□を指定する。

   令和〇年〇月〇日

名古屋市中区〇〇丁目〇〇番地〇

  遺言者 △△  印

②遺言書には遺贈すると書く

配偶者居住権は、遺贈によって設定することができます。

遺贈とは、遺言書で相続人や相続人以外の人に財産を受け継いでもらうことです。

法律上の配偶者は、必ず、相続人になります。

「相続人◇◇に◇◇を相続させる」

相続人に財産や権利を受け継いでもらう場合、上記の書き方が一般的です。

配偶者居住権について書く場合、「配偶者〇〇に配偶者居住権を相続させる」と書いてしまいそうです。

「配偶者〇〇に建物〇〇の配偶者居住権を遺贈する」と書きます。

配偶者居住権は、法律上、遺贈されたとき取得すると決められているからです。

③「配偶者居住権を相続させる」でも登記ができる

遺言書の記載が「配偶者〇〇に配偶者居住権を相続させる」であった場合、遺言は無効にはなりません。

「配偶者〇〇に配偶者居住権を相続させる」の記載は、特段の事情がない限り、遺贈の趣旨である考えられます。

相続させると書いた遺言書で、配偶者居住権の設定登記を申請することができます。

遺言書の書き方は、厳格なルールがあります。

実際に遺言書を作成するときは、専門家のサポートを受ける方がいいでしょう。

確実で紛失等の心配のない公正証書遺言がおすすめです。

3配偶者居住権を設定するメリット

メリット①配偶者が自宅に住み続けることができる

相続財産の大部分が自宅不動産であるケースは、少なくありません。

相続人間でトラブルが起きると、自宅を売却して遺産分割をすることになるでしょう。

遺言書で配偶者居住権を遺贈しておくと、引き続き自宅で住み続けることができます。

メリット②金融資産も確保できる

配偶者が自宅の所有権を相続する場合、預貯金などの金融資産を受け継ぐことが難しくなります。

配偶者居住権を設定した場合、自宅は配偶者居住権と負担付所有権に分けられます。

配偶者居住権は、自宅そのものよりも評価額が低くなります。

配偶者が預貯金などの金融資産をより多く受け継ぐことができます。

メリット③配偶者居住権は第三者に主張できる

配偶者居住権を設定した場合、配偶者居住権設定登記をすることができます。

配偶者居住権設定登記があれば、第三者にも配偶者居住権を主張できます。

例えば、負担付所有権を取得した相続人が建物を売却した場合、建物の買主は建物を使いたいと考えるでしょう。

建物の買主が配偶者に対して、建物の明渡を請求することが考えられます。

あらかじめ配偶者居住権設定登記がある場合、配偶者は建物の明渡請求を拒むことができます。

建物の明渡を拒むことができることは、配偶者居住権の登記がしてあることの重要な効果です。

4配偶者居住権のデメリット

デメリット①配偶者居住権は配偶者だけのもの

配偶者居住権は、財産的価値があります。

配偶者居住権は、だれかに譲渡することも売却することもできません。

配偶者居住権は配偶者だけのものだからです。

配偶者は、勝手に第三者に使用させることはできません。

負担付所有権者の許可を得ずに建物を賃貸した場合、配偶者居住権消滅請求がされるリスクがあります。

配偶者居住権消滅請求がされた場合、配偶者は自宅から追い出されてしまいます。

配偶者が介護施設などに入所して自宅に住むことがなくなっても、配偶者居住権は存続します。

配偶者居住権は、配偶者だけのものです。

デメリット②建物の売却が難しい

配偶者は、配偶者居住権を第三者に売却することはできません。

負担付所有権者は、法律上は、配偶者の許可なく建物を売却することができます。

配偶者居住権の設定登記がされている建物を買い取っても、配偶者に明渡請求ができません。

配偶者居住権の設定登記がある場合、配偶者は権利主張をすることができるからです。

買い取っても、使うことができない建物を買う人はほとんどいないでしょう。

配偶者が介護施設などに入所して自宅に住むことがなくなった場合でも、配偶者居住権は消滅しません。

負担付所有権者と協力して建物を売却する場合、まず、配偶者居住権を外す必要があります。

配偶者居住権は、第三者に売却や譲渡ができません。

配偶者が負担付所有権者に対して、配偶者居住権を放棄することになります。

配偶者居住権を放棄するためには、配偶者が物事のメリットデメリットを充分に判断できる必要があります。

配偶者が物事のメリットデメリットを充分に判断できる間しか、配偶者居住権を放棄することはできないという意味です。

配偶者が認知症になった場合、自分で配偶者居住権を放棄することはできません。

配偶者居住権を放棄したら、負担付所有権は負担のない所有権になります。

配偶者居住権は、財産的価値があります。

客観的に見ると、財産的価値が移転したと言えます。

財産的価値の移転に対しては、多くの場合、高額な贈与税が課されます。

配偶sh亜居住権を設定した場合、建物の売却が難しくなります。

デメリット③固定資産税などの負担がある

固定資産税は、原則として、所有者が納税義務者です。

配偶者居住権を取得した配偶者は、建物の必要費を負担する必要があります。

負担付所有権を取得した相続人は、配偶者に固定資産税などの必要費を請求することができます。

配偶者居住権者は、固定資産税を負担する必要があります。

デメリット④増改築をするために所有者の同意が必要

配偶者居住権は、建物に住む権利です。

住むために必要な修繕をする権利はありますが、増改築をする権利はありません。

修繕のレベルを超える増改築をするためには、負担付所有権者の同意が必要です。

5配偶者居住権の遺贈を司法書士に依頼するメリット

配偶者居住権は、期間を定めることもできますが、原則として、配偶者の死亡まで存続します。

配偶者が死亡したら、配偶者居住権は消滅します。

配偶者の保有していた財産的価値が消滅することから、配偶者が死亡したときの相続税を減らすことができる点に注目が集まっています。

デメリットについては、あまり考慮されていません。

配偶者居住権は、配偶者だけの権利です。

配偶者居住権の譲渡ができません。

配偶者居住権の設定された建物は、取引されることは通常考えられません。

配偶者が介護施設などに入所したために自宅に住むことがなくなっても、配偶者居住権は消滅しません。

配偶者が自宅に住まなくなったため、自宅を売却しようとする場合、配偶者居住権があるため買い手が見つかりません。

配偶者居住権を外すためには、配偶者が配偶者居住権を放棄する必要があります。

配偶者居住権を放棄するためには、物事のメリットデメリットを判断できる能力が必要です。

将来、自宅を売却する可能性があるのなら、配偶者居住権を設定するのは慎重に判断するべきでしょう。

配偶者居住権を設定するのなら、認知症対策はセットで考えることが重要です。

高齢化社会になって、多くの方は長生きになりました。

長生きになったことは、認知症になるリスクが高くなったということです。

認知症対策がとても重要になっています。

配偶者居住権は、遺言書を適切に書くことで遺贈することができます。

遺言書を書く前に、配偶者居住権を遺贈することが本当に適切なのかを考えなければなりません。

配偶者居住権を設定するのがいいのか、別の方法をとった方がいいか、司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。

