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1相続放棄を認めたら家庭裁判所は相続放棄申述受理通知書を送る
①家庭裁判所は本人にだけ通知する
被相続人が多額の借金を残して死亡したとき、相続人は相続放棄をするでしょう。
家庭裁判所が相続放棄を認めた場合、本人に相続放棄申述受理通知書を送ります。
家庭裁判所は自主的に他の人に通知しません。
②相続放棄をしても次順位の相続人に通知されない
家庭裁判所が相続放棄を認めた場合、本人に相続放棄申述受理通知書を送ります。
家庭裁判所は自主的に次順位の相続人に通知しません。
例えば、被相続人の子どもが相続放棄をする場合、次の書類を提出します。
(1)被相続人の除票
(2)相続放棄する人の戸籍謄本(3か月以内のもの)
(3)収入印紙
(4)裁判所が手続で使う郵便切手
(5)被相続人の死亡の記載がある戸籍謄本
被相続人の戸籍謄本は、死亡の記載があるもののみ提出します。
家庭裁判所は、被相続人に子どもが何人いるのか分かりません。
次順位の相続人がだれなのか分かりません。
他に子どもがいるのかいないのか分からないから、家庭裁判所は通知できません。
次順位の相続人がだれなのか家庭裁判所が自発的に調査することもありません。
③相続放棄をしても次順位の相続人に通知する義務はない
相続放棄をすると相続人でなくなります。
相続放棄をして相続人でなくなったことを他の相続人に知らせる義務はありません。
相続人同士が疎遠な場合、他の相続人の連絡先を知らないことがあります。
相続財産の分け方を決める話し合いにも参加する必要はありません。
相続財産の分け方は、相続人全員の合意が不可欠です。
相続放棄をしたのか相続を承認したのかはっきりしないと、他の相続人はとても困ります。
相続人全員の合意がないと、相続財産の分け方を決めることができないからです。
④相続放棄をしても債権者に通知されない
家庭裁判所が相続放棄を認めた場合、本人に相続放棄申述受理通知書を送ります。
家庭裁判所は自主的に債権者に通知しません。
相続放棄で提出する書類は、先に説明したとおりです。
提出書類には、債権者名簿など債権者がだれなのか分かるような書類はありません。
家庭裁判所は、債権者がだれなのか分かりません。
債権者がだれなのか分からないから、家庭裁判所は通知できません。
債権者がだれなのか家庭裁判所が自発的に調査することもありません。
⑤相続放棄をしても債権者に通知する義務はない
相続放棄をすると相続人でなくなります。
相続放棄をして相続人でなくなったことを債権者に知らせる義務はありません。
被相続人があちこちから借金をしていた場合、相続人が借入先を把握しきれないことがあります。
借入先をすべて調査するまでもなく明らかに莫大な借金がある場合、相続放棄を決断します。
相続放棄をしたのか相続を承認したのかはっきりしないと、債権者はとても困ります。
だれに被相続人の借金の返済を求めればいいか分からないからです。
⑥相続放棄をしても戸籍に記載されない
家庭裁判所が相続放棄を認めた場合、本人に相続放棄申述受理通知書を送ります。
家庭裁判所は自主的に市区町村役場に通知しません。
相続放棄をしたら市区町村役場に届出をするルールはありません。
市区町村役場には、だれが相続放棄をしたのか単純承認をしたのか情報がありません。
相続放棄をした場合、戸籍に記載されることはありません。
2相続放棄申述受理証明書を発行してもらうことができる
①相続放棄申述受理証明書を発行してもらうには申請が必要
家庭裁判所は相続放棄を認めた場合、本人にだけ通知をします。
債権者や他の相続人などに、自発的に連絡することはありません。
債権者などに見せるため、家庭裁判所で相続放棄を認めてもらったことを証明してもらうことができます。
相続放棄申述受理証明書は、自動的に送られることはありません。
家庭裁判所に対して、手数料を払って証明書を作ってくださいと申請する必要があります。
相続放棄申述受理証明申請書は、家庭裁判所のホームページからダウンロードすることができます。
家庭裁判所によっては、相続放棄申述受理通知書と一緒に、送られてくることもあります。
手数料を払って手続をすれば何枚でも発行してくれるし、再発行もしてくれます。
②相続放棄をした本人が申請する場合
相続放棄申述受理証明申請書に添付する書類は、次のとおりです。
(1)本人確認書類 (運転免許証やマイナンバーカード) のコピー
相続放棄申述受理証明申請の手数料は1通につき、150円です。
手数料は、申請書に収入印紙を貼り付けて納付します。
収入印紙は家庭裁判所で消印を押します。
申請する人は、貼り付けるだけで消印は押しません。
相続放棄申述受理証明申請書は、家庭裁判所まで出向いて提出することもできるし、郵送で提出することもできます。
返信用の封筒に住所と宛名を記載して、郵便切手を一緒に提出すると、郵便で送り返してくれます。
③他の相続人が申請する場合
相続放棄申述受理証明申請書に添付する書類は、次のとおりです。
(1)本人確認書類 (運転免許証やマイナンバーカード) のコピー
(2)被相続人死亡の記載のある戸籍謄本
