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1NHK受信料の未払いを相続放棄
①相続放棄で未払いNHK受信料を相続しない
相続が発生したら、被相続人の財産は相続人が相続します。
相続財産には、いろいろな種類の財産があるでしょう。
プラスの財産とマイナスの財産の両方が相続財産です。
被相続人がテレビを保有していれば、NHKと受信契約をしているでしょう。
被相続人がNHK受信料を払っていないことがあります。
未払いになっているNHK受信料は、相続財産です。
未払いになっているNHK受信料がある場合、相続人が相続します。
相続人は、相続を単純承認するか相続放棄をするか選択することができます。
相続放棄を希望する場合、家庭裁判所に対して相続放棄の申立てをします。
家庭裁判所で相続放棄が認められた場合、はじめから相続人でなくなります。
相続人でなくなるから、未払いNHK受信料を相続しません。
家庭裁判所で相続放棄をした場合、未払いNHK受信料を相続しません。
②未払NHK受信料だけ相続放棄はできない
相続財産には、いろいろな種類の財産があることが通常です
プラスの財産とマイナスの財産の両方が相続財産です。
相続放棄が認められた場合、はじめから相続人でなくなります。
相続人でなくなるから、すべての財産を相続しません。
マイナスの財産を相続しないしプラスの財産を相続しません。
相続放棄をしたら、未払NHK受信料だけでなく財産全部を放棄することになります。
未払NHK受信料だけ選択して、相続放棄することはできません。
③3か月以上経過してから未払いに気づいても相続放棄
相続放棄には、期限があります。
原則として、相続があったことを知ってから3か月以内です。
相続があったことを知ってから3か月以内の期間のことを熟慮期間と言います。
「相続があったことを知ってから」とは、被相続人が死亡して相続が発生し、その人が相続人であることを知って、かつ、相続財産を相続することを知ってから、と考えられています。
被相続人や被相続人の家族と疎遠であった場合、生活状況を詳しく知っていることは少ないでしょう。
被相続人や被相続人の家族と連絡を取り合っていても、財産状況はよく分からないでしょう。
相続が発生した後に遺産整理をしても主だった財産が見つからなかった場合、何もしないのが通常です。
相続が発生したことを知っても、NHK受信料の未払いを相続したことは知らないと言えます。
NHK受信料の未払いは、相続財産です。
相続財産を相続することを知ってから3か月以内であれば、相続放棄をすることができます。
相続があったことを知ってからとは、必ずしも、被相続人の死亡してからではありません。
被相続人が死亡してから3か月以上経過後に相続放棄の申立てをすることができます。
死亡してから3か月以上経過した場合、家庭裁判所に「相続があったことを知ってから」3か月以内であることをアピールする必要があります。
具体的には、上申書を作成して詳しい事情を説明します。
NHK受信料の納付について手紙を受け取ったことで、NHK受信料の未払いを知ることがあります。
この通知は、重要です。
NHK受信料の未払いを知ったことを裏付ける証拠となるからです。
家庭裁判所あての上申書にこの手紙を付けて、一緒に提出します。
相続が発生してから3か月以上経過してから未払いに気づいても、相続放棄をすることができます。
④未払いがあるか分からないから相続放棄
被相続人や被相続人の家族と疎遠であった場合、生活状況を詳しく知っていることは少ないでしょう。
被相続人や被相続人の家族と連絡を取り合っていても、財産状況はよく分からないでしょう。
被相続人に目立ったプラスの財産がない場合、相続するメリットを感じられないでしょう。
相続を単純承認した場合、被相続人のプラスの財産とマイナスの財産を相続します。
相続を単純承認した場合、プラスの財産はなくてもマイナスの財産を相続しなければなりません。
マイナスの財産があるのか分からない場合、安全のために相続放棄をすることができます。
相続放棄をする場合、財産調査をする義務はありません。
マイナスの財産があるのか分からない場合、分からないと書いて書類を提出することができます。
家庭裁判所は、被相続人の財産状況に興味はありません。
NHK受信料の未払いがあるか分からないから、相続放棄をすることができます。
2 NHK受信料の未払いを相続放棄するときの注意点
①NHK受信料の返還金を受け取ると相続放棄は無効
相続人は、相続を単純承認するか相続放棄をするか選択することができます。
相続を単純承認するか相続放棄をするか選択した後は、撤回することはできません。
撤回を認めると、相続手続が混乱するからです。
NHK契約者の死亡によって、NHK受信契約を解約することがあります。