葬儀費用を遺産分割協議

2024-09-11

1葬儀費用は相続財産ではない

①葬儀費用は相続発生後の債務

相続が発生すると、原則として、被相続人の財産は相続人が相続します。

相続人が相続する財産が、相続財産です。

相続財産には、プラスの財産とマイナスの財産があります。

どちらも、相続財産です。

葬儀費用は、相続財産ではありません。

被相続人が生前に葬儀費用を負担することはないからです。

葬儀費用は、被相続人から引き継ぐ費用ではありません。

葬儀費用は相続発生後に、負担する債務です。

②香典は相続発生後の贈与

葬式の弔問客の意識としては、香典は被相続人に手向ける気持ちかもしれません。

被相続人は死亡しているので、香典を受け取ることはできません。

香典は、相続財産ではありません。

被相続人が生前に香典を受け取ることはないからです。

香典は、被相続人から引き継ぐ財産ではありません。

香典は、喪主に対する贈与です。

同様に、香典返しも喪主から弔問客への贈与です。

葬儀費用、香典、香典返しは、相続財産ではありません。

香典は、相続発生後の贈与です。

③葬儀費用の負担者は明確には決まっていない

葬儀費用は、葬式の契約をした人が支払います。

だれが葬式の契約をするかについて、法律の定めはありません。

だれが葬儀費用を支払うかについて、明確な定めはありません。

裁判所や学者は、次のような意見があります。

(1)相続人全員の負担にする説

(2)喪主が負担する説

(3)相続財産から負担する説

(4)地域の慣習で決める説

被相続人や相続人のそれぞれの事情があるから、一概に決められません。

葬儀費用の負担者は、明確には決まっていません。

④被相続人の口座は凍結される

被相続人の預貯金を払い戻して支払いをすればいいと考えるかもしれません。

金融機関は口座の持ち主の死亡を確認した場合、口座を凍結します。

口座が凍結された場合、原則として、引出しや解約はできなくなります。

被相続人の口座は、凍結されます。

2葬儀費用は遺産分割協議で合意できる

①葬儀費用を負担する人を合意する

葬儀費用、香典、香典返しは、相続財産ではありません。

相続財産でない財産であっても、遺産分割協議の話し合いの対象にすることができます。

相続財産ではないから、法定相続分とは別の話です。

相続人全員でよく話し合ってみんなが合意できる結論を出すのが大切です。

葬儀費用の負担で話し合いがまとまらない場合、他の財産の分け方の合意も難しくなりがちです。

相続人全員の合意で、葬儀費用を負担する人を決めることができます。

②立替払いをした人は費用の記録と領収書を保管

実際のところ、特定の相続人が葬儀費用を立て替えているでしょう。

葬儀費用を立て替えた人は、費用の記録と領収書を保管しておきましょう。

僧侶へのお布施や遠方の弔問客等へのお車代など、領収書が出ないときは相手先と金額を記録しておきます。

同様に、受け取った香典についても、記録を付けておくといいでしょう。

疑心暗鬼になると、トラブルになりやすいからです。

葬儀費用を立替払いした人は、費用の記録と領収書を保管することが重要です。

③葬儀費用の範囲を合意する

葬儀費用といった場合、どの範囲の費用が葬儀費用なのかは人によって異なります。

例えば、次のような費用があります。

(1)死亡診断書の発行手数料

(2)葬儀会社へ支払う費用

(3)通夜や葬式の後の飲食代

(4)初七日や四十九日法要の費用

(5)香典返しの費用

(6)僧侶へのお布施

(7)遠方の弔問客等へのお車代

(8)お墓の購入費用

(9)納骨の費用

葬儀費用負担で話し合う場合、どのような費用をだれが負担するか合意するとトラブル防止に役立ちます。

④遺産分割協議は債務不履行で解除できない

相続財産の分け方について、相続人全員で合意したら、確定して話し合いは終了になります。

相続人全員で合意して、相続財産の分け方が確定します。

その後に葬儀費用を支払わなくても、遺産分割協議のやり直しはできません。

一部の相続人が遺産分割協議を法定解除をすることはできません。

法定解除とは、契約などで義務を負担する約束をしたのに履行されない場合に相手方が契約を一方的に解除することです。

遺産分割協議で約束したことを履行しない場合、他の相続人は遺産分割協議を解除をすることはできません。

遺産分割協議のやり直しは、相続人全員の合意が必要です。

相続人全員の合意がある場合、遺産分割協議の合意解除ができます。

遺産分割協議は、債務不履行で解除ができません。

3葬儀費用を遺産分割協議書に書く方法

①特定の相続人が負担する記載例

記載例

第○条

相続人全員は、被相続人にかかる葬儀費用合計金300万円について、相続人○○○○が負担することを合意する。

遺産分割協議書には、葬儀費用の具体的な金額を記載することをおすすめします。

葬儀費用の金額について相続人の合意がある場合、トラブル防止に役立つからです。

葬儀費用、香典、香典返しは、相続財産ではありません。

遺産分割協議で、葬儀費用などの負担について合意をすることができます。

相続人全員の合意内容を取りまとめた書面が遺産分割協議書です。

相続財産の分け方以外の項目について相続人全員で合意した場合、遺産分割協議書に盛り込むことができます。

相続財産の分け方以外の項目について記載してある場合であっても、遺産分割協議が無効になることはありません。

②複数の相続人が分担する記載例

記載例

第○条

相続人全員は、被相続人にかかる葬儀費用合計金300万円について、相続人○○○○が金200万円、相続人□□□□が金100万円負担することを合意する。

相続人□□□□は相続人○○○○に対して、令和○年○月○日までに、葬儀費用負担金100万円を振り込みの方法により支払う。

振込手数料は、相続人□□□□の負担とする。

喪主は、葬式を主宰します。

多くの弔問客の対応など、気苦労が多い役目でしょう。

葬式で大変な思いをしたうえに葬儀費用をすべて負担するとなると、不満に思うかもしれません。

複数の相続人で分担するように合意することができます。

③預金等で調整する記載例

記載例

第○条

相続財産中、次の被相続人名義の財産については、相続人○○○○が相続する。

金融機関名 ○○銀行 ○○支店

預金種別  普通預金

口座番号  ○○○○○○○

第○条

相続人全員は、被相続人にかかる葬儀費用合計金300万円について、相続人○○○○が負担することを合意する。

遺産分割協議とは、相続財産の分け方についての相続人全員による話し合いです。

相続人全員が合意できるのであれば、どのような分け方をすることもできます。

相続発生後に被相続人名義の口座は、凍結されます。

葬儀費用は、一部の相続人が立替ているでしょう。

葬儀費用を立て替えている相続人に、預貯金を多く相続してもらう合意をすることができます。

実質的に、相続財産から支出することができます。

4遺産分割協議がまとまらないときは家庭裁判所

①遺産分割調停で合意

相続人で合意ができない場合、家庭裁判所の助力を得て合意を目指します。

遺産分割調停は、家庭裁判所の調停委員を交えた相続人の話し合いです。

調停委員の助言があるとはいえ相続人同士の話し合いだから、相続財産以外のことについて話し合いができます。

遺産分割調停では、相続財産以外の葬儀費用についても話し合いことができます。

相続人だけで話し合いをした場合、感情的になって収拾がつかなくなるかもしれません。

家庭裁判所の調停委員を交えると、ある程度冷静になることができます。

第三者を交えることで、相続人全員が折り合いをつけることができるかもしれません。

②遺産分割審判は葬儀費用が対象外

遺産分割調停で合意ができない場合、遺産分割審判に移ります。

遺産分割審判は、相続人の話し合いではありません。

裁判官が遺産分割の内容を決定します。

遺産分割審判は、相続財産の分け方についての決定です。

遺産分割の内容を決定するだけだから、葬儀費用については決定されません。

葬儀費用は、相続財産ではないからです。

③民事訴訟

遺産分割審判では、相続財産の分け方が決定されます。

葬儀費用負担については決定されないから、遺産分割審判では解決しません。

葬儀費用負担について合意できない場合、あらためて民事訴訟をすることになります。

5遺産分割協議書作成を司法書士に依頼するメリット

遺産分割協議書は遺産の分け方について、相続人全員による合意を取りまとめた文書です。

前提として、話し合いによる合意ができていなければ、文書にできません。

内容よりもとにかく文書さえあればいいという意識の低い人がいるのも事実です。

遺言書がなければ、遺産分割協議書は必要になると言って差し支えありません。

悪いようにしないからとにかく印鑑を押せとか、相続税の申告期限をちらつかせて押印を迫るとか、他に財産はないからと言われてトラブルになることも多いです。

有効な話し合いによる合意があって、有効な合意を文書に取りまとめるから、トラブルを防ぐことができるのです。

相続財産を分け方について相続人全員で合意することは原則としてやり直しができません。

司法書士は合意を確認して、書類を作成しています。

申告期限のためにとにかく書類だけ作るなど絶対にやめましょう。

適切な遺産分割協議書を作り、家族のトラブルを避けたい方は、司法書士などの専門家にサポートを依頼することをおすすめします。

孫に農地を相続させたい

2024-09-09

1農地の名義変更に農地法の許可が必要

①農地の権利移動で農地法3条の許可が必要

農地は、食糧生産のために重要な役割を担っています。

勝手に手放したり勝手に農業をやめてしまうと、国の食糧生産に大きな影響があります。

農地の権利移動には、農地法第3条の許可が必要です。

許可が必要になる権利移動は、売買、贈与、賃貸などです。

農地法第3条の許可の要件は、次のとおりです。

(1) 全部効率利用要件

全部効率利用要件とは、農地の全部をつかって効率よく農業をすることです。

農地を耕作するのに充分な労働力が確保されているか技術があるか審査されます。

労働力が不足する場合、充分な能力がある機械があるか審査されます。

(2)農作業常時従事要件

農作業常時従事要件とは、農作業に常時従事することです。

常時とは、年間150日以上とされています。

住居と生計を同一する家族が満たせば認められます。

権利者本人だけでなく家族で助け合えば、要件を満たすことができます。

(3)下限面積要件

下限面積要件とは、農地を取得する人の耕作する面積の要件です。

下限面積は、5000平方メートルです。

すでに耕作している土地がある場合、合算して審査されます。

地域によっては、下限面積要件を緩和しています。

新規の就農者を増やしたいことがあるからです。

(4)地域調和要件

地域調和要件とは、地域の取組に協力的であることです。

地域の活動に支障がある場合、許可されにくくなります。

例えば、地域全体で無農薬栽培に取り組んでいる場合、協力しない人には許可されにくいでしょう。

②農地の転用で農地法4条の許可が必要

農地の転用とは、農地を農地以外の土地にすることです。

例えば、農地を宅地にして家を建てる場合、農地の転用に該当します。

農地の転用には、農地法第4条の許可が必要です。

③農地の転用と権利移動で農地法5条の許可が必要

農地の転用と権利移動をする場合があります。

例えば、農地を売却したうえで宅地にして家を建てる場合です。

農地の転用と権利移動をするには、農地法第5条の許可が必要です。

④許可がないと権利取得ができない

農地の権利移動には、農地法第3条の許可が必要です。

農地法の許可は、権利移動の効力発生要件です。

農地法の許可書が到達したときに、権利が移転します。

農地法の許可がないと、権利を取得することはできません。

2孫に農地を相続させることができる

①孫は相続人ではない

相続が発生したら、親族のうち一定の範囲の人が相続人になります。

だれが相続人になるかについては、民法で決められています。

相続人になる人は、次のとおりです。

(2)~(4)の場合、先順位の人がいる場合、後順位の人は相続人になれません。

(1)配偶者は必ず相続人になる

(2)被相続人に子どもがいる場合、子ども

(3)被相続人に子どもがいない場合、親などの直系尊属

(4)被相続人に子どもがいない場合で、かつ、親などの直系尊属が被相続人より先に死亡している場合、兄弟姉妹

②子どもが先に死亡すると孫は代襲相続人

被相続人に子どもがいる場合、子どもが相続人になります。

子どもが相続人になる場合、孫は相続人ではありません。

相続人になるはずだった子どもが被相続人より先に死亡することがあります。

相続人になるはずだった子どもが被相続人より先に死亡した場合、子どもの子どもが代襲相続します。

子どもが先に死亡すると、孫は代襲相続人になります。

