失踪宣告に申立人の調査と家庭裁判所の補充調査

1 申立人の調査と家庭裁判所の調査は役割がちがう

①失踪宣告で調査は2回ある

失踪宣告がされると、死亡扱いがされます。

失踪宣告をしていいのか、慎重に調査します。

失踪宣告で、調査は2回あります。

申立人の調査と家庭裁判所による補充調査です。

②申立人による調査で調査の端緒を提供

失踪宣告の申立てをするにあたって、申立人が調査をします。

申立人などの家族は、完璧な調査ができるはずはありません。

家族は、捜査機関ではないからです。

申立人による調査の目的は、家庭裁判所に調査の端緒を提供することです。

申立人が行方不明と主張するだけでは、調査の端緒を得ることができません。

さまざまな調査をしたけど手がかりがなかったのなら、手がかりがなかったことを報告します。

手がかりがなかったことが調査の端緒の一部になるからです。

家庭裁判所に調査の端緒を提供できれば、充分な調査をしたと言えます。

失踪宣告の事前確認で申立てができると判断できた時点で、申立人による事前調査は完了です。

調査の端緒を提供できるから、申立てができると判断できたはずだからです。

あらためて、申立人による調査をする必要はありません。

③家庭裁判所は補充調査をする

申立人によって提供された調査の端緒を参考に、家庭裁判所が補充調査をします。

家庭裁判所による補充調査のため、申立人が調査の端緒を提供します。

家庭裁判所は、捜査機関ではないからです。

家庭裁判所による補充調査で、行方不明者の生存の痕跡を探します。

生存の痕跡があった最終日から失踪期間を計算するからです。

家庭裁判所による補充調査をして、失踪宣告ができるか判断します。

④生存が確認されてもペナルティーはない

申立人による調査は完璧でなくても、支障はありません。

もともと家族が完璧な調査をすることは、予定されていません。

申立人が調査の端緒を提供することを前提に、家庭裁判所が補充調査をする設計です。

家庭裁判所による補充調査で、行方不明者の生存が確認できることは珍しくありません。

行方不明者の生存が確認できるのは、制度が適切に機能した証拠です。

行方不明者の生存が確認できた場合、家庭裁判所から申立てを取り下げるように言ってきます。

家庭裁判所に指示に従って、申立てを取下げるだけです。

行方不明者の生存が確認できることは、制度上、当然の帰結です。

行方不明者の生存が確認できることは、申立人の調査不足ではありません。

もともと家族ができる調査には、制限があるからです。

失踪宣告がされるまで、行方不明者は生きている扱いです。

家族が照会しても、応じてもらえないことが多いでしょう。

行方不明者の生存が確認されても、ペナルティーはありません。

できる範囲で調査して行方不明であれば、虚偽の申立てなどと非難されることはありません。

申立人が責任を問われることはありません。

⑤失踪宣告の要件は長期間生死不明と申立て

死亡したことが確認できないのに、死亡と見なされます。

死亡と見なされるという強い法的効果があります。

失踪宣告が認められるためには、次の要件があります。

(1)生死不明のまま一定期間継続していること

(2)失踪宣告の申立てがあること

失踪宣告の申立てをしても、要件を満たしていないと失踪宣告はされません。

失踪宣告の申立てをする前に、申立人は事前確認をします。

失踪宣告の申立てを受付けた後、家庭裁判所は補充調査をします。

2失踪宣告で申立人が事前調査をする

①行方不明期間を事前調査する

失踪宣告を受けるには、行方不明者が生死不明のまま一定期間継続していることが条件です。

生死不明期間の起算点は、最後に生存の痕跡があった日です。

生死不明期間の起算点は、正確な日付が分からないことがほとんどです。

行方不明になった日を具体的に特定できなくても、問題はありません。

生死不明期間の起算点は、ある程度の幅があることは通常です。

例えば、〇〇年〇〇月ごろまで連絡が取れた、〇〇年〇〇月ごろまで出勤していたなどで差し支えありません。

②行方不明の事実を事前調査する

(1)住民票を取得して職権消除されているか確認する

職権消除とは、住民基本台帳法に基づいて本人申請なしで住民票が削除されることです。

市区町村の調査で居住が確認できないと判断された場合、住民票は職権で消除されます。

実際にその住所に住んでいないにも関わらず住民票が残ったままである場合、だと、行政記録の正確性を維持できないからです。

職権消除された記載がある住民票は、家庭裁判所へ提出します。

(2)住民票上の住所に居住していないことを確認する

行方不明の事実を確認する場合、まず住民票上の住所に居住していない事実を確認します。

住民票上の住所地を訪れて、居住実態がないことを確認します。

(3)郵便物が返戻されるか確認する

本人宛に郵便物を送ると、郵便が返戻されることがあります。

差し出した郵便物には、「あて所に尋ねあたりません」とスタンプが押してあるはずです。

「あて所に尋ねあたりません」とスタンプが押された郵便物は、家庭裁判所へ提出します。

(4)社会生活の痕跡がないか確認する

行方不明者が社会生活をしていれば、さまざまな痕跡があるはずです。

社会生活の痕跡が途絶えているか、確認します。

(5)友人知人と連絡が取れていないことを確認する

家族だけでなく友人知人など本人に関わりがあった人と連絡が取れていない場合、行方不明の継続性を裏付ける材料になります。

複数の友人知人の証言が一致していると、資料として信用力が高まります。

③失踪宣告の申立人は法律上の利害関係人のみ

失踪宣告の申立てをする人は、行方不明者に利害関係がある人に限定されています。

利害関係がある人とは、法律上の利害関係人です。

