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1登録免許税とは
相続による不動産の名義変更のことを相続登記と言います。
不動産の名義変更をするときに、かかる税金が登録免許税です。
相続でかかる税金というと相続税だけ注目しがちです。
相続税の申告が必要になる人は、多くはありません。
相続税の申告が必要になる人は10%にも満たないわずかな人です。
申告が必要なだけで相続税がかからない人も少なくありません。
相続税の納付が必要な人は、さらにわずかな人です。
自宅など不動産を所有している人は、たくさんいます。
相続が発生した場合、名義変更が必要になります。
相続登記を申請するとき、登録免許税を納入します。
2相続登記の登録免許税の計算方法
ステップ①固定資産税評価額を調べる
相続登記をするときは、法務局に登録免許税を納めます。
登録免許税は、不動産の評価額を基にして計算します。
不動産の評価額とは、固定資産税評価額のことです。
固定資産税評価額は、固定資産税評価証明書を取得すると判明します。
固定資産税評価証明書は、不動産が所在する市区町村役場に請求すると発行してもらうことができます。
市区町村役場によっては、登記申請用の固定資産税評価通知書を発行する場合があります。
登記申請用の固定資産税評価通知書は、多くの市区町村役場は無手数料です。
固定資産税は、5月ごろ納付書が届きます。
納付書の表紙に課税明細書が添付されています。
課税明細書にも、固定資産税評価額が記載されています。
固定資産税評価額は、最新のものである必要があります。
固定資産税評価証明書、固定資産税評価通知書、課税明細書には、年度が記載されています。
固定資産税評価証明書、固定資産税評価通知書、課税明細書は、毎年4月1日に新年度になります。
相続登記を申請するときに、最新年度の証明書を提出します。
3月中に取得した証明書を添付して、4月に相続登記を申請すると証明書を取り直すように言われます。
新年度になると、固定資産税評価額が変更されます。
ステップ②1000円未満の端数を切り捨て
登録免許税は、不動産の評価額を基にして計算します。
評価証明書を見ると、不動産の価格以外にたくさんの数字が書いてあります。
評価証明書に記載してある課税標準金額は使うことができません。
評価証明書に記載してある課税標準金額は、固定資産税を計算するときに使う金額だからです。
最新の固定資産税評価額から、1000円未満の端数を切り捨てます。
ステップ③相続登記の登録免許税は1000分の4
相続登記の登録免許税の税率は、1000分の4です。
端数切捨てた額に1000分の4をかけた金額を計算します。
ステップ④100円未満の端数を切り捨て
1000分の4をかけた金額を納めるわけではありません。
1000分の4をかけた金額から100円未満の端数を切り捨てます。
100円未満の端数を切り捨てた金額が登録免許税です。
3相続登記の登録免許税の納付方法
①登録免許税は相続登記の申請時に納付する
登録免許税は、相続登記をするときに納めます。
相続登記を申請するのは法務局だから、登録免許税も法務局に納入します。
相続登記を申請するときに納入しますから、納期限はありません。
相続登記を放置するとデメリットが大きいので、できるだけ早く相続登記を済ませましょう。
②収入印紙を収入印紙貼付台紙に貼って納入
登録免許税は、収入印紙貼付台紙に貼付して納入することが一般的です。
税務署や金融機関で納付書を受け取って納入することもできます。
収入印紙は法務局の人が消印をしますから、消印をしないまま提出します。
消印をしやすいように縦に並べて、台紙の右側に寄せて貼付するといいでしょう。
登記申請書と収入印紙貼り付け台紙は契印を施します。
収入印紙は、法務局窓口、郵便局、コンビニエンスストアで購入することができます。
コンビニエンスストアは高額の印紙の在庫がないことが多いのでおすすめできません。
法務局の窓口まで出向いて相続登記を申請する場合であっても、現金で納入することはできません。
相続登記をオンライン申請した場合、ペイジーで納入することができます。
③相続登記の必要書類
登記申請書には、通常、相続関係説明図を添えます。
遺言書がない場合、おおむね、次の書類が必要です。
(1)被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本
(2)相続人の現在戸籍
(3)被相続人の住民票の除票
(4)不動産を相続する人の住民票
(5)遺産分割協議書
(6)相続人全員の印鑑証明書
事例によっては追加書類が必要になる場合があります。
④相続登記の申請
相続登記の必要書類が集まったら、相続登記を申請します。
登記申請書は、専用の申請書があるわけではありません。
法務局のホームページに記載例があるので、参考にしながら作成するといいでしょう。
パソコンなどで作っても、手書きしても差し支えありません。
4相続登記の登録免許税が非課税になる場合とは
①死亡した相続人への相続登記
登記名義人から死亡した相続人に相続登記をする場合、土地の登録免許税が非課税になります。
登記簿には、死亡した相続人に名義が変更になります。
現に生きている人だけでなく、死亡した人も登記名義をつけることができます。
すでに死亡していても、生前、その不動産を所有していたからです。
登記名義人から死亡した相続人に相続登記をする場合、死亡した相続人の相続人が申請します。
登記申請書には「租税特別措置法第84条の2の3第1項により非課税」と記載します。
記載しない場合、非課税となりません。
記載を忘れて、通常どおり登録免許税を納めた場合、登録免許税は還付されません。
②死亡した相続人への遺贈登記
登記名義人から死亡した相続人に遺贈登記をする場合、土地の登録免許税が非課税になります。