③孫と養子縁組をすると相続人になる

養子縁組とは、血縁関係がある親子とは別に法律上の親子関係を作る制度です。

被相続人は、孫と養子縁組をすることができます。

被相続人が養親で、孫が養子になります。

養子は、養親の子どもです。

被相続人に子どもがいる場合、子どもが相続人になります。

養子は、相続人になります。

被相続人の実子と養子は、同じ子どもです。

被相続人に実子がいても、養子は相続人です。

養子は、養親の子どもだからです。

孫と養子縁組をした場合、孫は相続人になります。

④相続で農地を取得するときは3条の許可不要

相続人になる人は、法律で決まっています。

法律で決められた人だけが相続人になります。

相続できるのは、相続人だけです。

相続人が農地を取得する場合、農地法第3条の許可は不要です。

孫が相続人になる場合、孫が農地を取得するときに農地法第3条の許可は不要です。

農地法第3条の許可を得ずに農地を取得する場合、農地法第3条の3の定めにより届出が必要です。

農地法第3条の3の定めによる届出は、農業委員会に対して提出します。

提出期限は、相続があったことをしてから10か月以内です。

相続で農地を取得するときは、農地法第3条の許可は不要です。

3孫に農地を特定遺贈をすることができる

①相続人以外の人に特定遺贈ができる

孫が相続人でない場合、孫は相続することはできません。

孫に農地を受け継いでもらいたい場合、別の方法を考える必要があります。

被相続人は遺言書を作成して、自分の財産を遺贈することができます。

遺贈とは、遺言書によって相続人や相続人以外の人に財産を譲ってあげることです。

特定遺贈とは、財産を特定して譲ってあげることです。

遺言書に「財産○○を遺贈する」と具体的に書いてある場合です。

特定遺贈では、遺言書に書かれた財産を受け継ぐだけです。

他の財産を受け取ることはありません。

相続人以外の人に、特定遺贈ができます。

特定遺贈は、相続人にも相続人以外の人にもすることができるからです。

孫が相続人でなくても、特定遺贈をすることができます。

②相続人でない孫に特定遺贈するときは3条の許可が必要

遺贈は、遺言書で財産を受け継ぐことです。

遺贈は、相続ではありません。

相続人以外の人が特定遺贈で財産を受け継ぐことができます。

相続人以外の人が特定遺贈で農地を受け継ぐ場合、農地法第3条の許可が必要です。

相続人以外の人に特定遺贈をしたい場合、許可されるのか農業委員会に確認しておくといいでしょう。

農業委員会の許可が得られない場合、遺言の内容は実現できなくなります。

子どもが相続人になる場合、孫は相続人ではありません。

孫に相続させることはできません。

孫に遺贈することができます。

孫が特定遺贈で農地を受け継ぐ場合、農地法第3条の許可が必要です。

孫は、相続人以外の人だからです。

③相続人である孫に特定遺贈するときは3条の許可が不要

被相続人に子どもがいる場合、子どもが相続人になります。

相続人になるはずだった子どもが被相続人より先に死亡した場合、子どもの子どもが代襲相続します。

子どもが先に死亡すると、孫は代襲相続人になります。

被相続人が孫と養子縁組をした場合、孫は被相続人の子どもです。

孫が被相続人の養子になった場合、孫は相続人になります。

遺言書を作成して、相続人に対して特定遺贈をすることができます。

相続人である孫に農地を特定遺贈をした場合、農地法第3条の許可が不要です。

農地法第3条の許可なしで、農地を取得することができます。

農地法第3条の許可なしで農地を取得したときは、農地法第3条の3の定めによる届出が必要です。

4孫に農地を全部包括遺贈することができる

①相続人以外の人に全部包括遺贈ができる

遺贈とは、遺言書によって相続人や相続人以外の人に財産を譲ってあげることです。

包括遺贈とは、財産を特定せずに譲ってあげることです。

全部包括遺贈は「財産すべてを包括遺贈する」と記載してある場合です。

全部包括遺贈をする場合、法定相続人や法定相続人以外の人に全財産を譲ってあげることができます。

孫が相続人でなくても、全部包括遺贈をすることができます。

②全部包括遺贈を受けると遺産分割協議の余地はない

全部包括遺贈を受けた場合、相続財産は相続人と共有することがありません。

相続が発生したときに、遺言書が効力を発します。

遺言書が効力を発したときに、全部包括受遺者が財産すべてを受け継ぎます。

全部包括受遺者は、遺産分割協議をする必要がありません。

相続人や全部包括受遺者が遺産分割協議を望んでも、遺産分割協議の余地がありません。

③孫に全部包括遺贈するときは3条の許可が不要

包括遺贈を受けた場合、相続人と同一の権利と義務があります。

包括遺贈で農地を受け継ぐ場合、農地法第3条の許可が不要です。

農地法第3条の許可なしで、農地を取得することができます。

農地法第3条の許可なしで農地を取得したときは、農地法第3条の3の定めによる届出が必要です。

5孫に一部包括遺贈することができる

①相続人以外の人に一部包括遺贈ができる

遺贈とは、遺言書によって相続人や相続人以外の人に財産を譲ってあげることです。

包括遺贈とは、割合だけ指定して譲ってあげることです。

一部包括遺贈は「財産の3分の1を包括遺贈する」と記載してある場合です。

包括遺贈では、何を遺贈するのか具体的財産は記載されていません。

②一部包括遺贈を受けたら遺産分割協議

一部包括遺贈は、指定した割合で財産を譲るものです。

一部包括遺贈を受けた場合、遺産分割協議に参加します。

包括受遺者が遺産分割協議に参加するのは、権利であるし義務でもあります。

遺言書は割合だけ書いてあるだけで、具体的な財産は記載されていないからです。

相続財産は、包括遺贈を受けた人と相続人全員で共有しています。

相続財産の分け方について、包括遺贈を受けた人と相続人全員で合意する必要があります。

包括受遺者がいるのに、相続人全員だけで遺産分割協議をしても無効です。

包括受遺者は、相続人と同一の権利義務が与えられているからです。

遺産分割協議の結果次第では、農地を受け取ることができないかもしれません。

一部包括遺贈を受けただけでは、何を受け取るのか決められていないからです。

一部包括遺贈を受けたら、遺産分割協議が必要です。

③孫に一部包括遺贈するときは3条の許可が不要

包括遺贈を受けた場合、相続人と同一の権利と義務があります。

包括遺贈で農地を受け継ぐ場合、農地法第3条の許可が不要です。

農地法第3条の許可なしで、農地を取得することができます。

農地法第3条の許可なしで農地を取得したときは、農地法第3条の3の定めによる届出が必要です。

④包括遺贈は負債も受け継ぐ

特定遺贈では、遺言書に書いてある特定の財産を受け継ぐだけです。

遺言書に書いていない他の財産を受け継ぐことはありません。

特定遺贈では、負債を受け継ぐことはありません。

包括遺贈を受けた場合、相続人と同一の権利と義務があります。

相続財産に負債がある場合、指定された割合で負債を引き継ぎます。

農業を営んでいる場合、多額の負債があることがあります。

包括遺贈を受ける場合、農地だけでなく多額の負債を引き継ぐことになります。

6孫に農地を贈与することができる

①孫に農地を生前贈与で3条の許可が必要

生前贈与をする場合、贈与する人と贈与を受ける人の合意が必要です。

農地を贈与の対象にすることができます。

贈与を受ける人は、親子でも親子以外の人でも差し支えありません。

農地を生前贈与する場合、農地法第3条の許可が必要です。

農地法の許可がないと、権利を取得することはできません。

孫に農地を生前贈与する場合、農地法第3条の許可が必要です。

②孫に農地を死因贈与で3条の許可が必要

贈与は、贈与する人と贈与を受ける人の契約です。

死因贈与は、贈与する人が死亡したときに効力が発生する贈与契約です。

農地を死因贈与の対象にすることができます。

農地を死因贈与する場合、農地法第3条の許可が必要です。

農地法の許可がないと、権利を取得することはできません。

孫に農地を死因贈与する場合、農地法第3条の許可が必要です。

7遺言書作成を司法書士に依頼するメリット

遺言書は、被相続人の意思を示すものです。

自分が死んだことを考えたくないという気持ちがあると、抵抗したくなるかもしれません。

民法に遺言書を作ることができるのは、15歳以上と定められています。

死期が迫ってから、書くものではありません。

遺言書は被相続人の意思を示すことで、家族をトラブルから守るものです。

遺贈とは、被相続人が遺言によって、法定相続人や法定相続人以外の人に、財産を譲ってあげるものです。

遺贈は簡単に考えがちですが、思いのほか複雑な制度です。

受け継いでもらう財産に不動産がある場合、譲ってもらう人だけでは登記申請ができません。

遺言執行者がいない場合、相続人全員の協力が必要です。

遺言書で遺言執行者を決めておきましょう。

遺言執行には、法的な知識が必要になります。

遺言の効力が発生したときに、遺言執行者からお断りをされてしまう心配があります。

遺言の効力が発生した後の場合、遺言執行者は家庭裁判所に決めてもらう必要があります。

不動産以外の財産であっても、遺言書の内容に納得していない相続人がいる場合、受遺者に引渡そうとしないこともあります。

せっかく遺言書を書くのですから、スムーズな手続を実現できるように配慮しましょう。

遺言執行者を選任することで、家族をトラブルから守ろうという気持ちを実現することができます。

お互いを思いやり幸せを願う方は、遺言書作成を司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。

遺言書を見せてくれない

2024-08-30

1遺言者が遺言書を見せてくれない

①遺言者の生存中は遺言書に効力がない

被相続人は、自分の財産を自由に処分することができます。

被相続人は、遺言書を作成して自分の財産を自由に引き継いでもらうことができます。

遺言書を作成したと聞いたら、内容が気になることでしょう。

遺言書を作成しても、遺言者の生存中は効力がありません。

遺言書の効力が発生するのは、遺言者が死亡したときだからです。

②遺言者は遺言書を書き直しができる

遺言書は、遺言者の意思を示すものです。

遺言者の最終の意思が優先されます。

遺言者は、遺言書を書き直すことができます。

遺言書を作成した後に、事情が変わることがあるからです。

財産の状況が変わる場合、書き直しが必要になるでしょう。

新たに誕生した孫や曽孫に、財産を譲りたくなるかもしれません。

財産を相続させる予定だった相続人が先に死亡することがあります。

遺言書は、何度でも書き直しができます。

複数の遺言書がある場合で、内容が両立しない場合、日付の新しい遺言書が有効になります。

相続人らと遺言書の書き直しはしないと約束しても、無効の約束です。

遺言書を書き直しするにあたって、相続人などの同意を受けなければならないと言ったルールはありません。

③遺言者は見せる義務はない

遺言書を作成したと言うのに、遺言書を見せてくれないことがあります。

たとえ、相続人になる予定の人であっても秘密にしておきたい内容があるでしょう。

遺言者の生存中、遺言書を見ることはできません。

遺言書を書き直しした場合、相続人などに報告する必要はありません。

遺言書は遺言者がひとりで作成できるから、ひとりで書き直しをすることができます。

遺言者本人は、他の人に遺言書を見せる義務はありません。

遺言者が見せてくれない場合、相続が発生するまで見ることはできません。

2相続開始後に公正証書遺言を見せてくれない

①公正証書遺言は公証役場で厳重保管

公正証書遺言は、遺言内容を公証人に取りまとめてもらって作る遺言書です。

証人2人に確認してもらって作成します。

公正証書遺言を作成した後、原本は公証役場で厳重保管されます。

公正証書遺言を作成した場合、遺言書の正本と謄本が渡されます。

正本や謄本を紛失しても、原本は公証役場で厳重保管されています。

公正証書遺言原本は公証役場に厳重保管されるから、紛失や改ざんの心配がありません。

②公証役場で検索ができる

公正証書遺言を作った場合、公証役場はデータを管理しています。

公証役場で遺言の有無を調べてもらうことができます。

昭和64年1月1日以降に作った公正証書遺言、秘密証書遺言が対象です。

コンピューターに登録されているのは、次の事項です。

・遺言した人の名前

・公証人の名前

・公証役場の名前

・遺言書を作った日

調べてもらうための手数料は、無料です。

全国どこの公証役場でも、調べてもらうことができます。

まずは近くの公証役場に出向いて、調べてもらいましょう。

郵便で調べてもらうように、請求することはできません。

遺言者が生存中は、遺言者本人と遺言者本人の代理人だけが調べてもらうことができます。

