このページの目次
1遺贈と相続のちがい
ちがい①財産を受け取る人
遺贈とは、遺言書で相続人や相続人以外の人に財産を引き継ぐことです。
相続とは、法律で決められた人が財産を引き継ぐことです。
相続人に対しても相続人以外の人に対しても、遺贈をすることができます。
自然人だけでなくボランティア団体や慈善団体などにも、遺贈をすることができます。
ちがい1つ目は、です。財産を受け取る人
ちがい②遺言書の要否
遺贈は、遺言書で財産を引き継ぐことです。
遺言書がないと、遺贈をすることはできません。
相続は、遺言書がなくても遺言書があっても財産を引き継ぐことができます。
ちがい1つ目は、遺言書の要否です。
ちがい③不動産登記の方法
引き継ぐ財産が不動産である場合、名義変更を行います。
相続登記は、相続人が単独で申請します。
遺贈の登記は、原則として、共同申請です。
相続人に対する遺贈は、遺贈を受けた人が単独で申請します。
相続人以外の人に対する遺贈は、遺贈を受けた人と遺贈義務者の共同申請です。
ちがい3つ目は、不動産登記の方法です。
ちがい④放棄の方法
相続が発生したら、相続人は相続を単純承認するか相続放棄をするか選択することができます。
相続放棄を希望する場合、家庭裁判所に対して相続放棄の申立てをします。
相続放棄の申立ては、3か月の期限があります。
遺贈されたことを知ったら、遺贈を承認するか放棄するか選択することができます。
遺贈の放棄を希望する場合、遺贈の種類によって方法が異なります。
特定遺贈と包括遺贈です。
特定遺贈とは、遺言書に、「財産〇〇〇〇を遺贈する」と財産を具体的に書いてある場合です。
包括遺贈とは、遺言書に、「財産すべてを包括遺贈する」「財産の2分の1を包括遺贈する」と割合だけ書いて財産を具体的に書いてない場合です。
特定遺贈の放棄に、期限はありません。
特定遺贈の放棄を希望する場合、遺贈義務者に通知するだけです。
遺贈義務者とは、次の人です。
・遺言執行者がいる場合 遺言執行者
・遺言執行者がいない場合 相続人
包括遺贈の放棄に、3か月の期限はあります。
包括遺贈の放棄を希望する場合、家庭裁判所に対して包括遺贈の放棄の申立てをします。
ちがい4つ目は、放棄の方法です。
ちがい⑤不動産取得税の有無
不動産取得税とは、不動産を取得したときに課される税金です。
相続で不動産を取得した場合、不動産取得税は課されません。
遺贈で不動産を取得した場合、不動産取得税は課されるケースと課されないケースがあります。
相続人が遺贈を受ける場合、不動産取得税は課されません。
相続人以外の人が包括遺贈を受ける場合、不動産取得税は課されません。
相続人以外の人が特定遺贈を受ける場合、不動産取得税は課されます。
ちがい5つ目は、不動産取得税の有無です。
2 遺言書で遺贈するメリット
メリット①相続人以外の人に財産を引き継げる
相続で財産を引き継ぐことができるのは、相続人のみです。
法律で決められた相続人以外の人は、相続することができません。
相続人以外の人であっても、遺贈をすることができます。
相続人以外の人に財産を引き継ぎたい場合、遺贈は有効です。
メリット1つ目は、相続人以外の人に財産を引き継ぐことです。
メリット②遺言者の意思を反映できる
遺贈する場合、だれに財産を引き継ぐか遺言者が決めます。
どの財産を引き継ぐか、遺言者が決めます。
遺言者の意思で、だれにどの財産を引き継ぐか決めることができます。
メリット2つ目は、遺言者の意思を反映できることです。
メリット③遺言者死亡まで内容を秘密にできる
遺言書を作成するときに、相続人の同意は不要です。
遺言書の内容は、相続人に秘密にすることができます。
遺贈に効力が発生するのは、遺言者が死亡したときです。
遺言者が死亡するまで、遺贈を秘密にすることができます。
メリット3つ目は、遺言者死亡まで内容を秘密にできることです。
メリット④遺贈の放棄ができる
遺言書で遺贈しても、遺贈を放棄することができます。
遺言書を作成するときに、遺贈を受ける人の同意が不要だからです。
特定遺贈も包括遺贈も、放棄をすることができます。
メリット4つ目は、遺贈の放棄ができることです。
3 遺言書で遺贈する注意点と対策
注意点①遺言書が無効になると遺贈も無効
遺言書がないと、遺贈をすることはできません。