(3)申請する人の戸籍謄本
手数料は本人が申請する場合と一緒です。
(2)と(3)の戸籍謄本は多くの場合、希望すれば原本還付してくれます。
家庭裁判所によっては、最初からコピーを提出するだけでよい場合もあります。
すでに相続放棄をした人が、同じ被相続人について、相続放棄した他の人の相続放棄申述受理証明申請をすることはできません。
すでに相続放棄をした人は、相続人でなくなります。
相続人でないから、他の相続人が相続放棄をしていても相続放棄をしていなくても関係ありません。
利害関係がない人は、相続放棄申述受理証明申請をすることができないからです。
各自、相続放棄申述受理証明申請をしましょう。
④債権者が申請する場合
相続放棄申述受理証明申請書に添付する書類は、次のとおりです。
(1)本人確認書類 (運転免許証やマイナンバーカード) のコピー
(2)被相続人死亡の記載のある戸籍謄本
(3)金銭消費貸借契約などの債権者であることが分かる書類
(4)法人の場合、資格証明書
相続放棄申述受理証明申請をしてから、証明書が送られるまでに半月から1か月ほどかかります。
3相続放棄申述の有無の照会ができる
相続放棄申述受理証明申請書には、事件番号や受理年月日の記載が必要です。
事件番号や受理年月日は、相続放棄申述受理通知書に記載されています。
相続放棄をした相続人の協力が得られるのであれば、相続放棄申述受理通知書を見せてもらうといいでしょう。
今までの関係性から話しにくいことがあります。
相続放棄をしたかどうかを家庭裁判所に質問することができます。
相続放棄をしたかどうかを家庭裁判所に質問する制度のことを、相続放棄申述の有無の照会と言います。
事件番号や受理年月日が分からない場合、相続放棄申述の有無の照会をすると回答してもらえます。
相続放棄申述の有無の照会をする先の家庭裁判所は、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です。
家庭裁判所の管轄は裁判所のホームページで調べることができます。
相続放棄申述の有無の照会ができるのは、次の人です。
①同順位や次順位の相続人
②被相続人の債権者などの利害関係人
相続放棄申述の有無の照会申請書に添付する書類は、次のとおりです。
①被相続人死亡の戸籍謄本
②被相続人死亡の住民票か戸籍の附票
③照会者の身分証明書
④照会者が相続人の場合、相続人の戸籍謄本
⑤照会者が債権者などの場合、借用書や契約書
相続放棄申述の有無の照会申請書は、直接、出向いて提出してもいいし、郵便で送っても差し支えありません。
届出の書き方や提出書類が心配な方は、出向いて裁判所の受付で目を通してもらうと安心です。
返信用の封筒と切手を同封しておくと、郵送で回答してもらえます。
相続放棄申述の有無の照会に手数料はかかりません。
相続放棄申述の有無の照会申請書を提出してから、回答がされるまでにはおおむね半月ほどかかります。
照会の対象となる期間は、家庭裁判所によって異なります。
多くの家庭裁判所では、被相続人の死亡後3か月、先順位の相続人が相続放棄を認められてから3か月です。
ときには被相続人の死亡後長期間経過してから、相続があったことを知る場合があります。
相続があったことを知ってから3か月以内であれば相続放棄の申立てをすることができるはずです。
家庭裁判所によっては、熟慮期間経過後に相続放棄の申立てをしていた人が見落とされる可能性があります。
4自分が相続人であることが判明したら
①知ってから3か月以内は相続放棄ができる
相続放棄申述の有無の照会で、先順位の相続人が相続放棄をしたことが判明する場合があります。
相続放棄を希望する場合、家庭裁判所に対して相続放棄の申立てをしなければなりません。
この届出の期限は、原則として、相続があったことを知ってから3か月以内です。
「相続があったことを知ってから」とは、被相続人が死亡して相続が発生し、その人が相続人であることを知って、かつ、相続財産を相続することを知ってから、と考えられています。
3か月以内に戸籍や住民票などの必要書類を揃えて管轄の家庭裁判所に提出しなければなりません。
②単純承認をするなら相続手続をする
単純承認をする場合、相続手続をすることになります。
遺言書がない場合、相続財産の分け方は相続人全員の合意が必要です。
他の相続人と協力して相続手続を進める必要があります。
5相続放棄申述受理証明申請を司法書士に依頼するメリット
相続放棄が家庭裁判所で認められると、家庭裁判所から相続放棄申述受理通知書が届きます。
家庭裁判所は相続放棄を認めた場合、本人に通知をします。
自主的に他の相続人や債権者などに連絡することはありません。
役所や法務局なども例外ではありません。
相続放棄をした人がいる場合、相続放棄をしたので相続人ではありませんと証明する必要があります。
相続放棄申述受理通知書で足りる場合がほとんどですが、時々、相続放棄申述受理証明書が必要になります。
司法書士は、このような家庭裁判所に対する書類作成もサポートしております。
相続放棄や相続放棄申述受理証明書でお困りの方は、司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。