事実上の利害関係人は、申立人になることはできません。

失踪宣告には、行方不明者を死亡扱いにする重大な法的効果があるからです。

次の人には、法律上の利害関係があると考えられます。

・配偶者

・行方不明者が被相続人になるときの相続人

・行方不明者が共同相続人になるときの他の相続人

・受遺者

・不動産の共有者

・行方不明者の保証人

法律上の利害関係がない人は、失踪宣告の申立てをすることができません。

申立人になれることを事前に確認します。

④失踪宣告の申立ての必要書類を準備する

失踪宣告の申立てをするには、次の書類を準備します。

(1)行方不明者の戸籍謄本

(2)行方不明者の戸籍の附票

(3)失踪を証する資料

(4)利害関係を証する資料

提出する資料で重要なのが、失踪を証する資料です。

家庭裁判所による補充調査の端緒になるからです。

失踪宣告の申立てをするにあたって、捜索願や行方不明者届を出すことは必須ではありません。

捜索願や行方不明者届を提出していれば、重要な資料として提出することができます。

捜索願や行方不明者届を提出していなくても警察が受理してくれなくても、失踪宣告の申立てをすることができます。

失踪宣告の申立てで必要なのは、失踪を証する資料だからです。

必要書類を準備できることを事前に確認します。

3失踪宣告で家庭裁判所が補充調査をする

①公的機関に履歴調査

失踪宣告の申立てを受付けたら、家庭裁判所は補充調査を行います。

具体的には、公的機関などに生存の痕跡がないか文書で照会します。

家庭裁判所は、次のような記録の照会をします。

・住民票の異動履歴

・戸籍の動き

・運転免許証の更新履歴

・雇用保険の履歴

・出入国の記録

行方不明者がどこかで生活している痕跡がないか、家庭裁判所が調査します。

上記の記録は、家族が照会しても応じてもらえません。

家庭裁判所による補充調査で生存が確認されても、申立人に責任がないのは当然です。

②申立人や家族に事情聴取

公的機関などに文書照会をしても生存の痕跡が確認できない場合、申立人や家族に事情聴取をします。

多くの場合、家庭裁判所から照会文書が届きます。

質問の内容は、難しいことはありません。

失踪宣告の申立てをした経緯や最後に行方不明者と連絡が取れた日などです。

正直に答えれば、いいでしょう。

疎遠で連絡を取った日が分からないなら、分からないで問題はありません。

③補充調査が終わっても官報公告で調査をする

失踪宣告がされると、死亡扱いがされる重大な法的効果があります。

重大な効果があるから、慎重に手続を進めます。

失踪宣告の手続で、官報公告が行われます。

官報公告の内容は、次のとおりです。

・次の人に失踪宣告の申立てがありました。

・該当の人や該当の人の生死を知る人は、家庭裁判所に届出をしてください。

・届出がないと、失踪宣告されます。

公的機関が知らない情報を持つ人がいる可能性があるので、官報公告で情報収集します。

官報公告は、広く社会全体に呼び掛けて情報収集する手段です。

失踪宣告がされると死亡扱いになるから、家庭裁判所は慎重に調査します。

4要件を満たすことを確認できれば失踪宣告

①補充調査で最後に生存が確認できた日を確認する

生死不明のまま一定期間継続している場合、失踪宣告がされます。

補充調査で最後に生存が確認できた日を確認します。

行方不明期間の起算点は、最後に生存が確認できた日だからです。

行方不明期間の起算点は、申立人や家庭裁判所が勝手に決めることはできません。

失踪宣告を受けると、行方不明の人を被相続人とする相続が発生するからです。

失踪宣告には重大な法的効果があるから、客観的資料に基づいて事実認定がされます。

②失踪期間経過で失踪宣告

失踪宣告には、2種類あります。

普通失踪と特別失踪(危難失踪)です。

一般的に失踪宣告といった場合、普通失踪を指しています。

生死不明の期間を失踪期間と言います。

普通失踪では、失踪期間が7年です。

特別失踪(危難失踪)とは「戦地に行った者」「沈没した船舶に乗っていた者」「その他死亡の原因となる災難に遭遇した者」などを対象にする失踪宣告です。

特別失踪(危難失踪)では、失踪期間が1年です。

失踪期間を満たしていることが確認されたら、失踪宣告の審判がされます。

失踪宣告の審判は、2週間で確定します。

③失踪宣告確定後は失踪届で戸籍に反映

家庭裁判所が失踪宣告の審判をした後、審判が確定しても市区町村役場に連絡されることはありません。

失踪宣告の審判が確定した後に、市区町村役場に届出が必要です。

失踪宣告の審判が確定した後に市区町村役場に提出する届出を失踪届と言います。

死亡したときに提出する死亡届とは別の書類です。

失踪届は、多くの市区町村役場でホームページからダウンロードができます。

失踪届が受理されることで、失踪宣告がされたことが戸籍に記載されます。

5生死不明の相続人がいる相続を司法書士に依頼するメリット

相続人が行方不明であることは、割とよくあることです。

行方不明の相続人がいると、相続手続を進めることができません。

相続が発生した後、困っている人はたくさんいます。

自分たちで手続しようとして、挫折する方も少なくありません。

困っている遺族はどうしていいか分からないまま、途方に暮れてしまいます。

裁判所に提出する書類作成は、司法書士の専門分野です。

途方に暮れた相続人をサポートして、相続手続を進めることができます。

相続手続で不安がある方は司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。

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