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1姻族関係終了届(死後離婚)とは
①姻族関係終了届は市区町村役場の届出
姻族とは、配偶者の両親や配偶者の兄弟姉妹などの親族のことです。
配偶者の生前に離婚したら、当然に姻族関係は終了します。
配偶者と離婚しないまま配偶者が死亡した場合、姻族関係は終了しません。
配偶者が死亡した後、希望すれば、姻族関係を終了させることができます。
姻族関係を終了させる届出のことを、姻族関係終了届と言います。
市区町村役場に姻族関係終了届を提出することで、姻族関係を終了させることができます。
姻族関係終了届を俗に死後離婚と言います。
②戸籍に変更はない
市区町村役場に姻族関係終了届を提出することで、姻族関係を終了させることができます。
姻族関係終了届を提出した場合、戸籍に記載されます。
戸籍の記載例
姻族関係終了
【死亡配偶者の親族との姻族関係終了日】令和〇年〇月〇日
【死亡配偶者氏名】〇〇〇〇
【死亡配偶者の戸籍】愛知県名古屋市〇〇区〇〇町〇丁目〇番地 〇〇〇〇
戸籍に記載されるだけです。
今までの戸籍から、除籍されることはありません。
新しい戸籍が自動的に作られることはありません。
③氏に変更はない
姻族関係終了届を提出した場合、今までの氏をそのまま使います。
姻族関係終了届を提出しただけで、復氏することはありません。
復氏をしたい場合、あらためて復氏届が必要です。
復氏届を提出した場合、現在の戸籍から除籍されます。
新しく戸籍を作ってもらうか、婚姻前の戸籍に戻してもらうか選択することができます。
④遺族年金の受給権に影響しない
配偶者が死亡した場合、条件を満たせば遺族年金を受給することができます。
姻族関係終了届を提出しても、死亡配偶者との婚姻関係がなくなることがないからです。
姻族関係終了届を提出しても、遺族年金を受け取ることができます。
遺族年金を受け取りながら姻族関係終了届を提出しても、遺族年金の支給が取り消されることはありません。
遺族年金を返還するように言われることはありません。
姻族関係終了届は、遺族年金と無関係だからです。
⑤配偶者は相続人
姻族関係終了届は、配偶者の死亡後、死亡配偶者の両親や兄弟姉妹などとの関係を終了させるものに過ぎません。
相続が発生した時点の法律上の配偶者は、常に相続人になります。
姻族関係終了届を提出しても提出しなくても、相続人です。
被相続人の配偶者は、相続する権利があります。
死亡配偶者の財産を相続した後、姻族関係終了届を提出することがあります。
姻族関係終了届を出しても、相続が無効になることはありません。
姻族関係終了届は、相続と無関係だからです。
2姻族関係終了届(死後離婚)を出しても子どもに影響しない
①子どもの親族関係に影響しない
姻族関係終了届は、配偶者の死亡後、死亡配偶者の両親や兄弟姉妹などとの関係を終了させる届出です。
死亡配偶者との間に子どもがいる場合、子どもの親族関係に影響はありません。
姻族関係終了届を提出した場合、死亡配偶者と子どもは親子のままです。
死亡配偶者の親と子どもは、祖父母と孫のままです。
死亡配偶者の兄弟姉妹と子どもは、伯叔父・伯叔母と甥姪のままです。
子どもの親族関係は、影響がありません。
姻族関係終了届は、生存配偶者と死亡配偶者の両親や兄弟姉妹などとの関係を終了させるだけの効力があるに過ぎません。
②子どもの扶養義務に影響しない
法律上の扶養義務があるのは、原則として、直系血族と兄弟姉妹です。
場合によっては、3親等内の親族も扶養義務を負うことがあります。
死亡配偶者の父母は、子どもから見ると祖父母だから2親等です。
死亡配偶者の兄弟姉妹は、子どもから見ると伯叔父・伯叔母だから3親等です。
姻族関係終了届を提出した場合、生存配偶者は親族関係がなくなります。
死亡配偶者の父母や兄弟姉妹の扶養義務はありません。
姻族関係終了届を提出しても、子どもの親族関係に影響はありません。
事情によっては、子どもは扶養義務を負うことがあります。
