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1遺言書の検認とは
自筆証書遺言や秘密証書遺言を預かっている人や見つけた人は家庭裁判所に届け出る必要があります。
この届出のことを検認の申立てといいます。
遺言書の検認とは、家庭裁判所で遺言書の状態を確認してもらうことです。
遺言書が封筒に入っていて、封がされていることがあります。
封印がしてある遺言書は開封したくなるかもしれませんが、開封してはいけません。
裁判所で、開封してもらいます。
勝手に開封すると、5万円以下のペナルティーになるおそれがあります。
検認は、遺言書の状態や形、書き直しや訂正箇所、日付や署名がどうなっているか裁判所が確認する手続です。
裁判所で遺言書の状態が記録されるから、偽造や変造をすると分かってしまいます。
検認手続は、遺言書の偽造や変造を予防するための手続です。
勝手に開封すると、他の相続人から変造したのではないかなどと言いがかりをつけられるおそれがあります。
トラブルに巻き込まれないようにするため、遺言書の開封は家庭裁判所におまかせしましょう。
うっかり開封してしまっても、遺言書が無効になることはありません。
開封してしまった後、ごまかそうとして、糊付けをしたり余計な小細工をしてはいけません。
そのまま、裁判所に提出しましょう。
ごまかしが明るみに出ると、それこそ他の相続人は開封した人に強い不信感を持ちます。
大きなトラブルに発展してしまうおそれがあります。
正直に事情を説明して、理解を得るようにした方がいいでしょう。
封がしていない遺言書も封筒に入っていない遺言書も、検認は必要です。
相続人全員で検認はしなくていいなどと合意しても、意味がない合意です。
2検認が必要な遺言書とは
①遺言書の種類
遺言書の種類は、民法という法律で決められています。
大きく分けて、普通方式の遺言と特別方式の遺言とあります。
普通方式の遺言は、次の3つです。
(1)自筆証書遺言
(2)公正証書遺言
(3)秘密証書遺言
特別方式の遺言は、次の4つです。
(1)死亡の危急に迫った者の遺言
(2)伝染病隔離者の遺言
(3)在船者の遺言
(4)船舶遭難者の遺言
特別方式の遺言は、ごく稀な遺言です。
生命の危機に迫っている人や航海中など交通できない人が作る特別の遺言だからです。
多くの方にとって遺言というと、普通方式の遺言です。
なかでも①自筆証書遺言②公正証書遺言のいずれかを作成される方がほとんどです。
②自筆証書遺言とは
自筆証書遺言は、遺言者が自分で書いて作った遺言書のことです。
専門家の手を借りることなく手軽に作ることができます。
世の中の大半の遺言書は、自筆証書遺言です。
封筒に入れなければならないといった決まりもありません。
筆記用具や紙に、制約はありません。
書き換えられるおそれが大きいのでおすすめはできませんが、鉛筆で書いても有効です。
ひとりで作ることができるので、作るだけであれば、費用はかかりません。
③法務局保管の自筆証書遺言は検認手続不要
自分で手書きして作った遺言書は、自分で保管するのが原則です。
希望すれば、法務局で預かっておいてもらうことができます。
これが自筆証書遺言保管制度です。
自筆証書遺言は、だれかの手を借りることなく手軽に作ることができます。
遺言書は、大切なものです。
通常は、簡単に人目にさらすようなことはしません。
簡単に人目にさらすことはしませんから、本人が紛失することがあります。
遺言書の保管場所を家族が共有していない場合、遺言書を見つけられなくなるリスクがあります。
自筆証書遺言を家族などが保管する場合、保管している人が廃棄・隠匿・改ざんするリスクがあります。
法務局が保管しているから、廃棄・隠匿・改ざんの心配がなくなります。
法務局は、預かった自筆証書遺言書を厳重に保管しています。
相続人が遺言書原本を受け取ることはできません。
遺言者が預けた遺言書の内容は、遺言書情報証明書で確認することができます。
遺言書情報証明書は、法務局が預かっている自筆証書遺言の内容を証明した書類です。
相続人は遺言書原本を手にすることがないから、偽造や変造はできません。
公正証書遺言は、わざわざ家庭裁判所で検認手続をしてもらう必要がありません。
④公正証書遺言は検認手続不要
公正証書遺言とは、遺言内容を公証人に取りまとめてもらって作る遺言書です。
遺言者が公証人に遺言内容を伝えて、証人2人に確認してもらって作ります。
原則として、公証役場に出向く必要があります。