遺言書が無効になると、遺贈も無効になります。
遺言書には、厳格な書き方ルールがあります。
書き方ルールに違反すると、遺言書は無効になります。
遺言書が無効になると、遺贈ができなくなります。
注意点1つ目は、遺言書が無効になると遺贈も無効になることです。
遺言書を作成する場合、公正証書遺言か自筆証書遺言がほとんどです。
自筆証書遺言は、自分で書いて作る遺言書です。
遺言者は、遺言書の書き方ルールを詳しく知らないことが多いでしょう。
公正証書遺言とは、遺言内容を公証人に伝え公証人が書面に取りまとめる遺言書です。
公証人は法律の専門家だから、書き方ルールに違反して無効になることは考えられません。
遺言書作成は、公正証書遺言がおすすめです。
注意点の対策は、公正証書遺言を作成することです。
注意点②遺言書があっても遺留分侵害額請求
遺留分とは、相続人に認められた最低限の権利です。
配分された財産が遺留分に満たない場合、遺留分侵害額請求をすることができます。
遺言書を作成して、財産の大部分を遺贈することがあります。
財産の大部分を遺贈すると、相続人の遺留分を侵害するでしょう。
遺留分侵害額請求がされると、深刻なトラブルに発展しがちです。
注意点2つ目は、遺言書があっても遺留分侵害額請求ができることです。
遺言書を作成するだけで、相続人の遺留分を奪うことはできません。
相続トラブルのを防止するため、相続人の遺留分に配慮することが重要です。
注意点の対策は、遺留分に配慮した遺言書を作成することです。
注意点③包括遺贈は負債も承継
包括遺贈とは、割合だけ書いて財産を具体的に書いてない場合です。
遺言書で指定された割合で、負債も引き継ぎます。
注意点3つ目は、包括遺贈は負債も承継することです。
特定遺贈は、財産を具体的に書いてある場合です。
遺言書で指定された財産以外は、引き継ぎません。
注意点の対策は、包括遺贈ではなく特定遺贈をすることです。
注意点④遺贈の登記は共同申請
遺贈の登記は、原則として、共同申請です。
登記権利者と登記義務者が協力して、不動産の名義変更をします。
協力しない人がいると、名義変更が難航します。
注意点4つ目は、遺贈の登記は共同申請です。
登記義務者は、遺贈義務者です。
遺言執行者がいない場合、遺贈義務者は相続人全員です。
一人でも協力しない相続人がいると、名義変更が進められなくなります。
遺言執行者がいる場合、遺贈義務者は遺言執行者です。
協力しない相続人がいても、遺言執行者が名義変更をすることができます。
注意点の対策は、遺言執行者を指定しておくことです。
注意点⑤税金の負担
不動産の遺贈を受けた場合、不動産取得税が課されます。
遺贈の登記を申請する際に、登録免許税が課されます。
不動産の評価額によっては、無視できない金額になるでしょう。
配偶者や1親等の血族以外の人が遺贈を受けた場合、相続税が2割加算になります。
注意点5つ目は、税金の負担があることです。
税負担ができないことを理由として、遺贈が放棄されることがあります。
注意点の対策は、税負担を考慮した遺言内容にすることです。
注意点⑥生前処分で特定遺贈が撤回
特定遺贈は、遺言書に記載された財産以外の財産は引き継ぎません。
遺言書を作成した後でも、遺言者は自由に自分の財産を処分することができます。
特定遺贈すると書いたのに財産を処分した場合、財産を引き継ぐことはできなくなります。
生前処分をすると、遺言が撤回されるからです。
注意点6つ目は、生前処分で特定遺贈が撤回になることです。
遺言書は、何度でも書き直しをすることができます。
財産の処分をしたら、遺言書の見直しをするといいでしょう。
遺言書の書き直しをする際に、相続人などの同意は不要です。
注意点の対策は、遺言書の書き直しをすることです。
4公正証書遺言を作成する流れ
手順①相続人と財産の確認
だれが相続人になるか、どのような財産があるか確認します。
手順1つ目は、相続人と財産の確認です。
手順②遺言内容の検討
相続人の遺留分を確認して、どのように分けるといいか決定します。
トラブルに防止のため、司法書士などの専門家にサポートを受けることができます。
手順2つ目は、遺言内容の検討です。
手順③公証役場を決める