③子どもの戸籍に影響しない
姻族関係終了届を提出した場合、届出をした人の欄に姻族関係終了が記載がされます。
姻族関係終了届を提出しても、子どもの戸籍に影響はありません。
今までの戸籍から、除籍されることはありません。
新しい戸籍が自動的に作られることはありません。
④子どもの氏に影響しない
姻族関係終了届を提出した場合、子どもは今までの氏をそのまま使います。
姻族関係終了届を提出しただけで、子どもの氏が変更されることはありません。
生存配偶者が復氏を希望する場合、姻族関係終了届とは別に復氏届を提出します。
復氏届で氏を変更することができるのは、生存配偶者本人だけです。
生存配偶者が復氏届を出した場合、子どもの氏が自動的に変更されることはありません。
子どもの氏を変更したい場合、家庭裁判所の許可が必要です。
⑤子どもの遺族年金の受給権に影響しない
遺族年金は、配偶者だけでなく子どもにも受給権があります。
子のある配偶者が遺族年金を受給する場合、子は支給停止になります。
子は遺族年金の受給権はあるけど、支給停止になっているに過ぎません。
姻族関係終了届を提出した場合、子どもの遺族年金の受給権に影響しません。
子のある配偶者が再婚した場合、失権します。
失権したら、遺族年金を受け取ることはできません。
死亡配偶者との間に子どもがいる場合、要件を満たせば、子どもが遺族年金を受け取ることができます。
姻族関係終了届は、子どもの遺族年金の受給権に影響しないからです。
⑥子どもの相続に影響しない
姻族関係終了届は、配偶者の死亡後、死亡配偶者の両親や兄弟姉妹などとの関係を終了させる届出です。
死亡配偶者との間に子どもがいる場合、子どもの親族関係に影響はありません。
死亡配偶者との間に子どもがいる場合、子どもは相続人になります。
子どもが財産を相続した後に、姻族関係終了届を出しても相続が無効になることはありません。
姻族関係終了届を出し後に、財産を相続できなくなることはありません。
3姻族関係終了届(死後離婚)を出しても子どもは代襲相続
①代襲相続とは
相続が発生した場合、相続人になる人は法律で決まっています。
相続人になる人は、次のとおりです。
(1)配偶者は必ず相続人になる
(2)被相続人に子どもがいる場合、子ども
(3)被相続人に子どもがいない場合、親などの直系尊属
(4)被相続人に子どもがいない場合で、かつ、親などの直系尊属が被相続人より先に死亡している場合、兄弟姉妹
相続人になるはずだった人が被相続人より先に死亡したため、相続人になるはずだった人の子どもや子どもの子どもが相続することがあります。
これを代襲相続と言います。
相続人になるはずだった人の子どもの子どもが相続することを再代襲相続と言います。
代襲相続ができるのは、相続人になるはずだった人の子どもなど被代襲者の直系卑属だけです。
②死亡配偶者の親が死亡したら子どもは代襲相続人
姻族関係終了届は、生存配偶者と死亡配偶者の両親や兄弟姉妹などとの関係を終了させるだけの効力があるに過ぎません。
子どもの親族関係に影響はありません。
死亡配偶者の親が死亡することがあります。
死亡配偶者の親が被相続人です。
被相続人から見ると、相続人になるはずだった子どもが先に死亡しています。
相続人になるはずだった死亡配偶者の子どもが代襲相続をします。
姻族関係終了届を出しても、子どもの親族関係に影響がないからです。
③死亡配偶者の兄弟姉妹が死亡したら子どもは代襲相続人
死亡配偶者の兄弟姉妹が死亡することがあります。
死亡した兄弟姉妹が被相続人です。
被相続人に子どもがいない場合で、かつ、親などの直系尊属が先に死亡していることがあります。
被相続人に子どもがいない場合で、かつ、親などの直系尊属が先に死亡している場合、相続人は兄弟姉妹です。
死亡配偶者は、被相続人の兄弟姉妹だから相続人になるはずだった人です。
相続人になるはずだった死亡配偶者の子どもが代襲相続をします。
姻族関係終了届を出しても、子どもの親族関係に影響がないからです。
④子どもが未成年なら生存配偶者が遺産分割協議