たとえ、家族の人が調べてもらおうとしても、答えてもらえません。

③公証役場で謄本請求ができる

遺言書の有無は、近くの公証役場で検索してもらうことができます。

公証役場のコンピューターで公正証書遺言があると分かった場合でも、内容については教えてもらえません。

公正証書遺言原本は、遺言書を作成した公証役場で厳重保管されています。

遺言書を作成した公証役場に対して、謄本を請求することができます。

謄本を見ると、遺言書の内容を知ることができます。

遺言者が生存中は、遺言者本人と遺言者本人の代理人だけが請求することができます。

たとえ、家族の人が請求しても、答えてもらえません。

遺言者の死亡後は、法律上の利害関係がある人だけが請求できます。

遺言者の相続人は、利害関係がある人です。

謄本を請求する場合、所定の手数料がかかります。

3相続開始後に自筆証書遺言を見せてくれない

①自筆証書遺言は家庭裁判所に提出

相続が発生した後に遺品整理をしていると、自筆証書遺言が見つかることがあります。

自筆証書遺言を見つけた人や預かっていた人は、家庭裁判所に提出する必要があります。

遺言書を家庭裁判所に届出ることを遺言書検認の申立てと言います。

遺言書検認の申立てを受け付けたら、家庭裁判所は相続人全員を家庭裁判所に呼び出します。

封筒に入って封がされている遺言書は、相続人立会いで家庭裁判所で開封してもらいます。

勝手に開封すると、5万円以下のペナルテイーになるおそれがあります。

遺言書であることに気づかず開封してしまっても、遺言書は無効になりません。

慌てて小細工をせずに、正直にそのまま提出します。

②検認調書が作成される

遺言書の検認とは、家庭裁判所で遺言書の状態を確認してもらう手続です。

遺言書の有効無効を確認する手続ではありません。

検認手続では、遺言書のの状態や形、書き直しや訂正箇所、日付や署名がどうなっているか裁判所が確認します。

確認した内容は、検認調書に取りまとめられます。

検認期日以降に遺言の改ざんや変造があった場合、検認調書と照らし合わせて確認することができます。

検認調書を見ると分かってしまうから、改ざんや変造を予防することができます。

遺言書の検認手続は、遺言書の改ざんや変造を予防する手続です。

遺言書の検認手続で、検認調書が作成されます。

③検認調書の謄本請求ができる

遺言書検認の申立てを受け付けたら、家庭裁判所は相続人全員を家庭裁判所に呼び出します。

遺言書があることを相続人に知らせ、立会の機会を与えるためです。

遺言書の検認期日に呼び出しがあった場合、申立人以外の人は欠席して差し支えありません。

検認期日に出席しても欠席しても、財産を相続できなくなることはありません。

検認期日に出席すれば、遺言書の内容を見ることができるでしょう。

検認期日に欠席しても、検認調書の謄本を請求することができます。

検認調書には、提出された遺言書のコピーが付いています。

検認調書の謄本請求で、遺言書の内容を知ることができます。

④検認をしないと相続手続ができない

検認を受けても受けなくても、遺言書の効果に変わりはありません。

検認を受けても受けなくても、無効の遺言書は無効です。

検認を受けても受けなくても、有効の遺言書は有効です。

検認は遺言書の状態を確認してもらうことであって、遺言書が有効か無効かを判断してもらうことではないからです。

検認を受けても受けなくても遺言書の効果は変わりませんが、検認を受けていない遺言書で相続手続はできません。

検認の後、検認済証明書の交付を申請しましょう。

遺言書と検認済証明書を一緒にして、相続手続を行います。

⑤検認を怠ると欠格のおそれ

だれが相続人になるかについては、民法で決められています。

同時に、民法では相続人になれない人も決められています。

例えば、被相続人を殺した人が相続することは社会感情からみても許せない、相続する人としてふさわしくないということは納得できるでしょう。

相続人としてふさわしくない人の相続資格を奪う制度を相続欠格と言います。

遺言書は、遺言者の意思を示すものです。

相続人としても、遺言者の意思を実現させてあげたいでしょう。

相続人が遺言書を隠匿して不当な利益を得ようとする場合、相続する人としてふさわしくないと言えます。

自筆証書遺言を見つけた人は、家庭裁判所に提出して検認を受けなければなりません。

遺言書の検認を怠ると、遺言書の隠匿にあたると判断されるおそれがあります。

遺言書の内容が自分に不利な内容である場合、不当な利益を得ようとしたと言えるでしょう。

他の相続人が遺留分侵害額請求をするのを避ける目的がある場合、不当な利益を得ようとしたと言えるでしょう。

不当な利益を得る目的で遺言書を隠匿した場合、相続欠格になるおそれがあります。

4法務局保管の自筆証書遺言を見せてくれない

①法務局保管の自筆証書遺言は検認不要

自筆証書遺言を作成した後、自分で保管するのが原則です。

自筆証書遺言は、保管場所に困ります。

遺言書の保管場所を家族と共有していないと、相続が発生した後に遺言書を見つけてもらえないかもしれません。

遺言書の保管場所を家族と共有していると、遺言書を破棄されたり改ざんされたりする心配があります。

自筆証書遺言を法務局に提出して、保管してもらうことができます。

法務局で保管してもらっている自筆証書遺言は、家庭裁判所の検認手続が不要です。

法務局保管の自筆証書遺言は、法務局で厳重保管されているからです。

②自筆証書保管事実証明書の交付請求ができる

自筆証書遺言を預かった場合、法務局はデータを管理しています。

法務局で遺言の有無を調べてもらうことができます。

遺言の有無を調べてもらうことができる法務局は、遺言書保管事務を扱っている法務局のみです。

名古屋市内であれば、名古屋法務局本局のみです。

熱田出張所や名東出張所では、遺言の有無を調べてもらうことができません。

遺言書保管事務を扱っている法務局は、法務局のホームページで調べることができます。

遺言書保管事務を扱っている法務局であれば、日本中どこの法務局でも請求することができます。

自筆証書遺言を預かっているか調べてもらうことを、遺言書保管事実証明書の交付請求と言います。

遺言者が生存中は、たとえ家族であっても交付請求をすることはできません。

遺言書保管事実証明書の交付請求には、所定の手数料がかかります。

郵送で請求する場合は、返信用の切手と封筒を添付します。

遺言者が自筆証書遺言を法務局に預けたとき、法務局は保管証を渡します。

保管証があれば、遺言書保管事実証明書の交付請求を省略することができます。

③遺言書情報証明書の交付請求ができる

遺言をした人が預けた遺言書は、預けた本人以外には返してはもらえません。

遺言をした遺言者本人が死亡した後は、相続人であっても返還されません。

その代わりに、遺言書の画像を印刷して交付するように請求することができます。

遺言書の画像を印刷して交付するように請求することを遺言書情報証明書の交付請求と言います。

遺言書情報証明書を見ると、遺言書の内容を知ることができます。

相続手続では、遺言書原本の代わりとして使うことができます。

相続人が遺言書情報証明書を受け取ったら、法務局から他の相続人全員に対して、遺言書を預かっていることが通知されます。

5遺言執行者には遺言書の開示義務がある

遺言書は作成するだけでは意味がありません。

遺言書の内容は、自動で実現するわけではないからです。

遺言執行者は、遺言書の内容を実現する人です。

遺言書の内容を実現するために、必要な権限が与えられます。

遺言執行者が職務を開始した場合、相続人に遺言書の内容を通知をする義務があります。

遺言執行者がいる場合、遺言書の開示を求めることができます。

遺言書の内容によっては、相続人の遺留分が侵害されていることがあるでしょう。

遺留分侵害額請求をする機会を与えるためにも、遺言書の内容を知らせることは重要です。

遺言執行者には、遺言書の開示義務があります。

6遺言書作成を司法書士に依頼するメリット

遺言書がある場合、相続財産について、相続人全員で、分け方を合意する必要はありません。

もっともトラブルになりやすい遺産分割協議で、相続人全員で合意をしなくていいのは大きなメリットです。

せっかく遺言書を作成しても、遺族に見つけてもらえなければ意味がありません。

同時に、死亡する前に自分に都合の悪い遺言書を隠したり捨ててしまったりする心配があります。

さらに、遺言書には厳格な書き方ルールがあります。

ルールが守られていない遺言書は無効になります。

書き方のルールは守られていても、内容があいまいだったり、不適切であったために、実現できない遺言書も少なくありません。

せっかく遺言書を書くのであれば、家族を幸せにできる遺言書を確実に作りましょう。

司法書士は確実な遺言書を作るお手伝いをします。

家族のために適切で確実な遺言書を作りたい方は、司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。

清算型遺贈の登記手続

2024-08-28

1清算型遺贈とは財産を換金して遺贈すること

①遺言執行者が遺言書の内容を実現する

遺言書は作成するだけでは、意味がありません。

遺言書の内容は、自動で実現するわけではないからです。

遺言執行者は、遺言書の内容を実現する人です。

相続手続は、想像以上にわずらわしいものです。

遺言執行者がいると、わずらわしい相続手続をおまかせすることができます。

遺言執行者を指名しておくと、遺言書の内容を実現してくれるので安心です。

②遺言執行者が売却手続

遺贈とは、相続人や相続人以外の人に財産を引き継いでもらうことです。

多くの場合、財産はそのままの形で引き継いでもらいます。

せっかく引き継いでもらいたいと思っても、受け取る人にとって負担になることがあります。

例えば、受け取る人が遠方に住んでいる場合、不動産を自分で使うことは難しいでしょう。

自分で使うことはできないのに、固定資産税を負担し修繕や除草などの管理をしなければなりません。

財産そのままの形ではなく、売却して売却代金を受け取ってもらうことができます。

清算型遺贈とは、財産を売却して売却代金を遺贈することです。

遺言書を作成するとき、遺言執行者を指名することができます。

遺言執行者がいれば、遺言執行者が売却手続をします。

売買契約をして契約書に記名押印をするのは、遺言執行者です。

③遺言執行者がいると妨害行為ができない

遺言執行者がいない場合、遺言書の内容は相続人全員の協力で実現させます。

相続人全員が遺言書の内容に納得している場合、相続人全員の協力が得られるでしょう。

遺言書の内容に不服があると、協力は得られないでしょう。

相続人全員の協力が得られないと、相続手続を進めることができなくなります。

遺言執行者がいる場合、相続手続は遺言執行者が行います。

相続人の関与なく、相続手続を進めることができます。

相続人は、遺言執行の妨害行為ができません。

遺言執行の妨害行為は、無効になります。

遺言執行者がいると、妨害行為ができません。

2清算型遺贈の登記手続

①遺言者から買主に名義変更はできない

清算型遺贈では、財産を売却して売却代金を受遺者に受け取ってもらいます。

相続財産全部が清算型遺贈の対象の場合、相続人は何も相続しません。

遺言者から買主に所有権が移転したように感じるでしょう。

遺言者から買主に名義変更することはできません。

相続人は何も相続しないけど、相続登記をする必要があります。

清算型遺贈では、財産を売却します。

相続が発生してから売却するまでの期間があります。

相続が発生した場合、相続財産は相続人の共有財産です。

相続が発生してから売却するまでの期間、相続人全員で共有しています。

相続人全員で共有しているから、相続登記をすることで公示する必要があるからです。

実際にも被相続人から相続人全員の共有になった後、売却されます。

被相続人から直接買主に所有権は移転していません。

登記は権利変動の過程を忠実に示しているからこそ信頼があります。

被相続人から直接買主に所有権移転登記を認めた場合、権利変動の過程を忠実に公示できません。

登記制度に対する信頼が失墜することになります。

このようなことは何としても避けなければなりません。

遺言者から買主に名義変更することは、できません。

②遺言執行者が登記手続

清算型遺贈があるとき、相続登記を省略することはできません。

相続人全員に対する相続登記をします。

相続人全員が登記名義人になります。

相続人全員が登記名義人になるけど、遺言執行者が登記申請をします。

相続人の関与は、不要です。

清算型遺贈では、財産を売却して売却代金を受遺者に受け取ってもらいます。

遺言執行者がいれば、遺言執行者が売却手続をします。

不動産を売却した場合、所有権移転登記を申請します。

売却による所有権移転登記は、遺言執行者と買主が共同で登記申請をします。