NHK契約者が生前に受信料を年払いをしていた場合、NHK受信契約の解約で返還金が発生します。
NHK受信料の返還金は、相続財産です。
NHK受信料の返還金を受け取った場合、相続を単純承認したと見なされます。
単純承認をしたら、撤回をすることはできません。
家庭裁判所は、詳しい事情が分からずに相続放棄を認めてしまうかもしれません。
家庭裁判所が相続放棄を認めても、相続放棄は無効です。
NHK受信料の返還金を受け取った場合、相続放棄が無効になります。
②相続放棄で次順位相続人
相続が発生したら、一定の範囲の家族が相続人になります。
相続人になる人は、法律で決まっています。
家庭裁判所で相続放棄が認められた場合、はじめから相続人でなくなります。
被相続人に子どもがいる場合、子どもは相続人になります。
子どもが相続放棄をした場合、子どもは相続人ではなくなります。
子ども全員が相続放棄をした場合、子ども全員は相続人ではなくなります。
子ども全員が相続人でなくなった場合、子どもがいない場合です。
被相続人に子どもがいない場合、親などの直系尊属が相続人になります。
親などの直系尊属が被相続人より先に死亡した場合、兄弟姉妹が相続人になります。
相続放棄をすると、次順位の人が相続人になります。
NHK受信料の未払いは、次順位の相続人が相続します。
次順位の相続人が相続を希望しない場合、次順位の相続人も相続放棄の手続が必要です。
家庭裁判所で相続放棄が認められた場合、相続放棄の申立てをした人にだけ通知します。
家庭裁判所が自主的に次順位の相続人に連絡することはありません。
相続放棄をしたことを次順位相続人に連絡する義務はありませんが、連絡すると親切でしょう。
先順位の相続人がいる場合、NHK受信料の未払いは先順位の人が引き受けてくれると安心しているからです。
安心していたのにNHK受信料の未払いを払って欲しいといわれたら、びっくりするでしょう。
相続放棄をしたら後順位の相続人に伝えてあげるといいでしょう。
相続放棄が認められた場合、次順位の人が相続人になります。
③配偶者に日常家事債務の連帯責任
家庭裁判所で相続放棄が認められた場合、被相続人の財産は相続しません。
被相続人に莫大なマイナスの財産があっても、弁済する必要はありません。
公共料金に未払いがあっても、支払不要です。
被相続人の配偶者は、日常家事債務について連帯責任があります。
日常家事債務とは、夫婦の共同生活で必要となる債務のことです。
日常家事債務は、夫婦2人の連帯債務です。
日常家事債務は、夫婦2人のそれぞれの固有の義務です。
連帯債務は、債務者がそれぞれ独立して全額の債務を負担します。
債務者のひとりが債務を弁済した場合、他の債務者も債務の弁済を免れます。
NHK受信料の債務は、日常家事債務です。
NHK受信契約は、夫婦の共同生活で必要になるから契約しているでしょう。
被相続人の配偶者は契約者でなくても、NHK受信料の支払い義務があります。
日常家事債務は、夫婦2人の連帯債務だからです。
被相続人の配偶者は相続放棄をしても、NHK受信料の未払いを支払う必要があります。
被相続人の配偶者がNHK受信料の未払いを支払う場合、相続財産を使うことはできません。
被相続人の預貯金などは、相続財産です。
被相続人の預貯金からNHK受信料の未払いを支払う場合、相続放棄が無効になるからです。
被相続人の預貯金を使ってNHK受信料の未払いを支払うことは、単純承認と見なされます。
被相続人の配偶者がNHK受信料の未払いを支払う場合、固有の財産から支出する必要があります。
3相続放棄を司法書士に依頼するメリット
相続放棄はプラスの財産もマイナスの財産も引き継ぎませんという裁判所に対する申立てです。
相続人らとの話合いで、プラスの財産を相続しませんと申し入れをすることではありません。
家庭裁判所で認められないと、マイナスの財産を引き継がなくて済むというメリットは受けられません。
相続放棄は、その相続でチャンスは実質的には1回限りです。
家庭裁判所に認められない場合、即時抗告という手続を取ることはできます。
高等裁判所の手続で、2週間以内に申立てが必要になります。
家庭裁判所で認めてもらえなかった場合、即時抗告で相続放棄を認めてもらえるのは、ごく例外的な場合に限られます
一挙にハードルが上がると言ってよいでしょう。
相続放棄は、慎重に判断する必要があります。
いろいろな誤解から、利用をためらう人が多いのも事実です。
利用をためらっていると、相続放棄の期限3か月はあっという間です。
相続が発生すると、家族は親戚や知人へ連絡などで悲しみに浸る暇もないくらい忙しくなります。
3か月以内に必要書類を揃えて手続をするのは、想像以上にハードルが高いものです。
相続放棄を考えている方は、すみやかに司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。