生存配偶者と死亡配偶者の親族らと折り合いが良くないこともあるでしょう。
生存配偶者は、姻族関係終了届を出すことで親族関係を終了させることができます。
姻族関係終了届を出しても、子どもの親族関係に影響はありません。
死亡配偶者の親や兄弟姉妹は、子どもにとって親族のままです。
死亡配偶者の親や兄弟姉妹が死亡した場合、子どもは相続人になります。
相続が発生した場合、被相続人のものは相続人全員の共有財産になります。
相続財産の分け方は、相続人全員の合意で決定しなければなりません。
相続財産の分け方について合意することは、財産の処分と言えます。
未成年は、物事のメリットデメリットを充分に判断できません。
未成年が財産を処分する場合、親などの親権者が代わりに判断します。
未成年の子どもが相続人になる場合、生存配偶者が親権者でしょう。
生存配偶者が未成年の子どもに代わって、遺産分割協議に参加しなければなりません。
5姻族関係終了届(死後離婚)で注意すること
①撤回ができない
いったん姻族関係終了届が受理されると、撤回はできません。
充分検討して、提出することを決めましょう。
②援助が受けられない
姻族関係が終了した場合、死亡配偶者の両親や兄弟姉妹に対する扶養義務がなくなります。
このことは同時に、死亡配偶者の両親や兄弟姉妹から扶養を受けることもできなくなることを意味しています。
経済的に困ることがあっても、援助は受けられなくなるでしょう。
死亡配偶者との間に子どもがいる場合、子どものための援助も受けにくくなるでしょう。
③死亡配偶者の法要に参加しにくい
死亡配偶者の法要を死亡配偶者の両親や兄弟姉妹が主催する場合、参加しにくくなるかもしれません。
死亡配偶者の血縁関係者から参加を拒まれることも考えられます。
死亡配偶者のお墓が私有地にある場合、お墓参りも難しくなるかもしれません。
共同墓地などだれでもお墓参りができる場所に葬るなどするといいでしょう。
④お墓が別々になる
死亡配偶者のためにお墓を新たに建立せず、家のお墓に葬ることがあるでしょう。
姻族関係終了届を提出すると、自分が死亡したとき、そのお墓に入れてもらうことは難しくなるでしょう。
死亡配偶者と同じお墓に眠ることはできなくなります。
⑤子どもの理解を得られない
死亡配偶者との間に子どもがいる場合、子どもと死亡配偶者の両親や兄弟姉妹の親族関係は影響がありません。
子どもと死亡配偶者の両親や兄弟姉妹の親族関係はそのまま続きます。
子どもから抵抗されることもあるでしょう。
子どもにとって、精神的ダメージであることも想定しておく必要があります。
6姻族関係終了届について司法書士に相談するメリット
姻族関係終了届は、マスコミなどから死後離婚と称して取り上げられています。
本来、配偶者の死別によって婚姻関係が終了しています。
配偶者の一方が死亡した後に、離婚することはできません。
死亡配偶者の両親や兄弟姉妹との関係性を解消する点に注目されたものです。
法律上の扶養義務から逃れられる以上に、嫁は親の介護をして当然など社会通念の押し付けから逃れられるのが大きいでしょう。
死亡配偶者の両親や兄弟姉妹がお金を無心することや生活に過剰に干渉することにストレスをためているケースもあります。
姻族関係終了届は、配偶者の死亡後、死亡配偶者の両親や兄弟姉妹などとの関係を終了させるものに過ぎません。
死亡配偶者の両親や兄弟姉妹などの誤解から、相続放棄をするように迫られることもあるでしょう。
死亡配偶者の両親や兄弟姉妹などが感情的になって、すでに相続した財産を返すように要求されることもあるでしょう。
姻族関係終了届を提出しても、死亡配偶者の財産は相続できます。
相続手続をスムーズに終わらせるために、まず正しい知識を手に入れましょう。
姻族関係終了届は、相続に影響はありません。
遺族年金にも、影響はありません。
生命保険の受け取りにも、影響はありません。
姻族関係終了届のことでご心配があれば、司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。