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1大人同士で養子縁組ができる
①養子縁組で親子になる
養子縁組とは、血縁関係による親子関係の他に、法律上の親子関係を作る制度です。
子どものいない夫婦が養子縁組をする、配偶者の連れ子と養子縁組するといったことは日常的に聞くことあります。
養子は、未成年に限るものではありません。
大人同士で、養子縁組をすることができます。
一般的に、単に「養子」と言ったら、普通養子を指していることがほとんどです。
大人同士で養子縁組をする場合、普通養子による養子縁組のみです。
普通養子による養子縁組は、養子縁組後も血縁関係がある実親との親子関係が続きます。
大人同士で、養子縁組をすることができます。
②甥姪が大人なら実親の許可は不要
養子縁組をするためには、養親になる人と養子になる人の合意が条件です。
養子が幼い子どもである場合、物事のメリットデメリットを充分に判断することはできません。
物事のメリットデメリットを充分に判断できないのに、合意をしても意味がありません。
養子が15歳未満である場合、原則として、親などの法定代理人が代わりに養子縁組を承諾します。
養子の父母で監護する人が他にいるときは、父母の同意が必要です。
養子の父母で親権が停止されている人が他にいるときも、同様です。
養子が15歳以上の場合、自分の意思で養子縁組をすることができます。
実親の意思とは関係なく、養子縁組は有効に成立します。
大人同士の養子縁組をする場合、15歳以上です。
実親が反対しても、養子縁組をすることができます。
大人になった甥姪が養子縁組をする場合、実親の許可は不要です。
③大人同士で特別養子による養子縁組はできない
特別養子では、養子縁組をした後、血縁関係のある実親との親子関係がなくなります。
親子の縁を切る重大な決定なので、厳格な要件で家庭裁判所が決定します。
特別養子が認められる条件は、次のとおりです。
(1)実親の同意があること
(2)養親は配偶者がいること
(3)養親の年齢が25歳以上、夫婦の一方は20歳以上
(4)養子の年齢が15歳未満
(5)6か月以上の監護実績
実の父母による著しい虐待がある場合やその他特別の事情がある場合で、かつ、子の利益のため特に必要があるときに、認められます。
特別養子が認められるのは、家庭裁判所に審判の請求をした時点で養子が15歳未満であることが条件です。
養子が15歳になる前から養親に監護されていた場合、18歳になるまでは審判を請求することができます。
養子が成人になったら、特別養子になることはできません。
甥姪が大人になったら、特別養子による養子縁組をすることはできません。
④伯叔父・伯叔母両方と養子縁組をするときは届出書2通
相続対策で甥姪と養子縁組をする場合、夫婦に子どもがいないことが多いでしょう。
伯叔父と養子縁組をしても、自動で伯叔母の養子になることはありません。
伯叔母と養子縁組をしても、自動で伯叔父の養子になることはありません。
伯叔父と伯叔母両方と養子縁組をするときは、それぞれ届出書が必要です。
伯叔父と甥姪が養子になる届出と伯叔母と甥姪が養子になる届出の2通が必要です。
⑤養子縁組で養親の氏
養子縁組をした場合、原則として、養子は養親の氏を名乗ります。
養子になる人が婚姻によって氏を改めた人であることがあります。
婚姻によって氏を改めた人は、婚姻の際の氏を名乗ります。
養子になる人に子どもがいても、養子の子どもの氏は自動で変わりません。
養子の子どもの氏を変更するには、原則として、家庭裁判所で子の氏の許可の申立てが必要です。
父母が婚姻中であれば、家庭裁判所の許可なしで変更することができます。
2養子縁組で相続人になる
①相続人になる人は法律で決まっている
相続が発生したら、親族のうち一定の範囲の人が相続人になります。
だれが相続人になるかについては、民法で決められています。
相続人になる人は、次のとおりです。
(2)~(4)の場合、先順位の人がいる場合、後順位の人は相続人になれません。
(1)配偶者は必ず相続人になる
(2)被相続人に子どもがいる場合、子ども
(3)被相続人に子どもがいない場合、親などの直系尊属
(4)被相続人に子どもがいない場合で、かつ、親などの直系尊属が被相続人より先に死亡している場合、兄弟姉妹
②実子がいても養子は相続人
養子縁組は、法律上の親子関係を作る制度です。
養子は、養親の子どもになります。
養親に相続が発生した場合、子どもは相続人になります。
養親に実子がいる場合、実子は相続人になります。
養親に養子がいる場合、養子は相続人になります。
実子と養子に区別はありません。
養親に実子がいても、養子は相続人になります。
③実子と養子は同じ相続分と遺留分
養子縁組をした場合、養子は法律上の親子関係がある子どもです。
子どもに区別はありません。
実子と養子は、同じ相続分です。
被相続人は、原則として、自分の財産をだれに受け継がせるかは自由に決めることができます。
財産は被相続人が自分だけで築いたものではないでしょう。
家族の協力があってこそ、築くことができた財産のはずです。
被相続人の名義になっているからといって、まったく無制約の自由にすることはできません。
今まで協力してきた家族に酷な結果となることがあるからです。
被相続人に近い関係の相続人には、相続財産に対して最低限の権利が認められています。
相続財産に対して、認められる最低限の権利を遺留分と言います。
兄弟姉妹以外の相続人には、遺留分が認められています。
遺留分が認められている相続人を遺留分権利者と言います。
被相続人の子どもが相続人になる場合、子どもは遺留分権利者です。
子どもに区別はありません。
実子と養子は、同じ遺留分です。
実子と養子は、同じ相続分と遺留分です。
④養子がいると兄弟姉妹は相続人にならない