相続人全員が登記名義人になっているけど、相続人の関与は不要です。

清算型遺贈の登記手続では、相続登記と売買による所有権移転登記があります。

相続登記と売買による所有権移転登記の両方とも、遺言執行者が行います。

3遺言執行者が相続登記

①申請人

遺言執行者がいる場合、遺言執行者が登記申請をすることができます。

遺言執行者が登記申請人になっても、登記名義人は相続人全員です。

遺言執行者は、登記簿上に現れません。

遺言執行者は、遺言書の内容を実現するだけの人だからです。

一般的に、相続登記は相続手続の中でも、難しい手間のかかる手続です。

司法書士などの専門家に依頼して手続してもらうことが多いでしょう。

遺言執行者は委任状を出して、相続登記を司法書士に依頼することができます。

遺言執行者からの委任状だけで、差し支えありません。

相続人からの委任状は、不要です。

②必要書類

遺言書がある場合、相続登記の必要書類は次のとおりです。

清算型遺贈をする場合、遺言書があるはずです。

遺言書がないと、遺贈は実現できないからです。

(1)被相続人の除籍謄本

(2)相続人の現在戸籍

(3)被相続人の住民票の除票

(4)不動産を相続する人の住民票

(5)遺言書

(6)遺言書検認済証明書

(7)固定資産税評価証明書

③あらかじめ相続登記

清算型遺贈の登記手続では、相続登記を省略できません。

相続登記と売買による所有権移転登記をします。

相続登記と売買による所有権移転登記は、同時申請をする必要はありません。

あらかじめ相続登記をすることができます。

実務的には、余裕をもって事前に相続登記をすることが一般的です。

相続登記をした後の登記簿を見ると、相続人が所有者として登記されています。

事情を知らない人は、相続人が真の所有者と思ってしまうでしょう。

事情を知らない人に対して、相続人が不動産を売却してしまうかもしれません。

あらかじめ相続登記をするのが一般的ですが、注意が必要です。

④遺言執行者が登記識別情報を受け取ることができる

相続登記が完了したら、原則として、登記識別情報が発行されます。

権利者であっても、登記識別情報が発行されないことがあります。

登記識別情報は、登記申請人にならなかった権利者には発行されないからです。

遺言執行者がいる場合、遺言執行者が相続登記をすることができます。

遺言執行者は、権利者ではないでしょう。

遺言執行者が相続登記をする場合、相続人名義の登記識別情報が発行されます。

遺言執行者は、相続人名義の登記識別情報を受け取ることができます。

遺言執行者の行為は、相続人に対して効力があるからです。

4遺言執行者が所有権移転登記

①必要書類

(1)登記原因証明情報

(2)登記識別情報

(3)印鑑証明書

(4)住所証明情報

(5)被相続人の除籍謄本

(6)遺言書

(7)遺言書検認済証明書

(8)固定資産税評価証明書

②登記原因証明情報は遺言執行者が押印

遺言執行者がいるときの清算型遺贈では、遺言執行者が売却手続をします。

売買契約書に記名押印するのは、遺言執行者です。

登記原因証明情報とは、不動産の権利に関する登記をするときに必要な書類のひとつです。

不動産の権利に関する登記を申請する場合、登記原因証明情報を提出します。

例えば、不動産の売買契約であれば、売買契約書を作成しているでしょう。

不動産の売買契約によって、所有権移転登記申請をします。

売買契約書は、所有権移転登記申請をするときの登記原因証明情報です。

売買契約書には、売買金額や契約条件が詳細に記載されています。

登記申請書や添付書類は、閲覧に供されることがあります。

契約の詳細や売買金額などは、他の人に知られたくないでしょう。

売買契約書の他に、法務局報告形式の登記原因証明情報を作成することができます。

売買による所有権移転登記を申請する場合、法務局報告形式の登記原因証明情報を提出することができます。

法務局報告形式の登記原因証明情報に、売主が押印したもので差し支えありません。

遺言執行者がいるときの清算型遺贈では、遺言執行者が押印します。

売買による所有権移転登記で、相続人の関与は不要です。

法務局報告形式の登記原因証明情報であれば、登記に必要な事項だけ記載することができます。

余計な情報を記載していないから、必要事項以外が公開されるのを防ぐことができます。

多くの場合、法務局報告形式の登記原因証明情報を提出します。

登記原因証明情報は、遺言執行者が押印します。

③印鑑証明書は遺言執行者の印鑑証明書

売買による所有権移転登記をする場合、登記義務者は登記申請書に実印で押印をする必要があります。

遺言執行者がいるときの清算型遺贈では、遺言執行者が実印で押印をします。

申請書の押印が実印によるものであることを確認するために、印鑑証明書を添付します。

所有権移転登記で登記義務者が印鑑証明書を提出する場合、発行後3か月以内のものである必要があります。

申請書に押印をするのが遺言執行者だから、遺言執行者の印鑑証明書を提出します。

④相続登記のとき発行された登記識別情報

売買による所有権移転登記申請をする場合、登記識別情報を提出します。

遺言執行者がいるときの清算型遺贈では、相続登記のとき発行された登記識別情報を提出します。

遺言執行者が相続登記をする場合、相続人名義の登記識別情報が発行されます。

遺言執行者は、相続人名義の登記識別情報を受け取ることができます。

多くの場合、登記識別情報は遺言執行者が預かり、そのまま売買による所有権移転登記を提出します。

5相続人不存在のときは氏名変更登記

①相続人不存在のときは相続財産は法人になる

相続人になる人は、法律で決められています。

相続人不存在とは、法律で決められた相続人がまったく存在しない場合です。

相続人がまったく存在しない場合、法律の定めで相続財産は相続財産法人になります。

通常、亡〇〇〇〇相続財産と言います。

相続人不存在の場合、相続財産は法人になります。

②亡〇〇〇〇相続財産への名義変更は氏名変更登記

相続人不存在の場合、亡〇〇〇〇相続財産に名義変更をします。

亡〇〇〇〇相続財産に権利が移転するのではありません。

亡〇〇〇〇相続財産に、名称が変わるのみです。

亡〇〇〇〇相続財産への名義変更は、氏名変更登記です。

③遺言執行者が氏名変更登記申請

清算型遺贈をする場合、相続人がいれば相続登記をします。

清算型遺贈をする場合、相続人がいないから相続登記ではなく氏名変更登記をします。

遺言執行者がいるときの清算型遺贈では、いずれも遺言執行者が申請します。

遺言執行者がいるときの清算型遺贈で相続人不存在の場合、遺言執行者が氏名変更登記を申請します。

④氏名変更登記で登記識別情報は発行されない

相続登記が完了したら、原則として、登記識別情報が発行されます。

相続登記は、所有権が移転した登記だからです。

氏名変更登記が完了したら、登記識別情報が発行されません。

氏名変更登記は、権利が移転するものではないからです。

清算型遺贈では、財産を売却します。

売買による所有権移転登記申請をする場合、登記識別情報を提出します。

遺言執行者がいるときの清算型遺贈では、相続登記のとき発行された登記識別情報を提出します。

相続人がいない場合、相続登記をしません。

氏名変更登記が完了しても、登記識別情報が発行されません。

売買による所有権移転登記申請をする場合、遺言者が権利を取得したときの権利証を提出します。

権利証を提出できない場合、遺言執行者の本人確認情報を提出します。

⑤全部包括遺贈なら相続財産清算人選任不要

相続人が不存在の場合、相続財産は原則として国庫に帰属します。

相続財産清算人は、相続財産を清算して国庫に帰属させる人です。

全財産を包括遺贈した場合、相続財産は受遺者が引き継ぎます。

包括受遺者は、相続人と同一の権利義務があります。

全部包括遺贈をした場合、相続人不存在という必要がないでしょう。

全財産を包括遺贈をする場合、相続財産清算人の選任は不要です。

遺言執行者を指名して全財産を清算して遺贈する場合、相続財産清算人の選任は不要です。

6遺言書作成と遺言執行を司法書士に依頼するメリット

遺言執行者は遺言書の内容を実現する人です。

相続人が遺言書の内容に納得していて、手続に協力的であれば、必ずしも、遺言執行者を選任する必要はありません。

遺言執行者は、相続開始後すみやかに手続を進めることができる時間と知識がある人を選ぶことが重要です。

その意味でも、家族より司法書士などの専門家に遺言執行を依頼する人が増えています。

以前は、遺言執行者は止むを得ない場合だけ、他の人に職務を任せることができるとされていましたが、現在は、止むを得ないなどの理由は不要になりました。

遺言執行者に指名され、職務をしてみたところ、思ったよりタイヘンだという場合、自己の責任で司法書士などの専門家におまかせすることもできます。

今後も、専門家に依頼する人は増えていくでしょう。

遺言執行を司法書士などの専門家に依頼した場合、相続人は基本待っているだけなので、トラブルになることが少なくなるからです。

家族を笑顔にするためにも、遺言書作成と遺言執行者選任しましょう。

家族の幸せのためにも、遺言書作成と遺言執行者選任を司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。

孫が相続放棄

2024-08-27

1相続人になる人は法律で決まっている

相続が発生したら、親族のうち一定の範囲の人が相続人になります。

だれが相続人になるかについては、民法で決められています。

相続人になる人は、次のとおりです。

①配偶者は必ず相続人になる

②被相続人に子どもがいる場合、子ども

③被相続人に子どもがいない場合、親などの直系尊属

④被相続人に子どもがいない場合で、かつ、親などの直系尊属が被相続人より先に死亡している場合、兄弟姉妹

相続人になるはずだった人が被相続人より先に死亡したため、相続人になるはずだった人の子どもや子どもの子どもが相続することがあります。

これを代襲相続と言います。

相続人になるはずだった人の子どもの子どもが相続することを再代襲相続と言います。

代襲相続ができるのは、相続人になるはずだった人の子どもなど被相続人の直系卑属だけです。

相続人になるはずだった人の子どもなど、被相続人の直系卑属以外は代襲相続ができません。

相続人になるはずだった人の配偶者も、相続人になるはずだった人の親などの直系尊属も、相続人になるはずだった人の兄弟姉妹も、代襲相続ができません。

2相続放棄をするのは相続人だけ

だれが相続人になるかについては、民法で決められています。

先順位の人がいる場合、後順位の人は相続人になりません。

被相続人に子どもがいる場合、子どもは相続人になります。

子どもより後順位である親など直系尊属は、相続人になりません。

子どもが相続人だから、親などの直系尊属が相続放棄をしたいと思っても相続放棄ができません。

相続する権利がないのだから、相続放棄をする必要がありません。

被相続人の子ども全員が相続放棄をした場合、子どもは相続人でなくなります。

子ども全員が相続放棄をした場合、先順位の相続人がいない場合になるから親などの直系尊属が相続人になります。

子ども全員が相続放棄をした後なら、親などの直系尊属は相続放棄をすることができます。

3子どもが相続放棄をしたら孫は代襲相続しない

相続人になるはずだった人が被相続人より先に死亡した場合、相続人になるはずだった人の子どもや子どもの子どもが相続することがあります。

これを代襲相続と言います。

被相続人の子どもが被相続人より先に死亡した場合、代襲相続が発生します。

被相続人の子どもが相続放棄をした場合、代襲相続が発生しません。

被相続人の子どもが相続放棄をした場合、はじめから相続人でなかったと扱われます。

相続人でなくなるから、子どもの子どもが代わり相続することはあり得ません。

被相続人の子どもが相続放棄をした場合、子どもの子どもは代襲相続はできません。

4孫が代襲相続人になるときは相続放棄ができる

被相続人の子どもが被相続人より先に死亡した場合、代襲相続が発生します。

被相続人の子どもの子どもが、相続人になります。

被相続人の孫が相続人になるから、単純承認をするか相続放棄をするか決めることができます。

単純承認をするか相続放棄をするか、孫ひとりひとりが各自決めることができます。

相続放棄をする場合、孫ひとりひとりが各自で家庭裁判所に相続放棄の手続をします。

一部の孫が相続放棄をした場合、他の孫が影響されることはありません。

一部の孫が単純承認をした後、他の孫が相続放棄をすることができます。

一部の孫が他の孫の相続放棄を勝手に手続をすることはできません。

各自相続放棄をするか単純承認をするか判断をして、各自手続をします。

5孫が被相続人の養子の場合

①養子は相続人になる

被相続人が子どもの子どもと養子縁組をしている場合があります。