公正証書遺言の原本は、公証役場で厳重に保管されます。
公正証書遺言を作成した場合、渡されるのは正本と謄本です。
遺言書の正本や謄本を偽造しても変造しても、意味はありません。
公正証書遺言の原本が公証役場で厳重に保管されているからです。
相続人などが手にする書面は、原本ではなく正本や謄本です。
公正証書遺言書原本は、公証役場で厳重に保管されているから偽造や変造はできません。
公正証書遺言は、わざわざ家庭裁判所で検認手続をしてもらう必要がありません。
⑤法務局保管でない自筆証書遺言書は検認が必要
検認は、遺言書の状態や形を裁判所が確認して偽造や変造を防止する手続です。
公正証書遺言原本は、公証役場に厳重に保管されています。
法務局保管の自筆証書遺言書は、法務局で厳重に保管されています。
公正証書遺言も法務局保管の自筆証書遺言書も厳重に保管されているから、偽造や変造はできません。
家庭裁判所が検認手続をして、偽造や変造を防止する必要がありません。
法務局保管でない自筆証書遺言書は、検認手続が必要になります。
3検認しても検認しなくても遺言書の効力は変わらない
①家庭裁判所に自筆証書遺言書検認の申立て
自筆証書遺言や秘密証書遺言を預かっている人や見つけた人は、裁判所で検認をしてもらう必要があります。
家庭裁判所は申立てを受け取った後、検認期日を決定します。
相続人全員に対して遺言書が見つかったので検認をしますよというお知らせを出します。
②検認は遺言書の有効無効を判断する手続ではない
検認は、遺言書の状態や形、書き直しや訂正箇所、日付や署名がどうなっているか裁判所が確認する手続です。
封印がしてある遺言書は、検認期日で開封してもらいます。
遺言書の状態や形を確認するだけで、遺言書の有効無効を決める手続ではありません。
検認手続をしても、無効の遺言書が有効になることはありません。
無効の遺言書は、検認手続をしても無効の遺言書です。
③検認をしていないと相続手続ができない
検認手続は、遺言書の有効無効を決める手続ではありません。
遺言書の有効無効と検認手続は、無関係です。
相続手続をする場合、検認が必要な遺言書は検認済証明書が必要になります。
検認済証明書がない場合、相続手続先が相続手続を受け付けてくれません。
4検認期日に欠席してもいい
①自筆証書遺言書検認の申立人は必ず出席
遺言書検認の申立てを受け取った場合、家庭裁判所は検認しますよと相続人全員を呼び出します。
遺言書検認の申立てをする場合、遺言書原本は提出しません。
家庭裁判所が呼出した日に持っていって、検認をしてもらいます。
検認期日は、申立人が遺言書原本を持っていく日です。
申立人は必ず出席して、遺言書原本を持っていく必要があります。
申立人は欠席するわけにいかないから、家庭裁判所がスケジュール調整をしてくれます。
②検認期日に欠席しても不利益はない
申立人以外の人は、遺言書の検認の立会いをするだけです。
仕事や家事で忙しい場合、欠席しても構いません。
検認期日に欠席した場合に、ペナルティーなどの不利益を受けことはありません。
検認しても検認しなくても、遺言書の効力は変わりません。
検認期日に出席しても欠席しても、相続人の権利に影響はありません。
検認期日に出席しても欠席しても、受け取る財産に変わりはありません。
検認期日に出席しても欠席しても、遺言書の有効無効を主張することができます。
5検認の申立てを司法書士に依頼するメリット
自筆証書遺言や秘密証書遺言を預かっている人や見つけた人は家庭裁判所に届け出る必要があります。
遺言書を隠したり捨てたりすると、相続人になることができません。
このような疑いをかけられてトラブルになるのを避けるためにも、すみやかに家庭裁判所に検認の申立てをしましょう。
申立てのためには、たくさんの書類が必要になります。
仕事や家事で忙しい人や高齢、療養中などで手続が難しい人は、手続を丸ごとお任せすることができます。
家族にお世話が必要な人がいて、お側を離れられない人からのご相談もお受けしております。
裁判所に提出する書類を作成できるのは、弁護士と司法書士のみです。
弁護士と司法書士でない人は作成代行はできませんから、充分注意しましょう。
遺言書の検認を司法書士に依頼した場合、遺言書検認申立書の作成だけでなく、家庭裁判所への提出もおまかせいただけます。
遺言書を預かっている方や見つけた方はトラブルになる前に、司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。