遺贈とは、被相続人が遺言によって、法定相続人や法定相続人以外の人に、財産を譲ってあげることです。
遺贈によって、法定相続人に対して財産を譲ってあげることも、法定相続人以外の人に対して財産を譲ってあげることもできます。
登録免許税が非課税になるのは、財産を譲ってあげる相手が法定相続人の場合だけです。
法定相続人以外の人に対して財産を譲ってあげる場合、登録免許税が非課税になりません。
財産を譲ってあげる相手が法定相続人以外の人の場合、通常どおり登録免許税がかかります。
遺言書に「遺贈する」とあれば、譲ってもらう人が相続人であっても相続人以外の人でも、遺贈で手続します。
③土地の評価額が100万円以下の場合
土地の評価額が100万円以下の場合、非課税になります。
日本中どこの土地でも土地の評価額が100万円以下であれば対象になります。
登記申請書に「租税特別措置法第84条の2の3第2項により非課税」と記載します。
この記載がないときは非課税となりません。
記載を忘れて、通常どおり登録免許税を納めた場合、登録免許税は還付されません。
5被相続人が不動産を共有していた場合の計算方法
①登録免許税は移転する持分の評価額を基にして計算
登録免許税は、不動産の評価額を基にして計算します。
被相続人が第三者と不動産を共有している場合があります。
被相続人の共有持分について相続登記をする場合、移転する持分の評価額を基にして計算します。
例えば、被相続人が持分3分の1で不動産を共有していた場合、3分の1の評価額を基にして計算します。
不動産の固定資産税評価額が6000万円なら、持分3分の1だから評価額は2000万円です。
2000万円に登録免許税の税率1000分の4をかけて計算します。
登録免許税は8万円納入します。
②移転する持分の評価額が100万円以下なら非課税になる
土地の評価額が100万円以下の場合、非課税になります。
被相続人が土地を共有していた場合、移転する持分の評価額が100万円以下になることがあります。
例えば、被相続人が持分3分の1で150万円の土地を共有していた場合、移転した土地の評価額は50万円です。
移転した土地の評価額は50万円だから、100万円以下になります。
登記申請書に「租税特別措置法第84条の2の3第2項により非課税」と記載して、非課税にしてもらうことができます。
租税特別措置法第84条の2の3第2項により非課税になるのは、土地のみです。
建物は対象外です。
6被相続人がマンションを所有していた場合の計算方法
被相続人が分譲マンションを所有している場合があります。
分譲マンションの多くは、敷地権付の区分建物です。
マンションの登記事項証明書を確認すると、敷地権割合の項目があります。
敷地権割合とは、マンションの敷地の持分割合のことです。
分譲マンションを所有している場合、お部屋は所有していて土地は共有している状態と言えます。
土地を共有していたから、固定資産税評価額に敷地権割合をかけて移転する持分の評価額を計算します。
登録免許税は、移転する持分の評価額を基にして計算するからです。
移転する持分の評価額が100万円以下になる場合、非課税になります。
分譲マンションを所有している場合、お部屋を所有しています。
お部屋についても相続登記をしますから、建物の固定資産税評価額を確認します。
市区町村役場によっては、土地と建物は証明書が別になっています。
建物の固定資産評価額に1000分の4をかけて登録免許税を計算します。
7公衆用道路があった場合の計算方法
被相続人が自宅の土地建物の他に、自宅に至る私道を持っている場合があります。
自宅に至る私道が公衆用道路である場合、固定資産税はかかりません。
公衆用道路の固定資産評価証明書を見ると、不動産の価格が記載されていない場合や0円と記載されています。
固定資産評価証明書に不動産の価格が記載されていない場合や0円と記載されている場合でも、登録免許税はかかります。
不動産の価格が記載されていない場合や0円と記載されている場合、隣接地の評価額の100分の30と定められています。
隣接地の1㎡あたりの評価額に公衆用道路の土地の面積をかけて、土地の評価額を計算します。
土地の評価額が出たら、相続登記の税率1000分の4をかけて登録免許税を計算します。
8登録免許税の過誤納は還付される
相続登記を申請するとき、登録免許税を納入します。
登記申請をしたけど、法務局の審査で添付書類の不足や不備が判明することがあります。
些細なミスの場合、法務局へ出向いて補正することができます。
重大なミスの場合、いったん登記申請を取下げなければなりません。
登記申請を取下げた場合、納付した登録免許税は結果として過誤納になります。
計算誤りをして登録免許税を納め過ぎることがあります。
納め過ぎのことを過誤納と言います。
登録免許税の過誤納があった場合、還付申請書を提出すると返金してもらえます。
還付手続は、税務署が担当します。
返金されるまでに1か月ほどかかります。
9相続登記を司法書士に依頼するメリット
相続が発生すると、相続人は悲しむ暇もなく相続手続に追われます。
ほとんどの人は相続手続は不慣れで、聞き慣れない法律用語で疲れ果ててしまいます。
インターネットの普及で多くの人は簡単に多くの情報を手にすることができるようになりました。
多くの情報の中には正しいものも、適切でないものも同じように混じっています。
登録免許税の計算を間違えた場合、法務局から補正指示がされます。
計算間違いで納付不足の場合、追加納付をすれば済みます。
計算間違いで納め過ぎの場合、過誤納額還付請求書を提出すれば、還付してもらえます。
登録免許税が還付されるまでに、1か月程度かかります。
司法書士は登記の専門家です。
スムーズに相続登記を完了させたい方は司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。