被相続人に子どもがいる場合、子どもは相続人になります。

相続人になる子どもとは、血縁関係がある子どもだけではありません。

被相続人と養子縁組をした養子も、被相続人と血縁関係がある子どもで第三者と養子縁組をした子どもも相続人になります。

被相続人と養子縁組をした養子と第三者と養子縁組をした子どもと血縁関係がある子どもは、被相続人の子どもです。

被相続人が孫と養子縁組をした場合、養子は被相続人の子どもであり、子どもの子どもでもあります。

養子の親は、被相続人の血縁関係のある子どもだから相続人になります。

被相続人の子どもが相続放棄をした場合、子どもの子どもは相続しません。

被相続人の子どもが相続放棄をした場合でも、被相続人が孫と養子縁組をしていたら孫は相続人になります。

孫は、子どもの子どもの身分と養子の身分があるからです。

子どもの子どもとして相続人にはならないけど、養子として相続人になります。

②養子の親が先に死亡したとき養子は代襲相続人になる

被相続人が孫と養子縁組をした場合、養子は被相続人の子どもであり、子どもの子どもでもあります。

被相続人の子どもが被相続人の死亡する前に死亡した場合、子どもの子どもが代襲相続をします。

養子の親が被相続人の死亡する前に死亡した場合、養子が代襲相続をします。

被相続人の養子は、子どもの子どもでもあるからです。

被相続人の養子は、被相続人の子どもの地位と代襲相続人の地位があります。

③相続したくないのであれば養子は相続放棄が必要

被相続人と養子縁組をした養子は、被相続人の子どもです。

被相続人の子どもだから、相続人になります。

被相続人を相続したくないのであれば、相続放棄の申立てが必要です。

被相続人の子どもである養子の親が相続放棄をしている場合でも相続放棄をしていない場合でも必要です。

被相続人の養子は、相続人の地位があるからです。

④養子が代襲相続人である場合はまとめて相続放棄ができる

被相続人の子どもが被相続人の死亡する前に死亡した場合、子どもの子どもが代襲相続をします。

養子の親が被相続人の死亡する前に死亡した場合、養子が代襲相続をします。

被相続人の養子は、被相続人の子どもの地位と代襲相続人の地位があります。

被相続人を相続したくない場合、子どもの地位と代襲相続人の地位両方をまとめて相続放棄をすることができます。

⑤養子が未成年の場合は自分で相続手続ができない

未成年者は、物事のメリットデメリットを充分に判断することができません。

通常、契約などの法律行為をする場合、親などの親権者が代わりに手続をします。

被相続人が単独親権者である場合、家庭裁判所に未成年後見人を選んでもらう必要があります。

未成年後見人と未成年の養子が2人とも相続人になる場合、未成年後見人は未成年者を代理することができません。

一方がソンすると他方がトクする関係になるからです。

一方がソンすると他方がトクする関係のことを利益相反と言います。

利益相反になる場合、未成年後見人は未成年者を代理できません。

未成年後見人が未成年者を代理できない場合、家庭裁判所に特別代理人を選任してもらう必要があります。

特別代理人は、相続に利害関係がない親戚などが選ばれることが多いです。

特別代理人が未成年者の代わりに相続手続をします。

6孫は遺贈を放棄することができる

遺贈とは、被相続人が遺言によって、法定相続人や法定相続人以外の人に、財産を譲ってあげることです。

子どもが相続人になる場合、孫は相続人になりません。

孫は相続できないけど孫に財産を受け継いでもらいたい場合があります。

被相続人は遺言によって、孫に遺贈をすることができます。

子どもが相続人であっても、孫に遺贈をすることができます。

遺贈では、被相続人が法定相続人以外の人に財産を譲ってあげることができるからです。

遺言書は相続人などの関与なしで作ることができます。

遺言で遺贈や相続のことを定める場合、遺言者が受け取る人の意見を聞かずに、一方的に決めることができます。

遺言に書いてあるからとは言っても、受け取ると相続人に気兼ねすることがあります。

相続人とトラブルになりたくないから、ご辞退したい場合もあるでしょう。

遺贈は、放棄することができます。

遺贈には特定遺贈と包括遺贈がの2種類があります。

包括遺贈の場合は、相続放棄と同じ手続で放棄することができます。

特定遺贈の場合は、 遺贈義務者に通知することで放棄をすることができます。

7相続放棄と遺贈の放棄を司法書士に依頼するメリット

相続放棄も包括遺贈の放棄もプラスの財産もマイナスの財産も引き継ぎませんという裁判所に対する申立てです。

相続人らとのお話合いで、プラスの財産を相続しませんと申し入れをすることではありません。

つまり、家庭裁判所で認められないとマイナスの財産を引き継がなくて済むというメリットは受けられないのです。

実は、放棄ができるのはその相続でチャンスは実質的には1回限りです。

家庭裁判所に認められない場合、即時抗告という手続を取ることはできますが、高等裁判所の手続で、2週間以内に申立てが必要になります。

家庭裁判所で認めてもらえなかった場合、即時抗告で相続放棄を認めてもらえるのは、ごく例外的な場合に限られます。

一挙にハードルが上がると言ってよいでしょう。

司法書士であれば、家庭裁判所に認めてもらえるポイントを承知していますから、認めてもらえやすい書類を作成することができます。

しかも相続放棄も遺贈の放棄も、原則として、撤回ができません。

3か月の期間内に手続するのは思ったよりハードルが高いものです。

特定遺贈は、承認する場合も放棄する場合も、法律の知識が欠かせません。

相続放棄を考えている方はすみやかに司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。

親に内緒で戸籍の分籍

2024-08-26

1分籍で親と別の戸籍になる

①分籍とは在籍の戸籍から単独の戸籍を編成すること

戸籍とは、その人の身分関係を記録する帳簿です。

戸籍には、出生や死亡、婚姻や離婚、養子縁組や離縁と言った身分関係の事項が記録されています。

現在は、夫婦と子どもで戸籍が編製されています。

子どもが婚姻をしたときに、親の戸籍から抜けて新戸籍が編製されます。

子どもは婚姻をしなくても、親の戸籍を抜けて新戸籍を編成してもらうことができます。

分籍とは、親の戸籍を抜けて単独の戸籍を編製してもらうことです。

②分籍で親の戸籍から除籍されたときの記載例

分籍を希望する場合、分籍届を提出します。

分籍届が受理された場合、現在の戸籍から除籍されます。

分籍をした人の名前の横に、除籍と記載されます。

戸籍の記載例

身分事項 分籍

【分籍日】令和〇年〇月〇日

【送付を受けた日】令和〇年〇月〇日

【受理者】〇〇県〇〇市長〇〇

【新本籍】〇〇県〇〇市〇〇区〇〇町〇丁目〇番地 筆頭者 〇〇

③分籍で新戸籍が作られたときの記載例

分籍届が受理された場合、新しい戸籍が編製されます。

戸籍の記載例

身分事項 分籍

【分籍日】令和〇年〇月〇日

【従前戸籍】〇〇県〇〇市〇〇区〇〇町〇丁目〇番地 筆頭者 〇〇〇〇

【送付を受けた日】令和〇年〇月〇日

【受理者】〇〇県〇〇市長

分籍後に、婚姻や離婚、養子縁組や離縁と言った身分関係の事項が発生することがあります。

戸籍に記載すべき事項があった場合、新しい戸籍にのみ記載されます。

④分籍で親子関係はなくならない

戸籍とは、その人の身分関係を記録する帳簿です。

分籍とは、身分関係を記録する帳簿を分けただけです。

帳簿を別にしても、親子関係がなくなることはありません。

子どもが婚姻をしたとき、親の戸籍から抜けて新戸籍が編製されます。

子どもが婚姻をしても、親子関係がなくなることはありません。

新戸籍が編製されても、帳簿が別になっただけだからです。

子どもが分籍をしても、親子関係がなくなることはありません。

新戸籍が編製されても、帳簿が別になっただけだからです。

分籍をしても、親子関係がなくなることはありません。

2親に内緒で戸籍の分籍

①分籍ができる人

分籍を希望する場合、分籍届を提出します。

分籍届を提出できるのは、次の条件を満たした人です。

(1)18歳以上の人

(2)戸籍の筆頭者及び配偶者以外の人

②分籍届は郵送で提出できる

分籍届の提出先は、次の市区町村役場です。

(1)届出人の本籍地

(2)新本籍地

(3)届出人の住所地

分籍届は窓口まで出向いて提出することもできるし、郵送で提出することもできます。

③分籍届の届出期間

分籍届に、届出期間はありません。

届出が受理されたときから、効力が発生します。

④分籍届に必要なもの

(1)分籍届

(2)分籍する人の署名(押印は任意)

分籍届を提出することができるのは、成人のみです。

分籍をすることで、親権が問題になることはありません。

分籍届に、親の承諾書が必要になることはありません。

親が反対しても、分籍することができます。

分籍届が受理された場合でも、親に通知されることはありません。

分籍は、身分関係を記録する帳簿を分けるだけの手続だからです。

親に知られず、分籍をすることができます。

⑤戸籍謄本は不要

分籍届を提出する場合、戸籍の内容が確認されます。

提出した市区町村役場に本籍がない場合、戸籍謄本の提出が必要でした。

令和6年3月から法務省の戸籍情報連携システムで戸籍の内容を確認してもらえます。

現在は、戸籍謄本の提出は不要です。

⑥同じ本籍地で分籍ができる

分籍届を提出する場合、新本籍地は自分で決めます。

分籍した後の本籍地は、同じ本籍地でも差し支えありません。

本籍地は、住所とは無関係に決めることができます。

皇居や大阪城などは、多くの人が本籍地にしています。

3分籍のメリットとデメリット

メリット①身分事項が親の戸籍に記載されない

分籍とは、在籍の戸籍から単独の戸籍を編成することです。

戸籍に記載すべき事項があった場合、新しい戸籍にのみ記載されます。

婚姻や離婚、養子縁組や離縁、認知、名前の変更などがあった場合、戸籍に記録されます。

これらの身分関係の事項について、親と意見が一致しないことがあります。

親の戸籍に記録されるから、申し訳ない気持ちになるかもしれません。

分籍した後は、新しい戸籍にのみ記録されます。

身分事項が親の戸籍に記録されないことがメリットと言えます。

メリット②本籍地は自由に決めることができる

分籍届を提出する場合、新本籍地は自分で決めます。

戸籍謄本が必要になる場合、本籍地の市区町村役場に請求するのが原則です。

本籍地の市区町村役場が住所地と近い場合、戸籍謄本を取得しやすくなります。

戸籍謄本は、広域交付によって取得することができます。

広域交付とは、本籍地の市区町村役場でなくても戸籍謄本を取得することができる制度です。

広域交付で戸籍謄本を取得する場合、通常より時間がかかります。

請求当日に発行されないことも、少なくありません。

分籍で本籍地を自由に決めることができるのは、メリットと言えます。

メリット③親とちがう氏を名乗ることができる

家族の事情によって、親とちがう氏を名乗りたいことがあるでしょう。

同じ戸籍にいる場合、同じ氏を名乗ります。

例えば、親が離婚した場合に旧姓に戻ることがあります。

子どもが婚姻時の氏を名乗りたい場合、別の戸籍である必要があります。

分籍することで親と別の氏を名乗ることができるのは、メリットと言えます。

デメリット①戸籍謄本は別々に請求する必要がある

分籍をすると、単独の新しい戸籍が編製されます。

戸籍謄本が必要になる場合、親子であっても別々に請求する必要があります。

戸籍謄本を別々に請求する必要がある点は、デメリットと言えます。

デメリット②親の戸籍に戻れなくなる

分籍すると、原則として、親の戸籍に戻ることができなくなります。

4分籍しても相続人

①相続人になる人は法律で決まっている

相続が発生したら、親族のうち一定の範囲の人が相続人になります。

だれが相続人になるかについては、民法で決められています。

相続人になる人は、次のとおりです。

(2)~(4)の場合、先順位の人がいる場合、後順位の人は相続人になれません。

(1)配偶者は必ず相続人になる

(2)被相続人に子どもがいる場合、子ども

(3)被相続人に子どもがいない場合、親などの直系尊属

(4)被相続人に子どもがいない場合で、かつ、親などの直系尊属が被相続人より先に死亡している場合、兄弟姉妹

②戸籍には身分関係が記録されている

戸籍とは、その人の身分関係の事項が記録されている帳簿です。

多くの方にとって、相続人がだれなのかは当たり前のことと軽く考えがちです。

家族以外の第三者に対しては、相続人がだれなのか客観的に証明する必要があります。

客観的に証明するとは、具体的には、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本を全部揃えることです。

