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1遺産分割協議が必要な場合
①遺言書に書いていない財産が見つかった場合
遺言書がある場合、その遺言書のとおり相続します。
原則として、相続人全員による話し合いは必要ありません。
遺言書があっても、遺言書に書いていない財産が見つかることがあります。
この場合は、見つかった財産の分け方を決めるため、相続人全員による合意が必要になります。
②遺言書が無効な場合
遺言書の書き方ルールは厳格に決まっています。
この書き方ルールに添わない遺言書が見つかることがあります。
せっかくの遺言書ですが、書き方ルールに添わない遺言書は無効です。
遺言書はないものとして扱われます。
遺言書がない場合と同じように、見つかった財産の分け方を決めるため、相続人全員による合意が必要になります。
③遺言書の内容と異なる相続をする場合
法的に有効な遺言書がある場合、原則として、遺言書のとおり相続することになります。
遺言書によって相続する人と相続人全員が合意をすれば遺言書の内容と異なる合意した内容の相続をすることができます。
2遺産分割協議書に預金の分け方を書く方法
①銀行の記載例
相続財産中、次の被相続人名義の財産については、相続人○○○○が相続する。
金融機関名 ○○銀行 ○○支店
預金種別 普通預金
口座番号 ○○○○○○○
金融機関名 ○○銀行 ○○支店
預金種別 定期預金
口座番号 ○○○○○○○
②ゆうちょ銀行の記載例
相続財産中、次の被相続人名義の財産については、相続人○○○○が相続する。
金融機関名 ゆうちょ銀行
通常貯金
記号 ○○○○○
番号 ○○○○○○○○
金融機関名 ゆうちょ銀行
定額貯金
記号 ○○○○○
番号 ○○○○○○○○
③信用金庫や農業協同組合の出資金の記載例
相続財産中、次の被相続人名義の財産については、相続人○○○○が相続する。
金融機関名 ○○信用金庫○○支店
預金種別 普通預金
口座番号 ○○○○○○○
出資金 会員番号○○○○○○○
信用金庫や農業協同組合に口座がある場合、出資金の合意を忘れがちです。
口座の解約だけでなく出資金の払戻を受けるために、もれなく記載しましょう。
④代表相続人の相続して代償金を支払う場合の記載例
第1条
相続財産中、次の被相続人名義の財産については、相続人○○○○が相続する。
金融機関名 ○○銀行 ○○支店
預金種別 普通預金
口座番号 ○○○○○○○
金融機関名 ○○銀行 ○○支店
預金種別 定期預金
口座番号 ○○○○○○○
第2条
相続人○○○○は前条の預金を取得する代償として、次のとおり令和○年○月○日限り指定口座に振込みの方法により支払う。
振込手数料は相続人○○○○の負担とする
相続人□□□□ □□□万円
相続人◇◇◇◇ ◇◇◇万円
預貯金を分ける場合、金融機関ごとに分ける合意ができないことがあります。
預貯金の残高に違いがあるからです。
公平な分割のため、代表相続人が相続して代償金を払う方法をとることができます。
遺産分割協議書に代表相続人が相続することだけを記載した場合、代償金の支払いに対して贈与税が課されるリスクがあります。
遺産分割の代償金であることを明記して、贈与税課税のリスクを回避します。
3遺産分割協議書に預金の分け方を書くときの注意点
①預貯金を分けるためには相続人全員の合意が必要
金融機関は、口座の持ち主が死亡した事実を知った時点で口座を凍結します。
相続人であっても一人が勝手に口座を解約することはできません。
相続人の一人が勝手に口座を解約できるとすると、相続人間で大きなトラブルになるでしょう。
銀行は、他の相続人から強い抗議を受けることになります。
被相続人の預金を守れなかった場合、銀行の信頼は失墜すると言えます。
このようなことを防ぐため、銀行は口座を凍結します。
凍結した口座は、預金の引き出しや引き落としができません。
口座の凍結解除をしてもらうためには、相続人全員で預金の分け方の合意をする必要があります。
相続人全員の合意ができなければ、口座は凍結されたままです。
②遺産分割協議書に金額は記載不要
遺産分割協議書は、相続財産の分け方を取りまとめた文書です。
相続財産の分け方が分かるように記載すればいいと言えます。
財産の分け方は、財産を特定できるように記載します。
預貯金であれば、○○銀行○○支店普通預金口座番号○○○○○○○のように口座で特定すれば充分でしょう。
口座の残高を記載した場合、利息や配当金などを含めて正確に記載しなければなりません。
不備があると銀行は解約に応じてくれません。
わざわざ金額を記載する必要はないでしょう。
③銀行ごとに遺産分割協議書を作ることができる
金融機関は、口座の持ち主が死亡した事実を知った時点で口座を凍結します。
生活資金の口座は、早く凍結解除してもらいたいものです。
遺産分割協議書は、相続財産すべてを1通に取りまとめる必要はありません。
生活資金の口座だけ先に分け方の合意をすることができます。
合意ができた財産についてだけ遺産分割協議書を作ることができます。
銀行ごとに別々の遺産分割協議書を作ることも差し支えありません。
4遺産分割前の預金払い戻し
口座がいったん凍結されると、遺産の分け方について相続人全員で合意するまで、預金の引き出しはできません。
なのに、被相続人の未払い入院費や葬儀の費用を被相続人の口座から払おうとすることが多いのです。
すぐに現金が必要な場合、分割前の預金払い戻し制度があります。
分割前の預金払い戻し制度は手続方法が2種類あります。
銀行などの金融機関に直接手続する方法と家庭裁判所に手続する方法です。
①銀行に直接手続する方法
カンタンで費用が掛かりません。
払い戻し額は最高で150万円です。
預金額や法定相続分によってはもっと低いこともあります。
②家庭裁判所に手続する方法
調停や審判の申立をしていることが前提条件です。
家庭裁判所の手続なので、煩雑で時間と手間の負担が大きいです。
払戻の必要があることを裁判所に説明する必要があります。
必要が認められれば預金全額の払戻も認められることもあります。
家庭裁判所の判断で、預金全額の払戻が認められない場合もあります。
分割前の預金払い戻しをすると、単純承認したと判断されるおそれがあります。
単純承認したと判断された場合、相続放棄ができなくなります。
相続財産の内容がはっきりしないうちに利用するのは慎重に判断しましょう。
5預貯金口座の相続手続を司法書士に依頼するメリット
口座を凍結されてしまったら、書類を揃えて手続すれば解除してもらえます。
このとき必要な書類は銀行などの金融機関によってまちまちで、手続にかかる方法や手続にかかる期間もまちまちです。
銀行内部で取扱が統一されていないことも少なくありません。
窓口や電話で確認したことであっても、上席の方に通してもらえないケースも多々あります。
このため何度確認しても違う説明をされたり、やり直しになることがあります。
口座の解約は、スムーズに手続できないことが多いのが現状です。
日常生活に不可欠な銀行口座だからこそ、スムーズに手続したいと思う方が多いでしょう。
お仕事や家事でお忙しい方や高齢、療養中などで手続きが難しい方は、手続を丸ごとおまかせできます。
ご家族にお世話が必要な方がいて、お側を離れられない方からのご相談もお受けしております。
凍結口座をスムーズに解除したい方は、司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。