相続放棄の必要書類に有効期限がある

1相続放棄は家庭裁判所に申立てが必要

相続が発生したら、原則として、被相続人のプラスの財産もマイナスの財産も相続人が受け継ぎます。

被相続人のプラスの財産もマイナスの財産も受け継がないことを相続の放棄といいます。

相続放棄は、家庭裁判所に申立てが必要です。

相続放棄の申立てに必要な書類は、次のとおりです。

①被相続人の戸籍謄本

②被相続人の除票

③相続放棄する人の戸籍謄本

④収入印紙

⑤裁判所が手続で使う郵便切手

家庭裁判所で相続放棄が認められた場合、プラスの財産を引き継がなくなりますが、マイナスの財産も引き継ぐことがなくなります。

2戸籍謄本も除票もそれ自体に有効期限はない

戸籍謄本は、本籍地のある市区町村役場が発行します。

除票は、住民票をおいている市区町村役場が発行します。

戸籍謄本を見ると、発行年月日が記載されています。

除票を見ると、発行年月日が記載されています。

発行年月日が記載されているだけで、有効期限は記載されていません。

戸籍謄本や住民票に、有効期限はありません。

戸籍謄本や住民票は、交付の時点の内容の証明書だからです。

発行年月日が極端に古い書類は、受付をしてもらえないことがあります。

受付をする機関が独自でルールを決めているからです。

3被相続人の戸籍謄本と除票は相続が発生した後のもの

①戸籍謄本は被相続人死亡の記載があるもの

相続が発生する前は、相続放棄ができません。

被相続人の戸籍謄本は、被相続人の死亡が記載されていなければなりません。

死亡届を提出した直後に戸籍謄本を請求する場合、市区町村役場の事務処理中かもしれません。

被相続人の死亡が記載されていることを確認して発行してもらいましょう。

②除票は被相続人死亡の記載があるもの

相続放棄の申立てをする先は、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です。

被相続人の除票は、被相続人の死亡が記載されていなければなりません。

死亡届を提出した直後に除票を請求する場合、市区町村役場の事務処理中かもしれません。

被相続人の死亡が記載されていることを確認して発行してもらいましょう。

4相続放棄をする人の戸籍謄本は3か月以内

①相続放棄する人は相続発生後取得の戸籍謄本

相続が発生する前は、相続放棄ができません。

相続放棄は、家庭裁判所に対して、必要な書類をを添えて相続放棄をしたい旨の届出をします。

家庭裁判所は、生前に相続放棄の受付はしません。

被相続人の死亡する前に相続放棄ができるとすると、相続人になる予定の人が干渉して相続が発生する前からトラブルになることが考えられるからです。

相続発生後に取得した戸籍謄本を提出する必要があります。

②相続放棄する人は発行後3か月以内の戸籍謄本

家庭裁判所は、相続放棄をする人の戸籍謄本について、発行後3か月以内のルールを設けています。

古い戸籍謄本を提出しても、受け付けてもらえません。

相続放棄は、3か月以内に家庭裁判所に申立てをする必要があります。

相続発生後取得した戸籍謄本であれば、必ず3か月以内になると思うかもしれません。

相続後記の期限3か月のスタートは、原則として、相続があったことを知ってからです。

「相続があったことを知ってから」とは、被相続人が死亡して相続が発生し、その人が相続人であることを知って、かつ、相続財産を相続することを知ってから、と考えられています。

