相続登記で必要な住民票

1相続登記に必要な書類とは

登記申請書には、通常、相続関係説明図を添えます。

遺言書がない場合、おおむね、次の書類が必要です。

①被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本

②相続人の現在戸籍

③被相続人の住民票の除票

④不動産を相続する人の住民票

⑤遺産分割協議書

⑥相続人全員の印鑑証明書

⑦固定資産税の評価証明書

事例によっては追加書類が必要になる場合があります。

相続登記では、特段の事情がある場合を除いて、権利証は提出不要です。

2被相続人は住民票の除票が必要

①登記名義人と被相続人が同一人物であることを確認する

登記簿には所有者の住所と氏名が登記されています。

被相続人の戸籍謄本には、本籍と氏名が記載されています。

登記と戸籍謄本だけでは、名前が同じ別の人かもしれないと考えられます。

被相続人の住民票の除票は、戸籍謄本の被相続人と登記されている所有者が同一人物であることを証明するために提出します。

被相続人の住民票の除票には、被相続人の氏名、住所、本籍が記載されているからです。

市町村役場で住民票の除票を請求する場合、本籍を記載してもらってください。

本籍の記載がない住民票の除票では、同一人物であるか確認できないからです。

被相続人の住民票の除票は、被相続人の死亡後に取得する必要があります。

被相続人の死亡後にに取得した除票であれば、取得後に何年経過していても問題はありません。

②被相続人の本籍と登記上の住所が一致する場合は住民票の除票は不要

登記名義人の住所と被相続人の本籍が一致する場合、法務局は同一人物と認めてくれます。

あらためて、住民票の除票を提出する必要はありません。

本籍地       〇〇市〇〇町〇番地

登記上の住所 〇〇市〇〇町〇番地1

上記の場合、一致しているとは言えません。

本籍地と登記上の住所が違うから、住民票の除票などで同一人物であることを証明しなければなりません。

本籍地       〇〇市〇〇町〇番地1

登記上の住所 〇〇市〇〇町〇番地の1

上記の場合、一致していると認められます。

住民票の除票は提出しなくても、相続登記を認めてもらえます。

③住民票の除票と登記上の住所が一致しない場合は戸籍の附票

住民票の除票には、死亡時の住所の他に、前住所地が記載されています。

登記上の住所が前住所地より古い住所の場合、住民票の除票では住所の移り変わりを証明できません。

戸籍の附票には、その戸籍が作られてからの住所の移り変わりが書いてあります。

戸籍が作られて以降であれば、前住所だけでなく前々住所も確認することができます。

戸籍の附票に書いてあるいずれかの住所と登記簿に書いてある住所が一致した場合、被相続人の住所の移り変わりを証明したと言えます。

④戸籍の附票が取れない場合は権利証

戸籍の附票の保存期間は、現在は150年です。

令和元年6月20日以前は、たった5年でした。

平成26年6月20日以降に作られた戸籍の附票は、廃棄前に保存期間が延びたので保存されています。

令和元年6月20日以前に廃棄された場合、原則として、取得することはできません。

住民票の除票でも戸籍の附票でも住所の移り変わりが確認できない場合、権利証を提出します。

権利証は、不動産に権利があることを証明する書類だからです。

通常、相続登記では権利証を提出する必要はありません。

相続は、相続の発生という事実の発生によって登記申請をします。

不動産の持ち主は死亡した被相続人なので意思確認をしたくてもできません。

だから、不動産の持ち主の意思を確認する必要がなく、権利証を用意する必要がないのです。

権利証を提出不要にする代わりに、事実の発生を証明する戸籍謄本等を提出する必要があります。

被相続人の住所の移り変わりを証明することができない場合、権利証を提出して登記簿に書いてある人であると証明することができます。

被相続人の権利証を提出した場合、被相続人の住所の移り変わりを証明していないけど、権利者であることを証明したと言えます。

⑤権利証を見つけられなかったら相続人全員からの印鑑証明書付き上申書

土地や建物は重要な財産であることが多いので、その権利証は大切に保管してあるでしょう。

権利証は紛失しても再発行されません。

普段は大切に保管して簡単に人目にさらしたりしないものですが、相続など大切な場面で見つけることができなくなることは多々あります。

被相続人が保管していた場合、保管場所を共有していない家族が見つけられなくなるのです。

権利証が見つけられない場合、権利証を提出して権利者であることを証明することはできません。

権利証を提出することができない場合、相続人全員からの印鑑証明書付き上申書を提出します。

上申書は「不動産の所有者は被相続人に間違いありません」という法務局宛てのお願いです。

相続人全員とは、遺産分割協議に参加するべき人全員です。

その財産を相続する人だけではありません。

その財産を受け取らないけど他の財産を相続する人など遺産分割協議に参加するべき人全員から上申書を提出します。

遺産分割協議に参加するべき人全員が、実印で押印し印鑑証明書を添付します。

印鑑証明書は古いものでも差し支えありません。

法務局によっては、上申書の他に不在住証明書や不在籍証明書が必要になります。

固定資産税の納税証明書の提出が求められる場合があります。

固定資産税は、一般的に所有者が負担するものだからです。

固定資産税を負担していた場合、所有者であったと認めてもらいやすくなります。

住所がつながらない場合などイレギュラーな場合の取り扱いは、管轄の法務局によって異なる場合があります。

3相続人は住民票が必要

①相続人の最新の住所を確認する

登記簿には登記名義人の住所が登記されます。

不動産を相続する人の住民票は、不動産を相続する人の住所を証明するために提出します。

住民票に有効期限はありません。

不動産を相続する人の最新の住所が記載されているのであれば、取得後に何年経過していても問題はありません。

不動産を相続する人だけが記載されている住民票でも家族全員が記載されている住民票でも、差し支えありません。