戸籍には、その人に身分関係の事項がすべて記録されているからです。

戸籍謄本は、戸籍の内容の証明書です。

結婚や離婚、子どもや養子の存在を家族には内緒にしている人がいます。

戸籍には、すべて記録されています。

戸籍が新しくなったときに、書き写される項目と書き写されない項目があります。

書き写されない項目を確認するために、出生から死亡までの連続した戸籍謄本を全部揃える必要があるのです。

③絶縁しても相続人

だれが相続人になるかについては、民法で決められています。

相続人になるかどうかは、法律の定めで決まります。

被相続人と絶縁していても、相続人になるかどうかとは関係ありません。

絶縁していたとか、絶交していたとかいう事情は、法律の定めとは無関係です。

何十年も音信不通でも、親子は親子です。

何十年も会っていなくても、兄弟姉妹は兄弟姉妹です。

子どもが重大な親不孝をした場合に、親が子どもを勘当にすることがあります。

子どもを勘当にして、絶縁状を作ることがあります。

絶縁状に、法的な効力はありません。

家の敷居をまたぐなとか、お葬式に呼ばないなども法的効力はありません。

絶縁しても、相続人になります。

5特別養子になると親子関係がなくなる

養子縁組とは、血縁関係がある親子の他に法律上の親子関係を作る制度です。

養子縁組には、2種類あります。

普通養子と特別養子です。

子どものいない夫婦が養子縁組をする、配偶者の連れ子と養子縁組するといったことは日常的に聞くことあります。

一般的に、単に「養子」と言ったら、普通養子を指していることがほとんどです。

普通養子による養子縁組をした場合、実親との親子関係は継続します。

特別養子による養子縁組をした場合、実親との親子関係は終了します。

特別養子による養子縁組は、実親との親子関係を切る重大な決定です。

厳格な要件が満たされたときだけ、特別養子が認められます。

実の父母による著しい虐待がある場合やその他特別の事情がある場合で、かつ、子の利益のため特に必要があるときです。

特別養子になると、実親との親子関係がなくなります。

特別養子は養親を相続しますが、実親は相続しません。

特別養子になると、実親との親子関係がなくなります。

6相続人調査を司法書士に依頼するメリット

本籍地の変更や国による戸籍の作り直し(改製)で多くの方は、何通もの戸籍を渡り歩いています。

古い戸籍は現在と形式が違っていて読みにくいものです。

手書きの達筆な崩し字で書いてあると、分かりにくいでしょう。

慣れないと戸籍集めはタイヘンです。

本籍地を何度も変更している方や結婚、離婚、養子縁組、離縁を何度もしている方は、戸籍をたくさん渡り歩いているので、膨大な手間と時間がかかることが多くなります。

戸籍には被相続人の結婚や離婚、子どもや養子の存在といった身分関係がすべて記録されています。

家族の方が知らない相続人が明らかになることもあります。

相続人を確定させるために戸籍を集めるだけでも、知識のない一般の人にはタイヘンな作業です。

家族の方が知らない相続人が明らかになると、精神的な負担はさらに大きいものになります。

相続手続のうち、専門家に任せられるものは任せてしまうといいでしょう。

家族の事務負担を軽減することができます。

戸籍や住民票の取り寄せも司法書士は代行します。

相続人調査でお困りの方は、司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。

遺言書なしで遺贈はできない

2024-08-23

1遺言書なしで遺贈はできない

①遺贈とは遺言書で財産を引き継いでもらうこと

遺贈とは、遺言書を作成して財産を引き継いでもらうことです。

相続人や相続人以外の人に、引き継いでもらうことができます。

相続が発生したら、被相続人の財産は相続人が相続します。

相続人になる人は、法律で決められています。

法律で決められた人以外の人が相続人になることはできません。

法律で決められた人以外の人が遺贈を受けることできます。

遺贈は、相続人以外の人に財産を引き継いでもらうことができるからです。

遺言書を作成して、相続人や相続人以外の人に財産を引き継いでもらうことができます。

②無効の遺言書で遺贈はできない

相続が発生したら、被相続人の財産は相続人が相続します。

遺言書がなくても、相続人は被相続人の財産を相続します。

相続人以外の人は、相続することはできません。

相続できるのは、法律で決められた相続人だけだからです。

相続人以外の人は、遺贈を受けることができます。

遺贈は、遺言書に従って財産を引き継ぐことです。

遺言書なしで、遺贈を受けることはできません。

被相続人が遺言書のつもりで、書面を作っていることがあります。

遺言書には、厳格な書き方ルールがあります。

書き方ルールに違反した遺言書は、無効です。

遺言書が無効になったら、遺贈をすることはできません。

遺贈は、遺言書に従って財産を引き継いでもらうことだからです。

無効の遺言書で、遺贈をすることはできません。

③口頭の遺言はハードルが高い

「私が死亡したら財産を譲る」と、被相続人が常々言っていることがあります。

財産を譲ってもらえると、期待してしまうでしょう。

遺言書作成する場合、自筆証書遺言か公正証書遺言を作成することがほとんどです。

自筆証書遺言は、自分で書いて作る遺言書です。

遺言者がひとりで作ることができるから、手軽な遺言書です。

公正証書遺言は、遺言内容を伝えて公証人が取りまとめる遺言書です。

証人2人に確認してもらって作ります。

自筆証書遺言と公正証書遺言は、どちらも遺言内容は書面にします。

口頭で、自筆証書遺言や公正証書遺言を作ることはできません。

口頭で遺言をすることができないわけではありません。

遺言者に生命の危機が迫っているなどの事情がある場合、口頭で遺言をすることができます。

「私が死亡したら財産を譲る」と被相続人が常々言っていたなどの軽い事情で認められるものではありません。

実際に生命の危機が迫っているときに、遺言をすることはほとんどありません。

特殊な事情があるときに特別に遺言ができること自体、あまり知られていません。

遺言者に生命の危機が迫っているときの遺言は、20日以内に家庭裁判所に対して確認の審判が必要です。

期限までに確認がされなければ、遺言の効力がありません。

遺言者に生命の危機が迫っているときの遺言は、通常の遺言ができるようになってから6か月経過したら当然に無効になります。

口頭で遺言をすることは、非常に高いハードルがあります。

④公正証書遺言がおすすめ

遺言書なしで、遺贈をすることはできません。

せっかく遺言書を作成しても、遺言書が無効になったら遺贈をすることはできなくなります。

遺言者は、法律の知識がないことが多いでしょう。

専門家のアドバイスを受けずに遺言書を作成すると、書き方ルールに違反しがちです。

書き方ルールに違反した遺言書は、無効になります。

公正証書遺言は、公証人が書面に取りまとめます。

公証人は、法律の専門家です。

公正証書遺言は公証人が関与します。

書き方ルールに違反して、遺言書が無効になることは考えられません。

公正証書遺言原本は、公証役場で厳重に保管されます。

公証役場で厳重に保管されているから、改ざんや変造があり得ません。

仮に相続人間で改ざんや変造が疑われた場合、大きなトラブルになるでしょう。

公正証書遺言は改ざんや変造があり得ないから、相続人間のトラブルを減らすことができます。

せっかく遺言書を作成するのであれば、公正証書遺言がおすすめです。

2遺言書がないときは相続人が相続

①遺産分割協議は相続人全員の合意が必要

相続が発生したら、被相続人の財産は相続人が相続します。

相続財産は、相続人全員の共有財産です。

相続財産の分け方は、相続人全員の合意で決める必要があります。

遺言書がある場合、遺言書のとおりに財産を分けることができます。

遺言書がない場合、相続人全員の話し合いで分け方を決定します。

「私が死亡したら財産を譲る」と、被相続人が常々言っていることがあります。

「私が死亡したら財産を譲る」と言った相手が相続人であることがあります。

他の相続人全員が被相続人の言葉に納得していれば、相続人全員の合意ができるでしょう。

一部の相続人が被相続人の言葉に納得できないことがあります。

納得できない相続人がいる場合、相続人全員の合意は難しいでしょう。

合意できない相続人がいる場合、相続財産の分け方を決めることはできません。

相続財産の分け方は、多数決で決めることはできないからです。

遺産分割協議の成立には、相続人全員の合意が必要です。

②相続人が相続した後に贈与ができる

相続が発生したら、被相続人の財産は相続人が相続します。

相続人になる人は、法律で決められています。

法律で決められた人以外の人は、相続人になりません。

相続人以外の人は、相続することはできません。

「私が死亡したら財産を譲る」と言った相手が相続人以外の人であることがあります。

相続人全員が合意しても、相続人以外の人は相続することはできません。

相続できるのは、相続人だけだからです。

相続人が一旦相続した後、贈与することはできます。

自分の財産は、自由に贈与することができるからです。

贈与する財産によっては、贈与税の対象になります。

贈与税は、想像以上に高額になりがちです。

3死因贈与は口頭でも成立

①死因贈与は契約

遺贈とは、遺言書を作成して財産を引き継いでもらうことです。

相続人や相続人以外の人に、財産を引き継いでもらうことができます。

財産を引き継いでもらう方法は、遺贈だけではありません。

財産の持ち主は、自分の財産を自由に贈与することができます。

贈与は、贈与する人と贈与を受ける人の契約です。

「私が死亡したら財産を贈与する」と言った約束も、有効です。

「私が死亡したら財産を贈与する」と言った約束を死因贈与と言います。

贈与を受ける人は、相続人であっても相続人以外の人であっても差し支えありません。

遺贈をするためには、遺言書が必要です。

遺言書なしに、遺贈をすることはできません。

贈与は贈与する人と贈与を受ける人の合意で成立します。

合意があれば成立するから、口頭の合意でも有効です。

贈与契約は、契約書などの書面作成を要件とはされていないからです。

②贈与契約書がないと信用されない

贈与契約は、口頭の合意でも成立します。

贈与する人が生きている場合、贈与をすぐに実行してくれるでしょう。

死因贈与は、贈与する人が死亡した後に実行される契約です。

贈与する義務は、贈与する人の相続人が相続します。

贈与する人の相続人は、贈与契約のことを知らないかもしれません。

贈与契約を知らない場合、贈与する人の相続人は贈与を実行しないでしょう。

贈与を実行してもらうためには、贈与契約があったことを立証する必要があります。

口頭の贈与契約は、立証が困難です。

贈与契約は口頭の合意でも成立しますが、おすすめできません。

口頭のみの贈与契約は、第三者に信用されないからです。

③死因贈与の実現には相続人全員の協力

「私が死亡したら財産を贈与する」と言った約束も、有効です。

約束してもらうだけでは、意味がありません。

贈与は自動で実現されるわけではないからです。

贈与すると約束してもらった財産は、相続人が管理しているでしょう。

贈与してもらうには、相続人全員の協力が必要です。

被相続人が贈与契約を知っていても、相続人は贈与契約に賛成できないかもしれません。

贈与契約に不満を持つ相続人は、贈与の実行に協力をしてくれないでしょう。

死因贈与の実現には、相続人全員の協力が必要です。

④死因贈与契約は公正証書がおすすめ

死因贈与は口頭でも成立しますが、おすすめできません。

相続人に、信用されないからです。

口頭で合意するだけよりは、贈与契約書を作成する方がいいでしょう。

単に私文書で作成するよりは、公正証書にするのがおすすめです。

公正証書で死因贈与契約をすることで、相続人らとのトラブルを減らすことができます。

死因贈与契約書の作成は、公正証書がおすすめです。

⑤死因贈与は生前に仮登記ができる

「私が死亡したら財産を贈与する」と約束した財産が不動産であることがあります。

死因贈与契約をした場合、生前に不動産に仮登記をすることができます。

仮登記とは、将来の登記の順位を保全する登記です。

通常の登記は、仮登記と比較して本登記と言います。

仮登記がされた後は、登記簿上に死因贈与を受ける人がいることが公示されます。

相続が発生した後、相続人が死因贈与契約を知らないことがあります。

相続人が相続して、すぐに売却することがあります。

仮に仮登記がない場合、死因贈与契約のことを知らずに不動産を売却してしまうでしょう。

売却したら、買主は直ちに所有権移転登記をします。

買主が所有権を主張するためには、所有権移転登記をする必要があるからです。

買主が所有権移転登記をした後で、死因贈与をされていたと文句を言うことはできません。

所有権を主張するためには、登記が必要だからです。

仮登記があれば、死因贈与を受ける人がいることが分かります。

仮登記があれば、事実上契約する人はいないでしょう。

死因贈与は、生前に仮登記ができます。

4遺言書作成を司法書士に依頼するメリット

遺言書は、遺言者の意思を示すものです。

自分が死んだことを考えたくないという気持ちがあると、抵抗したくなるかもしれません。

遺言書は遺言者の意思を示すことで、家族をトラブルから守るものです。

遺贈とは、遺言によって、法定相続人や法定相続人以外の人に、財産を譲ってあげるものです。

遺贈は簡単に考えがちですが、思いのほか複雑な制度です。

遺言執行には法的な知識が必要になります。

遺言の効力が発生したときに、遺言執行者からお断りをされてしまう心配があります。

せっかく遺言書を書くのですから、スムーズな手続を実現できるように配慮しましょう。

お互いを思いやり幸せを願う方は、遺言書作成を司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。

遺産分割協議書を公正証書に

2024-08-20

1遺産分割協議書は相続人全員の合意の証明書

相続が発生した後、相続財産は相続人全員の共有財産になります。

相続人のひとりが勝手に処分することはできません。

相続人全員で相続財産の分け方について話し合いによる合意をして、分け方を決める必要があります。

相続財産の分け方にについて、相続人全員でする話し合いのことを遺産分割協議と言います。

遺産分割協議がまとまったら、相続人全員の合意内容を文書に取りまとめます。

相続人全員の合意内容を取りまとめた文書のことを遺産分割協議書と言います。

遺産分割協議は、必ず、全員で合意する必要がありますが、全員が一つの場所に集まる必要はありません。

電話でもメールでも差し支えありません。

一度に全員合意する必要もありません。

一部の相続人と合意をして、次に、残りの相続人と合意をすることでも問題ありません。

最終的に相続人全員が合意できれば良いのです。

全ての財産をまとめて合意しなければならないといったこともありません。

一部の財産についてだけ合意をすることもできます。

遺産分割協議書は、司法書士などの専門家に作ってもらうこともできるし相続人のひとりが作ることもできます。

より確実にするのであれば、公証役場で公正証書にしてもらうといいでしょう。

2遺産分割協議書を公正証書にするメリット

①公正証書は信用力が高い

遺産分割協議書を公正証書にする場合、公証人という法律の専門家が関与します。

公正証書を作成したい当事者の本人確認と本人の意思確認をします。

法律の専門家が公正証書にしますから、書き方の不備のために相続手続ができないという事態はあり得ません。

公証人が確認をしたうえで公正証書にしますから、一般の書面と較べると後から無効を主張されにくくなります。

裁判などに提出した場合でも高い証拠力があります。

公証人が関与するから、公正証書には高い信頼性があります。

②公正証書は公証役場で20年間保管される

遺産分割協議書を公正証書にした場合、原本が公証役場で20年間保管されます。

公証役場で厳重に保管されるから、紛失や改ざんの心配がありません。

③強制執行することができる

遺産分割協議の合意において、金銭の支払いを約束する場合があります。

遺産分割協議書を公正証書にする場合、金銭の支払いをする点だけでなく支払いをしなかったときのことを書いてもらうことができます。