被相続人が死亡してから3か月以内ではなく、相続財産を相続することを知ってから3か月以内です。

被相続人が死亡してから何年も経過してから相続があったことを知る場合があります。

被相続人が死亡後、何年も経過してから相続があったことを知った場合、相続放棄をすることができます。

相続放棄の申立てをする場合、発行後3か月以内の戸籍謄本を提出する必要があります。

③相続放棄をするのに印鑑証明書は不要

相続放棄は、本来、家庭裁判所に対する手続です。

家庭裁判所に提出する書類には実印を押す必要はありません。

実印を押さないから、印鑑証明書を提出することもありません。

にもかかわらず、相続放棄の手続のため実印と印鑑証明書を用意して欲しいと他の相続人に言われたというケースがあります。

相続放棄のためと称していますが、相続放棄の手続のはずがありません。

相続放棄の手続は、相続放棄をする相続人が自分でするものだからです。

他の相続人が相続放棄の手続をするものではありません。

相続放棄の手続には、実印も印鑑証明書も不要です。

実印と印鑑証明書を渡して欲しいと言ってきた場合、別の手続をしようとしています。

自称専門家の場合、遺産分割協議と相続放棄を混同しているケースは度々あります。

他の相続人に対してプラスの財産を相続しないと宣言することを相続放棄と誤解しているケースでしょう。

遺産分割では、遺産分割協議書と印鑑証明書が必要になります。

相続放棄と遺産分割は、まったく別の効果の別の手続です。

5相続登記の必要書類は有効期限がない

法務局は、被相続人や相続人の戸籍謄本について、有効期限を設けていません。

住民票や印鑑証明書についても、有効期限を設けていません。

相続登記をする場合、登録免許税を納めなければなりません。

登録免許税は、登記申請年度の固定資産税評価額をもとにして計算します。

固定資産税の評価証明書は、4月1日に新年度になります。

登記申請が4月1日を越して新年度になった場合、新年度の固定資産税の評価証明書が必要です。

相続登記で期限を気にしなければならないのは、固定資産税評価証明書だけです。

他の添付書類については、古いものだけであれば問題はありません。

6銀行などの金融機関は独自ルールで有効期限を決めている

①多くの銀行は有効期限3か月か6か月

相続の手続先は、銀行や保険会社などがイメージしやすいでしょう。

銀行や保険会社などは、独自で書類の有効期限を決めています。

取得してから長期間経過した場合、取得し直してくださいと言われます。

銀行や保険会社などの独自ルールなので、一概には言えませんが、多くは3か月や6か月で取得し直しと言われてしまいます。

②期限切れの戸籍等で法定相続情報一覧図を取得することができる

相続手続のたびに、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍と相続人の現在戸籍の束を提出しなければなりません。

大量の戸籍を持ち歩くと汚してしまったり、紛失する心配があるでしょう。

被相続人を中心にして、どういう続柄の人が相続人であるのか一目で分かるように家系図のように取りまとめてあると便利です。

この家系図と戸籍謄本等を法務局に提出して、登記官に点検してもらうことができます。

登記官は内容に問題がなかったら、地模様の入った専用紙に認証文を付けて印刷して、交付してくれます。

登記官が地模様の入った専用紙に印刷してくれた家系図のことを法定相続情報一覧図と言います。

法務局に戸籍謄本等の点検をお願いすることを法定相続情報一覧図の保管及び交付の申出と言います。

法定相続情報一覧図の保管及び交付の申出をする場合、取得してから長期間経過した戸籍謄本や住民票を提出しても差し支えありません。

取得してから長期間経過した戸籍謄本や住民票を提出しても、内容が適切であれば、地模様の入った専用紙に認証文を付けて印刷して交付してくれます。

法定相続情報一覧図には、交付した日付が記載されています。

銀行や保険会社などの独自ルールによりますが、法定相続情報一覧図の交付日から3か月や6か月以内であれば期限内の書類として受け付けてもらえます。

法定相続情報一覧図の保管及び交付の申出をしてから5年間は、再交付の申出ができます。

法定相続情報一覧図の交付日から3か月や6か月の期限が切れてしまった場合、法務局に対して法定相続情報一覧図の再交付をしてもらうことができます。

法定相続情報一覧図の再交付をしてもらえば、新しい交付日の法定相続情報一覧図を取得することができます。

被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍と相続人の現在戸籍は大量にある場合、取り直しをする負担は大きいものです。

銀行や保険会社など手続先がたくさんある場合、3か月や6か月はあっという間に過ぎてしまいます。

法定相続情報一覧図を上手に活用すると、スムーズに相続手続ができます。

7相続税申告のの必要書類は有効期限がない

税務署は、被相続人や相続人の戸籍謄本について、有効期限を設けていません。

相続税は、10か月以内に申告する必要があります。

8相続放棄の提出書類は原本還付してもらうことができる

家庭裁判所に提出した書類は、請求しなければ原本還付してもらうことはできません。

添付書類を返してもらえれば、財産を相続する相続人が使うことができます。

被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本をすべて取得するのは、想像以上に時間と手間がかかります。

相続手続をする手続先がたくさんある場合、添付書類の原本還付を請求すると便利です。

添付書類を返してもらえないと、あらためて手間と時間をかけてたくさんの書類を取り寄せなければならなくなるからです。

家庭裁判所は相続放棄申述書以外すべての書類を返してくれます。

相続放棄申述書に原本還付申請書と返してもらいたい書類のコピーを添付します。

コピーに原本に相違ありませんなどの記載は不要です。

9相続放棄を司法書士に依頼するメリット

相続放棄はプラスの財産もマイナスの財産も引き継ぎませんという裁判所に対する申立てです。

相続人らとのお話合いで、プラスの財産を相続しませんと申し入れをすることではありません。

家庭裁判所で認められないとマイナスの財産を引き継がなくて済むというメリットは受けられないのです。

実は、相続放棄はその相続でチャンスは実質的には1回限りです。

家庭裁判所に認められない場合、即時抗告という手続を取ることはできますが、高等裁判所の手続で、2週間以内に申立てが必要になります。

家庭裁判所で認めてもらえなかった場合、即時抗告で相続放棄を認めてもらえるのは、ごく例外的な場合に限られます。

一挙にハードルが上がると言ってよいでしょう。

司法書士であれば、家庭裁判所に認めてもらえるポイントを承知していますから、認めてもらえやすい書類を作成することができます。

相続放棄をしたい旨の届出には戸籍や住民票が必要になります。

お仕事や家事、通院などでお忙しい人には平日の昼間に役所にお出かけになって準備するのは負担が大きいものです。

戸籍や住民票は郵便による取り寄せもできますが、書類の不備などによる問い合わせはやはり役所の業務時間中の対応が必要になりますから、やはり負担は軽いとは言えません。

このような戸籍や住民票の取り寄せも司法書士は代行します。

3か月の期間内に手続きするのは思ったよりハードルが高いものです。

相続放棄を考えている方はすみやかに司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。

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