司法書士などの専門家にサポートを依頼する場合、公証役場との打合せもおまかせできます。
公証役場に出向いて遺言書を作成する場合、どこの公証役場でも作成できます。
住所地や本籍地などに関係なく、希望する公証役場を自由に選ぶことができます。
急ぎで遺言書を作成したい場合、予約が取れる公証役場にするのがおすすめです。
複数の公証役場に問合わせをして、空き状況の確認をします。
公証役場に出向くことが難しい場合、公証人に出張してもらって遺言書を作成することができます。
公証人は同一都道府県内のみ、出張することができます。
公証人に出張してもらうと、出張費用が別途かかります。
愛知県内であれば、公証役場は11か所あります。
名古屋市内であれば、葵町公証役場、熱田公証役場、名古屋駅前公証役場の3か所です。
手順3つ目は、公証役場を決めることです。
手順④公証役場と打合せ
遺言内容を書面にするため、公証人と打合せをします。
打合せのときに、必要書類が指示されます。
公証人が文案作成をしたら、内容を確認します。
遺言書文案確認は、司法書士などのサポートを受けると安心です。
遺言書文案が確定したら、公証役場の手数料も確定します。
打ち合わせのときに、必ず手数料を確認するのがおすすめです。
手順4つ目は、公証役場と打合せです。
手順⑤必要書類の準備
公証役場と打合せのときに、必要書類が指示されます。
次の書類が指示されることが多いでしょう。
・遺言者の印鑑証明書
・相続人の戸籍謄本
・受遺者の住民票
・不動産の登記簿謄本
・預貯金の通帳のコピー
手順5つ目は、必要書類の準備です。
手順⑥証人2人を手配
公正証書遺言を作成する場合、証人2人に立会ってもらいます。
証人になる人に、特別な資格は不要です。
証人は、公証役場でも紹介してもらうことができます。
手順6つ目は、証人2人を手配することです。
手順⑦公証人を予約
公正証書遺言を作成するためには、公証役場で日時を予約します。
予約する方法は、電話予約か窓口予約です。
手順7つ目は、公証人を予約することです。
手順⑧遺言書作成当日
あらためて、遺言者本人の口から遺言内容を伝えます。
あらかじめ確認した公正証書文案どおり、公証人が読み上げてくれます。
問題がなければ、遺言者と証人2人が署名し押印します。
公正証書遺言原本は、公証役場で厳重保管されます。
手順8つ目は、遺言書作成当日です。
5遺贈の手続
手順①遺言書の開示
公正証書遺言を作成したときに、遺言者に公正証書遺言の正本と謄本が渡されます。
公正証書遺言の正本で、遺言執行をすることができます。
公正証書遺言は、家庭裁判所で検認手続をする必要がありません。
遺言書に効力が発生するのは、遺言者が死亡したときです。
遺言者が死亡した後であれば、相続人が遺言書を開示してもらうことができます。
手順1つ目は、遺言書の開示です。
手順②遺贈の意思表示
遺言書に遺贈すると書いてある場合、遺贈を受けるか遺贈を放棄するか選択することができます。
特定遺贈は、いつでも遺贈を放棄することができます。
包括遺贈は、3か月以内に家庭裁判所に対して包括遺贈の放棄の申立てをします。
手順2つ目は、遺贈の意思表示です。
手順③財産の引渡し
名義変更をして、財産を引き渡します。
遺言執行者を指名しておくと、確実に遺言書の内容を実現してくれるから遺言者にとって安心です。
遺言執行者が指名してあると、相続手続をおまかせできるから家族にとって安心です。
手順3つ目は、財産の引渡しです。
6遺言書作成を司法書士に依頼するメリット
遺言書は、被相続人の意思を示すものです。
自分が死んだことを考えたくないという気持ちがあると、抵抗したくなるかもしれません。
民法に遺言書を作ることができるのは、15歳以上と定められています。
遺言書を作成すれば、法定相続人や法定相続人以外の人に財産を引き継ぐことができます。
遺言書があって遺言執行者がいれば、相続手続はおまかせできます。
遺言者にとっても財産を受け取る人にとっても、安心です。
相続人がいない場合、想像以上に手間と時間がかかります。
手間と時間をかけても、確実に財産を引き継ぐことができるわけではありません。
お互いを思いやる方は、遺言書作成を司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。