②住所証明書であれば住民票以外でも使える

相続人が提出するべき書類は、本来、住所を証明する書類です。

市町村長や登記官などの公務員が職務上証明した書類であれば、住所証明書として認められます。

住所証明書として一番身近な書類が住民票であるに過ぎません。

住民票以外に住所証明書として認められる書類は、戸籍の附票や印鑑証明書が挙げられます。

相続手続をする場合、遺産分割協議書を作成して印鑑証明書を添付します。

遺産分割協議書に添付した印鑑証明書が1枚あれば、住所証明書としても使うことができます。

印鑑証明書には、印鑑登録をした人の住所が記載されています。

印鑑証明書を取得してから長期間経過した場合、相続人が転居する場合や住居表示が実施される場合があります。

不動産を相続する人は、最新の住所が記載された住民票を提出する必要があります。

印鑑証明書の住所と住民票の住所が違う場合、法務局は別の人であると判断します。

同一人物であることを証明するために、住所の移り変わりを証明しなければなりません。

印鑑証明書の住所から住民票の住所までの住所の移り変わりを証明する書類が追加で必要になります。

③その不動産を相続する人以外の住民票は不要

相続人の住民票は、その不動産を相続する人だけです。

相続人全員の住民票ではありません。

登記簿に記載する住所を確認するためなので、登記簿に記載されない人は住民票も不要です。

④死亡した相続人で除票が取得できないとき

不動産を相続する人が死亡してしまった場合でも、相続登記をすることができます。

生前に不動産を相続したのだから、相続した事実を登記することができます。

死亡した相続人で相続登記をする場合、原則として、住民票の除票が必要です。

住民票の除票や戸籍の附票は、永年保管ではありません。

役所で廃棄済になった場合、住民票の除票や戸籍の附票を取得することができません。

このような場合、被相続人の最後の本籍地を住所として相続登記をすることができます。

4法定相続情報一覧図を利用すると便利

①法定相続情報一覧図とは

相続手続のたびに、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍と相続人の現在戸籍の束を提出しなければなりません。

大量の戸籍を持ち歩くと汚してしまったり、紛失する心配があるでしょう。

被相続人を中心にして、どういう続柄の人が相続人であるのか一目で分かるように家系図のように取りまとめてあると便利です。

この家系図と戸籍謄本等を法務局に提出して、登記官に点検してもらうことができます。

登記官は内容に問題がなかったら、地模様の入った専用紙に認証文を付けて印刷して、交付してくれます。

登記官が地模様の入った専用紙に印刷してくれた家系図のことを法定相続情報一覧図と言います。

法務局に戸籍謄本等の点検をお願いすることを法定相続情報一覧図の保管及び交付の申出と言います。

法定相続情報一覧図の保管及び交付の申出をするときに、戸籍謄本だけでなく被相続人の住民票除票や相続人の住民票を提出することができます。

家系図に被相続人の最後の住所や相続人の住所を記載しておけば、登記官は一緒に点検をしてくれます。

被相続人や相続人の住所が記載された法令相続情報一覧図があると相続手続がよりスムーズになります。

②住所が書いてある法定相続情報一覧図を提出すれば住民票は提出不要

相続登記をする場合、たくさんの書類を用意しなければなりません。

(1)被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本

(2)相続人の現在戸籍

(3)被相続人の住民票の除票

(4)不動産を相続する人の住民票

被相続人の最後の住所や相続人の住所が記載された法定相続情報一覧図を提出する場合、上記(1)~(4)の書類が提出不要になります。

法定相続情報一覧図の保管及び交付の申出をしたときに、登記官が確認しているからです。

(1)~(4)の書類だけでも大量になることが多いものです。

(1)~(4)の書類を一目で分かるようにまとめた法定相続情報一覧図はとても便利です。

③法定相続情報一覧図は再交付をすることができる

法定相続情報一覧図は、保管及び交付の申出をしたときから5年間保管されています。

5年以内であれば、法務局で再交付してもらうことができます。

5住民票は原本還付をしてもらうことができる

相続の手続先は、たくさんあるのが通常です。

相続登記で提出した住民票は、登記が完了した後に返してもらうことができます。

返してもらいたい住民票のコピーを用意します。

コピーに「原本に相違ありません」と記載し、申請人が記名押印をします。

押印する印章は、認印で構いません。

6相続登記を司法書士に依頼するメリット

相続が発生すると、相続人は悲しむ暇もなく相続手続に追われます。

ほとんどの人は相続手続は不慣れで、聞き慣れない法律用語で疲れ果ててしまいます。

インターネットの普及で多くの人は簡単に多くの情報を手にすることができるようになりました。

多くの情報の中には正しいものも、適切でないものも同じように混じっています。

相続登記もカンタンにできる、ひとりでできたという記事も散見されます。

不動産は、重要な財産であることも多いものです。

登記手続は、一般の方から見ると些細なことと思えるようなことでやり直しになります。

法務局の登記手続案内を利用すれば、シンプルな事例の申請書類などは教えてもらえます。

個別具体的な事例に関しては、わざわざ説明してくれません。

司法書士などの専門家から見れば、トラブルのないスムーズな相続手続であっても、知識のない一般の方はへとへとになってしまいます。

住所がつながらない場合など、シンプルな事例とは言えない事情がある場合は申請を取下げて、やり直しになることが多いでしょう。

司法書士は登記の専門家です。

スムーズに相続登記を完了させたい方は司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。

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