被相続人が甥姪と養子縁組をした場合、甥姪は養親の子どもになります。
被相続人に子どもがいる場合、子どもは相続人になります。
子どもが相続人になる場合、後順位の人は相続人になりません。
被相続人に親などの直系尊属がいても、相続人になりません。
被相続人に兄弟姉妹がいても、相続人になりません。
親などの直系尊属も兄弟姉妹も、後順位だからです。
相続対策をで養子縁組をする場合、甥姪が大人になってから養子縁組をするでしょう。
大人になってから養子縁組をする場合、実親などの許可は不要です。
養親の兄弟姉妹の許可は、当然不要です。
甥姪と養子縁組をしたことを知らないと、被相続人の兄弟姉妹は相続人になると期待するでしょう。
相続が発生してから養子の存在を知ると、大いに困惑します。
相続人によっては、相続分を奪われた気持ちになるかもしれません。
養子がいると、兄弟姉妹は相続人になりません。
養子の存在を知らないと、相続トラブルに発展するおそれがあります。
⑤養子の子どもが代襲相続できない可能性
相続対策で養子縁組をする場合、養子が相続人になることを期待しているでしょう。
思いがけず、養子が先に死亡することがあります。
被相続人の子どもが先に死亡した場合、相続人になるはずだった子どもの子どもが相続します。
これを代襲相続と言います。
被相続人の養子が先に死亡した場合、養子の子どもが代襲相続ができるケースとできないケースがあります。
代襲相続人は、被相続人の卑属である必要があるからです。
養子の子どもが養子縁組後に誕生した場合、被相続人の卑属です。
養子縁組後に誕生した養子の子どもは、代襲相続をすることができます。
養子の子どもが養子縁組前に誕生した場合、被相続人の卑属ではありません。
養子縁組前に誕生した養子の子どもは、代襲相続をすることができません。
養子縁組前に誕生した養子の子どもに相続させたい場合、あらためて養子の子どもと養子縁組をすることができます。
⑥養子縁組の解消は当事者の合意が必要
養子縁組は、当事者の合意で親子関係を作る制度です。
養子縁組は、当事者の合意で解消することができます。
養子縁組は、当事者が一方的に解消することはできません。
養子縁組をしても、さまざまな家族の事情から解消したいと思うことがあるでしょう。
当事者の一方が養子縁組を解消したいと思っていても、他方が合意できないことがあります。
当事者が合意できないと、トラブルになるでしょう。
ときには兄弟姉妹などを巻き込んで、大きなトラブルに発展します。
養子縁組の解消は、当事者の合意が必要です。
3死亡後に養子縁組はできない
①養子縁組は当事者の合意が必要
養子縁組は、当事者の合意で親子関係を作る制度です。
養子縁組をする場合、養親になる人と養子になる人の合意が必要です。
養親になる人と養子になる人が合意をしたうえで、市区町村役場に届出をすることで成立します。
養親になる人と養子になる人の合意がない場合、養子縁組をすることはできません。
遺言書に「〇〇を養子にする」と記載してあったとしても、養子縁組をすることはできません。
遺言書は、遺言者が死亡したときに効力が発生します。
遺言者が死亡した後は、養親になる人と養子になる人の合意があるとは言えません。
遺言書に「〇〇を養子にする」と記載してあったとしても、合意があるとは言えません。
当事者の死亡後に、普通養子による養子縁組をすることはできません。
養子縁組は、当事者の合意が必要です。
②死亡後に養子縁組の解消ができる
養親と養子が合意して、養子縁組を解消することができます。
養親と養子が合意できるのは、養親と養子の両方が生きている間だけです。
養親と養子の一方が死亡した後は、養親と養子が合意することはできません。
死後離縁とは、養親と養子のどちらかが死亡した後に、養子縁組を解消することです。
養親が死亡した後に、死後離縁をすることができます。
養子縁組の当事者の一方が死亡した後、離縁しようとするときは、家庭裁判所の許可が必要です。
死後離縁許可の申立てと言います。
死後離縁許可の申立てができるのは、養子縁組当事者のみです。
死亡した養親の親族が申し立てることはできません。
養親と養子の両方が死亡したら、死後離縁をすることはできません。
③死後離縁をしても相続人
死後離縁とは、養子縁組の当事者の一方が死亡した後に離縁をすることです。
死後離縁をしても、さかのぼって養子でなくなることはありません。
養親が死亡したときは、養子のままです。
養親の子どもだから、相続することができます。
相続手続が終わった後に、死後離縁をすることができます。
死後離縁をした場合でも、養親から受け継いだ財産を返す必要はありません。
死後離縁をしたからと言って、さかのぼって養子でなくなるわけではないからです。
4養子がいる相続を司法書士に依頼するメリット
相続税を減らすために、税金の専門家から養子縁組をすすめられることがあります。
税金を減ることだけ強調されて、他のことに考えが及んでいない方も多いです。
税金について考慮することは大切ですが、税金のメリットだけ注目すると後悔することになるでしょう。
死後離縁を考える人の多くは、生前から親族間の関わり合いで疲れ果てています。
養親のためを思って、何も言えないのです。
死亡した養親の相続で、何も対策していないとトラブルが目に見える形になります。
少なくとも、相続財産の分け方で、相続人全員の合意がなくても、相続手続が進められるようにしておきましょう。
被相続人が遺言書を書いておけば、トラブルは大幅に減ります。
内容不備になることの少ない確実な公正証書遺言を作成することをおすすめします。
家族の幸せを思って築いた財産なのに、トラブルのタネになっては悲しいでしょう。
家族のために、公正証書遺言を作成したい方は、司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。