相続人○○が上記金銭の支払いをしなかったときは、直ちに強制執行に服する旨を認諾した。

上記のような文言がある場合、公正証書で強制執行をすることができます。

お金を払ってもらう人にとっては、心強いものと言えます。

公正証書でない遺産分割協議書では、強制執行ができません。

強制執行をするためには、裁判所で訴訟をして勝訴判決などの債務名義を得る必要があります。

約束したお金を払ってもらうために裁判をしなければならないとなるとハードルが高いものです。

遺産分割協議書を公正証書にすると、裁判をすることなく直ちに強制執行することができます。

3遺産分割協議書を公正証書にした方がいいケース

①相続人間のトラブルを防止したい場合

(1)相続人同士の仲が良くない、疎遠である

(2)相続人間に関係性が薄い相続人がいる

(3)包括受遺者など親族でない人がいる

(4)財産が多種類で複雑である

相続財産の分け方は、相続人全員の合意が不可欠です。

上記のような事情がある場合、相続人全員の合意がまとまりにくい傾向があります。

相続人全員で合意ができたはずなのに、無理矢理印鑑を押させられたから白紙に戻すべきだなどと話を蒸し返すことが考えられます。

遺産分割協議書を公正証書にする場合、公証人が本人確認と本人の意思確認をします。

後になって、だまされたから白紙にしたいと言っても、認められることはほとんどありません。

公正証書にすることでトラブル防止に役立ちます。

②代償分割をした場合

相続財産の大部分が自宅不動産の場合、相続財産の分け方の合意は難しくなります。

一部の相続人が不動産を相続し、残りの相続人は不動産を相続した人から、その分のお金をもらう方法で合意がされる場合があります。

一部の相続人が不動産を相続し、残りの相続人は不動産を相続した人から、その分のお金をもらう方法のことを、代償分割と言います。

相続財産の大部分が不動産で、かつ、値段の高い不動産だった場合、残りの相続人に払うお金を用意することが難しい場合があります。

相続人同士の関係性が良くない場合、代償金を払うのが惜しくなるかもしれません。

売買契約などで買主が売買代金を支払わない場合、売主は売買契約を解除することができます。

遺産分割協議では、代償金を支払わない場合でも遺産分割協議を解除することはできません。

代償分割をする場合、代償金をきちんと支払ってもらうことが重要になります。

遺産分割協議書を公正証書にした場合、強制執行をすることができます。

代償金の支払いがない場合、裁判で勝訴判決などの債務名義を得なくても強制執行をすることができます。

代償金を支払ってもらう人にとっては、公正証書にすることは心強いものと言えるでしょう。

4遺産分割協議書を公正証書にする方法

①相続人を調査する

相続が発生したら、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本を取得します。

相続人は、戸籍謄本を読み解けば判明します。

相続人が判明したら、相続人の戸籍謄本を取得します。

②財産調査をする

相続人調査と並行して、財産調査をします。

不動産があれば、名寄帳を取得して登記簿謄本を確認するといいでしょう。

銀行などの預貯金がある場合、残高証明書を取得するといいでしょう。

③相続人全員で相続財産の分け方を合意する

相続人全員で相続財産の分け方の合意をします。

相続人全員が一堂に会して話し合いをしてもいいし、電話やメールで話し合いをしても構いません。

相続人全員が一度に合意してもいいし、一部の相続人で合意した後に残りの相続人で合意しても差し支えありません。

最終的に相続人全員が合意できればいいのです。

④遺産分割協議書を公正証書にする

公証役場に遺産分割協議書を公正証書にする予約をします。

公証人の指示に従って書類を用意します。

5遺産分割協議書を公正証書にするときの必要書類

公証役場に遺産分割協議書を公正証書にする予約をするときに、必要書類が指示されます。

一般的な必要書類は、次のとおりです。

①遺産分割協議書案

②被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本

③相続人の戸籍謄本

④相続人の印鑑証明書

⑤財産についての証明書

(1)不動産 固定資産評価証明書、登記簿謄本

(2)預貯金 預金通帳の写し、残高証明書

(3)負債 借入残高証明書

遺産分割協議書を公正証書にする場合、公証人に手数料を支払う必要があります。

公証人に支払う手数料は財産の規模によって違います。

公正証書にするまでに打合せが必要ですから、手数料の額について確認しておくといいでしょう。

6遺産分割協議書作成を司法書士に依頼するメリット

遺産分割協議書は遺産の分け方について、相続人全員による合意を取りまとめた文書です。

合意がきちんと文書になっているからこそトラブルが防止できるといえます。

つまり、書き方に不備があるとトラブルを起こしてしまう危険があります。

もともとトラブルの火種があるのなら、いっそう慎重になる必要があります。

遺産分割協議書は公正証書にしなくても済むことが多いものですが、慎重を期して公正証書にした方がいい場合があります。

せっかくお話合いによる合意ができたのに、その後にトラブルになるのは残念なことだからです。

公正証書にするためには、手間と費用がかかります。

公正証書にする手間と費用を惜しむと、裁判をするなど大きな手間と高額な費用を負担することになります。

トラブルを防止するため、遺産分割協議書を公正証書にしたい方は、司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。

遺言執行者が遺贈登記

2024-08-19

1遺言執行者が遺言書の内容を実現する

①遺言執行者がいなくても遺言書は有効

遺言執行者は、遺言書の内容を実現する人です。

遺言執行者は、遺言書の不可欠な内容ではありません。

遺言書の有効無効と遺言執行者の指名の有無は、無関係です。

遺言執行者が指名されていても指名されていなくても、有効な遺言書は有効です。

遺言執行者が指名されていても指名されていなくても、無効な遺言書は無効です。

遺言執行者がいなくても、遺言書は有効です。

②遺言執行者の就任は辞退できる

遺言書を作成するとき、遺言者がひとりで作ります。

遺言書で財産のことを決めるとき、相続人や受遺者の同意は不要です。

遺言書で遺言執行者を指名するとき、遺言執行者の承諾は不要です。

いわば、一方的に決めることができます。

遺言書で遺言執行者に指名された場合、荷が重いと感じることがあるでしょう。

法律の知識がないと、遺言執行は難しいことがあります。

病気などで、責任ある職務を全うできないかもしれません。

相続人にあれこれ言われるかもと、心配になることがあります。

遺言執行者に指名されても、就任する義務はありません。

遺言執行者の就任は、ご辞退することができます。

ご辞退する場合、辞退する理由を明らかにする必要はありません。

なんとなく気が進まないでも、自信がないでも差し支えありません。

遺言執行者の就任は、辞退することができます。

③遺言執行者がいないと相続人全員の協力

遺言執行者がいなくても、遺言書は有効です。

遺言書で遺言執行者を指名しても、遺言執行者に就任する義務はありません。

遺言執行者の就任は、ご辞退することができます。

遺言執行者がいない場合、遺言書の内容は相続人全員の協力で実現させます。

遺言書の内容に相続人全員が納得している場合、相続人全員の協力が得られるでしょう。

遺言書の内容に不満がある相続人は、協力してくれないかもしれません。

相続人全員の協力が得られない場合、相続手続が進まなくなります。

遺言執行者がいない場合、相続人全員の協力が必要です。

④遺言執行者がいると妨害行為ができない

遺言執行者は、遺言書の内容を実現する人です。

遺言書の内容を実現するため、必要な権限が与えられます。

遺言執行者がいる場合、相続人は妨害行為をすることができません。

⑤遺言執行者は家庭裁判所で選任してもらえる

遺言執行者がいない場合、家庭裁判所に対して遺言執行者選任の申立てをすることができます。

家庭裁判所に申立てをして、遺言執行者を選任してもらうことができます。

遺言執行者がいない場合、遺言書の内容は相続人全員の協力で実現させます。

相続人の中には、音信不通で協力してくれないことがあります。

行方不明で連絡が取れないこともあるでしょう。

家庭裁判所に遺言執行者を選任してもらった方がラクに手続を進めることができます。

遺言執行者は、家庭裁判所で選任してもらうことができます。

⑥遺言執行者と受遺者が同一

遺言執行者になる人に、特別な資格はありません。

遺言執行者になれない人は、次のとおりです。

(1)未成年者

(2)破産者

遺言執行者は、遺言書で選任することができます。

受遺者を遺言執行者に選任することができます。

遺言執行者を家庭裁判所に選任してもらうことができます。

受遺者を遺言執行者の候補者に立てることができます。

問題がなければ、家庭裁判所は受遺者を遺言執行者に選任してくれます。

2受遺者が相続人以外で遺言執行者がいるときの遺贈登記

①申請人

遺贈登記は、権利者と義務者が共同で登記申請をします。

権利者は受遺者、義務者は遺贈義務者です。

遺言執行者がいる場合、遺贈義務者は遺言執行者です。

遺言執行者とは、遺言書の内容を実現する人です。

遺言執行者は、受遺者であっても構いません。

遺言執行者は遺言の内容を実現するために必要な行為をする権限があります。

協力しない相続人が遺言執行を妨害した場合、原則として、妨害行為は無効になります。

遺贈登記は、受遺者と遺言執行者が共同で登記申請をします。

②添付書類

登記申請書に添付する書類は、次のとおりです。

(1)遺言書

(2)検認済証明書

(3)被相続人が死亡した記載のある戸籍謄本

(4) 被相続人の除票か戸籍の除附票

(5) 不動産の権利証

(6) 遺言執行者の印鑑証明書(発行後3か月以内)

(7) 受遺者の住民票か戸籍の附票

(8) 登記委任状

(9) 不動産の評価証明書

遺言書が公正証書遺言である場合は、検認済証明書は不要です。

遺言書が自筆証書遺言である場合で、かつ、法務局で保管されていた場合は、検認済証明書は不要です。

所有権移転登記をする場合、登記原因を証明する書類を提出する必要があります。

(1)遺言書(2)検認証明書(3)被相続人が死亡した記載のある戸籍謄本(4) 被相続人の除票か戸籍の除附票は、登記原因証明情報として提出します。

売買などで所有権移転登記をする場合、法務局報告形式の登記原因証明情報を提出する場合があります。

法務局報告形式の登記原因証明情報に登記義務者が押印することで、内容の真実性が確保できるとされているからです。

遺贈は登記義務者が内容を認めただけでは、真実性が確保されません。

遺贈の真実性の担保のため、遺言書や戸籍謄本の提出が欠かせません。

このため法務局報告形式の登記原因証明情報を利用することはできません。

登記申請を司法書士に依頼する場合、遺言執行者と受遺者から登記委任状を出せば済みます。

③登録免許税

遺贈による所有権移転登記で相続人以外の人に対するものは、不動産の評価額の1000分の20です。

相続放棄をした人は、相続人でなくなります。

相続放棄をした人であっても、遺贈を受けることができます。

遺贈は、法定相続人に譲ってあげることもできるし相続人以外の人に譲ってあげることができるからです。

相続放棄をした人が遺贈を受ける場合、登録免許税は不動産の評価額の1000分の20です。

④権利証を紛失していたら

相続人以外の人に遺贈登記をする場合、権利証が必要になります。

権利証は大切なものなので、普段は人目にさらすようなことはしません。

保管場所を共有していないと、家族が見つけられなくなります。

権利証を紛失しても、権利は失われません。

遺贈による所有権移転登記をすることができます。

遺贈による所有権移転登記で権利証を提出できない場合、事前通知か本人確認のいずれかの方法をとります。

遺言執行者がいる場合、事前通知であっても本人確認であっても遺言執行者が対象になります。

3遺言執行者が住所変更登記

不動産を持っている場合、住所や氏名が変わったら、その都度手続するのが原則です。

不動産を売却する予定がない場合、先延ばししていることは割とよくあります。

先延ばししたまま、相続が発生することがあります。

先延ばししたままの場合、登記簿上の住所氏名と被相続人の住所氏名が異なります。

相続登記を申請する場合、前提として住所氏名変更登記を申請する必要はありません。

相続人に対する遺贈登記を申請する場合、前提として住所氏名変更登記を申請する必要はありません。

相続登記の申請書に、住所氏名の移り変わりを証明する書類を提出するだけで構いません。

相続人以外の人に対する遺贈登記を申請する場合、前提として住所氏名変更登記を申請する必要があります。

登記簿上の住所氏名と被相続人死亡時の住所氏名が異なっているのに、相続人以外の人に対する遺贈登記だけ申請した場合、取下げをすることになるでしょう。

後から、住所氏名変更登記を提出することはできません。

相続人以外の人に対する遺贈登記を申請する場合、遺言執行者と受遺者が申請人になります。

遺言執行者は、遺贈登記の義務者だからです。

登記簿上の住所氏名と被相続人死亡時の住所氏名が異なっている場合、住所氏名変更登記が必要です。

住所氏名変更登記をしないと、遺言執行者は登記義務を果たすことができません。

遺言執行者は、単独で住所氏名変更登記を申請することができます。

4受遺者が相続人のときの遺贈登記は単独申請

①申請人

遺言書に「遺贈する」とあれば、譲ってもらう人が相続人であっても相続人以外の人でも、遺贈で手続します。

遺贈登記は、権利者と義務者が共同で登記申請をします。

受遺者が相続人である場合、登記申請書に権利者と義務者を記載するだけで義務者の関与が不要です。

形式的には共同申請ですが、事実上、受遺者が単独申請をすることができます。

②添付書類

登記申請書に添付する書類は、次のとおりです。

(1)遺言書

(2)検認済証明書

(3)被相続人が死亡した記載のある戸籍謄本

(4) 被相続人の除票か戸籍の除附票

(5) 受遺者の住民票か戸籍の附票

(6) 登記委任状

(7) 不動産の固定資産税評価証明書

遺言書が公正証書遺言である場合は、検認済証明書は不要です。

遺言書が自筆証書遺言である場合で、かつ、法務局で保管されていた場合は、検認済証明書は不要です。

③登録免許税

(1)原則1000分の4

遺贈による所有権移転登記で相続人に対するものは、不動産の評価額の1000分の4です。

(2) 相続人が死亡している場合非課税

遺贈による所有権移転登記をする場合で、かつ、登記名義人になる人がすでに死亡している場合、

登録免許税は非課税になります。

「租税特別措置法第84条の2の3第1項により非課税」と申請書に記載する必要があります。

(3)100万円以下の土地は非課税

不動産の価額が100万円以下の場合、登録免許税は非課税になります。

「租税特別措置法第84条の2の3第2項により非課税」と申請書に記載する必要があります。

5不動産の名義変更を司法書士に依頼するメリット

大切な家族を失ったら、大きな悲しみに包まれます。

やらなければいけないと分かっていても、気力がわかない方も多いです。

不動産は重要な財産であることも多いので、登記手続は一般の方から見ると些細なことと思えるようなことでやり直しになることも多いです。

住所変更登記が必要になるか必要にならないかなどもそのひとつでしょう。

相続手続は一生のうち何度も経験するものではありません。

だれにとっても不慣れで手際よくできるものではありません。

相続手続で使われる言葉は、法律用語なので一般の方にとって、日常で聞き慣れないものでしょう。

司法書士は登記の専門家です。

相続手続も、登記手続も、丸ごとお任せいただけます。

相続手続でへとへとになる前に、司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。

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